【ラブライブ】凛「10年後に行けるお香?」 (96)

更新遅いです。
地の文とセリフ複合してます。
それでもいい方はお付き合いください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1416603707

凛「10年後に行けるお香?」

希「正確には10年後に行く夢を見ることができるお香やね」


凛の言葉を希ちゃんはそんな風に正して
凛に小さな巾着袋を手渡した。

中身を見てみると
某イチゴ味の三角いチョコレートみたいな形をしたお香が入っていた。

これで本当に10年後の夢が見れるのかにゃ?
正直ちょっとうさんくさいけど……。


凛「これでほんとに夢を、見れるの?」

希「そうや♪」

凛「……」

希「凛ちゃん」

凛「にゃ?」

希「ウチを信じて?」


いつもみたいに柔らかい表情で笑う希ちゃんを見て、凛は――


凛「わかったにゃ!」


希ちゃんを信じてみることにした。

ベットの上。

夜ご飯も食べ終わって
寝転がってダラダラしていた凛は
そんな、放課後の部室でのやりとりを思い出していた。
手には希ちゃんから貰ったお香がある。

少し気になって、それの匂いを嗅いでみる。


凛「……桜の匂い、かにゃ?」


音乃木坂に入学した季節を思い出させるような花の香りがする。

……花。
確か、あの頃はかよちんは眼鏡をかけてたんだっけ?

そんなことを不意に思い出して、


凛「――っ!」


首を横に振る。

今はかよちんのことはいいのっ!
そう!
今日は楽しい夢を見て忘れるのにゃ!

――――――


日課だったメールの確認だけして、ベットに入る。
メールは海未ちゃんからμ'sの皆への連絡だけ。
内容は明日も早いから……っていういつも通りのものだった。

『わかってるにゃ♪』

それだけを返信して電気も消した。

カーテンもちゃんと引いたし
お香はもう焚いて机の上に置いてある。
ベットからは少し遠いからまだ匂いはしないけど、そのうちしてくるはず!

よしっ!
と意気込んで、凛は目をつぶった。


凛「………………」


真っ暗。
いつもはテンションが上がるんだけど
今日は珍しく落ち着いてる。

……いつも思うんだけど
目をつぶってても電気がついてると真っ暗じゃないのはなんでなんだろう?

なんとなく目の前が白っぽいんだよね。
そういうことは真姫ちゃんに聞いたらわかるかな?
明日聞いてみるにゃ。


と、凛の記憶があったのはそこまで。
あとはふっと桜の香りがして……。

あ、思い出した。
そういえば、今日のかよちんの髪、



――桜の香りがした――


――――――

――――――


凛「…………?」


目が覚めた。
なのに、辺りが真っ暗だった。

あれ?
凛、起きてるよね?
……うん。
意識もはっきりしてる。
いつもよりスッキリした気分だし。

でも、


凛「む、ぐごぐぐ……ぐ?」


あれ?
なんだか喋れない?
というか、なんだか息苦しいにゃ!

まるで枕に顔を押し付けてるみたいな感じで息がしづらい。
バタバタももがく。
もがきながら、
お香まったく効果なかったよ、希ちゃんの嘘つきって毒づいてみたり……。

少しの間もがき続けて、


凛「っ! ぷはっ!!」


凛はそこから顔を出した。
枕みたいな、いや、枕よりもずっと柔らかかったけど。
とにかくやっと息ができた。

と、同時にあの香りが凛の鼻をくすぐる。
桜のような匂い。

寝る前に焚いたあのお香?
まだ匂いがするんだなぁ。

なんて、凛が考えたのはそんなこと。
ただ凛の予想はことごとく外れていた。



凛「…………えっ?」



目に入ってきたのは、女の人。
凛をぎゅっと抱き締めて眠ってる女の人。

どうやら凛はこの人の胸にぎゅっと抱き締められて息がしづらかったみたい。

ふわっと、またあの香りがした。
桜。
その香りは女の人の髪の毛からしているみたいだった。


凛「えっと、え、えっ?」


正直、理解が追い付かない。
一体、何が起きたの?
だ、だれか助け――――



??「…………ん、りん、ちゃん?」

凛「にゃっ!?」



思わず大きな声が上がる。
上ずった声で、ワタワタとする凛と比べて
ゆっくりとその女の人は起き上がる。

そして、もう一度、


??「りんちゃん、どうしたのぉ?」


凛の名前を呼んだ。
そのとき、女の人の顔がはっきりと見えた。

ふわふわの髪に、優しそうな目。
そして、柔らかそうなほっぺた。
少し雰囲気が大人びているけれど、間違いない。

凛は、その人の名前を呼んだ。
今度は凛から。
凛が大好きなその人の名前を――。



凛「…………かよ、ちんっ!」



――――――

――――――


凛の頭がその状況を飲み込むまでだいたい30分くらい。
その間、かよちん(?)はずっと落ち着いた様子で凛のことを見ていた。

それで、凛が落ち着いた今、凛たちはベッドの上で向かい合っていた。


凛「えぇと、本当にかよちんなんだよね……?」

花陽「うん、そうだよ、凛ちゃん」


にっこりと笑うかよちん。
この笑顔で分かった。
あっ、この人は、絶対かよちんだって。

ただ……。


花陽「凛ちゃん? どうかした?」

凛「にゃっ!?」

花陽「ちょっと顔赤いよ?」


そう言って凛のほっぺたを触る手も。
さっきの笑顔も。
どこか大人びた雰囲気をかよちんから感じて
凛はなぜかドキッとしちゃった。


凛「な、なんでもないっ……にゃ」

花陽「……そっか」


また、そうやってにこって笑う。
なんだか、ずるい……。


花陽「それで、凛ちゃん」

凛「な、なに? かよちん」

花陽「なんで……小さくなっちゃったの?」

凛「…………あっ」


この状況に混乱して
かよちんに説明するのすっかり忘れてたにゃ……。


希ちゃんから貰ったお香のことを話している間、かよちんはそれを黙って聞いてくれた。
頭のよくない凛の話だから
たぶんあんまりうまくは話せなかったと思うけど……。


花陽「そっかぁ。なら、凛ちゃんは10年前の……高校生の時の凛ちゃんなんだね」

凛「そうにゃ!」


どうやら上手くいったみたい。
というか、かよちんがうまく分かってくれたのかな?
さすが、かよちん!


花陽「ふふっ、懐かしいなぁ」

凛「あ、そっか! それじゃあ、かよちんは10年後のかよちんなのかにゃ?」

花陽「うん、そうだよ。来年の1月で26歳になるんだぁ」

凛「26歳……お、おとなだにゃぁぁ」

花陽「そんなことないよぉ。まだ働きだしてから4年も経ってないし……」


それでも大人だと、凛は思う。
高校生からしてみたら、ずっと大人だ。


凛「んん? ……かよちん」

花陽「ん? なに?」

凛「四捨五入したら、三――

花陽「それは言わないでぇぇぇぇぇ!!!」

凛「あはははは」

花陽「じゃあ、ここは凛ちゃんの夢の中の世界なのかな?」


と、かよちんが言った。
その疑問に、うん、とそう答えようとして、少しためらう。

確かに希ちゃんは『10年後に行く夢を見ることができる』って言ってた。
だけど、


花陽「? 凛ちゃん?」


ここはほんとに夢の中なのかな?

>>10
訂正

希ちゃんから貰ったお香のことを話している間、かよちんはそれを黙って聞いてくれた。
頭のよくない凛の話だから
たぶんあんまりうまくは話せなかったと思うけど……。


花陽「そっかぁ。なら、凛ちゃんは10年前の……高校生の時の凛ちゃんなんだね」

凛「そうにゃ!」


どうやら上手くいったみたい。
というか、かよちんがうまく分かってくれたのかな?
さすが、かよちん!


花陽「ふふっ、懐かしいなぁ」

凛「あ、そっか! それじゃあ、かよちんは10年後のかよちんなのかにゃ?」

花陽「うん、そうだよ。来年の1月で26歳になるんだぁ」

凛「26歳……お、おとなだにゃぁぁ」

花陽「そんなことないよぉ。まだ働きだしてから4年も経ってないし……」


それでも大人だと、凛は思う。
高校生からしてみたら、ずっと大人だ。


凛「んん? ……かよちん」

花陽「ん? なに?」

凛「四捨五入したら、三――

花陽「それは言わないでぇぇぇぇぇ!!!」

凛「あはははは」


あ、今のかよちんは
いつものかよちんっぽかったにゃ♪



花陽「ねぇ、凛ちゃん?」


少しだけ二人で笑った後、ふとかよちんが言った。


花陽「ここは凛ちゃんの夢の中の世界なのかな?」

凛「……?」


その疑問に、そうだよ、とそう答えようとして、少しためらう。

確かに希ちゃんは『10年後に行く夢を見ることができる』って言ってた。
だけど、


花陽「? 凛ちゃん?」


ここはほんとに夢の中なのかな?

さっきまで感じていたかよちんの温かさも
話していたその心地よさだって、凛にはリアルに感じた。
だから、ちょっと分からなくなる。

ここは、夢の世界?
それとも――


凛「…………」

花陽「あ、ごめんね、凛ちゃんっ! 変な質問しちゃったよね」


そう言ってかよちんが少し慌ててる。

…………。
……よしっ!


凛「凛にはよくわからないにゃぁ……」


凛は考えるのを止めた!
だって、凛が考えてもたぶん分かんないし!
だから、決めた!


凛「かよちん!」

花陽「えっ、う、うんっ!」

凛「遊びに行くにゃっ!!」


今しかできないことをしようって!

――穂むら


花陽「それで、来るのがここなんだね」


ふふっ、と微笑むかよちんにもちろんだと返すとかよちんはまた嬉しそうに笑った。

和菓子屋「穂むら」
音ノ木坂の近くにある老舗の和菓子屋だ。
お店の外見は……10年前とあんまり変わってないや。

もちろん、ここに来たのはただお饅頭を買うためだけじゃなくて……。



穂乃果「いらっしゃいま――って、花陽ちゃん!」

花陽「こんにちは、穂乃果ちゃん」

穂乃果「久しぶりぃ! 元気だった?」

花陽「うん♪」

穂乃果「最近、皆来ないからさぁ……暇で暇でって、あれ?」


あ、どうやら凛に気づいたみたい。



穂乃果「えっ!? も、もしかして……」

凛「そうだよっ! 穂乃――



穂乃果「花陽ちゃんの子供!?」



凛「!?」

花陽「えぇぇっ!?」



抱きつこうとして、まさかの大ボケでずっこける。

穂乃果ちゃん……。
10年後も相変わらずだにゃぁ……。

――穂乃果の部屋


穂乃果「なんだぁ、凛ちゃんだったのかぁ。穂乃果、てっきり……」

花陽「ち、違うよぉ」

凛「あはは……」


雪穂ちゃんに店番を任せた穂乃果ちゃんに続いて穂乃果ちゃんの部屋へ。
そこでお茶を飲みながら話をすることになった。


穂乃果「いやぁ、それにしても10年前の凛ちゃんかぁ……」

凛「そ、そんなにじろじろ見ないで欲しいにゃぁ……」


見られてる相手が穂乃果ちゃんでも流石に恥ずかしい。
それに、なんだかんだで穂乃果ちゃんも綺麗になってるし……。
中身は変わんないみたいだけど。


穂乃果「だって、もう見られないかもしれないからねぇ。こんな可愛い凛ちゃんは」

凛「か、可愛い……」

花陽「ふふふ」


うぅぅ。
かよちんも笑ってないで助けて欲しいにゃぁぁ……。


穂乃果「だって、ねぇ? 花陽ちゃんもそう思わない?」

花陽「えぇ! 私?」

穂乃果「だって、今の凛ちゃんってほら、綺麗系だから!」

花陽「まぁ、それは……」

凛「っ!? り、凛がっ!?」

穂乃果「うん!」


凛が、綺麗系?
ま、まったく想像つかないよ……。

凛「はっ! 凛のことより穂乃果ちゃんのこと!」

穂乃果「? 穂乃果のこと?」

凛「そうにゃ! 今なにしてるのとか!」

穂乃果「なにって、この通りっ!」


そう言って穂乃果ちゃんは立ち上がると
得意気にくるっとターンをしてみせた。

んー?
えっと……。


花陽「穂乃果ちゃんは穂むらを継いだんだよ」

穂乃果「そういうこと!」

凛「なるほど……」


まぁ、予想通りといえば予想通りかな?
穂乃果ちゃん、嫌々言ってたけど
和菓子作るのは得意だったみたいだしね。


穂乃果「どう? ビックリした?」

凛「あんまりしないかにゃぁ」

穂乃果「えぇぇ!!」

花陽「予想通り?」

凛「うん、予想通り」

穂乃果「ガクッ」

りんぱな「「あははははは」」



凛「あ、そういえば、ことりちゃんと海未ちゃんはどうしてるの?」

穂乃果「あ、えっと……」


あれ?
なんだか穂乃果ちゃん、言いにくそう?
もしかして、変なこと聞いちゃった?

そう思って、かよちんの方を見たら、


花陽「ことりちゃんは海外にいるんだ」

凛「か、海外!?」


そんなことを言われた。
って、えぇ!?
もしかして、また留学とかして……。


穂乃果「あ、高校卒業してからねっ! 向こうで服飾の勉強して帰ってきて、こっちで仕事はしてるんだけどね、えっと、たまに向こうに行って仕事したりしてるんだっ!」

凛「へ、へぇ」


なんだか捲し立てるように言ったけど……?
んんん?


凛「じゃあ、海未ちゃんは――


――バンッ――


?「穂乃果っ! また仕事、雪穂に押し付けて! 何度言ったら分かるんですかっ!」


扉を鳴らして入ってきたのは、またもや女の人。
今度は黒髪でキリッとした表情をした人だった。
見覚えのあるその人物が
穂むらのエプロンをつけて穂乃果ちゃんの部屋に入ってきた。

そうだ。
この人は、



凛「海未ちゃんっ!」

海未「はい?」

――――――


海未「そんな訳で今は日舞の家元を継ぎ、穂むらの方もたまに手伝っているのですよ」

凛「ほへぇぇ……」


さらっと海未ちゃんはそんなことを言った。
家元を継いだってだけでもすごいのに穂乃果ちゃん家の手伝いもやっているなんて……。


海未「そうは言っても、穂むらの方はたまに手伝う程度ですから」

穂乃果「えー! そんなことないじゃん! 海未ちゃん、下手したら穂乃果より接客してるって!」

花陽「あはは、それもどうなんでしょう?」


凛もかよちんも穂乃果ちゃんの言葉に苦笑する。
穂乃果ちゃん、それでいいのかにゃぁ?


海未「……穂乃果は接客より作る方ですからね。手伝いとは言え、私が多くなってしまうのも仕方ありませんよ」

穂乃果「あ、そっか!」

凛「お、おぉ……」

海未「? どうかしましたか?」

凛「え、えっと……」


思わず出てしまった驚きの声。
その理由は、海未ちゃんの表情がすごく優しく見えたから。

それを伝えたら、海未ちゃんは少しの間きょとんとした後、こう言った。


海未「昔とは違いますからね。私の立場も」


クスっと笑う海未ちゃん。
その表情はやっぱり凛が知ってる海未ちゃんのそれよりずっと穏やかだった。


凛「立場、かにゃ?」

海未「はい。私は穂乃果の恋人ですからね」



凛「……にゃ!?」

いきなりの衝撃発言。
えっ!?
海未ちゃんが穂乃果の恋人!?


凛「そ、それってどういうっ!?」

穂乃果「そのままの意味だよ?」

凛「にゃっ!?」

海未「……というか、凛は知らなかったんですね。てっきりもう穂乃果や花陽が話しているものかと」

花陽「凛ちゃん、びっくりしちゃうと思って……あはは」


あはは、じゃないにゃ、かよちん!
そういうことはもっと早く言ってよ!

二人とも幼馴染みだから仲がいいのは知ってたけどさっ!
いきなりそんなこと言われたら凛も戸惑うよ!
だって、その……女の子同士だし……。


海未「あ、それに、ことりも穂乃果の恋人ですよ?」

凛「にゃっ!?!?」

穂乃果「海未ちゃんとことりちゃんも恋人同士だしねっ」

凛「…………」


えっと……。
海未ちゃんが穂乃果ちゃんの恋人で、ことりちゃんも穂乃果ちゃんの恋人で、でも、ことりちゃんは海未ちゃんの恋人でもあって?
うぅぅ??
凛、なんかもう分かんなくなってきた……。


花陽「つまりね、凛ちゃん」

凛「う、うん」

花陽「穂乃果ちゃん達は三人で幸せになったんだよ」


混乱する凛の様子を見て、かよちんがそんな風に補足してくれた。
うん。
なるほどしか言葉が出ないにゃぁ……。

――――――


海未「それじゃあ、二人とも気を付けて帰ってください」

穂乃果「また来てねー!」


二人に見送られて
かよちんと一緒に穂むらを後にした。

手にはお土産に貰った「ほむまん」。
それを凛は食べながらかよちんの隣を歩く。


凛「かよちん」

花陽「なぁに? 凛ちゃん」

凛「びっくりしたにゃ」

花陽「ふふっ、黙っててごめんね?」

凛「むぅ……」


膨れる凛を見て、いたずらっぽく笑うかよちん。


凛「…………」


そんな表情、凛、初めて見たよ。

いつもかよちんは、照れたり焦ったりとかあったかく見守ってくれてるような表情を凛に向けてた。

…………やっぱり、



花陽「……凛ちゃん?」

凛「あっ」

花陽「大丈夫? もしかして、本気で怒っちゃったとか……」


そう言って、心配そうに凛の顔を覗きこんでくる。
いつもの、見慣れたかよちんの表情……。



凛「ううん、なんでもないにゃっ!」

凛「さ、次に行くにゃぁぁ!!」

花陽「ま、まってぇぇぇ」


凛は、かよちんの手をとって走り出した。
心にわきあがるこの気持ちを誤魔化すように……。

――――――

――――――


――ピンポーン――


?「はーい、今出まーす!」


――ガチャッ――


花陽「久しぶり」

?「……花陽、あんたねぇ……」

花陽「あはは、突然ごめん、なさい」

?「…………」

花陽「…………えっと」

?「……はぁ、入んなさい。ここじゃ寒いでしょ?」

凛「それじゃあ、遠慮なくっ!」

?「っ!? あ、あんた! 凛っ!?」

凛「そうにゃ!!」

?「……はぁ、まぁいいわ。とりあえず話は中でしましょ」

花陽「うん、ありがと、にこちゃん」



にこ「はいはい」


――ガチャッ――


――――――

――にこの部屋


凛「ここはまったく変わってないにゃぁ!」


一面アイドルのポスターだらけな部屋を見て、凛は少し嬉しくなって、つい大きな声が出た。


花陽「凛ちゃん、声大きいよ」

凛「うっ」


かよちんに注意されて手で口を塞ぐ。
それと同時に、お茶を取りに行ったにこちゃんが部屋に戻ってきた。


にこ「ほんとよ! 凛、あんた声大きすぎ!」

凛「ご、ごめんにゃ……」

にこ「はぁ、まったく」

花陽「あ、わざわざごめんね、にこちゃん」


お茶とお菓子を出してくれたにこちゃんにかよちんは申し訳なさそうにそう言った。


にこ「別に気にしなくていいわよ、このくらい」


なんて、事も無げにいうにこちゃん。
おぉ!
やっぱり、にこちゃんの世話焼き気質は変わってないにゃぁ……。
そんなところでも、やっぱり、凛は嬉しくなる。


にこ「凛、顔、緩みすぎ」

凛「えっ? えへへ」

にこ「はぁ、たく」


そういうにこちゃんだって、ちょっとにやけてるよ?
なんてことは、言わないでおく。
かよちんはそんな凛たちを見て微笑んでいて。

あぁ、やっぱりこの空気感が好きだにゃ。
そんな風に凛らしくもなく思ってみたり……。

――――――


にこ「でも、ちゃんと連絡はしなさいよね? こっちだって忙しいんだから」

花陽「ごめん」


しゅんとするかよちん。
その様子を見て、にこちゃんはまたひとつため息をついて、


にこ「まぁ、いいけど」


そう言った。

ふふ、まったく素直じゃないにゃ。
にこちゃんは成長してないや。


にこ「凛?」

凛「にゃ!? な、なにかにゃ?」

にこ「あんた、なにか変なこと考えてない?」


す、鋭い!
にこちゃん、エスパーかなにかなのっ?


にこ「言っとくけどねぇ! 成長はしてるのよ! ……いちおう」


あ、なんだか違う方に解釈したみたい。
というか、成長、してるの?


花陽「はは、あっえっと……にこちゃん! お仕事は順調?」


と、なにやら危ない方向に行きかけた会話を
かよちんが強引に戻した。
ナイスにゃ、かよちん!

……って、そういえば、


凛「あ、にこちゃん今何してるの?」

にこ「くっ、いきなり話ぶったぎってくるわね……」

凛「いいから! 何してるの?」


凛の気迫に押されたのか、にこちゃんはまぁ、いいけどと呟いて、答えた。


にこ「アイドルのプロデュースよ。今はツバサと新人の発掘をしてるわ」

凛「!?」

にこ「? なに?」


……な、なんと!?
いや。
アイドル続けなかったのとか
プロデュースできるのとか
色々と驚いたところはあったけど――



凛「え、ツバサってもしかして、A-RIZEの!?」

にこ「そ、そのツバサ」


ほえぇぇぇ。
なんか、今日一びっくりしたにゃ……。

にこ「っていうか、A-RIZEって懐かしいわね」

花陽「ツバサさん、スクールアイドルやってたの10年前だからね」

凛「ほえぇぇ……」


あんなにアイドル狂だった二人が
スクールアイドルの象徴みたいなA-RIZEのリーダーのことを、まるで友達のことを話すみたいに話してるって……。
す、すごいにゃぁ……。


にこ「……あっ!」

花陽「どうしたの、にこちゃん?」

にこ「ふっふっふっ」

凛「にこ、ちゃん?」


どうしたんだろう?
いきなり笑いだしたよ。
もしかして、ついに壊れちゃったとか――


にこ「誰が壊れちゃったかっ!」

凛「うわっ! にこちゃんエスパー!?」

にこ「声に出てんのよっ!」

花陽「あはは、それで、にこちゃん、一体どうしたの?」


かよちんがまたも強引に話を戻すと、にこちゃんは表情を作り直して、凛にこう言ってきた。



にこ「凛、さらに驚きなさいっ!」

にこ「私、真姫ちゃんと結婚したのよっ!!」



にこちゃんはそう言って
左手の薬指にはまった指輪を、得意気に凛に見せてきた。

だから、凛はこう言ってあげた。



凛「あ、それは知ってるにゃ」



うん、さっきかよちんから聞いた!

――――――


にこ「10年後の世界の夢を見れるお香ねぇ?」


得意気に言い放ったにこちゃんが立ち直った後、にこちゃんが凛がなんで小さいのかという当然の疑問を投げ掛けてきた。
……今さらな質問だけど。

凛がそれを説明すると、にこちゃんは急に疑うような目をした。


凛「むぅ! にこちゃん、疑ってるの!?」

にこ「いや、疑ってはないわよ。だって、そうでもしないと辻褄が合わないし」

凛「じゃあ、なに!?」


膨れながらにこちゃんに投げ掛ける。
すると、にこちゃんは、



にこ「よくそんな怪しげなもの使ったわね、って思っただけよ」



そんな風に言った。


凛「…………」

花陽「凛ちゃん?」

にこ「あ、別に悪いって訳じゃないのよ! ただホイホイ使うのもどうかと――


……わかってるよ。
だけど、凛は――



――ピンポーン――

「姉ちゃん! いる? 鍵忘れちゃってさー」

「お姉様ぁ?」



凛「…………」

花陽「…………」

にこ「…………えっと」

にこ「……ごめん、そろそろあの子達のご飯作らなきゃだから……」


そう言って、にこちゃんはばつの悪そうな顔をしたのだった。

――――――――

見てくださっている方
レスつけてくださった方
本当にありがとうございます。

皆様に参考までにひとつご質問を。
ここまでに出てきてない10年後キャラは

えりち、のんたん、マッキー、ことりちゃん

ですが、見たいとか出してほしいとかいう子はいますか?
いたら教えてください。

あくまでも参考までにですので
出せるかどうかの保証はできないのが心苦しいですが……。

よろしくお願いします。

皆様、レスありがとうございます。

基本的に出せるのはμ'sメンバーかと思います。
全員は出せなかった時は
出せなかったメンバーは本編終わった後に出そうかと考えてます。

――――――


花陽「凛ちゃん、もう夕方だけどどうしようか?」

凛「うーん……どうしよっかぁ」


にこちゃんの家からの帰り道。

次にどうするかも考えず、かよちんとぶらぶらと歩く。
どうしようかなんて言いながら、自然と足は家に向かっていた。

今日はもういいかなぁって思っちゃったから。

ことりちゃんは海外にいるみたいだし
真姫ちゃんも休日なのに病院が忙しいみたい。
あとは……。


凛「あっ」


そこでひとつ思いついた。


花陽「? どうかしたの?」

凛「あ、うん、最後に行きたいところがあるにゃ!」


今日はそこで最後にしよう。

そう決めて、凛はまたかよちんの手を引いた。
今度は走らずに
ゆっくりと二人で歩いて。


――――――

――神田明神


凛「希ちゃん!」

希「凛ちゃん?」


かよちんと一緒に向かった先は神田明神。
10年後も同じ場所に、希ちゃんはいた。

バイトの時に着てた巫女服も
優しく微笑む表情も10年前と変わってない。
たぶん今日会った中で一番変わってないかも?

あ、にこちゃんもほぼ変わってなかったけど……。


花陽「お仕事中にごめんね、希ちゃん」

希「気にせんでえぇよ。もう終わるとこやったし♪」


かよちん、今日だけでかなり謝ってるにゃ。
なんて、心の中で笑う。

まぁ、ほとんど凛のせいなんだけどね。

とにかく、かよちんのごめんねにも笑顔で返した希ちゃん。
そして、そのまま掃いていた箒を持つ手を止めた。


凛「じゃあ、終わるまで待ってるにゃ!」


お仕事中に悪いかな、なんて思いながらもそんな風に図々しく提案してみる。
かよちんも凛の横で苦笑いしてるけど、今日はもう気にしないにゃ!

すると、希ちゃんは


希「じゃあ、今日はもうウチも帰ろか」


そう言ってにこっと笑った。


花陽「え、いいの!?」

希「えぇよ、あとはいつでもできることやしね♪」

凛「ありがとう、希ちゃん!」


――ギュッ――

嬉しくなって、希ちゃんを抱きしめちゃう。
はぁぁぁ。
やっぱり希ちゃん温かくて抱き心地サイコーだにゃぁぁ……。


希「ほら、ギュッてしたら着替えられんよ」

凛「あ、ごめんにゃ!」

希「えぇんよー♪ じゃあ、着替えてくるから少し待ってて?」

りんぱな「「はーい(にゃ)」」


凛たちの返事を聞いて
希ちゃんはパタパタと音を鳴らして建物の方に向かっていった。

希ちゃんが建物の中に入ってすぐのことだった。
二人で神社の石段に座って待っていると、


花陽「…………」

凛「か、かよちん?」

花陽「……なに、凛ちゃん」


急にかよちんが不機嫌そうになって、凛のことを半目で見始めたのだ。


凛「かよちん、なんだか……機嫌悪い?」

花陽「……別にそんなことないよ」


と、口ではそう言うものの表情は不機嫌そうなまま。
ついには、


花陽「……」

凛「な、なんで凛に背中向けるにゃ……?」


そっぽを向いちゃった。
…………な、なんで?
凛、なにかしたかにゃぁ?

こんなかよちんを見るのは初めてで、凛はパニックになることしかできない。


花陽「なんでもないよ」

凛「な、なんでもなくないよっ! 凛、なにか悪いことしちゃったっ!?」

花陽「……べつに、なんでもないから」


かよちんはそう言って、こちらを向いてくれない。
うぅぅ……。
どうしたらいいんだろうっ!?

凛「えっと、凛、なにかやなこと言っちゃった!? それとも、凛がわがままだから!?」


どうしていいかわからず、凛はかよちんに話しかけ続けた。
その間もかよちんはこちらを見てくれない。


――ズキッ――


不意に、痛む。
胸が痛んだ。

この痛みは、なんなのにゃ?
どこかにぶつけた訳じゃないし。
かよちんが凛のことをなにか言ったわけでもない。

なのに、ズキッて、ズキズキって痛む。


凛「…………」


あぁ。
思い出した。
これはあの時の痛みに似てるんだ。



――あの時――



凛がここに来ようと思った
未来を見たいって切に願ったあの時の痛みに……。



――――――

――――――

――――――



「「大会が終わったら、μ's はおしまいにしますっ!!」」



ついこの間のこと。
皆で遊んで、海を見に行ったあの日、凛たちはそれを宣言した。

後悔はない。
なんて言ったら嘘になる。

だけど、μ's はあの9人でμ's だから。

だから、絵里ちゃんと希ちゃん、にこちゃんが卒業したらμ's はおしまいにするって決めた。

けど――



凛「あと5日かぁ」

花陽「そうだね、凛ちゃん」


ラブライブまで残り5日に迫ったその日は、かよちんの家で久しぶりにお泊まりをしていた。
練習が終わって、その足でお泊まりだ。

あと5日。
そう考えるとなんだかモヤモヤして
凛一人じゃ色んなこと考えちゃって……。

だから、かよちんと一緒にいて楽しい気持ちになろうと思ってた。
それが、お泊まりの理由。


凛「楽しみだにゃぁぁ!!」

花陽「り、凛ちゃん、もう遅いからっ」


そう言って焦るかよちんに謝って
声のボリュームを少し抑えた。


凛「どんなステージで歌うんだろうねぇ?」

花陽「きっと、すごいステージだよっ! 地区最終予選でもあんなにすごかったんだから!」

凛「だよねっ! こう、ドドーンって感じのっ!」

花陽「あはは、それじゃわかんないよぉ!」


結局、かよちんもテンション上がっちゃって
凛と一緒に騒いで、かよちんのお母さんに怒られたけど……。

そして、電気も消していざ寝ようってなったとき、



凛「ねぇ、かよちん。凛たち、これからどうなるんだろうね……」

花陽「…………え?」



そんなことを言ってしまっていた。
何の意識もしてなくて、ポロっと出てしまった言葉だった。


花陽「凛ちゃん?」


電気が消えていても分かる。
かよちんの声が少し沈んでいた。


凛「……ごめんにゃ。ただ、凛、なんだかわかんないけど不安になっちゃって……」

花陽「……ううん」

凛「…………」

花陽「…………」


沈黙が流れる。
しまった、って思った。

せっかく皆で吹っ切ったのに……。
これじゃあ、凛、皆のしたこと無駄にしちゃうって、そう思った。

けど、


花陽「私も分かる、から……」


かよちんはそう言ってくれた。
凛の言葉を、不安を理解してくれた。


花陽「私もね、ほんとは不安なんだ……」


花陽「私、μ's に入って変われたけど、やっぱり根は臆病でビビりんぼだから」

花陽「もし、今年絵里ちゃん達3年生が卒業して、来年穂乃果ちゃん達2年生が卒業して」

花陽「そうなった音ノ木坂で、スクールアイドルを続けられるのかなって……」


凛「…………」


かよちんなら、きっと大丈夫だよっ!

いつもの凛ならそう言ってた。
だけど、今はなにも言えない。

だって、かよちんが今話してるその不安はそのまま凛が感じてた不安でもあるから。

そして、



凛「凛たちはずっと一緒にいられるのかな」

花陽「っ!」



今年絵里ちゃんと希ちゃん、にこちゃんが卒業して。
来年は穂乃果ちゃん、海未ちゃん、ことりちゃんが卒業して。

凛がいくら望んでも時間は止まってくれない。
このまま、いつでも皆一緒じゃいられない。

そんなこと当たり前だ。
分かってるにゃ。
でも、やっぱり、不安なんだよ。


凛「ねぇ、かよちん」

花陽「……なに? 凛ちゃん」


だから、またかよちんに聞いてしまう。
聞いてもどうしようもないことで
かよちんをまた不安にさせてしまうってわかっているのに……。



凛「凛たちはずっと一緒にいられるのかな?」



そんな風に聞いてしまう。

かよちんは答えない。
たぶん言葉を探してるんだ。

かよちんは凛とは違って、頭がいいから。
凛が感じてる不安をどうにか和らげようとしてるんだ。


しばらくして、かよちんはこう言った。


花陽「ずっと一緒に、いられたらいいよね」


声が震えてた。



――ズキッ――



痛い。
そう、感じた。

かよちんでも断言なんてできない、先の分からない未来への不安。
それに、皆と
……かよちんと離れてしまう恐怖に。

凛の心はズキズキと痛んだ。



凛は、それをどうにかしたかったんだ。

かよちんを不安にさせちゃったお詫びに。
なにより、凛自身が自分を納得させて
この痛みから開放されたかったから。

――――――


「希ちゃん、ずっと未来のことが分かる方法ってないかにゃっ!!」


――――――

――――――


――ズキッ――


凛「……痛っ!」


胸の痛みで、現実に引き戻される。
あれ?
そういえばこの世界は夢だったような……。
じゃあ、現実に引き戻されるっていうのはおかしいのかにゃ?


花陽「凛ちゃん、大丈夫!?」

凛「にゃっ!?」


と、そこでかよちんが凛に詰め寄ってることに気づいた。
目と鼻の先にかよちんの顔があって、凛の顔をじっと覗き込んでいた。
……って、近っ!?


凛「か、かよちんっ、近い! 近いにゃっ!」

花陽「あ、ごご、ごめんっ!」


さっと距離を離すかよちん。
あっ……離れちゃった。


花陽「凛ちゃん、なんかいきなりボーッとして痛いとか言うから、つい……」


そう言ってかよちんは俯く。
余裕のある大人なかよちんに慣れ始めてたから
そうやって俯いてることに少し違和感を覚えた。
……って、あれ?


凛「かよちん、怒ってたんじゃないの?」

花陽「あっ! その……」

凛「???」

花陽「凛ちゃんが心配で忘れてた、あはは」

凛「……そ、そっかぁ」


かよちんの言葉にちょっと安心してしまった。
うぅ、心配させたのも怒らせたのも凛だから罪悪感がすごいにゃ……。



希「……もう、えぇかな?」

りんぱな「「ひゃあっ!?」」


突然の声に二人して悲鳴をあげてしまう。

声の主は、私服姿の希ちゃんだった。
もう着替え終わってたみたい。


希「それじゃ、帰ろか!」

花陽「の、希ちゃん、押さないでよぉ!」

凛「にゃっ! にゃっ!?」


希ちゃんはにこっと微笑むと
後ろから凛とかよちんの背中を押して歩き出した。

昨日は見事に落ちてました。

書き溜めないので更新遅いです
ご了承ください。

あと今日明日で完結させる予定です

希「それで?」

凛「ん? なんにゃ?」

希「2人だけの世界に入ってたみたいやけど、なにをしてたん?」


石段を3人で並んで下る途中
希ちゃんがそう聞いてきた。
ニヤニヤしながら。


花陽「2人だけの世界って……」


かよちんは顔を少し赤くして俯いていた。
……かわいいにゃ。

かよちんは言いよどんでるみたいだから代わりに、凛が答えることにする。


凛「希ちゃん、聞いて聞いて!」

希「ん、なになに?」

凛「希ちゃんが着替えに行った後ね、かよちんがなんだか不機嫌そうになってたんだにゃー!」

花陽「り、凛ちゃん!?」


希ちゃんの質問の答えにはなってないけど
凛はさっきのことを言ってみた。

すると、希ちゃんは少しだけビックリにした表情をしてから、しきりにニヤニヤしだした。


希「ふふふっ、花陽ちゃんもかわえぇなぁ」

花陽「え、ななな、なにがっ?」

希「ふふふっ」


かよちんを見て、笑う希ちゃん。
あの表情、誰かをワシワシしてるときと同じ顔だにゃ……。

って、もしかして希ちゃんにはかよちんが怒った理由が分かってるのかな?


凛「ねぇ! 希ちゃん!」

希「ん?」

凛「もしかして、かよちんが怒った理由分かるの?」

希「ふふふっ、どうやろなぁ?」

花陽「うぅぅ」


希ちゃんはチラチラとかよちんを見てる。
それに気づいてるみたいで、かよちんも唸りながら顔を伏せていた。

あ、これ完全に分かってるパターンにゃ。


凛「教えてよ、希ちゃん! かよちんが怒ってた理由!」

花陽「凛ちゃん!?」

凛「ねぇ、いいでしょ、希ちゃん!」

希「どうしようかなぁ?」


人差し指を口元に当てながら希ちゃんはそう言った。
そして、少しだけ間を開けて希ちゃんは言った。


希「言わないでおくわぉ」

凛「えーっ!!」

花陽「ほっ」


勿体ぶってそれはないにゃ!
そんな風に凛が抗議しても、希ちゃんはどこ吹く風で……。

たぶんもう教えてくれるつもりはないんだろうな。

結局、凛はそう察して、希ちゃんに聞くのを諦めた。

――――――


?「あら、希に花陽。今帰り?」


と、石段を下りきった時に声をかけられた。
声の主は、


花陽「絵里ちゃん!」

絵里「久しぶりね、花陽」


凛たちの先輩、絢瀬絵里ちゃんの姿があった。

ほえぇ。
綺麗で大人っぽいとは思ってたけど……。


大人になると、本物の美人さんになるのにゃぁ……。
心の中で、呟いた。
なんというか、ため息が出るくらいに綺麗だった。
10年も経ってるはずなのに、スタイルも髪の艶色も変わってない。
手入れとかすごいしてるんだろうなぁ。


希「えりちも今帰りなん?」

絵里「えぇ、だから、希を迎えに来たのよ」

希「そっか、ありがとな」


絵里ちゃんの言葉に、そう返す希ちゃん。
ちょっと赤くなってるのは、夕日の照り返しかにゃ?


絵里「ところで……」


と、そこで絵里ちゃんは凛の方に目を向けた。
そして、


絵里「はじめまして、でいいかしら?」

凛「にゃっ!?」


絵里「凛の娘さんよね? ふふっ、凛そっくりだもの、間違えるわけないわ」


凛「」

花陽「」

希「」


と、ドヤ顔で、そんなことを宣った。
凛は思う。

……この絵里ちゃん、ちょっとポンコツにゃ!


――――――

――――――


凛本人だよ!
絵里ちゃんにそうカミングアウトすると、絵里ちゃんはポカンとしていた。

その後にすぐに真っ赤になった。

凛がここにきた経緯を話すと
そんなのわかるわけないわ、っていって
余計に赤くなっちゃってた。

そんな感じで、4人で歩く。


希「花陽ちゃんは今日は休みだったん?」

花陽「うん、ちょっと前まで研修で新人の子の面倒みてくれてたからって、休みくれたんだ」

絵里「明日も休み?」

花陽「うん、基本的に土日は休みだから」

絵里「……いいわね」

希「あれ? えりち、明日休みだったんじゃ?」

絵里「それが、部下の子がちょっとやらかしちゃってね……。明日はその尻拭いよ、はぁ」

凛「…………」


何気なく始まった凛が入れない会話。
仕事の話。

なんだか寂しくなる。
やっぱり凛が知ってる皆じゃないんだなぁ、って思って……。


希「凛ちゃん」

凛「え?」


ふと、希ちゃんが話しかけてきた。


希「凛ちゃんは明日の予定は?」

凛「あっ」


凛にも話を振ってくれんだ。
希ちゃんは、にこにこと凛を見てる。
もしかして、凛が寂しいの見抜いてるのかな?


凛「凛は練習!」

絵里「練習? ……って、もしかしてμ's の?」

凛「もしかしなくても、そうにゃっ! あと3日で『ラブライブ』だからっ!」

花陽「えっ!?」

絵里「あら、そうなの? ふふっ、頑張るのよ、凛」

凛「うんっ!」


絵里ちゃんの言葉に頷く。

未来のμ's のメンバーから応援されるって……。
なんだかふしぎなきぶんだにゃぁ。

希「じゃあ、早く帰らんとね?」

凛「うん、前の穂乃果ちゃんみたいに風邪引くのはごめんにゃ」

絵里「ふふっ、凛も言うわね」


ふざけ合いながら歩いてると
別れ道についた。
凛たちの家と絵里ちゃんたちの家との別れ道だ。


絵里「それじゃあね、凛、花陽」

凛「またにゃ!」

花陽「うん、またね」


手を振って、絵里ちゃんと希ちゃんを見送る。
と、なにかを思い出したように希ちゃんが歩みを止めて、凛に近づいてきた。


凛「?」

希「凛ちゃん」


そして、凛の耳元に口を寄せてくる。
ん?
ないしょ話かにゃ?


希「花陽ちゃんの怒ってた理由、少しだけヒントあげる」

凛「!」

希「凛ちゃん、もし大好きな人が他の人に抱きついたりしたらどう思う?」

凛「そんなの嫌にゃ!」

希「ふふっ、せやなぁ」

凛「……?」

希「そういうことやよ」


そう言って、希ちゃんは絵里ちゃんのところにパタパタと走っていった。


希「じゃあね、二人とも」

希「凛ちゃんはしっかり寝るんよ? そうすれば、すぐに朝が来るから」


――――――

――花陽の部屋


凛「お風呂気持ちよかったにゃぁ!」

花陽「う、うん……そうだね」


かよちんとお風呂に入り終わって
かよちんの部屋に戻る。
そして、そのまま――


凛「ベッドにダーイブっ!!」


――ボフッ――


ふかふかのベッドにダイブした。
きもちいいにゃぁ……。


花陽「ふふっ」


そんな凛の様子を見て、かよちんは笑う。
なんだか嬉しそう。


凛「どうしたの? かよちん?」

花陽「ううん、元気になってよかったなって」

凛「にゃっ?」


元気になって?
凛はいつも元気よ?
そう言おうとして、口を開く前にかよちんが言葉を続けた。


花陽「凛ちゃん、ラブライブの3日前から来たって言ってたよね?」

花陽「ということは、私の家に泊まったすぐ後から来たってことだよね?」

凛「……あっ」


そっか。
このかよちんは、凛が知ってるかよ

>>55
訂正

バスの揺れが憎い。

――花陽の部屋


凛「お風呂気持ちよかったにゃぁ!」

花陽「う、うん……そうだね」


かよちんとお風呂に入り終わって
かよちんの部屋に戻る。
そして、そのまま――


凛「ベッドにダーイブっ!!」


――ボフッ――


ふかふかのベッドにダイブした。
きもちいいにゃぁ……。


花陽「ふふっ」


そんな凛の様子を見て、かよちんは笑う。
なんだか嬉しそう。


凛「どうしたの? かよちん?」

花陽「ううん、元気になってよかったなって」

凛「にゃっ?」


元気になって?
凛はいつも元気よ?
そう言おうとして、口を開く前にかよちんが言葉を続けた。


花陽「凛ちゃん、ラブライブの3日前から来たって言ってたよね?」

花陽「ということは、私の家に泊まったすぐ後から来たってことだよね?」

凛「……あっ」


そっか。
このかよちんは、凛が知ってるかよちんとは別だと思い込んでけど、10年後のかよちんなんだ。
そりゃ、あの事も知ってるよね……。


凛「うん、そうだにゃ。かよちん、あの時は――


ごめんね。
そう言う前に、


花陽「ごめんね」


かよちんが先にそう言った。

凛「え、かよちん?」


ごめんね、なんて。
なんで、かよちんが謝るの?
謝るのは凛の方なのに……。


花陽「だって、一緒だよって言ってあげられなかったから」


かよちんは少し悲しそうに微笑む。
悲しい表情。
凛はそんなかよちんは見たくない。
悲しそうにしてるかよちんなんて見たくない。

見たくないはずなのに
凛はなにも言うことができなかった。

凛はただただ、かよちんの言葉を聴く。


花陽「凛ちゃん、あの時すっごく不安だったんだよね」

花陽「絵里ちゃん達が卒業しちゃうのも、ラブライブで自分達が結果を出せるかも」

花陽「不安だった」


そう。
凛は不安なんだ。
あの時だけじゃない。
ずっと不安だった。

凛がリーダーをやってたときも。
3年生の卒業が近づいてきたときも。
そして、今だって。

皆が励ましてくれてもやっぱり不安で。


花陽「先が見えなくて、どうしても不安で、それで――

花陽「――未来を見たくなった」

凛「…………」


全部かよちんの言う通りだった。
かよちんはすごいな。
凛のこと、全部分かっちゃうんだ。

そんなかよちんが、

―― 一緒にいれたらいいよね――

震えた声でそんなことを言ったから、凛はさらに怖くなって、

――ズキッ――

痛くなった。


凛「…………」

花陽「凛ちゃん」


凛「…………かよちん」


凛のことを見つめてくるかよちんを見つめ返して、名前を呼ぶ。
かよちんはいつも見たいに、なに? 凛ちゃん? って返してくれる。
だから、凛はもう一度、



凛「凛たちはずっと一緒にいられるのかな?」


それを聞いてしまった。




花陽「ずっと一緒だよ、凛」



凛の質問に、かよちんはそう答えた。
笑顔で。
凛の名前を呼んで。

花陽「あの時は、私も不安だったから、こんな風に言えなかったけど」

花陽「……私はね、



花陽「凛ちゃんが大好きっ!」



花陽「それは皆も、きっと同じ」

花陽「穂乃果ちゃんも、海未ちゃんも、にこちゃんも、希ちゃんも、絵里ちゃんも」

花陽「皆、凛ちゃんを歓迎してたよね?」

花陽「ことりちゃんや真姫ちゃんだって、今日会えてたら歓迎してくれたよ」

花陽「だからね、凛ちゃん」



花陽「皆が凛ちゃんを大好きな限り、皆ずっと一緒なんだよ!」



凛「……かよ、ちん」

――ジワッ――

凛「あっ……」

かよちんの言葉を聞いて、凛は


花陽「っ! り、凛ちゃんなんで泣いてるのっ!?」


泣いてしまった。

なんでかな?
ずっと一緒だって言ってくれて嬉しかったから?
それとも、安心したから?

よく、わかんないや。


凛「うっ、なんでもないにゃっ……グスッ」

花陽「な、なんでもなくないよっ!」

凛「うぅ……」

花陽「ごめん、ごめんねっ」


かよちんが慌てて、凛のことを撫でる。
……気持ちいいにゃ。


花陽「ね? お願いだから泣き止んでぇぇ」


凛はかよちんの慌てた声を聞きながら
かよちんの胸に顔を埋めた。

凛の胸のズキズキは――もういない。

――――――

――――――


散々泣いちゃった。
その間、かよちんは凛をぎゅっとしてくれていた。
そのぬくもりを感じて、凛は思った。

凛たちならきっと大丈夫、って。

そうやって、不安がなくなった凛は――



花陽「凛ちゃん、狭くない?」

凛「う、うん……大丈夫にゃ……」


かよちんと一緒に、ベッドに包まれていた。
とってもあったかくて、かよちんの甘い香りもして安心する。

……んだけど、


花陽「凛ちゃん、なんで、そっち向いてるの?」

凛「な、なんでもないにゃっ!」


ついつい、かよちんに背中を向けてしまう。

わんわん泣いて、落ち着いてから気づいたんだけど
かよちん、さっき凛のことを「凛」って呼んでた!
それに、大好きだって……。

たぶん今の凛は、顔真っ赤だ……。


花陽「凛ちゃん、こっち向いてよぉ」


かよちんが少し困ったような声でそう言ってくる。
うぅぅ……。
凛だってほんとはかよちんの方を見たい
でも、真っ赤な顔を見られるのはなんか嫌なのにゃっ!


凛「そ、そのうちそっち向くからっ! 今はこのまま……」


なんて、凛らしくもないことを言ってる。
たぶんかよちんはそんな凛に痺れを切らしたんだと思う。


花陽「えいっ!」


――ギュッ――




凛「にゃっ!? か、かよちん!?」


いきなりかよちんが凛に抱きついてきた。

あったかい!?
柔らかい!?
いい匂いがする!?

パニックになる凛。
いきなりかよちん、なにするのっ!?


花陽「えへへっ」

凛「う、うぅぅ」

花陽「凛ちゃん♪」

凛「な、なに?」

花陽「ぎゅぅぅぅぅぅ!」

凛「にゃぁ……」

凛の心の声は聞こえるはずもなく
かよちんはもっと強くギュッてしてきた。
だから、ますます、かよちんの柔らかくてあったかい体が凛に押し付けられる。

そして、


凛「……あ、桜の香り」


かよちんの髪から、あの香りがした。
桜の、香り。


花陽「あ、これ? このシャンプーが好きでね! 昔から使ってるんだ」


うん、知ってるよ。
これはかよちんの香り。

練習の時も、汗の匂いに紛れてこの香りがしてた。
お泊まりの時は、凛の髪がかよちんと一緒の桜の香りになって、ちょっと幸せだった。


凛「…………うん、知ってる、よ?」


凛は抱きしめられながら
かよちんの方に向き直って――


凛「これ、凛が好きな……かよちんのにおいだから」

――ギュッ――


花陽「凛ちゃん……えへへ♪」


かよちんを抱きしめ返した。

――――――


凛「ねぇ、かよちん?」

花陽「なぁに? りん、ちゃん」


かよちんがうとうとし始めた頃。
凛は気になってたことを聞いてみることにした。


凛「今日、神社でなんで不機嫌になったのかにゃ?」


ずっとそれが分からなかった。
希ちゃんに言われたヒントもいまいちピンと来なくて……。

だから、寝ぼけてるうちに聞けば!
なんて、そんなことを考えてたんだ。
ちょっとずるいかにゃ?


花陽「んー」

凛「凛、知りたいにゃぁ……」

花陽「あれは、ね……」

凛「うん」


寝ぼけたかよちんと話し続ける。
そして、ついにその答えにたどり着いた。



花陽「希ちゃんに……ギュッてしたからぁ」


凛「にゃ?」


って、そんなこと?
そんなの凛、いっつもかよちんとか真姫ちゃんにやってるのに……?
なんで?


凛「それだけで?」


花陽「だって、大好きな凛ちゃんが……

……他の人に抱きついてるのなんて、見たくないもん」


凛「……そ、そっか……にゃぁ」


それは、いわゆる『嫉妬』っていうやつ?
そ、そういえば少女漫画なんかで見たことあるかも……。

主人公が、好きな人とその恋人がギュッてしてるのを見て、嫉妬する話。


凛「……っ!?」


凛は恥ずかしくなって、布団を頭から被る。
それって、つまり……?


凛「にゃぁぁぁ……」


凛、寝れるのかな?

――――――

――――――

――――――


――ちゃん!」


ん?
なんだか声がする。
これは誰の声?


?「――んちゃん」



?「凛ちゃんっ!」

凛「っ!?」


凛はその大声に飛び起きた。
ん?
飛び起きた?
凛、いつの間にか寝てたのかにゃ?


花陽「凛ちゃん、やっと起きたぁ」

凛「あ、かよちん?」


目の前にいたのは、かよちんだった。
いつものかよちんだ。

ん?
いつもの?

……あ、そっか。
昨日は凛、10年後の世界に行ってたんだったにゃ。


花陽「って、凛ちゃんっ!」

凛「え、な、なんにゃ?」

花陽「早く起きてっ! 時間っ!」

凛「にゃ?」


枕元の時計を見る。
針が指す時間は……。


凛「にやぁぁぁぁぁ!?」


――――――

――――


凛「行ってきますっ!」

花陽「行ってきますっ」


2人で凛の家を出る。
全速力で。
じゃなくて、かよちんの速度に合わせて。


凛「ごめんね、かよちん」

花陽「う、うぅん。……だ、だいじょうぶだよぉ……」


ただ朝練には完全に遅れたから
海未ちゃんや絵里ちゃんに怒られるだろうけど。

うぅぅ。
未来の絵里ちゃんに応援されたばっかりなのに……。


花陽「はっ、はっ!」

凛「……」


隣には全速力で走るかよちん。
あれ?
そういえば、


凛「かよちん」

花陽「な、なにっ? はっ……りん、ちゃん?」

凛「なんで、凛のこと待っててくれたの?」

花陽「えぇっ? な、なんでって――



―― 『一緒に』行きたかったからっ!」



凛「……ふふっ」

花陽「えぇ? な、なに? 凛ちゃんっ!」

凛「なんでもないにゃ!」


『一緒に』かぁ。
なんだ、やっぱり凛、不安になることなかったんだ。

かよちんは、昔も今も未来でも。
こうやって一緒にいてくれるんだから。


凛「かよちんっ!」

花陽「な、なに? 凛ちゃんっ」

凛「もっと速く走るにやっ!」

花陽「ふぇぇ!?」

凛「ほらっ!」


――ギュッ――


凛はかよちんの手を握る。
痛くないように優しく。
でも、離れないように強く。


凛「ダッシュにゃぁぁぁ!!!」

花陽「りり、りんちゃん! ちょ、ちょっと待っててぇ」

凛「かよちんっ!」

花陽「こ、今度はなにぃぃ!?」




凛「ずっと、大好きにゃ♪」





―――――― fin ――――――

そんなわけで
『凛「10年後に行けるお香?」』おしまいです。

レスをくれた方に感謝を。
皆様のおかげで
どうにかこうにか完結させることができました。

ただ本編はこれで完結なのですが
ほんのちょっとだけ補足的な話を書きたいと思います。
内容としては

10年後のりんぱなの話
10年後のにこまきの話

を予定してます。
ことりちゃんは申し訳ないけれど書けないかもです。
申し訳ない……。

ということで
蛇足かもしれませんが
もう少しだけ稚拙な文章にお付き合いくださいm(__)m

――――――


凛「んっ」

花陽「あ、凛ちゃん、起きた?」


ベッドの上で、彼女は目を擦っていた。
まだ目が開いてない。
眠いのかな?


凛「んん」

花陽「ほら、凛ちゃん、起きよ?」

凛「まだ、寝る……」


そう言って、凛ちゃんはまたベッドに倒れ込んだ。
もうっ!
凛ちゃん、寝起き悪すぎだよ!


凛「……Zzz」

花陽「って、もう寝てる!?」


――――――

――――――

凛「ふわぁぁぁ、よく寝た!」


そう言って、伸びをする凛ちゃん。
背中の中ほどまで伸びた髪が
それに合わせてさらさらと揺れる。


花陽「そりゃあ、お昼まで寝てたらね……」


結局、凛ちゃんはお昼までぐっすりと寝ていた。
まぁ、凛ちゃんは一昨日までずっと仕事だったから仕方ないかな?

昨日のことは知らないけど。
……あ、そういえば、


花陽「ねぇ、凛ちゃん?」

凛「…………」

花陽「凛ちゃん?」

凛「……『凛』!」

花陽「えっ? ……あっ!」


そうだった。
昨日、一日中凛ちゃんって呼んでたから
忘れてた。


花陽「えっと……凛」

凛「ん、うん」


凛ちゃんは満足げに頷いた。

凛ちゃんは私にある時からそう呼ぶようにお願いしてきた。
それはとある心境の変化、というか関係の変化から。

ずっと凛ちゃんって呼んできたから
たまに、ううん、しょっちゅうちゃん付けで呼んじゃうんだけどね。
それに心の中では、まだちゃん付けだし。


花陽「凛は昨日なにしてたの?」

凛「昨日?」


首を傾げて、うーんと唸る凛ちゃん。
……かわいい。


凛「普通に仕事だよ?」

花陽「え? それは一昨日でしょ?」

凛「…………あれ?」


どうやら、その矛盾に気づいたのか
凛ちゃんはさらに首をかしげた。
……すごくかわいい。


凛「あれ……? 仕事だったよね?」

花陽「昨日は凛、休みとってたよ?」

凛「あ、あれ? えぇっ??」


すっかり混乱してる凛ちゃん。
どうやら、この凛ちゃんには『昨日』がすっかり消えてるみたい。


花陽「……ふふっ」

凛「えっ? なんで笑ってるのっ!? もしかしたら、記憶喪失とか……」

花陽「ご、ごめん! つい、おかしくなっちゃって、ふふふっ」


慌てる凛を見て、つい笑いが出てきてしまった。

大丈夫だよ。
昨日、凛は、ちゃんと私と一緒にいたから。

そんな風に、心の中で呟いた。

凛「うぅぅ、じゃあ、花陽はっ!?」

花陽「えっ?」

凛「花陽は昨日、なにしてたのっ!?」


むきになったようで凛ちゃんはそんな風に私に聞いてきた。

ふふっ。
髪も伸びて、仕事も出来るようになって
すっかり大人っぽくなったのに、こういうところはまだ昔のままで可愛いなぁ♪

うーん。
なんて答えよう?

…………。
あ、そうだっ!
私の中で悪魔が微笑んだ。



花陽「私はねぇ」

花陽「ある女の子と沢山遊んだんだぁ♪」

凛「にゃっ!?」


あ、懐かしい。
今の凛ちゃんから猫語聞いたの久しぶりだぁ♪

と、それよりも、


凛「な、ななななっ!?」

花陽「朝から晩までずっと一緒だったんだぁ。夜はあのベッドで一緒に寝たしね?」

凛「」


昨日あったことをそんな風に話すと
凛ちゃんはすっかり固まってしまった。

ふふっ。
昨日、希ちゃんにギュッてした凛ちゃんが悪いんだよ?

なんて、昨日の凛ちゃんのあれを
今の凛ちゃんに返すのはおかしいよね?


そこでネタばらし、をしようとして……。



凛「かよちんは、凛のものだにゃぁぁぁぁっ!!!!」



凛ちゃんは激怒した。

あ、やり過ぎちゃったかも……。


――――――

――――――


結局、怒り狂った凛ちゃんをなだめるのに一時間が経っちゃった。
あはは、反省しなきゃ。

それで、凛ちゃんに昨日のことを説明する。
10年前の凛ちゃんが来たことを。

びっくりするかなって、思ったけど。
凛ちゃんは納得した様子で手を打っていた。



凛「なるほど、あのときの私が来たのは、昨日だったんだ」

花陽「あれ? 驚かないんだね」

凛「うん。だって、私も10年前に未来に言ってるから!」

花陽「……あ、そっか」


過去の凛ちゃんが来たんだもん。
今の凛ちゃんだって、未来の世界に行ったことあるんだよね。


凛「そっかぁ。ずっと夢かなにかだと思ってたけど……」

花陽「夢じゃなかった、よ?」

凛「うん」


昨日あったことは全部現実。
だって、私がちゃんと覚えてるから。
たぶん皆に聞いてもちゃんと覚えてるはずだ。

…………。


花陽「ねぇ、凛」

凛「ん? なに、花陽?」

花陽「今度、皆で集まろっか♪」

凛「皆って、μ'sの皆?」

花陽「そうだよっ!」


そう答えると、凛ちゃんはパアッと顔を輝かせた。


凛「うんっ!」


元気印の笑顔だ。
やっぱり凛ちゃんには、明るい笑顔が似合う。

私は凛ちゃんの笑顔を目に焼き付けながら、皆が集まるその日を思い描いたのだった。




――――――fin――――――

10年後りんぱな編終わり


にこまきは明日かきます!
おやすみなさいm(__)m


申し訳ありません。
文がまとまらず
先日は書けませんでした。

今日明日中には書きます。
絶対、書きますm(__)m

変に目標立てても焦るだけだし
ゆっくりでいいですよ

>>81
どうもですm(__)m

にこまき編始めます。

――――――


凛と花陽が帰って
妹たちのご飯を作り終わって
にこは時間を持て余していた。

時間は午後6時。
夜ご飯にするには早く、外に出るには遅い時間だ。

それに、



にこ「来ない、わね……」


彼女は今日もまだ帰ってこなかった。

それは、仕方がないことだ。
彼女は忙しい。
もちろん、にこには及ばないけど?

…………。

なんて、そんな見栄もあの子がいないんじゃ意味ないわね。


にこ「……はぁ」


つい、ため息がついて出る。
いけない。

にこは、笑顔でいないと……。

あの子がいつ帰ってきてもいいように……。


――――――

――――――


あの子が帰ってきたのは
午後10時を回った時だった。


?「……ただいま」


玄関から、ボソッとそんな声が聞こえた。
たぶん妹たちに配慮したのだろう。
といっても、あの子達友達の家に泊まりに行っちゃったんだけどね。

とにかく、にこも急いで玄関に向かうことにする。
そして、出迎える。
にこの大事な人を……。



にこ「おかえり、真姫ちゃん!」

真姫「ただいま、にこちゃん」



笑顔で、おかえり、と言うにこ。
真姫ちゃんも笑顔で、ただいま、って返してくれる。

…………ん?
なんだか、今日、真姫ちゃん、


にこ「…………」

真姫「? どうしたの、にこちゃん?」


やっぱり。
今日、真姫ちゃんかなり疲れてる。

よしっ!
そういうときは……。


にこ「お風呂入るわよっ!」

真姫「……えっ?」

にこ「にこも準備してくるからっ!」

真姫「ヴえぇ!?」


真姫ちゃんのバッグだけ引ったくるように預かり、にこはお風呂の準備をすることにした。


――――――

――――――


にこ「痒いところありませんかぁ?」

真姫「ん、大丈夫……」


髪を洗ってあげる。
いつもは肩にかかってる真っ赤な髪を丁寧に洗っていく。

やっぱり、真姫ちゃんの髪きれいね。

そんなことを思いながら、髪を撫でる。


真姫「ひゃっ!? ちょ、ちょっと、にこちゃん!」

にこ「ん? なににこぉ?」

真姫「くすぐったいから、いきなり髪撫でるのやめてっ!」


目をつぶったまま、真姫ちゃんは抗議をしてきた。
素直にごめんね、と言って、洗髪に戻る。
とはいっても、もう流すだけなんだけど。


にこ「流すわよ」

真姫「うん」


――ザァァァァ――


にこ「…………」

真姫「…………」


響くのはシャワーから出るお湯の音だけ。
2人は喋らず、沈黙が流れる。

気まずい、わけじゃない。

そんなの鏡を見れば分かる。
鏡の中の真姫ちゃん、すごく安心した表情してるから。
だから、にこも安心する。
安心して、嬉しくなる。


――――――


にこ「はい、終わったわよ」

真姫「ありがと、にこちゃん」

にこ「いえいえ」


しばらく、そのまま何も言わない。
さっきは安心した表情だったとはいえ、たぶん真姫ちゃんはまだ疲れてる。
どうしたもんかしらね?


真姫「にこちゃん、後は自分で洗えるから」

にこ「ん? そう? なら――


そこまで言って止まる。
なぜなら、にこの小悪魔的ななにかが顔を覗かせていた。

そうよね。
頭は洗ったんだし、今度は……。


にこ「ま~き~ちゃん♪」

真姫「え、にこちゃん、な、なによっ」


手をワシワシしながら、真姫ちゃんに向かう。
昔のどこかの誰かさんみたいだと思いながらも
真姫ちゃんに笑顔を向けた。

もちろん、やることはひとつにこっ!


にこ「体洗ってあげるにこぉ♪」

真姫「ひっ、や、やめなさいよっ」

にこ「…………」

真姫「…………」

にこ「…………」

真姫「……にこちゃ――



にこ「ニコっ♪」



真姫「ひっ!?」


――――――

真姫ちゃんはやっぱり柔らかかったにこっ♪

――――――

――――――


真姫「イミワカンナイッ!!」


湯船に浸かっての第一声がそれだった。

湯船に浸かってる真姫ちゃんがそう言うのを聞きながら、にこは自分の体を洗う。


にこ「ごめんってば、真姫ちゃん」

真姫「ニヤケながら謝らないでっ!」

にこ「え? にこ、ニヤケてた?」

真姫「……おもいっきりね」


そう言われて、鏡にうつる自分を見てみる。

……あぁ、これは、うん。
気持ち悪いくらいニヤケてるわね。


真姫「で、いきなりどうしたの?」

にこ「ん? なにが?」


にこが鏡を見ながら
表情を作っていると、真姫ちゃんがそう聞いてきた。

たぶんいきなり一緒にお風呂に入ったことを言ってるんだろう。
だけど、にこはすっとぼけることにする。


にこ「にこ、よくわかんなぁい♪」

真姫「……キモチワルイ」

にこ「はぁ!? 気持ち悪いってなによっ!」

真姫「三十路にもなって、そのキャラはないわよっ」

にこ「なっ! あんたねぇ……」

真姫「なによっ!?」

にこ「ぐぬぬぬ」


と、いつものように言い合うにこと真姫ちゃん。
しばらくにらみあって……。


にこまき「「……ふふっ」」


笑い合う。
ほんと、いつも通りよね。

――――――

2人で湯船に浸かって。
背中合わせで座る。

にこの家のお風呂は大人が2人入るのにはちょっと狭い。
だから、2人とも膝を曲げてる。


真姫「ねぇ、にこちゃん」

にこ「うん」


真姫「ありがと」


突然、ぼそりと、真姫ちゃんは言った。

たぶんまだ疲れは残ってるんだろうけど
一緒にお風呂に入って余計疲れちゃったかもしれないけど
そんな風にお礼を言ってくれた。

まぁ、そんなのにこはいらないんだけどね?
だって……


にこ「真姫ちゃんが辛いときはにこが助ける」

にこ「にこが辛いときは真姫ちゃんが助ける」

にこ「その約束でしょ?」



2人が結ばれたとき、にこ達はそんな風に誓い合った。

μ's の皆は祝福してくれたけど
世間はにこ達のような存在を受け入れるとは限らない。

かたや元アイドルのプロデューサー。
かたや大病院の跡取り娘。
いいバッシングの的になるだろう。

だから、にこ達はお互いを助け合う。



真姫「……ありがと、にこちゃん」

にこ「もっと頼んなさいよ、真姫ちゃん」



向かい合う。
そして、ギュッてする。
うん、あったかい。


――――――

――――――


真姫ちゃん、貴女がにこに言ったこと覚えてる?


にこがプロのアイドルになって
人気が出たのはいいけど
先輩たちから嫌がらせを受けて……。

あのとき、真姫ちゃんが先輩たちの楽屋に殴り込みに行ったのはヒヤヒヤものだったけど。

だけど、真姫ちゃん。
心が折れそうになってたにこに言ってくれたあの言葉、にこは忘れないよ。


たぶん、今を一生懸命生きてる真姫ちゃんは忘れてるかもね?

真姫ちゃん。
貴女はこう言ったんだよ?



「にこちゃん」

「あなたは私だけのアイドルになりなさいっ!」

「私もにこちゃんだけのファンになるからっ!」

「だから、私のそばにいてっ!!」



反発しあいながら。
助け合いながら。
いつまでも隣同士くっついてる。

にこと真姫ちゃんって
まるで、磁石みたいだね。



――――――fin――――――

以上で
10年後にこまき編終了です。


そして、これですべて完結です。
拙い表現に乱雑な文章だったかと思いますが
一人でも読んで、楽しんでいただけたら幸いです。

初ssということで
ここが読みにくかったとか
ここはこういうシーンが必要とか
アドバイスや感想等あれば、レスしていただけると嬉しいです。


最後に
『りんぱなは正義』!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年11月27日 (木) 11:23:13   ID: gN6pwx1o

めっちゃ素敵やん

2 :  SS好きの774さん   2014年11月29日 (土) 02:29:22   ID: 9dBzJBPq

素敵やん

3 :  SS好きの774さん   2014年11月29日 (土) 09:40:46   ID: gBPgzmt9

良かった

4 :  SS好きの774さん   2015年01月10日 (土) 21:52:49   ID: ur51vqxZ

りんぱなは正義!!
凛ちゃんかわいー

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