八幡「もうこんな時期か…」 (6)
バレンタイン……
八幡「はぁ……」
思わずため息が溢れる
バレンタインなんて嫌な思い出しかない
そもそも思い出がない
たかがチョコにはしゃいで……
八幡「……チョコ…ねぇ」
まだ残る冬の寒さが俺の体を凍えさせていく感覚を感じながら自転車をそっと漕いで行く。
第1章
またしても冬の寒さは彼を追い詰める
冬休みが明け学校に行く周りの空気はまだお正月気分に染まっている
まったくこれだからリア充は嫌いなんだ
?「やっほヒッキー」
声をかけてきた相手は顔を見なくてもわかる
何度この声を聞いたことか
「よ…由比ヶ浜……相変わらず派手な髪型してんな」
少しおちょくってみると由比ヶ浜は顔を赤くしながら
「もう…年明け早々その言い草ないと思うだけど!てかヒッキーの方こそ目が死んでるし」
痛いところをついてきたもんだ
冬休みになり目の腐りように拍車がかかってきた気がする
「バカお前、それは生まれつきだ」
こうして俺の新年初の学校生活が始まったのである
平塚先生が適当にHRを終わらせ教室から退出すると周りはまたあの空気に戻る
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しかしと言うべきかやはりと言うべきなのか、相変わらず俺の立場は変わらない
いや変わって貰っては困る
何せこの立場にいる事により俺は周りから気を使われずに済んだのだから
がまぁ……あと二ヶ月もすれば最後のテストが終わりクラス替えが始まる
俺の悪名はこの学校に広まってはいるからぼっちのポジションは誰かに奪われることはないだろう
確証もない未来を俺はこの時すでに確信に変えていた
ふと教室を見渡すとある人物の存在がないのに気づく
俺の心の天使戸塚がいないのである
テニス部の朝練か…もしくはお花摘みに行っているのか
とりあえず由比ヶ浜に聞いてみる
「なんか今日は休むっぽいよー」
現実とは時として残酷である
いや俺の場合はいつも残酷だけど
期待
期待
しかし、新年早々授業を休むわけにも行かず
…
……
「やっとおわった……」
こんなに頑張ったのは初めてかもしれない
いや、そんなことはなかった
席を立ったその時由比ヶ浜が話しかけてきた
「今日……一緒に帰らない?」
由比ヶ浜がモジモジしながら尋ねてくる
なにこいつあざとい
「まぁ…いいんじゃねぇの」
そんな顔されたら断れねぇっての
最近本当に俺は丸くなったと思う
もはやぼっちたったころが懐かしいくらいだ
いやまだぼっちだけどね
しかしまさか由比ヶ浜が俺と……
「なんか裏でもあんのか…」
由比ヶ浜の性格は知っている
決してそんなことはしない
だが……
「気にしてもしょうがないか…」
今更気にしても遅い
そう自分に言い聞かせ由比ヶ浜を待つ
5分くらいしてか由比ヶ浜が俺のいる校門まで走ってきた
「ごっめーん…遅れちゃった」
息を切らしながら必死に弁解する由比ヶ浜を見て俺はとっさに
「いや…俺が早すぎただけだし気にしなくていいんじゃねぇの」
フォローを入れとく
別に好きとかそんなじゃねぇけど
そんな風に言われたら怒れねえし
そして思う
たまには青春の神様もいいことするじゃん
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