【艦これ】提督「バリバリ最強No.2」 (683)

艦これのSSです。
書簡体、対話体、それぞれの形式で書く事があります。
いくつかオリジナル要素が登場します。
作品内に前作品の設定が一部反映されており、世界観が一部リンクされています。
一部、過剰ではありませんがバイオレンス的表現が混ざる場合があるのでご注意下さい。
各艦娘の相関図等、若干違う部分もあると思いますが二次創作観点からご了承下さい。



【艦これ】提督「暇っすね」
【艦これ】提督「暇っすね」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1404/14040/1404046254.html)

【艦これ】提督「暇っすね」Part2
【艦これ】提督「暇っすね」part2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1404/14042/1404294340.html)

【艦これ】提督「暇っすね」part3
【艦これ】提督「暇っすね」part3 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404646553/)

【艦これ】提督「暇じゃなくなった」
【艦これ】提督「暇じゃなくなった」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1411557252/)

【艦これ】提督「暇暇ひ~ま~ひ~ま~」【番外】(※同時更新)
【艦これ】提督「暇暇ひ~ま~ひ~ま~」【番外】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1421240310/)



上記五作品は過去作品になります。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1422113973




~ハズレ鎮守府~



-仮面-

加賀「何を訳の解らない事を呟いているのですか」

提督「んあー、業績の話」

加賀「なるほど。ですが、些か血迷った発言にも感じます」

提督「血迷ったってお前…」

加賀「これが今月の提督の業績表です」ピラッ…

提督「何も見えない」

加賀「現実を直視して下さい。提督は近隣区画の鎮守府の中で下段から数えて一番目です。数字の上では一番で
すけれど、あえて皮肉を言った方が宜しいですか?」

提督「言うな!」

加賀「百歩譲って最強は良いとしましょう。しかし言うに事欠いてNo.1ではなくNo.2とは意味が解りません」

提督「だってNo.1業績っていつもエリート提督じゃん?最強の水上打撃艦隊と空母機動艦隊備えてるじゃん?」

加賀「その直に他人と自分を比較する癖、いい加減やめては如何ですか。寧ろ比較事態が無意味です」

提督「と・に・か・く!まずはNo.2な訳よ!」

加賀「どちらにしろ机上の空論、砂上の楼閣、絵空事に変わりはありませんね」

提督「相変わらず辛辣だねぇ…」

加賀「何か問題でも?」

提督「あぁ、もういい。もういい!今日のスケジュールは!?」

加賀「…本日は遠征任務のみです。応援依頼のあった輸送船団の海上護衛任務、こちらが主任務となります」

提督「ああ、そう…で、面子は」

加賀「私、加賀と長良、漣に満潮、変わりありません」

提督「ですよね。お前等四人しか居ないもんな」

加賀「他に何かありますか」

提督「んー…」ジー…

加賀「…私の顔に、何かついていて?」

提督「いや…別に」

加賀「はぁ…これだけは言わせて頂きますが、あなたが私の提督なのは別に構いません。それなりに期待もしま
しょう。ですが、それだけの事です。先にも言いましたが、現実を直視して下さい。こんなハズレの鎮守府にき
たという自覚と、諦めも重要だと私は思っています」

提督「ハズレねぇ…」

加賀「…では、失礼します」ペコリ スッ…

提督「はいはいっと…」


ガチャ…パタン…


提督「はぁ、全く何だかなぁ…」

そこは外れた鎮守府。

大本営をはじめとし、他の鎮守府ではそこをハズレ鎮守府と呼ぶ。

問題児とされた艦娘や提督の行き着く陸の孤島。別名、海軍の墓場。

主要な任務など皆無に等しく、回される仕事の大半は良くて護衛任務。

無しが基本当たり前。

最も酷いのは演習の的役。

彼がこの鎮守府に着任した切っ掛けは定かとなっていない。

何かしでかした訳でも軍法に反した訳でもない。

彼は自ら進んでこのハズレ鎮守府へと来たのだ。

ここに進水している艦娘は僅か四名。

一人目は加賀型一番艦、正規空母ネームシップの加賀。

嘗ては一航戦の加賀として同じ一航戦の赤城と共に第一線を支え続けたと言われている正規空母の加賀。

しかし彼女は戦場において作戦指示を無視し、無茶とも言える特攻を仕掛けて敵味方問わずに多大な被害を出す

と言う大惨事を引き起こした過去がある。

それが原因となり、加賀は大将第一艦隊に所属していたものの、即時解任。

解体処分こそ免れたものの、この遠方の地である陸の孤島、海軍の墓場たるハズレ鎮守府への左遷が決まった。

二人目は長良型一番艦、軽巡洋艦ネームシップの長良。

数々の戦場をたった一人で駆け回り、制圧してしまうという偉業を成し得た過去を持つ。

だがそれは組織にとってあってはならない、してはならない行いの一つだった。

彼女の行動の端々でその被害を被り轟沈してしまった艦娘も居ると聞く。

水雷戦隊の指揮統率力は群を抜いていたと言われているが、上記の通り自ら作戦を逸脱する行為が目に余り結果

として彼女もまた左遷扱いとなった。

三人目は綾波型九番艦、駆逐艦漣。

周りからは変わり者と言われ、彼女に好意を寄せる艦娘は殆ど居なかったと言われている。

提督を提督・司令官とは呼ばずにご主人様、と呼ぶのも他の艦娘には理解を及ぼさない原因となった。

普段からこんな調子のため、戦闘時もその風変わりな発言や行動が災いし、仲間達との連携が計れずに一艦隊を

瀕死の状態へと追いやる事態が発生する事になる。

これを好機とし、当時漣が所属していた鎮守府の提督は、厄介払いをする意味で責任を取らせる名目で漣をこの

ハズレ鎮守府へと左遷させた。

最後の四人目は朝潮型三番艦、駆逐艦満潮。

常に罵詈雑言が絶えない、そんな感じの艦娘。と言うのが提督の第一印象だった。

満潮はハズレ鎮守府に来る前は西方にある鎮守府の第一水雷戦隊の一員として大活躍をしていたと聞く。

前線で戦果を上げる事に至高の喜びを得ていた様で、入渠後早々に戦地へ戻ろうとしたりと何かとじゃじゃ馬が

過ぎていた面もあったようだ。

ある日、敵泊地目前という所で身内の艦隊に損害が出てこれ以上の進軍が難しいと言う局面に立った。

だが敵は目前、ここで叩かなければ直に雲隠れされ、次に出会う頃には再び戦力を整えられてしまう。

進軍すべきと進言する満潮に対し、水雷戦隊旗艦はこれを拒否、だが提督からの命令は追撃せよとの事だった。

提督からの命令は絶対。

水雷戦隊旗艦は苦虫を噛み潰したような表情でそれでも了解と呟き、大破する仲間を囲うようにして進軍した。

やがて岩礁の陰に身を潜める残存部隊を発見し、追撃に出るも満潮が突出しすぎ、大破していた艦娘が絶好の的

として集中砲火を浴びる結果となり、更にはその護衛をしていた二人の駆逐艦娘も共に被害を被り、結果として

三名轟沈、二名中破、一名小破というとんでもない結果で帰投する事になった。

提督の命令なのだから仕方がない、そう思っていても水雷戦隊旗艦は自らに及ぶ責任から逃れる為に満潮を出汁

に使い、責任転嫁をした。

陣形を保ち、無理に前に出るような勇み足さえなければ時間は掛かっても確実に全員無事で戻る事が出来た。

今回の失態は満潮による独断行動による弊害であった、そう証言したのだ。

結果として提督はこれを鵜呑みにし、満潮は解体処分こそ免れたものの厳罰としてこのハズレ鎮守府へと左遷さ

せられる羽目になったのだ。

提督「…ま、つまる所はみ出し者の集団って訳なんだが…」ペラッ…


提督は手にしていた資料に目を落としながら小首を傾げる。


提督「加賀も長良も漣も満潮も、どいつもこいつも中将クラスかそれ以上の鎮守府の艦隊に従事してんだよなぁ」

提督「ちょいとミスしたって内容でないのも確かだが、くくっ…こんな紙切れで事の顛末、その全てが明らかに
なりますかって話だ。改ざんし放題だからなぁ…流石は、大本営様って所か。それとも…」


パサ…


提督「まっ、俺がそれをどうこう言う身でもないか。何はともあれ、来たからにはやる事やらにゃあ男が廃るっ
てもんだ。やれるだけやって、ダメならさっさとトンズラこくだけさ」ニヤッ…

提督「そろそろ、猫被るのも飽きてきた頃だし、準備に取り掛かりますかねぇ…」カチン…シュボッ…

初回は以上
これから宜しくお願いします

ふぁー、トリップ

乙、新シリーズキタコレ
前シリは加賀さんの活躍が少なかったから期待したい


シリーズ初見だけど面白そう


暇っすねシリーズと繋がりはあるのかな?

皆様こんにちは


>>8
>>加賀
ヒロイン的ポジションで今回は立っているので活躍は多くあると思います

>>9
ありがとうございます
頑張って書かせてもらいます

>>10
一部登場人物や世界観が前作とリンクしています
丸々全ては反映されていません

-悪辣-

長良「よしっ、張り切って頑張りましょう!」

加賀「張り切るのはいいけれど、勝手に航路を外れないように注意願いたいものです」

漣「まぁまぁ、どーせ暇防衛なんだからさ、適当にやっちまうのねっ!」

満潮「あんたその喋り方いい加減ウザイんだけど」

漣「あらら~?満潮ちゃんったら、ご機嫌斜め?斜め?おこ?おこなの?それとも激おこ満潮ちゃんキタコレ!?」

満潮「マジウザッ…!ねぇ、加賀!別にコイツ居なくても護衛任務とか出来たんじゃないの?」

加賀「原則として護衛任務は軽巡洋艦一名、駆逐艦二名に他一名の計四名が基本になります。三名では護衛不可
能なのよ。諦めなさい」

満潮「はぁ!?何それ、私じゃ力不足ってこと!?」

長良「取り敢えずさ~、もう直任務も終わるんだし、仲良くやろうよ。任務中くらいはね?」

加賀「同感です。無駄口を叩く暇があるなら周辺の警戒を密に願いたいものです」

提督「…はぁ、そうですか」

依頼人『お宅んところの艦娘、どうなってんのさ!口喧嘩ばっかりで、深海棲艦の奇襲がなかったから良いよう
なものの、もしもあったらあんなんで本当に守ってもらえるかも怪しいね!』

提督「誠に、申し訳ございません。以後、このような事がないように指導を徹底させますので…」

依頼人『頼むよホントにさぁ!次もしも護衛してもらって同じようならこっちも報酬や資材の分け前考えさせて
もらうからね!そこんとこ、きっちり認識しといてよ!!』


ブツッ……


提督「~~っ!はぁ、やれやれ…人間、カルシウム不足が祟るとやばそうなのは理解したな。うるせぇうるせぇ」


ガチャ…


加賀「お呼びですか、提督」

提督「おう……他はどうした?」

加賀「長良は外を走っています。漣はケーキを作りたいと…満潮は一言『ウザイ』といって自室へ篭りました」

提督「あぁ…そう…」ニガワライ

加賀「ご用向きは何でしょうか」

提督「ん、取り敢えずお前一人じゃ意味がないんでな。全員集めてから言う」

加賀「ですが、他の三名があなたの言う事を素直に聞くとは到底思いませんが?」

提督「そうか…」ガタッ…

加賀「…?」

提督「それなら…」スッ…


ガシッ…


加賀「っ!?かはっ…な、何、を…!」

提督「言う事を聞かせるまでだ…おっと、すまない。加賀は幾らか業務的だが従ってくれていたな」パッ…

加賀「けほっ…」

提督「憲兵、もしくは大本営に事の顛末を報告したければして構わない。虐待を行う提督には厳正なる処分が下
されるからな。良くて永久追放、最悪死刑だ。くくっ、とんだ不始末を働いてしまったな」

加賀「あなたは、一体…」

提督「提督さ。階級は大佐。元々は中将だったんだがねぇ…」

加賀「」(中将ほどの階級の人物が、二階級も階級を落とすほどの罪とは…)

提督「加賀にしては珍しい。人を観察する目と言うのは得てして妙でな。それぞれに異なった色合いを見せる」

加賀「…!」

提督「さて、取り敢えずは従わない三名の躾からか。一つ、後学までに参考にしておきたいんだけど、艦娘って
言うのはこういう場合、どんな罰が一番堪えるのかね?」

加賀「何を…」

提督「色々とあるだろう。拷問は言わずもがな…偏に拷問と言っても男女でその在り方は様々だ。特に、君達み
たいにうら若い者であれば性的な拷問も視野に入るだろう?だが艦娘となると少々毛色が変わるのかもしれない。
そう思ったまでの事だ」

加賀「暴力で捻じ伏せるという事ですか」

提督「んー、個人的には余りしたくはないんだけど、どうしても従わないのであれば選択肢の一つに数えざるを
得ない、と言う判断だな」

加賀「もしその手法を取ると言うのならば…」チャキッ…

提督「ほぅ…」ニヤッ…

加賀「この場で打ち抜きます」

提督「…解った。解ったよ…怖いねぇ。どちらにしろ俺が出向かないとお高い彼女達は話に聞き耳を立ててくれ
ない訳だから、出向くしかないだろう?それとも、このまま二人でずっとこうしてるか?」

加賀「着任して一週間。飄々とした態度だったあなたからは想像も出来ない豹変振りです。一体何者ですか」

提督「……答えて欲しいか?」

加賀「当然です」

提督「そうか。なら断る」

加賀「なっ…」

提督「人間、やれと言われるとやりたくなくなる。言えと言われたら言いたくなくなるって訳だ」

加賀「ふざけた事を…」ギリッ…

提督「だがこれだけは教えてやろう。この鎮守府は、スペシャリストの集まりだという事だ」

加賀「は…?」

提督「さて、それじゃ俺は他三人を迎えに行ってくる」スタスタ…

加賀「あっ…ま、まだ話は…!」


ガチャ…パタン…


加賀「一体、彼は…」

長良「はっ、はっ、はっ……とっとと…!ふぅ…」タッタッタ…

提督「随分と精が出るな」

長良「あっ……」

提督「上官の呼び出しを無視して持久力トレーニングとはいい度胸だ」

長良「あ、あはは…いやぁ、加賀さんから後で聞けばいっかなー、なんて…」

提督「なるほど。無駄を省くという奴か」

長良「流石司令か……」

提督「[ピーーー]」

長良「……え?」

提督「上官に従えない奴は不要だから[ピーーー]」

長良「え、ちょ…」

提督「何だ、言ってる意味が理解できないか?[ピーーー]と言ったんだ。規律を乱す奴を置いておいてもそれこそ無駄
というものだ。つまりお前の理論で言う所の無駄を省くという奴だ。無駄なものは排除するに限る。お前は無駄
なものだから[ピーーー]、とそういう事だ」

長良「な、何よそれ!私が無駄って!」

提督「はぁ、俺も舐められたもんだよ。こんな小娘に俺の言葉は無駄だと言われ、シカトされるんだからな」

長良「だ、だって…!どうせ、こんな鎮守府に居たって意味ないじゃないですか!毎日トレーニングしたって、
やる事は遠征任務だけで…だったら、司令官の話だって聞く意味ないじゃないですか!」

提督「ふむ、なるほど。理には適ってる。が、ならば何故お前は毎日こんな整備もされていない様なグラウンド
で走り込みを行う?」

長良「そ、それは…気を、紛らわせるためで…」

提督「お前の言葉を借りるならどうせ遠征任務だけなんだ。深海棲艦と戦う出撃任務などない。そんな体力作り
は不要だろう。違うか?」

長良「……」

提督「ふっ、どうせ大方いつでも舞い戻れるように訓練でも積んで戦力の維持を図っているんだろうが、それこ
そ無意味。無駄と言うものだな」

長良「なっ…!」

提督「ここはハズレ鎮守府らしいじゃないか。一度ここに納まったら最後、死ぬ以外でここから出る事は無理だ」

長良「そ、そんな…」

提督「だがまぁ、この整備もされていないグラウンドをよくもまぁあれだけ速く走れたものだ。その点に関して
俺はお前を高く評価する。これから先も、変わらずこうしてチャンスを伺って居たいならまずは俺に従え。この
鎮守府では俺が上官であり、お前は部下だ。上官から指示が出たならそれに頷け。首を横に振るな。解ったらま
ずは執務室へ来い。生憎、俺はお前一人に時間を全て割いてる暇がない。次に来なかった場合は容赦しない」

長良「…わかり、ました…」

漣「ふんふふ~ん♪たらりら~♪」


ガチャ…


漣「あら?」

提督「飽きもせずに良くやる」

漣「あらあら、ご主人様じゃないですか♪」

提督「俺はお前の主人になったつもりもメイドを雇ったつもりもない」

漣「細かい事ぁいいんですよぉ♪それとご主人様?調子に乗ると、ぶっとばしますよ♪」

提督「面白い。是非ぶっ飛ばしてみてもらおうか?」


ガシャァァァン…


漣「あっ…!な、何してくれてやがりますかぁ!?」

提督「ふっ、言っておくが駆逐艦だろうが何だろうが上官に逆らう奴に容赦はしないぞ」

漣「いくらご主人様でも、お痛が過ぎるんじゃありませんかねぇ!」

提督「これはお痛でもなければ我が侭でもない。そもそも俺はお前の上官だ。言葉の違いを教えてやる。これは
躾と言うんだ。身を美しくすると書いて躾だ。だから余り横暴な真似を俺にさせるな」

漣「なっ…!?さ、先にいちゃもんつけてきたのそっちじゃん!」

提督「その前に、歯向かったのはお前だ」

漣「はぁ!?」

提督「俺は話があるから執務室へ来いと言ったんだ」

漣「そんなの、加賀さんから後で聞けばそれでいくない?」

提督「はぁ、揃いも揃って馬鹿ばっかりか。馬鹿か?史上空前の馬鹿か?長良といいお前といい、ホンット救い
難いレベルの馬鹿だな?この世に居るかどうかしらんが、仏と言うのはここまで馬鹿を量産させてなんとする」

漣「馬鹿馬鹿ってちょーメシマズなんですけど!」

提督「戯け、俺の方がメシマズだ。ケーキ作りも大概にしないと以後禁止にするぞ」

漣「なっ、そんな権利…」

提督「あるんだよ。俺はこの鎮守府の提督だ。お前の上官だ。お前は俺の部下だ。指示に従わないのなら別に構
わんが、その場合は不要と見做し即時解体処分にしてやる」

漣「解体、処分って…冗談、だよね?」

提督「すまないが事実だ。それが嫌ならさっさとこの場を片して執務室へ来い」

漣「……」



コンコン…


満潮「ウザーイ」


コンコン…


満潮「あぁもうっ!ウザイわね!何よ!誰!?」


ガチャ…


満潮「え、ちょ…!」

提督「全く、どいつもこいつも…」

満潮「ちょ、あんたねぇ!もしも着替えてたらどーすんのよ!馬鹿!変態!スケベ!」

提督「安心しろ、俺が興味あるのは大人の身体だ。お前みたいな貧相なガキに興味はない。そもそも海軍の軍規
に反して駆逐艦の艦娘に手を出すとか言う馬鹿の心境が俺にはいまいちよく解らん。極めてロリコンに近いのか、
はたまた特殊な性癖の持ち主なのか、どちらにしろ理解に苦しむね」

満潮「だ、だから何よ!勝手に入ってこないでよ!」

提督「大概にしろ小娘」バンッ

満潮「ひっ…!」ビクッ

提督「おっと、これではただの恫喝になるな。今のは非礼だったな、詫びてやる。すまんな」

満潮「……」

提督「ツンケンするのは別に構わんが時と場合を弁えろ。俺が執務室へ来いと言ったら来い。上官命令に無駄な
プライドを翳して逆らうな。次に逆らったら相応の罰を加える。宣言してからの行使だ、次からは容赦しない」

満潮「れ、連絡とか、そんなの別に…加賀使えば、それでいいじゃないのよ…!」

提督「便利屋加賀パート2か。馬鹿なのか、阿呆なのか、単細胞にも程があるぞ。身の程を弁えろ戯け。園児で
すら言われた事はキッチリこなすぞ、このろくでなし」

満潮「な、何よその言い方!あんた提督向いてないんじゃないの!?提督なら艦娘のアフターケアくらいしても
当然じゃないのよ!」

提督「ははははっ!何がアフターケアだ、笑わせるな!ケアするほどの仕事もしてないだろ。便所掃除くらいし
てからほざけこのナマケモノが」

満潮「…うるさいわね」

提督「くくっ、反論できなくて罵倒に覇気がないぞ?」

満潮「ウザイのよッ!!」

提督「ほぅ、まだそれだけ元気があれば十分だ。だが次からは先も言ったとおり容赦はしない。サービス期間は
今この瞬間だけだと思えよ。この後、執務室に来なかった場合は最悪解体処分もあると思って行動しろ」

満潮「は、はぁ!?なにそれ…意味分かんない」

提督「なら理解できるようにする事だ。言っておくが俺のモットーは有言実行だ。やると言ったらやるって事だ。
解体処分と言ったら本気でやる。あとから何を喚こうが命乞いしようが知らん。こんな辺鄙な場所で無様に果て
たいなら一生ここにいろ。後で解体処分の為にもう一度だけ尋ねてやる。それが嫌ならさっさと執務室へ来い」

満潮「……わかったわよ」

加賀「……」

長良「……」

漣「……」

満潮「……」

提督「さて、四人揃って意気消沈しているところ申し訳ないが、早速クレームだ」

加賀「……」

提督「解ってると思うが、先の遠征任務で護衛した船団の船長からのクレームだ。警護中に身内同士で喧嘩沙汰
を起こしてくれたんだってな。そりゃあ大層なお怒り具合でな。奴さんのカルシウムもゼロだったよ」

加賀「申し訳ありません。私の監督不行き届きです」

提督「が、別に俺はそんなのはどうだっていい。こんなものは話の繋ぎだ」

長良「え…?」

提督「言いたい奴には言わせておけばいい」

漣「それ、どういう意味なの?」

満潮「説教する気ないなら、何で呼んだのよ」

提督「いい質問だ。お前等問題児にもう一度だけ脚光を浴びるチャンスをくれてやる、と言ったらどうする?」

加賀「脚光を浴びる…?」

長良「それは、どういう意味ですか」

提督「今日、一人新たに着任する艦娘が居る。ヒトヨンマルマルには到着するだろう。もうあと三十分もすれば
着任するな。五名居ればまぁ、形にはある程度なるだろうからな」

加賀「どういう事ですか?」

提督「俺はな、相手の悔しがる顔を見るのが大好きなんだよ」ニヤッ…

加賀「…不愉快な笑みです」

提督「くくっ、はいはい。飄々と過ごすのも飽きたからなぁ…ふぅぅ……」カチン…シュボッ…

加賀「……」

提督「そこでだ。分不相応にもハズレ鎮守府と言われるここにはそれぞれに秀でたスペシャリストが勢揃いして
いる、という事に俺は気付いた訳だ」

加賀「は…?」

提督「全く…各鎮守府のクソ虫、ウジ虫、ゴミ虫提督共はこんなにも見る目がないときた。実に…じ・つ・に、
馬鹿ばっかりで、ひっっっじょうに俺は今愉快だ!」

満潮「何、言ってんのよ、こいつ…」

漣「解らない…」

長良「私も…」

取り敢えずここまで

欄にsaga入れてなくて暴力的表現全部[ピーーー]になってもーた(・ω・)
>>15で長良との会話で[ピーーー]連呼してる部分は「死ね」と書いてあります
蛇足だったら済みません


暇鎮とは違う感じで面白い


こういうのも書けるんやね、これは楽しみだ

これは期待

今回はシンプルに腹黒提督か

タイトルからは想像できないガチ提督とは…

はよ続きかけや

面白いな、やっぱり。非安価長編では久々の期待作

提督「加賀、お前は空母と言う特性上、艦載機を通して先を見る能力がある。加えて必殺必中の極めて精巧且つ
強力な一撃を放てる火力!今まで見てきた空母の中でもお前は群を抜いている。他が一拍置くタイミングすらも
お前にとっては無駄な所作になる。周りと連携が取れなくて当然だな」

加賀「……!」

提督「長良、お前の足の速さは軽巡の枠を優に超えている。それだけじゃない、一発の火力と次発装填の早さ、
他の軽巡には凡そ真似はできんだろうな。戦艦クラスとタイマン張って打ち勝てるだけのポテンシャルを秘めて
いる奴はそうはいない」

長良「えっ…?」

提督「漣、くくっ…お前は本当に面白い奴だな。そのコミュ障がなけりゃ今頃は大出世だっただろうよ。周りと
の連携が計れず大破した連中が居るって?馬鹿を言え、お前の計算通りだったのを周りが勝手に崩しただけだ。
結果を見ればそんなのは火を見るより明らかだ。見る目が無いとか抜けているとか、そんな生易しいレベルじゃ
ないな」

漣「」(この人…)

提督「満潮、お前は本当に駆逐艦か?くくっ、笑えてくるよな。お前が大破進軍を進言した事になってるんだっ
てなぁ。その場で言えば良いものを、更に後から全ての濡れ衣被されてお役御免でここに不時着、見事な転落し
きった人生じゃないか。お前が居たから全滅回避できたんだろ?普通じゃまず有り得んよ。あの状況から一転し
て全てを殲滅して尚、三人も残って帰還するなんてまず信じられん」

満潮「」(こいつ、本当にウザイ…!)

提督「因みにこの後着任してくるのは高雄型四番艦、重巡洋艦の鳥海だ」

加賀「鳥海…?確か、金剛型の霧島と知略を競えるだけの頭脳を持っているとか…」

提督「ほぅ、流石は加賀。だが俺に言わせりゃ鳥海の戦略は霧島なんて目じゃないね。あいつの頭脳は一歩先の
未来すらも視る。凡庸な連中相手じゃ、あいつの知略は半分もその実力は発揮できゃしない」

加賀「結局、その鳥海を含めた私達五名を、あなたはどう利用するつもりですか」

提督「オブラートに包むって言葉を知らない奴だなぁ。ま、別にいいけど…俺はあのエリート提督がこの上なく
嫌いなんだよ。俺も周りに理解されなかった口でな。戦略が毎度突拍子もないと、艦娘を無駄に轟沈させるだけ
の無能提督ときたもんだ。じゃあなんで俺は中将になれたかって話だ。くくっ、目に物を見せてやる」トントン…

長良「目に物…?」

提督「まずはこの数字だ。業績…ひっっっじょうに下らない。こんなものを何万何億何兆稼ごうが知った事か!
だが、取り敢えずはエリート君の背中を掴まない事には始まらない。故にNo.2と言う訳だ」

漣「No.2…?」

提督「おう、バリバリ最強のNo.2をまずは目指す」

満潮「はぁ?何それ…普通No.1じゃないの?」

提督「あっさり抜いたらザマァ感がねぇだろ、ダァホ。エリート君の吠え面拝んだ時が、お前等が栄光の凱旋を
果たした瞬間だ。どうせ今のままじゃお前等は腐って寂れて廃れるだけだ。だったら騙されたと思って、俺にそ
の命の全てを預けろ。俺の命令には従え。これからは心行くまでお前等の思い通りに事を運んでやる」


ツカ ツカ……ガチャ……


??「その話が本当で、この先に道が続くと言うのであれば、私はその話に乗りましょう」

提督「きたか、鳥海」

鳥海「お久しぶりです、司令官さん」

漣「ご主人様と、知り合いなの?」

鳥海「ええ、改めまして…高雄型四番艦、重巡洋艦の鳥海です。宜しくお願いしますね。加賀さんに長良さん、
それから漣さんに満潮さん?」

満潮「私達の事は既に解ってるって訳ね」

提督「さて、と…じゃあ早速だが、お前等は今日から一週間、演習のみを行え」

加賀「なっ…」

長良「演習だけ!?」

漣「それ、どういう…」

満潮「ふざけんじゃないわよ!大体……」

提督「あぁあぁ、待て待て待て待て。煩いから黙れ。話は最後まで聞け、猿か?言われて即座に脊髄反射する猿
なのか?全く……いいからつべこべ言わずにこのカリキュラムに沿って演習はやれ」ピラッ…

加賀「これは…」

鳥海「私が事前に司令官さんから伺った情報を元に作りました」

提督「個々で内容は全て違う。相手を想定した上で無論演習は行え。妥協は許さん。それを全てこなした上で、
その後直に実戦へ移る。最終調整と言う奴だ。実際にその項目をやれば解る、やらなきゃ解らずじまいでそのま
ま終わりだ。だからまずはやれ。反論は認めん、以上だ」

加賀「…了解しました」

長良「はい、了解です」

漣「はーい…」

満潮「解ったわよ…」

鳥海「では、私もカリキュラムに沿って演習を開始します」


ガチャ……パタン…


提督「……はぁ~あぁ、仮面を被るのも楽じゃない、が…それ以上に楽しい、か……」ニヤッ…



-計画-

加賀「鳥海さん」

鳥海「何か?」

加賀「あの、提督と言う人物は一体…」

鳥海「…あぁ、ふふっ、やっぱり気になりますよね」クスッ

加賀「その含み笑いは多少なりともやはり、何かを知っていると解釈して宜しいのでしょうか」

鳥海「あらら…洞察力は流石ね。いいわ、私の知ってる限りで教えて上げる」


彼は別名、仮面の男、なんて呼ばれていた時期があります。

ご覧になった通り性格は極めて自分勝手で上から目線、自信家で言動も暴力的。

以前着任していた鎮守府でもそれは変わりありませんでしたね。

ただし、彼の立てる戦術や艦娘の性能を見抜く眼力は他の提督には無い特異なものがあると言えます。

一切の妥協を許さず、自らの出した結論だけしか信じず、それ故に周りからは白い目で見られる。

決して自分の本心、本性は相手に晒さない。

私もあの人の本音と言うのを聞いた事がありません。

それ故に、仮面の男、等と言う呼称がされていたのかもしれませんね。


加賀「以前は中将だったというのは…」

鳥海「本当です。ただ、剥奪されたのではなく、自ら進んでその地位を捨てた、と言う風に聞いてます」

加賀「自ら、進んで…?」

鳥海「意味が解りませんね?では、私も演習の準備があるのでこれで失礼します」

加賀「……」


そこは外れに外れた陸の孤島。

誰も見向きもしない、はみ出し者が寄せ集められた海軍の墓場。

誰が言ったのか、外れと出来損ないのハズレを掛けたハズレ鎮守府。

そんな墓場に、一癖も二癖もある提督を筆頭とし、戦場で汚点を刻んだ五名の艦娘が漂着する。

曰く付きの五名は誰からも理解されない、誰からも信用されない、誰からも重用されない、誰からも認知されない。

行き着くべくして行き着いた、最後の鎮守府。

提督を含めたこの六名が、このハズレ鎮守府が後に大本営をも揺るがす大事を成し遂げる。

今回は区切りがいいのでここまで

乙 提督が戦うわけじゃないんだから原作通り6人でもいいような

おつ

こういうのワクワクする

乙、これ以上ない一話だ




~逆襲の狼煙~



-思惑-

加賀「────以上がこの一週間のデータ全てです」

提督「……近海の深海棲艦相手にチームワークを検証した結果は?」

加賀「…良い作戦指揮でした。こんな艦隊なら、また一緒に出撃したいものです」

提督「ふっ…」ニヤッ…


ピリリリリ……ピリリリリ……


提督「っと…小言か罵倒か、どっちかなっと…」

加賀「…?」


ガチャ…


提督「はい、もしもし?」

??『…その声は、ふっ…君、本当にまだ生きてたんだねぇ…驚いたよ。ハズレに漂着したって風の噂で聞いて
はいたけど、まさか世迷言じゃなく真実だったとは…』


ピッ……カチャ…(スピーカーON)


提督「ちっ、大本営じゃねぇのか。嫌味なら切るぞ」

??『そう邪険にしないでくれよ。うちはこれからアルフォンシーノ方面への進軍を考えていてね。最終調整を
行いたいので、君のところの艦隊で『試し撃ち』をさせてほしいのさ。錬度を上げる意味もあるんだけどね?』

加賀「……」ピクッ…

提督「調整ねぇ…」チラッ…

加賀「……」

提督「構わないよ」

??『おぉ、そうか。何、病院送りにしない程度には抑えるように、うちの艦隊にも通達は出しておくさ。精々
当たり所が悪くて死ぬって事だけはないように頼むよ?あはははは!』

提督「はっはっは!」

??『!?』

提督「いやぁ、悪い悪い…調整相手に間違って怪我させちゃわねぇかこっちが心配してたからなぁ。いや結構、
じ・つ・に、結構!それだけ大胆に寝言ほざけりゃ問題ないだろ。頼んできたのはそっちだ、時刻は明日のヒト
サンマルマル。一秒でも遅れたら実弾で演習だ」

??『なっ!?き、貴様……』

提督「あぁあぁ、はいはいはいはい。煩いから黙れ、この薄らハゲ脱糞野郎。電話越しでも臭うとかぶっ飛びす
ぎだろ。黙って糞して明日でも待ってろ。時間はさっき通達した通りだ。反論は許さん」


ブツッ……


加賀「……」アゼン

提督「ん、何だよ」

加賀「…いえ、何でも…」

提督「電話してきたのは北方に陣を構えてる北提督だ」

加賀「はい、声でどなたかは直に解りました。以前にも、同じ事を言ってきた事がありましたから…」

提督「そうか」

加賀「ですが、あそこまで馬鹿にして明日本当に来ると思っているのですか?」

提督「そりゃあ来るだろ。あいつは元来、馬鹿にされたままじゃ引き下がれない単細胞だ。あわよくば、と間違
えただ何だといちゃもん付けつつ、実弾ぶっ放してくるかもしれねぇな」

加賀「そ、それは…」

提督「まぁだが、先に手を出すのはあっちだ。どっかのドラマでもビシッとスーツで決めてやってたろ。やられ
たらやり返す、倍返しだ!ってな」ニヤッ…

加賀「ドラマの役者さんはそんな不遜な笑みは浮かべません」

提督「ちっ、うっせぇんだよダァホ。っていうか、お前も相当神経図太いな。この間あんだけの目に遭ってまだ
俺にそんな口利けるとか、そうそういねぇぞ」

加賀「あの程度の恫喝では私の意志は挫けません」

提督「言うねぇ…で、話を戻すが先の実戦、お前の見解は?」

加賀「鳥海さんの戦術は完璧でした。長良も漣も満潮も、十分な錬度で深海棲艦を撃滅。型に嵌らない、それで
いて特定の型を持つ、その型に嵌ると尋常ではない強さが発揮できると想定されます」

提督「矛盾した表現だが概ね当たってる。その通りだ。型に嵌らないってのは、言わば海軍で推奨されるお飾り
陣形の事だ。だが、お前等にとってこの陣形自体が枷でしかない訳だ。各々が独断で縦横無尽に暴れまわるって
のは、傍から見ればどえらいもんだろうがそれすらも計算の内…鳥海が提唱したあの戦術なら、お前等に向かう
所敵は無しって訳だ」

加賀「ですが良かったのですか。勝手な出撃と勝手な資材消費は経費申請報告書に記載した場合、虚偽申請のし
ようもありません。仮にしたとしても、当然の如く暴かれるのは目に見えています」

提督「その為に明日、北と一戦交えるんだろうが」ニヤッ…

加賀「では、まさか本当に明日、北提督の率いる艦隊は実弾を使用してくると?」

提督「ああ、十中八九必ずな。北のおぼっちゃんの事だ、盛大にぶちかましてくれるだろうよ。さっきはああは
言ったが、こっちは敢えて模擬弾だけで応戦する。解ってると思うが…」

加賀「…正直、頭にきていた所です。そもそも的になどなりたくはありませんから。徹底的に打ちのめします」

提督「そいつは重畳。他の奴等にも明日の演習の件を通達しておけ」

加賀「解りました」




満潮「ちっ、悔しいけど美味しいから尚更ムカつくわ…」パクッ…

漣「あら~、別に食べなくてもいいわよ?」モグモグ…

満潮「うっさいなぁ…一言多かったのは悪かったわよ」モグモグ…

鳥海「栄養バランスも非常にいいですね」モグモグ…

長良「漣のご飯は最高だよー!」モグモグ…

加賀「流石に気分が高揚します」モグモグ…モグモグ…

満潮「なんか加賀、食べる速度早くない…?」

加賀「……気のせいです」

長良「ふふっ…でもさぁ、こうやって皆で顔を合わせてご飯って、何時以来だっけ」

鳥海「…?」

加賀「そうですね。かなり久しぶりだと認識しています」

鳥海「今までは、各々の部屋で?」

満潮「そうよ」

鳥海「何故?」

漣「だって、喋る事別にないもん」

長良「あはは…まぁねぇ、どこかギクシャクもしてたしねぇ」

加賀「提督の配慮、と言うべきでしょうか。食事は全員で摂る事、と通達がありましたから」

鳥海「ホント、素直じゃありませんね。あの人は…結局の所、私達が一つにならなければ彼の描く理想には遠く
及ばないという事なのでしょう」

満潮「何が理想よ。アホ面晒して調子に乗ってるだけじゃん。あぁ、もうマジウザイ!」

提督「アホ面で悪かったな、このクソチビ」

満潮「げほっ」

漣「うわっ、汚なぁ!」

鳥海「あらまぁ…」

満潮「いきなり後ろから声掛けてくるんじゃないわよ!このアホ面オヤジ!」

提督「んだとテメェ!誰がアホ面だこのクソチビまな板!」

満潮「私は満潮ですー!名前ちゃーんとありますー!あんたみたいなアホ面オヤジと一緒にしないでくれる!?」

提督「ぶっ殺すぞこのクソガキャ…」

加賀「子供ですか、あなたは…」

提督「大人だ!ふざけんな!」

加賀「はぁ…」

長良「あはははっ」

提督「何が可笑しいんだよ!」

長良「だって、二人してさぁ!」クスクスッ

提督「待て待て待て待て。今二人って言ったか?ふざけろ、俺は可笑しくない。可笑しいのはこのクソチビまな
板であって断じて俺ではない。むしろこのクソチビまな板以外にありえない。存在しない」

満潮「あーっ!もうマジなんなのこいつ!ほんっと腹立つ!」

漣「あれあれ、満潮ちゃん、またおこなの?激おこ?プンプン丸?ムカチャッカいっちゃう?やっちゃう?」

満潮「ちょっと、加賀っ!あんたも澄ましてないで何とか言いなさいよ!」バンバン

加賀「関わると碌な事にならなそうなので、傍観に徹します」

提督「見ろ、自らの無様を曝け出した結果だ。俺が正しいと証明されたな、クソチビまな板」ドヤァ

鳥海「」(ホント、飽きないわねぇ…)クスッ…

満潮「はっ!言ってなさいよ。いつか吠え面かかせてやるんだから!」

提督「ほぅ、それはじ・つ・に、面白い!楽しみにしてよう!あぁ、そうだ!明日の演習で一人で三人分仕留め
る事が出来たらお前に俺の吠え面を公開してやろう!」

満潮「…言ったわね。文字通り拝ませて貰おうじゃないの、アホ面オヤジの吠え面をねっ!」

長良「あ~あ……」

漣「ご主人様、それは墓穴かもよぉ?」

提督「え?」

加賀「明日が楽しみです」

提督「え、いや…おい、待て待て待て待て。おい、どういう意味か答えを言え」

満潮「ふふん、吠え面の準備だけして待ってなさい!」

提督「なんて連中だ…信じられん」

満潮「べー、だ!」

提督「こ、の…ク・ソ・ガ・キ……ッ!」

-実力の差-

提督「……」

鳥海「時間ですが…」

加賀「北鎮守府の面々は一人として現れていません」

提督「ちっ…」


ピリリリリ……ピリリリリ……


提督「北のビチクソ野郎だな…」


ピッ……


提督「…はい、もしもし」

北提督『やあ、ゴミクズの提督さん』

提督「時間も厳守できない奴に言われても何とも思わねぇって」

北提督『くくっ…何言ってるのぉ、もう演習は始まってるんだよぉ…』

加賀「……」チリッ…

長良「加賀さん?」

加賀「…哨戒任務に向かわせておいて正解でした。警戒中だった艦載機の一団が対空砲火にて制圧されました」

満潮「まさか、奇襲!?」

漣「うわぁ、メシマズ状態。何それ、感じ悪ぅ…」

北提督『ゴミ集積場に寄せ集められただけのクズ共が!的役になれるだけでもありがたいって気になってもらい
たいもんだねぇ!スクラップにされて然るべきクズなんだからさぁ!』

提督「…結構。じ・つ・に、結構!好きなだけ小細工して来い。その分、負けた時のお前の無様具合は俺の想像
を優に超えてくれるだろう。吠え面掻く準備だけして糞でもしとけ薄らハゲ脱糞野郎!」

漣「どうもでいいけどぉ、言葉が汚いですよ、ご主人様ぁ」

提督「っせぇ!」

北提督『……上等だよ。叛乱を企てたとしてこの場で全員雷撃処分にしてやる!!』


ブツンッ……


提督「よし、いってこい」

鳥海「はいはい。それじゃ加賀さん、音頭お願いしますね」

加賀「一航戦、出撃します」

漣「ほいさっさ~♪」

満潮「満潮、出るわ」

長良「よしきたー!任せといて!」

鳥海「さぁ、行きましょう!」

加賀「…相手はこのまま直進、これは…」

鳥海「どうかしましたか?」

加賀「不愉快です」

長良「どうかしたの?」

加賀「相手は聨合艦隊です」

満潮「はぁ!?」

漣「え、ちょっと言ってる意味解んない」

加賀「つまり、数で私達を蹂躙する気なのでしょう。先の無線で言っていたように、言われ無き罪とやらで私達
を雷撃処分にでもして自分の手柄として功績を手中に収める、と言った所でしょうか」

鳥海「…なるほど。非常にそれは不愉快ですね。なら、こちらも相応の対応をしてあげれば良いのではなくて?」

満潮「それじゃあ、暴れて良いって事よね」

漣「ご主人様も見てる事だし、すこ~し本気出しちゃおっかなぁ♪」

加賀「けれど、相手空母の主力が出てくるなら…流石に、慎重に攻めたいところだわ」

長良「そこは加賀さんに任せるよ!私達は…」

満潮「海上を…!」

鳥海「制圧します!」

取り敢えず今日はここまで

乙です
今さらになってとんでもない鬼才を見つけたかもしれん、過去作読んでくるわ

乙乙
いいねぇこの提督の減らず口加減、実にいい

じ・つ・に ←これ好き

福山雅治提督かな?

皆様こんばんは


>>43
鬼才なんて恐れ多いです
でもありがとうございます

>>44
口の錬度は誰よりも高いと思います

>>45
書いてる自分も好きです

>>46
違います
でも、あるキャラをモチーフにはしています

空母艦娘1「相手の空母は加賀って言っても、たかが一人よ。こっちが制空権を奪えない道理は無いわ」

空母艦娘2「一気に蹴散らして上げようじゃない!」

軽空母艦娘1「こっちは空母四人よ」

軽空母艦娘2「制空権は貰ったも同然ね!」

加賀「不愉快です」

空母艦娘1「か、加賀…!」

加賀「一つ、訂正があります」スッ…

空母艦娘2「て、訂正ですって!?」

加賀「確かに艦載数ではそちらが上…事実として制空権を優勢に導く事は困難かもしれません。ですが、それと
現状の優劣は別だという事です。あなた達程度の錬度で私の優秀な子たちが蹂躙できるとは到底思えません」

軽空母艦娘1「言わせておけば…!」

軽空母艦娘2「だったら望み通りに蹂躙して上げようじゃない!」

加賀「…言葉の意味を理解しているのですか?」クスッ…

軽空母艦娘1「何を…!」

加賀「蹂躙の意味です。これが、蹂躙するという事の実演です。鎧袖一触よ。心配いらないわ」ビュッ…

目にも止まらぬ速さで矢を放つ。

相手空母群は一瞬何が起こったのかさえ理解しなかった。

放たれた矢は彼女達を追い越し、後方で無数の艦載機へとその姿を変えると一気に急上昇。

上空で旋回してから今度は一気に急降下爆撃を開始する。

その間、四人はただ呆けていただけ。

その判断が実戦であれば命取りにさえなるのを知らない、甘い考えが起こす気の緩み。

たった一投。

僅か一矢。

それだけで加賀の率いる艦載機達は軽空母の艦娘二人をまさに鎧袖一触、一撫での下に葬った。


ボゴオオオォォォォォォン


空母艦娘1「なっ…!」

空母艦娘2「え……?」

軽空母艦娘1「きゃあっ」 大破

軽空母艦娘2「そ、そんな…」 大破

空母艦娘1「これは…模擬弾…!?」

空母艦娘2「よくも…!」


瞬く間すら惜しくなる。

それほどまでに短い僅かな間。

時間にすればほんの数十秒。

それだけで加賀と自分達に歴然とした差がある事を思い知らされて尚、彼女達は加賀へと立ち向かう。

だが、それは実戦で言えば死路。

勇猛果敢と言うに相応しくない愚行。

かつて謳われた一航戦の一翼、鎧袖一触の加賀。

それはかつてではない。

健在であり、既にそれは現実としてそこにある。

謳われてなどいない、今尚紡ぎ続けている。

一航戦の加賀を伝説と呼ぶ者は、過去の亡霊のみ。

しかし彼女の実力、これはそのほんの一部に過ぎない。

空母艦娘1「以前に見たことがある、翔鶴さんや瑞鶴さんに匹敵するくらいの強さだってことなの、加賀は…」

空母艦娘2「まさか…鶴姉妹より上位の空母艦娘なんて…」

加賀「……」ピクッ


ボヤキに近いその一言は加賀にとっては耳障りでしかなかった。

彼女がこの世で最も嫌う事、それは比較をされる事。

中でも二航戦や五航戦と呼ばれる姉妹達と比べられるのが最も加賀は嫌った。

それは嫌悪ではなく、ただ純粋に比べられるという行為そのものに対しての嫌気だった。

中でも一航戦の後釜と言われている五航戦の姉妹に対しては殊更辛辣に当たる事が加賀は多い。


加賀「五航戦の子なんかと一緒にしないで」ビュビュッ


加賀と同じ、一航戦の名を背負う赤城ですら容易に真似できない、加賀だからこそ成せる脅威の技術、速射。

本来、加賀のスタイルは一矢入魂。

一発一発に己の念を籠めるが如く、驚くべき集中力を発揮して放たれる一撃必殺と呼称するに相応しいものだ。

故に放たれた艦載機は狙い違わず目標を撃滅する。

だが今のは一呼吸の間に、二度の射手を行うもの。

精密性は無論欠けるが放たれる艦載数は通常の倍、つまりやり方次第で一気に複数艦の相手を撃滅に追い込める

ほどの驚異的な破壊力を秘めている。

これが加賀が基本の型に嵌らない、周りとの連携を取れないとする所以の一つ。

二条の放たれた矢は敵前で無数の艦載機へとその姿を一変させ、大空へと一斉に舞い上がる。

イメージは既についている。

真上への急上昇から狙いを定めた艦爆隊による一斉爆撃。

次に艦攻隊による敵上空から急降下、対空砲が放たれるより早く、より速く、描く姿はまさに獲物を狙う鷲。

空の覇者、加賀の強さを絶対とし、それを知らしめるが如く、放たれた艦載機達による一方的な攻撃が始まる。

まさに、これこそ蹂躙と称するに相応しい圧倒的戦闘力。


ボゴオオォォォォォォン


加賀「それでも、狙いは外しません。みんな優秀な子たちですから」

空母艦娘1「は、発艦すら…できないなんて…」 大破

空母艦娘2「バケモノ……」 大破

加賀「射法八節、その理に準じれば基礎を基礎とし、極める事のみに心血を注げば良いだけの事です。あなた達
には私を詰る権利は無論、二航戦や五航戦を引き合いに出す資格すらありません。分を弁えて下さい」

提督「ヒュ~♪やるねぇ、加賀は…ありゃあいつだったかなぁ、一度だけ赤城の戦闘を見た事があったが、赤城
が柔なら加賀は剛か…利を活かし、盤上全てをひっくり返せる赤城に強さで一気に捻じ伏せる加賀…くくっ、確
かに一航戦の二人が揃えば鬼に金棒、才色兼備…智勇と武勇が合わされば怖いもんはねぇわ。最強と言われるに
足る所以、ここに一つ見つけたり、だな」



提督「あれが一航戦の赤城…」


赤城「敵艦、捕捉しました」


提督「でもって…その赤城を要するあの艦隊を指揮するのが、噂の大佐の枠を超えた大佐殿か。元はブラックで
有名だった鎮守府だ…それを僅か二年とちょっとでここまで纏め上げたわけだから、まぁ確かに手腕としちゃあ
大佐で納まる器じゃなさそうなのは目に見えて解るか…」


とある提督「陣形はそのまま単縦陣。瑞鳳は赤城に続け、発艦準備だ」

瑞鳳「はい!」


提督「…見てて虫唾が奔るな」


今では四方山の鎮守府で語り草になっている、海軍史上類を見ない叛乱事件。

その渦中にあって最終的に収束へと導いた張本人。

風に乗る噂には必ず尾鰭が付いて回るというが、実際に見て彼が感じたのはそれとは別の感情だった。

見てて虫唾が奔る……そう感じたのは単にそこに流れる空気が彼にそぐわないものだったから。

艦娘達と和気藹々と過ごす、それはどこの鎮守府にも見て取れる光景だろう。

過去の確執があったからこそ、今のあの鎮守府が存在していると言ってもいいかもしれない。

だが提督にとってそんなのはどうでもいいことだった。

時は流れ時代は変わり、深海棲艦も為りを潜めて久しい今、この海軍と言う組織は緩みだしていると実感した。

あの事件以降、名を馳せた鎮守府は他にも幾つかある。

前元帥の愛娘が治めている、精鋭揃いと名高い鋼鉄の艦隊。

不滅・不屈を信条とし、決して揺るがない鋼の意志を持った不動の艦隊。

本来はそこに名を連ねるはずだった、もう一つの歴戦の艦隊。


提督「気付いてるのか、このうねりの中に混ざった異物を…時代は、平和を求めちゃいねぇって事だ。あんたが
作ったこの平和は、悲しい事に続きゃしねぇんだ…」

-生まれる疑念-

北提督「なんだ、これは…なんで!?」

満潮「はぁ、手ごたえのない子っ!それで私達を本気で倒せるって思っちゃってる所がウザイのよッ!!」

重巡艦娘「く、駆逐艦のクセに…!」 大破

軽巡艦娘「くっ…鬱陶しい!」 中破

漣「逃げられないよ!漣はしつこいからっ!!」ドン ドン

軽巡艦娘「しまっ……」


ボゴオオォォォォン


軽巡艦娘「ぐっ…こい、つ…!」 大破

戦艦艦娘「どうして、私の、装甲が…!」 中破

長良「走り込み、してないからじゃない?」

鳥海「軽巡や重巡が戦艦に敵わない、なんて道理は何処にもありませんよ」

長良「遅すぎるよ。遅い!全然遅い!そんなんじゃ私を捉える事なんて絶対無理よ」

北提督「なんなんだ、こいつらは…」

提督「お前等がゴミクズだって蔑んでた連中さ。原石とゴミの意味を履き違えるなよ。実弾使ってそのザマじゃ
実戦でもどうせ沈んでた連中だろうよ。アルフォンシーノは前海戦の折に激闘があった海域だ。未だにエリート
クラスの深海棲艦も生息していると聞く。そんな場所にお前等程度の錬度の艦隊が突っ込んだ所で、遊び相手に
もなりゃしねぇだろうよ」

北提督「き、貴様ぁ!口を慎めよ、俺は北を任されている少将様だぞ!」

提督「だからどうした脱糞野郎!階級と賢さは必ずしも比例なんざしねぇんだよ。そら見たことか、そのバカ面
に備わってる両目で現状をよぉく見てみろ。見たか?見えてるか?飾りじゃねぇなら見えるよな?いい加減認識
しろ、ゴミは自分達でクズは自分達であるという事実を認識しろ。解ったらさっさと白旗でも上げて吠え面でも
かいてろこのゴミクズが!あぁ~、じ・つ・に、愉快だ!そのバカ面を拝めただけでも結構!大いに結構!」

北提督「お、の、れぇぇ……ッ!」

??「……見たか?」

??「あぁ、見た」

??「で、これどう報告するのかしら?」

??「どうも何も、見たままを告げればいいだろう。結局の所、私達の任務はそこに集約される」

??「つってもなぁ…演習戦に故意に実弾を使用する疑いがあるってタレコミがあって、きてみりゃ北鎮守府の
違反行為ときたもんだ…正直、まだハズレ鎮守府がやらかしてくれた方が幾分かましだったんじゃねぇのか」

??「どちらにしても違反に変わりはない。深海棲艦の脅威が著しく減少しても尚、まだその全てが解決した訳
ではない中で、内部の治安悪化にはホトホト嫌気が差す」

??「そうねぇ…平和は平和だけど、各地の鎮守府でこうも質が落ちる、と言うのは幾らか懸念材料かも」

??「しかもあの野郎、少将だろ。将官があんなんで佐官連中以下に示しなんて付く訳がねぇ。下手すりゃ艦娘
にも叛乱の兆候が見えたって不思議じゃねぇぞ」

??「事実は小説より奇なり……と単に括れる内容でもないからな。摩耶、私はこのまま生の情報を持って一度
大本営へ戻る。貴様は引き続き通達のあった鎮守府の動向監視に務めろ」

摩耶「ったくよぉ、ホントお前は人使い荒いな」

??「それとも、妹をもう少し見ていたいか?」

摩耶「幾らお前でもそれ以上言ったらぶっ飛ばすぞ」

??「…ふん」

摩耶「」(鳥海、どうしてお前、こんなとこに居るんだよ…)

??「私はどうしましょう?」

??「手が空いてるなら摩耶を手伝ってやれ。こんな小細工に等しい行為、叛乱にも入らん。海軍内部に闇がま
だ存在するのなら、肥大化する前に阻止しなければならない。私達はその為に存続された海軍の暗部だ」

??「解ったわ」

今回はここまで


早く続きが読みたいネー


相変わらずの濃密な戦闘描写が素晴らしい

そして提督は自分自身の吠え面の準備をしておかないといけないことに気付いているだろうか…ww

自分の環境が他にも通用してると思い上がってる改行がうざい

他人の環境なんてわかるわけないんだからそれは仕方ないだろw
内容見て楽しめってw


時系列は「暇じゃなくなった」の後っぽいけど、
加賀さんが健在なところを見ると艦娘の方は全員リンクしてるってわけじゃないのかな?

って上で答えてくれてた…
>>59はスルーしてください

皆様こんばんは


>>57
改行に関しては全ての環境で検証をしている訳ではないので、そこは申し訳なく思います
次回以降の判断材料の意見としてありがたく頂戴させて頂きます


>>59
そうですね
一部分だけ世界観をリンクさせてあるので、過去の話とかも織り交ぜて今後も物語を展開させていきたいと思ってます

漣「あれ、もう終わりなの?うっそぉ、メシマズ~」

満潮「連携の『れ』の字も取れてない雑魚艦隊とか、倒した内にも入らないわね」

長良「息切れすぎ!足遅すぎ!勝負も戦いも拮抗しなきゃ演習なら楽しみないじゃん!成長してるかどうかを見
るのが演習の醍醐味じゃん?まぁ、連携の確認とかもあるだろうけどさぁ、はぁ…なんかつまなかったなぁ」

加賀「ストレスしか溜まりませんでした」

鳥海「」(倍の数を相手にしてもたじろぐ所かほぼパーフェクトで任務完了。スタミナが切れてる様子もない。
何より奇襲を受けた状態から制空権を奪われても尚、戦局の優勢を貫いた個々の実力。まさに、少数精鋭)

提督「実弾使った割に、随分とこっちの被害は少ないじゃないか。北の将軍様」

北提督「ぐっ…く、そ…!」

提督「しっかし、北の将軍様ともあろうお方が…演習に実弾を持ち込み、あまつさえそれを艦娘達に使用する事
を強要するとは…いやぁ、これは…ははっ、実に、じ・つ・に、宜しくない。海軍規定の軍法に接触しているの
をご存じないのか、はたまた無視したのか…どちらにしろ、お前の未来は断たれたな?」

北提督「お、まえ…まさか…!始めから、これが狙いで…!」

提督「冗談…お前みたいな小物の座なんて俺にはどうでもいい事だ。一緒にするなよ、脱糞野郎。格の差を馬鹿
なお前に教えてやっただけだ。空いてた座席に納まっただけのボンクラと、実力を示して狙った座席を物にして
きた奴の差って事だ」

北提督「このハズレ鎮守府が、狙ってくる場所だって?あははははっ!お前こそ、馬鹿なんじゃないのか!?」

提督「吠えてろバカ面。どの道お前は懲戒処分だ。演習に実弾を持ち込むなんて新米提督でもやらかさないミス
だからなぁ…間違えました、で済ませれる事案じゃない。その垢塗れの汚ぇ首でも洗って待ってろよ」


その後、事の顛末を見ていたとされる第三者の通報により、北提督は大本営から派遣されてきた憲兵によってそ

の身柄を拘束され、彼の言葉に従った艦娘も同様にして大本営へと連行されていった。

最後まで『俺はハメられた』と叫び続ける北提督の言葉だけが、虚しく周囲に響き渡っていた。

提督「」(…三人居たな。情報が早いっていうか、目の付け所が鋭いっていうか…下手を打てば俺の首も易々と
飛ぶって事か。面倒な連中だ…だが、これで内部への疑念は確実に広がるだろう。あの新鋭の時のような、禍々
しくどす黒い野望や欲望に塗れた連中がゴロゴロと顔を出す…良くも悪くも、どちらも今後は慎重に事を運ぶん
だろうが…さて、次はどうしたもんかねぇ)

加賀「提督」パサッ

提督「ん?あぁ、演習報告書か。バカ正直に書けってか?」

加賀「それがあなたの仕事の一端だと思うけれど」

提督「はいはい、然様にございますよっと…」カキカキ…

加賀「それと…」

提督「んだよ、まだ何かお小言かよ」

加賀「北提督の一件、何故こうも迅速に事態が露見し、早急な処罰が決まったのでしょうか。腑に落ちません」

提督「…聞きてぇか?」

加賀「自力で探れなくはありませんが、労力に伴わないのであれば時間を無駄にする事になります。その間、私
はこの鎮守府を離れての独断の捜査を敢行する事になるでしょう。仰ってる意味が提督になら解ると思うのだけ
れど…どうかしら?」

提督「ったく、小賢しい奴だ。以前の言葉遊び、根に持ってやがんな」

加賀「さぁ、どうかしら?」

提督「ちっ、わぁかったよ。海軍には公にしている査察団ってのは存在しねぇ。代わりに諜報部隊、隠密部隊、
密偵部隊って三つの三大暗部が存在する。これらは日本陸軍の与り知らないまさに影の組織だ。だが先の大叛乱
としても知られる新鋭中将の一件以来、諜報部隊は壊滅している。厳密には長が退いて自然消滅の流れだ」

加賀「今回、その暗部が動いたというのですか?」

提督「あぁ、だろうな。気配を殺し、目視できる限界の位置を見極めての監視…密偵部隊だろう」

加賀「…それだけの情報を知っているあなたは、この期に及んで一体何をしようと言うのですか…」

提督「言っただろ。バリバリ最強のNo.2を目指すんだよ」

加賀「………」

提督「他に用がないなら出てっていいぞ。他の鎮守府がどうかは知らんが、俺は秘書艦のお前に執務を手伝うよ
うに要請など出さない。が、代わりにその空いた時間を使って自分を磨け。これは命令ではない。だから言われ
たからといって別にする必要はない。しかし、しなかった場合は自然とそのツケは回ってくる。まぁ、お前が思
うよう好きにやれ」

加賀「…解りました。では、失礼します」

-蠢動-

はじめは小さな違反行為だった。

資材運用に関する報告書の虚偽申告。

だがこれは運営部の見落としによって指摘されずに済んだ。

この時に彼は思った。

ああ、僕はツイている、と。

次に彼は、同期の競争相手である佐官将校の一人を邪魔だったからと言う理由で訓練を利用して事故に見せかけ

て殺害してしまう。

この時は彼も憲兵に呼ばれ度重なる事情聴取を受ける事になったが、この時も状況証拠のみで物的証拠が見つか

らないとして事故死として処理されてしまう。

この時も彼は思った。

ああ、これはもう僕に授けられた一種の力の一端かもしれない、と。

小さな悪事から始まって彼は己の強運をもって度重なる障壁を一つ、また一つと綺麗に剥がし落としていく。

邪魔な者は蹴落として、不要な物は処分して、そうやってコツコツコツコツ、小さな悪事を積み重ねていった。

そんな折に海軍でこれから後も語り草になるであろう大事件が起こった。

ある中将提督による大規模叛乱事件。

彼はここに来て岐路に立たされた。

便乗して表に出るか、それとも裏方に徹して力を蓄えるか。

結論から言うと彼は後者を選んだ。

お陰で彼が未だに知らない情報までがどさくさに紛れて彼の元に転がり込んでくる事になった。

まだ見ぬ情報の山、まさにこれこそ宝の山。

彼は寝る間も惜しんでそれらの山に喰らいついた。

気付けば彼は、人の皮を被った怪物となっていた。

??「ねぇ、一枚岩を崩すには、どこから着手するのが利巧だったかな?」

??「それをボクに聞くの?」

??「野暮だったかな?」

??「野暮だね。だって、ボクは回りくどい事しないから」

??「そうだったね。君は……」

??「一つ…」

??「ん?」

??「気になった事がある。お前は内部から穴を空けて、中身をスッカスカにしてから内側に向けて切り崩すっ
て言ってた。事実、海軍はジワジワと内部から腐食が進行している。お前が撒いた種が着実に成長している」

??「それで?」

??「…その種を踏み潰した奴がいる」

??「……根拠は?」

??「気付いてるクセに…」ニヤッ…

??「まだね…まだなんだよ。まだ、手強い鎮守府は沢山在る。それらを衰退させていかない事には、磐石には
程遠いんだよ。磐石って言うのは堅固でしっかりしていてびくともしない事を言う。現状はまだ、揺らぐんだ」

??「不動、鋼鉄、進撃、新月、中でも新月と呼ばれる艦隊は…あれは怖い。噂が本当かは解らないけど…」

??「元は深海棲艦だって奴かい?確かに、その全てが謎に包まれている艦隊だからね。僕でも情報を手に入れ
る事ができてない、唯一の艦隊だ」

??「不動、鋼鉄、進撃についてはいくつか情報が上がっているね?」

??「中でも要注意は進撃の艦隊。ここの提督、本当に厄介だよ。大本営で何度か見かけた事があるけど、あれ
の腹を探るのはいくらかリスクが伴いそうだ。率いている艦娘も最優と呼ぶに相応しい面々…」

??「ボク、あの艦隊嫌いだ」

??「君が感情で物事を判断するのは珍しいね。どれも頓着無くイケる口だと思っていたのに…」

??「ボクに宿っている古の記憶がね、言ってるんだ…次に出会うその時こそ、今度こそ完全な地獄の底へ落と
してやろうって…だからかな。嫌いだけど、嬉しい」

??「ふふっ、僕はそんな君が愛しく思う。やはり、君は最高だ」

??「褒めてもボクから愛は生まれないよ」

??「だからこそ愛しい。そうだろう?」

??「そういう所、嫌いだ」

??「ふふっ、褒め言葉だね」

闇は常にそこにある。

深く底がない、水底のような更に深い所にひっそりと潜む。

水面に顔は殆ど覗かせない。

闇は光が天敵だから。

それでも水面に上がるのは、闇と言うのはどこまでも底なしだから。

貪欲で、際限が無く、理性も働かない。

だから何処までも深く根を下ろし、気付いた頃には引き返せないほどびっしりと辺り一面に根を張っている。

何故気付けないのか。

何故引き返せないのか。

闇は暗がりで活動する。

木の葉を隠すには森の中。

闇は影に同化する。

だから気付けない。

だから気付いた頃には引き返せない。

何故かって…その頃には既に一面に根を張っているから。

影に潜んで静かにゆっくりと蠢動する。

モゾモゾと影の輪郭に沿ってはみ出さない様に、ジワジワと影と同化する。

そして影と一体化した時、闇は本性を現す。




~ロスト・シップ~



-吠え面-

今、提督は逃げている。

元はと言えば身から出た錆なのだが、ここぞとばかりに追跡者は容赦無く襲い掛かる。

提督はその包囲網を掻い潜り、今現在は使用されていない空き倉庫に身を潜めていた。


提督「くっそ…あいつ等、ここぞとばかりに…」


一人悪態をついているとスピーカー放送がオンになり、鎮守府内に艦娘の声が響き渡る。


加賀『提督、あなたともあろう方がこの期に及んで敵前逃亡とは、示しが付きません』

鳥海『ご自分で仰った事なんですから、そこは呑んで頂かないと困りますね』

長良『司令かーん、こっちから探しに行っちゃうぞー?』

漣『っていうか既に満潮ちゃんが出動しちゃってるので、ご主人様乙でーす♪』

提督「あんの野郎共ぉ…っ!」


ガチャ…


提督「……っ!」

満潮「バレバレだし。入っていくところ見えてたし。ばっかねぇ…」

提督「よ、よし、解った。落ち着け。まずは落ち着こう。ここは運命共同体としてそれぞれの意見を平等に交換
し合い、互いにそれぞれ益をもたらす選択を築こう」

満潮「うっさい!散々偉そうな事言って、恫喝紛いの真似までしてた奴が何言っちゃってんのよ。さっさと…」ガシッ

提督「うおっ」

満潮「こっちにきなさいよ!」


ズルズルズルズル……


漣「あはははっ!ご主人様、小さい子に襟首掴まれて引き摺られるってどんな気分ですか?」

提督「喧しいわ!さっさとはな……」


ポイッ


提督「せっとぉ!」ズザザザザッ

長良「うわぁ…顔面からいったよ…」

鳥海「あらあら…」

満潮「ふんっ!」パンパン

加賀「さぁ提督、満潮が待ち望んでますのでさっさと終わらせてしまいましょう」

提督「ぐっ…お、お前等はなんなんだ!」

漣「ただのけんがーく♪」

提督「するな!失せろ!」

満潮「私が呼んだのよ。一人じゃ何されるか解ったもんじゃないもの。ね、変態さん?」

提督「語弊を招く表現をするな!」

満潮「さっ、早い所あんたの吠え面ってのを拝ませてもらおうかしら?」

提督「にゃにおぉ~…!」

鳥海「前回の演習戦、満潮さんの撃墜数は前十二隻中五隻、次点は加賀さんの四隻です。残り三隻を私達で仲良
く等分して一隻ずつ、合計で十二隻、勝利ランクで言えば文句なしのSクラスです」

満潮「ふふん、なんだっけ、え~っと……明日の演習で一人で三人分仕留める事が出来たらお前に俺の吠え面を
公開してやろう!だったっけ?」ニヤッ…

提督「似てねぇよ!」

満潮「似たくないわよ!」

提督「じゃあ真似してんじゃねぇ!」

満潮「喧しいわ吠え面司令官!さっさと吠え面見せなさいよ!」

提督「ぐぬぬぬ…!」

鳥海「映像には残しませんので思う存分にどうぞ」

加賀「約束は果たして然るべきです」

漣「ワクテカ!」

長良「さぁ、司令官、どうぞ!」

提督「これは罠だぁ!」

満潮「んなわけあるかぁ!」ブンッ


バキィッ


提督「ぐはっ」

満潮「あっ、思わずノリで殴っちゃった…」

長良「あ、鮮やか…あははは…」ニガワライ

提督「い、いてぇ…クソガキと侮っていた…だ、だが…今の一撃で帳消しにしてやろう」

満潮「へ?」

提督「ふふふ…いや何、艦娘が上官に対し暴力を振るうのも、上官が艦娘に対して暴力を働く行為も、共に処罰
対象となる訳だが…俺はひっっっじょうに心が広い。だからこの件はこれ以上追求しない。これで終わり!不問!
後腐れ無し!以上!反論は……」

漣「異議有り!」

提督「はぁ!?」

漣「本件と吠え面には確固たる関連性がありません!被告は本件を前面に押し出し、不当に吠え面の件をないも
のにしようと画策している節が見受けられます!」

提督「なんで裁判風なんだよ!」バンバン

鳥海「クスクス……」プルプル

長良「あはははははっ!」

加賀「……」プルプル

満潮「…加賀、あんた今ちょっと笑ったでしょ」

加賀「…何の事ですか」マガオ

満潮「絶対笑ってたでしょ…」

加賀「気のせいでは?」

漣「って事でご主人様♪さっさと吠え面かまして下さいませ♪」

提督「そうまでして俺の吠え面を拝みたいか」

満潮「っていうかあんたが条件含めて言ったんでしょうが!」

提督「…記憶にございません」ボソッ

満潮「…は?」

提督「記憶にございませんっ!」クワッ

満潮「んなぁっ!?」

提督「記憶にございません!!」ダンダン


散々悪態をついて駄々を捏ねて逃げ回って白を切り通したものの、結局最後は再び満潮に殴り飛ばされ、彼は断

腸の思いで彼女達に変顔、もとい吠え面を披露する羽目になった。

今回はここまで

乙 実際ほえ面ってどんな感じなんだろ

乙。提督は二重人格?
吠え列は要するに唖然とした顔じゃね


おかしい、提督が可愛く見える

進撃の艦隊って暇鎮の人達?

皆様こんばんは


>>71
吠え面って言うのは言い換えれば泣きっ面って奴ですね
昔はよくって訳でもないでしょうが、喧嘩とかした後で「覚えてろよ!後で吠え面かいても知らないからな!」
みたいな使い方があったと思います
大抵は勝負事で劣勢側が使う言い訳の言葉として捉えられる事が多いですね
泣きべそかいても知らないからな!って所でしょうかね

>>72
>>提督は二重人格?
シリアスな部分、コミカルな部分で結構解りやすいくらい、捉えられ方としては確かに二重人格に
みえるような書き方を敢えてしています
これ以上はネタバレにもなるので、何故性格が二種類あるのか、そこは今後に期待して頂ければ幸いです

>>73
そう見えてしまったあなたは、もう手遅れ……

>>74
>>進撃の艦隊
暇鎮軍団の事で相違ありません

提督「くそっ、実に…じ・つ・に、不愉快だ!」

加賀「解りましたから早い所提出書類を纏めてくれると有り難いのだけれど」

提督「さり気無くお前も写真とってたよね?ねぇ?」

加賀「…知りません」

提督「こいつ…!」

加賀「鎮守府にはそれぞれ個性が備わっています」

提督「あぁ?んだよ、薮から棒に」

加賀「提督の個性を反映させたような艦娘や鎮守府が出来上がるというのは珍しい事ではありません」

提督「何がいいてぇんだよ」

加賀「あなたの性格が他のみんなにも反映されているのではないかしら」

提督「だから?」

加賀「自業自得です」

提督「俺様の威厳が!」

加賀「知りません」

提督「くそが…!」

加賀「下らない話題はここまでにして、そろそろ本題に移りたいのだけど、良いかしら?」

提督「くだらな…って、お前ってあれだね、人の心を抉る才能あるね」

加賀「ここ数週間という短い期間で立て続けに発生している事案です。事案通達表くらいには目を通しておいて
もらえると助かるのだけれど、あなたでは無理だと思ったので」

提督「無視な上に更に抉りにくるか、こいつ…」

加賀「事案内容は次の通りです」


・遠征任務に出撃した艦娘がそのまま行方不明になる。

・鎮守府の夜警に務めていた艦娘が忽然と姿を消す。

上記事案に際して共通点が多く見受けられるのが以下のものになります。

・天候は必ず雨、海も時化っており見通しは極めて悪い。

・艦娘が一人で居る時の発生率は八割強である。

加賀「これら事案は纏めてロスト・シップ事件と呼称され、各鎮守府には警戒を怠らないよう通達が促されてい
ますが、当鎮守府にこの事案報告が来たのは事件発覚から二週間目の朝です」

提督「……」カチン…シュボッ…

提督「すぅー…はぁー…まぁ、あれだろ。どうせハズレ鎮守府には該当しようがしまいがどうだっていいって上
からの認識による通達遅延だろ。気にする必要はねぇな」

加賀「あなたはこれをどうみますか」

提督「そうだなぁ…質問に質問で返しちまうが、艦娘がその気になった場合、人は何処まで対抗できるとお前は思う」

加賀「場合によりけりではないかしら」

提督「つまり?」

加賀「奇襲の類で警戒が遅れていれば、錬度の高い艦娘と言えども不意は衝かれて然るべき、という事です」

提督「それでも艤装を纏った艦娘相手に人が生身で挑もうなんて酔狂起こせる奴がいるとすれば、そいつは頭の
ネジがぶっ飛んでるラリッた野郎かただの馬鹿だ。じゃあ次の質問だ…艦娘を鹵獲したとして、これをどう利用
もしくは何を目的に鹵獲する?」

加賀「現海軍は艦娘を尊重する理念が強く見受けられます。如何様なミスを起こそうと、こういった鎮守府をわ
ざわざ設けてまで解体処分を行わずに存命させているのが何よりの証拠です」

提督「それで?」

加賀「犯人がどんなタイプかでその理由は幾重にも変わると思います」

提督「至極最もだなぁ…じゃあ、利己的理由で鹵獲した場合を回答してみろ」

加賀「艦娘はその身形から若い女性、幼い子が多いのは周知の事実です。考えるだけでも吐き気を催しますが、
ようはそういう目的で鹵獲するのが最も自然に思うわ。それ以外で利己的理由となると、幾らか理由付けが希薄
になる気がするけれど…」

提督「…研究、実験、調査」

加賀「……?」

提督「利己的理由で思いつく単語だ。新鋭の再来って訳だよ」

加賀「なっ…」

提督「どの場合も艦娘が傷付けられた形跡は無い。文字通り煙の如く消え失せている。それはつまり、実験とし
て利用する為だ。研究サンプルってのは傷つけずに置いておくのがセオリーだろ」

加賀「では、提督はそれが犯人の狙いだと…?」

提督「さぁて、どうだかな。一般論だ、一般論。けどまぁ、マッド野郎の吠え面を見るには退屈しない事案だな」

-ディストピア-

「いやあああああああああ……!!」


薄暗い部屋に響く若い女の叫び声。

これで何度目の悲鳴かは解らない。

しかし決して終わる事の無い悲鳴。

周囲は消毒液や薬品の匂いで充満しており、空気の換気が十分に行われていないのはよく解る。


ジャラッ……


鉄と鉄が擦れ合う音。

ジャラジャラと音を軋ませ、鉄の鎖はそれが動く度に重く冷たい音を響かせ繋がれている者に地獄を見せる。


「うっ……うぅ……」


すすり泣く声、これも若い女の声。

ここはある男の聖域とも呼べる神聖なる領域。

何人たりともこの空間を侵食する事は許されない。

この空間に繋がれている娘達は、運が良ければ彼の手によって生まれ変わる。

大抵は、実験に失敗したという名目上処分されるが。

それまでにありとあらゆる実験と称した拷問の数々を受けるが、大体は拷問途中に発狂して自滅する。

薬品投与から始まり肉体的苦痛・快楽を与えるものまで、ありとあらゆる手法で拷問は行われる。

しかしどの研究も男を満足させるには至らなかった。

男「ふふ、ふふふ…足りないなぁ。変だなぁ…ねずみ、かなぁ?」ニタァ…チラッ…


??「」(あの男、私に気付いてる…!)

男「何処に居るのか知らないけど、君……艦娘、だよねぇ?凄いなぁ…まるで昔、日本に居たっていう忍みたい
じゃないかぁ…ふふっ、どこかなぁ…」

??「」(これ以上は、不味い…合流地点まで戻らないとだね)



進撃「…川内が戻らない?」

??「はい。合流地点で待っていた艦隊が時間になっても川内さんが戻らないと、今し方通信で…」

進撃「無理無茶するなって言葉にあいつが反発するとはとても思えないが、やっぱ内部潜入は危険すぎたか…」

??「どうしますか、提督」

進撃「調査中の艦隊、旗艦は確か霧島か」

??「はい」

進撃「霧島に今しばらくは川内の到着をその場で待つように伝えておいてくれ。ただし、待っても来ないからと
言って早まった行動は絶対に取らないように釘を刺しておくんだ。その間に俺は元帥に事の顛末を伝える」

??「解りました!」


秘書艦を伝令役に任命した後、進撃提督は急ぎ元帥直通の番号に連絡を入れる。

余談だが、本来元帥直通の番号を把握しているのは限られた一部の者だけになる。

一つは大将クラスの将官提督。

一つは元帥付の秘書艦娘二名、秘書艦娘補佐官二名、秘書艦娘書記士二名。

上記二つのパターンに限られる。

大将は第壱将から第拾将まで、全部で十名。

秘書艦娘は全部で六名。

合計で十六名が元帥直通の番号を把握している事になる。

しかしこの中以外で、二名だけ例外的に元帥への直通番号を把握してる人物がいる。

一人は進撃提督。

先の新鋭中将提督叛乱事件を解決に導いた張本人である。

彼は大佐だが、その業績と元帥自身が彼を心から信頼しているという事で元帥直通の番号を知らせてある。

もう一人は中将クラスの提督で、前元帥を父に持つ鋼鉄提督。

女性の身でありながら物怖じする事がなく、破天荒な性格でも知られており、彼女も進撃提督同様に先の大叛乱

事件での功績、現元帥への信頼が厚い事で特例的に元帥直通の番号を把握している。

進撃「…元帥、嫌な予感は的中しているかもしれません。やっと平和が訪れたと思っていたんですけどね」

元帥『こちらでも人物の特定は済んだ。やはり提督の座を剥奪された人物だったよ。当時の罪状は艦娘に対する
性的虐待及び非人道的思想に基く拷問虐待…正直、目に余りすぎる行為の数々だ。これは、新鋭に匹敵する海軍
の闇の部分のもう一端とも言える』

進撃「発見できてないだけ、そんなのは数多に及ぶんでしょう。新鋭の場合が顕著すぎた、そう考えるべきです」

元帥『かもな。済まないがこいつの件は君に一任する。危険な任務だが、どうか頼む』

進撃「智謀さんから頼むって言われて断ったら後が怖いでしょう」

元帥『ふっ、減らず口を…先の件だが、川内の身に危険が及ぶと判断した場合は躊躇するな。君の従える全戦力
を一気に投入してでも救出しろ』

進撃「解りました。では、失礼します」


ブツン…


ガチャ…


??「提督、霧島には提督の言葉をそのまま伝えておきました」

進撃「ああ、サンキュー。折角暇だったのにさぁ…無駄な面倒は御免被りたいもんだよ」

??「また直そうやって暇暇って…川内さんが危機的状況かもしれないんですよ!」

進撃「へぇへぇ…まぁ、確かに川内が危険に晒されるのは俺としても困る。全戦力は流石にここが空になるから
難しいが、主力を送り込むくらいはしておかないとな。榛名、出撃命令だ。お前を旗艦として赤城、飛龍、陸奥、
衣笠、神通は準備が整い次第抜錨。途中、霧島達と合流したらそこで聨合艦隊を編成、目標は川内の救出だ」

榛名「はい!」

本日は短いですがここまで


榛名って移籍させられたの?

おつ
ロストシップ…ヤシガニ…うっ頭が…


川内ちゃんに薄い本展開が迫るww

>>82
移籍じゃないぞ、前作終盤を思い出しながら進撃提督の経歴説明をよく読むんだ

皆様こんばんは


タイトル書いてから「ロストシップ」ってそう言えばって感じでした
当時、自分の友人は林原教に入信していましたね
今はしりませんけど…

-裏と表-

提督「例の事件で進撃の艦隊が動き出したって?」

加賀「はい」

提督「へぇ…じゃあ今回は進撃様に面倒ごと処理してもらって万々歳だな」

加賀「エリート提督への足掛かりが滞りますよ」

提督「僅かな差だ」

加賀「塵も積もれば山となる。僅かな差も日を追えば莫大な差として生まれ変わると思うけれど?」

提督「…てめぇ、何が目的だ」

加賀「別に、目的なんてないけれど。何を勘繰っているのかしら」

提督「ふっ、くく…よせよせ、俺の真似事のつもりか。俺を相手にプロパガンタなんて百年早ぇよ。図が高ぇ」

加賀「……」ギリッ…

提督「進撃が出張ってくるって事は、そこの艦娘が出撃するって事だ。あいつはとにかく熱い男だ。普段は飄々
と構えてるくせに、いざてめぇんとこの艦娘や身内知り合いが窮地に陥りゃ烈火の如く怒りやがる。で、お前が
今回無駄に食い下がる一つの理由…大方、赤城が出張ってくる可能性があるからだろう?」

加賀「……」ピクッ

提督「はい図星。一航戦の一翼、堅忍不抜の赤城か。そんなに会いたいか」

加賀「……」

提督「黙ってちゃ解らん、答えろ」

加賀「会いたいです」

提督「そうか。なら好きにしろ」

加賀「ぇ……?」

提督「ただし、何の通達も受けていないこの鎮守府の艦娘がノコノコと出向いた挙句に任務の邪魔でもしようも
のなら、俺の首は無論飛ぶ可能性が高いが、お前への処罰も相当なものになるだろうな。それだけで事足りれば
まだ御の字だ。残りの四人だが、こいつらも漏れなくお前の身勝手な行いによって見事なとばっちり食らって皆
で仲良く、はい合掌!こうしてハズレ鎮守府はその短い人生に終止符を打ったのでした、と」

加賀「……」

提督「どうだ、少しは考え無しの行動は慎もうって気になったか」

加賀「…出過ぎた真似でした」

提督「……はぁ、ったくよぉ、ちっとは欲に目覚めたかと思えば直これだ。もっとぶつかって来いよ。なんだそ
りゃおい…お子ちゃまの主役争いの駄々っ子じゃねぇんだぞ。拗ねたツラして何か変わるのかダァホ」

加賀「思った事を言葉にしただけです」

提督「ツラも鉄面皮なら性格も鉄製かよ。バーナーでこんにゃく並みに柔らかくしてやろうか、おい」

加賀「余計な世話です」

提督「くくっ、そう拗ねるな。ようはあっちが表立って動くならこっちは裏方として動けば良いだけだ。主役は
進撃に譲ってやれ。こっちは裏だ」

加賀「裏って…」

提督「帯同には鳥海と長良を同行させろ。頭脳と足は必須だ。そこにお前の火力を備えれば万が一に際した時に
一点突破くらいは可能だろう」

加賀「では…」

提督「辛気臭ぇツラで居られるよりはましだ。とっとと行ってこい」

加賀「…ありがとうございます」

満潮「…で、何!?」

提督「あぁ?別になんもねぇって、執務作業終わったから談話室でテレビでも見ようと思ってきたら、お前等が
居たってだけじゃねぇか」

漣「ご主人様、お料理番組好きなの?」

提督「んなわけあるかダァホ。チャンネル変えようとしたらてめぇがおぞましい剣幕でこっち見てくっから仕方
なくこの番組終わるまで待ってんだよ」

漣「さっすがご主人様♪お優しいのねぇ☆」

提督「片方のお下げ斬り飛ばしてバランス取れなくしてやろうか、コラ」

漣「も~、直そうやって心にも無いことを~」

提督「ちっ、鬱陶しい奴だなぁ、ったくよぉ…」カチン…シュボッ…

満潮「あのさぁ、あんま目の前でタバコ吸うのやめてくれない?臭いから」

提督「やなこった」

満潮「むっかぁ…!」

漣「そう言えば加賀さん、鳥海さん、長良さんでさっき何か話し合ってたけど、何なんでしょう?」

提督「ミッションインポッシブルだ」

満潮「は?」

提督「表で主役が活躍するから裏方役で出張ってくんだよ」

漣「はいぃ?」

提督「あぁもううっせぇな、料理番組でも見てろよ!つーか、お前等二人はちゃんと入渠済ませてあるんだろうな」

満潮「はぁ?いきなり何よ」

漣「この間の演習で少し確かに掠りはしましたけどぉ、別にあれくらいじゃ要りませんって。ねぇ、みっちゃん?」

満潮「馴れ馴れしい変なあだ名つけないでよ、全く…」

提督「じゃあ二人とも入渠は済ませてねぇのか」

満潮「漣も言ってたでしょ。掠った程度で別に艤装壊れたとかじゃないし、ほっときゃ自然にこんなの…」

提督「いいからさっさと入渠して来い」

満潮「だからぁ…こんなの、ドック入りにはまだ早いって…」

提督「ゴチャゴチャ抜かさずさっさといけっ!」

満潮「……っ」ビクッ

漣「……っ」ビクッ

提督「……ちっ、余計な事で声出させんじゃねぇよ。ざけやがって…いいか、掠り傷程度ってんなら入渠にもさ
して時間とらねぇだろう。さっさと入ってそれから遊ぶなり寝るなり好きな事やれ。ったく、胸糞悪ぃぜ…」ガタッ…


スタスタスタ……


漣「こわぁ…」

満潮「な、何なのよあいつ…」

漣「はぁ、ご主人様って怒るとマジコワだし、入っとかないとダメですよねぇ」

満潮「なんか屈するみたいで気に入らないわ…」

漣「またまたぁ、そんな事言ってご主人様がブチギレしたらみっちゃんの所為ですよー」

満潮「だからそのみっちゃんっての止めなさいよ!」

漣「うーん、じゃあ…みーちゃん?」

満潮「伸ばしただけでしょうが!」

漣「みーすけ」

満潮「殴り飛ばすわよ」

漣「High tide?」

満潮「英訳してんじゃないわよ!」

漣「も~、要望多すぎですぅ」

満潮「もうっ、ほら!早い所入渠済ませるわよ、漣!」スタスタ…

漣「ふふっ、ほいさっさー♪」タッタッタ…

-鳥かご-

川内「くっそぉ…この建物、どうなってんのよ。きた時と同じルートを遡ってる筈なのに…」


彼女は進撃鎮守府に所属する川内型一番艦軽巡洋艦、そのネームシップ川内。

彼女は今、作戦任務を終えて撤退行動中なのだが、そこで不測の事態に見舞われていた。


男「忍の艦娘さぁん、どこかなぁ?逃げれないよぉ…この建物からはねぇ」ツカ ツカ…

川内「」(あいつ…!)

男「どうせ近海に仲間が居るんだろう?別に電波妨害はしてないから、通信手段があるなら呼べばいいんだよ。
私もね、サンプルは多い方が嬉しいって常々思っているんだ。人って言うのは性格が十人十色、皆同じではない
ように艦娘もまた十人十色、同じ色はしてても性格までは似ないだろう?そこがいいんだ。それに加えて、艦娘
には特別な記憶が備わっている…何十人目だったかなぁ、あれは…ある時、突然うわ言の様に喋り始めてね」

川内「……」

男「私も最初はまた壊れたかと少し興味を削いだんだけど、聞いてるとどうも違う。増強剤を投与し続け、情報
全てを吐き出させたあとはまぁ、望み通りに殺して上げたんだけどね?あれは興味深かったぁ…興奮さえもした
のは久々だった。虫の息だったのに堪り兼ねてその艦娘を滅茶苦茶に犯してね…気付いたら死んでたよ。まぁ、
殺してって言ってたんだし、約束は守ったよね」

川内「もう喋らなくていいよ。胸糞悪いから」

男「ふふっ、なぁんだちゃんと近くに居るんじゃないか。独り言だったら流石にちょっと格好付かなかったから
ある意味これは助け舟だね」


スタッ……


川内「あんたは人なんかじゃない。獣以下だ」

男「ふふっ、獣か。随分だなぁ…っていうか、君も結構…ふふ、いい身体にいい顔してるねぇ。善がり狂う様は
さぞ見ものなんだろうなぁ…それとも、もう所属の鎮守府で提督とくんずほぐれつなのかな?」

川内「もう喋らなくていいから。あんたは私が殺処分にする」

男「私を殺処分?出来るのかい?」ニタァ…

川内「武装も何もない奴に、私が遅れを取るとでも?」

男「ここは陸だよ?君は艦娘…海上でしか艦娘は本領を発揮できないっていうのは、既に立証済みだよ。つまり、
君は鳥かごの中の哀れな雛鳥って事さ。ここは私の聖域…招かれざる客には相応の咎を背負ってもらう。が、君
は艦娘という事で、特例処置を施そう。大人しく私の実験に付き合うのであれば、解体処分は勘弁してあげても
いいよ。最も、私の暇潰しも兼任してもらうから、ショック死の可能性は否定できないけどね?」

川内「じょーだん…趣味でもなければタイプでもないっての」

男「だから屈服させるのが楽しいんじゃないか。そこも含めた実験と研究なんだから」

川内「この、下衆が…!」

男「それは私にとって褒め言葉。そういう悪態つく子を捻じ伏せる時が一番興奮できるよ。俗に言うレイプって
やつだ。理不尽な力で捻じ伏せ弄る。艦娘って言ったって結局は陸じゃその程度なんだよ」ニヤニヤ…

川内「絶対に、許さない…!艦娘に定められた禁忌を破ってでもあんたは私が倒す…っ!」

加賀「概要を説明します。目的地は南西方面にある無人島付近、そこにある廃れた研究施設です」

鳥海「研究施設?」

長良「深海棲艦の泊地とかじゃないの?」

加賀「違います。お二人とも、最近艦娘が失踪するという事件が頻発してるのは既にご存知と思います」

鳥海「ロスト・シップ事件ですね」

長良「あー、怪談話にしてはちょっとねぇ…」

加賀「攫われたであろう艦娘の所在がその研究施設にあるという情報を得ました」

鳥海「けど、そんな重要な任務をこのハズレ鎮守府に赤レンガが依頼してくるはずありませんよね?」

長良「悔しいけど、その通りだよね。なのにどうして私達が準備して抜錨するのかなって話、だよね?」

鳥海「ええ、長良さんの仰るとおりです」

加賀「申し訳ありません。初めに謝っておきます。これは、半分以上が私の我が侭によるものだという事を前提
に話をさせて頂きます」

鳥海「我が侭?」

長良「えぇ!?加賀さんの我が侭とか、すっごい貴重っていうか夢でも見てるんじゃないかってレベル…」

加賀「……その任務を任されているのは進撃鎮守府との情報を得ました。誰が出撃しているかまでは流石に把握
していませんが、私が今回無理強いしたのは一つの願いを叶える為でもあります」

鳥海「なるほど…進撃鎮守府で思い浮かびました。あそこには加賀さんと同じ一航戦である堅忍不抜の赤城さん
が着任されている鎮守府でもありましたね」

長良「えっと、どーいう事?」

鳥海「…会いたいんですね、赤城さんに」

加賀「ええ…ただ、顔を遠くから見るだけでもいいんです。ですので、その施設へ直接潜入するなどの行為にま
で発展するかは現時点では考察に入っていません。ただ、顔を見たい…それだけです」

長良「そっかぁ…そういう事なら、協力しない訳にはいかないよ、ね?鳥海さん!」

鳥海「ふふ、ええ…困っている仲間が居るのなら助ける。当たり前の事じゃありませんか」

加賀「…ありがとうございます」ペコリ

鳥海「それにしても、益にならないと解っていながら承諾した司令官さんも随分と人間的に成長されましたね」

長良「ね~、あの司令官が許すとは思えない内容だもん」

加賀「辛気臭い顔で近くに居られるのが目障りなようです。余り感情を表に出す事が無いので、その違いに気付
く辺りがあの方らしいとは思いますが、流石にちょっとイラッときました」

長良「あははっ!加賀さんがイラッとくるんだから、多分私や他の子だったら大爆発だねぇ」

鳥海「では行きましょう。もしもの場合には無論備えるんですよね?」

加賀「はい。あくまでもこちらからは動きませんが、止ん事無き事態に際してはその限りではありません。責任
は全て私が引き受けます。遠征任務の最中など適当な理由をもって援軍として駆けつけます」

長良「よしっ!それじゃあ行きましょー!」

榛名「霧島!」

霧島「榛名、皆、着てくれてありがとう。やっぱり川内からの応答が無いのよ」

赤城「それじゃ皆さん、何か不審な点が無いか偵察お願いしますね」ビュッ

飛龍「こっちは周辺警戒お願いね!」ビュッ

陸奥「あれ、木曾に利根さん、時雨ちゃんは?」

霧島「施設近海まで偵察に向かってるわ。もう直戻ると思うけど」

神通「姉さんに限って、と思う所はありますが…やっぱり心配です」

衣笠「まぁ、そうだよね。出来るなら早い段階で突入したい所だけどさ、榛名ちゃんどーする?」

榛名「来る途中に深海棲艦は居ませんでしたけど、逆にそこが不気味なんですよね。それに川内さんは任務に関
しては時間厳守を重んじる人ですから…赤城さん達の偵察機から報告があり次第、私達も突入したいと思います」

陸奥「おっけー。体は解してあるからいつでも大丈夫よ」

衣笠「神通、大丈夫?無理してない?」

神通「はい。それに、姉さんだって頑張ってるんです。私が心配顔のままでは逆に姉さんに申し訳ありません」

衣笠「そっか、神通は強いね」

陸奥「大丈夫よ。川内ならきっと、大丈夫」

神通「はい…!」

赤城「皆さん…」チリッ…

榛名「赤城さん?」

赤城「施設周辺に深海棲艦を確認しました。ですが、これは…」

飛龍「どうかしたの?」

赤城「異質、としか表現のしようがありません。陸地に深海棲艦が沸くなんて…」

衣笠「え…!?」

飛龍「霧島、利根さん達は戻らない」チリッ…

霧島「え?」

飛龍「こっちもどうやら突如出現したらしい深海棲艦、それと交戦中だ」

榛名「聨合艦隊は無理ですね。隊を二手に分けましょう。利根さん木曾さん時雨ちゃんの援軍に向かう隊と川内
さんを救援に向かう隊、二手に分けます」

赤城「どう分けますか?」

榛名「霧島、衣笠さん、飛龍さんで利根さん達の援軍に向かって下さい。私と赤城さん、陸奥さんに神通ちゃん
で川内さんの救出に向かいます」

陸奥「了解よ」

神通「はい!」

赤城「飛龍さん、くれぐれも…」

飛龍「うん、慢心はダメ!ゼッタイ!注意は怠らないよっ!」

赤城「はい!」

長良「この辺り、だよね」

鳥海「はい」

加賀「…みつけました」チリッ…

長良「さっすが加賀さんの艦載機!」

加賀「ですが、これは…」

鳥海「難有り、でしょうか?」

長良「むむ?」

加賀「隊を二手に分けてそれぞれ別行動を取るようです。片方は、先遣隊の援軍へ、もう片方が施設内部へ突入
するみたいですね」

鳥海「どちらを選ぶかは、加賀さんにお任せしますよ」

加賀「…行き先は決まっています。施設側です」


海軍が生み出した闇の数々。

人の咎が生み出す欲望の数々。

それら怪物を押さえ込み御した者だけが真の悪魔として世に降臨する。

果たして悪魔として覚醒を果たした怪物は何人居るのか。

これはまだ、その足掛かりにしか過ぎない。

本日はここまで

おつ
ツンデレだらけの鎮守府

皆様深夜にこんばんは
少しだけ更新にきました




~聖域~



-黄泉比良坂-

川内「くそっ」サッ…

男「あはははっ!良く動くなぁ…素晴らしいサンプルだ。活きも良し、屈服させた時を想像しただけ射精ものだ」

川内「あんた…その、身体は…」

男「あぁ、これかい?」ズルッ…

川内「まさか、それ…深海棲艦の艤装か!」

男「ご名答。細胞のサンプルを幾つも育成してね。自分に合うものを幾重にも研究して、合致したものを自らに
投与してこうして生やしたって訳さ」

川内「道理で…あんた一人でも艦娘を襲撃できたわけだ」


ボゴオォォォン ボゴオォォォン


男「……!誰だ、私の聖域へ無粋な砲撃を行う奴は…!」ギリッ…

川内「ははっ、そりゃあ私の仲間に決まってるでしょ。私が定時を過ぎても戻らないんだから突入に作戦内容を
変更してたって何ら不思議は無いねぇ」

男「許さん…私の、私だけが…許されるんだ。この、領域では、私が神だ!聖域を侵す者は何人たりとも生かし
ては帰さない!君も、君の仲間も、纏めて全て私の研究サンプルに加えてやる!神に逆らった罰を、与えてやる」

川内「何が神だよ、ふざけないで欲しいね。提督の地位を剥奪されただけの、あんたはただの犯罪者さ!」

男「犯罪者だと…?それこそふざけるなよ、艦娘風情が…!」

川内「その艦娘風情にこれからあんたは倒されるんだよ。寝言がこれ以上通用するなんて思わない事だね。時代
劇風に言えば、ここが年貢の納め時って奴さ。大人しく縛に付いた方が賢明だよ」

男「時代劇風と言うなら、こういうのもお約束なんじゃないかな?」パチンッ


ゾロゾロゾロ……


川内「げっ」

男「斬り捨て御免って奴?いや違うかぁ…死人に口無し、かな?」ニヤッ…



赤城「なんて禍々しい佇まいでしょうか…地獄にあると言う死後の世界、黄泉比良坂を髣髴とさせます」

榛名「余り長居したいとは思いませんね」

陸奥「ホント、これじゃ地獄の入り口って言われても頷くわ。まんま、地獄に来ているみたいだもの」

神通「心なしか空気も重いです」

赤城「ですが足踏みしている暇はありません。私はここで周辺の哨戒を担当します。いざと言う時に退路を絶た
れては元も子もありませんからね」

榛名「解りました」

赤城「くれぐれも、目的を違わないで下さい。私達の任務は川内さんの救出です。現状でこの施設の男を捕縛で
きるだけの戦力が無いと判断した場合は、無理せず撤退して下さい」

陸奥「勿論よ。病院送りは二度と御免だしね」

神通「はい…!」




ツカ ツカ ツカ……


ザワザワ……


スッ…


??「ご用向きは何でしょうか」

提督「大佐程度のペーペー提督には元帥殿はお目通しすら叶いませんか、大淀さん」

大淀「白々しい言い草ですね。元白夜の艦隊を指揮されていた提督さん?」

提督「明けの明星は非常に美しいんですよ。薄っすらと照る太陽が顔を覗かせるほんの前、東の空に現れる彼女
の輝かしさといったら、そりゃあもう太陽すらも出てくるのを躊躇うほどだ」

大淀「中身の無い詩人を気取った所で何も変わりません。自らその地位を捨てておきながら、この地に足を踏み
入れる神経を疑います。話題転換の様は相変わらずと、そこだけは褒めておきます」

提督「やれやれ…ロスト・シップに関する重要な情報がある、って言えばそれじゃあ通してくれますかね?」

大淀「……」ピクッ


ガチャ…


大淀「大和さん…!」

大和「元帥が通してよいと」

大淀「ですが、彼は…!」

大和「元帥のご意思です。構いません」

提督「だ、そうですよ。秘書艦娘補佐官殿」

大淀「…解りました」スッ…


パタン…


元帥「久しぶり、と言うべきですか。白夜提督」

提督「開口一番嫌味から入るとは、流石は智謀元帥…」

大和「口を慎みなさい。元帥の御前です」

提督「やれやれ、お堅いねぇ…」

元帥「簡潔に内容をお願いします。要点の伴わない会話は疲れるだけです」

提督「じゃ、ズバリ。ロスト・シップ事件、こいつについて一つ提案がある」

元帥「……」

提督「お宅等は当時、新鋭の事件に掛かりっきりで耳にも入れてなかっただろうがね。別にあの当時起こってい
た事件が新鋭の叛乱だけだった訳じゃあない。二年も前から艦娘の失踪事件は続いていたって訳さ。汚点は雪が
れないってね。野放しにした期間が長すぎたんじゃないかね?」

元帥「だからこうして今、対処を急がせています」

提督「わかっちゃないねぇ…それが遅いってんですよ。向かわせてるのは進撃の艦隊でしょう。あいつ等は優し
すぎる。必ず撃ち漏らす…ここで逃せば確実にあの闇は肥大する。そうなってからじゃ、全部後手に回るぜ?」

元帥「私は彼を信頼している。君と違ってね」

提督「別に俺ぁあんたにゴマスリに来た訳じゃない。信頼してもらおうなんて欠片も思っちゃない。ただ、忠告
しにきただけだよ。アレじゃダメだってね。お宅も俺みたいなおっさんよりは進撃君のような若い方が好みなの
は解るがねぇ…」ニヤッ…

元帥「落ちる所まで落ちた発言ですね。それに、彼等を派遣したのは好く好かない等関係のない、文字通り彼等
なら任務を全う出来ると考えての処置です。それ以上の良策が君に用意出来るとでも?」

提督「うちの連中なら三人も居ればきっちり仕事をこなすね」

元帥「なんだと…?」

提督「少なくとも逃す事はしない。最低でも殺処分で任務を終えると俺は確信を持って言える。まぁ、別に後手
からの更に後手へ回っていいってんならそれでいいんだけどな。俺は所詮、ハズレ鎮守府を任されているだけの
見放された提督だ。雑魚が何を況や、お宅等にはなんて事はないでしょうよ。まさに書いて字の如く、蚊帳の外
で蝿がブンブン喚いてるってとこですか?」

元帥「……一々言い回しが過ぎますね。そこまでして今更に功績を欲するというの?この期に及んで?」

提督「…落ちた地位を取り戻すには相応に努力が必要だと認識しただけさ」

元帥「ふふっ、お為ごかしを…寝言にも及ばんな。私を相手に丁々発止のやり取りか…無粋な真似だ」

提督「無粋で結構。俺は俺のやり方を曲げるつもりは毛頭無い。だから、俺は中将の地位を捨てたのさ。白夜の
艦隊にはその理念に反する者が多過ぎたんでね」

元帥「君の理念だと?面白い。ならばその興に乗ってやる」

大和「元帥…!」

元帥「構わん。私は進撃提督を信じているし、例え逃したとしても彼を責めるような真似はしない。それに今回
与えた任務は彼の鎮守府に所属する艦娘の救出命令だ。犯人自体は地の果てまで追って必ず捕らえる気概だ」

提督「だったら、うちの連中がその犯人を捕らえようが殺そうが、別に文句はありませんよね」

元帥「好きにすればいい。ただし、それによって生じたあらゆるやっかみ事をこちらへ決して持ち込まないと今
この場で確約してもらう。例えどれだけ不利な状況であろうと、それを受け入れてもらうぞ」

提督「結構。じ・つ・に、結構!そうでなけりゃ人生に張りなんてものはない。ひっっっじょうに俺は今満足し
ている!その一言で十分さ…見ておけ、目に物を見せてやる」

長良「あれ、なんか上空で火花散ってない?」

鳥海「そのようです」

加賀「あれは…赤城さん」グッ…

長良「えっ!空母の中でも加賀さんとタメ張れる位凄いって言う!?」

加賀「比べられるのは不愉快です。ですが、赤城さんの腕が一流なのは認めます」

鳥海「どうするんですか?」

加賀「……」

鳥海「眼前には四面楚歌の艦娘が一人、それは貴女の良く知る正規空母の赤城。私達は救援に迎えるだけの力を
持ち、射程距離にいる。で、もう一度だけ聞きますけど、どうするんですか?」


ブブブブ……


長良「あれ、無線?はいぃ?」ガチャ…

提督『腑抜けた返事してんじゃねぇ!』

長良「ふぁっ!?」

鳥海「し、司令官さん!?」

提督『どうせ加賀の事だから仏頂面で棒立ちしてると思ってな』

加賀「……」ピクッ…

長良「」(ず、図星だぁ…)

鳥海「」(毎度この司令官さんは、千里眼でも両目に仕込んであるんでしょうか…)

提督『お前等各自に一つずつ聞くぞ。加賀、お前が赤城と組めば周辺に沸くであろう敵はどう処理できる』

加賀「…完膚なきまでに跡形もなく殲滅できます」

長良「おぉ…!」

提督『鳥海、お前の目算でその施設に潜入してから離脱までに掛かる凡その時間は何分だ』

鳥海「…外面のみで内部は見えません。だから中がどうなっているか…」

提督『御託はいいんだよ!何分掛かるかって聞いてんだからさっさと答えろこのアホメガネ』

鳥海「…三・十・分・で・す・!」イラッ…

提督『さっさと言えよアホタレ』

鳥海「申し訳ありません………………死ね」ボソッ

提督『おいこら、今なんつったおい!』

鳥海「風の音では?」

提督『ちっ……おい、長良。今立ってる場所から東西南北キッチリ把握できてるな?』

長良「うん、バッチリ!」

提督『風の向きと風速は』

長良「南南西、風速はっと……うん、2mってとこかな」

提督『内部に潜入して即座に周囲の空間把握は可能か』

長良「走り回ってれば直じゃないかな?」

提督『上等だ。じゃあ走り回れ。でもって、その中にいるであろう怪物を生け捕りにして来い。てめぇ一人じゃ
確実にミスるだろうから鳥海はサポートに回れ。一つ忠告しておくが、長良を絶対に見失うなよ、鳥海』ニヤッ…

鳥海「え?あ、はい…」(どういう事よ)

加賀「どういう風の吹き回しですか」

提督『元帥様からのお達しだ。言っただろ、進撃の艦隊は表舞台の主役を演じてんだ。俺等は裏方、舞台袖から
せっせと主役のサポートをしてやるんだよ。で、最後に残るのは後片付け、大掃除って訳だ。俺達ゃ掃除屋だ』

鳥海「また随分とアンニュイな表現ですね」

提督『うっせぇんだよ。生け捕りが無理なら始末しろ。そいつは生かしておいたら後が厄介だからな。いいか、
これは命令だ。俺の目が黒い内はテメェ等全員生き残れ。くだらねぇ死に様は見せ付けるな。どうせ死ぬなら誰
もが認める大義を成して死ね。それが嫌なら生きて帰ってきて見せろ』

長良「ふっふーん、上等だよね!」

鳥海「ここでカラスの餌になるくらいなら、這ってでも帰りますよ」

加賀「ありえません。生き残る以外の未来は、見えていませんから」

提督『はっ、そいつは上等だ。だったら行け。掃除を始めろ!』

取り敢えずここまで

おつ
やだ鳥海さんこわい
長良は癒し系ってはっきりわかんだね


提督がの声で大塚芳虫さんで脳内再生される

誤字ったスマソ
提督の声が

皆様こんばんは
今日も区切りのいい所まで更新します

-疾風迅雷-

赤城「第一次攻撃隊、発艦して下さい!」ビュッ


ヒュン ヒュン ヒュン


一人、孤軍奮闘を続ける赤城だが、いつ終わるとも解らない持久走的展開。

こういう展開こそ赤城は内心最も嫌っている。

いつ終わるか解らない。

それは燃料や弾薬的危惧は勿論だが、突き詰めれば勝利への光すらも霞む事にある。

赤城は苦虫を噛み潰したような表情で撃墜した先から蛆の如く沸いて来る深海棲艦にイラ付き始めていた。


ボゴオォォォォォォン


何度目かの爆音が響き渡り、噴煙と硝煙の香りが辺りを支配する。

自ら巻き起こした強風に髪の毛を乱され、それでも赤城は一点を見据えて何度目かの構えを取る。

だが死角から飛び込んできた深海棲艦に気付くのに遅れ、赤城は態勢を大きく崩して転倒してしまう。


赤城「くっ…不覚…!」ザッ…

重巡リ級EL「シ、ネ…!」

赤城「この、程度…!」ググッ


強引に体勢を立て直そうと身体を捻った次の瞬間、彼女とリ級ELの間に何か影が割り込んだのを赤城は確認する。

それは赤城の応答や反応を待たずに、一気にリ級ELの胴体部分を艤装諸共一発の砲撃で破砕する。



ボゴオオォォォォォン


ザザザッ…


??「邪魔邪魔♪」

??「長良さん、そのまま直進です!」

長良「オッケー!じゃあね、赤城さん!」ダッ

赤城「ぁ……」アゼン…


白い鉢巻にショートポニーテール。

白を基準にした赤茶色のラインが入ったセーラーチックな羽織に朱色の袴、片手で易々と扱っていたのは単装砲

だっただろうか。

一瞬の事で赤城もそこまで目視するに至らなかった。

そして自分の事を知っていたという事も彼女にとっては言葉を詰まらせる要因の一つだった。

後から続いてきた紺のセーラーに赤いリボン、真っ白なミニスカートを靡かせた知的なイメージ漂う艦娘もまた

赤城を一瞥だけして目の前を一気に横切る。

彼女の口から発せられた『ナガラ』と呼ばれた名に、赤城は覚えが全くなかった。

だが、赤城を本当に唖然とさせたのは次に現れた艦娘だろう。


加賀「包囲を突破します。赤城さん、構えて下さい」

赤城「…っ!加賀、さん…!?」

川内「このっ…離せっ!!」ググッ…

男「いいねぇ、いいよ…その強気な目、そそるなぁ…」ニヤッ…

川内「下衆が…!」

男「下衆で結構。多勢に無勢だったね。元々こいつ等は君達艦娘鹵獲用の作業用ロボットみたいなものなんだ。
一匹一匹は雑魚だけど、こうして蛆の如く際限なく沸いてくれば艦娘もやがては戦意を失い、隙が生まれ、捕ら
えられてジ・エンドって訳さ。まさに!今の君の境遇がソレだよ」

川内「この、変態野郎…!」

男「さっきから誉めちぎってくれるね。もしかしてそっちの口もイケるのかい?」

川内「……!」ギリッ…

男「今この場で弄って遊んでもいいんだけど、さっきの音がどうにも気になる。大方、君を救出に内部へ侵入も
している事だろうし、どうせだからお仲間全員、仲良く皆で私の夜伽を手伝ってもらおうじゃないか」

川内「はぁ…ホント、うちの提督とは雲泥の差だよ、あんた。お前みたいな腐った奴が治める鎮守府に行き着か
なくて本当に良かったって思うよ」

男「なんだと?」

川内「危ない橋も時には渡って見るもんさ」ニヤッ…


──主砲!砲撃、開始!!──


男「…っ!」


ボゴオオォォォォォン


榛名「川内さん!」

陸奥「無茶しすぎよ!」

神通「姉さん!」

川内「皆、ありがと」スタッ…

男「ちっ…」

榛名「貴方が今回の一連の事件の首謀者ですね」

男「だったらなんだ」

榛名「今回は…悔しいですが撤退します。ですが、必ず貴方には罰を受けて頂きます」

男「くくっ…この手の聖域なら幾らでも建造可能さ。その頃には、君の所の艦娘の一人や二人は私の虜になって
るかもしれないねぇ…」

陸奥「反吐が出るわね」

神通「……!」

男「逃げたまえよ。私は一向に構わない。次はもっと根深い深淵の闇を披露しよう…」

榛名「陸奥さん、先導して下さい」

陸奥「了解よ」ダッ

神通「姉さん、動けますか?」

川内「何とかね。榛名、感謝するよ、ホントにさ」

榛名「ええ、川内さんを見捨てたりするもんですか」ニコッ


最後まで警戒する榛名を尻目に、陸奥から始まり最後に神通がその場から次々と離脱する。

一歩、二歩と歩を後退させ、榛名も離脱の姿勢に入った次の瞬間だった。


ボゴオオォォォォッ……


榛名「っ!?」


ガシィッ


榛名「これは…手……!?」

男「逃げても良いとは言ったが、ただで逃げれるとは一言も言ってないよ。せめて君くらいはここに残って私の
暇潰しの相手をしてくれない事には、フラストレーションしか溜まらないじゃないか」

榛名「離し、な…さい!」バッ

男「くくっ」


ガラガラガラ……


榛名「退路が…!」

男「これはこれは…君と私を繋ぎ止めるラビリンスの出来上がりじゃないか。さぁ、心行くまで楽しもうか」ニヤァ…



──敵、発見!砲雷撃戦、用意!──


榛名「えっ!?こ、声…どこから……」キョロキョロ


──主砲よーく狙ってー…撃てーっ!!──


ボオオォォォン ボオオォォォン ボゴオオォォォォォォン


男「くっ…!」


パラパラパラ……


距離を取って対峙していた榛名と男、その間を綺麗に引き裂くようにして真ん中の地面に大きな亀裂が入る。

それが幸いしてか、榛名の足を鷲掴みにしていた手も消えている。

そして亀裂を生んだ原因、その正体が砂埃の中にシルエットとなって浮かび上がる。


榛名「だ、誰なんですか!?」

??「私達は…」

??「掃除屋です」

??「ここから先は…」

??「私達にお任せを」

-完全無欠-



ザザザザッ


バッ


ビュッ


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


ボゴオオォォォォォォン


息の合った攻防一体とも言える究極の足運び。

一人が放ち攻勢に出れば、一人が下がり防衛を築く。

互いが互いを信頼すればこそ成せる脅威的な連携の数々。

僅か二人、空母の二人だけで何十隻と迫り来る深海棲艦の群れを一矢の下に掃討する。


赤城「上々ね」

加賀「みんな優秀な子たちですから」


既に赤城に先程までの焦りはない。

むしろ最初よりも冷静に、かつ大胆にすらなっている。

二人は共に弓を携えたまま一気に駆け出す。

赤と青、それぞれの袴が靡いて揺れる。

宛ら二条の閃光が走り抜けるが如く、深海棲艦との間合いを同時にずらして、再度構えた弓から同時に矢を放つ。


ザッ


ビュビュッ…


赤城「艦載機のみなさん、用意はいい?」サッ…

加賀「いきます」サッ…

赤城「敵機直上、急降下!」

加賀「敵機側面より突撃。薙ぎ払って下さい」


斜め前方、上空高く舞い上がった赤城の艦載機はそこから一気に急降下、無数の爆撃を放ちながら深海棲艦の群

れへ一斉に襲い掛かり、加賀の放った一矢は大きく大きく弧を描いて深海棲艦群側面で艦載機へその姿を変える

とそのまま低空飛行を維持して雨霰の如く攻撃を展開する。



ボンッ


ボボボンッ


ボボボボボゴオオォォォォン


宛らそれは連鎖して炸裂する火薬の如く、端から順々に爆発を起こして深海棲艦が殲滅されていく。

そして残った一群の只中へ、その時を待っていたと言わんばかりに二人の空母が真っ直ぐその一群を見据えて弓に

矢を番え、それを放とうと待ち構えていた。


ビュッッ


無言で放たれた矢はその姿を艦載機へと変えて、群がる深海棲艦へ最後の攻撃を仕掛ける。


ダダダダダダダダッ


ボゴオオォォォォォン


何度目かの大爆発。

ついに二人の空母だけでその場に出現していた深海棲艦の群れ、その悉くを完膚なきまでに制圧してしまった。

今回はここまで

おつ
榛名ァ!来るなら何故もう少し時間をおいてこなかtt

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-画竜点睛-

未だ砂埃でその姿が見えない二つのシルエット。

榛名は声だけを頼りに記憶を掘り起こして見るが、どれも聞き覚えのない声。

そんな榛名の考えなど露知らず、二人の内一人が榛名へ声を掛けた。


??「拘束は解けてるはずです。急ぎ脱出組に合流して下さい」

榛名「けど、あなた達は…!」

??「だいじょーぶ。これが私達の仕事だからね」


榛名の問いにもう一つの影がそう答える。

それと共に体勢を崩していた男も持ち直し、薄っすらと映るシルエットを睨み付ける。


男「お前等…この艦娘達と同じ鎮守府の者じゃないのか」

??「あははっ、違う違う。進撃提督さんの所に所属できたらどれだけ幸せかなぁ」

??「ある意味、確かにそうかもしれないわね。さて、榛名さん…ですよね?どうぞ、ここは私達に任せて先を
急いで下さい」

榛名「けど…」

??「言ったでしょ。これが私達の仕事なの」

??「巻き込まれてからじゃ遅いですよ」

榛名「感謝します…!」ダッ

男「折角のサンプルを…邪魔な連中だなぁ…!」


ボゴオオォォォ……


亀裂の生じた箇所から深海棲艦の艤装と思える無数の顎と砲塔が顔を覗かせる。


男「冥土の土産に、お前達の顔は覚えておいてあげるよ」


ビュオオォォォ……


多数の砲撃によって生じた崩落箇所から風が吹き込み、舞っていた砂埃を一掃する。

今までシルエットのみだった二人の姿が、そのお陰で漸く輪郭を帯びて姿を形作る。

長良「建物そのものがもしかして…」

鳥海「どうやらそうみたいね。まるで深海棲艦の泊地よ…」

男「所属を名乗れ、艦娘共ッ!」

長良「そう言われて答えるわけないでしょ!」

鳥海「趣味が悪すぎます。あなたには、ここで倒れてもらうのが一番かもしれませんね」

男「どいつもこいつも…どうしてこう、私の邪魔をしたがるのか…」

鳥海「倫理から逸脱しているからでしょう」

男「倫理…?倫理だって?アハハハハッ!私は私の掲げた倫理に従って行動しているんだ。逸脱しているって?
だったらお前達も倫理からは逸脱した存在だ!私の定めた倫理からはな!ここは、私が司る聖域だ。この聖域で
認識されるべき倫理、それは私が定めた倫理のみだ!」

長良「話し合いはこれきっと平行線だよ」

鳥海「そうみたいね」

男「跪け、艦娘共!」ザッ

鳥海「長良、タイムリミットまであと十五分。いける?」

長良「うんっ、できるだけ頑張る!」ジャキッ

鳥海「そうね。じゃないと、後が面倒そうだものね」ジャキッ

赤城「加賀さん、ありがとう」

加賀「……赤城さん、あなたが無事ならそれでいいの。私はただ……」

赤城「…?」

加賀「いいえ、過去は過去、と言う事なのかもしれません。今はただ、あなたが無事で本当に良かった」ザッ…

赤城「ま、待って下さい、加賀さん!」

加賀「今の私は、まだあなたと正面を向いて対等に話をできる存在ではありません。話は、聞いている筈です」

赤城「けど…」

加賀「いいんです。それでも…私は一航戦の誇り、忘れはしません」ニコッ

赤城「……」コクッコクッ

加賀「では、失礼します」ダッ


横顔に一瞬見せた加賀の微笑、それだけを残して多くは語らず加賀は赤城に背を向けた。

その背を見えなくなるまで赤城は目で終始追い続けた。

そして彼女の背後から今度こそ聞き覚えのある声が掛けられる。


榛名「赤城さん!大丈夫でしたか!?」

赤城「榛名さん…ええ、私は大丈夫。川内さんは…」

川内「ごめんね、ドジッちゃったよ。まさかあそこまで規模がでかいとは思わなくてさ」

神通「けど、無事で本当に良かったです」

陸奥「よし、それじゃ飛龍達の援護に向かいましょ。折を見てここから迅速に撤退!」

榛名「はい!」(結局、あの声達は誰だったんだろう…)

男「ぐっ…!」

鳥海「思ったとおり…」クスッ…

長良「まさかこの艤装、男と繋がってたなんて…」

男「おのれ、艦娘風情が…ッ!!」ジャキッ ジャキッ ジャキッ


男が忌々しげに両手を振り上げると周囲に展開されている艤装が一斉に蠢き出す。

しかしそれは鳥海と長良にとっては想定済みの動作。

鳥海の動きに合わせて長良もそれに連動して動く。

そうする事で男の照準をずらし、容易に砲撃を回避できるようになる。


ボボボボボンッ


そして垣根を掻き分けるが如く、一つまた一つと確実に男の艤装を粉砕していく。


ボゴオオォォォォォン


男「があっ……!」


艤装を破壊する度に男の悲鳴はその声量を増していく。

そしてついに、男は自らを支えきれずに地面に膝をつく。


男「あ、がぁ……ッ!」

鳥海「巨躯を支えるだけの精神力と体力が不足しすぎてますね。それでは最初のインパクトはあっても後が続きません」

長良「あとはねぇ、かなり単調。途中からは私でも先が読めるくらいにユルユルだったよ」

鳥海「悪く思わないで下さいね。これも、命令の範疇ですので…」ジャキッ


ドン ドン


鳥海はそういうと何の躊躇もなく男の両足を艤装で撃ち抜いた。


男「────ッ!!!!!!!」


もはや声にすらならない悲鳴を上げて男は暫くのた打ち回った後で、何の言葉も発する事無く意識を失う。


鳥海「残り五分です」

長良「これ担ぐのはちょっと抵抗あるなぁ…」

鳥海「それは私も同じですが…あの司令官さんからネチネチ言われるよりは一時の苦と捉える方が良いかも、ですよ」

長良「うっ……た、確かに…そうかも」

-運否天賦-

加賀「…………」


目を閉じ、ただジッと待つ事数分、加賀は静かに閉ざしていた目を開いてゆっくり振り返る。

そこには気絶した男を担ぐ長良と鳥海の二人が微笑を湛えてそこにいた。


加賀「お見事です」

鳥海「そっちは、どうだったの?」

長良「満足できましたか?」

加賀「そうですね。久々に文字通り、羽を伸ばし羽ばたかせる事が出来た気分です。流石に気分が高揚します」

長良「あはっ、加賀さんの気分高揚頂きまーしたぁ!じゃ、気分上々で、私達も戻りましょうか!」

鳥海「ふふ、そうですね」



満潮「おっ、戻ってきた」

漣「お帰りなさいでありまーす!」

加賀「ただ今戻りました」

長良「たっだいまー!」

鳥海「戻りました、司令官さん」

提督「ほう、こいつはまたでけぇ土産と一緒じゃねぇか。重畳の至りだ。それと加賀、ちっとツラ貸せ。場所は
弓道場だ。今回の一件、その報告書を纏めた後で構わん」

鳥海「こ、これ報告書に纏めるんですか!?」

提督「あぁ?んだよ、文句でもあんのか?」

長良「え、だって…非公式って話じゃなかったっけ?」

提督「ダァホ。てめぇ等の頭の中は揃いも揃ってWindows95のままなのか?アップデートってしないんですか?
フリーズしてるんですか?スタックですか?バイオス大丈夫ですか?って話だボケ。俺が連絡入れた時点で既に
公式なものに変わってんだよ、アホタレ共」

鳥海「了解致しましたぁ」イラッ

長良「あ、あははは…」(鳥海さん、顔怖すぎだって…)

加賀「解りました。では報告書に纏め次第、弓道場へ向かいます」

提督「それと鳥海、そいつは今から大本営の奴呼ぶからそれまでお前が面倒見ておけ…つってもまぁ、そこまで
派手に痛めつけたんだ。そう易々とは起きんだろうがな」ニヤッ…



画して、今回ハズレ鎮守府の面々は公式か非公式か定かではないにしろ、ついに形ある勝利を収める事になった。

そして直接的・間接的にそれぞれに交わったハズレの艦隊と進撃の艦隊。

この運命が吉と出るか凶と出るか、それはまだ誰にも解らない。

確かな事、それはハズレ鎮守府が密かに、だが確実に今前進しているという事だけだ。

短いですが今回はここまで

乙した
>>103
この提督ならおれは藤原啓治で脳内再生余裕

おつ
安定の煽っていくスタイルだなww

皆様こんばんは
今日はちまちま更新です




~アフターケア~



-始動-

満潮「…これ、どういう事よ」

漣「漣の頭脳を持ってしても解読不能なのです」

長良「天変地異起きて海面干上がったりしないよね、これ…」

鳥海「稀、というかもはや奇跡です」


ガチャ…


加賀「お待たせしました」

長良「あ、加賀さん!これ、これ!これどういう……」

加賀「訝しく思うのも最もです」


今、五人が目の当たりにしているのは月毎業績表一覧。

艦娘にとっては直接的に関連はしないが、間接的には関連する。

そう、これは提督の評価そのものであり階級に添う働きをしてない場合は降格処分にされる。

艦娘の指揮、作戦、任務方針、錬度の維持及び向上、様々な項目がある。

中でも一括りに業績として数字に反映され、ランキング化してある項目、五人はそこに目を奪われていた。


鳥海「司令官さんの指定席、最下位からまさかの司令官さんが脱出…」

漣「もしかして、ですけど…この間加賀さん達三人で成した任務のお陰って奴なんですかね、これ」

満潮「だ、だからって何百人もいる中でいきなり真ん中近くまで順位なんてあがる!?これじゃまんま、
もうここハズレ鎮守府とかじゃなくなるじゃない。海軍の墓場なんて呼ばれてるから艦娘だって新規着任して
こなかったトコよ?」

長良「流石に真ん中くらいまで業績伸ばしてれば、そこそこ新規で新しい艦娘が着任もしてくるでしょうしねぇ…」

加賀「それらの内容も含めて、改めて私から今回の一件について説明します」




提督「おせぇ」

加賀「別に時間指定されていませんでしたから」

提督「ちっ」

加賀「それで、私をわざわざここへ連れてきたのはどういう訳かしら」

提督「今回、お前等が手掛けた仕事で風向きが大きく変わるって事を教えておいてやる」

加賀「風向きが変わる…?」

提督「そう、表向きは変わらずに裏向きにな。お前等が手土産に持ってきたあの男だが、優にここ数ヶ月だけの
犯行じゃねぇ。過去に遡って一番古いので二年前。そこから艦娘の失踪事件ってのは偶発的に起こっていた」

加賀「二年も、前から…」

提督「その中であの男が企てたであろう件数は余裕で二桁はいってる」

加賀「その事実と今回の一件で何がどう大きく変わるというのかしら」

提督「一つは俺の業績。だが先にも言ったとおり、表向きはそれだけで何も変わらない。ここがハズレって事は
周知の事実であり、それ以上にもならなければそれ以下にもならないって事だ。現在艦娘は着任法の下に定まり、
決められた法に則って各鎮守府へ着任している。起因するのがこの提督業績表だ。この表によって相応の任務を
こなせるであろう艦娘を割り振り、局地的に戦力が集中しない配慮がなされている」

加賀「ですがそれではここが『ハズレ』と呼ばれる所以がなくなります」

提督「だから初めに言っただろ。表向きは変わらない。が、裏向きには変わるってな。ここに新規で艦娘が着任
する事は万に一つも今後はありえない。最も、やらかす奴がいれば話は別だろうがな。前置きが長くなったが、
結論を言うとだ……この鎮守府、強いては俺達にとって表向きのこれら一部の法に関する適用が一切されない」

加賀「……は?」

提督「例えば着任法。俺の業績が伸びて順位が上がれば必然的に新規の艦娘が着任する。が、ここは海軍の墓場
とも呼ばれるハズレ鎮守府。艦娘自身が突飛もねぇ馬鹿を自分からしでかさない限り艦娘が着任する事はない。
矛盾を孕んだこの状況下で何が適用されるのか……裏向きの法が適用される。ハズレ鎮守府には表向きの法、
この場合は着任法は適用されねぇ訳だ」

加賀「それでは……」

提督「そう。今回の仕事で恐らくこの提督業績表に名を連ねる俺の名前は順位を跳ね上げる。だが、別にここに
新規で艦娘が着任してくる事はねぇ。そしてもう一つ…順位を上げる毎にえぐい任務が増える」

加賀「えぐい、任務…?」

提督「後ろ盾一切無し、命の保障無し、不測の事態は大いに有り!つまり、誰もが敬遠してやらねぇような仕事
(モン)がこの鎮守府にゴロゴロと転がり込んでくるってスンポーだ」

加賀「私達を…捨て石にすると…?」

提督「……海軍の表向きはな。理屈はこうだ────」




提督「────見ておけ、目に物を見せてやる」

元帥「…目に物、か。君の昔からの口癖だったな。ならばこの一件で君の艦隊が見事例の男を殺処分、もしくは
捕縛して帰還した場合、特例処置を設けてやろう」

提督「んだと…?」

元帥「これは言わばこの場に居る私と君、二人だけで交わされる秘匿の契約だ。表向きではない、裏向きの海軍
として交わされる法的処置の力が及ばない、口だけで交わされる極めて薄っぺらで庇護されない、形だけのもの」

提督「てめぇ……」

元帥「伸るか反るかは君が決めろ。代わりに私は君達に他の鎮守府では与り知らない特別任務を定期的に発令する。
その任務で君達が死ぬようであれば証拠諸共海軍の方で元凶含めた一切合財を君達と共に抹消する。表に出れば、
どれもが海軍にとっては不祥事となりかねない、そんな危険な代物だ」

提督「智謀さんよぉ、あんた随分黒くなったんじゃねぇのか」

元帥「新鋭の一件で学んだんだよ。翳す正義は人によってその色が変わる。だが君も知っている通り、表に出ては
ならない事実と言うものがあるのは知っているはずだ。隠密の一件がまさにそれだった。世間的には知れ渡るはず
もないが、海軍界隈となると話は別だ。巡り巡って陸軍の上層にまで内容が及べば、それこそ海軍の権威は完全に
地に落ちる」

提督「だから隠蔽するってか」

元帥「法に接触しない、ギリギリのラインで善を保つ他に現状手立てがない以上、これが最善と私は認める」

提督「くくっ……」

元帥「…?」

提督「…結構。おぉ~いに、結・構!じ・つ・に、素晴らしい!面白い!海・軍・らしい!実に濁ったやり方だ!
だが俺は俺のやり方でその全てをきっちり耳を揃えてお前等に解決済みとして報告書に纏めてやる!お前等がゴミ
だと、クズだと蔑んだ連中を従えて俺達の名を全鎮守府に知らしめてやろう!後から何を言おうが知るか。お前等
全員、吠え面を掻く準備だけして提督の椅子に踏ん反り返ってろ!」バンッ

大和「なっ……」

提督「…目に物を見せてやる。反論は許さん、以上だ」




加賀「…大見得切った訳ですか」

提督「啖呵切った分、最初のてめぇ等の仕事は二百点満点だろ」

加賀「何故、それを私に告げたのかしら。別に私達とあなたの間に信頼関係などないはずでは?」

提督「ああ、その通りだな。だから見限りたければいつでも見限れ。口には出さなかったが、智謀の女狐さんなら
何だかんだと愚痴りながらもてめぇ等の面倒くらい見るだろうよ」

加賀「今までのあなたの態度を鑑みればどちらに身を委ねるか、なんて解りそうなものですけれど…」

提督「くくっ…仰るとおりで」

加賀「けれど、私は仲間を見捨てるような真似はしません」

提督「ほぅ…」

加賀「私自身はあなたにどう使われようと構いませんが、他の四人がどうかは知る所ではありません。他の四人が
もしもあなたの方針に従わないというのであれば、私は仲間の意見を尊重するまでです」

提督「なるほどね…」

加賀「ですが、悔しい事に他の四人があなたの意見を蔑ろにして否定的な意見を述べるとは到底思えない…という
のが正直な感想です。結論を申し上げます。大なり小なりの確執はありましたが、これも運命の一つなのだとする
のなら、私はその全てを受け入れます。あなたの言葉を借りるのなら、目に物を見せてやる、と言った所です」

提督「くくっ…そいつは重畳の至り────」




加賀「────伸るか反るかは皆さんに委ねます。ただ、私はどうであれここに残るとだけ伝えておきます」

鳥海「きたばかりで行く宛てなんてないもの。はぐれ艦娘なんてごめんだし、私も勿論残るわよ」

長良「司令官はちょっと苦手だけどねぇ…私も残留かな?何気に、私は皆と居るの楽しいから!」

漣「私はご主人様一筋ですので、移籍とか考えられませんねー♪」

鳥海「え…?」

漣「…冗談ですよ。あんなおっさんに恋心なんてある訳ないじゃないデスカ」

長良「ぶふっ」プルプル

満潮「ここに居る時点で行く宛てなんてないの解りきってるし、衣食住が揃ってるって点じゃまぁ、残っても
別にいいんじゃないの。仕方なくだけど」

漣「相変わらずみっちゃんはツンツンしてますねー」

満潮「うるっさいわね!だからそのみっちゃんって止めなさいよ!ぶっ飛ばすわよ!」

漣「だが断る」キリッ

満潮「……こい、つッ!」ピキピキ…

長良「あははははっ!」

鳥海「はぁ、また?ほんとあなた達懲りないわねぇ」クスッ…

漣「流石みっちゃん!ツンツンしながらも結局同意しちゃう!そこにしびれる!憧れぇ~……ないっ!」ババァァァーーーン

満潮「殺すっ!」

漣「いや~ん♪」キャッキャ タッタッタ……

満潮「待ちなさいよ、漣!殺すから、待てこらーっ!!」ダッ


ドドドドドドドッ……


長良「あははっ、殺すって言われて待つ人なんていないのに…満潮面白いなぁ」

加賀「真面目な話をしてるというのに……あの緊張感のなさ、少しどうにかして欲しいのだけれど」

長良「まぁまぁ、以前のギクシャクよりはさ、良いんじゃないかな?」

加賀「全く…」

鳥海「それで、こういう結果ですけど早速次の任務はあるんですか?」

加賀「いいえ、現時点ではまだ何も。それ所か今日は丸一日通して私達は自由行動が可能なようです」

長良「えっ!?」

鳥海「え、そ、それってつまり?」

長良「えーっと…休暇?」

加賀「そうですね」

鳥海「嘘みたい…」

加賀「確かに、私も最初聞いた時は聞き返しました」

長良「休みかー。あっ、それじゃあさ……」




-今時の子たち-

長良「い~やっほ~ぅ♪」ピョンピョン

鳥海「出掛けるなんて遠征以外じゃ何時以来かしら」

加賀「たまにはこういう時間を設けるのも必要です」

漣「まさかの展開」

満潮「ふんっ、何よ!別に行きたいなら四人で行けば良いでしょ!」

漣「そうなると、鎮守府にはみっちゃんとご主人様の二人きりですよ?」

満潮「うっ…」

加賀「流石の私もそれはお勧めしません」

漣「でーすよねー?」


今五人は息抜きと称してモール街へ足を伸ばしている。

勿論、普段の服装ではなく私服に着替え、艤装も全て取り外している。

加賀は紺青のシャーリングパンツにクリーム色のタートルネック、その上から紺青のブルゾンを羽織っている。


鳥海「それにしても…」マジマジ…

加賀「な、何か…」

鳥海「あぁ、いえ…普段は和の加賀さんしか知りませんでしたから、これはこれで新鮮ですね」

加賀「それなりに、服には頓着します」ボソボソ…

長良「おぉ、加賀さんがちょっぴり照れてる!」


人一倍キャッキャしている長良はロットンシャツにデニムのスカート、その上にこちらは白のダウンブルゾンを

着込んでいる。

鳥海は黒の長袖ワンピース、鉛白色のコットンダッフルコートを着込んでいる。


満潮「それで、どこ行くのよ」

漣「どこでもばっちこーい!デス!」


腕を組んでちょっぴり不機嫌を装う満潮。

白のブラウス、紺のサロペットにピンクのアウタージャケット、黒のニーソックスと言う出で立ち。

その横でニコニコしている漣は結構派手だ。

赤と白の縞々セーターにバーバリーチェックのプリーツスカート。

白と黒の縞々タイツにモコモコしているミニブーツ。

アンバランスさ具合がにじみ出ている。



長良「漣はまた随分とド派手な格好だよねぇ」

漣「んー、そうですかね?」

加賀「……これは」ジー…

鳥海「どうかしたの、加賀さん」

加賀「いえ、別に」プイッ

満潮「加賀、あんた今……」チラッ…

加賀「満潮、それ以上は流石の私でも…」ギロ…

満潮「うっ…」

長良「あっ、なーんだ、加賀さんお腹空いてたの?」

加賀「……!///」ギクッ

満潮「ば、ばか…!」

加賀「だ、大丈夫です」

鳥海「ふふっ、今日くらいは無礼講で良いんじゃないかしら。それに腹が減っては戦は出来ぬって古人も仰って
たくらいですからね。まずは腹ごしらえをして、それから繰り出しましょう」

漣「さーんせー!」


五人は近くにある食処へ足を運びそこの料理に舌鼓を打つ。

ただ何よりも今のこの瞬間がとにかく楽しくてしょうがなかった。

当たり前の事を当たり前のようにやる。

今まではそれすら間々ならなかった彼女達にとって、その当たり前の事がこの上ない幸せに思えた。

美味しいものを食べて、他愛ない話に華を咲かせ、一喜一憂して一日を過ごす。

どこにでもいる女の子達と変わらない、そんな姿がそこにはある。

そしてそこには、普段の険しい表情を見せる艦娘は一人も居なかった。

ただ純粋に、今を楽しむ少女達がそこには居た。

今日はここまで

皆様こんばんは
息抜きに投稿



長良「あははははっ!いや~、満潮の剣幕に今の男の子達逃げてっちゃったねぇ」

満潮「ふんっ、何よ!まるで私が悪いみたいじゃない!」

漣「いやぁ、シチュエーションとしては私のお姉ちゃんに何汚い手で触ろうとしてるのよ!みたいな?」

満潮「は、はぁっ!?///」

鳥海「あら、私って満潮のお姉ちゃんなのかしら?」

満潮「ばっ…だ、誰があんたの妹になるか!///」カー…

加賀「その場合、高雄型五番艦重巡洋艦満潮、になるのかしら」

長良「おぉ、グレードアップ…」

漣「やったね!みっちゃん!お姉ちゃんが増えるよ!」

満潮「うるっさいわね!」

鳥海「でも、うん、そうねぇ…私はああいうの、ちょっと苦手だから助かったかな?加賀さんだったら────」


加賀「何か相談?いいけれど」

加賀「私の顔に、何かついていて?」

加賀「用がないなら退いて欲しいのだけれど」

加賀「邪魔よ。そこを退いて」

加賀「いい加減にしてくれるかしら」


鳥海「────って淡々となんだか往なしそうよね」

加賀「私を何だと思っているのですか」ムスッ

漣「地味に似てる…!」

加賀「似てません」

長良「いやぁ、結構真に迫ってると思ったけどなぁ」

加賀「いいえ、似てません。ここは譲れません」

鳥海「いいえ、似てます。ここは譲れません」

満潮「くくっ……」プルプル

長良「あははははっ!ウケるぅ~、似てるぅ~!」

漣「侮り難し鳥海さん」

加賀「……に、似てる似てないは別として……そんな普段、ぶっきら棒ですか、私」

鳥海「ふふっ、けどそこが加賀さんの味じゃないかしら?キャッキャしてるのは、こっちの三人に任せてお
けば良いと思うわ。私はね?」

満潮「ちょっと、そこに私を混ぜないでよ!」

鳥海「あら、結構漣といいコンビだと思うわよ?」

漣「イェーイ♪」

満潮「じょーだんでしょ!?絶っっっ対にイヤ!」

漣「ひっど~い!」

満潮「ひどくない!」

漣「みっちゃんのいけずぅ~」

満潮「だからみっちゃん言うな!」

長良「お~…ベストコンビだね、これは…」

加賀「確かに」

鳥海「ふふっ」


この日、彼女達は文字通り、朝から晩まで羽目を外した。

鎮守府への帰宅が夜遅くになったにも拘らず、提督は一言も何も言わなかった。

これが彼なりの艦娘への労い方なのかもしれない。

-交わり-

漣「ふんふ~、ふふふふ~ん♪」ジャッ ジャッ

長良「ふぅ~、おつかれーっと…」

漣「朝錬も大変ですねぇ」

長良「ふふ、朝から良い汗掻いて、ご飯沢山食べて、栄養補給したらまた走る!うん、これだよね」

漣「うへぇ…私にはおおよそ不可能な作業工程ですぅ…そもそもこんな寒い中走るとかもう、無理です」

長良「走ってれば体ポカポカしてあったまるよ?」

漣「そこに辿り着く前におこたに直行です~っと、完成!」

長良「おぉ!それじゃ皆を呼んでこよう!」

漣「加賀さんは多分弓道場で、鳥海さんは資料室、で…みっちゃんは自室でグータラしててー、ご主人様は
しらな~い」

長良「あはっ、おっけー!探して見るよー!」


加賀「朝食準備ありがとうございます」

鳥海「助かりました」

満潮「うぅ、眠い…」

漣「あれ、ご主人様は?」

長良「うーん、それが何処に行っても見つからないんだよねぇ」

加賀「どちらにしろ後から顔を覗かせるでしょう。先に食べておきましょう」

長良「さんせー!もうお腹ペコペコ~」

満潮「そういえば、あのアホ面オヤジならさっき外にいたわよ」

長良「えぇ、外かぁ…見てなかったなぁ」

加賀「ご飯が冷めます。あの人は放置しておきましょう」

鳥海「ふふっ、辛辣ね」





カチン……シュボッ……


提督「……ふぅー」


いつからだったか。

煙草を吸うようになったのは。

海軍に入隊した頃は、確か吸っちゃいなかったのは確かだ。

いつからだったか。

転機になったのは。

あのガキと会った時だ。

いつからだったか。

斜に構えるようになったのは。

人の闇を、知った時だ。


提督「空はこんなに、青いのにってか…なぁ、扶桑。ったく、眩しいくらいの晴天に嫌気が差すぜ」


ザッ…


提督「ん…?」

加賀「いつまでそうしているつもりですか。漣が朝食を用意してくれています。他のみんなは既に食べ終わって
ますので、後はあなただけです。片付けもありますから、早々に終わらせてくれると助かるのだけれど」

提督「あぁ、飯か」

加賀「…?」

提督「ん、何だよ」

加賀「感傷にでも浸っていたのですか」

提督「んだよ、おっさんが感傷に浸っちゃ世も末とでも言いてぇか」

加賀「聞く気はなかったのですが、扶桑…と言うのは、記憶が確かなら扶桑型一番艦戦艦、ネームシップの
扶桑で間違いありませんか」

提督「て、てめっ……」

加賀「申し訳ありません」

提督「……ったく、タイミング最低だぜ」

加賀「あの…」

提督「扶桑は以前の鎮守府で俺の秘書艦だった艦娘だ」

加賀「……え?」

提督「ただ、それだけだ」クルッ……スタ スタ スタ……




元帥「これは……」

大和「どうかしましたか、元帥」

元帥「気紛れと言えば気紛れさ。過去の報告書を眺めていて不審な点に気付いた」パサッ…

大和「二年前の…これは、任務結果報告書ですか?」

元帥「ああ…執筆者の項を見てみろ」

大和「白夜……」

元帥「で、こっちがここ最近提出されたハズレ鎮守府の遠征結果報告書だ」

大和「……?」

元帥「ふっ、不審点が解らんか。私は元々書記士を志していた事があってな。何の因果か、今はこの椅子に
座っているが、だからこそ気付いた点がある。今手の空いている秘書艦娘書記士はどっちだ?」

大和「第二書記士の三隈は現在手が離せないのは伺ってますね」

元帥「そうなると第一書記士の鳳翔になるな」

大和「どうなさるおつもりですか?」

元帥「人には筆跡と言うものがあってな。勿論、お前達艦娘にもある。あぁ、因みに大和、君の字はとても
綺麗で非常に読みやすい」

大和「ふふ、それは誉れですね」

元帥「鳳翔に頼んでこの二枚の報告書の違いについて抜粋してもらう。これが糸口となれば、もしかしたら
また一つ海軍の膿が滲み出てくるかもしれないな」




進撃「所属の知れない艦娘に助けられたって?」

榛名「はい。少なくとも二人居たのは確かです」

衣笠「そんな事あったんだ」

陸奥「全然気付かなかった」

神通「はい…」

川内「じゃあ、私達以外にもあそこに潜入してた艦娘がいたって事?」

飛龍「私の目にも引っかからないなんて…」

赤城「…………」

進撃「どうした、赤城」

赤城「あ、いえ…その、艦載機を飛ばしていたのに存在に気付けなかったなと…申し訳ありません」

榛名「赤城さんは入り口で深海棲艦と交戦してたんですから、それは仕方ありませんよ」

陸奥「そうね。あれもこれもなんて無理よ」

飛龍「ゴメンね。索敵は念入りにって、私が言ってた事だったのにさ」

赤城「いえ…飛龍さんだって利根さん達の援軍へ駆けつけていたんです。気付けなくてもそれは致し方ありません」

進撃「まぁ、報告は解った。木曾に利根に時雨、霧島も無事だったみたいだし、結果オーライだ。その点に
ついては俺から元帥に報告書として上げておく。取り敢えず皆お疲れさん」



進撃「ふぅ」

赤城「提督」

進撃「おっ、どうした赤城。まだ何かあったか?」

赤城「あの、提督は加賀さんを、ご存知でしょうか」

進撃「加賀?」

赤城「はい」

進撃「確か元エリート鎮守府に籍を置いていた一流の腕を持った正規空母だってのと、お前と同じ一航戦を
名乗ってるってのは知ってるぞ。何でも任務先でミスを犯して、その鎮守府からは除名されたって聞いてるが」

赤城「加賀さんが、ミス…?あ……ありえません!加賀さんが除名処分を受けるほどのミスとは、一体どれだ
けヒドイものだったんですか!?」

進撃「あ、いや…俺も詳しく聞いた訳じゃないんだよ。管轄場所も違うしな。俺達の居るここは南西諸島区域、
でもってエリート鎮守府があるのは中部区域だ。本当は俺も中部地区の提督として昇進異動の話はあったが、
ここに留まらせてもらったって経緯がある。なんせ西方や南方、中部区域ってのは将官クラスの提督が治める
鎮守府で残存している深海棲艦もリコリス達に賛同しない連中が多く犇いているらしくてな。第二弾三の鬼や
姫、レ級のような難敵が生まれても不思議はないと言われている所だ」

赤城「では、加賀さんは…彼女は今、どこにいらっしゃるんですか!?」

進撃「ど、どこって…流石にそれは、問い合わせてみないと解らないよ。しかしなんだって急にその加賀の事
を知りたがるんだ?確かに同じ一航戦同士、思う所はあるかもしれないが……」

赤城「…居たんです」

進撃「居た?何処に」

赤城「今回の任務で赴いた孤島施設に、加賀さんが居たんです!」

進撃「何…?」

赤城「加賀さん以外に二人、所属不明の艦娘は居ました。榛名さんの言っていた二人の内一人は『ナガラ』と
呼ばれていました。ですが私には聞き覚えも何もない名前です」

進撃「ナガラ…ながら、確か……」ガタッ…


ガラガラ……ゴトッ


進撃「な、な、なが……これか、長良型軽巡洋艦一番艦の長良」

赤城「軽巡洋艦…?そんなはずはありません!」

進撃「は?」

赤城「私が相手取っていたのはどれもクラスで言えば重巡洋艦クラスです。錬度は確かに拙い部分は多かった
と思いますが、それでもエリート級の強さと耐久力を誇っていたと記憶しています。そんなのを相手に、僅か
一発…たったの一発、幾ら急所に撃ち込んだと言っても艤装諸共一撃で粉砕なんて…」

進撃「軽巡の艦娘が重巡クラスの深海棲艦を僅か一撃で瞬殺、か…確かに聞く限りじゃ俄かには信じ難いのも
解るが、実際の所どうなのかって話だな」

赤城「それは、どういう事ですか?」

進撃「軽巡が重巡に勝れない、なんて道理はないって事さ。話は取り敢えず解った。お前が望むなら加賀に
ついても調べるが、どうする?」

赤城「是非、お願いします」



進撃「ふぅ」

赤城「提督」

進撃「おっ、どうした赤城。まだ何かあったか?」

赤城「あの、提督は加賀さんを、ご存知でしょうか」

進撃「加賀?」

赤城「はい」

進撃「確か元エリート鎮守府に籍を置いていた一流の腕を持った正規空母だってのと、お前と同じ一航戦を
名乗ってるってのは知ってるぞ。何でも任務先でミスを犯して、その鎮守府からは除名されたって聞いてるが」

赤城「加賀さんが、ミス…?あ……ありえません!加賀さんが除名処分を受けるほどのミスとは、一体どれだ
けヒドイものだったんですか!?」

進撃「あ、いや…俺も詳しく聞いた訳じゃないんだよ。管轄場所も違うしな。俺達の居るここは南西諸島区域、
でもってエリート鎮守府があるのは中部区域だ。本当は俺も中部地区の提督として昇進異動の話はあったが、
ここに留まらせてもらったって経緯がある。なんせ西方や南方、中部区域ってのは将官クラスの提督が治める
鎮守府で残存している深海棲艦もリコリス達に賛同しない連中が多く犇いているらしくてな。第二弾三の鬼や
姫、レ級のような難敵が生まれても不思議はないと言われている所だ」

赤城「では、加賀さんは…彼女は今、どこにいらっしゃるんですか!?」

進撃「ど、どこって…流石にそれは、問い合わせてみないと解らないよ。しかしなんだって急にその加賀の事
を知りたがるんだ?確かに同じ一航戦同士、思う所はあるかもしれないが……」

赤城「…居たんです」

進撃「居た?何処に」

赤城「今回の任務で赴いた孤島施設に、加賀さんが居たんです!」

進撃「何…?」

赤城「加賀さん以外に二人、所属不明の艦娘は居ました。榛名さんの言っていた二人の内一人は『ナガラ』と
呼ばれていました。ですが私には聞き覚えも何もない名前です」

進撃「ナガラ…ながら、確か……」ガタッ…


ガラガラ……ゴトッ


進撃「な、な、なが……これか、長良型軽巡洋艦一番艦の長良」

赤城「軽巡洋艦…?そんなはずはありません!」

進撃「は?」

赤城「私が相手取っていたのはどれもクラスで言えば重巡洋艦クラスです。錬度は確かに拙い部分は多かった
と思いますが、それでもエリート級の強さと耐久力を誇っていたと記憶しています。そんなのを相手に、僅か
一発…たったの一発、幾ら急所に撃ち込んだと言っても艤装諸共一撃で粉砕なんて…」

進撃「軽巡の艦娘が重巡クラスの深海棲艦を僅か一撃で瞬殺、か…確かに聞く限りじゃ俄かには信じ難いのも
解るが、実際の所どうなのかって話だな」

赤城「それは、どういう事ですか?」

進撃「軽巡が重巡に勝れない、なんて道理はないって事さ。話は取り敢えず解った。お前が望むなら加賀に
ついても調べるが、どうする?」

赤城「是非、お願いします」

取り敢えずここまで


うちの長良ちゃんもE5ラストダンス華麗にクリティカル決めてくれたわ

うちの長良はE2で大暴れしてくれたよー

おつ
おう赤城さんや、自分とこにも神通っていう怪物がおるやないですか

我が基地には長良はいない
見た目的な理由で

皆様こんばんは
区切れるところまで更新

-日常へ-

提督「……」トントン…バサッ…



元帥『早速、君の鎮守府向けの仕事が舞い込んだ。場所は西方海域にあるリランカ島。敵戦力は……君なら
想像に難くはないだろう?なんせ、数年前まで君が受け持っていた区画だ』

提督「ちっ……嫌味かよ」

元帥『例の男を喋れる程度に治療を施し、連日拷問にかけた』

提督「何…?てめぇ等…!」

元帥『…と言ったら、君はどういう反応を示すのかと思ったが、思いのほか人然とした反応で安心したよ。
する訳ないだろう。だが罪人に変わりはないからな。最低限の対応とだけ言っておく。その男からの卑しい
情報だが、本当かどうかの真偽を確かめてもらうのが今回の任務だ』

提督「真偽だと?」

元帥『男が言うには、各区画に点在する鎮守府の内、最低一つは何かしらの問題を抱えていると言った。直近の
もので一番顕著だったのは北提督の不祥事だ。詳しいよな、君ならば…当事者なのだから』

提督「ハズレ鎮守府には人権も何もないらしくてな。ああいう暴挙を平気でできる神経に驚かされたもんだ。
だが、もっと驚いたのはここまで海軍が腐敗していたって事実だ。どれだけの膿を溜め込めばこれだけの異臭を
放てるんだろうな、智謀さんよ…宛ら膿の温床、蜂窩織炎(ほうかしきえん)だぜ」

元帥『……返す言葉もないよ。その点については弁解の余地もない。だからこそその膿を今回出し尽くす。目下
暫定ではあるが見定めている鎮守府は三件ある。一つは南西海域、一つは北方海域、最後が西方海域だ。中でも
西方海域は急を要するという判断が下された』

提督「それで?」

元帥『その中で今回の男の供述に繋がる。現時点で唯一合点がいっているのがその西方にある鎮守府だ。内容は
次の通りだが、文字通り真偽は定かとなっていない』


艦娘を奴隷として使役し、十分な休息も与えず連日資源採取に出撃させているらしい。

錬度を上げるという名目で出撃しているにも拘らず、特定の艦娘のみを成長させ残りを数合わせだけに考えて
これをむざむざ見殺しにしているらしい。

上記に付随して利用価値無しと判断した艦娘を錬度も装備も不十分と解っていながら無謀とも思える海域へ半
ば強制的に出撃させ、情報だけを仕入れさせて見殺しにしているらしい。



元帥『嫌疑があるのは西を治めている中将提督。何かといい噂の聞かない男だ。別名ハイエナ』

提督「知ってるよ。確かにいい話は聞いた事がねぇな。だが何でそいつの情報をあの男が知ってやがる」

元帥『言葉を濁しているが、何かしらを知っているのは事実だろう。ただ、あいつはこういった』


──私達はね…罪で構成された一つの集合体なんだよ。組織じゃない…集合体だ──

──私はこんな所で死にはしない。海軍、覚えておけ…私は、何度でも自らの欲を満たそう──


提督「つくづく救えねぇクズ野郎だな」

元帥『君にクズ呼ばわりされては世も末か』

提督「あぁ!?」

元帥『だがそう思えるほどに墜落した男だ。万人が君と同じ意見だろうな』

提督「で、そのハイエナの真偽をどう確かめろってんだ」

元帥『近々、再びまた彼が出撃をするようだ。そこで事の顛末を、真実を見極めてもらう』




提督「…ちっ、忌々しい。よりにもよって、西方海域…リランカ島とはよ」


ガチャ…


加賀「失礼します。お呼びですか、提督」

提督「仕事だ」

加賀「仕事、ですか」

提督「前回の様な温い海域とは話が違う。心して挑め」

加賀「……場所は、何処でしょうか」

提督「西方海域、リランカ島だ。任務の内容を伝える────」


加賀「────これが今回の任務の概要になります。これらの証拠を集め、ハイエナと呼ばれている西提督の
悪行が定かなものかどうかを検証するのが目的となります」

鳥海「こんなの、艦娘のする仕事なのかしら…」

漣「絶対違うと思うけどなぁ」

長良「うーん…」

満潮「けどこれ、秘密裏に動かなきゃヤバイって事よね。加賀や鳥海には不向きなんじゃないの?」

加賀「遠距離の目には成れますが、不自然に艦載機や水偵・水観が飛行していては相手に警戒心を与えてしまいます」

鳥海「潜水航行可能な艦娘でも居れば別でしょうけど、選り好みできる身分じゃないものね」

長良「いざと言う時の瞬発力ならやっぱり私達水雷戦隊だね」

鳥海「私と加賀さんも距離を置いて構えてはおきましょう」

加賀「そうですね。長良、漣、満潮、お願いできますか?」

漣「はぁ、ご主人様のご命令とあらば、漣は火の中水の中~っと」

満潮「どーせ拒否権ないんでしょ。やるわよ…やってやるわ」

長良「まぁ…水雷戦隊の指揮なら任せてよ!」


任務と呼ぶには余りにも不可解なその内容に、五人がそれぞれに不信感を抱く。

それとは別に、西方海域に特別な想いを抱く提督。

そして今回捕らえた男の口から漏れ出た悪意を含んだ言葉の数々。

罪で構成された一つの集合体…その意味する所が何なのか、まだ彼等は知る由もない。

そしていまだ自らの欲・願望を吐き出そうとし続ける男の抱く桁違いの欲望に対する執念。

これらの事件は、まだその入り口すら顔を覗かせてはいなかった。




~悪の枢軸~



-大罪-

その男は常に抜け道を探って生きてきた。

だらけ、怠け、放棄する。

これといった欲はないが楽はしたい。

だから抜け道を探る。

そうして行き着いたのがギブアンドテイクの関係。

中将と言う階級は何かと便利で、男の自由を大いに拡大させた。

自らは動かず、じっと待って横から攫う。

結果が全てで奪われた方は大抵喚き散らす。

だがそんなものは気にしない。

そう、男にとって目の前にある結果が重要であり、後ろで喚いているのはどうでもいいからだ。

どれだけ喚こうが結果が出てしまえばそれは自分のもの。

他の誰のものでもない。

そうして与えられたものは自らの手足として、糧として上手く利用する。

その手足を今度は見返りとして提供する。

厳密には、結果として不要となったものを材料として提供する。

男には本当に欲がない。

物欲も、食欲も、性欲さえもない。

唯一、睡眠欲だけは稀に欲する事があるようだが、言い換えればそれは体の防衛本能に他ならない。

自ら進んでとは行かない。

一度、壊れた艦娘が夜伽の相手にと迫って来た事があった。

だが男にはそれが何をしたいのかさっぱり解らなかった。

むしろ邪魔だった。

まさに要らぬ世話。

だから彼はその艦娘を殺した。

不要になったからだった。

自分にとって楽できる存在ではなくなった瞬間から、それは結果として無用の長物と成り果てた。

それでも彼は中将へとのし上がった。

結果が全てを物語る実例として。

付いたあだ名は、ハイエナだった。

取り敢えずここまで

乙ですよ
この関連SSでは、同名の艦娘は同時に存在できるんだっけ?

皆様こんばんは
風邪で寝込んでおりました
皆様もこの季節の風邪にはお気をつけ下さい


>>153
クローンと言う形で前作に同型同名艦を登場させています
衣装描写はオリジナル仕様で変えてありましたけど

??「ふ~ん、そうなんだ。彼、捕まっちゃったの…じゃあ、もう提供しても意味ないね。まぁ…元からさぁ、
こんな戦争兵器の何に欲情するのか意味が解らなかったんだよね~。たまにあるじゃない、なんか人以外の動物
とか、なんか穴の空いてる無機物に一生懸命腰振ってるような連中…あれとかと一緒だよね~」

艦娘「……お茶でございます」コトッ…

??「う~ん、ご苦労様ぁ~。じゃあ、お前は早く艦隊編成して資材調達してきてよ。カレー洋ね。後さ~、
潜水艦の連中にはまたオリョールに向かわせて~。あっちにはもう了承得てるからさ~、取り敢えず最低でも
一匹死ぬまでは戻ってくるなっていっといてね~」

艦娘「……畏まりました」ペコッ…

??「で、何~?俺んとこの情報が漏れてたんだっけ?まぁさ~、君んとこもそうだけど、俺等に逆らうとか、
もう相当バカじゃん?いいよ、逆に捕らえて遊ぶから~。え?油断?ふはっ…何それ美味しいの?言ってんじゃん。
きたら潰すよ?いや、マジで……俺の平穏壊そうとするヤツとか、生かしておくわけないじゃ~ん」

??「うん~、じゃ…またね~」ガチャ…

??「はぁぁ~~……めんどっちぃなぁ~。邪魔すんなよ…ホント、うざいわ~」ガタッ…

??「ったくさぁ、海軍なんて温床…そんなあっさり手放すワケないのに、正義感ぶって調子に乗っちゃう
ヤツとか、相当頭の中に蛆が湧いてるんだろうねぇ…さて、どうやって潰そっかなぁ……」

-疑念と確信-

満潮「…………」

漣「どーしたんですかぁ、みっちゃん?」

満潮「だからその……はぁ、別に何でもないわよ」

長良「満潮が考え事なんて珍しいね」

満潮「あのさ、その…何も考えてません的な言い方なんなわけ!?」

長良「あははは、ごめんごめん。いやでもさ、満潮って結構パパッと物事決めるイメージあるし、悩む事って
あんまないんじゃないかなーってね。勝手な私のイメージだから、あまり気にしないでよ」

満潮「あんたらは結構順応してるみたいだけど、不思議に思わないわけ?」

長良「えー?何が?」

漣「むむ?」

満潮「あのアホ面オヤジよ。平気で艦娘を恫喝・脅迫してくるし、無茶振り甚だしいじゃない。私達の事だって
表沙汰になんて殆どなってないはずなのに、あんな詳細に内容知ってるし…」

長良「……」

漣「そ、それは、まぁ…」

長良「んー、でもなぁ…」

満潮「何よ」

長良「あぁ、これは単純に私の直感?なんだけどさ。司令官って、元はあんなんじゃなかったんじゃないかなーって」

満潮「はぁ?」

長良「ぞんざいな扱いってされて初めて相手の本性に気付く事ってあるじゃん。私は、前の鎮守府がそうだった────」



別に初めから反目してた訳じゃないんだよ。

ただ、私はこうした方が良いって、司令官に何度も言ったの。

けど、司令官の言葉は私の提案の全てを否定する言葉だったんだよね。

そんなの実際に出来る訳がない。

超人でもなきゃ無理に決まってる。

秘書艦でもない艦娘のクセに偉そうに抗弁を垂れるな。

黙って従え。

だから私は私が提案した作戦が出来るって事を示した。

初めて反目した瞬間だった。

けど、私の作戦についてこれる他の艦娘がいなかった。

結局、私は単独先行しすぎて後方に取り残された他の面子が大打撃。

その結果だけを見て司令官はそら見た事かと更に私への非難を集中させて、気付けば私はここにいたって訳さ。

長良アホじゃん
完全に提督が正しい



漣「メシマズなお話です…」

満潮「…………」

長良「その時の司令官の目、他の艦娘が私を蔑むように向けてきた視線。あれは正直キツかったなぁ…でもね、
だからかな…今の司令官、確かに言葉は悪いし直に怒鳴るし、何かといちゃもん付けてくるけど、本音じゃない
って直感的に解っちゃうんだよね。きっと、心根は優しい人なんだろうなって…あっ、こ、これは司令官には
絶対内緒だからね!?絶対ドヤされるから!」

満潮「……私はさ、あのアホ面オヤジも言ってたけど、濡れ衣なのよ」

漣「みっちゃん?」

満潮「普段からやりたい放題やってたツケが回ってきたのかなって思って、その時は諦めもあった。今思えば
胸糞悪すぎて暴れ回りたいくらいだけど…でも、その時は『あぁ、これで私の人生も終了か』って感じでしかなかった」

漣「い、言えば良かったんじゃ…」

満潮「ふふ、言ってどうなるのよ。私は大破した仲間から敵の注意を逸らす為に前に出たんです。だけどこっちに
敵は注意を注がず、大破した味方に集中砲火を浴びせてきてどうにもならずに撤退したんです。だから私は一つも
間違っていません。寧ろ褒めて下さい。とでも言えっての?」

漣「あ、えっと…」

満潮「…ごめん。あんたに当たったってお門違いよね。実際、弁解なんてあってないようなものだったわ。だって
濡れ衣着せてきたのはその鎮守府の秘書艦だった奴よ。そこの司令官が最も信頼を寄せる艦娘の言葉と、普段から
問題行動が絶えない面倒ごとを抱える艦娘の言葉じゃ、どっちを信じるかなんて火を見るより明らかでしょ」

長良「…だから、満潮は司令官が怖いの?また、いつ裏切られるか解らないから?」

満潮「あんたはその直感だかであのアホ面オヤジの事信じてんでしょ。けど私はそんなのない。私はまだ、あの男を
信じれるだけの準備がない。それ所か、疑ってすらいる…」

漣「それで、良いじゃないかなって、私は思いますよ!」


満潮「…はぁ?」

漣「疑っておけばいいんですよ。気の済むまで疑って、疑い尽くして、疑う部分がなくなるまで、徹底的に疑いまくって
やればいいじゃないですか」

満潮「な、何よそれ…」

漣「私は、こういう性格ですから…初めこそ、いじられ役と言うか、そういうポジションに収まってはいました。
でも、日が経つに連れて、周りは馴れ合い始めて、距離を置く人も増えてきて、気付けば孤立してました。
仕方ないですよね、だって…本音とか建前とか、使い分けるの難しいじゃないですか。だからいっその事、私は
建前だけで、本音を隠すように、なりました…」

長良「漣…」

漣「提督をご主人様、なんて呼ぶのもそうです。建前なんです。そうやって他人と違う事をして気を引く振りだけして
本音は隠す。振りだけで、そうする事で、自分から壁を作って、こっちにこないでってオーラ出すんです。
ふふっ、おかしいですよねぇ…そうしてる内に、気付けば周りとは連携は愚かコミュニケーションすら取れなくなって、
思った事とは別の事を口走ってたり、はぐらかしたり、まぁ…思い返すとただただ黒歴史ですねぇ…」

満潮「…まぁ、頭じゃ解ってるのよね。疑問はあるし、疑わしいとも思うけど、信じてみたいって…」

長良「ん…」

漣「ですねぇ…」

長良「まぁ、さ…がんばろ!私達の事、少なくとも本気で解ってくれてるのってここの皆と司令官じゃん?
だったらさ、私達艦娘がする事は一つだよ。勝って勝って勝ちまくる!勝利!勝利!大勝利!ふふっ、良い響き
だよね、勝利ってさ!」

満潮「ほんと、あんたお気楽よね」

長良「えへへ~、まぁそれが取り得?くよくよしてても始まらないからね!」

漣「っと…そろそろ、問題の場所ですよー」

長良「この辺りは、確かカレー洋だね」


満潮「えーっと、通信、通信…」ガチャ…


プルルルルル……プルルルルル……


鳥海『こちら鳥海です』

満潮「あ、満潮よ。目的海域付近へ現着。周辺に目視できる影は無し。そっちの水偵達はどう?」

加賀『加賀です。艦載機のみなさんからの報告はまだありませんがもうそろそろで連絡が来る予定です』

鳥海『付近に点在する岩礁を利用して上手く身を潜めてて下さいね』

加賀『…きました。艦隊、陣形は単縦陣。ですが、これは……』

満潮「な、何よ?」

加賀『空母、戦艦、重巡クラスの艦娘が一人としていません。水雷戦隊です。数は…四隻』

長良「す、水雷って…え、しかもたったの四隻!?だってこの海域って…!」

鳥海『索敵も無しに進軍…?一体何を考えて…』

加賀『…この艦隊は、資材調達班、もしくは艦隊戦力調整班でしょう』

満潮「資材…」

漣「…調達?」

加賀『特定の海域には資材が備蓄された場所があります。それらを調達する為、速力の優れる水雷戦隊で確保に
向かう事が間々有るそうです』

長良「艦隊戦力の方は?」

加賀『文字通りの意味です。錬度を上げるべく、より実戦形式に準じた戦闘を展開する事で演習よりも更に
濃密な経験を経る事で艦娘の錬度を向上させようとするのが目的でしょう』

鳥海『カレー洋周辺には幾つか鉱山地区が点在しています。鋼材の採取には打って付かもしれません』

満潮「彼女達の前方に敵影…」

鳥海『私達は引き続きこのままこの距離で監視に務めるわ。三人はそこから生の情報を採取して下さい』

長良「はーい、任せちゃってー!」

区切りいいので本日はここまで

乙です

体調まだ悪いっぽい?お大事にね

なんか黒空みたいだなー

提督ってなんか黒空みたいだなー

皆様こんばんは


>>164
ご心配ありがとうございます
絶賛、風邪引きです
治り掛けてはいますが、油断してるとまたぶり返しそうです

>>166
黒空と言うのが何かちょっと解りません(´・ω・`)
無知で申し訳ない

-ハズレ-

それぞれの鎮守府にはそれぞれの決まりがある。

往々にしてそれは各鎮守府で定められた独自の決まりだ。

例えば料理当番は第一艦隊から週毎に順繰りに皆で作る。

鎮守府の掃除は第二艦隊から週毎に順繰りにする。

特定の秘書艦を設けず、月毎などで秘書艦を交代で皆で行う。

様々な決まりが各々の鎮守府には存在する。


・この鎮守府に着任したのなら、俺の命令には絶対に従え。

・従わないならその場で解体処分にする。

・逃げ出そうとした奴は問答無用で解体処分にする。

・大本営へ密告しようとする者、した者は特別念入りに拷問を加えた上で解体処分とする。


これが、その鎮守府での決まりだ。

逆らった者は一人として生きては帰れない。

鎮守府と言う鍍金で覆われた人の皮を被った怪物の住まう牢獄。

提督と言う王が君臨し、絶対王政の布かれたその牢獄では艦娘に自由など存在しない。




??「……全艦突撃。生きて、帰るよ。生きて……」


長良「うーん、ここからじゃ艦娘の種別までは解らないかぁ…」

漣「もう少し近付けば解りそうですけどね~」

満潮「…っていうか、なんかあれ、変じゃない?」

長良「うん?」

漣「隊列は別に乱れてないし、普通じゃない?」

満潮「開戦して間も無く突貫に等しい総攻撃って…艦隊決戦でもあるまいし、やっぱ変よ!」

長良「……左舷と右舷の確認もしてない。隊列こそ乱れてないけど、確かに異常かも……あっ」


ボゴオオォォォォォン ボゴオオォォォォォン ボゴオオォォォォォン


漣「うわぁ~、主砲乱れ撃ち!?大盤振る舞い過ぎじゃないですかねぇ」

満潮「ちょっとちょっと…あれじゃ神風よ。死ぬ気なの?あいつら!」

長良「……」ガチャッ…


プルルルルル……プルルルル……ガチャッ


加賀『何か?』

長良「加賀さん、艦隊指揮してるのって艦載機を通して特長とか解る?」

加賀『…恐らく軽巡クラスです。水雷戦隊の旗艦でしょう。身形は……両腕に主砲、白のセーラー襟元が水浅葱色、
スカートも同じ水浅葱色ですね。ショートヘアーの茜色の髪の毛をした艦娘です』

長良「…ありがとう」

満潮「長良、どうかした?」

長良「多分、このままだとあの艦隊は全滅するよね」

漣「隊列だけで連携からっきしですからねぇ…」

満潮「まぁ、もって後数分じゃないかしら。どこかで撤退行動取らないと、本当に全滅するわよ、あれ」

長良「ごめん、自分事で…」

満潮「え?」

長良「多分…ううん、あの艦隊の旗艦、きっと私の妹なんだ…」

漣「え、ちょ…ガチですか、それ…」

満潮「あんた、まさか…」

長良「ごめんね!」ザッ



言うや否や、長良は脱兎の如く駆け出す。

聳える岩礁の合間を縫って、その距離はどんどん縮まっていく。

そしてついに、長良は艦娘達の前に立ち塞がる。


ザザザッ……


??「……え?」

長良「大事な妹こんなにされて、怒らないお姉ちゃんはいないよ!」

??「なが、ら…お姉ちゃん?」


満潮「あの、バカ…!」

漣「深海棲艦の勢力の方が上だよね。助けに行くしかないよ!フラグシップクラスが少なくとも一匹は居る!」

満潮「加賀、鳥海、聞いたとおりよ。長良が先行した。旗艦を努めてる艦娘がどうやら自分の妹らしくて、
我忘れたって感じ」

加賀『致し方ありません。援護しますので、安全海域までの離脱を試みて下さい』

鳥海『長良に先の艦隊の先導を任せ、私達と満潮達四人で深海棲艦の注意を引き付けます』

漣「キタコレ!駆逐艦漣、出るっ!」ザッ

満潮「ったく、アニメの見過ぎよ!まっ、砲雷撃戦なら、私が出なきゃ話にならないじゃない!満潮、出るわ」ザッ


加賀「未だにあれほどの戦力を揃えられる深海棲艦側は、一体どれだけの戦力を温存させているのかしら」

鳥海「それでも、鬼や姫、レ級って言われてる怪物軍団が新たに台頭してないだけまだマシじゃないかしら」

加賀「それこそ不安材料です。まだ、台頭してきていないと言うだけで、水面下では虎視眈々と反撃の機会を
伺っているのかもしれませんから」

鳥海「なるほど、三度目の正直から転じて二度ある事は三度ある、って感じかしらね」

加賀「何はともあれ、まずは眼前の敵を殲滅しましょう」

鳥海「ええ、そうね」


突然の出来事に呆然とする艦娘達、そして虚を衝かれたのか長良の登場に動きを止める深海棲艦。

長良は先頭に立って奮戦していた艦娘を改めて確認し、その表情を見る見る曇らせた。

一緒に走るのが好きで、天真爛漫を絵に描いたような快活な艦娘だったはずだ。

それがどうだ。

やつれた様に覇気の無い顔、疲労の蓄積が如実に伝わってくる程に疲弊しきった身形。

こんな状態で戦闘など誰がどう見ても無理に決まっている。



長良「鬼怒…」


何とか絞り出した声は掠れてしまった。

ショックと信じ難いその光景に、ただただ長良は歯を食い縛って目の前に広がる現実に耐えるしかなかった。


満潮「長良っ!」

漣「撤退行動急いでなのです!」

長良「…っ!鬼怒、急いで撤退するよ!他の皆も、急いで!」

鬼怒「でも…」

長良「でもじゃない!いくの!」グイッ

鬼怒「あっ…」

長良「ごめん、二人とも。ありがとう!」ザッ

満潮「さて、と…」

漣「いっちょやってみっかぁ~!ですね!」

鳥海「お待たせ!」

加賀「機先を制します」ググッ…


遅れて到着した加賀達。

それと同時に加賀は瞬時に状況を把握し、弓に矢を番えて構える。

鳥海は深海棲艦艦隊を見て種別、隊列を即座に把握、三人へ口頭で通達する。


鳥海「旗艦は重巡リ級FS、随艦には雷巡チ級ELが二隻、軽巡ト級EL、駆逐ニ級ELが二隻、計六隻!単縦陣よ!」

加賀「鎧袖一触よ。心配いらないわ」ビュッ


鳥海の敵情観察が終わると同時に加賀の弓から矢が放たれる。

その後を追うようにして、一拍遅れて満潮と漣が同時に動き出した。


満潮「奥まで一気に駆け抜ける!」

漣「任せてちょーだい!」

リ級FS「クチクカン、フゼイガ…!」ドン ドン

満潮「風情風情ってウザイのよッ!!」サッ

ボボボボンッ


満潮「あんたの相手は別よ。精々苦しみなさい!」

チ級EL1「ドコヘ、イクキダ!」ドン ドン

漣「キタコレ!」サッ


ボボボボボン


チ級EL1「ナッ……!」

漣「ふっふ~ん。当たらなければどうという事はない!」

満潮「漣!」

漣「ほいさっさ~♪」


バッ…


満潮の号令で二人が同時に左右に分かれる。

それを待っていたかのように矢から変化した加賀の艦載機達の一斉爆撃が開始される。


ボオオォォォン

ボゴオオォォォォン

ボボボボボオオォォォォン


開幕の一撃で雷巡チ級EL2と駆逐ニ級EL2の二匹を同時に葬り去り、更に追撃の姿勢を見せる。

爆撃を確認後、鳥海も動き出す。


鳥海「満潮、漣、奥は任せるわね!」

満潮「当然!」

漣「お~まかせ~!」

鳥海「さぁ、それじゃ私も行きましょうか!やるわよー!」ザッ

加賀「第二次攻撃の要を確認。目標捕捉しました」スッ…

鳥海「次の発艦まで凡そ二十秒…」ボソッ…

チ級EL1「チッ…ナニヲ、ブツブツイッテイル!」ジャキッ

鳥海「さぁ、何かしらね?」クスッ…


鳥海は右手で主砲を構え、左手に魚雷をむき出しのまま数本指に挟むようにして構える。

その魚雷を海面には投げ込まず、真っ直ぐにチ級EL1へ向かって投擲する。


ブンッ…


チ級EL1「ナッ…!?」


突然の行動に虚を衝かれたチ級EL1は一瞬、動きが止まる。

そしてその動きはそのまま命取りとなる。


鳥海「エリートだろうとフラグシップだろうと、そんなの何の役にも立たないわ」

チ級EL1「ナンダト…!」

鳥海「私の戦術用法の前では、全てが無よ!」ジャキッ



ドン ドン


構えた主砲を投擲した魚雷目掛けて放ち、それは見事魚雷へ命中するとチ級EL1の眼前で大爆発を起こす。


ボゴオオォォォォォン


チ級EL1「ガッ…!」 小破

リ級FS「コレイジョウ、スキカッテサセルカ!」サッ

鳥海「分別を弁えないのね。まだ抗うのには何か理由でもあるのかしら。深海棲艦、その全てが今では敵とは
認識されていない中で、あなた達のように抗う存在がいるのがとても不思議でならないわ」

リ級FS「ダマレッ!ワレラノ、コンゲン…ソノイチブブンサエモ、シラナイカンムスフゼイガッ!!」

鳥海「根源、ですって…?」

リ級FS「オシエルギリナド、ナイ…カンムスハ、スベテ、ミナゾコヘシズメッ!!」ジャキッ

鳥海「そう、それは残念…時間だものね」スッ…


そう呟いて鳥海は一歩横に静かにずれる。

その後方には、既に矢を射抜き終わり、残心のみを残した加賀がいた。


鳥海「二十秒…それがあなた達に与えられた制限時間。律儀に密集してくれたのも、何かの縁かしらね?」

リ級FS「ナッ……!」

チ級EL1「ナ、ニ…!」

加賀「みんな優秀な子たちですから。狙いは外しません」スッ…


言いながら加賀は静かに弓を持たない右腕を真っ直ぐに振り上げる。

真っ直ぐに伸ばされた腕は一瞬制止し、また静かに今度は重巡リ級FS達を指し示すようにして振り下ろされる。


加賀「強襲です。敵機直上より急降下。薙ぎ払って下さい」サッ


加賀の放った艦載機の描く軌跡は赤城の得意とする戦法の一つ。

天高く放った艦載機が遥か上空より一斉に急降下し、艦爆と艦攻を一気に仕掛ける波状の一撃。

一矢で脅威の艦載数を放てる赤城と加賀だからこそ成せる芸術に等しいその攻撃手法。

声無き声が重巡リ級FSと雷巡チ級EL1の喉元から出るよりも早く、光の矢の如き攻撃が一斉に降り注ぐ。


ボゴオオォォォン

ボゴオオォォォン

ボゴオオォォォン


断続的に響く爆発音。

それだけで重巡リ級FSと雷巡チ級EL1が既に轟沈しているのが理解できてしまう。

それほどまでに苛烈を極める一極集中放火。

炎の海と化したその中を、悠然と加賀は歩く。

これほどの戦果を上げて尚、加賀は再びゆっくりと矢筒から矢を抜き放ち弓に番える。



加賀「上空の目を司ります。鳥海さんは先行した満潮と漣の援護へ」スッ…ビュッ…

鳥海「了解よ」ザッ



時間は僅かに遡る。

左右に分かれた満潮と漣、二人の狙いは軽巡ト級ELと駆逐ニ級EL。


ト級EL「キサマラァ…ッ!」ザッ

満潮「くるの?この先へ…」


軽巡ト級ELと距離を置いて対峙する満潮は腕を組んで仁王立ちの構えで不敵に笑う。

幾多の戦場を越えて生き延びた満潮だからこそ笑えるその状況。

彼女には勝利できるという強い確信と己の腕を信頼するだけの器がある。

だからこそ自分よりも火力、装甲、耐久と体格や強さで上回る相手にも臆す事無く立ち向かえる。


ト級EL「ワケノ、ワカラナイコトヲ…!」

満潮「訳が解らないって?ふふっ、なら教えて上げる」スッ…


満潮は丁度二人の対峙する間を指差して告げた。


満潮「その先にあるのは地獄よ。そこからこちら側へくるって言うのは、地獄に足を踏み入れるって事。
大人しく深海の奥底で隠居してた方が良かったって想いを馳せるほどにね」


ト級EL「ザレゴトヲ、ホザクナッ!」バッ


満潮の言葉に激昂し、軽巡ト級ELが満潮へ恐ろしい速度で駆け寄る。

しかし満潮自身は慌てる様子も見せず組んでいた腕を解いて姿勢を自然体に戻しただけだった。


ト級EL「タタカウキガ、ナイノナラ…ソノママ、シネッ!!」ギュオッ


軽巡ト級ELの無数の顎が伸び上がり、満潮に襲い掛かる。

捕まればまず間違いなく捕食されるほどの、満潮と比べればおぞましい程にアドバンテージのある巨躯と艤装の数々。

だが満潮は薄っすらと笑みを浮かべただけでその突撃を横に移動して回避する。


バシャアアァァァァン


大粒の水飛沫が上がり、周囲の景色が海水のカーテンで一瞬閉ざされる。

そこから距離を置いたところで、満潮は腰を落とし、両手の指先数本を海面に添え、宛ら陸上のクラウチングスタートの

様な格好で軽巡ト級ELを睨み付ける。



満潮「あんたさ、空…飛んだ事ってある?厳密には飛ぶんじゃなくて、舞い上がる、だけどね」

ト級EL「チッ…ネゴトガスギルッ!」ジャキッ

満潮「そう、寝言ね。私も最初はそう思ってたのよ。けどね、ある戦艦クラスの艦娘はそれを成すのよ」

ト級EL「ナニ…?」

満潮「それを知った時、私は感動したわ。それと同時に、私はまだまだねって思った。だから私は誰にも負けない
最強の駆逐艦になるって決めたの」ザゥッ


海面を蹴り出す音。

それは海面に打ち付ける水飛沫の音とは到底違う、異質な音。

蹴り出され吹き散らされた水面は満潮の後方に飛沫を飛ばし、本人は凄まじい勢いで軽巡ト級ELへと迫る。


満潮「戦艦に出来て…」ヒュッ


ガッ


ト級EL「グッ…!」

満潮「私に出来ないはずがないッ!」ダンッ


低い姿勢から前のめりに満潮は身体を丸めて片足を軽巡ト級ELへ向けて伸ばす。

浴びせ蹴りの要領で軽巡ト級ELの艤装に踵を落とし、そこを足掛かりとして一気に今度は曲げていた膝を伸ばし、

バネの様にしてありったけの力を込めて真下へと放つ。

重力に逆らい、下へと込めた力は軽巡ト級ELの艤装を踏み台として反発し、満潮の身体を上空へと舞い上げた。


ブワッ……


ト級EL「グァ……!バ、バカナ…ッ!」

満潮「あはっ、何これ、最っ高に気持ち良いじゃないのよ!」ジャキッ

ト級EL「オノレェ…!」ジャキッ

満潮「上空から降り注ぐのが艦爆艦攻だけじゃないのは、ある意味恐怖よね」

ト級EL「ダマレ、クチクカンフゼイガッ!!」

満潮「バカね。その駆逐艦風情にも勝てないあんたは何様よ。目に物を見せてやるわ!」ドン ドン


ボゴオオォォォォン


ト級EL「ガハッ……!」 大破


ザバァァン


満潮「沈みなさい、あなたの大好きな水底にね」ドン ドン


ボゴオオォォォォォン


着地と同時によろけている軽巡ト級ELにトドメの一撃を放ち、満潮は周囲を警戒する。

そして向けた視線の先には漣の姿。

今回はここまで

おつでち


今思うとあの艤装背負って空中戦する榛名ってかなりヤバかったんだなww

結局提督のキャラは誰をモチーフに書いてるんです?

>>179
ageんなカス

皆様こんばんは
少しだけ更新


>>178
そうですね
あの艤装を纏って飛んだり跳ねたりする榛名はまさにぶっ飛んでたと思います

>>179
性格やなんかを参考にさせてもらってるのは『ST赤と白の捜査ファイル』に登場する
『赤城左門』です
常に俺様な性格で上から目線と手が付けられないって感じのキャラです
無論それだけではありませんが、最も影響を受けているというのが上記になります




漣「はぁ、みっちゃんがト級ELへ行っちゃったから、私が残りものってコトですよねぇ」

ニ級EL「キキッ……!」

漣「しかも人語喋らないじゃないですかー!ちょーちょーはっしのやり取り皆無じゃないですかー!
もぅ、こうなったら徹底的にやっちまうのねっ!」チャキッ

ニ級EL「ギッ……!」ジャキッ

漣「かかってこい!」


ドン ドン


ボゴオオォォォン


駆逐ニ級ELから放たれた砲撃は漣の脇を通り抜けて後方で爆発を起こす。

その様子に駆逐ニ級ELだけが訝しむように疑問の声を上げる。

何故外れたのか。

狙いは定めたはずだ。

それなのに両脇を綺麗に通過して外れた。

ただ一人、漣だけが不敵に笑っていた。


漣「これが、漣の本気なのです!」

ニ級EL「ギギ……ッ」

漣「何言ってるか解りませんよぉ。まっ、これで終わりですからどうでもいいですけどねぇ」ジャキッ


手にする主砲を構え直した漣の目つきが変わる。

彼女の性格を大袈裟に例えるならまさに二面性のあるジキルとハイド。

普段はおちゃらけて場を和ませたりトラブルを引き起こす問題児だが、事戦闘に関しては違う。

満潮が好戦的な力と速さで相手を捻じ伏せる肉食獣だとするなら、漣は周囲の状況を一瞬で判断して

その状況を有利に扱い相手を捕食する肉食獣。

満潮に漣、どちらにせよ草食動物のような皮を被った獰猛な生き物達という事だ。

一度ロックオンされてしまえば逃れる術は無い。

だから────


バッ


駆逐ニ級ELは状況を不利と判断して転進、一途逃げに転じるがその判断自体が既に勝敗を決していた。

薄っすらと口元を緩めて笑う漣は一歩二歩と歩き出し、徐々に駆けるモーションへと変わっていく。


漣「敵前逃亡だなんて、いつかのご主人様じゃあるまいし往生際が悪すぎです」スッ…


逃げる駆逐ニ級EL、その背に照準を合わせながらも漣の走る速度は変わらない。

左へ右へ、ユラユラと揺れる照準が射線を固定されてピタリと止まる。



漣「逃げられないよ!漣はしつこいからっ!!そこなのねっ!」ドン ドン


ボゴオオオォォォォォン


僅か一撃、逃げに回って完全に無防備だったとは言え、その背中を完璧に捕らえる射撃センスとブレない照準。

これが漣の本気。

ハズレ鎮守府。

通常の規格には到底納まらない。

そんなはみ出し者(ハズレ)達が集った結果、バラバラだったピースが揃うように、五人の連携はこれまでの

どの艦隊よりも優れた連携と戦力を見せた。

-光明-

鳥海「流石と言うか、何と言うか、援護に向かうまでも無かったみたいね」

満潮「当然じゃない。多対一でもない限り遅れなんて取らないわ!」

漣「私は少し物足りなかったですけどぉ」

加賀「残存戦力の確認はありません。長良との合流を果たしましょう」


長良「皆、ごめん…ありがと」

加賀「何を謝っているのか解りません」

鳥海「ただ仲間を助けた、それだけでしょう?」

満潮「細かすぎ。そんなので一々ごめんとかありがとうとか要らないでしょ」

漣「出ました、みっちゃんのツンツン節!」

満潮「あんたねぇ…!」

漣「あははっ、はいはい~!もう言わないですよぅ!」

鬼怒「…………」

長良「あっ…鬼怒、もう大丈夫だからね」

加賀「…これで全てですか」

鬼怒「…ぇ?」

加賀「抜錨していた面子の話です。四名しか、居ないように見えますが」

鬼怒「間違い、ないよ。四人だけ…」

鳥海「この海域に四人だけって…正規空母は愚か軽空母も居ないじゃない」

長良「しかも、鬼怒達の兵装と体調は最低に等しいよ」

鳥海「…どうしますか。西鎮守府へ戻るというなら、そこまで随行して送り届けますが」

鬼怒「……ッ!」

艦娘1「いや…ヤダ、あそこにはもう、戻りたくない…!」

艦娘2「お願い、助けて…」

艦娘3「あそこは、地獄よ…」

満潮「え、ちょ、ちょっと…この怯えっぷり尋常じゃなくない?」

漣「ガチ、ですねぇ…」

加賀「……なら、一度私達の鎮守府へ連れて帰りましょう」

長良「えっ、い…いいの?加賀さん」

加賀「旗艦の権限を以て厳命します。軽巡洋艦鬼怒を初め、残り三名の艦娘を護衛退避させます。
帰路での第二、第三の襲撃を想定し陣形は輪形陣。彼女達を中央に配置し、私達五名で周りを警護します」

鳥海「解りました」

長良「ありがとう!」

満潮「はぁ、それじゃさっさと戻りましょ」




加賀「────経緯は以上です」

提督「上々じゃねぇか」

加賀「…不本意ですが、あなたの思惑通りと言った所かしら」

提督「けっ、一々茶化すんじゃぇよ。結果論だが長良の姉妹艦を救出できたのはてめぇ等的にも僥倖だろうが」

加賀「…別の話題ですが、入渠ドックを合計で四つも揃えたのはどういう事です?」

提督「さぁな。上の命令だから俺の与り知る所じゃないね」

加賀「結果的に鬼怒たちを療養させるに至りましたが、腑に落ちませんね」

提督「ったくうるせぇ野郎だな、お前は…」

鳥海「お言葉ですが、提督が事前に心配して用意してくれていた、という風にしか見られないのですか?」

加賀「言葉を返すようだけれど、私は性別上女ですから野郎と言われても該当しないと思うのだけれど」

提督「うるっせぇ!ったく、ああ言えばこう言う。ホントうぜぇなおめぇ等は!」

満潮「そうやってすーぐ怒鳴る。あーやだやだ」

提督「けっ」

漣「長良さんは今とっても落ち込んでるんですから、ご主人様も言動にだけは気をつけて下さいよ~」

提督「はぁ?元はてめぇのミスでやらかしたおとぼけ女だろうが。それくらいで凹んだからってどーだってんだ」

満潮「ちょっと、それは言いすぎじゃ…!」

提督「バカかてめぇ等は!?いいか、あいつのどんな話を聞いて同情したのか知らんが、元を正せば悪いのは奴だ。
それは何物にも変え難い事実だ。実際、あいつの単独先行が起こしたミスで艦隊は大打撃を受けた。もしもそこで、
周りと同調して行動していれば被害は最小限で済んだはずだ。奴はここに来るべくして来た存在って事だ」

漣「だ、だからって何もそんな言い方しなくても…」

提督「じゃあ優しくすればいいのか。お前は間違ってない。運が悪かっただけだ。次がある、大丈夫だ。心配するな。
失敗したら取り戻せばいい。前だけ向いて突き進め。そうやって悔いずに生きるのか」

加賀「…………」

提督「いい機会だからてめぇ等も覚えておけ」



間違ってたから艦隊は大打撃を受けたんだ。

全体を見て周りをもっと見ていれば良かっただけの話だ。

運の所為じゃねぇのは明白だろうが。

たまたま生き残っただけで次があったのはただの偶然だ。

それこそ運が良かっただけだ。

そもそも心配するような状況だったならこんなアホな失敗なんざしやしねぇんだよダァホ。

失敗したら取り戻せばいい?

冗談じゃない。

死んだ奴にしてみればその時点で終わりだろうが。

やり直し所の話じゃねぇ、失敗したら終わりなんだよ。

失敗ってのは『死』と同義だろうが。

特にてめぇ等にしてみればその意味は誰よりも解ってるはずだよなぁ?

戻ってこれた連中はただ運が良かっただけで最初に言った事に直結する。

……いいか、次はねぇんだよ。

そんなのは運良く残った奴の戯言だ。

反省点山盛りの状態でそれらを無視して前だけ向いて突き進むか?

だったら今度こそ取り返しの付かないミスをしてご臨終だな。

今回もそうだ。

感情に任せて突っ走った結果、たまたま運良く生き残っただけで過去の汚点、その改善は愚か失敗の教訓が何も

なされていない、アホ丸出しの行動だ。


提督「いいか、てめぇ等がここにきたのは来るべくして来たって事を肝に銘じろ。じゃなきゃ今度こそ死ぬぞ。
解ったら失せろ。それと長良にここに来るようにだけ伝えておけ」

加賀「…解りました。失礼します」ペコリ




コンコン…


提督「はいれ」


ガチャ…


長良「失礼します」

提督「おう、任務ご苦労」

長良「あの、鬼怒達は…」

提督「ちっ、わぁってるよ。依頼主は海軍のトップ、元帥だ。その元帥に報告する訳だから、揉み消されようもの
なら、それはもう海軍全てが腐ってるって事だ。だからてめぇはそうならねぇ事を勝手に祈ってろ」

長良「そ、そうじゃなくて!ここに、置くの?」

提督「わりぃがそれはねぇ」

長良「そ、そっか。そうだよね」

提督「…ったく、辛気臭ぇツラしてんじゃねぇ!」

長良「」ビクッ

提督「いいか、てめぇ等がどれ程の事を成したか、バカでアホで畜生のようなツラしてるてめぇにも解るように
俺様が今から懇切丁寧に教えてやる」



それはハイエナの悪行、その証拠の一端を手中に収めた事だ。これは収益と言う意味で最もポイントが高ぇものだ。

なんせあの小娘共は生の情報を持ってる生き証人だ。

今回のてめぇ等の任務はハイエナの悪行を暴く事であって野郎の殲滅なんかじゃねぇ。

その作戦の中で結果として救ったのがあの四人だ。

でもって、救った中にたまたまてめぇの妹が居た。

ただそれだけだ。それ以上でもそれ以下でもねぇ理由だろ。

あいつ等が戻らねぇ事でハイエナの野郎も血管の一本や二本はブチ切れるだろうよ。

そうなりゃ更にボロが出る。

人間ってのは頭に血が上るとどうにも正常な判断、冷静な判断が出来なくなる生き物だ。

それを逆手に取る訳だ。

これはひっっっじょうに面白い状況と言える。

じ・つ・に、面白い状況だ。

この結果を導いたてめぇ等には褒美の一つでもやりたい所だが生憎と俺様にはそんな資産がないもんでな。

報告をもらった時点で仕方ねぇから入渠ドックを増設して待ってやってた訳だ。


長良「……ぇ?」

提督「解ったら大好きな妹の所にでもいって泣きべそかきながら回復するのを待ってろ。
俺は優しい言葉、慰めの言葉ってのが大嫌いなんだよ。腹の足しにもならねぇそんな言葉を待ってるんだったら、
そらお門違いってもんだ。それと、今回は結果的にいい方向へ向いたからそれ以上は余り言わねぇが…」

長良「え…?」

提督「これは命令だ。二度と勝手な行動を取るな。前の鎮守府での教訓を生かせ。勝手に忘れて殺すな」

長良「ぁ……」

提督「お前が正しいと思っていても、それが全体の正解じゃないのはお前が一番解ってると思ってたんだがなぁ。
同じ過ちを短期間で二度も犯す辺り、お前は反省もしてなけりゃ命の重さも理解して無いらしい。そんな奴の面倒を
俺は二度と見る気は無い。去ってくれて結構だ。それが嫌なら成長しろ。話は以上だ、反論は認めん。解ったらさっさと失せろ」

長良「……司令官」ゴシゴシ…

提督「んだよ。反論は認めねぇって……」

長良「ごめんなさい。それと、ありがと!」ダッ


ガチャ……パタン……


提督「……ちっ、んだよあれぁ……ぜってぇ反省してねぇだろうがくそが!ったく、割に合わねぇ仕事ばっかだぜ。
回復した小娘共から情報仕入れなきゃまさに無駄賃払っただけになっちまう…」



奇しくも西の提督、ハイエナの下で使役されていたのは長良の妹、鬼怒だった。

都合良く、彼女の危機を救出した長良達だが、これが後に導火線の火の勢いを加速させる事になる。

書き溜め分のみの投下
本日は以上、ここまで

乙です
ハイエナ鎮守府から艦娘抜いて空にでもするのかな?

乙です

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします




~悪童~



-罠-

────ふふっ、そう…それは災難だったね。そうだよ、好き放題やりすぎた結果が北の提督だよ。

僕は最初から計画性を重視して行動するように促していたのに、簡単な挑発に乗ってノコノコと罠に嵌ったんだ。

助けないのかって?君は壊れて使えなくなった物を、既に新しい別の物があるのにわざわざ修理したりするかい?

その通り…あれは既にゴミさ。残しておいても糞の役にも立たないガラクタだよ。

キメラの彼は……そうだね、彼はまだ忠節心は残ってるはずさ。

君も、今後も今まで通り、怠惰な日々を送りたいなら僕に証明してくれないと。

自らは役に立つ存在なんだって所をさ。

何の為に僕が期間を労してここまで種を蒔いたのか、その意図を少しは汲んでくれないと……殺すよ?

言ってる意味、君なら解るよね?

そう、そうだよ…その通り。

プレゼントはキッチリと渡してあげてるんだ。

特別にSP代わりの頼りになる存在、もうそっちに到着してるだろう?

僕の愛する彼女じゃないよ。

君の下へ派遣したのは言わば妹達、その内の一人さ。

でもね、彼女だって幾多の死線を潜り抜けた歴戦の女神だよ。

だから、次に連絡をくれる時は僕を失望させないでくれよ?



ハイエナ「くそっ、くそっ、くそっ!!何なんだよ、なんで俺があいつにここまで言われなきゃならない!」

ハイエナ「……提督、大佐……あいつ、死んだんじゃなかったのかよ……なんだよ。どうして、生きてる…」

ハイエナ「この事をあいつ等は知ってるのか?はぁ、もうど~でもいいや、知ってようと知ってまいと……」

ハイエナ「俺の、邪魔をしてさぁ…なんだよ。折角、気分良く過ごしてたのにさぁ…イラつくなぁ」

ハイエナ「ねぇ……あのゴミ共、まだ見つからないワケ~?」

秘書艦「…申し訳ございません。現在、動ける艦娘全てを動員して周辺海域の捜索に当たらせています」

ハイエナ「解ってると思うけど~、見つけ次第、手足壊した上で俺の所に運んできてね~」

秘書艦「……心得ています」

ハイエナ「解ってるならオッケ~、いいよ、下がって」

秘書艦「では、失礼致します」ペコリ…


ガチャ……パタン……


ハイエナ「…で、君は俺にどんな益をもたらしてくれるのさ?」

??「…そのまま椅子に座ってるだけでいいわよ。二日…遅くとも三日以内にはお目当ての生首、ぜ~んぶ揃えて
持ってきてあげるから」

ハイエナ「生首のコレクション趣味とかないけど~、まぁ的当ての的にするくらいならいっかなぁ…」

??「まぁ、好きにすればいいんじゃないかしら。アタシにはその後の事なんてどーだっていいもの」

ハイエナ「うん~、じゃあここで待たせてもらうわ~」




-動きあり-

??「まさかこんな辺境地にまで足を運ぶ羽目になるなんてね」

??「致し方ありません。それが私達の主任務なのですから」

??「厭らしい目で見てくる奴等を相手にするよりかは幾分マシだ」

??「ふふっ、まぁ大本営からの勅命だもの。選り好み出来る立場じゃないんだから、そこは仕方ないわね」

提督「ったく、御託はいいからさっさと仕事片付けてくれませんかねぇ。優秀な優秀なそれはもうご立派な立場に
在らせられるお三方様」

??「言葉を慎みなさい」

??「提督と言う立場なのですから、そこは言葉を選んで口にしては如何ですか?」

??「この男は元からこうだ。今更何を言った所で反対側にまでベクトルが傾く事は無いだろう」

提督「はぁやれやれ、これだから元帥直属の方々は…」

??「勘違いしないで頂戴。私達は大本営直営部隊よ」

提督「俺等にしてみりゃ五十歩百歩、目糞鼻糞、同じ穴の狢だ。文言変えたからって在り方が変わる訳でもあるまい?」

??「口だけは達者なようね」

提督「いえいえ、雲龍殿には敵いませんよ」

雲龍「減らず口を…妙高、磯風、四人の状態を確認してから大本営へ護衛しつつ向かうわよ」

妙高「畏まりました」

磯風「異論は無い」

提督「」(陸軍の憲兵よりも更に上の権限を持つ、海上の護衛艦隊か。たった三人、だが実力は優に聨合艦隊に
匹敵するってんだから大したもんだぜ…)チラッ…

雲龍「…何か?」

提督「いいえ、別に。随分と厳重な事で」

雲龍「それが大本営からの勅命です。それと共に、元帥の意向でもあります。彼女達は今回の一件の被害者。
その真偽を確認する為にも、横槍で彼女達を失う訳にはいかないというのが本音です」

提督「ハイエナを炙り出す為の貴重な餌って訳か」

妙高「言葉を選んで口にするべきです。と、申し上げたばかりですが?雲龍さんが申し上げたとおり、彼女達は
被害者なんです。その彼女達を西提督の前に差し出すような、危険な立ち位置へ置く訳には参りません」

磯風「現時点では決定的な証拠に欠ける。状況証拠のみでは西提督を大本営へ強制出頭させるだけの材料が揃わない」

雲龍「だからこそ、彼女達の供述を元にして物的証拠、事例証拠等を精査し、確実に悪事を白日の下に晒す必要があるわ」

提督「なるほどねぇ…で、自分達にとっては不都合になりえる不祥事だけを綺麗に包み隠すと…」

磯風「はぁ、どうしても我等が隠蔽の何某かをしていると言う事にしたいみたいだな」

提督「事実隠してただろうが。そして今もまだ、隠してる」

磯風「……少なくともお前の言葉に確固たる証拠はない」

提督「へっ、そーですか」


鬼怒「すみません、お待たせしました」

長良「鬼怒、本当に大丈夫?」

鬼怒「うん、落ち着いたし、入渠ドックで体調も戻ったしね。ありがとね、お姉ちゃん。長良お姉ちゃんにまた会えて
私本当に嬉しいよ。あの鎮守府じゃ、他の鎮守府の話題とか全く内容入ってこなかったからさ」

長良「そっか。でも、失態を知られるのもなんだかなぁ…」

鬼怒「ふふっ、お姉ちゃんの威厳、なくなっちゃうもんね?」

長良「もうっ」

雲龍「鬼怒、そろそろいいかしら?」

鬼怒「あっ、ごめんなさい!それじゃ、お姉ちゃん。また一緒に走ろうね!」

長良「うんっ!いつでもどこでも、私は待ってるよ!」


ガチャ……ピッ ピッ ピッ……


妙高「…はい。鬼怒以下三名の艦娘、帯同してこれより大本営へ帰還します。道中、襲撃の可能性も考慮の上で
サドバフの出動もして頂いております。念には念を、という事ですね」

提督「」(サドバフ…?)

妙高「通達完了致しました」

磯風「では大本営へ向かおうか」

雲龍「…周辺海域に敵影無し。行くわよ」




加賀「今回の任務はこれで終わりですか?」

提督「ああ、一先ずはな」

加賀「一先ず?」

提督「ハイエナの野郎さ。あいつは元来、自分で動くって事をしねぇヤツだ。だからまずは艦娘を使って周辺海域の
哨戒をさせつつ、鬼怒達の生存確認を急がせるだろうよ。だがあいつ等はてめぇ等が救出してうちへお持ち帰りだ。
いねぇ事にまず間違いなく死んだのではなく、逃げたと勘ぐる。で、遅かれ早かれ俺達の存在に気付く」

加賀「まさか、確信だけで証拠も無しにこちらへ攻撃を仕掛けてくると?」

提督「ああ、ほぼ間違いなくな。北のアホと違って考える頭はあるが如何せん、ハイエナって野郎は怠惰で有名でな。
何かと面倒くさがって行動を起こさない事が多い。だが、一つだけ重い腰を上げる時がある」

加賀「…自分の安寧を邪魔された時、ですか」

提督「ご明察。で、今回がまさにそのパターンだ。恐らく、いや十中八九あの野郎は顔真っ赤にしてくるだろうよ。
そうなりゃ自分から土産ぶら下げてヘコヘコやってくるも同然だ。そこを捕らえて完全にこの件は終了……」ピクッ…


タバコの灰を灰皿へ落とし、提督は薄っすらと笑みを浮かべる。

彼にはその後の顛末が脳裏に明確に、鮮明に浮かび上がっていた。

だが、不意にそれらが霞がかって薄らいでいくのを感じる。

人の持つ五感以外で感性に近いその言い知れない感覚。

研ぎ澄まされた中で不意に来る衝動。

提督の持つ第六感がそのビジョンを薄めて警鐘を鳴らす。

────危険だと。


提督「……加賀、五人全員の艤装整備、入渠チェックは終わってるか」

加賀「…?ええ、問題ないと思うけれど」

提督「自慢じゃないが直感ってものには結構助けられた経緯がある」

加賀「直感?」

提督「俺の場合はな…左頬に引き攣ったようなシビレが訳も無く奔る。取り敢えず全員を作戦室へ集めろ」

加賀「直に集めます」




満潮「いきなり何なわけ?」

漣「も~、折角のお菓子作りタイムが~!」

鳥海「随分と忙しないですね」

長良「何かあったんですか、司令官」

提督「加賀には漠然と話したが、この作戦はまだ第一段階が終わっただけだ。それも俺の想定していたものとは
別の角度で進行した。まぁ、帰結部分が早まった程度だからどうでもいいんだがな」

加賀「完結にお願いしたいのだけれど」

提督「ちっ、うっせぇヤツだなぁ。いいか、ハイエナの野郎は必ず今回の一件、何が起こったのかを突き止める。
で、俺等の存在にも遅かれ早かれ気付く。野郎は必ず報復に動き出す」

満潮「報復って…私達に!?それ、完全な逆恨みじゃん!」

提督「正論が通用しねぇから言ってんだよアホタレ。あいつは自分の益の妨げになるのを最も嫌う。今回のように、
邪魔が入るのはもっと嫌う。で、個人的に野郎は俺の事が嫌いらしい。だから必ず俺様に対しての報復行動を起こす」

漣「げっ…それ、私達ただのとばっちりじゃないですか」

提督「うっせぇ、俺の部下である以上諦めろ」

鳥海「はぁ…」

提督「おいこら、解りやすいため息吐いてんじゃねぇ!」

満潮「っていうか、あんたが画策したってなんで相手に解っちゃってるのよ」

提督「それこそ俺が知りてぇよ。どういうパイプ持ってんのか解らねぇがな…今回のこの嫌な感じは、間違いなく来る」

長良「鬼怒達の事で、来るって事なの?」

提督「だろうな。いいか…不測の事態を想定して動け」

満潮「不測の事態って…まさかここまで攻め込んでくる訳じゃ…」

漣「その、まさかなのです?」

提督「……とにかく、いつでも出られる準備はしてお……」


ザクッ……


長良「……ぇ?」

加賀「……!」

鳥海「し、司令……」

満潮「あ、あぁ……」

漣「ご、ご主人、さま……」

提督「がはっ……!」グラッ…



唐突に響いた鈍い音。

白い提督の制服の左脇腹、その辺りから滲み出るように赤い染みがじんわりと広がっていく。

ゆっくりと前のめりに膝を折り曲げて提督が崩れ落ち、その背後に白い髪、ショートヘアの青白い肌を持った

少女が歪な笑みを浮かべて立っていた。

愕然と立ち尽くす五人を順番に一瞥し、少女は再びニタリと歯を剥き出しにして笑い、顔を上げる。

その両の瞳は真紅の輝きを帯びて静かな脅威を相手に放っていた。


??「安心して?まだ、死んでないから」

加賀「……提督ッ!」グッ

??「はいは~い、そこの空母さん、動かないでね?次、動こうとしたらこの男の首、そっちまで弾き飛ばすよ」

加賀「……っ!」ピタッ

??「うん、いい子いい子♪う~ん、でもちょっと来るの遅かったかなぁ…」

提督「て、めぇ……いつ、から……」

??「キミ達がここに集合して直かな?あぁ、それよりもさ、余り喋らない方がいいよ?結構深い手応えあったから。
ゴメンねぇ…余り手加減とかした事ないから、これくらいかな~?って感じで適当に抉ったからさ。んでもって…」


バキッ


提督「がっ……!」ゴロゴロッ…ドンッ

??「ちょ~っと邪魔だから隅っこにいてねぇ」

長良「し、司令官!」

??「こんなオッサンの心配するより自分達の心配すれば?これからキミ達全員、分け隔てなく死ぬんだから」ペロッ…



自らの指先に付いた提督の血を舌先で舐め取り、少女は不敵に笑う。

しかし、改めて加賀達はその異質さに気付く。

少女と思っていた存在。

だが特徴的な青白い肌に白い髪、輝く両の真紅の瞳。

これだけで彼女がただの少女でない事を如実に物語っている。


鳥海「あなた、まさか…」

??「あれ、結構アタシって有名だった?最近は為りを上手く潜めていたと思うんだけどなぁ…少し前の世代が大暴れ
してたのは記憶に新しいと思うんだけどね?」

加賀「戦艦…レ級…」


パチンッ


レ級EL「正解☆」


レ級ELは指を鳴らして加賀を人差し指で示しながらウィンクして答える。


レ級EL「なんていうのかしら、こういう場合…雇い先のクライアントからの命令なの♪とか言えばいいのかしら」

満潮「……」チラッ…

漣「……」コクッ…

レ級EL「…あら、駆逐艦ガールズで内緒話?」ニヤッ…

満潮「……」

レ級EL「そういう仲間外れ的なの、アタシ好きじゃないなぁ…」

満潮「なら混ざる?最も、あんたじゃ内容についてこれなさそうだけどね」

レ級EL「ふふっ、四肢切断の上で頭をスイカ割の要領でグシャッと潰して、胴体は原型なくなるまでグチャグチャに
潰してあげましょうか?」

満潮「はあ?なにそれ、意味分かんない。アホ面オヤジをちょっと小突いたくらいで何調子に乗ってんのよ」

レ級EL「あら、提督でしょう、この人。上官を気遣う発言はあっていいと思うんだけどなぁ」

満潮「気遣う?なにそれ、美味しいの?その気遣うってヤツ」

レ級EL「ふ~ん…五人とも、それなりにはやるみたいねぇ…大口叩けるわけだ。でもね、前大戦時の先代とアタシ、
同格に見られるのは困るのよ。少なくとも、近代化改修もまともに受けてない連中に負ける気はしないわ」

鳥海「…っ!」(どうして、深海棲艦が近代化改修の事を知ってるの?まさか、このレ級EL…西提督の、差し金!?)

追加と書き溜め分以上
本日はここまで

乙です

おつでち

おつ
唐突の修羅場で怖い、さてどう乗り切る

皆様こんばんは
区切りのいい所まで更新します

-悪夢再臨-


『報告は確かなのか』

『間違いありません。例の新型が他の深海棲艦を随伴して艦隊を編成、この海域で暴れていると…』

『周辺区域の鎮守府は!?』

『情報を察知し、各々に艦隊を編成、討滅へ動いています。提督…』

『戦艦、レ級か…!』


──ザー……近隣の……守府、応……すか──


『…!緊急通信!』ダッ


ガチャ…


『こちら、西方海域担当の提督!所属と名前を…!』


──ザー……ら、不……属の…う型…番艦……風です!──


『ノイズが酷すぎる…くそ、風の名が付く艦種は…』

『駆逐艦だけです、提督』

『陽炎型の駆逐艦か!天津風は確か鋼鉄の艦隊。磯風は元帥殿の艦隊……残っているのは……初風、時津風、
浦風、浜風、谷風、舞風……いや、一人だけ陽炎型じゃない、風の名が付く駆逐艦が居るか。島風…』


──ザー……ぐに、急いで……ッ!……ボゴオォォォン……ザー……ブツンッ──


『くっ……!おい…おいっ!どうした!?応答しろ!おいっ!!』

『提督…』

『くそ…!急ぎ出撃の準備を整えて迎撃体勢を取る!』

『了解しました!』

それは遠い記憶のように感じられるほど色褪せた映像として透写された。

記憶の片隅にある僅かな映像。

走馬灯のように記憶の中に根深く突き刺さったものが溢れるようにして脳裏に蘇る。

そして映像が白く染まり、辺りに喧騒が戻り、意識と共に痛覚も呼び起こされる。

脇腹に奔る焼けるような強烈な痛みに意識が跳ね上がるようにして覚醒する。

神経事鷲掴みにされたかのような、なんとも表現のしようのない痛みは否応無く意識を呼び戻した。


提督「ぐあ……!あ、ぁあ……く、そ…が……っ!」ゴロン…

提督「あい、つ等、は……」


ボゴオオォォォン……ドオオォォォン……


提督「やめ、ろ…てめぇ、等で……勝て、るワケが……」ズズッ…

レ級EL「しょっぱなの一撃は驚いたんだけど、でもまぁ…この程度かぁ…」サッ


ボゴオオォォォォォン


鳥海「くっ…!」

漣「速い…!」

満潮「反応速度もハンパない。何なのよ、こいつ…!」

加賀「これなら、どうかしら」スッ…

レ級EL「っと…艦載機か」スッ…


弓を構える加賀、それに合わせるようにレ級ELが片手を真上へ上げる。


ビュッ


迷わず放たれた加賀の一矢。

それに合わせてレ級ELも振り上げていた手を真っ直ぐ加賀を指し示すようにして振り下ろす。


サッ


ダダダダダダダダダダダッ


ボゴオオォォォォォォォン


レ級ELの背に備えられる艤装から無数の艦載機が出現し、それらは加賀の放った艦載機と真っ向からぶつかり合う。

競り勝った一団は、レ級ELの操る艦載機群だった。


加賀「くっ」


競り勝った残りのレ級EL艦載機からの艦爆艦攻を一身に受け、加賀の姿が一瞬にして煙幕の中に消える。


レ級EL「ざぁんねん…アタシの艦載機って結構優秀でしょ?」ニヤッ…

加賀「甲板に火の手が。……そんな、馬鹿な」 小破


ブンッ ブンッ サッ


腕を振り、風を巻き起こして火種を蹴散らし、加賀は凛とした表情で尚もレ級ELを見据える。


レ級EL「ヒュ~♪かっこいいねぇ…」

加賀「…頭にきました」ギラッ



加賀の瞳が一層強みを増して輝く。

決して驕っていた訳ではない。

油断もしていなければ、気を緩めていた訳でもない。

それでも機先を制された事への憤りを感じた。

今まで積み上げてきた信念。

己の腕を信じて、それに誇りを持って、決して揺るがない鉄の如き意志を持ち、最前線を駆け抜けてきた。

誰もが認めた一航戦としての誇りが、今この瞬間に打ち砕かれようとしていた。

決して緩めては来なかった兜の緒。

だがしかし、緩んでいたというのならそれは心の奥底に生まれた慢心。

今一度、加賀は己を律した。


レ級EL「まだやる気?」

加賀「皆、優秀な子たちですから。ここは……譲れません」




??「迂闊だったわ…まさか、あっちじゃなく、こっちを狙ってきてたなんて…」

??「多摩の直感、当たりましたね」

多摩「にゃ!言ったとおりにゃ。なんとな~く、護衛のほうは問題ないって思ってたにゃ。それでどうするにゃ?」

??「確かに…本来の任務とは食い違います」

??「妙高姉さん達には報告したもの、単独行動にはならないわ」

??「了承を得たと?」

??「う~ん、多分?」

多摩「……得てないパターンにゃ」

??「うふふ♪」

??「あなたと言う人は…」

??「それに、あれは前大戦で消滅したと思われていた新鋭が生み出した悪夢の一端、戦艦レ級、その第一進化を
果たした存在よ。始末できれば良し、出来なくとも生体データの採取は必須でしょう?」

??「ものは言いようだな」

多摩「こじ付け、とも言うにゃ」

??「んもう!細かい事はいいのよ!さぁ、出撃よ!戦場が、勝利が私を呼んでいるわ!」

??「こうなってはもう止まらないわね。なら、徹底的に追い詰めてやるわ」

多摩「二人とも好戦的すぎるにゃ」

??「多摩の手も借りたいってね?」

多摩「にゃにゃ!多摩の手も借りたいって?しょうがないにゃあ。じゃ、多摩も出撃するにゃ!」

短いですが、本日はここまで

>さぁ、出撃よ!戦場が、勝利が私を呼んでいるわ!
嫁ktkr

乙です

おつおつ
足柄、多摩、不知火、あともう一人くらいいるっぽい?

皆様こんばんは
たらたら書き綴ります




-敵の影-

??「ようこそ、諸君。僕らが治めるこの鎮守府こそ、まさに理想郷だよ」

??「前置きはいいよ。それよりも北のお馬鹿さん、陸軍に引き渡されたんだって?」

??「墓穴掘るにしても、デカ過ぎでしょう。欲が前に出すぎた結果ね」

??「西も今相当荒れ狂ってるよなぁ…あれ、大丈夫なんだろうな?」

??「プレゼントを贈ってあるから、それなりに対処するんじゃないかな。それよりも僕らが今すべきは一つ」

??「色欲くんの救出?嫉妬しちゃうわねぇ…あんな変態を助けたいだなんて…」

??「彼はただの欲塗れの人間じゃない。それは皆も既に解っているだろう?」

??「そりゃあ、北のお馬鹿さんよりは利口だと思うけど、大本営に捕まってる状態でどうするのさ。
冗談抜きで元帥の抱える艦隊は強いよ」

??「だなぁ…」

??「だからこそ、皆を集めたんじゃないか。三人寄らば文殊の知恵ってね。僕一人でもやりようはあるけど、
それだと結局どこかで足が付く。それを消す為には皆の協力が必要不可欠ってわけさ。どちらに転ぶにしても、
ハイエナの今回の行動は既に露見してしまっている。あれを擁護するのは余り得策じゃない」

??「あら、それじゃあの怠け者ボウヤは見捨てちゃうわけ?薄情ねぇ…」

??「相変わらず君は辛辣だね。その蛇のような目、僕は好きだよ」

??「それはどーも、お坊ちゃま」

??「んで、どーすんだよ。さっさと決めてくれよ。俺ぁこういうの考えんのが苦手なんだ」

??「そうカリカリするもんじゃないだろう?心を落ち着かせないと、出てくるものも出てこなくなるよ」

??「けっ、てめぇは毎度食ってるだけだろうが。暴食野郎が」

??「艦娘の中には正義感の強い子も多数居るからね。そんな子達を堕落させるには、どうしても彼の力は必須。
僕はそう見ている。ただ滅ぼすだけなら一斉攻撃を仕掛ければ良いだろうけど、それだけだと恐らく海軍を根底から
滅ぼすだけで終わってしまうんだ」

??「つまり何か、潰すは潰すが、要所良く形は留めて要らねぇ部分だけ潰すって事か?」

??「いい嗅覚を持ってるね。その通り…あの存在自体は非常に有効利用が出来る代物だ。それをむざむざ無にして
しまうのは勿体無いと思わないかい?出来る事なら、僕らでそれを再利用するんだ」

??「だから内側からって事なわけね」

??「まぁ、それはいいんだけど…ハイエナの方はどうするのさ。援軍は送ったんだろう?それなのにさっきの口振りじゃ
もう用済みみたいな言い方をしているじゃないか。斬り捨てるのかい?北のお馬鹿さんと一緒に」

??「今後の展開次第だよ。僕が預けた子を上手に立ち回らせてれば、望みはあるかもしれないね。けど、単独先行させて
しまっていた場合は……ふっ、残念だけど礎になってもらうしかないよ」ニヤッ…

??「やれやれ、君の悪い癖。その笑みが出ると必ずと言っていいほど何かを企めている顔だよ。私はその顔、嫌いだ」

??「表情一つで僕の考えを汲んでくれる君を、僕は非常に好いているんだけどなぁ」

??「ちっ、気持ち悪ぃ事言い合ってんじゃねぇよ。男同士で好きだ嫌いだってホモかよ。ったく……とにかくだ……
エロ河童については保留、北のバカとハイエナのアホは状況次第で抹殺でいいんだな?」

??「ああ、構わない。まだ確信を得られても困るからね。内部からジワジワと蝕んでいくよ。気付いた頃には
にっちもさっちもいかない状況がベストだね」

??「そういえば、怠け者くんは何にご立腹なのかしら?」

??「さぁ、そこまでは僕も聞いてない。ただ、彼は自分の益の妨げになる奴をこの上なく嫌う傾向があるからね。
彼の目に留まってしまったのなら、恐らく死ぬまで追い回されるだろう」

??「あら、あたし達ならともかく、あなたが相手を把握してないなんて珍しいわね」

??「把握する必要がないからね」ニヤッ…




加賀「ここは……譲れません」スッ…

レ級EL「面白そうじゃないの。アタシ一人に誰一人としてそっちは手も足も出ないのにまだ足掻くって言うんだから、
最後まで足掻かせて上げるわよ。そして知るといい。可能性なんてものが微塵もないという現実を」ギラッ…


再度矢を番え直し、加賀が弦を引く。

その動作を全てレ級ELは不敵な笑みを湛えながら見守るが、不意にその表情が陰る。


レ級EL「…っ!」バッ


ボゴオオオォォォォォン

ボゴオオォォォォォン


加賀「なっ…」

レ級EL「誰…!」


一瞬の静寂を切り裂いて海面を無数の砲弾が貫き、周囲に水飛沫を撒き散らして加賀とレ級EL、双方の動きを止める。

そして加賀達とは反対の方向から三つの影が薄っすらと水平線に浮き上がり、それはやがて輪郭を帯びていく。

私だ



満潮「誰よ…」

漣「わ、解らないのです」

長良「援軍、なのかな」

鳥海「なら、いいんですけどね…」

??「あらら、命中には至らなかったか」

??「当然です。あれで終わるなら苦労はない」

多摩「にゃ~」

レ級EL「たった三人ですって…?誰よ、あなた達…」

??「妙高型重巡洋艦三番艦の足柄さんよ。覚えておきなさい?」

??「陽炎型駆逐艦二番艦不知火」

多摩「球磨型軽巡洋艦の二番艦、多摩だにゃ。暴れるにゃ!」

加賀「」(見た事がない…まさか、大本営の艦娘?)

足柄「あら、訝しい顔ね。加賀さん?でも大丈夫よ。別にあなた達に用があってきた訳じゃないのよ」チラッ…

レ級EL「目的はアタシってワケね」

足柄「ふふっ」

レ級EL「何が可笑しいのよ」

足柄「思いもよらない収穫だもの。そりゃあ、笑みも零れるでしょ?」

レ級EL「餓えた狼、か…」

足柄「解ってるなら、注意しないとね?不知火、多摩、戦闘準備!」

不知火「了解」

多摩「にゃ!」

レ級EL「あはっ…まさか、まさかとは思うけど…え、本気?まさか三人だけでアタシに挑むの?」

足柄「あら、後ろの空母さん達はもうシカトなのかしら?」

レ級EL「…………」チラッ…

加賀「まだ戦力に余力はあります。追撃は可能です」

鳥海「まだ何もしてないのに、白旗なんて揚げるもんですか」

長良「何が何でも勝つ!」

満潮「水底に送り返してやるわ」

漣「ぶっとばーす!」

多摩「やる気十分にゃ」

不知火「まだ、折れてはいないようで安心しました」

足柄「それなら、勝つわよ。変則的だけど…今回は特別。見せて上げるわ、戦闘を主任務に置く私達の実力」


足柄が主砲を構えると同時に、左右に展開していた不知火と多摩の二名も共に主砲を構える。

そして息を合わせたように足柄の号令で行動を開始した。



足柄「第一戦速、砲雷撃、用意!てぇーっ!!」サッ


ドン ドン

ドン ドン ドン


レ級EL「小賢しいわね」ビュオッ


ボゴッ ボゴッ……ボゴオオォォォォン


背にある艤装を自在に操り、レ級ELは差し迫ってくる砲撃の悉くを巻き起こした突風で軌道を逸らし誘爆させる。


不知火「何…!」

多摩「は、反則にゃ!」

足柄「へぇ…怪物認定は伊達じゃないって訳ね」

加賀「それで満足されては困ります」

レ級EL「何ですって…?」

加賀「言ったはずです。みんな優秀だと。この艦隊に劣っている者など、一人としていません」


バッ


足柄達の攻撃を迎撃し終わった直後を狙い、今度は鳥海達が一斉にレ級ELへと迫る。

鳥海と長良を後方に据えて先頭を二人の駆逐艦が仕切る。


満潮「何発でも、何十発でも…!」

漣「その澄ました顔が歪むまで撃ちまくってやるです!」

レ級EL「駆逐艦に何が出来るっての!」ザッ


足の軸を変えて即座に漣達の方へ向き直ったレ級ELだが、二人の駆逐艦はレ級ELへ突進はしなかった。

ただ左右に分かれて、シンクロするように同時に左右からのタイミングをずらした一斉砲撃が開始する。


ドン

ドン ドン ドン

ドン ドン

ドン


レ級EL「くっ、こいつ等…ッ!」


ボンッ

ボボボンッ


レ級EL「鬱陶しいなぁ…!」 被害軽微


漣「褒めても何もでませんよ~!」

満潮「ウザくて何ぼよ。徹底的に纏わり付いてやるわ!」

足柄「」(この子達、今まで見てきた駆逐艦の中でもトップクラスね。うちの不知火に引けを取らない。いいわね…)

多摩「足柄、追撃にゃ!」

足柄「ええ、そうね。不知火、多摩、レ級ELの動きに注視。加賀の束ねているあの艦隊は強い。必ずレ級ELの足許を掬うわ。
その瞬間を狙い撃つ。乱撃戦は彼女達に任せましょうか。下手に突っ込んでこっちの足許見られても癪だしね」

不知火「解りました」

多摩「りょーかいにゃ!」

足柄「まだ、飛び掛る時じゃない。必ず好機が出来る。今は、牙を研ぐ時よ」チラッ…


足柄の視線の先、一切のブレも見せない、完璧な立ち姿で弓を引き絞ったまま動かない加賀。

先のレ級ELとの制空権争いで競り負けながらも、その闘志は尚燃え上がる。

更にその先に視線を移すと鳥海と長良が一斉射の準備に取り掛かりつつ射線の確保に向かっている。

てんでバラバラに見えるこの艦隊だが、その連携は微塵も狂わず綺麗に整っている。

各々が自分の役割、出来る事を把握してその範囲内で最大限のパフォーマンスを見せる。


バッ


装填分、全てを撃ち尽くすと同時に漣達は一歩後方へと後退し、それを合図とする様に今度は鳥海と長良が前に出る。

レ級ELに考える暇、体勢を整える暇、余裕を生ませない為に間隙すらも縫わせない徹底的な攻勢スタイル。


レ級EL「蟻がどれだけ群がったって象には敵わないでしょうが…!身の程を、弁えろ、艦娘風情がッ!!」ドォン ドォン


サッ

ボゴオオオォォォォン


闇雲に放たれたレ級ELの砲撃は鳥海達の上空を通過し、その後方で爆発を起こす。

自身でも気付いていない、それはレ級ELに余裕の現われが消えていた事を示していた。



レ級EL「鬱陶しい……!何なのよ、あんた達は…!」

鳥海「艦娘です」

長良「汚名を残した、ね」

鳥海「それでも、人が生きる過程の中で成長・進化を遂げるように…あなた達深海棲艦が同じように進化を果たすのと
同じように、私達も生まれ変わる。成長し、進化し、強くなる!」

長良「ここから、私は挽回する!鳥海さん、加賀さんの射線確保を優先して下さい」

鳥海「任せなさい!いくわよ!」ドン ドン


サッ

ボボボボンッ


レ級EL「ちっ」

長良「私も鳥海さんと共に射線の確保に動きます。漣と満潮はスイッチする形で常に私達と交互にレ級ELの進路妨害に
徹して!相手に余裕を与えないように!」

満潮「やってやるわ!」

漣「任せてちょーだい!」

鳥海「長良、あと一度よ!」ジャキッ

長良「はいっ」ジャキッ

レ級EL「思い上がりも甚だしいわ。全弾撃ち尽くして、そして絶望の中で水底へ沈めて上げるわよ!」ジャキッ

長良「……」ニコッ

鳥海「……」ニコッ


ドン ドン ドン ドン


レ級ELの言葉を受けた上で、二人は余す事無く砲弾の全てをレ級ELへ撃ち出す。

その間隙を縫って、今度は再び漣と満潮が同じく全弾一斉に発射する。

巻き起こる噴煙は倍化し、辺りの視界を一気に多い尽くす。



──だから、無駄だって言ってるでしょ!終わりよ。跪きなさい、愚かな艦娘風情はッ!!──


ビュオッ……


噴煙の中から木霊するレ級ELの声。

その声と共に突風が吹き荒れ、立ち昇っていた噴煙を蹴散らして視界が戻っていく。

だが、それと同時に長良の声が一際大きく響き渡った。


長良「加賀さんっ!!」

加賀「いい作戦指揮です。戦艦レ級EL…次の攻撃、防げるものなら防いで見なさい」ビュッ

レ級EL「……っ!」 被害軽微


番えていた矢を放ったかと思うと、加賀は既に第二の矢を弓に番えていた。


レ級EL「なっ…」

加賀「本来、このような行使はしません。ただし、それは事艦隊戦においてのみです」

レ級EL「あなた達だって、艦隊を編成してるじゃない!」

加賀「そうですね。一見矛盾を孕んではいますが、これがその答えです」ビュッ


初撃を放った直後、加賀は更にもう一発、矢を上空へ向かって放つ。

そこから更に加賀は矢を弓に番えて構える。


レ級EL「なっ…あ、あなた正気!?味方諸共、アタシを…」

加賀「諸共?冗談でしょう。狙いはあなた一人です。大丈夫、みんな優秀な子たちですから」ビュッ


一切の迷いも無く、加賀は三度目の矢を放つ。

三本の矢は段階を置いて第一順から次々と艦載機へとその姿を変えていき大空へと舞い上がる。


レ級EL「そんな数の艦載機…一度に出せば周辺がどうなるかなんて解りきってると思ったんだけど…
もしかして、あんたバカなわけ?」

加賀「その台詞は後の展開を身をもって知ってから口にして下さい」


ババッ


加賀の放った無数の艦爆艦攻隊が一斉爆撃と射撃を敢行する直前、鳥海達が一斉に外へ向かって飛び退く。

鳥海と長良がそれぞれ放っていた水偵がタイミングを見て合図を送り、それを聞いた二人が駆逐艦達にもタイミングを

知らせ、示し合わせた上で同時に退いたのだ。



レ級EL「あなた達…ッ!」

足柄「斉射準備に入るわよ」

不知火「見事と言う他ない」

多摩「引き際と攻め時、解ってるにゃ」

満潮「だ~れがあんたと一緒に心中なんてするって言ったのよ」

漣「漏れなく全部あなた様へプレゼントしてやるです!」

鳥海「これが、あなたが艦娘風情と見下す私達の力よ!」


ボゴオオオォォォォォォォォン


一際大きな炸裂音が響き渡り、加賀の有する艦爆艦攻隊が一斉に攻撃を仕掛ける。

巻き起こる噴煙を切り裂き、海面を、空を、縦横無尽に艦載機が駆け回る。

攻撃が止む直前、長良の声が周囲に響いた。


長良「今です!」

足柄「いくわよ!」

不知火「了解」

多摩「にゃ!」


待ってましたと言わんばかりに、今度は足柄達が一気に前に出る。

最初は華を持たせるつもりだった。

危なくなれば直にでも割って入ってレ級ELの動きを寸断する予定だった。

ところが蓋を開ければ共闘するこの五人は予想を遥かに上回った強さを見せた。

嬉しい誤算と同時に、少しの不安を抱えながらも足柄は主砲の照準を合わせる。



レ級EL「ア、タシが…!こんなァ……ッ!!」 中破

足柄「敗因は、戦力を見誤った事ね」

不知火「不測の事態は常に考えるべきです」

多摩「それをしないのがお前達深海棲艦にゃ!」


ドン ドン ドン ドン

ボゴオオォォォォォォォン


尚も前に進もうとするレ級ELを真正面に捉え、三人の砲撃が一斉にレ級ELを襲う。

今度こそ、レ級ELは沈黙し、海の藻屑となって水底へと沈んでいった。

水面に浮かぶ剥がれ落ちたレ級ELの艤装の一部を拾い上げ、足柄は加賀達に向き直る。


足柄「ご苦労様。それと、中の提督さん、早く治療して上げないと出血多量で死ぬわよ」

漣「あ……」

満潮「ヤッバ、忘れてた…」

加賀「聞きたい事は往々にしてありますが、今は人命を優先します」

不知火「適切な判断ね」

多摩「うんうん」


足柄達は加賀達の背を見届けてからレ級ELの艤装を一瞥して大本営へ報告をする。



足柄「……こちら足柄です。大淀さんかしら?ちょっと面倒な事になったわね」

大淀『面倒、とは?』

足柄「通信じゃちょっと怖いわね。先の件と連動してる、とだけ言っておくわ。とにかく…任務は終了。
今から投錨します」

大淀『解りました。元帥にもその旨、通達しておきます』


ブツン…


不知火「想定外の戦力差もあって今回は勝利できたけど、改めて戦艦レ級の恐ろしさを痛感しました」

多摩「殆ど奇襲に等しかったにゃ。あっちも加賀達を下に見て遊んでくれてたのが幸いしてるにゃ」

足柄「そうね。もしもあれが出だしから殺しに来てたなら、確実に全滅コースだったかもしれないわね」

多摩「けど、肝心なのは今回勝利したことじゃないにゃ。レ級が未だ存在していたという事実にゃ」

不知火「しかも単独。エリートやフラグシップクラス、鬼や姫、レ級と言った一部のクラスに属してる深海棲艦は
往々にして高い知能と統率力を有しているはず。それが単独で、しかもあの鎮守府を狙ったというのが不思議」

足柄「ハズレ鎮守府…確か今回の任務、事の発端は西の鎮守府が行っている違法行為の証拠を発見する事、だったわよね」

多摩「そうにゃ。ただ、多摩達は基本武闘派だから途中からはサフに任務伝達をして引き継いでもらってたにゃ」

不知火「サフの抱えてる案件にはこの鎮守府も含まれていたはずです」

足柄「それこそ事の次いで程度だったはずよ。現にサフがここに着たのも、北の鎮守府絡みでたまたま交わっただけだし」

多摩「多摩の直感が言ってるにゃ。今回各地で起こってる事件。全て繋がってる気がするにゃ」

不知火「多摩の直感って悪いのばかり当たるから嫌い」

多摩「にゃにゃ!?」


相手の油断も手伝ってなんとかレ級ELの撃破に成功した加賀達。

放置されて安否の確認が取れない提督。

そして加賀達の窮地を救った足柄達と鬼怒達を護送していった雲龍達の詳細。

確実に解っているのは、闇の一端がまた一つ、顔を覗かせたという事だけ。

区切りいいのでここまで

乙です

一週間空きとは珍しい
待ってるよ

皆様こんばんは
久方ぶりに思うように筆が進まず、停滞気味になってしまいました
ある程度纏まってきたので更新していきます




~不退転~



-不幸ですね-

『急いで最寄の救急病院へ電話をして下さい』

『し、止血ってどうするんだっけ!?』

『応急処置は私がやりますから、電話をお願いします』

『二人は毛布と清潔なガーゼをあるだけ持って来て下さい』

『解ったわ!』

『ほいさー!』


そんな喧騒とした声が聞こえたのは覚えている。

煩くて敵わなかった。

あと少しという所で意識も薄れ、安眠へと移行できると思っていた矢先の喧騒。

実に……じ・つ・に、不愉快極まりない。

だが暫くするとその喧騒も止み、今度こそ静かな安寧が訪れた。

そして、意識が完全に落ちて気が付くと────


提督「……どこだ、ここは」

加賀「気が付かれましたか、提督」パタン…


本を読んでいたらしい加賀は提督の意識が戻ったのに気付いて本を閉じて視線を移す。

視線を交わらせると、これがどうだ…心配の『し』の字もしていないという顔つきだ。

鉄面皮は健在らしい。


提督「ふん……死に損なったか」

加賀「減らず口が出る辺り、順調に回復しているようで何よりです」

提督「……あの、バケモノは、どうした……」

加賀「撃滅しました」

提督「……っ!?お前等、だけでか」

加賀「未確認の艦娘による援護がありました。恐らく大本営から派遣された部隊だと思われますが…」

提督「また、大本営、か」

加賀「主治医を呼んできます。目を覚まされたばかりですから、会話も身体に障るでしょう。お待ち下さい」スッ…



結果から言えば、俺はまさに生死の境を彷徨ったらしい。

眠気が襲ってきたのは死ぬ間際だったんだそうだ。

あそこで加賀達が応急手当をしていなければ確実に俺は目を覚ます事は無かったそうだ。

ったく、よりにもよってあいつ等に借りを作った事が悔やまれる。

こと、満潮と漣に関しては口煩くなるのが目に見えている。

直前に加賀から聞いた話では予期せぬ援軍があったという。

それに妙高が口にしたサドバフと言う単語。

少なくとも俺が上層部に関わりを持っていた頃には聞かなかった呼称だ。

恐らく何かのスペシャルチームの略称なのは明白だ。

雲龍達は警護部隊と言っていたな。

それ以外に、最初に遠方からこちらを監視していたのは恐らく密偵部隊だ。

当時の呼称そのままならば暗部と呼ばれるスペシャルチームだろうが、当時は暗部で統一されていたはず。

その中でも枝分かれして集団が形成されていた程度だ。

所謂部局と課室って奴だ。

暗部は部局で、その下に枝分かれして密偵、諜報、暗殺と並んでるのが課室。

そんなもんまで結成するって事は、智謀自身も内部の腐食が進行してるのをどうにかしようとしてたって訳だ。

前元帥ならまずそんな身内を疑うなんて所業はしなかっただろう。

かえってそれがヤツ等の温床になってたのが智謀としても頭を悩ませる原因か。

そして今回の西の一件。

まさか深海棲艦を手駒に加えてるとなれば、いよいよ新鋭の再来だ。

歴史は繰り返されるというが、こうも短期間で繰り返されたんじゃ進撃の立つ瀬もなくなるな。



ガチャ……


加賀「不幸でしたね、提督」


──不幸ですね、提督──


提督「てめぇ……」ムクッ…

主治医「あぁほら、動かないで。意識戻っても傷口は深いんだから、無理に動いたりしたら折角縫った箇所が
また開いてしまうだろう」

加賀「思った事を口にしただけです。他意はありません」

提督「ちっ……他の連中はどうした」

加賀「鎮守府を空にする訳にはいきませんから、鎮守府で待機してもらっています」

提督「つぅかてめぇ、なんで普段着なんだよ」

加賀「軍装はそれだけで目立ちますから」

主治医「ほら、提督さん。少し大人しくしてて下さい」

加賀「無事を確認できましたから、私はこれで失礼します。先生、後は宜しくお願いします。では」ペコリ


ガチャ……パタン……


主治医「…はぁ、今の子、艦娘って言うんでしょう?普通の子と何ら変わらないけど、何でも軍艦だかの記憶を
内に秘めてる子だけがなれるっていう…」

提督「ったく、一般人にまで浸透してる知識かよ。世も末だぜ…」

主治医「癇に障ったなら謝ろう。だがね、我々にしてみれば関係ないのさ。彼女達も同じじゃないのかね」

提督「…………」


主治医「我々はこうして人命を助ける。彼女達も、今じゃ人が自由に航行もできない海に繰り出して人々を助ける。
だからね、何故貴方がそうも彼女達に辛く当たるのか、私にはよく解らなくてね」

提督「あんたはメンタルカウンセラーか何かかよ」

主治医「いや、専門外だね。私のメインは形成外科だ」

提督「だったら根掘り葉掘り聞いてんじゃねぇよ」

主治医「提督さん、貴方…救急搬送されてきた時に何て言ったか覚えてらっしゃいますか?」

提督「はぁ?」

主治医「貴方はね…何もするな。このまま放置して殺してくれ。そう仰ったんですよ」

提督「…………」

主治医「さっきまで一緒に居た彼女、艦娘の加賀さんがね、これがまた辛辣でねぇ…ただの戯言ですから、
処置をお願いしますって言い放ってね」クスッ…

提督「あの野郎……」

主治医「まぁ、ね。頼りにされてると、そういう事なんじゃないかな」

提督「…海軍提督には、幾つか守秘義務がある。てめぇもただの医者って訳じゃねぇだろ。海軍の人間を受け入れる
病院なんてそう多くはねぇはずだ」

主治医「平成初期の時代はまだ病院も往々にしてオープンだったんだけどね。今じゃ格差をつけて各々の身分に見合った
病院へ通うようになっているね。それもこれも、深海棲艦の出現で軍の機密事項が増えたのが原因さ」

提督「で?」

主治医「ふふっ、そう…私は元軍医だよ。階級は中佐だった。君が言うとおり、ここは海軍ご用達の病院だよ。
だから何があったのかなんていうのは言われなくても解っている。艦娘の事もある程度把握はしているさ」

提督「ああそうかよ」

主治医「さて…それだけ喋れるんだから、後は無理せず療養してもらって傷を癒そうか、大佐殿」

提督「くそったれが…」




『不幸ですね、提督』

『そこは不運って言えよ』

『あら、そうですか?』

『不幸不幸って、本当にそう思ってるのか?』

『ふふ、さぁ…どうでしょうか?』

『ったく、何かにつけてお前は直に不幸自慢をするが、存外そうとも言えないんじゃないのか?』

『口癖、みたいなものだからかしら?』

『余り褒められたもんじゃない口癖だ』

『ふふ、それじゃあ少しだけ、意識してみますね。でもね、提督……やっぱり、こればっかりは、不幸、かな……』

『……すまない』

『やっぱり私、沈むのね……山城は無事だと良いけれど……』

『山城は…大丈夫だ。心配ない』

『それを聞いて、安心しました。提督、あの子の事、宜しくお願いね?』

『本当に……すまない』

『謝らないで、提督。根を詰めすぎては、身体に毒です』

『お前を、救えなかった…』

『提督と、お別れする時は、もっと…黒ずんだ空の下なら良かった……空は、あんなに、青いのに……』

『扶桑……ッ』




嫌な夢を見たものだと、静かに閉じていた瞳を開いて映し出された天井を凝視する。

痛みは……ある、が昨日ほどではない。

どちらにしろ一日二日でどうこう出来るような怪我じゃないのは明白だ。

今のポジションになってから初めてかもしれない。

鎮守府の心配などをしたのは。

柄にも無い、嘘ばかり、心にも無い、冗談が過ぎる、洒落にも聞こえない。

あいつ等ならばそんな罵声を飛ばしてきそうだが、今回ばかりは焦る気持ちが勝る。

予感と言うのは得てして妙で、大抵は悪い方向で的中する。

良い流れと言うのは個々がその目標へと向かって邁進する事で初めて生まれるが、悪い流れと言うのは何もせず、

ただ佇んでいるだけでも生まれる。

最悪なのは、良い流れと違って悪い流れは生まれた直後から濁流のようにしてこちらを一気に押し流そうとする。

流れを変えるには相応の労力と知力と決断を要求される。

どれか一つでも欠ければ瞬く間に濁流の藻屑となってご臨終だ。

ただし、悪い流れは断ち切れさえすれば一転して一気に良い流れへと変わる。

戦艦レ級、その第一進化のエリートタイプを今回撃滅できたのはまさに僥倖と言うべきだろう。

惜しむらくはその場に自分がいない事だ。

短いスパンで必ずまた何かアクションが起こる。

その対処をあの五人が出来るかどうかでこの後の展開は大きく変わる。

本日はここまで

乙です

不幸アピールしてる不幸なのが妹で不幸だわ…ってセリフないのに不幸だわ…ってしょっちゅう言わされる不幸なのがお姉ちゃん!いいね!

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします




加賀「……」

鳥海「……」


今二人は各々で作成した相関図を広げて睨めっこをしていた。

打開策となるべき解決案を模索し、先の先までを読んで結果を突き詰め、今後の最善へ繋がる案を探っている。


鳥海「司令官は、西提督の仕業と断言されたんですね?」

加賀「そうです。どんな禍根があるかまでは説明されていません。けれど、西提督と提督の間には何かしらの因縁が
あるのだと思うわ。そして、その因縁は提督よりも寧ろ西提督が根深く強く恨むほどのものだという事です」

鳥海「海軍の人間が深海棲艦と繋がっていたという点……この問題は全体の縮図からしても大きすぎる問題です。
私達だけであれこれを議論するのは過負荷が大きすぎますね」

加賀「なら、まずは目先の問題です。西提督に関する情報はもう得る事はできません。けれど……」トン…

鳥海「…今回の一件から予測する事は可能、という事ね」

加賀「話を戻します。提督は西提督と禍根が存在する。つまり今回の一件、ただ単にこれが鬼怒達が脱走を企てた、
もしくは別の鎮守府の艦娘によるたまたまの救出などだったら西提督の反応はどうだったのか」

鳥海「憤慨はしても恐らくここまで大っぴらな行動には出なかったんじゃないか。加賀さんはそう考えるんですね?」

加賀「最も可能性が高いものを選別した結果に過ぎません。ですが、強ち的を外してはいないと考えます」

鳥海「じゃあそれを前提に、対象を再び提督へ戻すとすると…」

加賀「差し向けた刺客の報告が無い。連絡が付かない。苛立ちは恐らく短い時間で限界を迎えるでしょう」

鳥海「結論……」トン…

加賀「」コクッ…

鳥海「また、襲撃がある」

加賀「そこで幾つかの選択が生まれます。一つは誰か一人を連絡役に添えて提督の助言をもらう事。ですがこれは
非常に連携の取り難い環境を生みます。余りお勧めは出来ません」

鳥海「もう一つ、今回の件を大本営へ通達して援軍を貰う事。ただし、相手は同じ海軍の将。それも中将クラスの
西提督と言うのを加味すると、先に手を回されていた場合連絡を入れた時点で袋のねずみ…」

加賀「確率で言えば危険な橋を渡るものと推察できます。最後の一つ、私達だけで迎え撃つ」

鳥海「効率面で言えば申し分なし」

加賀「危険度で言えばこれが最も危険ですね。どれだけ取り繕おうとこちらは五名。相手が一艦隊でくるとは到底
思えませんから、単純に見繕ったとしても私達の数倍は数を揃えてくるかもしれません。深海棲艦であるなら、
ある程度の余裕も生まれるかもしれませんが、こと艦娘に至っては一筋縄ではいかないのが現実です」

鳥海「どの策を弄すにしても、一抹の不安は拭えませんね」

加賀「…………」ギリッ…



提示、提案、考察、考慮。

あらゆる可能性とあらゆる事態を想定した上で決定を下す。

加賀はここにきて初めて自分に向いているものと向いていないものを自覚する。

『考える』『提案する』という事はこれほどまでに神経をすり減らし、それでも尚決まらないものかと。

その後に起こる結末如何で自分達の運命すらも左右しかねない決断。

まさに、運命の選択と言うものがこれほどの葛藤を自分の中に生み出すものかと戦慄した。

恐らく提示すれば皆一様に頷き、それに従ってはくれるだろう。

だが、それは命の選択と同じであり、間違えれば確実に死が訪れるのが加賀には明確に解っていた。

それは共に思い悩み、歯痒い表情を見せる鳥海とて同じ心境だっただろう。

自分だけではない、誰かの命も左右するかもしれない一つの命令。

その責を一途に背負う覚悟のある者だけが指揮官としての手腕を振れる。


加賀「……改めて敬意を表します」

鳥海「え?」

加賀「私達艦娘を指揮し、導き、勝利を手にする原動力を生み出す存在、提督。同じ立場を経験すればこそ、
その偉大さと威厳、どれほどの責をその背に背負っているのかを痛感します」

鳥海「…らしくありませんね。加賀さんが泣き言を言うだなんて」

加賀「なっ…」

鳥海「けど、解りますけどね、そう言いたくなる気持ちは…でも、誰かがその責を背負わなければならない。
今この場には私達五人しかいない。全体の指揮ともなれば、長良や満潮や漣に任せる訳には行かないでしょう。
彼女達はまさに前線の主力です。そして加賀さん、あなたもです」

加賀「鳥海…」

鳥海「恨まれるなら、二人より一人の方がいいです。先に虚勢を張っておきます」

加賀「…は?」

鳥海「私の計算は狂わない。私の掲げる戦術用法に、穴なんてない。この戦略こそ、ベスト…!」

加賀「何故、そこまで…」

鳥海「ふふっ、司令官の野望を忘れたんですか?」

加賀「野望…?」

鳥海「まだ、私達はスタートラインから少し前に進んだだけですよ。バリバリ最強には程遠い。No.2はまだ雲の上。
他の誰でもない、提督でなければここの艦娘は纏め上げるなんて無理だもの。秘書艦として、加賀さんは提督を支えて
上げて下さいね」

加賀「あなたが全ての責を負うと言うのですか?戦術を編んだ上で、自らも出撃し、最前線に立つ覚悟だと?」

鳥海「頭脳では、他者を余り寄付けない自負があります。司令官の代役はお任せ下さい。加賀さんが思っている事、
私が今考え思っている事、それは同じです。つまり、この後直に相手方の追撃が予測される。予め入渠も済ませ、
各自の燃料や弾薬、艤装の調整は終わらせてあるのは謂わば僥倖です」

加賀「感謝します。けれど、この部隊で誰か一人でも欠ける事は想像できません」

鳥海「え?」

加賀「鳥海も勿論、長良も、漣も、満潮も、私が知る中では、みんな優秀な子たちですから。行きましょう」スタスタ…

鳥海「…ホント、あんな真顔で言われたらテンション上がっちゃうじゃない」クスッ…




-修羅苦羅-

ハイエナ「…………」ワナワナ…


ガシャアアアァァァァン


ハイエナ「戻ってこないじゃん!何なんだよ!何だよ、あいつは!?なぁ!?」バンッ

秘書艦「……」

ハイエナ「俯いてないで何か言えよ…」

秘書艦「も、申し訳ありません」

ハイエナ「は?何それ、何謝ってんのさ。あのさぁ~、そういうイラッとくる顔、やめてよね~。マジ、殺したくなる」

秘書艦「」ビクッ

ハイエナ「遠征組二艦隊とも結局戻ってこない上にさぁ、一組は生きてるらしいじゃん。始末しろって言ったじゃ~ん」

秘書艦「ほ、本当に、申し訳、ありません…」ビクビク…

ハイエナ「どいつも、こいつも……ッ!」


コンコン……


ハイエナ「誰だよッ!」


ガチャ……


ハイエナ「……ぁ」

??「やあ、荒れてるみたいだね」

??「…………」

ハイエナ「そ、の、艦娘は…」

??「あぁ、彼女?彼女は僕の秘書艦だよ。一人でも良いって言ったんだけどね」

??「当然です。提督と行動を共にする事こそ、秘書艦としての務めですから」チラッ…

ハイエナ「ヒッ……」

??「ははは、どうしたのさ?そんな怯えた顔しちゃって…もしかして、僕の秘書艦と何か因縁でもあるのかな?」ニヤッ…

??「止めて下さい、提督。こんな魅力の欠片もない男、私の記憶の中にあるだけでもおぞましい」

??「ははっ、言うねぇ。まぁ、それもそうだよね。ハイエナ君……解ってるよね?」


ハイエナ「ひ、秘書艦、お前……」

秘書艦「申し訳、ありません…」ペコリ

??「彼女は僕が提供した子だよ?誰がマスターなのか、それを理解しているだけさ。勘違いをしないで欲しいね。
ハイエナ君、僕を余り怒らせるな…ただでさえ今、僕達の計画に支障が生まれようとしてる中で、こんな余計な真似を
させて、君は一体僕らにどう釈明するつもりだったんだい?」

ハイエナ「そ、それは…」

??「大方、僕が実際にここには来ないだろうと高を括っていたんだろう?その驚き具合がいい証拠だよ。実に滑稽。
怠惰が過ぎたみたいだね。お陰で僕の進めている計画に支障がきたされた。その罪は当然償ってもらう。僕の大事な
彼女の妹まで無駄にして、ホント無様だよ……君はもう用済みだ、死ね」

ハイエナ「ま、待ってくれ、もう一度だけ…!」

??「冗談だろう?そんな事したって無意味だ。僕はね、役に立たないのを見ているとイライラして仕方が無いんだよ。
駒なんだから、君は…盤面を良く見てよ。ふふっ、チェックメート……君はキングの器じゃないよ。いいとこ、ポーン。
そのポーンも最奥まで行けば化けるんだけど、まぁ…君程度じゃあね?」

??「提督、そろそろいいかしら?」

??「ん?ああ、そうだね。無駄話が過ぎたみたいだ。それじゃあ宜しく頼むよ。それと、秘書艦君」

秘書艦「は、はい…!」

??「解っていると思うけど、筋書きは説明できるよね?」

秘書艦「……て、提督は、不意に、侵攻してきた、深海棲艦によって絶命。鎮守府は、艦娘全てが遠征任務などに出払っ
ており、発見が遅れる……」

??「はい、良く出来ました。安心してよ、ハイエナ君。君の仇は僕が取ってあげるからさ」ニヤッ…


闇は、より大きな闇の前では成す術もない。

呑み込まれた闇は呑み込んだ闇に解けて混ざり無へ還る。

空ろな瞳で見下ろす彼女にはどんな光景が映っているのか。

恐怖に歪むハイエナの顔が映ってるのか。

これから殺す相手など既に投影されていないのか。

遠ざかる男の背中。

俯き何かに耐える秘書艦。

無数の主砲の顎がハイエナを容赦なく捉える。

そして────


ボゴオオォォォォォン


その日、一つの鎮守府が大本営の名簿から抹消された。

完膚なきまでに建物を崩壊させられ、そこの鎮守府の長である提督の無残な死体だけが残される。

西鎮守府、提督は西提督。

別名、ハイエナと呼ばれ凡そ全ての提督陣、大本営の人間からも忌み嫌われていた男。

幸い、西鎮守府に在籍していた艦娘達に死傷者は出なかった。

そしてその事実は、ハズレ鎮守府にも緊急電報と言う形で大本営から知らされた。




鳥海「西鎮守府が、深海棲艦の強襲を受けて壊滅!?」

加賀「…………」

満潮「うそでしょ…」

漣「ギャグにしては、ちょっとアレですねぇ」

長良「西提督は!?」

鳥海「……」

加賀「…西鎮守府に滞在する艦娘に死傷者は無し。西提督は、最後まで深海棲艦に臆す事無く立ち向かい、
最期を鎮守府と共にした。西提督の顔を知っている者からすればこれ程あべこべな電文はありませんね」

鳥海「つまり、口封じという事?」

加賀「ただ、誰がどのような目的でこんな強硬手段に打って出たのか、皆目見当もつきません」

鳥海「提督はこの情報、もう知ってるのかしら」

加賀「解りませんが丁度今日、様子を伺いに病院へ行く予定ですから、この電文も持参します」

漣「あー、ご主人様のお見舞い、私達も行った方がいいんですかねー?」

満潮「なんでアホ面オヤジの見舞いなんてしなきゃなんないのよ」

長良「ま、まぁまぁ…」

漣「とかなんとか言っちゃってー、みっちゃんご主人様がやられた時の取り乱し具合結構いい感じでしたよー?」

満潮「」ピキッ…

鳥海「あら、心配なら行って来ていいですよ?ここ最近は忙しかったですけど、今はご覧の通り暇の極みですからね」

長良「じゃあ、大勢で行くのもあれだから、加賀さんと満潮の二人で今日はどうぞ!」

満潮「ちょっと!なんで私も行く事になってんのよ!?」

漣「にゅふふふふ…」

満潮「な、何よその気持ち悪い笑い方は…」

漣「いいえ~、別にぃ~?漣は何も~?」

満潮「こいつ、ムカつく…っ!」

漣「さてさて、漣はお菓子作りタ~イム♪」ルンルン

加賀「では、軍装では何かと目立ちますので普段着に着替えて来て下さい」

満潮「拒否権なし!?」

加賀「はい?」

鳥海「さて、と…じゃあ私もちょっと勉強しようかしら」スタスタ…

長良「わったしは走り込みー!」タッタッタ…

加賀「で…?」

満潮「む~~~……解ったわよ!行けばいいんでしょ、行けば!」

加賀「はぁ…行きたくないならそう言えばいいだけじゃないかしら」ボソッ…

満潮「何よ!?」

加賀「いいえ、何でもないわ。先に正門で待っているから急いで下さい」スタスタ…




加賀「────と言う事で、こちらがその緊急電文になります」パサッ

提督「……確かに、あいつの顔を知ってりゃこれ程笑える内容もねぇわな。鎮守府のために戦って死んだって?
ギャグにもなってねぇな。三文芝居も甚だしいレベルだ」

加賀「提督が危惧されたとおりならば、この後また直にでも西提督からの攻撃はあった訳ですが…」

提督「殺ったのは十中八九大本営じゃねぇのは解る」

加賀「では、西提督が組していた腐敗した組織の誰かだと?」

提督「ほぼ、間違いなくな。妙高やら大本営の暗部が動いていたんだ。遅かれ早かれ今回のハイエナの動きは制限され、
あいつ自身も矢面に立たされるはずだっただろうよ。つまりは、その口封じだ」

加賀「…………」


コンコン……シツレイシマス……ガチャ……


看護士「提督さん、点滴の交換しますね。あら、若い娘さんがお二人も♪提督さんも隅に置けませんね?」

提督「はぁ?」

看護士「ふふっ、娘さんですか?」

満潮「はぁ!?冗談よしてよ、アホじゃないの!」

加賀「……」

提督「…今のはギャグか何かか」

看護士「あれ?」

提督「あれ?じゃねぇよ!どこが似てるよ!?」

満潮「似たくないわよ!バッカじゃないの!」

加賀「……」

看護士「あらま…お嬢ちゃん、お名前は?」

満潮「お嬢ちゃん言うな!私は満潮よ!み・ち・し・お!」

看護士「満潮ちゃんね。いい、満潮ちゃん?女の子なんだから、バカとかアホとか、そういう汚い言葉は余り
使っちゃダメよ?こんなに可愛いお顔してるんだから、もっとお淑やかにしないと、ね?」

満潮「うぐっ……う、うるさいわね。ど、どーだっていいでしょ!///」

加賀「」(珍しくうろたえてますね。接点の無い人間相手だと、少なからず戦意が削がれるのでしょうか)ジー…

満潮「な、何ジッと見てんのよ!///」

加賀「いいえ、別に」

看護士「ふふ、お姉さんの方は少し寡黙で落ち着きがあるのね?年の功かしら?」

加賀「…別に、この子の姉という訳ではないのだけれど」

提督「ったく、いいからさっさと処置して失せてくれ」

看護士「ふふっ、はいはい。解りましたぁ」

提督「ったく……やっと帰ったか、あのクソ看護士」

満潮「……」

提督「…なんだよ」

満潮「私が出撃中に勝手に死ぬとかやめてよね」

提督「んだとてめぇ」

満潮「……っ」モジモジ

提督「んだよ気持ち悪ぃな…」

満潮「以前に!あんた、やたら入渠にうるさい時、あったじゃない。実際、入渠する時間だって、あれ三分もなかった。
文字通り掠り傷だったのよ。なんで、あんな剣幕で入渠促したのよ」

提督「いきなりなんだよ、うっせぇな…」

満潮「私は、入渠が余り好きじゃない」

提督「何…?」

満潮「傷口に沁みるし、入ってる間、文字通り何も出来ないし…」

提督「んな事ぁ当たり前だ」

満潮「それでも、入渠中に身内がやられたりするくらいなら、私は入渠なんかしないで戦い続ける!」

提督「いきなり何の宣言だよ」

満潮「同じ事よ。あんたが戻るまで、あの鎮守府は私が守る。だから、戻ってからつまらない戦略たてないでよね、ふんっ!」タッタッタ…

加賀「」クスッ…

提督「何だありゃあ…」

加賀「満潮なりの心配の仕方ではないかしら。不器用な子ほど、思いや気持ちと言うのは曲解して伝えたりするものです」

提督「てめぇも何センチメンタルな事ほざいてやがんだ」

加賀「うわ言とは言え、あなたの本心を少しだけ聞いてしまったからではないかしら」

提督「てめっ……」

加賀「責めるなら私ではなく自身を責めて下さい。私には何の落ち度もありませんから。ただ……」

提督「なんだよ…!」

加賀「ただ、それでも二度と、死にたい等と、殺してくれ等と口にはしないでくれるかしら」

提督「…………」


私達艦娘は、皆慙愧の念を宿している事が殆どです。

それは古い記憶や覚えのない記憶、不意に見る夢として私達の中に深く刻み込まれています。

だからこそ、今の私達はこの瞬間を誰よりも誇りに思い、勇猛果敢に深海棲艦と対峙して戦う事が出来るのだと思うわ。

あなたが長良について語った言葉は私も同意する部分が多くあると感じたけれど、その長良も無意識でも過去の過ちや

慙愧の念を宿しているからこそ、きっと無茶をしたり後先考えない行動に出てしまったのだと思うわ。

だから彼女を責めるなという訳ではないし、現実問題としてそれは直すべき問題点と認識するべきではあるけれど。

だからこそ、うわ言とは言えあなたの言葉に私は憤りを覚えました。

最も命の尊さを説いたあなたの口からその命を軽んじる発言がでるのだから、酷い有様と形容するほか無いわ。

別に過去に何があったのか全てを語れとは言わないけれど、少なくとも私達はあなたを上官として認めています。

人としての在り方は見習うに値しないのは諦めて下さい。

ただそれでも提督としての手腕とあなたの提唱する作戦は、私達で無ければ成せないものが殆どだと思うわ。

ですから、生きる為の選択をこれからもしてくれると助かります。


加賀「……では、言いたい事は言いましたから、私もこれで失礼します」

本日はここまで

乙です

皆様こんばんは
少し更新します

-夢-

それは、遠い遠い遥か昔。

私の中に微かに残る、それでいてはっきりと刻み込まれた忌むべき記憶。

誰にも話した事はない。

聞かれれば話したのかもしれないけれど、聞かれないのだから自ら進んで話す必要は無いと思っている。

紅く染まった空は、夕焼けだったのかすらも解らない。

硝煙の香りと頬を濡らす汗。

その汗を一瞬で干上がらせる熱風と、そんな感傷など蹴散らす果てしない爆撃の嵐。

あの時、私は成す術も無くただ沈み行く仲間達を見る事しか出来なかった。

最後の最後まで奮戦したあの子たちに『頑張ったわね』と労う事すら出来なかった。

後悔の念は今も尚、根深く私の中にわだかまりとなって巣食っている。


『一航戦の誇り…こんなところで失うわけには…』

『…貴方を残して…沈むわけにはいかないわ』

『やられたっ…誘爆を防いで!』

『なんでまた甲板に被弾なのよっ!痛いじゃない!』

『やられました!艦載機発着艦困難です!』

『誘爆を防いで!飛行甲板は大丈夫!?』



加賀の深層心理には仲間を救いたい、助けたい、守りたいと言う護の感情が多い。

だがこれは加賀に限った話ではない。

少なくとも、この鎮守府に集った全員は言ってしまえば過保護なほどに身内を守りたいと願う傾向がある。

長良の独断先行。

指揮官の命令を無視してまで自らの身を危険に晒そうとする、無謀とも言えるし全体の指揮系統を混乱させる、

言わば許されない行為を平気で行おうとする。

いい方向へ考えるとつまりはそういう事になる。

満潮の過剰なまでの闘争心。

自分がやらなければ、自分がやれば、誰かに頼る前にまずは自分で何とかする。

その結果として存在するのが今の満潮だ。

ある種の強迫観念にも似たその使命感は、満潮を強く前へと押し出す。

鳥海の徹底された戦術用法。

作戦には指揮官がつきものだ。

あらゆる策を張り巡らせ時に強行突破し、時に奇襲を仕掛け、仲間達の進むべき道を作っていく。

だから鳥海は常に最善を選択し、最良を導き出し、絶対とも言える解無き解を追い求め続けている。

漣の飄々とした性格。

戦場は常に死と隣り合わせであり、いつ自分が沈むかも解らない。

そんな中にあって一人笑顔を見せる者がいる。

張り詰めた糸を解すように、高まった緊張を沈めるように、彼女の言葉や仕草は仲間達を精神的な苦痛から解放する。

誰にも居なくならないで欲しい。

そんな隠された想いが漣の一挙手一投足には籠められている。

そして加賀も、常に完璧であろうと気を緩めない性格。

妥協を許さず己ならず周りにも厳しいのは誰よりも辛酸の味を知っているからなのだろう。

二度とあんな思いはしたくない。

誰にもあんな思いはさせたくない。

それこそが、加賀が完璧であろうと邁進する原動力の全てなのだ。



加賀「……また、あの夢」ムクッ…


上半身を布団から起こし、両手を毛布の上に出すと気付いてもいなかったのか、小刻みに手は震えていた。

グッと握り拳を作ってそれを強引に諌め、加賀は布団から出て窓越しに空を眺める。


加賀「今度は、夢と同じにはなりません。私が、必ず変えて見せます…」



提督「」ペラ……


極秘と書かれたその資料は、提督が今までに独自に纏め上げた艦娘と深海棲艦、その歴史の全て。

未だ謎が多い両者の関係、その背景、目的などが独自の視点で細かく記載されている。

そんな中に艦娘について調べた項目に『夢』と題された項目が存在する。

切っ掛けは前の鎮守府で彼の秘書艦を勤めていた扶桑の一言だった。


『覚えのない記憶、と言うのかしら…確かにここ最近で起こった出来事じゃないのは確かなのに、
何故かそれがとても大切な事で、忘れてはいけない何かだと直感的に感じたの。時折、夢で見るんです』


初めは何を言ってるのかと鼻で笑ったものだが、後々調べて解った事は、扶桑が夢で見ていた内容、

記憶として断片的に覚えている事実、フラッシュバックのように突然思い出されるもの、色々とある中で

全てに共通している事はそれ等が全て実際に扶桑の身に起こっていたという事だ。


提督「大本営では認知してるのかすら怪しい事実だ。だがこいつは、場合によっては艦娘の精神を一発で破壊する。
完全な諸刃の剣……凄惨な最期を遂げている艦娘がそんなものを夢で見ようもんなら、確実に廃人にならぁな」パタン…

提督「…だが、これを乗り越えた艦娘ってのは、文字通り名実共に全ての力を取り戻す、か…」

提督「じゃあ深海棲艦はどうなんだ…あいつ等にも同じ環境があるのか。あるとして、もしもそれがキーワードに……」


コンコン……シツレイシマス……ガチャ……


看護士「あーっ!もう、寝てなきゃダメって言ってるじゃないですか!」

提督「」(ちっ、うるせぇのがきやがった…)ガサッ…

看護士「あっ、今何隠したんですか!もしかしてエロ本とかですかぁ?」

提督「女のクセに節操の欠片もねぇヤツだな。ごちゃごちゃ言ってないでさっさと検認して失せろ」

看護士「もー、満潮ちゃんの口が悪いのって提督さんの口の悪さが影響してるんじゃないですかー?」

提督「ざけんなダァホ。あいつは元からだボケ」

看護士「はぁぁヤダヤダ。そうやってすーぐ相手が悪い事にするの。女の子にもてませんよー」

提督「女に好かれてぇって年でもねぇんだよクソッタレが。いいからさっさと失せろよ、口軽女」

看護士「むっかぁ!注射針適当なところに打ち込んで薬剤流し込んでやろうかしら…」

提督「それただの医療事故だろうが!つーかテメェ、故意にやったらただの殺人だぞ」

看護士「にゃははは、冗談に決まってるじゃないですかぁ。仕事に関連する事でそれを悪用だなんて
天地がひっくり返ったってしませんってば。私だってこの仕事に誇りを持ってますからね!」

提督「ちっ…胡散臭ぇ女だ」




加賀「…………」キリキリ…


ビュッ

タンッ


満潮「へぇ」

加賀「何か用ですか」

満潮「んー、別にこれと言ってあるわけじゃないけど。ただ、加賀って真面目だなーってね」

加賀「真面目?言っている意味がよく解らないのですが」

満潮「別に深く考えなくたっていいわよ。それよりもさ…あのアホ面オヤジ、そろそろ退院でしょ」

加賀「ええ、そうね」

満潮「西提督の一件以来、なんか拍子抜けするくらい静かじゃん」

加賀「追撃の心配がなくなったのはいいのかもしれないけれど、腑に落ちないのは確かです」


タッタッタ……


加賀「……」チラッ…

長良「あぁ、やっぱりここだった!って、あれ満潮も?」

満潮「な、何よ…」

加賀「出来れば道場では走らず歩いてくれると助かります」

長良「あぁ、ゴメンね!っと、そうそう…鳥海さんがね、加賀さんにっていうか、皆にかな?話があるって」

加賀「急を要す感じですね。解りました。汗を流した後に向かいます。どこへ向かえばいいのかしら」

鳥海「取り敢えず全員にって事だし、作戦室とかでいいのかな」

加賀「解りました」

満潮「んじゃ、先に私はいってるわ」

加賀「ええ、解りました」




鳥海「いきなり呼び出してごめんなさいね」

漣「久々に何か任務でも届いたですか?」

鳥海「それならまだいいんだけど…直接関係があるかどうかは定かじゃないわ。ただ、少し気になる情報だったから」


パサッ…


加賀「調査報告書?これは、この鎮守府のものではありませんね」

長良「っていうか、ここで調査なんてまずしないもんね」

満潮「あんた、まさかパクッ……」

鳥海「人聞きの悪い。コネのある鎮守府の艦娘から情報提供してもらったのよ。それよりほら、見て」

漣「深海棲艦の活性化に伴う、新たな鬼・姫クラスの深海棲艦を確認。正式種別は水鬼…」

加賀「タイミングが不自然すぎますね」

長良「どーゆうこと?」

加賀「そもそも、深海棲艦の沈静化が起こったのはここ数年の出来事です。私も噂程度で、実際に目の当たりにした
わけではありませんが、鬼や姫と呼ばれた深海棲艦の上位種、これ等の艦娘化が起こったと言われています」

鳥海「深海棲艦の艦娘化……私も聞いた事がありますが、実際にこの目で見た事はありません」

長良「そんな事、ありえるのかな」

満潮「そもそも深海棲艦って何なのよ」

漣「私達艦娘が殲滅するべき、人類の敵じゃないんですかー?」

満潮「じゃあ深海棲艦はどうやって生まれたのよ。何処から来て、どう繁殖して、何を最終目的にしてるのよ」

漣「うっ…そ、それは…」

加賀「……以前に提督へ何とはなしに伺った事があります。下らない事を言うなと一蹴されるかと思っていたのですが、
予測に反してあの人は自身の推論を私に聞かせてくれた事があります」

満潮「うっそ…」

鳥海「あの司令官が…」

加賀「提督の仰った推論は次の通りでした」


艦娘には過去に戦果を上げた実在する軍艦の名がそれぞれに付けられている。

そして軍艦の魂とも言えるそれ等断片的な記憶こそ、艦娘が内に秘めている感情の動力源ではないか。

実際にフラッシュバックや夢と言う形で今を生きる艦娘の中にも過去の映像を記憶している者がいるという。

しかしそれ等軍艦の魂は今を生きる艦娘にとっては言わば忌まわしき残照。

消し去りたい、もしくは二度と思い出したくない苦い記憶。

もしもそれを克服した者がいるとしたら、その艦娘こそ名実共に真に覚醒した存在となるのかもしれない。

しかしそれ等を立証する手立ては現在ない。



加賀「最後にそう締め括り、結局は自らが幻想した戯言だと断じました」

長良「私達に秘められてる…」

満潮「忌まわしい記憶…?」

漣「ちょっと言ってる事が解らないですねぇ」

鳥海「司令官も確証があるわけじゃなく、あくまで自らの言葉だけで導き出した推論と言う事ね」

加賀「故に戯言と一蹴したのでしょう。どこまでが本心なのかは解らないけれど。取り敢えず、話を戻しましょう。
深海棲艦の活性化についてです」

満潮「あぁ、うん。かなり逸れたね」

加賀「鳥海が入手したこの情報が確かだとすれば、いよいよ私達だけの現時点での戦力では対応が難しくなるわ」

鳥海「これに関してはもう、司令官の言葉をもらうしかないわ」

漣「悔しいですけど賛成ですー」

長良「よし、それじゃ司令官さんを迎えにいっちゃおうか!」

満潮「え?うん、まぁ…いけば?」

長良「えっ」

満潮「そのさ、『えっ!?満潮は行かないの!?』みたいな顔っ!やめろ!」

長良「すごっ、思ってた言葉一言一句そのまんまだよ…」

満潮「何処に驚いてんのよ…っとにもう。っていうか私この間いかされたんだし、今度は鳥海か長良か漣が行きなさいよ」

漣「えー、めんどっちぃですよぅ」

長良「え?私は別にいいよ?」

鳥海「開口一番に罵倒浴びたら思わず殴りたくなっちゃいそうで、そこが怖いですね」

加賀「…はぁ、じゃあいいです。私が迎えに行きますから」

長良「えーっ!それじゃいいって、私がいくよー!」

漣「むっ、なんかそこまで張り合われるとなんというか…じゃあ、私が恭しくご主人様迎えに行くでも構いませんよー?」

鳥海「ホントにもう、嫌々なら誰が行っても同じでしょうに…それなら私が行きますよ」

満潮「何この流れ…」



チラッ……


満潮「やるかバカタレ!」


ジー……


満潮「うぅ…なんなのよ!」

漣「……で?」

満潮「わ、解ったわよ!だ、だったら私が行こうじゃないのよ!」

四人「「どうぞどうぞ」」

満潮「っ!?」

加賀「解りました。連日私が向かっていたのでその発言は助かります。満潮にお譲りします」

満潮「はぁ!?」

長良「そこまで力強く言われちゃ仕方ないねぇ。譲るよ」

満潮「んなっ!」

漣「横取りされたみたいで嫌なんですねー。どうぞどうぞー」

満潮「何よそれ!」

鳥海「皆さんがそこまで仰るなら…いいでしょう。この鳥海、意地を張らずに自ら辞する覚悟です。満潮に委ねます」

満潮「ふざけんなっ」

加賀「では私は飛行甲板の手入れがありますので、これで失礼します」

長良「私は装備清掃~」

漣「おぉっと、もう直お料理番組の時間!」

鳥海「私も資料の整理と編集をしておこうかしら」

満潮「~~~~~~~~~~~~~~ッ」


この日、提督は無事退院し鎮守府へと戻ってくる。

青筋を立てた満潮が怒号の篭った声で出迎えてきた事に顔をしかめていたそうだが、些細な事だ。

再び提督を含めて六人揃ったハズレ鎮守府の面々。

一難は去ったが未だ謎が多く腐った膿は海軍から絞りつくされてはいない中で入手した深海棲艦の情報。

そしてここから、悪魔達の猛攻が始まる。

書き溜め分以上です
本日はここまで

乙です

乙です

一難去ってまた一難
ヤバい案件ばかりころがり込む職場とか実際に所属する事になったら
自分なら心すり減りそうで潮っぱいに泣きつきたい

初めの頃は、必殺仕事人みたいなイメージ持って読んでたけど
今は何だろうなあ
それはそれとして、続き楽しみにしてます

乙です

皆様こんばんは
区切りのいいところまで更新します




~前兆~



-事件-

『────緊急入電。この通信は一部鎮守府各位へ通達しています。各鎮守府の提督はこの通信を受信後、
速やかに艦隊を編成し、出撃準備及び任務の遂行をして下さい』


所属等未確認聨合艦隊による大本営強襲事件が発生しました。

敵の主力隊はある事件の主犯格を大本営より拉致、連れ去ったものと思われます。

今回の任務は特例であり、全体への通達はされておりません。

敵の戦力は未知数、艦種及び陣形等あらゆる情報に不足が生じている状況です。

各鎮守府は細心の注意を払い、現時点で持てる最大戦力を投入してこれを追撃。

泊地と思われる敵戦力群を発見し次第撃滅して下さい。

作戦名:未確認敵艦隊を捕捉し、これを撃滅せよ!



??「どう思う、これ」

??「どう、とは?」

??「んー、だからぁ…一部鎮守府になんで私達まで入ってるのかなって」

??「それだけ信頼が厚いという証拠ではないのか。事実、あなたの功績は目覚しいものがある。今更あなたを
贔屓目で見るような無粋な者はいないと私は思っているよ」

??「はぁ、ホントあんたは煽てるの上図よね」

??「ふっ、役得かな。さて、改めて聞こうか。どうするのだ、鋼鉄提督」

鋼鉄「やってやるわよ。大体、大本営に喧嘩吹っかけてられた上に犯人を見す見す逃したとあっちゃ海軍の名折れよ」

??「決まりだな」

鋼鉄「見せてやりなさい。貴女が率いる最強の艦隊を!」

??「いいだろう。ならば改めて指示を頼む」

鋼鉄「旗艦長門は第一戦隊を即時編成し今回の作戦に従事せよ!」

長門「了解した。戦艦長門、出撃する!」




??「……だとよ。どうにもきな臭ぇ話だぜ。お前等の意見も聞きたいからこうして集まってもらった」

??「不穏な動き…大本営でも戦力を把握できなかったって言うのが気になるわね」

??「行けと言われれば行くさ」

??「だね。それが私達の仕事だし!」

??「決めるのは提督でしょ?行くの?行かないの?」

??「意見、聞くまでもなかったんじゃないかしら?」

??「ふふっ、ざぁんね~ん♪」

??「ったく、揃いも揃って他力本願な奴ばっかりだなぁ、おい」

??「協調性はあるよ?って事で、任務通達をさぁどうぞ、不動提督!」

不動「伊勢、日向、蒼龍、飛鷹、筑摩、阿賀野。海軍に喧嘩売ってきた馬鹿共にお灸を据えてやれ!」

伊勢「そうこなくっちゃ!そうと決まれば、早速行きましょうか!」

日向「鈍っている体を解すには丁度いいかもな」

蒼龍「慢心はダメだからね!」

飛鷹「この作戦って、他にも通達着てるのかしら」

阿賀野「阿賀野達でびしぃって決めちゃえばいいんだよぉ」

飛鷹「相変わらずあんたの言葉って締まりないわねぇ…」クスッ

筑摩「阿賀野さんはのんびりやさんですからね」クスッ

阿賀野「もう、阿賀野はのんびりじゃないよ~!」

不動「だぁー!もううるせぇ!さっさと行ってきやがれ!っとによぉ、進撃の坊主んとこの艦娘が羨ましいぜ」

飛鷹「あら、随分な言い方」

日向「聞き捨てならないな」

伊勢「ほら日向、また置いてっちゃうぞー!」

筑摩「さぁ皆さん、気を引き締めましょう」

阿賀野「よ~し!」

蒼龍「リラックスできてるんだか、出来てないんだか、わっかんないなぁ」クスッ




元帥が信頼を寄せる鎮守府が続々と出撃の準備を始める中、ある大将が率いる鎮守府にも個別で通達が送られてきていた。

そこは嘗て、アイアンボトム・サウンドと呼ばれ数多くの死闘が繰り広げられた歴戦の大海。

そして以前まではある深海棲艦達の泊地も建造されていた場所。

今はそこに鎮守府が建てられ、大将が居を構えている。

月下の艦隊を率いる大将第漆将、新月提督。

鋼鉄提督と進撃提督、それぞれに直接の面識があり階級は上だが関係では後輩に当たる人物。

双方が共に信頼を寄せる頼もしい後輩でもある。

その鎮守府には正規の艦娘は極少数しか着任されていない特異な鎮守府でもある。

そして新月自身もまた特異な存在と言えるのかもしれない。


新月「どう思う?リコリス」

リコリス「全く、直そうやって私の顔色を伺う…」

新月「だ、だって仕方ないだろう?僕には圧倒的に経験値が不足してるんだから…」

アクタン「しんげつー!あそぼっ!あそぼっ!」タッタッタ

新月「あはは、アクタンは今日も元気だなぁ」

アクタン「づほ達、今日はえんせーなんだって!」

新月「うん、そうだよ。瑞鳳と、暁ちゃん達だね」

アクタン「えんせーって何するの?」

新月「物資を運んだり、民間人の護衛をしたり、色々だよ」

アクタン「わたしにもできる?」

新月「あはは、そうだね。今度暁ちゃん達と一緒に行って見ようか?」

アクタン「いくーっ!」キラキラ

リコリス「ほらアクタン、彼はちょっと忙しいから、ピーコック達と遊んできなさい」

アクタン「わかったー!」ビシッ

リコリス「ふふ、敬礼はいいわよ、別に」

新月「アクタンは和むねぇ…」

リコリス「ほんっと、進撃もまた随分な提督を寄越してくれたものよね」

新月「僕だって最初は驚いたんだよ?けどまぁ、アクタンにも懐いてもらえたみたいだし、今の所は万々歳だね。
あとは、僕がこんな境遇じゃなければ尚よし、なんだけど…こればっかりは、どうしようもないからね」



新月は見た目が非常に幼く見える。

彼が大将と言う器に収まったのは鋼鉄と進撃、二人の提督の口添えが非常に大きかった。

一つはこの鎮守府に滞在する最大戦力の一端を担うリコリス達超弩級大型艦載機場を艤装に持つ艦娘達との橋渡し。

進撃経由で紹介され、真っ先にアクタンが新月に懐いたのが切っ掛けとなる。

進撃の紹介ならと快諾したのがリコリス達だ。

新月自身は提督の器で言えばまだまだ未熟な方に入る。

階級をそのままイコール器で考えるなら、進撃は中将、鋼鉄は大将、新月はいいとこ中佐クラスだ。

しかしこのリコリス達を率いる艦隊を指揮するという点から、新月は大将としてその位に就いた。

そして新月は生まれて間も無く両足が不自由であり、車椅子生活を余儀なくされている、と言う点も一つの特異点だ。

今では嘆く事もなくなったが、昔は相当に荒れていたと言う。


新月「進撃先輩の鎮守府からわざわざ瑞鳳ちゃんや暁ちゃん達を移籍させてくれたのはある意味助かったんだよ」

リコリス「主にアクタンの相手でしょうけどね」クスッ

新月「ただ、アクタンは怒ると凄いからね。さて、話が脱線しちゃったよ。えーっと…うん、取り敢えず表立って
動くって言うのは余り良くないと思うんだよね。だから、周辺海域の哨戒に留めるって事でどうかな?
そこでもしも動きがあれば進撃先輩や鋼鉄先輩に通信で知らせる」

リコリス「良いんじゃないかしら。瑞鳳達は遠征でいないから、仕方ないわよね。私とポート、フェアルストの三人で
周辺の警戒に当たるわ」

ポート「久々の海かしら?」

フェアルスト「この地に入り込んでくるって言うのなら、丁重にお帰りいただかないとね」

リコリス「平和を平和のまま享受出来ないなんて、不憫よね」

ポート「それじゃ、行きましょうか」

フェアルスト「ピーコック、私は少し出てくるからアクタンの事お願いね」

ピーコック「ちょっ……!大体姉妹のあんた達がアクタンの相手しないってどーなのよっ」

アクタン「ぴーこっくぅ、次はレップウで遊ぼう」ブラブラ…

ピーコック「ちょ、だからぶら下がらないでよ!」

リコリス「それじゃ、行ってくるわ」

ピーコック「は、話を聞きなさいよ!」

ポート「」グッ

ピーコック「無言で親指だけ立てるなっ!」

フェアルスト「」グッ

ピーコック「ちょ……」

リコリス「」グッ

ピーコック「」ピキッ

新月「あ、あははは…」

アクタン「?」




-失態-

元帥「内部の腐食、深海棲艦の活性化、そして……今回のキメラ男奪還の為の襲撃……くそっ!」バンッ

大和「…………」


コンコン……


大和「…はい」


オオヨドデス……


大和「どうぞ」


ガチャ……


大淀「失礼致します。第二秘書艦ビスマルク及び、暗部大本営直営隊全員の招集を確認しました」

元帥「作戦室へ移動する」

大和「はい」


元帥「待たせた」

ビスマルク「別に問題ないわよ」

大和「本来であれば大将各位への通達もなさる予定でしたが、事は公にするべきではないという元帥のご提案です」


【大本営直営隊密偵部隊】Secret Agent Fleet:SAF
那智「大本営直営隊密偵部隊。通称サフ、旗艦那智以下摩耶、祥鳳、参上した」

摩耶「ホント、面倒ごとが尽きないねぇ」

祥鳳「暗雲立ち込めるという奴ですね」


【大本営直営隊戦闘部隊】Special Duty Battle Fleet:SDBF
足柄「大本営直営隊戦闘部隊。通称サドバフ、旗艦足柄以下多摩、不知火、ただ今到着よ」

多摩「にゃ~、言ったとおりになってきたにゃ」

不知火「余計な発言です」


【大本営直営隊警護部隊】Security Fleet:SF
妙高「大本営直営隊警護部隊。通称エスエフ、旗艦妙高以下雲龍、磯風、到着致しました」

雲龍「ここを直接狙ってくるなんて、上等じゃない」

磯風「不愉快な敵だ」


大和「皆さん、本当にご苦労様です。ついてはこれまでの経緯を簡単に私の方から説明させて頂きます」



本来であれば件の男は陸軍の管轄する投獄牢へ搬送する手筈となっていました。

しかし、内容が内容である事と出来る限り近場で監視を続けるという名目上、海軍で管轄する絶海の牢獄へ

護送先が変更となりました。

これは現在ここにいるメンバー及び、上層部にしか通達されていなかった情報です。

この情報が、何処かから漏れてしまったのが事の発端です。

エスエフのメンバーはその当時、西提督の一件で鬼怒達の護衛をしており手隙の状態ではなかったのを考慮し、

別の護衛メンバーを急遽見繕う形になりました。

ですが、これが不味かったのでしょう。

護送航海途中で件の未確認艦隊の襲撃を受けて護送艦隊は全滅。

キメラの男はまんまと脱走を成功させるに至った訳です。



足柄「解せないわね」

那智「同感です」

妙高「私達の鬼怒さん達の護衛は長期に渡るものではなかったはずです。実際、ハズレ鎮守府から護送して間も無く、
警護対象からは外れています」

雲龍「何故、私達の到着を待てなかったのかしら」

大和「そこが私も引っ掛かっています。本来であればエスエフに一任すべき事案内容ですから」

元帥「内部にねずみが存在した。そう考えるのが最も辻褄合わせにはしっくり来る」

ビスマルク「それで、私達を招集したのはどういった理由なのかしら?」

元帥「一つは大本営の内外問わずの警戒強化だ。これ以上、失態を晒し続けるわ訳には行かない」

大和「もう一つは、この事態がどこから起こったのか、その発生源を突き止める事です」

不知火「故意に起こったと?」

大和「私達は、そう睨んでいます」

ビスマルク「つまり元帥には確証とまでは言わないけど、それに近い何かを掴んでいると見ていいのかしら?」

元帥「火元の特定はどちらにしろ早急になさなければならない。周りの火を消していても火元が消えてなければ
いずれはまた元通りに燃え盛るだけだ」

ビスマルク「まぁ、それもそうね。という事は、その辺りの事実確認に適しているのは……」チラッ

那智「我々サフが適任でしょう」

摩耶「オッケー。出し抜かれっぱなしは癪だからな。相手の鼻っ柱折るだけじゃ物足りないってもんだ」

祥鳳「ですが情報が些か少量ではありませんか?取っ掛かりと言うものがなくては、証拠も集めようがありません」

那智「だから動くんだ」

妙高「那智、わかってると思うけど…」

那智「解ってます、姉さん。何時如何なる場合においても気を緩めない事。最善は尽くせ。けれど無茶はするな。
この命は、私一つのものではないのだから」

妙高「」ニコッ

足柄「祥鳳が言うように、手元にある情報は少ない。確実に何かが歪んでるわ。那智、絶対無理はダメよ」

那智「はい」


この小会議から一週間後、サフのメンバー三名は重傷を負って艦娘病院へ搬送される事になる。

三人とも意識不明の重態で予断を許さない状態で発見された。

傍らには血塗れの一枚の紙が添えられ、そこには『これ以上の詮索は身を滅ぼすだけだ』と記されていたという。

本日はここまで

乙です

皆様こんばんは
少し更新

-宣戦布告-

提督「…………」カチンッ……シュボッ……

提督「……はぁぁぁ、やだねぇ、怖い通知ばかりでよ」トントン…

加賀「どう思われますか」

提督「どうも何も、命令が降りてこねぇんなら、俺等にゃあどうでもいいこった。最も、奴さん等は今必死だろうがな」

加賀「提督」

提督「んだよ。非難でもするか?」

加賀「現時点での私達の戦力と深海棲艦側の戦力を比べて、どちらが上と思いますか」

提督「はぁ?」

加賀「別に深海棲艦側が比べる相手じゃなくても構いません。例えば……そうですね、名立たる艦隊がありますが、
進撃の艦隊、不動の艦隊、鋼鉄の艦隊、月下の艦隊、字を持つ艦隊は往々にしてありますが、どこと比べて
私達はどれだけの戦力があると考えられますか」

提督「何を言ってやがる。てめぇが最も嫌うジャンルをてめぇから聞いてくるとか脳みそ沸騰でもしてんじゃねぇのか」

加賀「理解はしています。ですが、今は個人の意地を通している場合ではないと判断しました」

提督「…ほぅ。確かにいつ何時ここも標的になるかもわからねぇしなぁ…だが、他とてめぇ等を比べるなんざ笑わせるな」

加賀「……?」

提督「確かに俺ぁてめぇ等の実力を見抜いたが、それに胡坐を掻けとは一言も言ってねぇ。今のてめぇの発言はまさに
己の力に溺れ酔った者の発言だ。くくっ、じ・つ・に愉快だ。てめぇはそんな落ち度を見せねぇと思っちゃいたが、
存外大した事はねぇみたいだな」

加賀「それは…」

提督「てめぇの口癖じゃねぇのか。他と比較するのを最も嫌うのはよ」トントン…

提督「だがまぁ、後学までに知っておくに越した事はねぇだろうがな。敢えて聞かなかった事にしてやるよ。
こいつぁ俺の独り言だ────」


それぞれの艦隊にはそれぞれに特色がある。

顕著なのは不動んとこの艦隊だ。

あそこはとにかく防衛が強い。

事防衛戦に至っては俺が知る限りじゃ百戦錬磨の防御力を誇る。

まさにイージスの盾ってヤツだぜ。

攻撃力に特化してるのは鋼鉄の艦隊だろう。

一度は崩壊の一途を辿ったと言われてたが、地獄の底から這い上がってきたあの女は最早前元帥の娘なんて肩書きで

納まるような簡単なヤツじゃねぇ。

秘書艦でもあり第一艦隊の旗艦も努める長門の強さはまさに一騎当千の強さがあるなんて言うくらいだからな。

同じ戦艦で言えば進撃んところの戦艦榛名、こいつも奇抜だって聞いた事がある。

金剛型四姉妹を揃える中でも飛び抜けてるのがこの榛名だって話だ。

他にも粒揃いの優秀な艦娘があそこには揃ってる。

恐らく今演習でお前等が戦えば、今上げた三つの艦隊には凡そ歯が立たんだろうな。



加賀「一矢報いる事も、出来ませんか」

提督「無理だな。断言してやる。極端に言えばあいつ等は完成型、てめぇ等は発展型だ」


ピー ピー ピー……


提督「あん?」

加賀「電文です。……これは」

提督「んだよ」

加賀「どうぞ」スッ…


■召集令状■

本日ヒトサンマルマルにおいてこの令状を各位へ通達する。

本題は追って大本営にて通達予定である。

令状を受け取った提督は秘書艦を随伴の上で直ちに大本営へ集合されたし。

尚、この令状に拒否権は無いものとする。

海軍大本営元帥 智謀


提督「んだこりゃ…」

加賀「簡素な内容が返って興味を引きますね」

提督「病み上がりに大した仕打ちを考えてくれるぜ…」

加賀「どうなさるおつもりですか?」

提督「…鳥海を呼べ」

加賀「では…」

提督「出向いてやろうじゃねぇか」

加賀「解りました」



ザワザワ……


提督「ちっ…」

加賀「…………」


『ねぇ、あれって加賀じゃないの?』

『あぁ、敵味方問わずに大虐殺やらかした殺戮空母ね』

『近寄っただけで大破させられるんじゃない?ちょっとあんた、行ってみて来てよ』

『冗談でしょ!死んでも近寄りたくなんてないわよ』


提督「お前、相当ヤンチャしたみてぇだな」

加賀「…雑音に傾ける耳はありません」

提督「くくっ…言うじゃねぇか。っと…」

大淀「……お待ちしておりました。『白夜』提督」

加賀「」(白夜…?)

提督「最速嫌味ありがとよ。このクソメガネ」

大淀「そちらは嫌味に切れがありませんね。まだ傷が痛みますか?」

提督「ほざいてろ、万年三番手の引き篭もり軽巡が。まだ香取の方が有用性あるんじゃねぇのか」

大淀「……多少は英気が養われているようで安心しました。不愉快極まりないですけどね」


コンコン……


大淀「ハズレ鎮守府の提督及び秘書艦加賀、到着しました」

元帥『通せ』



ガチャ……

パタン……


扉を潜った先には六つの影。

どれも個人的に知ってる顔ばかりだったが、それでも提督の顔に驚きの色がありありと浮かび上がった。


??「んだぁ…落ちぶれ白夜じゃねぇか」

??「場を弁えなよ。それに、余り人を貶める発言は良くない」

??「…………」

元帥「来ないものと思っていたが、存外興味が無いわけでもなかったか」

提督「うっせぇ」

元帥「さて、顔見知りもそうでないにしろ、各々の紹介からまずは済ませようか」


まずは左手から順に紹介する。

彼は階級は大佐、新鋭の叛乱事件の際に尽力してくれた功労者、進撃提督だ。

秘書艦は高速戦艦の榛名。

私が最も信頼を寄せる一人として今回召集した。

次、つい最近第拾将として大将十名の一人に名を連ね、今尚功績を挙げ続けているエリート提督。

秘書艦は航空戦艦の山城。

次、現時点で最も大将の器に近い男、エリート提督と並び評される戦力を誇る心悸提督。

秘書艦は正規空母の天城。

最後に────


提督「トリに置いて盛大に罵る気かよ。ったく面倒臭ぇ……俺ぁハズレ鎮守府の提督だ。こっちは秘書艦の加賀。
ただそれだけだ。手前様方のような仰々しい歴史は塵一つありゃしねぇよ」

短いですが書き溜め分のみの投下

乙です


山城が居るとかもう一波乱の予感しかしない

心(臓動)悸

皆様こんばんは
きりのいいところまで更新

エリート「…随分な言い回しじゃないか、白夜」

心悸「けっけっけ……てめぇよ、まだ根に持ってんじゃねぇだろうな?」

提督「……」

山城「……久しぶりね、ろくでなしのクズ。まだ生きてるなんて、心底驚いたわ」

提督「山城…」

エリート「やめないか、山城」

山城「失礼しました、提督」

進撃「元帥、これはなんの集まりで何をさせようとしてるんですか」

元帥「それは…」

エリート「進撃君、だよね」

進撃「は、はい」

エリート「改めてはじめまして。僕はエリート提督です。君も話は聞いてると思うけど、ここ最近の深海棲艦の動き、
これがまた活発になったって話だ。それとは別に、大本営に牙を剥いた連中が居る」

心悸「で、今手隙の俺等にお声が掛かったって訳だ。くくっ、だがよ…白夜のオッサン…あんたが呼ばれたのは、
お門違いってもんじゃねぇのか?見す見す艦娘を見殺しにした指揮官と、敵味方問わずに虐殺の限りを尽くした
殺戮空母……鬼に金棒所の話じゃねぇだろ」

天城「あの、提督…余り、その、他者を蔑む発言はよろしくないかと…」

心悸「チッ…はいはい、解ったよ」

榛名「」(あの人が、赤城さんの言っていた加賀さん…)

大和「全員、言葉を慎んで下さい。元帥の御前です」

エリート「これは失礼しました」ペコリ…

心悸「申し訳ございませんね」プイッ

進撃「……」

提督「……」

元帥「足並みが揃うなどとは思っていない。階級も担当区域も違う者達だ。烏合の衆と言っても過言ではない。
だがそれでも、今この場においては共闘してもらわなければならない」

心悸「共闘、ねぇ…」ニヤッ…

エリート「共闘自体はいい提案と思います。しかし彼が居るのは何故なのか、その説明が先ではありませんか、元帥」

元帥「ここ最近起こった事件、その先駆けとして関わった者だからだ」

エリート「…………」ピクッ

心悸「…………」ギロッ

提督「やれやれ、目つきと空気が良く変わるねぇ…」ニヤッ

エリート「つまり、例のキメラの男、そして西の提督の暴乱に関わっていたと?」

元帥「そうだ。同じ理由で進撃提督にも助力を賜っていた」

進撃「」ペコリ

心悸「流石は新鋭の叛乱を鎮圧した大英雄様だなぁ。その後も活躍するなんざ、いよいよもってエース級じゃねぇのよ」

進撃「いえ、そのような事は…自分はただ、指揮を執っただけですから。本領を発揮したのは彼女達艦娘です」

心悸「くくっ…謙遜すんなよ。少なくともそっちのオッサンよりはよっぽど優秀だぜ」


チャキッ…


心悸「っ!」

加賀「言葉を慎みなさい。あなた方がそう望むのであれば、その言葉通りに敵味方問わずの爆撃を敢行します」

心悸「てめぇ…ッ!艦娘風情が…!」

エリート「心悸っ!」

心悸「……ッ」

エリート「言葉が過ぎたよ。過去は過去だ…それを今ここで詳らかにする必要は確かに無い。ここは僕に免じて
許してくれないだろうか」

加賀「あなたの顔がどれほど広いのか知りませんが、あなたの謝罪でこれまでの侮辱の帳消しになるとは到底思えません」

提督「くくっ」

エリート「…言ってくれるね」

大和「いい加減に…」

榛名「止めて下さい!」

天城「…っ!」

山城「……」

榛名「担当される鎮守府は違えど、同じ場に籍を置く皆さんがどうしていがみ合うんですか!」

進撃「榛名…」

榛名「加賀さんも、矛を収めて下さい」

加賀「聞けません」

エリート「解った。素直に謝罪しよう。この通りだ、許して欲しい」ペコリ…

心悸「エ、エリーt……」

エリート「君も蒔いた種だろう。君も、提督と加賀へ謝罪すべきはずだ」

心悸「くっ……」

天城「提督…」

心悸「解ったよ…済まなかった。言葉が過ぎた…謝罪する。この通りだ、許して欲しい」ペコリ…

提督「」(これだよ…その場限りの非は素直に認める…エリートほど小賢しい奴ぁ何処を探しても絶対に居ない。
その事実に気付くのに俺は遅すぎた。今更何を況や……全ては奴の掌の上の出来事として処理された。全ては俺の詰の甘さ、
俺の未熟さ、俺の偽善ぶった性格、俺の…浅はかな行動の全てが、今へと繋がる)

加賀「…提督」

提督「くくっ…じ・つ・に、下らない!活劇、喜劇、三文芝居は大いに結構!金にも成らない無駄な演技はこの際不要だ。
好きなだけ罵れ。好きなだけ罵倒しろ。吠えた分だけ俺様が貴様等を須らく嘲笑ってやる!」

元帥「おい、提督…!」

提督「いいか、良く聞け海軍!」


俺達は貴様等海軍から忌み嫌われる存在だ。

凡そどの鎮守府は愚か艦隊にすらも同意を得られない落ちこぼれ。

貴様等が見放し、見捨て、ゴミ捨て場に遺棄した存在…それが俺達だ。

存在価値等は元から皆無!

この場にそぐわなくて当然!

例え全てが敵に回ろうと、今俺が信じるのはあの場に居る五人以外はありえない。

俺様の命を懸けててめぇ等に落とし込んでやる。

これから起こる事象に目を背けるな。

紡がれる言葉には一言半句も漏らさず耳を澄ませ。

俺様の従えるこいつ等の動きに刮目しろ。

そして思い知れ。貴様等海軍に────


提督「────目に物を見せてやる。行くぞ、加賀」

加賀「…はい」スッ…




提督「」(こうも早くにあの糞野郎の背に手を掛けれるとはよ…くくっ、これが笑わずに居られるか?
否、まだ笑う時じゃねぇ。今はまだ、ほくそ笑むだけだ。声を出して笑うにはまだ早ぇ…)


タッタッタッタ……


提督「?」チラッ…

進撃「はぁ、はぁ…て、提督!」

提督「進撃…咎めにでもきたのか。元帥の御前であんた何してんですかってよ」

進撃「あなたの、艦隊だったんですね」

提督「あぁ?」

加賀「…………」

進撃「彼女は、一航戦の加賀でしょう」

榛名「提督、いきなり走り出して……あっ」

提督「だったらなんだ」

進撃「やっぱり…あ、いや、うちに在籍してる赤城から、聞いたんです。あの、キメラの男と交戦した時に、
そこにいる加賀と共闘したと…」

提督「…それで?」

進撃「まぁ、それは…話の取っ掛かりでしかないです」

提督「何が言いてぇんだ」

進撃「以前に、聞いた事があります。眠らずの部隊、白夜の艦隊…他の艦隊の追随を許さない圧倒的な持久力を持ち、
津波のような波状攻撃を得意した艦隊戦術。一度動けば並大抵の事では止まらない、沈まない」

提督「俺に俺の昔話聞かせて何がしてぇんだ。足の裏でこねくり回すぞ若造が…!」

進撃「私は、子供の頃にあなたに会ってる」

提督「」ピクッ

加賀「……」

進撃「違いますか?」

提督「覚えちゃいねぇよ。てめぇがガキの頃がどうだったかなんて、俺が知る訳ねぇだろうが。行くぞ、加賀」スタスタ…

加賀「失礼致します。……あと、赤城さんを宜しくお願いします」ペコリ

榛名「行っちゃいましたね」

進撃「榛名…」

榛名「榛名の直感ですけど、あの方々はなんだか大丈夫なような気がします」

進撃「何だよ、それ」

榛名「ふふっ、さぁ何でしょう?」




提督の過去を知るらしいエリート提督と心悸提督。

去る提督の背中を静かに凝視し続けるエリート提督。

冷たい視線だけをその背中へ注ぎ続ける、提督と因縁のある山城。

歯を食い縛り、提督の背を睨み付ける心悸提督と心配そうな視線を送る天城。

唖然とただ見送るだけの進撃提督とその秘書艦榛名。

小さくため息をつく元帥。

それぞれの思惑が交錯する中で不敵な笑みを見せるのは提督ただ一人。

その提督と関係がある口振りを見せた進撃。

まだ顔合わせをした段階。

しかし、うねりと言う波は小波となって勢いを増し、やがては巨大な尾を引く津波と化ける。

これはその最初、ほんの始まりの部分。

そしてこれを皮切りに、ハズレ鎮守府が歴史を創る。

本日はここまで

乙です

皆様こんばんは
本日も区切りのいい所まで




~悪魔の計画・前編~



-血の海-

何故そうなったのか。

どうしてこうなったのか。

小さな歪は気付けば大きな亀裂となり、表に出る頃にはどうしようもない状況となっていた。

数多くある組織の中で、完全な潔白を主張できる強大な権力を持った組織が存在するのだろうか。

否、恐らくは大なり小なり詳らかには出来ないような事柄が存在しているのだろう。

今のこの、海軍のように。


不動「……全員、大破撤退だと……」

古鷹「ロストがいなかっただけ、良かったと思うしかないよ」

矢矧「今は全員、艦娘病院へ搬送が済んでいるわ。意識不明者は伊勢、蒼龍、飛鷹の三名…」

不動「何が、起こった…」

古鷹「解らない。ただ、最後に通信してきた日向さんの言葉は、判然としないって感じだった」


日向『筑摩と阿賀野が奇襲から最速で戦闘不能にさせられた』

古鷹『えっ!?』

日向『こいつ等は、一体何なんだ…』

古鷹『日向さん!日向さん大丈夫なんですか!?』

日向『……ガガッ……まない………に、えんを……くれ………』


古鷹「通信障害が発生し、その後の通話は不能に。それで急ぎ矢矧さんたちと最後に確認が取れたポイントへ
向かってみたら……」

矢矧「水面を漂う六人を発見した」

不動「あいつ等が、手も足も出せずにやられたってのか…」

矢矧「提督、現状では私達はこれ以上の戦線維持、及び戦闘続行は不可能です」

不動「くそったれがッ!!」



鋼鉄「長門…ッ!」

長門「すまない…油断や慢心をしていた訳ではない、だが…」 中破

酒匂「わ、私がいけないんです!長門さん、私を庇って…」 小破

長門「お前は悪くないよ、酒匂。それよりも、翔鶴と瑞鶴、天龍と龍田の姉妹達が心配だ」

鋼鉄「被害の規模は、どれくらいだったの?」

長門「私が中破、酒匂は小破で済んだが、前述の通り、鶴姉妹と龍姉妹の四名が大破だ」

鋼鉄「なんて、こと…!一体、何が起こったの…」

長門「恐ろしいほど錬度の高い連中だったのは確かだ。そして恐らく、今回の一件も深海棲艦が絡んでいる」

鋼鉄「けど、貴女達をそこまで追い詰めれるのに、何故トドメを刺さなかったのかしら…」

長門「くっ…さて、何故かな。殺気は無論あったが、本気で殺(と)りにきている感じは見受けられなかった」

鋼鉄「いいわ、とにかく二人はまずは入渠して身体を休めて」




リコリス「こいつ等…」

フェアルスト「まさか、これほど?」

ポート「水面下で動いていたのね。リコリス…」

リコリス「ええ、私達だけじゃ勝ち目が無い。物量で確実に負けるわ。それだけじゃない…」チラッ…


??「愚カナ、子たち…けど安心ナサイ。直に、マタ……昔と同じ憎しみヲ、刻み込んでアゲル」


リコリス「あんな奴、今まで見た事がないわ…」

ポート「私達よりも更に上位だというのかしら」

フェアルスト「どちらにしても、緩い平和は取り敢えずお預けのようね」

リコリス「撤退よ。私達だけでは、あの数はもう捌き切れない」


??「逃げるノカ。艦娘に成り戻った無様ナ棲鬼共ッ!」


リコリス「何とでも言うがいいわ。これは戦略的撤退と言う奴よ。それと、心変わりするなら今の内よ?
ここから後は、冷たい深海の感触しか残らないんだから…!」ギロッ

フェアルスト「この海域を侵そうと言うのなら、沈めて上げるわ。ここを貴女達の墓標にしてあげる。
水底を恐れないというのなら、進んでくるといい。その全てをアイアンボトム・サウンドへ捧げなさい!」

ポート「二人とも、行くわよ」


??「……小賢しい、成り損ナイの艦娘風情ガ…ッ!」

??「今はいいわ、程ほどにね。私もこの目で見るのは初めて…あれが、月下の艦隊の一端。
ふふっ、ゾクゾクしちゃうわね」

??「ヒトの分際デ、何故貴様は我々に手ヲ貸す」

??「そりゃあ、海軍…それも期待の持たれてる鎮守府の数々が邪魔だからよ。さっき不動の艦隊と鋼鉄の艦隊は
無力化させるに至ったって報告があったし、上々じゃないかしら…出来れば、あの月下の艦隊も沈黙させておきたいけど」

??「無理ダナ。ああは言ったが、奴等の戦力ハ侮れないモノがある。仮に無力化出来たとシテも、こちらの損害モ
並大抵では決シテ済まないノハ明白だ」

??「まぁ、それもそうね。さて、と…あと残ってるのは進撃ちゃんの所と、チョロチョロと五月蝿いネズミ共…
そ・れ・と…ふふっ、例の掃き溜め達ね」




『おかしいとは思わないかい?こちらに非があったのは確かだが、素直に謝罪をしたにも拘らず、僕等を避けるように
あの場から立ち去った。それに聞けば彼の束ねる艦娘達は、そのどれもが一癖も二癖もあるような猛者の集まりと聞く』

『一体、何が言いたいんですか』

『バァカ…暗に遠回しに言ってやっただけだろうが。首謀者はあいつだってよ』

『なっ……』

『あの地へ集められた艦娘達は、海軍を酷く嫌うか憎むかしている。相応の処罰を下されながらも、根底に突き刺さった
憎悪と言う燃料は空にはならなかったようだね』

『元帥さんよ…丁度戦力になる俺等が集まってんだ。きな臭ぇ芽は早々に摘む。あーだこーだと面倒臭ぇ議論なんざ
俺の性には合わねぇんだよ。サクッと決めようぜ…』ニヤッ

『元帥、貴女も…同じ意見ですか』

『…疑わしいのは事実だ。ならば…』

『なら、俺が真偽を確かめます』

『何…?』

『良いのかい、僕等の艦隊が戦線に加わらなくて』

『構いません。俺の艦隊だけで、抑えてみせます』

『くくっ、頼もしいこって…』


進撃「────ついては、これより無力化作戦を敢行する」

榛名「提督、本気ですか…?」

進撃「あの人の真偽を確かめる。赤城、神通、木曾、北上、夕立、時雨…準備を整えて抜錨の準備だ。
ただし、決して撃滅はするな。出来るなら捕縛する。無力化させてしまえば後はどうとでもなる」

赤城「提督…」

進撃「確かめて来い、赤城。俺も実際にこの目で見て、加賀があんな事をしたとは到底思えなかった。直感だけどな」

赤城「ありがとうございます、提督」




-四面楚歌-

鳥海「赤紙の、通達書…」

長良「えぇ…!?」

漣「マジですか…」

満潮「なんでよ…何なのよ、それ!」


現在の海軍には三つの通達書が存在する。

その中の一つ、通称赤紙。

遥か昔の戦時中、通称赤紙と呼ばれた召集令状があった。

軍隊が在郷将兵召集の為に出した令状である。

しかし現在の海軍ではこの赤紙は意味が違う。

排除通告。

鎮守府単位での消滅をこれは意味する。


提督「ちっ…実力行使って訳かよ」

加賀「この鎮守府を放棄しますか?」

提督「馬鹿か、てめぇは。んな事したら相手の思うツボだろうが」

加賀「……」

長良「でも、なんでいきなり」

提督「事情を少しでも知ってる俺等をこの機に乗じて抹殺しようって腹だろうよ。くくっ……めでたくこれで、
俺等は海軍(みうち)からも深海棲艦(てき)からも忌み嫌われる存在になったって訳だ」

満潮「ホンット、災難ってレベルじゃないわね」

提督「降りかかる火の粉は全て払う。だが絶対に身内に手は掛けるな」

漣「それって~、結構常識的な発想だと思いますけど~?」

提督「解ってねぇようだから教えてやるがな…手を抜いて制圧できる相手なら俺様だってここまで冷や水被った顔は
しねぇんだよ。これから制圧に来る相手は恐らく難敵もいいところの相手だろうよ。下手すりゃ元帥の抱える艦隊が
直で迫ってくるかもしれねぇ。だとしたら、お前等じゃ勝ち目はねぇよ」


満潮「そんなの…やってみなきゃ…っ!」

鳥海「近代化改修、ですか」

漣「へ?」

加賀「艦娘の強化を前提とした強化法ですね」

提督「ちっ…ったく、余計な知識だけは豊富だな、くそが」

鳥海「元帥の抱える艦隊であれば、錬度は申し分なし。そこから更にその近代化改修によって更なる強化が施され、
まさに鬼に金棒といいたいのよね」

提督「解ってんなら…」

長良「だからって指咥えて負ける時を待ってるのは私達じゃないよね」ニコッ

提督「てめっ……」

満潮「あーはいはい、お腹抉られちゃって弱気になってた人はちょっと黙ってなさいって」

提督「なっ」

満潮「相手が何だろうが知ったこっちゃないわ。やってやるわよ。やらなきゃ終わりっていうなら、死に物狂いで
勝ちにいってやる。あんたがいつも言ってる事じゃない。見せてやるわよ……目に物を見せてやる!」

提督「」(…本当にこれを送ってきたのは大本営…元帥からの一便か?あの時、俺は敢えて離反する素振りを取った。
反発し、反論し、暴発気味にあの場から撤退して見せた。絶対にあの野郎なら食い付く…そう信じて賭けに出た。
だが釣れたのが赤紙…?腑に落ちねぇ所の話じゃねぇだろ)

満潮「ち、ちょっと、何黙ってんのよ!」

提督「…好きにしろ。くくっ、てめぇ等の骸くらいは掻き集めて同じ場所に置いてやるよ」



『始まったね。無益な争いが…』

『まさか本当に戦わせるとはね』

『後は時間を見て漁夫の利って訳か』

『僕は別の方面を見てくる』

『蛇蝎の奴が向かったほうか?』

『そうだね。ある意味そっちの方が難敵だ』

『後は私達で事足りるよ。きっちりトドメを刺して、楽にしてあげよう』

『てめぇはたださっさと仕事終わらせて飯食いてぇだけだろうが』

『ははっ、それもあるね。動くと腹が空く。道理じゃないか』




孤独を匂わせる、そんな感覚に囚われる夢を見た事がある。

静寂が辺りを支配し、空は何処までも黒ずみ、湖面すらも黒く染まる。

そこにただ一人、立ち尽くす。

オレンジに染まったあの時のものとは違う、圧倒的に心を締め付け閉じ込めるような感覚。

己を保つ事さえ困難な緊迫した状況、そして少しでも意識を逸らせばたちまち自身すらも周りの漆黒と同化する。

それだけは、それだけはなってはならない。

意識を刈り取られる訳には行かない。

強く持て。

自らを、心を、意思を、信念を、想いを、前に踏み出す勇気を。

全てを備えたその時こそ、自らを凌駕した何かを手に入れられる。

そんな抽象的で不安が残る夢に比べれば、今のこの判然とした状況はどれほどのものか。

比べるべくも無い。

何がこようと、何が現れようと、何が起ころうと、この心が揺さぶられる事は二度とない。

だから、その人が眼前に現れても眉一つ動く事はなかった。


赤城「加賀さん…」

神通「この方々を、無力化させるのは少し骨が折れそうです」

北上「おぉおぉ、壮観だねぇ…」

木曾「一目で解る錬度って奴だな」ニヤッ

夕立「それでもやるっぽい!」

時雨「うん、全力を尽くすよ」

加賀「…………」

鳥海「空母機動部隊ですね」

長良「強そうだねっていうか、強いの確実か」

満潮「だから何よ。全力でぶっ潰すんだから!」

漣「手加減無しです!」

書き溜め分以上!
今回はここまで!

おつおつ
鳥海改二来たね、なんかネタとか考えてたりはするんかな

阿賀野またしても大破か、トコトンついてないな

乙です

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-好敵手-

それぞれがそれぞれの相手を見定め、それ以外に焦点が合わなくなる。

二人にとっては更なる集中が互いを高めていた事だろう。

世界にただ二人だけ。

この大海にたったの二人、それ以外は障害物でしかなくなる。

互いが互いを認め合い、切磋琢磨してきた日々が思い起こされるも即座に霧散する。

良く笑い、大らかな心で周りを包み込む赤城。

厳しく、予断も隙も許さない凛とした姿勢を崩さない加賀。

二人の顔は今、悲しみを帯びて共に歪んでいる。

だが、それすらも表面には出さない。

何故なら、そこは戦場だからだ。


赤城「矛を納めて下さい、加賀さん。今ならまだ間に合います」

加賀「聞けない相談です」

赤城「何故ですか?」

加賀「」ギリッ…

赤城「私達はあなた達を撃滅する為に着た訳ではありません!ですから……」

加賀「引けません」スッ…

赤城「加賀さん…!」

加賀「ここは…ここだけは!例え赤城さん、あなたが相手であっても…ここは譲れません!」カッ


ビュッ

ビュッ


目を見開いた加賀が動く。

だがそれに遅れを取らず、即座に赤城も反応して矢を射る。


ダダダダダダッ


互いの矢から姿を覗かせた艦載機群はそれぞれが一機ずつ互いを撃滅しては撃ち落されていく。



スッ……


無言のまま加賀は人差し指、中指、薬指にそれぞれ矢を挟んで背に備える矢筒から引き抜く。

弓を縦ではなく横に沿え、二本の矢をそこに番えて一気に放つ。

同時に赤城は斜め上空へ向かって一矢を放つ。


ビュッッ


赤城「流石加賀さんです…そうきましたか」


険しい表情で赤城は加賀の放った矢の軌跡を見て彼女の作戦を理解する。

だがその上で打った手だ。

赤城もまた、旧知の仲であろうと手を抜く事はしない。

それこそ最大の侮辱になってしまうからだ。

全力を持って彼女の姿勢に応える。

同じ部隊の一員だったからこそ、戦友であるからこそ、旧知の仲であるからこそ、そして誰よりも信頼できるからこそ────


赤城「慢心してはダメ。加賀さん、全力で参りましょう!」

加賀「臨む所です」


バッ


一瞬早く、既に構想を練っていた加賀が振り翳した腕を真っ直ぐ振り降ろし、赤城を指し示す。



加賀「鎧袖一触よ。心配いらないわ」

赤城「……っ」バッ

加賀「敵機側面より強襲。更に直上からの波状攻撃です」

赤城「なっ…私の艦載機群が…!」

加賀「私の狙いを理解していたのなら、もっと集中的に狙うべきです。赤城さんの狙い、その上をいかせて頂きます」


ボゴオオォォォォォン


二人の上空で一際大きな爆発が起こり、赤城の放っていた艦載機達が次々と撃墜されて水面へ浮かぶ。

残った残存兵力で加賀は追撃に出たのだ。

上空へ矢を放った赤城に合わせ一方は側面へ、もう一方は上空へ軌道修正させて指示を出して攻撃と防御を一気にこなす。


赤城「くっ…直上…直上!?」バッ


ボゴオオオォォォォォン


直撃こそ避けたものの、赤城の片腕の袖が大きく焼けて裂ける。


ビリッ ギュッ


それを赤城は自ら更に裂いて腕に巻きつける。

そして再度前を向いた赤城には微塵も隙は無かった。


赤城「上々ね、加賀さん」 小破

加賀「みんな優秀な子たちですから」

赤城「攻撃と防御を一気に行うなんて発想、無い訳じゃないけど実行できるものとは思いもしませんでした」

加賀「同じ過ちを、私はもう絶対にしません」

赤城「え?」

加賀「今のこの艦隊ならば、私は全力で力を振るえると自負できます」

赤城「加賀さん…」




鳥海「突出してこない所を見ると、結構考えて動くタイプかしら?」

神通「戦術の基本です。提督から任された以上、矢尽き刀折れるまで、私は諦めませんよ」

鳥海「」(目が…物語ってるわよね。彼女は強い…少なくとも、私が今まで出会ってきたどの軽巡よりも、
下手をすれば長良を軽く凌ぐほどのメンタリティとバイタリティを持ってるかもしれない)


対峙してから既に数分が経過する。

それでも彼女達は未だ微動だにせず海面を揺蕩う。

互いに自然体で構えもせず、各々を真っ直ぐに見据えるだけ。

動かないのではなく動けない。

そう考えていたのは鳥海だった。

微塵の隙も無い。

動き出しの糸口すら、神通から見出せない。

奥歯をかみ締めていた表情がフッと緩んで鳥海は小さく笑う。


鳥海「そうね…あり得ない事が起こるのが私達よね。ここからは、もう計算だけで全てが丸く収まるなんて思わないわ」

神通「……」スッ


静かに神通が腕を上げて砲塔を差し向ける。

それに応えるように鳥海も真っ直ぐに神通を見据えて主砲を構える。


神通「砲雷撃戦…」ジャキッ

鳥海「砲雷撃戦!」ジャキッ

神通「開始します!」

鳥海「やるわよ!」



ドン ドン ドン ドン


互いに一斉射を合図として動き出す。

二人とも時計回りに、砲撃と同時に動き出した。


ザバァァァン

ザバァァァン


一瞬先刻まで居た場所へ各々の放った砲撃が着弾して水飛沫を上げる。

速さは神通、正確さでは鳥海が一枚上手を行く。


鳥海「くっ…!」(速い上に、あの速さでブレが少ない斜線って何なのよ…!)バッ

神通「……っ!」(動きを止めたら、直に狙い撃ちされる。止まったら、ダメ…!)ザッ


互いに止まる事無く、流動的に戦闘を展開していく。

撃っては離れ、間合いを見て予測し、観測射撃を行う。

それでも決定打を双方共に打てずにこう着状態へと移りつつあるかのように見えた。


鳥海「このっ…!」ドン ドン

神通「まだ…!」サッ


ボゴオォォォォン


だが、鳥海は理解していなかった。

僅かなズレ。

細心の注意を払って神通は鳥海との間合いを一歩、また一歩と狭めていた。

神通の狙いは鳥海の無力化。

それは撃滅と言う意味ではなく、文字通り戦闘続行を不可能にするという事。

鳥海の纏う艤装の完全破壊。

だが神通もまた、ここで墓穴を掘る事になる。



神通「……っ」スッ…

鳥海「」(何、あの構えは…っていうか、ちょっと待ってよ。なんで、こんなに近いのよ…!)サッ…

神通「ふっ!」ビュオッ


大きな一歩、神通の構えは剣術の型に名を連ねる居合いの構え。

初速は静かに、淀み無く素早く、音を置き去りにするが如く、放たれた一刀は宛ら弾丸の如く。

狙い定めて目標を一瞬の内に沈黙させる。


ボゴオオォォォォン


鳥海「きゃあっ」 小破

神通「なっ」

鳥海「くっ…!被弾箇所は……こ、これは……!」


ボロッ……


神通の誤算、単純な距離の見誤り。

だがそれは鳥海の第六感が働いた事により偶然起こってしまった失敗。

僅か半歩、鳥海は後方へとたじろぐ形で退いていたのだ。

それ故に切っ先のみが鳥海の艤装を直撃し中途半端に破壊され誘爆が引き起こされた。


鳥海「あんな艤装、見た事が無い…独自にカスタマイズされた艤装とでも言うの…?」

神通「」(見誤った…まさか、あそこから半歩後ろに下がるなんて…解らない内に沈黙させるはずだったのに…)

鳥海「顔に似合わず怖いわね、あなた…」

神通「よ、余計なお世話です!」

鳥海「練り直しね、戦術の…」

本日はここまで

乙です

全くと言っていいほど進まないな

急にどうした

10日の空きは珍しいですね
待っています

皆様こんばんは
仕事に忙殺されてて合間に書き溜めていた分の投下も間々なりませんでした
少しずつでも更新していきます




木曾「悪ぃが多勢に無勢なんて寝言は止めろよ」

北上「嫌ならさっさと降参するこったぁね」


唯一、多対一と一人で二人を相手にしなければならなくなった長良。

しかし元々彼女が本領を発揮していたのはこういう状況での事だ。

たった一人で複数を殲滅する馬力と火力、そして立ち回り。

故に強敵二人を眼前に捉えても長良の腰は引ける所か普段よりも身軽になっていた。


長良「冗談!」グッ…

木曾「おっ」

北上「むっ」

長良「海には岩礁はあっても信号はないからさ。気の済むまで私は駆け抜けるよ!よーい……」

木曾「おいおい、こいつまさか…」

北上「あっはっは、木曾っちの考えきっと当たってるよ…」

長良「どんっ!」ザッ

木曾「野郎…!速ぇ…!」

北上「迂闊だったかも…これじゃ照準が絞れない」

木曾「面白ぇ、俺が止める。北上は構えて待ってろ!」ザッ

北上「あっ……もう、すぅぐ熱くなるんだから…」

長良「ん」

木曾「よう!スピード勝負なら乗るぜ?」ジャキッ

長良「」(この速さの中で構えるのか、凄いなぁ…)クルッ ザンッ

木曾「うおっ」ザザザッ



木曾の反射神経に驚嘆しながらも更にその上を行くかのように長良は併走していた木曾に逆らいその場でフルブレーキ、

方向を直角に転換させて木曾の側面を正面に捉えて主砲を構える。


長良「でも狙いの正確さは漣には及ばないね」ジャキッ


ドン ドン


木曾「くっ」(どんな反射神経してやがんだ!)サッ


ボボボボボンッ


長良「次っ」ジャキッ

北上「うんにゃ、そうやりたい放題って訳にはいかないっしょ」

長良「えっ」

北上「準備はオッケーだよ、木曾っち」ニヤッ

木曾「へへっ、んじゃま…」

北上「ギッタギッタにしてあげましょうかね!」


ザザザッ


長良「」(不審な点は、一件見当たらない…)キョロキョロ

木曾「どうした?ビビッたか?まぁよ、今から貴様に本当の戦闘ってヤツを、教えてやるよ」バサァッ チャキッ

長良「え、と、刀剣…!?」

木曾「やれ、滑走台だ、カタパルトだ、そんなもんはいらねえな。戦いは敵の懐に飛び込んでやるもんよ。なあ?」ザッ

長良「」(くるっ!)


ボゴオオォォォォォン

ザバアアアァァァァン



長良「うわぁっ!え、な、何ぃ!?」

北上「ありゃ、外れた?」

長良「え、ちょ、ちょっとちょっと…」(何今の、海面が爆発した!?まさか機雷……)

木曾「余所見かよ。余裕だなあ、おい!」ビュオッ

長良「うひゃあっ」ヒョイッ

北上「地味に良く動くなぁ…んでも、その方があたしゃありがたいけどね~。木曾っち、追い込むよ~」

木曾「おう!まぁその前に…」チャキッ

長良「あ、あの刀剣はヤバイ…かなぁ。どーしよ…」

木曾「恨むなら貴様んとこの提督恨めよ。つってもまぁ、別に俺達は貴様等を撃滅する為に来た訳じゃねぇ。
だから事と次第によっちゃあ見逃してもいいぜ?」

長良「い、今更ですか!?」ガーン

北上「木曾っち、それさぁ…最初に言わなきゃ意味ないじゃ~ん」ジトー…

木曾「う、うっせぇな!元はと言えばコイツがいきなりかっ飛ばしてきたからだろうが!」

長良「なはははは…まぁでも、私達は司令官を誰一人として疑っても居ないし、信じてるから」

木曾「…何?」

長良「それで裏切ったら、恩を仇で返してるのも一緒だよ。私の信条、受けた恩は形で返す!」ジャキッ

北上「言うねぇ…痺れるねぇ!そーいうの、お姉さんは共感持っちゃうよぉ!んでも負けてもらうけどね~」ジャキッ

長良「なっ…!」

北上「四十門の酸素魚雷は伊達じゃないからねっと」バシュン バシュン バシュン

長良「くっ」ザッ

北上「ふふん」ニヤッ


不敵に笑う北上、放たれた魚雷は北上が指定した方角へと真っ直ぐ伸びていくが、長良からは照準が僅かにずれる。

しかし────


ボゴオオォォォォォン


長良「きゃあっ」 小破

木曾「くくっ、容赦ねぇでやんの…」

北上「岩礁はあっても確かに信号は無い。んでも、信号に変わるモノなら用意できるんだなぁ」

木曾「うちの姉貴は性質悪ぃぜぇ…降参すんなら今の内ってな」

長良「くっそ…あったまきた!」

北上「ありゃ、闘争心に火を点けただけかもしんないわ…」

木曾「へへっ、面白ぇ…まぁあれでゴメンナサイじゃ、骨があるも何もあったもんじゃねぇからな」




満潮「赤い方、私が行くわ」

漣「ほいさっさ~♪それじゃ私はあっちの黒い方だね!」

夕立「時雨!」

時雨「うん、一気に攻めるよ」


先手必勝。

夕立と時雨の作戦はタッチ&ゴー作戦だった。

目標を認識した段階で一気に決着をつける。

長期戦に持ち込まず瞬殺で対象を沈黙させる作戦。

しかしその作戦は今回相対する二人には見事にハマらなかった。


ビュオッ


空を裂く、という表現があるが満潮はまさにそう表現するに等しい動きを見せる。

海面を割って、風を切り、空を裂く。

夕立と肉薄するのにそう時間は要らない。

まさに一瞬。

そんなデタラメな動きの中で反動を物ともせずに主砲を構える姿を何とか捉え、夕立の顔つきが変わる。


夕立「し、島風と同じ…ううん、下手したらそれより速いっぽい!」

時雨「何なんだ、あの子は…!」

満潮「相手が何だろうが知ったこっちゃないわよ。目に見える敵は全て私がぶっ潰して上げるわ!」


夕立と時雨、二人の企てた奇策は策に移る前に潰された。

異常とも言える満潮の単身先行による奇襲によって、ただ二人の範囲に侵入を許したというだけで敢え無く散った。

そして彼女が二人のお株を奪う。


満潮「先手必勝よ!」ドン ドン

夕立「時雨!」ドンッ

時雨「うわっ」ザバァッ


ボゴオオォォォォン


夕立「けほっ、こほっ……」 小破

満潮「直撃を避けたっての!?」ザザザッ

夕立「夕立、突撃するっぽい!」キッ


満潮を睨みつけ、夕立の表情に険が刺す。

それと同時に時雨も動く。

狙いは否応無く漣へ視線を移し手にする主砲を構え直した。

短いですが今回はここまで

待ってたよ
乙様

乙です

おつ、生きてるようで何よりです

一人であそこの木曾北上とやりあうとか無理ゲー過ぎる

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします




漣「むっ」

時雨「この借りは後で返そう。今は…君だ。いくよ!」ザッ ドン ドン


バッ

ボボボボボボボボンッ


漣「ふふん、当たらなければどうという事は無い!ですよ!」

時雨「そうかい?なら、この晴天の中で唯一雨を降らせようか」バッ

漣「はいぃ!?」

時雨「雨はいつか止むさ。でも、この雨は降り続ける…僕からのささやかな挨拶だ、いくよ!」


時雨が上空へと放り投げた無数の筒、それは夕立ご用達の時限式魚雷。

接触で炸裂はせず、時間経過で爆発を引き起こす特注品だ。


バシッ ドゴッ ブンッ バシィッ


ある物は弾き飛ばし、殴り飛ばし、蹴り飛ばし、手に持ち替えて更に時間差で投げ飛ばし、縦ではなく横に向けての

無数の魚雷と言う雨が漣に向かって文字通り降り掛かる。



漣「僕っ子恐るべし…けど!」サッ ドン ドン


ボンッ

ボボボンッ


飛び来る魚雷から更に距離を取りつつ、漣は直近の物から適時確実に主砲で魚雷を破壊していく。

漣の強み、それは正確無比の射撃能力。

動かない状態での固定射撃なら言わずもがな、移動しながらの射撃すらもその照準はブレを全く見せない。


時雨「なっ…!」

漣「五月雨の 降り残してや 光堂。なんちゃって♪」

時雨「言うね。僕、結構芭蕉の句が好きなんだ。君の強さは認めるよ。でもね、提督の艦隊の一員として、君には
絶対に負けないよ。止まない雨は無い…けど、先刻通りこの雨は降らせ続ける」ババッ


再び、今度は先刻の倍以上もある数の魚雷を一斉に散りばめる。

そしてさっきよりも更に速く、鋭く、時雨の動きが洗練されて舞い上がった魚雷の数々が宙からブレて消えていく。

水中を進む魚雷のそれとは一線を画す速度。

まさにそれは海上を駆ける弾丸。


ボンッ

ボボボボンッ


漣「や、やばい…!」グッ



全てを御せず、漣は咄嗟に両腕を前面でクロスさせて完全な防御姿勢を取る。

その直後、一瞬にして彼女の姿を掻き消すように残りの魚雷が一斉に着弾と共に爆発を起こした。


ボゴオオオォォォォォォン


時雨「朝比奈の、紋を十ずつ十寄せて、百人力の鶴の紋なり。今の僕は進撃の艦隊の代表としてきているんだ。
例えどんな理由があろうと、ここで負ける訳にはいかないのさ。君にはここで、沈黙してもらうよ」

漣「むぅぅ……危なかった」 小破

時雨「あの中を掻い潜ったのかい?凄いね…素直に感心するよ」

漣「思い出したですよ。進撃さんの艦隊には駆逐艦で飛び抜けてるのが何人か居る…僕っ子さんはその中の一人。
結構物騒なあだ名多いですよねぇ。みっちゃんと交戦してるのは紅の悪魔、なんて呼ばれちゃってますし~」

時雨「彼女の前でそれは言わない方がいいよ。本気で怒るから。ああみえて結構甘えん坊な所があって繊細なのさ」

漣「僕っ子さんだって随分なあだ名あるじゃないですか」

時雨「飛雨の時雨…飛雨を魚雷や主砲の砲撃に見立てたあだ名らしいね。中々詩的で僕は好きだよ。
まぁでも、好んで名乗ろうとは思わないけどね?」クスッ…

漣「怖いですねぇ」

時雨「君達と相対するに当たって、僕も提督に頼んでもらって色々と調べたさ」

漣「む?」

時雨「君の事も勿論ね。奇抜の一言で片付けられているけど、僕からしてみれば飄々とした態度とは裏腹の表情を
見せる君を一概に奇抜の言葉で済ませる訳にはいかないよ。まさに昼行灯…最警戒だ。さて、お喋りはこれ位にして
そろそろ二回戦と行こうか」ジャキッ

漣「上等ですよ。今日の漣は趙本気モードですよ。狙いは外さないです!」ジャキッ


各地で動きが激しくなり、提督たちの下にも避け難い戦いがもたらされる。

相手は元帥から絶対の信頼を預かる進撃の艦隊。

果たしてこの交錯は吉と出るか凶と出るか。

一先ずここまでで、一時間ほど休憩します

再開します




~悪魔の計画・後編~



-海を駆る乙女達-

提督と進撃提督の艦隊が激突した頃、一歩退いた所で一人の男が口元を歪めて艦隊を率いて待っていた。

男の名は心悸。

今回の進撃の言葉を利用し、彼を嗾けた張本人。

彼の艦隊が提督の艦隊を撃滅すれば良し。

せずとも沈黙させられるのならそこを利用して自らの手でトドメを刺す。

その際、現場を目撃していた進撃の艦隊も同様に葬り去る算段で彼はそこに居た。

そしてもう一人。

心悸とは反対側に位置取り、彼と二人で提督達を挟撃する算段でそこに陣取る艦隊がある。

通称、鮮血の艦隊と呼ばれ畏怖される艦隊。

艦娘達も好戦的で敵と認めた相手へトドメを刺す事を全く躊躇わない艦隊だ。

それらを指揮するのは百貫と呼ばれ、物腰穏やかな性格だが並外れた巨躯を持っている提督。

その物腰や表情からは到底想像もできないような冷徹な言葉が数々生み出されている。


百貫「出だしは互角…それにしても、一人少ない状態でハズレの方は良く頑張るね。まぁ、指揮を執ってるのが
あの元白夜の艦隊の提督じゃあ頷けるものがあるけど…手負いになっちゃ私の艦隊からは逃げられないよ」

空母艦娘「提督、布陣は完了しました。いつでも強襲を仕掛けられます」

戦艦艦娘「あの二つの艦隊がまさか離反を企てていようとは…ハズレはともかく、進撃の方は目に余りますね」

重巡艦娘「でもだからこそ、早い段階で芽を摘まれるのでしょう?余計な手間を省く、いつも提督が仰っています」

百貫「ははっ、君達は物分りが良くて助かるよ。何より、こんな血生臭い争いはさっさと終わらせて美味しい物を腹一杯
食べたいだろう?彼等を潰せば、当面は面倒ごとがグッと減る。これは喜ばしい事だよ」



ピー ピー ピー


百貫「おっと…はいはい、どなたかな?」

心悸『すかしてんじゃねぇよ。そっちは準備整ってんだろうな?』

百貫「やあ、君か。勿論、そっちはどうなんだい?」

心悸『いつでも乗り込めるぜ。ただまぁ、どうせ勝手にドンパチやって手負いになってくれるんだ。
そこまでは精々見届けてやらないとあいつ等の面目も立たねぇだろうよ』

百貫「何だかんだ言って、卑劣で悪辣なのは彼に次いで君が二番目に私は思うね。性格がそのままでてるよ」

心悸『うっせぇよ。色欲キメラだって大概だろうが。むしろあいつの方がよっぽどエグイね』

百貫「ははっ、そこには同意する。さて、不動さんと鋼鉄さんには黙ってもらった事だし、彼等にも黙ってもらおう」

心悸『こいつ等の場合は永遠に、だけどな』

百貫「くふっ…同意する」ニヤッ…




提督「」トン トン トン……


ピー ピー ピー


提督「…………」


ピー ピー ピー


提督「ちっ」


ガチャ……


提督「誰だ」

進撃『俺です』

提督「その声は進撃か。上官の前じゃ猫被って一人称が『私』だったのにな。化けの皮剥ぐのが早いんじゃねぇのか」

進撃『大事と小事で割り振るなら小事です』

提督「くくっ…敵は本能寺に在りってか?」

進撃『そういう言い回し、余り好みませんね。まぁでも、むざむざ利用されっぱなしっていうのも俺の性に合わないんで』

提督「てめぇ……解ってて嗾けて来たのか」

進撃『相手の言葉尻に噛み付くのが得意なもので。あなたの艦隊を沈黙させれるならそれでも良し、無理な場合でも
相応の策は練っていたつもりです』

提督「一応聞いてやるよ。大英雄のクソガキがひけらかす戦術って奴をな」

進撃『大本営で会った時もそうでしたけど、言葉に常に棘を含みますね』

提督「っせぇよ。俺ぁてめぇみたいな奴が心底気に食わねぇんだよ。見てるだけで虫唾が奔る。こうしててめぇと直に
会話をしている事が極めて不愉快だ。じ・つ・に、不愉快だ!いいか、俺様の機嫌が変わらねぇ内に弁舌に捲くし立てろ。
だるく感じたらその場で通話を切る。横槍挟まれても御託は抜かすな。反論は認めん。以上だ、さっさと抜かせ」

進撃『想像以上に俺様だな…』ボソッ…

提督「通話切るぞ、じゃあな」ブツン



…………ピー ピー ピー


提督「ちっ」


ガチャ……


提督「うるせぇんだよクソガキ、死ね」

進撃『…目標は二つ。恐らく相手はこちらを絶対に逃がさない布陣で待機してます。ただ相手にとって誤算があるのは
俺達に援軍の手立てがある、と言う点です。厳密には俺の艦隊に対しての援軍ですが、相手方からしてみれば俺の艦隊は
事のついで、あなたの艦隊とあなたを潰すついでに手負いになるであろう俺の艦隊も潰せれば尚よしって所でしょう』

提督「」(野郎、スイッチ入るとさまになるじゃねぇか)

進撃『強硬手段に出るのは恐らく俺もハズレ鎮守府近海にまで顔を出すから。あなたの首と揃えて始末する気でしょうね』

提督「…相手が何か解ってて言ってんのか」

進撃『そんなもの解りませんよ。ただ相手からわざわざ顔を出してくれるんだから否が応でも解るものでしょう。
悪役の常套手段ですよ。冥土の土産に正体明かすってアレです。だから逆手にとって土産だけもらって冥土には相手に
行ってもらう事にします』

提督「言うじゃねぇか。だがてめぇんとこの艦隊と俺様の艦隊は既にぶつかってる。これを制すのは最早不可能だ」

進撃『提督の艦隊を出来る事なら沈黙させ、捕縛する事…それが俺が今回出した任務内容です』

提督「はっ、そいつはまたご丁寧にありがとよ。てめぇ等如きに心配されるほどあの馬鹿共は落ちぶれちゃいねぇよ。
上等だよ。それだけ大層な作戦立案が出来るならその後の展開も大方予測できるだろうよ」

進撃『こちらが弱った所に総攻撃を仕掛けてくる、が最も有体です』

提督「ダァホ、そんな事ぁ基本だろうが。具体性を示せつってんだよこのボンクラすかしっ屁野郎」

進撃『んなっ』

提督「くくっ、あの野郎に組してるってんなら体の随所に渡るまで刻み込んでやる。馬鹿が誰に喧嘩売ってんのかを
再認識させた上で地べたに這い蹲らせ、生まれた事を後悔するほどぶちのめす!じ・つ・に、面白い!ゴミが必死に
なる様ほど滑稽なものはない!俺は今、ひっっっじょうに気分がいい!進撃、てめぇにも見せてやる…目に物って
やつがどんなもんかってのをな!」

進撃『…………』(時折居るんだ…反目して、一件不規則で、道を踏み外しているように見える。決して組織の傀儡
にならない、我道を貫く傾奇者…性格こそ違うけど、まさに俺が目指す、この人は究極系かもしれないな)

提督「おら、すかしっ屁野郎、ヒントはくれてやったろうが、さっさと具体性を示せ」

進撃『勘違いしないで下さいよ。今から計画練ってたんじゃ二人とも海の藻屑でしょう。既に、手は打ってあります』




??「行きますよ」

??「当然でしょ」

??「売られた分はきっちり返させて貰う」

??「そうね、ただし…漏れなく倍にして返すわ」

??「絶対に許さないんだから!」

??「ただでは済まさん!」



提督「んだと?」

進撃『急ごしらえだったんですけどね。是非参戦したいって子達が多かったもんで』

提督「はぁ?」

進撃『これ、嫌味ですけど…結構、俺は元帥始め各方面に人望あるみたいなんで』ニヤッ

提督「…ちっ、言ってろすかしっ屁野郎が。ならそっちの指揮はてめぇに任せてやるよ。しくじったらてめぇんトコの
鎮守府に核弾頭ぶち込んでやる。全身洗って死ぬ準備も整えとけ」

進撃『じゃあ作戦が成功したらこっちの言い分、幾つか聞いてもらいますよ』

提督「ほざいてろ、クソガキ」

進撃『って訳で、俺はこれからそっちの援軍側の指揮を執ります。提督はこちら側の方をお願いします』

提督「あぁ!?」

進撃『それと、そちらにいる鳥海に伝えて上げて下さい』

提督「んだよ、次から次へとうっせぇ野郎だなてめぇは!」

進撃『────────』

提督「……なんだと」

今回はここまで

乙です
相変わらず良いところで切りますね

乙です

皆様こんばんは
数レス更新します




赤城「くっ…まだです。この程度では、まだ…!一航戦の誇り、例えあなたが相手であろうと失う訳にはいきません」

加賀「それでこそ赤城さんです。だからこそ、私もこの身に括った一振りとも言うべき一航戦の誇り。この身を逆に
切り裂こうとも揺るがしはしません」


鳥海「艦娘の中には近接格闘に秀でる子も居るって聞いたけど、まさか剣術とはね…」

神通「艦娘である前にこの身に宿る信念は軍人のものです。刀剣こそ軍人の誇りではありませんか。この一刀、
己の魂を乗せて全力で振り抜きます」


長良「全身全霊、一気に叩く!」

木曾「へへっ、いいねぇ…そういう姿勢、アリだな」

北上「暑苦しいのは木曾っちだけでいいんだけどね~。ま、やってやりますか~」


夕立「許してって言っても許さないっぽい~!」

満潮「だ~れが言うか!逆に言わせてやるわよ!」

漣「漣、出る!」

時雨「時雨、行くよ!」


──薄らアンポンタン共、よく聞け──


加賀「なっ」

赤城「こ、これは…」

鳥海「司令官、さん…?」

神通「両艦隊の回線に通信って…」

長良「…っとっと!な、何!?」

木曾「んだぁ、このムカつく言い回し…」

北上「ウザ~」

満潮「あんのアホ面オヤジ…!」

漣「はぁ、もう…空気読んで下さいよ。ご主人様ぁ」

夕立「え、えぇ?」

時雨「これは…」

提督『今から特別に貴様等の指揮を俺様が執る。解ったら双方共に武装を解除し、これから俺様が言う作戦に従事しろ』

北上「あのさ~、何処の誰とも解らん人の命令とか聞くと思ってるの?」

提督『そうか。ならば貴様は勝手に死ね』

北上「んな!」

提督『馬鹿で目先のモノにしか事を構えず、無い脳みそすらその1%も使わない木偶以下の貴様等にも解り易い様に言う。
単純な事だ。従わない、従えない、理解できない文字通りの馬鹿は死ね。死相の出てる奴の面倒までは見きれんからな。
球磨型三番艦重雷装巡洋艦の北上』

北上「むっ」

提督『ノータリンの貴様でも褒められる部分はあるから冥土の土産に教えてやる。盤面に散りばめた幾重もの罠の数々、
そのまま放置すれば文字通りの馬鹿と嘲笑ってやるが、貴様ならこれをその後の展開でどう使うか位は理解できるだろう』

北上「」(こいつ、罠の存在に気付いてたの!?)

木曾「おい、ざけんなよ!何様だテメェ!!」

提督『提督様だボケッ!提督に艦娘が逆らってんじゃねぇよこの片目眼帯口先女!』

木曾「んだとコラァ!!」

提督『悔しかったら生き残っててめぇが強ぇってのを証明して見せろ。やれ滑走台だ、カタパルトだ、そんなもんは
いらねぇんだよな?懐に飛び込んでやるのが戦闘なんだろ?だったらやってみせろ!いつまでビビッてるつもりだ』

木曾「言わせておけば…ッ!」

提督『ビビリと言えばそこの赤服の軽巡は相当ビビリだよな?』

神通「……」

提督『大層な獲物担いでる割には一歩所か半歩も踏み込めちゃいねぇクソ芋じゃねぇか。先陣切ってカチこむのが軽巡の
真髄じゃねぇのか。それで過去は華の二水戦とは片腹所か笑いすぎて膝付くってんだよ』

神通「」ギリッ…

提督『おら、水遊びが大好きな駆逐艦共。てめぇ等はいつまで水遊びしてるつもりだ。そんなもんは浜辺だけで結構、
大いに結構!じ・つ・に、どうでもいい!存在そのものが邪魔だ!水遊びを続行するつもりならさっさと消えるか死ね』

夕立「むっかぁ…」

時雨「流石の僕も憤りを感じるよ」

夕立「私達がいつ水遊びしてたっぽい!?」

提督『寝言は寝て言えよ、この勘違い馬鹿が。駆逐艦の真髄を忘れたってんなら本格的に死んで生まれ変われよ、ぽい介女』

夕立「むっかぁ!」

時雨「僕達の真髄は夜戦だ。つまり、あなたが立てる作戦と言うのは、夜戦がキーポイント、と言う事かな?」

提督『ほぅ、少しは頭使ったか。だが的外れだ。それは後で説明してやる。さて、それと……おい、一航戦(笑)共』

赤城「」ピクッ

加賀「……」

提督『見せて貰おうじゃねぇか。資料通り、今も変わらぬ錬度を誇る歴戦の勇か否か。南雲機動部隊を名乗るのなら、
南雲忠一海軍中将殿も納得の戦力を見せてくれるんだよなぁ、一航戦のお二人さんよ』

赤城「あなたは……」


スッ……


赤城「か、加賀さん…」

加賀「提督、流石に不愉快です」

提督『ああ、そうかよ。だが俺様はてめぇのご機嫌伺ってやるほどの器は持ち合わせちゃいねぇからよ。
取り敢えず文句があるならまずは行動で示せよ。これからてめぇ等が行うのは撃滅戦でも殲滅戦でもねぇ。鎮圧戦だ。
いいか、よく聞け木偶共────』



進撃『撃滅や殲滅は決してしないで下さい。相手が艦娘である以上は…』

提督『あぁ?』

進撃『あくまで俺達は云われない襲撃に遇った為に仕方なく応戦し、これを制圧・鎮圧したという体を貫きます』

提督『てめぇ、澄ました面してサラッと後腐れねぇ方法選ぶな』

進撃『面倒事がこの上なく嫌いなものでして』クスッ

提督『だがまぁ、てめぇのそれは杞憂だ。元帥の女狐はそこまで落魄れちゃいねぇよ。こいつは完全なる罠。
俺様用にカスタマイズされた特注品の作戦って訳だ。てめぇ等はそれに利用されただけに過ぎねぇんだよ』

進撃『利用…?』

提督『女狐の差し金じゃねぇって事だよ。まぁ作戦自体は考えるのも面倒臭ぇ…てめぇのを採用してやる。
ありがたく思うんだな』

進撃『どんだけ上からなんだよ…』ボソッ

提督『だぁってろ、このダァホ。一々楯突いた発言してんじゃねぇよ、ぶっ殺すぞ。これ以上の反論は認めん、以上だ』


提督『────解ったな。こいつは俺と進撃の意見の一致だ。反論は認めん。解ったら反撃の狼煙を上げろ!』

加賀「全く、相変わらず提督の言動にはイラつきますが…それでもあなたが居れば鬼に金棒とはこの事ですね」

赤城「…でも、正直ホッとしています。これ以上、加賀さんと争わなくて済みました」

加賀「……肩の怪我、大丈夫ですか」

赤城「これしき、『あの時』に比べればどうという事はありません」

加賀「赤城さん…」

赤城「さぁ、今こそ見せましょう。一航戦の戦いを!」

加賀「流石に気分が高揚します」

赤城「ふふっ」ニコッ

趙短いですけど、ここまで

乙です



安定の提督である

深夜にこんばんは
少し更新します



木曾「ったく、何なんだよ今のは…」

長良「私達の司令官だよ」

北上「え゛……あんなのが提督なの?うわー、うちらの提督が可愛く見えるわ~。あー、良かったー。あんなんじゃなくて」

木曾「大体、今さっきまで実弾ぶっ放してた同士で共闘しろなんてナシだろ」

長良「昨日の敵は今日の友、っていうじゃん?」

木曾「昨日所か今だろ!」

長良「じゃあ……今日の敵は今の友?」

北上「あんた、頭だいじょーぶ…?」

長良「司令官と進撃さんが共闘するって言ったんでしょ?だったら私達は司令官の言葉に従うだけだよ」

木曾「それがうちの提督の罠だって可能性を考えねぇのか?」

長良「ふふっ、悲しいけどね。私達にはそういう『嘘』は通用しないよ。『匂い』で解るんだ。直感って言えばいいのかな?
その言葉や表情なんかでピーンとくるんだよ。ああ、これは嘘だ、とか罠だってね」

北上「」(そりゃあ、四面楚歌で周りからそんな扱い毎度受けてればある意味そういった感覚は研ぎ澄まされるか~)

木曾「おい、何黙ってんだよ」

北上「ん~、まぁ、多分そういう事なんじゃない?」

木曾「はぁ?」

北上「だぁからぁ、共闘すんでしょ、きょーとー」



夕立「共闘は別にいいけど誰が取り纏めるの?」

時雨「それは…」チラッ…

加賀「…………」

赤城「皆さん、通信は聞きましたね?」

木曾「あぁ、きいたよ。ムカついたけどよ」

北上「即席のこの部隊の指揮とかぶっちゃけ無理っしょ~」

満潮「あのアホ面オヤジ、何考えてんのよ…」

漣「何かしら考えてるとは思うんですけどねぇ…」



神通「この状況で、共闘といわれても…」

鳥海「死にたくないのなら、従った方が得策だと思いますよ」

神通「……」

提督『鳥海』

鳥海「司令官さん…?」

提督『お前、摩耶って姉妹居るな』

鳥海「…それが今関係あるんですか?」

提督『摩耶は大本営直属の秘匿部隊に所属している。通称サフ…旗艦を勤めるのは妙高四姉妹の一人、那智だ。
予断だが、以前に貴様等に加勢したのもその派生部隊、通称サドバフ。こっちは餓えた狼なんて野蛮な異名が通る
足柄が旗艦を勤める、武闘派集団だ』

鳥海「だから、それがどうしたと…」

提督『恐らく今俺様達を襲撃してる連中の差し金、もしくは当人達だろう。サフは数週間前に件の調査の最中に襲撃を受けている。
那智、摩耶、祥鳳、三者共に意識不明の重態、今も生死の境を彷徨っている状態だそうだ』

鳥海「なっ……」

神通「……?」

提督『死の道を辿り後を追うなら別だがな、貴様には生憎と選べる時間と猶予がある。この場を切り抜け、雪辱を晴らすか?
それとも、先の通りに混乱の渦中で死ぬか…まぁ、てめぇなら出す答えは決まってるだろうがな』

-七つの大罪-

百貫「こっちに向かってくる六人の艦娘がいる?」

戦艦艦娘「はい。どれも、所属先が異なります」

百貫「私達の動きに気付いていただと…いいさ、降り掛かる火の粉なら取り払わないとね。第一種戦闘準備」

戦艦艦娘「了解致しました」

百貫「空母さん、斥候の具合は?」

空母艦娘「錬度は極めて高い艦隊です。私の艦載機、その全てを撃滅されました」

百貫「…何?」

空母艦娘「このまま放っておけば、前と後ろからの挟撃を受ける形になります」

百貫「タイミングはずらされるか。仕方ないけど、まずは後方の憂いを消そう」

重巡艦娘「きます!」

百貫「……彼女達は、まさか……」



妙高「此度の艦隊指揮、僭越ながらこの妙高が預かり受けます」

足柄「たまの姉妹共演だもの、異論なんて私にはないわ」

長門「問題ない。私はただ、眼前の敵を倒すのみだ」

瑞鳳「空の目は任せて!」

利根「今更異論も何もない。こやつ等を止めねばならんし、吾輩等にはそれをするだけの借りがある!」

矢矧「ふふっ、私もこういうのは嫌いじゃないわ。さて、今日はどんな戦略を立てるの?」

妙高「細かい戦術は皆無です。この戦力を以て、真正面から敵戦力を無力化、制圧します!」

足柄「ふふっ、上等よ…!」ジャキッ

長門「瑞鳳、機先を制せ!」

瑞鳳「はい!さあ、やるわよ!」サッ

利根「合わせようか!」サッ

瑞鳳「攻撃隊、発艦!」ビュッ

利根「機を見て時を待ち幾星霜…この時のために、カタパルトは整備したのじゃ!」バッ

妙高「二人の艦爆艦攻隊と索敵機の発艦後、一気に攻勢へ転じます」ジャキッ

矢矧「ここからが私の本領発揮よ!」ジャキッ

長門「ビッグセブンの力、侮るなよ」ジャキッ

足柄「さぁ、覚悟しなさい。やり方を問わないあなた達の海戦術、それを今日を以て断罪して上げるわ!鮮血の艦隊!」

百貫「寄せ集めただけの烏合の艦隊が私の艦隊に喧嘩を売るのか?大本営直営隊の旗艦達に進撃、鋼鉄、不動の生き残り。
まさに寄せ集めだね。スペシャルチームと呼ぶには些か艦隊錬度が劣るんじゃないのかな?どうして私が居るのか、それを
何処で知ったのか……まぁ、今はいいさ。面倒事は後回し、それが私の信条でね。君たちを血祭りに上げた後で考えるよ」


ボゴオオオォォォォン

ザバアアアァァァァン



百貫「なっ…」

空母艦娘「私の艦載機が競り負けたですって…!?」

百貫「相手は、軽空母だろう!?」

瑞鳳「舐めないでよね!軽空母だって、頑張れば活躍できるのよ!さぁ、皆さん!」

長門「よし!」

足柄「那智を甚振ってくれた分、倍にして返すわ!さぁ行くわよ…戦場が、勝利が私を呼んでいるわ!」

妙高「海軍の提督の座に居ながらこのような瑣末な不祥事を引き起こし、あまつさえそれを棚に上げて口封じに出ようとは、
言語道断にして悪辣非道の限りと判断いたします。合わせて内乱を引き越し、これを先導・誘導した罪は計り知れません」

百貫「……だから?」

妙高「だから…?事の重大性が理解できないのでしょうか?だとすれば、致命的と言わざるを得ませんね。なればこそ、
これ以上の抗弁は意味を成しません。大人しく縛について頂きます」

百貫「縛?お縄につけって?この私を、捕らえると言うのか?戯言にしても余り好ましくない冗談だね。私が許す……
こいつ等を全員、血祭りに上げろ」ニタァ…

戦艦艦娘「提督の御心のままに…」

百貫「私は次代の海軍の足場を担う存在だ。その私に歯向かうとは、くふっ……馬鹿を地でいく愚かな行為だと知れッ!!」

長門「馬鹿はお前だ!」

百貫「戦艦長門か…大局を見れないようでは底が知れるね。最も、鋼鉄の下に居る時点でお察しなのかもしれないね?」

長門「口を慎め。私の提督は少なくとも貴様のような落魄れ者ではない。比べられる事さえ不快だ。何より、貴様等の行った
姑息な手段が何より気に入らない。矜持(プライド)すら失ったというのなら…その残り粕諸共、私が蹴散らしてやろう!」

百貫「潰せ……念入りに!」

戦艦艦娘「お任せを」ザッ

長門「そこを退けぇ!」ジャキッ

戦艦艦娘「聞けませんね」ジャキッ

長門「面白い、ならば力で押し通る!」ドォン ドォン

戦艦艦娘「全てをなぎ払う!」ドォン ドォン


ボゴオオオォォォォォォン

取り敢えずここまで

乙です

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします



瑞鳳「絶対に負けないんだから!」

空母艦娘「軽空母風情が…!たまたまの撃墜に浮き足立って私と対峙するなんて、愚弄を通り越して滑稽、愚かよ」

瑞鳳「よくも、祥鳳を…!」

空母艦娘「祥鳳…?あぁ、あのマヌケな軽空母……」クスッ

瑞鳳「マヌケ、ですって…?」

空母艦娘「そうよ。艦載機をちょっと出しただけでいそいそと前に出てきて自分から罠にかかるんだもの。
それをマヌケって表現しないで何をマヌケって言うのかしら?まぁ、マヌケっていうより、ただの馬鹿よね」

瑞鳳「…………」ギリッ…

空母艦娘「あなたも十分マヌケだから安心なさい。念入りに艤装を破壊した上でじっくりと甚振って水底へ沈めてあげる」

瑞鳳「…私が何か言われるのは別にいい。でも、私の大切な人たちを悪く言うのは絶対に許さない!」


重巡艦娘「提督の命令は絶対なのよ。だから、潔く死んでくれると嬉しいんだけど、どうかしら?」

妙高「矜持を捨てるだけならまだしも、忘れているようでは最早この言葉はそちらまで届きませんね」

雷巡艦娘「矜持、矜持って…古臭いのよ。したいようにして何が悪いの?私達の顔色しか伺えない何の取り得もない、
ただの木偶人形同然の人間に!使われるなんて真っ平よ…それを提督は解ってくれてるの、だから私達は……」

足柄「いいわよ、それ以上はもう。泣こうが喚こうが笑おうが叫ぼうが…私が絶対に許さないから」

雷巡艦娘「あらら、ご立腹ね。那智さんの事かしら?」

足柄「…あなたがやったの?」

雷巡艦娘「重巡の子と一緒にね。無防備だったんだもの…思わず躊躇っちゃうくらいに…」クスッ

重巡艦娘「味気無かったわよ、あの子…睨む顔だけは一端だったから、少しイラッときて蹴り飛ばしちゃった」

足柄「勘違いしないでくれるかしら。あなた達程度が那智を倒した気になっているって言うのが気に入らないのよ」

妙高「力の差を、教えて差し上げます。合わせて、力の誇示の仕方も披露して差し上げます」



利根「吾輩の相手は主か」

航巡艦娘「さっきの軽空母の援護をしたのは貴様だな」

利根「はて、何の事かのう」ニヤッ

航巡艦娘「瑞雲程度を何機飛ばそうと、高が知れているわ」

利根「解っておらんのう…良かろう、お主に偵察機が何たるかをその身をもって知らしめてやろう。聞いて覚え刮目せよ。
そしてその命尽きるその時まで、忘れるでないぞ?吾輩が利根である!主等に、終焉を齎す者じゃ!」

航巡艦娘「世迷言を…!」

利根「世迷言を奏でておるのはお主等じゃろう。筑摩が受けた分はきっちり清算させてもらう!」


矢矧「貧乏くじを引くのは決まって阿賀野姉ぇなのよね。けど、今回のはちょっと見過ごせないレベルよ。深海棲艦かと
見紛うかのような卑劣な手段の数々…艦娘としての在り方すらも失ったというのなら、もはやそれは艦娘ではないわ」

軽巡艦娘「はぁ?雑魚だから負けた、ただそれだけの事よ。最新だか何だか知らないけど、結局は力よ。力こそ全て!
弱者には何も言う資格も、権利も、立場だってありはしない!同じ軽巡同士なら、今回は私が勝ったんだから阿賀野が
弱者、私が強者という事実が成り立つだけよ。悔しいなら私に勝ちなさい」

矢矧「…私は、最後の最後まで暴れてみせる。もう絶対に、私の目の前では誰も沈ませない。全てを護りきる!」

軽巡艦娘「大見得切るのは結構だけど、私に勝ってからにしなさいよ。余り吠えてるだけだと、負け犬の遠吠えになるわよ?」クスッ

矢矧「言ってなさい。阿賀野型を軽巡と侮らないで!阿賀野姉ぇが受けた苦しみ、あなたに倍にして返してやるわ!」




海軍。

かつては陸海空と三竦みの形成を保っていた世界の軍事バランスは艦娘と言う海軍の切り札によって拮抗が消えた。

逸早く陸軍はこれに感応し、海軍を支援する形をとり、空軍もまた海軍と連携をとるようになった。

艦娘は世代を越えて周知の所となるが、それでも艤装を取り払った彼女達と一般人を区別する事は至難だった。

また、彼女達を一つの兵器、消耗品として『物』として扱う人間も増えた。

感情を持ち、自ら考え、人との丁々発止ができる存在。

人は、海軍の一部分はこれを恐れた。

中でも水面下でこれらの研究に没頭してきた提督達がいた。

深海棲艦とは、艦娘とは何なのか。

その根源を突き詰めようとする動きは、狂気を孕み、暴走を助長し、歯止めが利かなくなった。

やがて彼等は一人の悪意と出会いを果たす。

彼等はそれぞれに特徴的な闇を孕んでいた。

それが彼等を引き合わせ、小さいながらも濃縮された強大な闇を形成した。

小さく芽生えた悪意が増幅し、その矛先は深海棲艦だけに留まらず身内、海軍や艦娘へも向けられた。

人格を形成し、感情を持ち、自らの意思で活動する艦娘。

これを完全なる殺戮兵器として運用するには何をすればいいのか。

彼等の内一人が提唱したのがマインドコントロールだった。

手法としてはその艦娘の精神を一度崩壊させ、中身を空っぽにする事から始めるという。

そうして虚無となった状態で生死の境に仕切りが消えた状態を生み出し、新たに都合のいいように仕切りを作り変える。

まさに神も悪魔すらも恐れぬ行為。

それに成功した時、彼等は大いに沸いた。

そしてその行為に対して歓喜すると共に畏怖すら覚えながらも、それに心酔しきった自分達を実感していた。

そして彼等は自らを七つの大罪と呼ぶようになった。

人間を罪に導く可能性があると見做されてきた欲望や感情のことを指すもので、彼等自身もまさにその通りだと自覚し、

その呼び名を大いに気に入った。

傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲。

期せずして彼等は七名存在し、それぞれに当てはまる罪を背負い、それを当然の如く振り翳し、闇をばら撒いた。

だが、この漆黒に染まった闇の水面を切り裂こうと、染まるまいとする艦娘や提督達も居る。




提督『────見ててやるよ、見せてみろ』

鳥海「了解。艦隊の指揮はこの私、鳥海が受け持ちます」


加賀「遅い到着ですね」

木曾「んだぁ、突然現れていきなりリーダー気取りかよ」

赤城「時間は余りありませんが、大丈夫でしょうか?」

神通「恐らく大丈夫です」

北上「神通っち、もう何か聞いちゃった系?」

神通「正直、ここで戦闘が終わっていて良かったと思います」

木曾「はぁ?」

夕立「ぽい?」

時雨「それは、どう言う事だい?」

鳥海「万全な状態で迎え撃てるという事です」

満潮「とはいってもねぇ…」チラッ

漣「そこそこ全員、燃料も弾薬も消費しちゃってますし、戦闘継続の時間には限界ありですよ~」

鳥海「問題ありません」

加賀「秘策有り、ですか」

鳥海「相手はこちらを寄せ集めの烏合の衆と見るでしょう。力と数で押し切ろうとするはずです」

赤城「ですが、物量で押し切るのは基本的な戦術であって相手がそう出て来るのも至極当然では有りませんか?」

鳥海「そうですね。極めてスタンダード。何の変哲も無い、非常に特色の無いつまらない戦術です」

時雨「つまらないって…」ニガワライ

鳥海「離艦の計……」

夕立「む?」

鳥海「遥か昔、中国で使われていた計略に離間の計、というのがあったそうです。これは身内同士を仲違いさせ、
戦況を打破する計略戦術です。読みは一緒ですが、今回の戦術は相手の隊列そのものを断裂、分断させます」

木曾「へぇ…面白そうじゃねぇか」

鳥海「セオリー通りにしか動けない艦隊など、私の戦術の前では恐るるに足りません」

満潮「言うじゃん、鳥海」

鳥海「お見せします、戦術とは何か。戦場を支配するとはどういう事かを……」(摩耶、あなたが受けた屈辱、代わりに私が晴らして見せるわ)

取り敢えずここまで

乙です

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-離艦の計-

心悸「あぁ?百貫と連絡がつかねぇだと?」

天城「は、はい…」

心悸「あの野郎、何してやがんだ…」

航戦艦娘「提督、ハズレと進撃の艦隊の動きが若干、様子が変わりました」

心悸「んだと?」

航戦艦娘「ですが、これは逆に好機と見るべきでしょう。斥候の話では大半が痛み分け、中・大破の状態であり、
身動きが取れない状況にあるという報告でした」

心悸「ほぅ…あの進撃の艦隊を相手に痛み分けかよ。ハズレの分際で中々やるじゃねぇか。まぁ、確かに勝手に弱って
くれてるんなら、これ以上の好機はねぇな。一気に潰すぞ…百貫の野郎は後でシメりゃいい。どっちにしたってそれだけ
の深手負ってりゃ逃げる力なんざ残ってねぇだろ。嬲り殺しにしてやれ!」

航戦艦娘「了解」

天城「…………」

心悸「解ってんだろうな、天城。死にたくなかったら従え…てめぇには選ぶ権利なんざねぇんだからな」ニヤッ

天城「解って、います…」

心悸「てめぇの考える戦略には俺様も一目置いてる。だからこそ、日に三度のワガママを許してやってるんだ。
死にたくなけりゃ死に物狂いで相手の首を取って来いッ!」

天城「……航空母艦天城、新生第一航空戦隊…抜錨致します!」

航戦艦娘「天城さん、戦果を期待しますよ」

天城「…解っています」

装甲空母艦娘「それじゃ始めましょう?私達の大好きな殲滅戦を…!」

重巡艦娘「死体に鞭打つみたいで気が引けるわね」

軽巡艦娘1「欠片もそう思ってないくせに」

軽巡艦娘2「ね~、むしろ率先してやる方でしょ」

重巡艦娘「くすっ…仲良しこよしのお遊戯艦隊を見てると虫唾が奔るのよ」

天城「手負いとは言え、相手はこちらの数の倍です。火力を一極集中させ、確実に一人ずつ倒します。
私と装甲空母さんの艦載機発艦後、駆逐艦から順に殲滅していき、甲板を損傷している空母組を最後に回す形をとります」

航巡艦娘「相手方に戦艦型は居ないみたいだし、面倒そうな重巡型を私は狙うわ。構わないわよね?」

天城「……解りました。航戦さんは重巡型を撃滅後、戦列に戻る形でお願いします」



航戦艦娘「…これは、どういう事よ!?」

装甲空母艦娘「そんな、さっき斥候に放った時はまだ…」

天城「そ、そんな…居ない!?」

重巡艦娘「一体どうなって……あっ」

軽巡艦娘1「これは……」

軽巡艦娘2「まさか、おびき寄せられた…!?」

木曾「よう、コソ泥共」

満潮「ホント馬鹿ね。笑っちゃうくらいにさ」

神通「悔い改めてもらいます」

漣「計画通り……ッ!」ニヤッ

夕立「さあ、素敵なパーティしましょう?」

長良「よーし、全力全開っ!」

北上「おぉっと、これは壮観だね~」

時雨「凄いな、読み通りだ」

加賀「良い作戦指揮です」

赤城「凄い…相手の出方をここまで予測して動くなんて…」

鳥海『作戦名:離艦の計、発動します!各自、先の概要に沿って行動を開始して下さい。少なくとも相手は固まって
行動しようと尽力するはずです。念入りに、料理して差し上げましょう』メガネキランッ

天城「それに、何故…どうして、手負いのはずでは…!」

鳥海『大方、上空ギリギリの距離から斥候に及んだのでしょう。ですがこちらには今、空母の中でも最高クラスの二人が
揃っているんです。見落とす訳無いじゃありませんか。更に言えば、わざと逃し嘘の情報を与えるのも、非常に楽でした』

天城「まさか……嘘の、情報……そんな、それじゃ」

赤城「あなた達の策略に溺れる事無く、無事ご覧の通りです」

加賀「姑息な手段の数々…海軍の名折れと言うのもおこがましい限りです。命を惜しみ、保身に走り、私利私欲を求めて
名声にのみ執着する。それほど名が重要?どれほどの価値が、その名にあるのかしら。高邁な精神は永遠なり、です」

天城「一航戦の、赤と青……!」

赤城「一航戦…!」

加賀「…出撃します」


動揺を露にする天城達を尻目に、赤城と加賀がその口火を切った。


天城「装甲空母さん、備えて下さい!!」サッ

装甲空母艦娘「言われなくたって…!」サッ

天城「負ける訳には、いかないんです!天城航空隊発艦、始め!です!」ヒュン ヒュン

装甲空母艦娘「一航戦が何よ…!名前先行の古参なだけでしょうが!」ヒュン ヒュン


鳥海『相手に空母が二人以上居るのなら、これを赤城さんと加賀さんの二人で封殺して下さい。制空権を奪ってしまえば、
残された艦隊はもう、鳥かごに取り残された哀れな的に成り果てるでしょう』


赤城「艦載機のみなさん、用意はいい?」キリキリ…

加賀「鎧袖一触よ。心配いらないわ」キリキリ…



ビュビュッ

ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


引き絞った矢を一点見据えて真っ直ぐに飛ばす。

一糸乱れぬ二人の呼吸と矢を放つタイミング。

まるで鏡面の絵を見るかのような互いの姿。

二条の矢が上空へと舞い上がり、無数の艦載機となって編隊を成して目標へ飛翔する。


ダダダダダダッ

ボゴオオオォォォォォン


装甲空母艦娘「なっ…!」

天城「そ、そんな…私の烈風達が…瞬、殺…」


鳥海『空母隊を制圧した後、次に狙うのは主戦力となる存在です。艦隊の主力を担うとなれば、相応の戦力を有します。
つまり、戦艦や航空戦艦、居なければ継続して全体を支配しえる空母隊です』


木曾「おいおい、一人前に出すぎだろ」

長良「逆パターンは初めてだなぁ…」

神通「逆パターン…?」

長良「大体、私一人で大勢相手にしてたからね!」

北上「あはは、そんなのあたしは御免被るね。無理無理…」

航戦艦娘「くっ…あの重巡が司令塔なのは明白なのに…!」

木曾「頭を叩けばどうにかなるって考えがそもそもなってねぇんだよ」

航戦艦娘「たかが雷巡風情が…ッ!」

北上「軽巡や雷巡が戦艦に勝てないなんて道理、だぁれが決めんのさ」

神通「この場は、罷り通りません。お引取りを…」チャキッ

長良「はぁ~、刀剣の艤装なんて凄いなぁ…っていうかカッコイイなぁ」

木曾「あぁ?そんな珍しいもんでもねぇだろ。それよりも、あっちシカトしてやんなよ」ニヤッ

航戦艦娘「貴様等……!纏めて血祭りに上げてやるッ!!」ジャキッ



鳥海『挑発は程ほどに…ですがそこで戦艦クラスを制圧できれば勝ちは確定でしょう』


鳥海の弄した離艦の計。

まずは空を制圧する事から作戦は始まる。

制空権を奪い、相手から空の目を奪う事でこちらの正確な場所を特定させないようにする。

目視は出来ても正確な距離が把握できなければ精密な射撃は出来ないという事の表れだ。

次に一発が怖い艦娘を孤立させる事。

次発装填が遅いとは言え、戦艦クラスの艦娘に自由に砲撃を許しては一溜まりもないからだ。

今回の相手は航空戦艦、しかも鳥海にとっては嬉しい誤算として相手は単身先行してきていた。

多勢に無勢、と言う言葉があるが今回はまさにこの言葉がしっくりときただろう。

しかも相手は一癖も二癖もある連中ばかり、これを一人で制圧する事ができれば恐れるものは逆に無いのかもしれない。


航戦艦娘「く、そ……!なんで、私が、負けるのか…?」 大破

長良「航戦さんさ、自分の特性理解してないでしょ」

航戦艦娘「な、に…」

長良「私達艦娘はさ、それぞれに特性があるじゃない?それを理解してないようじゃ、誰と戦ったって勝てないよ」

神通「鳥海さん、こちら軽巡組は制圧完了しました。次のステップへ」

鳥海『ありがとうございます』

航戦艦娘「一体、何を……」

木曾「俺等にゃ提督以外に軍師がいるみてぇでな」ニヤッ

北上「艤装は全部破壊したし、まぁ大人しくしててくださいなっと」

短いですが、本日はここまで

乙です

乙です。毎回楽しませてもらってます。

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします




天城「ダメ、どれだけ放っても制空権を奪えない…」

装甲空母艦娘「くそっ、くそっ!なんでよ、どうして…あんな奴等より、優れているのに!!」ダッ

天城「装甲空母さん、迂闊に前に出ては…!」

装甲空母艦娘「黙りなさい!人間の娼婦と同じ分際で!!」

天城「……っ」

加賀「諦めが悪いですね」

装甲空母艦娘「五月蝿いッ!コロス……殺して、やる……ッ!!」ギロッ

赤城「あの、目は…!」


我を忘れたかのような装甲空母のその瞳に、二人は心当たりがあった。

キメラ男を制圧しに向かった先の泊地で無尽蔵に湧いて出てきたゾンビの如き深海棲艦の群れ。

今まで戦ってきた深海棲艦とは明らかに違うその様相を忘れる事などなかった。


加賀「既に、人を捨てていましたか。どちらにせよ、この勝負は決しました」ビュッ


無常にも放たれた矢は真っ直ぐ装甲空母へと飛来し手前で艦載機へと散開、一斉攻撃を開始する。


ボゴオオオォォォォォォン


装甲空母艦娘「カン、ムス、風情……ガ……」 轟沈

加賀「残り一人は話の手合いは可能と判断します」

赤城「鳥海さん、こちらもオールクリアです」

鳥海『感謝します』




主戦力を一気に奪い浮き足立っている艦隊を分断するのに労力は必要ない。

艦隊として固まる中心に一点放火を浴びせて物理的に艦隊の陣形を断絶。

そこからは各個が離れるように砲撃を夾叉させ、孤立するように誘導する。

結果として陣形は完全に崩壊し、互いの連携すらも取れない状況が生まれる。


夕立「ふふっ、より取り見取りっぽい?」

満潮「そうね、どれから狙ってやろうかしら」

漣「完全に射撃ゲーのノリですね~」

時雨「全く、緊張感が無いね」クスッ…

鳥海『空母組、軽巡組はオールクリアです。計略は成りました、あとは詰めるのみです』

満潮「オッケー。大体やり方が汚いのよ…自分達にとって都合が悪くなると直に証拠事消し去ろうとする」

漣「汚い方々の十八番ですからねぇ。ほ~んと、メシマズです」




駆逐艦娘「て、提督……!」

心悸「あぁ?あんだよ」

駆逐艦娘「ぜ、前線に出ていた天城艦隊……全滅しました!」

心悸「な、に……?」

駆逐艦娘「旗艦天城は艤装全てを破壊され捕虜に、それ以外の艦娘はその殆どが轟沈です……」

提督『聞こえてるかね、蛆虫糞虫塵虫野郎の心悸君』

心悸「……ッ」ガタッ

提督『てめぇの船は既に包囲されている。進撃のクソガキも直にもう一方の襟首もって合流するだろうよ。
今回だけ言い訳を言わせてやるから十秒で言えよ、蛆虫君』

心悸「てめっ……」

提督『なぁんて言わせるわけねぇだろバァカ。頭の中身はお花畑かよ糞虫野郎が。発言が許されるのは人間までなんだよ塵虫。
分を弁えろ虫風情の雑魚が』

心悸「提督ぅ……ッ!てめぇ……!!」

提督『悔しいか?あ?どうせてめぇの事だからギョロ目動かしてニヤニヤして椅子にでも踏ん反り返ってたんだろ?
くくっ、馬鹿の典型だなお前。いや~、今俺様はひっっっじょうに気分がいい!貴様の馬鹿面を想像するだけでもう
最っっっ高に楽しくて仕方が無い!じ・つ・に、結構!いや~、屑共の悔しがる顔ほど溜飲の下がるものはない』

駆逐艦娘「て、提督…どうしますか…」

心悸「くそが……くそがああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

提督『糞はてめぇだよ、心悸。身の程を弁えろ糞虫が。やっと面ぁ出してくれたんだ。こっちゃあ辛酸舐めすぎて最早
感覚麻痺してるからよ。覚悟しとけよ……目に物を見せてやる』




鳥海が弄した離艦の計は完璧過ぎるほど完璧に決まり、天城達を一瞬の下に封殺、殲滅した。

後に赤城達は、あのまま戦い続けていれば勝敗の行方は本当にどうなっていたか解らなかったかもしれない、と零した。

即席で形成された艦隊をいとも容易く自分の描いた策に添って誘導する手腕と戦術用法の数々。

身内ですらも改めて驚嘆するほどの戦果を鳥海は上げた。




~牙城崩落~



-力の差-

浮き足立つ、という言葉がある。

先の大本営直営部隊、鋼鉄、不動の艦隊がそうだった。

不安や恐れで落ち着きを失い、逃げ腰になる。

一度生まれた恐怖はそう易々と拭えるものではない。

同じように、正体の解らないものに対する不安はその気持ちを助長させ、結果として本来のパフォーマンスを落とす結果になる。

だがそれを糧とし、力と変える者達もいる。

そういった者達にとって、力でねじ伏せようとするのは極めて逆効果となる。

反発する力が尋常ではなく、また決して屈しないという強い信念を備えている。

力に力で真っ向からぶつかって行く、純粋な馬力で雌雄を決する形となる。

結論として、単純明快だが力が強い方が勝つ。

提督の指揮した艦隊を智の艦隊とするなら、進撃の指揮した艦隊は勇の艦隊。

まさに智勇兼備の豪傑無比の艦隊である。


長門「言ったはずだ、邪魔をするなと」

戦艦艦娘「そんな、まさか…」 中破

長門「艦娘の矜持を捨て去っている貴様等に、この私が負けるものか!誇りを失い、悪の傀儡(かいらい)と成り果て、
無法の限りを尽くす…そんなものは力などではない!」

戦艦艦娘「私達は、生まれ変わったのよ!新しい力を手に入れて、提督達が夢見る時代を築き上げるのよ!」

長門「『その姿』が生まれ変わったというのなら、そうなのだろうな。だが、それは最早進化ではない。
新たな命として生み出された、貴様は深海棲艦だ!せめてもの手向けとして受け取れ、ここを貴様の墓標としよう」ジャキッ

戦艦艦娘「深海、棲艦だと…?ふざけるなッ!ワタ、シは……あ、アァ……そん、な…嘘、ダ……」

長門「一度は敗れ、私達を追い詰めた連中も貴様等と同じだったよ。見た目にそぐわない回復力と持久力に耐久力を備え、
圧倒的な物量と火力で波状攻撃を受けた。成す術も無く艦隊諸共沈められそうになったほどだ。だが改めて思ったよ。
私はまだまだ強くなれると…!」

戦艦艦娘「ドウして、ワタシは…艦娘ノ、はずナノに……ッ!」

長門「貴様の言う『進化』による代償なのだろうな。同じ戦艦の好として同情はしてやる。だが慰めなどはしない。
そうなったのは貴様自身の甘えと抜かりだ。潔く沈め、水底へ…」

戦艦艦娘「負ける、モノかあああああぁぁぁぁァァァァァーーッ!!」グオッ…

長門「遅い!」ドォン ドォン



半ば我を忘れ、殺意のみで襲い来る戦艦艦娘。

しかし長門はそれに動じず、きっちりと相手の動きを見て主砲を構えて真正面から迎え撃つ。


ボゴオオオォォォォォォォン


結果、防御も何もしない無防備な状態で長門の砲撃を全身で受け止めてしまった戦艦艦娘はもんどり打って倒れる。

水面に少しだけ浮き、その姿はゆっくりと水面下へと沈んでいく。

その姿をしっかりと己の瞳に焼付け、長門は静かに顔を上げて百貫をその鋭い眼光で見据えた。


長門「敢えて上官に対する口の利き方をしない。この下郎め…艦娘は、貴様の都合のいい人形などでは断じてないぞ!」

百貫「くふっ……人形じゃなければなんだ?よもや人などとはいうまいな?」

長門「この期に及んでまだ…!」

百貫「戦艦長門、そんなに私があの艦娘を深海棲艦にしていた事実が憎いか?」

長門「当たり前だ!!」

百貫「そうか…しかしね、あれは彼女が望んでああなった結果だよ。自らの意思で、彼女はああなったのさ」

長門「デタラメを言うな!」

百貫「証拠は?」

長門「なに?」

百貫「デタラメだという証拠はあるのかい?」

長門「貴様…!」

百貫「くふっ…」ニヤァ…

取り敢えずここまで
時間あれば夜にでもまた続き書きます

乙です

乙です

少し続き書きます




空母艦娘「ほら、さっきまでの威勢はどうしたのよ!私を許さないんで、しょ!」ビュン ビュン

瑞鳳「……」サッ


ボボボボボボボボンッ


空母艦娘「逃げ回ってばっかりで、何が、できるって、言うのかしら!?」ビュン ビュン

瑞鳳「……」スッ…


ボボボボボボボボンッ


再三に渡る空母艦娘の間断無き艦爆艦攻に瑞鳳は防戦一方のように見えた。

だが、驚くべき事はその全てを被弾せずに回避しているという事だ。

瑞鳳には祥鳳を傷付けられたと言う大義名分もそうだが、他者に託された想いも背負っている。


飛龍『ゴメンね、瑞鳳。私もできる事なら蒼龍が受けた分を返したいけど……』

瑞鳳『任せて下さい。同じ空母組の好じゃないですか!それに私、嬉しいんです』

飛龍『え?』

瑞鳳『だって、赤城さんや飛龍さんみたいな一線で活躍している方達に『お願いね』って、ふふ…おこがましいかも
しれないですけど、頼まれ事をされるっていうのが、なんだか認めてもらってるような気がして…』

飛龍『あはは、バカだなぁ。私だって赤城さんだって、瑞鳳の事もう随分前から認めてるよ?ううん、認めるとか
認めないとか、そういうんじゃないよ。少なくとも私が知る中で、瑞鳳は間違いなくトップクラスの軽空母だよ』

瑞鳳『え、えぇ…!?///』

飛龍『だからさ、宜しくね。けど、慢心はダメ、ゼッタイ!オーケー?』

瑞鳳『…はいっ!』



瑞鳳「すー、はー…」チャキッ…


大きく息を吸い込み、ゆっくりと弓を起こして矢を番える。

瑞鳳はいつでも我武者羅で一所懸命で、努力を惜しまない子だ。

努力とは必ずしも実るとは限らないし、それが花開く瞬間もまた区々だろう。

それでも彼女の努力は報われて然るべきなのかもしれない。

その努力こそが、彼女の原動力であり彼女自身を支える大きな自信の表れでもある。

狙いは一点、瑞鳳の技の数々は一線を張る赤城達により手解きされたものだ。

これはその中でも瑞鳳が真っ先に会得した強襲技。


瑞鳳「アウトレンジ、決めます!」ビュオッ


斜め上空へと放たれた矢は空中で無数の艦載機へとその姿を変えて大空へと飛翔する。

シルバー、ブラック、ホワイト、色とりどりに塗装された艦載機は遅れて放たれた空母艦娘の艦載機と正面からぶつかる。


ボゴボゴボゴボゴボゴォォォォォン


空母艦娘「なっ」



空中で無数の爆発が起こり、爆煙の中から翼で煙を切り裂き出現したのは瑞鳳の艦載機群。

瑞鳳の表情が俄かに緩む。

彼女にははっきりと見えた。

艦載機を操る妖精と呼ばれる存在。

小さな仕事人、彼女達も立派な戦線を支える艦娘達のサポーターだ。

その彼女達からのサイン。

瑞鳳へ向けて親指を立て、ある者は敬礼し、そして瑞鳳の声を聞く。


瑞鳳「敵機直上より急降下!全てをなぎ払え!」バッ

空母艦娘「あ、ありえな……」


ダダダダダダダッ

ボゴオオオォォォォォォォン


空母艦娘の声を掻き消し、艦爆艦攻隊の一斉攻撃が空母艦娘を襲う。

攻撃の嵐が止んだ後には、なんとかその場に立つのが精一杯の空母艦娘が、瑞鳳を睨んでよろめきながら立っているだけだった。


空母艦娘「こんな、ハズでは……」 大破

瑞鳳「……」スッ…



無言のまま瑞鳳は矢筒から矢を抜き取り、弓へと番えてその切っ先を迷う事無く空母艦娘へ差し向ける。

長門の言葉が思い起こされる。

艦娘としての矜持を忘れ、悪に手を染め、堕ちる所まで堕ちる。

提督の為に、陸で暮らす人々の為にと尽力している艦娘達も居る中で、内部をかき乱そうとする。

瑞鳳にはそれも納得できなかった。

本気で怒った。

許せなかった。

そんな事の為に、祥鳳や蒼龍達が傷付けられたと言う事実が何より許せなかった。


瑞鳳「謝って…あなた達が傷つけた人達に、謝ってよ!」

空母艦娘「クダ、らない…ククッ、私は……力を、手に、イレタ……この、程度の傷、スグに……」

瑞鳳「そう…でも、それは力なんかじゃないよ。ただ堕ちただけ…あなたは、深海棲艦に成り下がったんだよ」

空母艦娘「ナニを、言っている……?」

瑞鳳「自分の姿すらも、認識できないの…?自分すらも解らない人が、他人をどうこう言う資格なんてないんだから!」

空母艦娘「ダマ、れ……!私は、栄誉アル、百貫中将提督ノ、艦娘ダゾッ!!」

瑞鳳「だったら私は、信頼置ける新月大将提督の切り込み隊長よ!せめて、私の手であなたを葬って上げる!」チャキッ


真っ直ぐに構え直した弓に矢を番え、瑞鳳は引き絞る指の力を解放する。

放たれた一条の矢は無数の艦載機となって海面を飛翔し、標的たる空母艦娘に向かって弾丸の雨を降らせた。

海面を水飛沫が伝い、空母艦娘を真っ直ぐに通過すると同時に彼女の体が幾度か跳ねるように後方へと押し戻される。


バシャアァァァァァ……


堪える事もせず、空母艦娘はそのまま仰向けに海面に揺蕩い、そのまま言葉を発する事無く静かに水底へと沈む。

溜めておいた分、投下以上

おつ
久々に「じ・つ・に」が聞けた

乙、やっと追いついた

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします




矢矧「強さは実力だけで決まるものじゃないわ。それでも、結果論で言えばこの勝負は私の勝ちよね?」

軽巡艦娘「き、さま……!」 中破

矢矧「少し腑に落ちないのよ。阿賀野姉ぇを大破にまで追い込んだ奴が『こんなに弱い』はずはないのよね」クスッ…

軽巡艦娘「私が、弱い、ですって…!?」

矢矧「弱いじゃない。少なくとも私の相手にはならないわね。火力も無い、照準もブレるし、持久力もない……
それだけならまだしも自分で戦術すらも組めないようじゃ、最早弱いなんて言葉で片付けるのも疑わしいわ。雑魚よ」

軽巡艦娘「付け上がるな、お前如きに…!」ザッ

矢矧「」スッ…

軽巡艦娘「この私が、負けるものかぁ!」ジャキッ


ドン ドンッ

サッ

ボゴオオォォォォォン


矢矧「狙いそれで定めてるわけ?そうだとしたら、お話にならないわね!」ザッ


矢矧は主砲を構え直すと同時に海面を蹴って一気に軽巡艦娘との距離を詰める。

それを迎え撃とうと軽巡艦娘も構え直して矢矧に向かい突撃を開始する。



ザザザザザザザザッ


互いに併走して同時に手にする主砲を構える。


ドン ドン ドン ドンッ

ボボボボボボボボボンッ

ザザザッ


岩礁を挟んで次の瞬間、軽巡艦娘の視界から矢矧が消える。


軽巡艦娘「なっ!?ど、何処に…!」

矢矧「障害物は有効利用しないとね?」

軽巡艦娘「っ!?」ザッ


背後から届いた声に軽巡艦娘は咄嗟に腕を振り回して反転しつつ無差別に主砲を乱射する。


ドン ドン ドン ドンッ

ジャキッ


しかし、そのどれもが空を凪ぐだけで物へと直撃する事無く通過する。

矢矧自身は軽巡艦娘の動きに合わせ、同じ角度で身体を反転させて彼女の背後を取ったまま砲弾の装填された主砲の

砲身を軽巡艦娘の首筋へと宛がい止まる。


軽巡艦娘「あ、あぁ……」

矢矧「チェックメイト…あなたの負けね」スッ…


そう呟いた矢矧は狙いを逸らして軽巡艦娘の艤装に狙いを定め、バックステップと同時に砲撃する。


ドン ドンッ

ボゴオオォォォォォン


軽巡艦娘「きゃあっ」 大破

矢矧「私、余り器用じゃないのよ。腕の一本や二本は勘弁して欲しい所ね。それだけの業を背負ったんだから、当然よね?」

軽巡艦娘「……う、ぐっ、どう、して…なんで、殺さない、のよ……」

矢矧「あら、あなた死にたいの?勿論、あなたがそう望むのなら躊躇わないわ。でも、そうさせない為に私自身が止める」

軽巡艦娘「なん、ですって…」

矢矧「簡単に死んでもらったら困るからよ。きっちり責任とってもらわない事にはね?その状態で我を忘れないって事は、
あなたは『アレ』を投与されて無かったみたいだし…尚の事、死んでもらう訳にもいかないわ」




利根「ふん、他愛無いのう」 被害軽微

航巡艦娘「おのれぇ…!」 小破

利根「鍛錬を怠り、自分よりも劣る者だけを弄り、そうして仮初の自尊心を確立させておったんじゃろうが…
生憎と我輩にはその考えがよう理解できんでな」

航巡艦娘「我等が、弱いとでも言うのか!?」

利根「事実、弱かろう。お主等には死線を越えた者が発する気が全く感じられんのじゃ。それは言わば存在感そのもの。
言ってる意味が解るか?艦娘や提督等が放つ光…練磨によってのみ沸き上がる、即ち闘志よ。主等はただの人形に過ぎぬ。
深海棲艦を始めとし、如いては人や艦娘にまで手をかける殺戮人形じゃ。それの何処が艦娘か、恥を知れ!」

航巡艦娘「だからなんだ。知った事か!鉄屑同様に捻り潰し、二度とそのような口を叩けないようにしてやる!!」ジャキッ


利根の言葉に激昂し、航巡艦娘は主砲を構えて突撃の姿勢を見せる。

それに合わせて利根は腕に仕込んだカタパルトから艦載機を発艦させる。


航巡艦娘「小バエを放って何をする気だ」

利根「その小バエにお主はこれから打ちのめされるのじゃ」ニヤッ

航巡艦娘「戯言を…っ!」サッ

利根「戯け、阿呆が!我が艦載機から逃れられるとでも思うたか!」ジャキッ



航巡艦娘の行く先を観測し、利根の正確な射撃が放たれる。

放った艦載機から発せられる上空からの目。

鷹の目とも言える第三の目から齎される情報は利根の死角を皆無にする。

そして同時に、相手の状況を詳らかにし丸裸にしてしまう。

空を制圧する事の重要性を一瞬の後に航巡艦娘は理解する。


ドン ドンッ

ボゴオオオォォォォォン


航巡艦娘「がっ…!」 中破

利根「ふん、莫迦めが。空の重要性を軽視するからそういう目に遭う。戦場を舐めるな、青二才が!」ジャキッ

航巡艦娘「ただで、負けるかああぁぁぁッ!!」ジャキッ

利根「いいや、詰みじゃ。大人しく縛に付けぃ!」ジャキッ


ドン ドン ドン ドンッ

ボゴオオォォォォォン

ボボボボボボボンッ


利根「筑摩、お主の無念は代わりに吾輩が晴らしてやったぞ。なんせ吾輩の方がお主より少しお姉さんなのだからな。
この結果は当然と言えよう」 小破

航巡艦娘「そんな、私、が……」 大破




重巡艦娘「っていうか、貴方達って姉妹なの?」

雷巡艦娘「あぁ、だからあの那智って子のことでご執着な訳ね」

妙高「……」

足柄「……」

重巡艦娘「ふふっ、そんな怖い顔しないでよ。こっちだって提督命令だったんだもの…逆らえる訳ないじゃない?」ニヤッ

雷巡艦娘「そうそう……それに、私達は相手を殺して何ぼじゃないのよ。邪魔をする奴は誰だって殺してやるわよ。
それが例え艦娘だろうと、鎮守府単位だろうと、なんだろうとね!」

足柄「そう、それなら瑣末で不出来、プロとして見るなら半人前以下の低レベルな仕事内容ね。あなた達が襲撃した
艦隊の艦娘は誰一人として轟沈はしてないわ。最悪大破がいい所…殺すって言うなら、確実に仕留めなさい?」

妙高「止めなさい足柄、失礼ですよ。その程度の実力しかないんですから」ニコッ

足柄「あはっ、それもそうね。ごめんなさいね?分不相応な成果を上げると、どうしても気が大きくなっちゃうものよね」

重巡艦娘「…言わせておけば!」

雷巡艦娘「いいわ、それなら貴女達はきっちりと息の根を止めてこの世から葬って上げるわよ!」

足柄「ですって、妙高姉さん?」

妙高「はぁ、仕方ありませんね。大本営直営隊としての実力、お見せしましょうか」

重巡艦娘「面白い…暗部と呼ばれる連中が正面切っての戦闘にどれだけ慣れてるのか、見せてもらおうじゃない!」

足柄「言っておくけど、伊達や酔狂で本部の代行者、やってる訳じゃないのよ…ねっ!」ザッ

妙高「私達はこの地位に誇りと名誉を以て臨んでいます。何れ訪れる平和、遠い未来に輝く光を支える為に!」ザッ


妙高と足柄、二人は同時に駆け出す。

それぞれ戦闘において大本営内でも指折りの二人だ。

極秘警護から要人警護、あらゆる防衛に携わってきたイージスの名を冠するに等しい盾、妙高。

テロの阻止から叛乱、暴徒、深海棲艦の侵攻を僅か三名で退けた事もある前線における矛、足柄。

元帥直属護衛艦隊を第一の手とするなら、彼女達は第二、第三の手。

常にその圧倒的な戦力を以て他を凌駕し圧倒する最高戦力の一端を担う。

認識を誤った者がどのような結末を迎えるのか、それが今から実践される。


ドン ドン ドン ドンッ

ボボボボボボボボボン


重巡艦娘と雷巡艦娘による砲雷撃を掻い潜り、二人は速度を落とす事無く一気にそれぞれとの距離を詰める。

初めに動いたのは足柄だった。

短いですが、本日の書き溜め分は以上

乙!いいねぇ痺れるねぇ

乙です

皆様こんばんは
少し更新します




足柄「第一戦速、砲雷撃…!その身で思う存分に味わいなさいな!」ドン ドンッ

雷巡艦娘「ちっ!」サッ


ボボボボボボボン


真横に飛び退き、足柄の斉射をなんとか回避した雷巡艦娘だが、その空白の時間だけで足柄には十分だった。

餓えた狼、聞こえは悪いが事戦場においてこの狼と例えられた彼女の力は畏怖するものである。


ヒュッ


音も無く。


サッ


静かに。


ジャキッ


視野に納めた獲物を。


ドン ドンッ


狙い撃つ。


雷巡艦娘「なっ、いつの間に……!」


ボゴオオォォォォォォン


雷巡艦娘「うぐっ…」 中破

足柄「あら、結構丈夫ね。だ・け・ど…こんなんじゃ帰さないわ。突撃よ!突撃ぃー♪」ザンッ


軽快な台詞とは裏腹に姿勢を低くした状態から、凄まじい瞬発力を見せて足柄が一気に雷巡艦娘へ迫る。

左右にフェイントを混ぜて海原をまさに縦横無尽に駆け巡る。



雷巡艦娘「このっ、ウロチョロと…!」ドン ドンッ


サッ

ボボボボボボン


照準を絞らせない動きで足柄は一瞬の内に雷巡艦娘との差を再び詰めて主砲を構える。

その頃には先の不敵な笑みは消え、獲物を捕らえる狼の如き鋭い眼光を携えていた。


足柄「私、妙高姉妹の三女なんだけどね?自分を馬鹿にされるのはまぁ、頭にくるけどそこまでイラッとはこないのよ。
ただ、姉や妹を貶されるのは我慢ならないのよね。あなた達、既に逆鱗に触れてるのよ。私達のね…!」

雷巡艦娘「何が逆鱗よ。ふざけんじゃないわよ!ちょっと素早い程度で、調子に乗ってんじゃないわよ!」ジャキッ

足柄「その程度の錬度で中将の艦隊ですって?鼻で笑っちゃうわね。腰の据え方、構え、狙い、定め、全部なってないわ!
そんな見せ掛けだけの構えで撃った所で、日が暮れようと移動してる物には夾叉すらしないでしょうね」

雷巡艦娘「なっ」

足柄「特別講師を買って出て上げるわ。実践で教えて上げる。ありがたく思いなさいな!」ザンッ


尚も雷巡艦娘との距離を詰めて、足柄は手にする主砲を真っ直ぐに構える。

本来、移動しながらの射撃と言うのは射線の確定からして難しくなる。

ただでさえ反動のある砲撃を動きながら行おうと言うのだから、狙いを定めるのにも相当な集中力と忍耐力が必要になる。

つまり、それを卒無くこなすと言うのは言い換えれば射撃においてはスペシャリストの域にあるという事でもある。

足柄は他の姉妹達と比べるとどれもが何かしら劣っていた。

末っ子の羽黒には火力で劣り、足回りでは妙高に、対空への警戒では那智に遅れをとった。

だが、足柄はその持ち前の執念で粘り強さと言うものを身に付けた。

そしてそれは後付ではあっても足柄に一つの隊の旗艦を受け持たせるほどにまで昇華され、一つのスキルとして確立した。

餓えた狼、何事にも貪欲で、狙った獲物は逃さない。

負けてなるものかと言う執念こそが、彼女を支える一つのバックボーンなのだ。



雷巡艦娘「は、速い…!」

足柄「ボサッとしてていいのかしら!?弾幕を張りなさいな!最も、もう遅いけどね!十門の主砲は伊達じゃないのよ!」


ドン ドン ドン ドンッ

ボゴオオオォォォン

ボゴオオォォォォン


雷巡艦娘「あぐっ…!」 大破

足柄「推して知るべしってね。これは当然の結果よ。講義に入るまでも無かったようね」




時間は少し遡り、同時に動き出した妙高と足柄、先行したのは足柄だった。

その背を見送り、視線を重巡艦娘へ移して妙高は静かに足を止めて主砲を構える手を下ろす。


妙高「では、参りましょうか」

重巡艦娘「澄ました顔して、ホント気に入らないわね」

妙高「そうですか?これでも十分、憤りを感じています。だからと言う訳では有りませんし、余りこういう事はしたくないのですが、
あなたに実力の差、と言うものを知らしめる事にしました」

重巡艦娘「はぁ?実力の差ですって?」

妙高「開始から五分間、私はここから一歩も動きませんので、どうぞご自由に砲雷撃を開始して下さい」

重巡艦娘「なん、ですって…!」ギリッ…

妙高「最も案山子になる気は有りませんので、防衛行動は取りますけどね?」


そういうと妙高は自然体で構え、真っ直ぐに重巡艦娘を見据える。

その表情、姿勢に重巡艦娘は激怒し一気に駆け出した。


重巡艦娘「舐めた真似を!殺してやる!!」ザッ


真っ直ぐに駆け出した重巡艦娘はその姿勢のまま主砲を構える。

そして何の躊躇いも無く一気に斉射した。


ドン ドンッ


それと同時に妙高も宣言通り、その場からは動かずに主砲だけを構えて狙いを定め引き金を引く。


ドン ドンッ

ボンッ ボボボンッ ボボボボボンッ


結論から言えば、妙高は重巡艦娘の放った全ての砲弾を己の主砲で残らず迎撃しきってしまった。

飛んできたのは余波として凪いだ爆風の欠片程度。

妙高の切り揃えられたボブカットの髪の毛が若干、靡いた程度だ。

それを見届け、重巡艦娘は愕然とした表情で動きが止まった。



妙高「鳩が豆鉄砲でも食らったような顔ですね。ですけど残り四分ですから、時間は有効に使った方がいいと思いますよ?」

重巡艦娘「くっ、戯言を…!」ザッ


重巡艦娘は妙高の言葉に我に返り、再び動き出し主砲を構え直す。

短絡的思考、と言えばそれまでだが最も理に適った手法、それは近距離まで近付いての射撃。

重巡艦娘はそれを実践しようと前へと出た。

だが妙高は変わらぬ姿勢で表情だけを少し綻ばせて問いかけた。


妙高「そんなに『遠くて』当たりますか?」

重巡艦娘「何、を…」

妙高「あぁ、そうですね。確かにそれ以上近付きすぎれば放った砲撃の爆風が自らにまで及んでしまうかもしれない。
それは若干、宜しくありませんからその距離が丁度良いのかもしれませんね」

重巡艦娘「こいつ…っ!」ジャキッ

妙高「残り三分です」ジャキッ

重巡艦娘「死ねえええぇぇぇぇッ!!」ドン ドンッ

妙高「お断りします」ドン ドンッ


ボボボボボボボボボボンッ


殆ど同時、互いの距離は砲撃到達の時間にすればほんの僅かな時間しかない。

待ってから狙っていては自らの近くで爆発が起こり、最悪飛散した砲弾の破片を一身に受けてしまう恐れすらある。

妙高は相手の砲身の先、射線の予測点を見極め同時に砲撃を行ったのだ。

結果、互いの丁度中間で砲弾同士が接触し、大爆発が巻き起こる。


重巡艦娘「ぐっ…!」

妙高「……」


押し寄せてきた熱風に重巡艦娘は顔をしかめて片腕で顔を遮る。

妙高は先と変わらぬ姿勢のまま、真っ直ぐに爆発した地点を凝視する。

妙高は移動するもの、動くものを狙い撃つのに凄まじく長けている。

最早それは妙技では納まらず、特技と言うには語弊がある。

名実共に誰もが認める神業の域にまで達している。

彼女がイージスの名を背負う一つの理由がこの射撃スキルにある。

あらゆる侵入を迎撃し、あらゆる凶弾を撃ち落す。

決して崩れない、何ものをも寄せ付けない堅牢な盾。

これをイージスの盾と例えない訳にはいかない。



妙高「…残念ですが五分経過してしまったみたいです。潔く咎を認め、その場に折れればよかったと思いますよ」

重巡艦娘「ふざ、けるな…ッ!!」ジャキッ

妙高「五分では互いの実力の差を感じるには少なすぎましたか?で、あれば…」ジャキッ

妙高「致し方ありません…追撃戦に移行します!」


妙高は大本営の中でも極めて温厚、温和、平和主義者で通っている。

争いを好まず、四姉妹の仲でも羽黒に匹敵する程に争いを嫌う。

だからこそ、自分と真逆の思考、行動、発言をする者を酷く嫌う事がある。

顔には出さないし突っかかりもしないが、自らに及ぶ被害、身内や友に及ぶ被害が出た場合、彼女は修羅となる。

それでも、最後の最後まで仏の選択肢を残し続ける。

どこかで認め諦めるかもしれない、少しでも罪の意識があるのなら、それは争いにまで発展させるべきではない。

そういう思考から最後の最後まで彼女は対人に関してはその矛を収め続ける。

しかし、その彼女の言葉すらも届かない場合は最早どうする事も出来ない。

文字通り、力で捻じ伏せる他ない。

そして矛を抜き放ってしまった場合、妙高は少しでも早く終わるように、全力を尽くす。


妙高「終わらせます」ザッ

重巡艦娘「追撃ですって…?ふざけないで、殺してやる…!」ザッ


二人は同時に駆け出し、主砲を手前に翳してその距離を見る間に縮める。


ドン ドンッ

サッ

ヒュン ヒュン


先に仕掛けたのは重巡艦娘だったが、それを見越して妙高は斜め前方へと一際大きく踏み込んで射線から外れる。

結果、妙高の真横を重巡艦娘の放った砲撃が通過し、妙高自身は重巡艦娘の側面を捉える形になった。


重巡艦娘「しまっ……!」

妙高「…撃ちます!」


ドン ドンッ

ボゴオオオォォォォォン


有無も言わさぬ至近距離からの一斉射。

爆煙の立ち昇る中、ユラユラと揺れる影が浮かび上がり、それは力無く崩れるようにフッと消える。


ザバァァァ……


何かを打ち付けるような海面の音がその後に響き、妙高は静かに目を伏せてそこから視線を外した。

溜めた分以上
ここまで

おつ
妙高姉さんは怒ると怖い はっきりわかんだね

乙です

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-禁忌-

百貫「さぁ、ほら…証拠を私の前に提示したまえよ、戦艦長門ッ!」

長門「まだ貴様はそんな戯言を…!」

進撃『じゃあ、証拠の提示をしましょうか、百貫中将殿?』

百貫「っ!?その、声は…君は、進撃か…!」

進撃『私の鎮守府の配属艦娘もその戦線には参列してるんです。鋼鉄さんと不動さんが手隙じゃないと言うのなら、
私が代わりに指揮を執るしかないですからね。新月大将は忙しい方ですので…』

百貫「私が、深海棲艦と手を組んでいるという証拠があると言うのかい?」

進撃『別に深海棲艦と手を組まなくても、あなた達なら深海棲艦の細胞や艤装と言った類は幾らでも手に入れられるでしょう?』

百貫「何…?」

進撃『キメラの男……彼とあなた達は繋がっているんですからね!』

百貫「貴様……!」

進撃『もう言い逃れは出来ませんよ。一部の艦娘にはそれを強要或いは強制させ、艦娘と深海棲艦のハイブリットを生み出した』

百貫「…………」

進撃『キメラの泊地に存在したゾンビの様な深海棲艦の群れは研究によって生み出された艦娘の成れの果て。
自我を失い、深海棲艦の特色が色濃く反映され、制御が利かなくなったものをその場に放ったんでしょうね。
制御できるハイブリット型の深海棲艦艦娘を海軍内部へ送り込み、内部から海軍を壊滅させるのが狙いですか?』

百貫「」(…彼も言っていた。やはりこの男は、殺しておくべきだった。大佐の器じゃない頭のキレ、確実に私達の障壁に
なりうると言う彼の言葉は現実のものになった。ならば、今この場に置いて私にできることは……)

進撃『反論が無いのは肯定と受け取りますよ、百貫中将殿』

百貫「……そうだね、これはもう逃げ場がなさそうだ。ならば……」スッ…

進撃『…っ!長門、彼を止めろ!!』

長門「ッ!」



長門も異変に気付き、海面を蹴りだそうと前のめりになる。

だがそれよりも遥かに早く、百貫は腰に差していた軍刀を抜き放ち、その切っ先を自らの喉元へ突きつけ、一気に押し込んだ。


ズッ……


百貫「ぐっ…がはっ…!ぐ、ぐふふ……さ゛ら゛は゛……」ドサッ…

長門「こいつ…!」

進撃『……追い詰めすぎたか、くそ…俺はバカだ!手掛かりを見す見す死なせるなんて…』

瑞鳳「長門さん!」

長門「瑞鳳、無事だったようだな」

瑞鳳「勿論!」

矢矧「こちらも片付いてるようね」

長門「ああ、滞りなくだ。利根、妙高に足柄はどうした?」

利根「終わっておるわ」

妙高「お待たせ致しました」

足柄「ふふ、流石は選りすぐりの艦娘ね。全員無事で何よりだわ」

進撃『皆、済まない。証拠となるはずの百貫中将を見す見す自殺させる結果になった』

足柄「何ですって…!?」

妙高「…逆に言えば、それほどまでに統率された一群という事でしょう。己の貸した失態を自らの死で帳消しにする。
早々真似のできる事ではありませんし、そこまでするという事は闇はより一層深いと見るべきでしょう」

進撃『後は、あちらさんの戦果に頼らざるを得ない』

足柄「ハズレ鎮守府の提督さんね」

進撃『みんなは残された百貫の艦隊の残存艦娘の保護と、無力化させた艦娘の監視を継続して欲しい』

瑞鳳「進撃提督は?」

進撃『俺は提督と合流し、事の顛末を伝える。まぁ、愚痴を聞かされに行く、とも言うな』

長門「心中察するよ。だがそれも仕事と割り切るべきかな、なぁ進撃提督」

進撃『へぇへぇ、解っておりますよ。鋼鉄艦隊の秘書艦様』




提督「おぉおぉ…随分と豪勢な作戦司令室だなぁ、おい。いくつがまともに機能するのかひっっっじょうに興味をそそる」

心悸「てめぇ…ッ!」

提督「よう糞虫君。俺様の想像通り、いい具合に歪んだ顔がこれまたひっっっじょうに俺様の曇った心を晴らしてくれる。
いやぁ、じ・つ・に愉快だ!その顔を見るために俺様は生きてきたと言っても過言ではないのかもしれない」

心悸「ぶっ殺してやる!」

提督「ほざくなよ、捕虜に成り下がった分際で。せめて五体満足の状態でほざけ、この塵虫が」ニヤッ

鳥海「周囲の警戒、オールクリアです」

提督「おう、ご苦労。んじゃま、進撃のクソガキがくるまで語ろうじゃねぇか、糞虫心悸君」ドカッ


カチンッ……シュボッ


提督は手近にあった椅子を蹴り上げると、そこに大またを開いて座る。

胸ポケットからタバコとジッポを取り出すと火を点けて一服する。


提督「はぁ~…さて、と……で、誰の差し金だよ。居るんだろ?お前みたいな脳筋低脳スカタンポンがこんな仰々しい
策なんて思いつくはずねぇからな。天地がひっくり返って宇宙旅行が貧困層でも出来るくらいの偉業が成されても、
まずお前じゃ無理な発想だ。おら、答えろよ蛆虫君」

心悸「言うワケねぇだろ、死んで出直せよ白夜」

提督「くくっ、舌噛み切って自滅する勇気もねぇボンクラが偉そうに吠えてんじゃねぇよ。ただの遠吠えにゃ威嚇効果は
ねぇんだからよ、ちったぁ頭使えって。知恵を蓄える代わりにもやしでも栽培してんじゃねぇのか?」

鳥海「」(あなたに口で勝てる人が居るなら是非見て見たいです)

提督「……んだよ、その物言いたげな顔は」

鳥海「いいえ、別に?」

木曾「おう、ハズレの提督さんよ。うちの提督が到着した」

提督「そうか。まさか手ぶらじゃねぇよな?」

木曾「あぁ?手土産でも寄越せってのかよ。ったく、ゲンキンな奴だな、あんた」

提督「だぁほ、あんなクソガキの持ってくるガチの手土産なんぞ怖くて手も付けられねぇよ、バァカ」

木曾「チッ、口の減らねぇオッサンだ」

心悸「てめぇ、進撃と共闘してやがったのか!」

提督「人間ってのは学習するもんでな。一度殲滅戦を経験すると、次は同じ鉄踏まねぇように頭使うようになるんだよ。
お陰で俺ぁてめぇらよりも頭の回りが以前よりも良くなったらしい」ニヤッ



ガチャ……


提督「よう、クソガキ」

進撃「お疲れ様です、提督」

心悸「進撃、てめぇ…」

進撃「百貫中将は死にましたよ、心悸中将」

提督「てめっ……」

進撃「将校剣を自分の喉元に突き立ててそのまま一気にやられちゃいました」

提督「やられちゃいましたじゃねぇだろ!てめぇ、その毒舌で一気に捲くし立てて追い込みやがったな…!」

心悸「百貫が、死んだ、だと…」

提督「どうやら、てめぇよりあいつの方が何倍も忠誠心は高かったみてぇだな?いや、てめぇの掲げる信念を曲げなかった。
それに対する最大の誠意……ま、少なくとも暴れる事しか能のないてめぇとじゃ比べるべくも無いって事だ。
何より、これで俺様は確信を持って行動が取れる。ようやく尻尾を掴んだんだ…くくっ、ここからはてめぇ等のシナリオじゃねぇ。
俺様のシナリオ、俺様の計略、俺様の時間だ!」

心悸「ぐっ……」

進撃「提督、心悸中将をどうするつもりですか」

提督「あぁ?んなもん決まってんだろうが。口利けなくなるまでボコボコにした上で社会的に抹殺して生まれた事を後悔させ、
生きている事を懺悔させ、死にたくなるまで徹底的に追い込んだ上で絶対に死なせねぇだけだ」

木曾「」(うっへぇ……どんな生き方すりゃこんな発想生まれんだよ)ヒクッ……

鳥海「」(キチガイとはこの人のために生まれた言葉に違い無いわよね…)ハァ……

進撃「」(鬼悪魔でもここまで無慈悲になれるのか疑うレベルだな…)ゲンナリ……

提督「んだよ、言いてぇ事あんなら口利けや!」

木曾「ははっ、いやもう好きにしろよ。俺はもうどーでもいいや。提督、俺は戻ってるぜ」

進撃「えっ」

木曾「あんだよ」

進撃「いや、なんでもない」

鳥海「私も捕縛した艦娘の処遇についての意見提案に赴きます。では」ペコリ

進撃「えっ」

鳥海「え?」

進撃「いっちゃうの?」

鳥海「はい」キッパリ

進撃「」(超帰りたいんですけど…)

提督「クソガキ、てめぇ百貫見す見す死なせといてまさか『じゃあ俺はこれで』とか言えるとでも思ってんのか」

進撃「解りました、解りましたよ…お供しますよ。死なば諸共、毒を食らわば皿まで、一蓮托生……何でもござれですよ。
個人的に、俺も聞きたい事は山ほど有りますからね」



その後、心悸は文字通り私刑(リンチ)を受けたという。

だが肉体的ではなく、言葉による口撃によるものだったそうだ。

粗方収拾が付いた後、進撃の一報で元帥へ通達がなされ心悸と百貫による暴乱は一時の収束を見せた。

しかし心悸は最後までその計画の全貌を明かさないまま、獄中で自ら舌を噛み切り自害し果てた。

その報は提督にも直に知らされるが、彼にとっては予定調和だったようでさしたる驚きは見せなかった。

短いですが本日はここまで

乙です

おつ
とうとうキ○ガイ認定来ちゃったよ鳥海さんマジ容赦ない

ようやく追いつきました…!


白夜提督、長台詞をまくし立ててるから『リーガル・ハイ』シリーズの古美門研介みたいな感じだと思ってましたけど、『ST』シリーズの赤城左門が主なモデルだと聞いて、一本取られた気分です。

ただ、時々まくし立てる内容の一部におかしい部分があるのが残念です…(例:「雪辱を晴らすか?」→「雪辱を果たすか?」(>>348より))
あと、彼の二人称は「貴様」と「てめぇ」どっちなんでしょうか?あるいはどのように使い分けてるのでしょうか?



…長文失礼しました。
ともかく、続き楽しみにしてます!!

前作は…………暇になったら読みます…

俺が上の子の代わりに謝ります
ごめんなさい

>>416
なぜ謝るのです?

待ってる

皆様おはようございます
仕事の関係上、中々更新できなくて申し訳ありません
少しでも更新していきます




~光を求めて~



-更なる高みへ-

切っ掛けは、摩耶のお見舞いに赴いた艦娘病院での事だった。

私はこの頭脳さえあれば大抵の事は切り抜けられると、今までずっとそう信じて生きてきた。

窮地に立とうと、混迷の渦中に身を投じようと、この頭脳をフル回転させれば切り抜けられないものはないと。

姉妹で大本営への配属が決まった時、正直とても嬉しかったのを覚えている。

けど、私は希望する部隊への配属はされなかった。

古巣と言っても、既に解体され別の提督が鎮守府に着任し、そこにもう私の居場所はなかった。

ふふっ、結局紆余曲折を経て、また同じ提督の下に戻ったけど、相変わらずの俺様には辟易しますね。

あぁ、話が脱線してしまいました。

大本営の望まない部隊、望まない役職を押し付けられ、私は意固地になって自らその地位を捨てる事を決意しました。

摩耶には本気で怒られ、本気で心配され、本気で引き止められました。

でも、今ここにいる私が本当の私なのだと、今だから胸を張って言える気がします。

そんな決意を密かに秘めて臨んだ数々の戦場。

弄した戦術・戦略に他の艦娘達も当たり前のように応えてくれる。

これ程の喜びはいつ以来に味わうのかも解らない。

気付けば、私はここの皆を本当に愛しているのだと痛感しました。

でも、それ以上にやはり私は誰よりも摩耶を愛しているのかもしれません。

あの暴乱が終わって、いの一番で私は今ここにいます。

愛する姉妹を傷付けられ、愛する皆が同じ目に遭わないとも限らない。

以前に一度だけ、摩耶から電文が写真を添えて届いた事がありました。



『元気か、鳥海。あたしは晴れて艤装を改装して防空巡洋艦にバージョンアップだぜ。へへっ、写真添えてあるだろ?

軍装も改めたんだぜ?どーだよ、結構イケてるだろ!まぁ、ちっとばかしスースーするんだけどな』


お揃いだった白い襟に紺のセーラー、赤いリボンに白のスカート。

写真の摩耶は襟は同じ白でエメラルドグリーンのセーラーに襟とお揃いのワンポイントリボン、ミントグリーンのスカート。

チャームポイントなのか、セーラーと同じ色のミニハットを被っていた。

姉の高雄や愛宕と、色は違うけどお揃いのキャップ。

ちょっと可愛いとか思った私が憎い。

今回の暴乱を経験して、もう頭脳だけでは駄目だと改めて痛感した。

私は新しい力を得る為に、その糸口を得る為にここに居る。



提督「錬度としちゃ十分に戦力と見なせる訳だが、それでも尚、気概は変わらねぇってのか?」

鳥海「変わりません」

提督「だったらもう何もいわねぇよ。だがてめぇが思うような気楽なもんじゃねぇぞ。言い換えれば改造人間ってなもんだ。
近代化改修と同じだけの苦労を伴い、それが吉と出るかも定かじゃねぇ。あとは、てめぇの心構え次第だ」



今、提督と鳥海は工廠室前に来ている。

一部の選ばれた中将以上の鎮守府には艦娘を強化する工廠施設が存在する。

無論、他の鎮守府にも存在はするがその規模と機能は大きく隔たりがある。

改修や改造、新しい武装の製造と多岐に渡る工廠室だが、ハズレ鎮守府に存在するそれは必要最低限の設備が揃うのみ。

故に艦娘の基本性能を向上させる改造ともなれば他の鎮守府以上の労力が伴ってしまう。


鳥海「では、暫くの間は全く戦力になりませんので」

提督「おう、死んだら墓くらいは作ってやるから安心して死んでろ」

鳥海「本当、あなたは昔も今も変わりませんね」

提督「ふん、それが取り柄でこれが俺様だ。反論は認めん」

鳥海「するだけ無駄でしょう。それじゃ、精々期待せず待ってて下さい。では」ペコリ


ピッピッピッ シャー ガチャンッ


鳥海は一礼して開かれた扉の中へと消えて行き、程なくして扉も再び閉じられた。

提督はそれを確認後、立ち入り禁止の札を下げてその場を後にした。


満潮「鳥海の更なる改修?」

漣「みたいですよ~」

長良「ほえ~、更にレベルアップするって事かな」

加賀「総合的な戦力強化という事でしょう」



ガラッ……


提督「あぁ?何してんだ、お前等」

満潮「見て解んないの?お茶してるんだけど」

提督「訓練日だよな?殴り殺すぞ、クソチビまな板」

満潮「あんた馬鹿?休憩してるって言ってるのよ、アホ面オヤジ」

漣「よっ、今日も始まりました!ご主人様とみっちゃんの夫婦漫才!」

長良「あははははっ!」パチパチパチ

加賀「はぁ…」

提督「ちっ、大層なご身分だな。だからと言って羽の伸ばしすぎもどうかと思うがね」

加賀「当事者としては、その後の成り行きが開示されないのは不服と言うものです」

提督「はぁ?」

加賀「今回の一件についてです」

提督「そんで休憩時間利用してチンケな憶測ごっこかよ」

加賀「しかしその後が気になるのも事実です」

提督「あぁ?そんなもん、お前等が気にしてどうにかなるのか?くだらねぇ気を回してる暇があるなら自身を鍛えろ」


漣「あ、ちょ、みっちゃん!それ、ダメなパターン!やばっ、ギブギブ…!ぐるじい……」パンパン

満潮「うっさい!絞め殺す!」ギリギリ…

長良「ヤバイ、ちょーウケる!」ケタケタッ



加賀「……あっちは放っておきましょう。話を戻します」

提督「…アホか、あいつ等は…」

加賀「戦闘が終わった後、主犯格の提督一名が現場で死亡。残る一人も獄中で自ら命を絶ったと聞いています」

提督「てめぇはどっからそういう情報仕入れんだよ」

加賀「」スッ…

提督「ケータイかよ!誰だよ相手は!」


ピッピッ…スッ…


【一航戦 赤城さん/カテゴリー:親友】


提督「あんのクソガキ……艦娘にいらねぇ情報をペラペラと…っ!」

加賀「それで、あなたは本丸をもう見据えて作戦を次の段階へ進めようとしているのではないかしら?」

提督「あぁ?」

加賀「その第一歩が鳥海の更なる改修ではないかと、私は思っているわ」

提督「んな大層なお題目はねぇよ。真面目一辺倒の鉄面皮空母ちゃんは直に勘ぐるみてぇだがな」

加賀「……」イラッ

提督「あいつが自分から言い出した事だ。もっと強くなるにはどうしたらいいのかってな」

加賀「彼女が自ら…?」

提督「あいつは元々、こんな所に居るような存在じゃあなかったんだよ」

加賀「それは、どういう意味ですか?」

提督「てめぇで本人に聞け。俺は執務室に戻る」



提督「…はぁ、ったく…着任当初は他人の『た』の字も気に掛けねぇ分際だったくせに、あーだこーだと口煩い」


カチンッ……シュボッ


提督「はぁ~~……進撃のクソガキが百貫死なせてなきゃあ、もうちょい情報は得られたんだろうが……」

提督「……いや、くくっ…そんな事ぁもうどうでもいいか。さて、と……」ガタッ…


戻ってきた少しの日常と示された艦娘の決意、そして落ちこぼれ認定の烙印を押された者達の心境の変化。

提督は人知れず小さく笑いをかみ締めていた。

相手を貶める事によって生じる冷笑ではなく、蔑む事によって生じる失笑でもなく、それは紛れもない笑み。

その笑みを残して、その日提督はハズレ鎮守府から姿を消した。

とりあえずここまで

>>415
貴重なご意見ありがとうございます
確かに古美門研介のような捲くし立てる台詞が多いので、言われてみれば古美門研介な
性格もありかもしれませんね
言葉の履き違えについては私の未熟とするところです
今後の精進する材料にさせて頂きます
二人称に関しても同様かもしれません
重ねて貴重な意見ありがとうございます


待ってた、超待ってた
そして相変わらず続きが気になる引き方をしなさる

乙です

皆様こんばんは
更新滞り続きで申し訳ございません
少しずつ更新します

-友-

漣「みっちゃん、そっちはどうだったです!?」

満潮「居なかったわ」

長良「鎮守府周辺見てきたけど、何処にも居なかったよ」

加賀「……提督」

満潮「加賀、最後に会話してたのあんたでしょ。様子が変だったとかなかったの?」

加賀「普段と変わりなかったとしか言いようが無いわ」

満潮「あのアホ面オヤジ…!鳥海だってまだ工廠室から戻ってないのに」

長良「けどさ、本当に司令官は私達の事を見捨てたのかな?」

漣「…信じたくないです」

満潮「この状況で信じるも信じないも…」

漣「信じたくないです!」

満潮「さ、漣…」

漣「ご主人様は口は悪いし性根は腐ってるし自分勝手でワガママでクソを地で行く畜生ですけど…」

満潮「暴言しか今のところ確認できてないわね」

漣「ご主人様は絶対に私達を見捨てたりはしないと思うです!」

満潮「っとに…だったら、私達だけは疑っちゃダメよね」

加賀「緊急事態に変わりはありません。鳥海には悪いけれど、呼び戻してくるわ」

長良「あっ」

加賀「……?」

鳥海「その必要はありません」

漣「お、おぉ…!」

長良「露出が激しい…!」

鳥海「ど、何処を見てるんですか!全くもう…何はともあれ、鳥海、参りました。皆さんに心配を掛けた分とお礼、
海戦にてお返しできればと思います」

加賀「鳥海、具合などは問題ありませんか?」

鳥海「ええ、大丈夫。工廠の妖精さん達の手助けもありましたから」

長良「いや~、でも軍装まで変わってるとは~」

満潮「まぁ、似合ってるんじゃないの?」

漣「エロさは格段にあがってるです」

鳥海「もう!」

加賀「緊張感の無さは相変わらずです」

鳥海「折角ですから、摩耶とお揃いのものにしてもらったんです」

加賀「摩耶…確か、彼女は」

鳥海「ええ、まだ意識が戻ってないの。でも、あの子は強い子だからきっと大丈夫って、私は信じてるわ」

加賀「そうですか。それなら、私からは別に何も言う事はありませんね」

鳥海「ふふっ…それより、皆さん集まってどうかしたんですか?加賀さんは私を呼びに来ようとしていたみたいですけど」

長良「あっ、そうそう!ねぇ、鳥海って司令官と少し前まで同じ鎮守府で上官と部下の関係だったんだよね?」

鳥海「はい、そうですね」

満潮「あのアホ面オヤジ、消えちゃったのよ」


鳥海「は?」

漣「だーかーらー!私達を放置プレイなのです!」

長良「でね、鳥海なら司令官の行き先とかわかんないかなーって」

加賀「取り敢えず、この鎮守府内や周辺には居ない事は確認済みです」

鳥海「そう言われても、別に私はあの人のお目付け役という訳ではありませんでしたし…」

長良「前の鎮守府じゃ鳥海はどういったポジションだったの?」

鳥海「第一艦隊の参謀を務めていました。白夜の艦隊、その中でも私の提唱する戦術についてこられるメンバーのみで構成され、
白夜鎮守府の中では所謂、精鋭部隊と呼ばれる存在でした」

満潮「え、それちょっと凄くない…?」

漣「嫉妬するです」

長良「転落人生ってヤツかな?」

鳥海「もう少しオブラートに包んだ表現を覚えて下さい…とにかく、通称として謳われた白夜の艦隊はその当時では圧倒的な
強さを見せていたと思います。メンバーは旗艦である航空戦艦の扶桑さんを筆頭に私鳥海、同じく航空戦艦の山城さん、
軽空母の千代田さん、駆逐艦の睦月さんと弥生さん、以上が当時の白夜の艦隊第一艦隊です」

加賀「山城…」

鳥海「どうかしました?」

加賀「いえ、山城と言う名前に覚えがあったので」

鳥海「とにかく、司令官さんの足取りを調べたり行方を追うのは困難に思います」

長良「えーっ!それじゃ、どーするの!?」

満潮「何もしないってワケ?」

鳥海「ええ、厳密には。ただ、私達には私達にしか出来ない事があるじゃありませんか」

漣「私達にしか出来ない事?」


加賀「深海棲艦と戦う事、でしょうか」

鳥海「その通りです」

満潮「そりゃあ、そうかもしれないけどさ」

鳥海「今出来る事、それを私達は全力で行えばいいのだと思います。前線での指揮は私が受け持ちます。
加賀さんは提督の代わりに決断をお願いします」

加賀「…………」

鳥海「私達は、成長しているはずです。前線での指揮は私が執ります。それによって生じた責任は全て私が請け負います。
ですが、あなたが下した決断は全員で吟味した上で齎された結果です。誰があなたを責めようと思いますか。
私達は戦友であり、仲間であり、同じ時を共有した友です。ここに、あなたを信じない者は誰一人としていません」

長良「私達の仲じゃん?っていうか、加賀は仲間を信じられない?」

満潮「別に取って食ったりなんてしないわよ。私だって信じてる。この鎮守府の面子は全員信じてるわ」

漣「一蓮托生ってやつですよ~。死なば諸共、世は情け!」

加賀「…ありがとうございます。私は、良い友を持ったようです。では、差し当たっての今後の方針について決定を下します。
私はまず、この事を元帥へ報告しに大本営へ赴きます。提督の様子からして、まだ身内に敵は居る模様です」

満潮「尻尾だけってワケね」

漣「怖気しかしないです」

長良「司令官は目星付いてたのかな?」

鳥海「そうだとして、姿を晦ませたのが何かしらのサインだとするなら…」

加賀「何れ邂逅を果たせると思います。では、早速で申し訳ありませんが…」

鳥海「はい、留守はお任せ下さい。提督代理」

加賀「……」

鳥海「…何か?」キョトン

加賀「少し、その呼称はむず痒いです。では」ペコリ

満潮「あれってさ…」

長良「あははっ」

漣「照れてますね、絶対!これは貴重ですよ!加賀さんのテレ!ワクテカです!!」

-真実-

『一航戦、加賀。入ります』


ガチャ……パタン……


加賀「失礼します」

元帥「来る頃だろうと思っていたが…よもや艦娘が来るとはな」

加賀「我が鎮守府の提督の消息が途絶えました。今回はその報告と今後の方針についての指示を仰ぎに参上した次第です」

元帥「彼が消えた…?」

加賀「この場に着てまでつく嘘ではないと解ってもらえると助かるのだけれど」

元帥「一体、何があったんですか」


別にこれと言った事象が起こった訳でも、変化が生じた訳でもないと加賀は思っている。

強いてあげるなら、今まで以上に自分達の絆は強固なものになったと、その程度だろう。

提督自身に何か意識改革が起こったのかもしれないし、自らで何かを成そうとしているのかもしれない。

本当のところなど一つとして解っていない。

事実として眼前にあるのは忽然と消えた提督の消息とその所在、それだけだ。

加賀は何一つとして偽る事無く、事実の全てを詳らかに語った。


元帥「……そうですか。話は変わりますが、君は提督の過去と言うのを存じていますか?」

加賀「薮から棒ですね。それが今回の一件と何か関連があるのでしょうか?」

元帥「少なくとも、心悸と彼には浅からぬ因縁があるのは事実だよ」

加賀「……どんな因縁があるんですか?」

元帥「私が語ったと言うのは内密にしてもらうよ」


元帥はそれを前置きにして静かに口を開いた。



彼は元・白夜の艦隊と称された精鋭艦隊を率いる中将だった。

戦術眼では右に出る者は恐らく現時点を置いても居ないだろう。

彼の眼は常に未来を視ていたらしい。

白夜の艦隊は旗艦を航空戦艦の扶桑が務め、随艦に航空戦艦の山城、重巡洋艦の鳥海、軽空母の千代田、

駆逐艦の睦月と弥生、六名により構成されていた。

航空戦に憂いがあるように見受けられる編成だが、千代田の戦力とそれを補助する扶桑と山城姉妹のサポートもあり、

空での制空権争いも他と引けを取らない、優秀なものだった。

そんな精鋭揃いの艦隊が、とある海域において大敗を期し、撤退を余儀無くされる事態が発生した。

その撤退救出作戦発動の際に先陣を務めたのが心悸だ。

結果から言えば無残なものだった。

旗艦の扶桑を始めとし、山城、鳥海は大破、千代田、睦月、弥生はロストした。

満身創痍だった扶桑達三名は後少しと言う所で敵の凶弾の雨に晒され、扶桑は自らの身を呈して山城と鳥海の身を守った。

無論、扶桑は吹き荒れる嵐のような凶弾の全てをその身に受けて轟沈したと聞く。

彼女が報われてたとするのなら、それは────


扶桑「敵の、撤退を、確認しました……」

提督「扶桑…!」

扶桑「提督……」

提督「待ってろ、応急要員の妖精は万が一を考えて連れてきている!お前を死なせるものか」

扶桑「提督……覚えて、ますか」

提督「何をだ」

扶桑「ずっと、昔に…小さな、男の子と…約束を、しました」

提督「約束…?」

扶桑「はい。その子の父親の乗る船が、深海棲艦に襲撃され……遺体すらも、揚がらず…彼は途方にくれていました」

提督「…………」

扶桑「だから、提督も、私も……あの子に誓ったじゃありませんか」

提督「ああ……」

二人『君に誓う。同じ悲劇は決して起こさない』

扶桑「……」クスッ

提督「……」

扶桑「提督」

提督「っ!」

扶桑「不幸ですね、提督────」



元帥「────今わの際で、提督の膝元で果てる事ができた事、なのかもしれんな」

加賀「今話にあった内容の何処に、心悸との交わりがあるのかしら」

元帥「ふっ、あぁすまない。私とした事が、無駄が過ぎたな。これでは本末転倒だ。あの時、先陣を務めたはずの心悸の艦隊は
その全てが無傷、被害は軽微なもので凡そ前線に赴いていたとは思えなかったそうだ」

加賀「それは、つまり」

元帥「表向きは援軍として駆けつけ、本質は見て見ぬ振り、と言う訳だ。だが確たる証拠は無く、不問に処されている」

加賀「元帥から見て、不審に感じる点は何処でしょうか」

元帥「提督の入れ知恵なのか、君自身の意見なのか…そこは非常に興味をそそるが今は受け流す方が賢明かな?
ふふ…そう邪気を孕んだ目を向けないでくれ。こう見えて友達は少ない方なんでね、これ以上嫌われても悲しくなる一方だ。
君が思うとおりだよ。心悸にここまで計画性のある行動は取れない。私が彼を大将にしたいと考えたのも、理由の一つとして
近くに置いて監視をする為でもあったのさ。実力は確かにあったが、その手段が私個人としては気に入らない。
過去にも似た行為を行う輩が居てね。彼も元大将の位に座していた存在だったが、先の騒乱と合わせて進撃提督と
私に出し抜かれてボロを出したと言った所だ」

加賀「では、やはり元帥も心悸の裏に隠れて彼自身を操っていた存在が居ると見ているのですね?」

元帥「相違無い。キメラ男の行方も掴めないばかりか、それに係っていた部隊の決壊事案。ロストが出なかったのは
不幸中の幸いと言うべきだが、それで済ませられるほど優しいものではない。何より───」

加賀「───これ以上黙ってやられる道理はない」

元帥「ふっ……その通り、良い気概だ。伊達や酔狂で提督の下、秘書艦を務めていた訳ではないようだ」

加賀「…………」

元帥「さて、これは私の独り言だから君はそれをたまたま聞いていたという事で構わない」

加賀「は…?」


実は内々に調査を進行していく中で不審な点が幾つか浮上した。

一つは一部の中将率いる鎮守府の動きが局地的に活性化しているという事だ。

活性化しているのに戦果は伴っていない。

挙げられる理由として実戦を行っておらず、演習やある種の実験を定期的に行っているという事。

基本的に身内同士や同じ区画での演習戦等は大本営への報告は不要だ。

それによって生じた自損事故等については無論、自己申告の命が課せられるが、内々で処理してしまう鎮守府が殆どだな。

これらの戦果の伴わない活性化は鎮守府単位で見ればさしたる事はないが、全体として見ると非常に目立つ。

監視の対象として挙げられていたのは次の鎮守府群だ。



・煉獄の艦隊を指揮するエリート提督の鎮守府

・忌避の艦隊を指揮する蛇蝎提督の鎮守府

・鬼刻の艦隊を指揮する心悸提督の鎮守府

・鮮血の艦隊を指揮する百貫提督の鎮守府

・隷属の艦隊を指揮する元中将の位に就いていたキメラ男こと、キメラ元提督の要塞


この内、心悸の艦隊と百貫の艦隊は君達が制圧し、監視対象だった彼等も自らその命を絶った。

残るのは三名、エリート提督、蛇蝎提督、キメラ元提督だ。

中でもエリート提督は非常に狡猾でヘマをしない、尻尾を掴むのにも辛酸を舐め続けた。

だが、ついに糸口を掴んだ。と同時に、提督が姿を晦ましたわけだ。


加賀「狙いは、エリート提督ですか」

元帥「重ねて言おう。これは私の独り言だ。君がその後どういう決断を下し、どういう行動を取ろうと、我々海軍は
一切の認知をしない。海軍界隈での認識として、落ちこぼれである君たちを我々が自ら先導し、道を示す事は許されない。
期待を抱くのなら、潔くこの件からは身を引け。我道を貫くのなら、歴史に名を連ねずとも、私の記憶の中で君たちは
英雄として認識し続ける」

加賀「地位や名声で全ての人が動くわけではないわ。そう、私達は存在を認識されない存在です。故に存在しない者。
提督が言うであろう言葉を代弁させて頂きます」


好きなだけ利用するならすれば良い。

後で手放した事を一生後悔するほどの偉業を成して取り返しのつかない事態を引き起こしてやる。

一番なんぞ欲しい奴にくれてやる。

俺たちは常に二番手、人知れず一番手の裏を行く。

表舞台で躍りたいヤツは躍らせておけ、躍り終わった後で周りを見れば既に事は済んだ後だ。

合ってない目の焦点を必死になって合わせて見ておけ。


加賀「────目に物を見せてやる」

元帥「…………」

加賀「…では、失礼致します」ペコリ


ガチャ……パタン……


大和「……歴戦の勇、と表現するのがとても似合う艦娘だと思いました」

元帥「全く、黙ってじっと聞いてるだけなんて、君も少し意地が悪くなったんじゃないか?」

大和「加賀に敬意を表していただけです。他意は有りませんよ?」

元帥「ふっ……しかし、あの目を見る限り先の独り言は蛇足だったようだな」

大和「もとより、彼女達は自分達がするべき事を把握しているんだと思います。提督の行方を伺いに着たのも、
何か情報が欲しい、と言うよりは知っているなら聞いておこう、くらいの考えなのかもしれませんね。
実際にエリート提督の事などは寝耳に水、という表情でしたから」

元帥「かもしれないな。さて、それじゃ我々も動くとしよう。この海軍を内部から破壊しよう等、夢物語も甚だしいくらいの愚弄振りだ。
ただ黙って見ているだけと思ったら大間違いだという事を証明してやる必要がある」

大和「例に漏れず身内を傷付けられてもいますから…戦意は全員、漏れなく充填完了しています。士気も極めて高いでしょう」

元帥「そうだな、先の騒乱で既に習わされている。これ以上、後手に回る必要も謂れもない。持てる戦力全てを出して、
奴等を徹底的に叩き潰す。深海棲艦を利用した叛乱など、決して許すな!いけ、大和…第一第二艦隊、共に抜錨だ!」

大和「賜りました。旗艦大和、第一主力艦隊出撃致します」

取り敢えずここまで

乙です

乙!
待ってましたっ!



容疑者達の艦隊名が字面からして怪しいものになってるのは、どういう作中設定故にですか?

中世ヨーロッパの王のあだ名みたいなもんじゃね
見た目とか、皮肉を込めてとか
進撃だって後から付けられた呼び名っぽいし

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします


>>439
それぞれに一応はバックストーリーはありますが、大っぴらに物語の中で
語るようなことはありません
話を作る上で私個人が書きやすいように設定を組み立てた際に生まれた艦隊名です
あとは>>440さんの言われる内容が凡そを占めているかと思います

-白夜-

提督「これまた随分と閑散としてて、まるで出迎える手筈にゃなってませんでしたって具合じゃねぇか」

エリート「当然じゃないか。ここは君のような分別の解らない俗物が本来は来ていい場所ではないんだ」

提督「やっと、てめぇの背を掴んだぜ、エリート君よ」

エリート「背を掴んだ?勘違いしないで貰いたいな?君はまだ、僕の背は愚か姿すら捉えていないよ」

提督「んだと…」

エリート「あの『事故』の中、生きていたという事実については褒めるべきなのかもしれないね。逆に言うなら、
心悸には失望したとも言える。まぁ、余計な事を語らず潔く散ってくれたんだから、供養はしてやるつもりさ」

提督「百貫も心悸もてめぇの差し金だな」

エリート「証拠はあるのかい?なぁんて、今更言うつもりは無いよ。ここからは力で捻じ伏せる。最も、予定からは
随分と航路で言えば逸れてしまっているからね。修正が必要になってしまった訳だよ」

提督「てめぇの差し金だな!?」

エリート「ふっ…らしくもない、怒声を発するのが君のスタイルだったかな?以前はもっと、穏やかじゃなかったかな?」

提督「だぁってろ。てめぇの言ってるのは白夜艦隊の白夜提督だろうが。俺ぁ白夜じゃねぇ」

エリート「では何だというのかな?」

提督「ハズレ鎮守府の提督様だ、覚えとけこの蛆虫糞虫脱糞野郎!」

エリート「くくっ、最早遺言だな。艦娘も連れず、単身乗り込んでくるなんて気が狂ってるとしか言いようが無い。
それで?同じ人間同士なら組み伏せられるとでも?」

提督「てめぇが思ってるほど、今の海軍は甘くは無い。前元帥は確かに甘い考えが目立つところも多かった。
だが逆にそれが野郎に全幅の信頼を寄せる引き金になっていたのも事実だ。カリスマ性は抜群だったろうよ。
今の智謀をてめぇがどう分析してるのかしらねぇがな…あいつぁ女狐だ。愚策を弄した瞬間、摘まれるぜ?」

エリート「この僕が、道を誤ったと?」

提督「誤った?誤っただと?クックック……いやぁ、これはまたひっっっじょうに面白い!言うに事欠いて誤った、か。
最早寝言だな、エリート君!ふ・み・は・ず・し・た…の間違いだろ。言葉くらいちゃんと使い分けろよ、バァカ」

エリート「全く…口の利き方を知らない俗物だ。単身で乗り込んできた事を後悔させて上げるよ」

提督「俺様を亡き者にしようってか?ククッ……大いに結構!だがな、うちの艦娘共を甘く見るなよ。
あの時みてぇなヘマはもう起こらないし、これ以上てめぇの思う通りにシナリオは進まねぇ…」

エリート「脚本家でも気取るのかい?」

提督「クックック……三流役者のてめぇをキャスティングに加えるようじゃ脚本家にゃなれねぇだろ」

エリート「ほぅ…」ギロッ…

提督「てめぇはいいとこ舞台袖の小道具係だ。分を弁えろよ、三下以下のヘチマ野郎。ここから先の主役は、あいつ等だ。
そのどぶ川よりも濁りきった汚ぇ目を目一杯に見開いて刮目しろ。その都合よく出来た聞こえない耳を極限まで澄まして
一言半句も漏らさず全てを聞き取れ!てめぇが誰を敵に回したのか思い知れ。地獄の果てまで行こうと後悔させ続けてやる。
そしてこれが最後だ…扶桑の分も含めて、きっちり落とし前つけてもらうぜ。目に物を見せてやる…!」




加賀「準備を整えて下さい」

鳥海「指針が定まったんですね?」

長良「準備なら万端!」

満潮「いつでも暴れてやるわよ」

漣「ガンガン行こうぜ!ですよ!」

加賀「私達の目標は極めて単純です。提督を発見し、これを鎮守府へ連れ帰る事」

鳥海「妨害は多そうですね」

加賀「何か問題でも?」

鳥海「ふふっ、いいえ?」

加賀「問題ないわ。みんな優秀な子たちですから」

長良「えへへ~、改めて言われると照れるね」

加賀「私の艦載機の子たちの話なのだけれど」

長良「ぶーぶー」

加賀「冗談です。私はみんなを信頼しているわ」クスッ…

満潮「ここまできて逆に信頼してくれてなかったら驚きよ」クスッ…

漣「で~すよね~♪」

加賀「では、いきましょう。一航戦、出撃します」

鳥海「戦術、戦略はお任せ下さい。さぁ、行きましょう!」

長良「よしきたー!任せといて!」

満潮「ふんっ、私が出なきゃ話にならないじゃない!」

漣「みっちゃん節頂きましたぁ~♪さてさて~、それじゃ漣も行きましょう!駆逐艦漣、出るっ!」




進撃「────って訳で、ここらで恩を売っておいても損はないだろうって事で、今回は皆さんにお話を持ってきた訳です」

鋼鉄「そうは言ってもねぇ、私の所と…」チラッ…

不動「…ああ、俺んとこはまだ不完全だ。戦力には悪ぃがあんまならねぇぞ」

進撃「だからこそ、無理言ってこいつにも着てもらったんですよ」

新月「先輩、人遣い荒いってよく言われませんか…」

進撃「安心しろ。一部にしか言われん」

新月「言われてるじゃないですか!もう、大体僕の艦隊は基本出撃許可を取るの大変なんですからね!」

進撃「それも知ってる。だから内密にだな」

新月「もうやだ、この先輩…」

不動「苦労してそうだなぁ、おい新月大将殿ぉ」ニヤニヤ

新月「そう思うんなら助け舟くらい出して下さいよ、不動さん!」

不動「だっはっは!まぁそうだわな。けどよ、生憎と俺は進撃の坊主がお気に入りでな、お前とじゃ天秤に掛けるまでもねぇんだわ」

新月「はぁぁぁ……」

鋼鉄「ほんと、新月くんは相変わらずね」

新月「鋼鉄先輩も同罪ですよ…」ムスッ

鋼鉄「あ、あれぇ…?」アセ

新月「取り敢えず連れてきてはいますけど、本当に大丈夫なんですか?」

進撃「なんとかなるなる、だいじょーぶ」

新月「」(絶対嘘だ…!)

鋼鉄「で、具体的には?」

進撃「ハズレの提督殿がどう動くのかは解りませんから、そこは考慮に要れずに話を進めます。恐らくですが、そろそろ
智謀元帥も動くと思うんですよ。少なくとも、やられっ放しで黙ってるような人じゃないのは明白ですからね」

不動「まぁ、あの女狐がそう易々と汐らしくなるなんてなぁ夢物語だわな」

鋼鉄「今の発言、元帥に後で報告しておくわね~」

不動「……お前も大概だな」

進撃「鋼鉄先輩も茶々はそれくらいで」

鋼鉄「はいはーい」

進撃「幸い、うちの艦娘達は被害は殆ど受けていないのが不幸中の幸いです。まぁ、本来であればハズレ鎮守府への遠征時、
そこで手負いになる予定だったのかもしれませんが、運はまだまだ味方してくれているみたいです。鋼鉄先輩の所はどうです?」

鋼鉄「そうねぇ…正直、うちの面子のみでの艦隊編成は絶望的と取ってもらって結構よ。まともに動けるのは長門、酒匂、
隼鷹、まるゆの四人だけ」

不動「俺んとこも似たようなもんだぜ。古鷹、加古、矢矧、名取の四人だ」

進撃「新月の所は全員万端ってのは聞いてたけど、連れてきてくれたのは…」

新月「即戦力としては十分だと思いますよ。ただ、大所帯になるので必然的に数は制限されますけど…リコリス、ピーコック、
フェアルスト、暁ちゃんとヴェールヌイちゃんの五人です。ポートとアクタン、瑞鳳ちゃん達には申し訳ないですがお留守番してもらってます」

進撃「制空権の争いにも海上戦の火力にもそれなら申し分無しだ」



──じゃあ、そこに一つ情報を付け加えて上げましょうか──


進撃「だ、誰だ!?」


ガラッ…


足柄「ほ~んと、自由人な人達は困ったさんが多いわね」

鋼鉄「あなた、足柄…!」

不動「おいおい、マジかよ…」

足柄「ふふっ、別に驚く事でもないでしょう?一度は一緒に肩を並べた仲なんだし?そう身構えなさんなって。
それよりも、追加情報よ」ピラッ…

進撃「なんで用紙…」

足柄「これでも一応、大本営直営隊の一人なの。そんなのがベラベラと口頭で喋るのは都合上宜しくないのよね~」

進撃「さいですか。えーっと…え、これ、本当に漏らしていい情報?」

足柄「もうバッチリ、キッチリ、スッパリと鮮やかに情報漏えいレベルね」

不動「おいおい…」

足柄「まっ、何ていうのかしら。鬱憤晴らす機会設けてもらったのは事実だしね。そのお礼ってトコかしら。
そんな訳だから、この事自体はオフレコよ、オ・フ・レ・コ。じゃ、私も戦列に加わるから、精々偶然を装いなさい?」


ガチャ……パタン……




進撃「はは…偶然ね。にしても…そうか、だからあの人たちは……」

鋼鉄「内部にこれだけの膿が溜まってたとなると、ちょっと放って置くわけにも行かないわよね」

不動「百貫や心悸、それに処罰された北のボンボンやハイエナまで同じかよ」

鋼鉄「残ってるのは、エリート提督に蛇蝎提督、そして…」

進撃「取り逃がした、キメラ男…」

鋼鉄「足柄の口振りから言って、智謀さんが動いたのは確定よね」

不動「俺等にまで無言とはまた随分とご挨拶だよなぁ」

進撃「何かと一人で背負い込むタイプみたいですね」

鋼鉄「まぁ、自分がトップである海軍を馬鹿にされてるんだから、当然と言えば当然よね」

進撃「敵はエリート提督、蛇蝎提督、そしてキメラ男……それぞれに艦隊が有されているとして、更に深海棲艦も
配備されているとなればこちらも相応の戦力を揃えないと最悪、返り討ちなんて結果にもなりますね」

不動「女狐も動くんだ。そうなれば少なく見積もっても二艦隊分の戦力は期待していいんじゃねぇのか」

鋼鉄「ひよっこが言いたいのはそれを抜きにした上での戦力計算よ」

進撃「認識力高くて助かるんですけど、そのひよっこってのいい加減止めません?」

鋼鉄「あたしにしたらあんたはいつまで経ってもひよっこよ。ピヨピヨピー♪」ワシャワシャ

進撃「だー!もう、頭ワシワシすんの止めて下さい!」

新月「はは、まるで姉と弟ですね」クスッ…

不動「ククッ…っとに、このクサレ師弟共はよぉ…」

進撃「はぁ、もう放っといて下さい…で、俺達は鋼鉄先輩が言うように智謀元帥の艦隊を勘定に入れない形で話を進めます」

新月「不測の事態にも対応できるように、ですね」

不動「なるほどねぇ…」

進撃「これ以上、海軍がいいようにされる訳にもいかないんですよ」

鋼鉄「まっ、そうよね」

不動「どうせだ。また俺達でぶっ潰しちまおうぜ」ニヤッ

進撃「頼もしい事で」

新月「僕も微力ながら尽力させてもらいます」

進撃「んじゃ、早速榛名達を招集して艦隊編成と詳細な作戦を練りましょう」

本日はここまで

乙です

乙!

エリート提督、グレーかと思いきやクロ確定ですか・・・

保守

皆様こんばんは
更新遅れ気味で申し訳ありません
出来る限り早い更新を心がけていきます




~影の五人~



-先陣-

ビスマルクを旗艦とし、更に戦力強化を果たした布陣となった元帥直属護衛艦隊第二部隊。

またの名を淵源の艦隊。


ビスマルク「皆、準備は良いわね?」

プリンツ「はい!いつでもいけます、ビスマルク姉さま!」

イタリア「演習ばかりでアレだったけど、やっとわたし達の実力を示せるわね」

ローマ「そうね、でも姉さん余りはしゃぎ過ぎないで下さいね?」

Z1「さて、僕達も出撃だ」

Z3「ええ、われらの本当の力を見せる時ね」

ビスマルク「私達は主力の大和達に続く形で陣形を保つわ。いい?くれぐれも油断大敵よ。奇襲とはいっても、
一度は大本営直営隊に大打撃を与えている連中だもの」

プリンツ「ビスマルク姉さまと一緒ならきっと大丈夫です!」

ローマ「独逸の重巡はホント、姉と慕うビスマルクにベッタリね」

イタリア「あら~、じゃあわたし達もベッタリする~?実の姉妹同士だし?」スリスリ

ローマ「っ!?ちょ、ちょっと!姉さん、ちかっ…近いから!メガネ落ちちゃうから!」

イタリア「そういえばビスマルクさん、大和さん達は?」

ビスマルク「彼女達は先刻、準備を整えて既に抜錨してるわ」

ローマ「ちょっと、それじゃわたし達出遅れって訳?」

ビスマルク「安心なさい。その為の高速部隊よ。よく言うじゃない、英雄は遅れてやってくるってね?」

イタリア「ふふっ、その言葉に見合うだけの戦果、上げましょうか」




進撃「これが、今俺達に出せる最高の戦力です」

不動「くくっ、壮観じゃねぇか、なぁ?おい!」

鋼鉄「そうねぇ…慢心する訳じゃないけど、それでもこの面子は頬が緩むわね」

新月「先輩達、本気で付いて行くんですか?」

進撃「提督の椅子に座って踏ん反り返るのは執務してる時だけで十分だろ。これは、海軍の誇りを懸けた戦争だ」

不動「おぉ、良い事言うじゃねぇか進撃のボウズ」

鋼鉄「そうねぇ…ご褒美に良い子良い子してあげましょうか?」

進撃「…………」

鋼鉄「じ、冗談だからそんな辛辣な目で見ないでよ…」

新月「なら、これも良い勉強になるでしょうから、僕もお供させてもらいますよ」

進撃「車椅子は押してやらないぞ」

新月「言っておきますけどね、車椅子生活で腕力にはこう見えて自信あるんですよ」

不動「はっはっは、活きの良い大将様だなぁ。頼もしいこった」

鋼鉄「あなたが発案者よ。きっちり締めなさい。進撃大佐」

進撃「よし…目標はエリート提督、蛇蝎提督、キメラ男の三名が率いる聨合艦隊だ。手加減は無用、慈悲も情けも捨てて挑め。
『敵泊地、強襲作戦』をこれより発動する!各艦隊は進路を定め即時抜錨。目標を殲滅せよ!進めっ!!」


■第一艦隊
榛名
赤城
ピーコック
羽黒
川内
神通

■第二艦隊
長門
陸奥
リコリス
飛龍

Bep

■第三艦隊
フェアルスト
比叡
霧島
衣笠
北上
木曾



榛名「私達の目標はエリート提督率いる煉獄の艦隊の制圧です」

赤城「一航戦の誇り、お見せします!」

ピーコック「まさかまたこうして肩を並べる事になるとは思わなかったわ」

羽黒「頑張ります!」

川内「変態野郎にリベンジしたい所だったんだけど、仕方ないかぁ」

神通「姉さん、油断はダメですよ」


長門「我々の目標は蛇蝎提督率いる忌避の艦隊だ。油断するなよ」

陸奥「久々ね、姉さんと一緒って言うのも、これはこれで気合入るわ」

リコリス「空の目は任せなさい。小バエ一匹すら見落としはしないわ」

飛龍「頼もしい限りだけど、私の友永隊も忘れてもらっちゃ困るな!」

暁「パワーアップした暁達の力、見せてやるんだから!」

Bep「ふふ、力が入りすぎてるよ、暁」


フェアルスト「私達の目標はキメラ男の率いる隷属の艦隊よ。悪趣味なものは綺麗に掃除しないとね?」

比叡「お姉さまの分まで、私!気合!入れて!いきます!」

霧島「戦術ならお任せ下さい!」

衣笠「衣笠さん、暴れちゃうんだから!」

北上「変態に興味ないんだけどな~」

木曾「っしゃあ!暴れまくるぜ!!」



進撃「エリート提督達の目論見は定かじゃありませんが、少なくとも邪魔となる俺達には牙を剥くでしょう。
実際、鋼鉄先輩や不動提督への攻撃は行われ、俺も危うく同じ目に遭うところだった訳ですし…」

新月「それなら、どうして僕の所にはこなかったのか、ですよね?」

進撃「相手が躊躇した、もしくは戦力を見誤っていたか…リコリス達の報告じゃ撤退行動に移っても追撃してくる
様子は見られなかったんだろう?」

新月「ええ、何かを見定めている…そんな雰囲気だったと言ってましたね」

進撃「ならまずは目先だ。お二人の艦隊を沈黙させたとは言っても、それは主力の話であって第二艦隊以降は無事な訳です。
それらも全て殲滅しようとするのなら、間違いなく鎮守府諸共襲撃するはずだ。だから作戦従事に全ての艦娘を帯同させる
わけにはいかない。少なく見ても、鎮守府を防衛できるだけの戦力は温存しなければならない」

鋼鉄「でもまぁ、相手もまさか提督連中まで進軍してくるとは想定しないでしょうね」

不動「元来、俺等は悪く言えば言うだけ言って執務室でただ待ってるだけってのが仕事だったからな。本丸自ら先陣切って
雄たけび上げるなんざ昔のヨーロッパの合戦くれぇなもんだ。だがよ、進撃…俺等がこうして出張る意味ってのはぁ、
実際のところどんな意味を持つ?」

進撃「一つは事実の確固たる確認です。この目で、耳で、事件の概要を余さず記憶する事。言い逃れを絶対にさせない為です。
そしてもう一つは……」

鋼鉄「勿体振ってないで早く言いなさいよ」

進撃「ムカつく連中のツラをこの目で見て無様な姿を見ておく事」

不動「……は?」

鋼鉄「ちょっとあんた、ハズレの提督でも憑依してんじゃないの……」

進撃「とまぁ、あの人ならそう考えるだろうなと…」

不動「ハズレのクサレ野郎が居るってのか」

進撃「元はと言えば、全てはあの人を軸に動いていた事件ばかりです。悪く言わせて貰えば、俺達はその火の粉に中てられたも一緒です。
そしてまだ終わりは迎えていない。心悸中将を追い詰めて尋問していた時も、あの人は黒幕の存在を吐かせようとしていました。
ですが、あの余裕を持った態度は既に黒幕が誰なのか知っている素振りでもありました」

鋼鉄「なんですって?」

不動「順当にいけばエリートの野郎か」

進撃「はい。あの二人にどんな因縁があるのか、そこまでは流石に俺も知りませんがどちらも互いを嫌悪しているのは確かです」

不動「犬と猿、まさに犬猿ってワケだ」

新月「そんな可愛いものには見えませんけどね」

鋼鉄「どっちだっていいわよ、そんな例えは。ようは今、私達がどうするか…そうでしょ?」

進撃「その通りです。渦中があの二人だとしても、そんなの俺達には関係ありません。やられた借りを返す。その一点のみです」

新月「なら、彼女達の力戦を僕達はしっかりと見届けましょう」

不動「だな」

進撃「何より、執務室で通信だけの安否確認なんてのは真っ平ゴメンですからね。いざとなれば、前にだって出ますよ」




大淀「元帥、良かったのですか?」

元帥「何がだ」

大淀「元帥直属護衛艦隊第一部隊と第二部隊である開闢の艦隊・淵源の艦隊…それ等を抜錨させるほどなのかと」

元帥「いつも言ってるじゃないか。ものにはそれぞれに起源があり、その始まり次第でどちらにでも転ぶと」

大淀「つまり?」

元帥「つまり?ふふ、開闢の艦隊と淵源の艦隊は共に始まりを見てきた艦隊だ。それと同時に過ちを食い止める、
海軍における第一の手。海上における過ちは海軍が決して許さない、という事だ」

大淀「少し、進撃提督の熱が移っているように感じられました」

元帥「ふっ、そうなのだろうな。毎年毎度、カリスマ性を秘めた提督と言うのは現れるものだ。前元帥を筆頭とし、
進撃提督もそうだが、姿を晦ました提督もまたそんな内の一人だ。そして、渦中にもう一人…エリート提督……
彼もまた、そういう人種に位置する存在だ」

大淀「自らを抜かす当たり、謙遜も程々が宜しいかと」

元帥「自らをそこに添えるのは傲慢と言うものだよ。誰かに添えられたのなら、それは甘んじで受け入れるけどね」

大淀「だからこそ、今の元帥があるのではないでしょうか」

元帥「では、そういう事にしておこう。君は相変わらずだな、大淀」

大淀「常に中立であれ…周りが右往左往するであろう時、人と艦娘で思想が交わらない時、如何なる時であろうと
君は状況を常に客観的に見れるようにしておきなさい。その目は、海軍に於ける楔となるだろう。前元帥から倣わされた
掟とも言える私にとって唯一無二の言葉であり、教えであり、信念です。ですが、一時の感情で私は二度、提督に対し
感情のままに言葉を紡いだ事があります。まだまだ未熟、という事です」

元帥「…だからこそ、人も艦娘も成長し、進化してゆくのだろうさ」

本日はここまで

乙です

乙!

「本丸自ら先陣切って雄叫び上げる」のって、昔のヨーロッパより昔の日本の方が顕著だったと思いますよ?
平安時代末期から南北朝時代あたりまでは「やあやあ、我こそは三河の国の住人、足利次郎重範なり」みたいに名乗ってたわけですし

名乗ってたのは武将であって御大将じゃあないんだよなぁ
本丸は基本軍全体の動きをみるために動かさないんだよなぁ確か

皆様こんばんは
少し更新します

-出闇、照らす光-

彼がこれまでに歩んできた道は業火に塗れ、血を滴らせ、悪鬼すらもその場に跪かせた。

相対した者達は須らく地獄を垣間見、生を懇願し、望み叶わず朽ち果てていった。

容赦無く、躊躇い無く、許しを請おうとも一切を赦さず断じ、逃げようとも追い縋りトドメを刺す。

いつしか誰にとも無く彼の従える艦隊を地獄の使者、煉獄の艦隊と呼称するようになる。


自分が嫌う事は徹底的に避け、他者へとその全てを押し付ける。

罠へ誘い、罠へ貶め、罠に嵌った者達を容赦なく蹂躙する。

その悪辣非道な振る舞いに、いつしか周りが彼女を避けるようになった。

好かれたいとも思わない。

好こうなど到底思わない。

その考えは彼女が従える艦隊にも反映された。

避けたいのなら好きなだけ避ければ良い。

しかし、避けた先に何が待ち受けていようと、こちらには一切の非は無いものと知れ。

そう、それで例え命を落とす事になろうとも、恨むのなら自らが選んだ、回避した、逃げた先を恨め。

いつしか彼女の艦隊は忌み嫌われ、避けられるような艦隊、忌避の艦隊と言われ誰も交流を持とうとはしなくなった。



鬼刻の艦隊。または鬼哭の艦隊と呼ばれ恐れられた艦隊があった。

彼の艦隊が通った後には悲惨なまでの惨状と悲壮な呻きが木霊し続けたという。

虫の息であえて留め、苦しむ様を周囲に見せつけ、地獄をその場に形成する。

深海棲艦が相手であっても敵を哀れに感じるほどに、その絵は惨劇と呼ぶに相応しい状態となった。


表向きは仏の男、しかしその男の本性は残忍で狡猾、誰よりも血を好み、誰よりも残酷な未来を想像できる男。

従える艦娘達もまた、彼の理念に共感する狂える獅子だった。

彼等の進んだ海域、その後の海原は真っ赤に染まり、血の海と化す。

故にそう呼ばれて然るべき存在となる、鮮血の艦隊。

その男が生まれたのは偶然なのか、それとも必然なのか、だが恐らくは必然だったのだろう。

提督として地位を確立してからの行動は迅速であり、隠蔽する様子すらもなく顕著だった。

運良くその地獄より這い出た艦娘によって事実は露呈し、彼は海軍より追放を余儀なくされた。

だが、彼は生き延びた。

それは最早信念などではなく、執念をも凌駕し、怨念とも呼べる禍々しい念を宿して生まれ変わる。

捕らえた艦娘を一人ずつ料理し、自分好みにカスタマイズする。

精神を崩壊させ、自我を失い、壊れた艦娘は深海棲艦として仮初の命を与えて駒とする。

だが自我を保とうと精神は汚染され、ある意味造り替えられたと言っても過言ではないその存在達には既に未来などない。

ただその男の悦を満たし、従順な性格に躾けられ、文字通り手足となって使役される奴隷。

その悪臭が漂いそうな場を揶揄してか、彼の従える艦隊を海軍では隷属の艦隊と呼称した。




元来、元帥直属護衛艦隊とは元帥の威厳を象徴する為の言わば威嚇にのみ行使されるべき艦隊だった。

最高の錬度を誇り、最高の武装を備え、最高のメンバーで構成される最高の艦隊。

何ものをも寄せ付けず、何ものをも凌駕する。

常に至高であり海軍の誇る鎮守府群の頂点に君臨し続け、ただ一つの命を遂行し続けるワン・オブ・オーダーたる存在。

昔も今もその命は遂行し続けられ、不変的であり、これから先も揺らぐことは無い。

しかし、今そこに存在する元帥直属護衛艦隊は明確な意志を持ってそこに存在する。


大和「新生、と呼ぶに相応しい編成かもしれませんね」


大和は小さく微笑んで隊を成す他の五名を見て呟き、他の五人も小さくその言葉に頷いて返す。

その大和率いる第一部隊の眼前には無数の深海棲艦の姿が見て取れた。


大和「直、ビスマルクの第二部隊も到着します。この程度の火の粉、難なく払い進軍します!旗艦より各位、
これより第一部隊は前線の道を切り開き、最奥に位置する本丸を討ち取ります。速度を落とす事無く、目標へ向かい
突き進んで下さい。開闢の艦隊……突撃、開始です!」


大和の号令に全艦娘が臨戦態勢を取り、一点を目指して速度を上げて突撃を開始する。

前線を担う前衛隊を一撃の下に屠り、大和を先頭として単縦陣の陣形を崩さないまま、文字通り開闢の艦隊は進軍していく。

突き進めば突き進むほどに暗雲は濃くなり、視界は視野を狭め、やがて空の色を反映させたとは思えない、

海原は紫煙の如き色と霧を立ち込めさせる。

そしてその先に、亡霊の如く揺らめく影の一群。

悪鬼の一味がその眼光を怪しくギラ付かせ、静かに佇み彼女達を待ち受けていた。



キメラ男「……この私にここまでの恥を掻かせた罪は重いなぁ。海軍…組織諸共、地獄の門を潜らせて上げるよ。
あぁ……恐怖に歪む顔を早く見たい。いいね、君たち……以前に配った写真の艦娘達が居た場合は、行動不能に留めて
私の前に引き摺ってくるんだ。それ以外は、ふふっ……好きに料理して構わない」

ル級改艦娘「仰せのままに、ご主人様」

タ級艦娘「了解致しました」

ネ級艦娘「お任せ下さいませ」

リ級艦娘「必ずや、ご主人様の意向に沿って見せます」

ツ級艦娘「勝利を、あなた様へ」

ト級艦娘「視界に映るその全てを、闇の色へ…」

キメラ男「いけ……エリートや蛇蝎の出る幕など無い。この私が支配する隷属の艦隊のみで十分だ。
この海原を血で染め上げろ!」


待ち受けていたのは隷属の艦隊を指揮するキメラ男。

大和はそれを確認し、その表情を更に引き締めて備える艤装の砲塔、その全てを真っ直ぐにそちらへ差し向ける。

大きく息を吸い込み、後は声を発するだけ。

その刹那、横から彼女の言葉を全て飲み込ませるほどに鋭い声が飛ぶ。


──お前達の本丸はその艦隊ではないはずだ!──


短いですが、書き溜め分ここまで

乙です

乙!
各敵艦隊の由来が分かって、興味深かったです!

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

大和「っ!?」

木曾「進め、開闢の艦隊ッ!!」

北上「こいつらはうちらの獲物だよっと」

比叡「ここはお任せを!」

霧島「ここより北北西、真っ直ぐに!風は1~3ノット、小波程度で緩やかな海域です!」

フェアルスト「出口を切り開くのが主力艦隊の勤めではないでしょう?さっさと行きなさい」

衣笠「ここは衣笠さん達にお任せ!」

大和「あ、あなた達…何故、この海域に!?」

木曾「喧嘩売られっ放しで黙ってられるほど俺等は優等生じゃねぇってコトさ」

比叡「散々引っ掻き回してくれた分、全力で!私が!お返しします!」

衣笠「そーそー。個人的にも私達はそこの艦隊と因縁あるもんね!」

霧島「ええ、のし付けて返しにきました」

北上「さぁさぁ、あんた達は行った行った~」

大和「……全く、常に自由で周りを振り回す。困った艦隊です」

フェアルスト「全くだな」クスッ…

大和「大和より第一舞台各位へ!本隊は進路を北北西へ、持てる速力を最大にして進軍します!」


大和の号令に彼女達の艦隊は一路進路を北北西へ変えて一気に突き進み、それを援護するようにフェアルスト達の歓待が

その前に立ち塞がり進路の妨害を阻止する。



キメラ男「ちっ……新月の所に居る元・深海棲艦だった存在だな?確か、戦艦棲鬼……だったっけ?」

フェアルスト「……」

キメラ男「まぁなんでもいいや。邪魔をするならお前も始末するだけだ。虫の息で生き残れたなら褒美として
お前も私の実験のモルモットにしてあげるよ。光栄だろう?」

フェアルスト「…あなたはここで沈みなさい。沢山の鉄屑が眠る、この深い海の底で…永遠に光の届かない深淵の闇に
その全てを抱かれ二度と海面に上がってこないように…!」

キメラ男「ほざけ、出来損ないが…!いけ、私の最高傑作達!」

フェアルスト「行くわ…この艦隊を、殲滅する!超弩級戦艦フェアルスト、眼前の敵を掃討する!全艦続けッ!!」

比叡「お任せを!」

霧島「ええ、成し遂げて見せましょう!」

衣笠「久々に暴れてやるんだから!」

北上「ギッタギッタにしてあげましょうかね!」

木曾「っしゃぁ!全部薙ぎ倒して俺達もその先へ進むぜ!」




加賀「…………」

??「因果カ何かカシラ…?」

加賀「ある意味私が相手で僥倖です。他の子たちだと、少し手間取っていたでしょうから」

??「コノ、空を……モウ…飛べないノヨ……同じ苦シミを、味わセテあげる……ッ!」


鳥海「やっぱり、居たのね」

??「当然だロウ。ここから先へは、何人たりトモ進ませはシナイ」

鳥海「いいえ、通らせて頂きます」

??「ソウか……ならば、此度ノ戦……始メテ…みるか…?」ニヤッ…


長良「なんかごっついの出てきたぁ…」

??「お前がワタシの相手ダト…?脆弱ナ軽巡一匹ガ、か…」

長良「軽巡だからって甘く見てもらっちゃあ困るなぁ」

??「つまり、前線ノ奴等ハ殲滅サレタか、見過ごシタ訳か……役に立たぬ、忌々シイ……ガラクタ共メッ!!」


満潮「何よ、あんた」

漣「そこをどいてくださいまし~?じゃないと、ぶっ飛ばしますよ?」

??「あははははははッ!ざぁんねん、ハズレ。君達はここでボクに殺されるんだよ。クジか何かで進路でも決めた?
だとしたら相当、クジ運ないよねぇ?だって、ボクの居るこの進路に来ちゃってるんだから♪」

満潮「どっちがクジ運ないのよ」

漣「駆逐艦だからって馬鹿にしてると腹パン所じゃ済みませんよ~」

??「ふふっ……威勢は良し。なら、絶望をその身に刻み込んで上げるよ…ッ!」ニタァ…




────時間は少しだけ遡る。


加賀「それでは皆さん、先の作戦概要に沿って各自行動開始をお願いします」

鳥海「満潮と漣は、本当に大丈夫?」

満潮「問題ないわ。やってやるわよ」

漣「今回もまた、本気モードの漣をお見せしちゃいますよ!」

長良「えーっと、作戦は…」

加賀「満潮と漣以外は単独で各自、独自のルートを辿り敵領海深部へ侵入を試みます。恐らく、相手方も
蜘蛛の巣の如く深海棲艦やハイブリット型の艦娘を配備して待ち受けているでしょう」

鳥海「けど今回はタイミング良く、進撃提督達が解りやすい具合に進軍を開始してくれてます。
私達はこれを利用して相手の裏を掻い潜り、無用な戦闘を避けて一気に本丸へと近付く算段です」

加賀「各自、支給した装備等で戦力の強化は図れているはずです。ですが、油断は即死へと繋がります。
慢心など言語道断です。何においても全力を尽くし、最善を選び、最良を成して下さい」

鳥海「無茶難題と私は思っていません。私達だからこそ成せると信じています。私達は艤装に例えるならば、
主砲でも副砲でもありません。私達は、この海を駆る弾丸そのもの。ただ狙い定めた標的を貫くのみです」

長良「じゃっ」サッ


長良はニッコリ笑って片手を前に差し出す。

それに応えるように、加賀も静かに片手を差し出し、長良の上に添える。


加賀「言わずもがな、です」

鳥海「こういうの、嫌いじゃありませんよ」スッ…


加賀の差し出した更に上に、鳥海も小さく微笑みながら片手を添える。

そして互いに顔を見合わせていた満潮と漣も揃って片手を前に差し出し三人の上に重ねて添える。


満潮「やってやるわ」

漣「ご主人様的解釈なら【めにもの!】ですね!」

長良「あははっ、それ略しすぎだって。じゃ~……皆、いくよ!っていうかまぁ、加賀さん!音頭、音頭!」

加賀「相手が誰であろうと容赦する必要はありません。持てる全てを出し切り、再び出会いましょう。
合縁奇縁ではあるけれど、私達の存在は必然であり、偶然ではないのだから」

鳥海「目に物、見せて差し上げましょう!」

長良「トーゼンだよね!」

満潮「タイプ別でしか把握・認識できないって言うんなら、その前提を悉く覆してやるわ」

漣「見せ付けて、知らしめて、唖然とさせてやるです!」

加賀「行きましょう。武運を願います」



最初に手を引き、身を翻して加賀が歩みを進める。

慢心はない。

微塵も油断はしていない。

緩んでいようがいまいが、兜の緒は嫌と言うほど締め直した。

決意の値は誰よりも一歩先を行く。

しっかりとした足取りで進み、そして小さく、しかし大きく息を吸い込み、凛と響く声でいつもの一航戦が顔を覗かせる。


加賀「一航戦、出撃します」


次に歩みだしたのは鳥海。

秘めた想いは誰をも凌駕するであろう。

しかし、今の彼女に微塵の疑いも憂いも何もない。

信じているのはただ一つ、生き残り再び愛する皆と再会する事のみ。


鳥海「さぁ…行きましょう!」


失敗もした。

悔やみもした。

消えてしまいたい衝動にも駆られた。

それでも今の自分が在るのは周りの皆やそれを解って導いてくれた存在が居たからだろう。

だから彼女は形に残す事で報いる。

今の彼女に、迷いは微塵も存在しない。


長良「よしきた!任せといて!」



誰も信じてこなかった。

これから先も誰も信じないはずだった。

でも、気付けば信じていた。

信頼していた。

心から安息を得られる場所を見つける事ができた。

その場所を、そこにいる仲間を守る為なら、彼女は進んで修羅となる。


満潮「私が出なきゃ話にならないじゃない!」


いつも本心を隠して生きてきた。

誰かのために動く事など一度もなかった。

自分を偽り、他人と距離を取り、決して自分を晒す事をしなかった。

今は違う。

偽る必要も、距離を取る必要もない。

ありのままの自分を全力で曝け出せる。


漣「駆逐艦漣、出るっ!」


それぞれがそれぞれに決意を秘めて力強い一歩を踏み出す。

彼女達の勇姿は決して語られる事はない。

彼女達の立ち位置は常に二番手。

脚光を浴びるのは一番手。

二番手はただ静かに自分の仕事をこなすのみ。

彼女達は海軍から忌み嫌われる存在。

行き着いた先は海軍の墓場と呼ばれるような場所。

しかしだからこそ、彼女達は誰よりも大きな輝きを放てる。

一番手の影で強い光を放ち続ける。

本日はここまで

乙です

乙!
口上がとてもかっこいいです!痺れます!

乙です。いいですねえ・・・決戦に向けて盛り上がってきた。

皆様こんばんは
書き溜めておいた分だけ投稿しておきます

-借りの返し方-

蛇蝎「あらあら……まさか、たった六人だけできたの?」


薄っすらと浮かべた笑みは明らかに現れた六人を嘲笑し、馬鹿にしている笑みだった。

彼女を守るように前面に展開される六人の艦娘。

その脇と後ろには無数の深海棲艦が蠢いている。


陸奥「いやになっちゃうわね」

長門「ああ、全くだ」

暁「お、多い…」

Bep「やりがいはある」

飛龍「いつでも発艦準備は出来てますっ!」

リコリス「あの数を見ても別に怖気付きはしないでしょ?」

長門「ふっ、無論だ。むしろこの闘志はいつに無く燃え上がっている」

暁「長門…!」

Bep「…うん!」

長門「何より、巡り巡って漸く果たせなかった約束が叶った」

陸奥「ふふ、それもそうね」

飛龍「約束?」

長門「ああ、暁達と同じ土俵に立つ事。彼女達と共に肩を並べて戦う事だ。約束だったからな」

暁「成長した姿、見せるんだから!」

Bep「信頼の名は伊達じゃない」

長門「期待しているぞ。さて……」ザッ…

蛇蝎「身内同士、お別れの挨拶は済んだかしら?」

長門「別れの挨拶だと?」

陸奥「くすっ……冗談でしょ」

飛龍「ギャグにしてはキレがありませんねっ!」

リコリス「妹達が待ってるの。寝言は他所でお願いできるかしら?」

暁「一人前のレディは、まだまだ沢山やる事があるんだから!」

Bep「無論、先の会話は帰ったら何をしようか、と言う会議さ」

蛇蝎「ちっ……だったらその余裕の顔が恐怖に歪むまで、徹底的に追い詰めた上で深海へ沈めて上げるわ。
前衛部隊、行きなさい!」バッ

長門「まずは敵の戦力を削ぎ落とす!いいか皆…我々は必ず帰還する。迷いは振り切り、前に突き進み、
そしてその力を遺憾なく発揮しろ!艦隊、この長門に続けぇッ!!」ザッ

飛龍「ヨシ、出だしは!」サッ

リコリス「任せなさい!」バッ

飛龍「第一次攻撃隊、発艦っ!」ビュッ

リコリス「First Air Fleet…Go! Fly away!!」バッ


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


蛇蝎提督の叱咤する声と、長門の凛とした声が海原に木霊し、それが開戦の合図となる。

続けて飛龍とリコリスの二人による攻撃隊が飛び立ち、この瞬間に戦いの火蓋が切って落とされた。




人の本当の顔と言うのは解らないものだ。

裏表のない人間なんてものは、この世に存在しないのではないだろうか。

今、眼前に立つ男こそ、まさにそれを象徴するかのような存在と言えなくもない。

大本営で見た時とは別人と言っても過言ではない。

それ程までに『悪』を前面に出したようなその顔つきはそれだけで威圧感を迸らせる。


榛名「あなたは…」

エリート「ようこそ、我が鎮守府へ。けど、歓迎はしない。この場で皆平等に、深海の藻屑になってもらうよ」

ピーコック「何なの、こいつは…新鋭の時のような業の深さを持ちながらそれ以上の何かを孕んでいる…」

エリート「新鋭さんはまさに、僕等の象徴的存在だよ。最も、墓穴を掘ってあの様だ。君達の提督が力戦奮闘し、
君達自身も勇猛果敢に戦った。その結果として、彼女は捕まり絶海の牢獄に今も収容されている。僕は常々思う。
何故、人間とはこうも愚かで、無様で、無能で、同じ過ちを幾度と無く繰り返すのか?子供でも学習はする。
大人になると学習機能が低下するのかどうかは解らないけど、少なくとも子供より物覚えは悪い。
付け加えて、諦めも悪くなる。この、男のように……ッ!」ズルッ……ドサッ…

提督「…………」

赤城「彼は…!」

羽黒「ひ、ひどい…」

川内「ハズレの提督…!?」

神通「……」

榛名「なんて、事を…」

エリート「勘違いしないで貰いたいな。ここを襲撃してきたのは彼なんだよ?防衛対策を取って然るべきじゃないか。
これは僕の慈悲だよ。今はまだ殺しはしない。この僕が海軍の頂上に立ちその全てを統べる時、改めて彼に罰を与える」

ピーコック「気分は既に海軍本部の最高権力者たる元帥かしら?」

エリート「ふふっ、いや何…例えそうだとしても、今の君達のように納得しない者達が多い。従わない者の方が明らかに
多いんじゃないかな?だから、粛清と精査、支配と隷属という処置が必要になる」

ピーコック「恐怖で縛り付けるというの?」

エリート「目の前の現実を直視させて上げるのさ。そして何れ解る時がくる…そして知る。これが正しかったんだと。
目的は後付で構わない。目の前に広がる現実が正しいと認識された時、手段は元より目的も正当化される」

ピーコック「傲慢の限りね。目的のためなら手段は選ばない…つまりはそういう事でしょう?」

エリート「ふふっ、元・深海棲艦だった存在か。よく抗弁をする。しかしこの目で生で見れる機会があるなんて僥倖だよ。
だが、君は所詮深海棲艦としては出来損ないの存在に過ぎない。極まった存在が、進化を遂げた存在がどれだけ偉大なのか……
僕が教えて上げるよ。刮目しろ…そして思い知るといい。煉獄の世界へ誘って上げるよ」



エリートが踵を返して奥に引き下がると同時に、幾つかの影が前に出てくる。


榛名「あなたは…!」

山城「邪魔なのよ。提督の前に立ち塞がる者、その全てが邪魔!」

榛名「どうして…何故、あなたはこんな真似に加担するんですか!」

山城「どうして、ですって?あなたに、私の何が解るって言うの!?たった一人、血を分けた姉を殺されて……
そんなズレた事がいえるのは、失った事のない存在だけよ。だから等しく、皆平等に教えて上げるのよ。
その身に刻み込んで上げるのよ。失う事の辛さ、悲しさ、悔しさ、その者が持つ本性の醜さを…!」

提督「……やま、しろ……」

山城「…まだ生きていたの?ふふっ、存外生命力だけならあなた、深海棲艦も上回るのかもしれないわね」

提督「……全く…反吐が、出る……」

山城「そこで歯軋りでもして見てなさい。今から目の前に居る艦娘達がどうなるのか…!」

提督「くくっ…」

山城「何を、笑ってるのよッ!!」

提督「そいつ等は、完成された、存在だぞ」

榛名「」(完成された存在?私達が…?)

提督「じ・つ・に……不愉快だ。不愉快すぎて、頭の中が…パンクしそうなほどに、怒りが、抑えきれん」

山城「はぁ?何を言ってるのよ。怒りですって?姉さんを見殺しにしておいて、どの口が言うのよ!お前が言うな!」

提督「……はぁ、おい。高速戦艦の、榛名…」

榛名「…は、はい!」

提督「俺様のことは、どうでもいい…そして、こいつ等は……」


バキッ


提督「がはっ」

榛名「あっ!」

??「余計な発言は控えてもらおう。貴様はただ、黙ってそこでこの場が地獄に染め上げられていくのを見ていれば良い」

提督「て、めぇ…」

ピーコック「いいわ、無理して体力消耗しても意味ないもの。そこで黙ってみてなさい」

提督「ちっ…」

赤城「彼女達は…」

川内「ホントにさぁ、どうしてこう…うちの提督みたいに平和を享受しようとしないんだろうね」

神通「全くです」

山城「平和ボケしたあなた達に言われても何も感じないわね。扶桑型戦艦山城。出撃します!」

??「教えてやる。脆弱な存在がどれだけ無価値な存在か。戦艦武蔵、いざ…出撃するぞ!」

??「改飛龍型の本当の力、見せてあげる!!航空母艦葛城、抜錨する!」


逆光に晒されシルエットのみだった内の二人が更に前に出てその姿が露になる。

軍装の色は違うものの、明らかに彼女達は艦娘だった存在。


山城「武蔵、葛城、手駒の深海棲艦はごまんと居るわ。好きに使って構わない。この場に居る全ての艦娘を根絶やしにするわ」

武蔵「異論はない。どの道、生かして帰す道理もない」

葛城「文字通り血祭りに上げるって感じ?どっちでも構わない。楽しめれば、それで!」

ピーコック「ハイブリット型の艦娘かしらね。注意するのはあの三人ね。いいわ、空の目は私が司る」

赤城「え?」

ピーコック「…話くらいは聞いてるわよ。この場にあの提督が居て、その部下である艦娘達が居ないって時点で変でしょう。
どこかで足止めを受けているのか、はたまた死んだのか…私にはどうでもいい事だけど、あなたは違うんでしょう?」

赤城「ピーコックさん…」

ピーコック「経験者はかく語りきってヤツかしら?大事なら、手放さない事ね」ザッ

榛名「加賀さん、ですよね。大丈夫です。この場は榛名達にお任せ下さい!赤城さんはどうぞ、加賀さんの下へ!」

羽黒「……」コクッ

川内「行っておいで、こっちは大丈夫だからさ」

神通「必ずまた、会いましょう」

赤城「皆さん…恩に切ります」バッ


一歩前に出たピーコックとは逆に、赤城は反転してその場から離れていく。


山城「あははははっ!え、ちょっと何よ。え?一航戦は敵前逃亡って訳なの?聞いて呆れるわね!」


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュンッ


ボゴオオォォォォォォン


山城「くっ…!」

ピーコック「言葉を慎みなさい。一航戦はあなたのような不遜な相手をしてる暇が無いのよ。不遜な輩の相手なら、
この私がしてあげるわ。身の程を弁えなさい、俗物!ウェーク島陸上型基地ピーコック。その全てを焼き尽くす!」

山城「言わせておけば…」

葛城「あの相手は私がやる。空すらも、朱に染め上げてやるわよ」

ピーコック「…面白そうね。この私に航空戦を仕掛けるなんて……良いでしょう、けど後悔しても遅いわよ」

武蔵「さて、私の相手は残りの三匹か?だが気を付けろよ。これから始めるのはただの蹂躙だ。多勢に無勢などと言う
生易しい反論なら聞く耳を持たん。そのような言い訳を口にする時点で弱者。この場に居る資格など微塵もない!
相応の覚悟を背負った者だけ、この私の前に立つが良い。ならば、その敬意に賞してこの私の手で海の藻屑としてやろう」

川内「言いたい放題言ってくれるね」

羽黒「沈むのは貴女のほうです!」

神通「世迷言です。貴女は勿論、深海棲艦その全て…矢尽き刀折れようと、殲滅して見せます!」

榛名「あなたの相手は、私がします!」

山城「大本営で見たときから気に入らなかったのよ。あなたの目、仕草、振る舞い、表情、何もかもが癇に障った。
ここまで他人をイラつかせれるなんて、ある意味その分野に秀でた才能の権化ね。殺して上げるわ!」

榛名「絶対、負けません!」


後に大火の海戦と呼称されるこの戦いは、誰にも予測の出来ない事態を持って収束を向かえる事になる。

だが今は、それを知る者は誰一人としていない。

ただ、眼前にある事実を受け入れ、それに立ち向かう者、抗う者とに別れて苛烈な戦いが始まろうとしているだけだ。

短いですがここまで

乙です

乙!
ここで山城が敵として登場、ですか・・・
しかし、なぜ武蔵と葛城も敵に設定したのでしょうか?

勝手ながら、敵について整理してみました。


傲慢→煉獄の艦隊を指揮するエリート提督(今のところ無傷、交戦中)

嫉妬→忌避の艦隊を指揮する蛇蝎提督(今のところ無傷、交戦中)

憤怒→鬼刻の艦隊を指揮する心悸提督(捕まって尋問されるも何やかんやで自害、故人)

怠惰→ハイエナ提督(口封じのために抹殺、故人)

強欲→北提督?(不正がバレて逮捕、獄中?)

暴食→鮮血の艦隊を指揮する百貫提督(自害、故人)

色欲→隷属の艦隊を指揮するキメラ元提督(一度捕まるも外からの助けで脱獄、交戦中)


こんな感じで合ってますか?
間違ってたら上書きしてください。

皆様こんばんは
少しだけ更新します


>>487
>理由
余り既存の艦娘を敵として登場させるのは好きじゃありませんが
明暗がハッキリしている艦娘vs深海棲艦という構図よりも、艦娘vs艦娘という
形式だと、個人的に話を書きやすいから、というのが最も近しい理由でしょうか
敵として選抜した理由は今回は山城以外は殆どランダムです


>>488
わざわざそこまで読み取って頂きありがとうございます
添削箇所はございません、書き出して頂いたものそのままです
作中でそれらしい描写はしましたが、気にするほどの事もない程度のものだったので
そこまで理解して頂けている事に感激します
本当にありがとうございます




~空谷の跫音~



-残された者-

看護士「ダ、ダメです!何をやってるんですか!?」

??「うるっせぇ!もう十分動ける!あたし等だけ、指咥えて見てるなんて出来るわけがないだろ!」

看護士「外部の傷は治癒されました!ですが、まだ内部は完全に治癒されているわけではないんですよ!?」

??「だから身内や仲間が傷付くのを黙って見てろってのかい?それに、あたし一人を止めても無駄だぜ?
あたし『等』の意思は一本の太い線で繋がってんだ。あたし等は艦娘!たった一つの信念の下にのみ動く!」

看護士「な、何を言ってるんですか。あ、あたし等って…」

??「彼女の言うとおりだよ。私達はここでヌクヌクとベットに潜ってる場合じゃないんだ」

??「そりゃあ、無理無茶言ってるのは解ってますよ~」

看護士「な、な、な……!」

??「わりぃな、看護士さん。あたし等にも譲れないものってのがあるんだよ」

??「同じ辛酸を舐め続けるのは、金輪際なし!やるなら、徹底的にやります!」

??「とーぜん!」


新聞記事に後日、艦娘病院脱走事件として小さな見出しを飾るこの事件は、今現在戦場で奮戦する艦娘達にとっては

天より差し伸べられた救援の一手となった。


看護士「はぁ…もう、これどうするのよぅ…」

医師「やれやれ、以前に治療した艦娘達もそうだが、一人として怖気付かないものだな」

看護士「あ、先生…!」

医師「うむ。まぁ、こうなるだろうとは思っていたが…よもや、ほぼ全ての艦娘が、とは想定外だったよ。
怪我の程度がひどい子達はそういう気があっても体が動かないから断念していたが…」

看護士「ですけど、他の子達だってまだ完治してるわけじゃないんですよ!?」

医師「修復剤と入渠を交互に繰り返して外と中を治癒していたくらいだからね。まぁ、しかしだ…
こうなってしまったのなら我々もある程度腹を括らねばならんだろう。彼女達在っての今の世界なのだ。
余り好ましくはないが、またここに舞い戻ってくる事になってもいいように、万端の準備で出迎えてやろう」

看護士「戻ってきたら雁字搦めにしてやります!」

医師「ははっ、程ほどにな」




先行した元帥や進撃聨合艦隊、ハズレ鎮守府の面々から遅れる事数時間後、そこにまたもう一つの艦隊が結成された。

目的はそれぞれに異なり、彼女達自身も既に満身創痍に他ならない。

ただ護ると言う信念の下に、彼女達は立ち上がった。


??「よし…んじゃ、準備いいよな?」

??「うん、バッチリ!」

??「問題なしだよ!」

??「はい、大丈夫です!」

??「今度こそ、やってやるわ!」

??「二度と遅れは取らん!」

??「おう!じゃあ行くぜ!抜錨だ!!」

??「艦載機の練度もバッチリです。戦果を期待してください!」

??「今度はゼッタイ本領発揮しちゃうからね!」

??「行くわよ!」

??「抜錨します!」

??「よし、出撃するぞ!」


バラバラだった者達が次々と力を合わせていく。

エリート提督の誤算とは、まさにここにあったのだろう。

最後の最後で詰めを誤る深慮の浅さ。

捨て置いて問題ないと軽薄に考えた思考の緩さ。

以前に誰かが言った。

やるならきっちりトドメを刺して殺さないと意味がないと。




-収束された力の真価-

飛龍「第二次攻撃隊の要を認めます!」スッ

リコリス「脆いわね!これならまだ、あの当時戦った榛名達の方が数倍…いいえ、何百倍も強かったわ!」サッ

飛龍「攻撃隊、発艦っ!」ビュッ

リコリス「The second Air fleet…Let's go!!」バッ


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュンッ


ボゴオオオォォォォォォン


蛇蝎「くっ…!何なのよ、どうして…!私の従える一群が、こんな…たった六人ぽっちの艦娘なんかに…ッ!!」

リコリス「空の目はもう私一人で十分ね」

飛龍「え?」

リコリス「直にこの海域は制圧できるといったのよ。少しだけ耳に挟んだ事があるの。何ものをも恐れず、
空母でありながら先陣を切り、数多の深海棲艦を一矢の下に撃滅する最強の矛が存在する、と…」

飛龍「…………」

リコリス「彼女は元・エリート艦隊の第一艦隊に所属していた最上位の空母艦娘。鎧袖一触の加賀。
二つ名を持ってる艦娘なんてそうはいないわ。それこそ、それぞれのクラスで名を馳せていても、轟くかも怪しいレベル。
けど、彼女の場合は周知の事実として今も尚、その強さは恐れ戦かれている。あなたも空母の端くれじゃない?」

飛龍「むっ、その言い方には些か不満を覚えますよ!」

リコリス「ふふっ、それは失礼。でもだからこそ気になる。違うかしら?あなたにしか扱えない最高戦力、友永隊。
その動きがこうもブレると言うのはよほどの事ではないかしら?
一矢入魂の飛龍が集中を切らせるとしたら、私に思いつく限りではそこにしか行き着かなかっただけよ」

飛龍「……気にならないと言えばウソです。赤城さんを通じて、その戦果は幾度と無く聞かされていましたからね。
でも、誰かと自分を比較するなんて、そんなのはおこがましい事だと思いますよ?って、赤城さんが言ってた。
そうだよね、自分は自分!他人は他人!そこには微塵も同じ所なんて無いんだから、比べるなんて無理なんだよ。
でも、だからこそ私は彼女には常に最強であって欲しい。いつか私が彼女を越す壁として、存在してて欲しい」

リコリス「なら、向かいなさい。蛇蝎が率いている艦隊程度の錬度ならば、私を含めた残りの四人で十分対応できるわ。
駆逐艦と少し甘く見ていたけど、あの子達の錬度は申し分ない。下手をすれば戦艦クラスですら呑み込む力を持ってる。
なら、私はそんな彼女達が思う存分海を駆れる様に、空を見通しよくする事に注力すればいい。その程度の事なら、
今の私には造作もない事だわ」



ザザッ…


陸奥「あら、小休憩かしら?」

飛龍「陸奥さん」

陸奥「冗談よ。親しき仲にも礼儀ありってね?袂は違っても、大切な仲間なら助けに行って当然じゃないかしら?
勿論、火遊びは程ほどにしないとダメだけどね?」

飛龍「…ありがとう。本当に、ありがとう!」

長門「暁、ヴェールヌイ!左舷から二匹着ている!二人で対応しろ!」

暁「当然じゃない!」

Bep「ハラショー。的確な指示だ。一気に片付けるよ、暁!」

暁「この暁に任せなさい!」

長門「行け、飛龍!お前の背を狙う愚か者が居るのなら、その全てを私の主砲が貫いてやる!」

飛龍「長門…」

リコリス「私は縁も所縁も無いもの。その分、ここで普段のストレスを発散させてもらうわ」

蛇蝎「何処までも邪魔をして…ッ!」


──確実に仕留めなさい、長門!──


長門「…!提督か」バッ

鋼鉄「蛇蝎中将、そろそろ未納分の返済期日よ。きっちり利子分含めて回収して上げるわ」

蛇蝎「鋼鉄…!」

鋼鉄「飛龍、久しぶりね」

飛龍「こんな場じゃなかったらちゃんと挨拶したいんですけどね」

鋼鉄「ふふっ、『かしこまりー♪』っていつも言ってたじゃない」

飛龍「そ、そういう裏情報はしまっておいて下さいよっ」

鋼鉄「加賀の援護に向かうんでしょ?何処に居るのか知らないけど、あのハズレの提督さんの子達だものね。
必ず何処かの海域で彼女達も戦ってるんでしょう。援護に向かってあげなさい」

飛龍「はいっ!」ザッ

蛇蝎「私の艦隊を無視して何処へ行こうって言うの!あの空母を集中的に狙いなさい!!」

鋼鉄「忌避の艦隊が聞いて呆れるわね。自分から関心持ってちゃ世話無いわ。長門、陸奥、リコリス、暁、ヴェールヌイ。
ここから先は私が指揮を執るわよ。先の作戦概要に沿ってまずは眼前に立つ忌避の艦隊を撃滅。残存兵力を完全無力化し、
後方の憂いを完全に断ち切るわ」

長門「ふっ、頼もしい限りだ」

陸奥「任せなさい。思う存分に力を発揮してあげる!」

リコリス「数だけの烏合の衆、恐れるまでもないわね」

暁「ヴェールヌイ、帰ったらプリンよ、プリン!」

Bep「ああ、新月提督が特大を用意してくれるって約束してくれたからね。こんな場所で足踏みはゴメンだよ」



艦娘には、各々に秘められた根底の力が存在すると言われている。

かつて提督が推測し根拠のない絵空事と断じた推論こそ、的を射ている。

そして既にその存在を認識し、己の力として行使している艦娘も僅かながらに存在している。

艦娘が抱く秘められた想いとは大枠は皆同じものを有している。

『今度こそ護りたい』という守護の感情だ。

それは言わば遥か昔に果てて水底へと沈んでいった数多の軍艦の想いが顕現したものだろう。

それは形となって生まれ変わり、意思となって彼女達の深層心理の奥底へと埋め込まれ、人知れずその瞬間を待ち望む。

だから彼女達はいつ如何なる場面においても臆す事無く凛として前を向き、獅子の如く雄々しく在れる。

数で言えば圧倒的な戦力差であろうこの場面でさえ、今の彼女達にとっては瑣末な問題でしかない。

だからこそ、蛇蝎の狼狽した表情はそれを知りえない故に当然と言えただろう。

艦娘を道具としてしか扱えない者に、艦娘は本当の心を開きはしない。

例えどれだけその者を艦娘が信奉しようと、それは誠の忠節ではなく、真に在る形ではないからだ。

故にこの結末は当然と言えるのだろう。


長門「さぁ、どこからでも掛かって来い!ビックセブンの名に恥じぬ戦を見せてやるぞ!」

陸奥「怖いならそのまま逃げてもいいわよ?けど、向かってくるなら容赦しないわ!」

リコリス「飛龍の邪魔をするのなら、この私が念入りに駆除してあげるわ。艤装の一片も余さず残らないようにね!」

暁「駆逐艦だからってあなどってるとコーカイするわよ!」

Bep「見せてあげるよ。本当の強さがどういうものかって言うのを!」

蛇蝎「耳障りな連中……ッ!殺しなさい…全ての戦力を以て、こいつ等を殺せッ!!」


オオオォォォォ……ォォォ……ォォォォ………


海を震わせるほどの蛇蝎軍の咆哮が轟き、無数の深海棲艦が一気に長門達へ向けて進軍を開始する。

既に飛龍はその場を離脱し、命令の行き場を失った深海棲艦達の怒りの矛先は完全に長門達へ向けられる。


長門「ふっ、そうだ。こっちだ!私達はここに居るぞ!向かって来い!!」

リコリス「それじゃ、やるわよ。Let's beginning. All planes take off!!」ビュン ビュン ビュン ビュン


ボボボボボボボボボンッ


リコリス「さぁ、見せてやりなさい!」


陸奥「いい、二人とも?」

暁「ええ!」

Bep「勿論さ」

陸奥「危険と判断したら必ず私や姉さん、リコリスの後ろへ退避しなさい」

Bep「ふふ、もしもの時はそうするさ」

暁「べ、別に怖くて隠れるわけじゃないわ!そこのところ、ちゃんと解っててよね!」

陸奥「あはっ、ええ、了解よ。さぁ、姉さん!」

長門「よし、合わせるぞ!全砲門開け!」ジャキッ

陸奥「照準よし!」ジャキッ

暁「いつでもいいわ!」ジャキッ

Bep「いくよ!」ジャキッ

長門「いくぞ…!てーッ!!」


ドォン ドォン ドォン ドォン ドン ドン ドン ドン


ボゴオオオォォォォン

ボボボボボボボボボンッ


蛇蝎「くっ……!怯むな、進め!数で押し切りなさいッ!!」

戦艦艦娘「報告します。こちらの戦力、その六割が既に消滅。残すは後方に控えておいた深海棲艦と艦娘のハイブリット型、
そして我等の艦隊のみです」

蛇蝎「…だから、何?」

戦艦艦娘「何、とは?」

蛇蝎「だから何だと言うの!?ハイブリット型を前面に出して、盾にでも何にでもして相手旗艦の長門の首くらい持って帰ってきなさい!」

戦艦艦娘「…恐れながら、最早この勝負に勝敗を天秤に掛けるだけの材料はありません。我等の敗北は必至。
なればこそ、大人しく投降するのが最良と判断します」

蛇蝎「……何を寝言のような事を言っているのかしら?それが本音なら、貴女の首をこの場で飛ばすわよ」

戦艦艦娘「…不可能です。所詮、貴女は人でしかない。我等は、艦娘です。今、無意味に前に出て駆逐されている深海棲艦と艦娘の
ハイブリット型と我等は違う。何故、我等が貴女に付いて来たのか…最も、その時点で我等の運命は決まっていたのかもしれません」

蛇蝎「貴女は、何を言っているの…!?」

戦艦艦娘「申し訳ありませんが、我等が今まで貴女に付き従ってきたのはどのような状況だろうと、どのような風評を受けようと、
ありのままでそこに存在し続け、我等を導いてきてくれたからに他なりません。根本は、やはり我等を道具としてしか見なかった。
そこに尽きるのではないでしょうか」

蛇蝎「この、私に…逆らうと言うの!?」

戦艦艦娘「有体に言えば。ですが、こちらから牙を剥く事はしません。それがせめてもの、我等から貴女へ送る敬意です。
我等はこれより投降し、事の顛末その全てを彼女達へ告げます。貴女は我等をハイブリット型へと変えなかった。
貴女のその優しさがもっと良好な方へと向かえばよかった。それだけが心残りでしょう。では、失礼します」ペコリ


忌避の艦隊、その本隊による投降によってその勝負はあっけないほどあっさりとついた。

残された残存兵力はそれでも抵抗を続けたが、錬度の高い長門率いる敵勢力殲滅主力第二部隊の前では風前の灯と言えた。

程なくして鬼の形相を向ける蛇蝎を包囲した形でこれを自滅させる事も無く捕縛、最初の陥落は蛇蝎艦隊となった。

本日はここまで

乙です

乙!
かなり胸熱でしたっ!

だからこそ、「「残された残存兵力」って意味被ってない?」「「自滅」より「自害」か「自決」の方が適切では?」と思ってしまったのが何とも・・・

>>489
いえいえ、こちらこそ懇切丁寧な回答をありがとうございました。

そういう意味の重複ってな、国語表現的には間違ってないらしいぜ
文章の美しさ云々なら確かに良くはないんだろうけどな

500get!

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします


>>498
言葉の使い方には比較的注意を払ってはいたのですが、難しいですね
今後も注意していければと思います

>>499
フォローありがとうございます
国語表現的には間違えてない、というのは初めて知りました
無知を晒す結果となりました

>>500
あ、はい
おめでとうございます

-奇蹟-

加賀「今まで見てきたどの深海棲艦とも異なります。名を名乗りなさい」

??「フフ……そうネ。ドウせ死ヌんだから、それ位ハ教えてアゲないとね?私ハ泊地水鬼…貴女、ステキね」

加賀「……?」

泊地水鬼「この私に、フフ…単身ダなんて、健気過ギテ見逃してアゲたくなっちゃう」

加賀「ならば、試して見るまでです」チャキッ

泊地水鬼「タッタ一人ノ艦攻艦爆、これのナニを恐れれバいいと言うノ?寧ろ、貴女ガ恐れなサイ」バッ


泊地水鬼が両手を天へと広げる。

それを合図とするように彼女の周囲に無数の艦載機が浮上し、臨戦態勢に瞬時に入った。


加賀「なっ…」

泊地水鬼「聞かなかったカシラ?貴女一人デ大丈夫ナノかって…フフ、どちらデモ構わないワヨね。
ダッテ、どちらにしテモ死ぬワケだし…聞くだけ、野暮ダッタかしらネ。貴女を始末スレば、この大空ヲもう一度、
飛べるカシラ?アァ…これも、貴女に聞いてモ意味ノないコトだったわネ。死人に口ナシ…ってね」ニヤ…


加賀は、この時初めて己の慢心を自覚した。

圧倒的な差を誇った戦力の前では、僅か一人の戦力など高が知れていると言う現実をまざまざと見せ付けられた瞬間。

この深海棲艦は、今まで倒してきたどの深海棲艦とも一致しない。

過去に聞いた上位の深海棲艦の事は加賀も聞いて知っている。

だが、それすらも眼前に居る深海棲艦は上回っていると加賀は瞬時に悟った。

彼女が初めて、戦わずして敗北を認めようとした瞬間だったのかもしれない。

頬を嫌な汗が一筋伝い、彼女の顎を滴って海面に落ちる。

これほどの屈辱はない。

戦わずして敗北を受け入れるしかないと言うこの現状。

今まで散々、高尚な事を言い並べてきた自分がまさかこの様で終わるのかと。

そんな自分を叱咤する声に、漸く彼女は我に返り顔を声の方へ振り向けた。


──加賀さん、今こそ一航戦の誇り、お見せする時です!──


一体、私はどれだけ幸せなのだろうと、加賀はこの窮地に至って思わず笑みを零さずには居られなかった。

緩んだ心、諦めかけていた気持ち、揺るいだ信念、その全てがその掛け声一つで引き締められた気がした。

そう、私は栄光の第一航空戦隊、その一翼を担った鎧袖一触の加賀。

どれだけ高く聳えようと、そこに敵が存在するのなら殲滅するのみ。

何より、自らを信じて進んだ仲間達とまだ顔を合わせてすらない。

言ったではないか、相手が誰であろうと容赦する必要は無い。

持てる全てを出し切り、再び出会おうと。

まだ何も出し切ってないどころか構えを取っただけだ。

走り出してすらない。

顔を上げた加賀の表情には既に畏怖する影は消え、迷える表情もそこからは完全に消え失せていた。

あるのはただ一つ、『勝つ』と言う二文字のみ。


泊地水鬼「アラ、援軍?諸共、鉄屑ニ変えてアゲるわ!」


──いいえ、そうはさせませんっ!──


泊地水鬼「ナニ…!?」

加賀「……!」


更に響き渡る凛とした声、実際に会うのはこれが初めてでも、彼女には解った。

これもまた、合縁奇縁…記憶の奥底に燻る邂逅の連鎖なのだと。


赤城「一航戦赤城、戦列に加わります!第一次攻撃隊、発艦してください!」ビュッ

飛龍「同じく二航戦飛龍、戦列に加わるよ!第一次攻撃隊、発艦っ!」ビュッ

加賀「恩に着ります。ですが、ここは譲れません」ビュッ


三者一斉に放った一矢は綺麗な三条の軌跡を残して大空で散開、無数の艦載機へと姿を変える。


赤城「皆さん、準備はいい?」

加賀「鎧袖一触です」

飛龍「よしっ、友永隊、頼んだわよ!」


三人は各々に自らが放った艦載機に指示を飛ばし、目標たる泊地水鬼に狙いを定めて片手を振り下ろす。


泊地水鬼「フフ、面白い。航空戦というワケね。纏めて鉄屑ニ変えてアゲるわ!」




鳥海「名を、名乗りなさい。深海棲艦!」

??「瑣末ナ……が、これも一興カ。イイでしょう。私ノ名は港湾水鬼…特別ニ覚えてアゲる。貴女も名乗りなサイ?」

鳥海「高雄型四番艦、重巡洋艦の鳥海です。貴女を、深海へ還します」

港湾水鬼「コノ私を…?フフッ……ハハハッ!それは何カ作戦ヲ帯びたギャグなのカ?中々に面白イ冗談ダ」サッ

鳥海「!?」

港湾水鬼「多少ハ、全体を見る目ヲ持ってイルみたいネ。そう、コノ艦載機がドレほど凶悪カ…解るでショウ?
潔く、負けヲ認めてコノ場で私に傅クと誓うのナラ、命は救ってアゲても良いわ。深海棲艦ニ、屈しなサイ」

鳥海「誰、が…っ!」ギリッ…

港湾水鬼「コノ圧倒的な戦力差ヲ垣間見てもマダ、邪まな考えヲ巡らせるノカ。愚かな、艦娘風情ガ…ッ!
やはり、イヤ……所詮は艦娘ト、そういう事カ。無様デ、愚かデ、無知とクレば、残るのハ最早愚鈍か。
ここマデ考えの鈍いヤツもそうは居マイ?ある程度考えヲ纏められるのナラ、この状況ガ今どれ程自らヲ
貶めた状況にシテいるのか位は容易ニ想像デキそうなモノだがナァ…どんな馬鹿デモ、背を見せ逃ゲルぞ?」

鳥海「敵を前に背を見せるのは海軍に身を置く者として最上の恥です!」

港湾水鬼「サイジョウの恥、か…矮小な意地ダナ。だから貴女達艦娘ハ容易く命を落とすノヨ。
いいわ、望み通りニしてアゲましょう。そのちっぽけナ誇りを胸に抱き、死になサイ!」バッ


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


鳥海「」(被害を最小限に、避けれるもの、撃ち落すものを見極める…!)グッ

港湾水鬼「アハハハハッ!そのナリでこの攻撃ヲ防ごうと言うノカ!?フッ、これでは…戦にスラならぬ!」


ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……


──苦労が絶えねぇな。対空戦かい?だったら任せろ!あたしの後ろに隠れてな、鳥海!──


鳥海「えっ」

港湾水鬼「ナンだ、お前は…!」

摩耶「ああん?防空巡洋艦、摩耶様だ!生まれ変わった摩耶様の本当の力、思い知れ!」ジャキッ

鳥海「摩耶!?」


ドン ドン ドン ドン


ボボボボボボボボボボボンッ


港湾水鬼「ナッ」


パラパラパラ……


摩耶「はっ、どーだ!参ったか?ってまぁ、これくらいで『ごめんなさい』するような面構えじゃあねぇよな」

鳥海「ま、摩耶、貴女…どうして…」

摩耶「へへっ、妹が頑張ってんのにねーちゃんが寝転がってるワケにゃいかないだろ。おら、前向け!
まだ終わってねぇんだ。さっさと終わらせて他の援軍にいこうぜ!」

鳥海「ふふ…そう、そうよね。うん、私は信じてたわ、摩耶」ニコッ

摩耶「期待に応えて何ぼだ。感謝はされても感謝はしねぇからな」ニッ

港湾水鬼「たかが第一陣ヲ屠った程度デのぼせ上がルナ。重巡がタッタの二人、死ぬ順番ガ順不同か逆さにナルだけよ」

鳥海「自分が先に死ぬかもという想定は考えないんですね」

港湾水鬼「馬鹿カ?万に一つもそんなコトはありえナイ」

摩耶「上等じゃないか。だったら番狂わせってヤツをあたし等が教えて上げるよ」

港湾水鬼「番狂わせ?フフッ、小賢しい…艦娘風情ガッ……!」バッ


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


港湾水鬼「強者が当然のヨウニして勝つ。それが摂理デ、それが全てダ。弱者には反論ノ機会ナド訪れない。
言うダケ無駄だからヨ……弱い存在ノ言葉には、文字通り説得力モ力も、何もナイッ!」

鳥海「他者を慈しむ気持ちのないあなた達に、私達は絶対に負けません!」

港湾水鬼「ほざけ、口先ダケの矮小な存在ガ!朽ち果てろッ!!」サッ


ボゴオオオォォォォォォンッ





??「コノ戦艦水鬼の攻撃ニ物怖じシナイ馬鹿がマダいた事には賞賛スル」

長良「っぶなぁ…」


巨大な顎から放たれた閃光のような一撃を長良は辛うじて回避するが、その火力に戦慄した。

直撃すればまず間違いなくあの世逝きは免れない。

この勝負に勝つ最低条件、それは相手の攻撃を一撃も受けないこと。

そして第二の条件として、一発も余さず自らの攻撃を相手の致命傷となりうる箇所に全弾命中させること。

艤装を破壊する余力はない。

そもそもあの分厚い装甲を打ち抜けるだけのスペックが自らの技量にあるのかも解っていない。

不確定要素が織り込まれた攻撃は直結して長良自身の首を絞め、死へと誘う航路を取る。

綱渡りなどという生易しい条件ではない。

糸のような細い場所を全力疾走するような、無謀とも言えるチャレンジを長良はしようとしていた。


戦艦水鬼「ソレで…いつまでソウやって、逃げ回るツモリだ?」

長良「……貴女が根を上げるまで」ニコッ

戦艦水鬼「日ガ暮れ、夜が明ケ、再ビ太陽が東ノ空に昇ろウト、我等の位置関係ハ一つとシテ変わりはシナイ。
つまり、貴様の死期ガ無駄に先延ばしサレるだけという事ダ」

長良「……神風って、知ってる?」

戦艦水鬼「…ナニ?」

長良「……」(ごめんね、皆。結構、私って貧乏くじ引くタイプかも…)クスッ…

戦艦水鬼「ナニを笑ってイル!」

長良「捨身の特攻さ」グッ…

戦艦水鬼「…!?」



長良は腰を落として身を屈め、右足を後ろに左足を前に出し、陸上のスタンディングスタートの構えを取る。

波の揺蕩う不安定な海上であっても、長良はその持ち前の足腰で揺るがないボディバランスを保持する。

揺れていようが揺れていまいが、長良にとってはそんなものは些細な事。

大荒れに海上が時化っていようがバランスを崩す事無く、速度を落とす事無く、長良は前に進める自信があった。

長良にだけ許された、これこそ神が与えたもうた天賦の才。

彼女の初速は何者をも凌駕する。


長良「私は長良型軽巡洋艦一番艦…ネームシップの長良だ!」

戦艦水鬼「身ノ程ヲ弁えろ。私は深海棲艦ノ上位種、戦艦水鬼ッ!眼前に立ち塞ガルと言うノなら、その全てヲ破壊する!」


ザバァァァンッ


長良の背後で凄まじい音を奏でて水飛沫が上がる。

それは長良が走り出す為に蹴り出した最初の一蹴り。


戦艦水鬼「コケ脅しガ…!」ジャキッ

長良「思い知れ、艦娘の底力!」ザッ


ザンッ ザンッ ザンッ


戦艦水鬼が構えたと同時に長良の動き出しの軌道が歪になる。

例えるなら、それは海上を駆け抜ける雷光。

左へ右へ、目で追う事すら困難なほどに凄まじい速度でほぼ直角に等しい切り返しを織り交ぜながら、

長良は一瞬にして戦艦水鬼の背後を取る。


戦艦水鬼「ナッ…!」

長良「長良の足についてこれる?今のあなたは遅い!全然遅い!いつも私達を勝利に導いてくれた司令官。
今度は、私達が…私が、勝利を導く!最高の響きよね!いくよ、砲雷撃戦!!」ジャキッ

本日はここまで

乙です

乙!
今回も胸熱でした!



>>503
蒼龍「……私は?」

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

??「はぁ~あ……よりにもよって駆逐艦。どうせなら、空母や戦艦を食い殺したかったなぁ」

満潮「…思い出したわ。あんた、一度うちを襲撃してきたヤツと同種ね」

漣「そういえば…」

??「ん?あぁ…そっか。ボクの妹を相手にしてたのってお前達だったんだ。改めまして、ボクは過去の威光。
先の大戦で猛威を振るった脅威にして畏怖の象徴たる存在の生まれ変わり…ボクこそが全て、ボクこそが最上位。
ボクこそが……絶対!戦艦レ級FSだ」


目一杯まで見開かれた瞳、その深紅の瞳から更に際立つ輝きが放たれ、雷光の如き残光を残してレ級FSの姿がそこから消える。

しかし、その動きを悟って半ば反射的、言い知れない何かを感じ取って二人は同時にそこから飛び退いた。


ザバァァァァァァァンッ


直後、二人が先刻まで立っていた海面が大きく爆ぜて、二人の身の丈の倍はある高い水飛沫が巻き起こる。


満潮「……っ!」

漣「ちょっと、これ…」

満潮「ええ、案外シャレにはなってないかもね」

漣「上等ですよ!」

レ級FS「へぇ……動き、見えるの?見縊ってたよ…」ニヤァ…

満潮「……漣、あんた死ぬ覚悟はできてんでしょうね」

漣「みっちゃん、そういうの今ここで言っちゃいます~?」

満潮「うっさいわね。大体、元はと言えばあのアホ面オヤジが悪いんでしょうが」

漣「ふふっ、でもあれですね。みっちゃんも私が『みっちゃん』って呼ぶようになってから結構経ちますけど、
文句言わなくなっちゃいましたね?」

満潮「……はぁ、言うだけ無駄って悟っただけよ。それに……」

漣「ん?」

満潮「…友達なら、呼び方なんて別に拘らないでしょ」プイッ…

漣「…!あはは、でーすよねー?ふふっ、みっちゃんの『デレ』頂きましたよ~」ニコニコ

満潮「言ってなさいよ。冥土の土産ってヤツよ。行くわよ、漣!」

漣「りょーかい!冥土にはもっていきませんって、土産話にしてやるです!」

レ級FS「他のを甚振る前のウォーミングアップには最適かもねぇ…」

満潮「勘違いしてんじゃないわよ。逆に甚振ってサンドバックにしてやるわ」

レ級FS「面白いことを真顔で言うねぇ…ウケ狙いなら、流石に笑えないけど…」

満潮「ウケ狙いかどうか…」ザッ

漣「試してやるです!」ザッ



言うや否や、二人は同時に駆け出しレ級FSへ迫る。


レ級FS「きなよ!完膚なきまでに潰して絶望を教えてやるッ!!」


満潮と漣、この二人の出だしは加賀や鳥海ですら距離を見誤るほどに速い。

そんな中で、特に満潮が当時悔しがっていたのが長良と対峙した時だった。


長良「遅い!」サッ

満潮「なっ」ザザッ

長良「ふふーん」ドヤァ

満潮「ムカつくドヤ顔…!」イラッ

長良「でも満潮の持ち味は私よりも身軽って所だよね。確かに私は初速を継続させた行動が出来るけど…」

満潮「けど、何よ…」

長良「私は左右の二次元の動きには対応可能だけど、満潮は違うじゃん?」

満潮「む…」

長良「満潮に出来て私に出来ない事、それは────」


レ級FS「死ねッ!!」ジャキッ

満潮「うるっさい!お前が死ね!!」バッ

漣「えぇ!?」

レ級FS「なっ」


真っ直ぐに駆け出した満潮は勢いを殺さずに膝のバネを使ってその場で大空に舞い上がり、空中で一回転してレ級FSの背後に着水する。


ザバァァァァンッ


満潮「私に出来てあんた等には出来ない事、それがこの三次元の動きよ。殺せるもんなら殺してみなさいよ!」ジャキッ


ドン ドン


ボゴオオオォォォォォン


レ級FS「サーカス気取りか!」バッ 被害軽微

漣「正面確保♪」ジャキッ

レ級FS「っ!」


ドン ドン


ボゴオオオォォォォォン


レ級FS「鬱陶しいなぁ…ッ!」 被害軽微

満潮「鬱陶しくて何ぼよ!」

漣「ちょっと小回り利く程度の戦艦モドキが付け上がるんじゃねーですよ♪」

レ級FS「そんなに死に急ぎたいの?相当酔狂だね…いいよ、君達は食わない。代わりに肉片すらも残さず粉砕する。
この世から、完全に消滅させてあげるよッ!!」




-軍艦の記憶-

火薬の香りと辺りを焦がす嫌なにおい。

いつ終わるのかも解らない、地獄がそのまま世界に再現されたような阿鼻叫喚の空間。

次々と沈んでいく仲間達と同じくらい、相手方も次々と海の底へと沈んでいった。

倒さなければ倒される世界。

だから私は情けを捨て、心を鬼として獅子奮迅の働きをした。

別に憎かった訳ではない。

相手にも同じ感情があるはずだ。

どこかですれ違ってしまった想いはそう易々と元には戻らない。

やがて、私も沈む時が来た。

海の底に沈みながら見た光景は、鮮烈の一言だった。

沢山の鉄屑が眠る水底。

それら全てが物語っていた。

『まだ沈むわけにはいかない』

『まだ何も成してはいない』

『まだ戦える。まだやれる』

ああ、その通りだ。

まだここで、私も沈むわけにはいかないのに。

悔しい、悲しい、このままでは悔やんでも悔やみきれない。

その時に至って初めて沸き上がる感情は、海の上、そこから見える青い空に馳せる思いだった。

ただ、穏やかな時を過ごしたいと願い、その為に奮戦してきた。

その結果が、この多くの鉄屑と共に未来永劫この先を漂い続けるという運命に行き着いて私は初めて怒りを覚えた。

冗談ではない。

何故、どうして、私がこんな目に遭わなければならない。

思えば、それが最初に抱いた負の感情だったのかもしれない。

気付けば私は忌まわしい艤装を抱き、彼女達を憎み、恨み、蔑み、怒り、全ての負の感情を撒き散らしていた。

久しく忘れていた……護りたいという感情。

それに気付けた時、私は本当の意味で生まれ変われた気がした。

今までに犯してきた罪の全てを私は受け入れ、その全てを背負って戦う。

果たせなかった無念、貫き通せなかった信念、その全てを今度こそ私が散っていった者達の代わりに引き継ぐ。



キメラ男「これ以上の邪魔は許さないよ」

フェアルスト「貴様のようなゲスに使役されるだけの人生はさぞ無益な時の浪費だろうな」

キメラ男「何だと…?」

フェアルスト「私が終わらせる。数多と散っていった者達の遺志を私が受け継ぐ!」

キメラ男「艦娘に感化されて慈善活動でもやろうってのかい?元・深海棲艦の上位種たる君が…?
つくづく笑えない冗談だねぇ…まるで偽善者の教科書みたいな有様じゃあないか!?」

フェアルスト「偽善者で大いに構わない。授けられたこの命、偽善だろうと慈善だろうと拘りなどそこにはない。
あるのはただ一つ、今度こそ私は護り抜く。眼前に見える全てを、この手に届く全てを、私が愛したこの海を!」

比叡「うん、護ろう!」

霧島「ええ、今度こそ…!」

衣笠「そうだね、同じ過ちはもうごめんだもんね!」

北上「いいねぇ、痺れるねぇ……ふふっ」

木曾「何笑ってんだよ」

北上「いやぁ…こういうのも悪くないなってね」

木曾「ちっ、これから戦だって時に辛気臭く笑うなっつーの」ガシッ

北上「わっ」

木曾「そりゃあ、俺だって三人揃って暴れてみたかったぜ。けど、二人ってワケじゃねぇだろ。ちゃんと居る。
ちゃあんと俺等を見ててくれてんだろ。大井はさ」

北上「ん…そだね。そんじゃま、装いも新たになってる事だし、ギッタギッタにしてあげましょうかね!」

木曾「おう!頼りにしてるぜ、姉貴!」

ル級改艦娘「ようこそ、艦娘の皆様。遠路遥々とこのような所にまで来られるとは、余程馬鹿なのでしょうね?」

タ級艦娘「愚かで浅はかな艦娘ほど、度し難いものはありません」

ネ級艦娘「無様に果てるだけとまだ解らないのか」

リ級艦娘「我等にお任せ下さい、ご主人様」

ツ級艦娘「偽善者共が…!」

ト級艦娘「直に後悔させて上げるわ」


六人の前に立ち塞がったのは肌の色が白い以外は彼女達艦娘と何ら変わりのない存在。

これこそ、キメラ男の成功作品である艦娘と深海棲艦のハイブリット型である。

薄っすらと笑みを浮かべるキメラ男を前に、フェアルスト達も臨戦態勢に入る。



フェアルスト「どうかしら、私達と戦ってた頃に比べれば随分と難易度は下がってると思うけど」

比叡「あはは、サラッと嫌味を言うねぇ」

霧島「憎まれ口も叩けないわね」

フェアルスト「ふふ、悪気はないのよ?それに、中々無い機会だもの……そうでしょ、提督」チラッ

衣笠「あっ」

北上「お?」

木曾「はっ、んだよ重役出勤かよ」

不動「よう、汚ぇ面は相変わらずだな、キメラ男!」

新月「…………」

キメラ男「不動に新月か…」

新月「貴方の取った行為は凡そ許されるものじゃない」

キメラ男「別に君に許しを請うつもりは無いよ。何故なら、私が自らを許しているからだ」ニヤッ

不動「それを認めねぇつってんだよ、脳みそ欠陥野郎!」

キメラ男「脳筋馬鹿が私を批難できるクチかい?片腹痛いね、不動!完成された私の最高傑作達をみなよ。
従順で、純粋…何ものをも恐れず、在るがままに蹂躙する。私の匙加減一つで彼女達は思うがまま、自由自在さ。
大人しく私に跪き、頭を垂れ、哀願する。自らをもっと必要としてくれ、とね」

新月「そんなものは本当の信頼じゃない。それが解らないと言うのなら、貴方は艦娘に関わるべきじゃない!」

キメラ男「信頼…?信頼だと?笑わせるな!この道具達の何を信頼しろと言う!こいつらは道具である前に玩具だよ。
私の有り余る暇を埋めるための愛玩具。相手をしてやってるのは私の方なんだよ。海に駆り出されるだけの戦争兵器…
それの何を信頼すればいい?そもそも信頼などする必要があるのか?否、道具に感情は不要!ただ道具としてそこに
存在し、ただ眼前に見える敵を屠り続ければいいだけだ!故に信頼などという形の無い幻に縋らなくてもいいのさ!」

新月「……るな」

不動「新月…?」

新月「ふざけるなっ!彼女達を愚弄することは僕が許さない。彼女達が居たから、今の僕が在るんだ。
彼女達の存在が、昔の僕を前進させ、今の僕を支えてくれているんだ。その彼女達を愚弄する事は、僕が許さない!」

キメラ男「車椅子生活で脳みそまで退化したのかい?ピーピーと五月蝿いなぁ…今すぐに黙らせ……」

フェアルスト「黙るのは貴様だ。人以下に成り下がった屑にも劣る畜生風情が…我等の提督には指一本触れさせん!」

キメラ男「何ぃ……!」ピクッ

木曾「不動さんよ、この場の総指揮は今回はお預けだな」ニヤッ

不動「けっ、どっかの坊主でも憑依してんのかねぇ。おら、新月大将。そこまで啖呵切ったなら最後まで勤め果たせよ!」

新月「はい!フェアルスト艦隊各位に告ぐ!この場で僕等に刃向かう敵に容赦は要らない。完膚なきまでに叩き潰せ!!」

北上「そうこなくっちゃね~!」ジャキッ

衣笠「ふふっ、りょーかいよ!」ジャキッ

木曾「おう、任せな!」ジャキッ

霧島「お任せを、新月司令!」ジャキッ

比叡「いつでも!全力で!撃てます!」ジャキッ

フェアルスト「頼もしい限りだ、提督!」ジャキッ


新月の吠えるような指示の下、各々が艤装を構え直して臨戦態勢に入る。

また一つ、ここに大きな海戦が幕を開けた。

短いですがここまで

乙です

乙!
続き待ってます!

>>514はやはりフェアルストのモノローグなのでしょうか?

皆様こんばんは
中々続きをかけなくて申し訳ありません
二週間に一度かその前後の更新頻度になると思いますが確実に更新していきます


>>519
>>514は仰るとおり、フェアルストのモノローグです
原作、というかゲームとしての深海棲艦をモチーフにしているのは
Wikiなどでも海外艦を示唆していますが、凡そそれに則った形で設定等を流用させて頂いております




~小さな願い、大きな望み~



-揺るがぬ信念-

ビスマルク「ちっ、次から次へと…!これでは大和の艦隊に追いつけないじゃない!」

ローマ「相手も少しは頭を使っていると言う事ですね」

イタリア「困ったわねぇ…」

レーベ「ここを突破出来たとしても、残弾が僅かになる可能性が高いよ」

マックス「物量作戦が型に嵌っている。失速してしまっては一点突破も適わないわ」

プリンツ「ビスマルク姉さま、右舷から更に追加です!」

ビスマルク「息つく暇も与えないって事ね」

マックス「どうしますか」

ビスマルク「フッ、何を恐れるの?私達は淵源の艦隊…元帥直属護衛艦隊、その第二部隊……進むのよ。
立ち塞がると言うのなら、持てる力全てを賭して突き崩す!」


──よく言った。それでこそ元帥が誇る直属護衛艦隊だ──


レーベ「な、那智女史…!?」

ビスマルク「それに、貴女は不動艦隊所属の艦娘ね」

阿賀野「黙ってみてるだけなんてごめんなんだから!」

那智「この先に道が続いていると言うのなら、掻き分けてでも進め。敷き詰められた砂利程度、踏み固めて見せろ」

ローマ「言ってくれるわね」

イタリア「ふふっ、でもそうね~。本領発揮、しちゃおうかしら?」

マックス「異論は無い」

レーベ「うん、叩き伏せてやろうじゃないか」

那智「我等も持てる力全てを賭して、淵源の艦隊を援護する」

阿賀野「うん!」

ビスマルク「視界に映る全ての深海棲艦を殲滅するわ。開闢の艦隊へ追いつくわよ」




ボゴオオォォォォォン


ドオオォォォォォォォン


遠くから木霊する爆撃音と砲撃音、その音に乗って喧騒とも言える咆哮も聞こえてくる。

深海棲艦の上げる雄叫びだろうか。

今わの際にあって絶命の最中に上げる最期の猛る叫び声。

しかしそんなものに怖気付く彼女達ではない。

深海棲艦の呻き、叫びは言い換えれば艦娘達が善戦している事にも繋がるのだ。

だからこそ大和は表情を引き締め、続く艦隊に声高らかに作戦を伝える。


大和「敵の数は未知数。種別も、戦力も、弄している策すら不明慮です。しかし、臆す理由などありはしません。
己の持つ実力、確固たる意思、そして私達が始まりの艦隊だと言う事を相手に教えて差し上げましょう。
妙高さん」

妙高「はい」

大和「大本営直営隊の一角を纏めるその手腕、大いに期待しています」

妙高「ありがとうございます。できるのなら、この様な戦が起こらないのが最善なんですけどね」

大和「同じく足柄さん」

足柄「何かしら?」

大和「言葉で多くは語りません。その戦力を遺憾なく発揮してくれる事を願います」

足柄「ふふっ、任せなさいな」

大和「ご足労、感謝します。三隈さん」

三隈「うふふ、たまには身体を動かさないと、鈍ってしまいますものね?」

大和「雲龍さん」

雲龍「言われずとも、ね?」

大和「貴女と共に再び戦場に立てる事、私は誇りに思っています」

雲龍「あら、奇遇ね。私もよ?それに…ちょっと恩もあるしね」

大和「ふふ……そして、天城さん」

天城「は、はい!」

大和「元帥からの温情です。貴女の提供してくれた内容に虚偽の一切が見られない事、加えて雲龍さんの妹である事…」

天城「…元々は、葛城の行方を探す為に転属願いを出していました。結果としては、雲龍姉さんに迷惑をかける事に…」

雲龍「気にしないの。貴女は最善を尽くした…違うかしら?」

天城「けど…!」

大和「むしろ、よく生きて戻ってきてくれたと、元帥は仰ってました」

天城「……進撃鎮守府の方々、それにハズレ鎮守府の鳥海さんによる温情が大きいと思います────」



木曾「────で、こいつらどーすんだ」

天城「…………」

北上「んまぁ、単純に考えるなら大本営に報告、元帥の耳に入れるのが一般的だぁね」

鳥海「…貴女は何故、心悸に付き従っていたのかしら?」

天城「……妹の、葛城の行方を探す為に、私は鮮血の艦隊に加わりました」

木曾「妹だと?」

鳥海「カツラギ……聞いた事の無い名前ですね」

天城「雲龍型三番艦正規空母葛城……それが私の妹です」

鳥海「うんりゅ……って、じゃあ貴女は…」

天城「お察しの通りです」

北上「けど、雲龍型なら本来であれば赤レンガのどっかの管轄になるんじゃないの~?」

天城「その通りです。ですが、葛城は行方を晦まし、姉の雲龍は既に大本営直営隊としての任務があります。
ある程度、自由の利く私が探すしかなかったんです」

鳥海「それを、姉の雲龍さんはご存知なのですか?」

天城「ふふ、知らないでしょうね。私も、告げる事無く転属願いを提出してしまいましたから」

鳥海「けど、なぜ心悸提督の下に?」

天城「信頼などはされないと思っていました。皆様もご存知の通り、あのような性格ですからね。
ただ、私の所有する情報の中で最も葛城に近付ける可能性があるのが、心悸提督だった…ですけど、私も甘かった。
まさか、ここまで非道の限りを尽くしている艦隊とは想定を大きく上回っていました…」

木曾「まっ、だろうな。大っぴらにそんなふざけた真似する訳がねぇ。解ってんだよ、それが禁忌だって…
その上でやるんだから、そりゃあ隠れてコソコソやるに決まってる」

鳥海「そして結果、今回の事態に直結した」

天城「戦うしかないとは思っていました。周りの艦娘達の様子が不自然なのにも既に気付いていました。
ですけど、どこで同じ目に遭うかも解らない以上、迂闊に行動を起こす訳にも参りませんでした。
結果として、皆様と対峙せざるを得ない状況に陥った……言い訳にしかなりませんが、それが全てです」

鳥海「まぁ、であれば仕方ないかもしれませんね」

北上「えっ、あんた今の全部鵜呑みにすんの?」

木曾「そりゃ幾らなんでもお人好しの枠越えてんだろ。実際にこっちに矛を向けてきてんだぜ?」

鳥海「今この場で語った事が全て作り話なら、それはそれで驚嘆です。艦娘など辞めて文豪を志すべきでしょう。
ですが、頭から全てを否定する、というのは最も不得手になる手法と私は考えます」

北上「ん~、そうはいってもねぇ…」

鳥海「ですから、事の顛末が如何なものか、それを精査する機会くらいは与えてもいいはずです────」



大和「そう…だから、進撃提督からの一報があったわけですね。鳥海、相変わらず頭の回転が早い子ですね」

天城「相変わらず…?」

三隈「元々鳥海は姉の摩耶とは違う部隊ですが、大本営の部隊に所属する予定だったんです」

雲龍「けど、彼女は大本営から去った。凄い決断力よね。理由が自分の肌には合わないから、だもの」

足柄「挙句に何処に行くのかと動向を見守れば『あの』鎮守府でしょ?驚きよね」

妙高「ですが、こうして彼女は成長した。素晴らしい事です」

天城「ようやく、手掛かりを掴んだんです」

雲龍「ええ、そうね」

天城「鋼鉄の艦隊に痛手を負わせた艦隊、それがエリート提督の艦隊です。そして、その中に葛城は居た…」

雲龍「五航戦を相手にしても、全く躊躇いも無かったって話だし…ちょっと複雑ね。同じくらい、二航戦にも顔向けできない」

天城「このままでは、です。姉さん…あの子は、私が止めます」

雲龍「ここまで追い続けてくれたんだもの。最後まで貴女に任せるわ」

天城「はい!」

大和「では、まずは目先の進撃の艦隊へ恩を返しましょう」

雲龍「大和、貴女だって複雑じゃないかしら」

大和「今ここに至って何を況や…ここまできて狼狽するようではこの開闢の艦隊を引き従える資格はありません」

雲龍「ふふ、強いのね、貴女は」

妙高「不可思議な点はまだあります。過去の資料によれば────」




-ミッドウェー-


ボゴオオオォォォォォォォン


泊地水鬼「……ソレで?」 被害軽微

加賀「この、装甲は…」

赤城「強い…!」

飛龍「ウソでしょ、これじゃ足りないって事?」

泊地水鬼「フフッ、一航戦モ二航戦モ、所詮は過去ノ栄華というワケね。無様デ無力、コノ程度で狼狽スルのか?
もしソウなら、早々に背ヲ向けて失セルがいい。負け犬ヲ始末スル道理ハないからナ」ニヤァ…

加賀「……」

赤城「何を…!」

飛龍「絶対的な力なんてものはないよっ」

泊地水鬼「…ダカラ?」

飛龍「強いって言うのは形に見えるものが全てじゃない。力を誇示すればいいってもんじゃない。
この身に括った一本の矢は、決して折れはしませんっ!」

泊地水鬼「寄らば折レヌ三本の矢、とデモ言いたいノカ?」


──三本でも折れるって言うなら、倍にしてあげます!──


ブウウウゥゥゥゥゥゥン……


泊地水鬼「ナニ!?」


ボゴオオオォォォォォォォン


泊地水鬼「チィッ…!まだ、くるか!」 被害軽微

蒼龍「二航戦蒼龍、戦列に加わるよ!」

飛龍「そ、蒼龍…!?」

翔鶴「先輩方が尽力しているんです、ここでおめおめと指を咥えている訳には参りません。五航戦翔鶴、戦列に加わります!」

瑞鶴「加賀さん達が頑張ってるのに、ただ黙ってるだけなんて無理に決まってるじゃない!五航戦瑞鶴、戦列に加わるわ!」

赤城「皆さん…!」

加賀「あなた達…」

泊地水鬼「六人ノ、空母艦娘ダト……」



遥か昔、日本列島より東にある遠い地ミッドウェーにて激戦を繰り広げ、主力として獅子奮迅の働きをした一航戦と二航戦。

その残照とも言える過去の記憶を彼女達は朧気にでも脳裏に刻んでいたのだろうか。

集うべくして集ったこの六人に、もはや過去の残照に囚われる者は一人として居ないだろう。

ただ、眼前に立ち塞がる敵を真っ直ぐに捉え、今度こそ勝利をその手に掴み取る。

それぞれの歩んできた軌跡は違えども、志した想いは誰一人として違わない。

だからこそ、今の彼女達が目の前で起こす行動は奇跡などではなく、阿吽の呼吸から齎される必然にして当然の動き。


加賀「全艦、散開して下さい。目標は泊地水鬼、私達の全力をもってこれを殲滅します。高邁な精神は永遠なれ…
深海棲艦、あなたにお見せします。今この世に在る私達艦娘の誇る大和魂…その信念を」サッ


手の指を真っ直ぐに揃え、その切っ先を泊地水鬼に差し向けて加賀が宣言する。

そしてそれに応えて五人は同時に陣形を崩し散開する。


赤城「貫きます、この誇り!一航戦赤城、参ります!」

飛龍「たとえ最後の一艦になっても、叩いて見せます!二航戦飛龍、いきますっ!!」

蒼龍「過去は過去、それでも…!第一機動艦隊の栄光、ゆるぎません!二航戦蒼龍、いくよ!」

翔鶴「惨劇は、二度と起こりません。ここからです!五航戦翔鶴、行くわよ!」

瑞鶴「逆境、苦境、なんだって乗り越えて見せる。艦載機がある限り、負けないわ!五航戦瑞鶴、いきます!」

加賀「反撃開始です。その身をもって知りなさい。ここから先は、一歩たりとも譲れません」

泊地水鬼「いいワ……その全てヲ耐え抜き、絶望ヲ再び貴女達に刻ミ込ンで上げまショウ。如何ニ無力か、無意味か、
その身デじっくりト味わいなサイッ!」サッ


泊地水鬼は怒気の篭った声と共に片手を振り翳し己の艤装から無数の艦載機を出現させる。

最初に加賀達を相手取って出現させていた数を優に超えるおぞましくも思えるほどの艦載機数。

彼女の上空を漆黒が埋め尽くすかのようにして暗雲とも呼べるようなそれ等が一斉に飛来する。

しかしそれに怖じる事も無く六人はそれぞれに動く。

まるでそれが当然であるかのように、長年の苦楽を共にしてきたかのように、それぞれがそれぞれの考えを汲み取って

いるかのように、迷いの無い動きで散開する。


泊地水鬼「フン、纏まって死ぬノヲ恐れたカ」

瑞鶴「あんたは絶対に潰すわ」

泊地水鬼「フフッ、潰せるモノなら潰してミセろ!」

翔鶴「いい?瑞鶴、行くわよ!」サッ

瑞鶴「勿論!」サッ


スラッと伸びた銀髪が風に靡いてユラユラと揺れる。

左右に伸ばしたツインテールも風の影響を受けて躍るようにユラユラと揺れる。

二人の見据える一点は彼方上空を埋め尽くす漆黒の闇。

しかし、一瞬も躊躇う事無く、二人は同時に弓を取り出し、共に矢を番えて斜め上空へその穂先を向ける。

そして寸分の狂いも無く同時に矢を弓から解き放つ。


翔鶴「全航空隊、発艦始め!」

瑞鶴「第一次攻撃隊、発艦始め!」



五航戦の目標は泊地水鬼本体ではない。

その上空を埋め尽くす悪夢そのもの。

それらを確実に制圧する。

埋め尽くされる前に、この闇に一条の矢で亀裂を入れる。

亀裂はやがて乖離し、その溝を深めて隙間から光を齎す。

齎された光を拡大させる。

ただそれにのみ尽力する。


泊地水鬼「矮小な勢力ダナ!それで何をスルというノか!」

翔鶴「闇に包まれたままでは視界も曇ります。空も海も、その全てを取り戻します!」

瑞鶴「私達の亡骸を確認してから鼻息荒くしなさいよ!」

泊地水鬼「なラバ、望み通りにシテやろう!」サッ


泊地水鬼の手が一振りされ、漆黒の雲の如く蠢いていた空が俄かに動き出してその形を変えていく。

ゆっくり、静かに、先端を尖らせたように真っ直ぐとこちらへ向かい闇の切っ先が迫り来る。

その切っ先に真っ向から二人の放った矢は突き進み同時に無数の艦載機となって解き放たれる。


ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……


瑞鶴「加賀さん!」

加賀「上出来です」

翔鶴「お願いします!」

赤城「お任せを!」

加賀「全てを薙ぎ払って見せます。鎧袖一触よ」サッ

赤城「この一矢に、誇りを乗せて…!」サッ

泊地水鬼「そのようなバラバラな陣形デ…!」

加賀「どのような状況下にあろうとも、この意思まではバラバラにはなりません」

赤城「私達は一つの塊となって、あなたを討ちます!第一次攻撃隊、発艦してください!」ビュッ

加賀「いきます」ビュッ


鶴姉妹から遅れて放たれた一航戦二人の矢は先の二人の横、側面を狙って放たれた。



泊地水鬼「小賢シイ…!」

赤城「飛龍さん!」

飛龍「蒼龍、いくよ!」

蒼龍「私達の最高戦力、見せちゃおうか!」

飛龍「こういう空の時って、なんていうんだっけ?」

蒼龍「対空見張りも厳として、よろしくねっ!飛龍!」

飛龍「ふふっ、お任せ!一航戦にだって遅れはとらないんだから!徹底的に叩きます!」サッ

蒼龍「うんっ!どうせだしね、大物を狙って行きましょう!艦載機の錬度もバッチリ!」サッ

飛龍「よしっ、友永隊、頼んだわよ!」ビュッ

蒼龍「江草隊、友永隊に続いてっ!」ビュッ

泊地水鬼「ククッ、そうか…なるほど、過去ノ残照……縋るカ、そして同じ道ヲまた辿る。
ここがミッドウェーでないノは残念だったワネ?」

蒼龍「え?なに、ミッドウェー?」クスッ…

泊地水鬼「何ガ可笑しい…!」

蒼龍「ふふっ、なにそれ、美味しいの?」


含み笑いを見せる蒼龍、それに釣られて口角が少し釣り上がる飛龍。

互いが放った矢は上方へ放たれ、一航戦の二人とは反対側の側面へ向かいその姿を艦載機へと変える。


泊地水鬼「コザ、かしい…!全てヲ滅ぼセ、我ガ艦載機群!」


正面、左右側面からそれぞれの艦載機が一斉に泊地水鬼の放った艦載機群の殲滅に乗り出す。


泊地水鬼「私ヲ狙わず艦載機にダケ照準を絞るカ。最早ジリ貧ネ?」

赤城「それは早計です」

飛龍「私達航戦のエースを舐めない方がいいよ」

瑞鶴「やっちゃえ、加賀さん!」

加賀「…………」キリキリ…

泊地水鬼「チッ…!」



ボゴオオォォォォォン


ボゴオオォォォォォン


ボゴオオォォォォォン


ボゴオオォォォォォン


上空で艦娘達と泊地水鬼、双方が放った艦載機群がぶつかり合い壮絶な爆発が巻き起こる中、その爆風、熱風に怯まず

ただ真っ直ぐに泊地水鬼を見据えて弓を構えていた加賀の瞳により一層の力が宿るのを泊地水鬼は見た。

────来る。

そう悟った直後、泊地水鬼もまた両手を前方に突き出し防御姿勢を取っていた。


ビュッ


加賀達の戦術は次の通りだ。

まずは泊地水鬼を扇状に包囲するようにして全員が散開する。

そして目標を泊地水鬼の放った艦載機群にまずは集中させ、初動の動きを封じ込める。

制空権を奪えないのなら、自軍の制空に侵攻してくるまでの数秒を稼ぐ。

その間に加賀の一矢に勝機を見出す。

怯んだ中枢指揮の攻撃合図が無ければ深海棲艦の艦載機は動かない。

泊地水鬼の合図があるまで行動を起こそうとしなかった暗雲の如き相手の艦載機群を見て見出した答え。

そこから隙を与えない連続艦攻艦爆の雨霰を降らせる電撃作戦。

ここまでは読み通り。

計画通り。



ボゴオオオォォォォォォン


一際大きな爆発が泊地水鬼を中心に巻き起こり、その姿を一瞬にして爆煙が覆い尽くす。

上空では無情にも加賀達の放った艦載機達が驟雨の如く墜落していく。

しかし、この好機を逃す訳にはいかない。

六人は一斉に弓を構え直し、未だ冷め遣らぬ正面の爆煙渦巻く場所へ向かい一斉に矢を放つ。

────しかし。


──小賢シイ。だから…何度キテも……同じナノヨ…!──


加賀「なっ」

赤城「そんな…!」

飛龍「ウソ、でしょ…」

蒼龍「ありえないって…」

翔鶴「これだけ打ち込んだのに」

瑞鶴「まだだっていうの!?」


爆煙が止み、薄っすらと煙の中にその輪郭を浮かび上がらせそれは姿を再び現す。

六人を驚愕させるに足る生命力とその耐久力、堅牢なまでの装甲は悪夢と言っても差し支えないだろう。


泊地水鬼「フッ……痛い、痛いワ……ウッフフフフフフ……!痛みヲ、私はマダ覚えてイタみたい。あえて感謝スル」 小破


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


泊地水鬼「お礼参りッテいうのカシラ?冥土の土産、トモいうのカシラ?私カラのせメテもの手向け、下賜としヨウ。
私達こそ絶対者デあり、上位に立つ存在ダト、思い知るガいいッ!艦娘風情ガ、出すぎたマネをするナッ!!」


ボゴオオオオォォォォォォォン


先の六人の巻き起こした爆発よりも一際大きな爆発が広範囲に渡り六人を一斉に飲み込み、その姿を一瞬にして掻き消した。

泊地水鬼の眼前に広がるのは漆黒に等しき黒煙と深紅の如き炎。

その炎に照らされてか、泊地水鬼の瞳がより一層の赤みと輝きを増しているかのようだった。

現時点で書き溜めておいた分終わり
執筆できる機会に少しずつでも増やして更新頻度上げれるようにします
本日はここまで

乙です

乙!
天城が心悸提督の部下になってた理由が分かったり二航戦ズも揃ったりと、今回もかなり熱い内容でしたっ!

ともかく、再来週まで待ってます!

皆様こんばんは
途中から現在進行形になりますが区切りいい所まで書き綴ります

-姉妹-



ボゴオオオォォォォォォン


摩耶「っとにさぁ、よくこんなの一人で相手しようなんて考えたな、お前。頭良いのか悪いのか、どっちかにしろよ」

鳥海「な、何よ!摩耶だっていきなり突っ込んで無茶してたじゃない!」

摩耶「ばっ…あたしのは計算済みの行動だっつーの!事実防いでんだろうが!」

港湾水鬼「茶番ハそれ位にシテもらえると助かるんダケド?」

摩耶「っせーんだよ!てめぇ等の存在が茶番だっつーんだよ。くっ…」ガクッ…

鳥海「摩耶…!やっぱり、貴女まだ…」

摩耶「鳥海…前だけ見とけよ。前だ、前を見ろ…!いつだってそうだったろ、あたし等は…前だけ向いて、生きてきた」

鳥海「摩耶……」

摩耶「仲間、待ってんだろ?だったら尚更後ろなんて振り向いてる暇、ねぇよな」

鳥海「うん…!」

港湾水鬼「次デ三度目だ。防戦一方デ攻めに転じレナイ、ろくに動けもしナイ…不毛過ギテ泣けてクル。
ソレで、この茶番をいつマデ続ける気ダ?」

摩耶「決まってんだろ。お前が泣いて土下座するまでだよ…」ニヤッ

港湾水鬼「フン、無駄ナ問答だったナ。朽ち果テロ」ジャキッ

鳥海「砲雷撃…!?」

摩耶「ちっ、砲塔も二基装備してやがんのか、こいつ…!」

鳥海「そうか…」

摩耶「あ?」

鳥海「ふふ、そういう事。なるほどね…摩耶、勝ちに行くわよ」

摩耶「はは、なんかわかんねぇけど、お前がそう言うんだから勝ちにいける策があるって事だよな」

港湾水鬼「ゴチャゴチャと…口先ダケで戦場に立テルと思わない事ネ!」

鳥海「摩耶、合図したら一度後方へ下がって」

摩耶「あぁ、お前の戦術に間違いはねぇの知ってるからな。期待してるぜ」

港湾棲姫「死ネ!」

鳥海「今よ!」サッ

摩耶「おう!」サッ



ドォン ドォン


ザバアアアァァァァァァァン


港湾棲姫「…ッ!?」


距離と範囲、鳥海は港湾水鬼と自分達の立ち位置を瞬時に把握し、それに応じて港湾水鬼が攻撃のパターンを変更している事に一瞬にして気付いた。

鳥海達が下がった場所は砲雷撃と艦爆艦攻を港湾水鬼が切り替える境目。

そこより後ろへ下がれば砲雷撃は届かなくなり、前へ出れば届く。

爆風や爆発の範囲を考慮して間合いを多めに取れば被害を被らずに済むと言う寸法だ。


港湾水鬼「舐メタ真似を…ッ!」

鳥海「摩耶、攻勢に出るわよ!」ジャキッ

摩耶「へへ、よっしゃあ!いくぜ!!」ジャキッ

港湾水鬼「たかが二匹程度、一息ノ下に黙らセテやるッ!!」

鳥海「稚拙な戦略、戦術をひけらかした所で、私の張り巡らせた戦略、戦術には到底及びません。
艦娘と深海棲艦がどう違うのか…教えて差し上げます」

港湾水鬼「艦娘、風情ガ…ッ!」

摩耶「風情風情ってうるっせーなぁ。そんな卑屈根性丸出しだから『そう』なっちまっただけだろうが。
憧れ抱くのと妬むのはお門違いだぜ。悔しかったら『なって』みせろってんだ!」

港湾水鬼「……ッ!!」

鳥海「摩耶、狙いは本体に集中。あの深海棲艦の艤装を破壊するには流石に二人じゃ無理があるわ」

摩耶「まっ、だろうなぁ」

鳥海「それと、港湾水鬼の砲撃には敏捷性が著しく欠けている。照準を合わせ、構え、撃つまでのタイムラグが結構ある」

摩耶「へぇ…」

鳥海「ただ侮れないのはやっぱり艦載機ね。あの数を全て捌くのは正直無理に等しいわ。単発で来るならまだしも…」

摩耶「あぁ、間断無くやられると流石にキツイ。だったら、勝負をする場所は決まりだな」

鳥海「うん…!」

港湾水鬼「死ぬ順番ハ決まったカ?」

摩耶「あぁ…テメェがいの一番で死ぬのは変わりねぇけどな?」ニヤッ

港湾水鬼「貴様……ッ!」ギリッ…

鳥海「そこを、退いて頂きます」

港湾水鬼「退かセルものならナ?」サッ



片手を振り上げ、港湾水鬼が合図を送ると、背後から無数の艦載群が浮上する。

それと同時に、港湾水鬼は不敵な笑みを浮かべた。


港湾水鬼「私ノ攻撃範囲ヲ瞬時に把握シ、安全圏を即座に見出シタその目利きは大シタものだ。
ダガ、私が艦載機と砲撃、ドチラかしか出来ナイ、とは一言も言ってはイナイぞ?
サテ、どうする?空と海上、双方カラの攻撃に貴様等ハどうやって対処スル?」

摩耶「鳥海、いくぜ」

鳥海「いつでもいいわ」


ザッッ


真っ直ぐに駆け出す鳥海とは別に、摩耶は横に向かって駆け出す。

それと同時に港湾水鬼の停滞させていた艦載機群が標的を見定め進軍を開始する。


港湾水鬼「たかが二匹ノ艦娘に、コノ私が遅れヲとるものカ…!」サッ…

鳥海「無駄です!」ジャキッ

港湾水鬼「なっ…は、ハヤ……」


ドン ドン


ボゴオオォォォォォォン


構えから狙いを定め、砲撃に移るまでの一連の動作は港湾水鬼のそれと鳥海では雲泥の差だった。

結果、港湾水鬼の砲撃の体勢を目視してから鳥海が構えて狙いを定め、砲撃を開始するまでに順序が入れ代わり、

先に鳥海の攻撃が開始される。

攻撃が放たれた頃に漸く港湾水鬼の狙いが定められる計算になり、撃ち方を始める時には鳥海の砲撃が既に相手に着弾しているというものだ。



港湾水鬼「グッ…おの、れ……ッ!!」 被害軽微


そして一度港湾水鬼にとってノイズともいえる想定外の事象が発生する事によって、上空遍く港湾水鬼の艦載機群は沈黙する。

それはつまり、無条件に摩耶の対空迎撃が有効打として成立する事を示した。


ボボボボボボボボボボボボンッ


港湾水鬼「しまっ……」

摩耶「へへっ、テメェ自慢の艦載機もこれじゃ形無しだな」

港湾水鬼「小賢シイ……フフッ、だが……そうか、少しハ、ヤルノカ……?楽しいナ……!」ギロッ…


宍色の淡い輝きを放っていた港湾水鬼の瞳に強い光ともいえる意思が宿り、その瞳は大きく見開かれ強さがより一層際立つ。

両手を広げ、真っ白な長く伸びた髪を靡かせ、真っ直ぐに鳥海と摩耶を見据えて港湾水鬼は宣言する。


港湾水鬼「私ガ受けた命ハ、時間マデ貴様等と遊ぶ事……けど、イイワ…殺す。我が名ハ港湾水鬼…
異国の地、異国の海……寂しいナ……だから、貴様等ノ骸で、ソノ寂しさヲ埋めてクレ」


黒光りする異形の艤装、怪しく輝くその脇に備えられた深紅の滑走台。

そこから再度、無数の艦載機群が飛翔していく。

港湾水鬼の両脇に備えられた艤装の顎が大きな口を開き、港湾水鬼の意思に呼応する。

直後、鳥海と摩耶は初めて絶望を味わう。


鳥海「そん、な……」

摩耶「冗談、だろ…」

港湾水鬼「誰が、先マデの戦闘が全力ダト言った?分ヲ弁えなサイ。不相応な自信ハ身を滅ぼすダケよ」


ボゴオオオオオォォォォォォン


一際大きな爆発が港湾水鬼の眼前で巻き起こる。

薄っすらと笑みを浮かべ、片手で顔面を覆って港湾水鬼は低く喉を鳴らして笑う。

その声はやがて声量を増していき、口を開いて顔を上げ、声高らかに笑い続けた。

短いですが、ここまで

乙です

乙!

ボスの台詞に的確な組み合わせの言葉を追加するだけで、ここまで印象が変わるとは・・・
何かコツみたいなのがあるのですか?

皆様こんばんは
更新時期が不定期になっていて申し訳ありません
とにかく、必ず完走はさせますので生暖かく見て頂ければ幸いです


>>541
意味履き違えてる場合もありますが、大体は幾つか台詞作ってみて、
その場の台詞に沿ってるか合ってるかを見て選んでます
偉そうに解説する立場ではありませんが、鬼や姫級の深海棲艦には
台詞があるのは周知だと思いますが、何か言葉を含んだような「……」の部分が多いです
この部分を自分なりに勝手に解釈し、その時の状況や心象なんかを言葉に表しています

-背水の陣-



ボゴオオオオォォォォォン


戦艦水鬼「チィッ…!」 被害軽微

長良「はぁ、はぁ、はぁ…」ザザザッ

戦艦水鬼「ウロチョロと、鬱陶しい…!そんな脆弱な砲撃ヲ何度繰り返し行オウと、無意味だと解らナイのか。
動き出しコソ確かに驚嘆シタが……だが、ソレだけだ」ニヤッ

長良「くっ…」


傍から見れば長良が圧倒的に戦艦水鬼を押し込んでいるように見えただろう。

しかし、それは偏に長良の敏捷性が成した奇跡に過ぎない。

何十発と的確に打ち込まれた必殺必中の砲撃、しかしその全てが戦艦水鬼にとっては脆弱な一発に過ぎない。

例えるのなら、世界トップランカーガチガチのインファイトボクサーを戦艦水鬼、片や極東に生まれた新生、

磨けば輝きを増すであろう発展途上のアウトボクサーを長良。

一発の重みは誰が見ても雲泥の差と理解が出来るほどに、そのウェイトの割合ははっきりとしていた。


戦艦水鬼「気付いてイルのか、いないノカ…フフッ、その顔は気付いてイルけど、認めたくナイ。どうかシラ?
当たらずトモ遠からず、と言ったトコロだろう?」

長良「…………」

戦艦水鬼「ククッ……貴様の考えナド当の昔に気付イテいるサ。こちらの死角カラ致命傷になり得る場所へ、
決定的とナルべき一撃ヲ常に撃ち込むコト……それで、残弾ハ後幾つダ?」ニヤッ…

長良「……さぁ、どうだったかな。数えてないよ、そんなの」ギリッ…

戦艦水鬼「ククッ…そう言えば、開幕に面白いコトを言ってイタな。神風……覚悟が足りてイナイんじゃないのカ」

長良「……ッ!」ピクッ…

戦艦水鬼「己が身ヲ弾丸とスルのなら、その程度の覚悟デハ私の身は貫けナドしない。無様デ、愚カ……
がっかりダナ。もういい…貴様ハこのまま、泣き叫んデ……沈んでイケ……ッ!!」ジャキッ



双頭の悪魔ともいえるような漆黒の艤装の顎、赤黒く怪しい輝きを放ち耳障りな咆哮を轟かせてそれは戦艦水鬼の合図を待つ。

真紅の瞳は真っ直ぐに長良を見据え、辺りを恐怖が支配する。

一陣の風が戦艦水鬼の黒いドレスワンピースをそっと靡かせ、同時にその漆黒の長く伸びた髪を舞い上げる。

波の揺蕩う音がやけに大きく響いたように長良は感じた。

同時に、自身が如何に無謀な真似をしようとしていたのか、冷静になって考えてしまった。

その時点で、長良は負けていたのだ。

平たく言えば戦艦水鬼の放つ覇気に気圧されてしまったのだ。

両の拳を掌に爪が食い込むほどに強く強く握り締め、歯を食い縛り、俯いて小さく震える。

その震えは恐怖から来るものではなく、己の不甲斐無さ、覚悟の浅さ、決断力の乏しさからくる震え。

後悔……幾度と無くしてきたはずだ。

自分の歩んできたその道に、決断に、選択に、後悔はあったか。

その道を選んでよかったか。

選んだ決断は間違っていなかったといえるか。

その選択は、振り返って確認する必要があったか。

覚悟が足りなかった。

戦艦水鬼の言葉を否定するだけの材料が長良には無かった。

悔しいくらいにその通りだったから。

今この場に至って、長良は漸く自分の愚かしさに気付いた。

だからこそ、震えた。

悲しくて、悔しくて、情けなくて、己に憤りを覚えて。

自分の言葉に自信も持てない奴が、何を言ってもそこに力は及ばせない。

誓いを立てたのならそこに向かって突き進む覚悟を示さなければならない。

それらの教えを説いてくれたのは────



長良「────司令官、皆……ゴメンね。すぐ、会いに行くよ」ジャキッ

戦艦水鬼「……?理解に苦シム。何故、マタ構える。フフッ……よもや、コノ窮地に至って壊れデモしたのカ?」

長良「まだまだ、これからだよ」

戦艦水鬼「ナンだと…?」

長良「」ニコッ…

戦艦水鬼「何を、笑ってイルッ!?」

長良「長良の足についてこれる?」

戦艦水鬼「先の焼き直しデモしようというノカ」

長良「さぁ、それはどうか……なっ!」ザッ

戦艦水鬼「ッ!?」



次の瞬間、長良の姿が目の前から忽然と消失する。

海面に波紋だけを残し、文字通り長良はそこから消えたのだ。

そしてその直後、戦艦水鬼の周囲で断続的に海面が次々と爆ぜていく。


バシャァァァァァン

バシャァァァァァン

バシャァァァァァン

バシャァァァァァン


そして戦艦水鬼は目撃する。

何もない空間が突如爆ぜる瞬間を。

そしてその爆ぜ方には見覚えがあった。

そう、それはまるで────


ドン ドン


────砲撃のような爆ぜ方。


ボゴオオォォォォン


戦艦水鬼「グッ…!」 被害軽微


ザザザッ


長良「何発でも、何十発でも、あなたが倒れるまで私は撃ち続ける!」ジャキッ

戦艦水鬼「キ、サマ…ッ!」

長良「また会おうって、約束したのに…勝手に決めて、勝手に諦めて…これじゃ、何も変わってないじゃん。
やるよ……私、絶対に皆に会うからね!」ジャキッ

戦艦水鬼「チッ……」(ナンだと言うのだ。何故、今わノ際に至って、ここマデ戦意が回復シテいる…
それに、先程ノ動き…この、私が…見失ッタ?馬鹿な、ソレこそ…ありえナイッ!)ジャキッ

長良「……!」

戦艦水鬼「遊びハ終わりダ。貴様ガどれだけ速く動コウが関係ナイ。この、砲撃の前デハ、全てが無力!」


戦艦水鬼の広げた両手と共に従える艤装が怪しく蠢き、その無数に備えられた砲塔が一斉に長良へ差し向けられる。

それと同時に長良も動くが、直後に轟音とも言えるような凄まじい砲撃音が断続的に響き渡り、辺り一帯を一瞬にして

火の海へと戦艦水鬼の艤装が変貌させていく。

火の海へと変えても尚、戦艦水鬼の砲撃は止まない。

ただ只管に長良が居るであろう空間を焼き尽くし続けた。

短いですが、本日はここまで

乙です

乙です。捕捉しきれない相手にメクラ撃ちか・・・悪手だなあ。
先読みの範囲制圧射撃ならまだ有効だったろうに。

乙!
実際、長良の単装砲の残弾はあといくつなのだろうか・・・

皆様こんばんは
次いつ更新できるか不明慮ナ状態ですので
更新できる時に書けてる部分を投稿していきます

-共に-

これまでに戦艦レ級と戦い、勝利を収めてきた艦娘は少ないが存在した。

しかしそれは同等の火力と耐久力を秘めた言わば戦艦型であり、空母であり、また奇策を衒った奇襲戦術の賜物でもある。

此度は初回、相手の油断も手伝ったとは言え、五人全員で収めた辛勝だった。

完全勝利、余裕を持っての勝利には程遠い、辛くも手繰り寄せた勝利だった。

しかし今度の相手は、あの時よりも更に強さも速さもエリート型を上回るフラグシップ型へと進化を遂げた究極の悪魔。

エリート型は過去に何度と無く制圧されてきた。

先の大戦でも最後の最後に進化を遂げた戦艦レ級だったが多勢に無勢、数多の砲撃と艦爆艦攻の前に成す術も無く轟沈した。

しかし、今は違う。

万全の状態で且つ、あの時よりも更に凶悪性を増した、まさに完成された怪物なのだ。

それを、たった二人の駆逐艦が相手にしなくてはならない。

それでも、最悪の怪物を前にしても、彼女達には微塵も後退すると言う選択肢は存在しなかった。

何故なら、それは慢心と紙一重のある種の信念、自信、確信、度胸。

物怖じしないこの二人を前に、レ級の心はかき乱され続ける事だろう。

それ故に生じる隙を、この二人が見逃すはずも無い。

相手がうんざりするほど、諦めるほど、悔やむほど、泣けるほどに、今までのどの艦娘よりも、この二人は……しつこい。



漣「漣からは逃げられないよ!」ジャキッ

レ級FS「お前如きにボクが逃げるとでも思ってるの?」

漣「ふっふっふ。一度は言ってみたかったこの台詞!滅びの風をその身に受けるがいい…くたばれッ!!」


ドン ドンッ


満潮「どこが風よ!」

レ級FS「ふざ、けるな…ッ!!」ブンッ


ボゴオオォォォォォン


漣「うひゃ~…」

レ級FS「鬱陶しいなぁ…何様?ねぇ、お前達…何様なの?こんな貧弱な砲撃を飽きもせずにポンポンポンポン……
馬鹿でも気付くってもんでしょ。力も、強さも、存在感も!全てにおいてボクが上回ってるんだよ!
いい加減、無駄な足掻きは止めて死ねよ……艦娘ッ!!」

漣「だが断る」ズキュゥゥゥゥン

満潮「だってさ?」

レ級FS「」ブチッ…

漣「あれ…なんか、嫌な音したです?」

満潮「みたいね。あんた、余計な事しすぎなんじゃないの」

漣「あははは…」

レ級FS「ここまでコケにされたのは初めてだよ…それも、駆逐艦風情に…ッ!」

満潮「何よ、煽り耐性ゼロな訳?てんで、お話になってないわね。それにさっきからペラペラペラペラと…ウザイのよッ!!」ザッ



漣とスイッチする形で今度は満潮が駆け出す。

狙う場所は既に決めている。

見た時からそこだけを狙うと満潮は決めていた。

何度見てもイラつく、その顔。

その顔面目掛け、相手が許しを乞おうとも、絶対に許しはしないと覚悟を決めた上でそこだけに一点砲火を浴びせる。


満潮「変形するまで撃ち込み続けてやるわ!」ジャキッ

レ級FS「お前…!」

満潮「宣言してやるわ。私はあんたの顔面しか狙わない。深海のアイドル気取るんだったら、顔面偏差値維持する事ね!」


ドン ドンッ


ボゴオオオオォォォォォォォン


レ級FS「グッ…!」 被害軽微


ザザザッ


レ級FS「お前、今、何をした…」スッ…

漣「みっちゃん…!」

満潮「……っ!」

レ級FS「宣言通り、殺す。遊んでやってればつけ上がる…ゴミ以下の分際で、このボクの顔に何をした…?」



片手で片目を覆い、牙を剥き出しにして静かにレ級FSの怒りが膨れ上がる。

片方の瞳から迸る怒りの眼光は真っ直ぐに満潮を見据え、瞬きすらも生温いと目一杯に見開かれ、睨み据える。

ゆっくりと覆っていた片方の手を下ろすと、その瞳周辺は赤く火傷の痕の様になり、目からは一筋の真紅の液体が

涙のように頬を伝って流れ落ちた。


レ級FS「すぐ、楽にしてあげるヨ…」


その姿がブレた。

そう悟った瞬間、漣の体は宙に浮いて強い衝撃と共に数メートル真横に吹き飛ばされていた。


バシャァァァァァン


満潮「さ、さざな……」

レ級FS「バカなの?お前…」


ボゴオォッ


満潮「あ゛ぁっ……!!」


バシャァァァァァン


レ級FSの言葉が届いたかと思うと、同じようにして今度は満潮が漣とは真逆の方角へと吹き飛ばされる。


満潮「げほっ、ごほっ……!くっ…」 小破

漣「げほ、ごほっ……うっ」 中破


ビチャッ…


満潮「漣っ!」

漣「怪、力、馬鹿…!」ヨロッ…

レ級FS「へぇ…ボクの全力で壊れない駆逐艦って、居るんだ」ニタァ…


弾き飛ばした二人の中心に悠然と立ち、レ級FSは不敵に笑いながら左右に視線を漂わせる。

レ級FSが行ったのは砲撃でも艦攻艦爆でもない。

ただ、尾のような艤装を力任せにフルスイングしただけだ。



レ級FS「最後の晩餐には物足りないだろうけど、最後だからね。選ばせて上げるよ…どっちが先に肉の塊になるのか、ね。
好きなだけ悩み、好きなだけ足掻け。ただし先に背を見せた方を真っ先に八つ裂きにする。戦場で尻込みする奴に用はない。
死ぬと分かっていても、立ち向かってくるのなら最後まで愉しませてあげるよ。帰結点は、どちらも『死』だけどね」

満潮「漣、私が時間稼ぐから、あんたは先に…」

漣「じょーだん…でしょ!みっちゃん、格好つけすぎ、ですよ」

満潮「だって、あんた…!」

漣「旅は道連れ、世は情け…合縁奇縁で丸儲け、ですよ」

満潮「こんな時に意味不明なギャグかましてる場合じゃないでしょ…!」

漣「どうせ、死ぬんだったら……私は、一番の友達と、一緒に死ぬですよ」

満潮「漣……」

レ級FS「決まり?いいよ、同時に首を刎ね飛ばすくらい、ワケ無いからさ。栄誉を抱いて死ね。お前達はボクを本気にさせたんだ。
これは素晴らしい事だよ。だって、ボクは常に遊び半分で君達艦娘を屠ってきたんだ。歯応えのない、手応えのない、感触のない。
そんなボロ雑巾みたいな連中ばっかりで、ボクの悦が満たされるワケがない。だから、お前達の首はボクのコレクションとして、
永遠に傍に置いてあげるよ。綺麗に胴体と切り離して、最高の表情で剥製にしてあげる。だから笑って死ね。
この栄誉を抱いて、満足な顔をして逝けッ!!」


レ級FSの姿が一瞬ブレる。

その刹那、二人にどれだけの考える時間、過去を振り返る時間があったのかはわからない。

もしかしたら万事休すと、完全に思考は停止していたのかもしれない。

悔やみがあるとすれば、再び五人揃ってまた出会えないと言う無念の悔やみがあるだろうか。

だから、眼前で爆発が起こった時でさえ、二人はただ呆けて立ち尽くすだけだった。


ボゴオオォォォォン

ボゴオオォォォォン


レ級FS「なっ…!お、お前は…なんで!?」

??「『欠陥戦艦』とか『艦隊にいる方が珍しい』とか、いいたい放題ね……当然よね。だって、今の今まで、私は────」



『経過観察は?』

『良好です。ですが、目覚める兆候はありません』

『心的なものなのか、それとも外的なものなのか…』

『恐らく前者でしょう』

『確証があるのかね?』

『聞く所によれば死ぬ寸前にまで追い詰められた上に、目の前で最愛の姉を失ったのでしょう?』

『あぁ……指揮を執るそこの提督が懸命にフォローして何とか一命は取り留めてはいたが、心が追いついてこない』

『ならば明白ではありませんか』

『貴重な戦力と言われているようだが、物言わぬこの身では…』

『件の提督は?』

『今日も着ていました。姉妹が好きだったと言う花を添えて帰られました』

『律儀なものだ。今時珍しい』

『そう言うな。大本営に集っている提督陣は各々に任された鎮守府で日夜深海棲艦と命を削る戦いを艦娘と共に行っている。
運命共同体と言っても過言ではなかろう。そんな部下がこの有様では、気が気ではいられんだろうよ』

『悪事を働く提督も居る中で、と言う意味です。本当に、珍しいですよ。だからこそ、切なくて仕方が無い』

『目覚めの時は、訪れるのだろうか…最早、それすらも神のみぞ知る、か……』


??「今でも、覚えているの。最後の時も、扶桑姉さまと一緒に戦えたと、誇りに思って果てる筈だった。
なのに……不幸よね。こうして、私だけのうのうと生きている。予感……って、私の場合は結構当たるのよ。
こと、嫌な予感と言うのは、特にね?」

レ級FS「なんで、お前…生きてるんだよ……山城ッ!!」


二人の窮地を救ったのはそこに居るはずのない艦娘、扶桑型戦艦二番艦、山城。

彼女は一体、誰なのか。

どうしてそこにいるのか。

何故、山城と名の付く艦娘が二人存在しているのか。

これもまた、エリート提督の深慮の浅さが招いたミスであり、提督が弄し一種の賭けにして勝利の一手。

鳥海ですら知る由もなかった、数には含まれない幻の六人目。

集うべくして集うはずだった、陸の孤島に漂着した最後の艦娘。

本日はここまで

乙です。
うおお、まだ盛り上げてくるか。こりゃ見物だ。

乙です

乙!
もう1人の山城…だと…!?

……不謹慎にも「ファンが狂喜しそう」と思っちゃったのは僕以外にいるだろうか…

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします




~未来への扉~



-百戦錬磨-

負けは誰にでもある。

負けを知らないと言うが、そんなものは極地に立って本気の勝負をした事が無い者の語る幻想だ。

敗北を知り、辛酸を舐め、藻掻き苦しんだ先に初めて見える光を手にし、そして立ち上がる。

そうして人は成長し、進化し、躍進する。

艦娘も同じだ。

想うだけではどうにもならない事もある。

願うだけでは適わない事もある。

ならばどうすべきなのか。

一歩踏み出す勇気を得る。

例えそれがどれだけ遠回りになろうとも、茨の道を進む事になろうとも、死の淵に立とうとも。

それが正しいと、それが答えだと、自らがそう確信を得たのなら、そこに向かって突き進む勇気を得るだけだ。

進まなければ景色は変わらない。

戻れば見慣れた風景が飛び込んでくるだけだ。

それじゃダメだと思ったから、己の弱さを知り、己の敗北を受け入れ、己自身と向き合い、そうして今に至る。

だから強い。

この者達はそれ故に完成された存在なのだ。



榛名「主砲!砲撃、開始っ!」ジャキッ

山城「くっ…!」


ドォン ドォンッ

ボゴオオオオォォォォォォォン


山城「なっ…被弾!?」 小破

榛名「まだ、狙いが甘かった…!」サッ

山城「小賢しい…!」ジャキッ

榛名「させません!」ジャキッ


ドォン ドォン ドォン ドォン

ボゴゴゴゴゴオオォォォォォン


山城「ぐっ…!なっ、まさか…今の、副砲で…!?」

榛名「迎撃するだけなら、小回りと速射に長ける副砲で事足ります」

山城「どうして、そんな不相応な艤装を纏っているのに、私よりも動きが早いのよ…!」

榛名「『今は亡き』戦友が残してくれた、言わばその人の分身。それがこの艤装です」

山城「何を、訳のわからない事を…」



ピーコック「貴女、情緒不安定にも程があるんじゃないかしら?」

葛城「うるさい!」

ピーコック「ヒスってる女はウザがられるだけよ?」

葛城「元・深海棲艦だった分際で、偉そうにしないでよ!」

ピーコック「そう、深海棲艦ね。だから何よ?中身の伴ってない連中に言われても、この心には微塵も響かないわ」

葛城「中身の、伴ってない…ですって?」

ピーコック「あら、癇に障る言い回しだったかしら?」クスッ…

葛城「…後悔させて上げるわ。この改飛龍型の本当の力、見せてあげる!!」

ピーコック「神社幟に神道の…なるほどね、それが貴女の武器という訳。弓、かしらね。随分とリスペクトしてるじゃない」

葛城「沈め……」

ピーコック「」(情緒不安定…焦点の定まらない目。この子は、アレとは違うみたいね。はぁ、尚の事面倒ね)

葛城「沈め…!攻撃隊、発進!!」ビュッ


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


ピーコック「申し分ない艦載数ね。けど、私にとってはどうでもいい事よ。それが、空母と陸上型の決定的な違い。
私の名はピーコック。ウェーク島基地陸上型ピーコック。その心意気には応えて上げるわ。ただし、武を以てね」バッ


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


葛城「…っ!」

ピーコック「当然でしょ。私と貴女では搭載している数が違うのよ。この力は、憎しみによって生まれたんじゃない。
悲しみの中、争わずして成せなかった今の時、幾重にも折り重なって、過ちと後悔を繰り返し、漸く辿り着いた場所。
今在るこの力こそ、遥か昔から私達が皆平等に想いを馳せ、恋焦がれ、夢にまで見た愛する海を護る為……
そして巡り巡って繋がれた艦娘として、新たに出会えた仲間を護る為の……この世界を、深海棲艦より退ける為の戦力!」



武蔵「さぁ、何処からでもかかって来い、虫けら共!」

川内「言いたい放題言ってくれるね」

羽黒「絶対、負けません!」

神通「殿、この神通が引き受けます」

川内「援護するよ、神通!」

神通「はい!」

羽黒「神通さんの身、私も全力でお守りします。お任せ下さい!」

武蔵「消え失せろ!」ジャキッ

神通「私の知る貴女は、もっと悠然とした雄々しい方でした。今の貴女に、同じ影は見えもしません」

武蔵「寝言は寝て言え。私こそ大和型戦艦二番艦の武蔵!」

神通「隊は単縦陣!」

川内「はいよ!」

羽黒「はい!」

神通「神通、突撃します!」バッ

武蔵「速さだけが取り得の軽巡が、粉々にしてくれる!!」


ドォン ドォン

キンッ

ボボボボボボボボボンッ



武蔵「なっ」

神通「私達の振るう艤装は何を取り繕おうとも結局は生きるものを殲滅する道具。なれば、人が刀を、刀が人を…
互いに心通わせ信じる道を違わぬように、互いが互いを振り回さぬように、諌め、慈しみ、認め合う事。
私達は容易く道を踏み外す事でしょう。だからこそ、己を律し、己を磨き、己を諌め、己を起たすべく邁進するのです。
人道を外れた者に、その理を説くのは些か無力が過ぎるのかもしれません。ですが、私はあえて問います。
何故、この道を選んでしまったのですか」

武蔵「精神論か。小賢しいな。何故選んだのかなど決まっている。この道こそ、私が進むべき道だからだ!」

神通「仁義礼智信」

武蔵「何…?」

神通「仁義無き、礼を尽くさぬ、智に乏しき、浅はかな信念。凡そ道を踏み外すなどと言う生易しい言葉で取り繕えるものではありません。
だからこそ、私が…私達がお教えします。この五常に通じるものが何かという事を。これを備えてこその、私達艦娘なのです」キンッ

武蔵「虫唾が奔る。消えろ」ジャキッ

神通「押し通ります」

川内「真面目モードの提督譲りだねぇ。何言ってんのか私にはさっぱりだけど、その心意気には応えるさ」ザッ

羽黒「私達が信じて進んできた道です!」サッ

川内「うん、その通りだ。いくよ、武蔵!」バッ

武蔵「砲撃のモーションなしだと!?」バッ


カカカッ

ボゴオオオオォォォォォン


武蔵「ぐっ…!」 被害軽微

羽黒「砲撃、いきます!」ジャキッ


ドン ドンッ

ボゴオオオォォォォォォン


武蔵「まだだ…!」 小破

神通「艦娘の誇り、これ以上穢させる訳には参りません!」

取り敢えず一段落分の投稿
短いですがここまで

乙です

乙!
葛城は洗脳されてるって事で確定みたいだけど、武蔵はどうなんでしょうね?

皆様こんばんは
本日も一段落分投稿です

-因縁-

エリート「ククッ…存外に苦戦しちゃってるねぇ…僕の従える方が、だけど」

提督「て、めぇ…!」

エリート「提督、勘違いしないで貰いたいな」


元より、あんな傀儡人形共に僕は興味ないんだよ。

あんなものが幾万、幾億居ようが楽しくもなんともない。

根本から違うんだからね。

彼女達は所詮、道具なんだよ。

始まりはやっぱり新鋭さんだった。

僕はね、提督…組織ってものが大嫌いなんだ。そこにあると潰したくなるくらいに…

けど、僕達人間の社会と言うのは、その全てが組織としての確立を果たしている。

大なり小なり、上下関係が存在し、傅く者、敬う者、従う者、逆らう者、色々と居るね。

その中でも、僕が当てはまるものは何一つとしてない。出る杭は打たれ、潰される。

だったら潰される前に潰すだけだ。

この海軍を選んだのも、この日本と言う国が今はこの海軍を中心として動いているからさ。

深海棲艦の脅威に怯え、終わるとも知れない戦いに興じ続け、上層部は安寧と構え続ける。

そんな肥えた豚共を恐怖と言う音頭で無様に躍らせるには、内乱が最も手っ取り早い。

上に行けば行くほど、人間とはさもしいもので自身の保身を第一優先に考えて周りを一切見なくなる。

周りに居るのは己の駒と割り切り、使える内は笑みを零し、使い終われば即座に捨てる。

面白いと思わないか?

本性を晒した豚共の姿を垣間見た時、従ってきた同じ豚共が共食いを始めるのさ。

浅ましい醜悪な欲望を曝け出し合い、目糞鼻糞の無意味な争いを始める。

それに僕等は無益にも巻き込まれ、使役される。

だがね、僕はそうはならない。

この戦争兵器を用いて、僕がこの世界を蹂躙する。

手始めがこの極東たる列島国・日本と言うわけさ。

着実に力をつけて順風満帆の航路だったのに、君ときたら生意気にも感付いて噛み付いてきた。

新鋭さんの起こしたあの騒乱の中にあっても、君は僕を見据え続けていたね。

不愉快だよ。



提督「だから、レ級の群れを、ばら撒いて、無差別を装い、俺様の鎮守府と、艦隊を、諸共消し去ろうとした…」

エリート「いい嗅覚だね。その通りだよ。僕は憂いは微塵も残したくない性質でね。けど、心悸に任せたのは失策だった」

提督「ククッ…あの馬鹿は、てめぇの保身を考えて前にすら、出なかったからな。それが後々の、禍根になったのは明白だ」

エリート「百貫に任せるべきだったと、今更ながらに思うね。ふふ、けど…今の君を見てごらんよ。地べたに這い蹲り、
今か今かと死ぬ瞬間を待ってるだけの出来損ないじゃないか」

提督「俺は、当の昔に死んでんだよ…」

エリート「奸計の白夜…あのまま戦果を重ねていれば、間違いなく君はあの智謀と共に並び称されただろうね。
まさに伏龍鳳雛と成り得た存在だ。君を潰せた事は、当時では大いに僕の計画の躍進に貢献したよ。
だが、捉え方を間違えていたようだね…僕は智謀を伏龍、君を鳳雛と見立てていたが…事の実は真逆だった」

提督「そいつはご大層な例え、痛み入るね。糞喰らえだ」

エリート「しかし、滑稽だね。君の信じた五人の艦娘は未だ影すら見せず、代わりに君とは無縁の艦娘達がこの場に居る」

提督「無縁…?いいや、そいつは、違うな…」

エリート「何?」

提督「そもそも、縁も所縁もねぇなんてのは、この海軍に置いちゃ、ねぇに等しいんだよ、バァカ。あいつ等が俺様の為に、
この場に居るかと言えば、そいつはノーだ。しかし、あのクソガキの為に居るのかと、聞かれりゃ、多分イエス…
だがな……大前提は、てめぇ等がここに居るからさ……合縁奇縁ってヤツだ。そして、俺様とてめぇにあるのは、因縁だ」

エリート「ちっ…」

提督「性懲りも無く、てめぇは…未だに、俺様の艦隊を、侮辱し続ける。お陰で、俺様は耐えるという事を、学んだ」ググッ…

エリート「その身体でよくもまぁ、まだ立ち上がろうとする。老体に鞭を打つにしても、打つ時を間違えてないかな?」

提督「いいや、そうでもねぇ…何より、俺様はな…見下されるのが、大嫌いなんだよ。特に、てめぇのような……
ゴミ以下の掃溜めにも劣る、畜生風情にだけは、願い下げもいいところだ」

エリート「ほぅ…」ピキッ…

提督「扶桑を殺し、当時の俺様の精鋭達……千代田、睦月、弥生も死んだ……残ったのは、山城と鳥海の二人だけ……」

エリート「何が言いたい」



山城は……あの時から、今の今まで、ずっと植物状態だった。

目を覚ませば、きっと俺様を呪うだろう。

だがそれでもいいと、俺様は思っていた。

生きているのなら、それでいいと…だから、てめぇと一緒にあの時現れたのを見て、俺様は内心『そうか』と納得しかけた。

だがな、その後で、あいつはやっぱり、まだ『あそこ』にいたのさ。

そして、あいつの口調が、決定的となった。

だからこそ、俺様は確信を得た。

同時に、忘れかけていた怒りも得た。

どこまでも、人を馬鹿にして、虚仮にして、いい加減、腸煮え繰り返って、血反吐を無意味に吐き出しそうだ。

いいか、エリート……てめぇが、人形と言い張るのなら、そうなんだろう。

実際、あいつ等じゃ、クソガキの従える、あの艦娘達には、勝てねぇだろうしな。

だがな、覚えておけ……今、目に映ってる、光景だけが……全てじゃ、ねぇって事をな。


エリート「何が言いたいって聞いてるんだ!」

提督「ククッ……俺達ゃ影……てめぇ等がゴミと、クズと蔑んだ連中で、構成された、影だ。
加賀を、てめぇは覚えていなかったな」

エリート「……あの空母艦娘か。それが何だと言うんだ」

提督「てめぇの、第一艦隊に、所属していた艦娘の顔も、名前も、覚えていないとはな…
医学界を震撼させる、レベルの…痴呆症だぜ。だからこそ、てめぇは、あいつを出汁にして、消そうとしたんだろう。
善と悪で、考えれば、あいつは善だ。その洞察力と、頭の回転の早さから、てめぇにとっては、目の上のこぶ、だったわけだ。
余計な、根回しと、漏洩を防ぐべく、てめぇは加賀を、排除しようとした。が、ククッ…詰が甘かったな」

エリート「ちっ…」

提督「見届けようじゃねぇか…てめぇのその、薄汚ぇ面が、笑みに変わるのか…俺様が、嘲笑うのか…
賽は、投げられた…もう、止まりゃしねぇ…ここからが、見物だぜ…見せてやる、目に物ってヤツをな…!」




-航空戦隊-

泊地水鬼「……他愛ノ無イ。これが、過去…脅威と謳わレタ南雲機動部隊トハな……」


燃え盛る炎の海を尻目に、泊地水鬼は薄っすらと笑みを浮かべてポツリとそう呟いた。

彼女にとっての六人の分析は既に付いていた。

加賀は放つ艦載数に似合わず機動力と破壊力を兼ね備えた、高い次元で完成されたオールラウンダー。

赤城は加賀に匹敵するポテンシャルか、それ以上の潜在能力を秘めた存在。

まさにこの二人は、一航戦は別次元の戦力だと認識していた。

そして二航戦の飛龍と蒼龍。

この二人の操る艦載機は他と一線を画している。

友永隊と江草隊と呼ばれるこの艦爆艦攻隊は、事航空戦において無類の強さを発揮する。

最後に一航戦の後釜と言われた五航戦。

未だ荒い部分も多いが、それを差し引いても有り余る集中力と秘めた強さを醸し出している。

しかし、それらの分析を経ても尚、泊地水鬼にとっては瑣末な事実として認識できた。

結果を見ればそれは火を見るよりも明らかだった。

事実、今こうして立っているのは己なのだから。

過去の焼き直し、過去の繰り返し、過去は無論、同じ事象を塗り替える事など不可能だと、証明してやったのだ。

だからこそ笑みが零れた。

愚かで無力、無意味な行為を繰り返す、哀れな艦娘の努力に呆れ果てて笑いが込み上げてきた。

だが、そう思っているのは泊地水鬼だけだった。

言わばここまでは間幕。

序幕を経て中盤へと差し掛かり、間幕が終われば次にくるのは────


──次で終幕です。まだ、私達は負けてない──


泊地水鬼「…っ!?」バッ


響いた声に背を向けていた泊地水鬼は驚愕の顔を露にして振り返る。


赤城「一航戦の誇り…こんなところで失うわけには参りません。まだです!」 小破

加賀「今度こそ、私は護る。赤城さん…貴女を残して……沈むわけにはいかないわ」 小破

飛龍「言ったはずです。たとえ最後の一艦になっても、叩いて見せます!」 小破

蒼龍「なんでまた甲板に被弾なのよっ!痛いじゃない!」 中破

翔鶴「過去の全てを踏襲する訳ではありません。翔鶴型は、この程度で沈みはしません!」 中破

瑞鶴「最後の機動部隊を護れなかった過去がある。でも、それでも私は矢尽き刀折れるまで、戦うんだから!」 中破

泊地水鬼「貴様等…!アノ、爆撃ノ中を、どうヤッテ…!」

蒼龍「ホントあったまくる!でも、今度は託せる仲間が傍に居る。飛龍…!」

飛龍「うんっ!徹底的に叩きます!蒼龍の分まで、私が飛ばすっ!!」

瑞鶴「過去は壊滅したのかもしれない。でも、今度は違う。本格正規空母の力、存分に魅せてあげるわ!翔鶴姉、やろう!」

翔鶴「ええ、そうね。あの惨劇の後は、先輩方の後を継いで……でも、今は違うものね。この海原を越えて、
今度こそ皆で共に飛び続ける!」

赤城「私達機動部隊はこの日、この時に向けて練成してきました。必ず隙は生じるはず。一航戦の…
いいえ、我々機動部隊の誇り、お見せします!」

加賀「私達が揃うのだから、心配いらないわ。鎧袖一触よ」

泊地水鬼「ナンだと、言うのダ…貴様等ハ、一体…!何故、アノ爆撃の中、ソノ程度の損害デ済む!?」

蒼龍「志の違いでしょ!」

瑞鶴「言ったでしょ。ぶっ潰すって!潰すまで、倒れるわけにはいかないのよ!」チャキッ

泊地水鬼「バ、バカな…!何故、構えらレル!」

瑞鶴「第二次攻撃隊。稼働機、全機発艦!」ビュッ

翔鶴「行くわよ!全機、突撃!全航空隊、発艦始め!」ビュッ

泊地水鬼「ソノ…装甲…貴様等、まさか…ッ!」

加賀「」(そういえば、瑞鶴の軍装が翔鶴と同じ物になっている。以前見た時は、迷彩の施された紺と茶だったのに)

翔鶴「無限の可能性、在り得ないを可能にするのが私達艦娘です!」

瑞鶴「紡ぐ事をしないあんた達になんて、絶対に負けないんだから!」

蒼龍「飛龍!」パッ

飛龍「うんっ!」パシッ

泊地水鬼「…ッ!」バッ


飛龍「何度蹴散らされたって、何度撃ち落されたって、そんなのどーって事ないっ!私達の信念が折れない限り、
私達は何度だって、何回だって、立ち続けます!二航戦飛龍、反撃開始しますっ!第二次攻撃の要を認めます!
友永隊、江草隊、頼んだわよ!」ビュッ

赤城「加賀さん」チラッ

加賀「はい?」チラッ

赤城「ふふ、上々ね」クスッ

加賀「はい。みんな優秀な子たちですから」スッ…

赤城「ええ、そうですね」スッ…

加賀「音頭を、赤城さん」チャキッ…

赤城「南雲機動部隊、これが最後です!第二次攻撃隊、全機発艦!」ビュッ

加賀「続きます。一航戦の誇り、今こそ貫く時。ここで、終わらせます」ビュッ


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


泊地水鬼「何故、ダ…何故、マダ…これ程ノ……ッ!!」


空を遍く星々の如く、更なる力を得た五航戦姉妹の決死の一矢。

蒼龍の力を得て、己の力を乗せて、双頭の龍となって飛翔する二航戦。

全てにおいて常に前線を駆け続けた栄光の第一航空戦隊。

その双翼たる赤と青。

常に前線から周りを鼓舞し、叱咤し、己をも奮い立たせ、その身に括った誇りと言う名の信念を掲げてきた。

『あの時』は沈み逝く皆を、誰一人として手を差し伸べる事も、救う事も、護る事も叶わなかった。

だが今思う、護るなどと思い上がっていたと。

護られていたのは、自身に他ならなかったのだと。

しかしだからこそ、慎重に且つ大胆に、今は行動が取れる。

憂いを帯びる必要も、何かを気負う必要も無い。

あるがままに、ただ自らの力を最大限に発揮し、周りの期待にただ応えるのみ。

思いはただ一つ、皆が同じ思いの下に信じ続け、願い続ける。

即ち『勝つ』事だ。


加賀「終わりです、泊地水鬼」スッ…

泊地水鬼「馬鹿ナ、何故…既に二順目ヲ構えてイル!?」


六人が放った艦攻艦爆隊が大きな弧を描いて上空を飛翔し、攻撃態勢に移行する。

その直前、加賀は既に二順目となる艦攻艦爆隊の矢を番えて弦を引き絞り、真っ直ぐに標的を見定めていた。

何度叩きのめしても、何度絶望を植え付けても、眼前に並ぶ六人の艦娘は誰一人として脱落しない。

それ所か、打ちのめす度に錬度を上げて刃向かってくる。

執念、怨念だけでは、敵わない。

泊地水鬼には持ち合わせる事のない、信念がそこには存在しない。

これがあるから、彼女達は何度死の淵に立とうと、その淵より這い出て再び立ち上がれる。

思いの強さが、秘めた覚悟が、己の取る行動が、全てにおいて泊地水鬼は彼女達と対峙した時点で負けていた。

己の艦載機で迎撃する事も忘れ、呆然とその光景を目に焼き付ける。

ただ、誰にともなく静かに問い掛ける。



泊地水鬼「モウ…飛べナイの……飛べナイのよ……解ル?…ネェ」


ボゴオオオオォォォォォォォォォン


水飛沫を上げ、爆発が轟き、その姿を一瞬にして掻き消す。

しかし、一点の迷いも無く加賀は真っ直ぐに見据えた先を狙って番えていた矢を解き放つ。


ビュッ


空を切り裂き、立ち昇る爆煙を蹴散らし、矢は真っ直ぐに標的へ向かって突き進む。


泊地水鬼「マタ…アノ、空に……」 中破


ボゴオオオォォォォォォォォン


容赦の無い追撃の艦爆艦攻が更に泊地水鬼を襲い、周囲を再び爆煙が包み込む。

それを合図とするように加賀の放った矢が無数の艦載機へと姿を変える。

編隊を組んで飛翔する艦載機の翼によって再び立ち昇る煙は一掃される。


泊地水鬼「アア…綺麗……」 大破


空ろな目で迫り来る加賀の艦載機を見上げ、泊地水鬼は静かに呟く。


泊地水鬼「大きな、翼…!」


眼前にまで迫った艦載機を見て、泊地水鬼は目を見開き小さく笑う。

その直後、最後の艦爆艦攻が降り注ぎ泊地水鬼を三度爆煙が覆い尽くした。

嵐の如き艦爆艦攻の爆煙が風に流された後には、僅かに泊地水鬼の艤装だった滑走台の残骸が水面に浮かぶが、

それすらも直に水底へと静かに沈んでいった。



瑞鶴「勝った…」

翔鶴「ええ…」

蒼龍「やったねっ!」

飛龍「はぁ…疲れたぁ…」

赤城「加賀さん…?」

加賀「……私は、まだまだです」

赤城「何を…」

加賀「ですけど、それでいいのだと、今更に痛感しています」

飛龍「はぁ…ほぉんと、今更だよ」

加賀「飛龍…」

飛龍「でもさ、君はやっぱり、No.1で居てくれないと。一航戦…うん、一航戦!最高の響きよね」

加賀「…?」

蒼龍「私達が越える壁はさ、高く高く聳えててくれなきゃ。ね、赤城さん?」

赤城「え、えぇ?わ、私もですか?」

翔鶴「先輩方を越える…並大抵の努力では不可能だと思っています」

瑞鶴「でも、越えるし!抜くし!絶対にね!」

赤城「ふふっ、うかうかしていられませんね」

加賀「はぁ…五航戦の子なんかと一緒にしないで欲しいものね」

瑞鶴「んな…!何よ!」

加賀「比べる事の無意味さを最も痛感しているのは私です。私と貴女達は一緒ではないわ。越えるんでしょう?」

瑞鶴「……」

加賀「なら、越えてみせなさい。越えたと、確信を得た時、その時は真っ向から貴女達の勝負を受けましょう。
ただし…私達の艦載機は優秀な子たちですから。気をつける事ね?鎧袖一触よ」

瑞鶴「ま、負けないんだから!」

加賀「そう…それなら、良いわ」ザッ…

赤城「加賀さん?」

加賀「まだ、終わりではありませんから」

飛龍「ん…加賀!」バッ

加賀「…!」パシッ

飛龍「餞別。君の言葉を借りるならぁ…まぁ、私達にとっては優秀な子たち、かな?」

蒼龍「ふふっ」

赤城「加賀さん、慢心せずに…」

加賀「恩に切ります。染入る言葉です、赤城さん」

瑞鶴「…気をつけて、加賀さん」

加賀「問題ないわ」

翔鶴「ご武運を」

加賀「……」コクッ…

本日はここまで

乙です。
ここで五航戦改二甲がくるとは・・・熱いねえ。

>全てにおいて常に前線を駆け続けた栄光の第一航空戦隊。
>その双翼たる赤と青。

この言い回しも素敵だ。

乙です

乙です
続きが楽しみです

皆様こんばんは
更新できる時に更新
本日は摩耶鳥海パート

-智勇兼備-

港湾水鬼「肉片スラも残らナイか…少しムキになってしまったワネ」


一頻り笑い終えて周囲を見渡し、港湾水鬼は鳥海と摩耶の姿を確認出来ぬとみると小さくため息をついて呟いた。

元から本気を出す気など毛頭無かった。

しかし思いの他、重巡洋艦風情にしては手を焼いてしまった自分に些かの憤りを覚えてしまった。

故に遊ぶのを止めて全力で潰しに掛かった結果がこれでは、流石に大人気なかったと反省するほかない。


ポタッ…


港湾水鬼「?」


ポタッ…

グッ…


港湾水鬼「血…ダト…」 被害軽微


己の頬を伝って滴る血液に港湾水鬼は訝しげな顔で周囲を見渡す。

未だ冷め遣らぬ炎の壁と熱気が風に乗って熱風と変わり辺りを駆け抜ける。

それもやがて収まり、辺りは穏やかな波の音だけが木霊する海域へと変わる。

見渡す限り、水平線が広がる。

否、一点だけ、岩礁のように何かものが邪魔をして水平線の景観を損ねている。

それに焦点を合わせて、港湾水鬼はその目を見開いた。



港湾水鬼「貴様等…ッ!」

摩耶「へへっ、毎度お馴染み、防空巡洋艦の摩耶様だ。あたしは死ぬ思いするのはこれで二度目だが、存外死なないもんだね」 中破

鳥海「私の計算を上回っていた…誤算だったわ。でも、あの時の絶望に比べれば、この程度…!」 中破

港湾水鬼「くたバリ損ない共ガ…!」

摩耶「何度だって、立つさ。あたし等は、前を向いて進んでる。お前等後ろ向きな連中と、一緒にするんじゃねぇ!」

港湾水鬼「言いタイ事は、ソレだけか?」

鳥海「そうね。喋るのも、飽きちゃった。だから、終わりにしましょうか」サッ


鳥海がその手に引っ提げた物を見て、港湾水鬼の顔が始めて歪む。


港湾水鬼「貴様…ソレは…ッ!」

鳥海「貴女の『大好物』よ」ニコッ…

港湾水鬼「小賢しい、マネを…!」

鳥海「ここからよ、ここから────」


鳥海『摩耶、空を見て』

摩耶『あぁ?』

鳥海『もう直、私達の土俵よ』

摩耶『一撃必殺…ってワケか』

鳥海『この、三式弾を相手の鳩尾に叩き込んでやるのよ』

摩耶『用意周到じゃねぇか』ニヤッ…

鳥海『作戦は次の通りよ』


あえてこちらの手の内を見せ付ける。

自分にとって脅威となるものを見せ付けられれば、否が応でも相手はそこに注意を向けざるを得ない。

万が一があってはならない。

相手からしてみれば私達は格下と見ている。

そんな相手に弱みを見せる訳にはいかない。

何より、格下と見ている相手に負けるはずがない。

負けるわけがない。

だからこそ、この三式弾を見せ付ける意義が出る。

一見、本気をもって全力でこちらを潰しにかかる素振りは見せるでしょうけど、でもそれだけ。

三式弾がいつ来るか解らない以上、迂闊にこちらの懐には飛び込めない。

そこまでの度胸、深海棲艦にはないわよ。

秘めた想いや信念の無い者に、覚悟を込めた行動は取れない。



鳥海「暗闇の中で、貴女はどれだけ精密な射撃が出来るかしら」メガネキランッ

港湾水鬼「…ッ!」バッ

摩耶「さぁて、最終局面ってヤツだ。お前……あたし等を怒らせちまったなぁ!」

鳥海「伝統の夜戦…今こそ鍛えた力をお見せする時!摩耶、行くわよ!」

摩耶「おう!いくぜ!」

港湾水鬼「この時ヲ、待ってイタのか!」ギリッ…


水平線を燦然と照らしていた太陽が沈み、周囲を暗闇が支配する。

慣れきっていない、この僅かな時間こそ最も怖い瞬間である。


ジャキッ

ジャキッ


暗闇に響く艤装を構える音に港湾水鬼は周囲を警戒し砲塔を身構える。

範囲を無視した艦爆艦攻を強制敢行する事も可能だっただろう。

しかしそれは相手の位置を明かりで見つけ出す事も可能になるが、逆に自らの場所も晒す事になる。

どちらが見つけるのが先か、一か八かの賭けに出るわけにはいかない。

相手には三式弾があるのだから。

流石にあれをまともに食らえば一溜まりもないのは港湾水鬼にもわかる。

それほどまでに局地的に際して凶悪な艤装の一つなのだ。

だがそれこそが、港湾水鬼に冷静な判断を損なわせる要因となる。

奇しくも鳥海の考えはその全てが的を射る結果となった。



港湾水鬼「」(ドコだ、どこカラくる…!)

摩耶「怖ぇか?」

港湾水鬼「…ッ!」バッ


ドォン ドォン

ザバアアァァァァァン


港湾水鬼「しまっ……」

摩耶「あたし等もそろそろ先へ進みたいからさ、終わりにしようや」


ドン ドンッ

ボゴオオオォォォォォン


港湾水鬼「ウグッ…!」 小破


バッ


砲撃を側面に受けて港湾水鬼は即座にその場から飛び退き周囲を無差別に砲撃する。


ドォン ドォン ドォン ドォン

ボボボボボボボボボボボボボボボボン


それに合わせて位置を定めさせないように更に動き、再度先よりも集中力を高めて周囲の警戒に当たる。

しかしそれを意に介さないように、二人の艦娘は行動に移る。

最も、この戦場において取られてはならない場所、背後。

それを、港湾水鬼はついに奪われる。



鳥海「そこね…計算通り、見つけたわ」

港湾水鬼「背後…ッ!」バッ


それでもその集中力が成せる業だろう。

音に全神経を研ぎ澄ませ、響いてきた声に即座に反応し暗闇の中でも音の方角を正確に読み取り、そちらを向く。

だが、それは言わば罠。

鳥海による誘導。

彼女が欲しかったのは港湾水鬼の真正面。

それを見越し、あえて声による反応を待った上で一拍置いての砲撃。


港湾水鬼「チッ、罠か…!」

鳥海「いいえ?」

港湾水鬼「……ッ!?」


至近距離から木霊した声。

思わず視線を泳がせてしまった、僅かな躊躇いが生じさせた隙。

その直後、轟音と共に全身を駆け巡る今までに受けた事のない激痛と衝撃。

この瞬間、初めて港湾水鬼は己が死の淵に片足を突っ込んでいるという事を認めた。


ボゴオオオオォォォォォォォォン


港湾水鬼「ガアアア……ッ!!」 中破


ヨロッ…


港湾水鬼「この、ようナ…所デ……異国ノ地、異国ノ海で……ッ!私ハ、沈まんッ!!」ジャキッ

摩耶「悪ぃけど、年貢の納め時ってヤツだぜ」

鳥海「沈めるわ、ここで…確実に!」


バッ


港湾水鬼「オノレ……ッ!」


──少しハ、ヤルノカ……?楽しいナ……!──


港湾水鬼「冗談デハ、ない…!私の、認識が、誤ってイタと言うノカ…ッ!」



ドォン ドォン


港湾水鬼「認メンッ!!」


ボボボボボボボボボン


摩耶「悪手だ、深海棲艦…無闇な砲撃はテメェの居場所晒すだけだぜ」


ドン ドンッ

ボゴオオオォォォォォォン


港湾水鬼「グゥ…ッ!」 大破

摩耶「ちっ、これでも浅いのか…!」

港湾水鬼「沈、まん…わ、タシは…決して、沈みハ、シナイ……ッ!」ジャキッ ジャキッ

摩耶「こいつ、まさか二基同時に…!鳥海…っ!」

鳥海「大丈夫…!私の計算は…もうこれ以上、狂わない!」

港湾水鬼「沈メえええぇぇぇェェェェェェッ!!」

鳥海「貴女がね…!」



ドン ドンッ

ドォン ドォン


互いに放った一撃はくっきりと明暗を分けた。

港湾水鬼の放った一撃は鳥海の頭上を越えてその後方で大爆発を引き起こし、鳥海の放った一撃は港湾水鬼の

真正面を捉えて確実に直撃する。


ボゴオオオオォォォォォォォォン


互いの砲撃の爆発音が轟き、辺りを一瞬明るく照らし出す。

火の粉が舞い、それが仄かな明かりとなって周囲を照らし出し、互いの位置関係が明白に浮かび上がる中、

港湾水鬼は虚ろな瞳を空へ向けて自嘲気味に笑う。


港湾水鬼「フフッ……花……サクラ……」

摩耶「あぁ?桜なんて何処にも…」

鳥海「…きっと、もう殆ど見えてないのよ。この火の粉が、そう映ってるのかもしれないわね」

摩耶「…………」

港湾水鬼「……綺麗な、モノ……ネ…」 轟沈

鳥海「安らかに、眠って…」


バシャァァァン……


鳥海「っ!ま、摩耶!?」

摩耶「わり…はは、疲れたわ…」

鳥海「病み上がりなのに、無茶するから…!」

摩耶「うるっせー…結果オーライだ。お前はさ、自分が選んだ道、進んだんだろ?
だったら、振り向くなよ…前向いてけ、進め…ここが最終航路じゃねぇんだったら、前だけ向いて突き進め!」

鳥海「摩耶…」

摩耶「感謝しろよ。けど、次はもう、助けてやんねぇからな。いけ、鳥海」ニヤッ…

鳥海「…うんっ!」

本日はここまで

乙!
ここに来て2日連続更新というのに面食らいましたが、相変わらずのハイクオリティぶりに胸が熱くなりっぱなしです!

皆様こんばんは
長良パート終わったのでその部分だけ投下

-決闘-

戦艦水鬼「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……ふふ、ハハハッ……これダケ撃ち込め……」


ボゴオオオォォォォォォン


戦艦水鬼「ガァ…ッ!」 小破


ザザザッ


長良「悪手だね。そういう砲撃は、対人戦には不向きだよ。どちらかと言えば対軍戦や対城戦。
大体数を一手に相手する時にこそ、その真価と威力が発揮される。
そんな相性の悪い砲撃に打ち負けるほど、私の足は、安くない!」 中破

戦艦水鬼「グゥ…おの、レェ…!その、ナリで……マダ、諦めヌのか…!」

長良「終わりにしよう、深海棲艦」

戦艦水鬼「終わりダト…?貴様が終ワル以外に結末ハないぞ?」

長良「軽巡が戦艦に勝てないなんて道理はない」

戦艦水鬼「何…?」

長良「石の上にも三年って諺、知ってる?堅固なものは一点を集中して狙え。水でもやがて岩に穴を空ける…!」ジャキッ

戦艦水鬼「」(先ノ一撃…私の、腹部…)ズキッ…

長良「…………」

戦艦水鬼「」(思い出セ…ヤツの、攻撃の全てヲ……ヤツは、ヤツは…ヤツは……ッ!)ズキンッ…

長良「骨身に、沁みるよね。頑丈が取り柄って言うのも、裏を返せば鈍感って事よね。今更庇った所で、後の祭りってね」

戦艦水鬼「」(この、艦娘…ッ!駆けるダケしか能のナイと…私が、見誤ッタ…?まさか、コレまでの行動も……
全て、ヤツの演技?いや、ソンナ様子は見らレナかった。ならば、ドウして…ここまで、冷静ナ…クソッ!)



以前に提督は加賀達五人を発展途上と称し、輝く原石と例えた。

それはその通りであり、やり方次第で彼女達は腐りもすれば輝きもした。

進化し、成長し、更なる上のステージへと駆け上がるべき資質を秘めた五人の艦娘達。

長良は、何処かでまだ踏ん切りの付け所が不十分だった。

言葉に表すのは簡単だ。

それを口にするのも簡単だ。

だがそれを行動に移すのは困難だ。

更には、それを達成するとなれば困難の度合いは最早筆舌に尽くし難いことだろう。

だからこそ長良は今わの際に至ってもまだ、その過程で藻掻き続けた。

失敗もし、反省もし、悔やみ、嘆き、己の不甲斐無さに涙した。

そうして得られた経験は己の血肉となって漸く彼女の力として還元された。

戦艦水鬼の邪推はそんな長良のこれまでの過程を知る由もなく練られた推測と憶測に基く。

故に矛盾を孕み、噛み合わない歯車が更にその円環を歪にしていき、深みに嵌る。

演技ではない本心、計算し尽くされてなどいない、偶然による結果。

一度疑ってしまったその考えは、ちょっとやそっとでは払拭できない。

戦艦水鬼にとって、今の長良の行動は計画性を孕んだ危険な存在として認識される。

己が勝手に踏み外し、勝手に深みに嵌った沼で、無様に足掻く結果となる。


長良「いくよ、戦艦水鬼!」スッ…

戦艦水鬼「…ッ!」バッ



真っ直ぐに見据えてきた長良の瞳に戦艦水鬼は一瞬気圧され、無意識に後方へとたじろぐ形で身構えた。

自分でも気付いていない、あってはならない失態。

海面に小波を起こして、長良の姿がそこから消える。


戦艦水鬼「どれダケ速く動こうト、水面にはソノ行く先が反映されル!同じ手は二度ハ通じんゾッ!!」ジャキッ

長良「聞いたよね。私の足に、ついてこれるかどうかって」ザッ…


ドォン ドォン

サッ


ボボボボボボボボボボボン


戦艦水鬼「ナッ…!」


戦艦水鬼の砲塔が捉えた先、予測された射線軸とその範囲に入るよりも前に、長良は方向を直角に、行き先を変える。

結果、その動きについていけなかった戦艦水鬼は制御しきれずに何もない海域へ向けて砲撃を放つ。

そして生まれた砲撃後の抗いようのない隙。

狙い澄ましたようにして長良は砲身を既に構え、そこへ向けて砲撃を見舞う。


ドン ドンッ

ボゴオオオォォォォォォン


戦艦水鬼「ガッ…!グゥ、おの、レェ…ッ!!」 中破

長良「残りの弾数なんて数える必要ない。お前を倒すまで、撃ち続けるだけなんだから!」

戦艦水鬼「……認識ヲ……改めるベキか。ククッ…中々……ヤルじゃないカ……認めヨウ」

長良「……?」

戦艦水鬼「貴様ハ、強い。軽巡ダカラ、戦艦ダカラ……そんな事ハもうどうでもイイ。
小細工も、小賢シイ戦略も不要…ッ!ただ無心デ、この20インチ連装砲の砲弾ヲ、貴様へ撃チ込ムのみッ!!」ジャキッ

長良「絶対勝つ!」

戦艦水鬼「絶対負ケンッ!」



最終局面。

最後の最後、土壇場に至って戦艦水鬼は長良と同じ土俵に立った。

これで条件は五分と五分。

雌雄を決するのは互いの持つ武装のみ。

意図した訳でもない。

長良にしてみれば、このまま混乱に乗じて戦艦水鬼を沈める事が出来るチャンスだったはずだ。

しかし、長良も別にそこまで計算していたわけでもなく、ましてや考えてなど微塵もない。

これは結果としてそうなったというだけの話だ。

だから、長良は全力を持ってこの勝負に臨む。

真正面から勝負を挑み、これを打ち破り、勝利を手にし、そして皆との約束を果たす。


ザッ


互いに構えを取り、同時に動き出す。

水面に波紋を残し、その場から消失する長良。

赤黒く怪しく蠢く艤装を従え、周囲を警戒する戦艦水鬼。

全神経を集中させ、戦艦水鬼は長良の動く先、その未来を見据える。

僅かな所作、現象、違和感を見逃さずに万全の態勢で次の行動を選択する。


戦艦水鬼「」(コノ艦娘は強い。クラスと言う物差しデ図れる範囲ヲ超越した存在。油断ハこちらの死ヲ意味スル)


いつ以来か……物事ヲ作業と思ウ様になったノハ。

煩わシサが前面に立チ、考える事ヲ止めて、どれくらい時は過ギタだろう。

抑えきれナイ衝動。

抗いきれナイ躍動。

忘れてイタ、これが……感動。

私は……コノ艦娘に勝ちタイ。

是が非デモ、何を犠牲にシテでも!

この戦いダケは、譲れないモノがある!

この身ハ既に朽ち果テタ残骸。

どこマデ行こうト、変わらぬのナラ!

せめてこの者ガ賭した想いト願いに、応エル!

そうでなけレバ、今この場に私が存在スル意味は皆無!

ダカラこそ、全力で合間見エル!



戦艦水鬼「ソコダッ!全砲門解放ッ!ソノ全てヲ……焼き尽くす!泣き叫ンデ……沈んでイケ……ッ!!」

長良「く…っ!」バッ


ドォン ドォン

ボゴオオオオオオォォォォォォォォン


戦艦水鬼「…………フッ」ニヤッ…

戦艦水鬼「……勝ッタ」


──遅い!全然遅い!──


戦艦水鬼「……ッ!」バッ


ジャキッ


戦艦水鬼「……ククッ、艦娘、風情ガ……見事ダ」


ドン ドンッ

ボゴオオオオオォォォォォォォン


戦艦水鬼「軽巡、洋艦……長良……ソノ名、忘れヌ。光……溢レル……水面に……私モ……」 大破


ガシッ


戦艦水鬼「…!?」

長良「……待ってる。リベンジ…だから、この手は、ここで離すよ」 大破


パッ…


戦艦水鬼「そう……ダナ……さらばだ。貴様は生きろ、長良……」 轟沈

長良「…バイバイ、戦艦水鬼。でも、正直……もっと鍛えておけば……悔しいっ…!」バシャァァァン


沈み逝く戦艦水鬼の手を取り、最期の別れを告げて手を離すと同時に、長良もその場に仰向けに倒れ込む。

盛大な水飛沫を上げてそのまま海を揺蕩うように力なく浮き続ける。

空を見上げ、満天の星空が顔を覗かせているのに気付き、夜なのだと悟り、何故か笑みが零れる。


長良「ゴメン、皆……ちょっと、一休み、してくね……」

長良「…………」

??「無茶ばかりして…よい、しょ…!はぁ、満足そうな顔だなぁ…よし、それじゃ行きますか!」

本日はここまで
続き書け次第、うpできる時に随時発信していきます
執筆に時間が掛かる場合は時間が空いてしまう場合もありますが
その点はご容赦下さい

おつ

乙です

乙です。戦艦水鬼も熱い奴だなー元は誇り高い武人タイプだったんだろなー。

乙!
バトルモノによくある「「勝ちたい」という思いが蘇る」的な展開に燃えました!

…ただ、>>595で「水でもやがて岩に穴を空ける」という意味合いの諺を引用するのなら、「石の上にも三年」より「点滴岩を穿つ」の方が適切だと思います

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします


>>604
>>595は言い回しに迷ったんですが、
「石の上にも三年」とは長良のこれまでの歴史を差したもので、
粘り強い姿勢、諦めない姿勢、耐えて忍んで光明を見つける執念を表現したものです
その後の「水でもやがて岩に穴を空ける」は現時点での戦闘における描写の一つ、なんですね
ただ只管に一箇所目掛けて愚直に攻め続ける姿勢を表現したつもりです

-やり残した事-

山城?「なんで?そういう言い回しは、墓穴を掘るだけって飼い主に習わなかったの?」

レ級FS「何ぃ…!」

山城?「最も、解っていて聞き返しただけだから、別にどうって事ないけど。はぁ、やっぱり不幸だわ。
殺されかけて、植物状態になって、やっと目が覚めたと思ったら枕元には不幸の手紙…見てはダメと分かっていたのに、
誘惑に負けて開封して、やっぱり後悔して、見て見ぬ振りも出来たのに……はぁ、不幸だわ」


言葉の端々に『不幸』の一言とため息を織り交ぜ、ブツブツと独り言のように呟き続ける山城。

もとより、彼女は本当に山城なのか。

今、榛名と戦闘を行っている山城は何なのか。

それらを払拭するように彼女の緋色の瞳が真っ直ぐにレ級FSを見据える。


レ級FS「くっ…」

山城?「ご丁寧に私の影分身を拵えて、提督を狼狽させたんですって?うろたえる提督を見るのはそれはそれで
面白そうではあるけど、少し前までだと扶桑姉さまが直に怒ってしまうから噴出す事も躊躇ってしまうのよね。
でも、今度ばかりは流石の私も腹に据えかねているの。提督の肩を持つわけじゃないのよ?
それを差し引いても、あなた達は到底許せないわね」

漣「唖然、騒然、ですけど…ダレ?」

満潮「山城とか、言ってなかった…?」

山城?「無事で何よりね。死期が少し延びて、不幸だったかしら?」

満潮「な、なんですって…!」

漣「み、みっちゃん…!落ち着くです!」

山城「私なんて数年間病院で管に繋がれて延命処置されて…死んだとばかり思っていたのに目が覚めたらベットの上。
病院だと理解してため息一つ、生きていたという現実に直面してため息二つ、おまけに不幸の手紙もあってため息三つ。
はぁ……もう、ほんっと不幸だわ。どうして扶桑姉さまと一緒に居られないのかしら。どうして一緒じゃないのかしら」

レ級FS「だったら、今度は望み通りにあの世に送って上げるよ…山城ッ!」

山城「断るわ。だって、提督と扶桑姉さまにお願いされてるんだもの。もしも、気持ちがあの当時のままならば、
一度で構わないから戦場に立ってほしいって。扶桑姉さまの無念をそこで晴らしてほしいって。
私が不幸なのは別にいいのよ。でも、扶桑姉さまが不幸なままなのは……我慢ならないわ。せめて、元凶たる存在…
あなたくらいは血祭りに上げたいところよね?」

レ級FS「ボクを血祭りに上げるって?ククッ…生き遅れの戦艦風情に何が出来るってのさ」

満潮「勝手に、視界から外してんじゃないわよ」

漣「ぶっ飛ばす、です!」


レ級FS「どこまでボクをコケにすれば気が済むのさ……どこまでボクを愚弄する気だ……どこまで、お前等はバカなんだ!?
実力の差も解らないほど愚かで、無知で、無様な存在をボクは見たことがないよ」

山城「所詮、影と中身の伴わない取るに足らない艦娘もどき……本物の艦娘を、あなた相手にしてこなかったの?」

レ級FS「はぁ?ボクが何でボクより劣ってるお前等の相手をマジメにしなきゃならないのさ。馬鹿馬鹿しい」

満潮「だったら教えて上げるわよ。何度だって蘇ってきなさいよ。その度に同じ…いいえ、それ以上の屈辱と苦痛を与えて、
深海に沈め直してやるっ!」

レ級FS「駆逐艦風情が…このボクを沈める?笑わせるなッ!」

山城「そこの二人の駆逐艦。確か、漣、満潮、だったかしら?」

満潮「何よ」

漣「む?」

山城「あなた達の提督は恐らく本丸…エリート提督が監視を勤める中部海域に居ると思うわ。
この子達をあなた達に託す。その程度の怪我なら何とかなるでしょうし……」

満潮「……応急修理要員の妖精達?」

漣「そ、それで、どうするです?」

山城「元々、捨てるはずだった命なの。でも、当時はよく、あなた達の提督に命を粗末にするなと説教されていたわ。
はぁ……怪我をすれば即入渠。扶桑姉さまが直に密告するから怪我を隠していてもバレて即撤退・入渠、かーらーのー……
説教……はぁ、ホント不幸だわ。怪我した上に説教されて、部屋に戻ったら扶桑姉さまにまた説教されて、ホント不幸だわ。
あ、いいえ…扶桑姉さまと二人一緒で居られたあの時間は至福だったかしら…思わずにやけてしまって説教の時間が延びたけど…」

漣「不幸自慢がハンパないです…」

満潮「私達に、この場で背を向けて逃げろっていうわけ?」

山城「やり残した事があるの。それを、やり遂げない事には死んでも死に切れない。けどそれにあなた達を巻き込む訳にはいかないもの。
あなた達は、ここで死ぬべきではないと思うし……はぁ、人身御供って言うのも、不幸だわ…」

満潮「何言ってんのよ。既に巻き込まれてるってのよ。あのアホ面オヤジの下についた瞬間から、巻き込まれてるのよ」

漣「ですねー。ご主人様って、そういう星の下に生まれたんじゃないかってレベルで、災難降り注ぎますからねぇ」

山城「…はぁ、嫌な予感しかしないけど、それでもいいかしら?」

満潮「何より、やられっぱなしじゃ私達の気が済まない!」

漣「です!」

レ級FS「井戸端会議は終わったかい?じゃあ殺すけど、誰が最初が良いかだけ決めさせてあげるよ。手を上げなよ。
そいつから真っ先に首を刎ね飛ばして殺して上げるからさぁ!」


山城「ですって?」クスッ…

漣「みっちゃん?」ニコッ…

満潮「何してんのよ。さっさと手を上げたら?」ニッ…

レ級FS「何…?」

満潮「最初に死ぬのはあんただって言ってんのよ。煽り耐性ゼロの癖に偉っそうに挑発とかしてんじゃないわよ。
バッカじゃないの?そういうところが……ウザイのよッ!!」


ザバアァァァァン

ザバアァァァァン

ザバアァァァァン

ザバアァァァァン


漣「な、なっ…!?」

山城「…っ!まさか、援軍…!?」

レ級FS「…ッ!」


レ級FSと満潮達を隔てるようにその間に大きな水飛沫が立ち、そこに四体の深海棲艦が出現する。


タ級FS「マスターガ、オヨビデス」

ル級改FS「イチド、ヒイテクダサイ」

リ級改FS「アトハ、ワレワレガ…」

ネ級EL「シトメマス」

レ級FS「…っ!ふざけるな!こいつ等はボクの獲物だぞ!!」

タ級FS「マスターノメイレイニ、サカラウト?」

ル級改FS「アマリオススメデキナイ、ホウホウデスネ」クスッ…

レ級FS「お前等…」ギリッ…

リ級改FS「ワレワレニホコヲムケナイデクダサイ。イイブンガアルノナラ、ソレハマスターヘ」

ネ級EL「ワタシタチハ、マスターノメイデココニイマス」

レ級FS「……フッ、命拾いしたね、艦娘……けど、お前等は必ずボクが殺す。そう、ボクのこの手で…ッ!
だからこの四匹を見事引き裂いてみせろ」

タ級FS「ナッ…!」

レ級FS「この程度の深海棲艦に負けるのなら、ボクが本気を出した意味がない。失望させないでくれよ?」クルッ…


レ級FSはそれだけ口にするとペロリと口の周りを一舐めして踵を返し、その場を後にした。



山城「…あっさり引き下がる辺り、訳有りかしら?でも、面倒そうなのが四匹……はぁ、不幸だわ」

満潮「そこ、退きなさいよ。不出来な深海棲艦!」

ル級改FS「クチノキキカタヲシラナイカンムスネ」

ネ級EL「カンムスフゼイガ…」

リ級改FS「ソレモタカガクチクカン…ナメラレタモノネ」

タ級FS「ナンデモカマワナイ。ガ……カノジョノハツゲンニハ、ヒッカカルブブンモオオイ。ワレラヲヒキサク?
ジョウダンデモ、ワラエナイジョウダンダ」

漣「じゃ、試してみるです?」

リ級改FS「タメス?ナニヲタメスキダ?」

ネ級EL「キサマラガニクヘンニナルコトシカ、タメシヨウハナイゾ!」

山城「見縊られたものね」

満潮「あんた、戦えるんでしょうね」

山城「あら、これでも少し前は一線を駆けていたのよ。白夜の艦隊、その第一艦隊に所属していた主力級よ」

漣「え、それって鳥海と一緒?」

山城「あの子もしぶとく生きてるのね。まぁ、それはどうでもいいわ」

漣「どーでもいいって…」ニガワライ

山城「レ級FSの追撃に移るわ。この場は…瞬殺します」ギュッ…

漣「おぉ、鉢巻カックイー」

満潮「当然よ。ここまで馬鹿にされて、死の淵に立たされて…生かされて…黙ってられるかってのよ!」

ネ級EL「シュンサツダト…ジョウダンモ、ヤスミヤスミ……」



ドォン ドォン

ボゴオオオォォォォォォン


ネ級EL「ナ……ニ……?」 轟沈

山城「…まず、一匹」ジャキッ

満潮「……っ!」

漣「す、ご…」

リ級改FS「バ、バカナ…!」

ル級改FS「ネキュウELヲ、タッタイチゲキ…?ア、アリエン…!」

タ級FS「キサマ、イッタイ…!」

山城「自己紹介、まだだったかしら?元・白夜の艦隊第一部隊主力、扶桑型戦艦二番艦の山城…」

満潮「」(こいつ、本当に強い。誰よ、こいつを欠陥戦艦なんて言った奴…目玉、何処につけてんのよ)

山城「残りも、綺麗に消すわよ」

満潮「」(いける、レ級FSにこれなら、追いつける!)

漣「みっちゃん!」

満潮「漣、あんたは一先ず修理要員の妖精に患部の手当てしてもらいなさい。治療が済み次第、戦線に合流。いいわね?」

漣「……ヤダって言うとご主人様ばりにキレますもんねー。了解ですよぅ」

満潮「アホ面オヤジと一緒にすんなっての!山城、一点突破よ」

山城「はぁ……後輩に『さん』付けもしてもらえないなんて……不幸だわ」

満潮「ぐっ……わ、悪かったわね。や・ま・し・ろ・さ・ん!」ピキッ…

山城「別に良いわよ。それがあなたのスタンスなんでしょう?」クスッ…

満潮「」(んも~~!やり辛い!)

タ級FS「アノセンカンハ、ワタシガオサエル」

ル級改FS「ワタシトアナタデ、アノクチクカンヲカクジツニホウムル」

リ級改FS「リョウカイ…!」

山城「くるわよ…!そっち、複数だけどどうかしら?」

満潮「上等…!目に物、見せてやるわ!」

山城「……!」

満潮「な、何よ…」

山城「…いいえ、何でも。ふふ、そうね……目に物、見せてあげましょう」クスッ…

満潮「何笑ってんのよ…」

山城「一念天に通ず……やってやれない事はない。一途に、ただ真っ直ぐに、自分の秘めた信念を貫き通す……
そうよね……扶桑姉さまも、そうだった。その信念を、あなたもまだ持っているのね、提督…柄じゃないんだけど、
こういうのは嫌いじゃないかも、ね」

短いですが本日はここまで

乙!
だとしたら敵側の山城は何者なんだ?

>>605
意図は分かりましたが、やっぱり台詞不足なような…
あと、「生き遅れの」ではなく「死に損ないの」の方が適切です(そもそも「生き遅れ」などという単語は存在しません)

乙です

皆様こんにちは
本日も宜しくお願いします




~結束~



-負の終焉-

キメラ男「戦艦級から排除しろ!それ以外の連中は深海棲艦に任せればいい!」

ル級改艦娘「心得ました。タ級、我等でフェアルストを制圧します」

タ級艦娘「了解」

ル級改艦娘「同じようにネ級とト級で金剛型の二番艦、リ級とツ級で三番艦を制圧」

四人「「了解」」

フェアルスト「こいつ等…」

比叡「私達に照準絞った!?」

霧島「不愉快ですね」

衣笠「私達はシカトって訳か」

木曾「舐め腐りやがって…!」

北上「だったらさぁ、みせてやればいいっしょ。うち等を無視すると、もれなくどうなるかってね」

木曾「へへっ、そりゃいいな。だったらまずは暴れやすいように周辺綺麗に掃除といくか!」

衣笠「オッケー。じゃ、お二人さん!挨拶代わりに一発景気の良いのお願いね!」

木曾「っしゃあ!いくぜ!」ジャキッ

北上「四十門の酸素魚雷は伊達じゃないからねっと!」ジャキッ

ル級改艦娘「ちっ、先制雷撃か。深海棲艦を盾にして被害を最小限に留める。雷巡共の雷撃が終わり次第、
我々は先の概要に沿って行動を開始する。目標は戦艦艦娘三名の制圧とその捕縛だ」

タ級艦娘「ふん、雷巡如きの雷撃、恐れるほどのものか」

木曾「だったら…」

北上「受け取りなよ!」


バシュッ バシュッ バシュッ バシュンッ


ル級改艦娘「タ級艦娘!『それ』はヤバイ…避けろッ!!」

北上「」ニヤッ

木曾「」ニヤッ


ボゴオオオオオォォォォォォォン


タ級艦娘「くっ……!貴様等…ッ!」 小破

木曾「テメェの相手はフェアルストだ。精々『遊んで』もらえよ。言っておくがな、伊達や酔狂でそいつ等は艦娘になってねぇぞ」

北上「狙われたら最後…そう思っておいた方がいいかもね~」


衣笠「お二人さん、お先っ!」バッ

木曾「あっ、待ちやがれ衣笠!」バッ

北上「じゃっ、お三方の心配とかしないから適当に頑張っちゃって下さいな」バッ

フェアルスト「全く、言いたい放題言ってくれるな」

比叡「あははは」

霧島「それだけ信頼されていると割り切るべきかしら」

比叡「よしっ!霧島、私達もいくよ!」

霧島「はい!」

フェアルスト「杞憂だとは思うが…別に問題はないわね?」

比叡「勿論!」バッ

霧島「お任せを!」バッ

フェアルスト「わざわざ向こうからのご指名だしね、存分に暴れればいい……さて、私の相手をするんだったな?」ザッ

ル級改艦娘「随分と余裕ね」

タ級艦娘「あの程度の雷撃で痛むとでも思ったか!」

フェアルスト「避け損ねたくせに…」クスッ

タ級艦娘「き、さま……ッ!」

ル級改艦娘「挑発よ。乗る必要は無い」

フェアルスト「まさかとは思うけど、彼女達や私をあなた達二人だけで、何とかできるなんて思ってないわよね?
良くて足止めって所かしら?」

ル級改艦娘「何を言っている。ここで再起不能にした上で捕縛するに決まっている」

フェアルスト「正気の沙汰とは思えない発言ね。それとも、私達は見縊られすぎているのかしら?
だとするのなら、教えて上げる必要があるわね。実力の差、というものを」

タ級艦娘「戯言を…!」

フェアルスト「きなさい。分不相応な自信が招く最悪の結末というものがどんなものか。初体験で終わりにして上げるわ。
戯言かどうか、それを証明してあげる。あなた達は、この海域に沈みなさい!」

比叡「さぁ、掛かってきなさい!」

ネ級艦娘「ふん、威勢だけは良いみたいね。けど、重巡クラスだからって侮ってもらっては困るのよ」

ト級艦娘「そうね。軽巡クラスでも、戦艦クラスを出し抜く術くらいは心得ています」

比叡「そんな事、言われなくても身内で経験済みですっ!油断も!隙も!与えません!」ジャキッ

ネ級艦娘「こいつ…!」

ト級艦娘「な、はやっ…!」

比叡「姉さま譲りのこの艤装、たっぷりと味わってもらいます!」


ドォン ドォン


ネ級艦娘「くっ…!」サッ

ト級艦娘「おのれ…!」サッ


ボゴオオオオォォォォォォン


比叡「金剛型二番艦、高速戦艦比叡…いざ、参ります!」ザッ

ネ級艦娘「立て直せ、ト級艦娘!」 小破

ト級艦娘「言われなくたって…!」 小破


素早い構えから先制打撃を与え、比叡が一気に前に出る。

そして呆気無い程に勝負は一瞬で着く。

比叡自身も想定していたわけではない。

ある程度の苦戦は強いられるだろうという目測の元に、出だしから全力で捻じ伏せるという作戦に準じて動いたまでだ。

そう、力の差とはこの場合、双方の圧倒的なまでの経験の差から来る力量だったのだ。

結果、比叡の起こした行動によってネ級艦娘とト級艦娘は瞬殺された。

厳密には、比叡はたったの一撃で両者を再起不能にまで追い込んでしまった。


ボゴオオオオオォォォォォォォン


ネ級艦娘「がっ……!」 大破

ト級艦娘「うぐっ……!」 大破

比叡「とっと、ひえぇ~…あれれ、お、終わり?」


体勢を整える前に一気に二人の懐へ入り込み、左右に展開させた二基の主砲を同時に発射。

一度のアクションで双方を一瞬で無力化させてしまったのだ。

自分のやった事とは言え、余りの拍子抜けっぷりに比叡自身も目が点の状態になり、思わず呆けて頭を掻く。


比叡「えー…結構気合、入れてただけに、これは……」ポリポリ…


同じ事が霧島にも言えた。

程なくして二人のハイブリット艦娘を両手に引っ提げながら、霧島が比叡に近付いてくる。


リ級艦娘「…………」 大破

ツ級艦娘「…………」 大破

霧島「あ、あの、お姉さま…なんていうか、弱すぎました」

比叡「あ、あははは…これは、ちょっとねぇ…」



決して弱かったわけではないだろう。

力量差が、互いの経験値の差が歴然としすぎていたのだ。

彼女達が自身を分析する以上に、実力も錬度も、何もかもがハイブリット艦娘を遥かに凌駕していた。

その結果がこの圧倒的な力の差として現れてしまったのだ。

言わずもがな、フェアルストもこれでは苦戦などするはずもない。


フェアルスト「……お前達、弱すぎるぞ」


率直な感想だった。

彼女も秘めた思いがあっただけに、別の意味で挫かれそうになるほどに相手にならない力量差がそこにはあった。

火力だけは上等なものを秘めてはいたが、ただそれだけだった。

戦術眼、戦略面、立ち回り、動き出し、全てが稚拙で錬度の欠片も見られない。

高次元の戦闘を幾重にも経験してきたからこそ解る、相手の完成度の低さがそこには存在した。


ル級改艦娘「そん、な……」 大破

タ級艦娘「うそ、だ……」 大破

フェアルスト「はぁ、口ほどにも無いとはこの事か。ガッカリさせてくれたな…ハイブリットが聞いて呆れる」

不動「こりゃあ、なんつーか…」

新月「……哀れ、ですね」

キメラ男「何故だ…どうして、なんでそんな簡単に負ける!おいッ!人形共!自爆するくらいはしろよ!!」

不動「ピーピー五月蝿ぇなぁ……生まれたての雛でもそこまで喚かねぇよ、バァカ」

新月「キメラ男、お前の艦隊もこれで終わりだ。今一度、縛についてもらいます!」

キメラ男「ふざけるな!私は、私には…まだ!やらねばならない事が山ほどあるんだ!!」グワッ…

不動「ちっ、こいつやっぱてめぇ自身も変えてやがったか…!」

木曾「っるせーんだよ、変態野郎」スタッ

キメラ男「……ッ!」

不動「木曾、おま……」

木曾「散々仲間姉妹を弄びやがって…」チャキッ…

キメラ男「く、くるな…!」ビュオッ


ザンッ


キメラ男「がっ…!」

木曾「今のは、今までてめぇに弄られた艦娘の分」ビュッ


ザンッ


キメラ男「あがっ……!」

木曾「今のは、薄汚ぇてめぇの施設で、俺の身内を愚弄した分!」


ザンッ


キメラ男「あひゅ……」

木曾「今のは、今は亡き不動艦隊、鋼鉄艦隊の面々が味わった辛酸の分!」

不動「お前……」


ザンッ


キメラ男「も……やめっ……」

木曾「ざけんなボケッ!そう言って懇願した艦娘にてめぇは何をした!寝言言ってんじゃねぇぞ!」

新月「木曾、それ以上は…!」

木曾「今のは、新月大将の苦労を馬鹿にした分だ!」

新月「木曾……」


木曾「いいか、この腐れゴミ屑野郎……俺達は、俺達はなぁ…てめぇの呈のいい道具でも、玩具でもなんでもねぇッ!
そんな俺等にも越えちゃならない一線ってのはある。けどなぁ、てめぇだけは許せねぇ…絶対にだ!」チャキッ

キメラ男「ひっ……」

北上「はいストーップ」パシッ

木曾「…!止めんな、北上!」

北上「皆一緒だからさ、そんくらいにしなよ。あんた一人が全部やっちゃったら、他の連中の憂さが晴れないっしょ」ニコッ

木曾「北上……」

不動「悪ぃな、北上」

北上「私も一回、似たような時あったからねぇ…あれは、うん…まぁ、迷惑、だったよねぇ…」

不動「ありゃあ俺の失言だった。お前に非はねぇよ。怒って当然だぁな」ポリポリ…

木曾「ちっ…はぁ、分かったよ」スッ…

衣笠「こらぁー!さぼるなー!っと…まだ深海棲艦居るんだから!衣笠さんのお肌荒れたら二人のせいよ!」

木曾「へへっ、しょうがねぇな」キンッ

衣笠「しょーがないって何さ!うわっと…!あぶな…!っとー!」サッ ササッ

北上「おぉ~、避けるねぇ…」パチパチ

衣笠「拍手とかいいから!」

不動「やれやれ、なんだかなぁ。ほら、後は俺がやっとくから、てめぇ等はもう一暴れしてきやがれ」

木曾「あぁ、いってくる」

北上「私、疲れたから木曾っちの後ろに隠れててもいい?」

木曾「あ゛?」ギロッ

北上「うっ…じ、冗談だって…」


ザザザ…


不動「…全く、進撃の野郎んとこの艦娘はホント、天使にも悪魔にもなるってなぁガチだな」

新月「な、なんですか、それ…」

不動「あーいうこったよ」クイッ…

キメラ男「うっ……あ、が……」

不動「さて、と…見事にズタズタにされちまったなぁ、キメラ男くん。ま、これも因果だと思えや。
てめぇで蒔いた種だ。こういう結末だって別に驚きゃしねぇわな」


圧倒的な戦力の差を見せつけ、文字通り足許にも及ばない強さで隷属の艦隊を捻じ伏せたフェアルスト達。

キメラ男の捕縛にも成功し、忌避の艦隊に続きここに二つ目の敵艦隊の撃破が成された。

本日はここまで

乙です

乙!
キメラ男がどこをどう斬られたのか気になるけど、結構スカッとしました!

>>615
三番艦は榛名ですよ?

>>623
>キメラ男がどこをどう斬られたのか
もう少し細かい表現を使っても良かったかもしれませんね

>三番艦
失策です
榛名が大好きとか暫く言ったらダメなような気がしてきました
恐ろしいくらい稚拙なミスです
ご指摘ありがとうございます

乙です。
キメラ男には地獄すら生ぬるいってかの名言を贈りますわ。

乙です

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-存在意義-

山城CL「こいつ…っ!」


ザザザッ


榛名「いい加減、諦めたらどうなんですか!」ジャキッ

山城CL「うるさいっ!私は……なっ!」


何かを言おうとし、その言葉を飲み込んで彼女は大きく目を見開いて遠くを見据える。

その視線の先に見える六つの影。

それを視認して奥歯を強く食い縛り、榛名とその後方を交互に目線で追った。


大和「全く、大人しくできないお年頃か何かでしょうか、榛名さん?」

榛名「大和さん!?あー……あはは、えっと……」ニガワライ

大和「懲りもせず、新鋭の技術を転用してこのような艦娘と言う器を利用した兵器を使っているとは…」

榛名「えっ!?」

大和「貴女も記憶に新しいでしょう。妹の武蔵をはじめとし、幾人かの艦娘のクローンが過去に存在しました。
そして今また、同じ過ちが繰り返されている。何度…何度、彼女達の誇りを穢せば気が済むのか…!」

榛名「大和さん…」

大和「山城は…そこにいる山城は偽者です。彼女は、あなた達が以前に合間見えたクローンと呼ばれる存在です」

榛名「…!」

山城CL「だったら何よ。勝者が全てよ!ふふっ、もう、誰にも、欠陥戦艦なんて言わせないッ!!」

大和「どこまでも、愚か…どこまでも、嘆かわしい。せめてもの情け…彼女を雷撃処分にします」

榛名「だとしても、悲しいですね」

大和「だからこそ、その悲しみをこれ以上増やすわけには参りません」

榛名「はい!」

大和「開闢の艦隊旗艦大和、これより戦列に加わります。目標は前面海域に布陣する煉獄の艦隊とそれに随艦する深海棲艦。
榛名さん、細かい事は後です。今は、貴女の戦果を期待します」

榛名「お任せ下さい!」



ピーコック「あら?」

天城「ここからは、私が…この、天城が参ります!」

葛城「まだ、増えるの?いい加減、鬱陶しいわね」

ピーコック「貴女、確か…」

天城「彼女は、私達雲龍型の末っ子…長女の雲龍姉様、次女の私、三女の妹…雲龍型三番艦、葛城……葛城、私や姉様を覚えてない?」

葛城「知ってるわ。どっちも、抹殺の対象よ!」チャキッ

ピーコック「一つ、忠告して上げるわ。彼女のあの目を覚まさせるには、相応の代償が必要よ」

天城「……葛城っ!」

葛城「…………」

ピーコック「言葉は届かない。届くのは、その手だけよ。Dead or Alive……皮肉ね、ここまできて決死の覚悟を抱かなければならない」

天城「これ以上、仁を尽くさぬ、尽くせぬ、あまつさえ理に反した不仁の限りを尽くすというのなら、この天城が粛清します!」ヒュンッ

ピーコック「」(次女はこれ、棒?杖?弓…じゃないのね。まぁ、どうでもいいけど…それはそうと…)チラッ…

葛城「天城姉ぇ……死んでよ。私の目の前から、消えてッ!!」ザッ

ピーコック「」(人物を認識してるのに口から出る言葉と剥き出しの感情は劣の極み、か……そう、まるで……)

天城「深海棲艦…」ボソッ…

ピーコック「あなた…」

天城「……どれほど経過しているのか解りません。あれは、艦娘と深海棲艦のハイブリット型の兆候です。
早期であれば、まだ望みはあります。ですが、後期、末期の症状が出始めているのなら…」

ピーコック「…無理なのね?」

天城「……はい」

ピーコック「けど、まだそうと決まったわけではない。なのに、自分から修羅の道を行くわけ?」

天城「それが、せめてものあの子に対する慰めと弔いになるのなら、そうします」

ピーコック「……私達がそうだったように、艦娘の信念とやらに最後は縋ってみなさいよ」

天城「…………」

ピーコック「艦娘は、そこまで弱くは無い。私がそれを知っているわ。最後の最後まで諦めない…みっともなくても、
それが例え結果として報われなくても、賭すべき時に命を賭さなくて何処で賭すと言うの?」

天城「……そう、ですね。はい、そうですよね。私があの子を信じなきゃダメ。だからこそ、あの子は私が救い出す!」

ピーコック「周りの雑魚は私が掃除して上げるわ。思う存分、じゃじゃ馬の相手しなさい」ザッ

天城「恩に切ります」ザッ




ボゴオオオォォォォォォン


神通「くっ…!」 小破

川内「この…!」 小破

羽黒「この、火力は…!」 小破

武蔵CL「言ったはずだ。まだだ、とな」ジャキッ


ボボボボボボボボボボンッ


武蔵CL「ちっ!援軍か!」バッ

川内「あれ、確か大本営の…!」

神通「着て下さったみたいですね」

羽黒「妙高姉さん、それに足柄姉さん!?」

妙高「…………」

足柄「羽黒、お痛が過ぎるんじゃないかしら?」

羽黒「え、えぇ…!?」

武蔵CL「妙高姉妹か。次から次へと鬱陶しい連中だな。重巡や軽巡がどれだけ束になろうと、この武蔵は落とせはせんぞ!」

妙高「同じ理屈です。貴女がどれだけ強かろうと、彼女達をはじめ、私達を沈める事は適いません」

武蔵CL「何だと…?」

妙高「私達は海軍の誇る最後の盾。この牙城、崩せるものなら崩して御覧なさい」

武蔵CL「ならばその悉くを破壊し尽くしてやる。破片の一片すら、余さず粒子になるまでな!防げるものなら防いでみせろ!」

足柄「羽黒、まずはこのクローンを蹴散らすわ」

羽黒「ク、クローンって…」

川内「それって、まさか…!」

足柄「そっ…あなた達も記憶に新しいでしょう?色が褪せるにはまだ少し時間が経ってないんだもの…」

武蔵CL「消し飛べッ!」


ドォン ドォン

ドン ドンッ


ボボボボボボボボボボボボボボボボン


武蔵CL「なっ」

妙高「言ったはずです。この牙城、崩せるものなら崩してみせよと。この妙高型一番艦重巡洋艦妙高が立つ限り、
ここより先にあなたの砲撃は破片の一片すら通らせはしません。私が、イージスの名を冠する限り、決して!」



雲龍「次から次へと、ホント数だけは無尽蔵ね。深海棲艦って連中は…」

三隈「安請け合いし過ぎてしまいましたわね。私達だけでこの数、捌ききれますでしょうか?」

雲龍「ふふっ、今更じゃないかしら、それ。それに、天城が頑張ってるのに私がのほほんとはしてられないわ。
この程度の苦難、二つや三つは乗り越えないと顔向けの一つもできないでしょう」

三隈「背負うものがあると、言う事もまた厚みが出来ますわね」


ボゴオオオォォォォォォォン


三隈「っ!」

雲龍「なっ、まさか相手の援軍…!?」

ビスマルク「冗談、一緒にされるのはゴメンだわ」

雲龍「ビスマルク!」

プリンツ「ビスマルク姉さま、後続の追撃はなしです!」

イタリア「あらら~、また深海棲艦?」

ローマ「右を見ても深海棲艦、左を見ても深海棲艦…はぁ、ウンザリしそう」

レーベ「ふふ、ローマ、表情がひどいよ」

ローマ「んなっ!」

マックス「あと少し、踏ん張り所だと思うわ」

ローマ「はぁ、駆逐艦ズは元気ね」

雲龍「淵源の艦隊もようやっとお出ましって事ね」

ビスマルク「全く、大和ったら自分の艦隊が揃ったらソソクサといっちゃうんだもの」

雲龍「取り敢えず、あのエリート艦隊は進撃の艦隊と大和達できっと封殺できる。私達は周囲の憂いを消し去る事が先決よ」

三隈「終わりは近いはずです。気を緩めずにいきますわよ」

ビスマルク「ええ、そうね」

イタリア「ビスマルクさん、わらわらと凄いけど、どうする?」

ローマ「掃射よ!掃射!見晴らしよくしてやるわ!」

ビスマルク「そうね、大盤振る舞いしてあげようじゃない。残りありったけ、余さず撃ち込むわよ!」

プリンツ「はい、ビスマルク姉さま!」

イタリア「ねぇ、ローマ」

ローマ「何、姉さん」


イタリア「ローマもたまには、プリンツちゃんみたいに『はい、イタリア姉さま!』とか言ってみ……」

ローマ「言 い ま せ ん !」

イタリア「……拒否、早すぎないかしら?っていうか強調しすぎてないかしら?」

ローマ「艤装で殴りますよ、姉さん」メガネ クイッ

イタリア「はぁ、妹が怖い…」

那智「全く、やる気があるのか無いのか…」

ローマ「ありまくりです!」

阿賀野「あははっ」

ローマ「姉さんがもう少ししっかりとしてくれればいいだけです!」

イタリア「まぁ…!聞きました、阿賀野さん?ひどい妹だと思わない?」

阿賀野「お姉ちゃんはもっと立てて上げないとダメだよぉ」ニヘラァ

ローマ「」(このダメ姉ーズ…!)ピキッ

那智「…もういい、勝手にやっていろ。私は先んじて深海棲艦の殲滅に入る。お前等を見ていると進撃の連中とダブって不愉快だ」

阿賀野「あーっ!なっちちゃん、直にそうやって阿賀野の事バカにする~!」

那智「なっちじゃない、那智だ!ちっちゃい『つ』を入れるな!」

阿賀野「あはは、ちっちゃいって言い方可愛いねぇ♪」

那智「」(泣いて謝るまで平手打ちを打ち込みたい)ピキッ

ローマ「毒されてるわね…」ボソッ

イタリア「んん?」

ローマ「いいえ、何でもありません。さぁ、ビスマルク達に遅れを取るわけにはいきません。いきましょう!」

レーベ「マックス、僕達も急ごうか」

マックス「ええ、そうね。周りに居る深海棲艦はまだ多いし、これを放っておいていい道理なんてないわ」

本日はここまで

乙です

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-再会-

加賀「…………」


ザザァァァァ……


加賀「…………」チリッ…

加賀「…………」クルッ…

鳥海「流石ですね、一番乗り」

加賀「無事で何よりです」

鳥海「まぁ、ご覧の通り結構痛んではいますけどね。他の皆はまだですか」

加賀「無事だと、私は信じてますから」

鳥海「ふふっ、それもそうですね」

加賀「……これは」チリッ…

??「あっ、居た!」

鳥海「あなたは、鬼怒さん!?」

鬼怒「そーっれ!」ポイッ


バシャァァァァン


長良「わぷっ…!はばばば、しょっぱ!塩、辛っ!」

鬼怒「長良お姉ちゃん?」

長良「はへ?えっ、鬼怒!?えっ、どうして?あっつ…いたた…あ、あれ?私、確か……」

鬼怒「あんな状態で海原で寝てたら沈んじゃうよ。応急修理要員連れてきて正解だったよ」

加賀「随分と激戦だったみたいね」

長良「あっ、加賀さん…と、鳥海!」

鳥海「ついでみたいな言い方はどうなんですか!」

長良「えへへ、ごめんごめん」

加賀「動けるくらいには回復しているのかしら」

鬼怒「応急修理要員に治させてましたから、少しはって所かと…」

長良「あはは、ごめんね。結構梃子摺っちゃって…」

鳥海「でも、こうして居るんだもの。それが答えでしょう?」

長良「うん!あっ、でもどうして鬼怒がここに?」


鬼怒「これ…!」ピラッ…

長良「手紙…?」

鳥海「これ…」

加賀「どうかしましたか?」

鳥海「いえ、この手紙の字…」

加賀「……汚いですね」

鳥海「いや、そこじゃなくて!」

加賀「冗談です。これを書いたのは恐らく提督でしょうね」

鬼怒「えっと、長良お姉ちゃんの所の、提督?」

加賀「ええ、そうです」

鳥海「ホント、どこまで見通しているのやら…」

長良「後は満潮達だけか…大丈夫かな?」

加賀「問題ないでしょう」

鳥海「ひょっこり現れるんじゃないでしょうか」

漣「呼ばれて飛び出……はぶっ」バシッ

満潮「うるっさいのよ!」

山城「あら、騒がしいわねぇ」

鳥海「えっ……」

加賀「あなたは…!」チャキッ

満潮「あーっ!加賀、たんま!ちょっとあんたも弁解くらいしなさいよ!」

山城「はぁ、事情無視で矢を突きつけられる……不幸だわ」

満潮「弁解する気ないでしょ、あんた…」

加賀「これは、どういう事ですか、満潮」

鳥海「いえ、その前に…山城、あなた…本当に、あなたなの!?」

山城「ええ、不幸にも目覚めてしまったのよ。あのまま眠り続けていられれば、夢の中で扶桑姉さまと永遠に一緒で居られたのに…」

鳥海「あ、相変わらずですね…」

加賀「…………」

山城「あなたが私を見た、と言うのは恐らくエリート提督の下に居た私よね」

加賀「相違ありません」

山城「知ってるかどうかはこの際省かせてもらうけど、過去に新鋭と言う女性の提督が起こした大規模な叛乱事件、覚えてるかしら?」

加賀「知っています」

山城「その渦中に居て、餌食となったのが私達元・白夜の艦隊よ」

鳥海「……」

山城「そして、エリート提督は死んだと思っていた私のクローンを作成し、自分の傍に置く事で提督の心理を揺さぶろうとした」

加賀「では、あの時居たあなたは…」

山城「本当の私ではなく、クローンの私でしょうね」

鳥海「幻の六人目…」

山城「え?」

鳥海「この鎮守府に着任するに当たって、提督は以前私にこんな話をしたんです────」



提督「折角のチャンスを自分から捨てるとは、大した玉だな、お前」

鳥海「司令官さんが変わったように、私だって心境の変化はあるという事ではないでしょうか」

提督「違いない。未だに山城は昏睡から目覚めない。もしもだ…もしも、あいつが目覚めて敵として立ちはだかっても…」

鳥海「最善は尽くします」

提督「はぁ……そんで、てめぇは本当にあの鎮守府に行くつもりか」

鳥海「私の力を最大限に発揮するには、規律を重んじる大本営では無理です」

提督「言い切りやがって…まぁ、俺様もご覧の通り不手際働いて降格処分&左遷のダブルコンボだ。
が、てめぇが居るのなら戦術用法に関しちゃ問題はなさそうだ。しかし、どうにもアクの強い馬鹿共が揃ってる」

鳥海「以前の司令官さんの態度では凡そ無理でしょうね。っていうか不手際って何やらかしたんですか…」

提督「……うっせー。それと、それ以上過去を持ち出したらてめぇ殴り殺すぞ」

鳥海「はぁ…脅し文句だけは超一流になりましたね」

提督「っせーんだよ。ったく、小賢しい連中だぜ。巧妙に尻尾まで隠して着々と力を蓄えてやがる。
あの糞野郎に賛同して同志になってる連中が少なくとも六匹は居る。おまけに……」ブツブツ…

鳥海「なんの話ですか?」

提督「ちっ、うるせーな。てめぇは山城の動向だけ気にしてりゃ良い。いいか、山城は相手にとっても、俺達にとってもジョーカーだ。
どちらに転んでも腹ぁ括れ…例え、一度は肩を並べて共に戦った戦友であってもな」

鳥海「そうならなかったら、どうなんですか」

提督「…言っただろ。あいつはジョーカーだ。そん時は、幻の六人目だ……行き着くべくして行き着いた、海軍の墓場。
この腐りきった海軍に教えてやるのさ…てめぇ等が切り捨ててきた人材がどれだけ優秀なのか、どれだけてめぇ等が見る目がないのか。
そいつを身をもって落とし込んでやる」

鳥海「ですけど、司令官さんから貰った資料はどれも…」

提督「あぁ、そこに書いてあるのは大体が事実だ。が…どれも小賢しいレベルで細工がしてある」

鳥海「えっ!?」



加賀はエリート艦隊に属していた空母の中でも最高峰の艦娘だ。

進撃の艦隊に属している赤城と共に第一航空戦隊を牽引し、その双翼を担ったほどのな。

そんな優秀な艦娘をあっさりと手放したエリートの野郎はまさに馬鹿と言わざるを得まい。

じゃあなんで捨てたのか……突き詰めれば色々あるだろうが、恐らくは隠蔽だ。

加賀に知られては不味い案件でもあったんだろう。

あわよくばと戦場で轟沈を狙ったんだろうが、そうは問屋が卸さねぇ。

結果として奴は生き残ったが、これ幸いとこれ以上近くを飛ばれないようにあの鎮守府へ左遷同然で弾き飛ばしたわけだ。

長良は確かにこれはてめぇ自身で引き起こしたミスで変わりは無い。

変わりはないが、こいつの持つポテンシャルはこの程度じゃない。

はじめて見たぜ、深海棲艦の戦艦ル級FSを相手に単身乗り込んで相手取る軽巡なんてよ。

そんなのを相手にしながら前線の指揮までこなすとなれば、状況判断にはずば抜けた嗅覚を持っていると見てまず間違いはない。

が、先も言ったとおりこいつは自分のミスを未だ自覚していないしそこから逃げる傾向にある。

尻上がりって奴だろうが、それじゃ使い物になる前に死ぬのが落ちだ。

ある程度、荒療治が必要かもしれないな。

満潮だが、こいつも俺様が今までに見てきた駆逐艦の中では群を抜いている。

以前に進撃のところに居る白露型を見た事があったが、あれとはまた毛色の違う群の抜き方だ。

一言で言えばあれはただ死に急いでる。

なりふり構わず出だしからぶっ飛ばしていく姿はさながら鬼神だろうよ。

その姿勢はてめぇ自身が何とかしないとならないという強迫観念に常に突き動かされている。

周りがどうにかなる前に、てめぇが何とかしようとするから入渠後も直に再出撃しようとする。

勝つ事で周りを救えたと言う安堵からそこに至高の喜びを得る。

だがそれは長良と同じで辿り着く先は死だ。

必ず死ぬ。

だからこそ手綱が必要になるわけだが、あの沛艾を手懐けるにはこちらも相応の力を示さねぇとならん。

最後に漣だ。

こいつは特殊と言うより、一言で言っちまえばただのコミュ障だ。

対人恐怖症とは少し違うが解りやすいくらいに周りとの壁を形成し、それ以上は絶対自分から踏み込まないし相手にも踏み込ませない。

だが戦場じゃあその特性上、常に一歩引いた位置で周囲を上手い事見ている。

結果として戦場での状況判断、最善策が何か、そういった決断力がずば抜けている。

四面楚歌の状況で半数の仲間を失いながらも無能な馬鹿提督の進軍命令から脱却できたのもこの判断力による所が大きい。

そして何より、こいつは事射撃に関しては相当な腕前だな。

射程範囲内であればほぼ確実に標的を撃ち抜けるだけのセンスを持っている。



提督「磨けば輝く原石の宝庫。それがあの墓場なんぞと呼ばれてる鎮守府の実態だ。
その調書にあるのは大まかな現実とそれに肉付けされただけの、残りは全て改ざんされた虚偽ものだ」

鳥海「こんなものが、許されるのですか!?そ、それに、これだけ大それた事、大本営が気付かないわけが…」

提督「さて、精査している部署がどこかは知らないが、適当に目を通しているだけならすり抜けられるだけの偽装だ」

鳥海「それと、山城の関連性は…?」

提督「内部に膿が溜まっている。そんな中に山城を置いておく訳にはいかない。全て信じるな。
お前が真に足りえるとその目に適った連中以外は全て敵と思え。お前の目は、それを見極めるだけのものを有しているはずだ」

鳥海「あの鎮守府でも、それは変わりありませんよ?」

提督「構わん。その時は俺様も同様の事をするまでだ────」



加賀「では、はじめから…」

鳥海「申し訳ありません。ですが、山城の事もある以上、提督も私にすら細かい内容を話す訳にはいかなかった」

山城「……とんだ策士、いいえ腹ぐろ提督ね。とは言っても、扶桑姉さまが亡くなってそうなってしまった。
そう言う方がまだ報われるのかしら?」

鳥海「……それは、解りません」

山城「はぁ、扶桑姉さまの居ない世界をこの先も生きていくのかと思うと……不幸だわ」

漣「通算で16回目っと……」メモメモ…

満潮「何で数えてんのよ…」アセ

長良「ん~、まぁでもさ、また会えたね、皆!」

加賀「当然です」

鳥海「ふふっ」

鬼怒「ば、場違いでごめんなさい!」アタフタ

満潮「気にするだけ損でしょ」

漣「でーすよねー!」

山城「乗りかかった舟だもの、行くわ。それに、逃してしまったのもあるしね?」

満潮「……ええ、次こそ潰す!」

漣「結局、邪魔してきた深海棲艦を殲滅してる間に逃げられちゃいましたしねぇ…」

加賀「鬼怒さん」

鬼怒「えっ、あ、はい!」

加賀「あなたは万が一に備えて大本営に戻って現状を元帥に報告しに行って下さい」


鬼怒「で、でも…」

長良「だいじょーぶ。私達は掃除屋!」

鳥海「私達が愛するこの海を汚されたままじゃ困るもの」

漣「クリーニングは必要ですよねー」

山城「粗大ゴミはきっちりと焼却処分よ」

加賀「お願いできますか?」

鬼怒「…解りました。私は、お姉ちゃんやその仲間を信じます!」コクッ

満潮「あの顔面に絶対にキツイの一発……いいえ、撃ち込めるだけ全弾撃ち込んでやるわ」

漣「漣は受けた恩は決して忘れません!そしてやられたらやり返す……倍返しだ!」

鳥海「ドラマの見過ぎです。そして古いです。ついでに今後テレビ視聴の時間制限設けますよ」

漣「えー!?」

鳥海「さっ、それじゃ行きましょう、加賀さん」

漣「スルー!?」

加賀「そろそろ緩めている兜の尾を締め直して下さい。この出撃で、全てを終わらせます。
目標はエリート提督の計画阻止、その全てを完膚なきまでに破壊する事です」

山城「言うわねぇ。自信の程は?」

加賀「そんなもの必要ないわ。ただ、成すだけよ」

鳥海「私達は、そういう集まりですから」

山城「そう。確かにそうね、そういう集まりだものね」

漣「いっちょやってみっか~!ですよ!」

長良「うん、ただの勝利じゃなくて大勝利!しちゃおう!」

満潮「当然よ。絶対勝つ!」

加賀「行きましょう」


再度集まった五人。

そして新たに加わった一人。

改めて邂逅を果たしたこの六人。

見据える先に何が待っていようと、彼女達に迷いは一切ない。

今、最後の出撃が始まる。

本日は区切りがいいのでここまで
あと少しで完結へ運べると思いますので頑張ります

乙です

皆様こんばんは
今日で完結させれると思います
書き溜め分と残りはリアルタイムの更新で終わらせる予定です




~最強のNo.2~



-志の違い-

エリート「ふふっ、はは……あはははははッ!!」

提督「何が可笑しい!」

エリート「見てご覧よ。この僕が、長い年月を掛けて築き上げた一つの理念の下に集約された一群とも言える存在が、
君たちと言う烏合の衆に等しい存在如きに蹂躙されているんだよ。これを笑わずに何を笑えと言うんだい?」

提督「サイコパス野郎が…!」

エリート「人も艦娘も深海棲艦も…死に際こそ美しい。それが例えどんな死に方だろうと、神は平等に扱ってくれるさ。
何故なら、死と言う概念は死に方こそ千差万別を極めるが、その後は一つの線で繋がっているからだ。
死んだ先は、皆が平等で一つになる。そこには格差も、贔屓も、優劣も無い!完全なる無だ!」

提督「何をほざいてやがる…」

エリート「この世界を破壊する。この僕が、頂点に立つ事で全世界に平等な死を齎す。自分の欲に忠実に塗れるから、
人は何かをするのに全力を賭せる。それは真理だよ…見紛う事無き真理だ。深海棲艦は何故艦娘を憎悪するか解るかい?」

提督「…………」

エリート「何を黙ってるのさ」ニヤッ…



君も解ってるんだろう?

そこに答えが無いから決定的と認められずにいる。

彼女達は何処から来て何処へ行くのか。

これは一種の哲学だよ。

僕はそんな彼女達の道標になっているだけに過ぎない。

答えは、目の前に常にあるんだからねぇ!

けどそれを手にする事は深海棲艦にとっては禁忌、決してしてはならない、地獄への片道切符なのさ。

深い海の底から生まれ出でて、成長を遂げる毎に知恵を、力を、規模を増やしていく。

未曾有のシーハザードさ。

遥か昔、この海洋各地の底で無念の最期を遂げた数々の軍艦たちが存在した。

救われたものと、見捨てられたもの。

拾われたものと、拾われなかったもの。

生まれ変わったものと、生まれ出でたもの。

艦娘と深海棲艦は表裏一体……元は、同じ存在だ。

その宿した魂が人に宿るのか、物に宿るのか、それだけの違いさ。

深海棲艦は憎いんだよ。

自分達と違う道を行った同じ魂が。

艦娘と成った存在が、憎いのさ。

人と人が争う時代はもう終わった。

今は、人と物が争い、殺し合い、永遠と終わりの無い闘争を繰り広げる時代!

だからこそ、世界は滅ぶべきなのさ。

君たち人が争っている相手は、物だ。

その物はどこから生まれる?

この海だ!

人類は、僕たちちっぽけな人間は、愚かにも海と争っているのさ!

自然の驚異を認識できもしない愚かな人類が、何をどう足掻こうとこの海に、大海に敵う訳が無いだろう!

子供のプールで水の掛け合いをしているのとは訳が違う。

これは定められたもの……運命なんだよ。

例え僕をどうにかしようと、このうねりは、この悲劇は、この未曾有のシーハザードは決して止まりはしない!


エリート「そうだろう……戦艦レ級FSッ!!」バッ

提督「ッ!?」

レ級FS「そう……お前達人間は、艦娘は……神に逆らおうとしているんだよ。ボクこそが絶対だ」

エリート「哀れにも中身の無い言葉に縋って、それを信じて自らの身が傷付く事も厭わない…愚かで、無様で、無益な存在」



山城CL「沈めッ!沈めッ!沈めッ!!」ドォン ドォン


サッ

ボボボボボボボボボボボボンッ


榛名「大和さん!」ジャキッ

大和「合わせますよ!」ジャキッ

山城CL「どうして…あんた達は!沈まないのよ!!」

大和「志の違いです」

榛名「それでも、ごめんなさい。私達は、こんな悲劇が起こらない未来を必ず作って見せます」

大和「敵艦捕捉…」

榛名「主砲…!」

大和「全主砲薙ぎ払え!」

榛名「砲撃開始!!」


ドォン ドォン ドォン ドォン


山城CL「私は……私はッ!!」


ボゴオオオオオォォォォォォォォン


榛名「ごめんなさい…」

大和「…………」


爆発の収まった後には何も残っておらず、ただただ穏やかな水面だけがそこにあった。

榛名と大和は暫し、その場に佇み静かに頭を垂れて、本来は生まれてくるはずも無い、

出会う筈も無かった艦娘の冥福を祈った。



武蔵CL「邪魔だ、退けぇ!!」ジャキッ

妙高「お断りします」ジャキッ


ドォン ドォン

ドン ドンッ

ボボボボボボボボボボンッ


武蔵CL「おのれ…ッ!」

足柄「無理よ。妙高姉さんの鏡面射撃は大本営随一よ。あなた程度に、このイージスの盾は破れはしないわ。
そ・し・て……防御したら反撃が待ってるって事、忘れちゃダメよ?」クスッ


バババッ


武蔵CL「貴様等…!」

川内「終わりにしようか、戦艦武蔵の亡霊さん」

神通「次発装填済みです。神通、突撃致します!」ザッ

羽黒「五倍の相手だって、支えてみせます!神通さん、後ろは気にせずに!」ジャキッ

神通「はい!」

川内「羽黒!」

羽黒「川内さん、いきますよ!」サッ

足柄「あの子達、何を…」

妙高「……?」


神通は真っ直ぐに武蔵CLへ向かい駆け出し、川内と羽黒は左右に展開する。

そして羽黒は陣痛の進む少し先に主砲を翳し、躊躇う事無く砲撃を開始した。


羽黒「これ以上、やらせません!」


ドン ドンッ


神通と武蔵CLの中央付近、斜めに射線を取り二人を別つようにして羽黒の砲撃が放たれる。


カカカッ


その直後、乾いた音と共に神通と武蔵CL、両者の中央で大きな爆発が巻き起こった。



ボゴオオオオォォォォォォォォォン


武蔵CL「な、に…!?」

羽黒「やった!」

川内「ビンゴ!」

妙高「まさか、擬似的な煙幕!?」

足柄「うそでしょ…」

武蔵CL「くそ…!小賢しいッ!!」ジャキッ


──言ったはずです。次発装填済みと──


武蔵CL「ッ!?」


カッ


武蔵CL「これは…魚雷だと!?」


ボゴオオオォォォォォン


武蔵CL「ぐぅ…!」 中破



羽黒の放った砲撃が両者の丁度中央に迫った瞬間、川内の放ったクナイ型の爆雷が羽黒の砲弾に接触し誘爆を引き起こした。

結果として周囲は一瞬にして煙幕に包まれ、視界は白み、武蔵CLにとっては照準を絞る事もできなくなった。

そんな中、神通だけは目標を見失わず、先に捉えていた場所へ向かい抜刀の要領で魚雷を放つ。

その爆発によって生じた音と気配で更に場所の把握をし、一気に射程内へと忍び込んだ。


ヒュンヒュンッ

ズババババッ

キンッ…


武蔵CLと交錯した瞬間、空を何かが薙ぐ音と、それによって何かが切断される音が静かに響き渡る。

一拍置いて、更に爆発音が響き渡り、武蔵CLの堪えるようなうめき声が続いた。

神通が斬り捌いたもの、それは武蔵の艤装だった。


ボゴオオオォォォォン


武蔵CL「おの、れ…!」 大破

神通「終わりです」ジャキッ


振り返った神通は手にする主砲を構え、それを躊躇う事無く解き放つ。


神通「よく……狙って!」


ドン ドンッ


武蔵CL「おのれえええぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


ボゴオオオォォォォォン

ザザザザッ


神通「あなたの想いは榛名さんが受け継いでいます。ですから…どうか、お心、静かに…」


猛々しい咆哮の様な叫びと共に武蔵CLの姿は静かに水面の底へと沈んでいった。

それを神通は最後まで見送り、胸の前に手を添えて静かに瞳を閉じて冥福を祈った。



ガシッ


葛城「離せ…!」ググッ

天城「離さない!戻ってきて、葛城!あなたは、一航戦から脈々と受け継がれてきた航空戦隊の歴史を背負っているのよ。
二航戦の飛龍さんを始めとして、五航戦の意志を継いで、あなたは生まれたの!それを、あなたが忘れるはずが無い!
あなたは新生第一航空戦隊の筆頭、改飛龍型、雲龍型三番艦の葛城よ!深海棲艦に意識を乗っ取られるような柔な子じゃない!」

葛城「うる、さい…!五月蝿い!五月蝿いッ!!わた、しは……!」

天城「戻ってきなさい、葛城!あなたは弱くない。だから、目を覚ましなさい、葛城!!」

葛城「あ…あぁ……」

天城「…!」バッ


遥か遠くを目を見開いて葛城は凝視する。

その先に天城も視線を巡らせ、その目を大きく見開いた。


飛龍「安心しなよ。私達は沈まない」

蒼龍「ご覧の通りってね?」

翔鶴「まだまだ、やる事は多いですよ」

瑞鶴「さっさと戻ってきなさいよ、葛城!」

天城「皆さん…」

葛城「瑞……鶴……先、輩……」パシャ…


葛城は力なくその場に崩れ落ち、両手で自らの顔を覆い、静かに肩を震わせた。

その肩にそっと手を置いて最後に現れた赤い袴の艦娘が優しく微笑んだ。


赤城「やっと、海軍の誇る空母が揃いましたね。過去、現在、未来、私達が護るべきものはとても多いです。
だから、誰一人として、失う訳には参りません。そうですよね、天城さん」

天城「はい…!はい…!」

赤城「翔鶴さんも瑞鶴さんも、私達一航戦の後釜です。そう易々と沈みはしません。同じように二航戦のお二人も、
あなたが思うよりもずっと強い。だから、あなたは悔やむ前にまずは顔を上げて前を見て下さい。
その目に映っているのがどんな光景か、絶望なのか希望なのか、それを見極めてからでも遅くはありませんよ」


ザッ…


赤城はそっと葛城の肩から手を離し、周囲を見渡す。

本丸からは結構離れたところ、まだ深海棲艦の数は数え切れないほどに居る。

けど不安は微塵も無い。

きっと彼女達がこの元凶を絶ってくれると信じているから。

だから赤城は自分のすべき事に心血を注げる。



赤城「天城さん、葛城さんはもう大丈夫なはずです。そうですよね、飛龍さん?」

飛龍「ん…まぁ、そうだね。私もね、同じような目に遭った事あるけど、大丈夫だよ。この子なら、戻ってこれる」

蒼龍「うん、そうだね」

天城「はい、ありがとう、ございます…!」

赤城「では、二航戦のお二人はまずは修復と補給に専念して下さい」

飛龍「オッケー」

蒼龍「ごめんね」

赤城「翔鶴さん、瑞鶴さん」

翔鶴「はい!」

瑞鶴「はい!」

赤城「見せて頂きます。その手腕、今一度」

翔鶴「……!」

瑞鶴「え、それって…」

赤城「加賀さんも言っていましたね。私達一航戦を越えるのならば、この程度の障壁は跳ね除けて下さい」

翔鶴「良いんですか?」

瑞鶴「翔鶴姉ぇ?」

赤城「はい?」

翔鶴「赤城さんの見せ場、無くなってしまうかもしれませんよ?」クスッ

赤城「うふふ、それは大変ですね。では、程々にして頂く方が良いのでしょうか?
けど、そうなると加賀さんがブツブツと五月蝿いですよ、きっと」

瑞鶴「あなた達、まさかこの程度を蹴散らしただけで図に乗っているのかしら?だとしたら勘違いもいい所ね。
とか絶対言う!絶対に言う!」

赤城「ふふっ」

翔鶴「では、赤城さん。赤城さんも今しばらくは腕の怪我の治療に専念して下さいね?応急修理要員は居ると思いますから」

赤城「…バレていましたか」ニガワライ

瑞鶴「無理すると加賀さんが五月蝿いよー」

赤城「はい、そうですねぇ…では、お言葉に甘えるとします。頼みました、五航戦」

翔鶴「お任せ下さい。いい、瑞鶴?」

瑞鶴「勿論!」

翔鶴「行くわよ!」

瑞鶴「了解!」

書き溜め分以上
残りは今からリアルタイムで更新していきます

-遺恨-

エリート「さぁ、提督。見物はここからさ…あの時と同じ悪夢を、今一度お前の目に焼き付けてやるよ!
前回と違うのは、絶望を焼き付けたその先で、今度は共に死ね」ニヤッ


──滅びの時を迎えるのはあなたです──


エリート「……!?」バッ

レ級FS「お前等……ッ!」

提督「…………」ニヤッ

加賀「……やはり、あなた程度を立てた所で物事が穏便に済むとは思えませんね、エリート提督。器の差、でしょうか」

エリート「加賀……貴様ッ!」

加賀「今更になって私の名を覚えた当たり、学習能力は高い方なのでしょうか。いえ、そもそも今更ですから低いのかもしれません」

エリート「ほざくなよ、艦娘風情が……取るに足らない存在の顔と名前を一々覚える方が無駄と言うものだ。
僕の為に成らない存在を、何故僕がご丁寧に覚えてなきゃならない。寝言は寝て言えッ!」

満潮「どんだけ脳みそ小さいのよ。一人や二人の名前も記憶に残せないとか、馬鹿も通り越してただの痴呆ね」

漣「ご主人様~、生きてます?死んでたら心マした上でぶっ殺しますよ~」

提督「けっ、うっせーんだよ。片方のお下げ切り飛ばして、バランス取れなくしてやろうか、小娘が!」

漣「ふふっ」ニコッ

長良「司令官、最後の大掃除、始めちゃうよ!」

鳥海「存外しぶとく健在なようで、安心しました。司令官さん」

提督「言いたい放題言ってく……」

山城「はぁ、随分と様変わりしてるわね、提督?」

提督「……山、城」

山城「ふふ、その顔を見れただけでも役得かしら。レアケースだものね」

エリート「馬鹿、な……何故、お前が、生きている……お前は、昏睡していたはずだろうッ!」

山城「遺恨を残さない為、かしら?扶桑姉さまに呼ばれたから、かしら?どっちにしても、目覚めるべくして目覚めたのよ」

レ級FS「のこのこと現れて…だったらここで確実に沈めてやる。忘れた訳じゃないよね?一度は死に掛けてるんだからさぁ」ニヤァ

鳥海「そちらこそ、先とは状況が違うという事を認識して下さい」

加賀「これ以上、この海も、艦娘も、何もかも、穢させはしません」


エリート「小賢しい……レ級FS、知らしめるんだ……君がこの世の頂点であるという事を。矮小な存在がどれだけ足掻こうと、
無駄だという事をさ……教えて上げなよ!」

山城「こっちも教えて上げるわ。あなたがやってきた事がどれだけ無意味だったのかをね?提督、最後くらいは指揮しなさいよ」

提督「ちっ……後からひょっこり湧いた分際で偉そうに……」

鳥海「内心嬉しいくせに…」ボソッ

提督「あぁ!?」

鳥海「いいえ、別に?」クスッ

提督「このクソメガネ……いいかてめぇ等。でけぇ粗大ゴミが二つだ……掃除を始めろ!」

エリート「ゴミだと…?クズがこの僕をゴミ扱いとは、分不相応にも程がある発言だよ。粋がるなよ…!」

進撃「それはあなたですよ、エリート提督」スタッ

エリート「進撃……!」

進撃「大層なお題目を並べたところで、結局あなたがやってる事は新鋭の延長に過ぎないでしょう。もう終わりです。
既に忌避の艦隊、隷属の艦隊は壊滅しました。野望と言うには余りに稚拙なあなたの計画もここまでですね」

エリート「くくっ……あの連中も結局は僕の駒さ。存外、糞の役にも立ってなかったみたいだったけどね」

提督「どこまでも、糞を地で行くゴミ野郎だな、てめぇは…」

エリート「それで、僕をどうする気なんだい?」

進撃「決まってるでしょう。どうせ大人しく縛に付く気はないんでしょうし、だったら実力行使に出るまでです」スッ…

エリート「知ってるよ。君は海軍の中でも刀の扱いがずば抜けて達者だ。君の間合いには決して入らないよ」

進撃「待つだけが剣術じゃないですよ」

エリート「解っているとも」ニヤッ


パァンッ


進撃「っ!」

エリート「ははっ、威嚇だよ。そんなにビビるなよ。けど、そうだな…次はその腕を貰おうか?」チャキッ

提督「クソガキ、選ぶ武装間違えたんじゃねぇのか」

進撃「痛んでる人は黙ってて下さいよ」

提督「ちっ、あぁそうかよ。だったら精々片腕持ってかれねぇようにしとけや」

エリート「安心しなよ、提督。お前は最後だ…一番最後に最も惨たらしく殺してやる」

提督「くくっ……だ、そうだ。クソガキ、精々生きろよ」ニヤッ

進撃「ちっ」(ホント性格最悪だな、この人!)



レ級FS「さぁ、死刑執行の時間だよ。墓場在住の皆様方?」

満潮「逆に死刑執行してやるわよ。覚悟しなさい」

漣「超本気モードでいくです!」

長良「絶対勝つ!」

鳥海「これで最後……是が非でも勝利をもぎ取ります!」

山城「それじゃ、いきましょうか」

加賀「預かり受けたこの力、如何無く発揮してみせます。友永隊……鎧袖一触よ」ビュッ

鳥海「目標、前方の戦艦レ級FS!全艦散開後砲戦用意……大掃除を開始しますよ」メガネキランッ


バババババッ


加賀の艦爆艦攻に続けて、六人が一斉に陣形を崩して散開する。


レ級FS「掃除?ふふっ、今更艦娘一人の放つ艦爆艦攻に、この僕がたじろぐとでも思ったのか!逆に掃除してやるよ!」サッ


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


加賀「友永隊を、余り見縊らない方がいいわ」

レ級FS「……ッ!?」


ボン

ボボボン

ボボボボボン


空中でレ級FSの艦載機と衝突した友永隊だが、出てきたのは友永隊の艦載機群。

その翼で煙を切り裂き、相手の制空領内へ進出し、大きく弧を描いて目標を補足する。

友永隊の妖精達も志す部分は同じなのだろう。

加賀に敬礼するその姿からは、任せておけという意思がしっかりと伝わってきた。

妖精の姿をしっかりと見届け、加賀は小さく頷く。



山城「鳥海、戦術の展開を」

鳥海「加賀さんの艦爆艦攻後、長良、満潮、漣による波状攻撃を展開!」

長良「よしきたー!任せといて!満潮、漣、いくよ!」

満潮「上等じゃない!」

漣「漣、狙い撃つ!ですよ!」


ボゴオオオォォォォォン


加賀の放った友永隊による艦爆艦攻がレ級FSを襲うが、それを物ともせずにレ級FSが煙を撒いて姿を現す。


レ級FS「効かないねぇ!」バッ 被害軽微

長良「私の足についてこれる?」ザッ

レ級FS「ほざけ、軽巡風情が!」ジャキッ


ドォン ドォン

サッ

ボボボボボボボボボンッ


レ級FS「何…!?」


レ級FSの砲撃と同時に、視認していた長良の姿がそこから消える。

レ級はFS眼球を動かし、神経を研ぎ澄ませてその行方を追う。

周囲に聞こえる海面を蹴る音、爆ぜる海面によって巻き起こる水飛沫、しかし長良の姿を視認するには至らない。


レ級FS「この、ボクよりも……速いっていうのか……ッ!?」ギリッ…


──そこっ!──


レ級FS「ッ!」バッ


ボゴオオオォォォォォン


レ級FS「ぐっ…!」 被害軽微

レ級FS「軽巡洋艦風情がァッ!!」ジャキッ


ドォン ドォン

ボボボボボボボボボンッ


満潮「長良一人にムキになってんじゃないわよ。ほら、精々顔面偏差値落ちないように気を付けなさい!」ジャキッ

レ級FS「ほざくな、駆逐艦が!!」バッ


満潮「」ニヤッ サッ

漣「漣からは、逃げられないよ!」ジャキッ サッ


ドン ドンッ

ボゴオオオォォォォォン


レ級FS「ぐぅ…!ウロチョロウロチョロ、貴様等ァッ!!」 小破

満潮「一々そうやって見下してる所がウザイのよッ!!」ザッ


一度目の構えをフェイクにしてレ級FSを誘い出し、後方に位置していた漣とスイッチする事で漣の砲撃に対する反応を遅らせる。

攻撃を受けたレ級FSは高確率で攻撃を加えてきた相手に矛先を向ける傾向がある。

そう満潮は推察して漣とスイッチした際にレ級FSの死角に回り込んでいた。

本来であればその動きにもレ級FSは気付けたはずだった。

が、長良の高速移動、加えて満潮の三次元の動き、漣の的確な射撃による弾幕がレ級FSの動きを大きく制限させた結果だった。


レ級FS「お前……何処から!」ザッ

満潮「撃つわ!」ジャキッ


ドン ドンッ

ボゴオオオォォォォォォン


レ級FS「がぁぁ……ッ!」 小破



エリート「馬鹿な……彼女は、最強なんだぞ。たかが六人の艦娘如きに、遅れをとる訳が…!」

進撃「世界最強…?」

エリート「何がだ…!?」

進撃「いや、日本最強……」

エリート「何が言いたい!」

進撃「あぁ、市区町村で最強程度だから、遅れを取るのでは?」

エリート「お前…何処まで僕等を見下すつもりだ」

進撃「見下すだなんてとんでもない。敬意は示してますよ。敬語でしょう?でもだからって、尊敬はしませんけどね」

提督「くくっ……嫌味言わせたら、そこのクソガキの右に出れる奴は、そうそういねぇよ」

進撃「」(あんたが言うな!)

エリート「…………」ギリッ…

提督「……はぁ、いやぁ~しかしなんだね……エリートくん、俺は今非っっっ常に愉快だ」

エリート「何…?」ピクッ

提督「くくっ……そう、その顔。その顔が見たかった。その呆けた馬鹿面を、どれだけ待ち望んだ事か」



いいか、このノータリンの痴呆持ちゴミクズ意識高い系気取ったなんちゃって糞屑野郎。

てめぇ等如きがチンケな小細工を幾重に展開させようと、俺様にしちゃ前座も前座、お遊戯レベルのしょぼい策な訳だ。

粋がって俺様の前を走ってたみてぇだが、勘違いも甚だしい。

じ・つ・に、甚だしい!

どうだ?実は先をいってるようでてんで後方、俺様の足許にも及んでなかったその腐った脳みその程を知って。

結果はご覧の通り、頭が良けりゃこうはならねぇんだよ、バァカ。

欠陥だらけな上に内容も稚拙、深海棲艦の手を借りなきゃまともな策も考え付かない。

最早提督と言う業務すらもまともにできない、雑魚以下の畜生にも劣る存在だな。

戦艦レ級ってのは生物を捕食する事で、その知能と能力を得て強化されるんだろ?

だったらてめぇ食わせれば、めでたく退化でもして消滅してくれるんじゃねぇのか。

馬鹿で無智!

ノータリンな上に医学界を震撼させる痴呆持ち!

ゴミでも今時リサイクルできるご時勢でリサイクルは不可!

その上クズときたもんだ!

こんだけマイナス要素取り込めばレ級も最速イ級クラスまで退化してくれんじゃないのかねぇ!

一丁前に意識高い振りはしてるが相手が悪かったなぁ……俺様を相手にするなんて正気の沙汰とは思えねぇよ。

分を弁えろよ、糞屑野郎。

解ったらさっさと銃なんぞ捨てて俺様の前に平伏せ、詫びを入れろ、てめぇがクズであると認めて自覚しろ。

言ってる意味は理解できましたか?

この糞屑野郎!

言い訳反論は認めん、以上だ。



エリート「……言いたい事は、それだけか……」ブルブル…

進撃「」(はぁ…煽ってくなぁ、この人)アセ

エリート「そんなに先に死にたいのなら、望み通り殺してやろうか、提督ッ!!」チャキッ


ザッ

ズバァッ


エリート「……っ!?」パラパラ…

進撃「言ったでしょう、待つだけが剣術じゃないって。でもって……」キンッ ガシッ

エリート「なっ」

進撃「漸く、掴まえましたよ」ブンッ


ドシャァ


エリート「くっ」

提督「おうおう、痛そうだねぇ…まぁ見てろよ。最強のNo.2連中がどんなもんかをな」



長良「鳥海!」

鳥海「山城、鬱憤晴らして来て下さい」

山城「言われるまでもないわね」サッ

レ級FS「雑魚が、どれだけ群れようとも、このボクには…」

山城「そうねぇ…あなたが複数でも居れば別かもしれないけど、あなた一人じゃどうかしら?」

レ級FS「何ぃ!」

山城「不思議と、今は嫌な予感がしないのよ。これって凄い事よ?それに、私ばかりに気を取られてると…」


ザッ


レ級FS「お前等…ッ!」

満潮「あんた何処いく、漣」

漣「どてっぱら!」ジャキッ

満潮「じゃあ遠慮なく顔面いくわね、私は!」ジャキッ

レ級FS「これ以上なめた真似を……」

長良「冗談、まだまだ終わりじゃないよ!」ジャキッ

レ級FS「……ッ!」


ドン ドンッ

ボゴオオオォォォォォン


レ級FS「片手で防げる程度の砲撃など…!」 小破

漣「なら防いでみるです!」

満潮「顔面とお腹、好きな方選びなさい!」

レ級FS「……くそォッ!」ザバァッ

満潮「こいつ…!」

漣「あぁ!ずっこい、潜った!?」

鳥海「加賀さんはそのまま、恐らく……」バッ


ザバァァァンッ


山城「標的が自分だって解ってたの!?」

レ級FS「ちぃ……お前、どうして」

鳥海「対水上電探って知ってます?」クスッ

レ級FS「…!」

鳥海「あなた如きに、私の展開させた戦術は破れません。ここに出てしまった事を、後悔して下さい」

レ級FS「後悔だと…?」

鳥海「目標、前方の戦艦レ級FS。砲戦用意……」バッ

レ級FS「なっ、しま……」

山城「不幸ね」ジャキッ

鳥海「……撃ち方、始め!」サッ



大きく手を振り翳し、その手を真っ直ぐにレ級FSを指し示すように振り下ろす。

次の瞬間、既に構えていた山城達の砲撃が一斉にレ級FSに襲い掛かる。

しかし恐るべきは相手の行動を予測した上で展開させた鳥海の戦術だろう。

開始、加賀の艦爆艦攻から息つく暇を与えず小回りと連射の利く長良、満潮、漣の三名による波状攻撃を展開。

海面を疾風迅雷の如く駆け抜ける長良と合わせ、そこに嵐を生み出すが如く、満潮による三次元の攻撃。

そんな二人が交錯する中でも的確に砲撃を命中させる漣の射撃センス。

暴風の吹き荒れた中、その間隙を縫って山城の砲撃を撃ち込む算段だったが、レ級FSもここで応戦する。

強引に包囲網を突破し、レ級FSが目星をつけたのは鳥海。

長良達三人はこちらの距離を的確に視認しており、狙い撃つにも距離が近過ぎる故に警戒態勢が万全だ。

加賀は最奥で遠すぎる。ならば、中距離に位置取り、今は動きを止めていた鳥海と山城。

その中で一番確実に仕留められると確信を得ていたのが鳥海。

だからこそ狙いを定めて突撃した。

驚くべきは相手が水上電探を備えた上に、こちらの目論見を完璧に看破し、更にそこからのカウンターに備えていた事。


ボゴオオオオオオォォォォォォォォォン


一際大きな爆発が轟き、そこに一点集中された砲撃の雨が止む。

大きく立ち昇る黒煙と硝煙の香りが辺りに充満し一時の静寂が訪れるが、直にそこから大きな雄叫びが響き渡った。



満潮「しぶとすぎでしょ」

漣「これだから戦艦って厄介ですー」

山城「これでもまだ足りないのね」

鳥海「ですが、この攻撃は相手にとって痛烈に効いている筈です」

加賀「…………きます」チリッ…


寡黙を貫き静観していた加賀が静かに呟き矢筒から矢を抜き取る。

それと同時に黒煙を吹き散らしてレ級FSが姿を現した。


レ級FS「ボク、こそが……絶対なんだ!忌々しい、艦娘如きに、ボクが敗れるわけには、いかないッ!!」 中破

加賀「いいえ、ここで終わりです」スッ…

レ級FS「……ッ!空母…ッ!なっ……」


加賀を真正面に捉えてその姿を認識し、レ級FSはその目を見開いた。

それは幻だったのか、いや恐らくは幻なのだろう。

幻なのかもしれないが、それはそのとき確かにそこに『存在』していたと言えるほどの威圧感を放っていた。

レ級FSが垣間見た、恐怖によって具現化した姿そのものなのかもしれない。

レ級FSにしか認識できず、レ級FSだけに具現化しているように見えていたのかもしれない。

それは加賀の背後に聳える無数の軍艦の群れ。

遥か昔、激戦を繰り広げてきた数々の歴戦の軍艦。

その誇りと魂は今を生きる艦娘達によって顕現された。

艦娘の秘めた闘志と秘めた想いは何れ、志半ばで朽ち果てていった軍艦達の無念すらも浄化してゆくことだろう。

これは、敵対するものに向ける怒りや悲しみ、憎しみ、恨みなどではない。

今を生きる者達を、共に戦う仲間達を護りたいと願う、彼女達の想いが具現化した本当の姿なのだろう。

その先陣を切るのは、第一航空戦隊の一翼を担った鎧袖一触の加賀。

その彼女を支えようと、力になろうと、共に行こうと、現れたのがそれなのかもしれない。



鳥海「全艦、突撃開始!加賀さんを援護して下さい!」ザッ

山城「決めなさい!全力で援護するわ!」ザッ

長良「よしきたー!がっつりいっちゃってー!」ザッ

満潮「当然じゃない!まだまだいけるわ!」ザッ

漣「キタコレ!全力で突撃ー!」ザッ

レ級FS「艦爆艦攻が放たれるのに、正気か、お前等…!?馬鹿なのかッ!?巻き添えを食って沈むだけだぞ!」

山城「果たしてそうかしら?」ジャキッ


ドォン ドォン

ボゴオオオォォォォォン


レ級FS「ぐっ…!」 中破

鳥海「今更、あの人がそんなヘマをするとでも?」ジャキッ


ドン ドンッ

ボゴオオォォォォン


レ級FS「くそっ、身動きが……!」 中破

長良「今更過ぎるね!」ジャキッ


ドン ドンッ

ボゴオオォォォォン


レ級FS「鬱陶しいぞ、お前等……ッ!」 中破

満潮「鬱陶しいのはあんた等よ!」ジャキッ


ドン ドンッ

ボゴオオォォォォン


レ級FS「この、程度で……ッ!」 中破

漣「漣達からは逃げられないよ、しつこいから!」ジャキッ


ドン ドンッ

ボゴオオォォォォン


レ級FS「がああァァ……!」 大破

加賀「ここは、譲れません」チャキッ

レ級FS「仲間、諸共……ボクを、沈めようと、言うのか……ッ!」

加賀「ありえません。みんな、優秀な子たちですから」ビュッ

レ級FS「正気、か……」



空を羽ばたく色とりどりの艦載機。

その後姿を見て、そして己が握る弓を見て、小さく、静かに、感謝の念を込めて呟いた。


加賀「……ありがとう」


パキッ…


その言葉と共に加賀の持つ弓が中央から真っ二つに裂け、完全に破損する。

それでも、加賀は矢を掴んでいた右手を振り翳し、飛び立った艦載機に最後の指示を出す。


加賀「鎧袖一触よ。心配いらないわ。敵機直上より急降下、全てを薙ぎ払って下さい」バッ


無数に連なる艦載機は一条の矢の如く、真っ直ぐに上昇後一気に急降下、加賀の意志を汲むように一糸乱れぬ鮮やかな動きをみせる。

そして目標へ向けて決死の艦攻艦爆攻撃を開始した。


レ級FS「くくっ……フフフ……アハハハハハッ!何度だって、何回だって、ボクは生まれてやるッ!
いいか、覚悟しろ…海軍、艦娘ッ!!ボクは、この海の破壊者だ……どれだけ歳月を掛けようと、必ずまた……」


ブウウゥゥゥゥゥゥゥゥン……


レ級FS「……お前達を皆殺しにする為にッ!地獄の底から舞い戻ってやるよ……ッ!!」


レ級FSの呪詛とも言える咆哮を掻き消すように、加賀の放った艦攻艦爆隊の猛攻がレ級FSに一斉に降り注ぐ。

一点集中の凄まじいまでの艦爆艦攻。

乱れ撃つのではなく、目標にのみ攻撃を加え周囲への被害を出さない圧倒的な精密射撃。

攻撃の止んだ後には文字通り跡形もなく、ただ穏やかな水面だけが存在した。

-変わらぬ明日-

エリート提督の企てた海軍のっとり計画阻止から半年が過ぎていた。

戦艦レ級FSを撃破した後、進撃提督の手によってエリート提督は捕縛され、残っていた首謀者の三人全てが縛に付いた。

提督を始めとしたハズレ鎮守府の面々は戦艦レ級FS撃破後、何事も通達する事無くその場から撤退。

表向きの功労者は現場に居合わせた進撃、鋼鉄、不動、新月の各鎮守府と大本営本部と報道された。

だが現場に居た者はその恐るべき功績を目撃している。

たったの六人、少数精鋭と言うには心許ないほどに少ない人数でエリート提督率いる主力本隊を壊滅させた艦娘達。

大本営をも揺るがす大事を成しえ、それを公にさせずにその場から去ってしまった艦娘達。

そこは外れた鎮守府。

大本営をはじめとし、他の鎮守府ではそこをハズレ鎮守府と呼ぶ。

問題児とされた艦娘や提督の行き着く陸の孤島。別名、海軍の墓場。

そこで六人の艦娘は今も過ごしている。



山城「はぁ、やる事がなさ過ぎて不幸だわ…」

漣「よっ、今日も出ました山ピーの不幸自慢!」

山城「あなた、艤装の角で殴り殺すわよ?その山ピーって止めてくれないかしら」

漣「サンジョーさん?山さん?mountain castle?」

山城「」ピキッ ジャキッ

漣「わー!たんま、冗談!ジョーク!ウソ!こわっ、ヤバイってそれは!」アタフタ

満潮「あんた五月蝿いわよ!」

漣「あ、みっちゃん」

満潮「ったく…それよりアホ面オヤジまだ戻らないわけ?」

漣「恋しくなったとか、ですか?」ニヤッ

満潮「…………」ガシッ

漣「!?」

満潮「山城、良いわ。どてっぱらにぶち込んでやりなさい」

山城「あら、いいの?」

漣「ノー!良くないです!ダメです!イジメ反対!ダメ絶対!色々!」ジタバタ…

長良「あははは…相変わらずだねぇ」

鳥海「山城が加わってバリエーションが増えて、注意するのも面倒になってきたわ」

長良「何だかんだいってあの子達と山城さん、仲良いもんねー」

鳥海「元々山城は駆逐艦の子たちには良く懐かれてる所があったから、それの名残かしら?」

長良「名残って…それより加賀さんは?」

鳥海「弓道場」

長良「さ、流石…一人流されないねぇ」

鳥海「そこがあの人らしいといった所かしら?」



加賀「…………」ビュッ


トンッ


加賀「…………」スッ…


カチャ…


加賀「…二時間。まだまだね」


構えていた弓を静かに下ろし、時計を見て加賀は一人呟く。


加賀「集中力はある程度続くけれど、そこからの伸びが足りてないのかしら…」

??「競う相手がいねぇから気が緩んでるだけだろ、ダァホ」

加賀「……覗き見なんてついに下の下にまで落魄れましたね、提督」チラッ

提督「ぬかせ鉄面皮」

加賀「それで、今日は何かしら」

提督「全員集めろ。掃除の時間だってな」

加賀「……はぁ、平和を享受するのはまだ先という事ですか」

提督「っせーんだよ。つべこべ言わずにさっさと集めろ」



提督「全員揃ったな」

満潮「見て解んないわけ?あんた馬鹿?」

提督「クソチビまな板、殴り殺されてぇのか」

満潮「あっれー、算数できないのかと思って聞いただけなのに何ムキになっちゃってんの?」

提督「上等だ、即刻てめぇを解体処分にしてやる」

満潮「上等じゃない。解体される前にあんたを雷撃処分にしてやるわよ!」

加賀「……はぁ」

鳥海「……もう何も言いません」

山城「見てる分には愉快ね」

長良「あははっ、始まったー」

漣「よっ、待ってました!夫婦漫才っ!」パチパチパチ

満潮「漣……」ピキッ

提督「その口に五寸釘打ち込んで縫い合わせた上で二度と喋れねぇようにしてやろうか」イラッ

漣「」(こ、呼吸ピッタリ過ぎてヤバイんですけど…目がマジ過ぎて別の意味でヤバイんですけど!)プルプル


加賀「話が進みません」

提督「御託が多いんだよ。黙らせとけ!」

加賀「はぁ」

提督「ため息ついてんじゃねぇよ!」

鳥海「司令官さん…」アキレガオ

提督「ちっ…」

山城「三日間も鎮守府空けておいて、何をしていたのかしら?」

提督「あぁ?大本営はそうでもねぇが進撃のクソガキとそれに便乗したルポライターが五月蝿ぇんだよ。
だがまぁそんなのはどうでもいい。どうせここは外れに外れただぁれもしらねぇチンケな鎮守府だ。
任される任務なんてのも毛が生えたようなしょぼいもんしかねぇからな」

漣「お陰で平和すぎますけど、暇ですよぅ」

長良「体鈍っちゃうよねー」

提督「だろうと思って久々に仕方なく任務とやらを受けてやった」

加賀「任務?」

鳥海「どのような?」

提督「くくっ、何を血迷ったのか。未だに深海棲艦の残党ってのは姑息にも生きているらしい。
それの殲滅が任務だ。泊地があるのならそれ諸共消滅させて来いってなもんだ」

満潮「何それ。超まともな任務じゃないのよ。裏があるんじゃないの、それ」

提督「当然だ。だから俺様の鎮守府に話が『捨てられ』たんだからな」

山城「どう裏があるのかしら?」

提督「向かう先は中部海域、未踏の部分も多い場所だ」

鳥海「何が起こるか解らない。故に何か起きても責任は負わない」

提督「そういうこった」

加賀「やれというのならやるだけよ」

長良「どーせやる事ないもんねー」

漣「じゃあパッパとやっちまうのね!」

満潮「普段が有給休暇見たいなもんだしね」

山城「どうせ捨てるはずの命だったんだもの。今更どこに行こうと変わりはないわ」

鳥海「では、指揮をお願いします、司令官さん」

提督「ふん…どうせ殺しても死なねぇんだろ。だったらやる事やってとっとと戻って来い。目に物を見せてやれ!」

加賀「了解です。目に物、お見せしましょう。ハズレ鎮守府艦隊、出撃します」



誰も見向きもしない、はみ出し者が寄せ集められた海軍の墓場。

誰が言ったのか、外れと出来損ないのハズレを掛けたハズレ鎮守府。

そんな墓場には今、一癖も二癖もある提督を筆頭とし、六人の艦娘が漂着している。

世間には決して知れ渡らない、名も知られない、誰からも認知されない。

しかし、そこに存在して然るべき六人の艦娘達。

人知れず、ただ任務を忠実に成していく影の功労者。

決して表には出てこない、常に陰を歩き、二番手に甘んじる。

それ故に彼女達の存在を知る一部の者達からは『最強のNo.2』と言われる存在達。

彼女達は今日も何処かの海域で、密かに任務を全うしている。



【艦これ】提督「バリバリ最強No.2」 Fin.

これにて【艦これ】提督「バリバリ最強No.2」は完結です。
今年の一月下旬から書き始め、同年11月下旬の完結と少し間延びしてしまいました。
スランプや諸事情により更新が延長された中、読み続けて頂いた皆様には本当に頭が下がります。

作品執筆中にも幾つか意見や感想など頂き、本当に勉強にもなりました。
本当は五人だけで最後まで、提督を含んで六人で完結させる予定でしたが、
物語の流れ上、山城を参加させる運びとなりました。

作品を通じてそのキャラ達をもっと皆さんが愛してくれればと思います。
今後も何かネタが思い浮かべばスレ立てするかもしれませんが、その際はまた生暖かく見守って下さい。

このスレは数日間このままとし、折を見てHTML化依頼スレに報告を入れます。
では、皆様本当に最後まで読んで頂きありがとうございました!

じ、つ、に!激しく乙ってやつです

じ・つ・に!面白かった!乙

乙です

完結乙。じ・つ・に!良かった!!

じ・つ・に!面白かったです乙です!

素晴らしい。じ・つ・に!素晴らしい!
完結乙です!

乙、じ・つ・に!面白かった!
そして貴重な王道SSがまた一つ終わってしまった悲しみ
次回作もお待ちしております

多くの「じ・つ・に、乙!」ありがとうございます。
この後、HTML化依頼スレに報告出してきます。

乙!
いつの間にか完結しちゃってたのに驚いたのがつい3時間前、そして風呂から出て約1時間かけ一気に読み進め、つい数分前に読み終わりました…

色々と感慨深すぎて感想を書くのが追いつかないですけど、もし次回作があるなら必ず読みます!
お疲れ様でした!!

このSSまとめへのコメント

1 :  岡崎   2015年02月14日 (土) 21:59:23   ID: wQe-qEjV

「バリバリ最強No.2」の語呂が「ウルトラマグナス・No.2」
と似ているな。
兎も角、お疲れ様です。のんびり続けてくださいな。

2 :  SS好きの774さん   2015年02月18日 (水) 01:20:42   ID: wib8K51W

提督って...黒空みたいだなー

3 :  岡崎   2015年02月18日 (水) 14:20:54   ID: OUC_IYu3

↑懐かしいネタなきがするのはオレだけか?

4 :  くまっきー   2015年03月28日 (土) 22:40:36   ID: AFUi2Vwq

続きが楽しみです頑張ってください。

5 :  agent Smith   2015年04月07日 (火) 01:39:30   ID: eTtjSfbR

黒空...更新止まってる東方ssか...?違ってたらスマソ

6 :  SS好きの774さん   2016年05月23日 (月) 22:51:45   ID: I-CA6bti

バリバリ最強NO.1懐かしいな
タイトルからしてぬーべー関係してんのかと思いきや何もなかった...

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