【ラブライブ】花陽「凛ちゃんと一夜の間違い?」 (133)
更新遅め
百合要素あり
りんぱな
以上のことが大丈夫な方はぜひお付き合いください。
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――――――
花陽「……ん」
閉じた瞼ごしに明るさを感じて、私は目を開けました。
花陽「……あさぁ?」
目の前に広がるのは、見慣れたいつも通りの天井。
寝起きっていうこともあって、ちょっと頭がぼーっとしてるかも……。
花陽「いま、なんじかな……」
ぼそりと呟いて、枕元の目覚まし時計に手を伸ばします。
花陽「……6時かぁ」
いつもよりちょっと早い時間。
目覚まし時計のアラームもまだ鳴っていないみたい。
せっかくだし、もう起きようかな?
そんな風に心のなかで呟いて。
私は体を起こすため、ベッドに両手を着きました。
―― むにっ ――
花陽「……えっ?」
つい声をあげちゃった。
それは、左手になにか変な感触があったせいで。
ううん。
変な、というより、柔らかい感触――
凛「……すぅ、すぅ」
花陽「…………凛、ちゃん?」
私のベッドのなか。
まるで、花陽に寄り添うみたいに。
凛ちゃんが眠っていた。
しかも、
花陽「な、なんで裸なのォォ!?」
凛「にゃぁ……」
――――――
――――――
落ち着きましょう。
落ち着くんです、小泉花陽!
凛ちゃんが眠る自分の部屋を出て、私は洗面所にいました。
鏡を見ながら、自分に言い聞かせます。
まずは、落ち着くんだって。
花陽「すぅ……はぁ……」
深呼吸をして、
花陽「よしっ! 」
もう一度、鏡に向き直ります。
まずは、そうだ。
状況を整理しよう。
朝起きたら、裸の凛ちゃんが隣に寝てた。
おわり。
花陽「……じゃなくて!」
確かに、今のところ分かることなんてそれしかないけど!
……えっと、じゃあ。
昨日のことを思いだそう!
花陽「昨日は、確か……金曜日で、放課後に練習したんだよね?」
うん。
それはちゃんと覚えてる。
あ、それにいつもよりちょっとハードな練習したんだよね。
たしか、新しい曲の振り付けが激しいからって。
花陽「……ふふっ」
つい思い出し笑い。
穂乃果ちゃんや凛ちゃんが、海未ちゃんに文句言ってたの思い出しちゃって。
あのときの二人は必死だったなぁ。
花陽「……そんな、花陽もへばってたけど」
うん。
ここまではちゃんと覚えてる。
じゃあ、その後は?
練習が終わって、凛ちゃんと真姫ちゃんと一緒に帰って。
それから……。
それから……?
花陽「あ、あれ?」
家に帰ってからの記憶。
凛ちゃんと真姫ちゃんにバイバイを言ってからの記憶が――
花陽「思い出せない?」
期待
そんなはずないって。
頑張って思い出そうとしても、思い出せない。
たぶん、凛ちゃんが家に遊びに来たんだと思う。
そして、いつもみたいに一緒に寝ようってなったんじゃないかな?
けど、
花陽「な、なんで……凛ちゃん、服着てなかったんだろう……」
普通に寝ただけじゃ、服を脱ぐ必要はないよね?
ということは……。
花陽「うぅぅ、そういうことなの?」
そういうこと。
つ、つまり、えっちなこと、とか?
花陽「っ!!」
そこまで考えて、顔がすごく熱くなるのがわかった。
鏡に映った顔も真っ赤。
それを見て、また顔が熱くなるっていう悪循環です。
花陽「……あ、あれ?」
そこで、ふと気づく。
鏡に映る私の右の首筋。
つまり、私の左側の首筋に……。
花陽「これって……歯形?」
くっきりと、歯形が残っていることに。
――――――
――真姫宅
真姫「それで? 」
真姫「わざわざ休みの日に、家まで来て、どうしたのよ?」
髪をくるくるといじりながら、真姫はそう言った。
花陽「え、えっと……ごめんね」
真姫「いいわよ、べつに。暇だったし」
謝る私を見て、プイッと顔を背ける真姫ちゃん。
暇、なんて、嘘だよね。
昨日も勉強が大変だって言ってたし。
わざわざ花陽のために、時間作ってくれたんだって思うと……。
花陽「えへへぇ」
真姫「な、なによっ!?」
花陽「ううん! ただ、真姫ちゃんは優しいなぁって」
真姫「な、なによ、それっ! イミワカンナイ」
また、毛先をくるくるってしてる。
ふふっ、真姫ちゃんは照れ屋だなぁ。
照れ隠しなのか、真姫ちゃんは、そんなことよりも、と言って話を進めた。
真姫「相談があったんじゃなかったのっ!」
花陽「……あっ」
真姫ちゃんの言葉で、朝のことを思い出す。
あっ!
忘れてたわけじゃないんだよっ!
た、ただ、現実から目をそらしてただけで……。
なんて、誰に言い訳してるんだろう。
……凛ちゃんにかな。
花陽「えっと、その……」
真姫「…………」
相談がある。
真姫ちゃんには、電話でそう伝えたんだけど。
いざ、面と向かってみると、
花陽「…………」
真姫「…………」
うぅぅ。
なんて言えばいいんだろう!?
朝起きたら、裸の凛ちゃんが隣にいました?
なのに、花陽には記憶がありません?
…………。
絶対、言えない。
真姫「……話しにくいこと?」
花陽「えっ?」
言葉に詰まる私を見て、気を使ってくれたみたいで、真姫ちゃんはそんな風に聞いてくれた。
花陽「う、うん。そう、かも……」
一拍遅れて、私はそう返す。
そんな私に、真姫ちゃんは、ふーん、とだけ反応した。
そして、
真姫「もしかして、凛のこと、とか?」
真姫ちゃんは、こういうときとても勘がいいみたいです。
ズバリ、その通り。
真姫ちゃんはそれを言い当てちゃいました。
コクリ、と私は頷く。
真姫「……話せるようになったら、でいいわ」
花陽「ありがとう、真姫ちゃん」
それからしばらく無言が続いて。
机を挟んで、向かい合ってるのに、二人とも無言なんてすごくおかしいよね。
でも、真姫ちゃんはちゃんと待っててくれる。
たから、花陽は意を決しました。
やんわりと伝えればいいよね?
昨日の記憶がないとか、いつのまにか凛ちゃんが隣で寝てたとか。
変なところは伝えなければ!
そんなことを考えながら、私は口を開きました。
花陽「あ、あの、ね……」
真姫「……ん?」
花陽「えっ?」
花陽が話を切り出す前に、真姫ちゃんが声をあげた。
って、なんで、真姫ちゃん近づいて……?
―― グイッ ――
花陽「ぴゃぁぁ!?」
思わず叫び声をあげてしまった。
だ、だって、真姫ちゃんが!?
花陽のこと引き寄せて!?
首元に!?
……くび、もと?
真姫「こ、これっ!?」
花陽「……あっ」
気づいたときには遅くて。
真姫ちゃんは、花陽の首筋にくっきりと残った歯形を見てしまいました。
花陽「えっと、その……」
真姫「こ、これ……花陽の、じゃないわよね……?」
花陽「う、うん」
真姫「……もしかして、凛の?」
花陽「…………うん、たぶん」
そこで頷いてしまったのが間違いだったのかも。
ううん。
真姫ちゃんに相談するというなら、間違いじゃなかったんだけど。
花陽「ま、まきちゃん……」
真姫「え、うん?」
花陽「じ、じつは、ねっ!」
とにかく、歯形を見られた花陽はパニックになってしまって。
花陽「凛ちゃんと一夜の間違いをしちゃったかもしれないのっ!」
そんな、変なことを口走ってしまったのでした。
――――――
一旦ここまで
更新はまた夜に。
乙
楽しみ
乙
りんぱな最高
――――――
真姫「ま、まぁ? 付き合ってるなら、普通じゃないかしら?」
私の話を聞いて、真姫ちゃんはそう言いました。
確かに、私と凛ちゃんは付き合っています。
それに、付き合う前から一緒にお風呂に入ったり一緒のお布団で眠ったりしている。
でも、まだそういうことはしてなかったのに。
しかも、その初めての記憶がないなんて。
真姫「だ、大丈夫よ! 記憶がないのなんて、よくあることじゃない!」
よくはないよ。
しょっちゅう記憶なくしてたら困るよ……。
実際、フォローをいれている真姫ちゃんの目も泳いでる。
真姫「ほ、ほら? 真姫ちゃんもそういう経験あるし?」
花陽「…………」
そんなことを言う真姫ちゃん。
うん。
花陽のことを励まそうとしてくれてるのは分かるけど……。
そんな嘘つかれても余計に辛くなるだけだよぉ……。
花陽「えへへ、そ、そうだよね……うん。やっぱり花陽、ひどいよね……」
凛ちゃんと、その……し、しちゃったのに。
初めてだったのに。
覚えていないなんてっ!?
花陽「はぁぁぁぁ」
真姫「気にしない……のは無理よね」
花陽「無理だよぉ……」
真姫「うぅん」
そのまま、ふたりで項垂れる。
真姫「えっと、朝出てくる時はどうだったのよ?」
項垂れていると、不意に真姫ちゃんがそう聞いてきた。
朝出てくる時かぁ。
花陽「えっとね……」
――回想――
凛「んん……?」
花陽「お、おは……おはよう! 凛ちゃんっ」
凛「んー、おはよー」
花陽「り、凛ちゃん! そのっ! 昨日はっ!」
凛「きのうー?」
花陽「う、うんっ! ど、どうだった、というかなんというか……」
凛「んーとねぇ……」
凛「……死んじゃうかと思ったにゃぁ」
花陽「」
―― 回想終了 ――
花陽「って、言ってたよ」
真姫「そ、そう……」
花陽「…………」
真姫「…………」
花陽「え、えっと?」
真姫「……な、なかなか激しかったのね」
花陽「う、うんっ」
うぅぅ。
恥ずかしいから、そんなこと言わないでぇぇ。
けど、自分がなにも着てないことに気づいた時の凛ちゃんは可愛かったなぁ……。
見ちゃダメっ!?
なんて言って、顔真っ赤にする凛ちゃん。
花陽「…………えへへぇ」
真姫「は、はなよ?」
花陽「あっ!? ご、ごめんねっ」
真姫「…………」
真姫(ずいぶんだらしない表情だったけど……言わない方がいいわね)
その歯形のことは?
そんな真姫ちゃんの質問には首を横に振った。
この歯形については、結局聞けなかった。
そこまで頭が回らなかったし。
花陽「えっと、真姫ちゃん」
真姫「なに?」
花陽「は、花陽はどうしたらいいのかな?」
他の人に聞くことじゃない。
そうは思ってても、花陽にはどうすればいいのか見当もつかなかったから。
だから、私はそんな風に真姫ちゃんに尋ねた。
すると、真姫ちゃんは、
真姫「……凛がこのことを知ったら、きっと傷つくわ」
真姫「だ、だから!」
真姫「凛に昨日以上の思い出を作ってあげればいいのよっ!」
そう言った。
花陽「っ!? 昨日、以上の……」
真姫「えぇ」
花陽「そ、それはどうやって……」
真姫「私の方で、ホテルのスイートルームをとっておいてあげるわ」
花陽「っ!?」
真姫「だから、最高のデートプランを考えて、最高の思い出を作ってあげるのよっ!」
花陽「は、はいっ!!」
かくして、凛ちゃんとの最高の思い出作りのために、真姫ちゃんとデートプランを考えることになったのでした。
――――――
――――――
――――――
時は流れて、翌日月曜日。
朝練に向かうため、早めに家を出て、凛ちゃんを待ちます。
って、あれ?
なんかおかしい気がするけど……。
凛「おーい、かよちーんっ!」
花陽「あっ、り、凛ちゃんっ」
待ち合わせ場所で待っていると、凛ちゃんが来ました。
花陽もさっきまで感じていた変な違和感を、首を振って頭から追い出して、凛ちゃんの方に歩を進めます。
凛「おはよっ! かーよちんっ♪」
花陽「お、おはよう、凛ちゃん」
あいさつをして、そのまま手を繋ぐ。
これは付き合いだしてからしてる、二人の決まり事。
いつも通りのこと、なんだけど……。
花陽「……うぅぅぅ」
顔が赤くなっちゃうのが自分でも分かった。
理由ははっきりしてる。
凛ちゃんと、い、一線をこえちゃったから、だよね。
だから、なんでもないようなことでも、つい凛ちゃんのことを強く意識しちゃうんだ。
凛「かよちん?」
花陽「えっ、あっ、なんでもないっ」
凛「?」
うぅぅぅ。
顔を覗き込んでくるのも、首を可愛らしく傾げるのも反則だよぉ……。
ほんとに、凛ちゃん、かわいすぎるよぉ。
――――――
――――――
凛「かーよちん!」
花陽「ふ、ふぇぇ!?」
凛「かよちーんっ!」
花陽「ぴゃぁぁ!?」
真姫「……はぁ」
――――――
真姫「まったく、ひどいものね」
花陽「ご、ごめん……」
凛が購買へ走って、二人になった昼休み。
私の指摘に、花陽はそう言って俯いた。
どうやら、変に意識しすぎてるみたいね。
まともに話も出来てないじゃない。
そう言うと、花陽はますます項垂れてしまう。
って、いけないいけない。
あんまり責めちゃ可哀想よね。
真姫「まぁ、凛もそんな感じだったし、おあいこかしらね?」
花陽「……凛ちゃんも?」
真姫「えぇ、そんな風に花陽とギクシャクしてた時期があったでしょ?」
私の言葉に、花陽はあぁ、と納得した様子で頷いた。
懐かしい。
確か、花陽と凛が恋人になる前だったかしら。
あの時も凛が私に相談したことから始まったんだったわね。
凛、病気なのかもしれない、なんて。
そう、凛に言われたときは少し不安になったものだけれど。
結局、恋の病とかいうオチで。
……まぁ、紆余曲折あったけど、収まるところに収まったわけだし。
って、話が逸れたわね。
真姫「それで、例のデートプランなんだけど」
花陽「あ、うん」
改めて、例の話を振ってみる。
結局、昨日は詳しいこと話せなかった訳だし。
真姫「えぇと……」
大声で話すのは憚られる内容だから、花陽の耳元に顔を近づけて小声で話を続ける。
真姫「今週末、ホテルのスイートとれたわ」
花陽「!! こ、今週末?」
真姫「えぇ」
花陽「え、えっと、急すぎない、かな?」
そう言って、焦り出す花陽。
まぁ、急だとは思うけど。
真姫「ずるずる悩んでてもしょうがないでしょ?」
花陽「うっ」
真姫「こういうのは早めに手を打たないと、手遅れになるわよ?」
本で読んだだけだけど。
というのは、もちろん言わないけどね。
花陽「は、はい」
どうやら堪忍したようで、花陽は頷いた。
……さて。
まぁ、最終目標は決まったわ。
けれど、
花陽「そこまでのプランをどうするか、だよね?」
それは花陽も分かっているようで、私はそれに頷いた。
一日考えてみたんだけど。
花陽はそう言って、俯く。
どうやら、その様子を見るにいい案は浮かんでこなかったみたいね。
まぁ、かくいう私も同じようなものだけど。
……ふむ。
そうね、ここは……。
真姫「花陽」
花陽「なに? 真姫ちゃん?」
真姫「協力者を探しましょう」
――――――
今回はここまで。
レス感謝です!
明日、早いので寝ます。
お休みなさい。
乙
乙
おっつん
乙
期待
ここで待ってるよ
間が空いてしまい申し訳ない
風邪で寝込んでいたもので…
日が変わる頃に更新しませう
――――――
火曜日の昼休み。
今日も朝から凛ちゃんと登校した。
けど、昼休みは用事があるからって言って、部室まで来ちゃっていた。
花陽「……凛ちゃんに嘘ついちゃったな」
昨日までではないけど、やっぱり気恥ずかしくて。
それにちょっとの罪悪感。
大事にしてた初めてを記憶ないまま奪っちゃうなんて、って。
花陽「はぁ」
ため息が出ちゃうよ。
と、そんな私に、
にこ「辛気臭いわね……」
花陽「うっ、ごめんね、にこちゃん」
部室にいた先客、にこちゃんがそう言った。
ちょっと呆れ顔。
にこ「なに? 悩み事でもあるわけ?」
花陽「う、うん。そうなんだけど……」
そこまで言って、ふと思い出す。
協力者を探しましょう。
昨日の昼休み、真姫ちゃんはそう言った。
だから、μ's の誰かに話をして、協力してもらおうと思うんだけど……。
にこ「花陽?」
花陽「えっ、あっ……」
にこ「あんた、大丈夫?」
花陽「う、うん……」
心配してくれるにこちゃんを見て思う。
にこちゃんには言えないって。
誰よりもアイドルに対して真剣なにこちゃん。
そんなにこちゃんは、先輩禁止のμ's だけど、やっぱり尊敬できる先輩で。
だから、余計にこんなこと言えません。
にこちゃんに失望されそうで……。
にこ「……話しにくいこと?」
花陽「そ、そうかな」
にこ「……凛のこと?」
花陽「えっ」
不意の質問に、答えられない。
あれ?
まだなにも言ってないはずなのに?
たぶんそんな疑問が顔に出てたみたいで、にこちゃんは言葉を続けます。
にこ「いつかの凛と同じような顔してるわ」
花陽「凛ちゃんと?」
にこ「えぇ」
にこちゃんは話してくれた。
凛ちゃんと花陽が付き合う前。
凛ちゃんの悩みを聞いてたことを。
もちろん、詳しくは教えてくれなかったけどね。
そして、にこちゃんは言った。
その時の凛ちゃんと同じ表情してるわよって。
花陽「…………」
にこ「似た者同士ね、あんたたち」
そう言って笑うにこちゃん。
やっぱりすごいなぁ、にこちゃんは……。
いつもにこちゃんは私たちのことをしっかり見ていてくれる。
さすが、部長さんだなって。
そんなにこちゃんなら。
私はそう、思ったんです。
だから――
花陽「ねぇ、にこちゃん」
にこ「なに?」
花陽「花陽に、協力してくれませんか!」
――――――
――――――
にこ「第一回、りんぱな会議を始めるにこっ♪」
花陽「わ、わぁぁ!」
真姫「…………」
放課後。
今日の練習は、ユニットごとの予定だったんだけど……。
花陽、真姫ちゃん、にこちゃんというメンバーで、部室で始まったのはそんな会議でした。
にこ「ちょっと! 真姫ちゃん!」
真姫「なに?」
にこ「ノリ悪いわよ!」
真姫「……花陽、部外者がいるんだけど?」
にこ「にこも関係者よっ!」
真姫「すいません、ここは関係者以外立ち入り禁止なので……」
にこ「だから、関係者っ!!」
真姫「うるさいわね」
にこ「なっ、なによ、それっ!」
真姫「……シラナイ」
花陽「あはは……」
二人のやりとりを見ながら、私はこうなった経緯を思い出していた。
――――――
――回想――
海未「それでは、今日は予告していた通り、ユニット別に練習を行いたいと思います」
穂乃果「おー!」
ことり「おー♪」
凛「了解にゃー!」
絵里「じゃあ、早速だけど……」
真姫「ちょ、ちょっと待って!」
海未「真姫?」
希「ん? どうかしたん?」
真姫「少し提案があるんだけれど」
真姫「今日の練習は、ユニットの内一人を入れ換えてやってみない?」
絵里「一人を入れ換えて?」
真姫「そう。例えばだけど、凛をprintempsに、絵里をlily whiteに、花陽をBiBiにって感じで」
花陽「……あっ」
穂乃果「おぉ! それ、いいねっ!」
凛「面白そうにゃっ!」
策士真姫ちゃん
海未「ふむ。なかなか面白い提案ですが……」
真姫「デッショー」
海未「それをすることでなにか得るものがあるんでしょうか?」
真姫「あっ、えっと……」
海未「私は闇雲に新しいことをするより、今までやって来たことをひとつひとつ確実にしていく必要があるかと思います」
穂乃果「えー! 面白そうだからいいじゃん!」
凛「そうだそうだ!」
海未「面白そう、それだけでせっかくの時間を潰してしまうのもどうかと思います」
絵里「まぁ、そうね」
穂乃果「絵里ちゃんまで!」
真姫「……」
にこ「客観的に見れるんじゃない?」
海未「えっ?」
真姫「にこちゃん?」
にこ「同じ組み合わせでずっとやっていると、よくも悪くも慣れちゃうじゃない?」
にこ「だから、どうしても自分たちの中で空気感とかそういうのが出来るわ」
にこ「にこが見てきたアイドルの中にもそういうグループがいた」
にこ「それをいい意味で壊すために。そう考えたらいい案だと思うわよ」
希「なるほどなぁ」
海未「そのような考え方もあったんですね」
絵里「さすがにこね」
穂乃果「……それじゃあ?」
海未「真姫の案を採用してみましょうか」
――回想終了――
――――――
真姫ちゃんの提案とにこちゃんの機転。
そのおかげで今に至ります。
練習の時間を潰してしまうのも悪いとは思ったけど……。
やっぱり私にとっては、凛ちゃんとのことはとっても大事なことだから。
花陽「ありがとう、真姫ちゃん、にこちゃん」
真姫「べつに、いいわよ」
にこ「にこも好きでやってることだからぁ?」
いつものように、そんな風に言葉を返してくれる二人。
ふふっ。
花陽はいい友達を持ちました♪
真姫「とにかく、例のデートプランよ」
話を進めるため、真姫ちゃんがそう切り出しました。
にこ「デートっていったら、遊園地とか?」
真姫ちゃんの話に乗るように、にこちゃんが言います。
うーん。
遊園地かぁ。
確かに楽しそうではあるなぁ。
凛ちゃん、絶叫系好きそうかも?
なんて、ボーッと考えていると、
にこ「もしくは、水族館もいいんじゃない?」
真姫「美術館もおすすめよ」
にこ「あとはお洒落なレストランとかぁ?」
真姫「クラシックのコンサートとかもいいんじゃないかしら」
にこ「ぐぬぬ……。なら、アイドルのコンサート!」
真姫「それって、チケット取れるの? 手軽なもので言えば、映画もいいと思うわ」
にこ「くっ」
花陽「え、えっと……?」
まるで、対抗し合うみたいに次々と候補を挙げていく二人。
え、えっと、水族館と美術館と?
レストランに、クラシックのコンサート?
アイドルのコンサートとあとは映画?
色々あって、なにがなんだか……。
花陽「あわわわ……」
真姫「……ゆっくり考えましょう」
花陽「ご、ごめんね……」
にこ「まず、一番あり得ないのは、美術館とクラシックね」
真姫「むっ。なんでよ?」
にこちゃんの言葉に、真姫ちゃんは眉をひそめました。
あり得ないって言われて、むっとしちゃったみたい。
けど、
花陽「うん。私もそれは止めといた方がいいかなって思う……」
真姫「は、花陽まで?」
あ、真姫ちゃんショック受けてる。
うぅ、ごめんね。
にこ「分かんない? ダメな理由」
真姫「…………」
にこ「はぁ、ホント真姫ちゃんはこういうことダメよね」
にこちゃんは煽るようにため息を吐く。
あぁ、真姫ちゃんの目付きがとっても険しくなってるよぉ……。
そんな真姫ちゃんに構わず、にこちゃんはこう言った。
にこ「相手は凛よ?」
真姫「…………あっ」
そう言われて、真姫ちゃんの険しい表情が消えた。
たぶんその一言で理解したんだと思う。
そう。
凛ちゃんと美術館やクラシック。
それほどミスマッチなものはない。
つまり、
花陽「たぶん、凛ちゃん寝ちゃうかも……」
そういうことです。
静かな場所だと凛ちゃんは寝てしまうんです。
実際、小学校の時の音楽観賞会では凛ちゃんはことごとく寝ちゃっていて。
だから、美術館やクラシックのコンサートなんて行った日には、きっと……。
真姫「コンサート中に、寝言を言う凛の姿が想像できるわ」
にこ「右に同じく」
花陽「あはははぁ……」
三人とも、たぶん同じ想像をしてる。
凛ちゃんってやっぱりそういうイメージだよねぇ。
じゃあ、同じ理由で映画もダメかしら。
真姫ちゃんがそう言った。
確かに、そうかも?
特に、恋愛映画とかは凛ちゃん見ないだろうし。
うーん。
わたしは好きなんだけどなぁ。
にこ「まぁ、アイドルのコンサートは……」
花陽「チケット取れないと思います……」
今週末に合わせて、コンサートをするアイドルがいるとも限りません、。
それに、熱中しちゃって、凛ちゃんを放ってしまいそうで怖いから。
真姫「それじゃあ、残ったのは……」
にこ「遊園地と水族館?」
花陽「あとは、お洒落なレストランですね……」
にこ「なんだか……無難ね」
花陽「う、うん」
確かに、デートとしては楽しそうなんだけど。
けど、
真姫「目指すは、最高のデート、最高の思い出よ」
にこ「わかってるわよ」
花陽「…………」
最高にはきっと届かない。
結局、第一回の会議はなにも決まらないまま終わってしまったのでした。
――――――
今日は一応ここまで。
また夜に少しだけ更新予定です。
乙
――――――
水曜日のことです。
放課後は皆で練習をするからって、真姫ちゃん、にこちゃんが昼休みに部室に集まってくれることになっていました。
花陽「あ、真姫ちゃん!」
真姫「ん」
先に部室に来てた真姫ちゃん。
お弁当を食べているみたいで、私に目線を少しだけ向けてからまた食事に戻る。
花陽「にこちゃんは?」
真姫「さぁ? まだ来てないわね」
花陽「そっかぁ」
真姫「大方、授業で居眠りでもして、怒られてるんじゃない?」
花陽「あはは……」
真姫ちゃんの冗談?に苦笑いを返した。
にこちゃんならあり得そう。
なんて、ちょっとだけ思っちゃった。
ご、ごめんね、にこちゃん。
そう、心のなかで謝ってからイスに座る。
そこでふと気になったことが。
それは……。
花陽「真姫ちゃん、そのお弁当……」
真姫「ん? これ?」
花陽「う、うん」
真姫ちゃんのお弁当箱。
見れば、今日のそれはいつも使っているお弁当箱より少し小さかった。
それに、中に入ってるおかずもなんだか質素な感じがするけど。
そんなことを考えていると、
真姫「これ、にこちゃんが作ってくれたのよ」
花陽「…………え? にこちゃんが?」
予想外の答えが返ってきて、少しだけ反応が遅れてしまった。
真姫ちゃんはそんな私に、意外かしら、なんて聞いてきて。
花陽「だって、真姫ちゃんとにこちゃんって、その……ずっと喧嘩してるイメージだから」
私はそう答える。
たぶんソリが合わないって訳じゃなくて。
むしろ、似てるからぶつかっちゃうのかな?
だから、私はにこちゃんが真姫ちゃんにお弁当を作ってきたってことを不思議に思ったんです。
私の様子を見て、真姫ちゃんは少し間を空けて、話をしてくれました。
真姫「いつか、私とにこちゃんが恋人のフリをしてたことがあったでしょ?」
真姫「その時に偶然、にこちゃんの作ったお弁当を食べる機会があったのよ」
真姫「え? ぐ、偶然よ!」
真姫「偶然! 食べる機会があってね……」
真姫「それが、美味しかったの」
真姫「特別なものじゃないんだけどね。にこちゃんも、晩ご飯の余りだって言ってたし」
真姫「けど、なんでかしらね……美味しかったのよ」
そう言う真姫ちゃんの表情は穏やかで。
お弁当をじっと微笑むように見ていて。
その表情は、見たことがないような初めて見るものでした。
と、ふとそこでハッとして、真姫ちゃんは早口で捲し立てます。
真姫「そ、それからたまに、こうやって作ってくれるのよ」
真姫「べ、別に断る理由もないから……それだけ」
プイッと顔を背ける真姫ちゃん。
花陽「……ふふっ」
それを見てふと笑っちゃった。
本当はすごく嬉しいんだって気持ちがこっちまで伝わってきたから。
真姫「な、なんで笑ってるのよっ!」
花陽「えへへ♪」
真姫「も、もうっ!」
そんな風に、ちょっとだけ赤くなる真姫ちゃん
が声をあげた、その時、
――バンッ――
にこ「花陽っ!」
花陽「ぴゃぁぁ!?」
真姫「ヴぇぇ!?」
二人して悲鳴をあげてしまいました。
うぅぅぅ……。
ビックリしたよぉ。
にこ「ちょっ!? 花陽!」
そんな私たちの様子なんて、お構いなしで、にこちゃんは花陽に詰め寄ってきます。
って、えっ?
な、なにっ!?
慌てた様子のにこちゃん。
ど、どうしたの?
にこちゃんにそう聞くと、にこちゃんはこう言いました。
にこ「あんた、凛のこと誘ってないってホント!?」
花陽「……あ」
そう言われて、気づいた。
そうだった。
今の今まで大事なことを忘れてた!
私、凛ちゃんのこと、まだデートに誘ってませんでした……。
――――――
――――――
日曜日辺りからかな?
かよちんがなんだか挙動不審だ。
手を繋いでるのにキョロキョロと周りを見渡したり。
いつもみたいに抱きつくと、異常に反応したり。
絶対、おかしい!
そう思った凛は、そのことを相談することにした。
その相手は――
にこ「……なんで、朝っぱらからあんたがここにいるのよ、凛」
凛「おはよーにゃ! にこちゃん!」
マンションの一室、そこの玄関から顔を出したにこちゃんは顔をしかめてそう言った。
――通学路
にこ「花陽の様子がおかしい、ねぇ」
登校しなから、凛は最近のかよちんのことを話した。
その話を聞き終えたにこちゃんは凛の言葉を繰り返す。
凛「うん、なんだかよそよそしいっていうか……」
にこ「……へぇ」
凛「昨日の朝の待ち合わせは、用事があるって先に行っちゃって」
にこ「あー、うん」
凛「放課後の練習のストレッチの時も、真姫ちゃんと組むことが多いし」
にこ「そうねぇ……」
凛「せっかく、その……恋人、になったのに、一緒にいれないのは寂しいにゃ」
にこ「わかるわかる」
凛「…………」
にこ「はいはい、そうねぇ」
凛「む?」
そこで、ふとにこちゃんの様子が変なことに気づいた。
っていうより!
凛「にこちゃん、返事が適当すぎるよ!」
にこ「え、あー、うん。悪いわね」
と、あっさり謝るにこちゃん。
あれ?
なんだか拍子抜け。
いつものにこちゃんなら、しょうがないわねって言って聞いてくれるのに?
凛「にこちゃん?」
にこ「あー、あれよ。きっとどこ行こうか迷ってるんじゃない?」
凛「どこ行こうかって……」
にこちゃんの発言の意味が分からなくて、そんな風に繰り返してみる。
どこ行こうか……ん?
凛「なんのこと?」
にこ「ん?」
凛「えっ?」
にこ「…………もしかして、何も聞いてない?」
凛「うん?」
どこ行こうかとか、何も聞いてないとか。
どういうことかいまいち分からない。
なんのこと!?
そう問い詰めてみても、なんでもないからって誤魔化したにこちゃん。
結局、朝はそのまま学校に着いちゃって、それ以上聞けなかった。
……昼休みに聞いてみるにゃ!
――――――
たのしみ
――――――
絵里「あら、凛? どうしたの? 3年の教室に来るの珍しいわね」
希「にこっち? なんだか今日は別なところで食べるって」
3年生の教室に行って、にこちゃんの行方を聞くと、絵里ちゃんと希ちゃんはそう言った。
にこちゃんはどこか行っちゃったみたい。
別なところでって?
うーん。
そこでふと思い付いたのは、
凛「部室かなぁ?」
たぶん誰かと食べてるんだろうなって。
そう思った凛は、二人にお礼を行って、部室に向かうことにした。
――――――
部室の前までに行くと、たしかににこちゃんの声がした。
けど、それだけじゃないみたいで……。
凛「あれ? 誰かいる?」
他にも誰かの声が聞こえた。
なんとなく、部室の扉に耳をつけてみる。
凛「…………」
微かに中から声が聞こえる。
「……したらいい……」
「…………なさいよ」
「……ちゃん……れるかな?」
「あんたら…………でしょうが」
凛「あれ? この声」
小さい声で話してるみたいで、内容までは分かんない。
だけど、よくよく聞いてみると、聞き覚えがある声だって気づいた。
この声は――
凛「真姫ちゃんと……かよちん?」
うん。
間違いない。
凛がかよちんの声を間違えるわけないし!
そう思って、また耳をつけてよく聞いてみる。
――その時だった。
花陽「は、はなよと、デートしてくださいっ!」
凛「!?」
部室のなかから、かよちんのそんな声が聞こえた。
必死そうな声。
かよちんとデート?
誰が?
えっ、かよちんは凛の恋人なのに?
聞こえてきたその内容を凛が理解する前に、
花陽「え、えっと! 花陽とデートしましょう!」
またかよちんの声がした。
それから何度も、そんなかよちんが誰かをデートに誘うような台詞が続いた。
まるで、凛に何度も何度もそれを聞かせるみたいに。
凛「なんで、かよちん……?」
力なく呟く。
凛はそこにいるのが嫌になって、堪らなく嫌で走り出した。
凛「っ!!」
凛の頭のなかはぐちゃぐちゃで。
もう何がなんだか分からなくなっていた。
――――――
ああぁ...
――――――
海未「それでは、お疲れ様でした」
穂乃果「じゃあねー!」
花陽「うん、バイバイ」
凛「…………」
穂乃果ちゃんと海未ちゃんに別れを告げて、凛ちゃんと一緒に歩を進める。
花陽「…………」
凛「…………」
さっきからというか、お昼頃から凛ちゃんがすごく静かで。
なんだか気まずくなっちゃってる。
手も、繋げてないし。
でも……うん。
せっかくお昼に練習したんだもん。
ちゃんと言わないと、付き合ってくれた真姫ちゃんとにこちゃんに悪いよね。
よしっ。
私は意気込んで、口を開いた。
花陽「り、凛ちゃんっ!」
凛「……なに?」
花陽「あのっ、今週の日曜日、一緒に出かけない?」
花陽の口から出てきたのはそんな言葉。
はっきり言いなさいよ!
そうしないと伝わんないわよ!
昼休み、真姫ちゃんとにこちゃんから、そう言われたのに……。
うぅぅぅ。
結局、デートしてくださいってはっきり言えなかったよぉ。
もう!
花陽のビビりんぼ! 臆病者!
で、でも、きっとこれでも分かる、よね?
そんなことを考えていると、なんだか凛ちゃんの反応が薄いことにふと気づいた。
花陽「凛ちゃん?」
凛「…………」
花陽「…………凛ちゃん?」
凛「あっ、ごめんにゃ……。ちょっと考え事してて……」
そう言った凛ちゃん。
考え事って、どうかしたの?
そう言おうとして、
凛「日曜日、うん。大丈夫だよ」
凛ちゃんの返答で遮られた。
って、あっ!
花陽「いいの?」
凛「うんっ!」
花陽「よ、よかったぁ」
凛「…………」
凛ちゃんの答えを聞いて、ほっと胸を撫で下ろした。
肩の荷が降りた気分。
よかったぁ。
これで凛ちゃんに他の予定があったら、どうしようかと思ったよぉ……。
これで、ちゃんと最高の思い出を作れる。
最高の思い出を作って、二人の……えっと初めてを、あっ、初めてじゃなかったっ!
と、とにかく、ちゃんとした素敵なものにっ!
花陽「……よしっ」
凛「…………」
その時の花陽は、意識がもう日曜日のことに向いちゃっていて。
凛ちゃんの考え事がなんなのか。
それを気にすることがまったく出来てませんでした。
――――――
あれ、おかしい。
もっと明るくて馬鹿馬鹿しい話になるはずだったのに……。
あばばばば……。
少し休憩。
日が変わる頃にまた更新する予定です。
待ってるぞ
――――――
いつの間にか夜になった。
その間のことはあんまり覚えてなくて……。
凛「かよちん……」
ベッドに横になって、ぼそりと呟く。
凛の大切な恋人の名前を。
いつもだったら、それだけで胸がいっぱいになったり、電話したくなったりするんだけど……。
「は、はなよと、デートしてくださいっ!」
凛「……っ」
今、思い浮かぶのは、昼間に聞いたそんな言葉だった。
かよちんが凛以外の誰かをデートに誘う言葉だ。
相手は……。
凛「真姫ちゃんかな? それとも、にこちゃん?」
たぶん、あの時部室にいたのはその二人。
だから、たぶん相手はどっちかなんだろうけど。
凛「…………」
それに、今日の帰り道で言われたこと。
日曜日の用事を聞かれたんだっけ?
なんだろう?
……もしかして、別れ話とか?
―― ズキッ ――
凛「痛っ」
そんなことを考えてると、胸に痛みが走った。
いつかの痛みとは違う痛み。
嬉しくもドキドキもしない痛み。
凛「痛い、痛いよ……痛いよ、かよちん」
涙は出ない。
ううん、出ないようにしないと。
だって、一回涙が出たらきっと止まらなくなっちゃうもん。
凛「……っ!」
凛「にゃー! にゃんにゃんにゃー!」
だから、少しだけ騒いでみる。
きっと元気が出るはずだから。
――――――
――――――
木曜日。
今日は凛ちゃんと登校できました。
だけど、
花陽「凛ちゃん!?」
凛「んー? どうしたの、かよちん?」
花陽「目、真っ赤になっちゃってるよ!?」
凛「……えっと……」
花陽「ちょっと待ってねっ」
そう言って、カバンからウェットティッシュを取り出す。
それで凛ちゃんの目の回りを優しく拭いてあげる。
凛「んっ……」
花陽「…………よしっ、オッケーだよ」
凛「ありがと、かよちん」
見ると、凛ちゃんは目は回りだけじゃなくて目のなかも充血しちゃっているみたいだった。
花粉症っていう時期でもないし……。
花陽「……なにかあったの?」
凛「っ! な、なんでもないにゃ!」
ちょっと泣ける映画を見ただけ。
そう言って、凛ちゃんははぐらかしてしまった。
それ以上はなにも聞かれたくないみたいで。
だから、わたしもそれ以上聞くことは出来なかった。
――――――
――――――
真姫「なんで、凛、今日元気ないわけ?」
休み時間、凛ちゃんが席を外してる間に、真姫ちゃんがそう聞いてきました。
花陽「それがわたしも分からなくて……」
そう答えるしかありません。
だって、実際に分からなかったから。
真姫「……大丈夫かしら」
花陽「…………」
真姫「花陽?」
花陽「あっ、ごめんね。ボーッとしてた」
真姫「もう。花陽までおかしくならないで。調子狂うわ」
花陽「う、うん」
ふと、思い出していた。
花陽たちが付き合い出す少し前に、凛ちゃんとぎすぎすした時があったなって。
たしか、あの時は凛ちゃんの様子がなんだか変で。
わたしはそれが凛ちゃんが病気かもしれないからだって思いこんでいた。
そして、もしかしたら凛ちゃんがいなくなっちゃうんじゃないかっていう風にも……。
それで怖くて、なにも聞くことが出来なかったんだ。
花陽「…………」
その時は結局何でもなかったんだけど。
今の凛ちゃんを見てたら、その時のことを思い出しちゃっていた。
悩んでギクシャクしていた頃のことを。
たぶん、凛ちゃんはあの時と同じように、なにか悩みを抱えてるんだと思う。
だから――
花陽「…………うん、決めた」
真姫「? どうしたのよ?」
いきなりそう言ったわたしを不思議に思ったみたいで、真姫ちゃんが首を傾げる。
そんな真姫ちゃんに、わたしはこう言った。
花陽「デートプラン、花陽がちゃんとひとりで考えるね」
思い出を作るのも。
悩みを解決するのも。
確かに、仲間がいればすぐに出来るし、そっちの方がきっと早く出来る。
けど、うん。
やっぱり凛ちゃんは花陽の彼女なんだもん。
一番最初に悩みを聞きたいし、一番に頼ってほしい。
だから、今回は花陽の力でなんとかする、したい。
真姫「……ふぅん、いいんじゃない?」
花陽「ごめんね、せっかく協力してもらったのに……」
真姫「いいのよ」
好きでやってたことだし。
真姫ちゃんはいつもみたいに無愛想にそう続けた。
真姫「スイートルームは?」
花陽「それも、大丈夫」
真姫「……そ」
わざわざとってくれたのにごめんね。
そんな花陽の言葉にも、別にいいわよとだけ返す真姫ちゃん。
心なしか微笑んでるように見えるのは、花陽の気のせいかな?
真姫「……にこちゃんには私から言っておくわ」
花陽「えっ、ううん、わたしから言っておくよ!」
さすがに、それは自分で言わないと。
そう思って断ったのだけど……。
真姫「いいから!」
花陽「え、あっ……うん」
真姫ちゃんに気圧されながら頷く。
自分から言わなきゃとは思うんだけど、真姫ちゃんがそこまで言うなら甘えちゃおうかな。
そう思って、にこちゃんへの言付けは真姫ちゃんにお願いすることにした。
―― キーンコーンカーンコーン ――
と、そこで鐘が鳴る。
同時に教室に凛ちゃんが戻ってくるのが見えた。
そろそろ席に戻らなきゃね。
そう言って、真姫ちゃんの席から離れる間際、真姫ちゃんが言った。
真姫「とりあえず、頑張りなさいよ」
花陽「うん、頑張る」
――――――
――花陽の部屋
花陽「よしっ!」
小声で気合を入れる。
夜も遅いから、部屋の電気は消して、デスクライトだけをつけた状態。
それで、机に向かう。
わたしの右手にはボールペン。
机の上にはルーズリーフ。
とにかく思い付いたものを書いていこうっていう作戦です!
まずは……。
『最高の思い出を作る!』
ルーズリーフにそう書き込む。
やっぱりそれが一番の目的だから。
そして、忘れちゃいけないのが……。
『初めてにも負けない素敵な夜を!』
それも書き込む。
思えば、それが事の発端、というかすべてだったから。
今度は忘れたくても絶対忘れられないようにしたいな。
……って。
花陽「うっ、なんだか……恥ずかしい」
書いてから思ったけど、素敵な夜って。
忘れたくても忘れられないって。
うぅぅ。
顔が熱くなりそうだよぉ……。
実際に、鏡で見たら真っ赤になってそう。
で、でも!
花陽「い、いやいや! このくらいでくじけちゃダメっ!」
独り言だけれど、自分に言い聞かせるようにそう口に出す。
意志を強く持ち直して、そして、わたしはまた紙に書き込んでいく。
次は……。
『凛ちゃんの悩みを解決する!』
花陽「……うん」
今度はちゃんと花陽から聞くんだ。
そう決意して頷いた。
花陽「よし、今度は行く場所を考えよう!」
――――――
そうして、夜は更けていくのでした。
――――――
期待がたかまる
乙乙
青春が聞こえてきた
なんか読んでると前作あるっぽいんだが?
それとも過去の話もやるフラグか?
>>1です。
レス感謝!
りんぱなsidの延期で数日モチベーションが下がってしまいましたが
日中に少しだけ更新する予定です。
指摘の通り前作あります。
こちらも読んでいただけたら嬉しいです。
凛「凛、病気なのかもしれない」
凛「凛、病気なのかもしれない」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1417454685/)
日中にと言いましたが
もう少しかかるかと思います。
読んでくださっている方申し訳ないです。
待ってます
――――――
金曜日になりました。
デートの日までもう少し、なんですけど……。
真姫「花陽、大丈夫?」
花陽「え? な、なにがぁ?」
真姫「自覚ないの? ……クマ、すごいわよ」
体育の授業中。
二人で少しだけ休憩をしていた時のこと。
わたしにそう言ってきた真姫ちゃんは、トントンと自分の目の下を軽く叩きます。
あぁ、やっぱり。
そんな風に心のなかで呟きます。
朝も鏡を見て確認してきたんだけどな。
花陽「ちょっと昨日寝てなくて……」
真姫「徹夜?」
花陽「……う、うん」
コクリと頷くと、真姫ちゃんはひとつため息を吐きました。
真姫ちゃんに呆れたような目で見られて、
真姫「そういうときの花陽、まっすぐすぎて不安になるわ」
そんな風に言われます。
アイドルに対してとか、お米に対してとか。
盲目というかなんというか。
そう続けた真姫ちゃん。
否定できないなぁ。
そう思い、苦笑いを浮かべる。
真姫「今は、凛に、って訳ね」
花陽「う、うん……えへへ」
ちょっと照れちゃうな。
凛ちゃんに盲目。
……えへへ、なんかくすぐったいような、変な感じ。
妬けるわね。
冗談混じりにそう言う真姫ちゃんの目も優しいもので。
真姫「ちゃんと、休めるときには休むのよ?」
花陽「うん、気を付けるね」
気遣ってくれる優しい友達の言葉。
心がポカポカするような気分で頷いたのでした。
真姫「で、だけど」
そう言って、真姫ちゃんは視線を向こうへ向けました。
その先には、
凛「にゃー!!」
バレーのスパイクを決める凛ちゃんの姿がありました。
運動神経のいい凛ちゃんは、体育の授業では特に目立っていて……。
真姫「すっかり復活したみたいね」
スパイクが決まって、クラスの子とはしゃぐ凛ちゃんを見て、真姫ちゃんはそう言います。
花陽「…………」
真姫「……花陽?」
確かに、元気そうに見える。
たぶん体調は万全なんだろうな。
だけど――
花陽「やっぱり、元気ないよ……」
真姫「…………」
花陽「……ううん、無理にはしゃいでる気がする」
真姫「…………」
そう、呟く。
それに根拠なんてなくて。
強いて言うなら、幼馴染みの勘、でしょうか?
そんな花陽に、真姫ちゃんは、
真姫「花陽が言うならそうなんでしょ」
凛ちゃんを見ながら、ポツリと言いました。
表情には出さないけど、きっと心配してる。
花陽にもそれがわかります。
そして、真姫ちゃんは言います。
真姫「……わかってる?」
ポツリと呟くみたいに。
なにが、とは言いません。
でも、なんとなくわたしにはそれが何のことかわかっていて。
花陽「うん、任せて」
だから、任せてって。
そう答えました。
わかってるよ、真姫ちゃん。
……待っててね、凛ちゃん。
――――――
凛を元気にするのはあなたの役目よ?
わかってる?
うん、任せて。
だって、花陽は凛ちゃんの恋人だもん。
――――――
――――――
――――――
海未「凛?」
凛「……にゃ? あ、海未ちゃん」
練習開始の時間より少しだけ早い時間。
部室に行くと、凛が先に来ていました。
なにやら寝起きのようで、目を擦っています。
海未「早いですね、凛」
凛「うん」
海未「花陽と真姫はどうしたんですか?」
凛「……っ!」
海未「……?」
金曜日ということで、一年生のホームルームは早めに終わったのだろうと予想しての質問だったのですが……。
なぜか凛はそれには答えず、俯いてしまいました。
海未「凛?」
名前を呼んでも、凛は顔を上げません。
それから少しして、
凛「……なんでもないにゃ」
凛はそう答えました。
けれど、その声からはいつもの元気な凛の様子は感じられなくて……。
そこでふと思い出しました。
花陽と付き合う前の凛のことを。
あのときは、人の悩みを無理に聞くのは不躾だと思い、なにも聞きませんでした。
凛が言うまで待とうと。
けれど――
海未「なにか悩み事、ですか?」
海未「私でよければ、聞きます。いえ、聞かせてください、凛」
あのときは変に気遣いをしてしまったせいで、凛が悩んで困っているというのに助けてあげることができませんでした。
あの後、ことりには、
「海未ちゃんには強引さが足りません!」
と言われ、挙げ句穂乃果にも、
「海未ちゃん! 仲間が困っているなら、迷わず聞いてあげなくちゃだよ!」
そんなことを言われました。
だから、というのはなんだか癪ですが、私も少しだけ強引になろうと思います。
海未「凛」
海未「教えてください」
凛「……海未、ちゃん?」
凛の肩を掴みます。
それに反応して、凛も俯いていた顔を上げて。
これで、凛とちゃんと目を合わせられますね。
凛「…………」
海未「…………」
凛「…………」
海未「…………」
しばらく無言の間があって。
それから、凛は口を開きました。
凛「……凛」
海未「……はい」
凛「っ……りん、ね?」
海未「……はい」
凛「…………ちゃうかもしれない……」
海未「…………え?」
凛の声はあまりにも小さくて、私は聞き返しました。
……えぇ。
きっと、それがまずかったんでしょう。
凛「すて、られっ……」
海未「り、りん?」
凛「すてられちゃうっ……」
凛「かよ、ちんに……すてられちゃうよぉぉぉ、うわぁぁぁんっ!!」
そうして、タガが外れたように、凛は泣き出しました。
その声は部室中に響き渡り、
海未「えっ、あっ!? り、りん!? な、なかないでくださいっ」
凛「う、うぇぇぇんっ!!」
海未「な、なかないでっ、凛っ!!」
号泣する凛とパニックに陥る私。
放課後の部室に、そんな阿鼻叫喚の図が出来上がってしまったのでした。
――――――
――――――
海未「落ち着きましたか、凛?」
凛「う、うん。ごめんね、海未ちゃん」
気にしないでください。
泣いてしまったことを気にする凛に私はそう返しました。
海未「それで、ですが……」
泣いている間に凛が言っていたことをまとめてみると……。
海未「花陽が真姫とうわきしている、ですか……」
凛「…………うん」
私の言葉に凛は力なく頷きます。
聞いたところによると、花陽が真姫をデートに誘う場面に遭遇したらしく。
凛「遭遇って言っても、壁越しに聞いただけだけど……」
凛「けど、何回もデートしてくださいって! そう言ってたから……」
とのこと。
確かにそれが事実なら、二人の関係は怪しいものなのですが……。
ん?
そういえば?
海未「……凛」
凛「なに? 海未ちゃん?」
海未「えぇと、そこには、にこもいたということでしたが」
なぜ、にこではなく真姫だと思ったんですか?
そう聞くと、
凛「えっと……にこちゃんは、うん。たぶんないにゃ」
海未「あ、そうですか」
謎に断言する凛。
まぁ、そういうならそうなんでしょうか?
よくはわかりませんが……。
凛「それに、最近、真姫ちゃんとかよちん、仲いいみたいなんだ」
凛「よく、凛がいないときに話をしてたりするし……」
海未「ふむ」
凛の話をそこまで聞いて、思考を巡らせます。
客観的に冷静に、少しだけ考えてみましょう。
花陽が誰かをデートに誘う台詞を凛が聞いたのは事実です。
そこに真姫とにこがいたのも事実。
しかし、その場面を凛は直接見たわけではない。
それに、真姫もしくはにこ、どちらかをデートに誘うのなら、どちらか一方だけを呼び出して誘えばいいはずです。
なのに、なぜ?
海未「…………」
凛「……海未ちゃん」
凛に名前を呼ばれ、私は思考をそこで中断させます。
見ると、私の名前を呼ぶ凛は不安げに、
凛「……凛、どうしたらいいのかな?」
ポツリとそう呟きました。
海未「………………」
どう、答えるべきなんでしょうか?
悩んで、言葉を探します。
花陽を信じましょう。
花陽が浮気をする人ではないとは思っていても、直接の状況を知らない私には、そんなことは言えません。
きっと言っても、言葉に重みなんてありませんから。
…………言葉の重み、ですか。
ただ、言葉を探している間、ふとある事を思い出しました。
凛が花陽と付き合った日。
その日に凛が私に電話をかけてきたことを。
――――――
今日は短いですが、ここまで。
明日も忙しく、更新はできるかわかりません。
今後ものそのそと更新するので、のそのそと待っていただけると幸いです。
乙
気長に待ってるぞ
乙
楽しみに待ってます
――――――
海未「こんな夜遅くにどうしたんですか?」
『あ、ごめんね……もしかして、寝るところだったかにゃ?』
海未「いいえ、それは大丈夫なんですが……」
『えっと、あのね! 海未ちゃんにちゃんと報告しておかなきゃって思って!』
海未「報告? ……あぁ、例の悩みですか?」
『うん。真姫ちゃんとにこちゃんには報告したから、海未ちゃんにも報告しないとって思ったんだ』
海未「……解決した、ということでいいんですね?」
『うん! みんなのおかげで!』
海未「それはよかったです。凛には元気な姿が一番似合いますから」
『えへへっ』
海未「では、聞かせてもらいましょう」
『うん! 凛ね、無事――』
『かよちんと……つ、付き合うことになった、にゃ……』
海未「……ん?」
海未「……すいません。聞き取れなかったので、もう一度お願いします」
『えーっ! えっと、ね……』
『凛とかよちん、無事恋人になりました……えへへ』
海未「」
『? 海未ちゃん?』
海未「ちょ、ちょっと待ってください! え? 凛と花陽が、え?」
『だから、付き合うことになったの!』
海未「え、えぇぇぇ!?」
『っ!? 海未ちゃん……声大きいにゃ』
海未「す、すみませんっ。あまりにも驚いたもので……」
『そうなの?』
海未「は、はい。確かに二人は仲がよかったですが、そういう関係になるとは思いませんでしたし」
海未「それに……女の子同士、ですよ?」
『……うん、わかってるよ』
海未「…………」
『凛も迷ったんだ、すごく悩んだ』
『でもね! それでも、凛はかよちんが好きなんだっ!』
海未「……ふふっ」
『えっ? ど、どうしたの? 凛、変なこと言った?』
海未「いいえ。凛の花陽への気持ちが伝わってきて、微笑ましい気持ちになったんです」
『そう?』
海未「はい。凛の気持ちは伝わりました」
『むっ?』
海未「えっ?」
『ちょっと待って、海未ちゃん!』
海未「は、はいっ!?」
『凛のかよちんへの気持ちはこんなんじゃ絶対伝わりきれないにゃ!』
海未「……は、はぁ」
『うんとね! 今日、かよちんとお風呂に入ったんだけど――』
――――――
――――――
それから、小一時間凛にノロケを聞かされたんでした。
終いには、その日だけじゃなく、付き合う前のことも話し始めて……。
海未「……大変でしたね」
凛「えっ?」
その日のことを思い出して、つい呟いてしまいました。
それに凛も反応してしまって。
なんでもありません。
そう答えます。
海未「…………」
……いえ。
何でもないわけではないですね。
おかげで、凛に伝える言葉を思い付くことができたんですから。
海未「凛」
凛「うん」
海未「凛の言うことが本当だとしたら、花陽はひどい人ですね」
凛「えっ?」
私の言葉に、凛はキョトンとした顔をする。
海未「だって、凛のことを裏切ったんでしょう? 恋人なのに」
海未「真姫と浮気をして、それを凛には隠していた」
海未「ほら、ひどい人です」
そんな言葉を捲し立てるように言います。
うぅぅ……。
酷いのは私ですよ。
しかし、ここは耐えなくてはっ!
海未「そんなひどい人と一緒にいて楽しいですか?」
海未「きっと楽しくないでしょう? なら」
自分の良心を騙してにこりと笑う。
あぁ、辛いです。
けれど、言わなくてはっ!
海未「別れてしまえばいいのです」
い、言い切りました。
ですが、まだ……いえ。
凛「………………っ!!」
もう、大丈夫なようですね。
――――――
凛「ぜったい、別れないよっ!」
――――――
凛「だって、凛はかよちんのこと大好きだし!」
凛「一緒にいて楽しいし!」
凛「かよちんは凛の話もちゃんと聞いてくれて、かよちんの話を聞くのもすごいたのしいもんっ!」
凛「それに、裏切ったり絶対してないっ」
凛「真姫ちゃんとのことはわかんないけどっ、でも、かよちんも絶対凛のこと好きに決まってるにゃっ!」
凛「だからっ……ぜったい、わかれたくないもんっ……っ!」
そこまで一息。
凛は真っ赤な顔で、真っ赤になりかけた目を必死に擦りながらそう言いました。
やっぱり、大丈夫じゃないですか。
凛は花陽のことをちゃんと信じてる。
なら、あとは……。
海未「凛」
凛「っ! な、なにっ!?」
海未「先ほど言ったことは全部、本心にないことです」
凛「えっ?」
海未「凛の根底にある気持ちを引き出すために凛を煽っただけなんです。申し訳ありません」
心にもないこととは言え、あんな暴言を吐いてしまったんです。
ここで頭を下げなくては、自分が許せません。
海未「…………」
凛「う、うみちゃん?」
困惑する凛の声。
それを聞いて、頭を上げます。
それから凛の目を見て、
海未「凛は花陽を信じてあげてください」
海未「凛が大好きだと思う花陽のことを」
海未「それに、花陽が好きだという自分の気持ちを」
そう言いました。
凛「かよちんと、凛の気持ち……?」
海未「はい」
私がなにを言ったところで、二人にとっては、ただの他人の言葉。
そんなものに信じるに値するものではないでしょう。
けれど、凛が花陽のことを。
そして、自分の花陽を信じてるという気持ちを信じてあげるなら。
きっとそれは何よりも強い根拠になるはずです。
……生ぬるい感情論なのですけどね。
だから、
海未「……凛」
凛「は、はい」
私は凛に尋ねます。
海未「あなたは、花陽が好きですか?」
凛「大好きにゃっ!」
海未「あなたは、花陽を信じていますか?」
凛「……もちろんっ!」
どうやら、愚問だったようですね。
これならきっと……。
海未「きっと、大丈夫ですよ、凛」
凛「うんっ!」
ふふっ。
今なら、花陽が凛に惹かれた理由も分かるような気がします。
この笑顔は、とても魅力的ですね。
――――――
ええのぉ
――――――
――――――
そわそわ。
そわそわ。
花陽「うぅぅ、緊張するよぉ」
自分でも浮き足立ってるのが分かって、そんなことを口にした。
そうでもしないと、落ちかないんだもん。
『落ち着きなさい、花陽』
花陽「にこちゃん……」
電話から聞こえてくるのはにこちゃんの声。
花陽に落ち着くようにって、言ってくれる。
花陽「だ、だって! 明日なんだよ!」
そんな弱音を吐く花陽。
この期に及んで、って自分でも思うんだけどね。
だけど、緊張するものは緊張するよぉ……。
『やれることはやったんでしょ?』
花陽「う、うん」
こくりと頷きます。
……うん。
今度はちゃんと凛ちゃんにも連絡したし、明日着るものだって決めた。
あとは……。
『デートプランも考えたんでしょ?』
花陽「…………うん」
これで凛ちゃんに最高の思い出を作ってあげられるかは分からない。
でも、花陽が考えられる最高のものを考えたつもり。
『なら、自信持ちなさい』
『あんた、凛の恋人なんでしょ?』
そうだよね。
わたしは……凛ちゃんの恋人なんだもん。
凛ちゃんのこと、一番知ってる。
だから、
花陽「うん! わ、わたし、頑張るね!」
わたしはそんな風に断言した。
明日。
凛ちゃんの悩んでることをちゃんと聞いて!
そして、花陽と凛ちゃんの最高の思い出を作るんです!
――――――
――――――
「かよちーんっ!」
駅前で待っていると、聞き慣れた声が聞こえてきました。
声のした方を見ると、
凛「おまたせにゃ!」
花陽「ううん。おはよう、凛ちゃん」
凛「おはよう! かよちん!」
おはようを返してくれた凛ちゃんは、朝なのに元気一杯です。
……って、あれ?
花陽「……凛ちゃん、元気だね?」
凛「?? 凛はいつでも元気だよ?」
花陽「???」
凛「????」
二人で首を傾げる。
凛ちゃん、金曜日までは元気なかったよね?
って、そういえば。
金曜日はユニット練習の上、帰りも凛ちゃんが先に帰っちゃったから、凛ちゃんとあんまり一緒にいられなかったんだった。
昨日も用事があるって言って、凛ちゃんと会えなかったし。
だから、こうやってゆっくり会えるのは二日ぶり。
……もしかして?
二日の間に凛ちゃんの悩みが解決しちゃったの?
花陽「あっ、ごめんね! なんでもないよ」
凛「そう?」
花陽「うん!」
花陽がなんとかしないとって思ってたんだけど……。
ううん。
凛ちゃんが元気ならそれが一番だよね!
そう考え直して、花陽は話を進めることにしました。
花陽「行こう、凛ちゃん! きょ、今日は花陽がエスコートするね!」
凛「うん! 楽しみにゃ!」
凛ちゃんの笑顔を見て、もう一度決意。
最高の思い出を作るんです!
そんな思いを込めて、わたしは凛ちゃんと手をぎゅっと繋ぎました。
――――――
――――――
凛「か、かよちん、ここって……」
花陽「えっと、洋服屋さんだよ?」
最初に来たのは、洋服屋さん。
しかも、ただの洋服屋さんじゃなくて、ことりちゃんが紹介してくれた『おしゃれ』なお店です。
凛「かよちんの服買うの?」
なんだか不安げな声をあげながら、そう聞いてくる凛ちゃん。
そんな凛ちゃんに、わたしは頷きます。
凛「そ、そっかぁ」
わたしの言葉に安心したみたい。
よかったぁ、と言って、凛ちゃんはほっと息を吐きました。
あ、でも……。
花陽「凛ちゃんの服も見たいなって思ったんだけど」
凛「にゃ!?」
驚いたような表情をする凛ちゃん。
って、そんなに驚かなくても……。
そう言うと凛ちゃんは、
凛「で、でも、ここは……」
モゴモゴと言葉尻がしぼんでしまう。
そして、凛ちゃんはチラリとお店の外観を見つめました。
……まぁ、凛ちゃんの気持ちもちょっと分かるかも。
ここって、ロリータファッションのお店だしね。
花陽「えっと、凛ちゃん?」
凛「や、やっぱり、まだ凛には早いと思うにゃ!?」
そう言って、凛ちゃんは回れ右をして。
……って!
花陽「ちょ、ちょっと待って」
凛「か、かよちん?」
花陽「えっと……」
凛ちゃんを引き止めてから、言葉を探す。
ど、どうしよう?
これじゃ最初から失敗になっちゃうよ。
ちゃんと花陽の気持ちを伝えなきゃっ!
えっと、えっと……?
凛「…………」
花陽「そのっ……」
凛「…………」
花陽「えっとね!」
花陽が言葉を探す間、凛ちゃんは花陽のことをじっと見ていた。
待ってくれてるんだ。
そう思った。
凛「……大丈夫」
凛「待ってるよ」
あぁ、やっぱり。
いつも、凛ちゃんは花陽が話し出してくれるまで待ってくれる。
やっぱり……優しいな。
そんな凛ちゃんのおかげで、わたしの中で言葉がまとまって、
花陽「あ、あのね!」
花陽「凛ちゃん、スカートはくようになったでしょ?」
凛「う、うん」
わたしはそう切り出します。
ファッションショーの一件で、凛ちゃんはスカートをはけるようになった。
それで見て、花陽は思ったんです。
花陽「だからね! 凛ちゃんに可愛いかっこうして欲しいんだ」
花陽「今までそういうかっこうが出来なかったぶんを、その……取り戻してほしくて!」
凛「……かよちん」
わたしの言葉を聞いて、凛ちゃんは少しだけうつむいた。
だめ、かな?
そう思ったんだけど……。
凛「……えへへっ」
凛ちゃんは笑った。
えっと、なんだか嬉しそう?
花陽「……凛ちゃん?」
凛「うん! わかったよ、かよちん」
顔を上げた凛ちゃんは、笑顔で言った。
凛「じゃあ、凛を……か、かわいくしてね?」
花陽「う、うん! 任せて、凛ちゃんっ!」
――――――
今日はここまで。
明日から仕事始まりなので、更新が遅れるかと思います。
さて。
凛ちゃんに似合うロリータファッションってどんなものでしょうね。
参考までにイメージを聞きたいです。
レスしてくださるとありがたいです。
りんちゃぁああああ
かわいいです(迫真)
俺妹の神猫の白い服希望
猫ついてるだけの安直な提案ですが......
絵が描けないのが悔やまれる
凛ちゃんかわええ
>>1です
レスありがとうございます。
次の更新なのですが、仕事が予想以上にきついためできて土日になるかと思います。
読んでくださってる方には申し訳ないです。
ええよー
まだかにゃ?
遅れましたが
書き始めます。
――――――
凛「……かよちん」
花陽「あっ! 着替え終わった?」
凛「う、うん」
試着室の中から凛ちゃんの声が聞こえて、わたしはその前に立ちます。
凛「……あ、あけるにゃ」
花陽「うん!」
凛ちゃん、どんな風になったのかな?
凛ちゃんに似合うと思って洋服を選んだけど、やっぱりちょっとだけ不安。
うぅぅ。
ことりちゃんかにこちゃんにこういうアドバイスも貰っておくんだったな。
そんな不安は――
―― シャー ――
凛「じゃ、じゃーん……」
凛ちゃんの姿を一目見て、消し飛んでいった。
花陽「…………」
凛「どう? 似合うかにゃ?」
花陽「…………」
凛「かよ、ちん?」
花陽「…………はっ!」
凛ちゃんの声で、なんとか我に返る。
見とれちゃってたや。
目の前で、もじもじとする凛ちゃんをもう一回じっと見つめる。
凛「そ、そんなに見ないでほしいよ……」
花陽「…………無理、かも」
白を基調にしたフリル多めのワンピース。
それに、淡いグリーンのリボンがところどころにあしらわれてる。
その色に合わせたカチューシャも、凛ちゃんにすごく似合ってて。
手元にはシュシュ。
それは凛ちゃんのイメージカラーの黄色。
まぁ、全体の色に合わせたパステルカラーなんだけどね。
花陽「…………」
とにかく、花陽は見とれちゃってた。
凛ちゃんが可愛すぎて……。
凛「かよちん、どう?」
不安そうな表情をする凛ちゃん。
やっぱり自信が持てないのかな?
だから、花陽は正直に感想を言います。
花陽「とっても、とっっっても! 可愛いよっ!!」
凛「そ、そう?」
花陽「うんっ♪」
凛「で、でも、やっぱり凛には……この服は可愛すぎるにゃ……」
なんて言う凛ちゃん。
なんで、そんなこと言うのかなぁ……。
こんなに似合ってて、すっごくかわいいのに。
……むぅ。
なら、もっと褒めるよ!
花陽「凛ちゃん、やっぱりこういう可愛い服似合うね」
花陽「もともと可愛いから当然なんだけど、凛ちゃんの可愛さが引き立つっていうか……」
花陽「普段のパンツルックも可愛いんだけど、こういうロリータファッションでも凛ちゃんは可愛いよ♪」
花陽「あとカチューシャも、普段してないからちょっと新鮮。あ、でも、全然変じゃなくて、むしろすごく似合ってるよ?」
花陽「ふふっ」
花陽「花陽ね? 凛ちゃんのこと、妖精さんかと思っちゃった♪」
凛「にゃぁぁ……」
凛ちゃんは花陽の言葉を聞いて、真っ赤になっちゃいました。
花陽の思惑通り、凛ちゃんはもう反論なんてできないみたい。
ふふっ!
必殺、誉めごろしです!
そんな誉めごろされた凛ちゃんは、顔から火が出そうなほど真っ赤な顔になっちゃって。
でも、ちょっとだけ。
ううん、すごく嬉しそうに、笑っています。
えへへ、そんな凛ちゃんも花陽は大好きだよ?
――――――
キェアアアアアアアカワイイヨオオオオオオ
――――――
花陽「うーん、残念だなぁ……」
凛「もう! かよちん、まだ言ってるの?」
洋服屋さんを出た後、残念、残念だって言っていたら。
ついに、凛ちゃんに叱られちゃった。
花陽「ごめんね……で、でも!」
凛「デモもストもないよ! 高いから買えないのは仕方ないの!」
花陽「うぅぅ……」
そう。
結局、あの洋服はとっても高くて、買うことが出来ませんでした。
せっかくかわいかったのに……。
妖精凛ちゃんは、あの時限定だったみたい。
凛「それに、凛はこっちの方が動きやすくて好きにゃ!」
花陽「……むぅ」
凛「もー、今日のかよちんはわがままだなぁ」
花陽「あうっ」
いつまでもごねてたら、そんな風に言われちゃった。
花陽「……あ、諦めます」
凛「よろしい! 聞き分けのいいかよちんは好きにゃ」
花陽「うぅぅ……」
花陽の言葉を聞いて、満足げな凛ちゃん。
危ない危ない。
凛ちゃんに、愛想尽かされちゃうところでした。
そんな風に思ってたんだけど、
凛「凛はそんなわがままなかよちんも好きだけど♪」
―― ギュッ ――
花陽「あっ」
そう言って、凛ちゃんはわたしの手を握ってくれました。
それから二人で顔を見合わせて――
凛「えへへ」
花陽「ふふっ」
そうでした。
まだデートは始まったばかりだもん。
楽しまないと!
……服は後でことりちゃんに手伝ってもらって作るけど。
――――――
――――――
凛「おいしかったにゃ!」
花陽「そうだね」
あの後、少し街中をブラブラと見て。
お昼を凛ちゃんいきつけのラーメン屋で食べ。
わたしと凛ちゃんは次の目的地に向かっていました。
その道すがら。
凛「でも、よかったの?」
花陽「? なんのこと?」
凛「だって、かよちん、ご飯のおかわりしなかったから」
花陽「あ、あー」
凛「も、もしかして、具合悪いのっ!?」
花陽「そ、そんなことないよっ! 元気いっぱい!」
ならいいんだけど。
そう言う凛ちゃん。
おかわりしないと心配されるって……。
な、なんだか花陽、食いしん坊キャラが確立されてないかな?
たしかに、ご飯は好きだし、お弁当もいつも二個持ってるけど!
ちょっとだけ、女の子としては複雑です。
恋人にそう見られてるなら尚更。
凛「でも、凛はご飯を美味しそうに食べてるかよちん、大好きだにゃ!」
凛「可愛いなぁ、って思う♪」
花陽「…………」
やっぱり、食いしん坊キャラでもいいかも。
なんて、凛ちゃんに可愛いって言われると思っちゃうや。
――――――
――――――
それから電車で移動をして。
着いたのは某アミューズメント施設。
ゲームセンターやカラオケ、それにボウリングもできたりする所です。
でも、今日のメインは――
凛「さぁ! 思いっきり遊ぶにゃぁぁ!」
花陽「おー!」
凛「凛、久しぶりに来たよ」
花陽「ちょっと遠いもんね」
凛「今日は色んなスポーツしようね!」
凛ちゃんが言ったように、ここはスポーツも出来るんです。
実は前に、凛ちゃんが練習以外にも普通にスポーツしたいなって言ってるのを聞いたことがあって……。
花陽からしたら、練習であんなにからだ動かしてるのにって思っちゃうんだけど。
とにかく、身体を動かすのが好きな凛ちゃんにピッタリかなって思って、ここを選んだのでした。
凛「凛、バスケしたい!」
花陽「うん、じゃあ、上の階に行こっか」
凛「うん! ほら、かよちん、早く早く!」
はしゃぎながら、先を行く凛ちゃん。
ふふっ。
やっぱりここに来て正解だったね。
花陽「ちょっと待って、凛ちゃん!」
花陽もはしゃぎながら、凛ちゃんの後を追います。
よしっ!
花陽も凛ちゃんにも負けないくらい楽しんじゃおう!
――――――
――――――
花陽「ダ,ダレカタスケテ……」
凛「チョ,チョットマッテテ-」
はい。
無理でした。
壁に寄りかかりながら、この二時間のことを思い出します。
―― 回想 ――
凛「バスケ楽しかったね!」
花陽「うん! 凛ちゃん、バスケも上手なんだね」
凛「えへへっ! 次は……バッティング!」
花陽「う、うん。行こっか」
凛「うーん、久しぶりだったから全然だったにゃ」
花陽「わたしも全然だったよぉ」
凛「悔しいから、次で挽回するっ!」
花陽「え、あっ、うん!」
凛「バドミントン行こう!」
花陽「うん。バドミントンは向こうだね」
凛「いい汗かいたにゃ!」
花陽「そ、そうだねー」
凛「今度は……」
花陽「あ、あの、凛ちゃん?」
凛「フットサル!」
花陽「……あ、あはは」
―― 回想終了 ――
支援
凛「ご、ごめんね、凛、久しぶりだったから楽しくなっちゃって……」
シュンとした表情で俯く凛ちゃん。
そんな顔をしてほしくなくて、
花陽「だ、ダイジョブだよ! ほら、元気だか――って、わっ!?」
凛「にゃっ!?」
急に立ち上がろうとしたのがまずかったみたい。
花陽は軽い立ちくらみを起こしてしまって、そのまま倒れてしまいました。
……凛ちゃんを押し倒すみたいな形で。
花陽「っ! ご、ごめんねっ、凛ちゃん!」
慌てて謝る。
こんなところでこんな体勢になっちゃって。
凛ちゃんに恥ずかしい思いさせちゃうよ。
そう、思ったんだけど。
凛「……だ、ダイジョブ、にゃ」
わたしの下にいる凛ちゃんは、照れたような調子でそう言いました。
花陽「……凛、ちゃん?」
凛「な、なに? かよちん……」
花陽「…………」
なんだかその表情が、すごく魅力的で。
しかも、さっきまで運動してたからか、凛ちゃんの体にはところどころ汗の滴が浮かんでいた。
花陽「…………」
凛「か、かよちん?」
花陽「っ!? あ、ご、ごめんねっ」
今すぐ退くね!
慌てて、そう言って凛ちゃんを抱き起こす。
花陽「っ、大丈夫? 凛ちゃん?」
凛「う、うん……」
それから二人の間に、沈黙が流れて。
花陽「……凛ちゃん」
その後で、わたしは口を開いた。
凛「な、なに? かよちん?」
花陽「そろそろ、帰ろう?」
そんな提案。
時計を見れば、確かにもういい時間で。
その提案には、凛ちゃんもこくりと頷いて同意してくれた。
元々、電車に乗って帰らないといけないから、あんまり遅くまではいる予定じゃなかったしね。
それに――
花陽「ねぇ、凛ちゃん?」
凛「? なに?」
首を傾げる凛ちゃん。
ごくり、と。
これから言う言葉が引っ込まないように、代わりに唾を飲み込みます。
………………よし。
ひとつ覚悟を決めて、凛ちゃんの耳元に顔を近づけます。
そして、わたしはこう言いました。
花陽「これから、花陽のうちに来ない?」
花陽「今日、花陽のうち誰もいないんだ」
――――――
レス感謝。
待たせてしまって申し訳ない
一旦休憩してからまた書きます。
今日、明日で終わらせる予定。
ただ過度な期待はしないでください。
一旦おつー
――――――
――花陽の部屋
凛「ふぅ! さっぱりさっぱり!」
花陽「お、おかえり」
運動してかいた汗を流した凛ちゃんは、ご機嫌そうにそう言った。
花陽の家に着いて、凛ちゃんをお風呂に案内しました。
といっても、凛ちゃんも昔からここに来てるから、勝手知ったるって感じなんだけどね。
凛「かよちーん! 牛乳あるー?」
花陽「あ、持ってくるから待っててね!」
そう答えて、立ち上がる。
そしたら、わたしもお風呂に行ってこようかな。
……キレイにしないと、だよね。
花陽「牛乳持ってきたら、そのままお風呂に入ってくるね」
凛「りょーかいにゃ!」
――――――
――――――
お風呂からあがって。
わたしは脱衣所にある鏡で、自分の身体をチェックしていた。
花陽「うぅぅ、ちょっと太っちゃったかも……」
前ほどじゃないけど、最近少しだけ食べる量多かったからなぁ。
凛ちゃんには可愛いって言ってもらえたけど……やっぱり控えなきゃ。
そう思う。
だって、これから、その……。
花陽「…………ううっ」
鏡に写る自分の顔が真っ赤になった。
これからすることを考えて……。
花陽「へ、変なところないよね?」
再確認。
うん、たぶん大丈夫、かな?
花陽「……よしっ」
ひとつ頷いて、でも――
花陽「これでよかった、のかなぁ……」
ポツリとそう呟いてしまった。
りんぱなっ!りんぱなっ!
『最高の思い出を作る!』
そんな目標で、花陽は今日のデートを計画しました。
でも、今日のデートは正直、最高とは言えなかったと思う。
もちろん、凛ちゃんとデートできてすごく楽しかったんだけどね?
でも、色んな失敗もあって。
スポーツしてダウンしちゃったり、帰りの電車だって1本遅れちゃったし……。
『初めてに負けない素敵な夜を!』
その目標だって、花陽のつまらない意地で真姫ちゃんの申し出を断っちゃって。
結局、花陽のうちで夜を過ごすことになっちゃった。
やっぱりこんなんじゃ、ダメだよね……。
元はと言えば、わたしが凛ちゃんとの初めてを忘れちゃったことが原因で。
凛ちゃんにはまだバレてないけど、それでもやっぱり申し訳ない気持ちでいっぱいになるんだ。
だって、大事に大事にしたかったから。
花陽「…………」
……そもそも。
わたしは凛ちゃんになにも言ってない。
最高の思い出を作って、初めてよりも印象的な夜にする。
真姫ちゃんがそう計画してくれたとは言え、きっとそれ以外にも方法はあったんだ。
凛ちゃんにちゃんと話して謝るっていう方法が。
たぶんそれが正解なんだと思う。
だけど、花陽はそれを選ばなかった。
言おうとしなかった。
……だって。
ばれちゃって、それで嫌われるのが怖かったから。
凛のこと大事じゃないんだ。
そう責められそうで。
大事だよって、そう言っても初めてを覚えていない花陽じゃ説得力なんてない。
……あぁ、そっか。
花陽「同じだ、また自分のことばっかり……」
嫌になる。
わたしはやっぱりただ一人になっちゃうのが怖いだけなんだ。
凛ちゃんが大事だって、そう口では言っているのに……。
花陽「っ、うぅぅ……っ」
凛ちゃんのことを大事に出来てない花陽が、側にいていいのかな?
凛ちゃんは本当にわたしといたいのかな?
凛ちゃんの隣にいる資格は、ないんじゃないかな?
そんな疑問が頭のなかでぐるぐると回って。
悲しくなって。
花陽「っ、うっ、うぅぅ……」
徐々に視界がぼやけていく。
花陽「……っ、うぅ、ひぐっ……ぐすっ」
あぁ、もう無理だ。
泣いちゃう。
そう思った時だった。
――――――
凛「……かよちんっ!」
――――――
花陽「っ、えっ?」
凛「っ!!」
―― ギュッ ――
脱衣所の扉を音を立てて開けた凛ちゃんがそのまま抱きついてきた。
花陽「ぐすっ、っ、りんちゃん?」
凛「ぎゅぅぅぅぅ!」
混乱してる頭で、凛ちゃんの言葉を聴く。
凛「大丈夫だよっ!」
凛「凛はかよちんの味方だから!」
凛「凛はかよちんのこと信じてるから」
凛「凛はかよちんのこと大好きだからっ!」
凛「だからね」
凛「なんでも凛に話してほしいにゃっ!」
凛「かよちんは、凛の彼女なんだもんっ!」
花陽「っ」
その言葉を聞いて、わたしは、
花陽「うわぁぁぁん、りんちゃぁぁぁんっ」
泣いてしまった。
凛ちゃんを騙そうとしていたことへの申し訳なさと、凛ちゃんが花陽を彼女だって言ってくれた安堵の気持ち。
色んなものがごちゃまぜになって……。
凛「よしよし、大丈夫だよー」
花陽「りんちゃんっ、りんちゃんっ!」
それから少しの間、わたしは泣き続けました。
凛ちゃんにぎゅってされながら。
――――――
――――――
――――――
花陽「ごめんなさい! 凛ちゃん!」
散々泣いてから。
部屋に戻ったわたしは、ベッドの上に座る凛ちゃんに謝りました。
もちろん土下座です。
凛「か、かよちん? ど、どうしたのっ!?」
そんなわたしを見て、驚く凛ちゃん。
どうしたのって……。
花陽「…………」
凛「かよちん?」
凛ちゃんとの初めての記憶がない。
真実を話すのはやっぱりまだ怖い。
でも、凛ちゃんが味方だって、信じてるからって言ってくれた。
なにより、凛ちゃんにこれ以上黙っているのは嫌だって思うから。
だから、ちゃんと言わなくちゃ!
花陽「あ、あのね」
凛「う、うん」
花陽「凛ちゃんとのね」
凛「うん」
花陽「そ、その、初めての……」
凛「うん……うん?」
花陽「は、はじめての夜のっ!」
凛「え、いや、え?」
花陽「初めて――」
花陽「初めて、えっちした時の記憶がなくなっちゃってるのっ!」
凛「そ、そ、そそんなあるわけないにゃっ!」
花陽「え?」
え、えっと?
花陽の聞き間違い?
今、凛ちゃんなんて?
凛「だ、だからっ!」
凛「え、えっ……えっちなんてまだしてないもんっ!」
花陽「…………」
花陽「え、えぇぇぇぇぇ!?!?」
――――――
――――――
土曜日の夜。
凛はかよちんの部屋に行った。
それは看病をするため。
かよちん、金曜日の夜から高熱を出して寝込んでいたんだ。
金曜日と土曜日の夕方までは、かよちんのお母さんがいたからいいんだけど、土曜日の夜は急用ができたらしくて、家を離れないといけないって話だった。
だから、凛が看病に行きますって。
そんな風にかよちんのお母さんに言ったんだ。
お粥は作って置いてくれてたし、熱も下がってきたから大丈夫だって思ったんだけど……。
―― 回想 ――
花陽「んっ、うぅぅぅ」
凛「かよちんっ!?」
花陽「っ……うっ」
凛「……っ!? また熱上がってるっ」
花陽「はぁ、はぁ……ううぅぅ」
凛「薬は飲んだはずだし……えっとえっと」
花陽「りん、ちゃん……」
凛「かよちん! なにか、凛に出来ることはない!?」
花陽「ぎゅって、はぁ……してっ……」
凛「うんっ!」
―― ギュッ ――
凛「………………」
凛「……どう?」
花陽「っ、はぁっ……あついよぉ……。でも、さむいよぉ……」
凛「え!? り、りんはどうしたらっ!?」
花陽「はぁ、うぅっ……はっ、はぁ」
凛「……そ、そうだ! 希ちゃんが前に……」
凛「待ってて、かよちんっ!」
―― 回想終了 ――
花陽「ソレデハダカニナッチャッアノォォ!?」
凛「う、うん……そうすると、あったかくなるんだって、希ちゃんが言ってたから」
花陽「えっと、じゃあ、土曜日の朝……じゃなかった、日曜日の朝に言ってたのは?」
凛「えっと?」
花陽「死んじゃうかと思ったって……」
そう。
あれは、その、そういう意味なんじゃ?
凛「あぁ! あれは、かよちんが死んじゃうかもって……」
花陽「…………」
な、なるほど。
そういえば、誰がっていうのは言ってなかったね。
それに、凛ちゃんはあの時寝起きだったから……。
あ、でも……。
花陽「じゃあ、歯形は?」
凛「にゃ?」
凛ちゃんは首を傾げる。
あれ?
もしかして、知らない?
朝に歯形が花陽の首筋に残ってたの。
そう言うと、凛ちゃんはううむと首をかしげた後、ひとつ手をうって言いました。
凛「……あー」
花陽「凛ちゃん?」
凛「その日、ものすごく美味しいラーメンを食べる夢を見た気がするにゃ」
花陽「…………」
な、なるほど。
あれは凛ちゃんの寝相?だったんだね……。
つまり、今までのって……。
花陽「全部、勘違い?」
凛「そういうこと、にゃ」
花陽「よ、よかったぁぁぁ……」
凛「か、かよちんっ」
凛ちゃんが頷くのを見て、ヘタヘタと座り込む。
腰が抜けちゃったみたい。
隣にいる凛ちゃんにもたれかかる。
花陽「えへへっ」
凛「ど、どうしたの?」
嬉しくて。
そう答えると、凛ちゃんはピンと来ないみたいで、不思議そうな顔をしていた。
花陽「だって……その」
凛「?」
花陽「……凛ちゃんとの初めてをちゃんと覚えておけるんだって思ったら」
凛「にゃっ!?」
花陽「…………」
花陽「……ふぇっ!?」
って、花陽なに言ってるのっ!?
凛ちゃんとの初めてを、とか!
り、凛ちゃんの前で言っちゃうなんてっ!
うぅぅぅ、は、はずかしいよぉ……。
そんなことを思って、顔を手で隠します。
恥ずかしくて、凛ちゃんに顔見せられません。
花陽「うぅぅぅぅ」
凛「…………」
凛「ねぇ、かよちん」
ふと、凛ちゃんに名前を呼ばれた。
指と指と隙間から凛ちゃんを見ると、凛ちゃんは真剣な顔をしていて。
だから、わたしも手で隠すのを止めて、凛ちゃんのことをちゃんと見ます。
花陽「なに、凛ちゃん?」
凛「かよちんは、凛のこと大事?」
花陽「うん。大事だよ」
凛「じゃあ、好き?」
花陽「……大好き」
当たり前のことを聞いてくる凛ちゃん。
けど、花陽もちゃんと答えます。
凛ちゃんに花陽の気持ちが伝わるように。
凛「…………」
花陽「…………」
二人が黙っていた時間はどのくらいだったでしょうか。
10秒? 20秒? それより長かったかも。
そんな短いような長いような沈黙を破って、凛ちゃんは――
凛「かよちん」
花陽「なに、凛ちゃん?」
凛「……凛、かよちんともっと仲良くなりたい」
そう言って、凛ちゃんは花陽の服の袖をぎゅって掴みました。
花陽「りん、ちゃん」
凛「かよちん」
よく見たら、凛ちゃんの目はちょっとだけ潤んでいて……。
少し濡れた髪。
それにぷるぷるの唇。
凛ちゃんの髪を撫でたい。
それにこの唇にキスしたいな。
それから、それから――。
凛「……かよちん」
花陽「……うん」
―― 大事にしてね? ――
――――――
――――――
――――――
花陽「はい、凛ちゃん。あーん♪」
凛「あーん!」
真姫「…………」
凛「かよちんも! あーん!」
花陽「あ、あーん♪」
にこ「…………」
にこまき「「ウザイッ!」」
りんぱな「「え?」」
にこ「ベタベタベタベタ……あんたらはカップルか!」
凛「? そうだよ?」
花陽「えへへぇ」
にこ「そうだったわね……はぁ」
真姫「もう何を言っても無駄みたいよ」
にこ「……そうね」
花陽「えへへっ、凛ちゃん!」
凛「かーよちんっ!」
りんぱな「「大好きっ♪」」
―――――― fin ――――――
以上で
『花陽「凛ちゃんと一夜の間違い?」』完結になります。
レスをくださった方
読んでくださった方
稚拙な文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。
前レスにも張りましたが、前作です。
よろしければどうぞ。
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次もまたラブライブ関係で書きたいと思います。
10個目なので、なにか特別なものを書けたらいいなと夢想してます。
またお付き合いいただけたら幸いです。
では、また。
よかった!
乙です!
最高だった乙
スパシーバ
おつ!よかった
このSSまとめへのコメント
全部過去作読んでたww
いつもいいSSありがとうございます。