インデックス「――――――あなたと、私」 (26)
私の声が聞こえますか?
私の字が読めますか?
あなたが来るのをずっと待っています
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細い通路だった。
その両側は本棚によって壁となっていて、ぎっしり並べられた本は一体何冊あるのか想像もつかない。
真っ暗というわけではないが薄暗い空間で、通路も本棚もまるで何年も放置されていたように汚れに塗れ埃が積もっている。
そんな場所にインデックスは立っていた。
歩いてみる。ぎしぎしと床が軋んだ。
天井付近の壁にあるキャンドルだけがある程度闇を照らしている。
廊下に一冊の本が落ちていた。インデックスがその本に目をやると、タイトルには『Hello World』とあった。
「……Welcome to world」
小さく呟き、インデックスは歩いていく。
歩き始めて少しして、落ちていた本がひとりでに開き、ぺらりとページが捲られた。
白紙のページには一文だけが綴られていた。
『No』
細い通路を道なりに進んでいくと下へと降りる階段があった。
何もない階段を下りて扉を開ける。
先に待っていたのは本棚に挟まれた狭い通路だった。
引き返そうとする。ノブをがちゃがちゃと回すが扉は開かなかった。
「……どういうこと、なのかな」
歩いてみる。本棚が一部スライドするように移動し、そこに隠されていたドアが出現していた。
横幅が酷く狭い部屋だった。インデックス一人でほぼ埋まってしまう程度しかない。
だが前方にはある程度のゆとりがあり、数歩先のところに底の見えない巨大な穴がぽっかりと空いていた。
覗き込んでみても漆黒以外のものが見つからなかった。
「何、これ?」
思わずそんな声が漏れる。
穴の向こう側の正面には鏡が一枚取り付けられていた。
そこに写っているのは当然インデックスだった。白い修道服を身に纏い、髪は綺麗な銀髪。目は碧眼。
鏡の真上には文字列が書かれていた。
『Look For Mistakes』
「……何もないんだよ」
インデックスは呟いて背中を向け、部屋を出ようとする。
その時、ドアノブががちゃりと回った。
……インデックスはまだ回していない。
がちゃ、がちゃ。
ドアノブが何度も何度も回される。
インデックスは一歩下がり、ただそれを見つめていることしかできなかった。
ほお
少しするとギィィィ……という軋んだ音と共にドアが開いた。
おそるおそるインデックスは隙間から顔を覗かせ、外の様子を窺う。
「……誰もいないかも」
一歩外に出る。数歩歩いて、ふと振り返った。
そこにはぎっしりと本の並べられた本棚しかなかった。
ここには一体何冊もの本が収められているのか、とインデックスは答えの分かっている問いを心の中で行った。
通路を進み、階段を下りていく。
降りた先にある扉の上に短い文字列が書かれていた。
『Forgive Me.There's a monster inside of me』
「……」
扉を開く。軋んだ音と共に目の前に本棚に挟まれた薄汚れた通路が見えた。
通路の脇に小さなテーブルのようなものがあり、近くの床には埃を被った綺麗な宝石が転がっていた。
テーブルの上には小石の嵌った指輪が置かれていた。
インデックスがその指輪を手に取ると、ふっとこの通路を照らしていたキャンドルが全て一斉に消えてしまった。
「――――ああ」
インデックスは何かに納得したように呟く。
そっと指輪を戻す。しばらくすると再びキャンドルに火が点った。
期待
「……ごめんなさい。でも……」
直後だった。天井から吊り下げられているスピーカーからあの声が流れ始めた。
『そして、歩いてくるなりナイフで母の胸を一突きにしたそうです』
インデックスはゆっくりと立ち上がりじっとスピーカーを見つめていた。
『疲れて眠っていた兄の喉を深く掻き切ると、弟は最後に父の元へと向かったのです。
父は必死に中学生になったばかりの息子に呼びかけましたが、弟は何も答えず父を刺殺しました』
通路を歩いていくと、やはり下へと降りる階段があった。
インデックスは迷わずに降りていく。
『殺された母親は、妊娠中だったそうです』
ドアを開く。同じ通路を歩いていると、本棚から一冊の本が抜け落ちてきた。
手に取って細かく確認する。タイトルはなかった。
無題の本をぺらぺらと見てみるも、全てのページが白紙だった。
『また、その付近ではつい先日も妹が姉を絞殺するという事件が発生しています。
これは一人の男性を巡る痴情の縺れとされていますが、同日には僅か九歳の女の子が二歳になったばかりの弟を撲殺するという事件も起きていて……』
インデックスの手があるページで止まった。
そのページはやはり白紙で何も書かれてはいないが、栞のような一枚の紙が挟まれていた。
そこには『返却期限 七月二十日』とあった。
『警察は相次ぐ一連の事件に関連性はないとしながらも、平均的な家庭を取り巻く社会的問題と切り離して考えるのも難しいとの見解を発表しました』
インデックスは何かを言おうとして、だが何も言えずに。
ただ黙って白紙の無題の本を本棚へと戻して歩き、階段を降り、扉を開けた。
やはり同じ通路が延びていたが、それにはすぐに気付いた。
「……そこにいるの?」
歩く。足音はこつこつ、こつこつ、こつこつ、と刻まれていた。
インデックスの足音と重なるように、もう一つの足音がどこからか刻まれている。
『かーえーるーのーうーたーがー』
スピーカーから再びあの声が流れ始める。
歩いていると、本棚が移動して一つのドアが現れていることに気付く。
『きーこーえーてーくーるーよー』
ドアを開けて中へと入る。
その瞬間、インデックスの鼻腔をむせ返るような嫌な臭いが支配した。
何か大きなものが天井から吊るされていた。それは生き物だった。
「ひつ、じ……?」
思わず呆然とした様子で呟いた。
羊が足を鎖で固定され、天井から吊るされその血を床へぽたぽたと垂らしていた。
開かれた本がその落ちてくる血を受けるように置かれていて、羊の血をインクにして何かが白紙のページに浮かび上がっていた。
『献身的な子羊は』
短いが覚えのある一文だった。
インデックスは引き継ぐようにしてその続きを口にする。
「強者の知恵を守る」
直後にドサッ、と羊の死体が床へと落下した。
そのまま床へと溶けていくように、沈んでいくように死体が消えていく。
残されたその血が文字を浮かび上がらせた。
『False』
だがそれもすぐに消えると、羊の血は意思を持ったかのように部屋中を流れ始めた。
人間の体を走る血管のように床、壁、天井を問わず血が走る。
インデックスが慌てて部屋を出ようとしてノブをがちゃがちゃと回すが、ドアは決して開かなかった。
「あ、開かない……!?」
仕方なくインデックスが振り返ると、ドアのある壁を除いた三面の壁に血で描かれた絵が浮かび上がっていた。
全く上手なものではなく、子供の落書きのような大きさもバランスも全てが不均等なもの。
それらの絵はパラパラ漫画のアニメーションのように左側の壁から正面、右側の壁へと繋がっている。
左側の壁にはのっぺらぼうのインデックスと一人の少年が浮かび上がっていた。
正面には同じくのっぺらぼうのインデックスが浮かんでいるが、その全身を足元から羊の血が侵食するように上ってきていた。
右側にはインデックスと一人の少年が並んで笑っていた。
そして実際に、インデックスの体を血が上り始めた。
部屋中に流れていた血が全てインデックスを呑み込もうとしているかのように。
悲鳴をあげる。だが血は止まらずそのまま頭までを呑み込んだ。
そんな状態でインデックスは必死に声にならない声を張り上げた。
「私は、私なんだよっ!!」
気が付くとインデックスを呑み込んでいた血は全て消えてなくなっていた。
それどころか部屋全てからまるで初めからなかったかのように消滅し、普通の部屋へと戻っていた。
「私、は……」
インデックスは悔いるように言って、ドアを開けて部屋を出る。
しかしその先は暗い廊下ではなく、違う部屋だった。
正方形の巨大な部屋の中には壁一面に絵画が飾りつけられていた。
「こんなにたくさん……。この絵は……?」
一枚目の絵は刀身の折れた刀が地面に突き刺さっている絵だった。
絵の下に記されたタイトルは『守られぬもの』。
二枚目はサルバドール=ダリの作品のように全てがぐにゃぐにゃと歪んでいる絵だった。
記されたタイトルは『代償』。
三枚目は本を読んでいる全裸の女と、それを見つめているもう一人の絵だった。
記されたタイトルは『犠牲と階』。
四枚目は何本もの縄で首を括って自殺している絵だった。
記されたタイトルは『退屈な歓迎会と旅立ち』。
「……そう。でも、でも……」
インデックスは目を伏せる。
絵画はまだまだ無数にあって、とても全てを見ることなど不可能だった。
五枚目は電気椅子とその前に並ぶ何人もの人間の絵。
記されたタイトルは『アイヒマン実験』。
六枚目は多人数の人間が手を取っている中、一人だけ子供が混ざっている絵。
記されたタイトルは『貫く』。
七枚目は不自然な作り笑いを浮かべている絵。
記されたタイトルは『演技による自己的な保護的措置』。
八枚目は火炙りにされている女とそれを見つめる同一人物の女。
記されたタイトルは『不死鳥』。
九枚目は人間の体が幾重にも幾重にも積み上げられ天にも届くほどの塔となっている絵。
記されたタイトルは『忘却の果て』。
十枚目は本を読んでいるだけの絵。
記されたタイトルは『本に読まれる』。
それらを眺めたインデックスは何も言葉を口にすることができなかった。
ただ、ふと気付いた。大量に飾られた絵画群とは明らかに切り離された絵が二枚だけあった。
周囲にはその二枚以外の絵画は一切ない。
一つは見覚えのある制服を着た、目も鼻も口もない少女の絵。
記されたタイトルは『侵略者たるなにものかの自己喪失』。
そしてもう一つは、二人の人間が……?
絵について分かったのはそれだけだった。
ぐじゅり、と絵画の中心に煙草を押し付けたかのような大きな穴が開き、そこからどす黒い液体のようなものが流れ出してきた。
そして、その空けられた穴から――――
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記されたタイトルは『家』。
「おーい、起きろー朝飯だぞー」
「うぅん……あと五分だけ……」
「それはそのまま熟睡するフラグだから! 早くしないとご飯が冷めるぞ?」
「あうう……おはようなんだよ……」
「おう、おはようさん。っていうか珍しいなお前がご飯できてるって言ってんのに起きないのなんて」
「むっ、私がすぐに食べ物に釣られる単純な人間みたいな言い方はやめてほしいかも!」
「何も間違ってないじゃねぇかこの食欲大魔神」
「……お望みは丸刈りでいいんだね。頭皮がちょっとアレな形容しがたいアレなことになってもいいんだね」
「ちょ、歯を妖しく光らせないでください私めが間違っておりましたぁあああああ!!」
「……」
「……あれ? 噛まれ、ない?」
「……ねえ」
「ん? どうしたんだ」
「……ただいま」
「……? おう、おかえり」
「さーて朝ごはんなんだよ! おおっ、今日の朝食は豪華かも!」
「そうかぁ? 魚がある以外はいつもと大差ないはずだけどな」
「だってだって! ほら、今日はご飯が最初から二杯ある上にお魚も二匹出てるんだよ!」
「二匹? ……インデックスそれは駄目だそれは俺の分だ、勝手に自分のものにするな!」
「いただきますなんだよ! ……うーん、今日も美味しいかも!」
「だああああああもう!! ご飯の前にちゃんと歯を磨きなさい!」
「……ただいま」
無数の絵画の飾られている部屋の中に、天井から吊るされているゆらゆらと揺れるものがあった。
どういうことなの
はよ
とある異常の風紀委員
とある異常の風紀委員 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414823663/)
作者様の渋です、面白い作品が沢山あるのでこちらもどうぞ
http://www.pixiv.net/member.php?id=10985535
最近よく↑のやつ見るな
さー、レディースアンドジェントルマン。
レッツシンキング?
御坂「――――私は私、よね」 このスレの姉妹作?
御坂「――――私は私、よね」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416668407/)
おつん、ミステリアス
素直に考えれば禁書目録の素体になった少女だろうがはたして
つかこれあれじゃね
サイレントヒルの体験版のあれ、なんだっけ
へえ、面白い
あげ☆
P.T?
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