【ラブライブ!】海未「わ、私の誕生日……?」 (165)

ラブライブ! のSSです。

以前書いた

【ラブライブ!】凛「海未ちゃんにチョコをあげるにゃ!」

の続き。

ですが見ても見なくても大丈夫です。

うみりん。

設定のねつ造あり。

見にくかったらごめんなさい。

それでもいいよという方よろしくお願いします。

以上注意事項でした。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1424778013

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


──前回のラブライブ!──


ことり「日頃の感謝を込めて、海未ちゃんにバレンタインチョコを作った凛ちゃん!」

穂乃果「勇気を出して海未ちゃんに渡しに行ったんだけど……」

ことり「人混みに巻き込まれてチョコがめちゃくちゃにぃ!」

穂乃果「でも、どーにかこーにか海未ちゃんにチョコを食べて貰えたんだよねっ♪」

ことり「うんっ♪」

穂乃果「お互いの気持ちを少しだけわかり合った二人!」

ことり「これからどうなる!?」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


少し時が流れて────


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──二年生教室、休み時間──


穂乃果「そう言えば、ラブライブや三年生のことで忙しくて聞いてなかったけど」

海未「はい、なにか?」

ことり「結局あれから進展はあったの?」ニコッ

海未「進展……?」

ことり「え?」

穂乃果「いい感じになったんじゃないの?」

海未「え、いや、その……」

海未「あれ以来あまり会話できていなくてですね」

ことり「えっと……」チラッ

穂乃果「あー、うん」チラッ

穂乃果「海未ちゃんは凛ちゃんが好きなんだよね?」ニコッ

海未「ほ、穂乃果!?」ガタッ!

ことり「海未ちゃん、ことりたち協力するよ!」

ことり「幼馴染みだもん! 水くさいのは無しにしようよ」ニコッ

穂乃果「そうだよ! 海未ちゃんのお悩みは穂乃果たちが解決しちゃうよ!」グッ!

ことほの『ことほのトラブルバスターズだよ!』ビシッ!

海未「なんですかそのポーズは……」

穂乃果「とにかくさ! 凛ちゃんとこう……」

ことり「一歩踏み出そうよ!」バンッ!

穂乃果「そうだよ!」

海未「ふ、二人とも……」

キーンコーンカーンコーン。


ことほの『あっ』

海未「──ほら、先生が来ます。早く席について下さい」プイッ

穂乃果「もー! なんだよ海未ちゃん、ノリが悪いなぁ」

ことり「きっと恥ずかしいだけだよっ♪」

海未(……穂乃果もことりも、勝手を言わないで下さい)


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──園田海未──


今でも時折思い出すのはμ'sをはじめた日のこと。

『いま流行りのスクールアイドルだよ!』

そう言って穂乃果が私とことりに雑誌を見せて。

あまりの眩しさに私はこっそり姿を消して……。

そんな私を穂乃果は追いかけて。

そして、過去の私は決まってこう言うんです。

『アイドルはなしです!』

……まあ、当たり前なのですが。

この出来事があり、今の私があるわけなのですから。


普通の女の子である海未ちゃんは、

恐かったのです。

アイドル海未ちゃんになることも。

アイドル挫折海未ちゃんになることも。

もちろん、今はやってよかったなって思います。

だからこそ、過去の自分を振り返った時に恐ろしくなるのです。

あの時、『穂乃果の可能性』を潰してしまったらどうなっていたのか。

μ'sというスクールアイドルは結成されることなく、

音ノ木坂学院は廃校になってしまったのではないか。

……園田海未のせいで。


去年の暮れの頃。

私はその想いをことりに打ち明けました。

「私は大変なことをしでかすところでしたよ、ことりぃ!」

──なんて半ベソで訴える私を、

ことりはケラケラ笑っていました。

「もう! 笑い事にしないでください!」

「ごめんごめん。でもさ、そう考えることってナンセンスじゃない?」

「そ、そんなことはないです」

「──だって海未ちゃんが止めたくらいで穂乃果ちゃんが止まると思う?」

親友のそんな言葉を聞いて、

「ああ、確かに」

と、妙に納得してしまう自分。

心に刺さった一本の棘が、ゆっくりと抜けていくのを感じました。


──でも、棘が抜けても海未ちゃんの本質は変わることはなくて。

例のシーンに対して別の想いがふつふつと沸き上がってきます。

『今の私だったら穂乃果になんと告げられるのだろうか?』

アイドル活動をはじめて、様々な出来事がありました。

その結果を知っている今ならば、

想像の中で『あのシーン』を変えることが出来るのではないか。

「わかりました穂乃果。私たちならA-RISEにも勝てます。共にアイドルの道を──」

なんて言えるようなスーパー海未ちゃんになれているんじゃないか。


なんて。

──いや。

ないない。

なんですかそれ。

そんな海未ちゃんは知りませんよ。

少なくとも、あの日のことを振り返ってみても、

──私はいまでも気の利いたセリフは言えない、普通の海未ちゃんなのです。

はぁ……。

人間とは変化を恐れる生き物です。

なにかの本にそう書いてありました。

普通の人間である普通の海未ちゃんもまた。


──ふと、グラウンドに視線を向けると、

一年生が体育をしていました。

音ノ木坂に一年生は一クラスしかないので、

それはなにをどう考えても凛たちがいるクラスです。

私は何も考えずにμ'sのメンバーを探して──。

……いました。

三人で楽しそうにバドミントンをしています。

何度かラリーを繰り返していましたが、

凛が力任せに打ったシャトルが大きく弧を描いて真姫の頭上を遥かに越えて行きました。

ごめんにゃー、と空を仰いだ拍子に目線が私の方に……。


い、いけません!

これでは私が凛を見つめていたことがバレてしまい──。

「おーい、海未ちゃーん!」

そんな風に口が動いて、大きく手を振る凛。

私は慌てて黒板に視線を移します。

恥ずかしい。

後で本人から突っ込まれた時、上手く誤魔化せるといいのですが。

大好きな凛の前ではクールでかっこいい海未ちゃんでありたいから。

……詰まるところ。

やっぱり私は恐いのだ。

変わることももちろんだけど。

それ以前に、

『あの日から何も変われていない』こと。


果たして普通の海未ちゃんはどれだけスーパー海未ちゃんに近づけたのか。

きっと、スーパー海未ちゃんなら普通の海未ちゃんが悩んでいることなんて、

はいはいはい! で吹き飛ばせるんだから。

凛と華麗にふたりハピネスできちゃうんだから。

……私だって、そうなりたいです。

なって、みたいですよ。

「ねぇ、今、凛ちゃんのことみてたよね?」

「穂乃果もそう思うよ……耳真っ赤だし」

うるさいですよ外野。

授業に集中しなさい。


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──校庭──


凛「にゃー? 海未ちゃん?」キョトン

花陽「凛ちゃんどうしたの?」

凛「ううん、なんでも──」

真姫「もう! 凛!? 飛ばしすぎ!」

凛「あははっ! ごめんにゃー」

花陽「真姫ちゃん、凛ちゃんがね……ごにょごにょ」

凛「にゃぁっ!? かよちん!?」

真姫「……あー、なるほどね」

真姫「ふんっ! どーせ、不意に見た空の青さを実感してたら」

真姫「海未色な誰かさんが目に入ったんでしょう!?」

凛「ち、ちがっ!」

凛(わない! 真姫ちゃんエスパー!?)

真姫「ほら、散って散って! 集中出来ない猫娘には、ハイパー真姫ちゃんの弾丸サーブをブチかましてやるわっ!」ビシッ

花陽「わぁ! 弾丸サーブブチかましアイドルだね! 真姫ちゃんかっこいい!」

真姫「当然でっしょー?」ニコッ

凛「にゃぁっ、真姫ちゃん怖いよぉー」

真姫「行くわよ! ハイパー真姫ちゃん弾丸サーブ!」


──べちんっ。


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──放課後、二年生教室──


ことり「というわけで、ホワイトデーはデートに行ってきて下さい」ニコッ

海未「え?」


ぽんっ。


穂乃果「ファイトだよっ!」グッ!

海未「ファイトだよっ! じゃねーっつの。2人共なにを言ってるんですか?」

ことり「先ほど『ことほの総会議』で決まりました」

穂乃果「海未ちゃんは凛ちゃんとデートするべきです!」ビシッ

海未「穂乃果、声が大きいですよ!」アセアセ

海未「っていうか『ことほの総会議』ってなんですか?」

ことり「まあ、デートかどうかは置いておいて、今年のホワイトデーは休日だから……」

穂乃果「どーせだったら二人で遊んできたらって話だよ!」ニコッ


海未「ああ、なるほど」

海未(確かにそうですね)

海未(お返し、ちゃんと当日に渡したいですし)

海未(それだったら一日中凛と遊んだ方が……)ニヘラッ

ことほの『……』ポカーン

海未「ん、二人共どうしました?」

ことり「ううん」

穂乃果「な、なんでもないよ」

ことほの((海未ちゃんのあんな顔、はじめて見た))

海未「でも……直接誘うのは恥ずかしいので、メールかなにかにします」

ことほの『うんっ!』パァーッ!

ことほの((よかった。いつものヘタレな海未ちゃんだ))


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──まきりんぱなの帰り道──


凛「かよちん! 真姫ちゃん! はやくはやくー!」ダッ

真姫「もー! 少しはこっちに合わせなさいよ!」テクテクテクテク

花陽「と言いつつも徒歩を加速させる真姫ちゃん!」テクテク

花陽「あぁっ! これがツンデレアイドルの真骨頂! 言葉では悪態をつきつつも体は正直──」

真姫「花陽、うるさいっ!」ブスー

凛「うぅっ! 待ち切れないにゃー! ダーッシュ!」ダダッ!

真姫「ちょっ! 凛!?」

花陽「凛ちゃん!? 置いてかれたら私たちお店の場所が──」


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──星空凛──


今日は、かよちんと真姫ちゃんとラーメンを食べに行く約束をしていたの。

朝から待ちきれなくてテンションマックスにゃっ!

凛は美味しいラーメンが好き。

ただでさえ美味しいラーメンなのに三人で食べるともっと美味しくなるの!

だからもう、一刻も早く味わいたくて体が勝手に走り出しちゃうんだっ♪

体動かすのって本当に気持ちいいにゃっ!

──って、お店まで全力疾走するつもりだったんだけど。

思わず足を止めてしまった。


駆け抜けていく景色の中に見てしまったから。

──思い出を。

遠い日の……。

遠い遠い日の思い出。

なんてことない普通の公園で起きた……。

凛にとっては運命の出会い。

う、運命なんて言葉、恥ずかしいけど。

でもいいんだ!

この話は誰も知らないから。

凛の心の中に閉まってあるから。

──『あなた』はきっと、覚えていないから。

凛の憧れの『あなた』。

凛の大好きな『あなた』。

えへへっ。

凛は、それでいいんだから。


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──公園──


真姫「ちょっ、凛、はぁはぁっ。はやすぎよ」ゼェゼェッ

凛「──真姫ちゃん! 遅かったね?」ニコッ

真姫「なにそれ! イヤミ!?」プンプン

凛「にゃぁー! ち、ちがうよぉ!」ビクビクッ

真姫「──どうしたのよ、ボーっとしちゃって」

凛「……ううん、なんでもなーいよ!」

花陽「…………はぁはぁっ、二人共、待って……はやいよぉ」ゼェゼェッ

真姫「は、花陽……」

凛「うーん、かよちんが遅すぎるんじゃないかにゃ?」ニコッ

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それから数日経って──


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──穂乃果ちゃんの部屋──


ことり「……」ジトーッ

穂乃果「……」ジトーッ

海未「な、なんですか二人共。私の顔になにか付いていますか?」

穂乃果「とぼけても無駄だよ、海未ちゃん!」ビシッ

ことり「そうだよ! 凛ちゃんのこと誘った!? 誘ってないでしょ!?」

海未「いや、あの、その……」

ことほの『さ、そっ、た、の!?』バンッ!

海未「……い、いえ」ガクッ

穂乃果「ほら、やっぱりぃ」

ことり「ダメだよ海未ちゃん! ちゃんと誘わなきゃ!」

海未「そうは言っても、心の準備が……」

ことほの『これ、なーんだ?』ニコニコ

海未「え、これは──」

海未(凛とたくさんのプレゼントの写真……?)

海未「これがなにか?」キョトン

ことり「自宅でバレンタインデーの贈り物に埋もれる凛ちゃんだよ!」

海未「……え? 」

穂乃果「多過ぎて何回かに分けて持って帰ったんだって!」ニコッ

ことり「花陽ちゃんが写真を送ってくれたの」ニコッ

海未「そ、そうなんですか」ジーッ

海未(むむむっ、なんですかこの数は? 私たちより貰っているのでは?)

穂乃果「海未ちゃん以外にもたくさんの人が凛ちゃんにアプローチしてるみたいだね!」

ことり「そうそう! はやくしないと他の人に取られちゃうよぉ!」

海未「で、ですが……」ギュッ

ことり「ことり調査によるとかなりの数の本命チョコを貰ってるみたいです」ドヤァ

海未「なっ!」ガタッ!


ことり「これを見て!」スッ

穂乃果「よっ! 出ました『ことりメモ!』」

海未「ことりメモ!?」

穂乃果「あそこには情報屋さんからのタレコミが書いてあるんだよ!」

ことり「えーっと、凛ちゃんに本命チョコをあげているのは……」カサカサッ

海未「……」ゴクリッ

ことり「絵里ちゃん、にこちゃん、希ちゃん」

海未「え」

ことり「花陽ちゃん、理事長、真姫ちゃ……」

ことり「ん?」

ほのうみ『ん?』

ことり「理事長!?」バンッ!

ことり「理事長って、え? お母さん!?」

ことり「お母さんなにやってんの!?」

海未「ていうか、ほとんど身内じゃないですか」

穂乃果「今回は信憑性が薄い感じがするねっ!」

ことり「そ、そうだよね! なにかの間違いだよね……」オロオロ

海未「大体どこ情報なんですかそれ?」ハァッ

ことり「うーん、ヒデコちゃんたちにお願いしてたんだけどなぁ」シュン



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──海未、自室にて──


お夕飯を頂いて。

お風呂も頂いて。

自分の部屋でほっと、一息ついて。

取り出したのは……先ほどの凛の写真。

とても素晴らしい、凛の素敵な笑顔。

見ているだけで心が穏やかになっていきます。

──しかし、私の心を捉えて離さないのは二人の言葉。

凛が私以外の誰かに……。

たしかに、ことりメモとかいう、よくわからん情報の信頼性はそれほど高くはありません。

──ですが。

例えば、の話。

仮に絵里が凛に本命チョコをあげていたとします。

そして、凛も絵里にチョコをあげていたとします。

──いや、友チョコ (?) くらいは現実に渡しているでしょう。

私も頂きましたし。

その場合、もしかしたら……。


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──海未ちゃんの妄想──


絵里「凛、この間のチョコのお返しなんだけど」

凛「絵里ちゃん、お返しくれるの?」

絵里「ええ。だって、今まで食べた中で1番美味しいチョコだったもの」ニコッ

凛「え、絵里ちゃん!? 恥ずかしいにゃ///」

絵里「うふふっ♪ それでね、お返しに……ホワイトデーは一緒に遊ばない?」ニコッ

凛「うん! いいよ」ニコッ

絵里「ハラショー! じゃあ、私の家で一緒にラーメンでも作ってみない?」

凛「えー、凛にできるかなぁ」

絵里「大丈夫よ! エリチカが優しく教えてあげるわっ♪」


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なーんてことになってしまうかもしれません。

なんという破廉恥!

凛を家に連れ込んでなにをする気ですか!

──はっ!

ま、待ちなさい海未。

一度落ち着きなさい。

もしも。

もしも希だとしたら?

危険です。

なぜなら希は一人暮らしだから。

それに溢れる母性に加え、実質私の姉貴分のポジション。

凛だって希のことは嫌いではないはず。

きっとこんな──。

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──海未ちゃんの妄想──


凛「んっ、こうかな?」

希「うんっ♪ 凛ちゃん、意外とお料理上手やね」

凛「希ちゃんの教え方がいいんだにゃっ♪」ニコッ

希「……」


ぎゅっ。


凛「にゃっ! 希、ちゃん? 急にどうしたの?///」カァーッ

希「……今日はうちの家に来てくれてありがとうね」

凛「ううん、大したことじゃないにゃ///」

希「凛ちゃんは、うちの大切なひとなん」

凛「希ちゃん?」キョトン

希「ねえうち、いつもワシワシしてるやろ?」

凛「う、うん」コクン

希「あれってうちなりのコミュニケーションやねん」

凛「……不器用なんだね」クスクスッ


希「仲良しの人にしか──大切な人にしかしないんよ」

凛「え?」

希「うち、凛ちゃんにお願いがあるん」

凛「な、なに……?///」

希「今日は、その、凛ちゃんからして欲しいんよ///」カァーッ

凛「え!? 凛から?///」カァーッ

希「うん。凛ちゃんの背中に押し付けているこの柔らかいモノを……」

凛「凛の背中に押し付けられてるこの柔らかいモノをワシワシ……」

凛「破廉恥だよ、希ちゃん」

希「嫌?」

凛「ううん、嬉しいっ」

希「……来て、凛ちゃんのワシワシマックス///」ニコッ

凛「う、うん……///」


もにゅもにゅっ。


希「んっ、凛ちゃん……もっと優しく///」

凛「希ちゃん、破廉恥にゃ///」

希「もっと破廉恥する?///」

凛「も、もっと?///」

希「うちが凛ちゃんに知らないLoveを教えてLoveしてあげるよ?」ニコッ

凛「そ、そんな……凛、違う私になっちゃうにゃ?///」

希「……うちだけが知ってる凛ちゃんに、ね?」ニコッ


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いけません、いけませんよ!

いけませんよそんなの!

そんな破廉恥がまかり通っていいはずがありません。

二人っきりの部屋で、知らないLoveを教えてLoveしていいはずがないのです。

だいたい、希も絵里もズルいのです。

そうやって、柔らかくて暖かくて大きいモノを押し付けたら、

凛がおかしくなってしまうのも当たり前です。

それに、二人は綺麗だし。

美人で頭もいいし。

私と一つしか違わないのにずっと大人な気がしますし。

それに比べて私は……。

こうやってすぐネガティブになって。

……悪い癖ですね。

いつもいつも物事を悪い方に考えてしまって……。

後から振り返った時に後悔の方が大きくなってしまう。

……自分の嫌いなところです。


だけど。

だけどですよ!

二人に、いや──。

「凛が誰かと一緒になってしまうなんて」

──我慢出来ません。

携帯電話を取り出して、開いたのは電話帳。

架ける相手はもちろん、

『星空 凛』

激しく鼓動を打つ心臓に、

落ち着け落ち着けと、何度も何度も説得を繰り返します。

たかが友人に電話を架けるだけ。

たかが友人を遊びに誘うだけ。

そう、考えても全然ダメ。

鼓動は収まるどころか加速していくんです。

だって、いままでの海未ちゃんに、

自分から行動を起こすことなんてなかったんだもの。

友達に電話を架けたりとか。

友達を遊びに誘ったりとか。

穂乃果とことりにだってそうだったのですから。

でもね、私は知っているんです。

私を照らす太陽が教えてくれたから。

行動することでしか手に入らないモノがあるって。

求めないと見えない景色があるんだって。

スーパー海未ちゃんになるにはスーパー海未ちゃんになる努力をしなきゃいけないんだって。



────だから。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──花陽ちゃんの部屋──


凛「──んっ、ようやく出来たにゃ!」バンザーイ

真姫「どれどれ、チェックしてあげるわ」

花陽「頑張ったね凛ちゃん!」ニコッ

凛「えへへっ♪」ニコッ

花陽「──少し、休憩しようか。お茶入れてくるね」スッ

まきりん『ありがとう』

凛「真姫ちゃんどう? 出来てる?」

真姫「今のところはねっ♪」

凛「ホント!? テストまでに間に合うかなぁ」

真姫「大丈夫よ。出来ないところは出来るようになるまで教えてあげるわ」ニコッ

凛「にゃぁー! 真姫ちゃんありがとう!」ニコッ

真姫「それにしても……凛が勉強を教えて欲しいなんてね」クスクスッ

凛「あははっ。恥ずかしいにゃっ」


真姫「──海未の影響かしら?」

凛「それもあるけど……」

真姫「けど?」

凛「このままじゃいけないなって思ったの」

真姫「え?」

凛「凛たちも、いつか音ノ木坂を卒業するでしょ?」

真姫「そうね」

凛「その時までに苦手なことをたくさん克服して、なんでも出来るようになりたいんだ」

真姫「どうして?」

凛「……色々あって」

真姫「……海未と同じ大学に行きたいんでしょ?」ボソッ

凛「にゃぁぁぁっ!?/// 真姫ちゃん、声が大きいにゃっ!」アワアワ

真姫「うふふっ♪ やっぱり海未の影響じゃない」

凛「もーっ! それだけじゃないよぉ!」プンプン

真姫「はいはいっ」クスクスッ


ピピピピッ!

ピピピピッ!


凛「にゃ? 凛の電話?」


真姫「私はチェックしてるから、出てきていいわよ?」

凛「あ、ありがとう……んっ?」


『着信中: 園田 海未』


凛「う、海未ちゃんからだにゃっ!」

真姫「ちょっと凛、早く出なさいよ! 横で聞いててあげるから!」バンッ!

花陽「──凛ちゃん! 花陽も来たよ!」シュタッ!

凛「かよちん!? はやくないかにゃ!?」

真姫「いいタイミングね?」ニコッ

花陽「百合ゆりな気配を感じたのでダッシュできましたぁ!」

真姫「きっと、デートの誘いだわ!」バンッ!

花陽「花陽もそう思います!」バンッ!


凛「で、デート!?///」カァーッ!

花陽「はい!」

花陽「ラブライブや三年生のことが落ち着いたこのタイミング!」

花陽「生徒会であり、μ'sの中心メンバーだった海未ちゃんは手が空いたはずです!」

まきりん『え!?』

真姫「まさかここで──」

凛「得意の長セリフ!?」

花陽「凛ちゃんへのお返しを考える余裕が出来た海未ちゃんですが、ここではじめてホワイトデーが土曜日であることを知りました」

花陽「それならばいっそのこと愛しの凛ちゃんと一日中一緒に過ごしてしまえ」

花陽「そう思って今電話をしてきているはずです!」

花陽「しかし、海未ちゃんも大胆な行動にでましたね」

花陽「いまやμ'sは知名度で言えばA-RISE以上!」

花陽「二人のラブラブデートなんて人目につくこと間違いなしです!」

花陽「しかし、見る人は思うでしょう『なんて仲の良い姉妹なんだろう』と!」

花陽「printemps、BiBi、どちらも素晴らしいユニットですがlily white特有の姉妹感は他のユニットのソレを大きく上回ります!」

花陽「花陽も今後の二人を要チェックしなくては!」


真姫「長っ!」

凛「終わった!? ねぇ、長セリフ終わった!? 電話出てもいい!?」

花陽「えぇっ!? まだ出てなかったのぉ!? 凛ちゃんダメだよ、はやくでなきゃ!」

凛「うぅっ、凛はこんなかよちんも好きにゃ……」


ピッ!


凛「お、お電話ありがとうございます。凛ですわ」ドキドキ

海未(電話)「あ、園田海未役をしております園田海未と申します……」


まきぱな(……)ドキドキ


海未(電話)「お、お忙しかったですか?」

凛「い、いえ、少し勉学に勤しんでいただけでございますわ」

海未(電話)「そ、そうでしたか」

凛「……」ドキドキ

海未(電話)「……」

凛「……」ドキドキ

海未(電話)「……」


凛「あ、あの、海未ちゃん?」

海未(電話)「え? な、なにか?」

凛「何か凛に御用でしたのでは?」

海未(電話)「そ、そうでした!」

凛「ええ……」ドキドキ

海未(電話)「……そ、その」

凛「……」ドキドキ

海未(電話)「ほ、ほ……っ!」

凛「……っ!」

海未(電話)「ほわい……っ!」

凛「……っ!」

海未(電話)「ほ、ホワイトデ……っ!」

凛「……っ!」ドキッ

海未(電話)「…………や」

凛「え?」

海未(電話)「……や、やっぱり無理です!」

凛「え!? 海未ちゃっ──」

まきぱな『へっ?』


プツッ。

ツー、ツー。


凛「う、海未ちゃん……!?」

真姫「……海未、平常運転ね。呆れるわ」

花陽「こ、こっちから連絡してみる?」アワアワ

凛「……海未ちゃん」シュン


ピピピピッ。


凛「メール……海未ちゃんだ!」

凛「──あっ」パァーッ!

真姫「なに!? なんだって!?」ガバッ!

花陽「花陽にも見せてっ!」ガバッ!



『三月十四日はお暇ですか? もし、良かったら二人でどこかへ行きませんか?』



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──チャット printemps──


花陽: 速報! 海未ちゃんから凛ちゃんに電話がきたよ!

穂乃果: なにそれ詳しく

ことり: ことと次第によってはおやつ

花陽: ホワイトデーのお誘いをしようとしたみたいで

花陽: 二人の手引きのおかげです

穂乃果: 当然でっしょー?

ことり: 当然でっしょー?

穂乃果: 真似しないで

ことり: お断りします

穂乃果: 最低

ことり: 最高?

穂乃果: 最大?

花陽: 最新!

ことり: レッツゴー! 遠くに

穂乃果: スーパージャンプ!

花陽: 決まったね

穂乃果: うん。嬉しいよ


ことり: 花陽ちゃん本題どうぞ

花陽: 結論から言うと

穂乃果: うん

ことり: ちゅん

花陽: 無理ですって言って電話を切られました

穂乃果: え

ことり: 海未ちゃん……

穂乃果: 厳しい展開ですね南さん

ことり: しかし当初の予定通りですよ高坂さん

花陽: でね! その後メールがきたんだよ!

穂乃果: メール!?

ことり: それを先に言って下さいよぉ!

花陽: 三月十四日どこか行こうって!

穂乃果: すごい!

ことり: はらしょー!

穂乃果: はらしょー!

花陽: 良かったよねぇ

ことり: ことり一杯やりたい気分だよ

穂乃果: 穂乃果も今日は寝る前にお菓子を食べたい気分

花陽: それいつもじゃない?

ことり: 穂乃果、はらしょー


花陽: それでね、また二人に手伝って欲しいことがあるの

穂乃果: 海未ちゃんと凛ちゃんのためならなんでもやるよ

ことり: だって私たち

穂乃果: ことほのトラブルバスターズ!

ことり: ことほのトラブルバスターズ!

花陽: え?

穂乃果: 決まったね

ことり: うん、決まった

花陽: BiBiのみんなに怒られるよ?

穂乃果: え?

ことり: ホントに?

花陽: パクリでっしょー?

穂乃果: 真姫「真似しないで!」

ことり: にこ「ちょっとなによそれ!」

花陽: 絵里「ハラショー!」

穂乃果: 決まったね

ことり: うん、決まった

花陽: 完璧です


ことり: 明日、花陽ちゃんの家に行けばいい?

花陽: はい。午後に来てくれれば

穂乃果: なにをするの?

花陽: 凛ちゃんが渡す海未ちゃんへの誕生日プレゼントを一緒に選んで欲しいの

穂乃果: ああ、なるほど

ことり: そっかーホワイトデーの後日だもんね

花陽: では、よろしくお願いします

穂乃果: ヨキニハカラエミナノシュー

ことり: 真似しないで!

穂乃果: お断りします!

花陽: 最低?

ことり: 最高?

穂乃果: 最大?

花陽: 最新!

ことり: レッツゴー! 遠くに

穂乃果: スーパージャンプ!

花陽: 決まったね

ことり: うん、決まった

穂乃果: 我ら純粋戦隊プランタン

花陽: え?

ことり: え?

穂乃果: 明日の活躍にこうご期待!

花陽: なにそれ新しい

ことり: こうご期待!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

本日はここまで。

見てくれた方、ありがとうございます。

期待

おつ

乙、WRワロタ

コメントありがとうございます。

ちょっとだけ更新します。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


────そして当日


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──凛の夢、いつかの公園──


凛(幼)「……はぁ」グスッ



「────どうしたのですか?」



凛(幼)「ひゃっ!」

海未(幼)「先程からため息ばかりついて」

凛(幼)「え、えっと、その……」

凛(幼)(わぁー、可愛い子だなぁ)

海未(幼)「ため息の数だけ幸せが逃げてしまいますよ」

凛(幼)(髪も長くてすごく、女の子らしい)

凛(幼)(……話してみよう、かな)

凛(幼)「──今日ね、スカートを履いて学校に行ったの」

海未(幼)「はい」

凛(幼)「凛、いつもはズボンだから、男の子たちにからかわれちゃったの」

海未(幼)「そうなんですか……ひどいですね」


凛(幼)「あははっ。いいの! 凛には可愛い格好は似合わないって……わかったから」グスッ

海未(幼)「そんなこと──」


にゃーんっ。


凛(幼)「わっ、猫さん?」

海未(幼)「……首輪があります。飼い猫さんみたいです」

凛(幼)「慰めてくれるの? えへへっ、ありがとう! ……くしゅんっ」

海未(幼)「……?」

凛(幼)「むずむず……猫さん、ちょっと待ってて」テクテク

凛(幼)「よっと」プチッ

凛(幼)「じゃーん! 猫じゃらしだよ!」ニコッ

海未(幼)「……っ!」

凛(幼)「これで一緒に遊べるにゃっ♪ おいでー」


にゃーっ♪


凛(幼)「ふふっ♪」ニコニコ


海未(幼)「──可愛いですね」

凛(幼)「ね! とっても可愛い猫さん」

海未(幼)「あ、いえ、その」

凛(幼)「にゃんにゃんにゃーん♪」ニコニコ

海未(幼)「……うふふっ♪」


にゃーっ♪ ごろごろー♪


凛(幼)「……凛もあなたみたいに女の子らしければ良かったのに」

海未(幼)「そう、ですか?」

凛(幼)「うんっ。髪も長いし、スカートも似合って……憧れちゃうよっ」

海未(幼)「──そんなこと、ないですよ」

凛(幼)「え?」

海未(幼)「ふふっ♪」クスクスッ

海未(幼)「可愛い格好とか、女の子らしいとか、私にはよくわかりません」

海未(幼)「──ですが」

海未(幼)「笑顔のあなたはとっても素敵だと思います」ニコッ


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──凛、自室にて──


……夢、かぁ。

懐しいなぁ。

こんな日だからかな。

凛の大切な思い出が夢に出てくるなんて。

この公園での出来事の後少しして。

一つ年上のその人のことを知ったんだよね。

園田海未ちゃん。

日舞や剣道を習っていて、勉強だって出来て……。

優しくて、可愛い笑顔で笑う、すごく女の子らしい人。

くすくすっ♪

それ以来、凛はすっかりスーパー小学生な海未ちゃんに憧れちゃって。

何度か教室を覗きに行ったこともあったけど、

そんな時は決まって読書をしていたんだ。

海未ちゃんは小さい頃から本が好きだったんだね。

小学生の時はあんまりお話することってなくて。

中学生になったくらいから周りの子たちが、

「園田先輩ってかっこいいよね」

なーんて言い始めて。

あぁ、やっぱりそうなんだ。

凛だけが海未ちゃんを素敵だって思ってるわけじゃないんだ。

そう考えたら、胸がきゅーって苦しくなっちゃって……。

「凛、おかしくなっちゃったよぉ!」

なんてかよちんに相談したこともあったっけ。


──最初はただ憧れてるだけ、だったんだけどな。

凛はどうしたいんだろう?

この気持ちがたどり着くのはどこなんだろう?

……考えてても仕方ないや!


勢いよく起き上がって、出発準備開始!

今日の予定は海未ちゃんに任せちゃってるから。

どこに行くかは聞いてないんだけど、

海未ちゃんのことだから、きっと山に行くんじゃないかな。

そう思って動きやすい服装をチョイス。

ふふっ♪

凛は海未ちゃんの妹分だから!

それ位すぐにわかっちゃうんだにゃ♪

だから、しなくて良いんだよ。



──可愛くオシャレなんて。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──最寄り駅──


海未「…………」ペラッ

海未「……」キョロキョロ

海未「はぁ……」

海未(まだ、ですよね)

海未(早く来すぎてしまいました)

海未(うぅっ、本を読んでいても落ち着きません)

海未(──ドキドキします)

海未(ことりが選んでくれた今日の服、似合っているでしょうか?)

海未(名付けて、ことりコーデ『気持ちは一つ』)

海未(……なんて言っていましたが)

海未(ちょっと、スカートが短くないですかね?)



「────海未ちゃん?」


海未「あ、凛! ご機嫌。今日はよろしくお願いします///」

凛「わぁっ! すっごい可愛い格好だね!」

海未「そ、そうですか? ありがとうございます///」

海未「凛も…………と、とても動きやすそうな格好ですね」キョトン

凛「うん! 山に行くなら動きやすい方がいいと思って!」

海未(…………し、しまった!)

海未(今日の目的地を告げていませんでした! 私ったらなんておっちょこちょい!)

凛「海未ちゃんどうしたの?」

凛「……あっ」

凛(にゃぁっ!?)

凛(もしかして今日、山いかない!?)

海未「……り、凛。あの、今日は──」

凛「ご、ごめんね海未ちゃん! 今日は山じゃないんだね!」アワアワ

海未「そ、そうなのですが──」

凛「やっぱり!」

凛「凛、着替えてくるよ! ちょっと待っててっ!」ダッ!

海未「り、凛!?」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──家に戻る途中──


凛(やっちゃったにゃ)トボトボ

凛(まさか山じゃないなんて……)

凛(足が重いにゃ)トボトボ


「────お困りですか?」


凛「え?」

ことり「ダメだよ? 今日は笑って過ごさないとっ♪」ニコッ

凛「──ことりちゃん!?」

ことり「もう、そんな格好でデートなんて海未ちゃん泣いちゃうよ?」

凛「いやー、山に行くと思って……っていうか何してるの?」キョトン

ことり「今はそれより着替えなきゃじゃない?」

凛「そ、そうだった! 凛、急いで家に──」

ことり「凛ちゃんまって!」

凛「へ?」

ことり「──コーディネートはことりにお任せだよっ♪」ニコッ


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──メイドカフェ更衣室──


ことり「出来ました!」

ことり(ことりコーデ『言うこと聞くにゃ!』)

ことり(猫さんみたいな帽子がとってもキュート♪)

ことり(二人とも、今日は帽子がオシャレだね!)ニコッ

凛「うわぁーっ! とっても可愛い///」

ことり「ふふっ♪ 気に入ってくれた?」ニコッ

凛「ありがとうことりちゃん!」

ことり「あっ、このことは海未ちゃんには内緒にしてね」

凛「わかったにゃっ! 凛、行くね!」ダッ!

ことり「気をつけてねーっ!」ヒラヒラ


凛「今度お礼するからー!」


ことり「はーい! ……ふふっ♪ 行っちゃった」

ことり「……さて、ことりも行こうかなっ!」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──デート、スタート──


海未(凛、大丈夫でしょうか?)オロオロ

海未(私も凛のご自宅に向かったほうが……)


「────海未ちゃんお待たせ!」


海未「凛!? 早かっ──」

凛「えへへっ♪」

海未「わぁっ……!」

凛「どうかな///」クルッ

海未「か、可愛いですっ! とても///」カァーッ

凛「あ、ありがとうっ///」ニコッ

海未(素敵です……こんなにも素敵な凛を見られるなんて)

海未(勇気を出して良かったです)

海未「そ、それにしても早かったですね?」

凛「あ、さっきそこでこと──」

海未「こと?」キョトン

凛「ううん、なんでもない!」

凛「それよりもほら! はーやーくー!」ギュッ

海未「り、凛!?///」ドキッ

海未(急に手を握らないで!)ドキドキ

凛「──いっくにゃぁっ!」

海未「……ふふっ♪」

海未(元気いっぱい、ですね)ニコッ


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

短いですがここまで……。

ご覧になって頂いた方、ありがとうございます。



はらしょー…!!!

いいね

コメントありがとうございます。

再開します。

誕生日当日には終わりません。



──目的地──


凛「うわぁー! ついたにゃぁっ!」

海未「ま、待ってください!」

凛「もー! 海未ちゃん遅いにゃぁっ♪」

海未「あなたが早すぎるんです」ハァッ

凛「おー! 海にゃ! 綺麗だにゃぁっ♪」

海未「凛、こちらに周辺地図がありますよー」

凛「どれどれー」

海未「海には堤防もあるので釣りも出来ますよ」

凛「ふーん……」


凛(駅を中心にして下へ降りていくと海岸)

凛(上に昇っていくと灯台、公園、アウトレットのお店なんかがあるにゃ)

凛(……一応、ご近所さんがお買い物するようなショッピングモールもあるんだね)

凛(モールから海岸に続く一本道にはお土産屋さんや屋台もあるみたい)

凛(他にも、美術館、水族館、キャンプ場……)

凛(あ、お昼はこのつけ麺屋さんがいいかな)

凛「こんなに色々あったら迷っちゃうにゃぁっ!」

海未「あの、私、美術館に行きたいので──」


「──星空凛ちゃん!」


凛「にゃっ?」キョトン

海未「え?」キョトン

女の子「やっぱり! 本物だ! 握手して下さい!」

凛「う、うん。いいよ」ニコッ


ぎゅっ。


女の子「うー、わぁっ!」キラキラッ

姉「……あっ! す、すみません! 妹が突然!」

女の子「お姉ちゃん! 凛ちゃんだよ! 星空凛ちゃん!」

姉「まさか、そんな……えっ」

凛「……」

海未「……」

姉「ほ、ほんものですか……?」

凛「は、はい。凛はわたくしですが」

姉「凛ちゃんと海未ちゃんだぁー!」

海未「う、海未は私ですが……」オロオロ

女の子「ねっ! ねっ!?」ニコッ

女の子「お姉ちゃんも握手してもらいなよ!」

姉「い、いけませんよ! お二人はプライベートなんですから!」

凛「いいよぉーっ♪」ニコッ

姉「いいんですか!?」

海未「え、ええ」ニコッ

姉「わぁーいっ!」

海未「ふふっ♪」ニコニコ

海未(なんだか、似てますね……)


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──美術館入口──


凛「結構長い道だったね!」

海未「ええ。いい運動になりました」

凛「ところで美術館に何があるの?」

海未「プラネタリウムが隣接されているのです」

海未「合宿の時以来、凛とゆっくり星を見たいなと思っていたんです」

凛「あの時は曲作りで忙しかったもんね」ニコッ

海未「ええ……怖い思いもさせてしまいましたし」

凛「あ、あははっ♪」

海未「施設内であれば解説してくれる方もいるでしょうから」

海未「たまには一緒に星のお勉強です!」ニコッ

凛「はいにゃっ♪」ニコニコ

海未「ほら、あちらに専用の入り口がありますから」

凛「裏口みたいだねっ♪ 美術館に飾ってある物も見られるかな?」

海未「少しでしたら──」


「──そこのお二人さんっ♪』


凛「え!? 凛たちのこと?」キョロキョロ


女性「そうそう!」

女性「うちは、通りすがりの占い師!」

占い師「二人のこと占わせてほしいなっ♪」

占い師「いまはサービス期間中だからお代はいらないよ!」

海未「あ、怪しい……」

海未(女性……ですね。フードで顔がよく見えませんが)

海未(美術館のスタッフさんなのでしょうか?)

凛「にゃー? 占い師さんは占いをするのが仕事なんでしょ?」

凛「どうして占いをするのにお金がいらないにゃ?」

占い師「この美術館のお客さんって若い子が少ないんだ」

占い師「美術館って正直あんまりいかないでしょ?」

凛「うん!」

海未「私はたまに」

占い師「だから高校生くらいの子たち限定で、占いをさせてくれたら入館チケットをあげちゃう!」

占い師「というキャンペーンをしているのだ!」

凛「おぉっ! 太っ腹にゃ!」キラキラッ!

海未「たしかに、それなら占いだけが目的の方たちも入場してくれますね」

占い師「でしょ?」

凛「じゃあ、さっそく凛のことを占って欲しいにゃ!」ワクワク


占い師「毎度あり!」

占い師「でも、その前に注意事項!」

凛「にゃっ?」

占い師「占いってね、必ずしもいい結果が出るわけじゃないんだ」

凛「それはそうにゃ」

占い師「だから、うちからのお願い」

占い師「どんな結果が出ても、ポジティブに捉えて欲しいんよ」

占い師「未来は決まってない」

占い師「自分たちの手で創っていくモノだからねっ♪」

凛「おぉっ! 占い師さん、かっこいいにゃ!」

海未(未来は、自分たちの手で……)

占い師「じゃ、手を出して貰えるかな?」

凛「はいっ♪」

占い師「ほー、ふむふむ……」

凛「ど、どうですか?」ドキドキ

占い師「──ちょっと、耳貸して」チョイチョイ

凛「こう?」スッ

海未「むっ」ピクッ

占い師「ごにょごにょごにょごにょ」

凛「にゃっ!///」ビクッ

占い師「ごにょごにょごにょごにょ」

凛「……っ! わ、わかったにゃ」

海未(なんでしょう、なんだかイライラします)

海未(この人、胸も大きいですし……)ジーッ

占い師「──じゃあ頑張ってね!」ニコッ

占い師「はい、次の方どうぞー」

海未「わ、私もですか?」アセアセ

占い師「もちろん!」

凛「う、海未ちゃんもやろうよ! ね?」

海未「はぁ……仕方ないですね」

占い師「手をだすやん?」

海未(やん……?)スッ

占い師「ふむふむ、なるほど……」

海未(あれ? この声……)

海未(……この胸)ジーッ

占い師「ほー、ふむふむ」

海未(……のぞ、み?)

占い師「なかなかの手相やね?」ニコッ

海未「…………なぜ、ここにいるんですか?」ボソッ

占い師「……」ニコニコ

凛「にゃ?」キョトン

占い師「ふふっ♪ じゃあ耳貸して……」チョイチョイ

海未「……」スッ


占い師「……よく気付いたね」ボソッ

海未「……やはり、希でしたか」ボソッ

海未「なにをしてるんですか? ことと次第によっては正体を──」ボソッ

占い師「まあまあ、ただのアルバイトやん?」ボソッ

海未「それでも、凛を騙すのは頂けないかと」ボソッ

占い師「うちは占いの結果を凛ちゃんに言ってもいいんよ?」ボソッ

海未「それがなにか?」ボソッ

占い師「……海未ちゃんの気持ちを伝えてしまうことだって出来るやん?」ボソッ

海未「なっ! 卑怯ですよ」ボソッ

占い師「まあ、占いは本気でやってるから見逃してよ」ボソッ

海未「ぐっ……仕方ありませんね」ボソッ


凛「すごいにゃー、交互にひそひそ話にゃー」


占い師「じゃあ、占いの結果を──」ボソッ

海未「ま、待って下さい」ボソッ

占い師「なぁに?」ボソッ

海未「あなたの雇い主は?」ボソッ

占い師「……この美術館のオーナーや」ボソッ

海未「意外と普通の答えですね」ボソッ

占い師「それ以外に何があるん?」ボソッ

海未「いえ、私の杞憂でした」ボソッ

占い師「そろそろ占いの結果、いい?」ボソッ

海未「あ、はい」ボソッ

占い師「『望めば願いは全て叶う』よ」ボソッ

海未「……それ、本当に手相を見て言ってます?」ボソッ

占い師「どやろな? お告げかもしれんね」ボソッ


凛「…………長いにゃっ」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──プラネタリウム待機列──


凛「ねぇ、占いどうだった?」

海未「そうですね……」

海未(願いが叶うのは良いことかもしれませんが)

海未(ですが、私の『願い』は……)

海未「──あまり、参考にはなりませんでしたね」

凛「そ、そっかぁ!」ニコニコ

海未「……凛は、どうでしたか?」

凛「あ、あははっ♪ 凛もあんまりだったよっ」

海未「そう、ですか……」

凛「う、うん」

海未「……」

凛「……あ、あの子」

海未「どうしたのです?」

凛「ほら、さっきの女の子が一瞬見えたんだにゃ」

海未「ああ、ファンの……美術館に来ていたのですね」

凛「泣いてた……?」ボソッ

海未「え?」

凛「ううん、なんでもない」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──プラネタリウム──


案内人「みなさんこんにちわ!」

案内人「当館のプラネタリウムへようこそ」

案内人「本日はかしこいかわいい私が案内を務めさせていただきます」

案内人「短い時間では御座いますが、お楽しみ頂ければ幸いです」


凛「ぷぷっ♪ 海未ちゃん、あの人自分のことかしこいかわいいだって」クスクスッ

海未「……なぜ、ここにいるのですか」ボソッ

凛「え?」

海未「い、いえ! なんでも……」

凛「そ、そう」アセアセ


案内人「まずは北東の空を見てください」ニコッ

凛「北東? 海未ちゃん、北東ってどっち?」キョロキョロ

案内人「七つの明る──」

海未「ほら、あそこに七つの明るい星があるのがわかりますか?」

凛「あー、あったあった!」

海未「あれが北斗七星です」

凛「へー! あれが!」


案内人「星を線で──」

海未「星を線で結んだ形が、昔の中国ではヒシャクという水汲みの道具に似ているとされていました」

海未「ですので、北の空のヒシャク、という意味で北斗七星と呼んでいるそうです」

凛「すっごいにゃー! 海未ちゃんは博識にゃ!」

海未「い、いえ。このくらい普通です///」カァーッ

案内人「……えー、続きまして」

凛「ねぇ! あそこの離れたところにある星はなに!?」

海未「あれは北極星ですね」

案内人「……」ピクッ

海未「北極星は地球の自転軸を北極側に延長した線上近くに位置しているのです」

海未「そのため地球側から見るとほとんど動きません」

凛「そうなの?」

海未「はい。ですので、北の空の星は北極星の周りを回転しているように見えます」

海未「なので、北極星は天測航行を行う際、正確な測定をするための固定点になるのです」

凛「すっごいにゃぁ! 海未ちゃんはなんでも知ってるんだねっ♪」

海未「ふふっ♪ 本で得た知識ですよ」ニコッ

案内人「……えー、そこのラブラブカップル」ピクピクッ

案内人「プログラム通り進めたいので少しお静かに願いますか?」ニコッ

凛「ラブラブカップルだって。どこにゃ?」

海未「暗い場所に男女が二人……破廉恥です!」

案内人「ちょ、わざとでしょ!」

案内人「私に気付いてワザとやってるでしょ!?」クワッ!

凛「にゃー、お姉さん怖いにゃー」ビクビクッ

海未「す、すみませんでした……」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──お昼、つけ麺屋──


凛「うふふっ♪ はやくこないかなぁ」

海未「凛はやっぱりラーメンが多いですか?」

凛「うーん、かよちんと一緒だとつけ麺が多いかな」

海未「花陽と一緒だと?」キョトン

凛「うん! 余ったスープに御飯を入れて、おじやみたいにするのにハマってるんだぁ♪」

海未「そ、それは美味しそうですね!」

凛「ラー油を少しかけるのも美味しいんだにゃっ♪」

凛「真姫ちゃんも、うぇぇっ! こんなの食べたことないっ!」

凛「ってびっくりしてたにゃっ♪」

海未「へぇ、真姫もですか!」

海未「ふふっ♪ 仲が良いのですね」ニコッ

凛「うん! 仲良し一年生トリオだもん!」ニコッ

店員「お待たせしました。味玉つけ麺です」ゴトッ

凛「うわぁー! 美味しそう!」

海未「あれ?」

海未(この店員さん、にこ……?)

凛「……」ズルズル

凛「おいしーにゃーっ♪ さっすが海未ちゃんのチョイスにゃっ!」ニコニコ

海未「──ええ、とっても美味しいですっ♪」

海未(ふふっ♪ 下調べした甲斐がありました、ね)

凛「ねぇ、海未ちゃん! コレは何に使うの?」

海未「すだちは、えと──」

店員「──すだちは麺に搾って絡めて下さいねっ♪」ニコッ

店員「すだちの酸味がスープにアクセントを加えてくれます」

店員「先ほどよりも爽やかな味を楽しめますよっ♪」ニコッ

海未「あ、ありがとうございます

凛「やってみるにゃ!」ギュッ

うみりん『……』ズルズル

凛「おいしー!」

海未「本当です! 程よい酸味がスープによく合いますね!」

凛「すごいにゃっ! この組合せを考えた人は天才にゃ!」ズルズル

海未「一見、ラーメンにすだちなんて合いそうには見えませんが……」

店員「そう、一見合わなそうな組合せがお互いを光らせるのよ」

凛「にゃ?」

店員「すだちとつけ麺、まるであなたたち二人みたい」

海未「え?」

店員「清楚なお嬢様系のあなたと、活発、元気で元気なあなた……一緒にいたら姉妹みたい!」

店員「まさに運命の二人!」

うみりん『……』キョトン

凛「──この寒さ、にこちゃんににてるにゃ」

店員「だ、誰が寒いですって!」

凛「にゃあ、ごめんなさい。……スープ割お願いしたいにゃ」

店員「……どうぞ」ゴトッ

凛「にゃーっ、いい匂いにゃっ♪」

凛「ごくごくっ、ぷはーっ」

海未「凛、早いですよ? よく噛んで食べましたか?」ズルズル

凛「うん! 先に外で待ってるね!」

海未「はい、すぐにいきますから」モグモグッ

凛「ご馳走様!」ダッ

店員「ありがとうございましたー」


海未「……」ズルズル

店員「……」

海未「先ほど、占いのアルバイトをしてる希に会いました」

店員「……」

海未「プラネタリウムでは絵里に」

店員「……」

海未「──にこもアルバイトですか?」

店員「──なによ、私たちの気も知らないで」ボソッ

海未「えっ?」キョトン

店員「……ねぇ、どんな感じ?」

海未「どんな、と言うと?」

店員「うーん、進展とか?」

海未「……質問の意図がわかりません」

店員「そう、ならいいわ」

海未「あの、にこたちは何を?」

店員「……別に、いつも通りよ」プイッ

海未「いつも通りでラーメン屋のアルバイトですか?」

店員「そうよ、いつも通り」

海未「……ことりと穂乃果に何か言われたのでは?」ジーッ

店員「……はぁ」ハァッ

店員「別にあの二人に何か言われたからじゃないわ」

店員「私たち三人はアルバイトでこっちにきているの」

海未「なぜ、このようなところで?」

店員「少し離れた土地の方が、社会勉強になるだろうっていう絵里の考えでね」

海未「なるほど……」

店員「だからあんたは今日を精一杯楽しみなさい」ニコッ

海未「にこ……」

店員「はい、これ」ゴトッ

海未「……なんですか、これ?」

店員「黒烏龍茶よ。脂肪の吸収を抑えてくれるわ」

海未「……ありがとうございます」

店員「べ、別にこれくらいっ、なんでもないわ」プイッ


海未「──本当は」

店員「え?」

海未「本当は少しホッとしたんです」

海未「二人で出掛けるなんて、はじめてですから」

海未「だからすごく緊張していて……」

海未「けど、にこたちに出会って落ち着けました」

海未「ありがとうございます」ニコッ

店員「海未……」

海未「つけ麺とっても、美味しかったです」ガタッ!

海未「ご馳走様でした」ペコッ

海未「失礼します──」テクテク


──ガラガラ、バタンッ。


店員「……なによ、スープ割くらい頼みなさいよ」ニコッ


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

今日はここまで。

ご覧になってくださった方、コメントくださった方、ありがとうございます。

コメントありがとうございます!

再開します。



──灯台──


凛「うわぁーっ! すごいにゃー!」

海未「ここから景色を一望することが出来るのですね」

凛「ねぇねぇ! 海が青くてとっっっても綺麗だよ!」

海未「ふふっ♪ 帰りに少し見ていきましょうか?」ニコッ

凛「うん!」

凛「わっ! 向こうには大きな山もあるんだ!」

海未「ほう、山ですか……」ゴクッ

海未「ふふっ、この私を園田海未と知って目の前に現れたのですかね?」ニコッ

凛「にゃぁっ、変なスイッチ入っちゃったにゃ」アセアセ

海未「あ、ごめんなさい」


海未「あまり険しい山だと、凛と一緒にいけませんね」

凛「にゃははっ♪」アハハッ

凛「……あ、あのね。凛は海未ちゃんと一緒なら、その……」モジモジ

海未「え?」

凛「い、いや! なんでもない! なんでも!」アセアセ

凛「あーっ! アレなんだろうね!」ユビサシッ

海未「あ、あれは──」


女性「酷いわまきおさん! 米子とのことは遊びだったんですね!」

男性「そんなことないよ、米子! 話を聞いておくれよ!」


海未(な、なにアレー!?)

海未(え、ホントになんですかアレ)

海未(なんで派手に粧し込んだ花陽と、男装した真姫が!?)

海未(イミワカンナイ……)



米子「いや、いやよいやいや! 聞きたくないわ」

米子「だって、花陽──あ、間違えた」

米子「だって、米子はあなたのお口からあの女の名前を聞くなんて耐えられないもの」

まきお「落ち着いて、米子! ちゅん子さんとは何もなかったんだ」

米子「ほら、あなたまた言ったわ。憎たらしいあの女の名前」

まきお「だからちがうよ。ちゅん子さんはただの学友で──」

米子「それは何度も聞いたわ。けど、疑われるようなことをしたあなたも悪いわ」


凛「にゃー! まきお、悪いやつにゃ!」プンプン

海未(え? 感情移入してるの?)



まきお「だったらどうしたらいいんだい?」

まきお「何度も何度も謝ったじゃないか」

まきお「他にどうしたらいいか見当もつかないよ」

米子「馬鹿ね、まきおさん。あなたって本当に馬鹿な人」

米子「花陽の──米子のご機嫌を取りたいのなら行動で示しなさいな」


海未(行動で……?)


まきお「なんだ、簡単なことじゃないっ」

まきお「愛してるわ、花陽──じゃなくて米子。この世界で一番」


──ぎゅっ。


米子「ふふっ、真姫ちゃ──じゃなくてまきおさん。米子はその言葉を待っていたのよ///」


海未「……なっ! あの二人っ! 白昼堂々破廉恥です///」

凛「にゃぁ、米子さんよかったにゃっ///」



米子「さっ、近いのキスをなさいな。それで今回は許してあげましょう?」ニコッ


うみりん『き、キス!?』


米子(ふふっ♪ 近くでこんなモノを見せられたら、あの二人だって嫌でも意識するはず!)

米子(最後まで米子を演じられるか不安でしたが……)

米子(後は真姫ちゃんが花陽のおでこにキスをして終わり)

米子(きっと海未ちゃんは「破廉恥です!」なんて言ってどこかにダッシュ!)

米子(それを追いかける凛ちゃん)

米子(「ねぇ、海未ちゃん。凛、海未ちゃんとだったら、その……」)

米子(「……私も園田の女。覚悟は出来ました。凛、私と──」)

米子(なんてなーんてね!)

米子(さっすがことりちゃんの作戦ですっ!)

米子(さぁ、真姫ちゃん! おでこにキスです!)


まきお「……」


米子(……真姫、ちゃん?)



凛「まきおさん、どうしたにゃ!? はやくちゅーするにゃ!」

海未「破廉恥です! 破廉恥ですよ……!」


まきお「──さっきの言葉、本当だったらどうする?」

米子「え、さっきのって──」

まきお「……なんでも、ない」


ちゅっ。


米子「ひゃっ!///」

まきお「……///」カァーッ


凛「やったにゃ! ちゅーしたにゃ!」グッ!

海未「……っ!」

凛「ねぇ、海未ちゃん見た? 米子さん勝ったんだよね?」

海未「……」

凛「米子さん、ちゅん子さんに──」

海未「……ちです」ボソッ

凛「……え?」キョトン

海未「──破廉恥ですぅっ!」ダッ!

凛「ちょ、海未ちゃん!? どこいくにゃ!?」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──チャット printemps──


花陽: 速報! 真姫ちゃんの様子が変

ことり: 米子ちゃん

穂乃果: 米子ちゃん

花陽: 米子じゃねーっつの

ことり: 真姫ちゃんがどうしたの?

花陽: まきおさんのセリフに米子を愛してる的なセリフがあったでしょ?

穂乃果: うん

花陽: その言葉が本当だったらどうする? って

ことり: !

穂乃果: !


ことり: こっちみてる?

穂乃果: こっちみないで!

花陽: 罠?

ことり: ワナ?

穂乃果: 罠?

花陽: ワナナンダ?

ことり: 決まったね

穂乃果: うん、決まった

花陽: え? 罠なの?

ことり: ことりの口からはちょっと

穂乃果: 穂乃果の口からもちょっと

花陽: 誰の口からだったらいいの?

ことり: 伝えたくて?

穂乃果: こぼれ落ちた?

花陽: 唇からあいらびゅー

ことり: 海未ちゃんは?

花陽: 破廉恥ダッシュです

穂乃果: 凛ちゃんは?

花陽: 追いかけたかと


ことり: でかした!

穂乃果: 最低!

花陽: 最高?

ことり: 最大?

穂乃果: 最新!

花陽: レッツゴー! 遠くに?

ことり: スーパージャンプ!

穂乃果: 決まったね

花陽: ビシッとね

ことり: 今日もprintemps は最高です

穂乃果: 真姫ちゃんのこと、大丈夫?

花陽: とりあえず凛ちゃんを追いかけます

穂乃果: うん、ファイトだよっ!

ことり: うん、ファイトだよっ!

穂乃果: 真似しないで!



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──海未と海──


沸騰した頭に思い浮かぶのは先ほどのシーン。

米子とまきおの──。

「うぅっ、破廉恥です」

あまりの破廉恥さに私は逃げ出してしまいました。

とにかく一度心を落ち着けたくてひとりぼっちで海を見ている。

「凛は怒っているでしょうか?」

かっ、となった頭がだんだんと冷えて来ました。

だって仕方ないのですよ。

普通の海未ちゃんにとって、生のキスシーンなんて居たたまれなくなってしまいます。

「はぁ……っ」

こんなことで新しい一歩を踏み出すなんて、私には──。

「……ん?」

ネガティブな考えを遮るように聞こえてくる音楽。

聴き覚えのあるメロディーに耳を傾けます。

「……マーメイドフェスタ?」

音の発信源を探すように辺りを見回すと、少し離れたところに二人の女子高生が。

……なぜ、こんなところにいるのですか。

いや、もはや愚問ですね。

理由はどうあれ、結果だけ見ればついてきたということ。

……μ'sのメンバー全員が。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──ことりと穂乃果──


ことり「穂乃果ちゃん、こっちこっちーっ♪」

穂乃果「こっとりちゃーんっ!」

ことり「うふふっ♪」ニコニコ

穂乃果「あははっ♪」ニコニコ

ことり「んしょんしょっ」カキカキ

穂乃果「何書いてるの?」

ことり「えへへっ♪」

穂乃果「あっ!」

ことり「はーだーしでかーいた?」

穂乃果「すーなのーきごー♪」

ことり「さかさまにすれば……」

穂乃果「あいらーびゅーっ♪」

ことり「えへへ///」

穂乃果「えへへ///」

ことり「ねぇ、穂乃果ちゃん」

穂乃果「なぁに、ことりちゃん」

ことり「このままことりとはじめない?」

ことり「……二人だけのMermaid Festa ///」

穂乃果「ことりちゃん……っ!」

穂乃果「それってとってもPassionate じゃない?///」


ことり「下手をすればWonderful Rushかも///」

穂乃果「いやん、ことりちゃんのえっちーっ///」

ことり「──最低?」

穂乃果「……最高」フルフル

ことり「最大?」ニコッ

穂乃果「最新///」

ことり「レッツゴー! 遠くに?」

穂乃果「……いいよ。来て! 穂乃果に熱いスーパージャンプ……///」ギュッ

ことり「スーパージャ──」


「──ナニをしてるんですか?」


穂乃果「あ……」

ことり「え……」

海未「なにやら楽しそうですね?」ニコッ

ことほの『う、海未ちゃん!?』

穂乃果「えと、その」

ことり「ちょ、ちょっと百合の迷路にスーパージャンプを……」ニコッ

海未「なんですか、それ」


穂乃果「わりと破廉恥なやつだよ!」

ことり「穂乃果ちゃんっ///」カァーッ

海未「まったく、私が四苦八苦している間に……」

海未「二人は浜辺でMermaid Festa ごっこですか?」

海未「少し、破廉恥がすぎません?」

ことり「ま、まあまあ」

穂乃果「と、ところで凛ちゃんは? 今日は一緒のはずでしょ?」

海未「それも穂乃果とことりのせいじゃないですか!」

海未「二人でしょ!? 米子とまきおなんて三文芝居を考えたのは!」

穂乃果「あ、あははっ」

海未「オマケに三年生まで巻き込んで──」

ことり「待ってよ海未ちゃん!」

海未「なんですか?」

ことり「ことりも穂乃果ちゃんも遊びでここにいるんじゃないよ!」

海未「……というと?」

穂乃果「いいんだよ、ことりちゃん」

ことり「よくないよっ!」

海未「ことり……?」

穂乃果「ことりちゃん……」

ことり「今でも覚えてるよ、小学生の時のこと──」


□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■



──回想、ことり──


ことり(幼)「海未ちゃん何読んでるの?」ニコッ

海未(幼)「わっ! 教科書ですよ! 教科書!」

ことり(幼)「ホントだ! 逆さまだからわかんなかったよ」

海未(幼)「あ、き、来ました!」サッ

ことり(幼)「海未ちゃん?」

ことり(幼)「……あ」


凛(幼)「……」キョロキョロ

凛(幼)「……」ジーッ

凛(幼)「……」タッ


ことり(幼)(あの子、一つ下の……)

海未(幼)「……行きましたか?」

ことり(幼)「ショートカットの子? 行ったよ」

海未(幼)「ふぅっ」

海未(幼)「さっ、次の授業の準備です!」

ことり(幼)「……んー?」キョトン


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──回想、公園──


穂乃果(幼)「それは恋じゃないかな!」

ことり(幼)「やっぱり!」

穂乃果(幼)「うん! この間テレビでやってたよ!」

穂乃果(幼)「あー、でも女の子同士だから違うかも!」

ことり(幼)「そうなの? おかーさんは『恋に年齢も性別も関係ない』って言ってたよ!」

穂乃果(幼)「ほえー、南先生がそういうならそうかも!」

ことり(幼)「うん!」

穂乃果(幼)「……穂乃果、海未ちゃんの恋のお手伝いがしたいな」

穂乃果(幼)「だって、海未ちゃんは大切な幼なじみだもん!」

ことり(幼)「穂乃果ちゃん……」

穂乃果(幼)「恋のことはよくわからないけど」

穂乃果(幼)「穂乃果に出来ることがあれば!」

ことり(幼)「うふふっ♪」ニコッ

ことり(幼)「じゃあ、応援しよう!」

穂乃果(幼)「応援?」

ことり(幼)「うんっ! 今は恋のことはわからないから」

ことり(幼)「わかるようになるまで、応援しよう!」

穂乃果(幼)「あ……っ」パァァ

穂乃果(幼)「うん!」ニコッ

ことり(幼)「海未ちゃん頑張れっ♪」

穂乃果(幼)「海未ちゃん、ファイトだよっ!」グッ!


□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■



──回想、終わり──


ことり「──大事な親友の海未ちゃんのために出来ることを探して」

ことり「穂乃果ちゃんはずっと海未ちゃんを応援していたのです」

穂乃果「ことりちゃん、恥ずかしいよぉ///」テレテレ

海未「そ、そんなことが……」

海未「つまりさっきのMermaid Festa ごっこも恋を知ろうとして……」

海未「私のためにっ!」グスッ

ことほの『えへへっ♪』ニコッ

海未「二人共、失礼しました」ゴシゴシッ

穂乃果「──ううん、気にしないで」

ことり「うん、勘違いさせるようなことをしてたのも悪いから」ニコッ

海未「私はなんて未熟な──」


「──あ、海未ちゃん!」


海未「おや、先ほどの」

ことほの『ん?』


姉「あの、妹を、見ませんでしたか?」ハァハァッ

海未「いえ、見ませんでしたが……」

姉「そう、ですか」

姉「……ありがとう、ございます」シュン

穂乃果「お知り合い?」

海未「凛のファンなんです」

海未「あの、良かったら一緒に探しましょうか?」

姉「え? でも、海未ちゃん──」

海未「こんなところでお会いしたのも何かの縁ですし……それに」

海未「困っている人を見過ごせませんからっ」ニコッ

姉「あ……ありがとうございます!」パァァ

海未「というわけで、ことり、穂乃果」

穂乃果「うん! 純粋戦隊printemps の出番だね!」グッ!

ことり「すぐにみんなにも連絡だね──」


ピピピッ!

ピピピッ!


ことり「──電話だっ」


穂乃果「花陽ちゃん?」

ことり「うん! ナイスタイミング!」


ピッ!


ことり「もしもしー?」



海未「では、凛には私から……」

海未「私を追いかけて迷子になっていないとよいのですが」シュン

穂乃果「米子ちゃんとまきおさんに任せてるから大丈夫だと思うけど」

海未「……それって付けさせてるってことですか?」ジトーッ

穂乃果「あ、あははっ♪」



ことり「えぇ!? 凛ちゃんが!?」


ほのうみ『!?』


ことり「うん、うん! わかった! 手分けして、うん」


ピッ!


海未「こと、り? 凛になにか……」


海未「凛になにかあったのですか!?」クワッ!

ことり「すーっ、はぁーっ」

ことり「……」キリッ!

ことり「た、大変ですぅ!」

穂乃果「どうしたのです!?」

海未「どうしたのです!?」

ことり「凛ちゃんが、凛ちゃんが!」

ほのうみ『……』ゴクリッ

ことり「さらわれました!」

穂乃果「さらわれ、え?」

海未「えぇーっ!?」

海未「誰にですか! 希ですか!? 絵里ですか!?」ガシッ!

ことり「ぴゃぁっ!」ビクッ

海未「まさか理事長!?」


穂乃果「う、ううう海未ちゃん落ち着いて!」

海未「落ち着いていられません! 凛にもしものことがあったら私は……っ!」

ことり「なんでも、小学生くらいの女の子と一緒に手を引かれて……」

ほのうみ『……小学生!?』

ことり「うん! ショートカット子だって!」

姉「ショートカットの、ですか……?」

海未「あ……もしかして」

姉「は、はい」

姉「──ご迷惑をおかけしてるかもしれません」シュン


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

本日はここまで。

見て頂いた方ありがとうございました。

乙、純粋戦隊面白過ぎるわ

コメントありがとうございます。

ちょこっと更新。



──凛と少女、公園にて──


「──はい、どうぞ」

「あ、ありがとう」

自動販売機で買った缶ジュースを女の子に渡す。

なんと、凛の手を強く引っ張ったのはさっきの女の子だったのです。

姉妹で遊びに来ていた女の子。

はじめて二人を見たとき、

なんだか凛と海未ちゃんみたいだって思って。

えへへ。

──凛の願望、かな。

女の子の横に座ってプルタブを起こす。

凛と女の子の手からカシュッと気持ちのいい音がする。

「……美味しい」

少し、元気になったかな。


凛の手を掴んだ時の顔は今にも泣き出しそうでした。

迷子になっちゃったのかな?

いや、それだったら凛をこんなところに連れてきたりはしないか。

──じゃあ、なんだろう。

チラッと横目に見ると俯いて缶ジュースの飲み口を見つめる妹ちゃん。

……考えてても仕方ないにゃ。

「……お姉ちゃんは一緒じゃないの?」

一番に思った疑問。

さっき見たこの子はとっても楽しそうで。

それってきっと、隣にお姉ちゃんがいたからなんだにゃ。

妹ちゃんは、一瞬辛そうな顔をすると、

ふるふると首を左右に振った。

「…………違うよ」

何呼吸かの間を置いてポツリと出たのは凛が予想もしなかった言葉。

「本当のお姉ちゃんじゃないんだ」


涙を溜めた瞳はうるうるとしていて、

今にも溢れて止まらなくなりそうだった。

「どういう、こと?」

「昔から家が近くて、幼馴染みなの」

その言葉をきっかけにして、一筋の涙が落ちる。

もう、抑えることが出来ないんだね。

心はもう、土砂降り状態だったんだ。

「物心ついた頃からずっと一緒で。

私、いつもお姉ちゃんお姉ちゃんって後ろにくっついて……。

一緒に絵本をよんだり。

公園で遊んだり。

……大好きなμ'sの曲踊ったりして。

──でもね、それももう終わりなの」

涙でぐしゃぐしゃになった顔を真っ直ぐに凛に向ける。

「お姉ちゃん、引越しちゃうんだ、って」

その言葉を聞いて凛は、はっとした。


「だから今日は、最後の思い出にって二人で遊びにきたんだ」

この子のすぐ近くに迫ってきているんだ。

「でも、離れたくないよ!」

大好きな人とのお別れが。

「離れたら……きっと、忘れちゃう」

凛だって考えなかったわけじゃない。

現に三年生とはもうすぐお別れだし。

「新しい場所で新しい友達が出来て、私のことなんかきっと……」

いつかお別れしなくちゃいけない時が来るのだ。

──海未ちゃんとも。

「ずっと、一緒にいたいのに……」

ずっと、一緒にいたいのに。

海未ちゃんと……。

うわーんと泣きじゃくる声は凛の頭に良く響いた。

とにかく今はこの子のために出来ることをしなきゃ。

でも、凛の頭は真っ白になっちゃってて。

どうしたらいいかが全然わからなくて……。

もうすぐ二年生だから。

海未ちゃん達みたいにちゃんとしなきゃいけないのに。

こんなんじゃにこちゃん達に笑われちゃうよ。

……にこちゃん?


『アイドルっていうのは笑顔を見せる仕事じゃない!』

『笑顔にさせる仕事なの!』


その言葉を思い出した瞬間、

「──にっこにっこにー☆」

体が勝手に動いた。

「凛、ちゃん?」

大きく開いた瞳に恥ずかしそうな凛の顔が映る。

「凛と一緒に来て!」

キョトンとした妹ちゃんの手を掴んで走り出す。


わわわっ、と驚いたような声が背中越しに聞こえたけどお構いなしなんだにゃ。

ありがとうにこちゃん。

この子を笑顔にすることはまだ出来ないけど。

涙を止めることは出来たよ。

──凛はスクールアイドルだから。

今日、この子を一番の笑顔にするよ。

……占い師のお姉さんが言っていた。

『この人はあなたにとって運命の人。困った時は助け合うんよ?』

まだ、頭の中はごちゃごちゃしるけど。

「ど、どこに行くの!?」

「そんなの決まってるよ!」

だけど、一緒に考えればなんとかなりそうな気がするんだ。


「──海未ちゃんに会いに行くんだ!」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──ことほのうみ、海にて──


海未「──つまり今日は」

姉「はい、最後の思い出を作りに……」

姉「ですが、ちょっとしたことでケンカしてしまって」

姉「『もー、バカー! お姉ちゃんなんて知らない!』」

姉「そう言って飛び出して行ってしまったんです」シュン

海未「なるほど……」

ことり「……悲しいねっ」グスッ

穂乃果「穂乃果もお別れする三年生のこと考えちゃって、もう」ポロポロ

ことり「うぅっ、さっきまでMermaid Festa してた自分が恥ずかしいよぉ」ポロポロ


海未(──もし)

海未(もし、幼い頃に凛と親密な関係を築けていたら)


海未(この子たちみたいになれてたのでしょうか?)

海未(お互いになくてはならない存在で)

海未(ずっと共に過ごしたいと思えるような)

海未(今みたいにどこか歪な関係ではなくて)

海未(自然に凛が私の隣にいて)

海未(私が凛の隣にいて)

海未(…………この子のためになにかしてあげたい)

海未(でも)

海未(私になにが出来るのでしょうか)

海未(穂乃果のような行動力もない)

海未(ことりみたいに優しくない)

海未(……普通の海未ちゃんに)

海未(なにが、出来るのですか?)

海未(凛、私は──)ギュッ

ことり「海未、ちゃん?」

穂乃果「……よし、話は大体わかったよ! 探しに──」


ピピピッ!

ピピピッ!


ことり「え?」

穂乃果「チャット?」

海未「……凛?」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──チャット μ's──


凛: 海未ちゃん、はぐれてごめんにゃ!

凛: 凛そっちに向かうよ!

凛: どこにいるの?

海未: 海にいます

凛: 了解!

凛: あとね、さっき会ったお姉ちゃんがいたら捕まえといて欲しいにゃ

海未: 大丈夫です。一緒です

凛: にゃあ!? なんで!?

海未: 詳しくは合流してから

海未: それと凛、こちらはグループチャットですよ

凛: あ、普通に間違えた

海未: では海で

希: かしこまりやん!

にこ: 仕方ないわねぇー

凛: ごめん


真姫: 海ね、わかった

穂乃果: まきお

ことり: まきお

真姫: 真姫よっ!

ことり: さっきの言葉

穂乃果: 本当だったらどうする?


◇真姫が退出しました


絵里: 呼ばれて飛び出て即参上!

絵里: みんなお待たせ!

絵里: かしこいかわいいー?

にこ: にっこにっこにー☆

穂乃果: にっこにっこにー☆

ことり: にっこにっこにー☆

にこ: 真似しないでよ!

穂乃果: にこちゃんが悪いんだよ!

ことり: にこにーするから!


にこ: ぬぁんですってぇー!

絵里: さすがにこね!

凛: なんか話がややこしくなったにゃ


◆花陽が真姫を招待しました


真姫: なによもー!

真姫: もう!

真姫: なによ!

花陽: えっと、とりあえずみんな海に集まればいいのかな?

ことり: 米子

穂乃果: 米子

花陽: 米子じゃねーっつの!

海未: もういいです

海未: とりあえず来れる人だけ海に集合でお願いします

凛: よくわからないけど、凛は向かうね!

穂乃果: よぉーし!

穂乃果: みんな、海だよ!

絵里: 穂乃果!

ことり: 穂乃果ちゃん!

真姫: 穂乃果!

穂乃果: アイドル戦隊音ノ木ナイン……

花陽: なにそれぇ

にこ: なによそれ

希: いいやん!

穂乃果: 海に集合!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──もうちょっとで全員集合──


花陽「──おーい!」

真姫「もー! まったくもー!」



海未「あ! あの二人! 先程はよくも破廉恥を……! 」

穂乃果「落ち着いてよブルー。音ノ木ナインが集合すれば怖いものなしだよ!」

海未「ブルー!? 私のことですか!?」

穂乃果「そうだよ! ブルーは冷静沈着、頭脳明晰で、いつも突っ走っちゃうオレンジのお目付役なの」

海未「おー! そうなんですか!」キラキラッ

ことり(……満更でもないんだね)

穂乃果「そんなブルーに怒られたら二人もへこんじゃうからさ」

穂乃果「ね? 今回は、ね?」

海未「し、仕方ないですね」


穂乃果「じゃあ、三年生が来るまで真姫ちゃんと遊ぼっか」

穂乃果「グレー、準備はいい?」

ことり「全然良くないよ……っていうかグレーってなに? グレーって」

海未「どういう準備が必要ですか、グレー」

ことり「海未ちゃんまでひどいよ! ことりはホワイトでしょ! 」


花陽「穂乃果ちゃん、ことりちゃん、会いたかったよぉ!」

ことり「おかえり米子ちゃん」ニコッ

花陽「そのネタ引っ張り過ぎじゃない!?」

穂乃果「まきおさんも、ね?」ニコッ

真姫「もー! なによもう! もー!」プンプン

穂乃果「じゃあ、みんなが来るまであの言葉の真意を問い質そう!」

真姫「そうだわ! 花陽、あなたバラしたでしょ!?」

花陽「ご、ごめーん」アハハッ

真姫「なんでよりによってこの二人に言っちゃうのよ!」

真姫「遊ぶのもからかうのも本気なんだから!」

花陽「だって、二人は──」


穂乃果「ふふふっ♪ いい質問だね!」

ことり「ふふふっ♪ さすが真姫ちゃんだね!」

花陽「穂乃果ちゃんまさかアレを!?」

穂乃果「そのまさかだよ!」

海未(……なにをするんでしょうか?)

姉(みなさんテンションが高いんですね)

真姫「な、なによ!?」

ことり「──可憐で優雅な乙女の園に!」

花陽「は、花咲く三つの春の花!」

穂乃果「甘くて酸っぱい恋心……!」

ことほのぱな『この身に変えても護ってみせますっ!』

ことり「白い翼は明日への希望──printemps バード!」キリッ

花陽「溢れるお米は明日への奇跡──printemps ライス!///」ニコッ

穂乃果「燃える夕陽は明日への勇気──printemps パック!」グッ!

ことほのぱな『純粋戦隊! ぷらーんたーん!』ビシッ


ちゅどーん!


海未(うわぁ、かっこいいです……)

姉「……海未ちゃん、パックってなんですか?」ヒソヒソッ

海未「お、恐らくランチョパックのことかと」ヒソヒソッ

真姫「なによ、可愛いじゃない///」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

今日はここまで!

見てくださった方、ありがとうございます。

次回で終われればと思います。


純粋キャラが3人、来るぞ遊馬!


printempsのノリ、好き

コメントありがとうございます。

更新いきます。



──全員集合! ──


絵里「みんなー! お待たせ!」

希「やん!」

にこ「にこぉっ!」

海未「……あの、バイトは?」

希「細かいことはええやん!」ニコッ

穂乃果「絵里ちゃーん!」

花陽「にこちゃーん!」

ことり「希ちゃーん!」

絵里「行くわよぉー! かしこい、かわいい!?」

ことほのぱな『にっこにっこにー☆』

にこ「角度があまーい!」ビシッ!

絵里「さすがにこね!」

真姫「もう! なによそれ!」

海未「なんか、みんなテンションが……」

希「こうして集まるのも久しぶりやからね!」カードピッ!

にこ「ていうかチャットと同じことやるのやめなさいよ!」


花陽「でも、どうしよう! なにも考えずに集まっちゃったよぉ!」

花陽「誰か……誰か、誰かタスケテェー!」

真姫「ちょっとまっ──」


「ちょっとまっててーっ!」


真姫「凛!?」

希「凛ちゃん!」

海未「凛!」

凛「海未ちゃんおまたせーって、なんでみんないるにゃあ!?」

妹「うーわぁーっ! μ'sだぁっ!」キラキラッ

にこ「まったく! いつまでもあんたたちが心配掛けてるからでしょ!」

にこ「なんだかんだ、放っておけないのよ」プイッ

海未「にこ……」

海未「ふふっ♪ 『いつも通り』ですね」ニコッ

海未(『いつも通り』見守っていてくれたのですね)クスクスッ

にこ「そ! やっぱりにこがいないとダメなんだからっ♪」ウインクパチッ

凛「にこちゃん……大きなお世話にゃ」ニコッ

にこ「ぬぁんですってぇー!」プンプン

穂乃果「揃ったね!」

凛「そうだ! みんなも力を貸して!」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──海未のわがまま──


一つ一つ丁寧に……みんなに説明をする凛。

私は、妹さんの手を引いてお姉さんの隣に誘導します。

気まずそうに顔を伏せる二人に、

ここで待っていて下さい、と一言告げてメンバーの元へ。

……説明が終わったようですね。

凛の説明を聞いたみんなは、すぐに二人のために考えを巡らせます。

思い出作りがいいんじゃないか?

誰かの一言をきっかけに、全員のベクトルがぐぐっと同じ方向を向いて……。

あーでもない、こーでもないと話を始めます。

もう大丈夫、ですね。

メンバーが揃った安堵感からか、ふいにそう思ってしまいました。

……きっと、穂乃果がみんなを引っ張って行くから。

みんなが笑顔になれる場所まで導いて行ってくれるから。


今日、みんながこの場所にいてくれて良かった。

……二人のためにやりたいことはあります。

ですが、それは現実的ではありません。

みんなに迷惑をかけてしまうだけだから。

だから良いんです。

この中の誰かが最良の──。

そう考えた時、幼馴染みの二人が私をじっと見ていることに気が付きました。

「穂乃果、ことり、どうしたのです?」

「……海未ちゃんはどう思う?」

とことり。

「あ、えと。そうですね、なにか……」


「違うよ海未ちゃん」

「ほ、穂乃果?」

「海未ちゃん、言いたくても言わないことがあるんでしょ」

私を見つめる穂乃果の眼はとても優しくて。

けど、優しい瞳の奥には一切の嘘が許されない真摯さがあって……。

助け船が欲しくて、ことりに視線を向けても、にこりと微笑むだけ。

「……いえ、私は」

「──っ! もー、海未ちゃんのバカ!」

「ば、バカ!? バカとはなんですかバカとは!」

「だってバカだもん! 自分がやりたいこと! 考えてること! あるんでしょ!」

「なっ……!」

「それなのに、自分はいいやって顔してさ!」

ぷんっ、とそっぽを向く穂乃果。

簡単に言わないで下さいよ。

私だって、本当は穂乃果みたいに……。


「海未ちゃん?」

「どうしたのよ、海未」

ほら、俯いてしまった私を心配してみんなが声を掛けてくれる。

こんな優しい人たちにお願いなんて。

──わがままですよ。

「──言えない、よね」

「え?」

はっとして顔を上げると、少し涙ぐんだ凛がこちらを見ていました。

「……凛、知ってるよ。凛の大好きな先輩は誰よりも頑張り屋さんなんだって」

私の、こと?

「毎日お稽古したり、勉強したり。

作詞もしたり」

少し照れ臭そうに微笑む凛。

夕日浴びた髪がとても美しい色をしています。


「凛は知ってるよ、その先輩が頑張りすぎちゃうことも。

目指す山が高すぎて、自分を小さく見ちゃうことも。

──なかなか自分の意見を言えないことも」

「凛、私は……」

そんなことないです、そう言いたいのに。

「でもね海未ちゃん、わがまま言っていいんだよ?

思ってること、言っていいんだよ?

みんなに迷惑掛けたっていいんだよ!

だって明日は!

……海未ちゃんの誕生日だもん」

「わ、私の誕生日……?」

「そうだよ! 凛たちの大好きな海未ちゃんの誕生日だよ!

……だから、いいんじゃないかな?

一年に一回くらい、わがまま言ったってさ」

にっこりと笑う凛。

私は何も言えなくて。

その笑顔が霞んで段々と見えなくなってきて……。

あぁ、なんということでしょう。

こんな顔、凛には見せたくないのに。

……ズルいですよ。

私が頑固に閉じた心の扉。


だけど、あなたはそうやって。

その手に持った見えない鍵で開けてしまうのだから。

……凛、ありがとうございます。

あなたのおかげで、私は進むことが出来る。

たった一歩、ですが。

それは私にとって、

──大きな一歩です。

私は涙を拭い、大きく深呼吸をします。

澄んだ空気が私の心を満たしていく。

……もし、私の人生が一冊の本ならば。

その物語の主人公は私なのだ。

穂乃果でもなく。

μ'sでもなく。

スーパー海未ちゃんでもなく。

──普通の海未ちゃんが叶える物語。

くるりとみんなに背を向ける。

確認しなくてはいけない。

彼女たちに残された時間を。

「聞きたいことがあります」

そう言うと二人はこれからのことを丁寧に教えてくれました。

両親の仕事の都合。

学校の都合。

明日の夕方には離れ離れになってしまうこと。

なるほど。

…………今から歌う曲を決めて、フォーメーションの確認をして。

──時間が足りない。

だけど、私はもう決めたのだ。


もう迷わないっ!

私は踵を返してみんなの方を向いた。

『望めば願いは全て叶うよ』

さっきの占いを思い出した。

チラリと希を見ると、私を見守ってくれていて。

その笑顔はまるで、

大丈夫だよ。

そう言っているみたい。


「……みんなにお願いがあります」


『夢』を叶える九人の歌の女神。


「明日、私と一緒にライブをしてくれませんか?」


あなたたちの力が必要なんです。


「わがままなのはわかってます、だけど──」


普通の海未ちゃんには出来ないことも。


「お願いします!」


μ's だったら。


「私に……みんなの時間をくださいっ!」


──みんなと一緒だったら!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──μ's ミュージックスタート──


海未「……」ギュッ

にこ「……バカね、当たり前じゃない」グスッ

海未「にこ?」

真姫「にこちゃん、何泣いてるの?」グスッ

希「にひひっ♪ そんなに嬉しいん?」ニヒヒッ

絵里「さっ! みんな聞いてたでしょ!」

ことり「お母さんに講堂の使用許可を取るねっ♪」

穂乃果「ライブは明日でしょ? どうせだったら合宿しようよ!」

花陽「ごはんの準備、手伝います!」

海未「みんな……っ!」パァァ


凛「海未ちゃんペン貸して!」

海未「ペン? 構いませんが」キョトン

凛「きゅきゅきゅのきゅーっ♪」

海未「美術館のチケットに何を……?」

凛「はい、あげるにゃ! この世界に二枚しかない特別なチケット!」

姉妹『こ、これ……』


『園田 海未 birthday live in 音ノ木坂学院 』


海未(開演十一時、終演は……)

海未(『二人が忘れる時』!?)

海未「凛、これは──」

凛「えへへっ♪」ニコッ

凛「頑張ろうね!」

凛「二人の一生の思い出になるようなライブにするにゃ!」ネコポーズ

海未「……ありがとうございます」ニコッ

穂乃果「よぉーし! 行こう海未ちゃん!」グッ!

ことり「海未ちゃん!」

海未「……」コクン

海未「みんな、行きますよ!」

海未「──μ's 再結成です!」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──合宿、音ノ木坂学院屋上──


凛「うーん、夜風がひんやりで気持ちいいにゃ!」

海未「ふふっ♪ 星が綺麗ですね」

凛「やっぱりみんなと練習すると楽しいね!」

海未「ちょっと、ドタバタしてしまいましたけどね」ニコッ

凛「あー! あれかな!? 北斗七星!」ユビサシッ

海未「うーん、どうなんでしょう?」

凛「えぇっ!? 海未ちゃんわかんないにゃ!?」

海未「ふふっ♪ 冗談ですっ♪ あれが北斗七星ですよ」ニコッ

凛「なんだぁ、もー!」

海未「…………今日は、ごめんなさい」

凛「……どうして謝るの?」

海未「せっかく凛と遊びに行けたのに途中になってしまって……」シュン

凛「なんだぁ、そんなことか」

海未「え?」

凛「凛、楽しかったよ!」ニコッ

海未「凛……」


凛「海未ちゃんと待ち合わせるだけでドキドキで……」

凛「つけ麺だってすっごく美味しかった!」

凛「海も綺麗だったしっ♪」

凛「みんながいたのにはびっくりしたけど」アハハッ

海未「ですが、行けなかった施設もありますし」

凛「そんなのまた一緒に行けばいいじゃん!」ニコッ

海未「──っ!」

凛「凛、また海未ちゃんと遊びに行けるって思ったら楽しみで仕方ないよ!」ニコッ

海未「あ、その」

凛「──それとも、凛とおでかけは嫌?」シュン

海未「い、いえ! そんなことは決して!」

凛「ふふっ♪ よかったっ♪」ニコッ

海未「……///」カァーッ

凛「楽しみだなーっ♪」


海未「……あ、あの!」

凛「にゃっ!?」ビクッ

海未「──これ、バレンタインのお返しです!///」

凛「あっ! ありがとう!」

凛「凛も持ってきてるから後で──」

海未「め、メッセージカードもありがとうございました///」

凛「メッセージカード……?」キョトン


『海未ちゃん、いつもありがとう。大好き』



凛「あ……っ///」カァーッ

海未「とても嬉しかったです///」

凛「う、うん///」

海未「そ、その……私!///」

凛「……っ!///」ギュッ

海未「私、凛のことが──」


「────わわっ!」


ずってーん!


穂乃果「いてて……っ」ナデナデ

海未「…………へ?」キョトン


真姫「ちょっと穂乃果!?」

にこ「なにやってんのよもー!」

凛「み、みんな!?///」

穂乃果「にこちゃんが悪いんじゃん! あんな狭いとこでにこにーするから!」

にこ「それを言うなら絵里でしょ!? 絵里がいきなりあんなこと言うから!」

絵里「えー!? 私!?」

海未「……あなたたち、なにをしてるのですか?」ニコッ

海未「覗きなんて素敵な趣味ですね」ニコニコ

穂乃果「ま、まあまあ、落ち着いてよ海未ちゃん!」アセアセ

真姫「そうよ! 私たちにも言い分はあるの!」アセアセ

凛「と、とりあえず聞こうか?」

海未「……凛がそう言うなら」ジトーッ

ことり「はいはーい! ことり絵里ちゃんやりまーす!」

絵里「なによそれ?」

穂乃果「再現VTRだよ!」

花陽「じゃあ花陽はにこちゃんを……」

希「なんか、ハロウィンイベントを思い出すなぁ」



ことり「にこ、ちょっとにこにーしてみてくれない?」

花陽「嫌よ! いまいいところなんだから!」

希「海未ちゃん押し倒せ!」

にこ「ちゅーだよちゅー!」


海未「……なんですかいまの?」

穂乃果「穂乃果たちのセリフも再現しないとでしょ?」

海未「へぇっ」ニコッ

凛(目が笑ってないにゃー……)


ことり「にこ! 私の話を聞いて! 私わかったの!」

真姫「なんかえりち、テンション高いやん?///」

ことり「私ね、にこのことすごい好きなの!」

花陽「え?」


海未(なんですかこの展開は)

ことり「今気づいたのよ! ずっとにこのことが好きだったって! 憧れてたの!」

花陽「ちょ、絵里、ストップ! なに? どうしたの?///」

ことり「どうもこうもないわ!」

穂乃果「二人ともうるさいわよ! バレちゃうじゃない! もー!」


海未(ああ、穂乃果が真姫なんですね)

凛(凛の方が似てるにゃ)


絵里「真姫ちゃんダメだよぉ、そんなに強く言っちゃ」

穂乃果「な、なによ花陽! もー! 可愛いじゃない!」

希「本当だったらどうする?」

絵里「本当だったらどうする?」

穂乃果「もー! そのネタやめてよ!」


海未(もう、わけがわかりませんね)

凛(そういえばあの二人が米子とまきおだったんだにゃ)


ことり「とにかく! にこ! 一緒に、にこにーしましょう!?」

ことり「それって、とってもはらしょーよ?」

花陽「にこぉ!? に、にこは……」


希「あーもう、うるさいなぁ! 集中できないからはやくにこにーしてよ!」

ことり「穂乃果、はらしょー!」


絵里「え? 私それ言った?」

ことり「ううん、アドリブ」

絵里「あっ、そう」


花陽「わ、わかったわよ仕方ないわねぇ!」

花陽「にっこにっこにー☆ あなたのハ──」ニコニーポーズ


たゆんっ。


花陽「あっ」

希「やんっ/// 花陽ちゃんのえっち///」カァーッ

花陽「ご、ごめんなさい///」カァーッ

真姫「ちょ、なによそれ!」

希「……///」ウツムキ

花陽「……///」ウツムキ

海未「……」

凛「……」

穂乃果(え、なにこの空気)

真姫「…………なによ、それ」

ことり「……えと、続ける?」

絵里「あ、その……」

海未「……あ、なんかよくわかんないんでもういいです」

凛「凛も『たゆんっ』で全部飛んだにゃ」

穂乃果「……ねぇ」ヒョコッ

海未「はい?」

穂乃果「…………壁は?」

海未「……え?」

穂乃果「……壁は?」

ことり「はいはいはいっ、だよ?」ヒソヒソッ

海未「……」

穂乃果「……壁は?」

海未「……すみません。そういう気分じゃないんで」

穂乃果「……」シュン

ことり「……っ!」パァァ

海未「ていうか、今まさに壊そうとしてたんですよ」

海未「それをあなたたちが……」

穂乃果「……ごめん」シュン

海未「……いえ」

ことり「ことり的には、落ち込んだ子犬のような穂乃果ちゃんが見れて満足だよ」ヒソヒソッ

海未「お黙りなさい」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──部室、就寝中──


灯りは消え、静寂が訪れた部室。

いつもだったら誰よりもはやく寝てしまう私なのに。

今日は一番最後みたいです。

……楽しかった、ですか。

一番最初に思い浮かんだのは凛の笑顔。

幼い頃と変わらず純粋無垢で。

その笑顔に今日も救われました。

遠慮がちな私の背中を押してくれた。

──もちろん凛だけではありません。

穂乃果もことりも。

花陽も真姫も。

にこも希も絵里も。

みんなが、私に力を貸してくれる。

こんなに嬉しいことはありませんね。

……μ'sは先輩後輩無しだから。

誰かが立ち止まったら誰かが引っ張る。

それがμ'sというグループだから。

きっとこの九人だから、そうやって走って来れたのだ。

……来年から、どうなるんだろう。

凛が立ち止まった時、私にはなにが出来るのだろうか?

私以外の誰かが立ち止まったら、

その人を引っ張れるのでしょうか……。


「──眠れない?」

「起きていたのですか?」

「ちょっと、気になっちゃって」

隣にいることりがひそひそ声で話し掛けてきました。

あ、枕が……。

なるほど、きっと私が眠れるまで待っていてくれたのですね。

「ねぇ、何を考えてたの?」

ことりは、いつもこうです。

いつも私や穂乃果に優しくて。

私たちよりちょっとだけ、大人びていて。

昔から、私と穂乃果に何かあった時は。

必ず隣にいてくれるのです。

「海未ちゃん、ババ抜きの時みたいな顔してるから」

くすくすっといたずらっ子のように笑う。

「……見えてないのにわかるのですか?」

「わかるよ。ことりは二人の幼馴染みだもん」

なんだか妙に説得力のある言葉ですね。

「明日のことを考えていたのです」

「明日のこと……」

ことりは少し考えてから、言葉を続けます。

「海未ちゃん、去年、ことりが言ったこと覚えてる?」

去年、ことりが?


「ほら、海未ちゃん悩んでたでしょ?」

ああ、あの時の。

「もちろん覚えていますよ」

『──だって海未ちゃんが止めたくらいで穂乃果ちゃんが止まると思う?』

忘れるわけがない。

その言葉で、私は救われたのだから。

──だけど。

なぜ、今、この言葉なのでしょう?

「海未ちゃんもなんだよ」

「私、も?」

何を言っているのでしょう。

ことりの意図するところがまるでわかりません。

「もー! 海未ちゃんったら。鈍感だなぁ」

そんな風に呟いて、おかしなことを言う。

「海未ちゃんだってそうなんだよ。

穂乃果ちゃんやことりが止めたって止まらないの」

ことり、なにを?

「海未ちゃんにだってあるんだもん。

ううん、誰にだってあるの」

「……なにが、あるのですか?」


ことりは一呼吸置いてから言葉を紡いだ。

「──未来を変えられる可能性」

その言葉にどんな想いを込めたのか。

私はことりが伝えたいことをどれ位理解出来たのか。

私にはわかりません。

だけど、一つだけわかったことがあります。

それは、今私が立ち止まりそうになっていて、

それをことりが引っ張ってくれたこと。

「ありがとう、ことり。

明日はよろしくお願いします」

「了解しました。ご主人様っ♪」

もう、大丈夫。

私には穂乃果とことりがいて。

私にはみんながいて。

そうやって、どんどん前に進んで行くんです。

「おやすみなさい」

様々な想いを込めて、声を掛けた。

今は届いてなくてもいい。

届けたい、そう思うことが大切だから。


「──ん、海未ちゃん?」

「凛?」

「あ、ごめんね。起こしちゃった?」

「うん……」

寝惚け眼を擦る凛。

海未ちゃん、あとはよろしくね。

そう呟いて、枕をお気に入りの物に交換することり。

「ヨキニハカラエミナノシュー……サラバッ!」

頭まですっぽり布団を被り、

伝説のメイドは就寝されました。

「海未ちゃん、あの……」

「凛? どうしたのです?」

「手……握ってくれない?」

暗くて凛の顔は見えません。

どんな顔をしているのでしょうか?

無言で、凛の手を取る。

私の真っ赤な顔もきっと今は見えないから。

だから少しだけ、大胆になれたのかも。

握る手に少し力を込めると、凛も合わせて力を込めてくれます。


「……どうしたのですか?」

「……うん」

「ふふっ。当ててみましょうか?」

「うん」

「怖い夢を見てしまった、とか?」

「……ハズレにゃ」

先ほどよりも少し弾んだ声。

凛が楽しそうなのがわかって、

思わず口元が緩んでしまいそうです。

「じゃあ、なんでしょうか? ホームシック?」

「ぶっぶー」

「ラーメンが食べたい?」

「それは、食べたいけど違うにゃ」

ふふっ。食いしん坊ですね。

「降参です。答えを教えてください」

「もー、海未ってば、仕方ないわねぇ」

なんて言ってくすくすと笑う凛。

それ、にこに怒られますよ?

「正解は、とっても怖い夢を見た、でした」

「なんだ、ほとんど合ってたじゃないですか」

「……違うよ、全然」

「何が違うのです?」

私は、夢をあまり見ません。

睡眠時間を規則正しく取るからでしょうか。

いつも熟睡しているようで……。

だから、違いがわからないのでしょうか?


「ただの『怖い夢』だったらね、

最後はみんなが、海未ちゃんが助けにきてくれるんだにゃ。だけど──」

そう続けた凛の声はすごく曇っていて。

「さっきの夢は、みんながいなくなっちゃう夢」

まるで先ほどの明るさが嘘のよう。

いつもの、程良い高さの綺麗な声なのに。

──凛も不安だったのですね。

私は握った手にぎゅっと想いを込める。

「……海未ちゃんの手、あったかいにゃ」

私は、ずっとあなたと一緒です。

そんな想いを込めて。

「なんか、安心したら……眠くなったにゃ」

例えこの先、お互いの道が別れても。

私はあなたを想う。

「おやすみなさい、凛」

──大好きです。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──三月十五日、音ノ木坂学院前──


姉「こ、ここが音ノ木坂学院……」

妹「ここでμ'sが……」

ミカ「おーい! 君たちだねー♪」

ミカ「穂乃果たちから聞いてるよ! こっちにおいで!」テクテク

姉「あ、はい」トコトコ

妹「……」トコトコ


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──講堂入口──


ミカ「お待たせー!」ニコッ

フミコ「ミカ! 早かったね」

ミカ「ヒデコは?」

フミコ「照明のチェックをしてて……あ、きたきた!」

ヒデコ「ミカ、お帰り! その子たちが?」

ミカ「うん、今日のお客様!」ニコッ

姉妹『よ、よろしお願いします』

ヒフミ『よろしくお願いします』ニコッ

ミカ「チケットは持ってきた?」

姉「はい……」


ガサゴソ。


妹「どうぞ」

フミコ「……うん、たしかに!」

ヒデコ「ではでは、特等席までごあんなーい!」

妹「あ、あの!」

ヒデコ「ん?」

妹「えと、その……」

ミカ「どうかした?」

妹「今日、お休みなんじゃないんですか? ……学校」

フミコ「そうだよ。それがどうかした?」

姉「──じゃあ、どうして皆さんは学校に?」

妹「……」コクコク

ヒデコ「穂乃果たちの力になりたくてね」ニコッ

フミコ「友達だからね! 困ってる時はお互い様だよ」ニコッ

ミカ「それにμ's は私たちに夢をくれたから!」ニコッ

姉「μ's が……」

妹「……夢を?」

ヒフミ『うんっ♪』ニコッ


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──夢見る少女──


音ノ木坂学院の講堂。

μ's はここからはじまったって聞いた。

ファーストライブは誰もいない講堂だったって。

私たちは真ん中の席に……舞台が一番見やすいところに座らせてもらっている。

μ's のライブ。

生で観るのははじめて。

……私たちの最後の思い出作り。

このライブが終わった後。

私はなにを思うのかな。

このライブが終わったら、私たちは離れ離れになっちゃう。

なのにどうして?

最後の時間は、二人きりのほうがよかったかな?

どう、思ってるんだろう。

……顔、見れないよ。


パチンッ!


瞬間、講堂から明かりが消えた。


──舞台が整ったんだ。


ガチャン。


という音と共に閉じたままの幕にスポットライトが当たる。

「みんな、行きますよ! あの子たちを最高の笑顔に!」

綺麗な声にどきっ、とした。

「いちっ!」

「にっ!」

「さんっ!」

「よんっ!」

「ごっ!」

「ろくっ!」

「しちっ!」

「はちっ!」

「きゅうっ!」

「μ's ! ミュージック……」

『スタート!』

μ's 点呼。

初めて聴いた。

心の底からなにかが湧き上がってきて……。

ワクワク、してる?


『──そして、わたしたちはめぐりあうー』


海未ちゃんの歌声が響くのと同時に幕が開いた。

和装に身を包んだメンバーたち。


一番目を惹くのはその中心にいる人物……。

あ、あれが海未ちゃん!?

昨日の印象とは違ってすごく凛々しくて。

目蓋を伏せた横顔はすごく綺麗で。

BGMに合わせて扇子を振る姿はすごく華麗で──。

澄んだ歌声に乗った歌詞、

一つ一つが私の心を揺さぶった。

私を待つ道。

勇気。

夢。

希望。

旅立ち。

その全てにみんなが想いを込めて歌ってくれているんだ。

これが、μ's なんだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



今終わったのは何曲目だろう?

楽しい。

時間を忘れてはしゃいじゃった。

マイクを持った海未ちゃんが一歩前にでる。

「み、みなさんこんにちは!

園田 海未役をしております、園田 海未と申します」

緊張して、顔を真っ赤にした海未ちゃん。

歌っている時とのギャップに思わずくすりと笑っちゃった。

あ、メンバーのみんなも笑ってる。

「ほ、本日は音ノ木坂学院に足を運んで頂き、

ありがとうございます!」

そっか、この夢のような時間も。

もう、終わりなんだ。

「短い時間ですが、お二人の一生の思い出になればと思って、頑張りました!」

……今日、ここに来てよかった。

最後の時間はこの場所でよかったんだ。

「名残惜しいですが、次が最後の曲です」

こんなにも楽しくて。

こんなにもキラキラしてて。

「最後の曲も、想いを込めて歌います」

たった二人の観客のために全力で歌って踊って……。

楽しませてくれた『みんな』。

こんなの、絶対忘れないもん。

「お二人に送る、別れと次の夢に向かう約束の曲」

受付のお姉さんたちが言ってたこと、わかった気がする。

「聴いて下さいっ!」

μ's は夢をくれるんだって。

「──Paradise Live」

私のやりたい、こと。

私の夢は──。



『Three, Two, One, Live!』



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──それから少し時間が経って


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──三年生教室──


穂乃果「──でさ、最近どうなの?」

海未「どうって?」キョトン

ことり「凛ちゃんのことに決まってるよぉ」

海未「あー……」

海未「そ、そういえば、あの二人から手紙を頂きましたよ」ニコッ

穂乃果「ホント!? 穂乃果も見たーい!」キラキラッ

ことり「ことりもー!」ニコニコ


ゴソゴソッ。


海未「はい、どうぞ」ニコッ

穂乃果「えっと、なになにー」

ことり「ふむふむ……」

穂乃果「おー!」

ことり「へぇー!」

穂乃果「二人でラブライブに出る、かぁっ!」ニコッ

海未「素敵な夢ですよねっ♪」

ことり「叶うといいねっ♪」ニコッ

海未「はいっ♪」ニコッ

穂乃果「──穂乃果たちも負けていられないよ!」


ことり「ふっふっふっ。次の大会はことりたちが頂くよっ♪」ニコッ

穂乃果「おぉっ! 自信たっぷりだねっ!」

海未「ことりと穂乃果のペア、すごい完成度ですよね」

穂乃果「そうかなぁ。海未ちゃんたちには負けるよ?」

海未「そ、そんなことは」アセアセ

ことり「──だって海未ちゃん、凛ちゃんからの誕生日プレゼント、肌身離さず付けてるんだもんね///」

穂乃果「おぉっ! 猫のネックレスだね!」

海未「な、なぜそれを!?///」アセアセ

ことり「ふふっ♪ コレだよ!」スッ

穂乃果「よっ! 出ました『ことりノート』!」

海未「ことりノート!?」

ことり「ふふんっ! ことりにはなんでもお見通しなのだっ!」ドヤァ

穂乃果「すごいよことりちゃん!」パチパチッー

海未「ま、また胡散臭い物を……」

ことり「え? じゃあ、この情報は?」

ことり「最近海未ちゃん、ウエストが──」

海未「ストップ! ことり、ストップです!」

穂乃果「あははっ♪ 幸せ太りってやつじゃない!?」ニコッ

海未「なっ!///」

ことり「もー、穂乃果ちゃんったらぁっ♪」

海未「……穂乃果? ことりぃ?」ゴゴゴッ!

ことほの『あ』

海未「いい加減、私をからかうのは……」ニコニコ

ことほの『…………』コクン

ことほの『にっげろーっ!』ダッ!

海未「あっ! 待ちなさいっ!」


海未「…………まったくもう」

海未(三年生になっても、『いつも通り』ですね)ニコッ


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



──海未の答え──


──とはいえ。

ことりも穂乃果ももう少し落ち着いて欲しいものです。

私たちは三年生なのですから。

あの三人のようにしっかりしないと。


荷物をまとめて、席を立つ。

教室を見回すとすでに私一人だけでした。

窓の鍵を確認しなくてはいけませんね。

一度肩に掛けたカバンを置いて、窓際へ。

鍵が掛かっていることを右側から丁寧に確認して……。

どうやら開いているのは穂乃果の席の窓だけのようですね。

ふふっ。

今日は暖かかったですからね。

元気で活発な穂乃果には、少し暑かったのかもしれません。

さっ、早く閉めて部室へ──。

その時でした。

ふと、目に入ったのは校庭でバドミントンをする一年生。


……いえ、今はもう、二年生でしたね。

そういえば、いつかの時もこんなことがありましたね。

──授業中、『あのシーン』のことを考えていた時。

変わることを恐れていた私。

今の私だったら、穂乃果になんと告げられるのか……。

アイドルは無し、ですか。

……それで、良かったのかも。

ううん。

アイドルは無し、それで良かったのです。

私たちは九人で目指したのですから。

悩んで。

傷付いて。

笑って。

そうして最高の結果にたどり着いたのだから。

みんなでやり切ったのだから。

みんなで笑顔になったのだから。

みんなを、笑顔に出来たのだから。

きっとそれが、私たちの『今』なのだから。



凛が打ったシャトルが風に乗って……。

大きな弧を描いて真姫の頭上を遥かに越えて行きました。

ごめんにゃー、と空を仰いだ拍子に目線が私の方に。

おーい、うーみちゃーんーっ!

大きく手を振る凛。

胸元の真っ赤なリボンが凛の躍動に合わせて大きく揺れる。

──リボン、似合ってますよ。

私も大きく手を振り返す。

リボンを渡した日、凛は言っていました。

将来、音ノ木坂で体育の先生になりたいと。

アイドル研究部の顧問になってダンスを教えたい。

素晴らしい夢です。

──さて、私もそろそろ向かいますか。

五月に行われるスクールアイドルの大会。

そこで凛とペアを組んで優勝を目指します。

みんなの夢ほど大きくはないかもしれませんが。

それが今の私の夢なのです。

輝かしいステージ。

みんなの笑顔。

二人で上がる表彰台。

その物語の主人公は私、園田 海未なのだから。

──私の夢は、私自身が叶える物だから。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


【ラブライブ!】海未「わ、私の誕生日……?」


おしまい

終わりです。

見て下さった方、コメント下さった方、ありがとうございました。

おつです

面白かったですよ

乙乙
陰で行動するメンバーも良かったしうみりんも最高だったよ!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年03月06日 (金) 02:52:50   ID: acT-83k9

今回は今月中に終わることを祈ろう

2 :  SS好きのU3さん   2015年03月14日 (土) 09:01:53   ID: hMg9qOau

やっぱり今回も誕生日までに終わらないのか…

3 :  SS好きの774さん   2015年03月22日 (日) 13:06:29   ID: dVZGmsqG

なんで完結タグ付いてるんですかね…
紛らわしいです…

続きが気になります
がんばってください!

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