裕子「さいきっく復活!」悠貴「頑張りましょうっ」 (77)

~事務所~


ガチャ  バタン

P「おはようございます……おっ」

堀裕子「ムムム……」ムムム

P「よう、裕子。おはよう」

裕子「……」

P「裕子?」

裕子「……ぬわーーーっ!!!」

P「!?」

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裕子「もうダメです! おしまいです!」

P「い、いきなりどうしたんだ!? 取り敢えず落ち着け!」

裕子「あっ、プロデューサー……おはようございます」

P「おう。……それで、大丈夫か?」

裕子「大丈夫じゃありません……」

P「……なにがあったんだ」

裕子「……私の、アイデンティティーの危機なんです!」

P「……すまない、よくわからない。詳しく話してくれないか?」

裕子「はい。実は、なんと……」

P「……っ」ゴクリ

裕子「……スプーンが、曲がらなくなっちゃったんです!」

P 「……」ズルッ

裕子「ねっ、大変なことでしょう?」

P「えっと……前は、曲がってたっけ?」

裕子「ひどい!」

P「だって、知恵の輪を力づくで解こうとしてたし……」

裕子「あ、あれはさいきっく力技! さいきっくなんです!」

P「……サイキックなんだな?」

裕子「そうです!……とにかく」

裕子「私、困ってるんです。プロデューサーも一緒に考えてください!」

P「考えろねぇ……俺は超能力もなにも使えないんだけど」

裕子「いえ! 私にはわかります……プロデューサーはサイキッカーです!」ビシッ

裕子「サイキッカーですから、超能力を使えるんです!」ビシビシッ

P「いや、だから……」

裕子「お願いします、プロデューサー!」ペコッ

P「うーん……」

裕子「お願いします! このとーりです!」ペコペコッ

P「……わかった、協力するよ」

裕子「ありがとうございます! さすがプロデューサーですねっ」

P「あまり時間がないから、少しだけだぞ?」

裕子「了解です!……で、どうしたらいいでしょうか?」

P「そうだな……曲がってた時の感覚を思い出せばいけるんじゃないか?」

裕子「おお! 確かに!」

P「他には……もっと心を込めて念じる、とか」 

裕子「うんうん! やっぱり、プロデューサーは頼りになります!」

P「そうか?」

裕子「はいっ!……では早速」スチャ

裕子「心を込めて……ムン! ムンッ! ムムムーン!」ムムムーン

スプーン「……」シーン

裕子「ムムム……」

P「……曲がらないな」

裕子「……いやっ、きっとまだエネルギーが足りないんです!」

P「エネルギーか」

裕子「私のだけでは足りません……ですから、プロデューサーのエネルギーもください!」

P「くださいって言ったって、どうすれば……」

裕子「簡単です! 私と一緒に念じてください!」

P「それだけでいいのか?」

裕子「はい!」

P「大丈夫かな……」

裕子「では、いきますよ。せーの!」

裕子・P「ムムムーンッ!」ムムムーンッ

スプーン「……」シーン

P「……」

裕子「……あれぇー?」

P「曲がらないな……」

裕子「そ、そんなはずは……あっ、さては!」

P「何か分かったのか?」

裕子「プロデューサーも、スランプなんですね?」 

P「え、スランプ?」

裕子「そうじゃなきゃ今頃、グニャリと曲がってるはずです!」

P「……」

裕子「そうですよね?」

P「……おう、そうだよ!」

裕子「やっぱり! では、もう一回やってみましょう! せーのっ」

裕子・P「ムムムーンッ!」ムムムーンッ

~しばらくして~


ガチャ  バタン

乙倉悠貴「おはようございますっ」

若林智香「おはようございまーす!」

裕子・P「ムムムーンッ!」ムムムーンッ

悠貴「えっ?」

智香「な、なにやってるんですか?」

P「……ん? おお、悠貴、智香、おはよう」

裕子「二人とも、おはようございます! 今、プロデューサーと一緒にさいきっくをですね……」

P「裕子のスプーンが曲がらないんだよ。だから俺も手伝ってるんだ」

悠貴「スプーン……?」

裕子「はい!」

智香「うーん……よくわからないけど、二人とも困ってるんですね」

P「そうなんだ……」

智香「だったら二人のために、私、応援しますよ☆」 

悠貴「わ、私もしますっ!」

裕子「おおっ、ありがとうございます!」

P「よし、じゃあもう一度……せーの」

裕子・P「ムムムーンッ!」ムムムーンッ

智香「フレー! フレー! 頑張れ頑張れ☆」

悠貴「お二人とも頑張ってくださいっ! フレー! フレー!」

裕子・P「ムムム! ムムム! ムムムーンッ!」ムムムーン

スプーン「……」シーン

裕子・P「ムムム……」

智香「フレー! フレー!」

悠貴「ふ、フレー……」

スプーン「……」シーン

裕子・P「ムム……」

智香「フレー! フレー!」

スプーン「……」シーン

裕子・P「……」

裕子・P 「……はぁ」ガックリ

悠貴「ダメ、みたいですねっ……」

智香「まだまだ! いけますよねっ☆」

裕子「そうです! やりましょう、プロデューサー!」

P「……すまない。もうそろそろ仕事が……」

裕子「えっ!?……あ、もうこんな時間なんですか」

P「裕子は確かレッスンだったと思うが……大丈夫だよな?」

裕子「だ……大丈夫です! エスパーユッコにかかれば、それくらいなんでもありません!」

P「そうか。……スプーンが曲がらなくても、気を落とすなよ?」

裕子「だ、大丈夫……大丈夫……」

P「……」

P「二人も確かレッスンだったな。……始まるまででもいいから、裕子に協力してあげてくれないか?」

智香「はいっ!」

悠貴「少しでも裕子さんの力になれるならっ……」

裕子「二人とも……」ジーン

P「ありがとな。……それじゃあ裕子、頑張れよ」

裕子「はい!」

智香「頑張ろ、ユッコちゃん♪」

P「……悠貴、ちょっと来てくれ」

悠貴「は、はいっ」

P「……あとで智香にも伝えて欲しいんだけど……」ゴニョゴニョ

悠貴「……はいっ……なるほどっ……」ヒソヒソ

P「……ということだ。頼んだぞ」

悠貴「わかりましたっ」

P「……バレないようにな」

ガチャ  バタン 

裕子「……では、さいきっく復活!」
 
悠貴「頑張りましょうっ」

智香「おおー☆」

裕子「よろしくお願いします!」

悠貴「はいっ」

智香「……ところで悠貴ちゃん。Pさんとなに話してたんですか?」

悠貴「すみませんっ、智香さん。あとで話しますっ」

智香「? 」

裕子「方法……方法……?」

悠貴「サイキック、ですかっ……」

智香「うーん……あっ!」

裕子「なにか思い付きましたか?」

智香「瞑想してみるとか、どうかな?」

裕子「……! なるほど!」

悠貴「確かに、効果ありそうですねっ」

智香「でしょ?」

裕子「早速、やってみましょう!」

智香「座禅を組んで……目を閉じる……」

裕子「目を……閉じる……」

悠貴「……」

智香「……」

裕子「……」

悠貴「……」

悠貴 (……なんだか、眠く……) ウトウト

悠貴 (はっ……! 寝ちゃ、ダメですっ……)
 
悠貴 (なにも考えずに……心を無に……)

悠貴「……」

悠貴「……」ウトウト

悠貴 (……! ダメ、ダメっ! 寝ちゃダメですっ!)

悠貴 (うーん……なにも考えないって案外難しいですねっ)

悠貴 (そういえば、二人はどうしてるのかな……?) チラッ

智香 「……」

悠貴 (智香さん、すごいっ……微動だにしてないっ……)

悠貴 (裕子さんはっ……) チラッ

裕子「……」

悠貴 (わあっ、裕子さんもすご……)

裕子「……むにゃむにゃ」

悠貴 (あ……)

悠貴 (どうしましょうっ……起こしたほうが……)

裕子「……」

裕子「……むにゃ」グラッ

悠貴 (あ、危ない……やっぱり起こしてあげましょうっ)

~~~~


裕子「すみません……」

悠貴「いえ、いいんですっ。私も寝そうになっちゃいましたしっ、仕方ないですよっ」

智香「それより、ユッコちゃん。瞑想の効果はどうですか?」

裕子「はっ……そうですね。確かめてみないと!」スチャ

裕子「よーし……」

智香「私たちも応援しましょう!」 

悠貴「はいっ」

裕子「ではいきます。……ムムム!」ムムム

智香「頑張れ! 頑張れ! ユッコちゃん☆」

悠貴「フレー! フレー!」

スプーン「……」シーン

裕子「ムム……まだダメですか」

智香「うーん、何がいけないのかな?」

悠貴「次の方法を考えましょうっ」

智香「超能力を習得する方法……」

裕子「ウーム……」

ガチャ  バタン

藤居朋「おはよーう!」

杉坂海「おはようございます」

悠貴「あ、朋さん、海さん、おはようございますっ」

海「おはよう。……Pさんいないんだね。せっかく作ってきたのに」

朋「まあまあ! あとで渡せばいいじゃん♪」

裕子「なにを作ってきたんですか?」

海「クッキーだよ。かな子に教えてもらったんだ」

智香「それを、Pさんに?」

海「……Pさんっていうか、みんなに食べてもらおうと思ってね」

朋「ふ~ん?」ニヤニヤ

海「……なにがおかしいのさ」

朋「いや~? べっつに~?」

海「朋……まあいいや。みんな、クッキーどうぞ」

悠貴「ありがとうございますっ」

智香「美味しそうですね!いただきます☆」

海「美味しくできてればいいんだけど……」

裕子「大丈夫です! 美味しいですよ!」パクパク

朋「あ! ユッコちゃん、私の分も残しておいてよね?」

裕子「むぐぅ!?……ごほごほ、わ、わかりました……」

海「たくさんあるから大丈夫だよ。……おっと」ガサッ

智香「? 海ちゃん、その紙袋はなんですか?」

海「あー……これは……」

朋「Pのために、みんなとは別に作ってきたんだよね~♪」

悠貴「そうなんですかっ?」

海「ま、まあ……そうなんだけど……」

朋「はっはっは、見てればわかるわよ!」

海「朋、あんたね……」

智香「朋ちゃん、今日はご機嫌ですね☆」 

朋「あ、やっぱりわかる? 隠せないもんね~♪」

悠貴「何かいいこと、あったんですかっ?」

朋「ふふふ……あたし、今日の占い一位だったのっ!」

裕子「おお!」

朋「絶対いい日になるわよ~♪」

海「朋。あんまり調子にのってると、痛い目にあうかもよ?」

朋「大丈夫よ! ポジティブシンキングが一番!」

智香「ですよねっ! 何事もポジティブに考えよう☆」

悠貴「ポジティブ……占い……そうだっ!」

海「悠貴ちゃん、どうしたの?」

悠貴「裕子さんっ」

裕子「はい!」

悠貴「朋さんに占ってもらったらどうですか? なにかヒントが見つかるかも知れませんしっ」

裕子「おお、確かに……そうですね! 朋ちゃん!」

朋「なになに~? 呼んだ~?」

裕子「 お願いします! 私を占ってください!」

朋「いいわよ。……と言ってもあたしが占うわけじゃないんだけどね」

裕子「構いません!」

朋「えっと……ユッコちゃん、何座だっけ?」

裕子「魚座です!」

朋「魚座ね……どれどれ……」

裕子「……」ゴクリ

朋「う~んと…………げっ」

智香「?」

朋「……言いにくいんだけど」

悠貴「まさかっ……」

朋「魚座は……十二位だったわ」

裕子「なんと!」ガーン

朋「『今日は何をやっても上手くいかないでしょう。大切なものをなくしてしまうかもしれません』……だって」

裕子「も、もしかして……その大切なものって……」

悠貴「サイキック……のことかもしれないですねっ……」

裕子「……!? オーマイガー!!」バタッ

悠貴「裕子さん!?」

海「しっかりして!」

智香「その……なんとかは、ならないんですか?」

朋「んー……『ツイてる人と一緒に行動しましょう』……ラッキーアイテムは……キュウリ」

悠貴「キュウリ……ですかっ……」

海「……その占い、ホントに当たるのかい?」

朋「む、当たるわよ! 当たりすぎて怖いくらい……あ」シマッタ

裕子「そそそ、そんなに当たるんですか……」アワワワ

智香「ユッコちゃん、落ち着いて!」

裕子「きゅ、キュウリは……キュウリは ありませんか!」オロオロ

海「もしかしたら、冷蔵庫にあるかも」

裕子「……! 探してきます!」

ガチャ  バタン

海「……大変そうだね」

朋「いったい、なにがあったのよ?」

悠貴「あ……そういえば、話していませんでしたねっ」

智香「実は……」カクカクシカジカ

朋「ふーん……そんなことが、ね」

海「……なんだか、ウチらが話を大きくしちゃったみたいだね」

悠貴「いや、そんなことはっ」

智香「むしろよかったですよ! 解決法がわかったんですから」

海「それなら、いいんだけど……」

朋「スプーンが曲がらない……サイキックを失うかもしれない……それで、あんなに必死になってたのね。納得」

智香「ユッコちゃんからサイキックをとっちゃったら……ただの美少女になっちゃうし」

悠貴「確かにっ……」

海「黙っていれば、文句なしの美少女だもんね」

朋「……あれ……?考えてみたら、それでもいいんじゃ……」

智香「ダメですよ! ユッコちゃんにとって、サイキックはすごく大事なものなんですから」

朋「そ、そうだよね……あはは」

ガチャ  バタン

裕子「……」ドンヨリ

悠貴 「あっ、裕子さん」

朋「その顔は、もしかして……」

裕子「……はい。ありませんでした……」

智香「か……買ってこようか?」

裕子「……いえ、大丈夫です!」

朋「あの占い、当たるんだけどな~」

海「朋!」

朋「ごめんごめん……」

悠貴「占い……占い?」

悠貴「……あ! 裕子さん、朋さんと一緒に行動してみたらどうでしょうっ」

裕子「どうしてですか?」

悠貴「ほらっ、占いに『ツイてる人と一緒に行動しましょう』って出てたじゃないですかっ」

裕子「そういえば!」

悠貴「もしかしたら、スプーンが曲がるかもしれませんっ」

裕子「その可能性大ですね!」

朋「あ~……盛り上がってるところ悪いんだけど……」

悠貴「?」

朋「あたしといても……多分、効果ないと思うわよ?」

裕子「えっ!?」

悠貴「な、なんでですかっ?」

朋「あたし、元々運悪いし……今日は占いよかったけど、ツイてるとはちょっと言えないんじゃないかしら……」

裕子「そ、そんな……」

悠貴「だったら、智香さんと海さんはどうですかっ? 運がいいとか、ツイてるとか……」

智香「アタシは、自分がツイてるとは思わないかなっ……」

海「ウチも……と言うか、ウチと朋はこれから仕事なんだ。だから、今日一日一緒にいることはできないよ」

悠貴「そうですかっ……」

朋「そういう悠貴ちゃんはどうなのよ?」

悠貴「わ、私は……」

裕子「悠貴ちゃん……!」キラキラ

悠貴「私も、ですっ……」

裕子「え……」

悠貴「ごめんなさいっ、裕子さん……」

裕子「……そうですか……誰か」

裕子「誰か助けて、くれないかな……」ボソッ

ガチャ  バタン

??「おはようございます~」

智香「……! その声はっ」

海「お、おはようございます……茄子さん」

鷹富士茄子「はい♪」

悠貴「どうして茄子さんがっ……?」

茄子「むぅ~……悠貴ちゃん? 私が来ちゃいけないんですか~?」

悠貴「いえっ、そんなことはっ……あっ!」

悠貴「むしろ全然OKですっ! 来てくださってありがとうございますっ!」

茄子「えっ?」

朋「確かに、茄子さんなら……」

智香「自他共に認める幸運の持ち主ですし!」

海「……うん、いけそうだね」

茄子「え? え?」

裕子「茄子さん!」

茄子「な、なんですか~?」

裕子「助けてください、茄子さん!ツイてる人と一緒にいないと私、さいきっくじゃなくなってしまうんです!」

茄子「?」

裕子「実は……」カクカクシカジカ

茄子「……なるほど~」

裕子「力を、貸していただけますか……?」

茄子「……私でよかったら、喜んで協力しますよ。 運の良さには、すっごく自信ありますし♪」

裕子「あ……ありがとうございます!」

茄子「いえいえ♪」

悠貴「裕子さんっ、早速やってみましょうっ!」

裕子「で、では……いきます!」スチャ

智香「ユッコちゃん、ファイトー☆」

朋「……大丈夫よね……?」

海「茄子さんがいるんだよ? 大丈夫大丈夫」

悠貴「……っ」ゴクリ

茄子「~♪」ニコニコ

裕子「では……ムムム!」ムムム

スプーン「……」シーン

裕子「ムムム! ムムム!」ムムム

スプーン「……」シーン

裕子「ムムムム……ムムムムムーンッ!!!」ムムムムムーンッ

スプーン「……」ピクッ

悠貴「……!」


グニャリ

裕子「……あ……」

智香「ま、曲がった……」

朋「……意外とあっさりだったわね」

海「うん、確かに……」

裕子「あ、あははは……」ヘタッ

悠貴「裕子さんっ!」ダキッ

裕子「悠貴ちゃん……」

悠貴「ホントに……ホントによかったですねっ!」

裕子「……! ありがとうございます、悠貴ちゃん!」

茄子「ふふふ♪」ニコニコ

裕子「茄子さんも、ホントにありがとうございます!」

茄子「いえいえ~♪……では、私はこれで……」

裕子「か、茄子さん!」

茄子「……ん~? なんですか?」

裕子「あの、もしよかったら……レッスンにもついてきてくれませんか?」

茄子「……ええ、いいですよ♪」

裕子「ありがとうございます! やっぱり、まだちょっと不安で……」

朋「まあ、一回できただけだしね。不安にもなるわよ」

海「なんで朋が偉そうにしてるんだい……?」

茄子「~♪」ニコニコ

裕子「ムムム……サイキック!!!」グニャリ

智香「おおっ」

裕子「よしっ! エスパーユッコ、絶好調!」

悠貴「……」ホッ

智香「悠貴ちゃん? どうしたの?」

悠貴「……やっぱり、明るくて元気な裕子さんが一番素敵ですっ!」

裕子「?」

智香「そうだね! 元気でなくっちゃ、ユッコちゃんらしくないもんね☆」

裕子「そ……そうですか?」

智香「うん!」

悠貴「はいっ」

裕子「……ミステリアスな私も試してみようかと思ってましたけど……おバカキャラが一番ってことですね!」

悠貴「き、キャラっ?」

智香「そうは見えなかったけど……」

裕子「まさか……二人とも私のこと、ホントのおバカだと思ってたんですか?」

悠貴「い、いえ。そういうわけではっ……」

裕子「……それを見抜けないとは甘いですね!」

智香「えっ?」

裕子「つまり、二人とも……エスパーユッコの術中にはまってたってことです!はーっはっはっは!!」

悠貴「は、はぁ……」

朋「……ホントにキャラなのかしら」

海「いや、あれは……天然なんじゃないかな……」

茄子「元気ですね~♪」

智香「さてと……悠貴ちゃん。ユッコちゃんも」

悠貴「なんですかっ?」

智香「そろそろ、レッスン行きませんか?」

悠貴「そうですねっ……はい、行きましょうっ!」

海「……私たちも仕事に行こうか」

朋「そうね♪」

裕子「二人とも仕事、頑張ってください!」

朋「ユッコちゃんもレッスン頑張ってね♪」

裕子「はい!……それと」

悠貴「?」

裕子「……みんな、私のために色々してくれて……ホントにありがとうございました!」

智香「いやいや! 私には、応援することしかできませんでしたし……」

悠貴「朋さんの占いと、茄子さんの強運のおかげですっ」

朋「海ちゃん海ちゃん、聞いた聞いた? あたしのおかげでもあるって!」ドヤ

海「はいはい、すごいね」

朋「……馬鹿にしてるよね?」

海「いや? してないよ?」

朋「あーっ、絶対してる!」

海「……そうだ、忘れてた。茄子さん」ガサッ

茄子「はい?」

朋「こらー! 聞け~~!」

海「クッキーです。もしよかったら、どうぞ食べてください」

茄子「あら、ありがとうございます♪」

悠貴「え、でもそれって……」

海「ふふふ、Pさんにはまた今度でいいさ。……よし、朋。行くよ」

朋「え……ちょ、ちょっと待ってよ海ちゃ~ん!」

ガチャ  バタン

悠貴「……そういえば、茄子さんっ。どうして、事務所に来られたんですかっ?」

茄子「ん~……なんとなく、です♪」

智香「え?」

茄子「事務所に寄ったほうが、なんとなくいいような気がしたので~」

悠貴「そ、そうですかっ」

裕子「なんだか、ふわふわした理由ですね……」

茄子「あはは……でも、よかったです。裕子ちゃんのお役に立つことが出来て♪」

智香「あ、そろそろ時間……」

裕子「それじゃ、私たちも!」

悠貴「行きましょうかっ」

茄子「はい♪」

~レッスン終了~ 


ガチャ  バタン

悠貴「ただいま戻りましたっ」

智香「いや~、いい汗かいたーっ☆」

裕子「つ、疲れた……」

悠貴「あ……プロデューサーさん、まだ戻ってきてないですねっ……」

智香「そうだね……」

裕子「二人とも、プロデューサーに何か用があるんですか?」

悠貴「え、えっとっ……特にはっ……」

智香「……ユッコちゃんは、何か用があるんですか?」

裕子「私? 私はありますよ!」

智香「そうなの?」

裕子「はい! プロデューサーに、報告しようと思ってですね」

悠貴「報告? なにをですかっ?」

裕子「私のさいきっくが復活したことです!」

智香「おお、それなら確かに……Pさんも、安心しますね♪」

裕子「ふっふっふ、そうでしょう?……あと」

悠貴「あと?」

裕子「プロデューサーも、さいきっく復活に協力してくれたわけですし……お礼を言おうと思って」

智香「きっとPさん、喜びますね!」

裕子「だから、私はここで待っているんです!」

悠貴「な、なるほどっ……」

裕子「……あれ? そういえば」

裕子「どうして、二人は事務所に来たんですか? 用がないなら、そのまま帰ってもよかったのに」

悠貴「そ、それは……」

裕子「言いよどむってことは……なにかやましいことがあるんですね?」

悠貴「うっ」

裕子「やっぱり! さぁ、白状しなさい!」

悠貴「それは……ですねっ……」

智香「ちょ、ちょっと事務所に用がね!」

裕子「事務所に?」

悠貴「はい、はいっ! 実は、そうなんですっ」

裕子「どんな用が?」

悠貴「あっ……それは、えーっと……」

裕子「……このままじゃ埒があきませんね」ウーム

裕子「……! そうだ!」コテリン

智香「?」

裕子「悠貴ちゃんの心を読んでしまえばいいいんです!」

悠貴「!?」

智香「で、でも、茄子さんは帰っちゃったし」

裕子「ふっふっふ……これを見てください!」デデーン

智香「キュウリ……ってなんで持ってるの?」

裕子「そ、それはさいきっく秘密!……とにかく」

裕子「これさえあれば大丈夫なはずです!さあ悠貴ちゃん、覚悟!」

悠貴「ちょっ、ちょっと――」

裕子「問答無用! ム……」

ガチャ  バタン

P「ふぅー、ただいま……」

智香「!」

悠貴「ぷ、プロデューサーさんっ!」

裕子「あっ、お疲れ様ですプロデューサー!」

P「お、裕子。……どうだった?」

裕子「ふふふ、バッチリです! さいきっく復活!」

P「そうか……よかったな」

裕子「見ててください、プロデューサー! ムムム…」グニャリ

P「おおっ」

裕子「ねっ? お次は……」グイッ

悠貴「きゃっ!?」

裕子「なにか隠し事をしてるらしい、悠貴ちゃんの心を読んじゃいますよ!」

P「……!」

智香「ユッコちゃん。あのね……」

P「……待ってくれ、裕子。 悠貴じゃなくて、俺の心を読んでくれないか?」

裕子「え? プロデューサーの、ですか?」

P「おう」

裕子「了解です! では……ムムム!」

P「……」

裕子「ムムム……わかりましたよ!」

P「……なんだ?」

裕子「……び、美少女ユッコは、やっぱり凄いなぁ……と……」モジモジ

P「……」

裕子「ど、どうですか……?」

P「……残念」

裕子「え……」ショボン

P「正解は……ほら」

裕子「?……チケット、ですか?」

悠貴「……」ニコニコ

智香「……」ニコニコ

P「見てみてくれ」

裕子「……『サイキック★マジックショー!』……これを、私に!?」

P「裕子が落ち込んでると思ってたからな……そうだったら、一緒に見に行こうかと――」

裕子「ありがとうございますっ!!」

P「わっ」

裕子「プロデューサーが私のことをそんなに考えてくれていたなんて…… 嬉しいです!」

P「おう。……喜んでもらえてなにより」

智香「よかったね、ユッコちゃん!」

悠貴「よかったですねっ」

P「悠貴たちも、ありがとな。裕子を引き留めていてくれて」

悠貴「あ、そのことなんですけど……私たちはなにもしませんでしたよっ」

P「?」

智香「ユッコちゃんは、言いたいことがあるって言って待ってたんです! ねっ?」

裕子「あ、はい、そうです!……コホン」

裕子「プロデューサー!」

P「なんだ?」

裕子「あの、今朝は……さいきっく復活を手伝ってくれてありがとうございました!」

P「おう、どういたしまして」

裕子「……」

P「……」

P「……それだけ?」

裕子「それだけです!」

P「それを言うためだけに待っていてくれたのか……」

裕子「はい!」

P「……やっぱり、裕子は凄いな」

裕子「えっ?」

P「当たり前に思えることを当たり前にするって、なかなか出来ることじゃない」

裕子「そ、そうですか?……私、凄いですか?」

P「おう。さっきは残念なんて言ったけど……美少女ユッコは凄いよ」

裕子「……さすが私! やっぱり凄い!」

P「うんうん」

智香「はははっ」

悠貴「ふふふっ」

裕子「?……なんで二人とも笑ってるんですか?」

智香「いや、なんでもないよ? ユッコちゃん♪」

裕子「? まあ、いいです!……それより、プロデューサー!」

P「ん?」

裕子「マジックショー、早く行きましょう!」ワクワク

P「……ああ、そうだな」

悠貴「プロデューサーさん、今度は私たちも連れていってくださいねっ?」

P「了解。……今回は悪かったな、二人ぶんしかとれなくて」

悠貴「いえ、いいんですっ」

智香「次は期待してますよ☆」

P「おう。……よし、裕子。行こうか」

裕子「はい!」

ガチャ  バタン

智香「……アタシたちも帰ろっか♪」

悠貴「はいっ」

~翌日~


ガチャ  バタン

悠貴「おはようございますっ」

P「おはよう悠貴。……早いな」

悠貴「え? ……ああっ、トレーニングもかねて走ってきたんですよっ」

P「お、そうなのか。感心感心」

悠貴「アイドル活動も陸上も、体力が大事ですからっ!」

P「そうそう、学校の活動も大事にな。もちろん勉強の方も」

悠貴「はいっ!……ところでっ」

P「ん?」

悠貴「昨日のマジックショー、どうでしたっ?」

P「楽しかったよ。裕子も喜んでくれてたみたいだし」

悠貴「ふふふっ、よかったですねっ」

P「おう、よかったよかった。……ただ、興奮した裕子がサイキック乱入とか言い出してな……」

悠貴「そ、そうなんですかっ……」

P「その時だけはちょっと困ったな。……そうそう悠貴」

悠貴「はいっ」

P「約束通り、どこかに連れて行ってあげようと思うんだけど……」

悠貴「あっ、そうですねっ」

P「どこか行きたいところはあるか?」

悠貴「えっと……じゃあ……」

P「どこでもいいぞ」
 
悠貴「それなら……い、一緒に、お花見に行きませんかっ?」

P「お花見?」

悠貴「はいっ! 」

P「……いいのか? どこでもいいんだぞ?」

悠貴「だって、桜は今の時期しか見られませんしっ……それに」

悠貴「私は、プロデューサーさんとお花見に行きたいんですっ!」

P「そうか。……ならお花見ということで」

悠貴「はいっ」

P「えっと、じゃあ日にちはいつが――」

ガチャ  バタン

智香「おはようございます☆」

悠貴「智香さん、おはようございますっ」

P「おはよう、智香」

智香「あのですね、Pさん!」

P「なんだ?」

智香「昨日、どこかに連れて行ってくれるって言ってましたよね?」

P「おう」

智香「だったら、お花見に行きましょう! 絶対楽しいですよ☆」

P・悠貴「……え?」

智香「あ、あれ……? アタシ、何かおかしなこと言いました?」

P「いや、悠貴も同じ提案をしてたもんだから……」

悠貴「少し、びっくりしただけですっ」

智香「あ、そういうことですか……」

P「……お花見ね……確か、明後日は二人ともオフだったよな」

悠貴・智香「はいっ」

P「……なら、その日オフの人たちを全員誘って行かないか? お花見だし、人が多い方が楽しいだろ?」

智香「お~っ、それはいい考えですね☆」

悠貴「たくさんいたほうが盛り上がれますもんねっ!」

P「決まりだな。……しかし、予報は微妙なんだよな……雨が降らなきゃいいが」

智香「きっと大丈夫ですよ! 心配してても仕方ありません☆」

智香「真面目にお仕事をやっていれば、神様も晴れにしてくれるはずですっ」

P「うんうん……全く、そのとおりだな。今日も一日、頑張れよ」

悠貴「はいっ」

智香「Pさんも、ですよ?」

P「ああ、俺も頑張るよ。……さて、早めに仕事始めるかな……」

悠貴「智香さんっ、私たちもお仕事までレッスンしましょうっ!」

智香「そうだねっ、やろうか☆」

P「やる気満々だな」

悠貴「……私には、ものすごい幸運や超能力はありませんからっ。やる気と努力で、なんとかするんですっ!」

P「いい心がけだ。……が、無理だけはしないようにな」

悠貴「はいっ。じゃあ、行きましょう智香さんっ!」

智香「うん!」

タッタッタ

悠貴「……」 チラ

P「……」カタカタ

智香「悠貴ちゃん、どうしたの?」

悠貴「……いえっ、なんでもありませんっ!」

悠貴 (明日、明後日、これから……なにが起こるかなんてわかりませんっ……でもっ)

悠貴「行ってきますね、プロデューサーさんっ!」

P「おう。……頑張れよ」


悠貴 (――だからこそ……今を精一杯、頑張りますっ!)

これで終わりです。

絶対無理だと言えることはないと思います。そう、乙倉ちゃんがシンデレラガールになることだって……

見てくれた方々、どうもありがとうございました!

おつおつ

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