女「世話係……ですか?」 (42)

王「そう、世話係……と言うものの、何も下の世話をしろと言うわけではない」

大臣「あの、王様……」

王「むしろワシがしてもらいたいぐらいだ」

女(下品なクズめ……)

王「お主がどうしてもというのなら別にワシの世話をしても構わんのだが―――」

大臣「コホン、えー、女殿の隊には我が国が誇る、他国に対しての抑止力となっている人物の住む塔の警備をしてもらう事になっている」

女「ええ、その事について王様が直々にご説明をされるとの事で足を運ばせて頂きました」

大臣「ご足労様です……さぁ、王様」

王「で、だ。隊を取り仕切る代表としてお主にはその者の身の回りの世話をして欲しいのだ」

王「炊事洗濯家事全般……警備のついでだ。構わんだろう?」

女「警備の間には鍛錬の時間もありますので、そんな暇はありません」

女「お言葉ですが王様、そもそも不老不死の化物にそんな事は必要ないのでは?」

大臣「鍛錬に支障が出ない程度でいいのです。それに……彼の正体についての情報は上層部で止めておきたいのです」

王「確かに何もしなくてもくたばりはしないが、コミュニケーションが取れなくなったら困るからな」

女「…………」

大臣「最悪、毎日会話するだけでも構いませんので……」

王「皆が気になる化物の正体を知るチャンスだぞ、フハハ」

女「……はぁ…」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1430986677

女(結局受ける羽目になってしまった)カツカツ

女(まぁいいか。会話するぐらいなら然程の手間ではないだろうし)

女「……塔の地下……ここか」

女(松明の光が薄く張った蜘蛛の巣とくすんだ石の壁をを照らし出して……ちょっと不気味)

女(先の大戦……半世紀程前に起きた原因不明の地上の崩壊)

女(敵国を一夜も明けない間に壊滅させた、この国の最終兵器)

女(小さな頃から語られていた、形のない化物がこの扉の向こうにいる)

女「…………」

女「……」コンコン

女「第四騎士団団長、女です。王から話は聞いていますね?本日からあなたの身の回りの世話を担当させていただきます」

女「…………」

「……おう、入れ」

女「!!」

女(ちゃ、ちゃんと人の言葉、話せるんだ……)

女「失礼します」ガチャ

女「」

女(3メートルはあるのではないかと思えるような巨体。筋肉質で熊のような重圧。伸ばしっきりの髪。獣のような鋭い目つき……)ブル

「怖がらせちまって悪いなぁ」

女「い、いえ……」

「どれ、茶でも飲むか?つっても茶っつーもんがなんなのかよく分かんねぇから、合ってるのか知らねーけどよ」

女「あの、お茶……美味しいです」

「そうか。俺には良く分からん」

女(良く分からない物を飲ますな!)

「俺の事、どこまで聞いたことがある?」

女「この国を救った英雄で、かつての敵国を一夜にして崩壊させた伝説の……」

「おう、化物だ」

女「……そのような事は……」

「いや、いい。日を浴びちゃいけねー人間なんているわけねぇんだ」

「外に出た事はねぇ。この国の王族に代々伝わる兵器だ」

女「外に出た事がない?」

「ああ、ない。動けるのは塔の中だけだ」

「こう、な……手に力を入れて、外に向かって光の弾をポイッとするだけで知らねー国が滅ぶんだ」

「恐いか?」

女「非常に恐ろしいです」

「正直だなぁ、ここで恐くないとか言ったら実際にやってみせてやったんだが」ケラケラ

女(サラッと国際問題を勃発させる気かこの化物!!)

「まぁ、お前の方が先にくたばるだろうが……よろしく頼むぜ」ニィ

女(やだよー!!!!!)

女「部屋の掃除とかしないんですか?

女「部屋の掃除とかしないんですか?」

「しねぇなぁ、汚れねぇし」

女「しかしここは……」ドンヨリ

女「空気が籠って非常に不衛生だと思います。埃もいっぱいですし掃除するべきかと」

「なんだ?一丁前に指図か?」

女(あ、殺される)ビク

「冗談だよ。確かにここ数年掃除なんてしてねーからなぁ」ズズズ

女(よ、よかった……)

女(って巨体が持ち上がるのと同時に埃が……!)

「で、何からすりゃあいい?」

女「私が掃除しますので、あなたはこの部屋から出て下さい。埃が舞って迷惑です」

「おうおう、俺が恐くねーのか?」

女「恐いですよ。でもこれが仕事ですから仕方が無いでしょう」

「くく……そうかそうか!じゃあ頼むぜ」ノッシノッシ

女「………これは……骨が折れそうですね」

女(地下から外に埃を出すのがこんなに面倒くさい事を初めて知りました)

女「しかし……私の前ではこんな物ちょちょいのぱっぱです!」





大臣「お世話、してくれてますかねぇ」

王「するだろう。口は悪いし目つきは悪いし素行も不良。団長に昇格したのもさせたのもなんでか分からんどうしようもないヤツだが……世話焼きだからな」

大臣「ああ……」

王「団でも評判は良いからな」

大臣「お偉いには目の敵にされてますがね……」

王「平民従士からの成り上がりだ、仕方がないだろう」

期待

「ちょちょいのぱっぱ」にキュンときた

女「こんなもんか……」

女(ピカピカになるまでキッチリとやりたかったけど、一日二日じゃ石の壁についた汚れも簡単には落ちないか……)

女(どこを見ても石石石、申し訳程度の布と調理器具……殺風景だなぁ)

「おう、終わったか」パラパラ

女「はい、とりあえず目立つ汚れ等はキチンと……って、ああああああ!!!」

「いや、随分見違えた。こりゃあ今夜はグッスリだなぁ」

女「なんであなたが汚いままなんですか!埃払うなりなんなりしてきて下さいよ!」

「ん?ああ、悪い。えーと」ガシガシ

女「掃除したばかりの部屋でしないでください!せめて部屋の外で!!!」

「キャンキャンうるせーなぁ……」

女「」ビク

「悪かったよ」ニィ

女(こ、コイツ……苦手だ!!!)

「ま、仕方がねぇさ。俺の身体は勝手に綺麗になるし、古くて汚いもんは全部落ちる。衛生的だろ?」

女「その古くて汚い物は不衛生です。毎日キチンと、外で、捨ててきて下さい」

「んなこと俺に言うのはお前が初めてだ」

女「言わなきゃキリないでしょうが……」

女「では、本日の業務はこれで終了とさせて頂きます」

「そうか」

女「外、出ないんですか?」

「出たら駄目なんだとさ。外の世界で俺は生きていけないらしい」

女「その身体で?」

「……」ギロ

女「んん……失礼、口が滑りました」

「そりゃ危ねぇなぁ。とっちまうか?」

女「!!!」ブンブンブン

「ふん、外の世界なんか知らねぇ。ただただ塔から見える灰色の景色と、チカチカ光る星があればいいんだよ」

女(そういえば……王都から少し離れたここの周囲一帯は荒れ地だった)

女(王都から見えないように山々に囲まれているだけ、というだけではなさそうな気もする)

「寝るかぁ……」ノッシノッシ

女「それでは、失礼します」

「おう、ビビって明日から来たくありませんって泣くんじゃねぇぞ」

女(殺してぇ)

女「踏み込みが浅いぞボンクラ共!後一歩及ばず泣きを見るのはお前らだぞ!」

「今日は一段と燃えてるねー」

「塔の化物、どんなだったのかな」

女(あの大男め……途方も無い力があるからといって図に乗りやがって……)

女「…………」

女「トロい!一人ずつ私が相手してやる!」

「団長ー、そんなカリカリしてちゃ駄目ですよー!」

女「やかましい!」

「せっかくの可愛いが台無しですよー!」

女「可愛いとか言うな!!」

「ほら、団長!花の冠ですよー!」

女「あ、凄い……じゃねぇ!演習中に花で遊んでんじゃない!お前男だろ!可愛いとか言っても駄目です!さぁ演習です!」

「仕方ないなぁ、団長は」

「いつもだったら赤くなってすぐ演習切り上げるのになぁ……」

「誰が一番行く?」

女「さぁ、警備のみで鈍って他の団に差をつけられんようにキッチリやるぞ!」

女(花……あの殺風景な部屋に花の一つや二つあれば少しは変わるかな……)

女(松明ももう少し増やして明るく……それに綺麗な布を敷くだけでも変わるだろう)

女(ふふふ……覚悟しておけ……)メラメラ

ふむ

ふきだ

間違った
好きだ

わたしもふきだ!

期待

____________________

女「本日も塔の周辺警備です。首が繋がったまま明日を迎えたいのなら塔に足を踏み入れないようにしてください」

「分かってますよー」

「いくら気になっても命の方が大事だし」

「いやいや、でも気にならないか?」

「別に知った所でなぁ……」

女「……あ、そうだ。オハナ、お前はちょっと残ってください。他の者は各自仕事に入ってください」

「あー、ご指名いいなー」

「おい……抜け駆けしたらその世紀末チックな髪の毛刈り取ってやるからな!」

オハナ「とうとうこの時が……団長、私はこの時を待っていました!」

女「……どの時だ」

オハナ「してして、なんの御用で?」

女「いや、ちょっと壁に飾るような花をいくつか見繕ってきて欲しいんです」

オハナ「え……」

「え……」

「え…………」

女「なんだテメェら!私が花だのなんだのって言ったらおかしいですか!?つーかさっさと仕事に行け!」

「了解であります団長!」

女「私はこれから塔で少し仕事をしてくる。その間に適当に持ってきてもらえるとありがたいです」

オハナ「団長の命令であればすぐにでも!」

女「期待してます」

オハナ「ご、ご褒美は……」

女「は?」

オハナ「迅速に任務を実行するであります!」バッ

女「………まったく、舐め腐った態度とりやがって」

女「今後あんまり酷いようなら見せしめとしてズタボロにしてやる……」

女「…………行くか」




女「第四騎士団団長、女です。本日もよろしくお願いします」

「……お?逃げ出して牢屋の隅っこで震えてると思ってたぜ……入りなぁ」

女「生憎私はそんなに柔な精神をしてないので」ガチャ

「くく、チビのくせしてやけにでかい口叩きやがる」

女「さぁ、今日は早い事掃除を終わらせますよ。出てってください」

「部屋の主に出てけたぁ、随分偉いもんだなぁ」

女「別にいても構いませんが……燃えるゴミでまとめますよ?」

「かー……終わったら呼べ」ノッシノッシ

女「戻ってくる時はキチンと汚れを落としてきて下さいね」

「ちっ」

支援

女「……さて、松明を壁にぐるりとかけて……と」ヒョイヒョイヒョイ

女「では早速持ってきた荷物の出番ですね」フンス

女「この殺風景な部屋模様を一新するにはちょっともったいない気もしますが……それも仕方が無いでしょう」

女(正直この先もこんな辛気くさい場所で仕事をするのだけは勘弁だし)

女「とりあえずこの部屋にあるボロ布は全部ポイポイポイですねー」

女「で、ベッドロールもシーツも一新!ついでに床にはカーペットも敷いてしまって足下から明るい雰囲気に!」

女(ふふ……カーペットにはループフラワーをあしらってあるので綺麗さ倍増です……似合わなくて笑えてきます)

女「壁にはオハナが摘んで作ってくれた花のリースで鮮やかさを倍増です!」

女「うんうんうん……」

「おう、どうだぁ調子は……」

女「あらあら、遅かったようですね」ニタリ

「っ」ガチャン

女(扉を開けたと思ったら直ぐに閉じやがったこの野郎)

「明かりを消せ」

女「はい?」

「明かりを持ち込むんじゃねぇ!目が溶ける!」

女「何馬鹿言ってんですか。溶けるわけないでしょう」

「俺は光に弱いんだ!」

女「伝説の英雄が何軟弱な事を……大体あなた、昨日自分で光の弾作ってたでしょうが」

「…………」

女「……………」

「そういえば、そうだな」ガチャリ

女(この化物思ったよりも馬鹿なのか?)

「……これが火か」

女「なーに物珍しそうに見てるんですか。大した物じゃないですよ」

「いや、俺が触れてもねぇのに暖かい。それに明るい。周囲がよく見える」

女「今までどう生活してきたんですか……」

「俺の住んでた所はこんなにも色が溢れてたんだなぁ」

女「それは私が色々飾ったからです!あなたの部屋なんて塔の周囲のハゲ山とお揃いですよ!」

「こっちの布と、こっちの布の色が違うのはなんでだ?」

女「糸と布を染める染料が違うからですよ」

「へぇ………」キョロキョロ

女(目に映るもの大体初めてなんですか……と言っても肯定しかされなさそうだしやめとこう)

「この輪っかはなんだ?」

女「花です」

「匂いがするぞ!」クンクン

女「そういう物です」

「これはどこで手に入る!?」

女「花畑とか道端とかです」

「……で、お前はそんな姿をしてたんだな」

女「何見てるんですか、気持ち悪いです」サッ

「ほぼ暗闇で過ごしてたからなぁ……前のヤツもどんな姿形だったか……輪郭ぐらいしか知らねぇんだよ」

女「そりゃ不憫な事で」

「俺はお前から見てどう見える?」

女「………とても体つきの良い健康的な男性だと思います」

女(ただし、身体の大きさは尋常じゃない)

「花は綺麗だなぁ、おい」

女「そりゃあそうです」

「いやぁ、綺麗だ」

女(ずーっと壁にかかった花のリースの前に座ってますが、飽きないんですかね)

女(下手したらオハナと良い勝負の気色悪さです)

「俺はなぁ、今まで会った奴らから、光を浴びちゃなんねぇとか外に出ちゃなんねぇとかよ、言われてきたんだ」

女「はぁ、そうですか」

「でも大丈夫だった」

女「光はともかく、ここの空気と外の空気なんて変わりはしません。循環してるんですから」

「なんで俺にそんな嘘をついたんだと思う?」

女「知らないですよ、そんな事。私は一切注意等は言われてないですからね」

女(言われてない、言われてないぞ!何も見せちゃいけないとか言われてないぞ!)

「外、出てみてぇなぁ」

女「駄目です。あなたの姿は特定の人物にしか決して見せてはいけませんし」

「出れるって分かったらよぉ、こう、ムズムズしてくるじゃねぇか!」

女「知りませんよ!大体昨日なんて外の話をしたらムチャクチャ嫌がったじゃないですか!」

「ああ?」ギロ

女「」

「昨日は昨日だろうが……大丈夫って分かったら見たくなるだろう」

女(明かりで表情がはっきりと読み取れる分恐怖倍増なんですが……)

「灰色だけじゃねぇ世界。すげぇ良いじゃねぇか」キラキラ

女「はぁ……」

女(楽しみで高翌揚してるのは分かりますが、獲物を狙う眼光にしか見えねぇ……)

大臣「これより定例の円卓会議を始めさせて頂きます」

大臣「近頃歯車の国が我が国の領土に足を踏み入れているとの事です。この問題に対して何か意見のある方」

「参ったなぁ、侵犯かぁ」

「国土も安定してきて、民の意識も戦いを好まなくなってきている」

「騎士団も国外よりも国内での仕事ばかりだし、実戦になったら……」

「どうして戦う前提で話を進めるんだ。まずは大使を送って話しをする事からだろう」

王「…………」

「ウチにはいるじゃあないですか、化物が」

王「……」ピク

「しかしアレは……」

「隣国に人の住んでいた形跡すらも消してしまったのだぞ」

「私たちはこれ以上アレを使うべきではない」

「では我が国の領土を好き勝手され、民を傷つけられ兵を疲弊させるのが最良と?」

「そうではない!」

王「はぁ……」

大臣「……貴族殿はやはり彼を使いたいようですね」ヒソヒソ

王「だな。ま、確かに使っちまえば楽だよ。ただ、その力がどれだけ影響があるのかなんて分かってやしない」ヒソヒソ

大臣「今朝方、大荷物を持った女殿を見かけました」ヒソ

王「ん、お節介焼きは順調に動いてくれてるな」ヒソ

大臣「歯車の国と大きな悶着が起きる前に動いて下さればいいのですが……」

王「ま、気長に待とう。私は兵を意地でも戦地に駆り出さんし、彼を使うつもりも無い……王はの言葉は絶対だ」

王「ま、気長に待とう。私は兵を意地でも戦地に駆り出さんし、彼を使うつもりも無い……王はの言葉は絶対だ」×

王「ま、気長に待とう。私は兵を意地でも戦地に駆り出さんし、彼を使うつもりも無い……王の言葉は絶対だ」○

盛大に誤字ってしまった……

文章フィルター外すのはメール欄にsagaだよ
詳しくは
■ SS速報VIPに初めて来た方へ-SS速報VIP
■ SS速報VIPに初めて来た方へ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1429796701/)

女(結局今日はずっと外の世界についての話ばかり……)

女(何が綺麗だとか、色はどんなものがあるだとか、自分の姿と他の人間の姿の違いについて話させられたりとか……)

女(もう疲れたー!!!)

「ますます外に興味が湧く話ばかりだなぁ」

女「私は大して新鮮味も何も感じませんよ」

「羨ましいこったぜ。こんな寂れた塔に押し込められてるなんて我慢ならねぇぜ」

女「この国に対して何か義理とか感じる事、あるんですか?」

「ああ?なんでだ?」

女「何もないならここに言われたまま籠ってるなんて馬鹿馬鹿しいじゃないですか」

「…………義理かぁ……衣食住に困ったこたぁねぇから、それぐらいかねぇ」

女「あー、じゃあ出ちゃ駄目です。残念ですね。今まで養って貰ってたんですからちゃんと言う事聞いて下さい」

「俺は養えなんて頼んでねぇぞ!」

女「それでも事実ですから、諦めて下さい」

女(出ても問題が無い事を知られて、この国からいなくなったりでもしたら大目玉ですし、それは頂けない)

「はぁ……つまんねぇなぁおい」

女「私が色々持ってきてあげますから我慢してください」

「俺は俺の自由なように外を見てぇんだよ!!」

女「やかましいです」

「…………一回地獄の下見でもしとくか?」

女「冗談キツいですよ。私が行くなら天国です」

「はぁ……」

女(物思いに耽る若者みたいなため息つかないで欲しい)

女「……どうしても、と言うのであれば少々ですが力を貸してあげましょうか?」

「お?」

女「外、見たいんでしょう?」

「いいのか!?」

女「塔周辺の監視の時間帯は把握してますので、かいくぐる事は可能です」

「本当か!」

女「ただ約束事があります」

「なんでも言え。俺は外に出るならなんだってするぞ!」

女「まずそのやかましい口を閉じてもらいます」

「なんだよ、人をうるさいヤツみたいに言いやがって」

女「自分じゃ気づいてないのかもしれませんが、身体が大きい分凄く声が大きいんですよ」

「そうかぁ?」

女「次に目立つ行動は避ける事です」

「隠密っつーヤツだな!」

女「隠密もクソもねー図体で簡単に言いやがりますね」

「その気になれば余裕余裕」

女「言っておきますが、外にはあなたが隠れられる程大きな物なんてそうそうないですから」

「ふん」

女「そして、あなたの力は決して人に振るわないで下さい」

「……それはなんでだ?」

女「民を傷つける事があっては駄目ですし、例え相手が悪人でも裁く方法という物が決まっているからです」

「ふーん」

女「守れますか?」

「簡単だ、約束を守ってやる」




女(私はどうしてこんな約束をしてしまったのか、自分でも良く分からないけど……)

女(やっぱり、こんな暗い所に押し込められて世界の姿を知らないと言う事が、同じ生を受けた者として不憫であると感じたのかもしれない)

「いやぁ、今日は非常に有意義な時間だった!」

女「満足ですか?私はヘトヘトです」

「そんなシケた顔すんなよ。目ばっか吊り上げてねーで口元も上げてやれ」

女「やかましいです」

「俺なんて陽気で優しそうだろう?」

女(妖気で溢れて禍々しい、と言ったら怒るかなー……)

「俺を連れ出す約束、忘れんじゃねぇぞ」

女「分かってますよ。ただ私も命がけでやるんですから、ちゃんとしてくださいよ」

「分かってるよ。ほれ」スッ

女「……なんですか?その手は」

「見て分かるだろう。握手だよ握手。お互いに約束をしたっつー確認だ」

女「あまり強く握らないで下さいよ。潰れそうです」

「加減はするよ、それぐれぇ分かるさ」

女「はぁ……よろしくどうぞ」スッ

「けっ、ムカつくなぁ」グッ

女「……そういえば名前、聞いてませんでした」

「名前?………あったようななかったような……」

女「あー、ないならいいですごめんなさい」

「バケモノ、マモノ、オニ、ケモノ……呼ばれた事があるのはこれぐらいだなぁ……」

女(卑称ばっかじゃないですか何やってんですかお偉いさん方)

女「じゃあ、鬼さんと呼ばせて頂きますね」

女(卑称ではあるものの、これほど体を成す名前もないでしょう……)

「そうか、オニか!じゃあ今度からはそう呼ぶといい!」

女「では、また後程、鬼さん」

「じゃあな、第四騎士団団長、女殿」

女「……むず痒いので女だけで良いです」

>>25
丁寧にありがとうございます。
一応知ってはいたのですが、時折入れ忘れたりしがちなようです……。
もう少ししっかり扱うことができるように気をつけます。

せめてsageは外せ

面白いよ
是非完結してくれさい

女「本日の警備の報告を各班はお願いします」

「一班、異常なしです」

「二班、異常なしです」

「三班、スープが美味しく作れました」

「四班、良い花畑を見つけました」

「五班、異常なしです」

女「ん、そう」

女「それでは本日の警備体制を交代式の少数体制に変更する」

「了解です!」

女「三班と四班は残れ、説教です」

「ええー」

女「まったくもう……」

オハナ「団長、花は役に立ちましたか?」

女「ああ、十分だよ。ただ警備任務をサボって花探しをしろとは言ってない」

オハナ「てへ」

女「可愛くねぇんだよ。お前男だろ」

女「警備を怠って迷惑を被るのは私だけじゃないんですからね」

オハナ「了解でーす」

女「次……またお前らか」

「ハイ!」

女「おいタオル、お前の料理趣味を他の団員に押し付けないで下さい」

タオル「はっ、申し訳ありません!」

女「仮にも代表者なんですから……」

タオル「これが今日出来たスープです!」ササッ

女「お前さぁ……私が説教してるのにふざけてるんですか?」ズズ

タオル(と、言いつつも料理に手を伸ばす辺り抜かりないなぁ)

女「ふんふん……ふーん……」ズズ

女(ムカつく!!!!!私よりも料理が出来るとか許せないんですが!!!)

「おい見ろ、団長の表情が怒りに満ちてるぞ!」

「やった!合格だ!」

「流石団長!分かりやすい!」

女「罰走二十です。休み時間はないと思って下さい」ピキピキ

女(決行は今夜……)

女(警備配置は頭に入ってるし、これといった問題も無し)

女(王都とは逆方向に山を抜ければ、特に問題なく進めるな)

女「……ふぅ」

女(国はあれやこれやと面倒だし、部下は私を舐め腐ってる)

女(本当、面倒だ)

女「……………そろそろ行くか」




女「…………」コンコン ガチャ

女「女です、準備は良いですか?」

鬼「おおよ!今か今かと心待ちにしてたぜぇ!!」

女「……」バタン

鬼「おいコラ!なんで扉を閉める!」

女「忘れたんですか?やかましい口は閉じろと言ったはずです」

鬼「ちっ、仕方ねぇだろ、楽しみだったんだからよ」

女「はぁ……行きますよ」ガチャ

鬼「ん」ノソリ

女「塔正面には誰もいませんが、もう少ししたら見回りが来ますので、ここから出たらすぐに裏手に回ります」

鬼「はいはい」

女「ちんたらしてると置いてきますよ」スタスタ

鬼「別に置いて行ってもいいぜ。好きにするからよ」

女「……」ジロ

鬼「冗談だよ、俺も鬼じゃねぇからそんな真似はしねぇよ」

女(……呼び方も見た目も鬼だと言ったら、怒るんだろうか……角は生えてないけど)スタスタ

女「ここが出入り口です。良かったですね、念願の外ですよ」

鬼「念願っつっても昨日今日の話だけどな」

女「……ムカつきますね」

鬼「そう怒るなって、老けるぞ」

女「はいはい羨ましいですねー、不老不死って」

鬼「冗談だってぇの、まったくよぉ」

女「……行きます」ガチャリ

鬼「おうさ」

女「さぁ、素早く密かに行きますよ」コソコソ

鬼「分かってるよ、隠密だろ」ノソノソ

女「全然忍べてないですけどね」

鬼「うるせぇなぁ、これでも頑張ってんだよ」

女「塔の裏手には山を抜ける裏道があるので、そこを通ります。遅れないで下さいよ」

鬼「ああ」

女「スピードも重要なんですからしっかりして下さい」

鬼「うるせぇなぁ、コソコソしてたら遅くもなるだろうが」

女「はぁ……あなたのトロさを考えに入れてませんでした」

鬼「あ?」ギロ

女「失言でした。忘れて下さい」

鬼「クソ、俺だってこんな動きじゃなきゃ……」

女「十数キロに渡って山道なので頑張って下さいね」

鬼「はぁ?その間ずっとこれか?」

女「当然です。さぁさぁ、そのすっトロい足をキビキビ動かして下さい」

鬼「」カチン

鬼「ここら辺に警備はいんのか?」

女「いえ、しかし表立った動きは出来ませんね」

鬼「へぇー」

女「ま、なんて言ったって足手まといがいるわけですから」ニヤ

鬼「」プチ

鬼「テメェ、チビのくせに生意気だな」

女「図体ばっかりデカいあなたに言われたくありません」ガシ

女「……へ?」

鬼「いいだろう、テメェにはよーく分からせてやんねぇと駄目みたいだ」

女「ひっ……あ、い……言い過ぎました!言い過ぎたのは謝ります!だから……」グググ

鬼「暴れんな!落ちても知らねぇぞ」

女「暴れますよ!死にたくないですもん!」バタバタ

鬼「いいか、俺はテメェらみてぇな軟弱じゃねぇんだ」

女「だから暴れてるんです!お願いします!勘弁してくださ……」

ドンッ

女「…………」ヒュオオオオオオ

女「え?」

鬼「こうよぉ、ズバッと跳んでった方が速いだろうがよぉ」

女「お、お、お、おち……落ちる……」

鬼「そりゃあ落ちるさ。俺だって空は飛べねぇ」

鬼「さぁ、しっかり掴まってねぇと次のジャンプでバラバラになっちまうぞぉ」ケラケラ

女「鬼ぃいいいいいいい!!!!!!!」

女「……」ゼェゼェ

鬼「なんだなんだぁ、軟弱だなぁ」

女「死ぬかと思いました」

鬼「そうかぁ?ここまで動くのは初めてだが、楽勝だぜ」

女「あなたは力があるからそんな事が言えるんです……。というか!」

鬼「あ?」

女「あなたは馬鹿なんですか?目立つ行動はしないようにって言ったじゃないですか!」

鬼「だから誰の目にもつかねーように高速で来たんじゃねぇか」

女「それは……もういいです」ドサ

鬼「……ああ、ここの景色を見ながら騒ぐのは良いもんじゃねぇなぁ」

女「日中であればもっといい景色なんですが、夜も夜で風情があります」

鬼「あの水溜まりが海というものか?」

女「そうですよ。あなたのジャンプでは到底飛び越せない程の大きさです」

鬼「そうか……そうか」

女「泣いてるんですか?」

鬼「ああ、俺は今猛烈に感動している」

女(単純で良いですねー)

鬼「逆に泣けないヤツの感性を疑っちまうぜ」

女「こんなの、当たり前の物ですから」

鬼「当たり前だからこそ良いんじゃねぇかよ、勿体ねぇな」

女「そういう物ですかねー」

女「……」

女(当たり前、か。いつから私の目はこんな光景ですら当たり前になって、風化してしまったんだろう)

鬼「……海辺の様子がおかしい」

女「へ?」

鬼「海から森へ……」

女「動物じゃないんですか?」

鬼「……木が切られていってる」ノソ

女「?」ムク

鬼「あそこだ、よく見ろ。お前の目は飾りか?」

女「…………機械……それも大型の!」

鬼「ありゃあなんだ?景観が台無しだぜ」

女「歯車の国……」

鬼「おい!どこへ行く!」

女「今日はここまでです。仕事ができました」スタスタ

鬼「仕事ってなんだ?アイツらと話でもしにいくのか?」

女「立派な侵略行為ですからね。あなたは塔に戻ってください」ダッ




女「ここで何をしている!」

「おやおや、見目麗しい方が訪ねてくるなんて誰のサプライズですか?」

女「こちらとしては貴様らの行動の方がサプライズだ」

「見られたからには……口封じをしておきたいですね」

女「何をしているのか分かっているのか?領域侵犯は非常に大きな問題だぞ」

「それも問題にならなければ大丈夫……今夜あなた方の国は終わるんです」バッ

女「なっ!」ガシ

女(伏兵……!メインの隊に気を取られ過ぎた!)

「さて、我が国が開発した兵器で更地にして差し上げますよ、あなたの国は」

女「はっ……なせ……」ググググ

ゴッ

女「うあっ」ポタポタ

「おいおいおい、せっかくの綺麗な方の顔を傷つけるんじゃないよ……勿体ない」

女「クソ………」

「今時女騎士なんざ流行らないって……さ、さっさと片付けて行きますよ。他に誰もいないみたいですし」

女(ここまであっさり掴まってしまうと、ホント……何にもできない)

「邪魔な甲冑を外せ、我が国の勝利の前夜祭だ!」

女「テメェら!タダで済むと思うなよ!絶対に全員生かして返さん!!」

「ギャンギャン吠えるなよ……ほら!早く脱がしちまえ!」

女「このクソ下衆ど……っ」ガッ

「もっと殴って黙らせろ、こう元気じゃどうしようもない」

女「けほっ……けほ」

女(このままじゃ……私も……国も……鬼さんも……)

「貴様らが俺にとっての悪だと言う事は把握した」

女「あ……」

「なんだ!あのデカ物は!!」

「コイツ、仲間がいたのか!コイツもまとめてやっちまえ!」

女(馬鹿じゃないの……帰れって言ったのに)

「各兵武装構え!」

ザザザ

鬼「遅い!」ボッ

「ギャ!!」

「やれ!やれ!!!」

鬼「撃たせるかよ」ヒュン

「ぶ、武装がバラバラに……!」

鬼「玩具で俺を殺せると思うなよ」

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