三日月(今日は2月13日。明日は)
三日月「……バレンタインデーかぁ」
卯月「ぷっぷくぷー♪ 明日は司令官にとっておきの悪戯をしつつチョコを渡すぴょん!」
文月「えぇ~普通に渡した方が絶対にいいよぉ~」
睦月「き、如月ちゃーん……明日は……」
如月「ふふふ、分かってるわよぉ睦月ちゃん。明日は一緒にチョコレートを渡しに行きましょ。睦月ちゃん、司令官の前だと緊張しちゃうんだもんね」
睦月「ありがとう! 如月ちゃん!」
皐月「ボクのが一番美味しいに決まっているさ! なんたって、何回も指を切りながら苦労して作ったんだからね! ……うん、そうに決まってるさ」 ジワァ
望月「……とりあえず消毒はした? したんだったら絆創膏はい」
弥生「……努力は報われるから……大丈夫……」 グッ
皐月「ありがと……」
菊月「手作りチョコレート、か……私達のキャラじゃないな。なぁ長つ――」
長月「え? 私が渡すのはちゃんと手作りチョコレートだぞ?」
菊月「」
三日月(……これだけチョコレートを渡す人がいる中、私なんかからチョコレートを貰って司令官は嬉しいのかな……)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※だいぶ過ぎてましたがバレンタインSSです。
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如月「ん? どうかしたの三日月。なんか考え事?」
三日月「へ? あっ、いやその……み、みんな司令官にチョコレート渡すんだなぁって思いまして」
如月「そりゃまぁそうよぉ~」
睦月「提督にはいつも」
文月「お世話に」
卯月「なってるぴょん!」
菊月「うむ。感謝の気持ちを伝えるにはもってこいの日だ」
望月「っと、自分のキャラではないとか言って手作りチョコを作っていない方がそう述べております」
弥生「……望月……やめてあげて……菊月が泣きそう」
皐月「三日月は司令官にチョコレート渡さないの?」
三日月「それはまぁ……渡したいですけれど……」
皐月「? あれ、三日月って料理苦手だったけ? 得意だったイメージあるんだけれど」
三日月「え、えーっとですね……その……料理は確かに苦手ではないんですけれど」 モジモジ
如月「…………」
如月「ねぇねぇみんな」
睦月「ん? どうしたの如月ちゃん」
如月「チョコレート渡したら、この中で誰からもらったチョコレートが一番嬉しかったか司令官に決めてもらいましょうよ~」
三日月「!?!?!?!?!?」
皐月「いいねぇそれ! 面白そう!」
如月「でしょでしょ~?」
卯月「うーちゃんも賛成ぴょん!」
望月「え~、マジで? めんどくせぇ~。……一応あるけどさぁチョコ」
卯月(望月……多分一番厄介な相手だぴょん)
長月「勝負事の方が燃えるしな。私も賛成だ」
菊月「わ、私は……」
如月「そういえば今日と明日は間宮さんが厨房を開放してくれているらしいから、この後作りに行くことも可能ねー」
菊月「ふっ、勝利は私の手の中にある」 キリッ
菊月「……三日月、まだ作っていないのだったら、お前もチャンスがあるぞ。私は少し用事があるから出かけてくる。……別に材料を買いに行くわけではないからな。お前らついてくるんじゃないぞ!?」 テクテク バタン
三日月「は、はぁ」
卯月「ふっふっふ……うーちゃん尾行しちゃうぴょん!」
長月「やめてさしあげろ」
如月「ふふ、みんな賛成みたいね。睦月ちゃんと弥生もいいかしら?」
睦月「睦月は全然かまわないよ!」
弥生「……弥生も……別にいいよ」
如月「よかったわぁ~。……三日月もいい?」
三日月「……みんなが賛成するなら……私も賛成です」
如月「……そう。なら今からみんなはライバルよ~。お互いに頑張りましょうね!」 ニッコリ
睦月型シスターズ「「「おー!」」」
三日月「お、おー!」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
三日月(ど、どうしよ……賛成してみたものの、私なんかが一番になれるわけないんだよなぁ)
金剛「HAHAHA! 提督のハートを掴むのはワタシデース!」
比叡「こ、今回ばかりは比叡も(司令に負けないように)気合入れていきます!」
榛名「榛名も精一杯頑張ります!」
霧島「私の計算では、司令には私のチョコレートが一番好まれると思います」
金剛「みんな強気ネー! ふっふー、それでこそマイシスターズデース!」
三日月(……金剛さんたちもチョコレート渡すんだもん。きっとみんな渡すよね。だから私があげたって……)
「でねー、司令官たらねー」
三日月「?」
雷「改良された私の魅力に気が付いてくれなかったの!」
響「いろんな艦娘の面倒を見ているんだ。仕方がないさ」
雷「まぁそうよねー」
電「あははは……あっ、三日月ちゃんなのです!」
三日月「こんにちは、電ちゃん」
電「こんにちはなのです!」 ギュー
雷「三日月が一人だなんて珍しいわね。それと電。廊下でいきなりみんなが見てる中誰かに抱き着くなんて恥ずかしいわよー」
電「お姉ちゃん達か三日月ちゃんにしかしないから大丈夫なのです!」
雷「そう言う問題じゃないわよ」
響「まぁ初期艦だった電の次にこの鎮守府に来たのは三日月だったらしいからね」
雷「もう。……迷惑かけるわね、三日月。この子、まだまだ甘えん坊さんだから……」
三日月「いえいえ、とんでもないですよ。私も電ちゃんと抱き合うのは好きなので、全然大丈夫ですよっ!」 ギュー
電「嬉しいのです!」
雷「……水を差すようで悪いけど、あんまその発言は他ではしないようにね」
響「ハラショー」
三日月「ところで皆さんは何かしていたのですか?」
三日月(響さん……なんで鍋なんか持ってるんだろ)
響「私の持っているものを見てくれ。ご覧の通りさ」 ドヤァ
三日月「すみません、全然分からないです」
響「……Мне грустно(私は悲しい)」
三日月「ご、ごめんなさい」
雷「むしろ響姉の持ってるものを見て分かったらすごいから気にしなくて大丈夫よ」
電「厨房を借りて明日司令官さんに渡すチョコを作っていたのです!」
三日月「あ、なるほどーってじゃあなぜに鍋!? もしかしてその中身って……チョコなんですか?」
響「もちろんボルシチだよ」
三日月「……響さん、明日って何の日か知ってますか?」
響「バレンタインデーだね。女性が男性にチョコを渡す風習がある謎の日だ」
三日月「ではなんでボルシチなんですか!?」
響「知っているかい三日月。……私はボルシチしかまともに作れない。……本当は私もチョコを……作りたかった……」
三日月「……あの、なんか……ごめんなさい」
響「気にしないでいいよ」
雷「響姉、嘘は付いちゃダメじゃない」
響「人聞きが悪いな。冗談だと言ってくれ。……チョコレートばかりだと飽きると思ったから、私は発想の転換でボルシチに決めたんだ。そういうことにしておいてくれ」
三日月(嘘だったんかーい)
雷「まぁ、何を渡そうが今回ばかりはみんなに負けないわよ!」
三日月「? 何かあるんですか?」
電「電達の中で誰が司令官さんにチョコを渡して一番喜ばせることができるか勝負しているのです」
三日月「あははは……どの姉妹も同じような事してるんですね」
雷「睦月型姉妹も同じことやってたりするの?」
三日月「はい。私達の場合は誰からもらって一番嬉しかったか、ですけれど」
雷「なるほど。ってことは……三日月はこれから厨房に行ってチョコレートを作るのね!」
三日月「え!? ……まぁ、その……」
雷「それだったら私が美味くて可愛いチョコレートの作り方を教えてあげるわ! 電がいつもお世話になっているお礼としてねっ!」 ニッコリ
三日月「え、ええ!? そ、そんな……申し訳ないですよ。それに、私からチョコレートを貰って司令官が嬉しく思うかも疑問ですし……」 アセアセ
雷「そんなの嬉しいに決まってるじゃない!」
電「そうなのです!」
響「そんな心配全く必要ないよ。大丈夫さ。司令官が誰かから何かを貰って嫌がるはずがないさ。石とか渡さない限り問題ないと思うよ」
三日月「…………」
雷「あっ、でも余計なお世話とかだったら全然断ってくれて構わないのよ?
三日月(……そうよね。なんで弱気になってるんだろ、私)
三日月「……いえ、雷さんから教えてもらえるなら百人力です! やるからには姉妹のみんなには負けたくないはありません! 戦いなんですから!」 ゴゴゴゴゴ
電「おお、三日月ちゃん燃えているのです!」
響「ハラショー」
雷「そうと決まれば早速厨房へ向かいましょ!」
三日月「お世話になります」 ペコリ
雷「いいのよいいのよー。どうせこの後おっちょこちょいな姉にも教える予定だったし」
三日月「え?」
ダッダッダッダ
暁「ざ、材料……はぁ、はぁ……か、買ってきたわ!!」
雷「はいはい、お疲れ様」
暁「はぁ、はぁ……わ、私が……ほ、ほんきぉ……出したら……はぁ、はぁ……こ、こんなもんよ!!」
雷「とりあえず息を整えてから何か言いましょうねー。ほら、汗だくじゃないっ。ハンカチで拭いてあげるわ」 フキフキ
暁「あ、ありがと……お礼は……ちゃんと……言えるし……」
三日月「え、えーと……なんとなく予想はできるんですけれど」
響「明日がバレンタインデーだってことを忘れていて、暁は材料を用意し忘れていたんだよ」
電「3日前くらいにみんなで材料は個人で用意するって話してあったのにこの結果なのです」
三日月「ははは……暁さんらしいです」
暁「ふぅ……レディーは速攻で息を整えるわ! そして三日月じゃない」
三日月「こんにちは、暁さん。あっ、そういえば私……材料持っていないです……」
雷「あぁ、そういう事なら心配ないわ」
暁「もしかして三日月もこれからチョコ作るのかしら? なら私の材料を分けてあげるわ! 多めに買ってきたからね!」
雷「もし誰かうちの姉みたいな状況の人がいたとしても、そうすれば助けてあげることができるからね。もし余ったとしても間宮さんに提供すれば一石二鳥よ!」
三日月「……なんていうか、さすが雷さんです」
雷「褒めても何も出ないわよ! それじゃあ、厨房へゴーよ!」
三日月「……はい!」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
~厨房~
三日月(厨房に着きました)
三日月(電ちゃんと響さんは、『邪魔になってしまうかもしれないから』と言う理由で一緒に来なかった」
雷「……暁姉、なんでミニボーロ買ってきてるのよ。材料リストに載せてないわよ」
暁「うっ、だ……だって視界につい入っちゃったんだもん……」
雷「まったく、ダメじゃない。まぁ買っちゃったものは仕方ないわね。後でみんなで分けて食べるわよ。独り占めはダーメ」
暁「わ、分かってるわよ! お母さんか!」
三日月(この二人に私が混ざるなんてなんだか珍しい。新鮮な気分だなぁ)
暁「三日月! 一緒に一人前のレディーとして頑張りましょうねっ!」 グッ
三日月「は、はい! 材料ありがとうございます、暁さん」 ペコリ
暁「気にしないでいいのよ!」 ニッコリ
三日月(暁さんって、暁型4姉妹の中ではあんまり話したことなかったけれど、フレンドリーでいい人なんだなぁ。この前は思い切り転んで頭を打って、大変なことになってたりしたけれど……)
雷「じゃあ、まず最初に大事な事を教えます」
三日月「はい! どうぞよろしくお願い致します!」
暁「何かしら?」
雷「美味しい食べ物を作る時のコツです。それはズバリ、笑顔よ!」
暁「は?」
三日月「あぁ、食べてもらう方の笑顔を想像しながら作ると、なんだか美味しい料理を作れる気持ちになるかも……」
雷「おお、三日月分かってるわね! その通りよ!」
雷「食べてくれる人が笑顔になってくれることを想像しながら作ることが大切だわっ。その際自分の表情も笑顔にすることもこれまた大切。おいしくなーれ、おいしくなーれって気持ちを込めながら作ると、自然と笑顔になれるからっ」 ニコ
暁「……それ、あなただけじゃないの? 大体笑顔で味が変わるもんなの? 気のせいじゃない?」
雷「……暁姉、もう私何も教えないよ?」
暁「大事なのは笑顔ね!!」 ニヘラァ
雷「それは笑顔じゃなくて気持ち悪い表情よ!」
暁「う、うっさい! 一人前のレディーに対してなんてこと言うのよ! プンスカ!」
三日月「と、とりあえずそろそろ始めましょうか」
雷「そうね。じゃあまずはね――」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
雷「だから、それじゃあチョコ刻み過ぎだって。みじん切りじゃないのよ? いい、細かく刻むんだけど、こうミルクチョコレートとチョコレートが――」
暁「う、うぅ……分かってはいるんだけどぉ……」
雷「……大丈夫よ! 最初からできるわけじゃないんだから! 少しずつやっていけばいいのよっ」
暁「……うん」
三日月(……次はどうすればいいか指示待ちだなんて言えない)
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
暁「ねーね、三日月―」
三日月「はい、なんでしょう……って……ぷっ、ふふふ」
暁「ちょ、なんでいきなり笑い始めるのよ!」
三日月「す、すみません……でも……ふふ、暁さんの顔にチョコが付いてて……髭みたいになってて」
暁「え!? それ本当!? さ、さっき口の上、手で擦った時に付いたのかな……」
三日月「ちょっと待っててください。今ハンカチで拭き取りますから」
暁「ありがと。三日月って優しいのね」
三日月「いえいえ、そんなことないですよ」 フキフキ
雷(ほほえまー)
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
三日月「あっ、暁さん型はハートの形にするんですか? すっごくかわいいです!」
暁「ハートの形は可愛いからね。……べ、別に司令官が相手だからこれにしたわけじゃないし」
雷「型はシンプルなのが一番よ!」
三日月「雷さんはどんな形にしたんですか?」
雷「もちろん自分の形にしたわ! 司令官においしく食べてもらいたいわねー」 ニコニコ
三日月(……きっとかみなりの形ってことよね、うん。きっとそうに決まってるわ)
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
雷「おいしくなーれ、おいしくなーれ♪」 ニコニコ
三日月「おいしくなーれ、おいしくなーれ♪」 ニコニコ
暁「お、おいしーくなーれ、おいしく……なーれ」
雷「暁姉! そんなんじゃダメよ! 恥ずかしがらずにもっと気持ちを込めなきゃ!」
暁「うぅ……お、おいしくなーれ! おいしくなーれ!!」
雷「そう! その調子よ!」
三日月(みんなで料理作るのって、楽しいなぁ♪)
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
雷「よし、これを冷蔵庫に入れて……二人ともお疲れ様! ひとまず完成よ!」
三日月「やったー!」
暁「やったわー!」
三日月「雷さん、暁さん! 本当にありがとうございました!」
暁「私にはお礼言う必要ないわよ? 雷、本当にありがとうね」
雷「いえいえー」
三日月「でも、材料頂きましたし……やっぱりお二人のおかげですよ!」
暁「そ、そう……まぁ、お礼を言われるのは良い気分ね!」
雷「チョコが冷えて固まったら、容器に入れてラッピング作業に入るわ! 大事なのはここからよ。二人とも、頑張りましょ!」
三日月「はい!」
暁「わかったわ!」
雷「……と言うわけで……ここでちょっと裏技を……」
~一方その頃~
如月「青葉さん、今お時間空いてます?」
青葉「おぉ、如月さん。青葉は今暇タイムですよー。どうかしましたか?」
如月「ふふ、実はですね。……ちょっと耳を貸してください」
青葉「? 構いませんよ」
如月「あのですね……――――――――」 ボソボソ
青葉「!! おおう、それは実に面白そうですねー。青葉、了解しましたっ!」
如月「ふふ、よろしくお願いします」 ニッコリ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
三日月「今日は本当にありがとうございました!」
雷「いいっていいってー。お安い御用よ!」
暁「転んでチョコ落としたりしちゃダメよ?」
雷「いや、そんなドジは暁姉以外踏まないでしょ。ましてや三日月みたいな子が」
暁「う、うっさい!」
三日月「あははは……用心します」
雷「それじゃ、明日ちゃーんと渡すのよ! またねっ」 スタスタ
暁「お、お互いに頑張りましょ! 三日月!」 スタスタ
三日月「はいっ! ありがとうございましたっ!」 ペコリ
暁「ふふふ、我ながらよくできたわ」
雷「まぁ、暁姉には悪いけど、負けないわよ!」
暁「へ? 何か勝負なんかしてたっけ?」
雷「…………」
暁「え!? 無視!?」
三日月「……」
三日月(で、できちゃった……手作りチョコレート……)
三日月(まさか高速冷却材とかいうアイテムがあるなんて、知らなかったわ。さすが妖精さん)
三日月「こ、これを……司令官に渡したら……よ、喜んで……くれるよね」
――――――――――――――――――――――
提督『え? チョコレートを……くれるのかい?』
提督『はは、ありがとう三日月。とてもうれしいよ』
提督『……三日月、君に渡したいものがあるんだ。……受け取ってくれないか?』
テレレレーレー、テレレレーレー♪
ケ・ッ・コ・ン・カ・ッ・コ・カ・r
――――――――――――――――――――――
三日月「~~~~~~!!//////」 ガンガンガンガン!!
三日月「お、落ち着くのよ三日月!! 心頭滅却! 心頭滅却!!」
呂500「ねぇねぇでっちー、ミカヅキーが壁に頭を何度も打ち付けているのは日本の文化ですって?」
伊58「きっと疲れているんでち。あとあんな行為は日本の文化ではないでち。変なこと言ってないで引き続きオリョクルに行くでちよ」
呂500「はーい!」
三日月「……ふぅ……落ち着いたわ……」
ピンポンパンポーン
三日月「?」
青葉『えー、テステス、テステス。マイクのテストちゅー、マイクのテストちゅーです。マイクチェック、1、2……え? 人の台詞取るなって? すんません』
三日月「青葉さん?」
青葉『……よし、大丈夫みたいですね。あー』
青葉『どもども、恐縮ですぅ! 少し前にこの鎮守府に着任した青葉です!』
青葉『いやいやー、皆さん明日は待ちに待ったバレンタインデーですねぇ!』
青葉『私含め艦娘の方々は明日、司令官に日頃の感謝を込めて何か贈り物をするんじゃないですか? そこで、アイデアがあるんです!』
青葉『明日……みんなで同時に司令官にお渡ししませんか? 皆さんが一斉に集まる夕食まで何も渡さず、知らんふりをするんです。そして「あー、誰からもチョコが貰えないないのかぁ。悲しいなぁ……」となる司令官。そ・こ・で! 皆さんからの一斉に渡される贈り物の数々! ……良いサプライズになると思いませんか? その名も……【バレンタインデーサプライズ】です!』
三日月(思った以上にそのまんまのネーミングだ!)
三日月「……あー、でも良いアイデアですね。だけどこれ、司令官も当然聞いているんじゃ……」
青葉『疑問を感じたそこのあなた! ご心配ご無用です! 司令官は今発案者である如月さんに外へ連れ出されておりまして、お散歩なうです。なので、この放送は聞いておりません! 内部放送ですので!』
三日月「なるほど。結構考えているんですね」
青葉『この青葉、抜かりはありません。ただ……これだけでは終わりませんよ』
三日月「?」
青葉『この鎮守府の中で、誰からもらって一番うれしかったか……司令官に決めてもらいましょう』
三日月「――え? ……え?」
青葉『発案者は勿論このお方! それでは、先ほど録音しました音声を流します! どうぞ!』
如月『……あ、もう喋っていいの? 分かったわぁ』
如月『皆さんこんにちは。発案者の強く美しい如月です』
如月『これを聞いているってことは、もうすでに青葉さんから説明されているわよね。なら一言だけ』
如月『提督LOVE勢の皆さ~ん。勝つのは如月だと確定していますけれど、どうぞお手柔らかにお願いしますねぇ~』
青葉『以上です! いやぁ、この駆逐艦、圧倒的自信ですっ! 提督LOVE勢への宣戦布告宣言です!!』
三日月「き、如月のおバカ! 殺されちゃいますよ!?」
三日月「それに、こんなこと第一艦隊旗艦の長門さんが許すのかしら……」
青葉『ご心配なく! 長門さんから許可はいただいております! では、一言お願い致しますっ!』
三日月「私の声どっかで聞いてるのこれ!?」 キョロキョロ
長門『えー、第一艦隊旗艦の長門だ。青葉からの説明の通りだ』
長門『皆、うっかり口を滑らせてサプライズを台無しにするなどの事はやめてほしい』
長門『ちなみに私は一番を狙っていない。ビックゼブンなだけに七番目くらいでいい』
長門『色々と炎上しそうではあるが、こんなおもしろ……ゴッホン。羽を伸ばせそうな企画もたまには良いだろう。諸君らの健闘を祈っている。以上だ』
三日月(面白そうって言おうとしたわあの人……)
青葉『というわけで、青葉からも以上です!』
青葉『皆さん……よいバレンタインデーを送りましょう! それでは、失礼いたしました!』
ピンポンパンポーン
三日月「……た、大変なことになっちゃったわ……」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
菊月「おい如月……貴様いったい何を考えているんだ?」
如月「ん~? 今は司令官のうなじのことを考えているわねぇ~」
菊月「今貴様が考えていることではない! 先ほどの放送の事だ!」 バァン!
如月「こらこら~。机を思い切り叩いちゃダメじゃない。めっ」
菊月「叩かせている原因は貴様だろう!」 バンバン!
睦月「でもまぁビックリしちゃったよねぇ。まさか如月ちゃんがあんな企画を考えていたなんてさぁ」
卯月「でも、サプライズなんて面白そうだぴょん! ぷぷぷ……司令官のビックリする顔が目に浮かぶぴょん!」
文月「あたしは案外楽しみ~!」
皐月「ボクも案外楽しみかな! 如月ナイスアイデアだよっ」
如月「ふふ、照れちゃうわぁ~」
長月「それにしても、鎮守府内で一番を決めるだなんて、だいぶ規模が広がったな」
弥生「……だね……金剛さん達とも戦わなきゃいけないのは……かなり大変だと思う。……
轟沈しないようにしなきゃ……」
望月「弥生はいったい何の説明を聞いていたのかあたし気になりまーす」
三日月「…………」
三日月「ねぇ、如月?」
如月「ん? なにかしら?」
三日月「なんであんな企画発案したんですか?」
如月「司令官のためよ。それにこうした方が面白そうじゃない。普通に渡すだけじゃつまらないでしょ?」
如月「それに、一番を決めるのだって姉妹から全体に変わっただけで大した問題はないわぁ」
三日月「まぁそれもそうですけれど……」
如月「それに、『私から貰ったって嬉しくないだろうし……』とか考えているどっかのお馬鹿な誰かさんもこうなったら渡すしかなくなるじゃない?」
三日月「…………」
如月「……もうっ、三日月は謙虚過ぎるのよ。あなたはこの鎮守府では古参組の一人なのよ? そのくらい付き合いの長さがあって、司令官があなたからチョコを貰って嬉しがらないと思う?」
三日月「……ううん。あの人は、人の好意は無下にはしない方です。……きっと、喜んでくれます……」
如月「でしょ? もっと自信を持ちなさい。三日月みたいないい子からチョコをもらって嫌がるような人だったら、如月が好きになるはずないじゃない」 ニッコリ
三日月「……はいっ!」
菊月「なんだ。三日月はそんなこと考えていたのか」
長月「真面目で謙虚なのも三日月の良い所だが、少し贅沢だな」
卯月「そうぴょん! 司令官と付き合いが長いって言うメリットを持っているのにそんな考え持つなんてダメぴょん!」
睦月「そうだよっ!」
三日月「みんな……ごめんなさい」
三日月「でも、もう大丈夫です。明日は……私が鎮守府一番の座を勝ち取りますよ!」
弥生「……弥生も……負けない」
望月「んー、まぁあたしもやるからには少しやる気出そうかな」
文月「あたしもぉー! 本領発揮するよぉー!」
皐月「ボクだって負けないよ! 一番になってやるんだからっ」
如月「ふふ、みんなやる気充分ね」
如月「司令官に嬉しいと思ってもらうためには、渡し方と渡す時の言葉が如月は重要だと思っているわぁ」
如月「……明日はみんなライバルよぉ。この中で一番が選ばれないこともあるかもしれないし、誰かが選ばれるかもしれない。どんな結果になっても、恨みっこ無し。……頑張りましょ!」
睦月型シスターズ「「「おー!!」」」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
〈翌日、2月14日。バレンタインデー〉
提督(……今日は、バレンタインデーか。……ふふふ)
提督「待ちに待った日が来た……バレンタインだ、バレンタイン」
提督「……男が女性からチョコレートを貰える日だ!!」
提督「ふふふ、見える……俺には見えるぞ。チョコレートを貰えるビジョンが!! 今日のために最近甘いものを控えたんだ! 事務作業も昨日には全部終わらせたんだ! 艦娘達も昨日今日と完全オフにしている! 抜かりはない!」
提督「……まぁ、全員から貰えるとは思えないが、確実に金剛や雷はくれるに違いない!」
提督「……というわけで、早速金剛に会いに行ってみよう。雷が先でもまぁよし」
提督「早速レッツゴー!!」
バタン
提督(さぁ、廊下に出た。二人はどこにいるかなー)
金剛「ふんふふんふふーん♪」
提督(早速金剛キタああああああああああああ!! 幸先いいね!! しかし、ここは爽やかに仕事モードで接しよう)
※提督はプライベートモードと仕事モードで若干口調を切り替えて生活しております。
提督「お、おー。金剛じゃないか」
金剛「あっ、てーとくー! おはようございマース!」 ニコー
提督「あぁ、おはよう」
金剛「ふふー、提督は今日も一段とかっこいいネー!」
提督「はは、ありがとう。金剛もいつも通り可愛いな」 ナデナデ
金剛「オーウ! 不意打ちは……卑怯ネー……///」
提督「はははは」
提督(……あれ? おかしいな。金剛なら真っ先にチョコをくれると思ったんだが……)
提督「……な、なぁ金剛」
金剛「ンー? 何ですカー?」
提督「い、いやさぁ……今日、何か私にくれるものって……無いかなぁって思ってさ」
金剛「HAHAHA! ごめんなさいデース。今日は生憎何も渡すものはないデスネー」
提督「え!? それマジ!?」
金剛「マジマジデース!」
金剛(……提督ー、ごめんなさいデース。夕食の時楽しみにしててネ!)
金剛「それでは、榛名たちとティータイムがあるから、もう行きマース。シーユー!」 タッタッタッタ
提督「お、おう」
提督「…………え!? マジで!? 金剛チョコくれないの!? んな馬鹿な!!」
提督(くっ、これが、慢心だと言うのか。てっきり金剛からは100パーセント貰えるもんだと思っていたんだが……考えが甘かったか!!)
提督「……くっ、次は雷だ!! 彼女ならくれる確率120パーセントだ!!」
ダッダッダッダ
提督「うおおおおおおお!! 待ってろ雷! 俺を導いてくれええええ!! 雷いいいいいいいいい!!」
響(……司令官、もしかして疲れているのかな……) ジー
ダッダッダッダ
提督「はぁ、はぁ……み、見つからない……いったいどこにいるんだ」
天龍「おっ、提督じゃねーか。どうしたんだそんな汗だくでよぉ」
提督「おう……天龍か……。汗だくなのは、先ほどから廊下でランニングをしているからだ! 気にするな!!」
天龍「いや、ランニングなら外でしてこいよ」
提督「まぁいいじゃないか。ところで雷をどっかで見なかったか?」
天龍「んあ? 雷? ……いや、見てねぇなぁ」
提督「そうか……わかった。……一応聞いておくけど、今日天龍は何か俺にくれたりしないのか?」
天龍「おお! 実はだな! こいつを――」
龍田「フンッ!!」
ドンッ!!
天龍「ゲフッ!!」
提督「え!? 龍田どこから現れたの!?」
天龍「」 ガク
龍田「あらあら~。天竜ちゃん眠くなっちゃったのぉ~? ならお部屋に行きましょうね~。……提督、また後で~」 ズルズルズルズル
提督「お、おう」
提督「……なんだったんだいったい。……まぁいいか……雷を探そう」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
暁「ん~~~~!! やっぱり間宮食堂のアイスは最高だわ!」
雷「本当に美味しいわ! 私も見習わなきゃ……」
暁「ありがとう三日月! でも本当に奢ってもらっちゃっていいの?」
三日月「はいっ! 昨日のお礼です!」
雷「もう、別にいいのに。でも、ありがとうね。ご馳走様!」
三日月「いえいえー」 ニッコリ
暁「しかしまぁこれじゃあ夜まで暇よねぇ」
雷「まぁね。けど、ずいぶんと大規模な企画よねぇ本当に。……誰か口を滑らせたりしないかしら。特に電とか天龍あたりは危ないわね」
三日月「ははは……まぁ皆さんを信じましょう」
暁「そうね。……司令官、今何してるのかなぁ」
雷「案外チョコくれくれ言いながら駆けまわってたりして」
三日月「それはさすがに……ないと思いますよ? いや、そう思いたいですね……」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
加賀「……そんなものはありません」
菊月「…………渡す物なんかないさ」
陸奥「あらあら~、いきなりどうしたの? そんなもの無いに決まっているじゃない」
長門「……現実と理想の区別がつかなくなってしまったのか?」
伊58「え? てーとくにあげる物なんかないでちよ? むしろ休みが欲しいくらいでち。……えっ、今日は休日出勤もしなくていいんでちか? 休みなんでちか!? ……ぅぅ!! あ、ありがとーでち!!」
北上「え~? 提督になにかあげるわけないじゃん。現実見なって~」
大井「そうですよ。しっし!」
青葉「ん? 司令官、それは新しいネタか何かですか?」
如月「ふふ……そんなのはぁ、あ・り・ま・せ・ん」
提督「…………」
提督(お、おかしい……いくら探しても雷はいないし、誰もチョコをくれない……もしかして俺って嫌われてたのか!?)
提督「如月とかも案外くれるかと思ったんだけど……現実は厳しいんだな……」
電「あっ、司令官さん。おはようございますなのです」
提督「ん? おう、電じゃないか。おはよう電。一人でいるなんて珍しいな」
電「お姉ちゃん達は用事があって、響お姉ちゃんはどっかに行っちゃったのです」
提督「なるほど。暇で散歩かなんかしてた感じかな」
電「その通りなのです」
提督「ところで電。雷がどこに行ったか知らないか? どこ探してもいなくてさ……」
電「雷お姉ちゃんなら多分三日月ちゃんと一緒に間宮さんの食堂にいると思うのです。暁お姉ちゃんも一緒だと思うのです」
提督「そっか。ありがとうな」
電「いえいえ! なのです」
提督(……この様子だと、電もくれないかな。まぁ、聞いてみるか)
提督「ところで電。今日は何の日か知っているか?」
電「? バレンタインデーなのです」
提督「だよな。……んでさ……じ、実は俺になんかくれたりしないかなぁって思ってるんだけどさ……」
電「司令官さんにですか? もちろんあげるのです!」
提督「え!? マジで!!?」
電「はいなのです! チョ――」
―――――――――――――――――――――
雷『ふふふ、明日が楽しみだわ! 司令官へのサプラーイズ!』
響『如月も面白いことを考えたね』
暁『……まぁ、一番を決めるのは余計だった気がするけれど……』
雷『まぁまぁ、この中で一番を決めるのから全体に広がっただけよ! 司令官の一番はこの雷様がいただくけれどねっ!』
雷『電! あなたおっちょこちょいなんだからつい口を滑らせたりしちゃダメよ?』
暁『いやぁ、さすがに大丈夫じゃない?』
響『……私は暁も心配だけれどね』
暁『な!? 一人前のレディーがそんな失敗するわけないじゃない! プンスカ!』
―――――――――――――――――――――
電「――っ、ちょ、チョークあげるのです!!」
提督「チョーク!?」
電(あ、危なかったのです……ついつい口を滑らせちゃうところだった……)
電「は、はいなのです! チョークなのです!!」
提督「ちょ、チョークじゃなくてチョコが欲しいかなぁ~」
電「ちょ、チョコなんてあげないのです! ……い、雷お姉ちゃん達も用意してなかったので、多分誰もチョコなんてあげないのです! ちょこっとも!!」
提督「…………ま、マジすか……」
電「お、大マジなのです! ……そ、それじゃあ電はそろそろ失礼しますのです。……し、司令官さん……ごめんなさいなのですーーーーー!!」
タッタッタッタ
提督「……やっべぇ……わりとメンタルが抉られてる……」
提督「……だよなぁ……なんで変な期待してたんだろ俺は……」
提督「くっ、……くぅううう!!」 ガンガンガンガン!!
暁「え? 何してんのかしらあの人……」
三日月「廊下で壁に頭を何度も打ち付けていますね……疲れているのかしら……」
雷「ちょ、ちょっと司令官! ダメじゃない!」 タッタッタッタ
提督「あ……雷……」
雷「どうしたのよ司令官! 頭怪我しちゃうじゃない! 何かあったの!?」 ヨシヨシ
提督「……いや、さ……現実見ちゃってさ……」
雷「げ、現実?」
提督「……雷も……俺にくれるチョコは用意してないんだろ?」
雷「うっ…………あ、あげないわ!」
提督「……だよな……」
雷「うぅ……ご、ごめんなさい! 司令官、また後でね!!」 タッタッタッタ
暁(あっ、逃げた)
提督「…………」 ズーン
暁(司令官……世界の終わりみたいな表情だわ……)
三日月「し、司令官……」
暁「!! ダメよ三日月!」 ボソボソ
三日月「で、でも……」 ボソボソ
暁「あなた……司令官に本当のこと言っちゃおうかなって思ったでしょ? そんなのダメよっ。計画が台無しになっちゃうじゃない」 ボソボソ
三日月「……ご、ごめんなさい……」
暁「三日月のその思いやりはとっても優しいと思うけど、ここで出すべき優しさじゃないわ。その優しさは後で出さなきゃダメよ。今は心を鬼にするの」 ボソボソ
三日月「……心を鬼に……」
暁「そう! 心を鬼に、悪魔にしなきゃ」
三日月「……そ、そうですよね……ごめんなさい」
暁「私も可哀想だとは思うけど、ここは我慢しなきゃ。一人前のレディーとしてね」
三日月(……そうよ……今は心を鬼に……悪魔に)
三日月(私は鬼、悪魔。私は鬼、悪魔。私は鬼、悪魔。私は鬼、悪魔。私は鬼、悪魔。私は鬼、悪魔。私は鬼、悪魔……!!)
三日月「…………」 スタスタスタスタ
暁「え!? ちょ、三日月!」
三日月「……司令官?」
提督「……ん? ……あぁ、三日月じゃないか……」
三日月「なんだかすごく落ち込んでいるようなご様子ですね」
三日月「……あれ? もしかして司令官、チョコがもらえなくて落ち込んでいるんですか?」
提督「……」
暁「み、三日月―! ダメよ!?」
三日月「……もらえるとでも思っていらしたのですか?」 ニッコリ
提督「」
暁「」
三日月「ふふふ、ごめんなさい。さすがにそんな自分は絶対にチョコを貰えるだろうだなんてこと思うはずがないですよね。失礼いたしました」 ニコニコ
三日月「そんなこと思っていたら、もらえなかった時の反動大きいですもの。私の知っている司令官はそんなことしません」
提督「え……あ、うん」
三日月「ですよね。……で、なんで落ち込んでいらしたのですか?」
提督「ま、まぁ色々あってね」
三日月「あっ、そうなんですか。そういえば司令官。今日はバレンタインデーですね」
提督「はい」
三日月「世間一般では、女性が男性の方にチョコを渡す日です。……そこで少し、司令官にお伝えしたいことがあるんです」
提督「!! お、おう。なんだ?」
三日月「多分誰も司令官にチョコなんてあげませんよ? 大人しく司令室でお仕事していた方が得策かと」 ニッコリ
提督「」
暁「鬼か!!」
三日月「……」
提督「……」
三日月「……ん?」
三日月(わ、私何言ってるの!?)
提督「……」 プルプル
三日月「し、司令官! これは……ち、違うんです! その――」
提督「うわあああああ!! もう俺おうち帰るううううう!!」 ダッダッダッダ
三日月「しれーーかーーん!!」
三日月「……ま、まずいわ」
タッタッタッタ
三日月「まずいです暁さん! ……な、なんか大変な事口走ってしまいました……!!」
暁「う、うん。見てたから知ってる」
暁「……あなた、鬼ね……」
三日月「う、うわああああん! 違うんですよ!」
三日月「私は鬼だ、悪魔だって必死に暗示をかけていたら……本当に鬼のような人を演じてしまいました……あんな心にもないことを口走ってしまいました!!」
暁「真面目か!!」
暁「ま、まぁ……司令官なら大丈夫よ。この後のサプライズで元気になるわよ! ……多分。むしろ落とされて上げられるからその反動でもっと喜んでくれるんじゃないかしら。ぎゃ、ぎゃっぷってやつ? ……とりあえず元気出しなさいよ。一人前のレディーは切り替えることも大切なのよ?」
三日月「…………はい」 ズーン
暁「……もうっ、大丈夫よ! 私と三日月の美味しいチョコをあげたらきっと喜んでくれるから! ね?」 ヨシヨシ
三日月「……はい」
暁「ほら、三日月は可愛いんだから、笑顔じゃなくちゃダメよ! 笑顔笑顔!」 ニッコリ
三日月「え……? は、はい!///」
三日月「……すみませんでした! 落ち込んでちゃダメですよね……自分でやっちゃったことなんだから、挽回しなきゃ」 グッ
暁「その通りよ! ……まったく、世話をやかせないでよねっ」 ヨシヨシ
暁「……それと一応言っとくけれど、一緒にチョコ作ったからって私たちはライバル同士なんだからねっ。三日月にも金剛さんにも、天龍にだって、雷達にだって負けないんだから! 一番は私がいただくんだからね!」 エッヘン
三日月「……ふふ、私も負けません!」 ニコ
暁「ふふん、私が一番だって証明してやるんだから! ……それじゃ、私はそろそろ行くわ。いつまでも落ち込んでちゃダメよ? じゃね!」 タッタッタッタ
三日月「あっ、はい! ありがとうございました! また後で!」
三日月「……よしっ! もっと頑張らなきゃ」
三日月「……そう言えば、まだ時間には余裕があるわね。……!! そうだ! ……良いこと思いついた! 間宮さん、今日も厨房解放してくれているわよね……よしっ!」 タッタッタッタ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
〈そして時間は過ぎ、【バレンタインデーサプライズ】の準備をする時間に〉
~睦月型姉妹の部屋~
三日月「うぅ、緊張してきました……」
菊月「まだ渡す時ですらないのに何を緊張してるんだ三日月は」 プルプル
三日月(菊月の足が震えてることについては触れてあげないでおこう)
如月「ほらほらみんな~。そろそろ食堂へ移動するわよ」
睦月「あっ、待ってよ如月ちゃーん!」
長月「みんな準備早いな……」
弥生「もう……先に行っちゃった子も……いるからね……弥生達もいそご……」
三日月「……大丈夫、渡す時の言葉はしっかり考えたんだから。昼間のご無礼の挽回をするの、三日月。……大丈夫、私ならやれる。ううん、やるんだ……」 ブツブツ
弥生「……三日月?」
三日月「ふえ!? あっ……ごめんなさい。なんでもないです」
弥生「……あまり緊張しすぎるのも……良くないよ……リラックス」 ナデナデ
三日月「はい!」
如月「みんな~? 忘れ物しないようにね」
三日月(よし、チョコ持った! 行きましょう!) ガシッ
菊月「三日月……持っている紙袋デカくないか? 何個入っているだそれ」
三日月「ふふ、食堂に着いてからのお楽しみです!」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
~食堂~
三日月「わぁ……すごい」
長月「こいつは……けっこう本格的だな」
長門「あぁ、ハッピーバレンタイン横断幕はその位置でいい。……飾りつけはこのくらいでいいか」
三日月「これは……司令官ビックリしそうですね」
電「長門さん、やる気満々なのです」
三日月「あっ、電ちゃん。こんばんは」
電「こんばんはなのですー」
三日月「すごいね……装飾から何まで全て本格的です」
電「ふふ、みんなそれだけ司令官さんへのサプライズに協力的ってことなのです。ところで三日月ちゃん……ずいぶんといっぱいチョコレート作ったのですね」
三日月「ん? あぁ、この大きな紙袋の事? この中には――」
ガシャーン!!
三日月「!?」
電「!?」
長門「おい!! 何事だ!!」
陸奥「……あれは」
加賀「いくら赤城さんの発言でも、それは許せません。訂正してください」 ゴゴゴゴゴ
赤城「あら? 私何か間違った事言いましたか?」 ゴゴゴゴゴ
電「か、加賀さんと赤城さん!?」
三日月「あの二人が喧嘩? そんなこと……ありえないです!」
加賀「チョコレートは大きさが全てよ。小さいものを多く渡したって、提督は喜ばないわ」 ドン
赤城「面白いことを言いますねぇ~。提督は加賀さんほど食いしん坊じゃありませんよ? そんな大きいチョコよりも私の小さくて大量のチョコの方が絶対に好感を得ます。質より量です。烈風と同じよ」 グイ
加賀「……頭に来ました。食いしん坊は赤城さんも同じじゃない。最近お腹の脂肪が気になっている方はどちらですか?」 ゴゴゴゴゴ
赤城「……ふふ、私ですが……それが何か?」 ゴゴゴゴゴ
電「こ、これは……珍しい光景なのです」
三日月「…………」
青葉「おおっとぉ! これは……とても珍しい一航戦同士の喧嘩だぁ! 普段とても仲がいいお二方ですが、隠れ提督LOVE勢の維持なのか、ここで衝突してしまう!! さぁ、勝つのはどっちだぁ!? 青葉、気になります!!」
長門「盛り上げるんじゃあないッ!!」
如月「ん~……これは加賀さんの方が優勢なんじゃないかしらぁ」
睦月「でも、赤城さんもかなりやるからね……分からないよ……この勝負」
皐月「はいはい! ボクは加賀さんに5ボーキを賭けるよ!」
卯月「マジぴょん!? ならうーちゃんも便乗して赤城さんに10ボーキー!」
菊月「楽しんでる場合か! あの二人が本気で衝突したらここが崩壊するぞ!(加賀に25ボーキかな)」
金剛「HEY! 二人ともー? 暴れてもイイけどさー、時間と場所をわきまえなヨー! ……それに、私のチョコと比べたら二人ともまだまだネー。提督のハートを掴むのは私ネー!」
赤城「は?」
加賀「は?」
青葉「おおっとぉ! 乱入者現る!! 面白いことになってきましたぁ!!」
長門「……おい貴様……いい加減にしろよ?」 ゴゴゴゴゴ
青葉「あ、っべぇ……あ、青葉は多分ここで轟沈します! 誰か実況の続き……お願いします!」
霧島「任されたわ! マイクチェック、1、2……よし!」
陸奥「いや、よし! じゃないわよ……」
霧島「とか言いつつ止めないんですね、陸奥さん」
陸奥「私には荷が重すぎるわ~」
天龍「おぉ!? 喧嘩かぁ!? オレも混ぜろ!」
龍田「あらあら~天龍ちゃんって勇気あるわねぇ~」
霧島「ここで戦闘狂(バカ)も加わります! さぁ、どうなるどうなるぅ!?」
弥生「……みんな……フリーダムだね……」
長月「今のうちに避難した方が良いんじゃないかこれ……」
わいわいがやがやわいわいがやがや
三日月「…………」
タッタッタッタ
暁「ちょ、ちょっと……どういう状況よこれ!」
響「なんだかざわついているね」
雷「え? なんかヤバめな感じ?」
電「あ、お姉ちゃん。実は……かくかくじかじかなのです」
暁「え!? やばいじゃないそれ!」
響「なぜ伝わったのかは聞かないでおくよ」
加賀「さぁ、久しぶりのリアルファイトよ。怪我する覚悟はあって?」
赤城「……ふふ、こちらの台詞です。入渠する準備はできましたか?」
金剛「ふふーん、肉弾戦は得意ネー!」 バシッ、バシ
天龍「……ふふふ、怖いか?」
伊58(一人だけすごく浮いてるでち)
雷「ほ、本当にどうするのよこれ! このままじゃバレンタインのサプライズどころの話じゃなくなっちゃうわ! 食堂が壊れちゃうありがたくないサプライズになっちゃう!」
三日月「…………ふぅ」 スタスタスタスタ
電「あっ……三日月ちゃん」
電「……多分、もう大丈夫なのです」
暁「へ?」
雷「え?」
スタスタスタスタ
三日月「皆さん。……喧嘩しちゃ……ダメじゃないですか」
加賀「ごめんなさい。頭を冷やわ」
赤城「三日月さん……ごめんなさい。つい熱くなりすぎてしまいました。……加賀さんもごめんなさい」
加賀「いえ、私も……ごめんなさい」
三日月「ふふ、お二人が仲直りできて良かったです」
金剛「OH! ヅッキー! ヅッキーが来たんじゃ悪ノリはここまでですネー」
三日月「もうっ、悪ノリで便乗しちゃダメですよ金剛さん」
天龍「ちぇ、久しぶりに暴れたかったんだけどなー」
三日月「そういうのは演習とかでお願いします!」
霧島「ふぅ……お遊びはここまでですか。はい、解散です」
陸奥「助かったわぁ三日月ちゃん。ありがとう」
雷「……えーっと、つまり?」
暁「……どういうことなの?」
電「あぁ、お姉ちゃん達は知らないのですね。三日月ちゃんは……」
電「この鎮守府で一番練度が高いのですよ」
響「ハラショー」
雷「練度が……高い? 一番?」
電「はいなのです。第一艦隊旗艦の長門さんよりも高いのです。……あと、怒るととっても怖いのですよ? ……以前天龍さんと龍田さんが大ゲンカしたときに三日月ちゃんが怒って仲裁に入ったのですが……あれは思い出したくないかな……」
雷(いったい何があったのかしら……)
暁「そ、そうだったんだ。けど、だからって一航戦の二人が喧嘩をやめるほどなの? 練度が高くたって、所詮駆逐艦じゃない?」
電「……暁お姉ちゃんは空母の攻撃も戦艦の攻撃も、一発も当たらずに近づいてきてほぼゼロ距離から弾を撃ってくる深海棲艦が現れたらどう思いますか?」
暁「それは……怖いと思うわね」
電「三日月ちゃんが大体そんな感じなのです。お姉ちゃん達がこの鎮守府にやってきたころには、もう三日月ちゃんは出撃しなくなっちゃいましたが」
電「電は三日月ちゃんが被弾したところを見たのはいつ頃か覚えていないのです」
暁「…………」 プルプル
響「出撃しなくなったって事は、練度が上がらないところまでたどり着いているってことだね。ハラショー」
雷「意外だったわね……」
如月(……ホント、あれでなんで自分に自信が無いのか疑問なのよねぇ~)
睦月「なんだぁ、加賀さん達多分悪ノリで喧嘩してたんだね! 睦月、大真面目に喧嘩してるかと思ったよー」
文月「あたしもぉ~。でも、三日月ってすごいねぇ~。あの悪ノリを止めに行けれるんだからぁ~」
如月(まぁ、意外と三日月の練度の高さは知られていない事実だし、あまり噂もされないからかもしれないけど)
長門「ふぅ……すまないな三日月。喧嘩を止めてもらってな。さすが古参組の一人だな。頼りになる」
三日月「いえいえ! でも、私が頼りになるなんて……ありえないです。私はまだまだ精進しなきゃいけないことがたくさんありますから!」
長門「ふふ、そうか。……よし、皆! 準備も大詰めだ! そろそろ提督を呼んで、ビックリさせてやろう!」
「「「はーい」」」
三日月「あっ、そうだ。……長門さん、皆さん。少しお時間よろしいでしょうか?」
長門「ん? なんだ?」
三日月「あのですね……」 ガサゴソ
電「あっ、あの大きな紙袋の中身ってまさか……」
三日月「あった! 長門さん、どうぞ!」 ニッコリ
長門「……これは……?」 キョトン
三日月「チョコレートです!」
長門「それは分かっているが……く、くれるのか?」
三日月「はいっ! 昼間時間が空いていたので、どうせなら皆にもチョコをあげたいなぁと思いまして……全員分作ったんです! お口に合えばいいんですが……」
長門「……そうか。ならば、ありがたくいただこう。……これは、胸が熱いな」 ニコリ
陸奥「……【バレンタインデーサプライズ】のことで頭いっぱいで、そこまで気が回らなかったわ。ありがとう、三日月ちゃん!」
三日月「いえいえ! ……むしろ余計なお世話だったりしないか心配ですよ。お時間いただきます!」
菊月「……うむ、さすがは私の妹だ」
望月「姉妹達とかの分だけならまだしも全員分作るとか律儀過ぎっしょ。……まぁ、そこが三日月っぽいんだけどさぁ」
響「…………」
暁「…………」
雷「三日月っていい子ねー! 私もああいう気の回り方見習わなきゃ! まだまだ立派なお嫁さんまでは程遠いわね」
電「自慢の友達なのですー♪」
電(……電もお姉ちゃん達のチョコは用意してますが、後で渡すことにしよ。電個人のサプライズなのです)
雷(ふふふ……こっそりと作ってあるチョコ、電達に後で渡さなきゃ! ……暁姉、驚いてくれるかなぁ♪)
響「……暁」
暁「……何よ」
響「君より三日月の方がレディーっぽくないかい?」
暁「うっさい! 私が思ってたこと口に出さないでよ! プンスカ!」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
三日月「えーっと……あっ、電ちゃーん!」 タッタッタッタ
三日月「電ちゃん達で最後です! はい、チョコレートどうぞ!」
電「わぁ! ありがとうなのです!」
雷「ありがと! お返しはちゃんとするからね!」
響「スパシーバ」
暁「…………」 ムッスー
三日月「え、えと……暁さん?」
暁「……ふん!」 プイ
三日月「え、これ……私なんかやってしまった感じですか?」 オロオロ
響「いや、ただの八つ当たりだから気にしない方が良いよ」
電「これはさすがにお子様なのです」
暁「お子様言うな!」
三日月「あ、あの……暁さんもどうぞ」
暁「い、いらないもん!」 プン
雷「うわぁ、これはめんどくさい暁姉だ」
暁「うっさい!」
三日月「……で、でも私……昼間のお礼もしたくて……」
暁「……別にそんなのいいわよ。とにかく、私はライバルの作ったものなんて受け取らないんだからね!」
三日月「で、でもぉ……」
電「あれ? よく見たら暁お姉ちゃんのだけ電たちが貰ったやつと違うのです」
雷「あ、本当だわ」
暁「!?」
響「これは……ガトーショコラだね。ふわふわしてて、とてもおいしそうだ」 ジュルリ
三日月「だ、ダメですよ! これは……暁さんに昼間のお礼として特別に作ったものなんですから。……響さんには今度別のを作ってあげますねっ」
響「ハラショー。君は良い奴だ」 グッ
雷「……あーかーつーきーねーえー。これはさすがに受け取らなきゃ、いつまで経っても一人前のレディーになれないわよ?」
暁「もう私は一人前のレディーだって言ってるでしょ!」
三日月「暁さん……お願いします! 私の気持ちを受け取ってください!!」
暁「うぅ……」
金剛(あれは告白かなんかデス?)
北上(……ほほえましいねぇ)
大井(初々しいわね! 北上さん)
北上(そうだねー。……でも大井っちー、脳内に直接言葉送るのはやめてほしいかなー)
赤城(ガトーショコラいいなぁ……うらやましい) ジュルリ
加賀(ガトーショコラいいわね……うらやましい) ジュルリ
暁(……なんでか知らないけど獲物を見つめる獣の様な視線を感じるわ)
三日月「…………うぅ」
暁「――!! ……も、もうっ! ごめんなさい! 本当は怒ってなんかないわよ! 私の負けよぉ!!」 パシン
三日月「あっ!」 パァァァ
三日月「暁さん! 受け取ってくれてありがとうございます!」
暁「うぅ……なんであなたがお礼言うのよ……。こっちが言う側でしょ普通……」
暁「……あ、ありがとね。……一人前のレディーとしていただくわ!」
三日月「は、はい! お口に合えば光栄です!」
響「――完――」
雷「いや終わらすな」
電「微笑ましいのですー♪」
三日月「……でも、本当に良かったです……受け取って……くれて……///」 ニッコリ
暁「~~~~~!!///」 ドキーン
暁「……ね、ねぇ三日月?」
三日月「はい! 何ですか暁さん!」
暁「うちの妹にならない?」
睦月「ダメっ!!」
如月「ダメよ」
弥生「……無理」
卯月「ダメぴょん!」
皐月「拒否!!」
文月「だめ~!」
長月「許さん」
菊月「却下だ」
望月「ダメでーっす」
長門「ふふふ、やはり駆逐艦は可愛いな(微笑ましい限りだな)」
陸奥「声に出す方間違ってるわよ」
長門「いや、間違ってなんかいないわよ(むっ、そんな事は無いぞ)」
陸奥「キャラブレブレじゃない」
長門「……とまぁ水を差すようで悪いが、もうすでに青葉が提督を呼びに向かっている。皆は渡す物を用意して待っていてくれ」
響「了解」 グイッ
長門「なぜに鍋!?」
響「話せば長くなるよ。あまり気にしないでくれ」
雷(説明するのがめんどくさいだけなんじゃ……)
電「あれ、そういえば三日月ちゃん司令官さんに渡すチョコはどうしたのですか?」
三日月「あー、それはこちらの紙袋の方に」
暁「……こちらの?」
三日月「……あれ?」 キョトン
暁「空になった紙袋しか持ってないじゃない」
三日月「……わ」
如月「三日月あなたもしかして」
三日月「わ、忘れてきちゃいました……司令官へお渡しするチョコレート! 部屋に忘れてきちゃいました!!」
暁「え、えー!!」
長門「それはタイミングが悪いな。もう青葉が提督を呼びに行ってしまったぞ」
如月「もうっ! 忘れ物はない? って確認したじゃない」
響「ここから部屋のある寮までは一回外に出なければいけないから、少し距離があるね」
三日月「うぅ……何やってるんだろう私……い、急いで取ってきます!」 タッタッタッタ
暁「転ばないように気をつけなさいよ!」
三日月「は、はい!」 タッタッタッタ
三日月「……もう、私のバカ!」 タッタッタッタ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
~司令室~
提督「…………」
提督(無心で事務の仕事をしてたら、三日分くらい終わってしまった)
提督「ふふ、だがチョコは無い」
提督「…………」
提督「仕事ができてもチョコもらえなきゃダメなんだよおおおおお!!」
提督「……もう夕食の時間か……うわぁ……今日ほどみんなと会いたくない日は無い。チョコくれるか聞いて回ったことが完全に裏目に出ているな。もう死のうかな」
コンコンコン
提督「ん? 誰だ?」
青葉「ふもふもー、ふぉうほぉふへふ!(どもどもー、恐縮です!)」
提督「青葉か。……しかし、チョコ咥えながら入ってくるとか新手のいじめなの? 俺のこと嫌いなの? てか何でそんなにボロボロなの!? 中破してるじゃないか!」
青葉「はむはむ……ん」 ゴックン
青葉「いやぁ、長門さんと一戦交えてしまって、この結果ですよ! あとチョコはある艦娘からいただきました! 司令官と違ってもらえましたねチョコ」
提督「なんだ貴様。俺を煽りに来たのか!? 泣くぞ!? 同時にプンスカだぞ!?」
青葉「ははは、暁ちゃんのマネはやめた方が良いと思いますよ? キモイでっす」
提督「はい。すみませんでした」
青葉「とまぁ茶番はここまでで。司令官! 一緒に食堂まで同行してください!」
提督「……いや、いいよ。今日は俺ここでご飯食べる……」
青葉「ダメですよぉ~? 仲間は家族なんだからみんなで夕食は食べるものだって青葉に教えてくれたのは司令官です。ほら、行きますよ?」 ギュ
提督「いやしかし……」
青葉「大丈夫ですよ! きっと良い事ありますから! 行きますよ!」
提督「……分かったよ。一緒に行こう」
青葉「はい!」
見てるで〜 おつおつ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
バタン
三日月「はぁ、はぁ」
三日月(とりあえずチョコ回収して外まで出たけど、けっこう疲れたな。少し汗かいちゃった……海が近いから、ちょっと寒い)
三日月「でも、疲れてなんかいられない。……急がないと!」 タッタッタッタ
三日月「はぁ、はぁ」
タッタッタッタ
三日月「昼間のご無礼のため……日頃の感謝のため……これは渡さな――」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
暁「……もうっ、三日月は何してるのよ! もうすぐ司令官来ちゃうわよ!?」
如月「そろそろ戻ってきてもいいと思うんだけど……ちょっと遅いわね」
菊月「……まぁ、これだけの人数が渡すのだから、同時に渡すと言っても、多分順番で渡すことになるだろう。少し遅れても問題はない」
響「まぁ、そうだね」
電「……けど、ちょっと心配なのです」
暁「…………」
加賀「……ん。索敵完了。提督と青葉さんの姿が見えてきたわ。皆さん、準備を」
雷「え!? 艦載機かなんか飛ばしてるの!?」
長門「ふむ……一名少し席をはずしているが、やむを得ない。クラッカーの準備だ」
「「「了解!」」」
如月「……もうっ」 ギュ
「……い! そんなに押すなって青葉!」
長門「声が聞こえてきたな……待ちに待った艦隊決戦か。胸が熱いな」
長門「全主砲、斉射準備……」
「「「……」」」
ガチャリ
提督「どうしたんだ青葉! そんな押すなって!」
長門「ッ、てっー!!」
提督「は!?」
如月(三日月のおバカ!)
パンパーンッ!!
「「「ハッピーバレンタイーン!!」」」
提督「……え?」 キョトン
金剛「HEY、提督ぅー! Burning ラーーーーーブ!! な、chocolates! あげますネー!」
雷「司令官! お疲れ様! これをあげるわ! チョコよチョコ!」
如月「司令官、はぁーい。如月の気持ちを込めたチョコレート、ちゃんと最後まで、食べてね?」
榛名「提督……もしよかったら……この榛名のチョコレート……もらっていただけますか?」
提督「え? え?」
菊月「……さすがに早すぎないか、あの提督LOVE勢達は」
響「……くっ」
暁(完全に出遅れたって顔してるわねこの二人)
電(あれ? 今さっきまで如月さんと雷お姉ちゃんは電の横にいた気がしたのですが……)
睦月「うぅ……如月ちゃんひどい……提督には一緒にチョコを渡すって約束してたのに……」
皐月「愛は時に残酷なんだよ、睦月」
弥生「……如月は……司令官の前になると……落ち着かなくなるからね……ドンマイ」 ヨシヨシ
加賀「提督、これを譲ります」 ドン
提督「デカ!!」
赤城「提督、どうぞ」 ガサ
提督「多!! ……お前ら極端か!?」
提督「……てか、お前ら俺にあげるものなんてないって昼間に……」
青葉「ふふふ……あれは嘘です!」
長門「サプライズってやつだ」
金剛「サプラーイズは、大切ネー!」
如月「ふふ、如月が企画したんですよぉ~。司令官のた・め・に」
如月(……まぁ三日月のためでもあったけど、あの子なんでこんな時に忘れ物なんて……まったく、おっちょこちょいなんだから)
睦月「うぅ……如月ちゃんひどいよぉ……」
如月「あっ……ごめんね睦月ちゃん……許して……」
睦月「うん! いいよ!」
望月「ちょろいな!」
提督「そうか……そうだったのか……サプライズだったのか……」
雷「昼間はごめんね! 嘘つくのすごく心苦しかったわ……」
提督「いや、いいんだ雷……俺を思ってやってくれたんだもんな。……みんな、ありが……うっぐ……!」
青葉「おっとぉ! 司令官男泣きだぁ! 大の大人が泣いております!! 皆注目!!」
霧島「いやぁ、それほど嬉しかったんでしょうね~。やはりやってよかったですね、このサプライズは」
陸奥「なんか実況が始まったわ」
長門「もう気にすらしないさ。……さて、皆。一斉に渡すと混乱してしまう。順番に渡していくぞ。青葉達、進行を頼む」
わいわいがやがやわいわいがやがや
暁「…………」
暁「ごめん、私ちょっと三日月探してくる」
響「ん? なら私も一緒に行くよ。私も三日月が少し心配だ」
暁「そう? ならお願い」
電「じゃあ電も――」
菊月「私も――」
暁「いや、もしかしたら入れ違いになっちゃうかもしれないし、二人で大丈夫よ。電達はここで待ってて」
電「わ、分かったのです」
菊月「……了解した」
暁「よし、じゃあ行くわよ響!」 タッタッタッタ
響「入れ違いになったかな、と思ったら私達もすぐに戻ってくるよ」 タッタッタッタ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
暁「もう、三日月のバカ……どこにいるのよ」 タッタッタッタ
響「中は結構探したけど、いる気配が無いね。多分外か寮だと思う」 タッタッタッタ
暁「……そうね。外に出ましょう」 タッタッタッタ
響「了解した」 タッタッタッタ
バターン
暁「!! さっむ!!」
響「まぁ海が目の前にあるからね。夜の海はとても怖い。……それよりも暁、あそこに座り込んでるのって」 チョンチョン
暁「――!! 三日月!」 タッタッタッタ
三日月「……暁さん?」
暁「何やってるのよ! もうみんなチョコ渡し始めて……ってあなた、右のほっぺから血が出てるじゃない!」
響「……これは痛そうだ。もしかして転んだのかい?」
暁「消毒しなきゃ。響! ちょっとこのハンカチ濡らしてきて」
響「ん、了解」 タッタッタッタ
三日月「……大丈夫です」
暁「全然大丈夫そうじゃないわよ! とても痛そ――」
三日月「だから……大丈夫だって言ってるじゃないですか!!」
暁「ひっ!」
三日月「あ……」
三日月「……ごめんなさい」
暁「……ほ、ホントよ! こっちは心配して探しに来てあげたのになによその態度は! プンスカ!」
三日月「……ごめんなさい」
暁「…………」
三日月「…………ごめんなさい」
暁「べ、別に怒ってなんかないから。暁は大丈夫だから。……でも、本当にどうしたの? なんでそんなに落ち込んでるのよ。それにチョコはどうしたのよ……」
三日月「……してしまいました」
暁「ん?」
三日月「……落としてしまいました……」
暁「お、落としたって、どこに!」
三日月「…………」
三日月「……私……この海、結構好きなんです。景色が綺麗で……近くにあるから……」
暁「……三日月、まさかあなた」
三日月「はは……私って、本当におっちょこちょいですね。……肝心な時に……いつもやらかします」
三日月「……けっこう、派手に転んじゃったんです。走っている時に……躓いて、足を捻ってしまって……握ってた司令官のチョコを……つい離してしまいました。……一番大事な物だったのに……」
暁「三日月……」
三日月「……転んでる最中に離しちゃうと、チョコって案外飛んでっちゃうもんなんですね。……あはは……一生懸命、作ったのに。……雷さんが教えてくれて、暁さんがくれた材料で、あなた達と一緒に作った大切な物を、私は落としてしまいました」
暁「…………」
三日月「今回の企画、如月……姉さんは司令官のためでもありますが、私のためにもこの企画を作ってくれたんです。……自信がなくて……お馬鹿な事を考えていた私のために」
三日月「……いろんな人の協力があったのに、全部台無しにしてしまいました。皆さんに、申し訳ないです。……あはは……私って本当に――」
暁「笑うなバカ!」
ギュー
三日月「…………」
暁「何笑ってんのよ! 辛いのに変に笑ってんじゃないわよ!」 ギュー
暁「仕方ないじゃない! 誰だって失敗はする。転ぶときだってあるわ! 私だってこの前派手に転んで頭打って大騒ぎになったもんっ。誰もあなたを、三日月を責めたりしないわ! むしろ転んだことを心配する! ……私がそうだもの! 一人前のレディーがそうなんだからそうに決まってるじゃない!!」
三日月「…………あかつきさん……!!」 ギュー
暁「如月も、雷も、私も……誰も三日月を責めない! むしろ責めるやつがいたら……誰であろうが私がぶってあげるわ!」
暁「私の大切な友達になんてこと言うのよ! って!」
三日月「……うぅ……!! ……っぐぅ……!!」 ギュー
暁「……こんな時に、泣かないように必死に我慢できる三日月は強い子よ。……一人前のレディーが、証明する」 ニッコリ
三日月「……暁さん……わたし……わたし……!!」 ギュー
暁「ん? なぁに? ……大丈ー夫。暁はここにいるから」 ヨシヨシ
三日月「ごめんなさい!! ……ごめんなさい!!」 ギュー
暁「だーかーらぁ、私は怒ってないって。ほら、泣いちゃダメよ?」 ヨシヨシ
響「…………」
響「……姉さん」 スタスタ
響「ハンカチ濡らしてきたよ。大丈夫かい? 三日月」
暁「ありがとう響」
三日月「……はい。大丈夫です、響さん。ありがとうございます」
響「いや、大丈夫だよ。これくらいお安い御用さ」 ナデナデ
暁「ちょっと染みると思うけど、我慢してね?」 フキフキ
三日月「っ!! は、はい……大丈夫です」
暁「…………よし、このくらいで平気ね。とりあえず、このハンカチで傷口押さえといて」
三日月「……ありがとうございます」
響「……話は遠くから聞いていたけど、こうなったら仕方ないさ。とりあえず食堂に戻った方がいい。みんな心配しているからね」
暁「ん、そうね。三日月、今その状態から立てる?」
三日月「えっと……だ……」
暁「あ、強がりは禁止ね。正直に言わないと絶交よ?」
三日月「……暁さんには勝てません。ちょっと厳しそうです」
暁「分かったわ! なら一人前のレディーに任せなさい! ……よいしょ、ちょっと失礼するわね!」
三日月「ふえ!?」
響「ハラショー」
暁「ん、あなた軽いわねー。大丈夫?」
三日月「あ、あああああ暁さん! こ、これって///」
暁「え? お姫様抱っこだけど……あっ、そういえば三日月はお姫様ってポジション似合ってるわよねぇ~。私の方がレディーだけど!」
暁「んで、どう? 辛くない?」
三日月「あう……あうあうあう///」
暁「え、ちょ! どうしたの!?」
響「私は君の無自覚っぷりが怖いよ」
暁「え? え? ……ま、まぁいっか。……とりあえず、急ぐわよ!」
三日月「ええええええ!! だ、ダメです! 下ろしてくっ、……ください! 私重いですから!!///」
暁「ぜんっぜん重くないから大丈夫よ! ちゃんと傷抑えとくのよ? よし、響も行くわよ!」
響「いや、私は少しやることがあるんだ。悪いけど、先に行っててくれ」
暁「ええ!? ここにきてそれ!?」
響「大丈夫さ。すぐに行く」
暁「……分かったわ。できるだけ早く来るのよ!」
暁「よっし、行くわよ三日月! ……うにゃああああ! レディーパワー!!」 タッタッタッタ
三日月「~~~~~!!///」
響「……ふふ、少し三日月が羨ましいな」 ニコリ
響「……さて、やりますか」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
弥生「司令官、これ……あ、あげます。甘いです。お返しは、気にしなくていい……です///」
提督「ありがとうな弥生! すごく嬉しいぞ……お返しはちゃんとするからな」 ナデナデ
弥生「……ん///」
雷「ちょ、ちょっと……三日月も暁姉達もまだ戻らないの!? もうみんな司令官にチョコあげ終わっちゃうわよ!?」
如月「……すぐ戻ってくると思ってたのだけれど……三日月なにかあったのかしら」
電「お姉ちゃん達も……中々戻って来ないのです」
菊月「……やはりついていった方がよかったか……」
青葉「えー、じゃあ次に渡す人は……」
霧島「電ちゃんですね」
電「え、あっ……は、はいなのです!」 タッタッタッタ
電「し、司令官さん! 昼間は嘘ついてごめんなさいなのです! 一生懸命作ったのです。電の気持ちを受け取ってくださいなのです!」
提督「いいっていいって! それよりも本当にありがとうな! 大事に食べるよ」 ナデナデ
電「はい! ……なのです。喜んでもらえて嬉しいのですっ」
皐月「あと渡してないのって……」
卯月「三日月と暁と響ぴょんねー……って、あの三人まだ戻ってきてないぴょん!?」
文月「ど、どうしたんだろ~……」
如月「……三日月……二人とも……」
青葉「えー、次渡していない方はー」
霧島「三日月ちゃんと、暁ちゃん、響ちゃんですね」
提督「あれ、そういえば三人ともいないな。どうかしたのか?」
長門「……あぁ、三日月は少し席を外していてな。暁たちも気が付いたら席を外していた」
提督「おお、そっか」
ざわざわざわざわ
如月「……き、如月! 三人の事さが――」
ダッダッダッダ! ――バターン!
暁「足で失礼します! 間宮さんごめんなさーい!!」
「「「!?」」」
暁「はぁ……はぁ……はぁ、はぁ……」 グッタリ
三日月「うぅ……は、恥ずかしい……///」
金剛「お、オーウ!!」
天龍「こ、こいつは……!!」
提督「……暁と三日月」
青葉「お、おおっとぉ! なんと席を外していた暁ちゃんと三日月ちゃんが戻ってきました! ベストタイミングです!!」
霧島「しかも三日月ちゃんは暁ちゃんにお姫様抱っこされてますねぇ。暁ちゃんがとても無理してる感がありますが、必死さが伝わりとても可愛らしい絵面となっております。ポイント高そうです」
暁「はぁ、はぁ……ご、ごめ……ちょっと下ろすね」
三日月「あっ……は、はい! ご、ごめんなさい!」
暁「い、いいのよ……立ってるの辛かったら私の肩を使ってね。……それに全然……へっちゃらだし」
青葉「しかし暁ちゃん! 汗だくだぁ! 強がってるけど汗だくです!」
霧島「暁ちゃんっぽくってとても可愛いですねぇ」
暁「二人ともさっきからうっさい! プンスカ!」
タッタッタッタ
如月「三日月大丈夫!?」
三日月「あ、如月。大丈夫です……転んじゃったんですけど、暁さんと響さんが助けてくれましたから」
菊月「そうか……暁、感謝する」
睦月「三日月ちゃんもだけど、探しに行った二人も心配したよー!」
雷「もう! ホントよ!」
ざわざわざわざわ
青葉「おーう、駆逐艦が集まっていきますねぇ」
長門「眼福だな!」
提督「えっと……何かあったのか?」
長門「あぁ、三日月は提督に渡すチョコを部屋に忘れてしまってな。それを取りに戻っていたんだ。そして中々帰ってこなかったから、暁と響が探しに行っていたみたいだな。響の姿はまだ見えないが」
提督「なるほど……」
暁「……ふぅ……よし! 疲れてない! ……電!」
電「は、はいなのです!」
暁「そこに置いてある私のチョコ取ってくれない?」
電「分かりましたなのです! はい、どうぞ!」
暁「ありがとっ」
青葉「あっと、忘れてた。……では、次にチョコを渡す人は暁ちゃんか三日月ちゃんですね」
霧島「私も一瞬忘れてました。……どちらでもいいわよぉ~」
提督(ん? 三日月、何も持ってないな)
三日月「…………あの、実は私――」
暁「よし! 三日月!」
暁「一緒に渡しに行くわよ!」 ギュ
三日月「え……? わ、私は」
暁「ほら、ゆっくりでいいから行くわよ。肩組む?」
三日月「あ、あの……」
暁「もう! いいから行くよ!」 スタ、スタ
三日月「あっ……」 スタ、スタ
提督「…………」
暁「司令官!」
提督「……おうっ」
暁「“私と三日月で一緒に作ったチョコよ!” ありがたく受け取りなさい!」
三日月「……え?」
提督「おう! 二人ともありがとうな! あと三日月。昼間の事気にしてそうだけど、もう全然気にしてないから謝らなくて大丈夫だぞ。……そして暁は……良い子だなぁ」 ナデナデ
暁「だ、だから頭をなでなでしないでっていつも言ってるでしょ!///」
三日月「……司令官! ち、違うんです! 私が司令官にお渡しするチョコは実は――」
暁「三日月! いいから」
三日月「良くないですよ! だって……だって暁さんは一番になるって……私はライバルだって……」
暁「二人で一番になればいいじゃない。それに……ライバルって、時には仲間になるものなのっ!」
三日月「暁さん……で、でも!」
―――――――――――――――――――――
暁『……それと一応言っとくけれど、一緒にチョコ作ったからって私たちはライバル同士なんだからねっ。三日月にも金剛さんにも、天龍にだって、雷達にだって負けないんだから! 一番は私がいただくんだからね!』
―――――――――――――――――――――
三日月(昼間……こんなことを言っていたのに……私がチョコを落としたばかりに……)
三日月「それじゃあ例え一番になったとしても……私と言うお荷物ができちゃいます……」
暁「お荷物なんかじゃないわ!」
三日月「な、なんで私のためにそこまで!」
暁「あなたは……友達よ!」
暁「友達が困っていたら助けるなんて、当たり前じゃない!!」
バターン!
響「その通りだよ、三日月」 ピチャ、ピチャ
雷「響姉!?」
電「びしょびしょなのです! だ、大丈夫なのですか!?」
響「問題ないよ」 スタスタスタスタ
響「……三日月」
三日月「響さん! なんでそんなにびしょびしょなんですか! は、早く拭かないと風邪をひいてしまいます!」
響「大丈夫さ。寒いのには慣れている。……そんなことよりも、これ」
三日月「――!! こ、これ……私が海に落とした……」
響「偶然見つけたんだけど、これ……食べていいと思うかい?」
三日月「え?」
響「そうか、なら食べよう」 パカ
パクリ
三日月「ひ、響さん!!」
響「……うん、とてもおいしいよ」
三日月「な、何してるんですか! そんな塩水で半分くらい溶けちゃったようなチョコ……」
響「……どんな形になっても、愛情がちゃんと詰まっているモノがマズいわけないだろう?」
三日月「!!」
提督「おお、どうしたんだ響。おいしそうなの食べてるじゃないか」
響「あぁ、司令官。実はたまたま海へ飛び込みたい気分になって泳いでたら、偶然発見したんだ」
提督「そうなのか。……よかったら俺も食べても良いかな?」 ナデナデ
響「……私の決める事じゃないさ」
提督「そっか。ならもらうわ」 ヒョイ、パクリ
三日月「し、司令官! あなたまで何を!」
提督「うん、美味い」
三日月「し、司令官……」
提督「三日月」
提督「色々と大変だったみたいだけど、大丈夫か?」ナデナデ
提督「……ありがとうな」 ボソ
三日月「…………」
暁「み、三日月!? 大丈夫!? も、もしかしてどっか痛いの!?」 オロオロ
響「も、もしかして私……余計なことしちゃったかな?」 オロオロ
三日月「…………ひっぐ……ぇぐ……!!」 ボロ、ボロ
三日月「……ちがうんです……ひっぐ……ッ!! ……ぁう……わたし……ひぐ……わたしぃ……!! ……ぐす……っぅ!!」
三日月「……こんなに、やさしいともだち、がいて……とても……うれしいんでず……っ……!!」
提督「……そっか……」 ナデナデ
三日月「ひぐ……ひっぐ……!!」
暁「……もうっ! 嬉しいこと言ってくれるじゃな――」
如月「…………」 ギュー
暁「……き、如月?」
如月「ありがとうね……暁ちゃん」 ジワァ
暁「な、なんで如月まで泣いてんのよ!」
ダッダッダッダ
金剛「HEY! 暁ー! 今のあなたは最高にレディーデース!」 ギュー
加賀「……見直したわ」
赤城「自分の器の小ささに気が付いたわ……」 ナデナデ
暁「え? な、何なのよぉ!」
長門「……」
天龍「……」
陸奥「……」
龍田「……」
陸奥・龍田「「……近くまで行って来たらぁ?」」
長門・天龍「「泣くから無理だ」」
榛名「響ちゃん、そのままだと風邪引いちゃいます。今拭いてあげますね。榛名は今感動しています」 フキフキ
比叡「……あれ、おかしいです。何故か涙が止まりません……」 フキフキ
響「ほう、これはいいな……嫌いじゃない」
弥生「響……妹のために……本当にありがとう……」
響「問題ないよ。それより三日月のところに行ってあげなくて大丈夫かい?」
弥生「……ん、大丈夫……」
睦月「三日月ちゃん!? 大丈夫!?」
卯月「な、泣き止むぴょーん!」
皐月「よしよし。いい子いい子~」 ナデナデ
文月「三日月、ごめんね~! 痛い思いしてたのに……」 ギュー
長月「私たちが本当なら探しに行ってあげなきゃいけなかったのにな……」
菊月「あぁ……暁と響には何かお礼をしなくては」
望月「とりあえずまぁ……今は三日月の傍にいてあげようよ」
弥生「三日月には、皆がそばにいるから……弥生はその分二人に感謝を……伝える」
響「……ハラショー」
北上「……はぁ……ホント、駆逐艦って……うざい……」
大井「北上さん、今は本音を出しても私以外は聞いてないから大丈夫よ?」
北上「……駆逐艦最高ー」
呂500「……日本っていいところだね!」
伊58「今ならオリョクル行ってもいい気分でち」
伊19「でっちー今からオリョクル行くの~? 頑張ってなのねー」
伊168「私は行かないわよ」
まるゆ「が、頑張ってください!」
伊58「しまった!! 墓穴掘ったでちいいいいい!!」 オリョクルー
青葉「……さて、色々と慌ただしいサプライズでしたけど、そろそろ終局ですね」 ポロポロ
霧島「ええ、最後まで司会進行盛り上げましょう」 ポロポロ
提督「お前らの姉は良い子達だな」 ナデナデ
雷「ええ! 二人とも」 ニッコリ
電「自慢の姉なのです!」 ニッコリ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
暁「…………ねぇ、三日月?」
三日月「はいっ! 何でしょうか暁さん!」 ニコニコ
暁「……ちょ、ちょーっと熱いかなぁ……なんて」
三日月「この熱さが良いんじゃないですか! ……もしかして、ご迷惑ですか?」
暁(あれ……どっかで聞いたことあるような……まぁいいか)
暁「……いや、三日月が良いならいいけどね」
三日月「はい♪」 ギュー
響「……さすがにこれは、ちょっと恥ずかしいな」
三日月「あ……ご、ごめんなさい。で、でも……今はお二人の近くにいたいんです!」 ギュー
響「……かわいい」
電「い、電も三日月ちゃんとくっつきたいのです!」
雷「今はあのままにさせときましょ、ね?」
電「うぅ……はいなのです」
菊月「……なぁ」
如月「ん? なぁに?」
菊月「うちの妹が食事をする席はこっち側だろう!? なんで暁と響の間に入ってあんなにくっついているんだ!?」
睦月「まぁ、今日くらいは良いんじゃないかなぁ~」
青葉「さぁ、ではでは今回のサプライズの一番の盛り上がりである疑問を司令官に聞いてみたいと思います!」
提督「おう! なんでも聞いてみろ! 今なら何でも答えてあげちゃうぞ!」
「「「来た!」」」
霧島「では、司令は今回のバレンタインで誰からもらって一番嬉しいと思いましたか?」
提督「は?」
霧島「今回のバレンタインで誰からもらって一番嬉しいと思いましたか?」
提督「いや聞こえてるから! ……それ決めなきゃダメなの!?」
霧島「はい。皆それが一番気になっていることなんです」
提督「ま、マジか……」
提督(三日月が言ってた一番ってこれの事だったのか……)
金剛「…………」 ジー
榛名「…………」 ジー
加賀「…………」 ジー
赤城「…………」 ジー
雷「…………」 ジー
如月「…………」 ジー
提督(あ、やべぇ視線を感じる)
提督「い、一番は……」
青葉「はい!」
提督「え、えーとぉ」
青葉「…………」 ジー
提督(お前もかーい)
提督「い、一番はみんなだ! みんなから貰って俺は嬉しかったぞ!!」
ガシャーン!!
金剛「そんなのないデース!!」
榛名「は、榛名はその結果でも……大丈夫です」 ニコリ
加賀「頭に来ました」
赤城「艦載機、用意」
青葉「……はぁ」
雷「もう……司令官ったら恥ずかしがり屋さんなんだからぁ!」
如月「ねー! ホントよねぇ……ウブよねぇ~」
雷「…………」 ギロリ
如月「…………」 ギロリ
天龍(……ふふふ、怖ぇな駆逐艦って)
提督「い、いいかぁ! お前ら! 男ってのはバレンタインに何かをもらえたら誰から貰ったってすごく嬉しいんだ!」
提督「その中で一番なんて決められるわけがないだろ! 無茶言うな!!」
北上「やーいやーい、優柔不断男~」
大井「女たらし~。やーねホントに」
提督「うるさいぞそこの夫婦!!」
提督「……だから無理なものは無理だ!! はいっ! この話は終わり!!」
長門「まったく、情けないな」
ブーブー!!
提督「や、やかましい!!」
暁「……呆れたわ」
三日月「あはは……まぁ司令官らしいです」
響「…………」 ニヤリ
比叡「それでも男ですか! 司令!!」
霧島「……これ視聴者いたらブーイングの嵐ですね」
陸奥「……炎上はいやねぇ~」
提督「はいはい! 聞こえませーん!! ぜってぇ決めないからな!!」
伊58「もうオリョクル行かないでちよ?」
提督「っし、俺も男だ。覚悟を決めよう」
伊58「おい」
提督「そうだな……一番か……」
金剛「…………」 ジー
榛名「…………」 ジー
加賀「…………」 ジー
赤城「…………」 ジー
雷「…………」 ジー
如月「…………」 ジー
青葉「…………」 ジー
一同「「「…………」」」
三日月「…………」
提督「……決まった」
提督「響だな」
響「当然の結果だね」 ヤッタゼ
ガシャーン!!
金剛「そんなのないデース!!」
榛名「は、榛名はその結果でも……大丈夫です」 ニコリ
加賀「頭に来ました」
赤城「艦載機、用意」
青葉「……はぁ」
雷「もう……司令官ったら恥ずかしがり屋さんなんだからぁ!」
如月「ねー! ホントよねぇ……ウブよねぇ~」
雷「…………」 ギロリ
如月「…………」 ギロリ
提督「いやループさせんなや!!」
金剛「では理由をお願いしマース!!」
提督「そ、それは……」
暁「……あれ、響があげたのって……」
響「ボルシチだよ」
電(……あれ、そういえば……)
三日月(司令官の一番好きな食べ物って……)
提督「好物なんだよ! ボルシチが! 一番好きな食べ物なんだ!!」
響「まっ、そういうことさ」 ドヤァン
暁「……あなた、まさかそれを知ってて……」
響「…………」
響「そんなことはないよ」
暁「今の間は何よ!! 響のズル!!」
響「失礼な。戦略と言ってくれ」
三日月「あははは……まぁ、仕方がないですね」
暁「バーカ! 響のバカ!! 三日月……こんな子ほっといてあっち行きましょう!」 ギュ
響「……何を言っているんだい? 三日月は私と一緒にここにいるさ」 ギュ
暁「うっさいこのバカ!」
響「……それはブーメランかな?」
三日月「あ、あの……喧嘩しちゃダメですよ?」
暁・響「「すみませんでした!」」
三日月「え? なんで急に敬語に!?」
三日月「……でもまぁ、一番なんてもう関係ないです」
卯月「白けたぴょん」
天龍「はっ、情けねぇ理由だぜ」
陸奥「ホントねぇ~」
長門「このロリコンめ」
提督「お前に言われたくないわ!! てかね、みんな一番なんだよ!? あったのはほんの少しの差だけなんだ!!」
金剛「……うぅ……うぅ」 シクシク
比叡「お姉様、あんな男もうほっときましょう! ね? 今夜は比叡がお姉様を慰めてあげますから!」
霧島「さりげなく司令からお姉様をNTRうとする比叡お姉様さすがです」
榛名「……榛名は、大丈夫です……」
加賀「頭に来ました」
赤城「艦載機、用意」
提督「お前らさっきからそれ言い続けるのやめろよ怖――」
ブーーーン
提督「マジで来やがったぁ!!」 ダッ
雷「……もうっ、本当は私が一番だって知ってるからね!」
如月「もぉう、本当は如月が一番だって知ってますからね」
雷「…………」 ギロリ
如月「…………」 ギロリ
三日月「……こんな風にわいわい騒いでるのが一番この鎮守府っぽくて、私は好きです」 ニッコリ
電「電もなのです!」 ヒョコ
三日月・電「「ねー♪」」 ニッコリ
龍田(古参組の余裕よねぇ~)
青葉「ははは……まったく、最後まで大騒ぎでしたね」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
〈次の日の朝〉
提督「……身体中痛い」
三日月「ははは……昨日は大変でしたもんね。大丈夫ですか? 司令官」
提督「あぁ、まぁ問題ないよ」
三日月「ならよかったです」 ニコリ
提督「今日は月に1回必ずある、三日月が秘書官の日だな」
三日月「そうですね。15日ですから」
提督「……この月課を作ってから、結構時間が経ったな」
三日月「ふふ、そうですね。あの時はまだあまり皆さん着任していませんでしたね」
提督「はは、そうだな。とても懐かしいよ」
提督「ところで、傷と足の痛みは大丈夫か?」
三日月「はいっ、全然問題ありませんよ」
提督「本当か? 君はすぐに無理をするからな」
三日月「ほ、本当ですって! 嘘なんかついたりしません!」
三日月「……友達に、心配されちゃいますから」 ニコリ
提督「……そっか」 ナデナデ
三日月「えへへ……はいっ!」
提督「それにしても昨日は久しぶりに泣いた三日月を見たなぁ~。懐かしい気分になったよ」
三日月「なっ!! お、思い出さないでください……恥ずかしいです」
提督「ははは、何を言ってるんだ……昔あれほど見たんだ。今さら気になんてしないさ」
三日月「……もうっ、司令官はいじわるです!」 プンスカ!
提督「ははは」 ナデナデ
提督「…………ところで三日月」
三日月「はい、なんでしょう」
提督「今、自分の練度がどれだけ高いか知っているよな」
三日月「当たり前じゃないですか。もうこれ以上成長しないくらいですよ」
提督「……じ、実はな……そのことで少し話があってな……」
三日月「?」
提督「……渡したいものがあるんだ」
~おしまい~
乙
さあ次はafterだな
以上で終了となります。
イベントE-5を三日月ちゃんと共に無事突破した記念で書きました。短めで終わらせるはずが、気が付けば前回書いたSSより長くなってしまいました。多くのキャラを動かすのってすごく難しい……。
今さら感あるバレンタイン+終始茶番だった気がしますが、少しでも多くの方に楽しめていただけたら嬉しい限りです。
あと、はっちゃんとしおいさんは未実装です。いいね? あと暁×三日月はありです。
それでは、お付き合いいただきありがとうございました!
乙
三日月のかわいさはもっと広まってもいいと思うんだ
乙です
三日月ちゃんSSもっと増えて欲しいわ
乙です。
三日月は俺も好きだわ。
暁ちゃんは前回から順調にレディーになってますね
乙、みんないい子だわ
三日月ちゃんはいい子なのに影が薄いのが可哀想
乙です
三日月なのに15日なの?
前作を探してみたけれど、見当たらない
教えていただけるとありがたいです
【艦これ】電「暁お姉ちゃんが頭を打って変になっちゃったのです」
【艦これ】電「暁お姉ちゃんが頭を打って変になっちゃったのです」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1423697655/)
これかな
暁がレディーの人だよね?
遅くなったけど乙乙、相変わらず良いssでした
そして三日月の真面目可愛さもっと広まれ
>>90
ありがとう
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません