男「跳び箱って最高」(17)
~それは跳び箱に惹かれた人間たちの賛歌~
男「今日は五段か、それとも六段か?」
戦士「くっ、殺せ!」
男「つれないなァ、もうちょっと楽しもうぜェ…ッヘッヘ」
どろり。汚い涎が、落ちる。
ここは午後四時の体育倉庫。
いるのは男、齢は十一。
そして、戦士。女戦士。
男「そういえば、そんな風に気丈だったっけなぁ…お前の母親も」
戦士「なっ…貴様、何故私の母を!」
男「よぉく、よぉぉく知ってる、なぁぁんでだろうね」
にまり。
吐き気をもよおす笑顔。
ドブ臭ぇきったねぇ笑顔。
この一部始終を影から見ていた女は、そう思った。
その女、男の許嫁。
許嫁(なんだこれは…男が放課後何してるか見にきたら、こいつは…)
嫌な汗が額を
背中を
御堂筋を
伝う。
許嫁(跳び箱を無理矢理飛ばせるなんて、なんて破廉恥な…!)
ぎりり、歯ぎしり。
女性に跳び箱を強要するなんて事は
極悪非道、下劣な行為。
まさに、ゲスの極み。
ゲスの極み乙女である。
許嫁(許し難い。いくら私の許嫁である男であっても)
許嫁はその湧き上がる怒りを押さえることができず
思わず
放屁。
盛大に、放屁。
屁「ぶぅぅぅぅぅ!」
許嫁(っ、しまっ…)
クラッ。
許嫁(ちょっ…こっ…)
ぶふぅ
ふわぁぁぁん
つぅん
男「くっさ」
戦士「あぁいぃえぇ君からもらい屁」
ぶぅぅぅぅぅぅぅ
男「くっさ」
許嫁「あぁいぃえぇ君からもらい屁」
ぶぅぅぅぅぅぅぅ
ぷすん
男「悪くない」
男「っ、何だこの臭い屁は」
戦士「誰か、誰かここにいる!」
許嫁「やぁ」
男「お、お前は許嫁!」
許嫁「イエス、アイアム」
戦士「いい…なずけ?」
キュン
戦士を
理解しがたい胸の痛みが襲った。
この感情は なに?
戦士(…)
とくん とくん
徐々に、だが確実に鼓動は
加速
そう、加速していく
戦士(この胸の高鳴り…私は)
ぶぅぅぅぅぅぅぅ
戦士(やっべ屁でた)
男「くっさ」
戦士(ちよっと実でた)
男「く…んんん」
許嫁「ちょっとあなた、くさくってよ」
戦士「めんご」
男「うるせぇよ」
ごつん
戦士「アフゥ」
男「次は頭蓋を割る。これは脅しじゃあない」
戦士「ひぃっ」
男「頭蓋が割れたショックで、糞尿を垂れ流す。手足は痙攣し、眼球は裏返る。やがて意識は遠のき、死で埋め尽くされるだろう」
戦士「ひぃっ」
許嫁「お~怖っ」
許嫁「怖くて怖くて、つい、ねぇ…」
ボワァ
許嫁「『ナイフ』を投げたくなっちゃいましたよ…!」
ヒュッ
サクリ
男「っ…痛覚!」
許嫁「あらぁ、刺さっちゃいましたか」
男「てめェ、ナイフなんか投げたらどうなるか分かってンのか!」
許嫁「さぁねぇ」
男「ナイフなんか投げたら危ないだろうが!」
許嫁「!!!」
戦士「!!!」
許嫁「た、たしかに危ない」
戦士「それだけじゃあない、痛い」
許嫁「そして投げた本人は、もっと痛い」
男「…分かったかよ、ボンクラ共」
許嫁「ご、ごめんなさい」
エグッエグッ
男「分かればいいんだヨ」
チュッ
許嫁「ひゃん!」
男「へぇ、ずいぶん可愛い声をだすんだな」
許嫁「も、もうっ!」
プンスカ
男「怒った顔も、な」
許嫁「~~~」
戦士(この二人、互いに惹かれあっている、のか…)
ギリリッ
戦士(思えば戦いばかりの日々だった。毎日毎日スライムやオークを斬り倒し、僅かな金貨を得る…それでも金に困ったらこの身を売る…)
ポロッ
男「あ、ちんこでちゃった」
戦士「その『ポロッ』!?」
男「戦士、まさかお前泣いているのか」
戦士「う、うるさい」
ゴシュ
許嫁「せ、戦士といったな。大丈夫か?」
戦士「っ、貴様に…貴様にだけは心配されとうない!」
許嫁「!?」
戦士「好いた者がいる人生はさぞ楽しかろうな、えぇっ!」
許嫁「わ、私はただ」
戦士「戯れるな、阿婆擦れ!貴様など貴様など貴様などォ!」
キサマナド
キエテシマエバ イインダ
戦士「ア゙イ゙イ゙イ゙!」
ムクムクッ
戦士「ギミ゙ガァァァ」
バササッ
戦士「モライナギイ゙イ゙イ゙!」
許嫁「で、悪魔(デモン)…」
許嫁「漆黒の羽…鋭い牙…あとなんか色々黒い。間違いない、君は悪魔だな?」
戦士「いや、戦士だ」
許嫁「しらばっくれるない、そんな格好の戦士がどこにいる。証拠を見せよ証拠を」
戦士「いいだろう、論より証拠…ロンよりショウコを見せたげる」
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