【艦これ】青葉「青葉、見ちゃいますから」 (22)
青葉「あれ? 伊勢さんも?」
伊勢「あー、うん。酷かった」
伊勢「敵さんも容赦ないよね」
青葉「沈没ですか」
伊勢「いや、着底」
伊勢「青葉は?」
青葉「青葉も着底です」
伊勢「なんとかしたかったんだけどねー」
伊勢「砲身も未だに空睨んでるし」
青葉「まだまだやる気ですねぇ」
伊勢「あっはは、そうだね。もう一発でもいいから、撃ちたかったね」
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北上「あー酷い目に遭った」
青葉「北上さん」
北上「もー散々にやられちゃってさー、大破で航行不能だよー」
北上「あたしも潮時ってやつー?」
青葉「そうですねぇ……それを言うなら青葉も、です」
青葉「青葉、動かす燃料もなかったんですよ?」
北上「まーこれもいいかな」
青葉「?」
北上「もう“あれ”を積んで出撃しなくてもいいんだよね……」
青葉「……あぁ……“あれ”ですか」
青葉「そう、ですね」
青葉「大淀さん」
大淀「……あら、青葉さん」
大淀「ごめんなさい、私、不甲斐なくて……」
青葉「ボロボロでしたもんね」
大淀「はい。この前の空襲での傾斜が……」
大淀「今度ので、とうとう転覆してしまいました……」
青葉「お疲れ様です」
大淀「……お疲れ様です」
青葉「貴方もですか」
榛名「はい、……榛名は大丈夫です」
青葉「沈んでませんよね?」
榛名「……大丈夫です。着底こそしましたが、まだ沈没ではありません」
青葉「青葉もですよ」
青葉「青葉は……ちょっと大丈夫じゃないかもしれません」
榛名「……」
青葉「……」
青葉「榛名さん」
榛名「っ……」
青葉「榛名さん」
青葉「……青葉、大丈夫じゃないです」
榛名「……はい……っ……榛名も、……大丈夫じゃ、ありませんっ……」
青葉「戦争、終わっちゃったみたいです」
北上「そーなの? ふーん、残念だなー」
青葉「そうは見えませんけど」
北上「なんでさ」
青葉「嬉しそうな顔してます」
北上「嘘ー?」
青葉「青葉、嘘は吐きませんから」
青葉「北上さん、今涙が出るほど嬉しそうな顔してます」
北上「……そっか」
青葉「はい」
北上「もー、やなとこ見られちゃったなー、もう」サラサラ
北上「こんなとこ見られたら、大井っちが大笑いするよ……っ」サラサラ
伊勢「やっぱ負けちゃったかぁ」
青葉「やっぱり負けちゃいましたね」
伊勢「もう少し戦いたかったなぁ」
青葉「……そうですね」
伊勢「あーあ、これでもうここも見納めかぁ」
青葉「……」
伊勢「もうっ……もうすぐ消え入りそうなのに……」ツツー
伊勢「涙、止まんないや……笑顔で、笑顔で終戦するって決めたのに……っ」ポロポロ
青葉「……」
伊勢「日向に……笑われちゃう……っ」ポロポロポロ
青葉「伊勢さん」
伊勢「何……?」グスッ
青葉「んー、えいっ」オモシロイカオ
伊勢「ぶふっ」
伊勢「もうー、何それーっ! 笑えるっ、泣きながら笑えるっ……!」
青葉「笑い泣きじゃないですか」
伊勢「もう……っ、ほんとに……笑えるわ……!」
青葉「日本、負けちゃいましたよ」
日向「まぁ、そうだろうな」
青葉「……気に、ならないんですか?」
日向「想像に難くない」
青葉「そうですか」
青葉「実は青葉、日本が勝つって信じてたんです」
日向「そうなのか?」
青葉「青葉、嘘は吐きませんから」
日向「……そうか」
青葉「……」
日向「……」
青葉「……嘘です。青葉、嘘吐いちゃいました」
日向「……」
日向「……まぁ、そうなるな」
利根「なあ、青葉」
青葉「はい」
利根「我輩もついに年貢の納め時というやつかな」
青葉「でしょうか」
利根「我輩も、伊勢も、日向も、榛名も、北上も、大淀も、出雲も、磐手も、……」
利根「天城も、葛城も、鳳翔も、龍鳳も、宵月も、梨も、樺も……お主もじゃ、青葉」
青葉「……」
青葉「……そうですね、青葉も、年貢の納め時かもしれません」
利根「……浮揚解体だそうじゃ」
利根「きっと、またお国の役に立てるぞ」
青葉「だと嬉しいんですけど」
青葉「榛名さん、消えちゃいましたね」
青葉「青葉達は、またこの世に現れることが出来るんでしょうか」
日向「さぁな……」
日向「さっき、梨と会ったよ」
青葉「まだ消えていなかったんですね」
日向「沈没したと言っていた」
青葉「幽霊なんじゃないですか」
日向「私達がそんなものだろう」
青葉「……まぁ、そうなりますね」
日向「そうなるな」
日向「伊勢もな、さっき消えた」
青葉「笑ってましたか?」
日向「あぁ、泣きはらした顔で、精一杯笑っていた」
日向「どこか懸命で、だが本当に笑っていたよ」
青葉「それは良かった」
日向「……お」サラサラ
青葉「あっ……」
日向「そうか、私もか……」サラサラサラ…
青葉「日向さん……」
日向「……まぁ、そうなるな」サラサラ…
日向「いずれ来る、順番のようなものだ」サラサラ…
青葉「……」
日向「航空戦艦の時代を見ることが出来なかったのは少し残念だが……」サラサラサラ…
日向「また、いつか会えるといいな」サラサラサラ…
サアー……
青葉「……日向さん」
青葉「北上さんも、大淀さんも、消えちゃいました」
利根「そうだな」
青葉「後は、梨ちゃんと宵月ちゃんと樺ちゃんと鳳翔さん……」
青葉「そして、青葉と、利根さんだけです」
利根「うむ……我輩も、近いうちに消えるのじゃ」
青葉「……そうですね」
利根「青葉、お主……」
利根「……まぁ、分からんこともない」
利根「我輩とて、まだまだこの世に未練はあるからな」
利根「だが、暫しの眠りじゃ。百万年もない、短い昼寝よ」
青葉「……」
利根「……青葉」サラサラ
青葉「……もう、やだなぁ、利根さん……」
青葉「青葉、見たいんです」
青葉「青葉を……皆さんを作った、この国の人達は凄いんです」
青葉「戦争に負けて……お国はボロボロになったけど……」
青葉「この更地から人々は立ち上がるんです」サラサラ
青葉「青葉、見たいんです。この国が起き上がるところを」サラサラ
利根「あぁ、我輩も見たい」サラサラサラ…
青葉「この国は、きっとまた一等国に返り咲きます」サラサラ
青葉「その時を、見たいんです」サラサラサラ……
利根「そうじゃな、そうじゃな……っ」サラサラサラ…
青葉「あぁ、でも、もうこんなに……」サラサラサラ…
利根「っ……我輩、泣かないのじゃ……っ」ポロポロ サラサラサラ…
利根「この国の再興を信じて、少し寝るだけじゃから……泣かないのじゃ……っ」サラサラサラ…
サアー……
青葉「青葉は……青葉も、泣きません……っ」ポロポロ サラサラサラ…
青葉「だって、涙が邪魔で……見れないじゃないですか……っ」ポロポロポロ サラサラサラ…
青葉「っ……ぐすっ……」ポロポロポロ サラサラサラ…
青葉「青葉、……ぐすぐす……すぅっ……」サラサラサラ…
青葉「青葉、見ちゃいました……っ」サラサラサラ…
青葉「青葉、見ちゃいますから……っ」サラサラサラ…
サアー……
とね「もう70年近くなるな」
とね「我輩、まだまだ元気なのじゃ」
とね「今度はあぶくまが長女で、我輩末っ子なのじゃ」
とね「ちくまよりちょっとお姉さんなのにな……」
とね「我輩、呉に帰ってきたぞ」
とね「あぶくまとせんだいが一緒じゃ」
とね「おおよどは大湊なのじゃ」
とね「今頃残念がっておるかな」
とね「大湊といえば、東北は物凄い地震に襲われてな」
とね「いせは就役したばっかりで役に立てんと悔しがっておった」
とね「その分、今度はお姉さんになったひゅうがが活躍したがな」
とね「我輩も勿論活躍したぞ。お姉さんじゃからな」
とね「そういえばいせはレイテに行っていたぞ」
とね「今度は戦いに行ったんじゃなく、人助けに行ったんじゃ」
とね「帰ってきてから、この呉で洋上慰霊式をやっとった」
とね「丁度、あの大破着底した辺りでな」
とね「梨はな……信じられんことに沈没しておったのを引き揚げられて、また海の上を走れるようになったそうじゃ」
とね「わかばとして、海上自衛隊の最初期の護衛艦として活躍したと聞いた」
とね「はるなも、おおよども、ひゅうがも、いせも、きたかみも……」
とね「我輩も含め、みんな海上自衛隊で頑張っているのじゃ」
とね「この国の人々は強いぞ。戦争でも、災害でも、すぐに起き上がる」
とね「この国は、もうこんなに復興して、発展したのじゃ。ちゃんと一等国に返り咲いたのじゃ」
とね「だから、青葉」
とね「お主も、早くこの光景を見に来ると良いぞ」
【艦これ】青葉「青葉、見ちゃいますから」
おわり
乙
そういえば「あおば」ってまだいないのか
一応題材は呉軍港空襲から終戦、戦後復興と現代まで。
元々は去年終戦に関するもの書こうとして色々調べてたら「そういや護衛艦あおばってないよなぁ」と思ったのが始まり。
榛名ははるな型、利根と大淀はあぶくま型、伊勢と日向はひゅうが型、北上はいすず型でそれぞれ子孫がいるのに、青葉はいない。
未実装艦も含めれば結構いるんだけど、今の実装艦の中では呉軍港組は青葉だけだし、出雲も今度就役するし。
因みに艦これって題材に頼っちゃったけど、ここでの艦娘は艦の魂みたいなもん。
着底しようが、沈もうが、残るときは現世に残るけど、解体されたり、消えちゃうときは消えちゃう感じ。
呉に限らず、大体旧海軍の軍艦は解体されて、その鉄は戦後色んなところに使われてる。
案外、近所にもその名残が見られるかもね?
ここまで読んでくれた人、ありがとう。
良いSSだった、ほんとに
乙
ロマンチックだな、好きだ。
泣いた
乙
感動した
乙
乙
なんか微妙だった
着底が着床にみえて仕方がなかった
つまらんかった
乙
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