乙倉悠貴「桜ひらひら、春らんまん」 (34)
~桜並木~
チュンチュン ホーホケキョ
P「おーい悠貴。ちょっと待ってくれよ」
悠貴「プロデューサーさんっ、早く早くっ」
P「いったいどうしたんだ? いきなり走り出して」
悠貴「ほらっ、見てくださいっ!」
P「なんだなんだ」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1429089649
悠貴「桜の花びら、つかまえましたっ! えへへっ」
P「ほう、綺麗だな……さっきから、それをとろうとしてたのか?」
悠貴「はいっ」
P「はは、いつもは大人っぽく見えるけど……やっぱり悠貴もこどもだな」
悠貴「ふふふ、そうですよっ。背が高くたって、私はまだまだこどもなんですっ」
P「悠貴は年相応に扱われたいんだよな。……珍しいよ、全く」
悠貴「そんなに珍しいですかっ?」
P「ああ。 ありすだったら、『こども扱いしないでください。不愉快です』とか言いそうだし」
悠貴「さすがにっ、不愉快とまでは言わないと思いますけどっ……」
ビュウウウウウ
P「わっ」
悠貴「つ、強い風でしたねっ……あっ!」
P「どうした、悠貴?」
悠貴「ほらっ、あそこっ! すごい桜吹雪ですよっ!」
P「おお……確かに、凄いな」
悠貴「キレイですねっ……」
P「ああ……」
悠貴「……そういえば、プロデューサーさんっ」
P「ん?」
悠貴「プロデューサーさんは、桜のジンクスって知ってますかっ?」
P「いや、知らない。どんなのなんだ?」
悠貴「何でも、舞い落ちてくる花びらを上手に3つつかまえられたら、願い事が叶うとかっ」
P「へぇ~……あっ、それで悠貴は花びらをつかまえてたのか」
悠貴「もちろんっ、それもありますけどっ……」
P「けど?」
悠貴「桜の花びらって、可愛いじゃないですかっ。小さくて、ひらひら舞ってて……」
悠貴「だからつい、つかまえたくなっちゃうんですっ!」
P「なるほど。悠貴は可愛いもの、好きだもんな」
悠貴「はいっ!……プロデューサーさんも一緒につかまえませんかっ?」
P「俺も?」
悠貴「私、お手伝いしますよっ」
P「そうか……よし、やってみよう」
~~~~
P「……」
ヒラヒラ
P「……それっ、とった! あれ?」
悠貴「あははっ、ダメですよプロデューサーさんっ。しっかりとらないとっ」
P「んー……悠貴、手本見せてくれないか?」
悠貴「分かりましたっ。しっかり見ててくださいねっ?」
P「OK。バッチリ見てるぞ」
悠貴「こうやってっ……えいっ」
P「おおっ」
悠貴「ほらっ、出来たでしょっ?」
P「あんなに簡単に……すごいな」
悠貴「ふふふっ、慣れちゃえば簡単ですからっ。プロデューサーさんも、もう一回やってみてくださいっ」
P「ん、了解」
P「……よし……とうっ!」
P「……」
悠貴「ど、どうでしたかっ?」
P「……とれた。あっさり」
悠貴「……! やりましたねっ、プロデューサーさんっ!」
P「はは……悠貴のお陰だよ。ありがとう」
悠貴「どういたしましてっ、ですっ!……そうだっ」
悠貴「プロデューサーさんっ、どっちが多く花びらをつかまえられるか……勝負しませんかっ?」
P「……その勝負、乗った。言っておくが、負ける気はさらさらないぞ?」
悠貴「ふふっ、それは私も一緒ですっ!」
P「そうやって余裕でいられるのも今のうち……後で泣くなよ、悠貴」
悠貴「私だって、負けませんよっ!」
~~~~
P「結局、俺の負けか……分かってたけど」
悠貴「すみませんっ。つい調子に乗っちゃってっ……」
P「いやいや、気にすることないぞ。むしろ、嬉しかったくらいだし」
悠貴「嬉しかった?」
P「悠貴が年相応にはしゃいでいることがだよ。笑顔で……」
悠貴「ふふふっ。さっきも同じようなこと、言ってませんでしたっ?」
P「……そうだったかもな。まあそれだけ、嬉しいってことだ」
悠貴「そんな風に思ってくれてありがとうございますっ、プロデューサーさんっ!」ニコッ
P「どういたしまして。……あ」グゥ
悠貴「!」
P「ははは、何か食べたくなってきたな……」
悠貴「花より団子、なんですねっ」
P「むっ、失敬な。俺にだって風流を理解する心はあるんだぞ。今はただ、小腹が空いただけだ」
悠貴「えへへっ、分かってますよっ。ちょっと、プロデューサーさんをからかってみたくなっただけですっ」
P「……うう、悠貴がそんなことするなんて……」
悠貴「えっ!?」
P「俺は悲しいよ……」
悠貴「す、すみません、プロデューサーさんっ」オロオロ
P「……なんてな、冗談冗談」
悠貴「な~んだっ……もうっ、驚かせないでくださいっ!」ホッ
P「はは、さっきのお返しだ」
~~~~
テクテク
悠貴「結構歩いて来ましたねっ」
P「桜並木が続いてるから、景色はずっと変わらないけどな」
悠貴「そうですねっ……変わらなく、キレイですっ」
P「形式美……いやちょっと違うか。どうなんだろう……?」ウーム
悠貴「プロデューサーさんっ」
P「ん、どうした?」
悠貴「少し、そこのベンチでひと休みしませんかっ? おしゃべりもしたいですしっ」
P「……そうだな。ちょっと休んでいくか」
~~~~
ソヨソヨ
悠貴「春の香りでいっぱい……そよ風も暖かいなっ」
P「ああ……」
悠貴「ぽかぽか陽気で……もう、すっかり春ですねっ!」
P「ああ……」
悠貴「……プロデューサーさんっ? ちゃんと聞いてますかっ?」
P「ああ……聞いてるよ。こうもいい天気だと、どうも眠くなってしまってな」
悠貴「あははっ、それでぼんやりしてたんですねっ。でも、その気持ち分かりますっ」
P「だろ?」
ヒラヒラ
悠貴「あっ、桜の花びら……」
P「ちょうど悠貴の手の上に落ちてきたな」
悠貴「ふふふっ……小さくて、可愛いですっ」
P「あんなに壮大な桜の景色が、こんなにも小さく儚いものでできてる……なんだか不思議な感じだ」
悠貴「小さくても……しっかり咲いた、花ですからっ。それがたくさん集まるから、あんなにキレイになるんですよっ」
P「……その通りだな」
悠貴「はいっ」
~~~~
悠貴「あのですねっ、プロデューサーさんっ」
P「おう」
悠貴「私、桜の花のようなアイドルを目指してみますっ」
P「……ん?」
悠貴「さっき、桜の花のジンクスの話をしましたよねっ?」
P「ああ。花びらを上手く3つつかまえると願いが叶う、ってやつだろ?」
悠貴「はいっ。それでですねっ、私さっき思ったんですっ」
悠貴「……プロデューサーさんが、私の桜かもしれないってっ」
P「俺が?」
悠貴「……私はずっと、可愛くなりたかったんですっ。……女の子らしく、輝きたかったっ」
悠貴「……そんな時、プロデューサーさんが私を変えてくれましたっ。私の、願い事を叶えてくれましたっ」
P「……」
悠貴「私の目に映るプロデューサーさんの姿はとってもかっこよくて……とっても、素敵でしたっ。……だからっ」
悠貴「今度は私が、皆の願いを叶える……皆の心に春を運ぶ、希望の花に……なってみたいんですっ!」
P「……なれるよ、きっと。悠貴なら」
悠貴「私とプロデューサーさんなら、ですよねっ?」
P「そうだ、な。……俺も頑張らないとな」
悠貴「はいっ。これからも、一緒に頑張りましょうっ!」
~~~~
悠貴「今さらかもしれないですけどっ……プロデューサーさんは春、好きですかっ?」
P「……? 好きだよ」
悠貴「えへへっ、一緒ですねっ! 私も大好きですっ!」
P「春は暖かくて、過ごしやすいからな」
悠貴「陽気だと、なんだか踊りだしたくなっちゃいますよねっ!」
P「お、おう。ハイだな、悠貴」
悠貴「はいっ!」
P「……それ、洒落のつもりか?」
悠貴「ち、違いますよっ? ただ、返事をしただけですっ」
P「ははは、分かってる分かってる」
悠貴「もうっ……ホントにここで、踊っちゃいますよっ?」
P「どうぞ。むしろ見たい」
悠貴「むーっ!」プクー
P「悪い悪い。そうふくれるな」ハハ
悠貴「まあ、春の陽気に免じて……許してあげますっ」
P「よかった。春に、感謝しないとな」
~~~~
ソヨソヨ ヒラヒラ
P「春ってさ……」
悠貴「はいっ?」
P「いや、春はさ。すごく……短く感じるよな」
悠貴「言われてみればっ、確かにっ……」
P「新しい年度が始まって、慌ただしく過ごしているうちに……桜は散り、春は終わってしまう」
悠貴「桜はすぐに散っちゃいますからっ……少し、寂しいですっ」
P「春といえば桜。そう思う人にとっては、桜の終わりは春の終わりを意味するのかもしれないな」
悠貴「……プロデューサーさんは、ずっと春が続いてほしいんですかっ?」
P「いや……そうは、思わない。さっき俺は、春が好きだって言ったよな?」
悠貴「はいっ」
P「一年中春で、好きなときに桜が見られるとしたら……多分、好きにはならなかったと思う。慣れてしまって、価値が見出だせないだろうから」
P「春も桜も……すぐに終わってしまうからこそ、心ひかれるんじゃないかな」
悠貴「……」
P「……! す、すまない。つまらない話だったな」
悠貴「いえっ、ためになるお話でしたよっ! なるほどって思いましたっ」
P「そうか。ならよかった」ホッ
悠貴「でもどうして、その話をしようと思ったんですかっ?」
P「そういえば何でだろうな……よく分からないが、多分」
P「一瞬一瞬を大切に……って伝えたかったんだと思う」
悠貴「……ありがとうございますっ!」
P「えっ?」
悠貴「プロデューサーさんのおかげで、ますます決意が固まりましたっ」
悠貴「私も、桜の花みたいにっ……一瞬一瞬を、精一杯輝きたいと思いますっ!」
P「おう。頑張れよ」
悠貴「……でも、ですよっ? プロデューサーさんっ」
悠貴「いつまでもここで、一緒に桜を見ていられるなら……それはそれで、素敵ですよねっ!」
P「え? 突然、どうし……」
P「……」
悠貴「……」ニコニコ
P「……そうかもな。でも、戻らないわけにもいかないだろう?」
悠貴「ふふっ、プロデューサーさんならそう言うと思ってましたっ」
P「すまないな」
悠貴「いえっ」
ピピピピ
P「ん、メールだ。……美嘉からか」
悠貴「美嘉さんは、なんて言ってますかっ?」
P「えと、なになに……皆でカラオケをやりたいから、そろそろ戻ってきてくれだってさ」
悠貴「……皆さんを待たせる訳にはいきませんねっ。戻りましょう、プロデューサーさんっ」
P「……そうだな。戻ろう」
~~~~
テクテク
P「……もう着くな」
悠貴「プロデューサーさんっ」
P「ん?」
悠貴「もしよかったら……来年の春もまた、一緒にお花見に来ませんかっ?」
P「……ああ。桜が咲いたら、また来ようか」
悠貴「絶対ですよっ?」
P「もちろんだ。約束する」
悠貴「ふふっ、よかったですっ」
オソイヨー ハヤクハヤクー
悠貴「あっ、皆さん呼んでますねっ……走りましょうっ、プロデューサーさんっ!」
P「……急がないとだな」
悠貴「どっちが早く着けるか……競争ですっ!」
P「おいおい、勘弁してくれよ」ハハハ
悠貴「遅くなって、すみませーんっ!」タッタッタ
P「え? 結局走るの?」
悠貴「……」チラ
ヒラヒラ
悠貴(……桜はもうすぐ散っちゃいますけどっ、来年にはまたきっと……キレイに咲くはずですっ)
悠貴 (その頃には、プロデューサーさんや、皆さんにっ……)
悠貴 (――アイドルとして成長した姿……見せられるといいなっ!)
これで終わりです。
桜は春の象徴だと思います。いつ見ても綺麗ですよね。
見てくれた方々、どうもありがとうございました!
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません