「菊地真は？」

「うーん、いいんじゃないかしら？」



菊地真の名前には聞き覚えがあった。

元アイドルで今は女優として活躍している。

思い返してみれば、先程の三浦あずさも同じ事務所の女優だ。



「はぁ……びっくりした」



天海春香は安堵した。

横の二人の会話はドラマか舞台の役柄の事だったのだろう。

ほう

「──では、よろしくお願いします」

「こちらこそ」



横の席の二人が席を立ち、一人は足早に去っていく。

その様子を目で追いながら、カップに残った紅茶を飲み干し、席を立った。

──しかし。



「うわっ！」



どんがらがっしゃーんと派手に転ぶ。

天海春香は何もないところで転んでしまうクセがあった。

なぜか、かすり傷を一つも負わないのだが……。

どういうことだってばよ

「あの、大丈夫ですか？」



声をかけてきたのは、隣に座っていた女性の一人だった。

胸にはこのホテルのネームプレートを付けていた。



「すみません……」

「いえ、お怪我は無いですか？」

「はい……。　あれ？」



女性の手を借り、立ち上がったところ、急に意識が遠ざかっていた。

──なんか急に眠たくなって……。

──



目を覚ますと見た事の無い天井だった。

春香はそのまま意識を失っていた。



「私……」



ここはホテルの部屋なのだろうか？

意識が少しずつ覚醒していく。

するとドアがガチャリと開く音が聞こえた。



「具合は大丈夫ですか？」

「はい」

「どうやら貧血で倒れたみたいですね」

「あの……」

「そういえばご挨拶がまだでしたね。　私はこのホテルの従業員で如月千早といいます」



──如月千早は笑顔でそう答えた。

なるほどわからん

「ご迷惑をおかけしてすみません。もう大丈夫です！」

「無理しなくてもいいんですよ？」

「いえ、本当に……あっ！　あの～、この部屋の料金って……」



千早はくすりと笑いながら、



「こういうホテルでは“ご休憩”というわけにはいかないので、お金はいりません」

「なっ！」



春香は顔を真っ赤にしながら狼狽える。



「代わりといってはなんですけど、もうすぐ勤務があけるので一緒に食事でもどうですか？」

「え？」

「私とそう年も変わらないですよね？」



職業や見た目から、クールな印象が強かったせいか気が付かなかったが、

言われてみれば確かに自分と同い年くらいだろう。



「そうですね。じゃあご一緒させて貰います」



天海春香の答えに、如月千早は静かに微笑んだ。

今度こそ桜Trickかと思ったのに。
でも面白そう

アイマスの設定ガン無視でやるならアイマスでやる必要あったんかな

↑そんなこと言ったらほとんどのssがそうだろうが
なにいってんだ

キャラの特徴が生きてればいいだろ、期待

ゴミスレ決定。

すっごい肩透かしなオチの予感しかしない

────



「ただいま戻りましたー！」



エレベーターの壊れた古いビルの二階に事務所はあった。

芸能事務所である“７６５プロダクション”だ。

戻ってきたのはプロデューサーである秋月律子だ。



「おかえり律子！」

「仕事が入ったわよ。クリスマスにね」

「クリスマス！？　それは不味いなぁ……」



菊地真がバツが悪そうに答えていると、



「あら～？　お仕事ですか？」

「あずささん、丁度良かった」



菊地真と三浦あずさは共に７６５プロの元アイドルで、現在は女優業を営んでいる。

「それでどんな仕事なの？」

「とあるホテルのイベントよ」

「まさか……サンタさんの格好でプレゼント配りとか言わないよね？」

「ちゃんと台詞もあるわよ」

「あっ！　もしかして最近よくやってるミステリーツアーみたいなものですか？」

「正解です。あずささん」



と、律子は答える。



「ホテルの中で殺人事件が起きて、宿泊客と名探偵が一緒に解決するって設定よ」

「なるほど！」

「それで私はどういう役柄なんですか？」

「あずささんは……えっと……」



あずさは律子の微妙な雰囲気で、全てを察した。



「もしかして……死体役ですか？」

「ご名答です」

「そんな～」

律子が真に紙をを差し出す。



「一応ここに台本というか企画書はあるけど……」

「どれどれ？　あずささんは死体役で、ボクの役はと……って星井美希？」



あずさと真は、一瞬動けなかった。



「今ならまだ断れるけど……」



と律子は言った。

こういうイベントは毎年やるので、今回受ければ来年も仕事が回ってくるだろう。

一度断れば、二度と回ってくることは無い。

正直、事務所の経営状態からみれば、是非受けたい所だ。

真はあずさに目線を送った。

あずさはその目線にうなずいた後に、律子の方を向き答えた。



「受けましょう」



律子は眼鏡を押し上げながら答えた。



「ありがとうございます。詳しいことはまた後日に」



先方に連絡をしてくると言い、律子は席を立った。

>>12
お前が何言ってるんだって話だageてまで言うことか

──



「うーん、クリスマスかぁ……」

「どうしたの？」

「いやぁ、２４、２５日でどこかへ行こうって話をしてたんですよ」

「そういえば２４日は雪歩ちゃんの誕生日だったわね」



真は横目であずさを見る。



「大丈夫ですか？」

「もう過去のことですもの」

「あずささん……」



──星井美希はかつて同じ事務所に所属していた仲間だったが、

大手のプロダクションに引き抜かれていった。

現在は女優業やモデル業などで活躍し、知らないものはいない程の有名人だ。

「なんで美希はこの仕事を受けたんだろう」

「ふふっ、美希ちゃんの事だから何も考えてないのかもしれないわね」

「確かに……」



真は足を止める。



「それじゃあボクは少し走っていくので、また」

「気を付けてね」

「はい！　あずささんも迷子にならないように気を付けて下さいね！」

「あらあら～」



あずさは笑って答えるが、その笑顔は少し寂しそうに見えた……

※若干の百合描写あり

────



──唇にやわらかい感触が重なった。

触れ合うだけの軽いキスだったが、顔が赤くなるのがわかる。



「んっ……千早ちゃん……」



春香の熱い吐息が漏れる。



「もうこんな時間ね。時間は大丈夫？」

「そろそろ終電かも……」



人気のない夜の公園から歩き出す。



「春香。ありがとう」

「私もだよ……千早ちゃん」



まだ出会って数えるほどだったが、きっかけはどちらでも無かった。

千早はこの出会いに感謝していた。

────



「ごめん雪歩。クリスマスに仕事が入っちゃって……」



真は同居人の萩原雪歩にクリスマスの仕事について説明していた。

そして旅行に行けなくなったことも。



「お仕事だからしょうがないよ。──気にしないで？」

「ごめん」

「でも誕生日は一緒にいて欲しいな？」

「もちろんだよ」



雪歩は、真と自分の分のお茶をいれながら、にっこりと微笑んだ。

「美希ちゃんとは久しぶりじゃない？」

「確かにそうかも」



萩原雪歩も、元７６５プロのアイドルであった。

真と同い年で、アイドルを引退した後は、こうして真と一緒に暮らしている。



「それじゃあ、そろそろ寝ようか」

「うん」



──唇が重なった。

────



「ふぅ……」



三浦あずさはとある喫茶店に来ていた。

星井美希とよく来ていた店。

美希はこの店のキャラメルマキアートが大好物だった。



だが昔の話だ。今さら会って何を話すのだ。

しかも、今この場に来る保証もない。



──あずさは、まだ心のどこかで、美希への気持ちがあることに気づいていた。

当時、あれだけ自分を慕っていた子に……。

纏まらない考えを珈琲を飲んで落ち着かせる。



「──いらっしゃいませ」



店員の声が聞こえ、ふと顔を見上げると、美希が入ってくるのが見えた。

美希は一人では無かった。もう一人は顔を伏せ加減にしていたが……。

二人は、あずさに気づくことも無く、奥の席へと向かって行った。



美希は、連れの女性に軽くキスをした。



「また連絡するの！」



会計を済まし、美希は店を出て行った。

あずさはそれを追わずに、残った女性を眺めていた。



女性は罪の意識があるかの様に、伏し目がちだった。

あずさは声をかけるべきか、迷っていた。



その女性、　──萩原雪歩に。

雪歩の事は、あずさも、もちろん知っていた。

だが、なぜ美希と……。



雪歩は、力なく立ち上がり、ゆっくりと出口に向かって歩いていた。

だがそこで視線が交差した。



「……雪歩ちゃん」



雪歩は店の外へ飛び出し、人ごみの中へ消えていった……。

アイマスやる必要なのか？もはや、ただの糞スレ

────



部屋の一室から、大きな声が響いている。



「なんなのよ！　美希のやつ！」



水瀬伊織は激しい口調で言った。



「双海真美だったかしら？　手当たり次第ね、アイツも」

「伊織ちゃん……」

「覚えてなさい。私を怒らせたことを後悔させてあげるわ」

俺は面白いと思うぞ
続き期待

>>29
日本語が不自由過ぎてワロタ

────



「どうやって殺しましょうか……」

「ナイフで──」



天海春香はデジャヴを感じていた。

「前にも聞いたことがある」、「ここは前に来たことがある」等のアレだ。

何か月か前にも同じ場所で、同じような会話を聞いた。

──殺人の計画だ。



とは言っても、あの時の会話は、このホテルで行われる“クリスマス・ミステリーツアー”の話だ。

それに、そのうちの一人は、現在春香が待っている如月千早なのだ。



まさか本気で人殺しの相談などするなんてことは……。

「遅れてごめんなさい」

「気にしないでいいよ」

「ありがとう」

「なんか疲れてるね」

「星井美希と会ってたのよ」



菊地真、三浦あずさという春香の好きな役者が出るのは聞いていたが、

それに星井美希も出るのか。



「それで、２４、２５日で泊まりたいって言ってたのよ」

「混んでるんじゃない？」

「なんとかするわ」



千早は今回のイベントの担当なので、多少の融通がきくのだろう。

「春香の分も予約取るわよ？」

「う～ん、確かに予定は無いけど……大丈夫なの？」

「平気よ」



千早が悪戯っぽく笑う。

クールに見えて、案外お茶目なのだ。



「──それに、何か面白いものが見れるかもしれないわよ」

────



高槻やよいは汗だくになっていた。



「ごめんなさい、伊織ちゃん」

「遅いわよ」

「ちょっと迷っちゃって……」

「全く……。早くオレンジジュース頂戴！」

「う、うん！」

「やっぱり１００％に限るわね！　にひひっ♪」



そこまで怒っていないのだろうか。

やよいは少しだけほっとしていた……。

────



『はぁ……胸が痛いわ……』

『落ち着いて』

『アンタは良いわよね』

『お互いさまよ』

────



「今日ね、社長と話したのよ」

「え？」

「アンタのことよ。今日限りでクビ」



伊織はそう告げながら、ソファで足を組む。



「……冗談だよね？」

「仕事は遅いし、よく失敗する。他にも理由は──」



高槻やよいは伊織のマネージャーで、あまり裕福では無い家庭を支える為に働いている。

特に、自分とそう年も変わらない伊織とは、ある種の親友のような関係であった。

「全く……アンタといい、美希といい……」



「……やっぱり美希さんのこと」

「え？」



美希の事へのあてつけなのか……。

やよいの中で何かが音を立てた。

座っている伊織の腕を掴み、強引に伊織の唇を塞ぐ。



「──ちょっと！」

「伊織ちゃんは、まだ美希さんのことが……！」

「そ、そんなんじゃ……」



再び伊織の唇を塞ぐ。

──どれくらい時間が経ったのだろう。

やよいはふと我に返る。



「やよい……アンタ……」

「伊織ちゃん……」

「ふぅ……お腹が空いたわね。どこか食べに行きましょうか」



やよいは呆然と立ち尽くしていた。



「──どうしたの？　良いお店でも探しなさいよ。この伊織ちゃんのマネージャーなんだから」

「う、うん！」

「その間に社長に電話しないとね。やっぱりマネージャーはやよいじゃないと、ってね」



やよいは呆然としていたが、すぐに近場のレストランを探し始めた。

────



「あずささん……」

「こんにちは、雪歩ちゃん」



少しの沈黙の後に、雪歩が口を開いた。



「……もしかして、私と美希ちゃんのことですか？」

「そうね」

「断りきれない私が悪いんです」



初冬の風が少し痛い。



「今度、仕事が一緒なのよ。このままだと雪歩ちゃんも真ちゃんも辛くなるわよ」

「……わかってます」

「たぶん、美希ちゃんはあまり深く考えてないしね」



あずさは立ち上がった。



「そろそろ撮影の時間だから、行くわね」

「……はい」

凄い続きが気になる

────



「おねーちゃん誰？」



とある事務所の応接室を通りかかった双海真美は、座っている女性に声をかけた。



「……７６５プロの秋月律子です」

「ふーん。じゃあ律っちゃんだね！」

「律っちゃん！？　まぁ、いいわ……」



律子は呆れた様子で答える。



「律っちゃんは何でここにいるんだい？」

「星井美希さんに用事があるのよ」

「なんだ。ミキミキかぁ」

「あなた、最近よく美希と一緒にいる子よね？」

「真美的には、もうあんまり一緒にいたくないんだけどね→」



先程までとは違い、真美のテンションが落ちる。



「……どうして？」

「ミキミキはいっつも真美にくっついてくるんだＹＯ！　真美はもう一人でやっていきたいのにさ！」

「なるほど」

「それに……って律っちゃん！　もしかして！」

「ふふっ、興味あるの？　なら電話番号を渡しておくわ」

「うん！」



ガチャリとドアが開く。



「律子っ！　久しぶりなの～！」

「律子“さん”でしょうが。　全くアンタは……」

「ごめんなさいなの……」



元同じ事務所の仲間との再会で喜ぶ美希だが、

当時の上下関係は変わらないままであった。



「そういえば、どうして真美がここにいるの？」

「な、なんでもないよーん！」

「ふーん。それより律子、さん！　ミキね──」

────



「クリスマスって空いてたわよね？」

「予定は入ってないけど……なんで？」

「せっかくだからホテルでディナーなんてどう？」

「はわっ！」

「といっても、もう予約取ってあるんだけどね。にひひっ」



伊織はそう言いながら笑うと、手を伸ばしてくる……。

────



「うー、寒いなぁ」



菊地真はドラマの撮影に来ていた。

今は出番待ちで、屋外で待たされている。

機材トラブルがあって、これから更にどれだけ待たされるかわからない……。



「菊地真殿」



寒さで手を擦りながら立っていると、声をかけられる。

出番待ちか？　と思い見てみると、どこかで見た事のある顔だった。



「四条です」



確か、社長の知り合いがいる所の若手記者だ。

名前は、確か……四条貴音！



「どうも、こんにちは」

「お久しぶりですね」

「どうしたんですか？」

「少し、お話が……」



貴音が少し身をのり出す。



「星井美希と萩原雪歩の事です」

「え？」

「二人が逢引きしているという噂を聞きました」



真の顔色が変わる。



「……ははっ、前に同じ事務所だったから、偶然じゃないですか？」

「そういう間柄では無さそうです」

「う、噂なんですよね？」

「目撃したという情報も何件かあるので、おそらく事実でしょう」



まさか雪歩にまで……。

真は血の気が引き、体中の力が抜けていくような感覚に襲われた。

「とりあえずこの件は押さえておくので、記事にする事は無いと思います」



真は無言で肯く。



「一応……と思い、お伝えしたのですが……大丈夫ですか？」

「は、はい」

「そうですか。また何か分かり次第、連絡したいと思います」

「……よろしくお願いします」


真は力なく答える。

何もかもを捨てて、逃げ出してしまいたかった。

──



「どうしようかなぁ」



帰れば雪歩と顔を合わせるし、もうすぐクリスマスには美希とも顔を合わせる。

多分、美希は何食わぬ顔で話しかけてくるだろう。そういう子なのだ。

色々な考えが交差し、気がどんどん重くなっていく。



「あの……」



突然の若い女性からの言葉に、真は困惑した。



「は、はい？」

「菊地真さんですよね？」



真は、面食らった。

「そ、そうですけど」

「あのドラマとかよく見てます！　真さんと三浦あずささんも！」



女性はさらに続ける。



「実はアイドル時代のＣＤも持ってるんですよ！　“自転車”とか“まっすぐ”とか！」

「ありがとう。嬉しいよ」



真は照れながら答える。



「あっ……いきなり話しかけてごめんなさい！　お仕事中ですよね？　その、頑張ってください！」



頭にリボンを付けた女性は足早に、向かいのホテルへ歩き出した。

真は、ポカンとして見送った。

「菊地さん、お待たせしました！　出番です！」

「はい！」

「気合たっぷりですね」



真は、さっきのリボンの女性の言葉を思い出していた。

応援してくれてるファンがいるのだ。



気が重い？　逃げ出したい？

そう思っていた自分を恥じていた。



そして、目の前の事はきっちりやっていこうと胸に誓った。

────



クリスマス・イヴ。

二人は家でささやかな誕生日パーティーを開いた後、

真はシャワーを浴び終えたところだった。



「真ちゃん、電話が鳴ってるけど……」

「誰から？」

「えっと、四条さんという方だけど」

「……四条」



真は裸にバスタオルを巻きつけただけで、電話に出た。



「もしもし？」



──そのまま部屋の奥へ向かう。

「雪歩は入らないの？」



と、パジャマ姿の真が戻ってくる。



「うん。すぐ入るね」



──雪歩は、湯船に浸かりながら、両手を覆っていた。

真が平静を装っているが、様子が少しだけ違う事に気づいていた。

たぶんバレているのだろう。

自分が断れないばかりに、真を傷つけた。



なんて愚かな事をしてしまったのだろうか……。

──



「今日は遅くなると思うから」

「うん。気を付けてね」

「雪が降ったら、どうやって帰ってこようかなぁ……」

「私が迎えに行くよ。何があっても、絶対に」

「え？」



真は面を食らっていた。──雪歩は、そうか。



「あ、あのね！　真ちゃん」

「……それじゃあ、行ってくるよ」



足早に出ていく真の足跡が、遠ざかる。

雪歩はその場で崩れ落ち、静かに泣いていた。

────



ホテルのロビーは人で溢れかえっていた。

チェック・イン待ちの行列が出来ていたのだ。

天海春香は、その様子を見ながら、ラウンジで紅茶を飲んでいた。



「いらっしゃい」



如月千早が涼しい顔でやってくる。



「千早ちゃん、忙しいんじゃないの？」

「私は今のところ平気だわ。イベントの準備もあるし」



千早が上衣のポケットからルームキーを取り出す。



「フロントも通さなくていいわ。──それじゃあ、後で部屋に寄るわね」



千早はニッコリ微笑んで、足早に立ち去った。

ああ言っていたが、相当忙しいだろう。

その優しさが、とても嬉しかった。

────



「もしもし？」

「今は部屋に一人なの？」

「うん」

「そう。──それじゃあ、また後で」



双海真美は心臓の高鳴りを抑える事が出来なかった。

今夜がクリスマスだという事を忘れてしまうほどに……。

────



「──つまり、自分の部屋にある手掛かりをヒントに、まずは双海真美さんのいる“３１５”号室に行く。

そこで再び手掛かりを探して、死体役──三浦あずささんのいる“３４６”号室へ向かう」



打ち合わせは、張り詰めた空気の中で行われていた。



「そして探偵役の星井美希さんと一緒に推理を進めて、犯人役である菊地真さんを見つけるというわけです。」



如月千早が段取りの説明をする。



「３４６号室ってスイートルームなのね。死体役じゃなくて普通に泊まりたかったわ～」



三浦あずさがおどけて言う。



「開始は何時でしたっけ？」

「今から２時間後ですね」

「じゃあ、まだゆっくり出来るね！　あっ、でも少しのどがかわいっちゃったなっ！」

「すぐご用意しますね」



千早が飲み物を用意するために席を立つ。

「それにしても、みんな久しぶりなの！」



と美希は屈託のない笑顔で言う。



真は、少し間を置いて、答える。



「そうだね」



あずさは、じっと美希を見ていた。

美希は、深い意味も無く本気で旧友との再会を喜んでいるのである。

その“無邪気さ”は危険ですらあった。時に、殺意すら、呼び起こしかねないほどに……。



「それでは打ち合わせを再開しましょうか」



如月千早が言い、再び打ち合わせが始まった。

なんだ…この糞スレは…見る価値無し

百合しね先輩は無視して下さい

────



ミステリーツアーの開始まであと一時間。

美希が部屋でくつろいでいるところに、ドアをノックする音が聞こえる。

おそらく真美であろう、と思っていた。



「今、開けるの」



美希はドアを開けて、固まった。



「中々の部屋ね」



水瀬伊織は勝手に入ってきながら、そう言った。



「でこちゃん……どうしてここに？」

「ここの支配人とは親しいのよ。で、アンタも泊まっているいうから、わざわざ来たんじゃない」

「ミキはお仕事で──」

「双海真美だったかしら？　相変わらず、所構わずで手を出してるのね」



さらに続けて言う。



「それに萩原雪歩。噂になってるみたいよ。　──前の仲間なんでしょ？　

そんなことばかりやっていると、いずれ後悔するわよ？」



伊織は、にっこりと笑ってドアを開け、「邪魔したわね」と、出て行った。

────



「ねぇねぇ！　この封筒なんだろう？」

「挨拶状とかじゃないのか？」



双海亜美は封筒の中のカードを取り出し、読み上げる。



「えっとねぇ……ミステリーツアー？　事件を解決すればホテル代も全部タダだって！」

「へぇ！　おもしろそうだな！」

「まずは部屋の手掛かりを探せ──だってさ！」

「さっき見つけたんだけど、もしかしてこれか？」



我那覇響はコースターの裏に書かれた文字を見せた。



「さすがひびきん！　えっと“３１５”だってさ！　部屋番号かな？」

「たぶんそうだぞ！　行ってみるさー！」

「おー！！」

────



春香は、部屋に届いたルームサービスの食事を終え、窓の外を眺めていた。

一人で食べる食事は寂しかったが、仕方が無い。

するとドアのチャイムが鳴った。



「はい？」

「お届けものです」



ドアを開けると、千早が立っていた。



「メリークリスマス、春香」

──二人の唇が重なった。



「外は雪なのね」

「本当だ」

「ねぇ、春香。もし、この後で時間が出来たら──」



電話が鳴った。「野暮な電話ね……」



「どうしたの？」

「仕事みたいね。イベントの様子を見に行かなくちゃ」



千早は軽くキスをすると、



「ごめんなさい。また後で」



と、出て行こうとした。



「待って、千早ちゃん！　私も行っていい？」

「春香も？」

「うん！　邪魔しないから！」



春香は千早の手をとった。

百合死ね関係なく糞スレじゃん

────



「私も、そろそろ前に進まなきゃね」



あずさは、大きな鏡に写った自分を見つめていた。

なぜか、自分でもわからないが、美希への思いが吹っ切れたような気がした。

逢う前までは、未練があったのは確かだが、実際逢ってみればなんでもない。



美希があちらこちらに手を出すのも──いや、女とはそういうものなんだろう。

女は、すぐに吹っ切ることが出来る生き物なのだ。



雪歩もそのうち気づくだろう。

彼女には他に大切な人もいる。



そして、自分にもいつか運命の人が現れると……。



──ふとドアのチャイムがなる。

もう時間なのだろうか。



「はい？」



と、声をかけながらドアを開ける……。

続き書いてもええんやで