ミカサ「エレンが死んだ」(21)
ミカサ「……」
ミカサ「ただいまエレン」
ミカサ「今日はいい天気だった」
ミカサ「朝起きて顔を洗って歯を磨いて食事をした」
ミカサ「馬に乗って走った吹き抜ける風は気持ちがいい」
ミカサ「立体機動で飛び回って戦った巨人を殺して殺して殺した」
ミカサ「とても疲れたけれどたくさん殺せたのでよかった」
ミカサ「もう少しであいつらはみんな死ぬ死ぬ絶対に死ぬ私が殺してみせる」
ミカサ「……」
ミカサ「おやすみエレン」
ミカサ「……」
ミカサ「ただいまエレン」
ミカサ「今日もいい天気だった」
ミカサ「朝起きて顔を洗って歯を磨いて食事をした何の味もしない食事を」
ミカサ「馬に乗って走った吹き抜ける風は気持ちがいい生ぬるい気持ちが悪い」
ミカサ「立体機動で飛び回って戦った巨人を私は今日もたくさん殺して殺して殺した」
ミカサ「でも仲間もたくさん死んでしまったとても残念なことに」
ミカサ「かわいそうに私は守れなかった私が弱いから」
ミカサ「明日はもっと殺すそうすればきっと幸せ」
ミカサ「……」
ミカサ「おやすみエレン」
ミカサ「……」
ミカサ「ただいまエレン」
ミカサ「今日は天気だった私もいい、ので」
ミカサ「たくさん死んだ、仲間たちの食事を巨人が殺した殺して」
ミカサ「でも明日は立体機動が私は強いので殺す」
ミカサ「ただいまエレン、私は弱いからかわいそうに死んだごめんなさい」
ミカサ「守る? 何を? 弱い、ので、何もできなかったので残念だ私は」
ミカサ「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
ミカサ「……」
ミカサ「おやすみエレン、目が覚めてもあなたはどこにもいないけれど」
ミカサ「……」
ミカサ「エレン聞こえているのなら返事をしてほしい」
ミカサ「私はあなたを守りたい私の人生を変えてくれたあなたの力になりたい」
ミカサ「あなたがいれば私は何でもできる」
ミカサ「さあ早く起きていつものように元気な姿を見せてほしい」
ミカサ「……」
ミカサ「エレン顔にパンくずがついていると私は言う」
ミカサ「余計なお世話だと言ってあなたは私の手を払う」
ミカサ「鬱陶しがられても私は構わなかったあなたのそばにいられることが幸せだから」
ミカサ「でも払ってくれる手はもうない」
ミカサ「おやすみエレンあなたに二度と朝は来ない」
ジャン「もう見てられねえよ!!!」ガタッ
アルミン「ジャン……」
ジャン「あいつエレンが死んでからずっとあの調子だぞ!?」
アルミン「……無理もないよ」
ジャン「討伐数はうなぎ上りだ、取り憑かれたように巨人どもを殺しまくってる」
ジャン「まるで何かを忘れたがってるみたいにな……」
アルミン「……」
ジャン「でもこのままじゃあいつの精神はズタボロだ!!」
アルミン「ジャン、何をするつもり……?」
ジャン「決まってんだろ! ミカサを救うんだ」
アルミン「……やめたほうがいいよ」
ジャン「何だと? てめえ、やけに冷たい野郎だな」
ジャン「どうせ俺に出来ることなんか何もねえって思ってんだろ」
アルミン「……」
ジャン「分かってんだよ! あいつに敵わないってことぐらい……」
ジャン「でも俺だって……ミカサ?」
アルミン「ジャン……?」
ジャン「ミカサ!! やめろ!!」
ミカサ「離して!!」
ジャン「お前、死ぬつもりか……!? おいアルミン、手伝え!!」
アルミン「……」
ジャン「クソ、なんだよその目は!? おいミカサ、早まんなって……!!」
ミカサ「離して私はもう死ぬ今すぐエレンの元へ」
ジャン「ふざけんな!!」
ジャン(くそ……どうすれば……)
ミカサ「エレン……」
ジャン(畜生、てめえのせいだぞエレン……!!)
ジャン「……お前が死んだらあいつの思いはどうなるんだ!?」
ミカサ「……!」
ジャン「全部無駄になっちまう……そうだろ?」
ジャン「それでもいいのかよ……?」
ミカサ「……」
ミカサ「エレン」
ミカサ「エレンどうして死んでしまったの」
ミカサ「私はあなたを守ると約束したのに」
ミカサ「何もできなかった自分が許せない」
ミカサ「あなたを食い殺した巨人が許せない」
ミカサ「必ず殺す一匹残らず殺す巨人を駆逐する」
ミカサ「そして、何が残る?」
ミカサ「あなたのいない世界で私は何を頼りに生きていけばいい?」
ミカサ「今日も昨日も一昨日もたくさんの仲間が死んだ」
ミカサ「そして明日も明後日もこれからずっと先も」
ミカサ「戦い続けることに何の意味がある?」
ミカサ「前にあなたが死んでしまったと思ったとき」
ミカサ「私はこの世に何の悔いもないと思った」
ミカサ「死んでしまおうかと思った。それでも体が勝手に動いた」
ミカサ「戦え、戦え、戦え。あなたの言葉は今でも胸に焼き付いている」
ミカサ「生きる希望を見失いかけていた私に光を注いでくれた。まだ生きようと思った」
ミカサ「だから私は戦った。あなたの言葉に恥じない生き方をするために」
ミカサ「……あなたが生きていると知ったとき、嬉しくて涙が止まらなかった」
ミカサ「私にとってかけがえのない存在。またあなたの為に戦うことができると思った」
ミカサ「でも」
ミカサ「そんなあなたはもうどこにもいない」
ミカサ「戦って、戦って、戦って―――」
ミカサ「残ったのは虚しさだけ」
ミカサ「もう限界だ」
ミカサ「こんな世界で、私は何を希望に生きていけばいい?」
ジャン「……」
ジャン「知らねえよ」
ジャン「俺はお前の生きる希望にはなれない」
ジャン「でもな」
ジャン「俺はお前に生きててほしいんだよ」
ジャン「お前が死んだら俺は悲しい」
ジャン「だから生きててくれよ」
ジャン「どんな姿になってもいいから」
ジャン「なあミカサ、死なないでくれ」
ジャン「頼むよ……」
ミカサ「……ジャン」
ミカサ「……」
ジャン「ミカサ……」
ミカサ「……」
ミカサ「ごめんなさい」
ジャン「あ」
ジャン「あああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
アルミン「……」ズキン
アルミン(また……)
アルミン(まただ……)
―――
ジャン『ミカサ!! やめろ!!』ガシッ
ミカサ『離して!!』ジタバタ
ジャン『お前、死ぬつもりか……!? アルミン、そっち押さえてろ!』
アルミン『ミカサ、早まらないでくれ……!!』
ミカサ『離して私はもう死ぬ今すぐエレンの元へ』
ジャン『ふざけんな!!』
ジャン(くそ……どうすれば……)
ミカサ『エレン……』
ジャン(畜生、てめえのせいだぞエレン……!!)
ジャン『……お前が死んだらあいつの思いはどうなるんだ!?』
ミカサ『……!』
ジャン『全部無駄になっちまう……そうだ』
ミカサ『あなたに何が分かるの?』
ジャン『え……?』
ミカサ『あなたには分からない』
ミカサ『私とエレンのことを何も知らないから』
ミカサ『あなたには』
ミカサ『関係』
ミカサ『ないから』
ジャン『……』
アルミン『ミカサ……』
ミカサ『ごめんなさい』
アルミン(その時だった)
アルミン(ほんの一瞬の間だけ)
アルミン(ミカサの腕を押さえていた――)
アルミン(ジャンの力が、抜けた)
ザシュッ
ジャン『あ』
ジャン『あああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!』
―――
ジャン「……」
アルミン「ジャン」
アルミン「ミカサはもういないんだ」
ジャン「ただいまエレン」
ジャン「今日はいい天気だった」
アルミン「ジャン、やめるんだ」
ジャン「朝起きて顔を洗って歯を磨いて食事をした」
ジャン「馬に乗って走った吹き抜ける風は気持ちがいい……」
アルミン「……」
ジャン「もう見てられねえよ!!!」
アルミン「ジャン……」
ジャン「あいつエレンが死んでからずっとあの調子だぞ!?」
アルミン「……無理もないよ」
ジャン「討伐数はうなぎ登りだ、憑り憑かれたように巨人どもを……」
アルミン(いつまで)
アルミン(いつになったら、僕は彼を救える?)
ジャン「でもこのままじゃあいつの精神はズタボロだ!!」
アルミン「ジャン、何をするつもり……?」
ジャン「決まってんだろ」
ジャン「ミカサを救うんだよ」
おしまい
こえぇよおぉぉぉ乙
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