【迷いの森】
少女「う……うぅ?」
少女(ここは…………森?……湖もあるが。)
少女(記憶では…………勇者と相打ったはずなのだが)
少女(ここはどこだ?さては勇者のやつに転移魔法でもかけられたか?…………とりあえず湖で顔を洗うことにしよう)
少女「……城の外に出たのはいつぶりだろう」ピチャピチャ
少女(…………?)
少女(顔を洗い、湖の水面をふと見ると、そこには知らない人間の少女が映っていた。)
少女(どうやら勇者のやつ、私に変身魔法までかけたらしい。やってくれる。)
少女「…………まぁ、死んだわけではないのだから、また城に戻ればよかろう」
少女「木漏れ日があるが、この森は木が多すぎる。いささか暗いな」
少女「炎魔法」ポスンッ
少女「あれ?…………出ない?」
少女「炎魔法!炎魔法!」ポスンッポスンッ
少女「…………これも勇者の仕業か」
少女「暗いな。まぁ魔王城もそこまで明るい場所ではなかったが」
…………数分後
少女「じっと待ってみたけど物音ひとつしない。ここは結構な山奥なのか?…………というかここはそもそも魔界なのか、人間界なのか………」
…………さらに数分後
少女「お、おーい側近?そこにいるのはわかってるぞー」
シーン…………
少女「……側近が傍にいないのもいつぶりかなぁ」
少女「この体、お腹すくのかなぁ」
グゥ
少女「…………別にそんなに早く返事しなくてもよいではないか」ムゥ
少女(ここにいても誰も来ないのであろうか)
少女(しかし、動くにしてもどちらに動けばいいのかすら分からぬ)
少女「おーい」
シーン…………
少女「……」
…………数時間後
ガタッガタガタッガタッ
少女「物音……?」
少女(出てって助けを求めるべきか?いや、でも人間だったらどうしよう)
少女(いや、今は人間の姿だからむしろ魔族の方が襲われるかもしれぬか?)
少女(でも人間だとして、魔王であるとバレて殺されたりしないだろうか)
少女(むしろ魔王である私が人間の施しを受けるのか?)
少女(で、でもっこのままじゃっまた一人きりっ)
少女(うぅ……っ)
少女「た、助けてー」
???「誰かいるのか?」
少女(!!!)
少女「えと……あ……」
少女(どうしよう、嬉しいからかな、久しぶりに誰かと話すからかな、上手く声が出ない!)
少女(私がわたわたしていると、草むらをかき分けて、一人の男の人が顔を出しました。)
???「ふふっ、なるほど。大丈夫かい?迷子?」
少女「えと、えと、はい……?」
少女(うぅ、敬語になっちゃってる。…………そういえば城にいたときも側近以外とはあんまり話してなかった気がするなぁ……)
???「……あぁ、突然出てきて少し馴れ馴れしかったかな?俺はそこの町でキノコ売ってる男だよ」
男「ふむ。どうやら結構疲れてるみたいだね。…………幸か不幸か今日はあんまりキノコが採れなくてね。荷車のスペースがちょうど空いてるよ。乗って」
少女「…………はい」
少女(町、人間の町…………?側近からは人間は野蛮で、酷いものだと聞いてたが…………た、食べられるのか?いやでも同じ人間に酷いこと、しない……よね?)
ガタガタッガタガタッ…………
男「ちょっと揺れるけど我慢してね!…………君はどこから迷い込んだんだい?」
少女「あ、あっちだ」
男「?…………ふむ、あっちね。何しに来てたの?」
少女「何しに、というか、ただ迷い混んでしまったような…………」
男「ふむふむ、ちょっと混乱してるのかな?えっと、うちの町……ファスタウンっていって、まぁ田舎なんだけど、君は初めて?」
少女「ふ、ふむ。聞いたことは……ないな」
少女(ファスタウン……?とりあえず人間界ではありそうだが……勇者はこの場所まで指定して飛ばしたのだろうか?……だとしたら、あの変人勇者のことだ。この場所にも何か意味がありそうだが)
期待
【ファスタウン】
男「さて、と。ここがファスタウンだよ」
少女(ふへぇ。これが人間の町……。ゆったりとしている……側近から聞いていたほど荒んだイメージではないな)
男「……ふふっ、物珍しいかい?」
少女「へ?な、なんでですか?」
男「いや、なんだか楽しそうにこんな田舎の町を眺めるからさ」
少女「え、えと、まぁ。はい。こういう町に来るのは初めてで」
男「ふむ……えぇと、あ、名前聞いてなかったね。君なんていうの?」
少女「な、名前?えぇとっ…………」
少女(どうしようどうしよう、人間界の普通の名前なんて私知らないぞ。魔王です、だなんて言えるわけもないっ)
男「あぁ、人見知りなのかな?まぁ無理に言わなくていいさ。また、聞かせておくれ」
少女「ふ、ふむ」
男「……へへっ。あぁ、ごめん。なんでもないよ。お腹空いたよね。あっちが僕の家なんだ、ご飯にしよう」
【ファスタウン……………男の家】
カランカランッ
???「んぁ、おかえりー」
男「本を読みながら寝るな、少年。…………あぁ、入って」
少女「……おじゃましまーす」ボソッ
少年「ん?彼女?」
男「ははっ、冗談はやめてくれ、お前みたいなちっちゃな子だろ」
少年「いやぁ、男のことだからあり得るぜ」
少女(まぁ、本当はちっちゃな子じゃないんだけどな)
男「ん、あぁ、こいつは少年。ええと、まぁ居候?みたいなもんだ」
少年「そりゃ、ちょっと耳触りが悪くないか?」
男「ホントのことだろ?」
少年「ちぇっ」
少女(なんだか、魔族でもこうやって皮肉を言いながら仕事をしている人を見かけた気がするな。まぁ、仲はいいの……かな?)
少年「で、えぇっとそっちの……まぁいいや、女の子はいったいどちら様?」
男「あぁ、迷いの森の迷子だよ」
少年「へぇ、そいつは珍しい」
男「俺は何故かこの町に帰ってくる度にそんな奴を拾ってるけどな」
少年「へいへい、その節はどーも」
少女「あっ、あの森は……迷いの森っていうの?……なのに迷子が少ない……?」
男「ん、あぁ。気が多くて薄暗いし迷路みたいになってるからね。迷子になりやすい森ではあるよ。ただ、ちゃんと整備された道が一本通ってるから迷い込むことってのはあまりないのさ」
少年「俺や、君を除いてはね」
男「……ふむ。まぁ、君たち以外にも俺は何人か見てるけどね」
少女「ふ、ふむ。なるほど」
乙
乙
男「さてと、まぁとりあえず僕はご飯を作っておくから……そうだな、上の部屋がひとつ空いていたな。君はそこを使うといい。少年の部屋の2つ隣にしておこうか」
少年「なんで2つ隣なんだ?」
男「一応、お前が悪戯しないようにだよ。あぁ、そうだ。あの部屋あんまり使ってないからな。一緒に片付けてやってくれ」
少年「へいへーい…………悪戯なんかしないっつーの」
男「まぁ、そういうことだから。ご飯はできたら呼ぶよ」
少女「えと、その、お世話になってもいいの……か…………?」
男「ん、あぁ、遠慮しないで。大丈夫だよ」
少女「えと、はい……」
乙
期待
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