山奥
爺「ほう…小僧、その歳で冗談が言えるのか」
少年「俺は本気だ!」
爺「本気と言われてもなぁ」
爺「何故、ワシに弟子入りを?」
少年「じいさん、めちゃくちゃ強いらしいな」
爺「見ての通り、ただの老いぼれじゃよ」
少年「いや、強い!」
爺「そこまで言い切る根拠は?」
少年「眼だ」
爺「なんじゃと…?」
少年「じいさんの眼は強い奴の眼だ」
少年「……俺には分かるんだ」ギリッ
爺「ふむ…」サスリ
爺(よほどの強敵に出くわしたようじゃの)
少年「頼むよ、じいさん!」
爺「そうじゃのう…小僧、名はなんと言う?」
少年「俺に名前はないよ…」
爺「名前がないとは、まったく哀れな小僧よ」
少年「くっ…」
爺「ではワシが名前をつけてやろう」
爺「お主の名は、少年と名付ける」
少年「そのまんまじゃんか!」
爺「ほっほっほ、良い名じゃろ?」ニコ
爺「さて、少年よ」
爺「まずは、お前さんの実力を見せてもらおうかの」
少年「お、おう!じいさんと闘えばいいのか?」
爺「いや、闘うのはワシではない」
少年「?」
爺「出てきなさい」
少女「……………」サッ
爺「この子は少女と言ってな、ワシの一番弟子じゃ」
少年「一番弟子?!」
爺「歳もお主とは変わらんようじゃな」
少女「……………」ジッ
少年(可愛い子だなぁ)
爺「まずは少女と闘ってみよ、ほれ…これを貸してやる」ブン
少年「おわっ?!」ガシ
少年「木刀…?」
爺「少女も剣を取りなさい」
少女「はい、お爺様」スッ
少年(相手は女の子だし、見るからに弱そうだなぁ)
少年(俺は、じいさんと闘いたいんだけど…)
少女「あの、お爺様」
少女「手合わせする前に一つ確認したいことが…」
爺「ふむ、何じゃ?」
少女「どこまでやってよろしいのでしょうか…」
少女「その、殺してしまっても構わないのですか?」
少年「……………は?」
爺「ほっほっほ、そうじゃのう…殺す気で相手なさい」
少女「…わかりました」
少女「よろしくお願い致します」ペコ
少年「えっ、あっ!よろしくっ」ペコ
爺「準備は良さそうじゃな」
爺「では、始め!」バッ
少女「……………」ググ
少年(来る!)バッ
少女「……………」ダンッ
少年「はやっ?!」
少女「はっ!」ドス
少年「かはっ!」
少年「このっ!」ブン
少女「……………」スッ
少年「おりゃ!」ブン
少女「……………」スッ
少年(くそ!何で当たらねぇんだ)ブンブン
少女「終わりです」ドスドスドス
少年「ぐえっ…」バタ
爺「………勝負ありじゃな」
───
──
─
少年「んあ…?」パチ
少年「っ…どこだここ…」
少女「大丈夫…ですか?」
少年「えっ、あ…あぁ」
少女「かなり強く突きましたから、まだ体が痛むのでは?」
少年「俺は男だぞ?あれくらいで…」ズキ
少年「っ~!?」
少女「もう暫く、安静にしていて下さい」スッ
少年「それにしても、お前スゲー強いな!」
少女「いえ、そんなこと…」
少年「強いし速いしかっこ良かった!」
少女「か、カッコいい…?」
少年「俺も早く強くなりてぇ」
少女「…どうして強くなりたいんですか?」
少年「……………」
少女「ごめんなさい、余計なことを…」
少年「強くなきゃ誰も守れないだろ?」
少女「……………」
少年「誰かも自分自分も…」
少年「あっ、傷の手当てありがとな」ニッ
少女「いえ…」
少年「これからよろしくな、少女!」キュッ
少女「あっ…///」カァァ
少年「ん、どうした?」
少女「…よろしくお願い致します//」ドキ
爺「何をイチャついておる」
少女「お、お爺様?!」
少年「あっ、じいさん!」
爺「少年よ、お主の力量は見た」
爺「ワシについて来なさい」
少年「おう!」スッ
少女「あっ…」
少年「じいさん、どこ行くんだよ」
爺「今日の晩飯を捕りにいく」スタスタ
少年「狩りでもすんのか?」スタスタ
爺「まぁ、そうじゃな」
爺「お主もいずれはすることじゃ」
洞窟
少年「それで何を狩るんだ?」
爺「丁度出てきたようじゃな…」
熊「……………」ノシ
少年「く、熊?!」
爺「ふむ、随分と大きくなったのう」
少年「じいさん!あんな熊、どうやって狩るんだよ!」
爺「まぁ、お主はここで見ておれ」スタスタ
少年「お、おい!じいさん!」
熊「グォォォ!!」
爺「ほっほっほ、威勢がいいのぉ」カチャ
少年(日本刀?まだ使ってる奴いたのか)
爺「ワシと一つ勝負といこうじゃないか」
爺「この老いぼれた体」
爺「上手くはなかろうが、多少は腹の足しにはなるじゃろう」ニコ
熊「グォ!グォォォ!」ダンッ
爺「……………」スッ
熊「!!」ダンダン
爺「……………」
少年(じいさん、何で刀抜かねぇんだよ!)
少年(このままじゃ!!)
熊「ガァァァ!」ブン
爺「……………」
少年「じいさ────」
爺「……………」ヒュン
ズバッ!
王道wktk
支援
熊「────」ドサッ
爺「ふむ、まだ腕は鈍っておらんようじゃの」
少年「……………」スタスタ
少年「なぁ、じいさん」
爺「なんじゃ?」
少年「あんた、いつ刀を抜いたんだ?」
爺「さて、いつじゃったかのぅ」
爺「年寄りはすぐに忘れてしまうからの」
少年「……………」
少年(見えなかった…)
───
──
─
夜 爺の家
少年「うめぇ!熊鍋うめぇ!」ガツガツ
少女「あの、おかわりはありますのでそんなに急がなくても…」
少年「お前、料理も出来るんだな!」
少女「多少ですけど」コクン
爺「ほっほっほ、少女は間違いなく良い嫁さんになるわい」グビ
少年「あぁ、間違いねぇ!」ニッ
少女「お、お嫁さ…///」
少女「っ~!//」チラッ
少年「むぐむぐ」モグ
爺「さて、少年よ」
爺「お主にこれからしてもらいたいことがある」
少年「ごくっ!してもらいたいこと?」
爺「そうじゃ、これは修行だと思え」
少年「お、おう!それで何をすればいいんだ?」
爺「見極めよ」
少年「…ん?」
爺「ありとあらゆるものを見極めるのじゃ」
少年「具体的に頼む」
爺「言葉通りじゃ」
少年「……………」
───
──
─
翌朝
少女「よろしくお願い致します」ペコッ
少年「よろしくお願いします」ペコッ
爺「…始め!」
少年「うぉぉ!」ダッ
少女「……………」スッ
カンッ カンッ バキ
少年「くっ!おりゃ!」ブン
少女「……………」タン
少年(後ろに下がった!)
少年「逃がすかぁ!!」ダッ
爺「…勝負あったかのぅ」フゥ
少女「……………」キッ
少年「!!」ゾワ
カンッ!
少年「なっ?!」グラ
少年(体勢が…!)
少女「はぁぁ!」ヒュン
ドス ドス バキッ!
少年「ぐへっ!」ドサッ
爺「そこまで!」
少年「いてて…」
少女「大丈夫ですか?」ピト
少年「うっ…へーきへーき!」ニッ
爺「お主、ワシが言ったことをもう忘れおったのか?」
少年「見極めるってやつか?」
少年「あれだけじゃ、わかんねぇよ!」
爺「…そうか」
爺「少女よ、もう一度少年と手合わせを」
少女「はい、お爺様」
爺「少年よ、お主は剣を持たなくたて良い」
少年「は?じゃあ、どうやって闘えばいいんだよ」
爺「お主はひたすら少女の攻撃を避けてみよ」
少女「行きます」スッ
少年「こい!」
少女「……………」ダッ
少女「はっ!」ブン
少年「!」
バキッ
少女「せいっ」ヒュン
ドス バキ メキ
少年「かはっ!」ビチャ
少年(ダメだ、全然避けれね)
ドス ドス ドス
少年「くぅそぉ!!」ギリッ
少女(これで!)ヒュン
少年「っ!」バッ
少女(かわされた?!)
少女「はぁぁ!」クルッ ブン
少年「なっ?!」
バキッ
少年「いってー!!」ドサッ
少女「はぁ…はぁ…」
少年「くっ…そ!」ググッ
少年「もう一回だ…!」
少女「で、でも…」
少年「頼む!」
少女「…わかりました」スッ
少年「絶対、強くなってやる」
爺「……………」
───
──
─
夜
少年「げほっ…はぁ…」ボロッ
少女「はぁはぁ…」
爺「今日はここまでじゃな」
爺「今回はワシが晩飯を用意しよう」スタスタ
少女「お爺様…!」
少年「……………」
少女「…私も行きますね」スタスタ
少年(まだ動けんのかよ…)
ガサ
少年「…ん?」
少年「じいさん?少女?」
ガサガサ
少年「っう…」ググッ
ガルルル
少年「?!」
野犬「ハッ…ハッ…」ペロ
少年「い…犬?」
野犬「ガルルル」バッ
少年「マジかよ!」ブン
野犬「!」ヒョイ
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