ハーフドア生活(103)
※この物語はフィクションです。マネをする場合は各自治体の条例等を確認してから自己責任で行いましょう。
-焚き火編-
http://i.imgur.com/xOwcCaN.jpg
男「おー、ついた」
友「ゲッホ!ごほっ、かふっ!!」
男「お前なんでわざわざ風下に立ってんの?」
友「ち、違うよ!俺のいるところが風下になるんだって!!」
男「風属性だったんですね」
友「これ、木が湿ってるせいですごい煙出るよ!すっごい煙出るよ!」ゲホゲホ
男「まぁその辺で拾った流木だし・・・それにしても、ほんとそっちにばっか煙行くな」
友「ちくしょう!この風め!!」ゴホゴホ
男「風はお前向きじゃないか。よかったな」
友「向かい風じゃないか!」
男「にしても、こう、火っていうのは見てて神聖な気分になるなぁ」
友「そうだね」
男「これでコーヒーとか沸かして飲みたい」
友「素晴らしいじゃない!」
男「よし。じゃあちょっと家から水と珈琲持ってくるから、とりあえず湯を沸かしてみようか」
友「おお!なんかポットでも持ってきてくれるの?」
男「いや、こう・・・君の手に水を溜めてさ、それを直接火で炙っ」
友「えっ、死んでしまいます」
男「でもほら、湧水とか手で掬って飲むと美味いじゃん。それをこの焚き火で沸かしたコーヒーでやったらもっと美味くなると思いませんか?」
友「なるほど!頭いい!!」
男「よし、じゃあ水と珈琲を」
友「やめてください、死んでしまいます」
男「・・・それにしても、俺達火を扱うスキルがだんだん向上してる気がする」
友「なんていうかもう、ライターとか無くても虫めがねとかライターのフリントだけで十分火を熾せるようになったね」
男「やっぱ杉の葉は偉大じゃん」
友「杉の葉って焚き付けとして生まれてきたとしか思えない構造してるじゃん」
http://i.imgur.com/g8WGqfE.jpg ※参考画像
男「最初はさ、木に直接火を点けようとして失敗してたよね」
友「焦げるだけで全然火つかなかったね」
男「やっぱ、最初はある程度の火力で一気にやらないとダメなんだね」
友「うんうん」
男「だからさ、例え手で湯を沸かすとしても最初のうちに大火力で炙れば感覚とか無くなってきっと大丈夫じゃん」
友「死んでしまうじゃん」
男「・・・ところで、意識の高い我々としてはただ火を見つめるだけに留まらず、もっと色々とこの火を活用していくべきではないだろうか君」
友「ええ、もっとこう、火によってモノが変化していく様を見守りたいですね焼き芋とか」
男「焼き芋か・・・よし。ちょっとお待ち」
友「?」
数分後・・・。
男「持ってきた」
友「アルミホイル・・・えっ、芋?」
男「エビ」
友「この流れでなんでエビ?」
男「塩と酒振って包んできた」
友「もう美味そう」
男「これを焼こう」
友「素敵」
男「さ、手を出すじゃん」
友「死んでしまうじゃん」
・・・
男「美味ぇ・・・」モグモグ
友「ははは、美味い」モグモグ
男「でもエビなんて不味くするほうが難しいよね」
友「初めて食物を焼くっていう行為を行った人類もこんな感じだったんだろうね」
男「そんな昔にアルミホイルはねぇだろ」
友「えっ・・・あ、うん」
男「たまたま山火事なんかで焼け死んだ動物の肉食ったら『美味ぇ・・・』ってなったんだろうな」
友「なるほど」
男「だからほら、俺達もやってみるじゃん」グイグイ
友「やめてよ、なんでそんなに俺の手を焼きたがるの。手を焼くってそういうことじゃないよ」
男「進歩に犠牲はつきものだ」
友「そっか・・・えっ、ごめん全然言ってること分からない」
男「でも、焼くって一番原始的な調理方法だよな」
友「煮るって行為はまず器がないとできないからね」
男「俺達もそろそろネクストステージに駆け上がるじゃん」
友「うん」
男「とりあえず次は焚き火でお座敷天ぷらするじゃん」
友「レベル高いすぎるでしょそれは」
-焚き火編 おわり-
-ナイフ編-
男「十徳ナイフ買ったの」
友「わぁすごい」
男「これさえあればいろいろできるの」
友「楽しみだね」
男「さぁ手を出して」
友「またこの流れなんだね。嫌だよ」
数日後・・・
男「錆びたの」
友「わぁすごい」
男「見ろよこれ・・・買ってまだ1週間も経ってないんだぜ・・・」
友「パッと見『亡くなった祖父の遺品』って言われても納得の様相を呈しているよ」
男「まぁ・・・海辺で使ってたしね」
友「おまけにこれ、ナイフだけじゃなくて栓抜きとかコルク抜きもなんかグラグラしてるね」
男「ほんのちょっとこじっただけでこの有様ですよ」
友「これはひどい」
男「やっぱ、ビクトリノックスみたいなちゃんとしたツールナイフが欲しいですね。釣り用の小出刃は持ってるんだけど」
友「まぁ確かにアウトドア=ナイフ必携ってイメージはあるよね」
男「ナイフって基本的な道具だからさ、代用が効かないじゃん?」
友「うん」
男「ナイフがあればハシやコップが作れるけど、ハシやコップがあったってナイフは作れないだろ?」
友「うん・・・えっ、うん」
男「つまりナイフは偉大ってことだよ分かったかこのダボが」
友「えっなんで俺けなされてんの」
男「それにしても刃物を自分で作ってた昔の人は凄いよな」
友「日本刀とかオーバーテクノロジーと言っても過言ではないよね」
男「石とか動物の骨削ってナイフ作ってたとか荒々しいすぎるよな」
友「やばい昔のスケールが結構違った」
男「だから今日はナイフを作ろうね」
友「はい・・・えっ」
男「まずはその辺の石くれを拾います」
友「拾いました」
男「これを、他の石で叩いて割るのです」
友「俗にいう打製石器ってやつですね」
男「社会科の教科書に載っていましたね」
友「本当に作ろうとするのは君くらいのもんだよ」
男「いきますよ」
友「破片が飛んできたら嫌なので遠巻きに見守ってるね」
男「ウンバボ!!」ゴシャッ
友「原始人感出してきた」
男「木端微塵ですけど・・・木端微塵ですけど!!」
友「そりゃそうでしょうよ」
男「ウンバボ!!」バッ
友「ちょっと待ってなんで俺に向かって石を振り上げるのやめて」
男「・・・調べたところ打製石器は黒曜石などの硬く鋭利な剥片が出来やすい石じゃないとだめみたいですね」
友「なんか、もう一個石器あったよね。ちょっとずつ削って形作るやつ」
男「磨製石器ですね。社会科の教科書に載っていましたね」
友「そっち作ってみたらどうかしら」
男「もう石は飽きた」
友「えっ」
男「はい。それではこれから五寸釘によるペーパーナイフ作りに移行したいと思います」
友「最初からこれで良かったんじゃないかな」
男「まずは釘をコンロで炙って焼きなまししましょう。さぁ釘を持ちなさい」 ※焼きなまし=熱した鉄をゆっくり冷まして柔らかく(=伸ばしやすく)する
友「素手では死んでしまいます」
男「はい軍手」
友「防御力が低いすぎる」
男「ではペンチを貸してあげましょう」
友「うれしい」
男「ん、こんなもんかな」
友「金属が熱で赤くなってるだけで醸し出される鍛冶屋の雰囲気は相当なものである」
男「じゃ、これを金床の上に載せてトンカチで一生懸命叩きます」カーンカーン
友「なんで一般のご家庭に金床なんてあるんですかね?」
男「・・・去年俺の通ってた中学校が廃校になる折、美術室にあった備品を譲り受けてきたんだ・・・」カーンカーン
友「思いのほか悲しいエピソードを引き出してしまってごめん」
数分後・・・。
男「大体形になってきたかな」
友「ナイフ感出てる」
男「じゃ、一応焼き入れしてみようか。さぁ手を」 ※焼き入れ=熱した鉄を水などで急冷して固くする
友「死んでしまいます」
男「大丈夫だよ。焼き入れだから隣に水も置いておくし。獣の槍みたく人間成分入れようよ」
友「たかが五寸釘に俺の魂を宿そうとするのはお止しよ」
男「そしたら、後は研いで刃をつけませう」
友「はい砥石」
男「ダメだよちゃんと水に浸しておかなきゃ」
友「なんで?」
男「砥糞できないもの」
友「はぁ、砥糞」
男「砥石に染み込んだ水と削れた石粉が混じってできた泥みたいな奴・・・あれが無いと刃物って上手く研げなくってよ」
友「あ、そうなの。それにしても糞って」
男「見た目汚いからって洗い流しちゃダメだぜ」
友「はい」
男「ついでだからうちの包丁と釣り用の小出刃も研いでおくか・・・」シャーコシャーコ
友「遊びのついででやるものではないなぁ・・・」
http://i.imgur.com/UB1ELtN.jpg
男「研げた」
友「これ本当に切れるの」
男「まぁすぐに鈍るけど紙とかトマトくらいならスパスパ切れるよ。ほら手を出してごらん」
友「それ絶対俺にナイフを渡す感じじゃないよね。俺の手に何らかの傷を与えることを意図した感じだよね」ガクガク
男「昔の子供はこれをこうやって投げナイフにして遊んでたみたいだよ」シュッ
友「」スパッ
男「ほら見てごらん。これくらいの木の板ならこの通り」ブッスリ
友「ま、待って今俺を亡き者にする気満々だったよね」ガクガク
男「大丈夫大丈夫。一機減るだけだから」
友「んもぅゲーム脳」
男「よい子も悪い子も真似しちゃだめだぜ。下手したら刑事いく」
-ナイフ編 おわり-
-燻製編-
男「一斗缶で殴り合うゲーム!!」
友「えっ」
男「まずは俺のターン!!」ガンゴンボイン
友「ちょ、やめ・・・ウボァー!!」
男「冗談です」
友「実際に殴っておいてそれは無いよ」
男「まぁ聞き給えよ。これから話す俺のアイディアを聞いたら、一斗缶で殴られた痛みなんて天竺まで吹っ飛んじまうぜ?」
友「何の罪もない天竺の人達かわいそう」
男「今日はね、この一斗缶を使って燻製をつくります」
友「やっべーすごいときめいた!天竺の人ゴメン!!」
男「えーとね、一斗缶を2つ用意して、1段目でチップを燻して2段目に食材を入れて燻す、と」
友「なるほど」
男「とりあえず、フックや網を乗せるための金串を一斗缶に突き刺そうね」
友「はい」
男「地獄へ落ちろ!!」ブスッ
友「唐突なブラック・エンジェルスごっこは本当に心臓に悪いのでやめてください」 ※分からない人はオッサンに聞いてみよう
<トンテンカンテン…
友「できたー!ちょっと不恰好だけど」
男「いんだよ、細けえ事は」
友「ちなみに燻す食材はどうするのです?」
男「それはこれから二人で買いにいきましょう」
友「うん」
男「俺がジャンケンで勝ったら君が食材費を出す、もし俺が負けた場合は君が食材費を出すってことでいいね」
友「救いはないんですか・・・」
・・・
友「何燻しましょうかね?」
男「えーと、とりあえずササミとサーモンなんてどうだろう?」
友「美味しい」
男「あとはチーズとゆで卵も美味しいらしいね。それと豚バラ肉もベーコンっぽくなって美味しいかも。あ、あとタコとホタテの刺身も燻しましょうよ!」ドサドサ
友「お金が、お金が無くなってしまいます・・・」
・・・
男「よーし、セット完了!!」
友「これ、味付けなくていいの?」
男「本当はソミュール液っていって、スパイスや塩なんかを調合した調味液に一晩くらい浸しておくんですよ」
友「なるほど」
男「あと肉なんかは、燻す前に軽く乾燥させるとよろしいようで」
友「どちらもこの食材たちにとっては未体験ゾーンですね」
男「大丈夫だよ塩振っておいたし。塩の力を信じろ」
友「うん、わかった!」
男「えーと、それじゃあモクモク燻しますか。フリーザ様の為に」
友「なんでフリーザ様?」
男「じゃ、点火しまーす」
<モクモク
友「ちなみにこれ、どれくらい時間かかるの?」
男「んー、このタイプの燻煙は10分~1時間もあれば十分みたい」
友「どのタイプですか」
男「熱燻っていって、高い温度の煙で燻しながら燻製をつくるタイプですね」
友「理解しました」
男「それに対して煙の発生源と食材を離して、煙の温度を下げて燻していくのを冷燻というそうです」
友「なるほど」
男「だから店で売ってるような生っぽいスモークサーモンは、きっと冷燻で作られているのだろうね」
友「えっ、じゃあさっき入れたサーモン焼き鮭になっちゃうんじゃ・・・」
男「よし、生ものは早めに出しておこう。はい手出して!」
友「熱い熱い熱っち!いけませんよこれは!!」
・・・
http://i.imgur.com/Vund2wW.jpg
男「ホタテ予想外に美味そう」
友「食ってないけどもう美味い」
男「ていうかなんか君まで香ばしくなったね」
友「そりゃあんだけ煙に包まれればね・・・」
男「青雲それは、君が見た光」
友「僕が見た、希望」
男「やっぱり煙に愛される星の下生まれたんだよ君は」
友「煙い人生だなぁ」
男「よっ、いぶし銀人生」
友「演歌のタイトルみたい」
男「とりあえず食べましょうか」
友「あっホタテ美味い。これもう生まれ変わったら燻製になるわ俺」
-燻製編 おわり-
-遠出編-
男「サーイクリング♪サーイクリング♪」キコキコ
友「ヤッホー♪ヤッホー♪」キコキコ
男「サーイクr・・・」
<パパァン!!
友「」
男「」
・・・
男「ウォーキング・・・ウォーキング・・・」ノタノタ
友「ヤッホー・・・ヤッホー・・・」ノタノタ
男「誰だい?あんなところに有刺鉄線を打ち捨てたのは・・・」
友「呪いの力でころころしたい・・・」
男「これ、家までまだ15kmくらいあるぞ・・・」
友「いま何時?・・・4時!!」
男「あと1時間もしたら暗くなってしまうぞぉ」
友「パンクした自転車がこんなに重いなんて・・・」ズルズル
男「今となってはもう邪魔の他の何物でもない。走らない君に何の価値があるというのか!!」ビシッ
友「彼は悪くない、悪くないんだよ・・・」
男「近くに駅や自転車屋もないみたいですよ」
友「かといってここに置いてく訳にもいかないし・・・」
男「つまりこの状況から導き出される解はですね、あと15km自転車を手で押していくしかないってことですね」
友「えーと、多分これ時速4kmくらいだから・・・家に付くのは夜の8時ですか・・・」
男「俺達には野宿という選択肢も残されています」
友「その提案を繰り出すにはまだ時期尚早のように思われます」
男「どっか近道とかないの?」
友「待ってね、今地図見てる・・・あ、ちょっとこれ」
男「んん・・・」
友「ここをこうやってこの通りに出れば・・・多分、この分をショートカットできるから・・・」
男「お、本当だ・・・ってことは、この道なら2/3くらいの距離で済みそうだね」
友「じゃあ、こっち経由で帰ってみようよ」
・・・
http://i.imgur.com/NwEXhk6.jpg
男「これ、あれじゃない?俗にいう階段ってやつ」
友「ははは、上が見えない」
男「当然迂回路はオプションとして残されているんですよね」
友「俺達には今来た道を戻るという選択肢も残されています」
男「ちょっと手を出して。このチェーンとスプロケットの間に指挟み込んでやるから一番痛そうな感じに」
友「許しておくれよ一度きりの過ち」
男「じゃあ、じゃんけんで決めよう。負けたほうが自転車とここで運命を共にするの」
友「そんな重いじゃんけんいやだ!!」
男「出さなきゃ負けよ!ジャケポッ!!」バッ
友「ジャケポッ!?」サッ
男「すごい、後出しのうえに負けてる」←チョキ
友「そりゃそんな唐突にじゃんけんふられたら・・・」←パー
・・・
男「自転車は人を乗せる物であって人に乗せる物ではないのに・・・」ヨッコイセ
友「きっといいトレーニング」ヨッコイセ
男「急がば回れって本当なんだね」
友「昔の人は上手いこというよね。俺達は先人の知恵に倣うべきだよ」
男「ていうかこれ、パッと見自転車泥棒以外の何者でもないよね」
友「むしろ自転車泥棒じゃないって説明するほうが難しいよこれ」
男「・・・よし、グリコしながら登ろう」
友「な、なんで自転車担いだ状態でグリコしなきゃいけないんですか・・・」
男「ジャケポッ!!」←グー
友「あっずるい!!」←チョキ
男「また後出しで負けてる」
友「身体が脳の指令を勘違いしてる・・・」
男「じゃ、俺の勝ちー。・・・グー、リー」トントン
友「本当にやるのか・・・」
男「・・・フィンドォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーール!!!」タッタッタ
友「ルール無用じゃないか!あぁそんな一気呵成に駆け上っちゃって!!」
男「この先に俺の未来がある!!」タッタッタ
・・・
男「」ピクピク
友「生きている人はいますか?」ヨッコイショ
男「い、息が・・・血の味を含んでいる・・・」コヒューッコヒューッ
友「それ死ぬ感じのやつじゃないですか・・・」
男「でも、登り切ったぜ・・・みたまえ、下界の景色を」
http://i.imgur.com/VDRvAP7.jpg
友「・・・おぉー!いい眺め!!」
男「石畳の階段に夕暮れの海!青春みたい!!」
友「本当だ!青春感ある!!さらに横にある自転車と流れる汗で青春度増してる!!」
男「隣にいるのが美少女じゃなくてお前っていうのがほんと生々しい」
友「あぁなんだか一気に疲れが・・・」ゲンナリ
・・・
男「もうかなり歩いたはずだけど・・・」
友「あ!ここいつもの大通りに続いてる道じゃない?」
男「あー、そうかも。暗くて気付かなかった」
友「成し遂げました我々は!」
男「それでもまだ家まで2kmくらいあるんですけどね」
友「それにしても、あれだね。普段通ってる道でも暗いと全然雰囲気変わるよね」
男「夜の路地散歩とか楽しくて好き。・・・ところでさっきからかなり高レベルのグッドスメル漂ってない?」
友「うん。超お腹空く匂いしてる」
男「・・・赤提灯がある。あそこですかね」
友「あら、こんなところに焼き鳥屋なんてあったんですね」
男「ちょっと、お買上げしていきませんか?」
友「異存はございません」
男「ご馳走様です!」
友「えっ」
男「ご馳走様です!!」
友「頑な!!」
-遠出編 おわり-
-釣り編-
男「毛鉤つくりましょう」
友「よっ職人」
男「まずは俺の部屋に行きます」
友「はい」
男「では、部屋を片付けましょう」
友「そこからですか・・・」
男「・・・大分片付いたかな」
友「ダイソンうるさいです」ブオオオーーーーーーーーーーーーッ!!
男「すごいでしょ。暴走族みたいでしょ」
友「次はどうしましょう?」
男「あ、その前にベッドの下もちゃんと掃除機かけてくれ給えよ」
友「あっ、えっちな本が出てきました。貸してください」
男「んもぅ」
友「・・・こんなもんかな?」
男「はい、そしたら掃除機の中の吸い上げたゴミを漁ります」
友「えっ」
男「あのね、こういう布団から出てきた羽毛を集めて」
友「ホコリまみれできたないよ」
男「暴れ陰毛に気をつけろ」
友「なにそれ絶対怖い妖怪の類」
・・・
男「思ったより少ないかった」
友「次はどうするの?」
男「はい、じゃあこの釣鉤をラジオペンチでつまんで持ってて」
友「はい」
男「本当は釣鉤を固定するためにバイスとか使うんですけどね。今日は君がバイス代わりだ」
友「無機物としてがんばる決意」
男「はい、そしたらこう、羽毛の先っちょが虫っぽくなるように釣鉤に糸で巻き付けていきます・・・おい手元を揺らすな」
友「はい」
男「本当はここもプライヤやボビンホルダーを使って糸を巻いてくんだけど。でもいいの、俺にはお前がいるから・・・」
友「熱い告白」
男「揺らすなって言ってんだろ滅ぼすぞ!!」
友「ごめん許して」
男「・・・最後に糸を巻いた部分をアロンアルファでなんとなくくっつけます」
友「こんな簡単でいいんだ」
男「ダメだよ」
友「えっ」
男「まーこれで釣れたらラッキーくらいの気分で」
友「そんなぁ・・・」
男「さぁ行くざますよ」
・・・
友「川のせせらぎは気分が和むなぁ」
男「ファックファックシットシット!!」
友「小鳥のさえずりに混じって超汚い言葉も聞こえてきますね」
男「一投目で壊れたぜ。それも着水と同時に」
友「電光石火すぎるじゃない・・・」
男「あ、ちょっとそこにいるカエル捕まえて。エサにするから」
友「結局エサ釣りなんですね・・・はい捕まえたよ」
男「ん、じゃあそれ握ったままこっちへ」
友「はい」
男「手を出して」
<グニュポキャヌチ ←カエル握った手を上からさらに握る音
友「あああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
男「いい感じに息絶えましたね。君の手の中で」
友「やめてくれよ!!」
男「ど、どんな感触だった?」ドキドキ
友「軟骨が折れて潰れた内臓が指の隙間に入ってくるような感触だよ!!」
男「川が近いのですぐに手が洗えます。よかったですね」
友「鬼!悪魔!人の皮!!」バシャバシャ
男「それにしてもカエルって、なんでこんなに惨殺される運命を辿るんだろうなぁ」
友「なんでそんな他人事なの」
男「ケツストローやケツ爆竹・・・主にケツに何らかの被害を被ることが多いよね」
友「カエルに生まれ変わったらケツにだけは気を付けよう」
男「多分お前オタマジャクシの段階で死ぬだろ」
友「じゃあケツとヤゴに気を付ける」
・・・
男「釣れませんでしたね」
友「結局無駄にカエルを殺しただけでしたね」
男「無駄じゃないよ。あのカエル、きっと今頃はどこかの魚の胃袋に収まってやがて血となり肉となる」
友「俺たちが彼を殺さなければ今頃彼は草むらでハエとか食ってたんだろうなぁ」
男「彼は生きているよ、俺たちの心の中で・・・」
友「そんな。あんなことやっといてどの口がいうの。ていうかある意味俺も被害者なんだけど」
男「・・・あっ、あそこ!!」
友「えっ?ああ!魚が打ち上げられてる!というか堰の石垣に突き刺さってる!すごいシュール!!」
<ピチピチピチピチ
男「・・・コイツ、堰を跳び越えるつもりでジャンプしたんだろうけど、こんな結末は予想だにしていなかっただろうな」
友「ドジっ子だぁ」
男「よーし、引っこ抜いて持って帰ろう!」スポ
友「すごい。このカットだけ切り抜いたらどう見ても漁業に見えない。むしろベクトル的には農業だよこれ」
-釣り編 おわり-
ここまでのハイライト
http://i.imgur.com/lChnshq.jpg
http://i.imgur.com/6nn2AQG.jpg
http://i.imgur.com/N6FPd94.jpg
http://i.imgur.com/NmcPjSP.jpg
次で終わりです
最後は工作します
-ビバーク編-
男「ところで、今日は泊まっていくでよろしいか?」
友「ええ。明日はバイトも休みですし問題ございません」
男「実は、今日の夜はやってみたいことがありまして」
友「ほほう、楽しみですね。お付き合いさせていただきますよ」
男「では、手を出して」
友「なぜそこでナイフを手に取るんですか」
・・・
男「これをご覧なさい」
http://i.imgur.com/ybCJZ2h.jpg
友「これはポンチョですか?」
男「いいえ、これはペンです」
友「えっ、ペン・・・?えっすごいどうしたらペンになるのこれ?」
男「ポンチョです」
友「えっ・・・あ、はい」
http://i.imgur.com/C3TrF9O.jpg
男「ここに穴があいているでしょう?」
友「なんだかロープとか通せそうな感じですね」
男「ご名答!じゃあ今夜は君がこれを使っていいよ!!」
友「えっ」
男「このポンチョ、棒とロープがあれば簡易テントにもなります。ツェルトみたいなもんですね」
友「へー・・・えっ」
男「というわけで、今夜は下の納屋でビバーク演習を行いますおぎゃー」
友「おぎゃー!」
男「はい、これ君の分のシュラフね」
友「マジなのですか」
男「納屋でバーベキューして、その横でお酒飲んで寝るんです。きっと楽しいですよ」
友「本当に楽しそうだと思った自分に無限の可能性を感じる」
・・・
男「と、こんな感じでテント設営完了!!」
友「狭い!!」
男「あんまり空間が広すぎると、保温効果が良くないとの由」
友「なるほど。まぁ狭いところ嫌いではないのでこれはこれで」
男「ちなみに俺は車の中で寝ます」
友「格差社会」
男「それでは、本日はシュラスコでもいたしましょう」
友「もうその名前聞いただけで素晴らしい夜の訪れを予感した」
男「ここに昨夜から仕込んでおいた肉があります」
友「しゅごい」
男「牛肉をオリーブオイル、塩コショウ、白ワイン、レモン汁、玉ねぎ、セロリ、ニンニク、引き出しの奥にあった謎のハーブで一晩付け込みました」
友「そのハーブ合法のやつですか」
男「多分ローズマリー的な何かですが、結果は神のみぞ知る」
友「些かのギャンブル成分に胸がときめきます」
男「あとは、さっき捕まえたイワナっぽい魚と、冷凍のイカも白ワインとレモン汁に付け込んでおきましょう」
友「既に美味しそう」
男「もうハーブが無いので、SBのカレー粉を一緒にブチ込みます」
友「カレー粉考えた人ってえらい」
男「これがあればサバイバルでもカエルが美味しくいただけます」
友「先ほどの事件のことを思い出すのでカエルの話はお止めくださいまし」
・・・
男「それでは、カンパーイ!!」
友「カンパイ!!」
男「シュラスコは焼けたらパンに挟んで食べるのです」
友「一緒に添えられたトマトとパセリが超オサレ」
男「このユニットだけでイタリア料理界席巻できそう」
友「トマトプリッツ最強説」
男「トマーテプリッツァーってエセドイツ語風味にするとほんと強そう」
友「あ、ビールおかわりありますか」
男「ございますよ」
友「納屋でやってると冷蔵庫からすぐに冷えたビールが取り出せていいですね」
男「おまけに水道が近いから手を洗ったり料理するのも楽だし。いいことずくめですね」
友「アウトドアとインドアの中間って感じだね」
男「ハーフドアですね」
友「半ドアか・・・」
男「はい、じゃあビールの空き缶貸して」
友「あ、じゃあ潰しますよ」メコリ
男「潰すな!潰すぞ!!」
友「はい!・・・えっ!・・・えっ?」ビクッ
男「そのまま俺の手に渡すんだ分かったかこのダボが!!」
友「おっ俺はただよかれと思って・・・かたじけナッシン」
男「・・・はい。じゃあこれからこの空き缶を使ってアルコールバーナーをつくります」
友「何それかっこいい」
男「ここから俺は夜のわくわくさん」
友「尋常じゃないくらい卑猥なもの作り上げそう」
男「用意するものは空き缶と缶切りとハサミです」
http://i.imgur.com/NdcOdYo.jpg
友「はい」
男「まず缶切りで空き缶の飲み口側の面を全て切り落とします。こっちが火の付く側になります」
http://i.imgur.com/yVpiauk.jpg
http://i.imgur.com/xcBBYa6.jpg
友「缶切り使うの久しぶりです」キコキコ
男「そしたら、ハサミで缶をだいたい3~4cmくらいの高さになるように2つに切ります。飲み口側の缶が若干長くなるように切ってね」
http://i.imgur.com/tdBc8ZL.jpg
http://i.imgur.com/DEQBkIO.png
http://i.imgur.com/e2fL7N2.png
友「まだ完成形が見えないですね」チョキチョキ
男「次に飲み口側に、ハサミを押し当ててこんな感じに溝を付けます」
http://i.imgur.com/rVWG3Kk.jpg
http://i.imgur.com/ngCwHXj.jpg(※缶がぶっ壊れたので前に作ったやつ)
男「最終的にここから気化したアルコールが出て火が付くから、なるべく均等になるようにね」
http://i.imgur.com/BdoCHbQ.png
男「こんな感じで対角線上に8箇所くらいの位置に溝をつけるのがいいよ」
友「はい」メコメコ
男「缶の上部にハサミでこじって4か所くらい空気が通る孔をあけます。このときパワーを込めすぎると缶が壊れちゃうよ!」
http://i.imgur.com/FIed5vq.jpg
友「これ、缶を真っ直ぐに切るのが地味に難関だね」
男「そういう場合は事前に糸などを缶に巻きつけてマジックで目印を引いておくといいんだ」
友「なるほど」
男「最後に、溝をつけた方の缶をもう一つの底がある方の缶の中に押し込んで・・・」
http://i.imgur.com/ku9ThCn.jpg
http://i.imgur.com/IEe53kk.jpg
男「はい、これで完成!」
友「へー」
男「ね、簡単でしょ?」
友「これでちゃんと火が付くの?」
男「あたりまえだろダボが!ぶちころがすぞ!!」
友「すごい怒られた」
男「中には薬局で売ってる燃料用アルコールを入れます。ちなみにメチルアルコールなので飲むと死にます」
http://i.imgur.com/64qkL4b.jpg
友「実験室に良く似合うタイプのボトルだね。・・・ちなみにこれウォッカとかでもいいんですかね」
男「酒税がかかっても気にしないというブルジョワな方は、アルコール度数が高いスピリタスなどを使ってもよいでしょう」
友「ジッポオイルとかは?」
男「死にます」
友「えっ」
※燃料は必ずアルコールを使いましょう
男「それでは缶の中にアルコールを注いで火をつけてみたいと思います」
http://i.imgur.com/dDvvNRb.jpg
友「しゅごいのおおおお!これしゅごいのおおおおお!!!」
男「アルコールが気化し始めると先ほどつけた溝からこんな感じで火が出るんだ。上手く燃焼しない場合は缶の高さや溝の深さなどを調整してね」
友「正直出来上がりを見た時はあーハイハイなるほどねって感じだったけど、実際に火をつけたら予想をはるかに上回っていたよ!!」
男「どうだいゴロリ?わくわくするだろう?」
友「あっ俺ゴロリ枠だったんだね」
男「ベーコン焼こうベーコン」ジュー
http://i.imgur.com/u3ZnXMD.jpg
友「幸せのハーモニー」
男「シメはこれで鶏肉とキノコをぶち込んだスープを作るよ」
友「うわぁ、これで君が『よし、次はアレ出すか』みたいな感じでなんか新しいもの持ってきてくれたら俺もう死んじゃうかも」
男「よし、次はオシッコ出すか」
友「あぁ違う・・・」
・・・
男「じゃ、宴もたけなわではございますが、そろそろ寝ますよ」
友「待って待って!」
男「おやすみ」
友「これ俺こんな薄いシュラフで地べたに寝るの!?めっちゃ固いしめっちゃ冷たい!!」
男「ははは、よくあるよくある。ナイスジョーク」
友「そんな笑って済まされるようなチャメシ・インシデントじゃないんです!!」
男「あ、じゃああのドラム缶の上にさぁ、発泡スチロール積んであるでしょ?」
友「えっ、うん・・・」
男「あれ敷いて寝ていいよおやすみ・・・」
友「待って待って!!」
男「夢の中へ、夢の中へ、行ってみたいと思いませんか」ムニャムニャ
友「これじゃ俺フフッフーできない!!お願いだから寝ないで!!」 ※分からない人はオッサンに聞いてみよう
・・・
男「うーん、やっぱり軽自動車の中で横になるのは文字通りキツイな。身体が痛い・・・Yo buddy. You still alive?」
友「寒い・・・寒い・・・」ガチガチ
男「キンキンに冷えていらっしゃる」
友「バーベキューの残り火が消えたら一気に寒くなって・・・」ガチガチ
男「このまま発泡スチロールに詰めたら鮮度維持したまま出荷できるね」
友「死んじゃう・・・死んじゃう・・・」ブルブル
男「よし。それでは現在をもってビバーク演習は終了とする」
友「あばばばば」ガクガクガクガク
男「部屋に戻って寝よ」
友「よかった、これがガチのアウトドアじゃなくて本当によかった・・・」
男「これぞハーフドア生活の醍醐味ですね」
友「は、はやくお布団で寝たい・・・」ガクガク
-ビバーク編 おわり-
おしまいです
みんなも家の中でアウトドアっぽいことやろうぜ楽しいぜ事故には気をつけてねお兄さんとの約束だ!!
http://i.imgur.com/ZKn875M.jpg
乙!!
>1の書くやつはみんな好き!!
もっと続けてくれてもいいのよ?
宇宙感ある
おつー
毎度毎度素晴らしいクオリティのssやね
乙!今回も面白かった!
絵がすごくいいんだよなあ
過去作あるの?教えてほしい
ちょっとまずいメシの人か
今回も楽しかったわ、乙
アルコールバーナーとか今度作ってみたい
>>98
溝のとこは出来上がった後ちょっとフォークとかでえぐるといいよ!
近いうちに落書きで漫画描いてあげようと思います
淡々の人だよね
マジで何者なんだ…
>>96
サバゲのとかとか
乙乙
こういうこと書いてる自由帳はどこに売ってますか?(真顔)
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