―――765プロダクション事務所―――
最上静香「社長、私たちが呼ばれた理由とは一体?」
社長「うむ、今日呼んだのは他でもない、最上静香君、矢吹可奈君、そしてジュリア君。君たち3人は正式にデビューすることが決まった!」
矢吹可奈「や、やったぁ! これで春香さんや千早さんと同じステージに!」
ジュリア「けど、プロデューサーはどうするんだ? ウチにいま手が空いているプロデューサーは居ないはずだけど」
社長「その事については心配ない。入ってきたまえ」
ガチャ
グリP(以下P表記)「この度入社しましたグリPと申します。プロデュース業務は初めてなので、至らない点が多いかと思いますが、よろしくお願いします。」
可奈「こ、こちらこそよろしくおねがいします!」ペコリ
静香「……」
ジュリア「……」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1425052982
社長「それじゃあ、あとは君に任せても大丈夫かね?」
P「はい、自己紹介とユニットの方針についてだけなので、大丈夫かと」
社長「頼んだよ、君ィ」
ガチャ、バタン
P「それでは、まずお一人ずつ自己紹介をお願いします。社長から皆さんの履歴書は頂いていますが、やはり本人から聞くことが大事だと思っていますので」
可奈「や、矢吹可奈! 14歳です! 上手くはないですけど……歌が大好きです!」
可奈「あ! もちろん歌以外でもプロデュースしていただけるなら、全力で頑張ります! よろしくおねがいします!」
静香「最上静香、14歳です」
ジュリア「……あたしはジュリア、16歳だ」
P「失礼ですが、ジュリアさん。本名が履歴書には書いていないのですが」
ジュリア「……何か手違いじゃないか? 社長にでも聞いてくれ。あんまり本名好きじゃないんだ」
P「わかりました。後で確認を取ります」
P「それでは、このユニットの方針についてお話します」
静香「すみません、その前に1つ質問してもいいですか?」
P「なんでしょうか? 最上さん」
静香「失礼ですがあなた、プロデューサーの経験はあるんですか?」
P「……いえ、これが初めてのプロデュースです」
静香「はぁ、そんな人に任せてもいいのかしら」ボソッ
P「何か、言いましたか……?」
静香「いえ、なんでもありません。方針の説明に入ってください」
P「……わかりました。では、説明させていただきます」
P「みなさんは、アイドル候補生の頃から知り合いだったとの事なので、メンバーからある程度予想はついているかもしれませんが……」
P「このユニットは音楽方面で売り出していきたいと思っています」
P「まず小さなイベントで少しずつ露出を増やして、CDデビュー。そして4か月後に事務所の劇場で、大きめのライブをしていただきます」
可奈「その先は、どうするんですか?」
P「ライブまでの手応えにもよりますが、歌番組への出演なども考えてはいます。今は、4か月後を目標に頑張ってください」
P「何か、質問はありますか?」
可奈「大丈夫です!」
静香「特には」
ジュリア「同じく」
P「そうですか。ではこれで簡単な方針説明は終わりです」
P「ユニットの皆さんで仲良く、上を目指していきましょう。私は少し営業があるので、ここで失礼します」
ガチャ、バタン
可奈「……」
可奈(静香ちゃんも、ジュリアちゃんも、どうしてか分からないけど、プロデューサーさんに対しての態度が冷たい……)
可奈(それに、この2人とも歌も上手だし、私なんかが一緒にやっていけるのかなぁ)
可奈「ねぇ静香ちゃん、ジュリアちゃん。どうしてそんなにプロデューサーに対して冷たいの?」
静香「別にそんなことはないわ。ただ私たちが初めての担当っていう新人に、アイドル生命を賭けていいのか不安があるだけ」
ジュリア「……別に理由はない」
可奈(大丈夫かな……)
―――次の日・765プロ事務所―――
可奈「越えられない壁はない~♪ きっときっとへこたれない~♪」
可奈「はぁ……」
P「どうしたんですか、矢吹さん? これからレッスンですよ?」
可奈「プロデューサーさん……」
P「……何か困っているのなら相談に乗りますが」
可奈「私たちのユニットって、誰が選んだんですか?」
P「メンバーの選定は、私ですが……」
可奈「プロデューサーさんは、どうして私なんかをこのユニットに?」
可奈「私、歌は大好きですけど上手くないし、静香ちゃんやジュリアちゃんと一緒のステージでやっていけるのか不安なんです。足を引っ張っちゃうんじゃないかって」
P「……選定理由を話すのが一番良い方法なのか分かりませんが、矢吹さんにはお話ししておきます」
P「ユニットメンバーを選ぶ前に、デモテープを聞き、レッスンの様子も見させていただきました」
P「テープを聞いている限り、確かに矢吹さんは他の2人に比べて、歌唱力は少し劣っています」
可奈「うぅ…… やっぱり……」
P「ですが、矢吹さんを選んだ理由は歌唱力ではありません」
可奈「えっ……?」
P「歌への、そして音楽への情熱です」
可奈「情熱ですか」
P「はい。矢吹さんは『歌が好きだ』という気持ちがこちらにも伝わってくるんです」
P「この子は、本当に音楽が好きなんだろうなと思えるような、そんな歌い方だと感じました」
P「レッスンを積んでいけば、歌唱力は絶対に上がります。ですが音楽への姿勢というものは、なかなか変えられないものです」
可奈「……」
P「……ですから、可奈には、その気持ちを忘れないでほしい可奈ーって」
可奈「……ごめんなさい、今のギャグですか?」
P「矢吹さんが、少し緊張していたようなので、リラックスしてもらおうと……」
可奈「私はお歌上手になるよう頑張るので、プロデューサーさんはギャグを……」
P「申し訳ない……」
可奈「けど、今の話聞いて少し楽になりました! 要するに、いつも通りやって、あとは歌が上手になればいいんですよね?」
P「はい。そういうことです」
可奈「あと、これはプロデューサーさんへのお願いなんですけど、矢吹さんって呼ぶのやめてください!」
P「えっ?」
可奈「ちょっと距離が離れすぎている気がするんです。もっとフレンドリーにいきましょー!」
P「ちょうどいい距離感だと思いますが……」
可奈「よくないです! 可奈って呼んでください! ギャグの時みたいに」
P「……」
P「か、可奈…… ちゃん」
可奈「いいと思います! このユニットでやっていけそうです」
P「そ、そうですか…… それはいい事だと思います……」
可奈「あ! そろそろレッスンの時間だ! 一緒に行きましょう!プロデューサー!」
P「わかりました。レッスン頑張りましょう」
―――三日後・レッスン場―――
静香「~~♪ ~~~~~♪」
静香「うーん、この曲、どうしてもうまく歌えないわね……」
ガチャ
P「お疲れ様です。セルフレッスンですか?」
静香「……何の用ですか?」
P「いえ、矢吹さ…… 可奈ちゃんのレッスンだったのでこちらに来ていまして」
P「終わった後、たまたま通りかかったら、とても心地よい歌声が聞こえたので」
静香「ずいぶんとこの短い時間で、可奈と距離を縮めたんですね」
P「ええ、それなりには。可奈ちゃんがいい子というのもあると思いますが」
静香「まるで私が悪いみたいな言い方ですね」
P「い、いえ。決してそういう意味で言ったわけでは……」
静香「……」
P「……」
P「そういえば、トレーナーさんを付けないんですか? 私でもよければ、時間あいているときは付き合いますよ」
P「セルフレッスンでは自覚する事が出来ない問題点も出てきますので……」
静香「すみません、以後気を付けます。ただ、あなたみたいな新人プロデューサーに音楽の事わかるんですか?」
P「……さっき最上さんが歌っていた歌聞かせいただけませんか?」
静香「はぁ? どうしてあなたに……」
P「私のような素人からでもわかる修正点があるかもしれないです。
そのくらい大きな問題は今すぐ修正するべきですし」
P「という建前で、最上さんの歌が聞きたいだけです。駄目でしょうか?」
静香「まぁ、聞かせるくらいなら別に」
静香「~~~♪」 曲:Precious Grain
https://www.youtube.com/watch?v=oT0gwBpd45Q
静香「ふぅ…… ありがとうございました」
P「やはり上手いですね…… 感情も乗ってますし……」
静香「いえ、まだ直すべき点はたくさんあります」
静香「それじゃあ、お疲れ様でした。私はまた一人でレッスンしてますので」
P「最上さん、2番の最初ですが、どの程度前に出るか迷ってませんか?」
静香「そこはたしかに迷っているところですけど……」
P「そこは、あえて楽器を1番より減らしていますので、前に出ていいと思います」
静香「……じゃあここなんですけど」
P「ああ、そこは少し落としてみると次のフレーズが活きるかと」
静香「では、サビなんですけど」
P「まだ、最上さんは音程が微妙に上下しています。途中、一音下がるとハーモニーが汚くなるので、そこは気を付けてくれると……」
静香「……あなた、何者ですか?」
P「ただのプロデューサーですよ。少し音楽に詳しいだけの」
P「これからレッスンするときには、ちゃんと言ってくれると助かります」
静香「……わかりました。これからレッスンするときは、呼びます」
静香(まだ信用しきれてないけど、少しは頼ってもいいのかしら)
―――次の日・765プロ事務所―――
ジャーン ジャーン
ジュリア「…………」
ガチャ
P「お疲れ様です。ジュリアさん」
ジュリア「…………」ジャキジャキ
P「……ギターの練習ですか?」
ジュリア「……」
ジャカジャカ
P「ジュリアさん…… 私と話したくないのは構わないです」
P「ただ、アイドルをやるなら、あなたは社会人として扱われます。最低限仕事をこなすための会話を……」
ジュリア「……なあ、一つ聞いてもいいか?」
P「なんでしょうか?」
ジュリア「アンタ、どうしてギタリストやめて、こんな事務所でプロデューサーやっているんだ?」
P「……知ってたんですか」
ジュリア「あんたを知らないギタリストのほうが少ないだろ。ギターの雑誌でコラムもやってたのに」
P「……」
ジュリア「さっきの質問に答えてくれよ」
P「……別に、理由なんてないですよ」
ジュリア「嘘つくなよ」
ジュリア「腕も一流、ギターへの情熱も一流、ライブ映像見てるだけでもそう感じられるほどのアンタが、何の理由もなしにやめるわけない」
P「そういう事だってあるかもしれませんよ?」
P「まぁ、この話はこのあたりでやめておいて、今度のレッスンの話でもしましょう」
ジュリア「ふざけるな!」
P「……」
ジュリア「こんなところで適当なことやってないで、ギター弾けよ!」
ジュリア「あんたがギターやらないで、どうするんだよ!」
P「……」
P「……ギターじゃ、たいしてお金にはならないんですよ」
P「あなたは、こんな事務所と言っていますが、こんな事務所のプロデューサーのほうが、よっぽどギタリストよりお金が手に入る」
ジュリア「……」
ジュリア「じゃああんたは、金のためにギターを捨てたってことかい?」
P「……」
ジュリア「……そうか、じゃあ、あたしの見る目が間違ってたってことか」
ジュリア「尊敬していたギタリストの本当の姿なんか、見たくなかった……」
ジュリア「今日はもう帰らせてもらう……」
P「……わかりました、打ち合わせはまた後日。まだ急ぐ必要はないので」
ジュリア「……」
バタン
P「……」
P「あ、ギター忘れていった……」
P「ギタースタンドも持ち込んでいるみたいだし、このまま置いておいても大丈夫か……」
P「……」
P「フェンダーのレスポールか…… 昔はよく使ってたな……」
P「少しだけなら、借りても……」
P「チューニングは…… ちょっとズレているな」カチャカチャ
P「……」カチャカチャ
P「……よし」ジャラーン
バチーンッ!!
P「……ッ!!」
P「……弦が切れるとは」
P「……」
P「……」
―――翌朝・765プロ事務所―――
ジュリア「おはようございまーす…… 誰もいないのか」
ジュリア「昨日、ギターそのまま置いて行っちゃったし、手入れしないとな」
ジュリア「ん? 弦が変わってる……」
バタン
可奈「~~♪ ~~~♪ おはようございます~♪」
可奈「はれ? ジュリアさんだけ?」
ジュリア「おはよう可奈、小鳥はどっか行っているみたいだ」
ジュリア「そうだ可奈。昨日、あたしのギター弄ってた奴いたか?」
可奈「うーんと…… あ、そういえばプロデューサーがなんかやってたかも」
可奈「ジュリアさん、プロデューサーと何かあったの?」
ジュリア「別に、なんでもない」
可奈「怪しい……」
ジュリア「本当に何でもない。そうだ可奈、さっき口ずさんでいた曲は弾けるから、あたしのギターに合わせて歌ってみないか?」
可奈「本当!? じゃあジュリアさんも一緒に歌おうよ!」
ジュリア「まあ。たまにはいいか」
ジャーン、ジャカジャカ ~~~~♪
ガチャリ
P「おはようございます。朝から元気ですね」
可奈「あ、プロデューサーさん! おはようございます!」
ジュリア「……」
P「……」
P「ジュリアさん、昨日ギターを弄っていて、弦を切ってしまいました。」
P「本当に申し訳ありませんでした」
P「弦は変えておきました。代金は全てこちらで持たせていただきます」
ジュリア「……」
P「あと、つまらないものですが……」
可奈「わぁ、マカロンだ!!」
ジュリア「別にいい。気にしてないし」
P「いえ、そういうわけには。それに、これはほんの気持ちですので」
ジュリア「……」
ジュリア「分かった。あとでユニットのみんなと食べるから、置いておいてくれ」
P「分かりました」
可奈「あっ、プロデューサー、そろそろレッスンですよね」
P「そうですね、その予定になっています」
可奈「じゃあ、行きましょう♪」
P「……わかりました」
ジュリア「……」
―――レッスン場―――
可奈「プロデューサー」
P「どうしましたか?」
可奈「ジュリアさんと何かありました?」
P「……ギターの弦を切ってしまっただけです」
P「それじゃあ、レッスン始めましょうか」
可奈「……はい、よろしくお願いします」
―――1週間後・765プロ事務所―――
静香「プロデューサーが3人集めるなんて珍しいわね」
ジュリア「たしかに」
可奈「『今は個人の力を伸ばす時期です』っていって、レッスンも別々だったしね」
ガチャリ
P「……みなさん、そろっているようですね」
静香「それで、3人集めた要件はなんです?」
P「はい、皆さんには3週間後、CDの収録をしていただくことになりました」
可奈「本当ですか!? やったぁ♪」
ジュリア「へぇ……」
支援だよ
>>1
ジュリア(16) Vo
http://i.imgur.com/Pp8h1am.jpg
http://i.imgur.com/6LbffVS.jpg
最上静香(14) Vo
http://i.imgur.com/xLn56G5.jpg
http://i.imgur.com/E0CgOgx.jpg
矢吹可奈(14) Vo
http://i.imgur.com/mwiNWow.jpg
http://i.imgur.com/7l81XH3.jpg
P「発売は、おそらく3か月ほど先になると思います」
P「最上さん、可奈さんは、生歌でも安定してきましたので、残り3週間は、基礎練習と細かいところを仕上げていく形になると思います」
静香「わかりました。ご指導お願いします」
可奈「CDデビューかぁ♪ 頑張ります!」
P「……ジュリアさんは、トレーナーさんによると、ほぼ仕上がっているそうなので、基礎練習と現状の維持を」
P「それと、トレーナーさんから報告をいただいた、楽曲の収録でギターを弾きたいという件ですが、許可は取れましたので、2週間後、歌とは別の収録になります」
ジュリア「……了解」
P「CDデビューまでは、レッスンと小さな営業を続けることになりますが、頑張っていきましょう」
>>25
ありがとうございます。とても助かります。
静香「プロデューサー、この後、私のレッスンですよね」
P「はい、その予定ですが、なにかありますか?」
静香「少し相談したいことがあるので…… お昼をご一緒することはできますか?」
P「構いませんが」
可奈「2人で食事ですか?いいなぁ」
静香「ごめんなさいね、可奈。ちょっと二人で話したいことなの」
可奈「なら、仕方ないかぁー」
P「それでは、行きましょう最上さん」
静香「わかりました」
ガチャン
可奈「いいなー私も行きたかったなぁ」
ジュリア「仕方ないだろ。お昼どっか連れて行ってやるからさ」
可奈「えっ!? 本当ですか!? ジュリアさん大好きー♪」
ジュリア「お、おい可奈! 抱き着くなぁ!」
―――○×製麺―――
P「すみません、よく使う店なんですが、ここで本当に大丈夫でしたか?」
静香「大丈夫です。むしろこんなおいしい店連れてきていただき、ありがとうございます」ズルズル
P「うどんに夢中なのはいいのですが、お話とは?」
静香「……プロデューサー、距離を感じる人と仲良くなる方法、知りませんか?」
P「悩みというのは、対人関係ですか」
静香「ええ、そんな感じです」
P「まずは……自分で話しかけていくしかないと思います」
静香「相手のほうから、拒絶されているかなと感じた場合はどうすれば」
P「難しい話ですね……」
P「相手も離れていくうえ、自分でも離れていったら、もう関係は作れないので、やはり自分で少しずつ距離を詰めていくしかないかなと……」
静香「……」
静香「プロデューサーは、今の話で自分に思い当たる事ありました?」
P「えっ?」
静香「……このユニットで、ステージに立つのは3人です」
静香「けど、ユニットのメンバーは4人だと思っています」
P「……」
静香「それにプロデューサー、最初のあいさつで言いましたよね?」
静香「『ユニットの皆さんで仲良く、上を目指していきましょう』って」
P「……」
P「14歳の女の子に、お説教されていちゃ、プロデューサー失格ですね」
静香「別にお説教したつもりはないですよ?」
P「……なんとか、してみますね」
静香「頑張ってください。あと、うどんご馳走様でした。また食べに来ましょう」
P「今度は、ユニットで来られるといいですね」
―――765プロ事務所―――
可奈「ジュリアさんありがとう! おいしかった」
ジュリア「ならよかった。今度は3人で行こうな」
可奈「そうだねー」
ジュリア「さてと、ギターでも弾くか」
可奈「見ててもいいですか?」
ジュリア「まあ、別にかまわないけども」
ガチャ
静香「ただいま」
P「もどりました」
可奈「おかえりなさい」
ジュリア「……おかえり」
ジュリア「……」
ジャガジャガ、ジャキジャキ
静香「それじゃあプロデューサー、私はレッスンに」
静香「可奈、一緒に来る?」
可奈「えっ、でも私ジュリアさんのギターが聞きたい……」
静香「……可奈?」
可奈「うぅ…… 行きます……」
静香「それじゃあプロデューサー、先に行ってます」
P「ああ、資料だけ持ったら行きます」
可奈「そうだ、ジュリアさんもいっしょ 静香「いいから! 行くわよ!」
可奈「はーい……」
バタン
P「……」
ジュリア「……」ジャカジャカ
P「じゅ、ジュリアさん……」
ジュリア「……なんだい?」ジャキジャキ
P「えっと……」
ジュリア「用があるなら早く言ってくれ」
P「……」
ジュリア「……」
P「そ、そのフレーズですが、エフェクターを通さずに弾いてみてください」
ジュリア「……は?」
―――ドアの向こう側―――
静香「あのヘタレP! 話しかけるときに自分の得意な方向に逃げ出した!」
可奈「私たちは何やってるんだろう……」
―――ジュリアとPのいる部屋―――
P「ですから、そのフレーズをエフェクターなしで弾いてみてください」
ジュリア「突然何を言い出すんだ……」
P「……お願いします」
ジュリア「これでいいのか?」チャラーンチャラーン
P「はい、大丈夫です。そして今録音した音を聞いてみてください」
ジュリア「はぁ…… ん?」
ジュリア「弾けているフレーズのはずなのに、いつも以上に下手に感じる……」
P「エフェクターを通すことで、少しミスしていても、それが打ち消されているんです」
P「ですから、そのフレーズに関しては、今の音でうまく聞こえるようになるまで練習するのがいいかと」
ジュリア「なるほどな……」
P「あと、この前弾いていたフレーズですが」
ジュリア「これか?」
P「ええ、それですが、2番目のコード、構成音がちょっと違っていて……」
ジュリア「え、嘘だろ。ちゃんと自分の耳で聞いてコピーしたけど……」
P「あそこは、ギターにほかの楽器が被ってくるので、間違えやすいんですよ」
ジュリア「……教えてくれ」
―――ドアの向こう側―――
静香「これは、一応成功なのかしら?」
可奈「2人とも、ギターが好きみたいだし、それで分かり合えているなら、いいのかなぁ」
可奈「というか、プロデューサーって、ギター弾けたんだね」
静香「あれでもあの人、元プロのギタリストよ」
可奈「えっ!? 本当!?」
静香「嘘言ってどうするの。初めてのレッスンの後、気になって調べたら出てきたの」
静香「千早さんの楽曲にも、ギターで参加していたわ」
可奈「知らなかった……」
可奈「でもプロデューサー、見てる感じだと、ギター好きみたいなのに、どうしてプロやめちゃったんだろう?」
静香「さぁ、それは流石にわからなかったわ。本当に突然引退しているし……」
―――ジュリアとPのいる部屋―――
ジュリア「……そうか、このフレーズ、早くて間に合わなかったんだけど、こうすれば」
P「そこは、私も苦労しました。ですがコツさえつかめばなんとか」
ジュリア「……」
P「どうしましたか?」
ジュリア「なんていうか……ありがとう」
P「……」
ジュリア「おい!なんか言えよ!」
P「いえ、ジュリアさんからそんな言葉が聞けるとは……」
ジュリア「……また、暇な時でいいから、教えてくれ」
P「……喜んで」ニッコリ
―――ドアの向こう側―――
静香「あのプロデューサーが笑った……」
可奈「あんな顔、できるんだね……」
静香「案外、あの笑顔が本当のプロデューサーなのかもしれないわね」
―――1週間後・事務所―――
可奈「ふふふーん♪」モグモグ
P「……」カタカタカタ
可奈「お菓子~♪ おいし~♪」モグモグ
P「……」カタカタ
可奈「もう一袋食べたちゃおっ!」ガサガサ モグモグ
P「……可奈さん」
可奈「はい、なんでしょうかプロデューサー?」
P「食べすぎです」
可奈「え!? ……そうですか?」
P「流石に、目の前でプチシューが3袋無くなりそうなのを見過ごすわけにはいきません」
可奈「そんなぁ」
P「……初めてのライブがある前に、衣装が入らなくなりますよ?」
可奈「うぅ…… それは嫌ですけど……」
P「……ライブが成功したら、ケーキバイキングに連れて行きますので、それで我慢してください」
可奈「本当ですか!? やったぁ♪」
P「……あと、そのプチシュー、頂いてもいいでしょうか? 少し糖分が欲しくなりまして……」
可奈「はい! たくさんどうぞ♪」
―――1週間後・765プロ事務所―――
P「ジュリアさん、どうしてもついて行かないと駄目でしょうか?」
ジュリア「なんだよその不服そうな顔は」
P「いえ、レコーディングには、音無さんがついて行ってくれる予定になってますので……」
P「わざわざ、私が行かなくとも……」
ジュリア「元プロのアンタがいたほうがいいだろ?」
P「……それは、そうかもしれませんが」
ジュリア「ギターの練習にも少し付き合ってくれてたんだし、な?」
P「……わかりました。音無さんには、連絡を入れておきます」
―――収録スタジオ・ロビー―――
ジュリア「スタジオは何回か使ったことあるけど、ここまで本格的なのは初めてだな」
P「そのうち慣れます」
ジュリア「そういうもんかねぇ」
??「お、君は!」
P「……本日はよろしくおねがいします」
??「久しぶりだね!」
ジュリア「なぁ、この人だれだ?」
P「ミキサーさんです」
ミキサー「君がジュリアちゃんかい? やっぱりアイドルだけあって可愛いねえ」
ジュリア「……今日はよろしくおねがいします」
ミキサー「あ、別に偉い人じゃないし、そんなに緊張しないで!」
ミキサー「それじゃあ、色々録音の時に気を付けてほしいことも教えたいし、行こうか」
ジュリア「は、はい!」
ミキサー「グリP君はどうする? 久々に見ていくかい?」
P「……そうですね、そうします」
―――収録スタジオ・スタジオ内部―――
ミキサー「ここの配線に音が出力されている。そっちのアンプで聞いてくれ」
ジュリア「はい」
ミキサー「まぁ、教えるのはこのくらいかな。音はある程度作ってあるかい?」
ジュリア「ある程度なら……」
ミキサー「それじゃあ、このアンプで微調整してくれ。 音域に関しては、こっちでいじらせてもらうけど、構わないかな?」
ジュリア「わかりました」
ミキサー「よしそれじゃあ、少ししたら収録はじめよう。私は外のミキサー卓の前にいるから、OKならそのマイクで伝えてくれ」
ジュリア「はい!」
ガチャ、バタン
ミキサー「いやー、音作りも結構いいし、センスあるよあの子は」
P「私もそう思います」
ミキサー「腕は、まだ君には遠く及ばないけど、情熱なら君並みだね」
P「……」
ミキサー「……おっと、すまない。昔の事を掘り返しちゃいかんな」
P「いえ、これは私自身の問題なので、ミキサーさんが謝るような事では……」
ミキサー「そうか…… しかし、本当に君がやめたと聞いたときは驚いたよ」
ミキサー「個人的な理由としか知らないが、一体何があったんだい?」
P「……すみません、それは言えないです。正確には、言いたくないといったほうが正しいかもしれないですが」
ミキサー「……それならば仕方ない。まぁ私は違う形でも、君とまた関われてうれしいよ。これからもよろしく頼むよ」
P「はい、よろしくお願いします」
ジュリア『すみませーん! 準備できましたー』
ミキサー「おっと、そろそろ始めないとな」
ミキサー「それじゃあ、一番最初から行くよー」
ジュリア『分かりました』
ジャーン、チャラララ~
P「……」
P「……」
―――1週間後・収録スタジオ―――
静香「……」
P「……緊張していますか?」
静香「初めての収録ですから、多少はしてますよ……」
P「最上さんなら、きっと大丈夫です。」
静香「そんなこと言われても…… 緊張はするんです……」
P「……」
静香「……」
P「静香がずっと静かだと、こっちも緊張する」
静香「……静香が静か ……フフッ」
P「やっと、笑ってくれましたね」
静香「静香がしずか…… フフフフフフ……」
P「……そんなに面白かったですか?」
静香「はい! プロデューサー、ギャグ上手ですね」
P「一か月ほど前に可奈さんに言ったら、ダメだしされて、勉強しました」
静香「おかげで緊張も少し解れました」
P「それならば、良かったです」
静香「収録、良いものができるよう頑張ってきますね」
P「期待しています。収録終わったら、うどん食べに行きましょう」
静香「本当ですか! ならより一層頑張らなくちゃ」
静香「それじゃあ、行ってきます」
P「頑張ってください」
~~~♪ ~~~~~♪
P「……」
すみません、急に眠気が来たので今晩は中断
明日の夜くらいにまた投下します
おつおつー
一旦乙です
乙っした
ただ違法にアップロードされたものを貼るのは控えたほうがいい
このジュリアと静香の初期特有の冷たさ好き
一旦乙
いいね
フェンダーのレスポールって文字列だけで笑えた
>>50
すみませんでした
以後気を付けます
ランティスの公式視聴動画なら、大丈夫でしょうか?
>>53
ご指摘ありがとうございます
レスポールをストラトに直す時に、修正かけ忘れたみたいです
あとで修正します
帰りましたが、用事が出来て出かけますので、修正版の投下などは11時くらいになるかと
これは名作の予感
>>11
【修正版】
P「そういえば、トレーナーさんを付けないんですか? 私でもよければ、時間あいているときは付き合いますよ」
P「セルフレッスンでは自覚する事が出来ない問題点も出てきますので……」
静香「すみません、以後気を付けます。ただ、あなたみたいな新人プロデューサーに音楽の事わかるんですか?」
P「……さっき最上さんが歌っていた歌聞かせいただけませんか?」
静香「はぁ? どうしてあなたに……」
P「私のような素人からでもわかる修正点があるかもしれないです。
そのくらい大きな問題は今すぐ修正するべきですし」
P「という建前で、最上さんの歌が聞きたいだけです。駄目でしょうか?」
静香「まぁ、聞かせるくらいなら別に」
静香「~~~♪」 曲:Precious Grain
https://www.youtube.com/watch?v=xsAfp5wIk5Q
>>18
【修正版】
P「……」
P「あ、ギター忘れていった……」
P「ギタースタンドも持ち込んでいるみたいだし、このまま置いておいても大丈夫か……」
P「……」
P「フェンダーのストラトか…… 昔はよく使ってたな……」
P「少しだけなら、借りても……」
P「チューニングは…… ちょっとズレているな」カチャカチャ
P「……」カチャカチャ
P「……よし」ジャラーン
バチーンッ!!
P「……ッ!!」
P「……弦が切れるとは」
P「……」
P「……」
修正完了。それでは続きから始めます
―――3日後・765プロ事務所―――
P「昨日、ユニット曲の収録も終わり、これでファーストシングルの収録は全員済みました。おめでとうございます」
可奈「わーい!」
静香「お疲れ様でした」
ジュリア「結構楽しかったな」
P「2か月後に、CDは発売される予定です。1か月はダンス・ヴィジュアルレッスンを多めにやっていきます」
可奈「残りの1か月はどうするんですか?」
P「CD発売のプロモーション活動として、各所でイベント営業やラジオ出演などをしていただくことになるかと」
ジュリア「じゃあ、ライブもやったりするのかい?」
P「ええ、最初はショッピングモールのイベントスペースになります。かなり小さいところになりますが」
ジュリア「なるほどねぇ……」
P「以前もいいましたが、3か月後にあるうちの劇場を使ったライブ。そこが大本命です」
P「それまでのライブは、皆さんがライブ経験を積む、そしてファンを増やすことが目標です」
P「ファンですが、今のところこのユニットには1人しかいません」
可奈「えっ? ファンの方いるんですか?」
P「はい、私です」
ジュリア「……フフッ」
静香「フフフ……」
可奈「アハハハハハハ!!」
P「……? 何かおかしなことを言ったでしょうか?」
静香「ぷ、プロデューサー。真顔でしかも真剣なトーンでそんなこと言わないでくださいよ」
ジュリア「わざとやったのかと思ったけど、その感じだと天然か?」
可奈「プロデューサーさん、面白くなりましたね!」
P「はぁ…… 特に意識していったつもりはないんですが……」
静香「まぁまぁ。ほら、続きお願いします」
P「では、続けさせてもらいます。みなさんはまだファンが…… 一人しかいない状態です」
P「ですので、イベント営業を多少行っても、人はあまり来ないでしょう」
ジュリア「まぁ、そういうもんか」
P「ですので、ライブでの目標は1つ」
可奈「そ、それは?」
P「通行人、買い物客をあなた達の歌とダンスで、自分たちの世界に引きずり込んでください」
ジュリア「へぇ、面白そうじゃないか」
P「私の勝手な見解ですが、ライブで力が出せるアーティストは伸びます」
可奈「そうなんですか?」
P「あくまで、私の意見です」
ジュリア「まあ、言いたい事は分かる」
P「最近は、ライブで既に歌を収録した音源を流すところもあるそうですが、音楽方面で売り出そうというユニットでそれは避けるべきです」
静香「つまり、生歌で上手く歌えと」
P「みなさんはまだ発展途上ですので、上手く歌ってくださいとは言いません」
P「観客の皆さんに、生の感情が伝わるようにという情熱をもって歌ってください」
可奈「じゃあ、いつもみたいに『歌が好きだー』って思いながら歌えばいいってことですね!」
P「はい、さらにその気持ちを前に出していただけるとなお良いかと」
P「ライブで掴んだファンは、CDから雑誌などから入ったファンよりも離れにくい、貴重なファンになることが多いです」
P「頑張っていきましょう」
3人「「「はい!!!」」」
―――1月後・レッスン場―――
~~~♪~~~~~~♪♪
ジュリア「……」ハァハァ
静香「……」ゼェゼェ
可奈「ふぅ…… 今のダンス、どうでしたか!?」
P「……」
P「とても良かったです」
P「歌も乱れず、笑顔も忘れずにできていました」
可奈「やったぁ!」
P「今のパフォーマンスが、ライブでもできれば、この先も戦って行けるかと」
静香「やっと、デビューできるって実感が湧いてきたわ……」
ジュリア「まあ。ここまで収録以外はずっとレッスンだったしな」
P「申し訳ありませんでした。ですがここまで練習したので、これから暫くは転ばないと思います」
ジュリア「トップアイドルまで行けますよーくらい言ってほしいぜ……」
P「2か月みっちりレッスンしたからといって簡単に勝たせてもらえる相手は、上にいませんので」
静香「けど、そのほうがやりがいはあるわね」
P「その気持ちでずっと行ければ大丈夫だと思います。それでは今日のレッスンはこれで終了です」
P「明日はオフにしてあります。ゆっくり休んでください」
3人「「「はーい」」」
ジュリア「プロデューサー、この後時間あるか?」
P「ギターの練習ですか? 大丈夫ですよ」
ジュリア「サンキュー」
可奈「プロデューサー! その練習ちょっと見ててもいいですか?」
静香「私もこの後は予定ないので一緒に」
P「いいですが、ただギターの練習しているだけですよ?」
可奈「結構見ていても楽しいんですよ?」
P「そういうものでしょうか……」
―――765プロ事務所―――
~~~♪♪ ~~~♪
ジュリア「……」チャラーンチャラチャラ
P「今のコード、少し濁りましたよ」
ジュリア「うーん、どうしてもこのコード上手く弾けないんだよな」
P「手首の角度なんですが、すこし右に傾けるといいかもしれませんね」
ジュリア「……おっ、本当だ」
P「今のようにやれば、大丈夫かと」
ジュリア「ふむふむ…… よし、ちょっと疲れたし休憩」
P「だいぶ良くなったと思います」
ジュリア「そうかい、サンキュー」
可奈「プロデューサーって、元プロギタリストなんですよね?」
P「……ええ、一応」
可奈「ちょっと演奏聴きたいなーって思ってたんですけど、今弾いてもらうのってダメですか?」
静香「私も、ちょっと興味あります」
ジュリア「使うか?」
P「……」
可奈「……ダメ、ですか?」
P「……」
P「……少しだけ、なら」
可奈「やったぁ♪」
P「使うのはエレキギターですが、クラシックの曲で」
P「それでは、お借りします」
ジュリア「あいよ」
P「……」チャラーン
静香(ただコード弾いているだけなのに、ジュリアより上手いと分かる……)
曲名:Sunburst 作曲者:Andrew York
ジュリア「……」
可奈「す、すごい……」
P「……」
ジュリア「ん?どうした? まだこの曲続きあるだろ」
P「……やっぱりダメか」
可奈「えっ」
P「すみません、どうやらもう左手が動かないようです……」
静香「どういうことですか?」
P「……」
P「これが、ギタリストをやめた理由です……」
ジュリア「じゃあ、金のためにギター捨てたっていうのは……」
P「……あの時は、少し頭に血が上っていて、思ってもないことを」
静香「……話してくれませんか?」
ジュリア「……」
P「……」
P「私は、皆さんが知ってのとおり、プロのギタリストとして活動していました」
P「自分で言うと、自惚れているように思われるかもしれませんが、ギターへの情熱は、人一倍強かったと思います」
P「ですが、今から10か月ほど前でしょうか、私はある事故で、左手の筋を切断しました」
可奈「えっ、でも不自由なようには見えなかったですけど……」
P「ギタリストに復帰するために、かなりリハビリしましたから……」
P「左手は、少なくとも日常生活で困ることが無いくらいに、回復はしました」
P「ですが、左手人差し指と中指が、前ほど独立して動かなくなった事」
P「そして、数分以上左手を酷使すると、痙攣が起きる事がわかりました」
静香「……」
P「……何度も練習して、克服しようとしました」
P「……結果は、痙攣までの時間が10秒伸びるかどうか」
P「私は、そんな自分を見るのが嫌で、ギタリストをやめました」
P「そして3か月前、何かほかの職に就く事もしてなかった私は高木社長にスカウトれて、今に至ります」
静香「……どうしてこの仕事を選んだんですか? 一度離れた音楽に関係ある仕事だったのに」
P「一度捨てた音楽の仕事だったからかもしれません」
P「心のどこかで、まだ音楽への熱があったから……」
ジュリア「……どうして、どうして最初の時に言ってくれなかったんだよ! どうして嘘なんてついた!」
ジュリア「そのせいで、あたしはあんたに……!」
P「自分でギターが弾けないと口にしてしまえば、本当に二度と弾けなくなってしまうんじゃないか、そんな恐怖があったからかもしれません」
P「音楽の仕事を離れて、ギターを弾かなくなっても、心のどこかであきらめがついていなかったから……」
ジュリア「……」
P「……」
P「……もっと上手くなって、世界中のステージで弾いてみたかったなぁ」
可奈「プロデューサー……」
ジュリア「……なんで笑ってるんだよ。笑顔で言うような事じゃないだろ!?」
P「ジュリアさんに指導していて、心に燻っていた気持ちがまた燃えたんです」
P「もう一度弾いてみたら、ちゃんと全部演奏できるんじゃないかって気持ちがありました」
P「だけど、その気持ちにやっと、さよならを言えそうです」
静香「……」
ジュリア「……」
P「ギター、貸してくださりありがとうございました」
ジュリア「……なあ、プロデューサー。あんたの夢って、ギタリストとして世界中のステージに立つことだったんだよな」
P「ええ……」
ジュリア「その夢、あたしにくれ!」
P「えっ……?」
ジュリア「あんたが叶えられなかった夢を、あたしが一緒に叶えてやる!」
P「……」
ジュリア「だから、あたしがあんたの夢背負って、世界中のステージに立つ!」
ジュリア「あたしに、あんたの技術を、全部教えてくれ! そして一緒についてきてくれよ!」
P「……」
P「ふふふ……」ニコニコ
ジュリア「な、なんだよ! 何笑ってるんだよ!? バカにしてるのか!」
P「ジュリアさんが、もうちょっと上手くなったらそれも考えていいかもしれませんね」
ジュリア「……あきらめないからな!」
静香「ジュリア? ギターで頑張るのはいいけど、アイドルはどうするの?」ニコニコ
ジュリア「あ、アイドルで頂点に立った後、ギターで世界獲ればいいんだよ!」
可奈「じゃあ、アイドルとして世界中のステージに立てば、プロデューサーさんも2回いけるね~♪」
静香「言うわね可奈。このユニットの最終目標ができたじゃない」
静香「私たち4人で、世界中のステージ総なめにするわよ」
P「これは、大きい目標ですね……」
ジュリア「勝手にすればいいだろ! ……あたしもアイドルやるからには、全力でやりたいし」
可奈「みんなで、頑張っていきましょ~♪」
P(……前に比べてまとまりができたから、喜ぶべきなのかな?)
P「みなさん、期待していますよ」
ジュリア「任せろ!」
静香「任せてください」
可奈「がんばりまーす!」
―――1か月後・765プロ事務所―――
P「みなさん、1か月のレッスンお疲れ様でした」
P「そしてCDデビューおめでとうございます」
可奈「ありがとうございます~♪」
静香「やっとここまで来られたわね」
ジュリア「結構いい気分だよな。CDデビューって」
P「1か月後、事務所の劇場でライブをしてもらいます」
可奈「春香さんや千早さんと同じステージに立てるんですか!?」
P「いえ、あの13人は、別格ですのでさすがにまだ無理かと……」
可奈「そんなぁ……」
静香「まだ、CDデビューしたばっかりの無名ユニットですからね、私たち」
ジュリア「そのうち、一緒に立てる機会もあるさ」
P「ええ、今度のライブでファンが増えれば、かなり近いうちに同じステージに立てるかと」
P「そして、ライブの方ですが、このユニット以外にもいくつかデビューしたユニットがあるので、そのユニットと合同ライブという形になります」
可奈「志保ちゃんとかも出るって言ってました!」
ジュリア「そういえば、バカ昴も出るとか言ってたな」
静香「未来もライブに出るけど、日程忘れちゃったとか言ってたわね。もしかしてそのライブって……」
P「はい、その3人も出演予定です」
P「……このライブは、765プロの新世代を担うアイドル達をより高くはばたかせるために用意されました」
P「ここでファンをしっかりつかめれば、一気に駆け上がることも可能かと思います」
ジュリア「へぇ、それは楽しみじゃないか」
P「出演の順番ですが、トップバッターを頂きました」
P「このライブで、あなた方の能力を全部見せてください」
P「最初のほうは印象に残りにくいなどと言われますが、それを打ち破るくらいのパワーを見せてみてください」
可奈「よーし、がんばるぞー♪」
静香「世界に行くのならそのくらいできないとね、ジュリア?」
ジュリア「……なんであたしにふった? まぁ、期待には応えてみせるよ」
P「ここから1か月は、ミニライブやラジオ出演、そしてさらにレッスンもあります」
P「仕事は少ないですが、忙しい1か月になりますので、みなさん体調をしっかり管理して、合同ライブに臨みましょう」
ジュリア「まかせておけ」
可奈「はーい!」
静香「分かりました」
可奈「あの、プロデューサー!」
P「なんでしょうか?」
可奈「その事務的な敬語やめませんか?」
P「これが適切な距離だと前にも……」
可奈「けど、これから4人で力を合わせて頑張るなら、プロデューサーとの距離、もう少し近いほうがいいと思うんです」
P「はぁ……」
静香「まあ、仕事中はともかく、こういう時ならいいんじゃないですか?」
ジュリア「どうせなら、名前呼ぶ時も呼び捨てにしてみればいいんじゃないか」
P「ユニットの仲がいいことを喜ぶべきなのでしょうか……」
静香「ほら、まずは呼び捨てにしてみたくださいよ」
P「し……ズ……か……」
静香「なんかかたことですけど、まあいいです」
ジュリア「ほらあたしも、3……2……1……」
P「ジュ、ジュ、ジュリア」
ジュリア「……躊躇いがあるけど、許してやる」
可奈「じゃあじゃあ! 私も呼び捨てで!」
P「……可奈」
可奈「わーい!」
静香「ちょっとプロデューサー、可奈だけすごく流暢に呼び捨てしましたよね?」
P「可奈さ…… 可奈は、前々から下の名前で呼んでいたので……」
ジュリア「なーんか気に食わない」
静香「ええ、そうね」
可奈「そうかな? プロデューサー! もう一回!」
P「可奈」
可奈「わーい!」
静香&ジュリア「「……くっ!」」
P「ええっと……、私……、俺も呼び捨てにするの頑張るから、みんなもライブに向けて頑張ろう」
可奈「はーい!」
ジュリア「まぁ、がんばるよ」
静香「任せてください。やるからには、全力でやります」
―――1か月後・合同ライブ前日・765プロ事務所―――
ジャーン、ジャラーン ~~~♪♪
ガチャン
静香「お疲れ様ジュリア」
ジュリア「なんだシズか。どうしたんだ?」
静香「はいこれ。プロデューサーからよ」
ジュリア「なんだよ、突然」ガサガサ
ジュリア「……マニキュアか。ん? もう一つ何か入ってるな」
『ジュリアへ、ライブ関係の営業で直接渡せないが、俺からのプレゼントだ』
『ギタリストは指が命だから、大切にしてほしい byプロデューサー』
ジュリア「あのバカP、そのくらい分かってるよ」
ジュリア「しかし、あいつが敬語使わないの面白いな」
静香「完全に敬語が抜けたのに面白いってどういうことかしら」
ジュリア「3か月くらいずっと堅苦しい敬語だったからな、ギャップって奴だろ」
静香「最初の頃なんて、『ミニライブ頑張ってくださいだぜ』とか言ってたわね」
ジュリア「あれはあれで面白かったな!」
静香「……ジュリア、ずいぶん前とプロデューサーへの態度変わったわよね」
ジュリア「そういうシズだって、最初はプロデューサーなんていらないって言っていただろ」
ジュリア「今じゃあいつのお遣いまでやってるのに」
静香「最初は信頼してなかったわよ? あの人だけでなく、大人自体」
静香「けど、前より信じても良いって思えるようになったわ」
静香「それでいいんじゃないかしら?」
ジュリア「……そうだな、少なくとも4か月前よりは2人ともマシさ」
静香「……ジュリア、明日のライブ、成功させましょうね」
ジュリア「もちろんさ、シズ」
静香「……フフ」
ジュリア「フフフッ……」
ジュリア「そういえば、シズはプロデューサーから何貰ったんだ?」
ジュリア「アイツが、あたしだけにプレゼントくれる訳ないしな」
静香「当ててみれば?」
ジュリア「どうせ、うどんだろ」
静香「……どうして分かったの?」
ジュリア「シズっていったらうどんだろ。千鶴の肉とか、ヤッコのもやしと同じで」
静香「私って、そんなイメージだったの……!?」
ジュリア「『お昼はどのうどんにしますか?』って言ってればそうなるだろ」
静香「私、このライブ終わったらうどん禁止にするわ」
ジュリア「やめておけ、ライブ失敗する」
静香「……くっ!」
ジュリア「チハの真似かよ。あ、そうだシズ。これから歌詞の確認やるけど、一緒にどうだ?」
静香「いいわね。可奈も呼んできて、3人でやりましょうか」
ジュリア「そうだな、ユニットでやったほうが良いかもしれない」
静香「じゃあ、可奈呼んでくるわね」
バタン
ジュリア「ああ、頼んだー」
ジュリア「さてと、明日もこのギター使うし、シズが来るまで手入れしておくか」
ジュリア「……明日はがんばろう!」
―――次の日・765プロ劇場―――
スタッフA「照明、あとで少しずらすぞー!」
スタッフB「音響の最終確認入りまーす!」
ジュリア「すごいな……」
静香「今までのライブと規模が違うわ……」
可奈「劇場、やっぱり大きいね……」
P「みんな、調子はどうだ?」
ジュリア「まずまずかな」
静香「声はよく出るように感じます」
可奈「昨日はちゃんと早く寝たので大丈夫です!」
P「そうか、なら心配はないな」
P「みんなで、最高のライブにしよう」
3人「「「はい!」」」
スタッフB「すみませーん!ジュリアさん」
静香「ジュリア、呼ばれてるわよ」
ジュリア「分かってるよ。はい、なんでしょうか」
スタッフB「このライブのトップバッター、ジュリアさんのソロなんで、もうギターもステージに置いてもらっていいですかね?」
スタッフB「それと、ギター使っている状態でもう一度確認したいので、一番だけ弾いてくれると」
ジュリア「分かりました。じゃあギターとってきます」
スタッフB「お願いします」
~~~リハーサル中~~~
ジャーン、ジャーン、ジャカジャカ
ジュリア「すみませんーん! 音の返しもう少し大きくしてくれますか?」
スタッフB「わかりましたー! これでどうですか?」
ジャーン、ジャカ
ジュリア「大丈夫です!」
スタッフB「はーい! じゃあ、ギター置いてもらって、袖にはけてください」
スタッフA「よーし、最終のリハ終わったから、上の照明ちょっと移動させるぞ!」
ジュリア「おっと、あたしはさっさと戻らないと」
P「おつかれジュリア、ギターの音もいい感じだし、期待できるな」
ジュリア「ああ、今日は指も動くし、あとはどのくらい緊張しないで済むかだな」
P「確かに劇場は大きいけど、いつもどおりやればいいんだぞ」
ジュリア「はいはい、分かってるよ。自分らしく気楽にやるよ」
P「そうだ、ジュリア。このライブが終わったら少し話があるん」
ガッッシャーーーン!!!!!
ジュリア「!!!?!? なんだ!?」
スタッフA「おい! 照明が落ちたぞ! 下にだれも居なかったか!?」
スタッフB「大丈夫です! 下には誰もいませんでした!」
スタッフB「ただ……」
ジュリア「……」
ジュリア「……」
ジュリア「あたしの……」
ジュリア「あたしのギターがっ!!!」
P「おい! ジュリア! ステージはまだ照明の残骸が散らばってる」
ジュリア「放せっ! 放してくれっ!!」
P「やめろ!」
スタッフB「今、照明を片付けるから! 少し待っていてくれ!」
ジュリア「そんなの待っていられるかよ! ギターが下敷きになってるんだぞ!」
静香「……ジュリア、落ち着きなさい」
ジュリア「……だって!」
P「今、君が騒いでもどうにかなる事じゃない」
ジュリア「……」グッ
P「いい子だ。すみませんスタッフさん、何分くらいで作業終わりますか」
スタッフ「20分あれば完璧に!」
P「よろしく、お願いします」
ジュリア「……」
可奈「ジュリアさん……」
~~~20分後~~~
スタッフB「照明の撤収、完了しました!」
P「……」
静香「ネックが……」
可奈「完全に折れてる……」
ジュリア「……グスッ うぅ……」
可奈「な、泣かないでジュリアさん……」
ジュリア「うぅ…… ヒクッ……グズッ……」
静香「ジュリア……」
P「……」
静香「プロデューサー、どうするんです? あと少しで開場時間ですよ?」
静香「ジュリアはトップバッターだし、今からギター買いにいってたら間に合わないし…… 開演、遅らせますか? それともジュリアの順番を後に回して」
P「……いや、その必要はない」
P「静香と可奈は、ジュリアの化粧直しを手伝ってやってくれ」
静香「プロデューサーはどうするんですか?」
P「少し、行くところがある。開演までには戻れるから」
静香「……わかりました。ジュリア、立てる? さぁ、化粧直しに行くわよ」
ジュリア「ああ…… グズッ……ヒック…… グズッ」
~~~控え室~~~
可奈「よ~し! これでお化粧は大丈夫だよ!」
静香「だいぶ落ち着いたかしら、ジュリア?」
ジュリア「ああ、さっきは見苦しいところ見せちゃったな……」
静香「そんなことないわよ」
可奈「うん、私も大切なもの壊れたら絶対泣いちゃう」
ジュリア「……まさか、ライブ直前に壊れちゃうとはな」
ジュリア「あのギター、プロデューサーがプロ時代に使っていたやつを、オーダーメイドで再現してもらったものなんだ」
静香「……それは、知らなかったわ」
ジュリア「あの人は、あたしの憧れだったんだ」
ジュリア「突然やめて、突然アイドルプロデューサーになって、最初は訳わからなかったよ……」
ジュリア「けど、ギター教えてもらったり、一緒に頑張ったりして、やっとあのギターで世界目指そうって思えたのに」
可奈「……」
ジュリア「ライブ前にこんな湿っぽい話はダメだな。そろそろ開演になるし、袖でプロデューサー待とう」
~~~開演10分前・舞台袖~~~
可奈「プロデューサーさん、来ないね……」
静香「残り10分……」
ドタドタドタドタドタドタドタドタ
P「はぁはぁ、間に合った!」
ジュリア「さっきは、すまなかったプロデューサー」
P「別に気にすることじゃないさ。ジュリア、これ、代わりのギターだ」
P「俺が、プロになった時に買ったレスポールだ。ちゃんと整備はしてある」
ジュリア「おい、そんな大切なもの使って大丈夫なのか?」
P「たしかに、このギターは大切なものだ。俺の、ギタリストとしての夢が、このケースの中に詰まっている」
P「ジュリア、それをお前に託す!」ニッコリ
P「もしよければ、世界中のステージ行くまで、使ってほしい」
ジュリア「プロデューサー……」
P「可奈、静香、ジュリア。お前たち3人は、俺の、プロデューサーとしての夢だ」
P「ステージは孤独だと思えるかもしれない、そんなときは隣にいる仲間を見ろ」
P「俺はステージには立てない。けど、しっかり見ている。寂しくなんてない」ギュ
ジュリア「な、なんだよ! いきなり手を握って!」
P「おまじないだ。静香と可奈も、ほら」
静香「ちょっと恥ずかしいけど……」ギュ
可奈「えへへ……」ギュ
P「このステージ、お前たちに後は託した!」
P「偉大なアイドルユニットの一歩目だ!」
P「全力でファンを惹きこめ!」
P「トップ目指すなら、そのくらいやってみろ!」
ジュリア「任せとけ!」
静香「期待に応えて見せます!」
可奈「よぉし、がんばりま~す♪」
P「よし、開演だ! 行って来い!!」
「「「はい!!!」」」
https://www.youtube.com/watch?v=Hstu1RmC0BU
.
―――後日―――
司会「では、発表します! 今年のIA大賞は……」
ワーワーワーワー!! オメデトー!!
・ ・
P「おめでとう。これで日本のアイドル界では、トップに立ったな」
可奈「やったぁ~! けど、まだ日本で一番になっただけですよ」
静香「プロデューサー、わざと日本を強調しましたね?」クスクス
静香「けど、どうせならこのまま夢を叶えに行きたいわね。まだまだやりたいことたくさんあるし」
ジュリア「自分で言ったことだし、きちんとけじめ付けてからギタリストに行くさ」
P「……三人とも、まだまだ上に行く気概はあるみたいだな」
P「実は、IA大賞受賞のご褒美で、ハリウッドに研修に行けるんだ」
可奈「え、本当ですか?」
静香「それじゃあ、プロデューサーが帰ってくるまでは活動休止かしら?」
ジュリア「ちょっともったいない気もするけど、仕方ないか」
P「おいおい、早まるな」
P「研修と言っても、そんなに時間とられるわけじゃないんだ」
P「どうかな? 活動の拠点をアメリカに移してみないか?」
ジュリア「へぇ、そいつは面白そうじゃないか」
静香「いいんじゃないですか?」
可奈「アメリカかぁ。おいしいお菓子あるかな?」ワクワク
P「誰も、反対する人はいないか」
P「じゃあ、決まりだな」
P「それじゃ、夢を叶えに行こうか」
「「「はい!!」」」
.
これで完結です。見てくださりありがとうございました
HTML化の依頼は、明日行います
乙でした
乙乙
乙っした
一言で言うとそびえ立つクソ
ただ、周りからボロクソ言われながら完結まで続けられるメンタルは素晴らしい
次はメアリー・スー系「以外」のSSをよく読んで出直してくれ
いいユニットだな、おつ
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません