幼馴染「あんたのこと……好きなの!」男「え、なんだって?」(24)

男「……こんなところに呼び出して、いったいなんの用だよ」

幼馴染「……」

男「なんだよ、早くいえよ」

幼馴染「あたし……」

男「?」

幼馴染「あんたのこと……好きなの!」

男「え、なんだって?」

幼馴染「ちょ、ちょっと! 聞いてなかったの!?」

男「ん、わりいな。もう一度いってくれないか?」

幼馴染「んもう……! もう一度だけだからね!」

幼馴染「あたし……あんたのこと好きなの!」

男「え、なんだって?」

幼馴染「なによ! また聞いてなかったの!?」

男「ああ、ごめん」

幼馴染「あんた、耳遠いんじゃないの!?」

男「なにいってんだ、お前の声が小さいんだろ?」

幼馴染「む……!」

幼馴染「だったらもう一度いってやるわよ!」

幼馴染「あたし、あんたのこと好きなのっ!」

男「え、なんだって?」

幼馴染「今のはさすがに聞こえたでしょ!?」

男「わりいな、全然聞こえなかった」

男「もっと声張り上げてくれよ。頼むから」

幼馴染「……分かったわ!」

幼馴染「あたし、あんたのこと好きなのッ!!!」

男「え、なんだって?」

幼馴染「今のが聞こえないって、どう考えてもおかしいでしょ!?」

男「おかしいのはお前だろ」

幼馴染「グギギ……!」

男「一字ずつしっかり発音しろ。さ、やれ!」

幼馴染「……分かったわ」

幼馴染「あ、た、し、あ、ん、た、の、こ、と、好、き、な、の!!!」

男「え、なんだって?」

幼馴染「いわれたとおりにやったじゃないのよ! 一字ずついったじゃないのよ!」

男「んなこといったって……聞こえなかったんだもん」

幼馴染「よぉし、こうなったら恥を捨てて本当に全力で……!」

幼馴染「あたしィィィィィ!!!」

幼馴染「あんたのことォォォォォ!!!」

幼馴染「好きなのォォォォォォォォォォ!!!」

男「え、なんだって?」

ワロタ

幼馴染「おいコラ! 耳元で怒鳴っただろうが! 叫んだだろうが!」

男「怒鳴ろうが叫ぼうが、聞こえなかったもんはしょうがねえだろ」

幼馴染「だったら……骨伝導だ!」

幼馴染「あんたの骨に密着しッ! 振動で音を伝えてくれるわッ!」

幼馴染「この告白から逃れることはもはや不可能ッ!」

幼馴染「あたし、あんたのこと好きなの!」

男「え、なんだって?」

幼馴染「バ、バカな……ッ!」

幼馴染「自ら頭蓋骨を振動させ、伝導を相殺し、無効化させるなんて……」

男「おいおいおい、今なんていったんだ?」

男「教えてくれるかな?」

幼馴染「くっ……!」

幼馴染「だったら、手話でどうっ!?」

幼馴染『あたし、あんたのこと好きなの!』バババッ

男「え、なんだって?」

男「悪いけど……視神経の機能を遮断させてもらった」

男「今の俺は暗闇の中にいる」

男「お前が何をやろうが、今の俺にはなにも見えないのさ」

幼馴染「そ、そこまでやるか……!」

幼馴染「なら……ならっ! 点字で勝負ッ!」

幼馴染「どうだッ!」サッ

『あたし、あんたのことが好きなの』

男「え、なんだって?」

幼馴染「なにィィィ!? 今たしかに、指で点字をなぞったはず!」

男「無駄だ……」

男「感覚神経を遮断させてもらった」

男「今の俺の指は、どんな感覚も受け付けぬ!」

男「感覚がない以上、点字など読めるはずがない!」

幼馴染「ハァ……ハァ……ハァ……」

幼馴染「なら……なら!」

ズボォッ!!!



幼馴染「あんたの脳に直接指を突き刺して!」

幼馴染「静電気を利用した電気信号で、メッセージを流し込む!」バチバチ…

幼馴染「でりゃああああああああっ!!!」バチバチバチッ



アタシ、アンタノコトスキナノ



男「え、なんだって?」

幼馴染「なぜぇ!? なぜだァァァァァ!? なぜ伝わらねぇぇぇ!?」

男「俺は自在に脳を操作できる能力を持っている」

男「脳内物質を操り、潜在能力を完全開放することもできる」ムキムキッ

男「活性化させることができるということは、つまり逆に──」

男「脳を休ませることもできるのさ」プツッ…

男「今のメッセージ……休んでいる俺の脳には届かなかった!」

幼馴染「ぐはァァァァァ!!!」

男「どうやら……万策尽きたようだな」ニヤ…

幼馴染「ぐっ……!」

男「色々とやってくれたが、しょせんはメスの浅知恵!」

男「この俺に言葉を届かせることはかなわなかった」

男「さぁ、終幕(フィナーレ)だ!」グゴゴゴゴ…

幼馴染「うぐぐぐぐ……!」

幼馴染「どうやら……あたしの負けのようね……」

幼馴染「だが、いつの日か、いつの日か、あたしは復活してみせる!」

幼馴染「この世に光ある限り! 闇もまた滅びぬのだ!」

男「なにをほざこうが、しょせんは敗者の戯言! 歴史とは勝者が作るもの!」

男「──いくぞ!」

幼馴染(や、やられるっ!)グッ…

男「俺はお前のことが……好きだ!」







幼馴染「!?」

男「お前がなにをいいたかったのかは、さっぱり分からなかったが」

男「俺がいいたいことはこれだけだ」

男「……どうだ?」

幼馴染「うん……あたしもあんたが好き」

男「!」

男「ホントか!?」

男「やったぁ!」

男「これで俺たちは、正式にカップルってわけだな!?」

幼馴染「うん……そうね」

幼馴染「だけどね、付き合う前にこれだけやらせて」

男「ヤらせて?(おいおい、まさかいきなりかよ……!?)」ゴクッ…

幼馴染「キサマの両耳に、両人差し指を突っ込むッ!」

ズボッ!!!

男「ぐぎゃああああああああああっ!!!」

幼馴染「これで少しは耳の通りがよくなったでしょ?」

男「は、はい……」



………………

…………

……

十年後──



男「ただいま~!」

幼馴染「おかえりなさい」

娘「おかえんなさ~い」

幼馴染「今日は遅くなるっていったのに……困るのよね~、こういうの」ボソッ

男「おい、聞こえたぞ!」

男「しょうがないだろ、さっきメールした時は会議が長引くと思ったんだから!」

幼馴染(まったく……地獄耳なんだから)







おわり

え?乙だって?

何者だよコイツら

え!?なんだって!?(大声)

え?なんてなんて?おわってないよな?

最後の1行が読め無いのだがなにが書いてあるんだ?

あんたのこと……乙なの!(大声)

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