ヒーニアス「ターナとクーガーが結婚した」エフラム「あいつら結婚してなかったのか」 (31)

ヒーニアス「クーガーはいい男だ、彼にならあいつを任せる事ができる」

エフラム「そうか……式と披露宴は挙げたのか?」

ヒーニアス「明日あるそうだ……だが行けない」

エフラム「どうしてだ?」

ヒーニアス「……招待状をもらってないから場所が分からない」

エフラム「兄なのにか!?」

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エフラム「そういえばこの間エイリークが手紙を見て喜んでいたが……」

ヒーニアス「恐らくそうだろうな、ターナはエイリークも呼んだと言っていた」















エイリーク『ふんふ〜ん♪』

エイリーク(ターナが結婚かぁ……嬉しいなぁ)

エフラム『エイリーク……さっきから手紙を見てニヤニヤしているが……どうしたんだ?』

エイリーク『!!』

エイリーク(どうしよう……兄上が来たら披露宴がめちゃくちゃになりそう……)

エイリーク『な、なんでもないです!』ダッ

エフラム『……俺には見せたくないのだろうか……ということは』

エフラム『俺宛のラブレターだな!?』

エフラム「どうやらターナは俺とお前を避けてるみたいだな」

ヒーニアス「ああ、妹の結婚式なんだ、どうにかして行かなくてはな」

エフラム「よし、俺はなんとかエイリークに教えてもらえるよう説得してみる」

ヒーニアス「私もターナに交渉してみよう……また明日な」

エフラム「ああ、また明日」

ルネス城

エフラム「ただいま」

エイリーク「お帰りなさい兄上」

エフラム「なぁエイリーク……」

エイリーク「なんですか?」

エフラム「明日はどこに出かけるんだ?」

エイリーク「明日はター……ど、どこにも行きません!」

エイリーク(兄上には内緒にしないと……!)

エフラム「……じゃあ明日は俺と一日中遊べるんだな?」

エイリーク「え、ええと……一人でお買い物に行きたいから兄上は来ないでください!」

エフラム「実は俺も明日、買い物に行くところだったんだ、だから俺と行こう」

エイリーク「行きたくありません! 」

エフラム「どうしてだ?」

エイリーク「え、ええと……兄上が馬鹿だからです!」

エフラム(なんだその理由)

エフラム「エイリークーエイリークー」

エイリーク「嫌です!」

エフラム「エイリークーエイリークー」

エイリーク「いい加減にしてください兄上!」

ゼト「何事ですか」

エイリーク「ゼト! 丁度良いところに!」

ゼト「お困りですか?」

エイリーク「兄上がしつこいんです!」

ゼト「エイリーク様が嫌がる事はやめてくださいエフラム様」

エフラム「……分かった、じゃあ正直に言おうエイリーク」

エイリーク「……なんですか?」

エフラム「俺をターナの結婚式に連れて行ってくれ」

エイリーク「ど、どうしてそれを!?」

エフラム「今日、ヒーニアスから聞いた」

エイリーク「ヒーニアス王子から……でも王子は来ないらしいのですが……」

エフラム「ターナと交渉するそうだ。 俺も祝いたい……場所を教えてもらえないだろうか?」

エイリーク「そ、そんな事言って私を追いかけるつもりですよね!?」

エフラム「……違う!」

エイリーク「……では条件があります」

エフラム「なんだ?」

エイリーク「明日の朝7時から腕立て伏せ10000回やってください」

エフラム「何!?」

エイリーク「ゼトは兄上のカウント役を担当してもらえますか? そして兄上が10000回やったら結婚式場まで連れて行ってあげてください」

ゼト「分かりました」

エイリーク「場所は……」ゴニョゴニョ

ゼト「はい」

エフラム「今じゃ駄目なのか?」

エイリーク「駄目です」

エフラム「俺ができないと思っているかもしれんが……やって見せる!」

フレリア城

ヒーニアス「ターナ……」

ターナ「何? お兄様」

ヒーニアス「明日の結婚式の場所を……」

ターナ「教えないわよ」

ヒーニアス「……何故だ?」

ターナ「どうせ式場に行ってもずっとエイリークエイリークって言いながらエイリークを追いかけ回すんでしょ? 私の事なんか気にしないで」

ヒーニアス「……妹の結婚式だぞ! 私はそんな事しない! 」

ターナ「私はそれでずっと裏切られたの!」

ヒーニアス「!!」

ターナ「誰かに甘えたかったのにお兄様はターナの事なんか気にしないでずっとエイリークばっかり……でももういいの」

ターナ「私には……甘えられる人がいるから」

ヒーニアス「ターナ……すまなかった……」

ターナ「……謝っても遅いわよ」

ヒーニアス「……今の私は何を言っても信用できそうにもないな」

ターナ「……?」

ヒーニアス「私は明日……エイリークに一切話しかけない! アプローチもしない!」

ヒーニアス「だからどうか……明日の結婚式……場所を教えてもらえないだろうか?」

ヒーニアス「兄として……お前が旅立つ姿を見届けたい! 頼む!」

ターナ(……お兄様が土下座する所なんて初めて見た)

ターナ「……本当に?」

ヒーニアス「ああ! もし話しかけたら絶縁しても構わない! 今度は本気だ!」

ターナ「……分かったわ、これが最後ね」

ヒーニアス「……ありがとう! ターナ!」

ターナ「……でも流石にエイリークから話しかけたら話してあげてね」

ヒーニアス「ああ……それともう一つ頼みがある」

ターナ「何?」

ヒーニアス「式場の場所をエフラムにも教えてもいいだろうか?」

ターナ「それならエイリークが条件付きでエフラムに教えるって連絡があったわ」

ヒーニアス「??」

式当日

ターナ「クーガー……どうかしら?」

クーガー「ああ、凄く似合ってるぞ姫」

ヒュー……

グレン「そういうお前も似合ってるぞクーガー」

クーガー「うわあっ!? 兄貴!?」

グレン「いきなり出てきて驚いただろ? いやぁ、霊体は面白いな」

クーガー「心臓に悪いからやめてくれ……」

グレン「しかしお前もいよいよ結婚か……これで俺も心おきなく成仏できる」

クーガー「兄貴……」

グレン「まぁ今すぐじゃないがな、式場には俺もお邪魔させてもらうぞ」

クーガー「そうか……」

グレン「ターナ姫……こいつはちょっと不器用なやつだがやる時はやる男だ、よろしく頼む」

ターナ「ええ……」

グレン「……あっ、そうだ」

ターナ「?」

グレン「帝国六将軍のやつらをお前名義で呼んだ」

クーガー「!?」

クーガー「な、なんで呼んだんだよ!? あいつら嫌いなのに……」

グレン「久々に顔を見たくなってな……それに会いたい奴もいるし」

クーガー「……ヴァルターか?」

グレン「ああ」

クーガー「俺たちの行事を勝手に利用しないでくれよ……」

グレン「人数は多い方がいいだろ?」

クーガー「……すまない、姫」

ターナ「大丈夫よ……多分」

会場

モルダ「遂にターナ様がご結婚……」

ヴァネッサ「嬉しいと同時に寂しい気持ちにもなりますね……」

ギリアム「……」

シレーネ「どうしたのギリアム?」

ギリアム「……やはり緊張するな」

モルダ「……そういえばお主は出し物をするんだったな」

ギリアム「くっ……何故俺なんかが歌を……」

シレーネ「そりゃジャンケンで負けたから仕方ないわよ」

デュッセル「遂にクーガーが結婚か……」

セライナ「まさか若者に先を越される日が来るとは……」

ヴァルター「おのれクーガー……私もその気になればエイリークと……」

ケセルダ「てめーは無理だろ」

デュッセル「……そういえばアーヴの姿を見かけないが……」

セライナ「そういえば……」

ケセルダ「どうでもいいだろ、あんなジジイ」

ヴァルター「その通りだ、それよりエイリークは……」

デュッセル「これ以上動いたら迷惑になるからやめろ」

ラーチェル「ターナのドレス姿、早く見たいですわ!」

ドズラ「ガハハ! そうですなラーチェル様!」

ドズラ「……いや、寧ろワシはラーチェル様のドレス姿が見たいですぞ!」

エイリーク「ラーチェルも結婚すれば見られるのでは?」

ドズラ「ラーチェル様がご結婚……うおおおおお! 想像しただけで涙が……うおおおおお!」

マリカ「泣きすぎ」

ヒーニアス「……会場はここか」

エイリーク「ヒーニアス王子!?」

ヒーニアス(……駄目だ、自分から話かけてはいけない)

エイリーク「……王子もいらしていたんですね」

ヒーニアス(!!)

ヒーニアス「ありがとうエイリーク!」

エイリーク「??」

アーヴ「ふぇふぇふぇ……司会進行と神父役を務めさせて頂くアーヴじゃ」

ケセルダ「あのジジイ、いつの間に!?」

デュッセル「何かやらかさなければいいが……」

アーヴ(ふぇふぇふぇ……華麗な司会進行、そして神父をやることであいつらに認めてもらうのじゃ!)

アーヴ「新郎新婦の入場!」

ガチャ!

ターナ「……」

クーガー「……」

一同「おーーーーーーーー!」

ラーチェル「ターナのウェディングドレス姿、とても可愛いですわ!」

エイリーク「ええ……」

ドズラ「ガハハ! ラーチェル様の方が可愛いですぞ!」

マリカ「張り合わなくてもいいと思う」

デュッセル「様になってるな、クーガー……」

セライナ「ええ……」

ケセルダ「爆発しろクーガー!」

ヴァルター「その通りだ! お前達なんか一年も持たん!」

グレン「うちの弟を馬鹿にするのはそこまでにしてもらおうか」

ヴァルター「グ、グレン!?」

ヴァルター「な、何故貴様がここに!?」

グレン「弟の結婚式なんだ、来て当然だろ? ……それよりもヴァルター」

ヴァルター「なんだ?」

グレン「……俺は今も恨むぞ」

ヴァルター「私がお前を殺したことか?」

グレン「ああ……あの時はよくも大量の生肉を!」

ヴァルター「ジャンケンで負けた方が食うという約束だっただろ?」

グレン「だからって本当に食わせる馬鹿がいるか!」

ヴァルター「抵抗しなかった貴様が悪い!」

デュッセル「静かにしろ」

こうして式は進み……

ギリアム「……ターナ様、ご結婚おめでとうございます」

ターナ「ギリアム……」

ギリアム「……俺からの歌のプレゼントです」

ターナ「う、歌!? あのギリアムが歌を!?」

アーヴ「それじゃあ歌ってもらおうかの……曲はaikoで『洗面所』!」

ギリアム「……ひと〜つ〜ずつお〜もい〜でが〜」

ターナ「凄い太い声ね」

ルネス城

エフラム「9978……9979……」

ゼト「凄いペースだ……早くエイリーク様に会いたくてたまらないんですね」

エフラム「……何を言っているんだ?」

ゼト「?」

エフラム「友人の結婚を祝いたいという思い以外の動機がいるのかと聞いたんだ!」

ゼト「!!」

エフラム「9985!……9986!」

ゼト(まさか素直に祝いたいとは……頭でも打ったのだろうか?)

エフラム「……10000! ゼト!結婚式場まで連れてけ!」

ゼト「ではイム村まで行きましょう」

エフラム「結構近い所じゃないか」

会場

アーヴ「……以上が福田沙紀さんからのビデオメッセージじゃ」

一同(あの人誰なんだ……?)

アーヴ「……続きましてヒーニアス王子のお言葉」

ヒーニアス「……いよいよ私か」

ラーチェル「その顔……相当緊張していますわね」

ヒーニアス「あ、ああ……では行ってくるぞエイリーク」

ラーチェル「私はラーチェルですわ」

エイリーク(緊張し過ぎで名前も間違っている……)

ヒーニアス「……ターナ、改めて結婚おめでとう」

ターナ「お兄様……」

ヒーニアス「思えば私がお前と過ごした日々はほんの僅かだったな……」

ヒーニアス「私は物心がついた頃からエイリークに夢中になっていてお前と遊んでやれなかったな……ご飯を食べる時もエイリークの話ばかり、エイリークの抱き枕を作ったり、エイリークにポエムを送ったり……私は全力でアタックしたのに……」

ヒーニアス「……何故未だに進展しないんだ……」

ターナ「そういう所だと思うわ」

ヒーニアス「こんなだらしない兄ですまなかったな……強がりを言えば私は反面教師として機能していたかもしれない……ううっ」ポロッ

エイリーク(ヒーニアス王子が泣いてる……)

ヒーニアス「クーガー……ターナを……よろしく頼んだぞ! 決して私の様にはなるな! お前になら……任せられ……うおおおお……」

クーガー「……はいっ!」

パチパチパチパチパチパチ

ターナ「……お兄様が泣いている所……始めて見たわ」

クーガー「姫……あの涙は本物だ……」

ターナ「ええ……」

クーガー「俺は王子の希望に応えないといけないみたいだな」

ヒーニアス(涙が止まらない……物凄く悲しい)

エイリーク(ヒーニアス王子のことだから目薬でも使ってるのかしら)

「そこまでだてめぇら!」

デュッセル「何奴!?」

「この斧見りゃ分かるだろぉ!? 山賊だ!」

うおおおおおおおおおおお!

ヴァネッサ「凄い人数……」

山賊のボス「大量の食料と金を奪いに来たぜ!」

ギリアム「戦うしかないのか……武器はあるか!?」

シレーネ「結婚式に武器なんか持って来ないわよ!」

セライナ「人数でもあちらの方が上……」

エイリーク「そんな……」

ラーチェル「実は私、常に魔導書を持ち歩いていたのですわ!」

ドズラ「ガハハ! ワシもバルトアクスがありますぞ!」

マリカ「敵は斬る」

モルダ「おお! 少なからずとも武器を持っておる人がいたとは!」

ケセルダ「てめーらのことだ、三人でもなんとかなるだろ」

山賊のボス「……止まれええええええ!」

ピカーーーーーッ!

一同「!?」

ヴァルター「なんだこれは……体が動かない?」

山賊のボス「性石研究会から奪った動きを止める石だぁ!」

アーヴ「リオン様……また変な物を開発しおって……」

ラーチェル「くっ……あんな石がなければ……こんな奴らに!」

ドズラ「ラーチェル様! それは強姦フラグですぞ!」

ターナ「クーガー……私達……」

クーガー「大丈夫だ、姫……神は俺達に味方してくれるはずだ」

ヒーニアス「くそ……動けばあんな奴ら……私はどうなってもいい……あの二人だけでも……」

山賊のボス「行くぜおめぇら! 襲ええ!」

山賊達「うおおおおおおおお!」

ザシュ!

山賊「ぐわっ!」

ザシュ!

山賊「おえっ!」

ザシュ!

山賊「がはっ!」

山賊のボス「……ん?」

ターナ「山賊達が……倒れていく?」

山賊「ま、待ってく……ぐわっ!」バタッ

エフラム「……なんだこの山賊の数は」

ゼト「出し物の一種でしょうかね?」

エイリーク「兄上! ゼト!」

山賊のボス「てめぇら……よくも俺の部下達を!」

ゼト「……お前達は最大の過ちを犯した」

エフラム「俺達がいない時に石を使ったことだ」

山賊のボス「ぐわあああああああああ!」

エフラム「みんな……大丈夫か?」

クーガー「ああ……動ける様になった……礼を言う」

エフラム「大したことじゃない、気にするな」

アーヴ「ふぇふぇふぇ……では大したことないならパーティを続けようかのぉ」

エフラム「やっぱり気にしてくれ」

エイリーク「兄上!」

エフラム「エイリー……うおおっ!?」ギューーー

エイリーク「兄上がいなかったら私達は……私達は……!」

エフラム「な、泣くなエイリーク……もう終わったから泣かなくていいんだぞ?」

エイリーク「兄上……ううっ」

エフラム「美しい顔が涙で台無しじゃないか」

ゼト(ここぞと言わんばかりにかっこつけやがって……!)

ゼト「……エイリーク様が無事で何よりです、私のお陰ですね」

エイリーク「はい……兄上ーー……」

エフラム「分かったから泣くな」

ゼト「」

ターナ「良かったじゃない、近親婚も近いんじゃない?」

エフラム「ターナ……結婚おめでとう」

ターナ「ありがとう……」

ヒーニアス「エフラム……お前が来なかったと思うと……」

エフラム「……俺のお陰と言いたいのか?」

ヒーニアス「ああ、ありがとう」

エフラム「じゃあ俺はエイリークと結婚してもいいか?」

ヒーニアス「何故そうなる!?」

エフラム「命を救ったお礼だ」

ヒーニアス「確かに私の命とエイリークは同等だ! だが結婚するのはこの私……はっ!」

ターナ「……」

ヒーニアス「……お前にくれてやる」

エフラム「……ん? どういう風の吹き回しだ?」

ターナ「もういいわよお兄様……私もあの時言い過ぎたわ、ごめんなさい」

ヒーニアス「ターナ……本当にいいのか?」

ターナ「ええ」

ヒーニアス「……では遠慮なく……」

ヒーニアス「……エイリーク、ああエイリーク! 私と一緒にお茶でもどうだ? そうだ、結婚式を挙げる時は今回みたいなスリルのある方がいいな、君もそう思わないか? エフラムみたいなブラコン兄、ゼトみたいな変態赤髪、ヴァルターみたいなワカメより私の方が魅力があると思うのだが一緒にベッドでバトルをしないか?」

ターナ「」

エイリーク「ターナが呆然としているわ!」

ヒーニアス「どうしたターナ!?」

エフラム「お前の所為だ」

グレン「……クーガー、ターナ姫をちゃんと守ってやれよ」

クーガー「ああ……」

〜終わり〜


ふつうにいい話かと思いきや

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