的場梨沙「飛鳥の短冊の中身を知りたい」 (21)
梨沙「よ…う…に…っと」
梨沙「よし、書けた!」
飛鳥「七夕の短冊か」
梨沙「事務所の笹に飾るやつよ。願いが叶うようにきれいな字で書いたの」
飛鳥「へえ。それで願いは?」
梨沙「パパに超カワイイって言ってもらえますように!」
飛鳥「フフ、キミらしい願い事だ」
梨沙「ちょっとー、バカにしてない?」
飛鳥「してないさ。親を慕うことは何も悪いことじゃない」
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梨沙「飛鳥はもう書いたの? 七夕の願い事」
飛鳥「あぁ。もう飾りつけてあるよ」
梨沙「なんて書いたの?」
飛鳥「……ヒミツだ」
梨沙「えー? なによそれ」
飛鳥「悪いね。でも、こういう願いはあまり人に言いふらしたくはないんだ」
梨沙「じゃあヒント! ヒントちょうだい」
飛鳥「ヒントか」
飛鳥「願いは、記した時から目標に変わる。だから、夢を書くのさ……こんなところかな」
梨沙「……あいっかわらずわけわかんないわね」
飛鳥「そういう性分なんだ」
数時間後
梨沙「飛鳥は仕事に行ったわね」
梨沙「でもひとりで探すのは疲れるかも……っと、ちょうどいいところに」
梨沙「晴、ありす! ちょっと手伝ってくれない?」
晴「?」
ありす「なんでしょうか」
梨沙「――というわけで、飛鳥の短冊を探してほしいのよ」
晴「ふーん。けど、人の願い事の中身を勝手に見るってのもなあ」
梨沙「笹に飾ってるんだからいいのよ。たまたま目に入る可能性だってあるわけだし」
梨沙「コーカイジョーホーってやつよ」
ありす「公開情報……少し使いどころが違う気もしますが」
梨沙「それに、アンタ達も気にならない? あの飛鳥が七夕に何をお願いしたのか」
晴「……それは、まあ」
ありす「気にならないと言えば、嘘になります」
梨沙「ならいいじゃない、ね? 怒られたらアタシのせいにしていいから」
晴「しょうがないな」
ありす「では、飛鳥さんが戻って来る前に終わらせましょうか」
梨沙「うーん、ないわね……」
ありす「もっと上の方でしょうか」
晴「あっ! あったぞ!」
梨沙「本当!?」
晴「おう、ほら。他の短冊に隠れてるけど、奥の方に飾ってある」
ありす「いちいちこんな入り組んだ位置につけるとは……」
梨沙「よっぽど見つかりたくなかったのかしら」
梨沙「それで、なんて書いてあるの?」
晴「どれどれ」
『退屈のない日常を……だが、日常とは少なからず退屈を含むから日常と言うのか。そうするとボクが求めるのは非日常? いや、それらすべてを内包したセカイかな 二宮飛烏』
梨沙「字ちっちゃ!」
晴「よくこの紙一枚にこれだけ書きこんだな……」
ありす「これ、前半の文章必要なんでしょうか。最後の一言だけではだめだったんでしょうか」
梨沙「でも、あんまり驚くような内容じゃないわね」
晴「他の人の短冊ならともかく、飛鳥のだもんなあ」
ありす「………」
梨沙「まあいいわ。目的は達成したし、作戦完了ってことで」
ありす「待ってください。まだ、終わっていません」
晴「え?」
ありす「なぜなら、この短冊は飛鳥さんのものではないからです」
梨沙「何言ってるのよ。ちゃんと飛鳥の名前が書いてるじゃない」
ありす「いえ。よく見てください」
晴「よく見ろって……」
『退屈のない日常を……だが、日常とは少なからず退屈を含むから日常と言うのか。そうするとボクが求めるのは非日常? いや、それらすべてを内包したセカイかな 二宮飛烏』
晴「やっぱり飛鳥の……ん?」
梨沙「これ、最後の鳥の字が線一本足りない?」
晴「書き間違えたんじゃないか?」
ありす「これは『鳥』ではなく『烏』。ちゃんと正しい漢字として存在しています」
ありす「つまりこの短冊は、『にのみやあすからす』さんの短冊ということです」
梨沙「でも、結局晴の言う通り、単に間違えただけなんじゃ」
ありす「中学生にもなって、何度も書いているはずの自分の名前を書き間違えるでしょうか」
梨沙「うーん……そう言われるとそうね」
晴「鳥って、画数多いけどそこまで難しい漢字じゃないしな」
ありす「私はこう考えます。これは飛鳥さんの用意したフェイクの短冊だと」
ありす「おそらく、本当の願い事を書いた短冊が別にあります」
ありす「私達が自分の短冊を探そうとするのを予測して、罠を張っていたのではないでしょうか」
晴「なんだって?」
梨沙「けど、それならわざわざ名前を間違える必要なくない?」
ありす「『短冊はひとり一枚』というルールがPさんから伝えられていたはずです。フェイクの短冊に別人の名前を書くことで、そのルールを一応守ったことにしたんだと思います」
梨沙「確かにそれなら筋が通るわね」
晴「すげーな橘! 名推理だぜ!」
ありす「それほどでもありません」フンス
晴「そうなると、本物の短冊がまだどこかにあるってことだな」
ありす「はい。問題は、この大きな笹のどのあたりにあるかということですが……」
梨沙「それなら、だいたいの予想はつくわ」
梨沙「さっきまで下の方から探してたけど……よく考えたら、飛鳥の好きそうな場所と言えば……あそこよ!」ビシィッ!
晴「そうか、高いところ」
ありす「妥当な推理ですね」
梨沙「よし、そうと決まれば!」
心「なんではぁとがこんなことを……」
ありす「近くにいたので」
晴「オレ達じゃ肩車しても上まで届かないしな。おーい梨沙、見つかったか?」
梨沙「まだー! ハートさん、右に動いてくれる?」
心「まだー? そろそろ疲れてきちゃった☆というかマジ辛い☆」
梨沙「もうちょっとで一周するから……あっ」
心「あったの?」
梨沙「うん、あった! 今度はちゃんと二宮飛鳥って書いてる!」
ありす「それで、内容は」
梨沙「えっと……あ」
梨沙「………」
晴「梨沙? どうかしたのか?」
梨沙「……いや、その」
心「さっさと言えって☆」
梨沙「あー、うん」
梨沙「『胸を大きくしたい。蘭子くらい』って書いてた」
晴「あっ」
心「あっ」
ありす「ユニット組んだことありますし、気にしていたんですね……」
梨沙「……なんとも言えない願いだし、見なかったことにしましょう」
晴「だな」
ありす「ですね」
心「飛鳥ちゃんはまだ成長段階だからいいよねー♪いやホント……」
しばらく経って
飛鳥「ただいま」
梨沙「………」
飛鳥「……? どうしたんだい、梨沙」
梨沙「だ、大丈夫よ飛鳥。まだまだ飛鳥は成長期だってハートさんも言ってたし!」
飛鳥「?」
夕方
梨沙「さよならー」
晴「じゃあな」
ありす「お疲れ様でした」
P「よし、みんな帰ったな……あれ?」
P「飛鳥? どうしたんだ、笹をじっと見つめて」
飛鳥「いや……もしかすると、短冊に書いたことを梨沙達に見られたのかもしれないと思ってね」
P「短冊? ああ……そういえばお前、わざわざ手の込んだ細工までして願い事を隠してたな」
飛鳥「本物を上の方へ隠すのはいい案だと思ったんだけどね」
飛鳥「まあ、本気で探されたらどうしようもないさ」
P「そうだな」
P「でも、飛鳥の細工はそれだけじゃないだろう」
飛鳥「え?」
P「罠はもうひとつあった。これを使った罠だ」
飛鳥「ブラックライト……なんだ、キミには全部バレていたというわけか」
P「変なこと書いてないか、全員の短冊をしっかりチェックしたからな」
P「普段は透明だけど、このブラックライトを当てることで、書いた文字が浮かび上がるペン。インビジブルペンとかブラックライトペンとか呼ばれてるやつだな」
P「飛鳥の短冊、妙にスペースが空いていたのと、うっすら文字が見えたから気づいたんだ」
飛鳥「市販の安物のペンだからね。完全に透明とはいかないか」
飛鳥「その通り。ボクの願いは、透明のペンで書いた二行の言葉」
飛鳥「今の仲間と、末永い縁を。そして彼らが満足のいく道を進めるように――だったかな」
P「その願いごと、見られるの恥ずかしかったのか?」
飛鳥「ボクの柄じゃないだろう」
P「そんなことはないと思うけどなあ」
P「でも、にのみやあすからすの願い事は叶えなくてもいいのか?」
P「退屈しないセカイってやつ」
飛鳥「あぁ。もちろんそれもボクの求めるモノだ」
飛鳥「けど」
P「けど?」
飛鳥「それは、キミが叶えてくれるだろうからね」フフッ
P「……信頼されてる? 俺」
飛鳥「応えてくれるとうれしい。よろしく頼むよ、ボクらのプロデューサー」
P「……おう、頑張るよ」
翌日
飛鳥「笹に短冊が追加されている」
『飛鳥の胸が大きくなりますように 結成晴』
『飛鳥さんの胸が大きくなりますように 橋ありす』
『飛鳥の胸が雫くらいになりますように 的場梨砂』
飛鳥「………」
飛鳥「気持ちはありがたいけど、少し恥ずかしいね」
おしまい
おつおつ
飛鳥君の七夕イベントのセリフが相変わらずアレだったので書きました
お付き合いいただきありがとうございます
ヘレンさんと言い自分の世界を持ってる人は書くことが違うな乙
見なかったことにとかいいつつ実質拡散する子供たちが地味に鬼畜だ
乙
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