梨沙「暑い」
飛鳥「暑いね……」
梨沙「エアコンの温度、下げられないの?」
飛鳥「集中管理」
梨沙「なにそれ」
飛鳥「早い話が、こちらでは調整できないということさ」
梨沙「はぁ〜……」
飛鳥「ふう……」
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梨沙「暑いならエクステ外したら?」
飛鳥「ボクのこだわりに反する」
飛鳥「たとえ大自然に比べて矮小な存在だったとしても、ささやかな自己主張くらいは許される。キミもそう思うだろう」
梨沙「アンタ、よくそれだけ大げさに言えるわね……」
飛鳥「フッ」
梨沙「別に褒めてないわよ」
飛鳥「理解っているさ。ただ」
梨沙「ただ?」
飛鳥「大げさに言ったほうが、やる気が出るだろう」
梨沙「……ちょっとわかるかも」
梨沙「アタシも真似しようかしら」
飛鳥「キミもやるかい? セカイへ爪痕を残すための」
梨沙「違うわよ」
梨沙「アタシにとって大事なのは、なんと言ってもパパ!」
梨沙「だからパパのために暑さを我慢するわ!」
飛鳥「暑さを耐えることと、キミのパパがどうつながるんだい」
梨沙「………」
飛鳥「考えていなかったか」
梨沙「そ、そんなことないし! すべての道はパパに通ずるだけだし!」
飛鳥「キミのパパはかつてのローマと同格か……」
梨沙「セニョリータ!」
飛鳥「それはスペイン語だ」
梨沙「あーあ。アタシ達が事務所で苦しんでる間に、プロデューサーとハートさんは海でバカンスでしょ? ズルい!」
飛鳥「バカンスではなく、撮影の仕事だけどね」
梨沙「どうせ自由時間があるんだから同じよ。昨日のハートさんの荷物見たでしょ」
飛鳥「水鉄砲やらイルカの浮き輪やら、仕事に必要ないものでぎっしりだったね」
梨沙「プロデューサーと二人きりになれるからはしゃいでたのよ、絶対」
飛鳥「Tulip歌ってたからね」
心『好きっ好きっ好きーすっ☆』
梨沙「歌詞間違ってたけど」
梨沙「はあ。なんか、海でいちゃついてるふたりを想像したら余計暑くなってきたわ」
飛鳥「二つの意味で?」
梨沙「そう」
梨沙「アタシもパパとバカンスしたいな〜!」
飛鳥「ふふっ……」
梨沙「飛鳥。そこの机の上のうちわとって」
飛鳥「うちわ? ああ、これか」
梨沙「そう、それ」
飛鳥「はい、とったよ」
梨沙「じゃあ、それ使ってアタシをあおいで」
飛鳥「……自分で扇ぐという選択肢は?」
梨沙「手が疲れるからヤダ」
飛鳥「………」
飛鳥「やれやれ。仕方ないな」スクッ
飛鳥「一応、ボクの方が年上だからね」スタッ
梨沙「………」
梨沙「ねえ、年上の飛鳥」
飛鳥「なんだい。きちんと扇いであげているだろう」
梨沙「そう、そうね。確かに扇いでる」
梨沙「それはいいんだけど。なんで今、自然な動きで扇風機の真正面を占拠したのかしら」
飛鳥「………」
飛鳥「特に意味はない」
梨沙「ないわけないでしょ!」
梨沙「大人げないわよっ」
飛鳥「オトナの仮面を被るのは、まだ早いんだ」
梨沙「ぐぬぬ……そこアタシの席っ!」グイッ
飛鳥「断る」フンッ
梨沙「ふんぬ!」グイグイ
飛鳥「………!!」グイグイ
梨沙「この……!!」
ガチャリ
仁奈「ただいま戻りやがりましたー……今日は暑いでごぜーますな」
飛鳥「………」
梨沙「………」
仁奈「? ふたりとも、どうかしやがりましたか?」
梨沙「仁奈。扇風機使っていいわよ」
飛鳥「ボク達は十分涼んだから」
仁奈「え? いいでごぜーますか?」
梨沙「いいわ」
仁奈「ありがとうごぜーます!」
ぶいいいん
仁奈「涼しいですよー」
梨沙「アンタ、さっきまであれだけ必死だったのにいいの?」
飛鳥「より扇風機が必要な人間に譲っただけさ」
飛鳥「キミこそ、いいのかい」
梨沙「アタシはオトナだからいいのよ」
飛鳥「………」
梨沙「なによーその目はー」
飛鳥「別に。ただボクは」
仁奈「やっぱりみんなで涼しくなるですよ!」グイグイ
梨沙「あ、ちょっと仁奈!?」
仁奈「こうやって首を振るようにすれば……ほら! 梨沙おねーさんも飛鳥おねーさんも涼しいですよ!」
飛鳥「仁奈……」
仁奈「えへへ」
飛鳥「……そうだな。意地を張る必要もないか」
梨沙「扇風機、3人占めね!」
仁奈「3人占めでやがります!」
飛鳥「梨沙。どうやら一本とられたらしい」
梨沙「そうね。今回は仁奈の勝ち」
梨沙「アタシ、暑さでイライラしてたわ」
飛鳥「ボクも」
梨沙「ほら、うちわ貸して。お返しで扇ぐから」
飛鳥「あぁ」
梨沙「アタシ扇ぐのうまいんだから。いつもパパに褒められてるし!」
飛鳥「それは楽しみだ。仁奈もそう思うだろう?」
仁奈「うん!」
梨沙「よーし……って、仁奈も扇ぐの!?」
飛鳥「ふふっ」
仁奈「Pとはぁとおねーさん、いつ帰ってくるです?」
飛鳥「明日の夕方ごろかな」
仁奈「明日……」
梨沙「おみやげ買ってきてもらわないとね!」
仁奈「おみやげ! ほしーですよ!」
梨沙「なにがいいかしら……」
仁奈「お菓子!」
梨沙「食べ物かあ。それもいいけど、形に残るものも魅力的ね」
梨沙「たとえば、宝石とか!」
飛鳥「せめてストラップくらいにとどめないと、Pは明日から断食することになるよ」
梨沙「それもそうね」
仁奈「ごはんが食べられないのはつれーです……」
梨沙「よし! 仁奈、おみやげ何にするか、今から相談して決めましょ!」
仁奈「おーっ!」
梨沙「飛鳥はどうする?」
飛鳥「ボクは、Pと心さんのセンスを信じることにするよ」
飛鳥「………」←本を読んでいる
梨沙「だから、レディーにふさわしいおみやげっていうのは――」
仁奈「仁奈はおいしいものが――」
飛鳥「………」ペラッ
梨沙「そういえば仁奈、今日は着ぐるみ着てないのね」
仁奈「ねっちゅーしょーになっちまうですよ」
梨沙「確かに」
飛鳥「………」ペラッ
梨沙「決まった!」
仁奈「でごぜーます!」
飛鳥「やっと決まったのか。短編集のひとつを読み終わるくらい時が経っているよ」
飛鳥「それで、なにを頼むの?」
梨沙「なんかセクシーな形したチョコレート!」
仁奈「おいしいやつ!」
飛鳥「……Pと心さんが頭を抱えそうなリクエストだね」
梨沙「あとは、これをプロデューサーに伝えるだけね!」
梨沙「飛鳥、ケータイ貸して。アタシ持ってないから」
飛鳥「悪いけれど、ちょうどタイミング悪く充電中だ」
梨沙「ええー? じゃあ仁奈は?」
仁奈「今日はうっかり家に忘れてきちゃったですよ……」シュン
梨沙「あちゃー」
ちひろ「携帯なら、私の物を貸しましょうか?」
梨沙「え、いいの?」
ちひろ「仕事用とプライベート用、2つ持っているので。プライベート用のほうなら、使っていいですよ」
梨沙「ありがと! さすがはちひろね!」
ちひろ「ただし」
仁奈「ただし?」
ちひろ「通話以外、いろいろ見ちゃダメですからね?」
梨沙「もともと見る気はないけど……見られたら恥ずかしいものとか入ってるの?」
ちひろ「そ、そういうわけじゃありません。はい、もちろん」
飛鳥「………」ジーー
仁奈「じーーー」
ちひろ「おっほん! とにかく、見ちゃダメです! 貸してあげますから!」
梨沙「さて、じゃあプロデューサーに電話するわよ」
仁奈「ちひろおねーさんのお話、気になるですよ」
飛鳥「誰にだって、不可侵の領域……見られたくないものはある。無粋な詮索……ええと、つまりは探してはいけないということさ」
仁奈「わかったですよ!」
梨沙「………あれ?」
飛鳥「どうかしたのかい」
梨沙「電波の届かないところにいるか、電源を切ってます、だって」
仁奈「P、出ないですか」
飛鳥「少し間をおいてかけ直してみればいい」
梨沙「そうね」
10分後
梨沙「………」
梨沙「出ない」
飛鳥「電源を切っているのかもしれないね」
梨沙「こうなったら、出るまでかけまくってやるわ!」
梨沙「5分おきくらいでいくわよ!」
その後
梨沙「1時間も出ないなんて……なにやってんのよ二人とも!」プンプン
仁奈「なにやってやがるですかー!」←とりあえず合わせて楽しんでいる
飛鳥「………」
飛鳥(ふと、気づいた)
飛鳥(梨沙が使っているのはちひろさんの携帯。つまり、Pが次に携帯を確認したとき――)
同時刻
P「」
心「う……うわぁ……! ちひろさんからものすごい数の不在着信が……!」
心「はぁとに付き合って遊ぶために、プロデューサーが携帯の電源を切ってくれた結果が……これ……」
P「」
心「この着歴絶対ヤバいやつ……はぁともフォローすっからはよ電話しなって……」
飛鳥(――というような事態に思われているのではないだろうか)
梨沙「もっかい! もっかい電話する!」
仁奈「電話しやがりますよーー!!」
飛鳥「………」
飛鳥「まあ、なるようになるさ」フッ
おしまい
おわりです。お付き合いいただきありがとうございます。
なんとなく劇場ネタ入れてみました
シリーズ前作:的場梨沙「父の日のプレゼントはアタシ!」
その他過去作
モバP「庶民派よしのん」
依田芳乃「趣味は石川集めでしてー」
などもよろしくお願いします
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