乙倉悠貴「桜ひらひら、春らんまん」 (34)
~桜並木~
チュンチュン ホーホケキョ
P「おーい悠貴。ちょっと待ってくれよ」
悠貴「プロデューサーさんっ、早く早くっ」
P「いったいどうしたんだ? いきなり走り出して」
悠貴「ほらっ、見てくださいっ!」
P「なんだなんだ」
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悠貴「桜の花びら、つかまえましたっ! えへへっ」
P「ほう、綺麗だな……さっきから、それをとろうとしてたのか?」
悠貴「はいっ」
P「はは、いつもは大人っぽく見えるけど……やっぱり悠貴もこどもだな」
悠貴「ふふふ、そうですよっ。背が高くたって、私はまだまだこどもなんですっ」
P「悠貴は年相応に扱われたいんだよな。……珍しいよ、全く」
悠貴「そんなに珍しいですかっ?」
P「ああ。 ありすだったら、『こども扱いしないでください。不愉快です』とか言いそうだし」
悠貴「さすがにっ、不愉快とまでは言わないと思いますけどっ……」
ビュウウウウウ
P「わっ」
悠貴「つ、強い風でしたねっ……あっ!」
P「どうした、悠貴?」
悠貴「ほらっ、あそこっ! すごい桜吹雪ですよっ!」
P「おお……確かに、凄いな」
悠貴「キレイですねっ……」
P「ああ……」
悠貴「……そういえば、プロデューサーさんっ」
P「ん?」
悠貴「プロデューサーさんは、桜のジンクスって知ってますかっ?」
P「いや、知らない。どんなのなんだ?」
悠貴「何でも、舞い落ちてくる花びらを上手に3つつかまえられたら、願い事が叶うとかっ」
P「へぇ~……あっ、それで悠貴は花びらをつかまえてたのか」
悠貴「もちろんっ、それもありますけどっ……」
P「けど?」
悠貴「桜の花びらって、可愛いじゃないですかっ。小さくて、ひらひら舞ってて……」
悠貴「だからつい、つかまえたくなっちゃうんですっ!」
P「なるほど。悠貴は可愛いもの、好きだもんな」
悠貴「はいっ!……プロデューサーさんも一緒につかまえませんかっ?」
P「俺も?」
悠貴「私、お手伝いしますよっ」
P「そうか……よし、やってみよう」
~~~~
P「……」
ヒラヒラ
P「……それっ、とった! あれ?」
悠貴「あははっ、ダメですよプロデューサーさんっ。しっかりとらないとっ」
P「んー……悠貴、手本見せてくれないか?」
悠貴「分かりましたっ。しっかり見ててくださいねっ?」
P「OK。バッチリ見てるぞ」
悠貴「こうやってっ……えいっ」
P「おおっ」
悠貴「ほらっ、出来たでしょっ?」
P「あんなに簡単に……すごいな」
悠貴「ふふふっ、慣れちゃえば簡単ですからっ。プロデューサーさんも、もう一回やってみてくださいっ」
P「ん、了解」
P「……よし……とうっ!」
P「……」
悠貴「ど、どうでしたかっ?」
P「……とれた。あっさり」
悠貴「……! やりましたねっ、プロデューサーさんっ!」
P「はは……悠貴のお陰だよ。ありがとう」
悠貴「どういたしましてっ、ですっ!……そうだっ」
悠貴「プロデューサーさんっ、どっちが多く花びらをつかまえられるか……勝負しませんかっ?」
P「……その勝負、乗った。言っておくが、負ける気はさらさらないぞ?」
悠貴「ふふっ、それは私も一緒ですっ!」
P「そうやって余裕でいられるのも今のうち……後で泣くなよ、悠貴」
悠貴「私だって、負けませんよっ!」
~~~~
P「結局、俺の負けか……分かってたけど」
悠貴「すみませんっ。つい調子に乗っちゃってっ……」
P「いやいや、気にすることないぞ。むしろ、嬉しかったくらいだし」
悠貴「嬉しかった?」
P「悠貴が年相応にはしゃいでいることがだよ。笑顔で……」
悠貴「ふふふっ。さっきも同じようなこと、言ってませんでしたっ?」
P「……そうだったかもな。まあそれだけ、嬉しいってことだ」
悠貴「そんな風に思ってくれてありがとうございますっ、プロデューサーさんっ!」ニコッ
P「どういたしまして。……あ」グゥ
悠貴「!」
P「ははは、何か食べたくなってきたな……」
悠貴「花より団子、なんですねっ」
P「むっ、失敬な。俺にだって風流を理解する心はあるんだぞ。今はただ、小腹が空いただけだ」
悠貴「えへへっ、分かってますよっ。ちょっと、プロデューサーさんをからかってみたくなっただけですっ」
P「……うう、悠貴がそんなことするなんて……」
悠貴「えっ!?」
P「俺は悲しいよ……」
悠貴「す、すみません、プロデューサーさんっ」オロオロ
P「……なんてな、冗談冗談」
悠貴「な~んだっ……もうっ、驚かせないでくださいっ!」ホッ
P「はは、さっきのお返しだ」
~~~~
テクテク
悠貴「結構歩いて来ましたねっ」
P「桜並木が続いてるから、景色はずっと変わらないけどな」
悠貴「そうですねっ……変わらなく、キレイですっ」
P「形式美……いやちょっと違うか。どうなんだろう……?」ウーム
悠貴「プロデューサーさんっ」
P「ん、どうした?」
悠貴「少し、そこのベンチでひと休みしませんかっ? おしゃべりもしたいですしっ」
P「……そうだな。ちょっと休んでいくか」
~~~~
ソヨソヨ
悠貴「春の香りでいっぱい……そよ風も暖かいなっ」
P「ああ……」
悠貴「ぽかぽか陽気で……もう、すっかり春ですねっ!」
P「ああ……」
悠貴「……プロデューサーさんっ? ちゃんと聞いてますかっ?」
P「ああ……聞いてるよ。こうもいい天気だと、どうも眠くなってしまってな」
悠貴「あははっ、それでぼんやりしてたんですねっ。でも、その気持ち分かりますっ」
P「だろ?」
ヒラヒラ
悠貴「あっ、桜の花びら……」
P「ちょうど悠貴の手の上に落ちてきたな」
悠貴「ふふふっ……小さくて、可愛いですっ」
P「あんなに壮大な桜の景色が、こんなにも小さく儚いものでできてる……なんだか不思議な感じだ」
悠貴「小さくても……しっかり咲いた、花ですからっ。それがたくさん集まるから、あんなにキレイになるんですよっ」
P「……その通りだな」
悠貴「はいっ」
~~~~
悠貴「あのですねっ、プロデューサーさんっ」
P「おう」
悠貴「私、桜の花のようなアイドルを目指してみますっ」
P「……ん?」
悠貴「さっき、桜の花のジンクスの話をしましたよねっ?」
P「ああ。花びらを上手く3つつかまえると願いが叶う、ってやつだろ?」
悠貴「はいっ。それでですねっ、私さっき思ったんですっ」
悠貴「……プロデューサーさんが、私の桜かもしれないってっ」
P「俺が?」
悠貴「……私はずっと、可愛くなりたかったんですっ。……女の子らしく、輝きたかったっ」
悠貴「……そんな時、プロデューサーさんが私を変えてくれましたっ。私の、願い事を叶えてくれましたっ」
P「……」
悠貴「私の目に映るプロデューサーさんの姿はとってもかっこよくて……とっても、素敵でしたっ。……だからっ」
悠貴「今度は私が、皆の願いを叶える……皆の心に春を運ぶ、希望の花に……なってみたいんですっ!」
P「……なれるよ、きっと。悠貴なら」
悠貴「私とプロデューサーさんなら、ですよねっ?」
P「そうだ、な。……俺も頑張らないとな」
悠貴「はいっ。これからも、一緒に頑張りましょうっ!」
~~~~
悠貴「今さらかもしれないですけどっ……プロデューサーさんは春、好きですかっ?」
P「……? 好きだよ」
悠貴「えへへっ、一緒ですねっ! 私も大好きですっ!」
P「春は暖かくて、過ごしやすいからな」
悠貴「陽気だと、なんだか踊りだしたくなっちゃいますよねっ!」
P「お、おう。ハイだな、悠貴」
悠貴「はいっ!」
P「……それ、洒落のつもりか?」
悠貴「ち、違いますよっ? ただ、返事をしただけですっ」
P「ははは、分かってる分かってる」
悠貴「もうっ……ホントにここで、踊っちゃいますよっ?」
P「どうぞ。むしろ見たい」
悠貴「むーっ!」プクー
P「悪い悪い。そうふくれるな」ハハ
悠貴「まあ、春の陽気に免じて……許してあげますっ」
P「よかった。春に、感謝しないとな」
~~~~
ソヨソヨ ヒラヒラ
P「春ってさ……」
悠貴「はいっ?」
P「いや、春はさ。すごく……短く感じるよな」
悠貴「言われてみればっ、確かにっ……」
P「新しい年度が始まって、慌ただしく過ごしているうちに……桜は散り、春は終わってしまう」
悠貴「桜はすぐに散っちゃいますからっ……少し、寂しいですっ」
P「春といえば桜。そう思う人にとっては、桜の終わりは春の終わりを意味するのかもしれないな」
悠貴「……プロデューサーさんは、ずっと春が続いてほしいんですかっ?」
P「いや……そうは、思わない。さっき俺は、春が好きだって言ったよな?」
悠貴「はいっ」
P「一年中春で、好きなときに桜が見られるとしたら……多分、好きにはならなかったと思う。慣れてしまって、価値が見出だせないだろうから」
P「春も桜も……すぐに終わってしまうからこそ、心ひかれるんじゃないかな」
悠貴「……」
P「……! す、すまない。つまらない話だったな」
悠貴「いえっ、ためになるお話でしたよっ! なるほどって思いましたっ」
P「そうか。ならよかった」ホッ
悠貴「でもどうして、その話をしようと思ったんですかっ?」
P「そういえば何でだろうな……よく分からないが、多分」
P「一瞬一瞬を大切に……って伝えたかったんだと思う」
悠貴「……ありがとうございますっ!」
P「えっ?」
悠貴「プロデューサーさんのおかげで、ますます決意が固まりましたっ」
悠貴「私も、桜の花みたいにっ……一瞬一瞬を、精一杯輝きたいと思いますっ!」
P「おう。頑張れよ」
悠貴「……でも、ですよっ? プロデューサーさんっ」
悠貴「いつまでもここで、一緒に桜を見ていられるなら……それはそれで、素敵ですよねっ!」
P「え? 突然、どうし……」
P「……」
悠貴「……」ニコニコ
P「……そうかもな。でも、戻らないわけにもいかないだろう?」
悠貴「ふふっ、プロデューサーさんならそう言うと思ってましたっ」
P「すまないな」
悠貴「いえっ」
ピピピピ
P「ん、メールだ。……美嘉からか」
悠貴「美嘉さんは、なんて言ってますかっ?」
P「えと、なになに……皆でカラオケをやりたいから、そろそろ戻ってきてくれだってさ」
悠貴「……皆さんを待たせる訳にはいきませんねっ。戻りましょう、プロデューサーさんっ」
P「……そうだな。戻ろう」
~~~~
テクテク
P「……もう着くな」
悠貴「プロデューサーさんっ」
P「ん?」
悠貴「もしよかったら……来年の春もまた、一緒にお花見に来ませんかっ?」
P「……ああ。桜が咲いたら、また来ようか」
悠貴「絶対ですよっ?」
P「もちろんだ。約束する」
悠貴「ふふっ、よかったですっ」
オソイヨー ハヤクハヤクー
悠貴「あっ、皆さん呼んでますねっ……走りましょうっ、プロデューサーさんっ!」
P「……急がないとだな」
悠貴「どっちが早く着けるか……競争ですっ!」
P「おいおい、勘弁してくれよ」ハハハ
悠貴「遅くなって、すみませーんっ!」タッタッタ
P「え? 結局走るの?」
悠貴「……」チラ
ヒラヒラ
悠貴(……桜はもうすぐ散っちゃいますけどっ、来年にはまたきっと……キレイに咲くはずですっ)
悠貴 (その頃には、プロデューサーさんや、皆さんにっ……)
悠貴 (――アイドルとして成長した姿……見せられるといいなっ!)
これで終わりです。
桜は春の象徴だと思います。いつ見ても綺麗ですよね。
見てくれた方々、どうもありがとうございました!
おとくらくんほんとかわいい
乙!
イベ走った甲斐があった
悠貴たんかわえぇ・・・投票待った無し!
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