幼馴染「あの窓が開けば、また」(94)

私の初恋は幼稚園の頃だった

隣りの家に住む『男』と言う名前の子

親同士は仲が良かったが

私と彼は保育園ではそれほど仲良くはなかった

幼稚園で同じ組になり、一緒に居る事が多くなった

彼の事を最初に好きになったきっかけは何だっただろうか

多分、お菓子をくれた事だったと思う

『これ、幼ちゃんにあげる』

と言って、差し出された動物ビスケット

あれがきっかけで、彼の後ろに付いて歩いてまわるようになった

あの頃の私は、今にして思えばちょっとバカな子供だった

なにせお菓子をくれた人にホイホイ付いて行っていたのだから

でもこうも思う

バカで良かったな、と

あのビスケットが無ければ、彼と親しくなる事も無かったかもしれなかったからだ

あの頃、母親に

『これがあんたの初恋ね』

そんな事を言われたのを覚えている

初恋というものを理解して居なかった当時の私は

『はつこいってビスケットとおなじ?』

とか、聞いたような気がする

母親は笑いながら

『ビスケットは美味しい物だけど、初恋はほろ苦い物よ』

とか何とか

幼稚園児に何を言っているのやら

今では解るけど

そんな訳で、私と彼との関係が始まったのは幼稚園の頃からだ

小学生になっても、私は彼の後ろに付いて歩いた

彼は嫌な顔などせず、むしろ笑顔で私の手を引いてくれた

通学も、遊ぶのも、宿題するのも

本当に何をするのも、一緒だった

小4まではお風呂も一緒だった

私は別に嫌じゃなかったので、ずっと一緒にお風呂でも良かったのだけど

彼のご両親に止められた

まぁ、止めた理由も、今なら解るけど

小4の頃から、後ろではなく、彼の隣りを歩く様になった

一緒に色んな所に行って遊んだ

はしゃいで、転んで、泣き出す私を

彼はいつだって優しく慰めてくれて

それがとても嬉しくて、私はまたはしゃいでしまう

直後にまた転んだりもしたけれど

今では良い思い出だ



最初に私の部屋のベランダから、彼の部屋に飛び込んだのは小3の時

2階建ての家で、部屋は隣り同士

きっかけは多分

『そうだ!わざわざ玄関から出なくても!』

そんな考えだったと思う

お隣りさんとの距離は約50cm

今ならひとまたぎのその距離も

小3の私にとってはちょっと遠かった様な気がする

幅は50cmでも高さは2mだ

落ちたら大怪我したかもしれない

でも、私は迷わなかった

『おーい。窓開けてー』

声を掛けて、彼に部屋の窓を開けて貰う

一刻も早く自分のナイスアイディアを実行したかったのだ

彼は私が何をするのか解らなかったはず

何か言おうとした彼の胸に、勢いよく飛び込んだのだから

彼は私をしっかりと受け止めてくれたけど、よろけてしまって

私共々、そのまま倒れた

彼はビックリしていたけど

今思えば、飛びついたのは危険この上無い

でも私は彼の部屋に飛び移れた事に満足していたので、気分が良かった

だから笑い出した

つられて彼も笑い出したので、そのまま2人で笑ってしまった

大爆笑だった

そうして彼の部屋への移動が楽になった

彼が私の部屋に来る時、窓からベランダへ飛び移る様になるのに

そう時間は掛からなかった

そうやってお互いの部屋を自由に行き来する様になった

お互いの両親は、最初こそ反対していたが

彼も私も言う事を聞かないので

落ちても大怪我をしない様に、窓の下に生け垣を作ってくれた

今考えると約50cmの隙間に落ちる方が難しいはずなのに

私の父親などは

『いっそ男君の部屋とベランダをくっつけようか』

なんて的外れな事を言っていたっけか

社会の窓じゃなかったか…

お互いの部屋で勉強したり、ゲームしたり

ただひたすらぐうたらしてる日もあったな

隣りに居るのが当たり前で

凄く自然で

居心地が良くて

何も言わなくても、何となく通じている気がしてた

>>13
社会の窓ではないですね

眠いので今はここまで
夜、また来ます

乙くださった方ありがとうございます

投下再開します



中学に上がっても相変わらず私は彼の隣りに居た

同級生にからかわれたりしたけど

彼も私も気にしなかった

その頃、2人ほぼ同時に親友が出来た

彼には友君、私には幼友

遊びに行くのが2人から4人になった

中学2年の修学旅行の時である

班毎の自由行動の時、私たちは京都で迷子になった

4人とも、地図が読めない男女だった

途方にくれていると

『多分こっちだ!』

彼が急に走りだした

私たち3人も後に続いて走り出した

兎に角直進

曲がり角は当てずっぽう

そうして15分も走っただろうか

日が暮れかかった時、見覚えのある通りに出た

そこで担任の先生と無事に合流出来た

合流時間を過ぎていた事は怒られてしまったけど

あの時、駆け出した彼の後ろ姿を見て

『何て格好良いんだろう』

と、思った

何故急にそんな事を思ったのかは自分でも解らない

幼い頃の恋の話は誰にでもある普通の事だと思うけど

その時のは違っていた

中2と言えば、それなりに社会の常識も解って来た頃だ

『私、この人の事、好きだな』

初めてちゃんと意識した

それからの私は自分の気持ちを抑えながら日々を過ごした

私と彼と幼友と友君、4人で沢山の思い出を作った

幼友と友君の漫才みたいなやり取りも好きだった

その2人から

『2人って、もう夫婦みたい』

と言われた時

彼は物凄く照れていたけど

私は物凄く嬉しかった

凄く楽しかった

こんな日が永遠に続けば良いのにと思っていた



中3の夏休み、親の転勤が決まった

転勤場所は凄く離れた土地だった

気軽に遊びに帰って来られるような場所じゃなかった

私は泣きながら親に抗議した

好きな人と別れなければならない

その事実を認めたく無かったのだ

その時、プチ家出した

幼友の家にお世話になった

幼友の母親はおおらかな人で

幼稚な私のかんしゃくを

『いつまで居ても良いからねー』

そう言って迎えて入れてくれた

夏休み期間のほとんどを幼友の家で過ごした

正直、彼の顔を見るのが辛かったのだ

だから彼と2人で過ごす時間はほとんど無かった

夏祭りだけは2人で一緒に行った

会話は殆ど無かったけど、ずっと手を繋いでいた

会場を一通り廻った後、私たちだけの秘密の特等席で花火を見た

夏の夜空に次々と打ち上がる花火を見ながら

ふと彼の横顔を見る

花火の光に照らされた彼の顔を見て、確信する

『やっぱり私、この人の事が本当に好きだな』



それから、彼に告白しようと努力する日々が始まった

幼友に相談して、色々試してみた

まぁ、結果はどれも大失敗

思い出すと恥ずかしい事ばかり

私は彼が鈍感である事を知っていたのに

恋の熱に浮かされて、状況判断が出来て無かった

空回りばかりで、何一つ上手くいかなかった

受験勉強もあったので

彼に気持ちを伝えられないまま、時は過ぎた

窓とベランダでの行き来は続いていた

お互い受験する高校に合格するには微妙に成績が足りなかったから

一生懸命勉強した

結果、2人とも無事合格


私は関西の女子高に

彼は家の近くの高校に

幼友と友君も彼と同じ高校に合格した

ここで道は別れてしまった

本当は凄く嫌だけど、親の都合だ、仕方が無い

一人暮らしするとも提案したけど、即却下された

そりゃそうだ

高校一年生になる娘を、一人で置いて行くなんてできっこない

経済的にも厳しいもんね

だから私も両親と一緒に、関西に引っ越す事になった

高校受験が終わってから

私が引っ越すまでの間は、これでもかってくらい

4人で遊びまくった

彼と2人でも遊んだ

楽しい思い出が更に沢山出来た



それでも、心残りがあった

彼に私の本当の気持ちを伝えて居ない事だった



引越し前日の深夜

いつもの様に、彼の部屋に飛び込んだ

彼は小説を読んでいたそうだ

深夜いきなりの来訪にも関わらず、ホットココアを出してくれた

それなりの覚悟を決めて、彼の部屋にお邪魔したはずなのに

言葉が出てこない

彼は黙って、私の言葉を待っている様に見えた

彼も何かを言いたそうにしている様にも見えた

飲みかけのホットココアが普通のココアになった頃

不意に彼が話しかけてきた

『別に一生の別れって訳じゃないし』

『いつかまた会えるよ、きっと』

『幼は僕の一番の……………友達だから』

『友達だから』

その言葉がぐるぐると頭を回る

『そうだね』

かすれた声でそう答えるのが精一杯だった

そして少し泣いてしまった

彼は慌てていたけど、これは彼のせいじゃないので

『大丈夫。寂しくなるなぁと思って…思い出し泣きだから』

なんて下手な言い訳したっけ



引越し当日

彼も彼の両親も見送りに出て来てくれた

お互いの両親が挨拶をしてる傍で

私と彼は交わす言葉も無く、黙っていた

不意に彼が左手を差し出してきた

最初は何の事か解らなかった

握手を求められている事に気付くのに5秒くらいかかった

差し出された手を、私は両手で握る

小さい頃から握り続けてきた、彼の左手

その温もりを忘れない様に、しっかりと握って、彼の体温を記憶した

『じゃあ、またね』

『うん、またね』

これが私と彼が交わした最後の言葉

眠気に勝てないので今日はここまで

明日、最後まで投下します

レスありがとうございます

投下再開します




高校生活はまぁ、普通だった

成績は、割と上位の方だった

中3の夏休み後から受験まで、彼と必死に勉強したのが効いたと思いたい

クラスの皆とはそれなりに仲良くやっていけた

その中でも数名、気の合う友達が出来た

その仲間達と一緒に新しく部活を作ったりした

みんなでそれなりに高校生活を楽しんだ

女子高だったからか、浮いた話は殆ど無かった

幼友とは引っ越した当初は、電話で頻繁にやり取りをしていたが

高1の夏休み前頃から徐々に電話の回数は減り

夏休み後は週に1度、お互いの近況報告をする程度になった

通話料金がとんでもない事になって、お互い両親に怒られたからだ

彼とは、たまにメールのやりとりをする程度だった

何故かお互い電話はしなかった

でもそれで良いと思った

寂しいけど、このまま彼の事が好きと言う気持ちも

段々と薄らいで行くんだろうな

そう思っていたけれど、高3になってもまだ私は彼の事が好きなままだった



高校3年の7月

進路を決める時期が来た

私は家を出て東京で一人暮らししながら、大学に通おうかと思った

けど、すぐにこの考えを取り下げた

両親に経済的な負担をかけられないし

例え一人暮らしで、東京の大学に通うとして

私は別に彼とは何でも無い

将来を誓い合った訳でもない、只の幼馴染だ

告白もしてないし

だからこのまま、地元の大学に進学かなと資料を集めている時

私の人生は新しい展開を迎える

また父親の転勤が決まった

中3まで住んで居た町だと言う

しかも、引っ越す先はなんと、以前住んでいたあの家だと言う

借家にしていたらしいが、借り手がつかなかったそうだ

忘れようと努力していた、彼への想いが胸を締め付ける

小躍りする程、嬉しかった

それと同時に不安も感じた

私が高校生活を楽しんだのと同じく

彼は彼で、高校生活を楽しんだだろう

たまに来るメールには

青春を謳歌している旨書かれていたし

ひょっとしたら、彼女が居るかもしれない

そうなっていたとしたら、かなり切ない

でも、そうじゃないかも知れない

そんな事を、たまに少しだけ考えながら、受験勉強に励んだ




そんな訳で、大学受験の為、久しぶりに生まれ故郷の町に帰って来た

久しぶりに皆に会おうと思ってはいたけど

サプライズにしたかったので、誰とも連絡は取っていない

道端でばったりってのも楽しいだろうし

皆の家に突然訪ねて行くのも面白いかもしれない

こっちの大学に進学予定と言う事も、まだ内緒

彼と友君、幼友の三人は第一志望が同じ大学だそうだ

私もその大学にした

充分不純な動機なんだけど、やりたい事がやれそうな学科があったので

と、言い訳の準備は万端だ

久しぶりの生まれ故郷

久しぶりの町並み

たった3年、離れていただけなのに物凄く懐かしい

変わった所もあるけど、大体思い出と同じだ

そこの角を曲がれば、家が見えてくるはず

高鳴る胸の鼓動を抑えつつ、早足で角を曲がる

私の家も、彼の家も、ちゃんとあった

無くなっていたら大変な事件だけど

一応お隣さんの表札を見て、彼がまだこの家に住んでいる事を確認する

あのベランダと窓もそのままだ

カーテンが閉まっているので、彼は出掛けているんだろう

キャリーケースだけを玄関に置いて、もう一度鍵をかける

そのまま、家に入るのも何だか勿体無い気がして

町を当て所もなく歩く

誰か知り合いに会わないかな?と、ドキドキしながら

幼稚園から中学3年まで、彼と歩いた道

右を見ても左を見ても、どこもかしこも何らかの思い出がある

小さい頃から一緒に遊んでいた公園は

やっぱりブランコがキイキイと変な音をたてるし

図書館には、一緒に漫画を読みに行った

何時間でも居られたな

商店街では、お祭りの手伝いをした事もあったっけ

階段を100段も登らないとたどり着けない神社も、3年前と変わらなかった

どの道も、彼と歩いた道だった

忘れられない、大切な思い出がつまった道だった

歩いてる内に、日が傾いてきた

そろそろ家に向かうかなとボンヤリ歩いていたら

いつの間にか町内を一周して、家の前に戻ってきていた

彼と私が何年もかけて歩きまわった町内は

高3の私の足だと、半日程で廻れる程度だった

家に入る前に彼の部屋を見てみると

カーテンは閉まったままだし、明かりも点いていなかった

玄関の鍵を開けて、中に入る

実は母親が年に数回、掃除しに来ていたそうで

家の中は綺麗だった

そして、前回掃除に来た時

布団を一組、用意してくれていた

こっちに引っ越す事と私の志望校が決まった後だったので

受験の時、役に立つだろうと言う

母親の粋なはからいだった

その布団を自分の部屋まで運ぶ

何もないがらんとした私の部屋

またここで暮らせるかと思うと、ソワソワして落ち着かない

寝る準備をした後、近くのコンビニまで行く

晩御飯の事を忘れていたからだ

家から歩いて3分の、このコンビニにも随分と通った

大好きなスープスパと、ペットボトルのお茶とホットココアを持ってレジに並ぶ

すると、レジ奥にいたおばあちゃんが声をかけてきた

店長のおばあちゃんだ

『あら、幼ちゃん!久しぶりだねぇ』

本当に久しぶり

3年ぶりですね、おばあちゃん

私はこのおばあちゃん店長が大好きだ

と言うか、この付近で、このコンビニを利用するお客さんに

このおばあちゃんの事が嫌いな人って居ないと思う

いつもニコニコしていて、優しい語り口

歳を取ったら、私もこうなりたい

聞けば、父が小さかった頃、ここは駄菓子屋だったそうだ

その駄菓子屋の店番だったおばあちゃんは、昔からこうだったと言っていた

父が子供の頃からおばあちゃんはおばあちゃんだったらしい

おばあちゃんに、またこの町に戻ってきた事を報告すると

とてもとても喜んでくれた

『男ちゃんは今でもしょっちゅう来てくれるのよ』

という情報もくれた

彼は今でもコンビニで駄菓子を買うのが好きなんだろうか

コンビニを出て家路につく

ほんのちょっとの距離、ほんの3分程度の距離

私の人生の中で、この道が一番多く歩いた道だと思う

2人で手を繋いで歩いた、歩き慣れた道

学校の行き帰りにも、コンビニに行くにも必ず通る道だからだ

こんなに慣れた道なら、目を瞑ってても歩けるんじゃないだろうか

ちょっと試してみる




…目を瞑って道を歩く事の危険性に、高3にして気付いた

開始3秒で電柱にぶつかったから、気付いた

危ない危ない

家に入る前に、彼の部屋を見てみると、やっぱり明かりは点いていなかった

誰かの家で受験勉強してるんだろうか?

それとももう寝てしまったんだろうか?

明日は入試だもんね

いや、それにしても7時に寝るのはありえないか

だとしたらやはり外出しているんだろう

部屋に戻ると、明かりを点けた

がらんとした部屋だけど、一つだけ3年前のままな物がある

カーテンだ

ピンク地に桜の花びら柄で、幼かった私のこだわりの一品だ

部屋が日光で痛むからと、カーテン類は全部付けたまま引っ越した

新しい住人が見つかるまでの間、と言う事で付けたままだったが

結局借り手が見つからなかったので

お気に入りのさくらのカーテンが取り替えられる事は無かった

このカーテンにはまだしばらく活躍してもらう事になる

布団しか無い部屋で、一人でスープスパを食べる

何の音もしない部屋で一人黙々とスープスパを食べる

少し寂しいのはなんでだろう

そしてさっきから落ち着かないのはなんでだろう

答えは簡単だ

隣りの部屋が気になっているのだ

思い切って自分の部屋のカーテンを開ける

そこには、3年前と変わらない見慣れた光景があった

2畳程のベランダと、そこから50cm離れた所にある、彼の部屋の窓

このベランダでも色々やったっけ

無理やり、籐椅子を2つ並べて

トロピカルドリンクを飲みながらリゾート気分に浸ったり

まぁ、ひさしのせいで日光浴は出来なかったけど

彼の部屋はまだ暗いままだ

取り敢えずカーテンとガラス戸は開けたままにしておく

冷たい空気が部屋に入って来る

私は後悔していた

中3の時、好きだと言えなかった事を

『幼は僕の一番の友達だから』

と、言われた時

自分の気持ちを言えなかった事を、ずっと後悔していた

それは只の友達としてではなく、異性として好きだと言う事

たとえ離れ離れになるとしても、言えば良かったと後悔してた

そのうち忘れる事なんだと自分に言い聞かせようとしてた

でも結局、忘れられなかった

それに、別れ際の握手

あの時、最後に握った手の感触を、今でも覚えている

ぎゅっと握ってくれたその手は

温かくて、優しかった

でも普通握手は右手でするものだ

あの時、彼は左手を差し出した

後々考えると、左手の握手はあまり良くない事だと気付いた

気付いて『本当は嫌われていたのかも』と少し落ち込んだりもした

しかし長い付き合いだ

彼が悪意を持って左手を差し出したとは考えられない

あの時ひょっとして彼は、握手ではなく

いつもの様に手を繋ぎたかったんじゃないだろうか

通学の時の様に、遊びに行く時の様に、幼い頃からいつもそうしていた様に

あの夏の日、花火を見ながらもそうしていた様に

そう考えると、その事に気付けなかった自分が恥ずかしいし

彼の想いに応えられなかった事が無性に悔しい

結局今更確認の仕様も無い事だけど、時間よあの瞬間まで戻れ!と思ったりした

次、彼の顔を見たら言いたい事があった

『もしもあの時、ああしていたら』

なんてこの世には無いけれど

もしも、彼と再会出来たなら、真っ先に言いたい事があった

1つだけ、大切な事


彼の事が大好きだと言う気持ち


そのもしもが、もうすぐ現実になるかと思うと

心がざわついてしまう

スープスパを食べ終わってしばらく

私は彼の部屋とベランダを見ていた

ホットココアを飲みながら、期待しながら

引越し前日に言われた言葉

『幼は僕の一番の……………友達だから』

あの時の『間』は、ひょっとしたら彼も私の事が好きで

告白しようとしていたのではないか

そんな自分勝手な事を期待しながら、彼の部屋に明かりが点くのを待った



1時間程経った頃、彼の部屋が明るくなる

帰ってきたらしい

胸が高鳴る

今度はちゃんと言えるだろうか

上手く行くかどうかは解らないけど

言わずに後悔するのはもう嫌だ

明日は、大事な受験だと言うのに

大学受験より、告白の方が何百倍も大事だと思ってしまう

あの窓が開けば、また

彼は3年前と同じ笑顔で

私を迎え入れてくれるんじゃないか

そしたら私は、彼の胸に飛び込みたい

初めて、ベランダから飛びついた時の様に

ひょっとすると、拒否されてしまうかもしれない

それも含めて覚悟は決めて来たはずなのに、いざとなると怖い

少し足が震えるのは寒さのせいだけではないと思う

でも

ゆっくりとベランダに出る

そして窓に向かって声をかける。昔からそうしていた様に




幼「おーい。窓開けてー」




よし、ちゃんと言えた

彼の部屋から声が聞こえたけど、なんて言ってるかは聞き取れなかった

彼の部屋のカーテンに人影が映る

その窓をじっと見つめる

カーテンに人影の手がかかるのが見える

もうすぐ解る

私が彼の胸へ飛び込めるかどうか

もうすぐ解る

また彼と手を繋いで、並んで一緒に歩ける日が来るのかどうか



カーテンが開いていく


そして私は、愛の言葉を告げる覚悟を決めた



おわり

これで終わりです
途中レスくれた方ありがとうございます
嬉しいです
地の文、書いてて楽しかったけど、読み辛かったらすいません

次スレは
幼馴染「ステータス異常!」 男「ん?」
ってタイトルで立てると思います

では。

レスくださった方、本当にありがとうございます
嬉しいです

取り敢えず生きてます

スローペースですがこれからもSS書いていきますので
また読んで頂けたらとおもいます

マイスター、見てたら甘々なのもそのうち書いてくださいね

>>87
ずっと、ずっと待ってたよマイスター!乙!!相変わらず素晴らしい幼馴染SSだな


…ところでこの作品の後日談とかは考えてない?いや、この作品に関してはこれで十分完結でもいいっちゃいいんだけど、もどかしさが

>>88
甘いの…最近甘甘マスターは更新ありませんねぇ
ちょっと書いてみます

>>90
後日談は…男目線とちょっとした続きを書きはしたんだけど
蛇足かなと思って投下しませんでした
後日談的な話しを別のSSとして書いてみます

読んでくれてホントにありがとうございます

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