二宮飛鳥「未来を描く漫画」 (26)






『誰とも一緒にいれない女の子が一人いたんだ


その子はいつでも黙りこくっていて誰とも目を合わせずにうつむいて


そのくせ寂しがり屋で一人でいるのが嫌で嫌で泣いてるくせに


なんの行動もおこさない、いわゆる面倒な子さ』










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ー公園ー


飛鳥「やあ、どうかしたのかいお嬢さん?」

幼女「……」パチクリ


飛鳥「ん?なにをそんな珍しいものを見るような目を……あぁ、もしかしてボクの服装かい?」

幼女「……」コクリ…


飛鳥「正直だね、いいことだ」

飛鳥「で、こんな時間まで君はなにをしてるんだい?五時までには家に帰れとお母さんに言われてるだろう?」

幼女「…」コクリ…







飛鳥「ならはやく帰るべきだとボクは思うけどね、それとも帰りたくない理由でも?」

幼女「……」


飛鳥「…あててみせようか、君がどうして家に帰りたくないかを」

幼女「……?」

飛鳥「探し物、それも大切な君の宝物といったところじゃないかな?」


幼女「……すごい」パチクリ

飛鳥「どうやら当たったみたいだね」







幼女「どうしてわかったの…?」

飛鳥「まぁボクも昔同じようなことをしてたからね、なんとなくわかったのさ」

飛鳥「ちなみに、具体的にはなにを無くしたのか…教えてくれないかな?」


幼女「…そ、それはダメ」

飛鳥「ふぅん…そうかい」

飛鳥「でも困ったな、それじゃ君の探し物を見つけてもわからないよ」



幼女「……一緒に探してくれるの?」

飛鳥「ふふっ、迷惑かい?」

幼女「でもお母さんが…知らない人と話したりついていったりしたらダメだって…」

飛鳥「おや?でも今はお話してるじゃないか」

幼女「そ、それは……だって……あぅ…」







飛鳥「フフッ、心配しなくてもべつにさらったりなんてしないよ」

飛鳥「それにボクと話したりしたのは黙っておけばお母さんにはバレないさ」

幼女「で…でも…」

飛鳥「お母さんに嘘をつくのは心苦しいかい?大丈夫さ、ボクだってそうやって大きくなったんだからね」

幼女「う……うー…」


飛鳥「それとも君の宝物がどこかにいってしまってもいいのかい?」

幼女「そ、それは………い、いやです」


飛鳥「よし、だったら決まりだね」

飛鳥「いくよお嬢さん、君の宝物を探しにいこう」

幼女「う…うん」







飛鳥「じゃあまずは心当たりのある場所からあたろうか…どこでなくしちゃったんだい?」

幼女「えっと…あそこ…」スッ

飛鳥「…あれは、鉄塔…かな」


幼女「あのふもとで遊んでたら…風で飛んでっちゃった……」

飛鳥「なるほどね…」

飛鳥「だったらまずあそこに行ってみようか、そうすれば案外びっくりするほど簡単に見つかるかもしれないよ」

幼女「そ、そうかな…?」

飛鳥「きっとそうさ、じゃあ行こうか」





ー道ー


飛鳥「そういえば…風で飛んでくってことは君の宝物はずいぶんと軽いんだね」

幼女「う、うん……えっと…紙、だから」

飛鳥「へぇ…なるほどね」

飛鳥「良かったら見つけられたらボクにも見せてほしいね、君の宝物ってやつを」

幼女「……い、いいけど」

飛鳥「けど?」

幼女「…わ、笑ったりしない?」

飛鳥「どうだろうねぇ、そればっかりは見てみないとわからないかな」

幼女「じゃ、じゃあ…見せない」

飛鳥「フフッ、ごめん冗談さ」






飛鳥「どうして鉄塔なんかで遊んでたんだい?」

幼女「わ…わたし、友達いないから」

幼女「あそこで…ずっと一人で遊んでる」

飛鳥「友達がいない…か」 

幼女「わ、わたしね……だれかとお話しするのにがてだから…」

幼女「クラスの子たちとも……あんまり話したこと…ないし…」



飛鳥「でも、ボクには話せてるじゃないか」

幼女「おねえちゃんは……わかんないけどなんだか……人とお話してないみたいだから……どうしてだろ…?」

飛鳥「ハハハハ……初めていわれたよそんなこと…ま、わるくはないけどね」







幼女「でも……たぶんもうむり…なんだと思うの」

飛鳥「無理って…なにがだい?」

幼女「お友だち……つくるの」


飛鳥「ふーん……ま、友達なんて無理してつくるものでもないしね」

飛鳥「少なくとも…君がそうやってうつむいてる間はむりだろうね」



幼女「……やっぱり…そうだよね」

飛鳥「まぁ人生なんて誰かといる時間よりも一人でいる時間の方が長いんだし気にすることはないさ」







幼女「おねえちゃんは……どうしておねえちゃんなのに…ボクっていうの?」

飛鳥「おかしいかい?」

幼女「……うん、髪も服も」コクリ

飛鳥「髪も服もかい……?まぁでもボクもそう思うよ」


幼女「……なのに、やめないの?」

飛鳥「まぁね」

幼女「どうして…?」


飛鳥「この言葉、そしてこの髪型、この服装はボクの強さの意思表示だからさ」

幼女「…いししょーじ?」

飛鳥「あぁ」







飛鳥「そうだね…例えば君がボクみたいな言葉使いで話したらどうなると思う?」

幼女「…わらわれる?」

飛鳥「まぁそうなるだろうね、そしたら君はどうする?」

幼女「……やめちゃう…かな」

飛鳥「そうだろう?でもボクはやめないって心に決めたんだ」

飛鳥「例え笑われても後ろ指を指されても……いつだって胸をはって決してうつむかない」

飛鳥「そしていってやるのさ、これがボクの生き方だって、ね」

幼女「…おねえちゃんの……いきかた」



飛鳥「……さて、そろそろ着くよ」






ー鉄塔ー


飛鳥「近くで見ると…やっぱり大きいね」

幼女「……」キョロキョロ


飛鳥「…どうだい?君の宝物はあったかな」 

幼女「……ない」

飛鳥「そうかい」


幼女「……やっぱり、むりだよ…みつかりっこないもん」

飛鳥「……」

幼女「あのねおねえちゃん……探してるのわたしのかいた漫画なの」

飛鳥「……」

幼女「わたしの……ほしいものをいっぱいかいた宝物…」



幼女「なくしちゃった……わたしの…ほしかったもの……」ジワッ








飛鳥「ほしいものを手にいれる方法を教えてほしいかい?」

幼女「……え?」グスッ


飛鳥「まずは涙をふいて、そして胸をはってごらん」

幼女「え…えっと……こう…?」

飛鳥「いいかいお嬢さん、うつむいてばかりじゃ……見たくないものから目をそむけてちゃ欲しいものだって見失う」

飛鳥「だから一生懸命…上を向くんだ、それはとても苦しいことかもしれない」

飛鳥「でも決してやめちゃいけないのさ、それがなくした宝物を見つけて、欲しいものを手にいれる方法さ」


飛鳥「ま、ボクの小さな頃に出会った…今思えば少し痛い奴なおねえちゃんの受け売りだけどね…それに影響されたボクもボクだけど」













幼女「いっしょうけんめい……上を向く……」スッ


飛鳥「さぁよく目をこらしてごらん、きっと見つかるはずだから」



幼女「上を……いっしょうけんめい……上を向く……」グググッ



バサッ



幼女「!!」










幼女「あった……!あったよおねえちゃん……!」

飛鳥「鉄塔のボルトに引っ掛かってたみたいだね、だから言ったろう?案外簡単に見つかるもってね」ニコッ


幼女「うん…!」


飛鳥「じゃあ約束だったね…その宝物を見てもいいかい?」

幼女「えっと……はずかしいけど、おねえちゃんにならいいよ」

飛鳥「ありがとう、お嬢さん」


ペラッ








飛鳥(この娘に良く似た女の子が漫画を描いていて…一人また一人と人が寄ってきて最後には皆でその漫画をよんで笑顔になる)

飛鳥(とてもつたない絵で、オチもなにも無いけど……)


飛鳥「良い漫画だね、本当に」

幼女「……ほ、ほんとに?」

飛鳥「あぁ、もちろんさ」



飛鳥(そして……『さくしゃめい』とひらがなでかかれた横にある名前は)



『さくしゃめい  にのみやあすか』












飛鳥「あすかちゃん…だったんだね名前」

あすか「うん…にのみやあすか」


飛鳥「そうかい……やっぱりそうだったのかい」

あすか「…やっぱり?」

飛鳥「いや、こっちの話さ…あすかちゃん」




飛鳥「あすかちゃん、今からとても大事なことを君に伝えるよ」

あすか「…?なぁに……?」








飛鳥「君が欲しがっているもの…それを君が手に入れられるかどうかは他でもない自分自身にしかわからない」


飛鳥「だからさっきボクがいったことを覚えておいてほしいんだ」

飛鳥「決してうつむかないこと、一生懸命上を向くこと」


飛鳥「大丈夫だよあすかちゃん、君はならきっとうまくやれるし、強くなれるよ」

飛鳥「他でもない君自信がそれを知っているから、ね」ニコッ



幼女「おねえちゃん…?」


幼女「…どうしておねえちゃんが泣いてるの?」






昔のBUMP が書きそうなストーリーだね





飛鳥「あ……ごめんね大丈夫だよ、なんでもないさ」ゴシゴシ



飛鳥「さぁもうはやく家におかえり、きっとお母さんが待ちくたびれてるよ」


幼女「う、うん……あのねおねえちゃん」


飛鳥「ん?なにかな?」




幼女「ありがとう…おねえちゃん!」ペコッ


タッタッタッタッ……




飛鳥「…どういたしまして、ボク」






飛鳥(これはまぎれもない……あの頃のボクの記憶)


飛鳥(寂しがり屋で、いつもうつむいてばかりで……そのくせ自分ではなにも行動をおこさず…泣いてばかりでいた、所謂面倒な子供だったころのボクだ)


飛鳥「………がんばってね、ボク」


飛鳥「ボクもこれからまた……ずっとがんばっていくから」


飛鳥「…ありがとう、ボク」


飛鳥「…どういたしまして、ボク」



飛鳥「さぁ……ボクも帰らないと、ね」






書物のかーみトットー





ー学校ー

【教室】




クラスメイトA「それであの子がね…」

クラスメイトB「ほんとにー?あ、でもそれならこの前あの子が……」


あすか「あ……あ、あの!」


クラスメイトA「うわびっくりした!…にのみやちゃん…?どうしたの?」

あすか「え…えっとね……その…」

クラスメイトB「?」



『うつむかないこと、一生懸命上を向くこと』

あすか「………!」




あすか「わたしは……ボクはあすか、にのみやあすか!」

あすか「ボクと…友達になってください…!」

クラスメイトA、B『………』


クラスメイトA「あははは!どうしたのあすかちゃん!」

クラスメイトB「男の子みたいだよー?」

あすか「あう……」


クラスメイトA「でも…うん、いいよ!」

クラスメイトB「よろしくねあすかちゃん!」


あすか「…!」



あすか「……うん!!!」



泣いた





ー事務所ー



飛鳥「……う、うーん……」パチッ…


蘭子「目覚めたか、我が同胞よ!」

飛鳥「蘭子…?あぁ……ソファーで眠ってたのかい、ボクは」

蘭子「永きにわたる睡眠……良き記憶をのぞいたか?」

飛鳥「フフッ、まぁね」




飛鳥「…ねぇ、蘭子」

飛鳥「ペンと紙、もってるかい?」



寸止めなのか終わってるのか……

最初紙ってとこで蘭子かと思ったらなるほど
すごくいい話だった

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