【艦これ】提督「暇じゃなくなった」 (744)

【艦これ】提督「暇じゃなくなった」


艦これのSSです。
書簡体、対話体、それぞれの形式で書く事があります。
いくつかオリジナル要素が登場します。
各艦娘の相関図等、若干違う部分もあると思いますが二次創作観点からご了承下さい。


【艦これ】提督「暇っすね」
【艦これ】提督「暇っすね」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1404/14040/1404046254.html)

【艦これ】提督「暇っすね」Part2
【艦これ】提督「暇っすね」part2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1404/14042/1404294340.html)

【艦これ】提督「暇っすね」part3
【艦これ】提督「暇っすね」part3 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404646553/)


上記三作品の続きのようなものになります。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1411557252

~晩秋~


-艦娘病院-

阿武隈「……はぁ」

北上「あらら、ホント元気ないねぇ」

阿武隈「えっ…」

北上「よっ」

阿武隈「き、北上、さん?」

北上「むっちのとこにも行こうかと思ったんだけど、なんか大本営って足踏み入れたくないんだよねーっていう
か、まぁ門前払い受けただけなんだけどね」

阿武隈「陸奥さんに会えなかったから、じゃあ代わりにあたしって事ですか」

北上「おっ、解ってんじゃーん。普段からかってる相手が居ないと私も調子狂うっていうかね」

阿武隈「バッカみたい…一人でやってて下さい」

北上「まーまー、そう言わずにさ。少し私に付き合いなよ。どーせ暇なんっしょ」

阿武隈「能天気な北上さんと一緒にしないでよ!あたし的には……!」

北上「能天気ってあんたねぇ」

阿武隈「…っ!何よ、あたし何も間違ってないでしょ。いっつもヘラヘラしちゃって、直に人を馬鹿にして……
そうやって困ってる人嘲って、笑って、さぞ楽しいんでしょうね!」

北上「むっ…ちょっとちょっとー、それ少し言いすぎじゃない~?これでも一応心配して……」

阿武隈「上辺だけのクセに……」ボソッ

北上「はい?」

阿武隈「上辺だけのクセにっ!したり顔で心配してるとか、そういうのがあたし的には鬱陶しいのよ!目障りな
の!本当はそんな事、気ほども思ってもないくせに、そうまでしてあたしの事からかいたいの!?北上さんを、
ちょっとでも良い所あるかもって…思ってた自分がバカみたい。自分に腹が立つ」

北上「……んじゃいいや」

阿武隈「……え?」

北上「提督に話聞いたらむっちはもう直戻れるかもって事だったし、どっちにしても大本営に提督の許可なしに
艦娘が単身で入るってのは無理って事だったから、じゃあ阿武隈っちの様子見てくるって事で着たけど、なぁん
かやっぱ嫌われてるし、まさかここまでキレるとは思わなかったけどね。あっはっは……」クルッ

阿武隈「……」

北上「……別に、私はあんた嫌いって訳じゃないよ。同じ鎮守府の仲間だしね。まっ、駆逐艦はウザいけどそれ
でもやっぱ同じ鎮守府の仲間…家族みたいなもんだしねぇ。本気で憎いなんて思わないし……ホントにさぁ、駆
逐艦連中がウザいのよ。阿武隈さん大丈夫かな?阿武隈ちゃん大丈夫っぽい?阿武隈さんは大丈夫なのです?っ
て……私は阿武隈っちの近況報告する放送局じゃないっての」

阿武隈「え……?」

北上「まぁ何が言いたいかって言うとね、ウジウジしてないでさっさと戻って来いって事よ」

阿武隈「なっ…べ、別にあたしは…!」

北上「深海棲艦が怖いってのは別に恥じゃないと思うよ。あんたはあのレ級とやりあって生き延びた。それって
誇ってもいいと私は思うんだけどねぇ。ま、次回からは別の寄越すわ~。私じゃイヤっしょ」

阿武隈「…なんで」

北上「へ?」

阿武隈「なんで、それなら来たの」

北上「ん~、なんでって言われてもなぁ。仲間とか家族とか、そういうの心配するのに理由っていんの?」

阿武隈「ぇ……?」

北上「なんかのゲームの台詞のパクリだけどね~。いい台詞だと思うよ、うん。じゃ、そういう事で」ヒラヒラ

-鎮守府-

北上「……って感じでまぁ、嫌われてる嫌われてる」

提督「はぁ、頭痛い…」

北上「まぁ結構凹んでるみたいだし、ちょっちナーバスになってるだけじゃないかなー」

提督「お前の嫌味でも聞けば奮起するかと安直に考えすぎたか」

北上「ちょっと、それどーいう意味さぁ!」

提督「そのまんまだけど?」

北上「失礼しちゃうなぁ、もう!私だってね、面と向かってあそこまで言われたら流石にちょっと傷付くってーの!」

提督「はいはい、悪かったよ。今度飯でも奢ってやるよ」

北上「ん、じゃあそれで手を打とうかな。それよりさっきから何と睨めっこしてーんの?」ノゾキコミ

提督「ん?あぁ、これか。異動の話だ」ピラッ

北上「え…?え、ちょっと、何それ、聞いてないって!提督別んとこいくの!?」

提督「ばかたれ、俺じゃない。お前達艦娘の、だ」

北上「あ、そうなんだ。へぇ…って、おい!」

提督「上官に向かって『おい!』とはなんだ、アホタレ!」

北上「いやまぁ、ノリっていうかなんていうか…そ、それより誰が異動すんのよ!」

-道場-

日向「……ふぅ」

利根「少しよいか、日向」

日向「ん、あぁ。利根さんか」

利根「辞令、聞いたぞ」

日向「…私には姉が居てね。伊勢と言うんだが、彼女の所属する鎮守府からお声が掛かったのさ」

利根「そうだったのか」

日向「それに、私だけではない。長門、翔鶴、飛鷹、筑摩、阿賀野、天龍、龍田、まるゆ……彼女達にも異動の
辞令は降りている」

利根「殆どが後輩鎮守府の再編が整った事によるものだそうじゃが…」

日向「その後釜には提督の先輩提督が就くと聞いている。漸く意識も回復し、心身への異常も認められなかった
とかで早々に退院も出来たそうだ」

利根「ふっ、少しばかり寂しくなるのう」

日向「別れのない出会いなどは無い。だからこそ、この地で得られたその全てを私はこの身に刻み込んでいる」

利根「合縁奇縁とはよく言ったものじゃな。提督もそうじゃ…彼が居なければ、今の我輩達は無かった。そう考
えると、本当に不可思議じゃな」

日向「だから生きているのは楽しいんだ」

利根「かもしれんな。おっと、そうじゃ…本題をすっかり忘れておったぞ」

日向「ん?」

利根「盛大に祝してやる。お主も来い。我輩達からの持てる限りの最大の手向けじゃ」

日向「まぁ、それも悪くない」

-演習場-

長門「……短いようで、長い月日だったな」

榛名「そんな、今生の別れみたいな…」

長門「ふっ、すまんな。感傷的になるのはどうも性分とはかけ離れているみたいだ」

電「長門お姉さん、いっちゃうの?」

暁「わ、私は別に寂しくなんてないけどね!」ウルウル

響「暁…目に涙一杯に言っても説得力ないよ」

長門「出来る事なら、お前達駆逐艦とも一緒の任務で暴れてみたかったが、どうやら今回は願いが叶わなかったようだ」ナデナデ

電「はわわ…」ナデラレ

長門「あぁ、そうだ」ゴソゴソ

響「?」

榛名「それは?」

長門「うむ。私自身、こう…手先が余り器用ではないのでな。妖精に協力してもらいつつ、試行錯誤して作って
みた。アクセサリーだな。ふふ、少し不恰好になってしまったのは笑って許してくれ。七つあるから、お前達暁
達と白露達三姉妹、それと島風にそれぞれ渡してやって欲しい」

暁「な゛が どぉぉ~~!」グスグス

長門「ふふっ、そう泣くな。異動先は先輩鎮守府で、私は先輩提督の秘書艦として招かれた。近所に引っ越すよ
うなものだし、会おうと思えばいつでも会える。それに、私達の補填ではないが、新たな仲間が進水するのだろ
う?新しい家族だ。楽しみだな」

皆様こんばんは
本日も粛々と更新

-中庭-

阿賀野「はぁ、ここでの暮らしもあと少しかぁ。夕張ちゃんに借りてたものとか返さないとなぁ」

龍田「阿賀野ちゃんは提督、元に戻るだけだからいいけどね~」

天龍「オレや龍田、もぐらはまさに新天地だからな。ちっと緊張するぜ」

まるゆ「うぅ、もぐらじゃないもん!まるゆだもん!」

天龍「へーへー、そーでございますか。ったく、いきなり半泣きで喚きだした時は何かと思えば、左遷させられ
るぅ~!とか勝手にほざいて混乱してたクセによぉ。そういう所の反論だけは一端だよな」

まるゆ「だ、だってだって!まるゆはこれといって、特技とか得意なこととか、本当に何もないから…」

天龍「だから提督が見限っててめぇ捨てたとでも思ったか?」

まるゆ「そ、それはぁ…」

天龍「バーカ。提督はそんな薄情じゃねぇ。それに、ここに居る四人は全員先輩鎮守府んとこへ異動なんだぜ。
長門も一緒だ。先輩提督の手腕は本物だって言うじゃねぇか。そんな人んところが左遷先なんて、お前冗談でも
笑えねぇぞ」

まるゆ「う、うぅ…」

龍田「後は翔鶴ちゃんも一緒ねぇ。筑摩ちゃんと飛鷹ちゃんは日向ちゃんと一緒だったかしら~」

天龍「オレ等と入れ代わりで三人ばかし、こっちの鎮守府に進水してくるヤツ等が居るって聞いてるけど日時的
にもオレ等は面ぁ拝めなさそうだがな」

-食堂-

金剛「長門や日向、他の皆も居なくなるのは寂しいネー」

比叡「けど、三名ほど新しくこちらにくるようじゃないですか」

霧島「内一名は駆逐艦の子で、正式な配属かどうかもまだ解ってないそうよ」

鈴谷「ちーっす!」☆(ゝω・)ゞ

熊野「鈴谷さん、いい加減その挨拶の仕方どうにかなりませんの?」

鈴谷「えー、無理」

金剛「Hello! 二人とも異動の話は聞いてるヨー?」

鈴谷「うん、筑摩さんから聞いたー」

熊野「寂しいですけど、出会いがあれば別れもありますもの、仕方ない事なのかもしれませんわね」

鈴谷「まぁねぇ、こればっかりはねぇ」

霧島「まぁだからこそ、こうして送別会の準備してるんだけどね」

鈴谷「よーし、鈴谷も張り切って手伝うかんね!料理は任せて!」

比叡「私も、気合い!入れて!てつd……」

熊野「ひ、比叡さんは装飾のお手伝いをお願いしますわ!」アセ

比叡「…そうですか?」

霧島「」(比叡お姉さまに料理をさせたら凄い事になりそうね)

金剛「」(悪気はない子だけど、比叡に料理はNGネー…)

比叡「ん?」キョトン

飛鷹「んもう、大袈裟なんだから…」

長門「だが、こういうのも悪くない」

日向「ああ…門出として呷る酒も、これはこれで乙なものだ」

筑摩「ふふ、そうですね。武勲を上げた訳ではないのに、ヨイショされるっていうのも、たまには良いかもしれません」

翔鶴「笑顔で送り出してくれる…と、言うのがこれほど嬉しいものかと、涙が出てきますね」

龍田「皆が笑って、笑顔でいるんだもの~。私達が泣いたらダメよ~」

まるゆ「ずびばぜん、わだじはムリでずぅ~」グスグス

阿賀野「ほらほら、まるゆちゃん鼻水……はぁ、でもやっぱり、仲良くなれたのに離れ離れは寂しいねぇ」

天龍「バーカ。むしろ代表だろ、代表!オレ達は提督鎮守府の代表として他の鎮守府へ移るんだ。栄誉で名誉、
それ以外に何があるってんだよ!」

木曾「へへっ、言うじゃねぇか天龍。先輩提督んところでも暴れろよ!」

天龍「おう!木曾、てめぇの耳にもイヤってほどオレ様の名前入れてやるから覚悟しとけよ」

木曾「はっ、言ってろ!が、仲間の武勲の知らせってのはまぁ……アリだな」

龍驤「飛鷹ぅ~、ほんま元気でやるんやでぇ!」ウルウル グシグシ

飛鷹「ち、ちょっと…人の袖で涙拭かないでよ!自分ので拭きなさいよ!」

利根「ほれ、筑摩。ぐっといけ、ぐっと!」

筑摩「ね、姉さん、私はそんなお酒強くないから…」

利根「なぁにを言うか!利根型じゃろ!利根型二番艦の筑摩じゃろ!」

筑摩「余り関係がないような…」

利根「まぁそう言うでない。ほれほれ♪」

筑摩「もぉ、利根姉さんったら、あんまりくっつかないで下さい…」

本日はここまで

皆様こんばんは
粛々と更新しまっす

暁「ながとー!これ、のみなさい!」

長門「む、なんだこれは」

響「オレンジジュース」

電「き、今日は電達で長門お姉さんのおしゃくをするのです!」

榛名「長門さん、付き合ってあげて下さい」

長門「ふっ、そうだな。よし、そのビンをこっちへくれないか、暁」

暁「へ?」

長門「何を呆けている。ほら、コップを持て。お前達もだ、響、電」

響「あ、うん」

電「あ、あれ?なんだか逆のような気が…」

長門「ははは、気にするな。普段、駆逐艦のお前達や白露達、軽巡の天龍姉妹や阿賀野、川内に神通……そして
木曾や夕張、阿武隈…皆が遠征任務などで足場を支えてくれるから、前線の私達は何の憂いもなく、前を向いて
戦えるんだ。そんなお前達を労わずして、何を労えという。これは、正当な権利だ」

暁「長門…」

長門「うむ。暁、響、電、いつもお疲れ様だな。今日くらい…というが、今日しかないからな。一緒に飲もう」

北上「ほい、阿賀野っち」

阿賀野「あ、ありがとー、北上ちゃん」

夕張「阿賀野、貸してたゲーム機持ってっていいよ」

阿賀野「えぇ!?」

夕張「餞別よ。せ・ん・べ・つ」

阿賀野「大事にするよー」

白露「えっ、夕張ちゃん!私には!?」

夕張「あんたはここに残るでしょうが…」

白露「あっ、そっか」

阿賀野「あはははっ」

時雨「はぁ、この抜けた所さえなければいいんだけどね」

夕立「んふふー、それは無理っぽい」

島風「白露ちゃんからボケとったらただのポンコツじゃーん、にししっ」キャッキャ

白露「全部聞こえてるからー!もーっ!」

阿賀野「あぁ、そんな暴れたら危ないよ、白露ちゃん。あははっ」

夕張「ホント、この姉妹仲が良いわ…プラス島風ちゃん」

-中庭-

提督「……」

長門「こんな所で一人晩酌か、提督」

日向「連れないな、君は」

筑摩「今日のメンバーは最後かもしれないんですよ?」

天龍「一人だけ星が肴かよ」

龍田「ロマンチストにはみえないわね~」

翔鶴「夜風が気持ちいいですね」

阿賀野「ふぁ~、いい風ぇ」

飛鷹「物思いに耽るなんて、それこそらくしないわね」

まるゆ「た、隊長も一緒に、どうですか?」

提督「なんだよ、皆との馬鹿騒ぎに興じてなくていいのか?」

天龍「あんたが居て、初めて成立するんだよ。オレ達のバカ騒ぎってのはな」

日向「ふっ、トリをとってもらわないとな」

筑摩「示しがつきませんよ、提督」

まるゆ「大トリですよ!」

提督「参ったね」

龍田「あら~、私達が任せているのにそんな態度なの~?」

飛鷹「相変わらず、オンオフの態度が明確よね」

阿賀野「でも、そこが提督らしいよね」

翔鶴「ええ、本当に」

長門「さぁ、酌み交わそうか。提督」

提督「そうだな。酌み交わすか。あと、明日にでも今日顔を出せなかった陸奥と阿武隈の所にも連れて行く」

長門「ああ、解った。提督、陸奥や阿武隈のことは任せたぞ」

提督「言われんでも解ってるよ」

-後日 鎮守府・近海-

提督「……全艦、主砲構えーっ!」

榛名「一斉射、撃てーっ!!」


ドォン ドォン ドォン ドォン ドォン ドォン ドォン


天龍「ははっ、こうしてみると壮観だぜ」

日向「ああ、いい門出だ」

長門「胸が熱いな…」

提督「長門、日向、翔鶴、飛鷹、筑摩、阿賀野、天龍、龍田、まるゆ……この地で学んだ全てを遺憾なく発揮し、
お前たちの名が何処に居ても轟くことを期待する。お前たちの上官で在れたことを俺は誇りにしてこれからも邁進
し続けよう。さぁ行け…暁の水平線に、勝利を刻み込むために!」

長門「必ず、また会おう、提督。その時はまた、酒でも酌み交わそうか」

日向「君が私の提督であったことに、私も誇りを持とう」

翔鶴「提督、貴方が掬い上げてくれたこの命の恩、たとえどれだけ離れていても私は生涯忘れませんよ」

飛鷹「私が抜けたとたん腑抜けたりしたら承知しないわよ?って、愚痴っても仕方ないけどね、ふふっ」

筑摩「提督、利根姉さんはあんなですから、時々様子見て上げて下さいね。一時でも、また提督と共に肩を並べ
れられた事、嬉しく思います」

阿賀野「てーとくー、阿賀野、もっともっと凄くなっちゃうからね!手放したこと、後悔させちゃうんだから!」

天龍「よう、提督!後からオレの強さに惚れ直してもおせぇからな。まっ、あっちでの活躍に嫉妬してくれよ!」

龍田「ふふふ、楽しかったわよ、提督。私も提督の事はきっと忘れないと思うわ~」

まるゆ「あ、あの!隊長!まるゆは隊長の下で成長できたと思ってます!まるゆのこと、気にかけてくれて本当
にありがとうございました!まるゆは、これからもがんばりますからぁ!」

提督「ああ、俺もお前たちのことは忘れたりしないさ。だから、心置きなく行って来い!」

榛名「…行っちゃいましたねぇ。提督?」

提督「…何でもない」クルッ

赤城「提督って、ちょっと涙脆いところありそうですね」クスッ

提督「うっせー、目にゴミが入っただけだ!」

鈴谷「あはは!そんじゃ、そういう事にしときますかー」ニヤニヤ

龍驤「せやなー、提督の威厳損なってまうしなぁ」ニヤニヤ

北上「提督の貴重な号泣シーンっと…」パシャ パシャ

羽黒「もう、北上さんったら…」クスッ

木曾「おら、午後からは新着で三人艦娘新しく来るんだろ。そっちの準備も進めとこうぜ」

霧島「ええ、そうね!」

提督「わぁかってるよ!はぁもう…どいつもこいつも」

榛名「ふふ、口癖…最近は出ませんね、提督」

提督「暇じゃなくなったしな」

白露「暇は暇で暇だから退屈だよー」

夕立「っぽい?」

時雨「ぽいって言うか、まんまじゃないか、それ…」

提督「だぁー、もううっせーうっせー!朝のミーティングさっさと始めるぞ!ほらっ、動け動け!」

瑞鳳「空元気って感じだね」

大鳳「出会いがあれば別れがあるって言うしね。むしろ、それだけ提督は私達一人一人を大事にしてくれてるっ
てことだと思います」

川内「そーそー、昨日だって一人外で誰か死んだのかってくらいテンション下げて呑んでたくらいにね」

熊野「なんていうか、表現悪くありませんこと、それ…」

神通「あ、あはは…」

衣笠「まぁまぁ、取り敢えずミーティングよ、ミーティング!皆いきましょ」

-作戦室-

提督「……って事で、今日の任務は以上だ。長くとも本日のヒトナナマルマルには終わるだろう」

金剛「Hey!提督ぅ、新しい艦娘は何時くるネー?」

提督「この鎮守府にはヒトフタマルマルには到着予定だ。あと二時間ちょっとってとこだな。榛名は悪いがこの
後は執務室で書類整理を手伝ってくれ」

榛名「はい、お任せ下さい!」

提督「近海哨戒任務は衣笠、利根、北上、木曾、神通、島風の六名。遠征組はそれぞれ鈴谷、熊野が旗艦、随艦
には鈴谷の方には羽黒と暁隊、熊野には夕張と白露隊、各五名で行うこと」

鈴谷「ぃえっさー!」

熊野「了解しましたわ」

提督「んで、戦艦組と空母組、お前たちは鎮守府の掃除だ。頑張れ」

龍驤「あ、あんな提督…サラッと言うてるけど、この鎮守府リフォームしてんねやろ?」

提督「ああ、そうだな」

龍驤「むっちゃ広いやん?」

提督「ああ、そうだな」

龍驤「空母組かて四人やん。戦艦組は三人やん?」

提督「ああ、そうだな」

龍驤「どう考えても無理やんな!?」

提督「あぁ、そうか。すまんすまん…えっと、残ってるのは川内と潜水部隊か」

川内「ギクッ…」

イムヤ「はぁ……」

ゴーヤ「嫌な、予感…」

提督「…ってことで、合わせて十名確保した。頑張れ」

赤城「…やる前からもうお腹空きました」

瑞鳳「え、えぇ…!?」

金剛「よーし、ピカピカにするネー! Follow me! 皆さん、ついて来て下さいネー!」

比叡「よしっ!私も頑張ります!」

霧島「比叡お姉さま、言っておきますけど、以前寮を掃除してた時みたいに途中でサボってたら…」メガネキラン

比叡「うっ…!」

霧島「耳元でマイクチェックしますよ、今度は…」

金剛「Oh…それはされたら悲惨ネ、比叡…霧島、こういうの容赦ないヨ」

大鳳「私はむしろ久々に鎮守府内を動き回れるから楽しみだわ」

川内「任務ないから夜まで寝てられると思ったのにぃ…」

イムヤ「あんた、それは怠けすぎでしょうが…」

本日はここまでー

皆様こんばんは
本日も粛々と更新

-執務室-

提督「……いや、あのですね。俺は……って、あれ?もしもーし、もしもーし……くぅおぁぁ!切りやがった!
あんのクソ先輩提督…っ!」

榛名「廊下まで声、響きますからね、提督」

提督「だってよ!おま、あれだよ?命かけて助けたのに、言うに事欠いて返ってきた言葉が『後輩取り逃がすと
かあんたバカなの?』って俺は悪くねぇ!大本営に駐留してた大将連中が!」バンバン

榛名「って、私に言われても…」ニガワライ

提督「あぁ、うん。だよね」

榛名「それより提督、これ判子お願いします」スッ

提督「ん…あぁ、新着の三人に関する書類か」

榛名「はい。正直、翔鶴さんと入れ代わりできた正規空母が彼女だったのは以外です。てっきり私は先輩提督の
方へ配属されるとばかり思ってたので」

提督「あぁ、俺も少し驚いてる。まぁ、赤城と大鳳が居るとはいっても、残りの瑞鳳と龍驤の二人だけってのも
正直荷が重いだろうから、歓迎は歓迎なんだがな。まぁ何より、後遺症もなく無事治療も終えたってのが個人的
には喜ばしい」

榛名「確かに、そうですねぇ。えーっと、残りの二名は…駆逐艦と潜水艦、ですか?」

提督「あぁ。駆逐艦の方はうちで研修みたいなもんだ」

榛名「研修?」

提督「そっ、なんでも大本営に元々は籍を置いてたみたいだが、あっちは任務なんて早々舞い込んでこないだろ」

榛名「つまり、経験を積ませたいと…」

提督「だな」

榛名「潜水艦はまるゆちゃんの後任って事ですか?」

提督「それもあるし、何よりイムヤとゴーヤ、まるゆで今までは回せてたものが一人抜けたらその分、負担が増
えるだろう。取り敢えず三人、揃えておきたかったってのが前提だな」

榛名「潜水艦の子たちは本当に縁の下の力持ちですからね」

提督「数日掛かりの遠征なんかじゃ、毎度申し訳なく思う。勿論、遠征任務が多い軽巡洋艦や駆逐艦の奴らも同
じでな。遠方だと、なんていうか…毎度そうだが心配で仕方がない」

榛名「ふふっ、親心、みたいな?」

提督「親じゃねぇよ!」

榛名「はいはい。言い当てられると直に声を荒げる癖、直さないと言動だけで色々とばれちゃいますよ?」

提督「んなっ」アセ

榛名「あなたは結構解りやすい性格ですよ?」クスッ

-先輩鎮守府-

先輩「あ~~……この椅子の感触、ひっさびさー!」

大淀「本日、ヒトフタマルマルの着任式までの時間、代理で秘書艦を務めさせて頂きます、大淀です」

先輩「うん、ありがとね、大淀ちゃん」

大淀「元帥殿からも頼まれましたから。それよりも、本当にこのメンバーでよかったのですか?お言葉ですが、
先輩提督の階級は中将です。相応の艦隊編成が可能であり、また義務でもあります。確かに、錬度として見れば
彼女達の力は十分に先輩中将を支えられるだけのものはあると思いますが…」

先輩「いいのよ。それに、私の失敗は貴重な戦力を削ぎ落とした事だけじゃない。それも踏まえてかしらね。そ
れに、今の私は中将じゃない。少将よ」

大淀「…は?」

先輩「階級よ、階級。ワンランク下げてもらったのよ」

大淀「申し訳ありません。言っている意味が、よく…」

先輩「あははははっ、別に解らなくたっていいわよ。これは私のけじめみたいなもんなんだからね。ヒヨっ子に
助けてもらったのもあるし、あいつにも恩返しは必要じゃない?だから、私はここに戻ってきたのよ」

大淀「は、はぁ…解りました。元帥殿にもその事は報告として上げておきます」

先輩「あははは、別に報告として上げるような大層なもんじゃないでしょうに…ホント、大淀ちゃんって真面目
よねぇ…えーっと、あいつんところから送られてきた書類はっと…」

大淀「提督鎮守府から送られてきた書物はこちらです」スッ…

先輩「おっ、あんがとー…ふむふむ、秘書艦は、戦艦長門……にしてもあの子、よく長門寄越してくれる気にな
ったわよねぇ」

大淀「それを言うなら、元々は貴女の艦隊……それも第一艦隊に属していた正規空母を手放したのも、私からし
てみれば以外な程でしたが…先の混乱も収まり、彼女自身も無事だったんです。元の鞘に収まるのが道理と踏ん
でいたんですけどね」

先輩「んー、まぁね。ただ、これはあの子が望んだ事でもあるから、私はそれを尊重したまでよ」

大淀「そうでしたか。さて…そろそろ彼女達も着任してくる頃です。出迎えましょう。そこで私と秘書艦の務め
も引き継がせて頂きます」

先輩「はいはーい。それじゃ行きましょうか」

-鎮守府・母港-

??「あっ、わざわざお出迎えしてくれるとは!」

提督「よう、すっかり元気になって何よりだ、飛龍」

飛龍「改めまして!航空母艦、飛龍です。空母戦ならおまかせ!どんな苦境でも戦えます!」

イク「はじめましてなのね。優しそうな提督で嬉しいのね。伊19なの」

榛名「伊って事は、イムヤちゃんやゴーヤちゃんと一緒、なのかな」

イク「イムヤとゴーヤ、やっぱりいるのね!イク今から楽しみ!あっ、イクの事はイクって呼んでもいいの!」

提督「またこゆいの来たな…」

??「あ、えっと…白露型駆逐艦五番艦の春雨です、はい」

榛名「白露型…」

提督「おぉ、白露達の姉妹か」

春雨「え?」

榛名「それにしても、美味しそうな名前…」

春雨「おいしそう…ってその春雨とは違います!」

榛名「あ、あはは…」アセ

提督「お前のおねーちゃん達、長女と次女、四女がうちには居るんだよ」

春雨「えぇ!?白露お姉ちゃんと、えーっと…時雨お姉ちゃん、あとあと…夕立お姉ちゃん?」

榛名「うんっ」

提督「今は遠征任務で出払ってるけどな。夕方には戻るだろうから、仲良くやれよ」

春雨「は、はいっ!」

提督「よし…飛龍、イク、春雨。よくぞ我が鎮守府へ着任してくれた。我々は君達を歓迎しよう。同時に君達の
戦果にも期待する。これから宜しく頼むぞ」

三人「「「はい!」」」

提督「鎮守府内の案内は榛名に任せる。俺は大本営と艦娘病院に行く用事があるから、そのまま引き続き代理を
榛名に任せるが、構わないか?」

榛名「はい!榛名は大丈夫です!」

提督「よし、それじゃ任せた。このまま俺は向かうから宜しくな」

-先輩鎮守府-

長門「本日よりこちらに着任する、長門型一番艦戦艦長門だ。宜しく頼む」

翔鶴「同じく、本日付で着任しました。翔鶴型一番艦正規空母の翔鶴です。宜しくお願いしますね」

天龍「オレは天龍。天龍型一番艦軽巡洋艦の天龍だ。よろしく頼むぜ!」

龍田「同じく天龍型二番艦の龍田です。よろしくね~」

まるゆ「はっ……!ま、まるゆは海軍工廠出身じゃないので、皆さんとちょっと違うっていうか…」

先輩「あはは、そんなの気にしなくて良いよ。五人とも、良く来てくれました。若干、顔馴染みもいると思うし
馴染みやすいとは思うから、今後とも宜しくね」

大淀「それでは長門さん、後の秘書艦執務はお任せしますね」

長門「ああ、賜った。任せておけ」



-大本営-

提督「……って事でやって参りました、大本営」

陸奥「あら、提督」

提督「おう、陸奥。元気そうだな」

陸奥「ええ、おかげさまでね」

提督「両手、どうだ?」

陸奥「うん、もうかなり普段通りに動かせるようになったわ。近代化改修様々ね」

提督「そうか、良かっひゃ……ふぉい、はにひへんひゃ!」グイー…

陸奥「うふふっ、ね?この通り、いつでも提督をフルボッコに出来るわ」グググッ…

提督「いへーから…ひょっちょ、いへーからひゃ!ひゃにゃひふぇ!」

陸奥「何言ってるのか解らないのも不便ね」パッ…

提督「あ゛ー、いってぇ…容赦なさすぎだろ」ヒリヒリ

陸奥「気安く人の頭撫でるのが悪いのよ」

提督「大抵の艦娘喜ぶんですけどねぇ」

陸奥「煩いっ」

提督「へぇへぇ…よし、そんじゃ支度整えて阿武隈迎えに行くぞ」

陸奥「ええ、了解よ」

本日はここまでー

皆様こんばんは
ほん(ry

-艦娘病院-

医師「どうだい、まだ不安や恐れは奥底に残ってる感じがするかい?」

阿武隈「正直解りません。でも、もう逃げたくありません」

医師「うん、そうか。提督殿には正直に全てを話す。その上で、提督殿自身に判断してもらう。それでいいね?」

阿武隈「はい、大丈夫です。それで、構いません」


医師「……と言う訳で、本人が自覚してる部分では、幾分か深海棲艦に対する恐怖心と言うのは払拭できている
のかな…と、言った感じなんですが…」

提督「あくまで映像や演習においてのみ、ってことですね」

阿武隈「…………」

陸奥「…大丈夫よ、阿武隈」

阿武隈「陸奥さん…」

陸奥「長門姉さんだってそうだった。大鳳も、木曾も、神通だって……あの時、あの場に居た皆が阿武隈と一緒、
同じ思いをしたのよ。勿論、私もね?」

提督「俺の言葉は必要なさそうだな、こりゃ…」ニガワライ

医師「はははっ」

陸奥「さぁ、行きましょ。皆が待ってるわ」

阿武隈「……はいっ!」

この鎮守府に着任する前、大体のことは大本営から通達として聞いていた。

それでも馬鹿正直に大本営が全てを告げるはずもない。

内容としてはありきたりで前任提督による不徳とする行為の数々によって鎮守府としての機能が損なわれた結果、

通常運用が間々ならない状況に陥ったことによる上官の交代要請。

それに伴い、現存する艦娘たちのメンタルケア。

前者は俺が代われば良いだけで済むが、後者はどうやったって俺じゃ無理な話だった。

精神科医でもなければメンタルカウンセラーでもない。

俺は日本海軍の提督であって戦術、戦略には長けても、心のケアなんてものは不得手に入る部類所か不可能の域にある。

案の定、着任して早々、現存する艦娘連中からは空気のようにぞんざいな扱いを受けた。

今思えばそれもいい思い出だが、正直あの当時は堪えた。

紆余曲折を経て今に至るも、やはり彼女たちの心のケアというのは困難を極めた。

だが、今回ばかりはどうしても力になってやりたいと願った。

陸奥と阿武隈、この二人を救えるのは俺だけだと、そう思ってありとあらゆる手を尽くしてみた。

が、気付いてみれば艦娘に励まされる俺と、対象として救うはずの艦娘に救われる始末。

結局のところ、彼女たちの支えあっての今であり、俺は常にそんな彼女たちから勇気と力を得ていたのだと再認識した。

陸奥の一言であそこまで阿武隈の表情は変わるものかと……何度話し合っても感情を露にしてまで言い合いには

ならなかったってのに、北上と会話させれば激昂したという。

まぁ、確かに立場上、上官である俺に対して激昂する訳にもいかないんだろうが、たった一度の面会で彼女の感情

を呼び戻してしまった北上には頭が下がる。

何はともあれ、漸く全員が揃った。これで名実共にこの提督鎮守府が深海棲艦に対し、反撃の狼煙を上げる時が来る。

-鎮守府近く-

提督「さぁ、見えてきたぞ。二人とも久々だろ。リフォームして結構でっかくなったんだぞ」

陸奥「ほんっと、久しぶりねぇ…長門姉さん達が異動するって全員で押しかけてきたときはちょっとビックリし
たけど、先輩提督が復帰したんだものね。元々うちで預かってたようなものだし、仕方ないのかな」

提督「あっちからの注文も幾分かあったけどな。あと、日向、飛鷹、筑摩はまた別の鎮守府だ」

阿武隈「…戻ってこれた」ウルウル

提督「ははっ、当然だろ?ここがお前の居場所だ」ポンポン

阿武隈「うぅ…あぁ!もう!北上さんじゃあるまいし、あんまり触らないでくださいよ!あたしの前髪崩れやす
いんだから!セット大変なんだからね!」

提督「っと…」

陸奥「ふふ、やっと阿武隈らしくなったわね」

提督「はぁ、元気なのはいいことなんだがな。元気になったからって直に北上に噛み付くなよ?」

阿武隈「噛み付いてくるのあっちだし!」

提督「へぇへぇ…」


スタスタ……クルッ…


陸奥「どうしたのよ、いきなり向き直って…」

阿武隈「普段、キャップも被ってないのにね…」

提督「まっ、形式だな。形式」サッ

陸奥「ぁっ…」

提督「…長門型二番艦戦艦陸奥、及び長良型六番艦軽巡洋艦阿武隈!君たちの帰還、心より歓迎する!」ビシッ

阿武隈「て、提督…」

提督「…なんてな。お帰り、二人とも」ニコッ

陸奥「うん、ただいま。提督」

阿武隈「遅くなってごめんなさい」

~青雲と凌雲~

-執務室-

榛名「お疲れ様です、提督。どうぞ、珈琲です」

提督「ん、さんきゅー。はぁー、これ飲むと気が休まる」

榛名「今日は珍しくこれといった任務が入ってきませんね」

提督「それが嫌なんだよ。嵐の前の静けさ…のどかな空気の中に、こう一本の電話とか通信が…」


ピピピピピ ピピピピピ ピピピピピ


榛名「えー……」

提督「マジでか…はぁ、もう…はい、こちら提督鎮守府。識別番号どうぞー」

??『腑抜けた声だな、提督』

提督「へ?」

??『なんだ、もう私の声は忘れたのか。案外軽薄な男だな、君も』

提督「ひ、日向か!?」

日向『まだそこを離れて一週間程度しか経ってないと思うんだが、まぁそれもいいさ』

提督「あ、いや、唐突だったもんでな。すまん…それよりどうした?」

日向『ああ、急な話で悪いんだが、君のところの水雷戦隊に協力を仰ぎたい』

提督「うちの水雷戦隊?どうしてそうなるのか経緯を聞かせてくれるか?」

日向『うん?あぁ、それもそうだな』


提督「……そうか、キス島に残っている人たちの救出作戦か」

日向『現時点で北の海域全てを制圧するのは困難だ』

提督「だが、どうして俺の方に?」

日向『うちの鎮守府には駆逐艦を中心とした水雷戦隊を組むだけの人員が確保できなくてね。提督に前の鎮守府、
つまり君のところの話をしたら、話を通して見てくれと言われてね』

提督「そういう話を普通艦娘に委ねるかね…」

日向『ふふっ、私の所の提督はどうもゆるすぎてね。現元帥殿よりは若いが、まぁいくつか修羅場を潜ったよう
な面構えはしている人さ』

提督「協力は出来る限りしよう。だがその場合はちゃんとした鎮守府間でのやり取りが必須だ。こっちにもこっ
ちの任務がある。駆逐艦の連中にも勿論任務がある。共同戦線を張って聯合艦隊を編成するなら尚のことだ」

日向『ああ、最もな意見だ。その点についてもうちの提督にちゃんと話をしておこう。それじゃ、私もまだ任務
中の身なんでね、通信を切らせてもらうよ』



ブツン…


榛名「キス島っていうと、例のうずしおの関係で一定速度を維持しないと通過できない海域がある…」

提督「ああ、そうだ。別名、魔の領域と言われている。正直なところ、うずしおに惑わされずに速度を維持する
だけならそこに全神経を集中させればお前たち高速戦艦や赤城たち空母組にも可能だろう」

榛名「けど、実際には敵が布陣しているから…」

提督「そう…交戦の最中に流され、ルートからは確実に外れる。例え敵を殲滅して戻ったとしても…」

榛名「新手の敵陣が待ち構えて一からやり直し…」

提督「そう言うこと。これを突破するにはそれらを振り切る速度をもつ駆逐艦が必須。敵側にも駆逐型はいるだ
ろうが、陣形を崩して単独になってまで追ってこようなんて奴らはそうは居ない」

榛名「どうするんですか?」

提督「白露姉妹と島風、暁、響かな」

榛名「春雨ちゃんも、ですか?」

提督「あー、いや。彼女は今回は抜きだ。それと、陸奥、飛龍、龍驤、羽黒、北上、木曾の六人にも頼むか」

本日はここまでー


キス島のモデルになってるキスカ島と言えば阿武隈なんだけど出番は無いのかな?

皆様こんばんは
ほ(ry


>>45
そこまで機転を利かせることが出来ませんでした
ですが、出来る限り各艦娘をクローズアップした回は盛り込む予定ですので
そちらで阿武隈ちゃんの活躍を見てもらえれば幸いです

-あくる日・作戦室-

提督「皆、お疲れさん」

陸奥「どうかしたの?」

木曾「あんだよ、今日は任務ねぇと思ってたのによー」

提督「木曾、言葉を慎め」

木曾「へ?」キョトン

??「あっはっは!いやぁ、提督大佐ん所は艦娘も元気ハツラツとしててぇ、いやぁ…いい、実にいいねぇ」

木曾「な、なんだぁ?」

提督「以前に座学で話したことがあるだろう。現海軍には、俗に言うエリート艦隊がいて、中将や大将クラスの
鎮守府で功績を挙げ続けているって。俺の先輩が率いてた鋼鉄の艦隊もその一つ。で、この方はそんなエリート
艦隊を率いている大将の一人だ」

木曾「うげっ、マジかよ…た、大将って…な、なんだってそんな大物がこんなチンケな場所に…」

提督「チンケで悪かったな」

大将「だぁーっはっはっは!いやぁ、提督君さぁ、お前んとこの艦娘マジ面白いね。どうせなら日向じゃあなく、
そこの木曾ちゃんトレードさせてもらえば良かったわぁ」

日向「はぁ…話が進まない。伊勢、君からも何か言ってくれ」

伊勢「んん~~、無理、かなぁ…こういう人だからねぇ」

陸奥「日向!?」

日向「ん?ああ、陸奥か。久しぶりだね。とは言っても、まだ一週間ほどしか経ってないが…」

提督「とにかく、全員席に着け」

提督「……まぁ、そんな訳で、引き続き俺たちは北方海域の攻略に従事することになるかもしれない」

龍驤「せやけど、うち等はその海域、入り口までしかいけんのやろ?」

北上「つまり私達は白露っち達の護衛って訳か」

伊勢「ごめんね、君達にばかり重荷を背負わせるような形になるかもしれない…」

大将「すまんね、うちにはキス島に挑めるだけの錬度を持った駆逐艦が揃ってない。お陰でついた異名は不動要塞、
不動の艦隊なんて言われてるよ」

飛龍「道中、キス島手前にあるうずしおが展開された海域目前まで、水雷戦隊を護衛すればいいんですよね?」

羽黒「その後、モーレイ海の哨戒は進んでるんでしょうか?」

不動「こっちの艦隊で常に目を光らせてる。お前さん等のお陰でね。正直、深海棲艦の幹部クラスを仕留める事
ができたのは今後の任務遂行に際してかなり公算として高い。中将や俺達大将連中でさえ、一歩を踏み出すのに
躊躇してたほどなんだ」

提督「この場で言う事ではないと思うんですが、不動提督…」

不動「あぁん?」

提督「以前に元帥殿から直に伺って知ってます。現大将十名の意見は現時点でキス島、如いては北方海域全体を
攻略するのは時期尚早であると…まずは北方を監視するに留め、西方より攻略を進めるべきであると提案・可決
が成され、満場一致であったと聞いてます。何故このタイミングで再び北方海域、魔の領域であるキス島の救出
及び撤退作戦を敢行されたのか、率直な意見を伺いたいと思います」

不動「……まぁ、妥当だぁな。そう思うのも当然ってなぁ」

伊勢「元々は私達の艦隊にも水雷戦隊は従事してたんです」

響「じゃあ、何故今は…」

伊勢「一言で片付けてしまうのであれば、作戦ミス…かな」

不動「……今よりも情報が出揃ってない時期だったなぁ。モーレイ海も深部までは攻め込まず主力艦隊と見込ん
でいた一群を制圧して、あの規模ならいけると踏んだ。当初は伊勢を基幹とした水上打撃艦隊で乗り込んだが、
知っての通りうずしおに翻弄されてな。戦闘時でも常に35~40ノットはかっ飛ばせる艦じゃねぇとこりゃあ無理
だってんで、当時うちの艦隊で破竹の活躍見せてた駆逐艦六人に向かってもらったんだわ」

伊勢「結果、戻ってきたのは僅か一隻……その戻ってきた子も、片腕を失い満身創痍で命辛々逃げ延びてきた」

白露「そんな…」

不動「……何かがおかしい。俺の直感がそう告げた。その後さ、今度はモーレイ海を哨戒してた俺の航空戦隊が
的にされて半壊にまで追い込まれたのはよ」

島風「半壊って、まさかっ…!」

暁「戦艦レ級……」

伊勢「ええ、見た事もない深海棲艦で圧倒的な強さを誇っていたと聞いた。けど、大破したり大怪我負った子は
居ても、誰一人としてロストする事はなかった。一応皆無事で戻れた…ううん、あれは無事とは言えない…」

不動「ああ、見逃されたってのが一番妥当な表現だぜ…こっちを徹底的に甚振って、屠って、弄り尽くす鬼畜の所業」

夕立「ひどい…」

不動「んで、提案したんだよ。現時点で北方海域を攻略するのは得策ではない。開示が進んでない他の海域に進
路を変えて、一旦様子を見るべきだってな。惨状を知ってた他の九人の大将連中は二言返事でオーケーさ。最も
元帥殿の愛娘、先輩中将が般若の形相で猛反発してくれたがねぇ…ありゃあ夢に出てくる迫力があったぜ」

北上「んでさー、そんなおどろおどろしい話聞かせた後でうちの子等向かわせんの?」

提督「北上、口を慎め…」

北上「だってさぁ!大将連中お抱えの水雷戦隊っしょ!?言わばエリートじゃん!それが……っ!」バンッ

不動「北上嬢ちゃんの言い分は最もだよ。だからこいつぁ俺の頼みだ。頼む、提督大佐…お前さんとこの艦娘の
命、俺に預けろなんて厚かましい事ぁ言わねぇよ。だがせめて、貸してくんねぇか」

北上「」ブチッ…


ガタンッ


提督「北上っ!」ガタッ

北上「うち等の子は『物』じゃないっての!何さ、貸すって!じゃあなくしたら返せるっての!?なくすって事
の意味解って言ってんなら、冗談じゃすまないっしょ!!」

陸奥「落ち着きなさい、北上!」ガシッ

暁「き、北上さん…」

夕立「お、落ち着こうよ…」

時雨「僕等なら大丈夫だから」

島風「興奮するのはよくないってばっ!」

飛龍「……」

龍驤「せ、せやんな。一回、ほな落ち着こか。な?北上かて、そない興奮しとったら回る頭も回らんなるで…」

木曾「ちっとは頭に上った血ぃ下げろって…」

北上「なんでさ!なんで、皆そんな冷静なワケ!?おっかしいんじゃないの!?こいつらはっ!白露っち達の命
を物として扱おうとしたんだよッ!!?」ググッ

白露「北上さん…」

提督「…北上、皆わかってるよ。俺も同じだ。こんな身分じゃなけりゃ不動提督の顔面変形するまで殴ってる」

不動「え、マジかよ…」アセ

日向「……ちっ、流石に言葉は選ぶべきでは?」ギロ…

伊勢「ひ、日向もそう睨まないの!あと舌打ちしない!不動提督もです!預けるとか貸すとか、そういう話じゃ
ないでしょ!?流石に言葉が過ぎます!」

不動「…………」ポリポリ

提督「…そういう非情な決断や思考が時として重要なのは認めます。ですが、俺たちの目指すものは誰かの犠牲
の上に存在する訳にはいかないんですよ。奇麗事だって思うでしょう。砂上の楼閣、机上の空論、どんな揶揄を
されたって構わない。それでも、俺たちが掲げるのはただ一つ、生きて帰ること、それだけです」

陸奥「私達は、戻った時の提督の言葉が聞きたいんです」

木曾「わかるか?ボロッボロになって帰ってきてよ、そんな俺等の肩に手を置いて、たった一言『お帰り』って
言ってもらうだけで、俺等がどんだけ救われるか、あんたはわかるか?」

島風「無事で良かったって言ってもらえると、ちょー嬉しいよねっ!」

時雨「うん、頑張れたかなって、ちょっと自分を褒めたくなるね」

羽黒「冷えた心も、身体も、司令官さんのその一言がかかるだけで、直に無くなるんです」

白露「あったかいんだよねー」

響「うん、あの一言は本当に温まるよ」

北上「私達は物なんかじゃない!貸し借りが簡単な無機物とは違うっての!」

不動「……そうかい。言葉が過ぎた、いや、悪かった。そうさな、嬢ちゃん達の事をもっと尊重すべきだった。
物じゃねぇ…その通りだ。だが改めて頼む、あの海域は俺達だけじゃどうにもならん。力を、手を貸してくれ」

白露「提督、私達なら大丈夫だよ」

時雨「うん、それに…ほら、これ」

提督「なんだ、そのヘンなモノは……」

島風「にしし、そんなこと言うと長門さんに怒られるよ?」

提督「へ?」

夕立「これね、長門さんが作ってくれた私達駆逐艦のお守りなんだって!」

響「私達には背後に戦艦長門がついている」

暁「アドバンテージとしては最高よね。ね、司令官だってそう思うでしょ?」

提督「ははっ、ああ…確かにそうだな」

不動「下手な言動で惑わした罪滅ぼしだ。キス島海域までの前線護衛はうちの艦隊が全霊を賭して受け持つ」

日向「任せろ。お前達には奴等の垢すらつけさせはしない」

伊勢「索敵は広く展開させないと難しそうだけど…」

飛龍「それならお任せをっ!」

伊勢「あれ、そういえば君…飛龍、だよね?」

飛龍「はい?そうですけど、それが何か?」

伊勢「あ、ううん…記憶が正しければ、君は確か先輩鎮守府の正規空母だったように記憶してたからさ」

飛龍「あ~、あははっ、確かにそうですね。これは私の意思です!先輩提督とも話し合いをして、認めて下さい
ましたからっ!」

暁「飛龍が凄いのは私達が身をもって知ってるわ」

響「うん、鋼鉄の艦隊の一翼は伊達じゃない」

飛龍「ふふっ、お任せを!索敵は大切にねっ!なんせ空母戦は先手必勝ですから!」

龍驤「ほんなら、さくっと陣形決めて準備せなあかんね」

木曾「っし、いっちょまた泡吹かせてやろうか!」パンッ

不動「それじゃ、うちも一度戻るとするか」

提督「決行は早いほうが良いでしょう。不動提督も既にご存知とは思いますが、あの新鋭提督がもぐらだったと
いう情報、確固なものとなりました」

不動「ああ…大本営のど真ん中、大将連中二人を掻き分けて後輩をぶっ刺してドロン、だろ。失態もいい所だぁ」

提督「海軍の戦術は全て筒抜けと見て間違いありません。正攻法では、到底太刀打ちは不可能です」

白露「……」コクッ

島風「うんっ」コクッ

響「それなんだけどね、司令官」

提督「ん?」

時雨「僕達にちょっとした秘策があるのさ」

提督「秘策…?」

夕立「んふふ~、そっ!私達や暁ちゃん達じゃないと、むしろ無理っぽい!」

提督「面白い。なら後で少し時間を作って概要を聞こうか。不動提督も電話での参加をお願いします」

不動「おう、了解だ。それじゃ一旦、俺らは自分の鎮守府へ戻るぜ」

伊勢「では、失礼しました!」

日向「まだ少ししか経ってないのに随分と懐かしく感じる。全員じゃないが、また君達と会えたのは行幸だ」

提督「なんなら泊まるか?」クスッ

伊勢「日向遅いよ。置いてくからね?」

日向「ふぅ…ご覧の通りさ。全く、落ち着きがないと言うのは考え物だよ。じゃあね」ヒラヒラ

本日はここまでー

乙&阿武隈の件のレス感謝
阿武隈回期待してます

心の中に熱い闘志を秘めてるここの北上さん好き

少しだけ更新します


>>55
そういって頂けると励みになります
ありがとうございます

-その夜・作戦室-

提督「前衛艦隊を不動提督の第一主力艦隊が務めると…」

不動『おう!旗艦は今日顔見せしたな、伊勢だ。随艦に日向、古鷹、加古、矢矧、名取をつける。飛鷹と筑摩が
若干ブー垂れたが、伊良湖のスペシャルデザートで手を打つことに決まった。お陰でいらねぇ散財が確定だドチ
クショウめっ!』

提督「ははっ、ごほん…えー、それじゃ前面に関しての警戒はお任せします。こちらは側面と後方、それぞれに
艦を配置して主力の水雷戦隊を中心に据え、囲うように布陣します」

不動『おう、了解した。そんで、そっちの嬢ちゃんズに妙案ありきって話だが?』

提督「ええ、図を書いての説明だったので把握できたんですが、結構特殊…と言うよりも、確かにこれはうちの
艦娘ならではって感じですね」ニガワライ

暁「ちょっと、司令官!何笑ってるのよ!」

島風「私達は真剣に考えたんだからねっ!」

提督「いや、だって、おま…これ、絵…誰が描いたんだよ、一体」

暁「暁ですが?」

提督「どこぞのマンガのタイトルみたいな言い方するな」

不動『はっはっは、ホントお前さんところは賑やかでいいねぇ』

提督「す、すみません。騒がしくて…えーっと、それじゃ説明します────」

不動『────文字に起こしては見たものの、確かにこりゃあ…ははは、懇切丁寧なお前さんの説明あってはじ
めて俺も理解できたレベルだぁな。が、こいつが成功するなら確かに相手を撹乱させるのは成功するかもしれねぇ』

提督「ええ…最も、冷静なやつが相手だと乗らずに反る可能性もありますが…」

不動『その為の、分厚い護衛聯合艦隊ってワケよ』

提督「はい。型にさえ嵌めてしまえば、一杯所か二杯でも三杯でも食わせることが出来ます」

不動『俺ぁ乗ったぜ、提督大佐。若ぇってのに随分と大胆不敵に攻めてくるじゃねぇか。死線の一つや二つは潜
らねぇとこんな突拍子もねぇ発想はでてこねぇもんだ』

提督「今回は半分以上が艦娘の案ですけどね」

不動『そうはいっても、下地はお前さんだろうが。ったく、その若さで化け狐の真似事かよ』

提督「ば、化け狐って何ですか、それ…」

不動『けっ、作戦参謀、戦術指南、戦略策略謀略と、なんでもござれの智謀提督大将様の異名だよ。決して本性
を表に出さない。常に相手を疑い、決して100%信じることもしねぇ。その癖てめぇの事を信じねぇと文句たらた
らとうるせーのなんのって、ついたあだ名が化け狐ってワケよ。おっと、話題が逸れちまったな。まぁ、何が言
いてぇかっていうとだな、お前さんなら立派な提督にきっとなれるってこったよ』

提督「不動提督…」

不動『俺ぁお前とお前が従える艦娘の嬢ちゃん達を信じる。だからお前達の盾になると決めた。かませよ、一発
でも二発でも、何発でも良いからブチかましてやれ!』

提督「…はい!必ず、この作戦は成功させてみせます!」

-???-

??「ねぇ、ポート」

ポート「どうかシタの、アクタン」

アクタン「どぉして、アイツ達は、ワタシ達をイジメるの?」

ポート「さぁ、ドウしてかしらネ。リコリスがそう言った話ハ詳しいカラ、私にはよく解らナイわ。ただ、解っ
てイルのは、貴女は私が守る、ト言う事ヨ」

アクタン「うんっ!ワタシ、ポートが大好き!ポートが一緒ナラ、ワタシ寂しくナイもん」ダキツキッ

ポート「フフッ、アクタンは少し、この甘え癖ヲ直さナイとね。また、リコリスが拗ねるワヨ」ナデナデ

アクタン「リコリス、お話難しいカラ苦手っ!でも、リコリスも大好きっ!」

ポート「ええ、私もリコリスは好きヨ。だから────」




── この足元に広がル、哀れな魂ヲ…水底へ誘わナイと……可哀想な子達。来るな…と……言ってイル…のに…… ──



北方海域、その最奥には港湾棲姫と呼ばれる深海棲艦の上位種が存在している。

それに伴い、北方棲姫と言われるこちらも同じく深海棲艦の上位種が治めている。

実質として指揮を執っているのは港湾棲姫・ポート。北方棲姫・アクタンはそのサポートに回っている。

彼女達が出現した明確な時期は解っていない。

同時に、彼女達自身も明確な目的があって世界を侵食しようと目論んでいるわけでもなかった。

言って見ればそれは自衛であり、防衛でもあった。

生命の本質、生きたいと願う想い。それらが色濃く、強く、激しく胎動する以上、脅威となるものは排除する。

そう信じて行動を起こしているに過ぎない。

しかし、ここ最近ではそれ以外の感情、思惑を持って行動する深海棲艦も増えている。

その感情や思惑など、現時点で各鎮守府は愚か海軍全体で見ても知る者は居ないだろう。

深海棲艦と同調し、反旗を翻した人間以外は……

取り敢えず書き溜め分だけ投下で

皆様こんばんは
今日は少しまったりと更新

-鎮守府-

榛名「提督…」

提督「安心しろ。絶対、全員で戻ってくる。夕張に頼んで人間仕様の艤装も作れるのか試してもらったんだが、
今回はどうやら間に合わなかったみたいでな。船で移動するしかない。多少の危険は覚悟の上さ」

陸奥「安心して、榛名。私達も付いてるのよ。そう易々と本丸に攻撃なんて通させやしないわ」

提督「俺も一応お守りみたいの持ってるからな」チャキッ

榛名「将校、剣…?」

提督「神通から貰ったもんだ」

神通「以前に、夕張さんと一緒に妖精さんに頼んで作ってもらったんです」

夕張「まっ、それにヒントを貰って提督でも船じゃなく、水上移動可能な艤装作れるんじゃないかなーって思っ
て今も暇を見ては設計してるんですけどね。これが中々上手くいかないのなんのって…」

提督「まぁ、気長にそっちは待つさ。さて、と…ヒトフタマルマル…時間だ。榛名、他の皆、留守を任せる」

衣笠「無茶だけはしないでよ、提督」

提督「無茶はお前等の専売特許だろ」

瑞鳳「もう、直にそうやって茶化すんだから!」

提督「へぇへぇ、悪かったよ。よし、不動艦隊との合流地点、北北東へ向けて抜錨するぞ!」

白露「さぁー、はりきっていきましょー!」

陸奥「よし、私達も行くわよ!」

-北方海域最深部-

ポート「……その情報、正しいのカシら?」

アクタン「ブーン……ブーン……」

新鋭「あら、私を疑うわけ?」

ポート「そうじゃナイわ。この子、アクタンを出来る限り、危険な目にハ合わせタクないだけ」

アクタン「ブーン……」


バキッ……


アクタン「ぁ……あぁ!ゼロ、壊れた……シンエイ、ねぇねぇ、シンエイ!」

新鋭「何かしら、アクタン?」

アクタン「ゼロ、壊れた。新しいゼロ、置いテケ」

新鋭「えぇ?持ってないわよ、そんなの」

アクタン「」プルプル…

新鋭「ちょっとちょっと…涙目は止めてよ。はぁ、困った子ねぇ」

ポート「アクタン、あっちの部屋にマダあったでしょう。向こうで遊んでイナさい」

アクタン「ウンっ、解った!」タッタッタ…

新鋭「喜怒哀楽が激しい子ね」

ポート「…話を戻すワ。その情報が真実なら、遅くともヒトサンマルマルにはキス島手前ノ海域、魔の領域への
進軍が整うハズね?けど、大本営ヲ離れてカラもう随分と歳月ガ経ってルでしょう。ドウやってその情報ヲ?」

新鋭「優秀なもぐらがいるって事よ」クスッ…

ポート「……」(この女…何を考えてイルのかさっぱり解らナイ…何故、リコリスはこの女を信頼シテいるのか。
他の深海棲艦共モ…イヤ、私が成すのはアクタンをあらゆる危険カラ遠ざけるコト…)

新鋭「それで、どうするの?自ら出るの?それとも、出ないの?」

ポート「重要ナノはこの泊地にある情報ノ山。泊地棲姫が敗れたノハ計算外とシテも、キス島の為だけに貴重な
戦力ヲ分散させるノハ得策ではナイワ。結論、あえてキス島は彼等へ明け渡し、ソノ間にこの北方海域を離脱…
拠点ヲ南方海域に移すコト。同時に、西方海域を指揮スル装甲空母鬼を動かし、相手ヲ揺さブル」

新鋭「北方の足止めもここまでか…タイミングとしては、まぁ良いかもしれないわね。気がかりだったのは思い
のほか不動艦隊以外の部隊が出張ってたことだけど…出来れば不動艦隊を釣って壊滅に追い込みたかったんだけ
どなぁ。こんな事なら、戦術の起点になる智謀提督から葬っておくべきだったかしら…」

ポート「」(同じ人間デモここまで違うモノか。否、人と深海棲艦、ソノ境界線でスラあやふやなものデシカな
い上に、艦娘トモまた違う思考を持つ中で、この女だけは明確な思惑と意思をモッテ動いてイル。結論、この女
は必ず……私達ニモ牙を剥く。もしも、深海棲艦に、私に、アクタンに牙を剥くノナラ……コロス、必ず……)

新鋭「ポート、アクタンを連れて直に北方海域を離れなさい。暫くの間、ここの指揮は私が執って上げる。どう
せ直にこの場も証拠を全て破棄した上で放棄するんだもの。今回、相手の目標がキス島とは言っても、万が一が
ないわけじゃない。余計な情報を相手に与える必要はないわ」

ポート「……その意見にツイテは賛成ネ。アクタンを連れて直にデモ退避する」

新鋭「」(その意見、ね…リコリスにポート、この二匹は利害の一致と見て行動を共にしているだけ。もしも私
に嫌疑の一片でもあれば、即座に手の平は返すって事かしら。それはそれで面倒だもの、まだ…味方でいてもら
うわよ、深海棲艦三姉妹さん)

-提督・不動聯合艦隊-

■キス島救出主力艦隊
白露 時雨 夕立 暁 響 島風

■主力艦隊前衛護衛隊
伊勢 日向 古鷹 加古 矢矧 名取

■主力艦隊後方護衛隊
陸奥 飛龍 龍驤 羽黒 木曾 北上

-魔の領域・近海-

木曾「やっぱ変だぜ!これまでに遭遇した敵部隊、どれも哨戒艦隊や前衛艦隊ってレベルじゃねぇ」

飛龍「防衛艦隊クラスですね。逆にここまで堅牢な防衛ラインを構築してるって言うのは、この北方海域が相手
にとっても奪還されては困るって考えれるけど…」

北上「確かにね~。でもどっちにしてもこっちの動きが全部バレてるような感じだよね~」

提督「…恐らく、新鋭提督の差し金だろうな」

不動「ま、妥当な読みだわな。しかも初回の連中以降、遭遇するのは精々小規模艦隊。しかもヒット&アウェイ
でこっちを殲滅しに来る様子はなし。明らか情報収集が目的だ」

提督「規模、艦種、進路、全て筒抜けになったな。相手も馬鹿じゃない。このうずしおが自分達にとって利に働
いてるのを十分承知した上でだろう。この先、何らかの罠が仕掛けてある可能性は否定できない」

陸奥「それじゃ、過剰すぎるくらいで、偵察機飛ばしてこっちも警戒態勢作っちゃう方がいいんじゃない?」

提督「そうだな。出鼻、挫かれるくらいなら挫いた方がまだ精神的に余裕が出来る。飛龍と龍驤は艦載機を飛ば
して周辺警戒、伊勢と日向は瑞雲を飛ばして近隣周辺を満遍なく警戒してくれ」

不動「古鷹ぁ!加古ぉ!お前らも水上偵察機出していつでもぶっ放せる準備しとけや!」

古鷹「も~、ぶっ放すって…言い方って物があるじゃないですかぁ…」

加古「ふあぁぁ~、んじゃブッ飛ばすッ!てのでどう?」

古鷹「あ、あのねぇ、加古…」

矢矧「おふざけはそれ位にして、準備に取り掛かりましょう」

古鷹「なんで私まで…」

名取「に、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ…」

矢矧「な、名取さん?」

名取「!?は、はいぃ!なんでしょうかぁ!」ビクゥッ

矢矧「カチンコチンだけど、大丈夫?」コンコン…

名取「ほあぁぁぁぁ……」

日向「深呼吸をしろ。演習で学んだ全てを思い出せ。最後は、仲間を信じろ」

名取「!!はい、頑張ります!」

伊勢「よし、皆準備良いね」


陸奥「私と羽黒は後方、飛龍、龍驤、木曾と北上で右舷と左舷をそれぞれお願い」

飛龍「任せて下さいっ!」

龍驤「よっしゃ、発艦準備万端、いつでもいけんで!」

提督「仕掛けてくるとすれば…」

不動「あぁ、付かず離れずのこの距離…海流に乗せない一歩手前で仕掛けてくるはずだ」


ザバァァァ……


飛龍「…っ!」

龍驤「きたで…!」

伊勢「日向!」

日向「ああ、四航戦、出撃するぞ!陸奥、こっちは任せろ。正面の道は私達が切り開く!」

陸奥「ええ、私達は周囲の警戒を強める!」

不動「よーし、おっぱじめるかぁ!不動艦隊の恐ろしさ、今一度思い知らせてやれッ!」




~我、敵艦ト相見ユ~




-魔の領域-

不動「おう、そっちは今の内に先行しろ!」

提督「はい!白露、号令をかけろ!」

白露「りょーかいっ!皆、準備いい!?」

時雨「いつでも大丈夫さ」

夕立「うん、オッケー!」

暁「大丈夫よ!」

響「うん、いけるよ」

島風「号令、おっそーい!」

白露「よーし!全速前進!一気に駆け抜けるよ!全員、散開っ!!」

駆逐ハ級1「テキスイライセンタイ…バ、バラケマシタ」

軽巡ホ級FS「ジンケイヲ、クズシタダト…!?」

駆逐ハ級2「ド、ドウシマスカ」

軽巡ホ級FS「チッ…ロキュウ1ト2デ、ツイゲキヲカケル!ハキュウ1ト2ハ、ワタシニツヅケッ!」

駆逐ロ級1「ニガサン」

島風「ふっふーん、私に駆けっこで勝負挑むんですか?無理無理ー♪だってしまかぜは速いもん!」ビュンッ

駆逐ロ級1「ナッ…!?」

夕立「おーにさん、こーちら♪」パンパン

暁「てーのなーるほーうへ♪」パンパン

駆逐ロ級2「ナメタマネヲ…!」グッ…


ボゴォォォォン


駆逐ロ級1「ナ、ナニガ…!?」バッ

駆逐ロ級2「」 轟沈

木曾「寝惚けるなよ、深海棲艦」

北上「頭数揃えたほうがま~だまともだったかもねぇ」

軽巡ホ級FS「カクランカラノ、ライジュンノライゲキ…!」

陸奥「陣形、崩れてるけど大丈夫?単縦陣にも複縦陣にもなってないデコボコな陣形だけど…?」

軽巡ホ級FS「ナッ…!?」

駆逐ハ級1「ロキュウニヒキガトビダシタノガ、ゲンインカト…」

羽黒「お粗末過ぎます」ジャキッ

飛龍「慢心はダメ、ゼッタイ!第一次攻撃隊、発艦!!」キリキリ…ビュッ


ビュン ビュン


龍驤「ほなっ、こっちもいこか!一気に決めるで!」バサァ…


ビュン ビュン


軽巡ホ級FS「ハ、ハジョウコウゲキダト…!?」


ボボボボボン


駆逐ハ級1「」 轟沈

駆逐ハ級2「」 轟沈

駆逐ロ級1「」 轟沈

軽巡ホ級FS「オノレェェ……!」

陸奥「あら。あらあら…あっという間に孤立無援ね?」

軽巡ホ級FS「クッ……」

木曾「こっから先は追わせねぇよ」チャキッ

北上「あんたらも気をつけていきなよー!」

響「スパスィーバ」

時雨「よし、このまま直進だ」

北上「よっし、そんじゃぁ…」ジャキッ

羽黒「残りを倒します!」ジャキッ

飛龍「徹底的に叩きます!索敵も念入りにねっ!」

陸奥「前面は日向達が食い止めてくれる。けど、後方から襲ってきた浅ましさ、それは後悔させて上げないとね!」

本日はここまでー

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-キス島航路-

島風「皆、大丈夫?」

夕立「うずしおの引きが結構強いっぽい」

時雨「確かに、これは小回りが利いて速度がある僕達じゃないと抜けるのが難しい海域だ」

暁「皆、前!」

響「くっ、待ち構えていたのか…」

白露「せ、戦艦!?」

島風「なんであっちは戦艦とかいるのよー!」

暁「白露、強行突破よ!」

白露「うん、だね。ここで時間取られるわけにはいかないもん!」


戦艦ル級EL「クククッ、バカナレンチュウダ」

重巡リ級EL「イッピキズツ、リョウリスル」

軽巡ト級EL1「サユウカラ…」

軽巡ト級EL2「ハサミコム…」

駆逐ハ級EL1「ドウジニ…」

駆逐ハ級EL2「タイロヲタツ…」


白露「島風ちゃん!」

島風「まっかせて!」

────────

──────

────


暁「キーワードは誘導と囮よ!」

提督「ほぅ、暁にしては知的な表現を使うもんだ」

暁「な、なによー!」ムキー

白露「私達は基本的に固定の陣形を組まない」

提督「…はい?」

夕立「つまりー、基本の陣形は五つ…単縦陣、複縦陣、輪形陣、梯形陣、単横陣。この陣形を私達は形式的にし
かとらないってこと!」

提督「お、おう?益々解らんぞ…」

時雨「つまり、僕達六人それぞれが独立した存在って事さ」

響「大袈裟に言えば、六つの独立艦隊って事」

提督「六つの、独立した艦隊?」

響「表現としては間違ってると思うんだけどね」

島風「きっと駆逐艦だけの構成を見たら、相手は囲ってくると思うの」

提督「逃げ場を作らせない。囲いの中で隙を見せるまで付かず離れずの砲撃を定期的に行うだろうな」

暁「けどっ!はじめから私達がバラバラに行動して、統率が取れてなかったら!」

提督「痺れを切らした相手から作った網目に穴を空ける、か…だが、弱点はある。バラバラに動くことは利点と
して相手の照準を絞らせない、注意力の散漫を引き起こしやすい。だが、逆にその空いた穴を通過できるのは、
原則として一人ないし二人が限度だろう。残りが同じようにまた再度塞がった網目に穴を空けるのは初回よりも
更にハードルが上がる」

時雨「そう思わせるのがこの作戦のミソなのさ」

提督「なに?」

夕立「統率が取れてないように見せることが肝心っぽい」

響「そう、不規則でいてバラバラ、一見統率が取れてないように見せる事が重要なんだ」

提督「……そうか、なるほど、だから誘導と囮か」


────

──────

────────

不動「よーし、粗方残存部隊は掃討できたか」

提督「ですね」

不動「しっかし、言うのは簡単だが殆どぶっつけ本番なんだろ?疑う訳じゃねぇが、それでも憂いがねぇと言え
ば全くの嘘になっちまう。上手くいくのかい、あの嬢ちゃんズの作戦はよ」

提督「正直俺も驚きました。誘導と囮がキーワードの撹乱作戦。けど、逆に急場凌ぎで結成された艦隊では決し
て成せない、互いを信頼し、知り尽くした彼女達だからこそ成せる戦術。戦艦クラスや重巡クラスが相手でも、
油断と驕りが生まれた瞬間、足元を容易く掬われる。それほどまでのインパクトと決まった時のダメージは計り
知れませんよ、この作戦。一泡所じゃない、戦慄するのは相手のほうだ」

不動「へへっ、無邪気な小悪魔か」

戦艦ル級EL「オノレ、ウロチョロト…!」ドォン ドォン


ササッ


島風「あっかんべー!はっずれー♪」キャッキャ

戦艦ル級EL「コムスメェェ……ッ!」ギリッ…

重巡リ級EL「ソンナデタラメナウゴキデ…!」ドン ドン


ササッ


白露「ぶっぶー!残念、的は遥か前方なのでしたっ!」

重巡リ級EL「ハ、ハヤイ…!」

軽巡ト級EL1「コザカシイマネヲ…!」ジャキッ

時雨「……」コクッ

夕立「……」コクッ

軽巡ト級EL2「ニヒキマトメテモクズニナレッ!!」ジャキッ


ドン ドン ドン ドン


ババッ


軽巡ト級EL1&2「「ナッ……!?」」

戦艦ル級EL「ナッ、バカモノ…!ナニヲミカタドウシデ……!」



ボゴォォォン


時雨「残念だったね」ジャキッ

夕立「ソロモンの悪夢、見せてあげる!」ジャキッ

軽巡ト級EL1「シ、シマッ……」 中破

軽巡ト級EL2「カ、カワセナ……」 中破


ドン ドン ドン ドン


ボゴボゴボゴォォォン


時雨「これだけ至近距離から撃ち込めればね」

夕立「逃がさないっぽい」

軽巡ト級EL1&2「「」」 轟沈

重巡リ級EL「チッ…ハキュウドモ!ドウシウチニキヲツケロッ!!」

暁「まぁ、当然目の当たりにすれば…」

響「そう指示が飛ぶのは解りきってるね」


ザザザッ


クルッ


暁「全速力よ、響ッ!」

響「ああ、解ってる!」


バシュッ


駆逐ハ級EL1「ホウコウテンカンダト!?」

駆逐ハ級EL2「マ、マサカ…!」

白露「そのまっさかー!いーっけぇー!」バシュンッ

島風「五連装酸素魚雷!いっちゃってぇー!」バシュンッ

戦艦ル級EL「アノ、カンムスドモ……!カイヒシロ、ハキュウタチッ!!」


ボボボボボォォォン


駆逐ハ級EL1「クッ……」 無傷

駆逐ハ級EL2「ウグッ……!」 中破

戦艦ル級EL「ニゲ、ラレタダト……!オノレ、コザカシイマネバカリ!ゼッタイニ、ヤツラハイカシテハカエサンッ!
モクテキチハキストウダナ。ナラバ……」ニヤリ…

重巡リ級EL「スグ、ジュンビニトリカカル…」

-キス島目前-

暁「作戦っ!」

白露「だーいせーいこー!」

夕立「いぇーい!」ハイタッチ

島風「いぇーい!」ハイタッチ

時雨「それにしても静かだな」

響「うん、さっきの連中も追ってこないし…まぁ、うずしおの関係もあるんだろうけど、少し腑に落ちないね」

暁「とにかく、キス島へこのまま直進よ!救出できる人は救出して、さっさと離脱よ!」


村人1「おお、あれは艦娘の救援部隊か!?」

村人2「た、助かるのかぁ!?」

時雨「皆さん、用意した船に急いで乗り込んで下さい!」

夕立「直に出発させるっぽい!」

島風「進路確保してあるよ!」

白露「全員の移動が終わったらソッコーで離脱ねっ!」

響「司令官、無事キス島の住民の収容完了したよ。先導は島風、行きで水上打撃艦隊と遭遇したけどなんとかや
り過ごしてここにいる。けど、戻りで待ち伏せされてる可能性も否定できない。だから、戻りは部隊を二手に分
けて残存する深海棲艦を欺くとかしないといけないかもしれない────」


ツー、ツー、ツー……


提督「……くそ、不味いな」

陸奥「提督?」

提督「キス島までは到着し、避難し損ねていた住民の収容は完了した。あとは戻るだけ…だが、行きで敵の水上
打撃艦隊と遭遇していたらしい。あいつらの戦術が見事に嵌って無傷でその場はやり過ごせたそうだが、相手も
半数以上が健在の状態で振り切ったらしい」

不動「…待ち伏せ、だな」

北上「直に援護に行かなきゃ!」

提督「無理だ。残りの駆逐艦は鎮守府に待機させたままで、今から呼び寄せてどれだけ早く到着しても夜になる」

木曾「じゃあこのまま手を拱いて見てろってのか?」

提督「木曾、北上…夜戦の怖さはお前たちなら十分に解ってるだろう」

北上「けど…!」

提督「信じろ。あいつ等を…」(響…無茶だけは絶対にするなよ…早まるな、頼む……っ!)

-キス島-

暁「うんっ、島風、いつでもいけるわよ!」

島風「よーし!いっくよー!」

響「白露達は島風をサポートして欲しい」

白露「任せてーっ!」

時雨「二人は後方だね」

夕立「水上電探は持ってる?」

響「うん、ちゃんと積んであるさ」

暁「後方は任せなさい!」

島風「陣は輪形陣で出発!」

この六人の中で最も冷静に現状の異質さに感付いていたのは響だった。

最初の違和感は統制された敵艦隊の一群。

序盤こそ六匹編成で哨戒艦隊、前衛艦隊と送り込んできたものの、その後は少数、それも精鋭という訳ではない。

明らかにこちらの情報や現状を盗む事を目的とした偵察艦隊。

第二の違和感。交戦した水上打撃艦隊の潔さ。

あそこまで翻弄された挙句に逃げられたとなれば、本来であれば鬼の形相で追ってきてもいい場面。

しかも先の偵察でこちらはキス島へと救援に向かう艦隊であるのは明確にバレていたはず。

ならばそのまま追撃を加え、キス島で救援を困難にさせる為に襲ってしまえば事足りた話だ。

それをしなかった。それ所か、その先の道中では一匹として深海棲艦は出現しなかった。

それも響の異質さの疑問に拍車をかけた。だからこその陽動作戦。

自らを囮にする事で確実に救出した村民を魔の領域外へと退避させる。

最も恐ろしいのは救出した村民諸共、自分達が待ち構えていた敵艦隊に沈められる事。

そう、まさにこの瞬間、あと少しで戻れると安堵するその瞬間こそ、最も恐ろしい魔の時間帯。

気の緩みはそのまま警戒網を浅くし、注意力を散漫にし、死への恐怖を和らげる麻薬。

敵は、その間隙を必ず突いて襲い掛かってくる。それだけは何が何でも阻止しなくてはならない。

そこに至って響が出した結論。一人で考えた最善策。初めて、響が単独で行動を起こした瞬間。

これが、その後の彼女の命運を大きく分ける。

島風「夕刻、あと少しで夜になっちゃう」

白露「大丈夫、もう直、魔の領域は抜ける!」

時雨「ま、待って…どうしたんだい、暁」

夕立「ん?どーかしたの?」

暁「はぁはぁ…ひ、響が…響が居ないのよ!」

島風「えっ!?」



響「やあ、お待ちかねだね」

戦艦ル級EL「……ナンノジョウダンダ?」

重巡リ級EL「オマエダケデ、ナニヲスルツモリダ」

響「陽動、かな?」

駆逐ハ級EL1「ツマリ、ホンタイハスデニ…」

駆逐ハ級EL2「マノリョウイキヲトッパシテイルト…?」

響「ハラショー、悪くない読みだよ。だから、このまま留まっていて欲しいのさ」ジャキッ

重巡リ級EL「……クチクカンガイッピキデ、ワラエナイジョウダンモ、タイガイニシロ!」ジャキッ

戦艦ル級EL「オノレ……イチドナラズ、ニドマデモ…ワレラヲグロウシテ……ゼッタイニ!キサマハ!コノカイ
イキカラ!イキテハカエサンゾッ!!」ジャキッ

響「私は、沈まない!不死鳥の異名は伊達じゃない!」バッ

-魔の領域手前-

提督「皆、無事か!」

島風「提督!響が!」

提督「……っ!」

白露「どこで、はぐれたのかわかんなくて…」

暁「私と一緒に、後方からの護衛に回ってたの。けど、もう少し後ろから私はついていくって…」

夕立「提督さん!響ちゃんと通信したよね?その時何か言わなかったの?」

提督「あいつ、まさか…お前たちに何も説明をしなかったのか!?」

時雨「え?」

白露「せ、説明って、何を!?」

提督「あいつは行きで遭遇した敵の残存艦隊が待ち伏せしてる可能性を考慮して、救出した村民へ被害が及ばな
いように、帰りは危険を承知の上でお前たちを二手に分けて陽動作戦を行う提案をしてきた」

暁「そんなっ……」

提督「最後まで反対をしたが、途中で通信をあいつ切りやがった…まさか、一人で陽動作戦を敢行するとは…」

木曾「おいおい、冗談だろ!」

陸奥「どうするのよ。私達じゃ魔の領域へ行っても直に流されてどうにもならないわ!」

提督「資材も残り少ない。村民を一度大本営へ避難もさせなきゃならない。幸い、ここから鎮守府まではそこま
で遠くない。急ぎ戻って再度、駆逐艦の水雷戦隊を準備して……」

不動「馬鹿野郎ッ!」

提督「…っ!」

不動「てめぇ、正気で言ってんのか!?既に夕刻、行って戻る頃には既に夜!捜索開始は深夜だぞ!!それがど
れだけ危険か、さっきてめぇ自身が北上の嬢ちゃん達に啖呵切ったばかりだろうが!!」

龍驤「夜間じゃ、うちらの艦載機も飛ばせへん…」

飛龍「何より、私達じゃこの海域には足を踏み入れられない…」

提督「しかしっ、響が…ッ!!」

不動「しかしもへったくれもねぇ!あえて言うぞ、非難したきゃ好きにしろ!今は個で考える場合じゃねぇ!
お前の選択一つで、想像もつかない数の艦娘や一般市民が犠牲になるかもしれねぇんだ!今は、耐えろ…ッ!!」

提督「……くっ、ちくしょうッ!」ガンッ

提督達が戻ってきてから、どんな会話をしたのか私は覚えていません。

ただ、響ちゃんが居ないという事実だけが、それが現実なのだというのを知らしめるかのように胸にポッカリと

穴を空けられた感じで言葉として突き刺ささり、未だ癒えぬ傷のようにズキズキと痛む感じが残るだけ。

任務としては、キス島救出作戦は大成功だったといえます。

その陰で何が起こっていたのかなんて、当事者以外は誰も知る由もない。

出された結果にだけ食いつき、誰もが提督と不動提督を、提督鎮守府と不動鎮守府の皆を祝福し、賞賛し、持ち上げた。

あの日から今日まで、皆は努めて明るく接し合う。そんな中、提督だけが笑顔を消した。

いつもの口癖も、憎まれ口も、拗ねた顔もない。ただ無気力に執務をこなして一日を終える。

一週間が過ぎて、十日、二週間……響ちゃんが消息を絶ってから二十日目の早朝、それは人知れず執務室に届いていました。

一枚の紙にただ一言、それが提督へ宛てた言葉だと解るのにそう時間は掛からなかった。

























────たった一言。

























『до свидания』

区切りがいいので本日はここまで

響深海棲鑑になったのかな?

少し時間が出来たので更新


>>90
今後の進展に注目お願いします




~ヴェールヌイ~



-執務室-

榛名「提督っ!提督っ!早く来て下さい!」

提督「なんだ、榛名。まだ陽も昇りかけた早朝だぞ」

榛名「…っ!」グッ

提督「こんな朝早くに、任務なんて……」

榛名「しっかりしなさいっ!」ブンッ


パァン


提督「っ……!」

榛名「あなたは、私達の提督です!」

提督「……」

榛名「私は、今のあなたが嫌いです」

提督「そうかい…」

榛名「今のあなたを、響ちゃんが見たら何て言いますか?」

提督「……っ!その話をするな」


バンッ  『до свидания』


提督「っ!」

榛名「一人で自己完結して、見て見ぬ振りをして、勝手に響ちゃんを思い出にして、終わらせないで下さい!」

提督「これは…電文?」ガシッ…

榛名「見ましたか?見ましたよね?なんて書いてあるかまでは私には解りません。けど、これは提督、あなたに
宛てられた言葉だと私は感じています。これを見てそれでもまだ下を向いて、俯いて、自分の殻に閉じ篭ろうと
するのなら、榛名は……!」

提督「……ダスビダーニャ」ボソッ…

榛名「…え?」

提督「ダスビダーニャ。ロシア語で、また会おうって意味だ」

榛名「また会おうって……それじゃ、まさかこの電文は!」

提督「響……なのかもしれない。けど、お別れとも取れる文章なのも確かだ」

榛名「そんな…!」

提督「ああ、解ってるよ…それでも、一縷の望みが出来たのも事実だ」

-作戦室-

電「司令官、響ちゃんが生きてるって本当なのです!?」

提督「確固たる証拠とは言い切れないが、ロシア語を扱う艦娘は、俺が知る限り響だけだ」

暁「本当に、本当に本当の本当に!響なのね!?」

提督「ああ、その可能性が極めて高い。楽観視できる状況でもないが、それでも消息を絶ってから二十日間が過
ぎて、生存も絶望視していた矢先の電文だ。期待せずにはいられない」

榛名「提督…」

提督「ああ、解ってる。皆……色々と、すまなかった」ペコッ

榛名「……」

赤城「提督…」

利根「お主が人一倍、我輩等を大切に思うてくれとるのは解っておる」

川内「涙脆いのもね」

金剛「一人で抱え込むなんてNonsenseデース!」

夕張「私達は全然気にしてないですよ!」

夕立「でも、もっと頼って欲しいっぽい!」

瑞鳳「私達の仲じゃないですか、提督!」

イムヤ「それにさ、前に言ったじゃん?私達はさ、提督の笑顔が元気の源なんだよ」

衣笠「そりゃねぇ、提督がションボリしてたら、私達だってションボリするっての」

鈴谷「提督が笑わないとテーンションさーがるぅー」

提督「ははっ、テンション下がるか」

熊野「あら、漸く笑ったと思えば苦笑いですわね?」

比叡「ほらっ、提督!もっと!笑顔で!笑いましょう!」

大鳳「響ちゃんはきっと戻ってきます。だから、彼女が戻ってきたときの為に、笑いましょう」

提督「ああ、そうだな。響を笑顔で出迎えてやらないとならないからな」

少し出かけるのでここまで


上記で響が深海棲艦化してしまうかどうかに対して今後に期待と打ちましたが
生存、死亡(深海棲艦化)、どちらのストーリーも考えていたので以下で安価を取ります

生存ルート:安価小数点00-50
深海棲艦ルート:安価小数点51-99

安価は以下3でお願いします。
次の書き込みまでに安価が成立しなかった場合は、こちらでルート選定します

そんな重大なことをコンマ神に頼るのか…(困惑)

戻りました


>>96-98
見事なコンマ50以下
彼女はきっと皆さんに最高の笑顔を見せてくれることでしょう

-執務室-

榛名「提督、さっきは、その…えっと、ごめんなさい」ペコリ

提督「ん、おう。ははっ」

榛名「へ?」

提督「いや、榛名が本気で怒ったのって、あれが初めてかなってさ。結構痛かった」

榛名「ご、ごご、ごめんなさい!あの、えっと、その、大丈夫?」オロオロ

提督「そんな気にするなよ。良い教訓になった。艦娘のビンタは相当痛いってな」

榛名「はぁ…」ションボリ

提督「ほら、いつまでもしょげるな。仕事だ仕事!サボった分取り返すからな。ヒトゴーマルマルまでに終わら
んと間宮さんのおやつ抜きになるぞ!」

榛名「え、えぇ!?なんで私まで!提督が勝手にいじけて滞ってたんじゃないですかぁ!」

提督「秘書艦も連帯責任」

榛名「納得できません!」

提督「じゃあ榛名は今日、おやつ抜きね」

榛名「んなぁ!どうしてそうなるんですか!?」

-弓道場-

赤城「…少し、勝負をしましょうか」

瑞鳳「勝負?」

飛龍「むっ、何を対象にするんでしょうか?」

赤城「……ふふ、そうですねぇ。成績優秀者は、ヒトゴーマルマルのおやつの時間、二人から半分ずつ摂取でき
る、という天国と地獄ゲームはどうでしょう」

瑞鳳「あ、赤城さん攻めるね…」

飛龍「ま、負けられない戦いがありますっ!」ギュッ

瑞鳳「は、鉢巻までしちゃうレベルですか!?」

赤城「瑞鳳ちゃん、おやつ…要らないのなら頂きますが?」

瑞鳳「」ビクッ

飛龍「赤城さん、言っておきますが以前の私と同じとは思わない方がいいですよ!」

赤城「あら、一航戦の実力をもう一度知らしめる必要がありそうですね」

瑞鳳「二人が潰しあった所を、私が…」ボソボソ

二人「」キランッ

瑞鳳「ひぃっ」

飛龍「隙は、ありません」

赤城「ズルは、ダメですよ?」

瑞鳳「」コクコクッ


龍驤「おーおー、あっちは火花散っとるなぁ」

大鳳「弓を使わないのに、龍驤は何をしてるのよ」

龍驤「んー、ここ広いやんか」

大鳳「ええ、まぁね」

龍驤「せやから、こーしてやな…」バサァ

大鳳「ま、まさか…」

龍驤「せやっ、ここやったら艦載機の整備もし放……」


ビュオッ

カッ

バイィィン……


赤城「気が散りますので」ニッコリ

龍驤「す、すんません…」アセ

生存ルートのほうが良いけど
まあ、深海棲艦ルートも見てみたいかも
気を失った響の夢オチとかでダイジェスト出来んかな

-花壇-

阿武隈「ふふ~ん、ふふふ~ん♪」サー…

春雨「あ、阿武隈さん!肥料もって来ました、はい」ドサッ

阿武隈「あっ、ありがとー、春雨ちゃん」

春雨「色とりどりですねぇ」

阿武隈「そりゃね。一杯、種蒔いたからね!」

春雨「この勢いで作物とかまで育てちゃうんですか?」

阿武隈「あははは!流石にそこまでの敷地って言うか、スペースがないよ。農業とガーデニングはまたちょっと
っていうか、規模も量も違うからね」

春雨「そ、それもそうですよね」

阿武隈「それより、ここでの生活は慣れた?」

春雨「は、はい!お姉ちゃん達も優しいし、他の皆も色々と親切で、ちょっとビックリです」

阿武隈「ふふ、そっか。あっ、でもね…」

春雨「??」

阿武隈「北上さんって言う人には注意だよ!直にちょっかい出してきて、人の嫌がることをヘラヘラ笑いながら
やるいや~な人だからっ!」

北上「だぁれがいや~な人だ!」

阿武隈「で、でたぁ~!」

北上「人をお化けかなんかと一緒にするな!」

春雨「あ、こ、こんにちは!」

北上「お~、白露っちんところの五女だっけ?」

春雨「はい!」

阿武隈「も~、何しに来たんですか、北上さん」

北上「ん、いや~、別に~…」ススッ…

阿武隈「むっ、後ろ手に何隠してるんですか!?」

北上「うっさいなー、なんでもいいじゃん」

阿武隈「あーっ!また何か企んでたんですか!?ほんっと、サイッテー!」プンプン

春雨「あの~、それ…如雨露、ですよね?」

北上「こ、こらっ、覗き見るな!」

阿武隈「如雨露…?え?なんで、如雨露?」

北上「うぅ~、これだから駆逐艦は…!」

春雨「?」キョトン

北上「……はぁ~、この花壇……あんたと日向くらいしか世話してなかったじゃん。んまぁ、当番制だったし?
水遣りくらいは他の子達もやってたけどさ。荒れてたら荒れてたで、色々と面倒なのよ」

阿武隈「」(そういえば、雑草の除去とか花壇の手入れとか、凄い行き届いてる…)

────────

──────

────


北上「あ~、このまま真っ直ぐ艦娘寮行くとまた白露っち達に捕まりそうだし、私は鎮守府寄ってから戻るわ~」

夕立「鎮守府に何かあるっぽい?」

北上「ははは…野暮用」

時雨「?」

北上「若人は気にしなさんな~。じゃね~」ヒラヒラ


北上「はぁ~、鎮守府誰も居なかったら花とか余裕で枯れるってーの」ガサゴソ

北上「…流石に戻ってきて荒れ放題じゃあの子も凹むだろうしねぇ。まっ、あの軽巡が戻るまでは私があんたら
の世話して上げるわよ。木曾っちはそうでもないかもしんないけど、大井っちは花とか好きだったよね~」サー…

北上「っていうか、提督もわざわざ大井っち達の慰霊碑、海の見えるこの花壇の横に作るしさぁ…ここが荒れて
たら荒れてたで大井っち絶対化けて出てくるっての。北上さん?お花、枯れてるんだけど?とか言ったりして…」サー…

北上「……な~んてね。私相当アホっぽいわぁ」サー…


ザァァァァァ……


北上「うわっと…な、なに?いきなり突風ってなにさ!?」キョロキョロ

北上「え゛……」アトズサリ

加賀「……」

武蔵「……」

大井「……」

北上「う、うそぉ…」

加賀「…貴女にも花を尊ぶ、と言う感性が備わっていたのね」

北上「んなぁ!?ちょっとそれどーいう意味さぁ!」

武蔵「ふっ、だがここは居心地が良くてな。常に手入れが行き届いていて実にいい。海も見える。暗い水底では
なく、海原を眺めていられる。初めて進水した日を、思い出す」

大井「北上さん、ふふっ、なんだかこうして喋るのも久しぶりね」

北上「お、大井っち…」

大井「ああっ、安心してね。別に私達、化けて出てきたとかじゃないから」

北上「ぶっ…!」

加賀「出来れば私は赤城さんに伝えたかったけれど、まぁ貴女でもいいわ」

北上「イラッとくるなぁ、あんたさぁ!」

武蔵「加賀」

加賀「ごめんなさい。赤城さんと話をしたかったのは本当。けれど、居ないんだから仕方ないわね」

北上「な、なにさぁ」

大井「北上さんにね、あとは…いつもこの花壇を世話してくれてる阿武隈ちゃんに、日向さんに、お礼を言いたかったの」

北上「はい…?」

武蔵「貴様はクラバウターマン、と言う言葉を知っているか?」

北上「ク、クラ…?」

大井「クラバウターマン…一説には船に宿る妖精とも言われていてね、私達の手助けをしてくれている妖精達は、
このクラバウターマンなんじゃないか、とも言われているのよ」

武蔵「そして、死後の私達もな」

北上「えっ」

加賀「一つ、教えて上げるわ。強い念を帯びて散った私達艦娘には、三つの道がある」

武蔵「一つは輪廻転生、とでも言うのか。新たな魂を受け継ぎ、この世に転生する」

北上「なっ…」

大井「一つは、クラバウターマンとして、現世に生きる皆を支えること」

加賀「そして、最後の一つ────」


────

──────

────────

北上「……」

春雨「あ、あの…北上さん?」

北上「…っ!んあ、なに?」

春雨「あっ、いえ…何だか思い詰めたような表情だったから…」

阿武隈「北上さんが、花壇…手入れしてくれてたの?」

北上「あぁ、はいはい…そーですよ。勝手にいじって悪かったわね」

阿武隈「別に、そんな言い方しなくても…その、ありがと。感謝、してるわよ…あたし的には、だけど…」

北上「……まっ、大事にしなさいよ。じゃないと、化けて出るらしいから」

阿武隈「は…?」

北上「あと、たまにだけど…ここにある花、そこの慰霊碑に手向けるのに使いたいから、よろしくね。んじゃね」スタスタ

阿武隈「え?あ、うん…それは、別にいいけどって、行っちゃったし…」

春雨「どうしたんでしょうか…」

阿武隈「さぁ…?」

本日はここまで


>>106
一つの案として頂戴したいと思います
素敵な意見ありがとうございます

皆様こんばんは
ほ(ry

北上は、皆に一つ黙っていたことがあった。

それは加賀、武蔵、大井の霊と対話し、自分達のこと、またそれに関わるであろう事象に関しての真実。

厳密には黙っていたというよりも、言い出せずに居た、と言った方が正しいのかもしれない。

夢幻の白昼夢を見ていただけと断じればそれまでであり、また自身だけが経験した事柄であり、これを立証する

術も、方法も、何もないのだから仕方がない。

ただ、前にも増して彼女の中で艦娘同士の繋がり、絆、思いやりが増したのは事実だろう。

先のキス島での一件で激昂したのも、自らの感情の昂ぶりを抑え切れなかったのも、これに起因する所が大きい。

以前に、大本営に務める大淀が艦娘には既存とする性能や実力とは別に、彼女達から発せられる感情による性能

の向上と言う推測が立てられていた。

不確かなもので、必ずしもそれがプラスに働くという根拠も理由もない上に、感情とは光と闇という薄皮一枚で

成り立つ表裏一体の関係を秘めている以上、全てを鵜呑みにして良いものでもないと結論付けている。

だが、この感情と言う喜怒哀楽から成り立つものこそ、光と闇を凌駕する新たな艦娘の成長の一旦である事もま

た事実であるとも感じていた。

想う力とは、有限として捉える事は不可能であり、また不確かでありながら無限の可能性を秘めている。

その片鱗は既に北上のみにならず、この提督鎮守府の艦娘達で幾つかの事例と共に実証されつつあった。

想いが生み出す、新たなる進化。それは、例え離れていても変わらない。

-???-

??「礼を言う」

??「フッ、それはお互い様さ。キミ達の技術は実に素晴らしい。近い将来、また再び邂逅を果たそうじゃないか」

??「いや、それでも…これは、私にとっては奇跡に等しいのさ。願いが通じたと言っても過言ではない」

??「そうか。まぁ、ここからの航海もまた難儀だろうが、途中までは私達も護衛として付き添おう」

??「感謝するよ。スパスィーバ」

??「フフッ、バジャールスタ。では行こうか、キミの言う、暁の水平線とやらに再び勝利を刻むために」

??「ああ、行こう!」

-母港-

提督「はぁ~、潮風が超気持ち良い」

イク「提督!海の中ならもっと気持ちいいよ!?」プカプカ

提督「アホ抜かせ」

イムヤ「司令官も入ればいいのに」プカプカ

ゴーヤ「ねー?」プカプカ

提督「スキューバダイビングはまた今度だ。しっかし、お前ら朝っぱらから海に潜って何してたんだ?」

イムヤ「私はお魚と朝の水中散歩」

ゴーヤ「早朝水泳でち」

イク「周辺海域見て回ってたの!」

提督「じーさんやばーさんの思考だな…」ボソッ…

イムヤ「今なんか言ったー?」グッ…

ゴーヤ「悪口な発言に思えたでち」ググッ…

イク「イクはまだおばーちゃんじゃないのね!」グググッ…

提督「わー!解った、悪かった!だからその溜めた両手を収めろ!」

イムヤ「そう言えば、この間のキス島攻略でその先に広がるアルフォンシーノ方面へ進出できたんだって?」

提督「ん?あぁ…別の鎮守府で進軍して、見事溜まってた膿を吐き出させたようだ。その中の鎮守府の一つは先輩
の鎮守府、新生鋼鉄の艦隊だ」

ゴーヤ「新生、なのでちか?」

提督「旗艦は長門、随艦には翔鶴や天竜たちも加わってたみたいだ」

イムヤ「おー、早速活躍してるわね」

イク「イクはまだ出撃してないの!」

提督「その内な。何よりイクと春雨は決定的に実戦経験が少ない。無理をさせて怪我でもされたら大変だからな」

イク「提督、優しいのね…」ウルウル

イムヤ「イク、目をウルませても多分何もでないわよ」

ゴーヤ「散々ゴーヤ達で試験運用して失敗に終わってるでち」

提督「散々やられたから免疫できてるんだ、アホタレ」

イムヤ「私は殆ど参加してないでしょ!」

提督「まぁ、概ねゴーヤだな」

ゴーヤ「テヘペロでち」

イク「ちっ…」ボソッ

提督「今お前舌打ちしただろ!?」

イク「え?」キョトン

イムヤ「ははは…」(いい性格してるわ)

提督「ったく、ほら…もう直ミーティングの時間だから海から上がって、体シャワー室で洗ってこい。言ってお
くが、遅れましたは通用せんからな」

三人「「「はーい!」」」

-作戦室-

提督「────とまぁ、今日は比較的平和だ。遠征の任務がある潜水艦隊と一部水雷戦隊は準備が出来次第順次
発つこと。潜水艦隊はイムヤを旗艦とし、随艦にゴーヤとイク、夕張が付くように」

夕張「はいはーい!」

提督「後は、護衛任務と輸送任務だが、護衛任務は旗艦を阿武隈、随艦に白露と春雨、熊野だ。輸送任務は暁を
旗艦とし、随艦は電、川内、神通でそれぞれ頼む」

木曾「残りは何すんだ?」

提督「午前と午後にAとBで分けてそれぞれ実技演習、座学で頭の体操だ」

木曾「げっ…」

北上「木曾っち~、寝るなよ~」

木曾「う、うっせーな!解ってるよ!」

木曾「」スピー…

提督「誰かそこの眼帯馬鹿を起こせ」

衣笠「ティッシュ丸めて…コチョコチョ~」サワサワ

木曾「ふぐっ…へあ……はぁっくしょん!」ガバァッ

北上「お~、起きた起きた」

木曾「んあ…」キョロキョロ…

瑞鳳「あはは、寝惚け眼だ」

提督「木曾、悲しいお知らせだ」

木曾「はぁ?んだよ……あっ」

提督「この後の休憩時間、俗に言うお前らのおやつタイムだ。お前無しね」

木曾「あ、ちょっ、たんま、たんまっ!お、おい、北上!なんで起こしてくれないんだよ!」

北上「姉は時として厳しいのだよ、木曾っち」

木曾「んだよそれ!」

提督「良かったな、榛名。お前は定時でおやつタイムだ」

榛名「」ニヤリッ

木曾「おいっ!おい、提督!今の榛名の顔見たか!?」

提督「あ?」

榛名「?」キョトン

木曾「この、アマ…!」プルプル

赤城「榛名さんのダークサイドを見た気がします」ヒソヒソ

瑞鳳「普段から提督の相手してるとああなっちゃうのかな…」ヒソヒソ

霧島「さ、司令。早いところ続きを」

提督「ん、おお、そうだな」

瑞鳳「絶対、霧島さんとか学級委員長とか風紀委員長とか生徒会委員長とか似合うんだろうなぁ…」

赤城「因みに、瑞鳳ちゃんは?」

瑞鳳「私はぁ…う~ん、なんだろう?体育委員とか楽しそうだなぁ」

赤城「ふふふ、私は是非給食委員で!」テカテカ

瑞鳳「」(初日でつまみ食いしてクビになりそうだなぁ、赤城さん…)

本日はここまで

皆様こんばんは
今日もちょいちょい更新していきます


>提督の毒
今後もこの艦娘がんなことするんか?って思えるような内容を日常回で描ければと思います
榛名も気付けば随分と提督色に染まっているという事ですね

-執務室-

提督「木曾、次はこの書類だ」

木曾「勘弁してくれ提督…俺は文字と睨めっこってガラじゃねぇんだよ…」

提督「戯け。お前の報告書ひどすぎんだよ。大体な、この前のだってお前のだけ大本営から送り返されてきたん
だからな?詳細理由部分が理由になっていません。経過報告部分が報告の意味を成していませんって注意書きの
おまけ付きでな!」

木曾「うへぇ…」

提督「うへぇじゃねぇ!それは俺の台詞だアホタレ!」バンバン

木曾「だってよぉ…」

提督「おっ?言い訳?言い訳しちゃう?そっかー、言い訳しちゃうかー」

木曾「あっ……ちょ、まって……!たんま、今のたん……」

提督「おめでとうっ!君のおやつタイムは塵と消えました!さぁ、夕方までみっちり付き合ってもらうぞ、コラ」

木曾「…………ッ!!」プルプル



モウ、イヤダァァァァァァァァァ……ッ!!



-談話室-

北上「おー、聞こえてきたね~、木曾っちの断末魔」モグモグ

瑞鳳「恒例の断末魔。最近は皆ボロを出さないからなぁ」ニガワライ

榛名「この、時間は、提督も、休憩したくて、ウズウズしてますからね」モキュモキュ

赤城「普段、榛名さんと、一緒には、あまり休憩、できませんからね」モキュモキュ モキュモキュ

榛名「はぁ、美味しい。幸せ…」テカテカー

瑞鳳「休憩時のレア艦娘、それが榛名さんですからね」モグモグ

霧島「……」カリカリカリカリ…

衣笠「霧島さん、休憩時間でもお構い無しでめっちゃノートに色々書き込むね」

霧島「日々データは更新されてますからね!何より、提督の座学は非常にためになります!」

衣笠「うわっ、すご…文字とグラフと…これ、何?」

霧島「各艤装の図解と特性を記載した表です」

衣笠「うへぇ…」

榛名「霧島にノートとペン持たせると、凄いよ」

衣笠「そういえば、この間もキリちゃんの妨害をものともせずに黙々となんか書いてたよね」

北上「今も、かなぁ…」チラッ…

キリ「うにゃ~…」ウロウロ ウロウロ

霧島「……」カリカリカリカリ…

キリ「にゃっ」テテテテ…


ムンズ…


キリ「んにゃ!?」


ヒョイ…


榛名「預けられた…」

キリ「にゃーん…」ショボーン

榛名「よしよし…」ナデナデ

瑞鳳「名義上、金剛さんの飼い猫なのに完全に榛名さんに懐いてるよね」ツンツン

キリ「うにゃぁ」ゴロゴロ

瑞鳳「あはは、可愛い」

榛名「普段は金剛お姉さまの部屋でくつろいでるけど、キリが自分の意志で日替わり感覚で私達四姉妹の部屋へ
出たり入ったり、かな」

赤城「うふふ、四姉妹の部屋を行ったり着たりですか?贅沢なネコさんですね」ナデナデ

キリ「にゃ?」

衣笠「本人は解ってないみたいね」

キリ「」ペロペロ

北上「この前は確か提督と庭で戦ってたね」

キリ「にゃん!」フンスッ

榛名「提督は煙たがってますけど、この子は結構提督がお気に入りみたいですね」

北上「呈のいい遊び相手なんじゃないの~?」

榛名「あははっ、かもしれないですね」

金剛「Oh!キリ、こんなところにいたネー!」ワキワキ…

キリ「にゃっ」ビクッ

榛名「あら、金剛お姉さま。どうかしたんですか?って…何、両手ワキワキさせてるんですか…」

金剛「これからキリはIt's bath time.ネ~!」バーン

キリ「うにゃ~!」ドタバタ

衣笠「ち、ちょっとちょっと、暴れだしたわよ…」

瑞鳳「あはっ、そっかぁ、お風呂苦手なんだ?」

キリ「シャー」

金剛「Hey!キリ、それじゃよくないヨ~?体綺麗にしないと、また提督が怒るネ~。主に怒られるのは私なんだかネッ!」

キリ「にゃにゃにゃっ」フルフルフル

瑞鳳「あはは、首振って拒否してる。金剛さんの言葉解ってるのかな?」

金剛「キリ~、頼むネ~」

キリ「フシャー」

赤城「臨戦態勢です」


ダッ


赤城「あらら、敵前逃亡…」クスッ

金剛「待つネー!キリーッ!!」ダッ

榛名「提督に見つかったら、金剛お姉さまも執務室に缶詰でお説教プラス書類整理のお手伝い確定ですねぇ」クスッ

北上「第二の犠牲者か…ってか、金剛っちは良く悲鳴上げてたか…あんま面白みないなー、それだと…」

赤城「あなたは相変わらずね」クスッ

北上「んふふ~、まぁ楽しい事はいいことだよ、うん」

-???-

??「さぁ、ここまでくればもう良いだろう」

??「感謝するよ。この恩は忘れない」

??「よしてくれ。これも何かの縁…そう、私達という存在が紡ぎだした一つの奇跡だ。キミは、その先駆けに
過ぎないのかもしれない。だが、確かな一歩と確かな奇跡の始まり、それがキミさ」

??「ふふっ、そうかもしれないね。ダスビダーニャ」

??「ダスビダーニャ、ヴェールヌイ」


Bep「……帰ってきたよ。司令官、皆…」


彼女の見据える先には提督鎮守府の灯す明かりが燦々と夜空を照らして輝いていた。

普段は余り感傷的にならない彼女も、この時ばかりは熱いものが込み上げてきた。

期間にすれば大した事はないのかもしれない。

いや、それでも二十日間と言う期間は鎮守府の皆にとって、彼女自身にとっては途方もない時間に感じた事だろう。

だからこそ、この瞬間は奇跡が起こった瞬間であり、待望の瞬間であり、かけがえのない瞬間だったのかもしれない。

紆余曲折を経て、漸く提督鎮守府へと彼女は帰還を果たす。響改めヴェールヌイ、提督鎮守府へついに邂逅を果たす。

本日はここまで

皆様こんばんは
今日も少ーし更新します




~If~



-???-

そこは深くて暗くて寒々とした印象だけが支配する。

誰も近寄らない、誰も近寄れない、暗闇だけが全てを支配する水底。

静かで、ゆったりと流れる時間。

手を差し伸ばしても、誰もその手を取ってはくれない。

差し伸ばした手、腕、白い素肌がすぅっと青白く変わっていく。

不思議と恐怖はない。

心地良ささえ感じる。

寒さは消えて、変わりに心の奥底に芽生える感情。入れ代わるように消えてゆく感情。

仲間の顔、仲間の声、明るい……未来。全てが消える。

それら全てが消えて、新しく生まれるのは、悔しさ、悲しさ、孤独感……負の感情。

違うと心の中で叫んでも、その声はもう表には届かない。

やがて心も暗闇に支配され、それは出でる。


??「ヨウこそ、こちら側ノ世界へ……」



バサッ…!


響「…はぁ、はぁ…夢?」



提督「響…なのか?」

Bep「やあ、司令官……ただいま」



響「ここは、現実…?海、上……?」



艦娘には、死後三つの世界が待ち受けている。

響……改め、ヴェールヌイは死に直面したことでその内の一つの狭間を垣間見た。

厳密には感じ取ったと言うべきで、彼女自身はそれを現実としては捉えておらず、夢として処理していた。

これは、彼女に起こったであろう最悪の結末。

起こって欲しくないという願望が生み出す悲劇。

そして起こりえる可能性を秘めた悪夢。




加賀「そして、最後の一つ……水底へ沈み、深海棲艦として生まれ変わる」

武蔵「残した念が強ければ強いほど…」

大井「悲しみを帯びて、憂いを引き摺れば引き摺るほど…」

加賀「それは負の感情となって自分が想像しえる最低最悪のイメージとして具象化し、死後私達に牙を剥く」

-鎮守府-


ビー、ビー、ビー


榛名「提督っ!深海棲艦が……!」

提督「くそっ、残ってる連中を集めろ!防衛ラインを形成し、なんとしても食い止めるんだ!」


??「やっと、戻ってコレたよ……司令官」


暁「あ……あぁ…」

電「そんな、どうして……」


??「あぁ、暁…電…タダイマ。戻って、キタよ……」


暁「ごめん、ごめんね、響……!」ジャキッ

電「せめて、安らかに眠って欲しいのです…!」ジャキッ


??「どうして、何、シテるの?」


ドン ドン ドン ドン


ボゴォォォン


グギャァァァ……


アアアァァァァァ……


??「え……?」チラッ


──深海、棲艦?──


??「私が、連れてキテ、しまったのか…?」


ボゴォォン


??「うぐっ…!」

暁「はぁ、はぁ…」

??「あか、つき…?ドウして、私を撃つんだ?」

暁「響は…響は死んだんだからぁ!卑怯よ…深海棲艦、こんな卑怯なマネ……許さないんだからっ!!」ジャキッ

??「やめろ、アカツキ……私だ、ヒビキだよ……!」

暁「響の仇は、私が取るんだから!」ドン ドン

??「……ッ!」

-医務室-


ガバァッ


Bep「……ッ!はぁ、はぁ、はぁ……」

提督「おい、響!響、大丈夫か?どうした、凄いうなされてたぞ」

Bep「し、司令、官…?」

提督「そこの砂浜んところで倒れてるのをイムヤたちが知らせてくれてな。取り敢えず、入渠ドックへ運んで、
怪我は治したんだがお前の意識が戻らなくて、皆心配してたんだぞ」

Bep「…私、戻ってこれた、のか」

提督「ああ、そうだ。戻ってきた。ったく、無茶ばかりして…後であの当時、作戦に参加したメンバーにはちゃ
んと謝るんだぞ?特に暁がもうひどくてな…宥めるのに苦労した。俺も、相当迷惑かけたから余り暁のことは言
えないんだがな…」ニガワライ

Bep「うん、反省してる。けど、私は強くなって戻ってきたんだ、司令官」

提督「強くなって?そういえば、被ってた帽子が暁たちと違ったが…」

Bep「私の名はヴェールヌイ…信頼できると言う意味の名なんだ」

提督「お前、まさかロシア海域まで行ってたのか!?」

Bep「実は良く覚えてないんだ。案の定、奴等は待ち伏せしていた。その時は虚勢を張ってでも切り抜けるつも
りだったけど、相手は戦艦級に重巡級、他にも沢山いたように思う。夜の闇に紛れて何匹かは沈めたところまで
は覚えてるけど…弾薬も底をついてきて、燃料も相当厳しかったのもあったから、隙を見て闇と煙幕を利用して
逃げた」

提督「けど相手は追ってきたんだな?」

Bep「随分としつこい連中でね。方角なんてもう気にしてる余裕はなかったよ。途中で、ついに追いつかれて万策
尽きて、これまでかと意識が遠のき、気付いたらベッドの上に横たわっていた」




響「……ここ、は?」

??「プリヴィエート。気が付いたか」

響「君は…?」

??「私はポルタヴァ級第一等戦列艦、ポルタヴァだ」

響「…聞いた事のない、名前だ」

ポルタ「それはそうだろう。私達はキミ達、ヤポーニャとは違う。ロシアに属する艦隊なのだから」

響「ここは、ロシアなのか…?」

ポルタ「ああ、その通りだ。丁度うちの艦隊が遠征任務を行っていてな。道中砲撃の音に釣られてキミ達の戦闘
区域に遭遇したという事だ。深海棲艦は共通の敵という事だな」

響「そうか…わざわざすまない」

ポルタ「気にするな。それよりも、その成りで戦艦級や重巡級を相手にするというのがそもそも無謀だ。それで
は命がいくつあっても足らんぞ」



Bep「それで、暫くそこの鎮守府で厄介になって、様々な技術を交換したというわけさ」

提督「ロシアの鎮守府か。はは、連絡の取りようもないな。まぁ、とにかくお前が無事だった事をみんなに伝え
てくるよ」


ガチャ…パタン


Bep「……あれは、本当に夢だったのか?現実味が、ありすぎた……」



その後、響改めヴェールヌイは皆の前で謝罪をした。

勝手な行動を取ってしまった事、心配させてしまった事、溢れてくる感情は抑えきれず、後半は言葉にもなって

いなかったように思う。

それでも、全員が響の帰還を心より歓迎し、安堵し、涙した。

改めてヴェールヌイは皆の温かい心に触れて、この鎮守府にこれてよかったと実感した。

本日はここまで


深海棲艦化ストーリーは全部書くとすげぇ事になりそうだったので、
一部夢として抜粋する形で書きました

あとは単純に帳尻合わせが面倒っていうのもありましたが…
時折、突発的にこうした重要な岐路を読んでくれてる人へ安価で丸投げにすると言う
おぞましい行為に及ぶ場合がありますが、まぁサプライズとでも思って適当にあしらって
いただければ幸いです

皆様こんばんは
ちょこっと更新

-あくる日・某所-

提督「…こういう所、あんま慣れてないんですけどね」

榛名「わぁ…」キョロキョロ

先輩「何よ、快気祝いもしない不逞の後輩の分際で、偉そうに文句垂れるわけ?」

提督「だぁからぁ、それ所じゃなかったって言ってんでしょうが、全くもう…」

長門「ふっ、相変わらずだな、提督大佐は」

榛名「提督、提督!高そうなお酒がいっぱいあります!」ワクワク

先輩「ふふっ、榛名ちゃんはお酒、イケる口かしら?」

榛名「えっ、あ、えーっと…す、少しなら…」ニガワライ

長門「榛名は一定量のアルコールが入ると愚痴が始まるから注意だな」

榛名「な、長門さん…!///」

提督「で、秘書艦を随伴させる意味はなんなんですか。実務的な内容なら、別に俺らだけでもいいでしょ」

先輩「まぁそう急くな。私やお前、それに榛名ちゃんや長門にも大いに関連が深い話だ」

提督「この場の面子にとって重要って事ですか?」

先輩「厳密にはこの場限りではない。が、代表してといったところだな」

事の発端は、つい先日の事さ。うちの艦隊でアルフォンシーノ方面を攻略した事は記憶に新しいと思う。

問題は、そこから更に哨戒地域を広げている段階で発生した。

もはや積年の相手と言っても過言じゃないな。新鋭元提督の姿をそこで確認した。

実際にこの目で確かめた訳じゃないが、空母組の艦載機からの情報だ。まず間違いはあるまい。

それとは別に、西方海域方面と南方海域方面へ向かう敵影をそれぞれ確認した。

どちらも今までに認識した事がない容姿と聞いてね。まず、間違いなくお前達が交戦した通称「鬼」や「姫」と

呼ばれていた連中だと思ったよ。

それと、これも正式な識別として決まった呼称、戦艦レ級も確認されている。

ここにきて局面が一気に動いたって訳さ。

で、一つは実際に合間見えた事があるお前達に生の情報を貰いたかった事。

で、残りもう一つ、長門達の戦闘を見て感じた事だが…正直驚きのほうが勝っていてね。

提督「長門たちの戦闘…?」

先輩「長門に限った話じゃないだろうが、それでも頭一つ抜きん出ていたのはやはり長門だ」

長門「……」

先輩「で、直感的に思ったわけ。あんた、どういうコネでいったか知らないけど、大本営のトップシークレット
にもなってる近代化改修を施したわね?」

提督「元帥殿自らが話をしてくれたんですよ」

先輩「父さんが…?」

提督「先のモーレイ海を掌握するために、俺たちは一度挑んで大敗していました。相手は戦艦レ級…たった二隻
でしたが、その戦力は予想を遥かに凌ぐ脅威でした。主力の第一艦隊に第二艦隊を随伴させて挑みましたが結果
は散々なものでしたよ」

榛名「…途中、機転を利かせて陸奥さんが自爆に等しい特攻を仕掛けてくれて、そこに生じた隙をついて私達は
なんとか逃げ遂せたんです」

長門「私もあの場では全くと言っていいほど手も足も出なかった。結果として、無様な姿を晒す事にもなった」

先輩「なるほどね…それを皮切りに、近代化改修か。けど、その効果は未だ実戦で本領を発揮していなかった。
それ所か、元帥お抱えの部隊でもまだ主力艦隊でしか実証が完璧にはなされてないものだったのよ?」

提督「ええ、賭けでしたね。結果論ですから素直には喜べていません。正直、安堵の方が勝ってます」

先輩「けど、そうね…榛名ちゃんと長門に、それぞれ聞いてみたかったのよ。近代化改修、聞くだけならきっと
内容としては容易く感じたはず。けど、実際に行って見てどうだったのか。また、その後の感じとしてもどうな
のか。非常に気になるところなのよね」

榛名「私の場合、瞬発的にですけど、力や速さが増したというか…普段なら到底無理な動きとか反射速度とか、
そういったものを半ば少し無視した動きが出来るようになりました。周りの皆からも『ありえない動き』なんて
言われるくらいですから…」

長門「潜在的な力と言うものを余さず引き出せるトリガーと私は認識している。よく言うだろう、火事場の馬鹿
力と…それに近いものを意識的に出せるようになる、とでも言うのかな。しかし、最も大きいのは私の場合は、
だが…誰かを守ると決意した瞬間だな」

榛名「…それ、解る気がします。私は、あの時…散っていった武蔵さんや加賀さん、大井さん達を強く想って、
彼女達の遺志を背負ってみせるって、決意した時に力が発揮された気がします」

先輩「艦娘個々でその『トリガー』は別々に存在するって事か。榛名ちゃんなら託された想いを汲む事で、長門
なら誰かを守ると決意した時、それぞれ近代化改修で得たパワーを表面に発現させられる、と…」

提督「そんなに凄いのか?」

長門「ああ、得られる力は絶大と言えるな。だが、それに振り回されることもある」

榛名「自分の身体なのに、言う事を聞かないというか…」

提督「狂乱状態だな」

榛名「だけど、表現が難しいんですけど…頭の中で、カチッてスイッチが入った感じで、そうなると暴れている
力も難なく御せるようになるんです」

先輩「なるほどね。そして、その結果が深海棲艦の幹部クラスと目された泊地棲姫の撃破に繋がった…」

提督「それなんですけどね」

先輩「ん?」

提督「鬼や姫と呼ばれる存在です。どうやら、鬼と呼ばれる状態はあいつらにしてみれば通常形態で、本領発揮
をすることで姫へと進化しているのではないかって思いまして…更に、途中途中で聞こえてきた深海棲艦の言葉
なんですが、少し気になる部分もあります」

長門「……以前にも、戦った事がある口ぶり、か」

提督「気付いてたか、長門」

長門「なんとなく程度だ」

榛名「それに、なんだか私達を憎んでいる口ぶりでもありました」

提督「その通りだ。少なくとも奴らは艦娘を憎む、あるいは遠ざけたい、近寄りたくない存在として捉えている」

先輩「その癖、人間に向ける意識は薄い…」

提督「その通りです。ですが、俺は以前にその艦娘に対して全く敵意を向けない深海棲艦を目の当たりにしました」

先輩「何…?」

榛名「え、それって…」

長門「…電達から私も話を聞いたことがある」

提督「外見は空母ヲ級でしたが、容姿が成長途中と言うか…」

先輩「幼子って感じだったわけ?空母ヲ級って言えばみた感じ、確か人間でいう所の中~高校生に近かったわよね」

提督「ええ、ですがその見かけたヲ級は容姿は幼子、扱う言葉はカタコトでしたが、こちらに敵意を全く向けて
こないので、印象に残ってました」

先輩「それ以外で何か気になる事はいってたの?」

提督「私自身は敵意はないが、他の深海棲艦がそうとは限らない。私はもう戻る事もできない、と…」

先輩「はぐれ深海棲艦って事か…」

提督「深海棲艦…本当に謎の部分が多いです。合わせて、新鋭元提督の動きも気になります」

先輩「深海棲艦の生態についてはこっちで調べておくわ。あんたには危険と承知でお願いするけど、新鋭のその
後の動向を探って欲しいのよ」

提督「お願いって…俺たちが独断に見える動きをしてたのは、元帥殿のお墨付きがあったからですよ?先輩みた
いにホイホイあちこち出歩くなんて基本出来ませんよ」

先輩「あんたねぇ…まるで私が夢遊病患者みたいな言い方やめなさいよね!?」

提督「事実でしょうが…」ボソッ

先輩「長門、提督命令。こいつ押さえつけなさい」

長門「……恨むなら自分を恨んでくれ、『元』提督」ガシッ

提督「あっ、おいこら長門!おま、薄情すぎるだろ!?しかも何『元』強調してんだ、ふざけんな!元だろうが
上官は敬え、ちくしょう!っていうか、榛名も助けて欲しいんですけどね!?」ジタバタ

榛名「面白そうなので傍観に徹して見ます」

提督「どんだけ薄情だ!ぐおぉぉ…ち、力つえぇ…!」ググッ

長門「ビッグセブンの力は伊達ではないよ」グググッ…

提督「力の使いどころ間違ってんだろぉ……!」

今日はここまで

皆様こんばんは
少し更新します

今更ですが、上位の深海棲艦にはそれぞれモチーフになっている場所が解っている場合や
ちょっと名前などを他国語に変換、アナグラムなどにして結構適当に勝手な名前がつけてあります
なんぞその名前ってのがあってもそこはオリジナルの設定として読んで頂ければ幸いです





-???-

リコリス「ポート、アクタン以外は全員集まったワネ」

装空鬼「西方海域ダケじゃなく、他の海域のモノ達まで呼ぶノハどういうコト?」

リコリス「既に泊地棲姫が沈めラレたと言う話は聞いてイルはず」

??「マサカ決起会デモしようと言うの?」

リコリス「寝首ヲ掻かれナイ様に対策が必要ダト言ってイルのよ」

??「不必要に感じるケレど?」

??「デモ、リコリスの言う事も事実カナ?」

??「けど、ここマデこれるのカシラ?泊地棲姫モ浮遊要塞のみで、単独で挑んで、相手の力量ヲ見誤って、こ
うナッタんでしょう?ナラ、始めカラ全力で潰しにイケばいい。アノいけ好かナイ人間の女ノ方針になど、基本
私達ハ従う理由ナドないのだから…」

リコリス「ピーコック……」

ピーコック「なぁに?モシかして、普段の私の働きの事ヲ言ってイルのかしら?それとも、パートナーのコトかしら?」

リコリス「……」

ピーコック「フフッ、怖い顔ね。いいわ…だったら私達が少し、その噂の艦隊ト遊んデあげる」

??「私もついてイクの?」

ピーコック「イイじゃない、どうせ暇ナンだから。ソウでしょ、フェアルスト?」

フェアルスト「はぁ…貴女の奔放さにつき合わサレる私の身ニモ、たまにはナリなさい?」

リコリス「少なくトモ、私達と一対一デモ引けを取らナイ艦娘が存在するノハ事実よ」

ピーコック「…なんですって?聞き捨てナラないわ。私達と、同等デスって?」

フェアルスト「六隻ヲ相手に、沈めらレタ訳ジャないと?」

リコリス「報告デハ初回、一隻…その後、三隻ヲ相手にシテ一方的に攻撃を受けテ沈めラレた、とあるわね」

??「泊地棲姫がタッタの三隻に沈めラレたと言うノ!?」

??「信じラレない…」

装空鬼「……つまり、艦娘達も私達に対応デキる何かヲ、掴んだと言うコトね」

??「フフ、なら…絶望するマデ、何度でも水底へ落とセバいい……」

装空鬼「南方棲戦鬼……忘れてイルみたいダケど、新型の戦艦モ、こちらはヤラれているのよ」

南戦鬼「変わりはシナい。私の理念はな…私の砲撃は、ホンモノよ……」

??「……何度デモ繰り返す、コノ愚かな戦いヲ……」

??「フフッ、それこそ慢心がモタラス発言かもね?」

??「……随分と辛口ネ」

??「あら、ゴメンなさいね?」

ピーコック「いいわ。少しヤル気も出た…あの計画の下準備ノ前にする準備運動ニハ丁度いいでしょう?」

フェアルスト「それもソウね」

リコリス「二人トモ、くれぐれも……」

フェアルスト「解ってイル」

ピーコック「名目は敵情視察…遠征ヨ。遠征…」

深海棲艦達が何かの計画を企て、時を同じくして提督と先輩提督が今後の方針について語り合っていた頃、鎮守府

では一つの催しが行われていた。

泊地棲姫との戦闘以降、休息も含めてこれといって遠征任務程度しか活躍の場がなかった面子は体の鈍りを解す

目的と大本営で培った能力をさび付かせないという名目で、身内同士で演習戦を行う事を決定していた。

その戦いに、同じく自分の実力を再確認したいとヴェールヌイも名乗り出た。

本日はここまで

皆様こんばんは
ちょこっと更新しにきました

-演習場・夜-

北上「ほいっ、ちにっ、さんっ、しっ、と…」

羽黒「司令官さんと榛名さんいらっしゃらないのに、大丈夫でしょうか…?」

衣笠「んまぁ、なんとかなるっしょ」

大鳳「それに、遊びではないですからね」

木曾「っし、準備は万端!いつでもいけるぜ!椅子に座りっぱなしで鬱憤溜まってるからよ…マックスでわりぃ
がいかせてもらうぜ」

陸奥「私はまぁ、小手調べ程度かしらね」

龍驤「そないな事言うて、ひっくり返ってもしらんでぇ」

川内「ふっふーん、そぉれはどっちかなぁ?足元掬われないようにしなきゃね」

赤城「戦力差が明確に分かれてしまうと思いますが、出来る限り均等になるように私の方で分けて見ますね」

北上「よろしくね~」

陸奥「最も、タイマン仕様でやるからどっちに転ぶかなんて解らないだろうけどね」


■赤組
陸奥 龍驤 川内 北上 夕立

■白組
衣笠 大鳳 羽黒 木曾 Bep

赤城「…こんな感じでしょうか?」

神通「大本営で演習に臨んだ皆さんの実力、凄く期待してしまいます」

夕張「データの更新にもなるなぁ、ねっ、霧島さん!」

霧島「ええ、榛名の実力を鑑みても、確実に他の子達も戦力は大幅に上がっているはず。あの時は本領発揮とま
ではいかなかったみたいだけど、衣笠や羽黒も実力は格段に上がってると思うしね」

瑞鳳「何より、あの時の長門さん達の強さは本物だった…」

暁「ひび…じゃないや、ヴェル」

Bep「別に響でも構わないよ、暁」

暁「う~…」

電「ベルちゃん、余り無理はしたらダメなのです」

Bep「正直、改装を施した後でどれだけ性能が強化されてるのか自身でも解ってないんだ。だから、こういう場
で確認したかったんだ」

夕立「病み上がりなんだからさぁ」

Bep「解ってる。無理はしないよ」

夕立「むぅ、ホントに頑固なんだから!それなら、私だって容赦しないっぽい!」

Bep「ふふっ、臨むところさ。信頼の名は伊達じゃないところを見せるよ」

-陸奥 vs 衣笠-

陸奥「艦隊戦じゃなく、一対一ってこと?別にいいけど、ちょっと物足りないわねぇ」

衣笠「あらら、もしかして衣笠さんじゃ役不足ぅ?」

陸奥「なんてね。あなたや羽黒をそこら辺の重巡型と一緒にしたら泣きを見るのはこっちでしょ?リハビリつい
での練習台なんて思わないわよ。全力で倒しに行くわ!」

衣笠「それはそれは、重畳の至り、なんちゃってね!ヴェルちゃん同様、病み上がりだからって私も容赦はしな
いんだからね!?」

陸奥「上等よ。ビックセブンの力、思い知らせてあげるわ!」


比叡「陸奥さんはどうでるかな?」

金剛「陸奥は一発が強力な戦艦ネ。足で稼ぐより手数で稼ぐのが得策に思うけど…」

霧島「…今までは、ですよ。長門さんの戦いを目の前で見ていた私からしてみれば、足元を掬われるかと…」

比叡「そっか…今回の面子って、夕立やヴェールヌイ以外は…」

金剛「大本営帰りネー」

衣笠「先手…必勝!」ダッ

陸奥「」(足回りはどう頑張っても衣笠には及ばない。なら、まずは正攻法ね)ジャキッ

衣笠「む……」

陸奥「足は使わせないわよ」ドォン ドォン


ボボボボン


衣笠「っとぉ!それそれ!」ドン ドン

陸奥「っ!」(こっちの攻撃の合間を狙って撃てるの!?)


ボゴォォン


衣笠「宣言通りっ!先手頂きぃ!」

陸奥「……何が宣言通りですって?」 無傷

衣笠「あ、あれ…?」


比叡「は、速い…衣笠って、あんなに速かったの!?」

金剛「命中精度も格段に上がってるネ。あれだけ速く動き回れば、夾叉になっても不思議じゃないのに…」

霧島「はい…的確に陸奥さん目掛けて砲撃してました」

比叡「けど無傷って辺り、流石ビックセブンって感じなのかなぁ」

金剛「はぁ、比叡ぃ~、しっかり見るネ~!着弾の瞬間、陸奥はきっちりガードの姿勢をとって防いでたヨ?」

比叡「え゛……」

衣笠「むぅ…」(あれ防いじゃうのかぁ。硬直上手く狙ったと思ったんだけどなぁ…)

陸奥「じゃ、行くわよ?」サッ

衣笠「え、行くわよって…なんで砲撃の構えじゃないの?」

陸奥「そりゃあ…」

衣笠「ちょ、ちょ、ちょっと待ったぁ!ダメダメ、衣笠さん殴り合いなんて無理だってばぁ!」

陸奥「問答…」

衣笠「うわ、やば…」

陸奥「…無用ッ!」ビュッ

衣笠「このっ…!」ドン ドン


ヒュン ヒュン……ボゴォォン


陸奥「精密性欠けてるところを見ると、こういった距離が満更でもないみたいね?」

衣笠「」(痛い所突くなぁ…でもまぁ、短所を克服するのもありだけど、長所を伸ばして更に短所までカバーす
るのも、またありよね)チャキ チャキ

陸奥「む…連装砲じゃない?」

衣笠「そっ、これは私専用にカスタマイズしたものよ。20.3cm(3号)三連装砲…」

陸奥「」(もう一個は…従来と同じもの。二門同時に主砲を扱えるって言うの?)

衣笠「そんじゃま、いくわよぉ!」ダッ

陸奥「手数で勝負なら負けないわよ!」

衣笠「ほらっ!」ドン ドン

陸奥「これしき!」サッ


ボボボォォン


衣笠「もう一つ!」ドン ドン

陸奥「くっ…!」(この子、ホント的確ね)


ボゴォォン


陸奥「……少しはやるじゃない」 小破

衣笠「直撃させたと思っても最小限に抑えてくるなぁ…」

陸奥「火遊びが過ぎるわね」ジャキッ

衣笠「やばっ……射線…」

陸奥「全砲門、開け!」ドォン ドォン


ボゴォォォォォォン


衣笠「夾叉…危なかった…」

陸奥「何処がかしら!?」サッ

衣笠「えっ」


ドゴォッ


衣笠「きゃあ!」 小破

陸奥「姉さん譲りなのよ、殴り合いはね」グッ

衣笠「げほっ、やばい…」

陸奥「悪いけど、私の前に立つ以上、徹底的に撃ち落すわ!もう二度と、私は倒れない!!」ジャキッ

衣笠「はは、ウソでしょ。速すぎるって…」(時間、あと少し…なんとしても!)

陸奥「この勝負は私の勝ちよ、衣笠!」ドォン ドォン


ボゴォォォン


陸奥「……」

本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

霧島「決まったかしら?」

比叡「…でも、なんか腑に落ちないって言うか。衣笠だって大本営帰りでしょ。これで終わりな気がしない」

金剛「ここから、多分衣笠が巻き返してくるネ」

霧島「え?」

金剛「慌てずに良く見てたヨ。土壇場で冷静な対処が出来るって言うのは大きなAdvantageネ」


陸奥「あれを、凌いだの…?」

衣笠「はぁ、はぁ…」 中破

陸奥「やるじゃない、衣笠」

衣笠「まだまだ、これからよ。衣笠の夜戦、見せてあげる!」サッ


スッ……


陸奥「闇に紛れて…!くっ…」


ドン ドン


陸奥「っ!?」サッ


パァァァン


陸奥「うっ…!これは、照明弾!?」



ザバァァァン


陸奥「そこっ!」ドォン ドォン


ボボボボボボン


陸奥「え…?これ、艤装…!?」

衣笠「ほら、こっちが本命よ!」ジャキッ

陸奥「このぉ!」ジャキッ


ドン ドン ドォン ドォン



霧島「位置の把握は完全に衣笠が一歩リード」

金剛「けどそこから囮を利用して更に不意を突いたのに対応した陸奥も流石ネ~」

比叡「結果、相打ちに見えたけど…衣笠の方が被害は大きいかなぁ」


衣笠「うぅ~、まーけたー!」 大破

陸奥「夜戦まで視野に入れてたなんてね」 中破

衣笠「はぁ…いけると思ったのにぃ」

陸奥「正直冷や冷やものだったわよ。あなたも羽黒も、鬼や姫と呼ばれるクラスを相手にしたんでしょう?」

衣笠「私達はその護衛みたいなのが相手だったけどね」

陸奥「それでも、実力は確かなものよ。次やったら今度は負けるかもしれない。だから、次やってもまた勝てる
ように、もっと修練は積むわ」

衣笠「ふふーん、次は絶対に勝つわよ!」

-大鳳 vs 龍驤-

大鳳「艦載数の数を言い訳にはしないわ」

龍驤「とーぜんや!正規空母と軽空母じゃその差は歴然。せやけど、うちらかてやれるっちゅうとこ見せなあか
ん時があるんや。見せたるわ…軽空母でも、正規空母に引けは取らんゆーとこな」バサァ

大鳳「上等です。装甲空母の恐ろしさ。身内にもきっちりと知らしめて上げます!」バッ

龍驤「さぁ仕切るで!攻撃隊、発進!」ビュン ビュン

大鳳「第一次攻撃隊、全機発艦!」ビュン ビュン


瑞鳳「赤城さんや飛龍さんはどう見ますか?」

飛龍「単純な戦力差で言えば迷わず大鳳かなぁ。勿論、先輩鎮守府からの同僚贔屓抜きでね」

赤城「通常の正規空母の耐久力や装甲なんかに比べれば、彼女は本当に粘り強いものを感じます」

飛龍「確かにね。私や赤城さん、勿論瑞鳳もだろうけど、ある程度負傷が嵩むと発艦が困難になるけど、あの子
はもう無理でしょって思うところからでも追撃に出れるんだよね」

瑞鳳「装甲空母の名は侮れないって事ですね…」

赤城「けど、龍驤の操る艦載機は身内の私達でも戸惑う軌道を描きますからね」

飛龍「奇想天外…正攻法で理詰めにするには最も不適切な相手だね。直に横道に逸れちゃうからっ」

-大鳳 vs 龍驤-

大鳳「艦載数の数を言い訳にはしないわ」

龍驤「とーぜんや!正規空母と軽空母じゃその差は歴然。せやけど、うちらかてやれるっちゅうとこ見せなあか
ん時があるんや。見せたるわ…軽空母でも、正規空母に引けは取らんゆーとこな」バサァ

大鳳「上等です。装甲空母の恐ろしさ。身内にもきっちりと知らしめて上げます!」バッ

龍驤「さぁ仕切るで!攻撃隊、発進!」ビュン ビュン

大鳳「第一次攻撃隊、全機発艦!」ビュン ビュン


瑞鳳「赤城さんや飛龍さんはどう見ますか?」

飛龍「単純な戦力差で言えば迷わず大鳳かなぁ。勿論、先輩鎮守府からの同僚贔屓抜きでね」

赤城「通常の正規空母の耐久力や装甲なんかに比べれば、彼女は本当に粘り強いものを感じます」

飛龍「確かにね。私や赤城さん、勿論瑞鳳もだろうけど、ある程度負傷が嵩むと発艦が困難になるけど、あの子
はもう無理でしょって思うところからでも追撃に出れるんだよね」

瑞鳳「装甲空母の名は侮れないって事ですね…」

赤城「けど、龍驤の操る艦載機は身内の私達でも戸惑う軌道を描きますからね」

飛龍「奇想天外…正攻法で理詰めにするには最も不適切な相手だね。直に横道に逸れちゃうからっ」

龍驤「まずは小手調べや!」

大鳳「開幕で終わらせる!」


ドォン ドォン ボゴォォン


大鳳「そのまま…!いけっ!」

龍驤「ほんま、正規空母と軽空母じゃ自力の差がよぅ出るわ…」ニガワライ


ボフゥゥゥン


バサァ


龍驤「せやかて、指咥えて見てるだけやあらへんで」サッ

大鳳「残りの突貫だけじゃ無理か。けど、貴女の艦載機で私の装甲甲板を撃ち抜けるかしら?」

龍驤「勅命…!」バッ

大鳳「む…?」

龍驤「うちの子らかて優秀なんはおるんよ。キミんとこのハリケーン・バウにも引けはとらへんで?」

大鳳「え…?ち、ちょっと…どういうこと!?」


瑞鳳「え…?あれ!?」

赤城「見えました?飛龍さん」

飛龍「あの子って、こんなトリッキーな真似できたんだ…」

瑞鳳「え?え?龍驤さん、何したんですか?」

飛龍「ミスディレクションって言葉、知ってる?」

瑞鳳「ミ、ミスディレクション?」

赤城「マジシャンとかが良く使う誤った視線誘導の事で、一種のテクニックですね」

飛龍「あの子は今、左手を前に差し出して『勅命』って言葉発したでしょ。わざわざ、艦載機を発艦させる時に
放つ仕草と同じように」

瑞鳳「で、でも…何も起こってないし…」

赤城「そこが、ミソなんですよ。その時点で既に瑞鳳さんも、恐らく対峙してる大鳳さんも、彼女の罠にハマッ
てますよ」

飛龍「本命は…龍驤の左側とは反対の右側…更に迂回させて、大鳳の直上…!」

大鳳「何の真似よ…!」

龍驤「ふふん…ショータイムはこっからやで!艦載機のみんなぁー、お仕事お仕事ー!」


ブーーーン……


大鳳「えっ?なっ、直上!?い、何時の間に…!」


ヒュン ヒュン……ボゴォォォン


大鳳「くっ…!」 小破

龍驤「ちぃ、浅いか…!」

大鳳「この程度、この大鳳はびくともしないわ!装甲甲板は伊達ではないってことよ。第二次攻撃隊、発艦!」ヒュン ヒュン

龍驤「」(純粋なこの子等の錬度はきっと大鳳の方と比べたらうちの方が劣る…せやったら、その分、うちが自
分で埋めたったらええねん!当たって砕けて、砕けたら今度はしがみついてスッポンも真っ青なレベルで纏わり
ついたるわ!あん時から何も変わってへん。せやから、変わるんや…!)ダッ

大鳳「なっ…!?」

龍驤「よし、一気に決めるで!」ヒュン ヒュン

書き溜めと追記分、掲載終了
本日はここまでー

皆様こんばんは
ちまちま、更新していきます

瑞鳳「じ、自分も同時に駆け出した!?」

赤城「一体何を…」

飛龍「まさかあの子…!」


龍驤「うちの子等の邪魔はさせへん!」ジャキッ

大鳳「25mm連装機銃…まさか、私の艦載機を撃ち落す気なの!?」

龍驤「そのっ、まさかや!!」ダダダダダッ


ボボボボボン


大鳳「くっ、誘爆は防がないと…次発発艦準備も、まだ……ならっ!」ダッ 中破

龍驤「いぃっ!?な、なして…!」


瑞鳳「えぇ!?大鳳さんも駆け出した!」

飛龍「次の発艦までの時間を稼ぐつもりなの?」

赤城「だとしても、彼女は砲撃装備を所持してなかったはず…」

龍驤「キミ、まさか…」

大鳳「その、まさかよ!」グッ ブンッ

龍驤「あ、あぶなぁ!」サッ


ビュンッ


大鳳「ちっ」グッ

龍驤「どないな訓練自分つんできてるん!?」

大鳳「武闘派二人が一緒だったかしらね。結構いい訓練だったわよ」


赤城「長門さんと木曾さんから近接戦闘の施し受けてたみたいですね」

瑞鳳「大鳳さんも元々体動かすの好きな方だし、理に適った特訓だったって事ですね」

飛龍「龍驤にとっては想定外だろうなぁ。あれは別の意味でトリッキーだし…」


大鳳「この距離から逃がさないわ」ヒュッ

龍驤「……!」(あかん、近距離やと体感的に更に速く感じて…)


ドゴォッ


龍驤「うっ…!」ズザザッ 小破

大鳳「さぁ、やるわ!第六○一航空隊、発艦始め!」サッ ヒュン ヒュン

龍驤「やっぱ、ちょっち装甲薄いねんなぁ…って、泣き言言うてもしゃーない!!」バッ ヒュン ヒュン


ボゴオオオォォォォン


龍驤「…っぅ、流石に…これはあかんか……!」 中破

大鳳「…あなたも同じよね。もう二度と、同じ過ちを繰り返さない。私もあなたも、これが最後の教訓よ」ザッ

龍驤「はは…ほんま、自分…タフすぎるって…」

大鳳「…丈夫が取り柄なのよ」

龍驤「よういわんわ…せやけど、ほれ…やってやれないっちゅう事あれへんのや」


ブーーーン……


大鳳「なっ…!」

龍驤「便利やろ、視線誘導ちゅうんは…対人相手やとよう皆引っかかってくれるんや。王手飛車取りっちゅーとこやな」


ボゴォォォォォン


大鳳「ぐっ…!」 大破


飛龍「驚いた…最後、被害拡大する直前に発艦させてたんだ」

赤城「天晴れ、ですね。この勝負は龍驤さんの勝ちです」

瑞鳳「凄い……」


大鳳「負けたわ…完全に、気を抜いてた。まさか最後のあの瞬間に発艦を済ませていたなんて…」

龍驤「キミこそ、大概タフすぎるねん。終わる気がせぇへんかったわ」

大鳳「ふふ、言ったでしょ?それが一つの取り得だって。ありがと、いい勉強になったわ」

龍驤「にしし、お互い様やな」

-川内 vs 羽黒-

川内「よしっ!容赦しないからね、羽黒!」

羽黒「大丈夫です。私だって、やる時はやるんですよ?」

川内「えへへー、まぁそうこなくっちゃね!これは訓練用に模造された武刀剣だけど…」

羽黒「遠慮も勿論要りませんよ?もしも遠慮したら、絶賛大奮発で後悔させちゃいます」

川内「あははっ!羽黒も言うようになったねぇ。じゃ、遠慮なく行くよ!」サッ

羽黒「」(川内さんはヒット&アウェイの戦法がとても上手だったのを覚えてる。自分の攻撃が届く距離をきっ
ちり把握して、そのギリギリの距離、自分が離脱に必要な距離をしっかり見極めて動いてる。まるで戦闘エリア
を俯瞰の風景で見ているみたいに、圧倒的な空間把握能力がある。けど、私だって…!)チャキッ

川内「」(私が知る限り、羽黒ほどきっちりしてる子はそうはいないねぇ。うちの神通に似てるものがあるって
言えばあるけど、ちょっと違うんだよなぁ…何が違うのか、それは…)グッ

羽黒「」ピクッ

川内「」(これこれ…この敏感な所は神通とそっくりだ。演習でも戦闘になるときっちりスイッチ入れ替える辺
り、やっぱ怒らせると怖いかもねぇ…ただ、身内贔屓に見ても羽黒はやっぱり優しいんだよ。うちの神通程じゃ
ないにしてもね。そこが違いだね)ザッ

羽黒「……!」バッ

川内「いくよっ!」ドン ドン

羽黒「」(動きは、最小限…!)バッ


ヒュン ヒュン


ボゴォォォン


川内「あれをかわしますか。けどまぁ、そうした場合は…」チャキッ

羽黒「そこです!」ドン ドン

川内「なんの!」シャシャッ


ボン ボボン


羽黒「た、太刀筋が速い…!」

川内「まっ、これからよね!」ブン ブン チャキッ


イク「うわー、速い…」

イムヤ「駆逐艦連中が速いのは言わずもがなだけど、彼女達以外でうちの鎮守府だと川内、神通、それに木曾かな。
スピードスターって異名がぴったりなのって」

鈴谷「だねぇ。ぶっちゃけ川内ちゃん、昼戦でも夜戦でもその勢いが変わらないってのがマジヤバイっしょ」

熊野「そ、そうなんですの?」

ゴーヤ「夜戦の川内さんはまさに鬼神でち」

イムヤ「目にサーチライトでも仕込んでんじゃないの?ってくらい精密よ」

鈴谷「これ、絶対夜戦に持ち込み狙ってるよね」

イク「じゃあ、羽黒ちゃん危ないのね?」

熊野「そうとも言い切れませんわよ。彼女の目、あれは虎視眈々って言葉がとても似合う獣のような眼光ですわ」

羽黒「」(まだ、もう少し…)


バッ


川内「む…」

羽黒「いきますよ、川内さん」ジャキッ

川内「いつでもどうぞ?」スッ

羽黒「」タンッ


イムヤ「自分から間合い詰めた!」

熊野「恐れ入りますわね…」

ゴーヤ「へ?」

鈴谷「あははー、重巡の動きじゃないって…まぁ、私や熊野は航空巡洋艦だから若干、遅いのは認めるけど…」

熊野「元は重巡、ですけどあそこまで俊敏にって訳には参りませんでしたわ」


川内「」(うっそ、速い…!?)

羽黒「全砲門…!」ジャキッ

川内「まずい…!」バッ

羽黒「」ニコッ


クンッ ザザザッ


川内「直前で方向変えた!?やられた…っ!」

羽黒「いけぇー!」ドン ドン


ボゴオオォォォン


川内「いったぁ……やってくれるじゃん、羽黒!」 中破

羽黒「五倍の相手だって…支えて見せます!」ジャキッ

イク「直撃は避けたみたいだけど、これは相当厳しそうなのね」

イムヤ「けど、夜戦仕様に変わるわ…勝手も変わる」

鈴谷「ぶっちゃけ、こっからが本番、見所満載だと思う。観戦組は暗視スコープもあるからよくみーえるぅー」

ゴーヤ「羽黒さんには悪いけど、川内さんの独壇場になるかもでち」


川内「上等…けどねぇ、こっからはフルスロットルだよ。負ける気がしない!さぁ、羽黒…私と夜戦しよ!」

羽黒「」(ここからが、本番!きっと川内さんは夜戦も視野に入れて対策してきているはず…となれば、きっと
探照灯、照明弾、夜間偵察機のどれかは持ってきてるはず…明確な位置を特定されたら、あの人の精確な空間把
握能力から逃れる術がなくなる。その前に、決着をつける!)


ドォォン


パァァァン


羽黒「」(あの明かりは、違う…あっちの方には確か陸奥さんと衣笠さん……集中、集中よ……)


ビュッ


羽黒「っ!」サッ


カッ


羽黒「えっ!?」


ボゴォォン


羽黒「きゃあっ」 小破


鈴谷「今の、見えた?」

熊野「川内さん用にカスタマイズして工廠で作成された投擲して爆破させる爆弾、かしら?」

イムヤ「接触すると爆発ってのはまぁ、機雷の原理と同じみたい。それを設置タイプじゃなく投擲タイプにカス
タマイズしたのが川内さんの艤装だね」

ゴーヤ「ゴーヤも初めて見たでち」

イク「かっこいーのねー!」

イムヤ「それに、あの絶妙な間合い。投擲してもうその場には居ないし…ふふ、ホント忍者よね。あれ…」

羽黒「二番砲塔が…!けど、まだです!」

川内「私が夜戦好きなのはさ、この領域でなら誰よりも活躍できる自信があるからなんだよね。昼戦じゃどうし
たって戦艦組や空母組が花形になりそうじゃない?勿論、それぞれに華が出る場所ってのはあると思うから、こ
れは私の勝手なこじ付け論ね。で、私の考えじゃ駆逐、軽巡、重巡って類は昼戦よりも夜戦が本領発揮できるん
じゃないかって思ったわけさ。じゃあ、私は夜戦で誰にも負けない存在になろうって思ったわけ。だから……」

羽黒「…この領分で私に負ける訳には行かない、と…」

川内「せーかい。夜戦をものにする為に、周りとは一風変わった訓練を重ねてね。まっ、お陰で得る事ができた
スキルってのは今のところ大いに私を助けてくれてるよ」


鈴谷「そう言えば、何度か川内ちゃんと一緒の夜戦って経験した事あったけど、なーんか動きが正確すぎるんだよね」

ゴーヤ「それ、聞いた事あるでち。神通さんにもゴーヤ聞いた事あるけど、なんか苦笑い浮かべながら『川内姉
さんは神経研ぎ澄ませてると目を閉じていても周りの殺気とか、そういう類の気配を感じ取るんです』とか言っ
てたけど、冗談だとばかり思ってたでち」

鈴谷「マジ忍者じゃん…」

イムヤ「それ、何気にハンパなく凄い事なんじゃない?」

熊野「第六感とも言うべき感覚的な部分が特定の条件化で発揮されているんですわ」

川内「今の私は、音や気配すら視て相手の位置を把握する」

羽黒「」(これが…これが、川内さんを夜戦王なんて呼ばせてる所以。あの泊地棲姫と対峙した時、私に足りな
いのは火力だと思ってた。けど違った…火力だけじゃない、必要なのは…)

川内「これで終わりだ、羽黒」スッ

羽黒「」(読んで…もっと集中して、気配を感じる。音は捨てて、気配だけ…近付く気配、攻撃を仕掛けるとき
に漏れる気配、模造された武刀剣はきっと囮…始めにあれを見せておいて意識させる事が目的なら、あれを攻撃
の手段としては絶対使わない)

川内「…………」

羽黒「…………」


ヒュッ


川内「チェックメイト」チャキッ

羽黒「いいえ、ステイルメイトです」スッ

川内「っ!?」


カッ バシュン


ボゴォォォン


川内「……まーじかー」 大破

羽黒「けほっ、こほっ……」 大破


イク「うーわー…」

ゴーヤ「お、驚きでち…」

イムヤ「羽黒、凄い…」

鈴谷「いやー、ドキドキハラハラってこういう時に使うんだねー」

熊野「鈴谷、あなたは本当に緊張感の欠片もありませんのね…」

鈴谷「へ?」


川内「最後、なんで私が接近してくるって解ったのさ。あそこで声掛けたって、既にこっちは攻撃のモーション
入ってるし、絶対回避は無理って踏んでたのにさー…」

羽黒「川内さんのお陰ですよ」

川内「はい?」

羽黒「気配を、読み取ってみたんです。流石に、川内さんみたいに視るっていうのは無理がありましたけどね?」

川内「まじで?」

羽黒「ふふっ…ええ、まじです」

川内「もー、なんだよー。私の専売特許だったのにー」

羽黒「では、これからは折半という事で」ハニカミ

本日はここまで


ここの戦闘描写好きだわ

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

>>200
感想ありがとうございます
読みやすい内容、伝わり易い書き方を日々、覚えていきたいと思ってます

-北上 vs 木曾-

木曾「北上ぃ、先の恨み晴らさせてもらうぜ…」

北上「え、ちょ…木曾っち、それ完全に八つ当たりじゃん」

木曾「うっせぇ!」

北上「はぁ、お姉ちゃんはこんな粗暴に育ってしまった末っ子を悲しく思うよ」

木曾「けっ、よく言うぜ。嫌がらせしか受けた記憶ねぇっつーんだ」

北上「まっ、それはそれとして…どっちが重雷装の扱いに長けてるかって部分は譲れないよ?」

木曾「へぇ、そらぁあれか…ぽっと出の俺に負ける気がしねぇってワケか」

北上「うん、まぁね~。あ、そうそう…」

木曾「あ?」

北上「大井っちが眠ってる慰霊碑に花、手向けてくれたでしょ?」

木曾「し、知らねぇなぁ…///」メソラシ

北上「ふふっ、きっと喜んでると思うよ。ありがとね♪」ニコッ

木曾「だぁー!もう、知らねぇって言ってんだろ!卸すぞ!///」

阿武隈「木曾さんって嘘がホント下手よね。北上さんとは大違い」

利根「もーちょい素直でも良いと思うがのう…」

神通「けど、そこが木曾さんらしいですけどね」

夕張「うーん、これは非常にいいサンプルデータ取れそうですよー」

阿武隈「夕張ってそればっかよね」

夕張「ちゃんと皆さんに還元してるじゃないですかー」

利根「霧島といいお主といい、飽きもせずようやるのう」

夕張「ふっふっふ…今はまだ、五口のみの武刀剣、川内さん専用の爆散クナイ、夕立ちゃんの時限式魚雷しか実
現してませんが、行く行くは皆さん一人一人、専用の艤装を完成させて見せると!」グッ

神通「ふふっ」

阿武隈「あぁ、そう…っていうか、全員分作る気なんだ」

夕張「勿論です!」キラキラ

木曾「ったく、お前と一緒だと調子が狂う」

北上「そう?私は結構、息が合ってるって思うけどな~。姉妹だけに?」

木曾「どの口が言うんだか…まぁ、いいよ。演習だが遠慮無しでぶっ飛ばすぜ」

北上「ま、演習だしね~。姉に手を上げる粗暴な末っ子ってレッテルは貼らずにおくよ」

木曾「うっせー!砲撃で蜂の巣にされんのと刀の錆にされるの、どっちがいいか選ばせてやるよ…!」チャキッ

北上「あのさ、それ…どっちもイヤに決まってんじゃん」

木曾「そんじゃあ、俺の方で選んでやるよ!」バッ

北上「は~、やれやれ…血気盛んだよね~」チラッ

木曾「オラー!」ドン ドン


ヒュン ヒュン……ボゴォォォン


木曾「む…」

北上「どーこ狙ってんのー?」スッ ドボン ドボン

木曾「ちっ」サッ

北上「」ジー


阿武隈「北上さんの戦闘って余り見たことないけど、なんかヘン…」

利根「ヘンって、お主も辛辣じゃのう…」

阿武隈「ち、違うってば!そうじゃなくて!なんていうか、違和感?」

神通「……足運び、ですね」

阿武隈「え?」

利根「ほぅ、流石じゃな、神通」

神通「木曾さんは気付いてませんが、そろそろ…ですね」

利根「ふっ、小細工と言うには精密すぎていかんのう」

木曾「これなら、どうだよ!!」ドン ドン

北上「んー、同じかなー?」ヒョイッ


ヒュン ヒュン……ボゴォォォン


木曾「なっ……」

北上「さーん、にー、いーち……ほいっ」パチン


ボゴォォン


木曾「ぐおっ…!」 小破

北上「あり…?浅い、か…」

木曾「チッ…やるじゃないか!」

北上「」(うーん、木曾っちの動きは結構把握してるつもりだったんだけど、見誤ったか)


神通「恐ろしいほど冷静に観察・分析してますね、北上さん」

利根「んむ…普段の北上からは中々想像し難いものじゃが、我輩の視点から見ればあやつは相当クレバーな奴じゃ」

阿武隈「ク、クレバー…?」

夕張「冷静ってことでしょ。でも、射線を予測してるような立ち回りですけど…」

神通「予測してるんですよ。木曾さんの癖や傾向を逆手にとって、最小限の動きで…加えて木曾さんは射程距離
がバラバラです。着弾点付近の場合は夾叉を避けて、北上さんもさり気無く大きくステップして移動してます」

夕張「……凄い。てか、神通ちゃんも何気によく見てるなぁ」

神通「川内姉さんの練習相手をさせられると、見てないと大変な事になりますから」ニガワライ

北上「いーかい、木曾っち!木曾っちの悪いところはそうやって直に突出しようとするとこだよ」

木曾「あぁっ!?」

北上「まぁ、私も結構カッと頭に血が上るから、解らないでもないけどね~。なんだっけなー、なんかのマンガ
であったんだよね~。い~い、台詞…」

木曾「んのやろう…」チャキッ

北上「お…?」スッ

木曾「ぶった斬るッ!」ブンッ

北上「おわ、あぶな!」サッ

木曾「動くんじゃねぇ!」ブンッ

北上「アホか!動くわ!っていうか、避けるわ!」サッ

木曾「おらー!」ブンッ


サッ


北上「落ち着けーぃ!」キタカミキーック ドカッ

木曾「ぐはっ」ザバァァ…

北上「はぁ、もう…あ、そうそう。頭はクールに心はホットだ。んむんむ、この言葉は結構アリだよ、うん」

阿武隈「せ、説教しながら木曾さんを押してる…」

夕張「器用なんだか何なんだか…」

神通「ふふっ」クスッ

利根「どうした、神通」

神通「やっぱり、お姉さんなんですね」

利根「む?」

神通「木曾さんの悪いところ、一つ一つ見つけてその度に指摘して…後でそれに気付いて、感謝するんですよ」

利根「そんなもんじゃろか?」

神通「ええ、そんなもんなんですよ」

木曾「あー…いってぇ。まさかケリ飛んでくるとは想定外だったわ」

北上「いいかね、木曾っち。重雷装巡洋艦ってぇのは艤装次第じゃ身軽に動けていいかもしんないけど、自分が
思ってる以上に装甲と耐久力ってのはないんだよ。それを補う戦術ってのが必要になるのさ」

木曾「……」

北上「私ならこの四十門の酸素魚雷。さっき、いつ攻撃されたか解ってなかったっしょ?」

木曾「…あぁ、悔しいけど唐突だった」

北上「私が木曾っちと正面切って戦えるのは、木曾っちの癖や傾向把握してるからってだけじゃあないんだなぁ」

木曾「んだとぉ?」

北上「そっ、それそれ!その短気が私としちゃ利用できる要素の一つさ」ビシッ ドボン ドボン

木曾「ぐぬぬっ」

北上「こうしてのらりくらいりと挑発しつつ間合いは取って、死角になった所で魚雷をちょいと海面に流し込む作業」

木曾「」(チッ、マジ戦闘に関しちゃ大井譲りで上手行かれる。悔しいけど相性マジ最悪だぜ…かみ合う気がしねぇ)

北上「正直さ~、単装砲って、何気にわびさびよね~。まっ、今回は運が悪かったと諦めるんだね~」

木曾「はぁ!?まだ終わってねぇだろ!」

北上「うんにゃ、もう終わりだよ。言ったじゃーん!頭はクールに、心はホットって、ほらっ」パチン


ボゴォォォン


木曾「ぐおっ!ま、まさか…小言も全て、戦術の内、かよ……」 大破

北上「ま~、私も漏れなく負けるの大嫌いだからさ。心はホットなワケよ。それにまあ…私はやっぱ基本雷撃よね~」ニヤッ

木曾「くっそ…なんも、できてねぇ…」

北上「今はそれでいいんだよ。やるべき時に木曾っちの本気、みせてちょーだいな」ポンポン

木曾「頭叩くな!///」ブンブン

北上「あははははっ」


阿武隈「あの飄々とした感じ、北上さんって感じだなぁ…」

夕張「北上さんの戦闘スタイル真似ようっても、これは真似ようがありませんね」

利根「ふっ、確かにのう。あれは北上ならではと言った所かのう。らしさが十分にでとったわ」

神通「私達もうかうかしてられませんね」

本日はここまで

皆様こんばんは
ちょびちょび更新します

-Bep vs 夕立-

いきなりに余談だが、駆逐艦達の中で現在最も活躍が著しいのを差別化して宣言すればヴェールヌイ前の響、そ

して夕立、島風の三者だろう。

響の鎮守府に対する貢献度は度外視で大きいと言える。

夕立、島風も対深海棲艦での働きは暁、電、白露、時雨、春雨と比べれば、その貢献度は群を抜いて頭一つ飛び

抜けていると言える。

だが提督はこれまでこれらの事実を褒める事はしても決して格差を明確にする順位等は一切つけてこなかった。

一つは姉妹で要らぬ争いの火種を生み出さないため。

特に白露隊は長女の白露が一番じゃないと嫌だと言う傾向が発言からも見て取れる。

暁隊は現時点で仲の良い三姉妹であり続けている見事なトライアングルの関係に綻びを生みかねない、と提督は

それぞれに判断し、能力や貢献の差別化を一切行っていなかった。

だが、ここにきて偶然にしろ駆逐艦の中でトップスリーを争う内の二人が演習で激突する事になってしまった。

これは果たして凶と出るのか吉と出るのか…結末は運命のみぞ知る。


電「暁ちゃん、ベルちゃんきっと勝てるよね?」

暁「とーぜんよ!」

島風「どれだけ速くなったのかな!?」

暁「しらない!」

島風「ぶーぶー」


時雨「余りこういうのはしない方がいいと思うんだけどね」

白露「大丈夫だって!この勝負は夕立が一番よ!」

春雨「えっと…ゆ、夕立お姉ちゃんなら心配要らないかなって、私は思います」

時雨「あはは、そういう事じゃなくてね。響は病み上がりなんだから、そんなに急く必要もないんじゃないかっ
て、僕は思ったんだ」

白露「ま、まぁ…言われればそうだけど」

夕立「一つ確認っぽい」

Bep「何かな?」

夕立「演習でも、身内でも、私は負けるのだけは嫌なの。だから、響には悪いけどやるなら全力で私はやるっぽい」

Bep「勿論、私もそうしてもらわないと困る」

夕立「そう、良かった」クスッ…

Bep「……っ!」サッ

夕立「なら、思う存分戦れるね!」バッ


春雨「え…?」

白露「え、ちょっと…何魚雷を空中に放り投げてるのよ!?」

時雨「あの子の魚雷は少し特殊でね。着弾式じゃなくて時限式なんだよ」

春雨「え…!?そ、そんな魚雷存在するの、時雨お姉ちゃん…?」

時雨「ふふ、僕も最初聞いたときはビックリしたよ。けど、夕張仕様って聞いて妙に納得したのを覚えてる」

夕立「一つ確認っぽい」

Bep「何かな?」

夕立「演習でも、身内でも、私は負けるのだけは嫌なの。だから、響には悪いけどやるなら全力で私はやるっぽい」

Bep「勿論、私もそうしてもらわないと困る」

夕立「そう、良かった」クスッ…

Bep「……っ!」サッ

夕立「なら、思う存分戦れるね!」バッ


春雨「え…?」

白露「え、ちょっと…何魚雷を空中に放り投げてるのよ!?」

時雨「あの子の魚雷は少し特殊でね。着弾式じゃなくて時限式なんだよ」

春雨「え…!?そ、そんな魚雷存在するの、時雨お姉ちゃん…?」

時雨「ふふ、僕も最初聞いたときはビックリしたよ。けど、夕張仕様って聞いて妙に納得したのを覚えてる」

暁「あぁっ!」

電「ベルちゃん!」

島風「おー…連装砲ちゃんもビックリレベル」


白露「ゆ、夕立ってこんな凄かったっけ…?」

時雨「僕が知る限りは…うん、強いと思うけど」

春雨「言葉になりません…」


モクモク……


Bep「……ハラショー。少し時間を掛けすぎたみたいだね。計算ミスだ」 被害軽微

夕立「」(いくつか夾叉で命中しなかったの?ううん、彼女の言葉通り…設定時間を失敗したっぽい)チャキ チャキ

Bep「その魚雷、怖いから私からは近付かない事にするよ」

夕立「ご自由に」

Bep「スパスィーバ。それじゃ、私はこのまま次の夕立の動きを観察させてもらおう」

時雨「時限式魚雷……夕立の扱うこいつは、言い換えれば自分の好きなタイミングで発破させる事が可能って
部分にある」

白露「ふんふん、つまり?」

時雨「姉さん…」アセ

白露「な、なによーっ!」

時雨「はぁ…つまり、待ちの戦法…相手を焦らすって方法は取れないのさ」

春雨「メ、メモしておこう…」カキカキ


島風「夕立すごーい!」

暁「ふ、ふん!響のほうが凄いに決まってるじゃない!」

電「けど、夕立さんの魚雷は思いのほか厄介なのです…」

暁「た、確かにね…夕立のあれ、きっと夕張にでも作ってもらったんでしょうけど、もしも深海棲艦であんなの
使ってるの居たら、私だったら回れ右、なのは…悔しいけど確か、かな」

島風「んー、でも、あれ突破する方法はあると思うよー?」

電「ふぇ?」

島風「まぁ、自己流だけどねっ!響ちゃんが出来るかどうかはわかんなーい」

本日はここまで


盛り上がり方ハンパねぇなオイ
楽しみが増えたぜ

>>218
そう言って頂けると作者冥利に尽きます
今後とも頑張って書いていきます!


補足
今まで擬音のみで戦闘描写してましたが、今回試験的にヴェールヌイと夕立の戦闘シーンだけ
戦闘描写に説明文的なものを盛り込んで見ました

自分で読み返してみて、書いてた時はその光景やシーンを思い描いて書いてたので
イメージできてた擬音の描写も、後から読み返すとどんなシーンなのか不明慮な点が
あったもので、読んでもらってる方々も同じだとしたら挿絵がない分、連想しにくいのかな
と勝手に解釈して書き足してみた感じです

今後、元の手法に戻ってる箇所もあるかもしれませんが、追々やはりこの書き方が最も
想像力を掻き立てる書き方かなと感じれば、今回のこの書き方で、今後の戦闘描写も
していこうと思います


では、今度こそお疲れ様でした!

度々降臨
序盤に気付かず同じ内容連投して、挿入してないシーンあったので追記

時雨「ふふ、僕も最初聞いたときはビックリしたよ。けど、夕張仕様って聞いて妙に納得したのを覚えてる」


夕立「いくよっ!」ヒュンッ ガンッ ガンッ ガンッ

Bep「魚雷を、蹴り飛ばした!?」


空中に魚雷を無造作に放り投げ、それを夕立は三方向へそれぞれ蹴り飛ばす。

そして自身はヴェールヌイからは見えなくなるように、海面を足で蹴り、高い水飛沫を上げて姿を晦ます。


ザバァァン


Bep「くっ、水飛沫で目晦ましか…!」


バシュッ


直後、その水飛沫を突き破って夕立が一気にヴェールヌイとの間合いを詰めて接近する。


夕立「さぁ、ステキなパーティしましょう?」グッ

Bep「なっ…近接格闘!?」(最初の魚雷の行方も気になる…次の目晦まし、これが海面に波紋を呼んで魚雷の射
線確認が容易じゃなくなってる。更にこの水飛沫は虚を突いて私を固定するための言わば餌……本命は間合いを
撹乱して、一気に近付くための布石)サッ


ビュオッ


Bep「くっ」ガガガッ

夕立「ダンスはお好き?」クルッ

Bep「余り得意じゃないが…」クルッ


急な展開に虚を突かれるも、夕立の踊るような蹴りの連撃を艤装を器用に操り防ぐヴェールヌイ。


ガシィッ


夕立「それっ!」バッ

Bep「くっ」(私の艤装を足がかりにして、飛び退いた……まさかっ)

夕立「」ニコッ

Bep「しまっ……!」


不敵に、と表現するのが適したかのような笑みを夕立が浮かべた直後、ヴェールヌイの足元から魚雷が飛び出る。


ボゴォォオン


夕立「忘れた頃にってのがいいっぽい」

今度こそ、今度こそ、私は艦これ捕鯨活動に専念できる…
お疲れ様でしたー!

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

夕立「そっちが近付かなくても、こっちが近付く場合はどうする?」バッ

Bep「その場合は、こうするさ」ジャキッ


夕立の動き出しに合わせ、ヴェールヌイは両手に持った主砲を一斉射する。


ドン ドン ドン ドン


夕立「」(射撃の間隔が短い。凄い早い…!)

Bep「ウラー!」ドン ドン

夕立「くっ…!」サッ


気合い一閃、ヴェールヌイの雨のように続く砲撃を掻い潜るのに精一杯だった夕立もついに捉まる。


ボゴォォン


夕立「……」 小破

Bep「さぁ、次はどうする?」ジャキッ

夕立「夕立、突撃するっぽい」キッ

Bep「…ッ!」

白露「あ、夕立が…」

春雨「す、凄い睨んでる…」

時雨「これは…」


島風「あれ、ヤバくない?」

暁「な、なんか滅茶苦茶怒った顔してるわね…」

電「で、でもでも…これは演習なのです。そ、そんなまさか本気で怒ったりなんて…」

夕立「ソロモンの悪夢、見せてあげる!」バシュン バシュン バシュン ザッ

Bep「くっ…!なんだ、この急激な勢いの増しは…!」


演習と言う枠を超えて夕立の瞳が怪しく揺れたかと思うと、ヴェールヌイの立つ射線上には三本の魚雷が真っ直

ぐに突き進み、それを発射したであろう夕立の姿は既にそこには居なかった。


Bep「ど、どこに…!?」

夕立「正面よ!」

Bep「なっ」スッ

夕立「遅いっ!」ブンッ


バキィッ


Bep「ぐっ」 バシャァァァァン 被害軽微


真横から至近距離で正面に再度現れた夕立は、行動を起こす前にヴェールヌイを更に後方へと蹴り飛ばす。

その夕立を魚雷が追い越し、ヴェールヌイの居る場所で彼女に触れるより手前で……


ボゴオォォォン


大爆発を起こした。

時雨「ほ、本気、みたいだね…これは僕も、相手にしたくないなぁ…」ニガワライ

白露「ゆ、夕立怒らせるのはやめよっか…」アセ

春雨「お、お姉ちゃん達ぃ…!」


島風「夕立、速い…!う~、私も夕立と勝負してみたーい!」ウズウズ

暁「響ぃ!」

電「だ、だいじょーぶ。きっと…!」ソワソワ

Bep「はぁ、はぁ…あ、危なかった。だが、まだだよ…まだ、私は沈まんさ」 中破

夕立「……はぁ、ひーびき。無理はしたらダメっぽい」

Bep「……え?」


これからだ、と臨戦態勢を取り直したヴェールヌイとは打って変わり、夕立はぷーっと頬を少し膨らませ、彼女

に対して注意喚起する。


夕立「少し熱くなり過ぎちゃった。そこは反省するっぽい。響はまだ病み上がりなんでしょ?そんな体で、フル
タイムで夜戦仕様まで突入したら演習の意味なくなっちゃうよ。何より、暁ちゃん達に私が怒られるっぽい」

Bep「夕立…」

夕立「実際に手合わせした私が一番解ってる。響は強い!それに、私もまだまだ欠点だらけだしね。演習なのに
ムキになって少し周り見えなくなりそうになるし…」

Bep「いや、夕立の言うとおりだ。私もまだ焦りがあったのかもしれない。感謝するよ、スパスィーバ」

夕立「次やる時は、肩を並べて一緒に戦うっぽい!」

Bep「ああ…うん、そうだね。その通りだ」

暁「あ、あれ…?」

島風「なんか終わってる?」

時雨「どうやら夕立が響の体を案じて停戦を言い渡したみたいだよ」

電「あ、時雨さん」

春雨「え、演習ですからね。無理は、良くないです」

暁「ま、まぁ…確かにそうよね!」

白露「演習で怪我なんてしたくないもんねっ」



かくして、今回の演習は────


赤 vs 白
中破  大破
陸奥 vs 衣笠

中破  大破
龍驤 vs 大鳳

大破  大破
川内 vs 羽黒

無傷  大破
北上 vs 木曾

小破  中破
夕立 vs Bep


明暗の分かれる試合もあったが、甲乙つけがたいものとなった。

~Extra Operation:艦娘奪還作戦~



-鎮守府-

榛名「あ、頭が…痛い、です」フラフラ

提督「お前、長門や先輩相手に酒で戦おうなんて無謀にもほどがあるぞ」

榛名「うぅ、罠です…」

提督「ったく、これに懲りたら自分の限界をきっちり解っておくんだな。お前運ぶのに苦労したんだからな」

榛名「め、面目ないですぅー」

提督「ホントに大丈夫かよ、おい…」

榛名「は、榛名は、大丈夫です」

提督「大丈夫そうじゃねー…今は榛名、休んでろ。そっちのスペースにソファーあるから。二日酔いなら午前中
だけでもゆっくり休んで水でも飲んでりゃ直によくなる」

榛名「うぅ、榛名、待機命令、了解です…」

提督「待機じゃないっての…まぁいいや、ほら休んどけ」



カリカリカリ…


提督「…………」ポン ポン

榛名「……あの、提督」

提督「ん、なんだ」

榛名「お、落ち着かないと、言いますか…その、なんと言うか」

提督「我慢しろ」

榛名「は、はい…」

提督「…………」カリカリ…

榛名「……」チラッ

提督「…うーん、夕張と霧島の提出してきたこのデータ表、ハンパねぇな。あの二人どうなってんだ」

榛名「……」ジー

提督「えーっと、あぁ?なんだこりゃ…木曾はちっとはまともになったが、北上のやろうは相変わらずか…」

榛名「……」モジモジ

提督「うっし、報告書はこれで全部だな。北上のは排除してっと…ったく、何がスーパー北上さまの遠征報告書
だ……舐めてんのか。内容報告がただの日記じゃねえかよ…イルカちょーかわいいじゃねぇ!」

榛名「て、てーとくー…」

提督「んん、今度はなんだ?」

榛名「そ、その…恥ずかしくて寝られない、と言いますか…」

提督「…はい?」

榛名「寝顔を見られたくない、と言いますか…」

提督「……この場で寝て、俺に寝顔見られるだけで午後は元気になるのと、このまま気分最悪のまま仕事頑張っ
て倒れた上に皆に心配されつつ、その全員に寝顔見られるの、どっちがいい?」

榛名「む、むごい選択肢を…」

提督「カーテンで仕切りもしとくし、別に誰かに言い触らしたりとかしねぇから安心して寝てろ」

榛名「ふぁい…」

提督「海軍割烹術参考書のレシピを基にした海軍カレー…ほ、他は!赤城や瑞鳳、龍驤は何がいける!」

飛龍「赤城さんは刺身なら捌けるって。瑞鳳はー…ハンバーガーとか作れる、とかなんとか…」

提督「龍驤は……まぁ、勢いでなんか作るな、あいつは」

飛龍「あははっ」

提督「そうそう、以前にご馳走してもらったんだが大鳳のカレーも美味かったぞ」

飛龍「むっ、既に大鳳の手料理を!?」

提督「おう、なんか先輩んとこに居た時はよく作ってたとかで手際よくてな」

飛龍「提督も隅に置けませんねぇ」

提督「ばっ…ちげぇよ。そういうんじゃねぇって!」

飛龍「うんうん、まぁでも榛名に余計な誤解させないようにしないと、大変ですよっ!取り敢えず、昼食はカレー
って事でそれじゃいいですかね?」

提督「おう、本場の海軍カレー、期待してるぞ」

飛龍「了解ですっ!赤城さん達と調理に取り掛かりまーす!ではっ、失礼しました!」


ガチャ…パタン


提督「……」チラッ

榛名「……」ジー…

提督「」ビクッ

榛名「どーせ榛名はまだ手料理ご馳走してませんよー…」

提督「あ、いや、そういうんじゃなくてね?以前にね?ね?聞いてるかな、榛名くん?」

榛名「榛名、待機命令、了解です…」ゴソゴソ プイッ

提督「あっ、こら!話を聞けぇ!」

書き溜め分投下終了
本日はここまでー


断片的なネタバレになりますが、どちらを書こうか迷ったので今ここで
また皆様に安価と言う名の下に選んでいただこうかと思います


小数点0-50:金剛覚醒ルート
小数点51-99:金剛英雄ルート

安価以下3つ目で宜しくお願いします

全然関係ない話だけど、英雄をひでおと読んでしまって
トルネード投法で敵をちぎっては投げちぎっては投げする金剛さんを想像してしまった

皆様こんばんは

厨二っぽい表現は解り難いという典型でした
端的に言えば小数点0-50なら生存、51-99なら死亡(深海棲艦)って事ですね
ですが響に続き今回も生き残ったようで、うちに登場する艦娘達は愛されているようです

>>242
英雄で「ひでお」って連想、さらにそれが野茂英雄って所が年代の近さを感じます

-調理場-

飛龍「……って事でっ!」

瑞鳳「横須賀仕込の本場海軍カレーの作成ですね!」

龍驤「腕が鳴るで~!」

大鳳「レシピ、是非とも覚えたいわ!」

赤城「食べます!」

飛龍「作れっ!」

赤城「」(´・ω・`)

瑞鳳「えっと、まずは…材料ですね!」

飛龍「えっとね…カレー粉、小麦粉、お肉は何がありましたっけ?」

赤城「うーん、確か間宮さんがどうぞって言ってくれたのが……あ、ありました。鶏肉ですね」

飛龍「ヨシッ!あとは、それじゃあ…ニンジン、タマネギ、ジャガイモっと…塩に、お米っと…うん、全部ある!」

龍驤「役割分担決めてチャチャッといったろや!全員分作るんは骨が折れんでぇ」

大鳳「ええ、そうね。それじゃ、私は野菜切るのと、サラダを一緒に作っちゃうわ」

飛龍「大鳳、タマネギ、ニンジン、ジャガイモは四角く賽の目に切ってねっ!」

大鳳「ええ、任せて」

赤城「私はお米研いじゃいますね」

瑞鳳「それじゃー、私は大鳳さんが切り終わるまでにフライパンあっためて、準備しておきます」

龍驤「飛龍~、このチャツネってあるん?」

飛龍「あっ、それはここに!」

龍驤「おぉ、準備ええな!せやったらウチも赤城だけやと大変やろし、一緒に米研ぎ手伝ったるわ」

赤城「それじゃ、大急ぎで炊き込みまで済ませちゃいましょう」

龍驤「よっしゃ、いっちょ気張りますか!」

-食堂-


ワイワイ ガヤガヤ


提督「具合はどうだ、榛名」

榛名「だ、大分良くなりました…」

提督「ん、何よりだ」

榛名「あ、あの!」

提督「ん?」

榛名「あ、えっと…提督はやっぱり、その…手料理、とか……そういったの、好き、ですか?」

提督「はは、何だよ急に。そりゃ好きな人の手料理や楽しい仲間と一緒に作る料理にケチつける奴なんてそうは
居ないだろう。何より、達成感や幸福感がそういった料理は違う。格別にな」

龍驤「おーおー、同伴出勤みたいになっとるなぁ」ニヤニヤ

榛名「なっ…!」

赤城「あらあら、お熱いですね?」クスッ

提督「はぁ…ったく、一々茶化すな」ムスッ

榛名「赤城さんまで、ふざけないでください!」プンプン

赤城「ふふ、怒られてしまいましたね?」

龍驤「にししし、ウチは別に気にしてへんで~」

瑞鳳「あっ、提督、榛名さん!お席、ちゃんと用意してありますよ!」

榛名「あ、瑞鳳ちゃん」(か、割烹着姿の瑞鳳ちゃん可愛い…)

瑞鳳「さぁさぁ、座って下さい!」

提督「お、おいおい…!そんな急かすなって」

赤城「さぁ、どうぞ」

提督「おっ、すまんな」

榛名「大鳳さんと飛龍さんは厨房の方ですか?」

龍驤「せや。おっそろしいスピードで盛り付けてんで。手際がもう神の領域や」

飛龍「ヨシッ!第二次給糧搬送の要を認めます、急いで!」

大鳳「さぁ、配るわ!第六○一航空隊、給糧始め!」


赤城「艦載機を利用して着席してる所に片っ端から配ってますね」

提督「すげ…」

榛名「器用なのか、そうじゃないのか…」

提督「それより見てみろ、榛名。これが海軍割烹術参考書のレシピを基にした本場の海軍カレーだぞ!」

榛名「カレーライスと、サラダと、牛乳、ですか?」

提督「ああ、海軍カレーを名乗るならこの三点は絶対外せん。調理に使用する材料も決まってるんだ」

榛名「えぇ!?そ、そうなんですか!」

提督「決められた材料、決められた調理法、決められた品を添えて、初めてそれは海軍カレーと名乗っていいのさ」

榛名「はぁ…そうだったんですねぇ」

提督「しかもこれは飛龍が海軍割烹術参考書ってレシピを基にして作った本場の海軍カレー。しこたま美味いぞ」

榛名「提督って、カレーの話する時は子供みたいですね」クスッ

提督「な、なんだよ。海軍っていったらカレーだろ!マジで美味いんだからな!?提督なったばっかのときに、
横須賀での実技研修に通ってたんだが、そん時に出されたのがこの海軍カレーだったんだよ。もう滅茶苦茶美味
くてなぁ…あれを食ったら、もう他所のカレーなんて食えないっての」

榛名「うふふっ、はいはい。解りましたから、早く食べましょうよ。はい、それじゃ頂きます!」

提督「あ、こら!待て、まだ話は終わってないだろ!」

-遠征組-

衣笠「いやー、まさか戦艦組が同行してくれるなんてねぇ。願ったり叶ったり♪」

羽黒「敵方の補給戦線の断絶が今回の任務ですけど、こうもあっさりと発見できるものでしょうか?」

比叡「うーん、確かにねぇ。霧島はどう思う?」

霧島「考えられるのは、一つは羽黒が危惧するとおり、罠の可能性。それならわざと発見されやすい航路を選択
してても不思議はないわ。もう一つは、馬鹿だった、としか言いようがないかも…」

時雨「ふふ、辛らつだね」

春雨「な、何もないのが一番です!」

比叡「まっ、無理はせずってのが提督の命令だしね。囲まれる前に全力で叩きましょう!」

霧島「私と比叡姉さまで後方から援護射撃をします。そこから時間差で、今度は衣笠と羽黒が主砲で敵の護衛艦
の牽制…気を逸らした所で、側面から時雨と春雨が間近まで一気に近付いてでかいの一発、急所にお見舞い」

比叡「その頃には私達も換装済んでるから第二射いけるし、護衛艦を吹っ飛ばされて浮き足立ってれば相手の陣
形もバラッバラになってるだろうから、立て直しさせるまもなく各個撃破できれば、勝利はこっちのもんだね」

衣笠「胆は時雨と春雨が自由に動けるように、注意を私達四人に引き付ける事ね」

羽黒「やってみせます!」

時雨「春雨、落ち着いてやればいいよ。焦る事はない」

春雨「は、はい!」

衣笠「出来るだけ私達もカバーするよ!」

霧島「後ろは気にせず、前だけ見て対処するといいわ」

春雨「はいぃ!」プルプル

時雨「あはは、緊張しすぎだよ、春雨」

春雨「け、けどぉ、時雨お姉ちゃん…」

時雨「いいかい、春雨。そういう時は、こうやって…」

春雨「ひ、人、人、人?」

比叡「あはは、昔馴染みのおまじないだね」


こうしたやり取りから凡そ三十分後、衣笠を旗艦とした遠征艦隊は消息を絶つ。

そして、彼女達が消息を絶ってから更に今度は一時間後、大本営からではない、明らかに違う作戦命令の電文が

提督鎮守府に届く事になる。

-作戦名:艦娘奪還作戦-

■■■■■■■■番電

「発  離島棲鬼・ピーコック
宛  提督鎮守府一同


翌 一三○○ヨリ コノ作戦ヲ敢行サレタシ

諸君等ニ拒否権ハ無イモノトシ 又放棄スル事ハ 預カリシ艦娘ノ処遇ガドウ成レド構ワナイトスル

周リノ鎮守府ヘ救援ヲ要請シタ場合 之ヲ作戦上ニ因ル違反行為ト見做シ 即時艦娘ノ処断ヲ執行ス

大事ナレバ 諸君等ノミデ現地ヘ参ラレタシ 場所ハ南方海域 珊瑚諸島沖

付ケ加エ告ゲルガ 上記内約ヲ違ワヌ限リ 艦娘ノ命ハ保障スル事ヲ約束スル

諸君等ニ対シ未来星霜光輝カン事ヲ」

本日はここまで

見えた!これは金剛が皆を助けに行ったとき囲まれて皆を逃がすために一人で戦って生存するか死ぬかの安価だったんだな!
何言ってんだ俺・・・

皆様こんばんは
今日もよろしゃす


>>252
ベタですけどアリだと思います
なんもステキなネタ浮かばなかったらきっとその案、パクってるでしょう
悪しからず!

-執務室-


バンッ


提督「比叡や霧島、それに衣笠や羽黒も随艦させたってのに、くそっ!」

金剛「提督、比叡達ならきっと大丈夫」

榛名「そうです。霧島だって、そんな軟じゃありません!」

提督「…すまん。時間がない。敵の目的が皆目見当もつかない以上、議論の余地はない。急ぎ準備を整えてくれ」

榛名「了解です!」

金剛「第一艦隊は私が指揮を取りマス!」

提督「解った。編隊を発表する。残っている艦娘全員を作戦会議室へ招集しろ」

-会議室-

提督「とにかく、敵の目的が解らない以上、細かい作戦概要は立てられない。よってこの作戦にはこの鎮守府の
可能な限りの最大戦力を注ぎ込む」

木曾「つっても、鎮守府留守にする訳にはいかねぇだろ。考えたくはねぇが、相手がここを狙わないって保障は
ないんだしよ」

提督「ああ、木曾の言う事も尤もだ。だから、出向くのは第一艦隊のみ、残りのメンバーは鎮守府の防衛に当た
って貰うことにする」

陸奥「少数精鋭って訳ね」

金剛「旗艦は私、金剛が引き受けマス」

提督「随艦は榛名、赤城、大鳳、北上、川内で頼む。近海の哨戒には第二艦隊として飛龍を旗艦に瑞鳳、陸奥、
利根、神通、阿武隈の六名。残りのメンバーで鎮守府の防衛をしてもらう」


提督「よし、全員揃ったな」

金剛「Perfect!準備万端ネ!」

榛名「燃料、弾薬、補充は完了してます!」

赤城「艦載機の子たちも錬度良好です」

大鳳「こっちもコンディションバッチリよ」

北上「まっ、今回は気合入れていきますか」

川内「とは言っても、比叡や霧島、衣笠に羽黒、時雨に春雨…駆逐艦の二人はまだしも、前者四人がそうあっさ
りと負けるとは到底思えないんだよね。ってことは、やっぱ不意突かれたとかで捕縛されたのかな?特に、羽黒
は気配を感じ取れるくらい敏感な神経持ってるんだよ?」

提督「解らん。だからこそ用心が必要だ。すまん、俺は戦線に参列できない。だからお前達に託す」

榛名「提督…」

金剛「何言ってるデース!提督の執る指揮があって、はじめて私達は動けるんですヨ!それに、私は提督に感謝
してもしきれない恩がありマス」

提督「え?」

金剛「私や比叡、霧島を救ってくれた事、榛名を守ってくれた事、そして…再起への道を開いてくれた事!この
瞬間、この場面こそ、私が提督へ恩をお返しする最大の見せ場デス!見ててくださいネ、提督!必ず、比叡達を
救出して、十二人全員で戻って見せマス!」

赤城「金剛さんの言うとおりですよ、提督」

大鳳「はい!」

北上「良いねえ、しびれるねえ…!」

川内「えへへ、私達にしてみれば今更だけどね!」

榛名「離島棲鬼・ピーコック…おそらく、泊地棲姫と同等かそれ以上の深海棲艦のはずです。ですが、私達は決
して負けません。提督の下へ、また戻りたいから」

提督「ああ、戻って来い。必ず戻ってきてくれ!」

-珊瑚諸島海岸-

ピーコック「さて、馬鹿正直ニ相手は来るカシラ?」

フェアルスト「海軍、ト言うのハ私が知る限り最モ約束ヲ果たソウとする組織だ。無駄にね」

ピーコック「ウフフ、辛辣ねぇ…そんな事言っタラ、可哀想じゃナイの」

フェアルスト「私は、貴女の付き添いだケド、個人的に彼女達には知らしメテあげないといけナイの…」

ピーコック「知らしメル?それは、私も一緒ヨ……この傷跡、一生消えナイ、この傷……同じ分ダケ、刻んで上
げなきゃ、私だって狂ッテしまうわ」

フェアルスト「フフ、つくづく共感出来る部分がズレるわね。なのに、噛み合う……私は再度、アイアンボトム
サウンドの恐怖を刻み込む……」

ピーコック「私は、ウェーク島の戦いで負った傷跡ヲ癒すの……きっと、彼女達ヲ沈めれバ沈めた分ダケ、私は
心の底カラ安堵し、癒さレル……リコリスにはああ言ったケド、遠征なんて気分デ戦いナンて無理よね。ねぇ、
あなた達だってソウ思うでしょう?」

比叡「くっそぉ……!」ギリギリ…

フェアルスト「足掻くダケ無駄よ。そんな状態デ、何が出来るノ?」

霧島「黙りなさい!」

ピーコック「あなたが黙りナサイ?」ビュッ


ドスッ


霧島「がはっ…」

比叡「霧島っ!や、やめろ!」

衣笠「私達を、どうするつもりなのよ」

フェアルスト「餌よ。貴女達ハ泊地棲姫を沈メタと言う、艦娘を誘き寄セル餌…」

羽黒「必ず、貴女達は後悔しますよ」

フェアルスト「そう願う。でなけレバ、こんな下らナイ真似をシタ意味がない」

春雨「……」

時雨「大丈夫かい、春雨」

春雨「う、うん…」

時雨「安心して。きっと、提督や皆なら成し遂げてくれる…雨は、いつか止むさ」

フェアルスト「……そう、こんな下らナイ真似をする程に脆弱。本当に貴女達、泊地棲姫ヲ倒したの?捕らえら
レル位、弱いのに?」

比叡「…解ってないよ」

ピーコック「あら、マタ何か言い訳?」

比叡「言い訳……ああ、別に言い訳でもいいよ。実際に私達は捕まった訳だしね。けどね、あんた達のやったこ
の行為自体が、自身の首を絞める結果になるよ」

霧島「……余り、彼女達を舐めない方が、良いわよ」

ピーコック「随分と強気なノネ。まぁ、ソレでも構わないケド…味わう絶望ハ深ければ深いダケ、より深刻で根
深く楔トなって心の奥底ニ打ち付けラレル……」

-海上-

赤城「不気味ですね」

大鳳「深海棲艦の哨戒、偵察隊すら居ないなんて…」

北上「まっ、目的地で罠張ってるから道中なんてどーでもいいって感じなんじゃなーい?」

川内「気に入らないねぇ」

金剛「それでも油断は禁物デース!赤城、大鳳は周辺の索敵を念入りに、私と榛名も水偵を飛ばして警戒するネ!」

榛名「ですけど、この天気…嵐になるかもしれません」

金剛「……出来れば、比叡達を救出するまでは持って欲しい所ネ。Hey!提督、聞こえてますカー?」

提督『ああ、聞こえてる。経過時間からして、これが一旦最後の通信だな』

金剛「提督、私達戻ったらとびっきりの紅茶用意して出迎えて欲しいヨ」

提督『お前より紅茶に疎い俺に用意させるのか?』

金剛「Oh…そうでした、提督は珈琲派でした……」

川内「あはははっ、残念だったねぇ、金剛」

金剛「うぅ…でも私は諦めません!必ず提督に紅茶の良さを解って貰うデース!」

提督『なら、期待して待ってるよ。さっきからキリも煩くてな。飼い主不在だと色々と問題だ』

金剛「No problem!私を信じるネー」

榛名「お姉さま、そろそろです」

金剛「OK…提督、行ってくるネ」

提督『ああ、頼んだ』

金剛「すぅ……はぁ」

榛名「…いつでも行けます。号令を!」

赤城「一航戦の誇り、お見せします!」

大鳳「ガンガンいきましょう!」

北上「ギッタギッタにしてあげましょうかね!」

川内「見せてやろうじゃない、私達の実力ってやつをさ!」

金剛「Yes!川内の言う通りネ!さあ、私たちの出番ネ!Follow me!皆さん、ついて来て下さいネー!」

-珊瑚諸島沖-

ピーコック「……時間」

フェアルスト「……驚いた。本当に来るトハ…しかも、律儀に六隻ねぇ……フフ、余程の自信がアルのか、それ
トモただの馬鹿なのか、コレは見ものネ」

ピーコック「教えてアゲル…どれほど自分達が愚かデ惨めカ、無様カ、無力ナノかを…!」


川内「あれは……」

北上「何さ、あれ…」

大鳳「今までの、深海棲艦とは違う」

赤城「艤装と人型が、分かれてるの…?」

フェアルスト「ふふ、まずはご苦労様、ト言えばイイのかしら?」

金剛「比叡達は何処ネ!」

ピーコック「この先、珊瑚諸島の海岸ニ打ち上ゲテ拘束サセてもらってるわ」

榛名「何が目的でこんな真似を…!」

ピーコック「泊地棲姫を沈めたンデすってね?」

フェアルスト「その力、見セテ貰おうと思っタノヨ」

金剛「そんな、理由で…!」

ピーコック「私は離島棲姫・ピーコック」

フェアルスト「私は戦艦棲鬼・フェアルスト」

ピーコック「フフ、ここまで来たんだモノ……いいデショウ?」

フェアルスト「どうせナラ、アイアンボトムサウンドに沈めて上げタイ所だけど……」

金剛「Shut it!どんな理由であろうと、この行いは……!」

榛名「お姉さま、二手に分かれましょう」

川内「北上!」サッ

北上「ほいさ!」サッ

大鳳「赤城さん!」サッ

赤城「問題ありません!」グッ

榛名「榛名!いざ、参ります!」

ピーコック「ハルナ…そう、貴女が戦艦榛名ネ?フェアルスト、彼女は私が相手スルわ」

フェアルスト「構わナイ」

ピーコック「フフッ、海軍もここまでクルなんて、ね……楽しまセテくれるわ」

-榛名・川内・赤城 vs ピーコック-

赤城「第一次攻撃隊、発艦してください!」ビュッ


迷いなく放たれた一矢は海面を滑り一気に上昇、一糸乱れぬ編隊で真っ直ぐピーコックへ向かい突撃する。

だが、それをピーコックは一笑に付し、左手を上げて真っ直ぐに榛名達へと振り下ろし命じる。


ピーコック「哀れ…身の程ヲ教えてアゲルわ」ヒュッ


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


赤城「なっ……!」


ボゴオオオォォォォォン


川内「くっ…!なんだ、あの規模で…まさか、一巡目の艦攻艦爆隊だってのか!?」 被害軽微

赤城「相手の艦載機数、底が知れません…!でも、怯みはしません。次に備えます!」 被害軽微

榛名「……なら、あの艦載機を出させはしません!川内さん、被害箇所確認後、追随して下さい!」バッ 無傷

川内「なんの、掠り傷程度よ!」バッ


制空権は辛うじて五分を保ったものの、戦闘が長引けば赤城に軍配が上がる可能性は著しく低くなるのは明白だった。

相手が圧倒的な艦載数を誇る飛行場タイプだとすれば、砲撃は無いに等しいと判断した榛名はその足を活かして

一気にピーコックとの間合いを詰めようとする。

本日はここまで

>>252
・・・確かにそうかも

この状況、金剛の戦う艦隊これくしょん/リアル劇場のMMDに少し似てると感じた。

皆様こんばんは

>>263
>艦隊これくしょん/リアル劇場
Youtubeにもあったので見てみましたが、結構似てしまうかもしれませんね
出来る限り被らないように務めます

BGM:https://www.youtube.com/watch?v=z42yftFIHdg



ピーコック「おバカ、さん……ッ!」クスッ ジャキッ

榛名「なっ…!?」

ピーコック「誰が砲撃はデキナイって言ったかシラ?沈め、水底ニッ!!」ドォン ドォン

榛名「川内さん!射線を…!」バッ

川内「任せて!」バッ


ヒュン ヒュン……ボゴォォォン


ピーコック「チッ…」


榛名、川内、両名共に体を捻って勢いは殺さず、ピーコックの砲撃を回避し、そのまま彼女へ迫る。

その距離、二人の砲撃射程には余りあるほどに接近。姿勢を崩さず狙いを定め、一気に砲撃へ転じる。


榛名「砲撃、開始!」ドォン ドォン

川内「艤装部分がでかい…こいつ、飛行場か何かを丸ごと取り込んでるっての!?」ドン ドン

ピーコック「見せてミナサイ…艦娘の、力ヲ!」ブンッ


ドオオォォォン


ピーコックが片手を振るうと同時に脇に控える艤装の顎が大口を開き、榛名と川内の放った一斉射撃を一気に迎撃する。


榛名「はあぁぁーっ!」


巻き起こった爆風を物ともせず、巻き上がった水飛沫を蹴散らして榛名が一気にピーコックへ肉薄する。


ピーコック「小賢しい、マネを…!」グッ


ドゴォォッ


突き出された榛名の強烈な鉄拳を艤装で受け止め、二人の顔が真正面で向かい合う。


ピーコック「怖い顔…」クスッ

榛名「その余裕が、どこまで続くかお見せします!」グッ

ピーコック「近接戦ナラ勝機があるとデモ言うのカシラ?」グッ

榛名「どんな距離だって関係ありません!私は…私達は、散っていった皆の想いを背負っているから!」ダンッ


ピーコックの艤装を足がかりに榛名が跳躍する。

ピーコック「なっ…!?」グラッ…

川内「ま、まじで!?」


驚くのも無理は無い。

これが現地で見ていた皆が声を揃えて言っていた榛名の『ありえない動き』の根本なのだから。

空中で一回転、姿勢を正して落下の勢いを利用し、ピーコックの艤装目掛けて鉄拳ならぬ鉄脚を打ち込む。


ドゴォォッ


ピーコック「ぐっ…!」 被害軽微

榛名「赤城さんっ!」

赤城「毎度、驚かせてくれますね。準備万端です!第二次攻撃隊、全機発艦!」ビュッ


ヒュン ヒュン ヒュン


赤城「艦載機のみなさん、真っ向からの撃ち合いになります。奮戦を…!」

ピーコック「オノレェ…ッ!この、私ヲ足蹴に…ッ!ケド、それで不意を突いたツモリ?その程度で…空を自由
に出来ルト思わないコトねッ!」ヒュン ヒュン


赤城の裂帛の気合いと共に放たれた艦載機は、同時に放たれたピーコックの艦載機と真っ向からぶつかり合う。

しかし、再び空を駆る赤城より発艦された艦載機達の錬度は先とは打って変わって違い、善戦を見せる。


ドォォン ボォォン ボゴオオォォォン


ピーコック「くっ…!ま、まさか…!私ノ艦載機ガ競り負けた!?」 小破

赤城「……」スッ

ピーコック「あの、女ァ…!」

赤城「…装備換装を急いで!次発発艦用意!」チャキッ グッ

川内「ほら、よそ見してるとさぁ!」ビュン ビュン ビュン

ピーコック「……ッ!」バッ


赤城を睨みつけるピーコックの視界に三つの黒い物体が高速飛来するのが映り、反射的に彼女は身を仰け反らす。


ジッ…


しかし、回避に一瞬遅れて一つが僅かに艤装を掠めたその瞬間。


ボゴオオォォォン


ピーコック「くあ……ッ!」ザザザッ 小破

川内「あんま舐めないでよね。榛名の名前しか覚えてないってんならさ、後学の為に私たち全員の名前、覚えて
おいてよ。榛名の事は知ってるんだよね?で、あっちが赤城、赤城型一番艦正規空母の赤城、で…私が川内って
言うの。川内型一番艦軽巡洋艦の川内…軽巡は眼中にないってんなら、教えてあげるよ。熟成された軽巡の魅力、
心行くまでたっぷりとね!」

ピーコック「……ス」

榛名「…?」

ピーコック「……コロスッ!」ビュッ


ピーコックの瞳が真紅の輝きを放った瞬間、その残光だけをその場に残して本体は川内の背後に出現した。


川内「なっ…!」

榛名「川内さん!」

ピーコック「……遊びハ、終わりヨッ!」ドシュッ

川内「ぐっ……かはっ…!」 中破

ピーコック「邪魔よッ!」ドンッ

川内「ぐあっ!」バシャァァァン


片手を刀のように見立て、川内の背を袈裟に切り裂き、よろめいた彼女をそのまま回し蹴りで吹き飛ばす。


ピーコック「艤装の一片スラも余さず、全て喰らい尽くシテ上げるわ…!」ギラッ

-金剛・北上・大鳳 vs フェアルスト-

金剛「大鳳はOut range、北上はHit&Away…常に間合いに注意するネ」

北上「おっけー。まっ、人質とか腐った真似する連中には人道ってもんをきっちり叩き込んで上げましょうかね」ジャキッ

大鳳「了解よ。北上さんの雷撃を合図に発艦させます!」サッ

北上「いくよっ!四十門の酸素魚雷は伊達じゃないからねっと!」バシュンッ

フェアルスト「重雷装巡洋艦…先制雷撃か。オモシロイ」サッ

北上「えっ!?」


フェアルストは避けるでもなく、ただ左手を前面に翳して合図を送る。

その直後、背後に控える巨躯の艤装がフェアルストの前面で両腕を交差させ、鉄壁の防御姿勢を取る。


ボゴォォォォン


大鳳「第一次攻撃隊、全機発艦!」ヒュン ヒュン


モクモク…


未だ冷め遣らぬ水飛沫と爆煙の中、大鳳の放った艦載機が一気に突貫する。


ボゴォォォォン


盛大な爆発音を轟かせ、更に爆煙を巻き上げる中で、裂帛の声が三人の耳に届く。


フェアルスト「ハァッッ!!」

艤装「グオオオオォォォ……ッ!!」


ボフゥゥゥン……


金剛「なっ…!」

大鳳「……っ!」

北上「ま、まさか…」

三人の声にならない驚嘆と感じ取った危惧はその発せられた気合いの声が物語る。

爆煙を蹴散らし、威風堂々と元居た場所から微動だにせず、彼女はそこに立っていた。


フェアルスト「コレガ本気?コレガ覚悟の一撃?コレデ渾身を込めたのダトしたら……」ニヤァ… 無傷

金剛「……」

大鳳「……」

北上「……」

フェアルスト「……安い覚悟ネ?確かにコレでは…遠征とも言い難い。遊びニモならないワネ」

金剛「…覚悟が足りないかどうか、それはFirst Attackのみでは計れないネ」

フェアルスト「あら、ソウ?それなら……」グッ

金剛「見せて上げるネ。金剛型一番艦、戦艦金剛の戦闘ッ!」ザッ

フェアルスト「……見せてみなサイッ!」ザッ


互いに構えを取り、砲撃ではなく一足飛びで海面を蹴り、金剛とフェアルストの間合いが詰まる。


フェアルスト「ハァッ!」ブンッ

金剛「……ッ!」サッ

フェアルスト「ふぅん…」

金剛「絶対、負けない!」ブンッ


パァァン


フェアルスト「……ッ!」(コノ艦娘…!)ギリギリ…


金剛の正拳突きを受け止めたフェアルストの表情が先とは明らかに変わる。

だがその余韻に浸る間も無く、フェアルストは次に湧き出た気配に意識を集中させた。


北上「一発で余裕ってんなら、お好みの数…ぶち込んで上げましょうかね!」ジャキッ

フェアルスト「フン、構わないワ。好きなだけ撃てばイイ」シャッ

金剛「Shit!」サッ

北上「あんま調子に乗んなーっ!」バシュンッ バシュンッ

フェアルスト「バカな子……」パシッ パシッ

北上「うげっ…!」

フェアルスト「初撃、開幕に放たレタ雷撃……面白かったワヨ。着弾よりも前デ爆発スルんだもの…」

北上「」(迂闊だった…夕立っちの魚雷、一部借りて見たものの、タイミングを間違えてたんだ…!)

フェアルスト「フンッ!」ブンッ


金剛を回し蹴りで後方へ押し遣り、その合間を狙ってきた北上の魚雷を臆す事無く両手でそれぞれに掴み取った

フェアルストは、間髪入れずにそれを北上へ向かい投げ返す。


金剛「北上!」

北上「このっ!」バシュンッ


ボゴオオォォォン


北上「ぐっ…!げほっ、こほっ…」 小破

フェアルスト「器用な真似をスル。苦しむ時間が増エルだけダト言うのに…」


後方へ飛び退きながら北上は狙いを定めて魚雷を発射し、送り返された魚雷とぶつけて誘爆を引き起こした。

だが間合いが近かった事で誘爆に巻き込まれ、自身のみが痛手を負う結果となってしまった。


大鳳「あのまま攻勢に出られるのは不味いわね。第二次攻撃隊、発艦!」サッ ヒュン ヒュン ヒュン

フェアルスト「ッ!」バッ


大鳳の攻撃態勢を察し、フェアルストは三人との間合いを大きく取ると右手を上空へ翳す。


フェアルスト「……全機、撃チ落ス!一斉射ッ!!」

艤装「……グオオォォォォッ!!」ドォン ドォン ドォン ドォン


ボォォン ボボボボンッ ドオオォォォォン


大鳳「なっ…!」

フェアルスト「……温い。温い、温い、温イ、温イ、温イ、ヌルイヌルイヌルイッ!コノ程度なの?貴女達艦娘
の力と言うノハ、この程度デシかないの?コノ、程度の……やはり、沈むベキね。憂いは、この海域がアイアン
ボトムサウンドでは無かったト言うコトかしら。恨むなら、自らの脆弱な力ヲ恨むコトね」

北上「ふざけんな…!」

金剛「Hey!北上…ここは私に任せるネ」

北上「はぁ?ちょ、一人でやる気なの!?」

金剛「北上こそ、頭冷やすネ。無理は良くないヨ。大鳳も、この深海棲艦には不意でも突かないと艦載機の一撃
はきっと通らないネ」

大鳳「くっ…」



僅か短時間で川内、北上の両名が負傷。

ピーコックに対してはある程度の手傷を負わせたものの、逆鱗に触れたのか圧倒的な力を解放される。

結果として榛名と金剛がそれぞれに導き出したのは無駄な手傷をこれ以上身内に負わせない、と言うものだった。

二人のこの決断は、結果として人質として捕まってしまった比叡達六人を無事救出する事へと繋がる。

そして同時に、二人の姉妹にとっても大きなターニングポイントになる。

-珊瑚諸島沖-

赤城「榛名さん!」

榛名「大丈夫です。それより、赤城さんと川内さんは捕らわれている比叡お姉さま達の救出を!」

川内「ごめん、私がドジってなきゃ…」

榛名「関係ありません。失敗だって、手違いだって、なんだってあります。だから、私達は手を取り合って協力
するんじゃないですか。倒せなくとも、抑える事くらいはできます」

川内「…りょーかい。ありがとね、榛名!赤城、行こう!」

赤城「ご武運を、榛名さん…!」

榛名「はい!」


金剛「大鳳、北上、先に海岸の方へ行って比叡達の救出をお願いするヨ」

大鳳「だけど、それじゃ…!」

北上「金剛っちはどーすんのさ!」

金剛「まだまだ、私の実力の全てを見せたわけじゃないワ。それに、比叡達の救出が本来の私達の任務ヨ」

北上「いいんだね…?」

金剛「No problem!任せるネ!」

大鳳「了解!絶対に救出する!」

金剛「北上達の邪魔は私がさせないヨ。任せて!」


フェアルスト「ピーコック」

ピーコック「……あの、虫けら共……絶対に、コロスッ!」

フェアルスト「」(あの榛名と言う艦娘ダケ、一人突出シテるの?いいえ、他の連中も今マデ沈めてキタ艦娘と
比べれば、ダントツの強さヲ誇ってイル。あのピーコックが、制空権を取り損ネルのも驚嘆シタ……そして私が
相手をしてイルこの者達モ……ああは言ったケド、フフッ……楽しませるジャナイ)

榛名「お姉さま」

金剛「榛名、私達の連携、相手に見せ付けてやるネ!」

榛名「はい!」

フェアルスト「……前面は私が抑エル。ピーコック、冷静になりなサイ」

ピーコック「アノ榛名って艦娘は、私がコロスわ」

フェアルスト「解ってるワヨ」

金剛「Hey!人質は別にどうでもイイネー?」

ピーコック「お前達ヲ抹殺シタ後で、直にソノ跡を追わセテ上げるわ」

榛名「そう簡単に…」サッ

金剛「…事は運べまセーン!全砲門!Fire!」ドォン ドォン

後方から一気に榛名が駆け出し、それに合わせて金剛の主砲が火を噴く。

双方共に単縦陣の陣形、フェアルストの後方に控えるピーコックが片手を振り下ろし声を張る。


ピーコック「落とせッ!水底へ、深い闇へ!余さず沈メロッ!!」バッ ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


榛名の突進を削ぎ落とす作戦か、金剛への警戒は殆どせず、ピーコックの放った艦載機の全てが榛名を強襲する。

しかし、榛名は迫りくる艦載機が放つ攻撃の数々を悉く回避していく。


ピーコック「なっ……」

フェアルスト「こいつ…!」


撃ち落しと回避、熱風や致命傷にならないダメージを意に介さず、真っ直ぐに榛名は海面を駆ける。


フェアルスト「奇を衒ってもナイ単発の砲撃ナドッ!」グッ

金剛「榛名ッ!」

榛名「はい、お姉さま!」ジャキッ

ピーコック「……ッ!待って、フェアr……」


ピーコックの制止よりも先に、榛名の凛とした声と海面を貫く衝撃音が先に届く。


ザバアアァァァァン


榛名「……砲撃、開始ッ!!」

フェアルスト「ナッ…!?」


金剛の放った主砲はフェアルストの手前、数メートル先の海面を撃ち抜き巨大な水の障壁を出現させる。

その水の障壁が出現した音に掻き消され、榛名の砲撃が成されたのかどうなのか、フェアルストには知る術がなかった。

その、直後……


バシュンッ


立ち昇った水の障壁を突き破り、全砲門を開放した榛名がフェアルストの眼前に躍り出る。


金剛「お望み通り、簡単なTrick仕立てにしてみたヨ!」

フェアルスト「フェイクッ!?小賢しいマネをッ!!」ザッ ドォン ドォン

榛名「一斉射っ!!」ドォン ドォン ドォン ドォン



ヒュン ヒュン……ボゴオオオォォォォン


フェアルストの放った一撃は明後日の方向へ飛び、逆に榛名の狙いを定めた至近距離からの一斉射撃に成す術も

なく、フェアルストは一身にその砲弾を受けて爆煙の中に消えていく。


ピーコック「フェアルストッ!貴様等ァッ!」ドン ドン

金剛「……ッ!」サッ

榛名「っ!」サッ


ザバァァァン


ピーコックの怒りに任せた攻撃をやり過ごし、金剛と榛名は距離を置いて対峙し直す。

二人は黙ったまま、モクモクと立ち昇る爆煙を凝視してると、その揺らぎに異変が現れる。

未だ爆煙の冷め遣らぬ中、静かに巨大な影が浮き上がり、それは周囲の煙を掻き分けるように、後ろへと追いや

るようにゆっくりとした足取りでそこから姿を現した。


フェアルスト「……今ノハ、効いた」 中破

ピーコック「フェアルスト…!」

フェアルスト「ピーコック……残念ダケド、ここで退くノガ正解よ」

ピーコック「ハァ?何を言ってるノヨ」

フェアルスト「……最初は手応えノない連中ダト思って相対シテいた。が、フフッ……これなら泊地棲姫が一人
デ挑んで負けタト言うのも、強ちウソとは言い難い。宣言通り、ココは遠征とシテ終わらせるノガ吉よ」

ピーコック「何ヲ言って……」

本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

???「言うとおりにナサイ」

???「フフッ、随分なナリになっちゃって…」

???「聞きシニ勝る、と言うコトか…」

装空鬼「敵の戦力ヲ見誤った結果ヨ」


金剛「なっ…!」

榛名「見た事のない…深海棲艦…!」


ピーコックの非難の言葉を遮るように、新たに四匹の深海棲艦が姿を現す。


ピーコック「装甲空母鬼、南方棲鬼、航空棲鬼、南方棲戦鬼…!」

フェアルスト「リコリスの命令ね、キット…」

南戦鬼「リコリスにとっては私達ヨリも、貴様達が重要ナンダそうだ…」

航空棲鬼「フフッ、拗ねちゃって、カワイイのね?」

南戦鬼「フン…」

南方棲鬼「これは命令ヨ。撤退しなサイ」

装空鬼「後ヲ引き継ぐ」

ピーコック「くっ…!」

フェアルスト「後味は最低ネ…」

苦々しい表情で二人は金剛と榛名を一瞥し、踵を返してその場を後にする。

そして入れ代わるようにして四匹の深海棲艦が二人の前に立ちはだかった。


金剛「流石に、冗談が過ぎるネ…」

榛名「お姉さま…」

金剛「榛名、多分赤城達は救出に成功してるはず……比叡達がどれだけ痛めつけられているかは解らないけど、
五人でなら速力を落とさず退避は出来るはずネ」

榛名「お姉さま、何を言って…!」

金剛「相手は簡単に逃がしてくれる相手じゃないワ。ピーコックとフェアルスト…この二匹を前にして気付いた
事は、大本営で錬度を上げた榛名達が絶対今後も必要って事ネ」

榛名「一人で残るって言うんですか!?それに、今後も必要なのはお姉さまも一緒です!」

金剛「考えてる暇はないヨ。それに、全員が残ったら救出しに来た意味まで無くなる。作戦を思い出すネ!捕ら
われた艦娘の安全を確保し、現地より撤退する事!それが、今回の私達の任務…!」

榛名「ですけど!」

金剛「誰かが、殿を勤めないと無理ヨ」

榛名「それなら私が…!」

金剛「榛名、貴女には提督の下に戻るって言う特別な任務もあるデショ」

榛名「それは皆一緒です!」

金剛「そうネ…けど、榛名が戻らなかったら、提督が泣くヨ。だから、貴女は戻るべきなの」

榛名「お姉さま!」

金剛「榛名…私は、貴女達の長女として何かできたかな」

榛名「え…?」

金剛「例え、出来てなかったとしても、私は貴女達の姉で本当に良かった。私の覚悟、今ここで見せるヨ!」

榛名「」(お姉さまの覚悟を、決意を、無駄にする訳にはいかない…ごめんなさい、お姉さま…!)バッ

装空鬼「あら、敵前逃亡ナノ?」

南方棲鬼「敵に背を見せるナンテ…愚かネ」ジャキッ

金剛「何処狙ってるネ!」サッ

航空棲鬼「……まさか、一人で私達ヲ相手にスル気?」

金剛「私一人じゃ不満デスカ?」

南戦鬼「些末な問題ダ。どうせ朽ち果テル…」

-珊瑚諸島海岸-

赤城「皆さん!」

衣笠「赤城さん!」

羽黒「助けに、来てくれたんですか…」

大鳳「当然じゃない。仲間なんだから」

比叡「川内に北上、あんた達その怪我…」

霧島「大丈夫なの…!?」

川内「はは、艤装ぶっ壊されてうち等より怪我がヒドイお二人さんに言われちゃ形無しだってば」

北上「全くさ~、どっちが患者かわっかんないよね~」

時雨「皆、ありがとう」

春雨「うぅ…」

北上「ほらほら、泣くな!女の子でしょ!」ポンポン

川内「北上、それを言うなら男の子だ。バカやってないでさっさとここから撤退するよ!」

霧島「赤城さん、まさか四人で来たわけじゃないわよね?」

赤城「はい、今金剛さんと榛名さんであの二匹を食い止めてくれています」

大鳳「急いで戻って加勢に向かわないと…!」

榛名「皆…!」

比叡「榛名…!?」

霧島「榛名、金剛お姉さまは…」

榛名「はぁ、はぁ…話は、後…今は、早くこの海域から撤退する事を考えて!六人は、艤装を壊されてるだけ?」

衣笠「いや、まぁ…ちょっとあちこちやられちゃってはいるけど、速度が落ちる事は多分ないと思う」

羽黒「はい、なんとか、ですが…」

榛名「うん、了解。一応、六人を庇うようにして輪形陣で進みましょう」

赤城「解りました!」

榛名「それじゃ、六人をお願いしますね」

大鳳「え?」

比叡「榛名、あんた何言ってんのさ」

榛名「金剛お姉さまは、私達の撤退を促す為に深海棲艦とたった一人で交戦中です。はじめは、お姉さまの意志
とか、決意とか、無駄にしちゃいけないって、そう思って、背を向けてしまった…けど、私は『もう二度と』空
を眺めているだけなんてイヤなんです!今度こそ、お姉さまは私が守ります!」

北上「え、ちょ…今度こそって、はい?榛名っち、何言ってんのさ…」

川内「もう二度とって、前にも生死の危機に陥った事でもあるの…?」

霧島「は、榛名…?」

榛名「必ず、お姉さまと一緒に戻って見せます!だって、私は金剛型三番艦……お姉さまの妹だからっ!お姉さ
まが困ってるのに、助けないなんて、そんな事出来ません!」

比叡「……榛名、ごめんね。こんなナリでさ。頼んだよ、お姉さまの手助け、本当なら私もしたいけど、今回は
ぜーんぶ、あんたに譲るからさ」

霧島「私達の分まで、お願い…お姉さまを、金剛お姉さまを助けて!」

榛名「はい!」

本日はここまで

榛名は艦だった頃の記憶があるのかな?

皆様こんばんは
書き溜め分だけ投下

>>283
それは今後のお話で明かしたいと思います

-金剛-

金剛「くっ」サッ


ボゴォォォン


金剛「」(こいつ、わざと…精度を落として!) 大破

航空棲鬼「あら、今度は回避デキタみたいね。もっとも…フフッ、手元が狂って射線が逸れちゃったカラ…なん
ダケどね?」ニヤッ

装空鬼「……ダトしても時間の問題ネ。畳み掛けるワヨ」

南戦鬼「私の砲撃ハ……ホンモノよ」ジャキッ

南方棲鬼「フフフ……もう、終わりカモしれないワネェ……コレならどうカシラ?」ジャキッ


反撃の暇すら与えず、四匹の深海棲艦は一方的に金剛を攻め立てる。


金剛「二匹、同時……」

南戦鬼「コノ世に……」

南方棲鬼「別れヲ……」

金剛「」(ごめんネ、提督……皆揃って、帰れそうにないヨ。折角、救ってもらったのに……折角、姉妹皆と、
会えて、やっと姉妹揃って……今度こそ、私が守るって、誓ったのに……私は、こんなにも無力。姉としての勤
めすらも……けれど、せめて、矢尽き刀折れようと……この金剛、一矢報いてみせマス!)ググッ

装空鬼「……マダ、動けるノカ?死地に立ち、背水の陣で構え……マサに、死力を振り絞るか。敵なガラ見事ナ
底力と言ったトコロかしら…?」

金剛「私は…超弩級戦艦として、技術導入を兼ねて英国ヴィッカース社で誕生した……金剛デスッ!」ザッ

航空棲鬼「なんだ、この…コイツは、何かヘンだ……ッ!早く、仕留めろッ!!」

金剛「」(提督……どうか武運長久を……私……ヴァルハラから見ているネ……願わくば、妹達を……私亡き後
も、支えて上げて欲しいネ……)ダッ

南戦鬼「特攻カッ!させんッ!!」ドォン ドォン


ボゴオオォォォン


既に満身創痍。

それでも金剛の放つ気迫に四匹は気圧された。

結果、南方棲戦鬼の放った一撃は金剛の横を掠め、遥か後方で大爆発を起こす。

まさに虫の息。あと一撃でも撃ち込まれれば一たまりもない状況。

鬼気迫る金剛の心境を現すかのように、空に暗雲が立ち込め、降り注ぎ始めた雨は彼女の涙の如く大降りとなる。

今、金剛の中には様々な感情が渦巻いている事だろう。しかし、それでも絶対に変わらないものがある。

ずっと姉妹で、ずっと一緒に、時として切磋琢磨し、競い合い、共に歩んできた彼女たち四姉妹。

同じ時を刻んで、同じ未来を信じて、同じ痛みを知って、それらを乗り越えてきたからこそ通じ合うものがある。

一人じゃない。

今の金剛を突き動かすのは今わの際になっても妹達を思う姉の姿そのものであり、それこそが彼女の原動力。

金剛「……守って、みせマス!恐れなさい、深海棲艦!私は、食らいついたら離さないワ!!」ドォン ドォン

南方棲鬼「バ、バカな……ッ!」


ボゴオオォォォォン


装空鬼「なっ……南方棲鬼ッ!」

南方棲鬼「ぐっ……小賢しいィッ!!」 小破

航空棲鬼「ナンなんだ……貴様は、一体、ナンなんだッ!!」

金剛「ふふ……私は、金剛型一番艦の、戦艦、金剛…デス……十分、時間は、稼げたよ、ネ……?」フラッ…

装空鬼「この艦娘ハ……確実に仕留めナケレバ終わらナイ……!」ジャキッ


ヒュン ヒュン……ボゴオオォォォォン


装空鬼「ぐっ……!」 小破

南方棲鬼「な、何事ダ…!?」

榛名「……」

装空鬼「キサマ…!」

金剛「はる、な……どう、して……」

榛名「以前に、北上さんが言ってました。仲間や姉妹を助けるのに、理由がいるのかって…どうしてって、私は
金剛型三番艦。四姉妹の三女、金剛お姉さまの妹ですから。私達が揃えば、乗り越えられない壁なんて一枚だっ
てありはしません!何より、私がお姉さまを見捨てるなんて、それこそありえません!」



ドオオォォォン ボゴオオォォォン


その声に応えるかのように、四匹を唐突な砲撃の嵐が襲う。

嵐による視界不慮と雨音、風音、唸りを上げる雷雲と降り注ぐ雷。

悪天候のはずのその全てが、見事艦娘の味方となって文字通り天をも味方につけた起死回生の一斉射撃。


南戦鬼「ガッ……!」 小破

航空棲鬼「キャッ……!」 小破

装空鬼「今度は、ナンだ…!」キョロキョロ


──砲撃、命中を確認した!装備換装を急げっ!臆すな、全艦──


長門「この長門に続け!!」

榛名「な、長門さん…!」

長門「貸しだ、榛名。釣りまで取っておけ」

先輩『聞こえる?榛名ちゃん。貴女と金剛ちゃんをうちの隊で援護するわ』

榛名「先輩提督…!?」

先輩『全く、あのヒヨっ子…自分の艦隊なんだからもっとしっかり指揮執れってのよ!いい、艦隊の皆。たっぷ
りとヒヨっ子に恩を売るのよ。そこの海域で吹き荒れてる嵐は直に収まる。そしたら一気に攻勢に転じなさい!』

翔鶴「お任せ下さい!良いわね、瑞鶴」

瑞鶴「勿論!翔鶴ねぇに合わせるわ!」

天龍「おっし、酒匂!お前も一緒に合わせて行けよ!」

酒匂「ひゃ~!敵さんずらり~」

龍田「ウフフ、親友に手出しをしてる腐れ深海棲艦はどこかしら~♪」

榛名「み、皆さん…どうして…」

長門「ふっ、理由など不要だ。仲間だから助けた。何より、さっきも自分で言ってただろう。この場、この瞬間
において、お前達を見捨てるなど私にとっても万に一つ、億に一つもありえん!」

天龍「へへっ…榛名、金剛、遅れてすまなかったな。この嵐で翔鶴と瑞鶴の艦攻艦爆飛ばせなくってよ」

龍田「けれどもう安心よ~」

金剛「はは……榛名も、皆も、大好きネ……」

装空鬼「……散れ。総員散レッ!」サッ

南方棲鬼「オノレ…!次こそ…ッ!」サッ

航空棲鬼「この屈辱ハ忘れナイ…ッ!」サッ

南戦鬼「……次コソ、沈めルゾ……ッ!」サッ

長門「嵐の切れ目を見極めろ!翔鶴、瑞鶴、天龍、龍田、酒匂は追撃に入れ!他の艦隊は金剛の救出、榛名の援
護にそれぞれ回れ!」

書き溜め分以上
本日はここまで

皆様こんばんは
仕事忙しくて更新滞ってました
少し更新します

-帰投中-

赤城「……そうでしたか。了解しました。こちらは引き続き、六名を警護する形で帰投しますね」

比叡「赤城、榛名と、お姉さまは…」

赤城「こちらとは逆方面から、先輩鎮守府の主力艦隊の救援があったようです。榛名さんも金剛さんもその艦隊
と合流し、無事であると提督から情報を頂きました」

衣笠「良かったぁ…」

羽黒「本当に、良かったです…」

北上「取り敢えず、一安心か~」

川内「…けどさ、私もはじめて対峙したけど、上位に君臨してるっていう、あの深海棲艦の幹部連中?あれは、
本腰入れて掛からないとちょっと…ううん、かなりマジでヤバイかもね」

比叡「情けないのは私達さ」

霧島「……ええ、不意を突かれたと言ってもこっちは六人、相手はたった二匹だったのに……」

時雨「動けなかったよ。悔しいな」

春雨「……」

衣笠「あんな連中がこの先の海にまだまだ居るんだよね」

大鳳「今回合間見えた連中、確か離島棲鬼と戦艦棲姫って言ったかしら」

北上「名前は……確か戦艦棲姫ってのがフェアルスト」

川内「離島棲鬼って奴はピーコックって呼ばれてたね」

北上「深海棲艦の中には人に近い姿をしてる奴もいるって言うけど、あいつらは艤装がおまけみたいな感じで、
完全に人型として独立してる感じにすら見えたね」

赤城「フェアルストと呼ばれていた深海棲艦の艤装は、まるで巨人か何かのようで凶悪に感じました」

大鳳「私の艦爆艦攻隊と北上さんの雷撃を真正面から受け止めて無傷だったくらいだしね」

羽黒「とにかく、持ち帰れる材料を元にして検証が必要かと思います」

霧島「ええ、そうね」

時雨「まずは、戻って…傷を癒そう。春雨、もう直鎮守府だから、頑張るんだよ」

春雨「は、はい!」

-帰路道中-

長門「……そうか。いや、問題ない。ああ、お前達はそのまま鎮守府に進路をとってくれて構わない。ん?酒匂
が煩いって……それを私に言われても困る。んん、あぁ…解ったよ、解った。戻ったら相手をしてやると、そう
酒匂に伝えてくれ。通信はこれで切るぞ」


ブツ……


榛名「大変そうですね、長門さんも」

長門「同時着任した酒匂に何かと懐かれてな。まぁ、陸奥のようなタイプとは違い、また可愛らしい妹ができた
と思っているよ」

榛名「またそんな…陸奥さんが拗ねますよ?」

長門「はは、あいつが拗ねるのか?それはそれで見てみたいものだが、見たら見たで、何かと煩そうだ」

先輩『もしもーし、金剛ちゃんは大丈夫そう?』

長門「ん、あぁ提督。問題ない。後続の駆逐艦達に応急要員の妖精を載せてきたからな」

先輩『そう、ならいいけど。榛名ちゃんも、大きな怪我とかしてないわね?』

榛名「はい、ご心配ありがとうございます。でも、どうして…」

先輩『私達が駆けつけてきたのか、でしょ。結構偶然だったんだけどね』

長門「そっちの提督鎮守府付近での任務があってな。まぁ、付近と言っても結構離れてはいたんだが、さっき少
しだけ一緒にいたと思うが…翔鶴の妹の瑞鶴、それと私に懐いてる酒匂の二人が私達が居た鎮守府を見てみたい
と言ってな」

先輩『で、長門達がそっちの鎮守府付近まで行ってみるとなんか厳戒態勢取ってるって言うじゃない?』

長門「私には見覚えのある光景だったものでな。直感的に何かあると踏んで、先輩提督へ一報を投じ、先輩提督
から提督へ連絡が行ったという訳だ」

先輩『相手は援軍の類が発覚した場合は容赦無く人質は処刑するって事だったみたいだけど、折良く榛名ちゃん
達が抜錨してから結構な時間が経過してるって言うのも相まってね』

長門「ただし、援軍が向かっていると深海棲艦に悟られてお前達の状況が不利になる事は避けたかった。故に、
あの嵐を待って、それに乗る形で接触を図ったというのが事の顛末だ」

先輩『まぁ、結果として金剛ちゃんを危険に晒す結果になっちゃったんだけどね』

金剛「気にして、ないネ。まさに、天からの助け……感謝しても、しきれないヨ」

榛名「お姉さま、無理して喋らないで下さい!」

長門「それはそうと、捕らわれていた者達は大丈夫だったのか?」

榛名「はい。艤装は反撃を受けない為でしょうが、全て破壊されていましたが、身体的には…ただ、今回戦った
相手…離島棲鬼のピーコックと戦艦棲姫のフェアルスト……どちらも想像を絶する強さを見せてきました」

長門「深海棲艦の幹部クラスと言う奴だな。一体、何匹居るんだ」

先輩『以前に戦った泊地棲姫と比べて、どうだったの?』

榛名「正直、泊地棲姫を遥かに凌ぎます。恐ろしいと感じたのは勝負の最中、まだピーコックとフェアルストは
全力を出し切っていなかった、と言う事です」

長門「私と木曾、大鳳の三人で泊地棲姫は制圧できたが…」

榛名「今回は私と川内さん、赤城さんがピーコックを、金剛お姉さまと北上さん、大鳳さんでフェアルストをそ
れぞれ相手にしたんですが、川内さんと北上さんが途中負傷してしまって…レ級の時みたいに各個撃破されない
ためにも、二人を一旦下げて、そのまま空母組と合流させて人質になってた比叡お姉さま達の救出に向かっても
らったんです」

先輩『それじゃ、その間その二匹を二人がそれぞれタイマンで相手してたの!?』

金剛「結局、私は榛名を援護する形でしか、活躍は無理だったケドネ」

榛名「もう…その後一人で四匹相手にしてた人が何言ってるんですか。本当に心配したんですからねっ!」

長門「榛名、その位にしてやれ。金剛の立つ瀬が無くなる」

金剛「うぅ…フォローになってないヨ、長門…」

榛名「金剛お姉さまには怪我が完治したらたっぷりとお説教させて頂きます!」

金剛「What!?そ、それどういう事ネー…?」

先輩『あらあら、時として妹の追及は怖いわよ~。じゃ、あとは長門に任せたわ』

長門「引き受けた。あぁ、そうだ…」

先輩『ん?』

長門「東奔西走させられたんだ。今日は私は提督鎮守府で一泊して行く事にする。酒匂の相手は任せたぞ、先輩提督」

先輩『えっ!?ちょ、ちょ、たんま!あんたねぇ!酒匂があんた居なかった時のトラブり具合知ってる!?ねぇ、
知ってる!?ほんっと、マジでやb……』


ブツン……


榛名「ぁ……」

長門「よし、私は自由だ……ふふ、自由だ」

金剛「な、何だか開放されきった顔、してるネー…」

榛名「一体、長門さんに何が…」


かくして今回の事件は収束を向かえた。

だが戻った榛名達の報告によって幾つか露見した新たな深海棲艦幹部クラスの戦力に提督をはじめ、近隣鎮守府

の課題は山積みとなってしまった。

だが一先ずは目先の勝利と全員が無事帰還した喜びに鎮守府の皆の顔は包まれていた。

~蘇る記憶~



-???-

リコリス「……」

ポート「リコリス?」

アクタン「リコリス、難しいカオしてるー」

リコリス「…ゴメンなさい。考え事が思うヨウに纏まらなクテ…」

ポート「今回のピーコックとフェアルストの一件カシラ?」

リコリス「正直、勇み足ダッタと言わザルを得ない。ケド、それを抜きにシテも艦娘達ノ力は日に日に増してイル」

アクタン「皆でやっつけちゃえばイイのに!」

ポート「アクタンの提案も強ち間違いトモ言い切れないワネ」

リコリス「そのツモリで差し向けたノヨ。南方棲鬼達を…」

ポート「泊地棲姫を仕留めた頃ヨリも、確実に強さヲ増してイルと言うの?」

リコリス「多少の驕りガあったと仮定シテ、それでもピーコックとフェアルストのコンビよ。ソコから援軍とし
て差し向ケタのはどれも一人で一艦隊程度は壊滅へ追い込メル程の実力ヲ持っているハズの者達……」ギリッ…

アクタン「……」オロオロ

ポート「新鋭はコノ事実を…」

リコリス「黙ってイタわ。つまり、情報がコチラには降りてきてナイと言う事ヨ…!」

ポート「近代化改修、か……」

???「結局、詰が甘かった。ソレだけでしょう?」

リコリス「中間棲姫…」

中間棲姫「沈んダトは言っても、その辺りの割り切りがハッキリしていたのは泊地棲姫ヨ」

???「それに胡坐を掻いて慢心デモしてれば、火傷の一つや二つじゃ済まナイんじゃないかしら?」

リコリス「空母棲鬼…」

中間棲姫「言っておくけど…」

空母棲鬼「私達は出陣シナイわよ」

リコリス「…解ってイル。だからこそ、奴らのトラウマを再び解き放つ…」

中間棲姫「惨いコトを…」

空母棲鬼「アラアラ……下手をすれば火の塊とナッテ、沈んでしまうワネ」

ポート「装甲空母鬼達はドウしてるのカシラ?」

中間棲姫「どうも何モ…」

空母棲鬼「戻ってキテから荒れ狂ってるノガ二匹…不貞腐れてルノが三匹ヨ」

アクタン「うぅ、皆仲良くスレばいいのニィ!」

空母棲鬼「…貴女は純粋ネ、アクタン」

アクタン「ン?」

中間棲姫「素直、と言うコトよ」

アクタン「ウン!だってポートがウルサイもん!」

ポート「はぁ…私のせいナノ?」

リコリス「フフッ、教育担当ハ大変ね?」

ポート「アナタね…」

リコリス「それじゃ、私は次の任務に取り掛カル」

ポート「全く……」

-執務室-

提督「…過去の記憶?」

比叡「うん、過去って言うか…なんだろう、ほら…よくさ、前世の記憶、とかなんかそういう自分が生まれるよ
りもっと前の記憶とか覚えてたりする人たまにいるじゃない?」

提督「あぁ、スピリチュアル的なやつか」

比叡「金剛お姉さまがピンチの時に、あの子一度私達の救出の為にお姉さまの下離れてさ…けど、やっぱり見捨
てるなんて事出来ないって言って…そん時にあの子、『もう二度と空を眺めているだけなんてイヤなんです!今
度こそ、お姉さまは私が守ります!』って言ったんだ」

提督「空を、眺めているだけ…?」


──『榛名、いつも夢に見るんです。青く澄み渡る空、その空をジーッと見据えて、なんでそんな事してるのか
解らないんですけど、でもずっと空を見上げてて、そうしてなきゃいけないような気がして、ふっと気付くと目
が覚めてるんです。今の私の現状と何か関係あるのかなって考えては、結局答えは出ずって感じで…』──


提督「なぁ、比叡」

比叡「あ、はい?」

提督「…お前、自分と同じ名前の軍艦が何十年も前に実在してたって話、信じるか?」

比叡「は…?えぇ!?え、ちょっと提督何言ってるの?」

提督「似た話、榛名だけじゃないんだよ。後から知ったことなんだが、神通はこの鎮守府に来る以前に、コロン
バンガラ島ってところで激戦を繰り広げたらしいんだ。が、大本営に立ち寄った時に資料館に寄ってその内容に
ついて調べて見たことがある」

比叡「そ、それで…?」

提督「……コロンバンガラ島は実在する。実際に激戦だった。コロンバンガラ島沖海戦……ただし、今から数え
て七十一年前の話だ。神通は、その時代に当たり前だが生まれてはいない」

比叡「何ですか、それ…」

提督「俺も不思議に感じた。驚いたのは、実際に神通と言う名の軽巡洋艦がその七十一年前に存在していたって
ことだよ。華の二水戦と通称された、当時の日本海軍にとっての最強艦隊。その旗艦を最も長く勤め上げたのが
神通なんだと」

比叡「あ、あの…それって、つまり?」

提督「つまり、榛名や神通には…自身が生まれるよりも前の、言ってしまえば軍艦であった頃の記憶が断片的に
だがある、と言うことだ。それがどういった経緯でなのかまでは解らない。旧日本軍の資料も大本営で探して見
たが細部に渡っては存在しなかった。何故存在しないのかも解らない。簡易的な年表や略歴、戦歴はあっても、
その細かい内容となると途端に資料がなくなる」

比叡「……それ、素直に解釈すれば……」

提督「あぁ、隠蔽だな。何が目的で何を隠蔽したいのか、そこまでは解らん。とにかく、気になる部分も多いだ
ろうが現時点ではなるべくその話題には触れるな。折を見て話すタイミングだと思えば俺から告げる」

比叡「う、うん。けどさ、もしもだよ…もしも、それで榛名の身がどうにかなっちゃうっていうなら、私は迷わ
ず榛名に告げるよ。大事な妹だからね」

提督「あぁ、是非そうしてくれ」

本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-金剛私室-

霧島「全く、どれだけ心配した事か…」

金剛「う~、もう榛名に十分絞られたネ。勘弁して欲しいヨ」

霧島「いいえ、そうはいきません。日頃から金剛お姉さまにはお世話になりっ放しですから、こういう時くらい
妹に甘えて下さい」

金剛「はぁ、しかし病室は回避できたけど体の自由が思うようにいかないって言うのは不憫ネー」

霧島「自業自得です」

金剛「うっ…比叡も榛名も霧島も厳しすぎるネー!」

霧島「お医者様からも今日一日安静にすれば大丈夫とお達しきてるじゃないですか。我慢です」

金剛「はぁ…紅茶が飲みたいネー」

霧島「それはそうと、お姉さま」

金剛「ん?」

霧島「お姉さまは、前世、と言うのを信じますか?」

金剛「突然、何ヨ」

霧島「あ、いえ…前世とか、そういったのを信じるとして実際に夢でも記憶でも、前世の記憶や映像を見たこと
があるのかなって、少し疑問に思ったものですから」

金剛「不確かなモノには否定的な霧島にしては随分と興味を示すのネ?」

霧島「その、榛名が、ちょっと心配で…」

金剛「What?どういう事ネ?」

霧島「────そういう訳で、何か意味があるのかなと。私なりに持てる資料全てを総動員して調べては見まし
たが、根拠となるような材料が全くなくて…」

金剛「私が感じたものとは少し違うネ」

霧島「え?」

金剛「私が感じた事があるのは俯瞰の風景と悪夢だけネ…」

霧島「あの、それは一体、どういう…」

金剛「一度目は、あの後輩提督に負けた時ネ……」



一度目は地獄を髣髴とさせるような映像だったネ。

一面焼き払われ、海面は火の海と化し、そこに私一人がただ呆然と立ち尽くす……そんな映像だったヨ。

仲間だった艦娘は誰一人、立っていなかった。

傍らに居たはずの比叡も……私が気付いた時には既に水底へ沈む顔の半分が見て取れただけだったネ。

必死に手を伸ばしても届かなくて、そのまま比叡は深い海の底へ沈んでいった。

その時初めて絶望と言う言葉を思い知ったワ。

けど、本当の絶望、本当の地獄、本当の悪夢はそこじゃなく、その先に存在してた。

次々と沈んでいったはずの皆が浮かび上がってきたネ。

悲しみと憎しみと……あらゆる負を撒き散らして、彼女達は深海棲艦として生まれ変わっていた。

二度目は、深くて静かな海の底。

微かな光すらも私の居る場所には届かなくて、ああ……死ぬんだって、私はそう直感で感じ取ったネ。

結局私は、妹達を見守る事しかできないのかって思ったら、凄く悔しくて悲しくて、死にたくない、生きたいっ

て願ってたヨ。

そう思うと同時に、湧き上がってきたのは怒りネ。

どうして私がこんな目に遭うのか…何故、私なのか…死ぬもんかって……何度でも、何度でも、何度でも、私は

何度だって蘇ってみせるって……根拠もないのに確信に近い形で強く想ってたネ。

そして目が覚めた時、私の顔を覗き込んでたのは……比叡だったよ。

霧島「お姉さま…」

金剛「Oh…霧島、そんな心配そうな顔はNo!ダメデース!私は今、こうして生きてるネー!私はね、霧島…貴女
達妹を救えて、こうしてまた四姉妹で居られる事が、本当に幸せネ」ニコッ

霧島「榛名にも、金剛お姉さまにも、私も比叡お姉さまも…本当に感謝してます。けど危険を顧みないのはやっ
ぱり金剛お姉さまに似てしまってるんでしょうね、あの子…」

金剛「What!?」

霧島「だって、金剛お姉さまの無鉄砲振りは比叡お姉さまは勿論、榛名や私にもきっちり受け継がれてますから」

金剛「それ、どーいう意味ネー!」

霧島「ふふっ、無茶が好きって事ですよ。良くも悪くも、ね」

金剛「No kidding!それじゃまるで私がダメな姉みたいじゃないデスカー!」

霧島「いいえ、お姉さまは私達にとって最高のお姉さまです。さて、それじゃ私はちょっと先ほどの考えを提督
にも聞いてみようかと思いますので、一旦失礼しますね」

金剛「むー、何だか話を逸らされた気がするヨー…」

-執務室-

霧島「────と言う訳で…」

提督「……ホント、お前ら姉妹だな」

霧島「は…?」

提督「これであとは金剛に相談されたら金剛四姉妹コンプリートだな」

霧島「あ、あの、何を仰ってるのか解らないんですが…」

提督「その記憶の話だ」

霧島「そ、それじゃ、まさか比叡お姉さまや榛名も…?」

提督「まぁ、はじめは榛名だな。夢に見るんだそうだ。ずっと空を見据えて、けどなんで自分がそんな事をして
るのかは解らないが、それでもそうしないとならないような気がしていると…結局、それが何なのか、どういう
意味合いがあるのか、解らないまま目が覚める。お前や比叡が疑問に思う核心部分だ。結論から言えばその件に
ついては答えは出てない」

霧島「けど、それじゃ金剛お姉さまが見たっていう夢は…」

提督「考えられるのは心象世界の具現化」

霧島「それは一体…」

提督「例えば、願望と言うものがあるだろう?まぁ俺も専門じゃないから掻い摘むが…ようは個々の心の奥底に
眠っている、もしくは抱いているモノが夢の中で具現化した、と言うのが可能性の一つだ」

霧島「けど、それでは金剛お姉さまの夢の辻褄が合いません」

提督「そうだな。もしも金剛の願望が夢の通りだとするなら、それは殺戮だ。己以外の全てを淘汰し、滅ぼし尽
くして無くしてしまう、と言う願望」

霧島「そんな…!」

提督「そこで二つ目のケース。自分の想像しうる最大最悪の結末。言い換えるならば、決して起こって欲しくな
いという願望。これなら金剛の夢と抱く感情に違和感はなく、辻褄も合う」

霧島「金剛お姉さまの件は、何となく解りましたが、榛名のは…」

提督「そう…比叡にも言ったんだが榛名が夢で見たのは推測でしかないんだけど、これこそが正真正銘…前世の
記憶と言うものなんだろう」

霧島「前世の、記憶…?」

提督「そうだ。お前達が生まれる遥か昔、お前達の根源が存在した。その根源に宿った記憶が遥か未来になって
も尚、色褪せずにお前達に刻み込まれている。なんてな風に解釈すれば、まぁ辻褄としては合うな」

霧島「…突拍子もないわ」

提督「そう、突拍子もない。根拠もないから立証のしようもない。だからこの事は他言するな。プラスに働くと
もマイナスに働くとも解らない。とにかくパズルのピースが不揃いすぎる…いや、少なすぎるって方がしっくり
くるか。とにかく、不確定要素の塊ってことだけは確かだからな」

霧島「解りました…」

提督「言っておくが霧島、独自に調べる事も厳禁だ」

霧島「うっ…」

提督「お前、今ここ去ったら速攻で調べようとか思ってただろ」

霧島「あ、あははは…」

提督「調べてるの発覚したらお前自慢のマイクセットがどうなってもしらんぞ」

霧島「え゛……」

提督「解ったら自室に戻れ」

-記憶-

最初に夢として見た記憶は霧島と二人、手を繋いで海を眺めていた事。


「やっと海に出れるね」

「ええ、そうね」

「頑張ろうね、霧島」

「ええ、頑張りましょう、榛名」


そんなやり取りだったと思う。

自分で言ったのに何を頑張るのか、それが解らなくて隣の霧島をジッと見ていた。

その視線に気付いた霧島が何か言ってるけど、口だけが動いてて声が聞こえなくて、気付くと私は涙を流して目

を覚ましていた。

頬を伝う涙の冷たさに、あの夢は一体なんだったのかを深く考えさせられた。

その次に夢に見た記憶。悔しさや悲しさが込み上げてくるのが解る。

夕日に照らされた空がオレンジ色に染まる。

本来ならロマンチックに見える夕焼けの空も、その時の私には戦火に広がる禍々しい空を連想させた。

遠くから聞こえてくる艦載機のエンジン音。

合図だと直感的に悟って私は霧島と共に────部隊の護衛に当たっていた。

何の部隊だったのか、それがどうしても思い出せなくて凄くモヤモヤした感じがしたのを覚えてる。



「なんとしても…皆さんを守ります!」

「真上…直上!?誘爆を防いで!!」

「飛行甲板に直撃。そんな……馬鹿な」

「飛行甲板に被弾?!」

「そんな…皆!」

「……たとえ最後の一艦になっても、叩いて見せます!」


何処かで聞いた声、馴染みのあるはずの声、それなのに誰なのかが思い出せない。

思い出せないまま、視界が赤く染まって周囲を炎で染め上げていく。

声が枯れるまで叫んでも、どれだけ奮戦しても、私の思いは届かなかったように思う。

そして三つ目、水底へ静かに沈んでいく金剛お姉さまを尻目に、私は戦場を撤退する。

悔しくて、悲しくて、気持ちは引き返して今すぐにでも、お姉さまを引き上げたいと思っているのに体が言う事

を聞いてくれず、その距離は見る見る広がって、気付けば私は一人、未だ青い空をずっと睨み続けている。

来る日も来る日も、私はただ黙ってジッと空を睨み続け、いつ終わるとも知れないその状況を静観していた。

本日はここまで

皆様こんばんは
少しだけ更新します

-榛名私室-

榛名「……夢、また」


コンコン


榛名「あ、はい?」

北上「北上だけど~、榛名っち今だいじょ~ぶ?」

榛名「あぁ、はい。ちょっと待ってくだs……」

北上「んじゃ入るねー」

榛名「へ?」


ガチャ


北上「おっ…榛名っちの寝巻き姿、レアだねえ、しびれるねえ…!」

榛名「ちょ、鍵掛けてあるのにどうして!?」

北上「え?あぁ、これこれ、私特製のマスターキー」チャラッ


ザッ


北上「へ?」

榛名「そこおっ!」バシッ

北上「あっ」

榛名「今回だけは不問にします。犯罪抑止です」

北上「ちょ~!それ作るの苦労したんだからね~!」

榛名「労力割く所が違います!これは没収です」

北上「そ、そんなぁ!」

榛名「…提督に報告しますよ?」

北上「ゲ、ゲスい選択肢選んでくるね、榛名っち…」

榛名「私も成長しました。泣き寝入りするのはよくないと!」

北上「」(確実に提督の影響だろうなぁ…ホント明るい子に戻ったよなぁ)

榛名「な、何ですか?」

北上「うんにゃ、仕方ないから鍵は諦めようかと。まぁそれはそれとして、ちょっと付き合って欲しい所あるか
らさ、パパッと着替えちゃってよ」

榛名「えっと、はぁ…解りました」

北上「集合場所は執務室裏の花壇ね」

-花壇-

北上「はいっ、という訳でやって参りました!執務室裏の花壇です!」

提督「あのさ、お前何をしたいの?」

赤城「うふふ、北上さんは見てる分には楽しいんですけどね」

榛名「私達だけなんですか?」

北上「そっ、まぁ…赤城っちや榛名っちには勿論だし、一応提督にも知らせておく方がいいかなって」

提督「はぁ?なんだ、お前何か隠し事でもしてたのか」

北上「提督~、女の子には秘密の一つや二つはあるもんだよ」

提督「そうなの?」

榛名「」コクッ

赤城「」コクッ

提督「まぁいいや」

北上「いいのかよっ!」

赤城「それより、ここに何かあるんですか?」

北上「ん、まぁね。三人の後ろにはさ、提督が作ってくれた大井っち達の慰霊碑、あるじゃない?」

提督「ん、あぁ…結局骸を回収してきっちり埋葬してやれたのはこの三人しか居なかったからな。本当なら全員
をちゃんと弔ってやりたいと……」クルッ

武蔵「……」

加賀「……」

大井「……」

提督「……」クルッ

北上「」ニヤニヤ

赤城「北上さん、どうしたんです?」

榛名「ん?」

提督「いち、に、さん、はいっ!」クルッ

武蔵「……」

加賀「……」

大井「……」

提督「……マジか」

赤城「え?」クルッ

榛名「何がですか?」クルッ

武蔵「……」

加賀「……」

大井「……」

北上「三人に会わせたかった人たち~」

榛名「うそ……」

赤城「加賀、さん…」

加賀「久しぶりね、赤城さん」

武蔵「随分と逞しくなったものだな」

大井「ご無沙汰してます、提督大佐」

提督「なんだ、これは。まだ真昼間だぞ」

北上「まぁ、守護霊的な?」

赤城「本当に、加賀さんなんですか!?」

加賀「ええ、立場はもう違うけれど、もう一度赤城さんとこうして話を出来るとは思いませんでした」

榛名「武蔵さん…」

武蔵「託した物が重荷になってないみたいで何よりだ。貴様ならば出来ると信じている」

榛名「大和さんも、誇りにしていいと、仰って下さいました」

武蔵「フッ、余計な事を…が、別に構わん。貴様は貴様の道を行け。貴様の歩む道を阻む者が在ろうが、その全
てを貴様が背負う私の嘗ての相棒が蹴散らしてくれる。貴様は臆さず、ただ真っ直ぐ進めばいい」

榛名「はい…!」

北上は以前、自分が体験した事、彼女達から告げられた事実を三人に掻い摘んで話した。

三人の現状の事、艦娘の秘密の一端、死後起こるであろう事、そして深海棲艦の秘密の一端。

武蔵達から教えられた内容の全てを北上は話していく。

勿論、何故北上が何度となくこの場所に足を運んでいたのかと言う突込みに対して、花が枯れては阿武隈の苦労

が台無しになってしまうのでそれが可哀想だから花に水遣りをしていた、などとは口が裂けても言わなかったが…

その説明を傍から見て、一番笑いを堪えていたのは大井だろう。

短いですが本日はここまで

皆様こんばんは
今日も少しだけ更新

提督「つまり、お前達はこの慰霊碑に宿った、と言ってもいい訳か」

加賀「そうね。この姿になって初めて解った事もあるから、強ち無駄死にではなかったと言う事かしら」

提督「だがしかし、深海棲艦が元はお前達と同じ艦娘だという確証がどうしても得られんことにはな…」

武蔵「それもあくまで感覚的な話に過ぎん。事実、我々はこうしてここに居る。敵としてではなく、な」

大井「必要なのは、これが全ての艦娘に当てはまる事なのか否か、でしょうね」

提督「確かに…この現象は俺も初めてだ」

武蔵「だが少なくともあの時一戦交えた深海棲艦、貴様等はレ級と呼んでいるが、あれは言い換えれば近代兵器
のそれに近いものがある」

加賀「つまりつい最近生まれ出たもの、と言う事ね」

大井「逆に北上さん達が一戦交えたという通称幹部クラスの深海棲艦はそれと対を成す最古の深海棲艦と言うべ
きかもしれません」

加賀「私達が……いいえ、貴方達が進化と言う過程を経て成長を遂げたように、深海棲艦もまた同じように成長
をし、進化し続けているのではないかと…」

赤城「それじゃまさか、大別して見ればピーコックやフェアルストは私達の先輩に当たるって言うんですか!?」

武蔵「受け入れ難い事実の一つだな」

榛名「…泊地棲姫と戦ってたとき、彼女は言ったんです」

北上「へ、何を?」

榛名「何度でも、何度でも、何度でも……私達艦娘を水底へ沈め続けるって……」

提督「それは俺も通信越しに聞いた。そこで幾つか疑問が生じた。何度でも、と言う事はあいつらは何度となく
艦娘と戦っていたということだ。そして艦娘風情が、と言う言葉には自分達と艦娘を天秤に掛けてくらべてる節
も見られる。それはつまるところ、やはり艦娘と深海棲艦にはどこかしらで交わっている部分が存在するという
間接的な証拠にも繋がる」

武蔵「私も戻れるのか、青い海の上に…」

提督「え?」

武蔵「…どこのどいつかは知らんがな、そんな声が風に乗って届いてきた事があった」

大井「苦しんでいるような声に、聞こえましたね」

提督「苦しんでいるような声?」

赤城「深海棲艦の声、なのかもしれませんね」

榛名「え…?」

赤城「北上さんから告げられた話と突き合わせると、辻褄は合うと思いますよ?私達が死んでしまうと武蔵さん
達の様に何処か思い入れのある場所や拠り所を見つけてそこに留まりその場所を守護する存在となるか、散った
場所で負の感情に取り込まれ深海棲艦となるか、また別の存在として輪廻転生するか、と言う事ですが……では
深海棲艦が沈んだ先は何処にあるのでしょうか」

北上「なるほど、考えもしなかった…」

榛名「…私も、戻れるのか、青い、海の、上に…深海棲艦も、もしかしたら生まれ変わってるのかもしれません」

北上「うん、辻褄は合うかも」

加賀「けれど業が深ければ再びその身は深海棲艦として生まれ変わり、負の輪廻で廻り続けるのではないかしら」

大井「だとすれば、悲しい事ね」

提督「……なるほどな。幾つか解けなかった謎の一端が明かされるか」

赤城「どういう事です?」

提督「当事者も含めない事にはなんともな。ともかく、こうして会話できただけでも行幸だ。俺は話を纏めてる
から、あとはお前達で思いを紡いでおけ。今度、先輩にも手を合わせに来てもらうよ」

武蔵「フッ、その時は腰を抜かして喜ぶように趣向でも凝らしてやるか」

加賀「面白そうですね。心なしか気分が高揚します」

大井「ふふっ、そうね。とびっきりを用意しておきましょう」

北上「」(ゲスいわぁ…)

榛名「あ、あははは…」(なんだか笑えない冗談真顔でやりそう…)

赤城「加賀さんったら…」


かくして、提督は金剛達の話と今回北上経由で知らされた艦娘の秘密の一端、その事実を目の前にして幾つかの

仮説に確信を得るに至った。

だがそれは提督を含め、鎮守府全体をも大きく揺るがす結果となる事をまだ彼は知る由もない。

しかし同時に、艦娘にとっての新たな一面と彼女達に秘められた本来の力を引き出す切っ掛けにもなると提督は

考え、その考えは結果として正しい方向へと現状向かっている。

そして同時に、彼はその先に見える未来に何が待ち受けていようと艦娘を決して裏切らないと改めて誓った。

本日はここまで

皆様こんばんは
少し更新が滞ってました
少しずつ更新頑張ります

~閑話休題・晩秋の宴~



-演習場-

利根「ふぅ…午前中はこれくらいにしておくかのう」

阿武隈「はぁ、はぁ、はぁ、と、利根さん…容赦、なさすぎだし!」

利根「莫迦を言え。鈍った体を解してやっておるんじゃ、気合いを入れんか!そもそも稽古を付けろと言うてき
たのはお主じゃろうが。我輩は我輩で試したい事もあったんじゃが、まぁ午後はお主でそれを試す事にするか」

阿武隈「じ、実験台ってこと!?」

利根「言葉の選び方が雑じゃのう。人柱、と言うが良い」

阿武隈「同じじゃない!」

利根「細かい奴じゃのう」

阿武隈「ど、どっちがぁ!?」

利根「兎にも角にも、午後は午前以上にみっちりやるから、今の内にしっかり体を休めておくんじゃぞ」

阿武隈「ぶーぶー」

夕張「いやー、あっちは鬼軍曹だねぇ」

陸奥「呆けてる場合?そろそろボーナスタイム終わりにするわよ?」

夕張「いぃ!?ちょ、ちょっとタンマ!」

陸奥「タンマは三回まで、もう使い切ってるわよ?」

夕張「そ、そんなぁ!」

陸奥「それじゃあ…」ポキ

夕張「ひぃ…」

陸奥「がっつりと…」ポキポキ

夕張「はわわわ…」

陸奥「反撃ってことで…」ポキポキポキ

夕張「きっと今の私の顔には死相が見えているんだ…」

陸奥「…って思ったけどお昼休憩みたいね。ざ~んねん」クルッ

夕張「た、助かったぁ…」

陸奥「な~んちゃってぇ!」ブンッ

夕張「きゃあっ!」サッ

陸奥「あら、避けれるのね」

夕張「し、心臓に悪いってば!」

陸奥「っていうか、ふふっ…夕張の悲鳴って結構かわいいのね」

夕張「んなっ///」

陸奥「北上にボイスレコーダー借りて録音しとくんだったなぁ」

夕張「鬼畜生か何かですか…」

陸奥「さて、不意打ち失敗しちゃったし、今度こそご飯ね~」クルッ

夕張「……」ビクビク

陸奥「もう攻撃しないわよ。ほら、午後もあるんだからシャキッとしなさいよ!」

夕張「…午後に、死期が延びただけか…」

鈴谷「ふぃー、実戦仕立ての演習ってのは、これはこれで疲れるなぁ」

熊野「ですけど普段は気付き難い自分や相手の良い部分悪い部分を見つけるのにも最適ですし、身内との連携を
図る上でも非常に高効率な演習内容ですわ」

鈴谷「だねぇ…っていうか、朝のミーティング…提督いきなり個人面談するとか言ってたけどさー、なんか変な
質問っていうか、言ってる事が私よく解んなかったんだよねぇ」

熊野「鈴谷さんはもう面談済まされましたの?」

鈴谷「うん、午前中だった」

熊野「そうでしたの。わたくしは午後一でしたわね、確か」

鈴谷「んじゃ、午後は少し遅れてから演習再開だねー。取り敢えずシャワー浴びてご飯いこー!いえーい、今日
のご飯はな~んだ~ろな~♪うふふ、テーンションあ~~がるぅ~~!」

熊野「全く、そのノリいい加減にしてくれませんこと?」

鈴谷「むふふ、む~りでーっす!」キャッキャ

-執務室-

提督「そうか、うん。ありがとう」

大鳳「あの、これは一体?」

提督「ん?ああ、この間大本営に立ち寄った時にたまたま心療内科に精通してる先生と話をする機会があってな。
艦娘のメンタルケアや精神的負担を減らすにはどういったことをすればいいのかってのを聞いてな。艦娘と一対
一で会話をして、不安に思うことや疑問に思うことなんかを色々聞いてストレス発散に務めるのはどうかってア
ドバイスもらったもんでな」

大鳳「はぁ、そうだったんですか。ふふ、提督も大変ですね。先輩提督ならご飯食べてパーッとやれば悩みも吹
っ飛ぶわよって相談すると決まって宴会が始まりましたよ」

提督「はんぱねぇな、あの人…」

大鳳「それじゃ、私はこれで」

提督「おう。今日は待機日だから訓練は程ほどに、整備は欠かさずにな」

大鳳「はい!」


ガチャ……パタン


提督「大鳳は特に夢に見ることも記憶に留めてることもなし、か。やっぱり特定の条件が何か揃う事で呼び起こ
されるのか?榛名、金剛、神通……そして、さっき面談したヴェールヌイ。金剛と似た内容だったのは、やはり
死に直面して見た心象風景の実体化か。本人でも現実と夢の境界線がハッキリとしていなかったのもそれならば
納得がいくか…」


コンコン…


提督「ん、午前中のラストか。入っていいぞ」

瑞鳳「失礼します!」

提督「おっ、ちっこいの来たな」

瑞鳳「ちっこいって言わないで下さいよ!赤城さん達も直に私の頭ポンポンするんですよ!?」

提督「愛されてるってことだろ?素直に喜んどけ」

瑞鳳「む~…それより、面談って何ですか?学校じゃあるまいし、進路相談って訳でもないですよね?」

提督「はは、進路相談か。お前達の場合は『しんろ』は『しんろ』でも『針路』の相談になりそうだがな」

瑞鳳「うん?」

提督「…漢字の勉強しとけ」

瑞鳳「むぅ…」

提督「まぁそんな堅くならずに聞いてくれて構わない。簡単な質問と雑談で終わりだからな」

瑞鳳「はぁ、そうなんですか?」

提督「時に瑞鳳は覚えのない記憶があったり、変な夢を見たりとかってあるか?」

瑞鳳「はい?」

提督「単に忘れてるだけでなんか記憶にあるとか、俗に言う怖い夢ってのを定期的に見ているとか、そんなよう
な身に覚えのない記憶や嫌な夢だな」

瑞鳳「うーん…怖い夢とか嫌な夢っていうのは、特に…記憶も別に、身に覚えのないようなものとかはないです」

提督「そうか。いや、それなら別に構わないんだ。それはつまり瑞鳳が現時点で充実して精神的には安定してい
るってことの証明だからな」

瑞鳳「えっと…これ、だけ?」

提督「ん?ああ、そうだぞ」

瑞鳳「面談って言うから、なんだか色々と考えちゃった…」

提督「はは、そうか。それは悪いことをしたな。でまぁ、最近は調子とかはどうなんだ」

瑞鳳「うーん、赤城さんや飛龍さんと一緒に練習する事が多いんですけど、やっぱりあの二人は凄いなーって」

提督「どう、凄いんだ?」

瑞鳳「えっ?あっと、それは…弓の扱い方もそうですけど、何より尊敬するのはその集中力かなって…」

提督「俺からすれば瑞鳳の集中力も立派なもんだがな」

瑞鳳「お二人だけじゃありません!大鳳さんだって、龍驤ちゃんだって…この間の演習戦で本当に凄かったな。
龍驤ちゃんは本当に凄かったんですよ。あの大鳳さん相手に勝ったんですから!」

提督「ほぅ…あいつがねぇ。初めて会ったときは小うるさい奴だと思ったもんだ」

瑞鳳「ひどっ」

提督「けどな、あいつは人一倍頑張り屋なんだよ。自分でも解らないくらいに頑張って頑張って、頑張りすぎて
倒れるまで自分がオーバーワークしてることにも気付かないくらい頑張る」

瑞鳳「た、倒れるまでって…」

提督「瑞鳳は他の鎮守府とうちの鎮守府、なんか違うなーって思ったことあるか?」

瑞鳳「あっ、はい!先輩提督の所も、不動提督の所も、艦隊毎で統制がされてますけど、提督は毎回違うなって」

提督「正解」

瑞鳳「あの、なんでですか?」

提督「俺はお前たちを順位で格付けするってことをしてないだけだよ。大抵の鎮守府は実力順に第一艦隊を担っ
ていくもんだが、俺はそれをしていない。なんでか…」

瑞鳳「ふんふん」

提督「お前たちの関係を第一に考えてるから、かな。どうしたって優劣ってのは出てくるものだし、戦艦と駆逐
艦じゃそんなの単純な戦力で見ても戦艦が上なのは当たり前だろ?」

瑞鳳「そ、それは、まぁ…」

提督「けど、駆逐艦だって戦艦を淘汰することはできる。夜戦だ。夜戦での駆逐艦は全てにおいて逆転を可能に
するだけの火力を秘めている。勿論、綱渡りの部分も多分にあるが、それを補うのが連携だ」

瑞鳳「なるほど」

提督「で、連携って部分で話が戻ってくるわけだ」

瑞鳳「はい?」

提督「さっきも言ったとおり、俺は格付けをしてそれを艦隊にそのまま反映させるってことはしていない。その
時のお前たちのコンディション、向かう任務先での得手不得手を考慮した上で人選する」

瑞鳳「い、いつもポンポン名前呼んで艦隊決定してるけど、それもちゃんと考えられてたんだ…」

提督「そう言うこと。ちょっとは見直したか?」

瑞鳳「は、はい!」

提督「まっ、冗談は置いておくとしてだ。そうやって色んな連中と組むのと毎度同じ連中と任務をこなすのじゃ
やっぱり大きな違いが生まれて来るんだよな。どっちにもメリットデメリットは存在するが、俺はその部分には
別に着眼点を置いてない。まぁ、多少は無きにしも非ずって部分はあるが、それを前面には出さん」

瑞鳳「それじゃ、何を基準に決めるんですか?」

提督「お前たちの気持ちを最優先にしている。お前たちは本当に良くやってくれる。万が一にも死を覚悟しなけ
ればならない場面も一度や二度じゃないはずだ。それでも尚、お前たちは前に進んで歩みを決して止めずに先へ
向かっていく。脅威へ立ち向かってくれる。俺はそれを誇りに思う。だからこそ、俺なんかがお前たちを量るこ
となんてできやしないんだよ。その代わり、全員を平等に出来る限り扱ってやろうってのが本心だ。やろうって
言い方もまた驕りかもしれないけどな。まぁそれによって満遍なくお前たちの、艦娘同士の繋がりが太くなって
結果として連携も紡ぎやすくなる」

瑞鳳「ふふっ」

提督「な、なんだよ」

瑞鳳「ん~、いや~、榛名さんが提督好きなのもなんだかわかるなーって」

提督「はぁ!?今の話の何処に榛名が関係あんだよ!」

瑞鳳「あはは!赤城さんの言うとおり、提督って榛名さんの名前出すとホントわっかりやすいなぁ…」ニヤニヤ

提督「あ、赤城の奴…!」

瑞鳳「知ってました?空母組じゃ提督って結構ポイント高いんですよ~?」

提督「はぁ?なんだよ、ポイントって…」

瑞鳳「龍驤ちゃんはまぁ提督ラブなの解ってますけどね」

提督「なんだよそれ」

瑞鳳「飛龍さんまだはちょっと出会ったばかりで解りませんけど、赤城さんも大鳳さんも提督には好意的ですよ?」

提督「ん、まぁ好意的なのはありがたいけどな。神通のファーストリアクションが今のところ俺の中でのベスト
スリーに入るショックな対応だったのは覚えてる」

瑞鳳「へ?」

提督「声掛けたら子猫の如くプルプル震えて後退りされて脱兎の如く逃げられた」

瑞鳳「えっ…」

提督「うん、流石にショックだろ?」

瑞鳳「あははは!」

提督「笑いごとじゃねぇんだぞ!?」

瑞鳳「あー、可笑しい。うふふっ」

提督「ったく、笑ったままアゴ外れちまえ」

瑞鳳「はー、面白い話聞けたし良かった良かった♪」ニコニコ

提督「こいつ…とにかく、話は以上だ。取り敢えず瑞鳳は特に問題なしって事だな。集中力の話も気になるなら
持ち前のスキンシップ力使って赤城や飛龍に直接聞いてみろ。お前が見立てるとおりで、俺が言うのもなんだが
まさに空母組の中じゃトップレベルなのは認めるところだ。同じ型である以上、手本に出来る部分、盗める部分
は多いにあるだろうから、それを吸収してもっと躍進してみせろ」

瑞鳳「はい!頑張ります!」


シツレイシマシター ガチャ……パタン


提督「ったく、ただの人生相談だったな。が、瑞鳳は瑞鳳で考えさせられるところでもあるのかもな。さてと、
俺も飯食いに行くかーって、まだちょっと早いか?暇つぶしがてら皆が何してるのか見て回るのもたまにはいい
かもしれんな」

本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-グラウンド-

木曾「くそがぁっ!」

北上「うぅ、駆逐艦マジうざい…!」

川内「は、速いなぁ…」

神通「お、追いつける気が、しません…」

島風「あれ、もう追いかけっこしないの?」ピョン ピョン

夕立「まだまだやれるっぽい」ノビノビー

Bep「うん、私もまだまだ余裕がある」

暁「まだ走れるわよー?木曾達は走んないの?」ニヤニヤ


電「暁お姉ちゃんが生き生きとしてるのです」

春雨「夕立お姉ちゃんも…」

白露「純粋に考えて私達の速さに軽巡クラスたってそうそうついてこれないでしょー」

時雨「僕達が本気で走れば、それはね」

木曾「ぜってぇ捕まえる…!」

北上「上等っしょ…重雷装の本気、見せてやりましょうかね」

川内「このまま終わる訳にはいかないよねぇ」

神通「流石にこれでは、川内型の名折れです」


メラメラメラ……


夕立「あ、あれ…」

Bep「どうやら、火が着いたみたいだね」

島風「吹き消してやるんだからっ!」

暁「よーし、このまま逃げ切って楽しいお昼ご飯に突入よ!」

駆逐艦ズ「「「おーっ!!」」」


提督「グラウンドに着てみれば、なんか面白そうなことやってんなぁ。みたとこ雷巡・軽巡組と駆逐組で鬼ごっ
こか、ありゃあ…どう考えても北上たちに正攻法で勝負してても勝ち目ねぇだろ…」


木曾「何でもアリって言ったのはてめぇ等だ。文句は言わせねぇぞ…!」

北上「木曾っち、打ち合わせ通りね~」

川内「神通、私達も行くよ!」

神通「はい…!」

暁「目が、マジね…」

島風「こわー…」

夕立「ハンモック張ってでも逃げ切ってみせる…!」

Bep「ふふ、ただの鬼ごっこに非ず、だね。皆、固まるのは良くない。散開して互いの位置に注意していこう」

暁「おっけーよ!」

島風「よーし、連装砲ちゃん、一緒に行くよ!」

夕立「駆逐艦の本気、見せるっぽい!」

提督「なるほど、運動量で勝る駆逐組と技術面でそれを補う雷巡・軽巡組か。これはこれで見ものだ…多分、暁
たちは散り散りになって的を絞らせないようにするだろうが…相手に北上が居たのが運の尽きかぁ?あいつはこ
と勝負事に関しちゃ手は抜いてこねぇぞ」


北上「川内っちと神通っちは追いかける振り……私はまず、状況把握するから木曾っちでガチ捉まえに行く振り
かな。きっとあの子等的を絞らせないようにバラッバラに動くと思うけど、必ずどっかに同じ動き混ざってるは
ずだから、うちはそれを誘発させる動きをする」

川内「オッケー。それを私と神通で看破して先を読むって訳ね」

北上「ご名答。木曾っちは手近に居るのにガンガンプレッシャーかけてってよ」

木曾「おう、任せとけ!へへっ、何とかは兎を狩るのにも全力を尽くすってな」

神通「川内姉さん、私は右舷へ向かいます」

川内「よっし、私は左舷だね。左右から追い込み漁と行きますか!木曾は真正面から散らしてってよ」

木曾「おう、任せな!そんじゃ行くぜ!!」


提督「ははっ、ありゃあガチだな。さっきは勝ち目ないかもって思ったが、これはこれで解らないかもな」


電「あ、司令官なのです」

春雨「わ、笑ってる…?」

白露「ああ見えて提督って戦術組むの上手なんだよ、春雨!」

春雨「ええ、そんな言い方はひどいよ、白露お姉ちゃん」

時雨「おーい、てーとくー!」

提督「ん?なんだ、あいつらも見てたのか」テクテク


電「お疲れ様なのです」ペコリ

提督「おう、お疲れ」

白露「デスクワークは?」

提督「終わり。午前の面談も一通り終わったからな。余った時間を散策だ。そしたらグラウンドでまた随分と楽
しそうなことしてたからな」

時雨「眺めながら笑っていたけど、提督はこの勝負、どうみてるんだい?」

提督「なんだ、笑ってるところ見られたか。油断も隙もないな…まぁ、そうだな。見てた感じ鬼ごっこだろ?」

電「なのです!」

提督「単純な追いかけっこじゃ、まず間違いなくお前たちに追いつける他の艦なんて居やしない。が、それもや
り方次第でどうにでもなるってのをこれから北上たちが披露してくれるさ。それを看破して往なせるかどうかが
暁たちの腕の見せ所だな」

白露「えっ、北上さん達が何しようとしてるか解るの!?」

提督「ん、まぁ…なんとな~く、だな。良いか?まず、暁たちのあの立ち位置からして恐らく、北上たちの動き
出しに合わせて四方へ散れるよう、全員散開してるだろう。それも互いの邪魔にならない程度の距離を置いて、
それぞれが動きやすいようにな」

時雨「うん、それは解る」

春雨「ふんふん…」メモメモ

提督「かたや北上たちだが、川内と神通がそれぞれ左右に大きく展開、木曾はど真ん中でその後方に北上…四対
四で勝負してるのに輪形陣を崩したような中途半端な位置取り。恐らく、序盤は木曾が駆けずり回って全員へ威
嚇も込めた立ち回りをするはずだ。それを左右の川内たちが外へ逃げないように包囲、北上はそれを分析して、
各個撃破を狙うつもりだろう。見てろ、始まるぞ」

木曾「っしゃあ!行くぞ、駆逐艦共っ!!」ザッ

暁「ふん、捕まえてごらんなさい!」サッ

Bep「そう簡単にはいかないよ!」サッ

夕立「なんのまだまだー!」サッ

島風「ふふっ、おっそーい!」サッ

川内「こっから先は行かせないよ」ザッ

暁「っと…横から!響!」

Bep「ナルマーリナ。油断はしないさ」

島風「ぉう!」キキィッ

神通「逃がしません」ザッ

夕立「うわぁ、静かに獲物を狙う目だ…」ジリジリ…

木曾「オラオラ、止まってるとあっさり捕まえるぜ!」タッタッタッタッ

暁「くぅ~、思いの他厄介ね…!」

Bep「この状況で北上さんは一体…」

北上「……」ジー

夕立「み、見てるだけって…」

島風「んっもー!やる気なさすぎー!」

電「し、司令官の読みどおりなのです…」

春雨「はー…」

時雨「見事と言う他ないね」

白露「さ、流石…」

提督「いいか、不慣れな場合は状況を瞬時に把握しようとするな。まずは見ることが大事だ。こちらの状態、数、
陣形、個々の特性、また相手の特性、数、陣形、距離、解るだけの情報をとにかくまずは見て、情報として仕入
れるんだ。仕入れた情報を精査してそれは初めて状況として盤面に表せる。お前たちには申し訳ないが、この勝
負は恐らく北上たちの勝利だ。勝因は戦略のない暁たちと戦略のあった北上たち、この一点に尽きる。ヴェール
ヌイならあるいは途中で北上の思惑に気付くかもしれないが、気付いた時には既にって状況だろうな」

白露「そ、そんな先まで見通せるもんなの?」

提督「見通せなきゃならないんだ。戦術眼は持って生まれる才能として備えてる奴も居るが、大抵は鍛えて得る
からな。じゃなきゃ、お前たちを気付かぬ内に死地へ送り出してしまう。出来るようになれとまでは言わないが、
少しは学んでみて損はないぞ、戦術ってのはな。それこそ、キス島の時のお前たちの戦術、あれは立派なものだ
ったぞ」

時雨「そう言ってもらえると励みになるね」

提督「さて、と…何を賭けて勝負してるのかは知らんが、喧嘩にならない程度で頑張れよ」

春雨「最後まで見ていかないんですか?」

提督「そうしたいのは山々だがな。お前たちが俺の代わりに良く見て、後学に生かせ」

春雨「は、はい!」

-弓道場-

赤城「ふぅ、今のは少し引きが甘かったでしょうか」

飛龍「うーん、そうですね。赤城さんの事ですから、実戦と練習でやはり無意識的に加減を調整してしまってる
んじゃないかと…」

赤城「意識して修正しないと直せそうにないですね」

飛龍「それに比べて、瑞鳳は安定してるね」

瑞鳳「えっ」

赤城「はい、射法八節一連の流れが実に鮮やかです」

瑞鳳「えぇ…そ、そんな」

飛龍「瑞鳳さ、私や赤城さんに何か負い目とかそういうの感じてるみたいだけど、全然そんな事ないと思うよ?」

瑞鳳「えぇ!?」(バ、バレてた!)

赤城「瑞鳳さんは射法八節には何ら問題はありませんが、継続させる集中力でしょうか」

瑞鳳「うぅ…」(これもバレてたぁ…)

飛龍「んー、でも私も赤城さんも言うほど集中って続いてないよね」

赤城「そ、それを言われると立つ瀬が…」

飛龍「あははっ、けどそこら辺はやっぱその日の調子次第って部分は大きいよね」

瑞鳳「お、お二人に比べればそれでもやっぱり私、集中力が持続しないことが多いかなって…」

赤城「うふふ、だけどそれを補って他の部分が秀でてるじゃないですか」

瑞鳳「えぇ、そんな事ないですって!」

飛龍「謙遜謙遜♪あっ、そろそろお昼ですよ!」

瑞鳳「えっ、もうそんな時間!?」

赤城「最近、ご飯大盛りを要求しても並しか盛ってくれないので、今日こそは…!」

瑞鳳「あ、赤城さんは少し控えるべきですよ!」

赤城「えぇ!?」

飛龍「あははっ、そこには同意しとく~」

赤城「そんな、飛龍さんまで!」

飛龍「だって赤城さん、ご飯食べた後すっごい眠そうな顔で弦引いてるんだよ?危なっかしくてさぁ」ニガワライ

赤城「うぅ、お腹一杯になるとどうしても今度は眠気が…」

瑞鳳「一航戦の誇りって一体…」

赤城「と、時と場合によります!」

瑞鳳「加賀さんが草葉の陰で泣く、というか…」

飛龍「いやぁ、頭にきました。とか言ってそう」

瑞鳳「あはは、加賀さんってそうなんですか?」

赤城「お、怒ると怖いです…」

瑞鳳「じゃあ、怒られないようにシャキッとしましょう」

赤城「はぁ、お小遣いで買える分にも限度があるのが世知辛いですね」

瑞鳳「そう言えば以前に翔鶴さんと何か計画立ててませんでしたっけ?」

赤城「五分で頓挫しました」

飛龍「何を閃いて一瞬で諦めたのさ…」

瑞鳳「あ~、それはですね……」

本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-食堂-

飛龍「あっはっはっは!」

赤城「もう、飛龍さん笑いすぎです!」

提督「おっ、何やら楽しそうだな」

瑞鳳「あっ、提督!」

赤城「あ、提督…」

提督「ん、どうした赤城?」

赤城「あ、いえ…何でも///」モゴモゴ

提督「ん?」

飛龍「くくく…」ニヤニヤ

瑞鳳「あはは…」ニガワライ

提督「おいおい、何だよ」

赤城「ひ、秘密です!///」

飛龍「んふふ~、そうそう。提督っ!女子トークには時として秘密にしなきゃならない事もあるって事なのっ」

提督「はぁ?」

瑞鳳「ほらほら、提督はあっちあっち~!」

提督「おお、おいこら押すなって…解ったよ。聞かないって…!」

提督「はぁ~、ったくわけ解らん」ガタッ

比叡「んお」

霧島「あら」

榛名「あっ」

金剛「Oh…」

提督「え?」

金剛「Hey!提督ぅ~、私達と一緒にランチしたいのは解るけどさ~、今日はちょっと遠慮して欲しいネ~」

提督「はい!?」

榛名「提督、ごめんなさい!」

提督「え?」

霧島「今は!」

比叡「ダメです!」

提督「えっ、ちょっ、何、何なの!?どういうことなの!?」

提督「くっそぉ…なんだってんだ。ちくしょう、しゃーない。この隅っこなら…」

北上「ふぁ~、あれ提督じゃん」

提督「……」

北上「な、何さ…」

提督「退けとか言うのか」

北上「え、いや…別に言わないけど」

木曾「おう、北上!お前ハンバーグ定食でよかったよな?っと、よう提督」

提督「よう…」

木曾「え、なんか暗くね…?」

北上「なんか解んないけど隅に追いやられたんだって~」

川内「おっ、居た居た!駆逐艦連中はあっちの席で纏まるってさ」

神通「ですのでお二人で居た龍驤さんと大鳳さんを連れてきました。利根さん達は午前中、演習してた組で纏ま
ってるみたいでしたのでお声は掛けてません」

大鳳「大勢で食べるほうが楽しいからね。お邪魔させてもらおうかなって」

龍驤「おおっ、こっちの席提督おるやんかぁ!当たりやん♪」

木曾「ほらほら、提督!んなしょげ返ってねぇで一緒に飯食おうぜ!」

神通「川内姉さんはどれにしますか?」

川内「んー、どーしよっかなー。神通と一緒で良いや」

神通「そうですか?それじゃあ…カレーうどん、っと…」

龍驤「うちらも決めんで、大鳳!」

大鳳「ええ、そうね」

龍驤「提督はどないするん?」

提督「ん、あ~、どうすっかな。ってもやっぱこれだな」トン…

龍驤「提督、ほんまカレー好きやなぁ」

提督「カレーライスは海軍の誇りだ」

大鳳「それじゃ私はしょうが焼き定食」

龍驤「うちはどないしよ。寒ぅなってきたし、やっぱ中華丼やな!」

木曾「へへっ、にしてもよ、こうやって提督と一緒に飯食うのって何気に久しぶりだよな」

北上「あ~…確かにねぇ」

川内「大体、私達が食べ終わった後に一人で食べてること多いもんね」

神通「傍らには大抵秘書艦の榛名さんがいらっしゃいましたけどね?」

提督「んだよ、しゃーないだろ。執務がきっかり定時で終わることなんてそうそうないんだし、必然的に手伝っ
てもらってる榛名も昼食は遅れること多かったよ。まぁ、そういった場合は悪いと思うから奢ってやってるが…」

北上「お~、初いねえ、熱いねえ…!」

提督「うっせ」

木曾「ははは!まぁよ、だから久々だなってんだよ。で、どうよ」

提督「はぁ?何が」

木曾「榛名以外の艦娘に囲まれて食べる飯はうめぇかって聞いてんだよ」ニヤニヤ

北上「おっ、おおっ?そこんとこど~なのさ~、提督~?いつもは榛名っちとア~ンとかしてんの?してんの?」ニヤニヤ

木曾「おいおいマジかよ。背中痒いぜ、おい」ケタケタ

北上「木曾っちが聞いたんでしょ~!」キャッキャ

提督「マジこの姉妹うぜぇんだけど…」プルプル

神通「うふふ」

川内「素直になりなよ、提督♪」

提督「わざとらしく語尾を躍らせるな!」

龍驤「せやけど、あれやんな。提督も最近は少し落ち着いてきてるんとちゃう?」

大鳳「以前はもっと騒がしかったって事なの?」

龍驤「うちが最初におった鎮守府の提督はそらぁもう熱血を地で行くようなやる気マンやったで」

提督「お、おい龍驤やめろって!」

川内「へぇ…」ニヤニヤ

木曾「おいおい、マジかよ…キャラ違くねぇか、提督~?」ニヤニヤ

提督「う、うっせぇな!龍驤も要らないこと一々思い出すなっての!」

龍驤「にしし、まーまー細かい事気にせんと、仲良うご飯しよや♪」

神通「ほらほら、提督。折角のカレーライス、冷めてしまいますよ?」

川内「提督ー、神通がよそってくれるなんて滅多にないんだよ?超レア!普段より数倍美味いかもね!」

神通「ちょ、ちょっと川内姉さん!変なこと言わないで下さい!///」

大鳳「ホント、神通って戦闘のときと雰囲気違うから面白いねぇ」

神通「えぇ!?」

川内「私と訓練してるときなんかもそりゃあもう、食い殺すぞってくらいの顔つきになるよね」

神通「表現が酷すぎませんか!?」

提督「ははっ、そんな鬼気迫る特訓してるのか?」

神通「もう、提督まで…」

川内「ほら、なんだっけ。神通、あれあれ…えーっと」

神通「はい?」

川内「ほら、神通が最近心がけてるあれだって!なんてったっけ、じん、じん…」

提督「仁義礼智信」

川内「そーそー、それそれ!私には何か小難しくって何言ってんだかさっぱりなんだけどさ、神通ってば最近は
それを心がけてるとかで、あれ以来神通の動きとかなぁんか良くってさぁ。姉としては足元いつ掬われるのかっ
て感じでヒヤヒヤもんなわけさ」

提督「ほぅ…」ニヤ

神通「な、なんですか急に///」

大鳳「あら、神通…なんだか顔赤いわよ?」

神通「へ?あ、いや、えっと、なっ、何でもありません!///」

北上「あらら、神通っちってこういう話苦手系?」

龍驤「なんや神通、熱でもあるんとちゃうか?めっちゃ顔赤いで」

提督「ほら、お前ら余りからかうな。神通も困ってるだろ。神通なりの練習方法があるんだろ?別に恥じること
じゃないさ。むしろ良いことだ、そうだろ?」

木曾「まぁ、そうだけど…その、なんだ、じんぎ、れいちしん?って、なんなんだ。提督は知ってるみてぇだけ
ど、神通も勿論知ってんだろ?」

神通「ま、まぁ、そうですが…説明、となるとちょっと難しい、と言うか…てい、提督でしたら上手に説明でき
るのではないでしょうか…」

北上「えー、提督にそんな小難しいことわかんの?」

川内「よっ!我が鎮守府の長!提督!賢いって所見せてちょーだいよ!」

提督「お前絶対馬鹿にしてるよな?」

川内「え、してないって…!ホントだよ!?」

大鳳「煽りにしか見えなかったわ…」

川内「マジで…」

提督「ったく…神通の言った仁義礼智信ってのはな、儒教の中にある一説で孔子を始祖とする思考や信仰の体系
のことだ。そんなかに五常と呼ばれる言葉がある。それが仁義礼智信だ。五常の徳性を拡充することによって、
父子、君臣、夫婦、長幼、朋友の五倫の道を全うすることを説いている」

龍驤「な、なんや…むっちゃワケ解らん言葉が羅列されてんで…」

川内「え、なんて…?」

北上「お、おぉ…?」

木曾「やべ、寝そうだった」

大鳳「む、難しい…」

神通「……」(覚えるのに私だって苦労しましたよ…)

提督「はぁ、真面目な話したらコレだよ」

北上「あ、いや、なんか、そのごめんね?侮ってたわ」

提督「お前、俺のことなんだと思ってたの?」

北上「え…頭のねじが一本吹っ飛んでるけどやる時はやる人?」

提督「任務報告書を日記形式でしか掛けないポンコツがほざくな、戯け」

北上「ぐぬぬ…!」

大鳳「霧島なら知ってるかな…」

提督「さぁ、どうだろうな。知ってるかもしれないし、知らないかもしれない。どっちにしろあいつに聞いたら
最後と思えよ。お前が理解するまで、またあいつ自身が理解するまで開放されないぞ、きっと…」

大鳳「う……」

提督「さて、と…お前ら喋ってるだけで手が休みっぱなしだぞ。俺は先に戻るからな」

木曾「えっ…!?て、提督何時の間に完食してんだよ!」

提督「お前らが俺から神通に矛先変えて弄繰り回してた辺りで食い終わってたよ」

龍驤「さ、流石や…」

提督「まっ、たまにはこういうのも悪くないな。楽しかったよ。午後は何するのか知らんが、ほどほどにな。そ
れじゃ俺は先に戻るぞ」ガタッ

大鳳「はい、また機会があればご一緒しましょう!」

北上「じゃーねー」

本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-グラウンド-

羽黒「いきますよ!」パシッ

イムヤ「それっ」ポンッ

ゴーヤ「そっちにもいっくよー!」ポンッ

イク「はいなのねー!」


ベシッ


イク「はうっ」

ゴーヤ「クリーンヒットでち…」

提督「おっ、羽黒に水中娘達が陸地とは珍しい。はは、それでイクは顔面でボールキャッチして何してるんだ?」

イク「うぅ、顔面で受けたかったわけじゃないのね…」

羽黒「あ、司令官さん」

イムヤ「水中と海上、それに地上じゃ物の動きって全然違うじゃない?動体視力、集中力、視野の強化、色々と
できることはあるって事よね」

提督「ほう、いい着眼点だな」

イムヤ「午後は今度は近海で駆逐艦の子たちと演習形式で特訓予定よ」

羽黒「私はそのお手伝いです」

提督「…そうだったのか。普段、あまり活躍の場を設けれなくて済まないな」

イムヤ「え?」

提督「遠征、遠征、戻ったら休暇を隔ててまた遠征。正直、俺でも嫌気が差すときがある。だから、当事者であ
るお前たちはもっとしんどいだろうなって思ってな」

イムヤ「ふふ、何を言うのかと思えば…」

ゴーヤ「要らない心配でち!」

提督「え?」

ゴーヤ「ゴーヤ達は縁の下の力持ち!ゴーヤ達無くして、この鎮守府は成り立たないって長門さんからのお墨付
きなのでち!」フンス

イク「イクはまだ日が浅いけどスケジュールとかを見ると、提督が気を遣ってくれてるのはそれだけでも解った
のね!そうそう出来る気遣いじゃないと思うの!」

イムヤ「そーいう事よ!ってワケで、司令官!」

提督「な、何だよ」

イムヤ「特訓の邪魔でーす♪」

羽黒「気に病むだけ損かもしれませんよ?」

提督「はぁ、ったく…わーかったよ。だが特訓でも無理無茶はするんじゃないぞ」

イムヤ「だいじょーぶ♪」ウィンク

ゴーヤ「適度に休憩は取ってるよ~!」

イク「まず体力が続かな~い!」

羽黒「ふふっ」

イムヤ「って事よ。無茶のしようがないでしょ?」

提督「ははっ、確かにその様子じゃあそうだな。んじゃ、頑張れよ~」

イムヤ「ま~たね~!」

ゴーヤ「……行ったでちか?」

イク「うん、今度は道場の方へ向かったみたい」

羽黒「ふぅ…」

イムヤ「さっき金剛さんから連絡があって、食堂でニアミスしたみたいだけど、さり気無く北上さん達が囲い込
んで事なきを得たみたい」

ゴーヤ「は~、見事に今日は全員が待機の日って事だから、ちょっと心配でち」

イク「鬼門は駆逐艦の子たちなのね」

イムヤ「きっちり口止めはしてあるけど、どこでぼろが出るか解らないしね。こっちも早い所片付けないと!」

ゴーヤ「りょ~かいでち!」

イク「オッケーなのね!」

羽黒「お任せ下さい!」

-道場-

提督「流石に誰も居ないか。にしても、折角の待機日だってのにどいつもこいつも午前中は張り切ってたなぁ」

提督「…っと、そろそろ執務室戻らないとな。残りの連中に前世の記憶があるのかどうか、探りを入れないこと
には今後の方針も決めれない」


利根「……あ、危なかったのう」

阿武隈「まさか道場に来るなんて、想定外」

陸奥「誰よ、ここなら安全に作業できるとか言ったの」

夕張「け、計算ミス…でもバレてなかったし結果オーライじゃない?」

鈴谷「熊野は午後一で面談って言ってたし、怪しまれない程度に午前中の続きしつつ、作業続行だね!」

陸奥「全く、あの四姉妹もまた随分と手の込んだ事を考え付くわね。私ですら気付くの遅かったのに…」

鈴谷「でもさ~、提督ってこういうの好きそうじゃん?」

夕張「きっと号泣ものですよ!」

利根「やれやれ、我輩は普通でもよいとおもうんじゃが…」

阿武隈「とか何とか言って、結構利根さん熱心に取り組んでるじゃない。あたし的にはいいと思うけどな~」

利根「ぬぐ、目敏い奴じゃな、お主…」

-執務室-

提督「は~、珍しくこう書類作業もないと暇っすねぇ…」


コンコン


提督「お、きたか。入っていいぞ」

熊野「失礼しますわ」

提督「おう、入れ入れ」

熊野「あら、珍しく執務デスクが綺麗ですのね。普段は書類の山ですのに…」

提督「そーなんだよ。結構レアだろ、この状態。もう二度と見れんかもしれないぞ」

熊野「ふふ、けれどどこか暇を持て余す、と言った表情ですわね?それで、今日の面談と言うのはどのような事
を伺いたいのかしら?」

提督「そう畏まらんでもいいって。単にお前たちの今のコンディションや状態を把握しておきたいと思って一人
一人に聞ける機会が出来たから実施してるに過ぎん。因みに熊野はこれまでに身に覚えのない記憶があったり、
不意に嫌な夢、怖い夢みたいなのを断続的に見たりした経験ってあるか?」

熊野「なんですの、それ。身に覚えのない記憶と言われましても、よく解りませんわ。嫌な夢や怖い夢、と言う
のもわたくしが知る限りではありませんし…」

提督「うーん、そうか。いや、身に覚えのない記憶ってのは例えばだけどさ、行ったことのない海域の記憶があ
るとか、なんでそうしてるのか自分でも解らないんだけど、そうしてないとならないっていう…なんていうか、
使命感みたいなのに突き動かされてそうしてるって感じ?」

熊野「は、はぁ…?ちょっと、よく解りませんわね」

提督「だよな。俺も言ってて少し不安になるくらい解らんわ。けどまぁ、話を聞いてる限り熊野はそういったこ
とがなさそうだから安心した。言い換えればそれは熊野が現時点で充実してて特に問題もない状態だってことに
他ならないんだからな」

熊野「そのような曖昧な終わり方で宜しいんですの?」

提督「はじめに言っただろ。単にお前たちの現状を簡単に把握しておきたいだけだって。もしもそこで不安に思
うことがあれば言ってくれれば何かしらの手助けが出来るし、変調があればそれに気付いてやれるかもしれない」

熊野「ふふ、まるでカウンセラーの先生か何かですわね?」クスッ

提督「免許皆伝ってわけじゃねぇけどな。ま、何はともあれ熊野は大丈夫ってことだ。貴重な時間付き合っても
らって悪かったな。もう戻っていいぞ」

熊野「そうですの?それじゃ、これで失礼いたしますわ。あ、そうそう…」

提督「ん?」

熊野「夕方くらいに食堂に来て欲しいと、先ほど金剛さんから言伝を頼まれていましたの」

提督「金剛が?」

熊野「ええ、なんでも見せたいものがあるとか…」

提督「そうか、解った。しかし夕方くらいって言っても幅広いな」

熊野「あの方はアバウトですから、仕方ありませんわ。ヒトロクマルマルからヒトナナマルマル辺りに立ち寄れ
ば丁度いいかもしれませんわね」

提督「だな。りょーかいだ。お疲れさん」

熊野「はい、それでは失礼いたしますわ」


ガチャ……パタン


提督「さて、あと残ってるのは……」

-食堂-

金剛「そっちドーネ!?」

榛名「こっちは終わりました!」

霧島「こちらも準備完了です、お姉さま!」

比叡「よしっ!私のほうも完了しました!」

金剛「Good job!流石、私の自慢の妹達ネー!Hey!駆逐艦の皆、そっちの準備は終わってるネー?」

暁「カンペキよ!」

Bep「うん、微塵も隙はない」

夕立「装飾もあと少しで終わるっぽい!」

白露「あとはー、こっちの部分取り付ければかんりょーっ!」

金剛「Great!提督はあと暫くは執務室から出てこないヨ!この時間内で一気に終わらせるネ!」

榛名「私は一度、道場の方で別作業中の利根さん達のお手伝いへ行って来ます」

霧島「それなら私も付き合うわ」

金剛「OK!そっちは榛名と霧島に任せるネー。比叡は北上達の手伝いをお願いするヨ。私は赤城達の方へいって
くるから、終わり次第、ドンドン設置して欲しいネ!」

比叡「お任せ下さい!」

-道場-

鈴谷「おっ、熊野おつかれーぃ♪」☆(ゝω・)v

利根「さり気無く時間は伝えてきたか?」

熊野「完璧ですわ。ヒトロクマルマルからヒトナナマルマルの間に食堂へと」

阿武隈「さっすがー!」

榛名「それじゃ、ラストスパートといきましょう!」

陸奥「任せなさい!」

夕張「いやー、それにしてもホントよく気付いたよね」

利根「なぁに、言いだしっぺは榛名なんじゃろ?金剛達はそれに賛同して率先して手伝っていると聞く。つまり
あれじゃな、愛の成せる業と言う事じゃな」

榛名「と、利根さん…!///」

阿武隈「おー」

夕張「おー」

鈴谷「きゃー!テーンションあーがるぅー!」

熊野「うふふ」

陸奥「形無しね?」

榛名「もう…///」

-執務室-

提督「ふぃー、赤城で終わりかな」

赤城「お疲れ様です」

提督「まっ、お前は武蔵たちの一件を北上からも聞いてるから別段隠す必要もないが…」

赤城「欠けた記憶と覚えない悪夢、残念ですが私にはまだ経験のない事ですね。ただ、榛名さんと幾度となく共
に海域へ赴いて感じたことですが、彼女は少し背負いすぎな部分があります。時としてそれは彼女自身を苦しめ
る結果に繋がるかもしれません。だからと言って軽薄になれ、見て見ぬ振りをしろと言う訳ではありませんが…」

提督「ああ、解ってるよ。ただお前の言うことも最もだ。確かにあいつは自分の信念に真っ直ぐだ。それに反す
る相手が深海棲艦と言う点において、今のところ歯車は綺麗にかみ合っているから常にそのパフォーマンスを最
大限に発揮することができてる。だがそこに異物が混入されれば、たちまち歯車はその働きを止める」

赤城「提督は直に難しく考えすぎです」

提督「へ?」

赤城「私のモットーは簡潔に解り易く、です」

提督「お、おう…」

赤城「提督じゃないと、ダメなんですよ?榛名さんが頑張ってしまうのも、無理してしまうのも、意地悪く言え
ば提督のため、如いてはこの鎮守府のため、ですから提督があの子を支えて上げて下さいね」

提督「これは手厳しいね…」

赤城「勿論、あの子は私達のためにも奮起してしまいますから、そういった時は勿論私達が歯止めになってあげ
ますけどね。ホント、榛名さんは皆さんから愛されてると思います。提督もですけどね?」

提督「愛されてるか?今日だってお前らに邪険に扱われたしなぁ…」

赤城「あ、あれは不可抗力です!」

提督「追いやられた先じゃ金剛たちにご飯一緒は無理デースって更に隅に追いやられたし?」

赤城「あ、あはは…」

提督「愛されてるか?」

赤城「ええ…言うほど実感がないのかもしれませんが多分に、私が思うにはですけどね?」

提督「はぁー、本当かなぁ…」

赤城「自分の部下を信じなくて何を信じるんですか?」

提督「ねぇ、知ってる赤城…」

赤城「はい?」

提督「部下が上司に対してね、この隠し撮りに成功したDVDをばら撒かれたくなかったら今日の遠征任務は無し
にしろーって、脅迫してくると思う?」

赤城「えー…」アセ

提督「あとはねー、あっ、提督チーッス!鈴谷今日は遠征って気分じゃないからお散歩で気分転換してきまーっ
す♪じゃ~ぁね~ぃ」☆(ゝω・)v

赤城「……」

提督「とかとかー、あとはー…」

赤城「あ、いえ…もう十分です」

提督「あ、そう?」

赤城「それでも皆提督が大好きなんだと思いますよ!」

提督「押し切ってきたな…」

赤城「横綱相撲は結構得意です」

提督「受け止めず往なしてるだろ、お前…」

赤城「時と場合によります!」

提督「こいつ…」

赤城「あ、もうヒトロクマルマル過ぎてますね。金剛さんに呼ばれてるんじゃないんですか?」

提督「あ、そういやそうだった。てか赤城にも金剛の奴伝言頼んでたのか?」

赤城「ふふ、彼女会う子皆に言ってましたからね。私も漏れなく伝えてくれと頼まれてました」

提督「どんだけだよ」

赤城「私も用がありますから、一緒に食堂まで行きましょうか」

提督「赤城が食堂に用ってつまみ食いしか想像できんぞ」

赤城「……」スッ

提督「じ、冗談。冗談だから無言で矢筒から矢を抜き取らないで」

-食堂-

提督「ってことで着てみたけど……え?」

赤城「あら、うふふっ、思ってたより豪勢ですね」

提督「え?は?豪勢って、今日って何か祝い事の日だったか?」

赤城「もう、自分で忘れてるなんて相当ですよ?」

提督「え?」

榛名「提督!提督がここに着任されて今日で丁度一年経過したんですよ?忘れちゃったんですか?」

提督「あ……」

金剛「Hey!提督!Congratulations memory in an anniversary!」


パン パン パン


提督「うおっ」

瑞鳳「これから先も宜しくね、提督!」

飛龍「めでたいって言うのはいいねっ!」

陸奥「少しなら羽目を外してもいいけど、火遊びはダメよ?」

提督「お前ら…」

木曾「おら、もうちょい嬉しそうにしろっての!」

北上「鳩が豆鉄砲食らった顔って奴だね~」

衣笠「あははっ、提督が忘れてるんじゃ仕方ないよね~?」

羽黒「一生懸命隠してた私達がちょっと悲しいですね」

提督「今日ずっと、これ作ってたってのか!?」

暁「感謝しなさいよね!」

白露「私達の提督がいっちばーん!」

榛名「さぁ、提督こちらへ」

イムヤ「ヒューヒュー♪」

鈴谷「やーだー、テーンションあーがるぅ~~♪」

龍驤「よっ、だいとーりょー!」

提督「ええい、一々囃すな!」


かくして提督の着任から丁度一年経過したその日を祝う計画は、艦娘達の努力によって大成功を収めた。

そしてここから、彼女達の過酷な戦いの幕も上がる。

本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

~覚醒~



-某海域-

大和「…こちら大和。深海棲艦の殲滅に成功しました」

ビスマルク「同じくビスマルクよ。こっちも深海棲艦一群の壊滅に成功したわ」

那智「…では、これより帰投します。尚、その後の敵の接触が無いとも言い切れませんので、警戒は密に」

雲龍「了解よ。警戒態勢は以前変わらず密に。特に潜水艦への警戒は怠らないで。稼動全機……」

祥鳳「待って下さい、雲龍さん」

雲龍「…何?」

摩耶「あれだろ、RPGで言う所のボスってヤツさ。あたし等の前に堂々と現れる辺り、オツムはからっきしかぁ?」

雲龍「あれは、資料にあった…」

レ級「……」

大和「戦艦レ級、ですね」

ビスマルク「よもやここで?」

那智「ちっ、こちらの戦闘データを測られた可能性もある。確実に沈めなければ…」

雲龍「ちょっと、待って…!」

那智「なっ……」


レ級1「……」

レ級2「……」

レ級3「……」

レ級4「……」

レ級5「……」

レ級6「……」



摩耶「おいおい、冗談だろ…」

祥鳳「戦艦レ級だけの、艦隊…!?」

大和「でも、何か変です。隊列は整ってますが、こちらへ仕掛けてくる素振りが無い」

ビスマルク「……その後方に控えているのが大本命、と言う事かしらね」

リコリス「お初にお目にかかるワネ。元帥お抱えノ第一艦隊カシラ?」

大和「…随分と情報がそちらは揃っているみたいですね」

リコリス「アラ、そうでもナイわよ?で、元帥の栄えある第一艦隊デいいのカシラ?」

ビスマルク「だとしたら、なんだと言うの?」

リコリス「この場で潰スワ」

摩耶「…んだと、てめぇっ!」

リコリス「フフッ、なんて冗談ヨ。見た所、戦艦二人に空母、軽空母、重巡の即席艦隊ミタイね。中々お外に出
て来ナイ陰気な元帥に警告シニきて上げたノヨ」

祥鳳「警告、ですって?」

リコリス「元帥に伝えナサイ。同じ過ち、同じ争い、同じ歴史ヲいつマデ続けるのかッテネ」

大和「同じ、過ちですって…?」

リコリス「その様子じゃ、目に見エル履歴しか閲覧シテきてないミタいね。哀れな子達……ソレとも、副作用が
無かったダケで、運良く力のみヲ手に入れたのカシラ?だとシタラ、尚の事不幸なのカシラ…」

ビスマルク「貴女、何を言ってるの…?」

リコリス「さぁ、何カシラねぇ?ただ、一つ言えるコトはコノまま私達とぶつかり続けレバ、滅びるのは確実に
貴女達、と言うコトになるのかしら」

雲龍「意味が解らないわ。脅しなら通用しないわよ」

リコリス「脅し?とんでもナイ。さっきも言ったデショウ。これは警告ヨ…取り返しのつかナクなる前に、賢明
ナ判断ヲするコトを願ってるワ」クルッ

-大本営-

大和「元帥、以上が此度に私達が体験した顛末です」

ビスマルク「奴の口振りは元帥が何かを隠していると暗に示唆する内容だったわ」

元帥「そうか…」

大和「元帥?」

元帥「…何でもない。報告は解った。危険な目に遭わせてしまって済まなかったな」

ビスマルク「いえ、それが本来の私達の任務です。気遣いは無用かと思いますけど…」

元帥「ふっふ、そう強がるな。報告は解った。今日は二人とも下がっていいぞ」

大和「は…?」

ビスマルク「まだ秘書業務は残っていると思うけど?」

元帥「調査任務を遂行してくれた褒美だ。遠慮せずに今日はもう休んでいい。同行した那智、摩耶、雲龍、祥鳳
にもそれぞれ通達しておけ」

ビスマルク「し、しかし…!」

大和「ビスマルク、それ以上は…」

ビスマルク「くっ…」

大和「了解致しました。ではお言葉に甘えて本日の業務、終了とさせて頂きますね」

ビスマルク「ダンケ、シェーン…失礼します」

摩耶「ふー、やっぱ仕事の後の一っ風呂は最っ高だなぁ!」

祥鳳「一日掻いた汗を流す…疲れも一気に消えますね」

雲龍「そうねぇ。それにしても、一戦を交える事にはならなかったとは言え、戦艦レ級の艦隊にそれを指揮して
いたあの白髪に紅の瞳の深海棲艦…距離を置いていたとはいっても、あの圧倒的な威圧感…寒気がしたわ」

那智「解せんのはそれだけではない。奴の発していた言葉もまたこちらからしてみれば不可解だ。脅しではなく
警告とは、言っている意味が理解しかねる」

摩耶「よう、那智」

祥鳳「お疲れ様です」

那智「ああ。あと、大和から通達だ。本日の任務は終了、その後は各自自由時間だそうだ」

雲龍「わざわざそれを伝えるためだけに?」

那智「ふん。どちらにしろ塩水を被ったままでは具合が良くないからな。事の次いでだ」

摩耶「かーっ!今日の元帥は気が利いてるなんてもんじゃねぇなぁ、おい!」

祥鳳「別段、荷が重い任務と言う訳でもなかったんですけれど、どうしたんでしょうか」

那智「私が知るか。だが上からの命令ならば絶対だ。休めといわれれば休みもするさ」

雲龍「相変わらずの鉄面皮ね」

那智「どうとでも言え。いざという場合に備え、戦術行動が取れなくては本末転倒だからな。休養も戦いの内だ」

-大本営・大会議室-

大将1「宜しいのですか?飛行場姫・リコリスと名乗る深海棲艦のメッセージは確実にこちらの隠匿してきた履歴
を指して述べております」

元帥「仮にそうだとしても大和やビスマルクをはじめとした艦娘達は一人としてその事実には差し当たって気付
いてはおらん。無駄を排除した上で執り行った近代化改修も滞りなく成功した」

大将2「ですが、万が一という事もあります。先の提督大佐の所に居る艦娘にも元帥殿の指示の下、近代化改修を
施したと聞き及んでおります。そちらの方面からもしもその万が一が起これば…」

大将3「ならば、逐一監視して、情報を常に手綱として握っておけばいいでしょう。諜報には智謀大将よりも隠密
大将の方が長けているのではないですか?」

隠密「やれと言われればやりましょう。海軍の規律に反する俗物は余さず炙り出し、白日の下に晒して然るべき
刑罰を科し、断罪に処するべきです」

智謀「恐ろしい事をサラッと口にしますね。私には貴方の方がよっぽど極悪非道に見えますが?」

隠密「尻尾を出さない女狐がどの口でほざくのか。今の憲兵など自力で動こうとしない駄犬に等しい以上、我々
が彼奴等の手足を動かす人形師として成らねばならんのですよ」

智謀「」(それもこれも貴方の思惑通りでしょうに…それこそどの口が言うのか)

隠密「おや、智謀殿にしては珍しく何か物言いの表情ではないですか」

智謀「いえ、別に。提案と推薦を課せられたのは隠密提督。そこに私が土足で足を踏み入れるわけにはいかない
でしょう。出された決定には無論従います。元帥殿の発言こそがそのままの意なのですから」

隠密「では…元帥殿、宜しいですね?」

元帥「決して手は出すな。提督大佐にはこの私自ら着せてしまった恩のある男だ。無用の混乱と疑心を彼に植え
つけたくはない…」

隠密「心得ました。お言葉の通りに任務を遂行してご覧に入れましょう」

-演習場-

赤城「はぁー…これは、また…」

飛龍「す、凄いね…」

提督「…榛名と金剛の二人だけで陸奥、大鳳、衣笠、川内の四人を、ねぇ…」


川内「はは、マジで…?」 中破

衣笠「じょーだんでしょ」 中破

大鳳「つ、強い…!」 小破

陸奥「実際に肌で感じて初めて解るってこの事ね」 小破

金剛「はぁ、はぁ、はぁ…」 中破

榛名「まだまだ、やれますよ…!」 中破


比叡「霧島、どれだけ把握できた?」

霧島「そ、想像を超えてます。とても全てを把握なんて無理でした」

提督「制空権を奪うだけなら大鳳一人で事足りたのまでは良かったが、それを物ともしない瞬発力が金剛と榛名
には備わってるみたいだな。最初から空を制すことが出来ないと解っていれば、自然と空への警戒も強まる」

赤城「だとしても、大鳳さんのハリケーン・バウはそう易々と往なせるものではありませんよ」

飛龍「うん、決して大鳳の錬度は低くない。衣笠の精密射撃に川内のスピード、陸奥さんのパワー、バランスも
取れてて戦術を行使するにはとてもいいと思ってたんだけど…」

提督「金剛と榛名の連携がそれを容易く上回ったな。出だしがともかく凄まじく早かった。大鳳の先制攻撃から
始まって、状況把握から戦術展開、どちらが殿を務めるのか、互いの針路、射線の確保と一瞬でそれらをやって
のけたのには流石に俺も脱帽ものだった」

比叡「何より驚いたのは二人の動きですよ」

霧島「金剛お姉さまは左右の切り替えし、榛名はお馴染みの三次元の動き…キレも相当なものでした」

比叡「瞬間的な動きの速さなら駆逐艦の子等に迫るものがあったよ」


陸奥「まだやれるって、そのナリで本気で言ってるの?こっちの艤装はまだ一番二番砲塔共に無傷、そっちはど
うみても、二人とも主砲が使い物にならないように見えるけど?」

金剛「じゃあ、見せるしかないネ、榛名」

榛名「はい、お姉さま」

川内「…くるよ、皆!」

衣笠「外さないわよ!」

大鳳「慢心も出し惜しみもしない。さぁ、飛び立ちなさい!第二次攻撃隊、全機発艦!」

陸奥「手負いの狼ほど怖いってね。気を緩めちゃダメよ!」

-執務室-

榛名「ふぅ、すみません。遅れました」

提督「いや、いい。それより最近、皆演習に力はいってるな」

榛名「ここ最近、やはり深海棲艦が強くなってきてるのもあるんだと思います。私自身も実際にレ級や泊地棲姫、
ピーコックと言った存在と相対してその実力差に愕然としたのも事実です」

提督「だが、断言してもいい。今のお前はそこらの深海棲艦は勿論、艦娘相手にも全く引けを取らないだけの力
を秘めているし、実際に発揮している。少なくとも、俺が知る限りではお前に長門、金剛、赤城、神通、夕立、
ヴェールヌイ…」

榛名「え?」

提督「近いものを感じるのは飛龍、大鳳、陸奥、衣笠、羽黒、川内、北上…」

榛名「あの、近いものって言うのは…」

提督「俺の中での仮説に過ぎん。ある程度の条件が整っているものを俺は仮定的にそう表現している。つまり、
覚醒している、もしくは覚醒しかかっていると言うことだ」

榛名「かく、せい…?」

提督「考えられるのは近代化改修だろうな。それと、個々が内に秘めている古の記憶だ。前世の記憶なんて表現
する場合もあるが、数十・何百年も前の記憶を有するというのはそれだけで不可思議だからな」

榛名「あの、提督?」

提督「榛名、恐らくだがお前たちは進化の過程にある」

榛名「あの、改装と言う意味で、ですか?」

提督「いや、進化と言うよりはやはり覚醒しかかっている、と言う方が正しいかもな」

榛名「覚醒、しかかっている?」

提督「幾つか立てた仮説の中では最もしっくりくるもんだ」

まず、以前に北上経由で教えてもらい、実際に武蔵、加賀、大井たち三人から生の情報を得られた。

艦娘の死後のことだ。艦娘は死後、幾つかの選択肢が存在することが彼女たちの言葉から判明している。

一つは依り代となる場所や物があった場合、そこに根付き守護者のようになる。これは今の武蔵たちの状態だな。

二つ目、天寿を全うした魂は輪廻転生をして別の存在として生まれ変わる、と言うものだ。

これはまだ実際に目にしたわけではないし、立証のしようもない。

だが、一つ目の事象を体現していた武蔵たちの言葉だから、ある程度の信憑性も伺える。

そして三つ目、これが最も恐れていた事実だ。抱いた艦娘自身の念が強すぎて反転し、深海棲艦として生まれ変

わると言うもの。その言葉とつき合わせて、今までの深海棲艦の言葉を省みると、符合する部分が幾つかある。

で、これらの話は言わば覚醒に至るまでの基盤に過ぎない。

次に榛名や一部の艦娘が断片的に覚えている前世の記憶や謎の夢だ。

これは恐らく、最初の艦娘の死後の話が若干かぶさってくる可能性もある。

そうじゃなかった場合は先天的に元から刻み込まれていたか、もしくは後天的だとすればその原因は近代化改修

がそれにあたると俺は睨んでいる。

先天的に元から刻み込まれている、というのはこれも憶測の域を出ないが実際に存在していたとされるお前達と

同じ名を冠した旧海軍の艦の残心とも言うべき記憶の結晶体だ。

榛名の場合は恐らく先天的なものだろう。実際にお前の名と同じもので、俺も調べて見つけた資料がある。

金剛型巡洋戦艦その三番艦として建造された高速戦艦・榛名。

竣工は1915年4月19日 損失は1945年7月28日とある。

断言はしきれない。だが、それでも思うところがある。お前は、旧日本海軍が建造した戦艦榛名、その生まれ変

わりなのかもしれない。故に、戦艦榛名がその身に刻んだ記憶の断片をお前もまた記憶として保持し、夢として

みていたのかもしれない。

そこに敵として現れた深海棲艦。その強さの前に今度こそ負けまいと、今度こそ護りきると、お前はそう誓って

力を振るった。その想いと過去の記憶がシンクロして今のお前のずば抜けた身体能力が備わった。

過去の記憶と現在の記憶が合わさって未来の力に生まれ変わった。つまり、これが俺が仮定とする覚醒だ。

本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

榛名「そんな、事が…本当にあるんですか?」

提督「解らん。所詮、確証も何も得てない推論のみで編み上げたもの。机上の空論と言われれば反論のしようも
ないのは解りきっている。だが、そうとしか思えない。更に、旧日本海軍の資料と言うのは現在、大本営で厳重
に保管され、それを閲覧することは一般人は無論、俺たち海軍提督にすら許されていない」

榛名「そんな、先代の偉業を何故隠匿する必要があるんです?」

提督「それも解らん。だが、そこに何か隠されているのもまた事実なのかもしれない。実際、榛名の記述を探し
出すのにも相当苦労を強いられた」

榛名「……」

提督「まぁ、色々と喋ったが榛名は今のまま、気にせず居てくれ」

榛名「提督…」

提督「さっ、折角この間はお前たちからサプライズパーティ開いてもらったし、業務頑張らなきゃまた怒られち
まうからな。最近は特に暁一派に合わせて白露一派もお小言増えてきてるからな…」

榛名「またそうやって暁ちゃん達の悪口を…」

提督「レディの私が言ってるんだから言うこと聞きなさいっ!ってお前、言うこと聞くか?」

榛名「……事と、次第によるかと」

提督「電の場合は素直なんだよ。頑張ったので頭撫でて欲しいのですって言うから」

榛名「は、はい?」

提督「暁の場合がさっきの奴ね」

榛名「えっと、え?」

提督「白露は一番にゴールしたからごほうび~!ってタックルかましてくる」

榛名「タ、タックル…」

提督「ぽいすけと時雨、春雨はまだ大人しくていいんだがな」

榛名「ぽ、ぽいすけって…夕立ちゃんの事ですか!?」

提督「え、そうだけど?」

榛名「なんてヒドイあだ名を…」

提督「だってあいついっつも語尾にぽいぽいつけてるだろ。ぽいすけって言うと飛んでくるぞ」

榛名「それでいいのか、夕立ちゃん…」


夕立「っくしゅん!ふぅ、風邪っぽい?」


提督「ま、話は取り敢えず終わりだ。早いとこ書類片付けるぞ」

榛名「あ、はい。了解です」

-???-

新鋭「提督鎮守府の艦娘達に一杯食わされたんですってね?」

フェアルスト「何をしにキタ」

ピーコック「お呼びじゃなインだけド、何か用カシラ?」

新鋭「あらあら、辛辣なお言葉ね。これでも一応パートナーなんだもの、心配くらいはするわよ?」

ピーコック「心配…?フフッ、どの口が言うのカシラ。リコリスは貴女に疑心ノ念を既に抱いてイルわよ」

フェアルスト「無論、私達は基より信用ナドしてイナイ」

新鋭「あら、そう…それよりも、他の子達はどうしたのかしら?」

ピーコック「知らなイワ。用があるナラ自分で探しなサイ」

新鋭「居ないと言うのなら別にそれでもいいわ」

フェアルスト「ドウ言う意味だ」

新鋭「こういう意味よ」サッ


ドォォン ボゴオオォォン ドガアアァァァン


フェアルスト「なっ…!」

ピーコック「フェアルスト…ッ!」サッ

新鋭「…さあ、始めましょうか。深海棲艦狩りを…」ニヤ

ピーコック「うぐっ……フェアルスト…!」 中破

フェアルスト「大丈夫よ。掠った程度ダカラ……ピーコック…ッ!?」 小破

ピーコック「無事なら、ソレデいいわ。それより、どういうツモリよ、シンエイ…!」

フェアルスト「海軍の、モグラと言うワケか…!」

新鋭「冗談はやめて。あんな腐りきった組織と一緒にされるなんて真っ平御免よ。本当だったら一網打尽に出来
る機会を選びたかったけど、まぁ主力級の貴方達なら申し分ないわね」

??「……」

??「……」

??「……」

??「……」

??「……」

??「……」

フェアルスト「なんだ、ソイツ等は…」

ピーコック「どういうコトなのヨ!くっ、何なの、ソイツ等は……ッ!」

新鋭「さぁ、何かしら?まぁ、初お披露目って事で…これが私の艦隊よ」

フェアルスト「艦隊?艦隊ダト…?貴様、どこまで…ッ!どこまで私達ヲ馬鹿にスル気だ…ッ!!」

新鋭「堕ちた分際で何を偉そうに…使役してもらえる存在がいるだけありがたいと思いなさい?」

フェアルスト「キサマァ…!」

新鋭「彼女達は私の最高傑作よ。従順で、命令のみに忠実。素晴らしいと思わない?艦隊、兵器と言うのはこう
在るべきなのよ。感情なんて起伏のあるものを排除し、ただ障害となるものを無機質に、無感情に、踏み潰すが
如く、只管に蹂躙する。それでこそのマッサークルドール。見せて上げるわ、貴方達を実験台にしてね?」

フェアルスト「逃げろ、ピーコック…」

ピーコック「フェアルスト、あなた…」

フェアルスト「イケッ!ピーコックッ!!誰でも構わナイ。この際、信じヨウと信じまいト、海軍だろうとナン
だろうと、コノ事実を公に伝えろ。出来るナラ味方に、リコリスに……頼んだワヨ、ピーコック…」

ピーコック「こんな、ハズじゃ…くっ!」ダッ

フェアルスト「無事でイテね、ピーコック……イツカ……静かな……ソンナ……海で……私も……」クルッ

新鋭「念仏は唱え終わったかしら?」

フェアルスト「……念仏を唱えるノハそっちよ。余り見縊らナイで貰いたいワネ。私は戦艦棲姫・フェアルスト。
余さず貴様らをコノ場で殲滅スル…ッ!!」

新鋭「ソロモン海戦の亡霊が…逆に沈めて墓標を立てて上げるわよ」

-某海域-

ピーコック「くそっ、クソッ……!逃げるコトしか、出来ないナンて…!」

ヲ級?「……アナタハ……」

ピーコック「…ッ!?なっ…空母、ヲ級…?いや、規格にそぐわナイ。アナタ、まさか…」

ヲ級?「」コクッ

ピーコック「そう、それで…たった一匹で何ヲしようと言うのカシラ」

ヲ級?「ナニモ…タダ、ワタシハ、ジユウヲアイシタ」

ピーコック「その結果がそのザマでは、自由と言うヨリもむしろ傀儡、道化に近いワネ。結局、そのナリで受け
入れらレル場所ナンテ何処にもナイ」

ヲ級?「シッテル。コノサキニアルチンジュフデモ、ソコノテイトクニキョゼツサレタ。デモ、ソノマエノチン
ジュフデハ、ハンブンウケイレテクレタ…」

ピーコック「何ですって…?」

ヲ級?「イマハ、マダ、ダメダト…フシギナヤツダッタ。ミナリダケデミレバ、ワタシハ、シンカイセイカン…
フツウニ、カンガエレバ、ナヤムヒツヨウナド、ナイノニ…」

ピーコック「人間が、深海棲艦に情けヲ掛けたトデモ言うの!?」

ヲ級?「ナサケトハ、チガウ、タブン。カットウ…アノジテンデハ、カレハワタシジャナク、カンムスヲエラン
ダトイウダケノコト……リトウ、セイキ……ドコカ、カナシイカオ」

ピーコック「……ッ!煩いッ!!お前に何が解るッテ言うノ!?深海にも、コノ青い海の上でサエ、居場所のな
い分際デッ!!」

ヲ級?「……ゴメンナサイ。デモ……」スッ

ピーコック「ぇ……?」

ヲ級?「ワタシヲ、ハンブンハ、ウケイレテクレタ、チンジュフ。コノ、ホウガクニアル…」

ピーコック「フッ、私にソコへ向かえと?」

ヲ級?「ヒコウジョウキヤ、コウワンセイキタチノバショ、ワタシニハワカラナイ…シンロガナケレバ、ススミ
ヨウガナイデショウ?ワタシハ、コノアオイウミヲ、モウイチド、アユンデミタイダケ…」

ピーコック「……行きなサイ。貴女は、本当に愚かネ」

ヲ級?「ヨク、イワレテタ」ニコッ

ピーコック「機会がアレば、また会いまショウ。その時は、私が貴女に居場所ヲ作って上げるワ」ニコッ

ヲ級?「アリガ、トウ…」

本日はここまで

皆様こんばんは
本日も少しの時間宜しくお願いします

-母港-

龍驤「港は今日も異常なしっと~」

飛龍「龍驤、慢心はダメ!ゼッタイ!」

龍驤「わ、わかっとるって…!」

提督「おーい、そろそろ昼だ。交代要員飛ばしたら戻ってきていいぞ」

飛龍「あっ、はーい!ヨシッ、それじゃ今日も宜しくね、皆!」ヒュン ヒュン

龍驤「さーて、うちんとこもお仕事お仕事ー!」ヒュン ヒュン

飛龍「それじゃ戻ろっか!」スタスタ

龍驤「せやな!」テクテク

提督「うーん…秋空快晴、凪ぐ風が少し肌寒いが、照る太陽と相まって逆にこれはこれで心地良いかもなぁ」

飛龍「テートク!呼びに来た人が遅れるってどーかと思いますよっ!」

提督「おっと、悪い悪い…いやぁ、執務室に篭ってるとな、どーもこう、天気が良いと空の下でのんびりとした
くなるんだよ」

龍驤「あー、解る解る。うちも雨降っとると、どーも調子でぇへん時あるもん」

飛龍「あはは、まぁ…提督の場合は執務がお仕事ですからね。ん?」ジー

提督「どうした、飛龍?」

龍驤「ありゃ?」

提督「なんだよ、龍驤まで」

飛龍「艦載機の子達が戻ってきました」

龍驤「うん、うちの子等も戻ってきとるなぁ」



ブゥゥゥゥゥン……


飛龍「よっと…敵が現れましたか?」

艦載機妖精「キュウエンシンゴウ」

飛龍「救援信号?」

提督「どういう事だ。狼煙も何も上がってないし、何より同じ海軍提督や各鎮守府に所属する艦娘達なら専用の
チャンネルがそれぞれにあるはずだ。わざわざ哨戒中の艦載機に信号を発信するものか?」

龍驤「せやけど、万が一って事もあるやん。そのまんま放置して、後で本物やったらうちらも寝覚め悪いで…」

榛名「あ、提督、飛龍さん、龍驤ちゃん。遅いから見に来ちゃいましたよ。どうかしたんですか?」

提督「あぁ、榛名。それがな────」


榛名「飛龍さんと龍驤ちゃんの艦載機が、それぞれ同じ救援信号を受信して引き返してきたって事ですか?」

飛龍「うん、時間からすればそれほど離れてないと思う」

龍驤「こうしててもしゃあないで。取り敢えずいってみな!」

提督「仕方ない。俺も同行する。榛名、悪いが一緒に頼む」

榛名「あ、はい!解りました」

-近海-

提督「この辺りか?」

飛龍「その筈なんですが…」

龍驤「別に孤島ある訳やあれへんし、なんかあったら解る思うんやけどなぁ…」

榛名「…居ます」

提督「お、何処だ?」

榛名「……」

提督「榛名?」

榛名「姿を現しなさい、ピーコック!」

提督「何…?」


ザバァァァァ……


ピーコック「……」 中破

飛龍「え…?」

龍驤「な、なんや…ボロボロやないか。そないなナリで自分、まさか特攻でも仕掛ける気ぃか!?」

榛名「貴女…」

ピーコック「……解ってイル。私は、貴様達にとっての外敵でアリ、淘汰すべき相手。だから、私の言葉にソノ
耳ヲ傾ける必要も別にナイ。だが、もしも貴様達ガ、何かの気紛れでも構わナイ、その耳をこちらへ傾けてクレ
ると言うのなら…私の知る全てヲこの場で晒そう」

提督「何が目的だ。そして何故、お前はそこまで痛んでいる」

ピーコック「目的は、ナイ」

榛名「…貴女が一人で居る事が既に異常なんです。貴女と共に居たフェアルストはどうしたんですか」

ピーコック「フェアルスト……彼女ハ、私の身代わりトシテ、鉄底海峡ノ水底へと再び沈んだ」

飛龍「えっ…!?」

提督「アイアンボトムサウンド…」

ピーコック「…一つ、教えろ…海軍提督。静かな時代で、タダ静かな時ヲそっと過ごす…それは我等が望ンデは
ならないコトか?」

提督「…望むほどに、捜し求めるものがあるのだとするなら、それはお前たちにとって必要なことなのかもしれ
ないのは認める。だが、それとこの世界を闇へ染め上げていいのとは訳が違う」

ピーコック「……フッ、道理だナ。私の首は好きにスレばいい。その前に、コチラの情報の全てヲ貴様達に明け
渡すコトを約束する」

榛名「…待って下さい」

龍驤「は、榛名ちゃん?」

ピーコック「…まだ、何かアルの?」

榛名「共に歩んだ仲間を置き去りにして、貴女は戦わずに死ぬって言うんですか?」

ピーコック「抗い様のナイ戦力を前に、貴様は無謀と解って尚、足ヲ前に踏み出せルト言うのか?死を以て退路
ヲ切り開いた同胞(はらから)の努力ヲ、貴様は無駄にシロと言うのか。私の役割は、コノ情報ヲ信頼デキル者へ
託すコトだ。貴様達ナラ、情報を活用スルだけの知恵は持ち合わセテいるだろう」

榛名「そんな事を言ってるんじゃありません!そこまで解っているなら、せめて無念を晴らそうとは思わないん
ですか!?一矢報いるという意地は見せないんですか!?そんな、意地も何もない相手に、私達は苦戦を強いら
れたって言うんですか!?」

提督「榛名…」

榛名「簡単に死なせるもんですか。自分の業としっかり向き合って下さい。それが、沈んでいった仲間達へのせ
めてもの弔いになるんです。フェアルストがどういう想いで貴女を生かしたのかなんて私には解りません。です
が貴女がそれを理解しないのはお門違いです!」

ピーコック「…クドイ人ね」

榛名「んなっ…!」

ピーコック「艦娘のクセに、深海棲艦に説教スルなんて…他から見レバ異形にしか映らナイでしょうネ」

ピーコックは一呼吸置いてこれまでの経緯を詳細に語った。

無論、リコリスの計画している内容は伏せた上で、彼女達に要らぬ火の粉が及ばないように配慮した上で、自分

が関わった内容の全てを包み隠さず提督達に語った。

新鋭提督との繋がり、その新鋭提督による内部反乱。

引き連れていたのは新鋭の操る傀儡に等しい艦隊である事。

その後直に自らは退避した為にその全容を確認するには至らなかった事。


提督「新鋭…!」

飛龍「ピーコックの話じゃ、既にフェアルストは…」

ピーコック「足止めをそのママ続けてイタのだとしたら、既に沈んでイルでしょうネ。で、私の処遇はドウする
つもりナノかしら?」

提督「逃げも隠れもしない、と言う口振りだな」

ピーコック「ええ、今はネ?」

提督「そうか。なら、行っていいぞ」

ピーコック「……ハ?」

提督「今回だけは見逃してやる。ただし、次にもし敵として立ち塞がるならその時は容赦無く撃滅する」

ピーコック「艦娘が艦娘ナラ提督も提督ネ。狂ってるトシカ言いようが無いワ」

提督「こちらにも思うところがあるんだよ。この戦いは恐らく終焉を迎えることは決してない。榛名たち艦娘と
お前たち深海棲艦が争い続ける限り、悠久に等しい歳月を経ても終わりはきっと見えない」

ピーコック「ナンですって…?」

提督「お前たちの中にもそのことに気付いてる奴は居るんじゃないのか?気付いてなくとも、この運命にどうに
かして抗おうとしている奴が居ても不思議じゃないと俺は思っているがな。俺はそれに終止符を打つ策を練る。
だから、お前も生きてみろ、ピーコック。生きていれば、別の世界が待ってるかもしれんぞ」

ピーコック「世迷言ヲ…」クルッ

提督「…忘れるな、ピーコック。必ず、この青い海の上で、お前たちにも穏やかなときが過ごせる日が訪れるよ
うにしてみせる」

ピーコック「……ッ!」ピクッ

提督「だから…この時代を、行く末を、この俺を、艦娘たちを、少しでいいから信じてみてくれ」

-鉄底海峡-

時間は少しだけ遡る。新鋭提督率いる謎の艦隊の襲撃を受けたピーコックとフェアルスト。

フェアルストは自身を庇って手傷を負ったピーコックの身代わりとなる為に彼女を逃がし、自身はその場に留まった。

本来であれば共に逃げ果せる事も可能だったのかもしれない。

しかし、フェアルストはあえてそうしなかった。


フェアルスト「フフッ…自分の行動力に驚嘆スル」 大破

新鋭「あら、随分としぶといわね?さっきのは直撃コースだったと思うんだけどなぁ…」

フェアルスト「直撃?ナラバそうなのだロウな。先の戦いで交エタ艦娘の一撃に比べレバなんと軽いコトか」

新鋭「…なんですって?」ギリッ…

フェアルスト「ナルホド、艦娘か…よもや、ここにきてその艦娘に教示ヲ貰うコトになろうトハ…」ググッ

新鋭「貴女、その、容姿は……っ!」

フェアルスト「お前も、知っていたんじゃナイのか…私達の元がナンだったのか」パリパリ…

新鋭「ば、馬鹿な…こんな事が…」

フェアルスト「目の前にあるのが現実だとするなら、これが紛れもない真実よね」

新鋭「過去の、亡霊ではないと、言うの…?」

フェアルスト「ふふっ、覚悟を決めるというのは、こういう事ね。艦娘にも、深海棲艦にも、未来が残されてい
るという確かな証。ならば私はそれを邪魔する存在に対し全力を賭して応戦し、この希望を今の世代に託そう」

新鋭「ありえない。まさか、浄化?いえ、違う…しかし、この姿は……ちっ、全艦!こいつは危険よ。徹底的に
叩きのめし、殲滅しなさいッ!!」

フェアルスト「面白い。一体や二体の損害は覚悟してもらうわ。さぁ、沈みたい者から掛かって来なさい!ここ
を貴女達の終わりの海域にしてあげる。アイアンボトムサウンドに、沈みなさいッ!!」

-???-

リコリス「ピーコック……!?」

アクタン「ピーコック、どうシタの」オロオロ

ポート「アナタ、まさか…!」

ピーコック「全てを、説明スルわ」 中破


中間棲姫「フェアルストが、沈んだ…?」

空母棲鬼「やはり、シンエイは信用ナラなかったワネ…」

リコリス「相手が一枚も二枚も上手ダッタ…認めるシカないみたいネ」

ポート「早急に対策を練らなけレバ…」

南方棲鬼「対策ナド既にあってナイも同然。シンエイを撃滅スル以外に何ガある!?」

装空鬼「落ち着きなサイ。今、私達は四面楚歌ダト言うコトよ」

南戦鬼「海軍カラの追撃、シンエイからの闇討ち、どちらモ対処しなけレバならない…」

航空棲鬼「我々がこウモ後手に回るトハ…」

ピーコック「…話すべきコトは話した。暫く、一人にサセてもらう…」

アクタン「アッ、ピーコックゥ…」

ポート「今は、一人にシテあげなサイ。アクタン…」


ピーコック「……」

提督(必ず、この青い海の上で、お前たちにも穏やかなときが過ごせる日が訪れるようにしてみせる)

ピーコック「」(…賭け事は余りスキじゃないケド、どうせ当たるナラ大当たり、ソレ以外は全てハズレよね。
提督大佐……イイワ、貴方にベット全て上乗せで賭けてアゲル。私の命も含メテネ…)

きりがいいので本日はここまで

皆様こんばんは
少し更新します

~Re-Battle~



-執務室-

提督「今日だけで既に三件か…何が、どうなってるんだ」

榛名「今のところ、先輩鎮守府近海と不動鎮守府近海にはそれらしい敵影は見て取れないみたいです」

提督「不幸中の幸いとでも言えばいいのか」


ピー、ピー、ピー……


提督「ちっ、こんな時に……はい、こちら提督鎮守府…こ、これは、大将殿……」

榛名「…?」

提督「は…?い、今からですか!?いや、ですが、今は…!は、はい、解りました。直にそちらへ向かいます」

榛名「どうされたんですか?」

提督「……すまん。少し留守にする」

榛名「えっ、あ、はい…あの、お帰りはどれくらいに?」

提督「解らん。暫く空けることになるかもしれん。万が一に備えて提督代行をお前に任せ、一切の権限を一時的
に全て預ける。現時点を以て、お前の発言力は俺と同等となる」

榛名「え、ちょ、ちょっと提督!?」

提督「……」サッ カリカリカリ…スッ…

『この執務室は盗聴されている。今の会話も全てだ。今後は他鎮守府との連絡手段を考慮してくれ。あと、この
紙も後の証拠として挙げられる訳にはいかない。俺が執務室を出たら即時廃棄しろ』

榛名「……ッ!」

提督「…必要なことはメモに纏めておいた。後は任せるぞ、榛名」

榛名「は、はい…!」クシャ…

-会議室-

夕張「信じられない」

北上「こっちも三つ、見つけたよ~。取り敢えずこの会議室はもう大丈夫かな?」

榛名「助かりました」

夕張「鎮守府に盗聴器仕掛けるなんて普通の奴じゃまず無理よ。一体どうやって…」

北上「榛名っち、これ全員に通達してあんの?」

榛名「念入りに調べた場で、北上さんと夕張さんのお二人だけです。どこで会話が漏れるか解らない以上、皆が
集まってる場所で大々的に知らせるのは相手に情報を与えるだけかと…ただ、これを仕掛けた犯人ですが、提督
の態度から凡その見当がつきます」

北上「誰さ?」

榛名「大本営の誰かです。提督が留守にする直前です。提督の言動や表情から、大本営から連絡が来たのは明白
です。これがもしも不動提督や先輩提督からなら、提督はもっと砕けた表情、表現になるはずです」

夕張「なるほど…」

北上「んでもさ、なんで大本営がそんな身内を騙す、みたいな真似してるわけ?私が提督の不逞を探ろうと仕掛
けてるのとはワケが違うじゃん?」

榛名「北上さん…?」ギロリ…

北上「ひぃ…!ちょ、たんま!今はもう仕掛けてないって!ホントだよ…?」

夕張「ま、まぁまぁ…取り敢えずさ、犯人が大本営の誰かだとして、その目的は?」

榛名「タイミングが色々と良過ぎるんです」

夕張「と、言うと?」

榛名「まず、これは皆さんにも知らせてありますが、ピーコックの件です」

北上「和解チックな展開になったって奴?」

榛名「はい、その後です。今度は立て続けに近隣の鎮守府が新鋭元提督と思われる艦隊からの襲撃を受けて被害
が拡大しているという報告。こちらでも何か対策を取ろうかと言う矢先に、提督への緊急招集の命令」

夕張「素直に考えて、ピーコックとの和解の件から既に盗聴はされていたって考えていいよね。それで今度は、
折り悪く新鋭元提督が反旗を翻し、表へと出てきた」

北上「ピーコック達と新鋭が切れたって情報は出回ってない。全員が集まった席でもそれは口にしてなかった」

榛名「結論、大本営は私達…と言うよりは提督を深海棲艦側の、もしくは新鋭元提督のスパイと睨んだ。提督も
何か感じる部分があったみたいで、今わの際で私に提督と同等の権限を付与されていきました」

北上「正直な話、私等だけで抱えれる規模の話じゃないよ」

夕張「かといって、皆に伝えるにしても駆逐艦の子達には混乱しか与えないと思う」

榛名「建物自体が盗聴されている以上、恐らく提督鎮守府で開示している通信チャンネルも傍受されている可能
性が非常に大きいです」

北上「んだね。でも、この場合、夕張っちがここにいるのはある意味幸いなんじゃないの~?」

榛名「はい。夕張さん、先輩提督、もしくは不動提督宛に直通で繋げられるチャンネルの開示、開発をお願いで
きますか?出来れば、大本営に感付かれないように、と言うのが最も好ましいですが…」

夕張「箱庭の中に篭ってばっかじゃどうしようもないでしょ。やってやるわよ。提督のためでもあるしね」ウィンク

榛名「ありがとうございます!」

北上「よし、そんじゃ私と榛名っちはジワジワと話を浸透させていこう。まずは理解度の高い戦艦組と空母組。
そんで細かい内容を伝えないとならないであろう重巡組と軽巡組。ただし感情移入が結構激しい軽空母の二人は
注意ね。瑞鳳も龍驤もその場でガーっといっちゃう可能性もあるから、冷静になれそうな赤城っちや飛龍っちと
かで囲った上で説明が必要になるよ」

榛名「はい!」

-大本営・聴取室-

隠密「提督大佐、また随分と大胆な事をしてくれましたね」

提督「大胆なこと?」

隠密「惚けますか。君は敵である深海棲艦と繋がっているのではありませんか?」

提督「何を言って…それは新鋭元提督でしょう!」

隠密「ええ、あの駄狐は無論の事、そして君もその駄狐の一派でしょう?」

提督「なっ…!」

隠密「離島棲姫・ピーコック…貴方はこの深海棲艦と組み、あの駄狐とも繋がった。そうでもなければこれまで
の彼奴等の奇襲は成立しないのですよ。何故なら!今までに狙われた奇襲ポイントはあの駄狐が海軍を離反して
間も無く、全ての巡回航路を変更してあったのですからね!」

提督「早計な…!」

隠密「早計?ほざくな、若輩の大佐風情が!」

提督「元帥…元帥殿はどうお考えなんですか!」

隠密「たかが一大佐風情の動向や処遇を元帥殿が一考されるとでも思ったのか?分を弁えなさい!俗物めっ!!」

提督「」(信じたくはないが元帥殿の差し金なのか?だとしても、身内の動向を探るためだけにあの人が盗聴や
盗撮と言った非道徳的な手法を執るものか?)

隠密「口を割らないというのなら、君のところの艦娘も同罪と見做し、鎮守府単位での処罰を検討してもいいの
ですよ?君の可愛い艦娘達が逐一解体処分される様はさぞ圧巻でしょうなぁ」

提督「あいつらは関係ないでしょう…!?」

隠密「おや、連帯責任と言う言葉を知りませんか?提督と言うリーダーに従属する下の者達にとっても、提督の
しでかした悪行に気付けなかったというのは深慮に欠けていたと見做すべきです。であれば、罰を課すのは必然
と言うもの。不貞を働く逆賊に等しい行い…これこそ万死に値する所業と言えましょう!」

提督「……っ!」

隠密「おやおや、自身のしでかした過ちを棚に上げて私を睨むのはお門違いと言うもの。素直に真実を吐いて、
大人しく刑罰に従うなら君が従えていた艦娘共は無罪放免、別の鎮守府への転属を約束すると言っているのです」

提督「犯してもない罪を認めろと、貴方は仰るんですか!?」

隠密「往生際の悪い…ならば、鎮守府単位での隠蔽があったという事ですね?これは海軍始まって以来の前代未
聞の大事件ですよ!?艦娘を謀り、洗脳した挙句に自身の悪事の片棒を担がせようとは…」

提督「勝手に話を進めるな!」

隠密「戯言は結構。さぁ、さっさと……」



バンッ!!


隠密「むっ!?」

智謀「隠密大将殿、非常に解せない手法を以て事を運ばれたようですね」

提督「」(隠密大将……不動提督と同じ階級。その男と同等の言動を有して対峙するこの女性も、それじゃ大将
クラスなのか。何故、大将クラスの人物がこうも大佐程度の俺の動向を注視するんだ)

智謀「身内監査と言えど、私は到底認める訳にはいきませんね」

隠密「だが証拠がある!確固たる証拠が!!これをどう説明つける!?」

智謀「貴方の非人道的な行いの前では、正当な証拠も不当なものに、白いものも黒く濁る、と私は言ってるんです」

隠密「私を愚弄するつもりか、智謀提督ッ!」

提督「…!」(この人が、不動提督の言っていた智謀大将提督なのか…!)

智謀「愚弄?その言葉、そのまま隠密提督、貴方へお返しします。常々思っていましたが、貴方は一重の境を容
易く超えすぎる。結果が全ての時代は当の昔に終焉を向かえ、今は順序と秩序、道徳の世が優先されるんですよ」

隠密「それを温いと言っているのです!」

智謀「温い?それを説いたのが現海軍トップの元帥殿です!現在の海軍が掲げる言葉を否定する事は元帥殿を否
定するのと同義。大将の権限を持って命じます。隠密提督、貴方を現時点を持って大将の階級を剥奪、海軍の定
めた法の規律を乱し、あまつさえそれを正当化した罪は極刑に値する!」

隠密「なぁ…!?」

智謀「隠密、私が気付いていないとでも思っていましたか?元帥殿への媚売りが些か度を越していたようですね」

隠密「き、貴様…図ったな!?」

智謀「図る?何処までも落魄れたものですね。身から出た錆に全身を蝕まれても尚、自ら描いた理想郷に思いを
馳せ、現実を直視できずに溺れる。哀れを通り越して滑稽です。続きは憲兵にでも話して下さい。私は、貴方の
言う理想郷になど微塵も興味がありませんので…」

智謀「さて…結果として貴方を出汁として使ってしまった事については謝罪致します。常々、彼の行いには憤り
を覚えていたものですから…元帥殿の名を盾に自分の都合の良い様に物事を形成する。それが白なのか黒なのか
など端から考えない。結果としてこうした悲劇が幾度も繰り返された」

提督「だとしても、俺に対する嫌疑が晴れたわけじゃないって言いたいんでしょう?」

智謀「…ふむ、見かけに寄らず貴方は奥深くまで読み取ってくれますね」

提督「言葉の端々に『結果として』とか『~については』って、さっきの隠密提督の所業についての謝罪だけだ
ったでしょう。俺に対しての謝罪は一つもない。それはつまり嫌疑が晴れていないってことだ」

智謀「ふふっ…素晴らしい読解力です。では本題に入りましょう。隠密が仕入れた資料、これについては非合法
でありながらも確証として見るには十分足る資料、決定打とも言えますね。何故、深海棲艦とあの距離で会話を
成立させ、あまつさえ見逃しているのでしょう?」

提督「奴にこちらを傷つける意思がなかったからだ」

智謀「それは何故です?」

提督「あいつもまた裏切られた側だからだ」

智謀「それは身内に?それとも……」

提督「新鋭元提督だ」

智謀「…結構。ここ最近の周辺海域における哨戒任務中の艦隊の襲撃について、貴方が知る情報は?」

提督「何もない。憶測で言えるのは、水面下で動いていた新鋭が海面に姿を現した」

智謀「何故、深海棲艦側の襲撃だと疑わないのです?」

提督「新鋭は離島棲姫・ピーコックやリコリスと呼ばれる上位の深海棲艦と手を組んで今まで海軍に仇名してき
たのは知ってるはずだ。だがピーコックからもたらされた情報はその新鋭が彼女達を裏切ったと言う事実。そし
てそれは直結してリコリスとも縁を切ったと言う証拠になる。そうなれば深海棲艦側の構図としては四面楚歌、
海軍と新鋭の板挟み状態。そんな状況下で海軍側に手を出すなんて愚策は新米提督でも思いつきゃしない。結論
として消去法に則れば新鋭側による襲撃にいきつく。深海棲艦側は恐らく逃げの一手のはずだ。最も、この内容
が真実ならば、という前提であるのも確かだけど…」

智謀「……うん、実に面白い。私の推察と些かも違いません。私に不足していた情報が貴方のもたらした情報と
リンクし、一つの形を生み出した。形になったという事は、貴方は真実のみを私に述べたという事。これに異物
たる虚偽が混ざっていれば、形は歪に、内容は破綻し説明には成り得なかったでしょう」

提督「そりゃどーも…」ムスッ…

智謀「そう拗ねないで下さい。私とこうして対等に会話を楽しめる人はそう多くないんですよ。個人的には是非
友達になって欲しいくらいです」

提督「あんたが友達少ないのはわかったよ…」

智謀「褒め言葉として受け取っておきます。さて、ある程度、事の顛末は解りました。提督大佐、貴方の拘束を
現時点を以て解除します。ただし、一つだけこちらが提案する条件を呑んで頂きたい」

提督「そりゃまあ『保釈金代わり』が必要でしょうね。身内の錆で生じた失態…無条件で出すには大本営的にも
スタンスが悪い。なら、建前はどうあれ少しばかり面倒ごとを引き受ける代わりに無罪放免ってことにすれば、
そちらとしては一つの刑罰を科したことにもなって非難は免れると…」

智謀「理解度が高くて助かりますね。恥を承知で願い出ています。出来れば、隠密の件は元帥殿の耳には触れさ
せたくない。何より、貴方は元帥殿と密接な関わりのある人なのでしょう?元帥殿の言動も、貴方へ火の粉が及
ぶのは極力避けているように見られました」

提督「さいですか。それで、俺に…と言うよりはうちの鎮守府に何をさせたいんですか」

智謀「率直に申し上げます。討伐戦です。現在、とある鎮守府が新鋭の魔の手に陥落し、彼女の根城と化してい
ます。その前線海域には貴方のところの艦娘が発見したとされる戦艦レ級が三匹、首を揃えて防衛線を張ってい
るとの情報も届いているのです。強行偵察を敢行しようにも、レ級の存在が危惧され思うような戦果が得られな
いという状況なのです」

提督「それを、殲滅しろと?」

智謀「その通りです」

提督「大将殿達の艦隊があるでしょう」

智謀「おいそれと出撃させる訳には行かない艦隊ばかりです。だから恥を承知でと前置きをしたのです。無論、
貴方からしてみれば恥と言う言葉すらも上辺のプライドと思うかもしれませんが…」

提督「解ってるなら話が早いですね?」

智謀「取引がイーブンじゃないのは承知しています。その上で、頼んでいるんです」

提督「取引っていうなら、じゃあこっちも条件出して良いってことですよね?」

智謀「」(この男…本当に大佐程度で納まる器か?ネゴシエイトが通用する相手には到底思えない。それとも、
ただのやけくそだとでもいうの?先の会話のやり取りといい、掴み所が薄い…)

提督「どーなんすか、智謀大将殿」

智謀「……私の権限が及ぶ範囲で、最大限の譲歩をします」

提督「なら話は早い。旧日本海軍の艦に関する資料、その閲覧を許可願いたい」

智謀「なんですって……?」

提督「時間は限られますよ?うちの艦娘達は修羅場なんて幾らでも潜ってる。こうみえて俺って結構好かれてる
らしいんですよ。彼女たちから。だから……俺が戻るの遅れれば遅れるほど、隠密さんの言ってた虚偽が真実に
色味変えていきますよ」

智謀「艦娘が反乱を起こすとでも言うのですか」

提督「護るものに応じて、うちの奴らはあなたたちにとって天使にも悪魔にも変わるかもしれないっすね」

短いですが本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-執務室-

提督『……てなワケでこの一件は収束した。早まったことしてないだろうな?』

榛名「は、はい!大丈夫です!………多分」ボソッ

提督『…おい、今語尾にコソッと多分って付け加えただろ!?』

榛名「……空耳では?」

提督『なんで間があるんだよ!』

榛名「榛名は大丈夫です!」

提督『お前の安否確認してねぇから!』

榛名「あーー……とく~、き……ます、か~?てー……」ポチッ


プツン……ツー、ツー、ツー


榛名「よ、よし…」

北上「うちらってあれかな、まさかの?」

夕張「そのまさか?」

榛名「あ、はい。世間一般でいう所の勇み足、という奴かもしれません」

木曾「あっはっは!やっちまったなぁ!?」バンバン

赤城「わ、笑い事じゃありませんよ、木曾さん?」

木曾「いやだってよ、あの北上がすげぇ神妙な面持ちでなんか語りだすからよ。やんごとなき事態かこりゃあ?
って思うわけじゃん?蓋を開けたらお前、勇み足って!あっはっはっは!」

北上「マジむかつく…」

夕張「でも、盗聴器は取り敢えず全て取り外しは出来ましたし、艦娘全体に通達してたわけでもないし、今この
場限りで言えば、問題解決でいいかなって思うけど…結局、専用のチャンネルもまだ作成段階で止まってますか
ら、余計な心配と言うか情報と言うか、先輩鎮守府等に先走って伝えずに済みましたし…」

榛名「はぁ…提督が帰ってきたら小言が待ってる、って思うと少し気が重いです」

-大本営・軍議室-

提督「……あんのやろ」

智謀「…随分と、君の部下は愉快な群れを為しているようだね」

提督「はぁ、頭痛が痛いとかもうそういうレベルだ。褒め言葉として受け取っておきます」

智謀「故に君の先の発言が非常に興味深くてね。彼女達が天使にも悪魔にもなる、という一言が私としては畏怖
を覚えたと同時に、今の会話の一端で済し崩しに形が定まらなくなった」

提督「オンオフがあるってことですよ」

智謀「ふむ…まぁいい。しかし、通信先の艦娘の動揺振りを見ると、どうやら本気で君を奪還…この大本営自体
を敵に回す算段だったようだね」

提督「ある意味このタイミングは行幸でしたよ……最も、要らない荷物背負わされましたがね」

智謀「ふふ、その憎まれ口といい度胸といい、大佐にしておくのが勿体無いほどなんだがね、君と言う存在は…」

提督「階級が上がれば栄転異動でしょ。俺はあいつらと同じラインからは動きませんよ」

智謀「だろうな。絆と言うものが実在するという、良い見本を目の当たりにさせてもらったよ」

提督「それで、具体的にはどうしたらいいんですか」

智謀「うむ、頼んでおいて薮から棒なのだけど、出現海域が特定できてないのが現状でね。しかし、かといって
大所帯で目星を適当につけて待伏せて見た所で、斥候を放たれこちらの情報だけを与える結果にしかならない」

提督「新鋭は、あの女は凄まじく頭の切れる奴だと思います。考えていることも解らず、何を目的にしているの
かも解らない以上、迂闊に懐へ飛び込むのはまさに自殺行為です」

智謀「困ったね。見事に後手に回った…戦術においてここまで頭を悩ませたのは何時以来か…法則も無し、まさ
に無秩序型の典型なんだが、一般的な無秩序型とは欠片もリンクしない。むしろ秩序型に分別される」

提督「なんですか、その無秩序型とか秩序型ってのは…」

智謀「君はプロファイリングと言うものを知っているかい?基本的な構造は、『こういう犯罪の犯人はこういう
人間が多い』という統計学に基いて犯罪者の傾向やパターンを推論する事をプロファイリングと言う」

提督「大本営じゃそんなもんまで取り入れてるのか…しかし、意思無き深海棲艦にそれは適用しようがない」

智謀「そう、今まではね。しかし、ここ最近の深海棲艦には統率と言うものが取れ始めている上に、我々と意思
疎通をはかれる存在まで出現している。リコリスがまさに代表的だけど、君の話じゃ他にも意思疎通がはかれる
深海棲艦がいるようだし、そうなると群れは組織的になり、軍となる。大将が現れ、参謀が就き、部隊長、兵士
とピラミッド式に最初は形を成していくだろう」

提督「ですが、現状目の前の敵は暫定で新鋭です」

智謀「そう、故にこのプロファイリングで新鋭の傾向やパターンと言うのを割り出そうとしてたんだがね」

提督「予測は立てて見ても全て空振りと…」

智謀「そういう事だ。しかも、襲われた鎮守府の事後報告にはこんな内容も含まれていてね」スッ…

提督「敵の中には資料として見聞した……馬鹿な、泊地棲姫!?あいつは……」

智謀「そう、挙がってきている報告が真実なら、元君のところ所属、現在は鋼鉄の艦隊の異名を取る先輩提督の
秘書艦・長門。彼女達によって撃滅された深海棲艦だ」

提督「ありえない。一体、どんなトリックが…」

智謀「夢幻の幻影ではないのは確かなようだ。実際に攻撃は放たれ、こちらの攻撃も命中していたという」

提督「一体、新鋭は何をしようとしてるんだ…」

智謀「それが解れば苦労はしないよ。だが、私の推論の一つを披露するなら、大本営から持ち出された内容と、
新鋭が以前に唱えていた持論が思いのほか結びつく事…そしてそれは推し進めてはならない、禁断の方法である
という事だ」

提督「禁断の方法?」

智謀「奴は、新鋭は艦娘の力を過大評価していたのさ。究極の戦闘兵器という呼称を以てな」

提督「究極の、戦闘兵器だと…」

智謀「艦娘はアンドロイドのような存在でないのは周知の事実だ。何処にでも居る、普通の女の子達なんだよ」

提督「……」

智謀「だが妖精達が造り上げる艤装の数々は屈強な男共が数人掛りでも扱えないような代物ばかりだ。それを、
彼女達艦娘は容易く扱えた。私が初めて目の当たりにしたのは駆逐艦の少女でね。名を確か吹雪と言った」

提督「駆逐型一番艦、駆逐艦の吹雪」

智謀「そうだ。君に渡したその資料にあるものと同じ名だよ。最も、資料の方は旧日本海軍の軍艦の名だがね。
後に艦娘と呼ばれる彼女達には普通の人とは違った別の力を宿しているみたいでね。それが起因となって艤装を
容易く操り、使う事が可能であると結論付けられた」

提督「その結論がなされた理由の一端が、この資料ですね?」

智謀「さて、それは君の持論に委ねる事にしようか。話が逸れたね。そういった未知の力を宿す艦娘を量産しな
い手はないと説いたのが新鋭だ。彼女の説いた説は合理的且つ非人道的な内容だった。つまり────」

-???-

新鋭「あはははは!これが海軍の少将、中将が率いている精鋭なの?だとしたら片腹痛い所の話じゃないわね」

少将「まさか、わざと招き入れたというのか…」

中将「罠だったと…!」

新鋭「はぁ~あ……骨がない、つまらない。貴方達が連れてきた連合艦隊、大した事無さ過ぎない?あれじゃい
てもいなくても同義じゃない。艦娘の使い方、間違えてたんじゃないの?」

少将「貴様、言わせておけば…!」

新鋭「ちゃんと実戦経験を積ませて戦わせて…きっちりと錬度を上げて上げなくちゃ、夜伽の錬度しか上がって
ないんじゃ意味ないわよ?」

中将「下郎がッ!言葉も選べん畜生へ成り下がったか、新鋭!!」

新鋭「艦娘も深海棲艦も、その全てを知っている私に偉そうな口を利かないでよ」

中将「全てを知っているだと?」

新鋭「相反する者達が手を結ぶとどうなるか、自分達の艦隊で味わったでしょう。水底へ沈んでいった可愛い可
愛い艦娘達はどうなってしまうのかしらね?」

少将「なに…?」

新鋭「まぁ、貴方達はここで死ぬんだから、関係ないか?」

中将「貴様ぁ……ッ!!」

短いですが、本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-鎮守府前-

提督「はぁ、疲れた…」

榛名「」キョロキョロ ソワソワ…

提督「ん、あれ榛名か?何やってんだ…」

榛名「あっ!」

提督「よう」

榛名「お、お帰りなさい!」

提督「よくも途中で電話を切ってくれたな?」

榛名「あぁ…あははは、何と言いますか。電波が、悪いぞ?的な?なんちゃって…?」

提督「ったく、次からはもう少し落ち着いて対処しろ」デコピン


ペチッ


榛名「はうっ」

提督「別にどやしたりなんてしないって。それに、盗聴の件についてはスピード解決だ」

榛名「うぅ、痛い…あの、それはどういう事ですか?」

提督「犯人は大本営の大将の一人だった。ピーコックと俺たちとのやり取りも全部筒抜けだ。そのお陰で要らん
手土産まで持参する羽目になったが、これはこれでありだと思ってる」

榛名「どういう事ですか?」

提督「掻い摘んで話すが、まず盗聴の件に関しての謝罪は貰った。着せられた濡れ衣も晴れたが、代わりに面倒
ごとを持ち帰ってきた感じだ。取り敢えず全員を会議室に集めろ」

榛名「わ、解りました!」

-会議室-

提督「────出揃っている情報は以上だ。裏に控えているのは間違いなく新鋭だろう」

イムヤ「で、その智謀大将からの依頼で新鋭元司令官が占拠したって言われてる鎮守府へ進軍するって事?」

提督「そうだ。結論として、何処に出現するかも解らん以上、それを追いかけるのは得策ではない。新鋭がどれ
ほどの数のレ級を揃えているかも未知数。ならば、まずは眼前に捉えているレ級三匹が張っている防衛線を破壊
し、その道筋を作る。そうすれば相手も空いた穴を塞ぐために戦力を徐々に投入せざるを得ないはずだ」

陸奥「戦艦レ級、か…」

大鳳「……」

提督「お前たちは本当に強くなったと思う。だが、奴等もまた進化・成長しているというのを考えると、謝らな
ければならんのかもしれない。それでも、俺はお前たちを信じる」

木曾「……バーカ。今更そんな事言うなっつーの」

神通「お見せします。提督から学んだ全てを。それが正しいという事実を」

赤城「レ級は危険な相手です。駆逐艦の子達や潜水艦の子達は、今回はお留守番してもらう方が良いかと思います」

暁「そんな…!」

白露「私達だってやれるってば!」

金剛「何言ってるネ。暁達が居なくなったらこの鎮守府どうするヨ」

Bep「金剛…」

川内「それにさ、何も暁達だけいけないって訳じゃない。選抜されなきゃ私達だってお留守番だよ」

北上「そーそー。んでも、戦力外でお留守番とかじゃないっしょ。言わば残された側は予備戦力。いざって時の
切り札みたいなもんだよね~」

春雨「切り札…」

利根「抜かるな。驕るな。気を引き締めよ。提督が率いるこの鎮守府に、不足な者など誰一人として居らぬ」

阿武隈「それで、選抜はもう決まってるんでしょ?」

提督「レ級が三匹居るとして、一艦隊六名、一匹に対して必ず二名で応戦する形を取る。編隊は以下の通りだ」


陸奥
霧島
赤城
大鳳
羽黒
神通

提督「だが新鋭のことだ。必ず罠を張り巡らせてある。どこかに必ずな…だから、別働隊を編成する。こちらは
周辺の哨戒を密に行い、陸奥たちを間接的にサポートするのが役割だ。敵が居ればその殲滅を行い、背後を狙わ
せないようにすること。編隊は以下の通りだ」

瑞鳳
比叡
利根
阿武隈

白露

提督「残りの皆は鎮守府で待機。個別隊や陽動艦隊がこちらを強襲してこないとも限らない。同じく警戒は密に
行い、決して油断はするな。それと、陸奥、霧島、大鳳、羽黒、神通、きてくれ」

陸奥「ん?」

霧島「なんでしょうか、司令」

大鳳「あ、はい!」

羽黒「はい!」

神通「なんでしょうか」

提督「他の皆はそれぞれ準備に取り掛かってくれ」

艦娘「「「了解!」」」

提督「さて…」

陸奥「どうしたのよ」

提督「幾つかお前たちには伝えておくことがある」

霧島「赤城さんは、宜しかったんですか?」

提督「ん?あぁ、赤城か。あいつには既に話をしてあるからな」

羽黒「え?」

大鳳「話と言うのは?」

神通「何なのでしょう」

提督「以前にお前たちと面談をしたな。質問の内容は二種類、覚えのない記憶があるかどうか、うなされる様な
悪夢を見たことはあるかどうか、だ」

霧島「それは…!提督、まさか何か答えが…」

陸奥「え、ちょっと何よ、霧島は何か解ってるの?」

提督「まぁ待て。事の発端から話をしてたんじゃ今日一日を潰す。だが知っておいて欲しい。特に、近代化改修
を受けた霧島と神通以外の三人にはな」

神通「あの、それでは何故、私も…」

提督「お前は、覚えのない記憶を持っているな?コロンバンガラ島の話だ」

神通「ぁ……」

提督「この話はまだ実証の段階には入っていないが、お前たちには仕入れておいて欲しい情報の一部だ────」

陸奥「…つまり、榛名のあの驚異的な身体能力の謎が、今提督が言ったものに起因してるかもしれないって事?」

提督「そうだ。そして、恐らく榛名に起こっている事象はお前たちにも起こりえる。条件が何かは解らん。だが
榛名が言うには、あいつは誰かを護ろうと、誰かの遺志や想いを汲もうと強く念じると、体の内側から力が漲っ
てくると表現していた。以前に金剛と榛名、陸奥と衣笠、川内、大鳳で模擬演習を行っていたな」

陸奥「え?あぁ、うん。それが何よ」

提督「あの時、金剛もまた似た力をいくらか発揮していたのに気付いたか?」

神通「……そう言えば────」


金剛「例え演習でも、油断はしないネ!隙も、作らない!私を止める術は、ここには無いネ!」ザンッ

衣笠「は、速い…!」

川内「臆すな、衣笠!いくよ!」ザッ

衣笠「ダメ、川内ちゃん!」

川内「なっ…!?」

金剛「川内、詰が甘いネ」サッ


ビュッ ドゴォッ


川内「がはっ…!」

金剛「後ろ手に隠してるのバレバレネ。それを投げる間合い、作らせないヨ」

川内「」(知覚とかそういうレベルなの、これ。反射神経が尋常じゃない…!)サッ

金剛「No good. それじゃダメネ」

神通「あの時の金剛さんは、まるで姉さんの動く先が解っているかのように、全ての行動が先手先手で、結局あ
れ以降は衣笠さんも姉さんも手も足も出ずに制圧されたんです」

提督「金剛には、俺が最初に言った明確な記憶もなければ夢も見ていない。が、何かとリンクしたことであれ程
の力を発揮して見せた。それは言い換えれば今のお前たちでも成せるということだ」

霧島「それって、つまり…」

羽黒「私達にはまだ、成長が見込めるという事なんですか?」

提督「成長、と言うよりもむしろ覚醒、お前たちが個々に内に秘めている力を解放する、と言うほうが正しいな」

大鳳「内に、秘めた力…」

提督「今のところ、この力の片鱗を見せているのは俺が知る限りで三人。榛名、長門、金剛だ」

大鳳「いえ、もう一人、居ると思います」

提督「何?」

大鳳「感じ取った程度ですけど、恐らく赤城さんも…」

提督「赤城が…?」

大鳳「赤城さんの錬度は凄まじく高いです。最初はだからだろうと、でも…幾ら錬度が上がろうと、空母組には
抗えないものが存在します。それは損傷の度合いによっては艦載機の発着艦が出来なくなる、と言う点です」

提督「ああ、それは…そうだな」

大鳳「ですが、以前の演習で赤城さんは────」

大鳳「ここまでです、赤城さん…!」

赤城「はい、少し前までなら…ですが」スッ…

大鳳「えっ…?」(腕を真上に上げて、何を…)

赤城「…艦載機の皆さん、敵機直上より、急降下っ!!」サッ

大鳳「なっ、そんな、まさか…!」バッ


ブゥゥゥゥゥゥゥン……


ボゴオオォォォォン


大鳳「きゃあっ」 大破

赤城「油断も慢心もしません。この身が朽ち果てない限り、私は血の一滴すらも戦力に変えて見せます」


陸奥「流石と言うか、驚嘆するわね」

大鳳「驚嘆なんてもんじゃありません。愕然としました。常識を覆されたと表現するほかありません」

羽黒「私も、以前に川内さんと演習戦を行ったときに、何か掴めそうな気配はあったんですが…それが何なのか
がどうにも上手く表現できなくて…」

神通「羽黒さん…」

霧島「ですが、皆何かしらの切っ掛けで司令の言われる覚醒を果たせる可能性があるという事ですよね」

提督「あぁ、確証はないがな。しかもそれぞれに引き金となるものが違う。が、霧島…恐らくだが、お前たち金
剛型は概ね、皆同じ引き金を持っていると思われる」

霧島「え?」

提督「榛名も金剛も、どちらも姉妹のため、仲間のためと奮戦するときこそ本領を発揮していた。根っこの部分
じゃおそらくこれはお前たち艦娘全員に言えることかもしれない。ただ切っ掛けが違うだけでな。まっ、伝えた
かったのは以上だ。相手は戦艦レ級、くれぐれも油断は無論だが無茶もしないでくれ」

陸奥「レ級には因縁があるもの。雪辱、晴らさせてもらうわ」

羽黒「同じ過ちは、もうしません」

大鳳「必ず、レ級は倒して見せます!」

霧島「お任せ下さい、司令!」

神通「この任務、確実に成し遂げて見せます」

本日はここまで

皆様こんばんは
渾作戦少し疲れたので執筆
自分のSSのダイソン、かっこよく表現した(つもり)だけど、ゲームのダイソンはやっぱりただの壁でしかないですね




~交戦、敵機動部隊~



-敵領域近海-

陸奥「ここまでは敵機確認無しね」

赤城「哨戒隊すら存在しないと言うのは、それほどまでに戦艦レ級三匹の信頼が厚いという事でしょうか」

大鳳「だとしても、その一箇所だけが通り道じゃありませんし、腑に落ちませんね」

霧島「どちらにしても、新鋭鎮守府へ向かう最中で必ずレ級は出現するという事です」


──ワカッテルナラ、ハナシガハヤイ──


神通「…っ!」

羽黒「二百海里ほど前方です!」

陸奥「この距離でもう射程内って訳か……現れたわね、戦艦レ級…!」

レ級1「ボクラノアソビアイテ、ナカナカコナクテネ」

レ級2「ダイカンゲイダヨ」

レ級3「クウカクワレルカ、ソレダケサ」

赤城「……皆さん、戦術はさっきの通りです」

大鳳「了解です!」

陸奥「ええ、任せて」

神通「はい…!」

羽黒「了解です…!」

霧島「問題なしです!」

赤城「大鳳さん、いきます!」サッ

大鳳「はい!」サッ

レ級1「アイサツモナシナンテ、ブレイダナァ…」ニヤァ…

レ級2「シニイソギタイダケデショ」

レ級3「ネンイリニツブシテ、クッテヤル…」

赤城「無礼がどちらか、教えて差し上げます。その前に礼を尽くすほどの相手なら、ですけどね」

レ級1「オマエ、ムカツクナァ…オマエハ、ボクガクウ…」

赤城「すぅー……はぁー……」



静かな呼吸、この土壇場においても赤城から動揺は微塵も伝わってこない。

それほどまでに集中するのには一つの想いが彼女を突き動かしているからだ。

直接的ではないにしろ、加賀を殺めたであろう仇敵を眼前に捉え、これまでにない集中力を赤城は見せる。


赤城「いきますよ、加賀さん。今度こそ、貴女の無念を私が晴らします!第一次攻撃隊、発艦してください!」サッ


続くように大鳳も腰を据えて発艦の構えを取る。

幾度となく死線を越えて蘇ってきた今の大鳳に恐れるものは微塵もなかった。

あるとすれば、それはここで再び朽ち果てること。

しかし彼女には確信に近い自信が備わっていた。

やれるだけの事を、今自分にできる全てを、注ぎ込めるだけ力の限り全てを賭して挑む。


大鳳「あの時の屈辱は忘れない。二度と、この大鳳は揺るがない!第一次攻撃隊、全機発艦!」サッ


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


レ級1「アハッ!イイヨ、コウクウセン!ウケテタツッ!!」ヒュン ヒュン

レ級2「ボサットシテルトサァ、ソノキャシャナカラダニカザアナアケルヨ?」バシュン

レ級3「クヒヒヒ、ボクハキミニキメタ、キミヲマズハクオウ…」バシュン


ボゴオオォォォォン


陸奥「敵の雷撃は夾叉!全員散開!標的を定めて一気に行くわよ!」

霧島「赤城さん!」

赤城「了解です!」

羽黒「大鳳さんの背中は私がお守りします!」

大鳳「期待してるわ!」

神通「いざ、参ります。陸奥さん、標的は…」

陸奥「ええ、あいつね。行くわよ!」

神通「はい!」

-赤城・霧島 vs レ級1-

レ級1「ハァ…ブツリョウサクセンハダイセイコウミタイダケド、イタイナァ、モウ…」 被害軽微

霧島「あらそう?なら、無駄口叩けないように徹底的にやらせてもらうわ!」

レ級1「アハハハハッ!ボクヲタオスッテコト?ムリダヨ、ソレハ…ナゼナラ、ボクガアットウテキニ、ツヨイ
カラサッ!!」バッ


霧島は以前、提督から言われた内容を自分なりに思い返してみることにした。

悪夢については一つも思い当たることがなかった。

至って正常、ただし記憶に関しては一つだけ思い当たるものがあった。

それは何処かの海上で榛名と二人、手を繋いで水平線を眺めている映像。

元からあった記憶、と自分の中では認識しており、それが『覚えのない記憶』という結論に至るまでに霧島自身

も考えさせられたが、何処での記憶なのかがハッキリしない以上、それは提督の言う『覚えのない記憶』として

認識するほかなかった。

そして出撃前に提督からもたらされた情報で霧島にも一つの望みとも言える光が差した。

自身もまだ強くなれると。姉妹と交わした約束を果たす為にも、越えられる壁は全て越える。


霧島「榛名、私は約束、覚えてるわよ。だから私、頑張るわ!」バッ

レ級1「オマエハ、アトダ。マズハ、ソッチノクウボノオンナカラッ!」サッ

赤城「…っ!」スッ

霧島「冗談、それを私が許すわけないわよね!?」ブンッ

レ級1「ナッ!?」


ドゴォッ


霧島の脇をすり抜けて赤城へ切迫しようとした直後、それに併走するように霧島が追いすがってレ級1を全力で

殴り飛ばす。


レ級1「アガッ…!」ザザザザザッ

霧島「あら、ごめんなさいね?顔は殴らない方が良かったかしら?ともかく、戦況分析が不十分みたいね」

レ級1「ウグッ…オマエェ…ッ!」

赤城「一航戦の誇り、今こそお見せします!」サッ



静かに弓を構え、赤城はそれを真っ直ぐレ級1へ差し向ける。


赤城「私達は、この胸に刻み込んだ誇りがある限り決して折れはしません。貴方に、私達は倒せない」

レ級1「ボクニ、カテルト、ホンキデオモッテル?アハハハハハッ!!ゼツボウヲ、ミセテアゲルヨ…」ビュッ

赤城「…っ!」サッ

レ級1「ムダダァッ!!」ビュオッ

霧島「赤城さん!」


ボゴォッ


レ級1の艤装が飛距離を伸ばし、鞭のようにしなって真横に赤城の胴を薙ぎ払う。


赤城「ぐっ…!」ズザザザザッ…

レ級1「リョウリニスパイスハツキモノダカラネェ…」

赤城「げほっ…」 小破

レ級1「カミツイテクルノハ、チョットウザイナァ…イキガルノハイイヨ。スキナダケホエルノモイイ……クヒ、
クヒヒヒ…デモ、シネ!」ビュッ


サッ


再び放たれたレ級1の攻撃を、しかし赤城は今度こそかわす。


レ級1「ナニ…?」

赤城「…頭にきました」サッ ビュッ


再度構え直した弓と番え直した矢を目にも留まらぬ速さで放ち、赤城は大きく後方へと距離を取る。

それに応えるように霧島が間合いを詰めて赤城と入れ代わるようにレ級1の前に立ち塞がった。


サッ


放たれた矢をレ級1は上体を反らすだけで往なし、口角を吊り上げてニタリと笑う。

しかし同じように入れ代わった霧島もまた、不敵な笑みを浮かべた。



レ級1「ナニガ、オカシイ…」

霧島「備えあれば、憂いなし、って言葉を知ってるかしら?」

レ級1「シルカ、ソンナモノ…!」バッ

霧島「なら、後学に覚えておきなさい!」バッ


同時に飛び出し、至近距離の殴打戦に入るが間も無く霧島が大きく吹き飛ばされる。


バチィィッ


霧島「ぐっ…!」 小破

レ級1「モロイヨ。モロスギルッ!ソレデボクトヤリアオウッテ?サイショノイッテイガイ、ゼンゼンコウゲキ
アタッテナイジャナイ。アソビニモナッテナイヨ」

赤城「慢心は身を滅ぼしますよ」

レ級1「ハァ?」

赤城「艦載機のみなさん、敵機直上より急降下!」バッ

霧島「さぁ、砲撃戦、開始するわよ~!」ジャキッ

レ級1「ナッ…!」バッ


空を仰ぎ、自身の上空に無数の艦載機が急降下してくる様を目の当たりにしてレ級1の表情が強張る。

そして正面に向き直って霧島の砲塔、その悉くが自身へ向けられている事にその表情は更に引き攣った。


レ級1「ジョウダンデショ…」

霧島「いいえ、本気よ。主砲!敵を追尾して!撃てっ!」ドォン ドォン

赤城「艦載機のみなさん、撃ち漏らさないように!」

レ級1「ウオオオオオオオオオオオオアアアアァァァァァ……ッ!!」


ボゴオオオォォォォォン


レ級1の咆哮と共に水面が爆煙と水飛沫で視界を塞ぎ、その姿を一瞬にして掻き消した。

本日はここまで
渾作戦に戻ります(´・ω・`)

皆様こんばんは
本日もタラタラ書いていきます

-大鳳・羽黒 vs レ級2-

レ級2「アレアレ…ボクノライゲキ、アタッテナカッタ?」

大鳳「ええ、ノロマ過ぎてね」

レ級2「イラツクコトヲ、スズシイカオデイッテクレルネェ…オマエ、ゲンケイナクナルマデグチャグチャニシ
テサァ、モトノカタチガワカラナクナルマデ、クイチラカシテヤルヨ…!」

大鳳「私の装甲を噛み砕くですって?笑えない冗談ね」

レ級2「イッテロ…ショセン、ホショクサレルガワノザレゴトダッ!」ビュッ


ドンッッ


レ級2の跳躍に合わせ、大鳳は更に後方へと身を泳がせる。

しかし、レ級2は不敵な笑みを浮かべながら一直線に大鳳へ向かって直進していくが、途中で強い衝撃を受けて

後方へと押し戻される。



レ級2「ヌグッ…!」ザザザッ

羽黒「その汚らわしい手を引いて下さい」

レ級2「……オイオイ、ジュウジュンフゼイガ、ボクニナニヲシタ…?」

羽黒「この拳で殴り飛ばしました」グッ

レ級2「ソンナニ、サキニクワレタイノカッ!!」

羽黒「お好きにどうぞ」

大鳳「言うわね、羽黒…!」

レ級2「ジョウトウダ、カンムスフゼイガァッ!!」ザッ

羽黒「」(追いつける。私ならやれる。今まで培ってきた全てを、信じたもの全てを、余さず出し切る!)


レ級2の飛び出しに合わせ、羽黒は静かに構える。


羽黒「」(距離、速度、左の艤装…横から、これは伸びる…!)サッ


ビュオッ


姿勢を低く、身を屈めた直後に羽黒の頭上を物凄い勢いで何かが真横に払われる。


レ級2「ナンダト…!?」


ザンッ


驚愕の表情を浮かべたのはレ級2。予期していなかった、と言うよりも想定すらしていなかった羽黒の素早い動き。

羽黒自身は屈めた身体に力を込めて、そのまま前方への飛躍へと変えて突進する。



レ級2「コザカシイッ!」ビュッ


ガシィッ


空振りした艤装を振り子の要領で再度真横に振り抜くレ級2だが、羽黒はそれを全体重を乗せて艤装を盾に防ぐ。

それでも勢いは殺しきれず、そのまま飛ばされ羽黒の身体は俄かに宙を舞って真横へと弾き出された。


羽黒「くっ…!」ザザザッ

レ級2「ハハハハッ!ウケキレルハズナイダロ!バカガ……」

大鳳「馬鹿は貴方よ」バッ

レ級2「ッ!?」

大鳳「注意力散漫過ぎ…虚しか突けないようじゃ、戦場では生き残れないわよ。さぁ、やるわ!」ヒュン ヒュン

レ級2「ダレガコウクウセンハデキナイッテ、イッタヨッ!!」ヒュン ヒュン

大鳳「…誰が私には勝てるって言ったのかしら?見縊らないでもらいたいわ。攻撃隊、発艦始め!」サッ


ボゴオオォォォン


レ級2「ナッ…!」


大鳳とレ級2の艦載機は真正面でぶつかり合い、その悉くを大鳳の艦載機が制圧した。


大鳳「いい風ね。この風に乗って、皆!目標を掃射よ!」

レ級2「ウットウシイナァ!」ジャキッ


ドン ドン ドン ドン


ボボボボボンッ


掲げられた艤装から無数の砲弾が空を舞い、大鳳の艦載機を片っ端から迎撃する。

だがそこに出来上がった隙を羽黒が見過ごすわけがなかった。


ザッ


気配を感じ取りレ級2も視線を再び正面へと戻すが、それと同時に羽黒の気合いの篭った掛け声と砲撃音が轟く。


羽黒「全砲門…一斉射っ!」ドォン ドォン

レ級2「……ッ!」


ボゴオオオオォォォォン


大鳳「これが大鳳の、私たちの力よ!」

羽黒「まだまだ、これからです!」

-陸奥・神通 vs レ級3-

レ級3「ドコカラガイイ?」

陸奥「何ですって?」

レ級3「ドコカラクワレタイカッテ、キイテルノサ」

神通「……」ヒュッ ヒュンッ……チンッ

レ級3「ナニ、ソノギソウ…」

神通「貴方を討滅する刀です」スッ…チャキッ

レ級3「ナンダ、ソノカマエ…」

神通「…………」

レ級3「シカト?コタエロヨッ!!」ジャキッ


ドォン ドォン


キンッ……


ボゴオオオォォォ……


最初の問答にのみ答え、神通は静かに刀を鞘に納め、腰を落とし右足を前に、左足を後ろに添えて身体の重心を

前のめりに沈めるとピタリと止まる。

直後、レ級3の砲撃が真っ直ぐに神通へと飛来するが静かに乾いた音を響かせたその直後、空間を切り裂くかの

ように神通を先頭に縦に陣を敷く二人の両脇を火柱と爆煙が奔り抜ける。


レ級3「ナ、ニ…?」

陸奥「もはや神業ね。お見事っていうか、驚きの方が大きいかも…」クスッ

レ級3「オマエ、ソノギソウ、イツヌイタ…?」

神通「見えてないのだとしたら、貴方に勝機はありませんよ」

レ級3「イチイチ、ウットウシイヤツダナ、オマエッ!!」ジャキッ

神通「それは……」


イラつきながら艤装の砲塔を神通へ差し向け恫喝の如く吼えるレ級3を前に、神通は再び武刀剣を鞘へ納めて最

初と同じ構えを取りつつ小さく微笑む。


神通「……褒め言葉ですね────」

神通は因果もあるのか、川内と一緒に今までに二つの鎮守府を渡り歩いてきている。

最初の鎮守府では第一艦隊は愚か、遠征が主任務の第二艦隊にすら抜擢されなかった。

姉の川内はその快活さと要領の良さも合わせて、あっと言う間に第一艦隊の主力に数えられるまでになっていた。

彼女が始めに抱いた感情は劣等感。

姉の川内と逐一比べられる事によって、必ず下に評価される抗いようのない屈辱感。

実力にそぐわないのならば別に転属願いを出しても構わん。こちらとしてはお荷物が消えて一石二鳥だ。

そう言い放った提督の言葉に辛うじて保っていた自尊心すらも粉々に打ち砕かれる思いだった。

そんな中、じゃあ実力にそぐわないから私達は出て行くよ。そう発したのが川内だった。

神通は一度、川内に詰問したことがある。

後にも先にも、神通があれほど強い口調で自分の意見を姉の川内へぶつけた事があるのはその時の一度きりだ。

神通「どうして、姉さんだって解ってるのに!」

川内「何がさ?」

神通「私が居たって、意味なんてないでしょう!?」

川内「なんでそう思うのさ」

神通「戦力にもならない、優柔不断で、自分の意見もハッキリ持てない、いつも姉さんの陰に隠れてるような、
そんな自他共に認めるようなお荷物の私が、何の存在価値があるの!?」

川内「神通、あんたは私の妹。川内型二番艦の神通だよ?私には自慢の妹が居てさ、優しくて、少しおっとりと
しちゃいるけど一生懸命で、変なところで負けず嫌いで、ふふっ…そんな自慢の妹さ。存在価値、大有りだよね」

神通「姉さん…」

川内「そんな自慢の妹をさ、トロイとか鬱陶しい奴とか、んな事言ってくれるとこなんてこっちから願い下げだ
ってのよ。丁度引き取り手あるっていうし、そっちの鎮守府に乗り換えてやろうって思ってたのよ」

神通「けど、それは…」

川内「ゆっくりでいいのさ。自分のペースでゆっくりと、着実に成長すればいい。良く言うじゃん?大器晩成型
って奴なんだよ、神通はさ」


その後、今の鎮守府へと行き着き、提督と出会い。そこでまた神通にとって転機が訪れた。

今までどこの鎮守府でもアドバイスなどされた事はなかった。

むしろその悶々とした態度に業を煮やし、勝手にしろと突き放されるのが関の山だった。

そんな彼女に、提督はしっかりと付き合った。

提督「今日の演習を見てても思ったんだが、神通は演習じゃ思い切りの良さはあると思うんだよ」

神通「…え?」

提督「ほら、お前この間なんか言いかけてただろ。途中で勝手に切り上げちゃったけど、深海棲艦と戦うとなる
といつも手元がどうとかってやつだよ」

神通「そ、それは…」

提督「俺ね、思ったんだけど、やっぱ実戦が少ないからだと思うんだよね。無論危険も付き纏うだろうが、そう
していかなきゃ伸び代ってのはついてこないと思うんだよ」

神通「あ、あの…でも、私は…」

提督「あー、はいはい。拒否権無しね」

神通「…ぇ、あの、はい?」

提督「私は戦力にはならないから~、とかそう言うの無しね。ゆっくり結構、失敗上等、塵も積もれば山になる
かもしれないし、道が出来て進めるかもしれないだろ。やる前から可能性を捨てるような真似は俺が許さん」

神通「…………」

提督「全てやってみて、何度も試して試しようがなくなるまでやって見て、それでダメなら俺も改めて考慮しよ
うと思うが、そこに至る前で諦めることは絶対に許さん。だから神通、自分が信じたものを最後まで信じてみろ」

神通「最後まで…」

提督「そうだ。最後まで信念を貫いて見せろ。初志貫徹、継続は力也、だ────」

神通「為せば成る、です。その言葉があればこそ、今の私です。だから、それは私にとっては褒め言葉です」

レ級3「ゴチャゴチャト、ウルサインダヨッ!!」ドォン ドォン

神通「陸奥さん!」サッ

陸奥「りょーかいよ!」サッ


ボボボボボボン


レ級3の砲撃と同時に二人は真横に飛んで射線をずらし、レ級3を二人で挟み込むように立ち位置を変える。


レ級3「ウロチョロウロチョロ、ウザイナァ…ッ!」

陸奥「ご自慢の足で捕まえてみたらどうなのよ」

レ級3「アマリ、チョウシニノルナ…!」ビュッ


狙いを神通から陸奥に変更し、レ級3が突進していく。

しかし陸奥は砲撃の構えは取らずに右腕を後方へ引き絞り、左腕は前へ、迫りくるレ級3の顔面に照準を合わせ

て静かに腰を落とす。



陸奥「砲撃戦だけじゃないのよ、ビックセブンはね!」シャッ

レ級3「ナッ…」ザザザッ サッ


真っ直ぐ伸びてきた陸奥の右の拳を間一髪で真横に飛んで回避したレ級3は、反撃に転じれなかったショックと

微かに頬を掠め、一筋の傷が出来上がった事実に怒りを露にする。


レ級3「…コロスッ!アソバナイ、コロス!ミナゴロシダッ!!」

陸奥「あらあら…火遊びが過ぎたかしら?」

レ級3「シズメ、ミナゾコニッ!!」ドォン ドォン


ボゴオオォォォン


目にも留まらぬ速射でレ級3が放った砲撃は今度こそ陸奥を捉えたかのように映る。

しかし、立ち昇った爆煙を巻いて陸奥は表情一つ変えずに躍り出てくる。


陸奥「…少しはやるじゃない。けど、直撃じゃないのなら何発撃ち込んでも一緒よ!」 被害軽微

レ級3「バ、バカナ…!」

陸奥「あの時の苦労に比べれば、この程度はなんとも思わないわ!」ドォン ドォン


ボゴオオォォォン


照準を定めた一撃はレ級3を直撃しその身体を大きく吹き飛ばす。


レ級3「ウガッ…!」 中破

本日はここまで

皆様こんばんは
本日ものんびりと更新

-進化の頂-

赤城「…霧島さん」

霧島「…はい!」


立ち昇る爆煙の中に揺らめく陽炎のように人型をしたそれは静かに姿を現す。

トレードマークであろう首に巻いていたマフラーは焼け千切れ、偽装を含め身体のそこかしこに裂傷を負いなが

らも悠然とした足取りで静かに一歩、また一歩と前に進み、ついに爆煙の幕を潜り抜けてその全貌を明かす。


レ級1「イタイヨ、イマノハサスガニ…」 中破

霧島「頑丈ね…腹立たしいくらいに」

赤城「……」スッ

レ級1「フフ、ハハハ…アハハハハハッ!!」ビュッ



レ級2「クククク、イタイイタイ…イマノハ、キイタナァ…」 中破

羽黒「…っ!」ジャキッ

大鳳「直撃させたはずなのに、なんて耐久力…!」

レ級2「……」サッ



レ級3「コザカシイ、レンチュウダ…!」

陸奥「何度でも撃ち込んで上げるわ」ジャキッ

神通「立ち塞がるなら、押し通ります」チャキッ


それぞれの組がそれぞれのレ級を窮地まで追い込む中、レ級1とレ級2は薄っすらとした笑みを浮かべてレ級3

の背後へ移動する。

霧島「なっ…!」

赤城「何を…」

羽黒「えっ!?」

大鳳「まさか…!」

レ級3「ナ、ナンダ…」

陸奥「こいつら…」

神通「……!」

レ級1「トモダオレヨリ、イイヨネェ…」グイッ

レ級2「サンセイカナ」ガシッ

レ級3「ナッ……!ハ、ハナセ、ナニヲ…!」ググッ


グシャアアァァ……


レ級1とレ級2に挟まれるようにして両腕を掴まれたレ級3は、その是非も無く一瞬の内に左右から引き千切ら

れて綺麗に半分にされる。


レ級2「イイヨ、ギソウハアゲル」

レ級1「ジャアエンリョナク」


この二匹は躊躇う事無く仲間であるはずのレ級3を背後から襲い、文字通り食い散らかした。

そしてこのレ級の特色は食う事で取り込んだ艦娘や深海棲艦の力を我がものとし、進化をするという事。


クチャクチャクチャ……


耳障りな音、気味の悪い音、聞くに堪えない音が入り混じる中、下品な笑い声だけがそこに響き渡る。


レ級EL1「ヒヒ、アハハハハ!美味い、美味いナァ…!」

レ級EL2「艦娘もイイケドさぁ、身内もコレハこれでいいよネェ…」


陸奥や大鳳は、以前にも似たものを見たことがあった。

それは初めてレ級を目の当たりにした時の事だ。

手負いになった片方のレ級を、もう一匹が食い散らかす。

食ったその場で知能から、身体能力から、全てを向上させて陸奥達に恐怖を植え付けたのは記憶に新しい。

今度こそ、レ級との決着をつける……これが陸奥達にとっての最終決戦となる。

~阻止せよ、敵別働侵攻部隊~



-数時間前-

提督「いいか、陸奥たちとの距離を一定に保ち、周辺の哨戒を密に行うのが今回のお前たちの任務だ。敵がどう
攻めてくるかは定かじゃないが、不測の事態にも決して動じるな。その場の空気を感じ取って判断しろ」

比叡「陸奥さん達を背後から狙おうとする連中が居れば、それを迎撃ですね」

提督「そうだ。今一度確認するぞ」

瑞鳳「確認?」

提督「瑞鳳」

瑞鳳「あ、はい!」

提督「調子はどうだ」

瑞鳳「え?調子…?えっと、絶好調…かな?えへへ」

提督「そうか。利根と二人で比叡達の目を司れ。決して逃すなよ」

瑞鳳「はいっ!」

提督「よし、お前ならできる。信じてるからな」ポンッ

瑞鳳「…ぁ///」

提督「比叡」

比叡「はい!」

提督「この部隊の主力はお前だ。やるべき事はなんだ」

比叡「正解があるか解りませんけど、私は皆を信じて前だけを向きます!全力で!ありったけ!撃ち込みます!」

提督「解った。なら最後まで信じろ。他の姉妹にも見せ付けてやれ。お前の凄さってのをな」

比叡「お任せ下さい!」

提督「利根」

利根「おう!」

提督「いつも皆へのアフターケアをしてくれてること、感謝してるぞ。お前の優しさはそのまま強さになる」

利根「うぅ、面と向かって言われるとちと恥ずかしいぞ///」

提督「言葉は不要か。ならば、行動で見せてくれ。お前の強さ」

利根「う、うむ!任せておけ!吾輩が艦隊に加わる以上、もう、索敵の心配はないぞ!」

提督「阿武隈」

阿武隈「は、はい!」

提督「まだ戦場は怖いか?」

阿武隈「…もう、大丈夫!沢山の人に、迷惑かけちゃったから、だからあたし提督や皆にちゃんとお礼言いたく
て、けど…自信、一歩踏み出して少しだけ自信をつけたい!だから、あたし的には大丈夫です!やれます!」

提督「そうか。ならやってやれ。お前の底力、他の奴等に見せ付けてやれ!」

阿武隈「はい!阿武隈、ご期待に応えます!」

提督「暁」

暁「な、なによ!」

提督「今まで電やヴェールヌイを牽引してきたお前の手腕を俺は高く評価する」

暁「ぇ…?」

提督「一人前の、立派なレディを目指すんだろ?だったらここらで一旗上げて見事なって見せろ。期待して待っ
ててやる。暁こそ、艦娘を代表する大人のレディだって所を見せ付けて来い」

暁「う、うん!……あ、り、了解!」

提督「白露」

白露「はいはーい!」

提督「お前は何番目に強い?」

白露「もっちろん!一番!」

提督「よし、その一番の強さ、期待しているぞ。その勢いを保ったまま、仲間達と大暴れして来い!」

白露「まっかせてー!とことん皆に付き合っちゃうよー!でもって、一番に突っ込むよ!」

提督「…よし皆、気合い、錬度は十分。今のお前たちの戦意は十分に高揚状態だ。見せてやれ、本物の力って奴をな」

-敵領海域-

利根「ふぅ、まっこと戦術戦略においてはよい嗅覚を持つ男よな、吾輩等の提督は…」

比叡「暁や白露、阿武隈を連れてきたのも正解ですよ」

阿武隈「居るね…」

暁「潜水型ね」

白露「うんっ」

瑞鳳「先手必勝でいきましょう!私の艦載機で注意を一瞬こちらへ引き付けます」

比叡「任せて、それを私と利根さんで釘付けにする!」

利根「うむ!」

瑞鳳「意識が比叡さんと利根さんへ向いたら…」

阿武隈「任せて!あたし達でまずは潜水型を殲滅する!」

暁「白露、対潜装備ある?」

白露「バッチリ!」

利根「敵方は梯形陣…潜水型は奥の方じゃろうな」

比叡「それじゃ!」

利根「参ろうか!」

瑞鳳「はい!まずは道を作ります!」チャキッ

瑞鳳は背に掛けていた弓を取り出し、矢筒から一本矢を引き抜いて弓に番える。

はじめは赤城、次に翔鶴、今は赤城と飛龍。

常に瑞鳳は正規空母の背を見て精進してきた。

彼女達に比べて自分の火力が劣っている事に少しの劣等感は抱いていた。

人の見ていない所で塞ぎ込んだ事もあった。

それでも前を向いて一歩ずつ前進できたのは彼女を支えてくれた周りの皆が居たからだ。

常に先陣を切り、窮地に至ろうとも諦めず、勝利に向かって貪欲に突き進む。

一航戦の誇り、二航戦の執念、二人の背中を見て修練を積んできた彼女にこの二つの言葉を背負う資格は十分に

あるだろう。

軽空母と侮るなかれ。彼女こそ、一騎当千の機動部隊の一翼を担う瑞鳳である。


瑞鳳「……瑞鳳、推して参ります!攻撃隊、発艦!」ビュッ


番えた矢を前方に見える敵艦隊へ向けて真っ直ぐに射る。

放たれた矢は艦載機へと姿を変えて滑空から大空へと向かい羽ばたいた。

それを合図とするように阿武隈、暁、白露の三名がそれぞれ左右に迂回路を取る。

そして真正面、比叡と利根が並んで立ち、一気に駆け出した。

比叡「抜錨!」

利根「うむ!いざ、出陣だな!」


一拍遅れて瑞鳳の艦載機に感付いた敵奇襲侵攻艦隊。

旗艦を勤めるその姿は────


武蔵?「…任務の邪魔をするか。先に邪魔な連中を殲滅する。総員、戦闘配置に就け」


姿形は武蔵そのものでありながら、違和感を禁じえない。

つまり、生気を感じられない。


比叡「え…!?」

利根「莫迦な、彼奴は…武蔵!?あ、ありえんじゃろ!」

比叡「し、司令の言ってた不測の事態にも動じるなって、まさかこれの事だったの?」

利根「わからん、しかしここは戦場じゃ。迷うとる暇はない!ゆくぞ!」

比叡「はい!」


敵の奇襲侵攻艦隊の構成は異質だった。

艦娘と深海棲艦の混存型。

武蔵
戦艦タ級FS
筑摩
重巡リ級FS
潜水ソ級EL
潜水ヨ級EL

しかし、それに囚われる事無く、比叡と利根は臨戦態勢に入る。

その直後、瑞鳳の放った艦載機の艦爆艦攻隊の攻撃が開始される。


ボゴオオォォォン


身動ぎすらせず、瑞鳳の先制攻撃を一身に受けるも、彼女達は無感情に行動を開始する。

-比叡・利根 vs 武蔵?・タ級FS・筑摩?-

武蔵?「温い。各自、標的を定めて殲滅しろ」 無傷

タ級FS「エサニシテヤル…!」ザッ 被害軽微

筑摩?「右舷、砲雷撃戦、始めます」ジャキッ 無傷

利根「近付いて見てよう解ったわ。筑摩を模した下衆な人形など拵えよって…万死に値するぞ!」

比叡「利根さん、武蔵さんモドキと戦艦型は私が相手します!」

利根「お主、正気か!?」

武蔵?「同時に相手だと?雑魚が…笑えもしない冗談だ」

タ級FS「ビョウサツデシズメテヤル…!」

比叡「小さな事の積み重ね。小さな道でも、自分で築いてきたこの道を私は信じて進むのみです!」


比叡の朝は毎朝道場で汗を流す事から始まる。

毎朝の精進、鍛錬、これをしないと一日が始まらないと彼女は言う。

日々積み重ねた修練の結晶と実績、その全てを遺憾無く発揮してこそ、結果が生まれると彼女は信じている。

その結果を出す場が今、この瞬間である。


ドォン ドォン ドォン ドォン


全砲門を開き、広範囲に渡って比叡が一斉射する。


ボゥン ボゥン


武蔵とタ級は片手で比叡の放たれた一撃を振り払い、変わらぬ速度で一気に間合いを詰める。


比叡の突進から遅れて利根は筑摩と対峙する。

光の宿っていない虚ろな瞳。

ニコリともしない口元、口角、真一文字に結ばれた口元が静かに開き、筑摩の声で言葉が紡がれる。

筑摩?「沈め」ドン ドン


短く紡がれたその言葉と共に、備えられた主砲の砲塔を利根に向けて一斉に放つ。


利根「新鋭……どこまでも腐った女よ。一度ならず二度までも吾輩の妹を愚弄するか」サッ

筑摩?「……」


ボボボボン


筑摩の放たれた一撃を利根はかわし、一気に間合いを詰める。


利根「ふん、人形とあらば躊躇いようもない。筑摩を穢してくれた業は深いぞ!」チャキッ


シャッ サッ


腰に携えた武刀剣を一閃させるも、それは間合いの外へと逃げられ避けられる。

抜刀したまま正眼に武刀剣を構え直し、利根は不敵に笑う。


利根「木偶にしてはよう動くのう。じゃが、お主のような人形に吾輩の相手が務まるのかの?」

筑摩?「雑魚が、ほざくな」ザッ

利根「言いよるわ。じゃがな…」スッ

筑摩は照準を絞らせないように前後左右、縦横無尽に跳躍を繰り返し利根の周囲を凄まじい速度で駆け巡る。

対する利根は正眼に構えていた武刀剣を片手に持ち替え、切っ先を前方に向ける構えに変える。

左手は的を定める照準用。

柄の先端部分を握り、刃を水平に、独特の構えを取る。

それは提督の得意とする刺突の構え。

源流は新撰組の三番隊組長として名を馳せ、刺突技を得意としていたとされるそれに似る。

これを考案した同じく新撰組の一番隊組長、近藤勇の片手平突きの構え。

斬るよりも突く方が自身には向いていると判断した利根は、暇を見つけては提督を道場に呼び込み教えを受けていた。

利根が神通とは違い居合いを習得しなかった理由の一つとして間合いの広さが上げられる。

踏み込みが神通よりも短い分、その間合いも必然的に狭くなると判断した利根はこれをすっぱりと諦めた。

更にもう一つの理由として出だしの速さを挙げている。

そしてそれらを加味した上での最大の理由、それが────


利根「…我が艦載機から逃げられるとでも思うたか!丸見えじゃ!」シャッ


自らの艦載機と併用させた精密射撃のような一撃。

瞳を見開き、一瞬の隙間。

針の穴を通すが如く、一点に集約された力が爆発的な開放を示す。

凄まじい速度で動き回っているにも関わらず、それを意にも介さず利根は一点を目指して右手を振り抜く。

繰り出された一撃はまさに弾丸。


利根「そこじゃっ!」ドスッ

筑摩?「……っ!」ググッ 小破


確かな手応え、しかし筑摩の顔色は以前変わらず真正面を能面の如く見据えたまま動かない。

片手で脇腹に突き刺さった武刀剣を引き抜き、利根の方へと衝き返し、顔色一つ変えずに筑摩は構え直す。


筑摩?「…鬱陶しい」ジャキッ

利根「っと…ふん、お姉さんに対する敬意が今一つ足りとらんみたいじゃの」スッ

-瑞鳳 vs リ級FS-

リ級FS「ジャマヲ、スルナ。ケイクウボフゼイニ、デルマクハナイ」 被害軽微

瑞鳳「……」スッ ググッ

リ級FS「ケイクウボフゼイノカンサイキナド、イクラトバシタトコロデ…」

瑞鳳「」(例え一歩…ううん、半歩でもいい。赤城さんや飛龍さん達のように…)

リ級FS「カニササレタヨウナモノダ…」

瑞鳳「」(…そうじゃない!憧れない!私は、私なんだから!)

リ級FS「ホラ、ゴホウビニモウイッカイダケ、カンサイキヲハナッテモイイゾ?」

瑞鳳「軽空母だからって、余り舐めないでよね!」


──敗北は負けに非ず。可能性を残す敗北は勝利よりも価値あるものと知れ。故に立つのだ!負ける事、劣る事、

知らぬ事、それらを恥じるな!負けたなら次に活かせ!劣るなら優るものを見つけよ!知らぬなら覚えよ!そし

て相手に知らしめよ!弾丸と成って、空を舞え!──


瑞鳳「……艦載機の皆、飛び立て!」ビュッ


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


リ級FS「ナニ…!?」

瑞鳳「さぁ皆、弾丸と成って空を舞え!!今こそ、小沢艦隊の本当の力、見せてやりましょ!」

リ級FS「バ、バカナ…ナンダ、コノカンサイキノカズハ……チッ、オノレッ!!」ダダダダダダッ



瑞鳳より放たれた無数の艦載機は鮮やかな編隊を見せてリ級FS直上より急降下爆撃の態勢に入る。

その錬度たるや赤城や飛龍に迫る勢いを見せた。

脳裏を過ぎった言葉の端々。

聞き覚えのない野太い声。

それでも何処か懐かしく思う。

『ああ、そうか。これが提督の言ってた記憶なのか』と感慨に耽る暇すらもない。

今はただ、己の放った艦載機を信じるのみ。

そして瑞鳳の放った艦載機の一団はリ級FSの放つ対空砲火を物ともせず、一気に攻撃に転じる。


ボゴオオオォォォォン


リ級FS「グガッ…!」 中破

瑞鳳「これ以上、仲間の…先に進む皆の邪魔は、この瑞鳳がさせません!」

疲れたので本日はここまで

おつ
神通が抜刀術で利根は牙突か


強い瑞鳳って貴重だよね
いいなぁ

ここの鎮守府の皆がかっこよすぎて生きるのが辛い。 >>1さん、あまり無理しないでくださいね。ほぼ毎日更新してるっぽいし

改二の絵をちょっと弄ったら牙突の構えになりそうな気もする

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします


>>477
仰る通りでございます
元ネタはご想像の通りかと思います

>>478
強い軽空母は錬度の未熟な空母など目ではないのです
戦艦クラスにだってタメを張れる強い子たちなんです

>>480
決める時はビシッと、デレる時はユルッと、可愛くカッコ良く見えるように書けてれば幸いです
ある程度書き溜めたのを艦これしながらコピペしてる場合もあるので大丈夫です
ご配慮、感謝します

>>481
実はそこから>>477さんの仰る発想へ転換されております

-阿武隈・暁・白露 vs ソ級EL・ヨ級EL-

暁「阿武隈さん、私と白露はヨ級を…!」

阿武隈「うん、あたし的にも大丈夫!あたしはこのまま真っ直ぐ、ソ級に照準合わせるから!」

白露「よーっし、暁やるよっ!」

暁「うん!」

ソ級EL「オマエタチノドウコウニ…」

ヨ級EL「キヅイテナイトデモ、オモッテタノ?」

阿武隈「えっ…!?」

ヨ級EL「ケイケンモ、チエモアサイ、ケイジュントクチクカン…」ジャキッ

ソ級EL「カンゲイスルワ…ミナゾコヘ、シズミナサイ」ジャキッ

阿武隈「暁、白露!」

暁「阿武隈さん、こっちは大丈夫!」

白露「一番に片付けちゃうんだから!」



暁や白露にとって、鎮守府とは大切な仲間との憩いの場なのだ。

何より、出会いの形はどうあれ彼女達は提督の居るこの鎮守府が大好きなのだ。

そんな大好きな場所や人を傷付けるなら、相手が何であろうと彼女達は立ち向かう。

そしてその時こそ、彼女達にとっての真価が発揮される。


ソ級EL「フフッ……シッポヲマイテ、ニゲレバイイモノヲ」

阿武隈「姿晒しておいて逃げれると思ってるの!?」

ソ級EL「ハンデヨ……カンムスフゼイニ、キシュウヲカケルマデモナイワ。ホラ、ヨコヨ」

阿武隈「っ!」バッ


ボゴオオォォォ……


ソ級ELの言葉に反応するように、阿武隈は大きく後ろに一歩バックステップする。

それから一泊遅れて、眼前の水面が大きく揺らめき立ったかと思うと爆音と水飛沫を上げて海面が爆ぜた。


ソ級EL「アラ、チョットチュウコクガ、オソカッタカシラ?」

ヨ級EL「アイサツガワリニハ、チョットニガオモイカシラネ?」バシュンッ バシュンッ

暁「…よーいっ」スッ

白露「どんっ!」バッ


ヨ級ELの放った魚雷と同時に、暁と白露は海面を蹴って一直線にヨ級EL目掛けて駆け出す。

互いに魚雷を横軸を少しずらすだけで速度を殺さず回避し、一気にヨ級ELとの間合いを詰める。


ヨ級EL「ナニ…!?」


ボゴオオォォォン……


暁と白露の遥か後方で爆音が轟き、その頃には既にヨ級ELとの間合いはかなり肉薄していた。

二人で並んで一直線にヨ級ELへ接近し、残り数メートルという所で二人同時に魚雷管を差し向け同時発射する。

そして二人はヨ級ELから離れるように左右へ分かれて駆け抜ける。


暁「挨拶代わりなんだからっ!」

白露「受け取っちゃってー!」

ヨ級EL「シマッ……!」


ボゴオォォォォン


ヨ級ELの緊迫した声を掻き消し、魚雷が炸裂して轟音を響かせる。

-比叡 vs 武蔵?・タ級FS-


ボオオォォン ボゴオォォォン


矢継ぎ早に放たれる武蔵とタ級FSの砲撃を比叡は全て往なし、距離を取り、鮮やかに回避する。


タ級FS「ニゲマワルダケ?」

武蔵?「口ほどにも無い。雑魚はさっさとくたばれ」ジャキッ

比叡「やばっ」サッ


回避間際の硬直を狙われ、動けないと悟った比叡は咄嗟に両腕をクロスさせて完全防御の姿勢を取る。

その直後、轟音を響かせ武蔵の主砲が火を吹いた。


ドォン ドォン


ボゴオオォォォン


砲撃は比叡を直撃、凄まじい水飛沫と爆煙を巻き上げ、海上をさながら火の海に見立てる。


武蔵?「ふん、まずは一匹だ」



ジッ……ボゴオオォォン


踵を返そうとした直後、武蔵の頬を何かが掠めて通り、直後にその背後で大爆発が起こる。

無感情だった武蔵の瞳が僅かに見開かれ、その視線の先には主砲を構えて立っている比叡が確認できた。


タ級FS「ムサシノイチゲキヲウケテ、タッテイルダト…?」

比叡「お姉さま譲りのこの艤装。隅々までその凄さを体験してもらわないと困るなぁ」ジャキッ 小破

武蔵?「虫けら風情が…」

比叡「その虫けら風情がこれから頑張っちゃうから、よーく見ててよ!私の背中には霧島が居るんだ。妹の背中
をそう易々と撃たれたんじゃ、お姉さまや榛名に合わせる顔がなくなっちゃうよ。まずは……」ビシッ


比叡はタ級FSを指差し、不敵に笑いながら宣戦布告する。


比叡「あなたから。さて、と…気合!入れて!行きます!」ザンッ

タ級FS「ハヤイ…!」ザザッ

比叡「ふっ」タンッ ジャキッ


タ級FSの横をすり抜け、振り向き様に副砲を構えて一気に放つ。


比叡「てーっ!」ドン ドン

タ級FS「ナンダ、コイツノウゴキハ…!?」サッ


ボゴオォォン


タ級FS「クッ…!コザカシイ、マネヲ…!」 小破

比叡「護りたいものがあるから戦うんじゃない。護るべき人達が居るから、私達は戦えるッ!」

武蔵?「その全てを我々が完膚なきまでに破壊する」

比叡「絶対させない。二度と!同じ過ちは!繰り返さない!先手、必勝ッ!!」ダッ


再び駆け出し、態勢の整っていないタ級FSへ向かい比叡が猛追を掛ける。

比叡には榛名や霧島のように過去の記憶や断片的に残る記憶が無い。

しかし、兄弟姉妹は時として常識を遥かに超えた外側まででも繋がっている事があるという。

魂で繋がる。俗に言われる虫の知らせや第六感などと呼ばれるのがそれだろうか。

確かな繋がり、確かな想いの共有、離れていようと触れ合える。一人じゃないという確かな実感。

それらが比叡に無限の力を与えてくれる。

強さは時として凶器となるが、扱い方を間違えなければそれは心強い己の武器となり、盾となる。


比叡「お姉さまや榛名達妹…鎮守府の皆、司令…護りたい人達が居る限り、私の中の信念は絶対折れない!」ジャキッ

武蔵?「戯言を…」

タ級FS「ム……」

比叡「狙いは、外さない!主砲、斉射!始めっ!!」ドォン ドォン ドォン ドォン

武蔵「この弾幕は…チッ、雑魚の分際で…」バッ

タ級FS「バカナ…ナンナノ、コイツラハ…」


ボゴオオオオォォォォン


耳を劈くばかりの轟音を唸らせ、武蔵達の居た地点が大爆発を起こす。

それでも尚、武蔵は悠然と姿を現し艤装を構え直す。



武蔵?「ふん、所詮は深海棲艦か。不測の事態に回避も出来ないとはな」 被害軽微

タ級FS「グガ……ッ!」 大破

比叡「こいっ!」

武蔵?「ククッ…いいだろう、遊んでやる。貴様もこんな雑魚が相手では締るものも締らんだろう。褒美に消し
炭にしてやる」

比叡「なっ」

タ級FS「キ、サマ……クロ……」


グシャッ


タ級FS「……」 轟沈

武蔵?「余計な事を言う。雑魚以下のゴミ虫だな」

比叡「なんてことを…」

武蔵?「深海棲艦に同情か?下らん…使い物にならないのは即時切り捨てるのが戦場での鉄則。それに習ったま
での事を、一々情に絆されてどうする。貴様も艦娘ならば腹を括って掛かって来い。在り方の違いと実力の差を
存分に味合わせた上で砲撃処分にしてやる」

本日はここまで

皆様こんばんは
少しだけ更新しにきました

-利根 vs 筑摩?-

筑摩?「ふっ…姉なら、偉いの?」

利根「なんじゃと?」

筑摩?「自分よりも劣る存在が姉だと、自分の置かれた境遇を呪う他ないわね。そう、私のように…あなたのよ
うな不出来で使い道も無い雑魚が、姉と言うだけで鼻息荒くされても困るわ。それを証明してあげる。砲撃処分
という形でね?」

利根「張りがあるのは胸ばかりと思うておったが、お主はどうやら腕っ節にも張りがあるようじゃな」


ニヤリと一笑に伏して利根は筑摩の挑発を受け流す。

そして再び武刀剣を片手で構え直し、照準を筑摩に合わせた。


筑摩「馬鹿の一つ覚え。その艤装で私を本当に仕留められるとでも?」

利根「さて、どうじゃろうなぁ…手心が加わって手元が狂うかも解らん。口が悪くとも見た目は吾輩の妹そのも
のじゃからのう。倒すのに、時間を要してしまうかもしれんのう…」クスッ

筑摩?「なら私がその時間を短縮して上げる。せめてもの手向けよ。一撃でその首を吹き飛ばして上げるわ」ジャキッ



利根が仕掛けるよりも早く、筑摩は先に動き出し構えた主砲を一斉に放つ。


ドン ドン


サッ


ボゴオオォォォォン


爆発音を合図とするように二人は同時に駆け出す。

一直線の水柱が徐々に近付いていき、互いの中央部分で一本に繋がり巨大な水柱となって水飛沫を撒き散らす。

利根の刺突を今度は右側の艤装で受け止め、余る左側の艤装、その砲塔を利根へ差し向ける。


筑摩?「さようなら、お姉さん?」ドン ドン

利根「お主…!」


ボゴオオォォォン


サッ


利根「くっ…!恐れも何もあったもんじゃないのう!」 小破

筑摩?「あれを避けたの?運がいいのね」

利根「運じゃと?見縊られたもんじゃのう…」キンッ


利根はため息を一つ吐いて武刀剣を鞘に収める。

利根は静かに瞳を閉じて一拍の呼吸を置いた。

その刹那に脳裏を過ぎったのはこれまでの出来事の数々。

今の鎮守府に就いてどれほどの歳月が経過したのか。

劣悪な環境、信じるものなど無く、ただ只管に与えられた任務をこなすだけの日々。

そこに達成感、感動、抑揚、充実は存在せず、ただただ生きて帰る事だけを目指して戦い続けた。

今はどうだろう?

そう思って気付いた事は、提督の存在だった。

彼が就任して劇的に今の環境は変化した。

与えられた任務を達成する喜び、仲間と共有する感動、互いを解り合いたいが為に生まれる感情の起伏、遂げた

目標を果たして得る充足した日々。

何時以来か、心の底から笑みを見せたのは。

何時以来か、仲間の安否に一喜一憂したのは。

何時以来か、両者の想いを真剣にぶつけ合ったのは。

利根の願いは至って平凡で質素。それ故に、誰もが手に入れて然るべきもの。

それを手にするのは簡単に見えて思いの他と難しい。それを利根は重々承知している。

だからこそ強く願う。平穏よ、永遠なれと。

それを今の鎮守府で、提督と出会えた仲間達と迎える。

今を強く生きる仲間達と再び鎮守府へ戻る為に、利根は強い信念を持って戦う。


利根「お主の正体、粗方見当はついた。荒唐無稽な話じゃ…しかし、思いついた結論以外に到底憶測が及ばぬ」

筑摩?「だから、何?」

利根「…終わらせる。この悪夢と共に生み出されたお主の生涯そのものを」

筑摩?「終わるのはあなたよ」

利根「最終局面じゃ。全てを賭す…吾輩は、まだまだ生きたいのでな!」

短いですが本日はここまで

たしかここの利根は航空巡洋艦じゃなかったんだっけ?

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします


>>499
全ての登場艦娘の改修状況を描写していないので、そこは不足分だったかもですね
因みに利根は航空巡洋艦への改修は本編では施されていない状態ですね

-瑞鳳 vs リ級FS-

瑞鳳「はぁ、はぁ、はぁ…」 小破

リ級FS「モウニドト、ヒショウノキカイハ、アタエナイ…ッ!」ジャキッ

瑞鳳「」(間合いを離せない…強い。一度見たパターンには即座に対応してくるなんて…)

リ級FS「ハナテルモノナラ、ハナッテミロ。ソノマエニ、キサマノヒコウカンパンヲコナゴナニフンサイシテヤル!」


ドン ドン


瑞鳳「くっ」サッ


何度目の砲撃か、瑞鳳はそれを間一髪で回避して後ろへ大きく飛び退く。

しかしそれを良しとせず、リ級FSもまた大きく踏み込み瑞鳳との距離を縮めていく。

エリート型やフラグシップ型の深海棲艦は艦娘達でも驚く手法を以てこちらを殲滅に掛かる。

それは今までの深海棲艦が目視した自分達をただ駆逐する為だけに向かってきたのとは違い、戦術や戦略を駆使

した上で知恵を絞った戦いを展開するという事。

故にこちらの思惑、戦術、戦略、奇襲と言ったものが通用しない場合が存在する。

瑞鳳の見立ては本来であれば完璧だった。

最初の一手で自分の限界と思わせる艦載数を飛翔させ、相手の油断を誘った上で次の手を全力で見舞う。

手負いになった所を隙を見つけて三度目の一撃を放ち、そこで仕留める。

しかしリ級FSはその手に感付き、瑞鳳との距離を一定に保ち、瑞鳳に発艦の暇を与えずに攻め続けてきた。

これが瑞鳳にとっての誤算。

接近戦で彼女に勝ち目は殆どないに等しい。

それを逆手に取ったリ級FSのこの攻めは実に理に適った見事な戦術と言える。

瑞鳳に限らず、赤城も飛龍も発艦の際には必ず隙が生じる。

矢を射るにはどうしても必要な隙。

ブレを無くし標的を射抜く為の必須動作。

瑞鳳は一瞬の望みに全てを託した。



チャキッ……


リ級FS「ユレルミナモ、ハゲシクマジワルタガイノイチ…コノジョウキョウデ、ドウヤッテカンサイキヲトバス?」

瑞鳳「」(私の足じゃリ級FSを振り切るのはきっと無理。無闇に無理な姿勢で放っても、艦載機の子達はきっと
発艦なんて無理…なら、チャンスは一度きり。固定された姿勢で放てる最後のチャンス…!)スッ…

リ級FS「フッ…ハハハハッ!ココニキテ、ツイニアキラメタカ!?」

瑞鳳「……」


瑞鳳は右手に矢を握ったまま、構えを解いて自然体に姿勢を正す。


瑞鳳「」(狙うのは、正面からの一撃…!)ダッ

リ級FS「ナニ…!?」


瑞鳳は徐に駆け出すと同時に弓を構え、矢を番える。


リ級FS「コムスメガ…!」ジャキッ


ドン ドン


サッ


牽制も含めて放たれたリ級FSの一撃を物ともせずに突き進み、一気に瑞鳳はリ級FSとの距離を詰める。


リ級FS「ソレイジョウハ、ヤラセンッ!」ビュオッ


リ級FSの腕から突き出された艤装ごとの一撃は真っ直ぐに進む瑞鳳を真正面から捉える。

それを予期していたのか、瑞鳳は両腕を胸の前で固めて防御の姿勢を取る。

リ級FS「キ、キサマ…!」

瑞鳳「……っ!」ググッ


ドゴォッ


瑞鳳「くっ…!」

リ級FS「クッ……!」ザザッ


勢いの殺せないリ級FSはそのまま瑞鳳を殴り飛ばし、瑞鳳は弾けたゴム鞠のように進んできた道を今度は背を前

にして吹き飛ばされる。

しかし、それを想定していた瑞鳳に焦りや動揺の気配は微塵も無かった。

そして瑞鳳の狙いに気付いたであろうリ級FSも、気付くのが遅かった事を自ら悟り、表情を強張らせた。


瑞鳳「所作は最小限で、一呼吸の内に、一拍…置いて……っ!」チャキッ ビュッ


吹き飛ばされた姿勢のまま、勢いに逆らわず静かに弓を構えて矢と番え、弦を引き、狙いを定めて、弓を射る。

一連の動作を一呼吸の内に、一拍置いて、呼吸を整え、狙いを決めて一気に躊躇いなく射る。

赤城や飛龍がこの場に居れば息を呑んだことだろう。

洗練された所作の全てが一本の矢に集約される。


ヒュン ヒュン ヒュン


瑞鳳「艦載機の皆!大空を、弾丸と成って!」 ザバァァァン 中破


海面に叩き付けられた拍子に肩口の飛行甲板を激しく損傷し、共に腕に裂傷を負いながらも最後まで自身が放っ

た艦載機の行方を目で追い続け、激励の言葉を投げかける。

最後の最後まで諦めない。瑞鳳の叫びは大空に響き渡った。


瑞鳳「舞えぇぇぇぇぇぇっ!!」

リ級FS「カンムス、フゼイガ…ッ!オノレエエエェェェェ……ッ!!」ジャキッ…


ボゴオオォォォォン


リ級FS「」 轟沈

瑞鳳「はぁ、はぁ…やった…やった……っ!軽空母だって、頑張れば、活躍できるのよ……!」グッ

-阿武隈 vs ソ級EL-

ソ級EL「フン、クチホドニモ……」


ザバァン ザバァン ザバァン


ソ級EL「クッ…ナンダ!?」

阿武隈「あたし的にはまだまだこれからなんですけど?」 被害軽微

ソ級EL「キサマ…」

阿武隈「助けてもらって、支えてもらって、今のあたしはあるんだから…こんな所で足踏みしてる場合じゃないの」

ソ級EL「…タスケテモライ、ササエテモラワナケレバイキレナイ…ソンナヤツハ、ソンザイスルカチガアルノ?」

阿武隈「だから恩返しするんでしょ。中にはそういうのを足手纏いって煙たがる人も居るかもしれないけど、け
ど提督は違った。この鎮守府の皆は違った!皆、あたしを待っててくれた!だから、あたしは皆に今までに沢山
預かってきたこの恩を、今日ここで、あたしの全てを掛けて返すの!だから、あんたになんか絶対負けない!」

ソ級EL「イキガッテイロ…タマタマギョライヲカイヒデキタテイドデ、コノワタシヲタオセルト、サッカクスル
ソノアサマシサ…コッケイダナァ」

阿武隈「」(大丈夫、期待に応えるって、提督と約束したんだから…やれば、できる!やるときは、やるんだから!)

ソ級EL「コンドハ、ハズサナイ…ミナゾコヘ、シズメッ!」ゴポゴポゴポ…


静かに水泡だけを海面に残してソ級ELの姿が完全に消える。

海上から海中へ深度を一気に下げていき、気配を殺して静かに魚雷の発射口を海上へ差し向ける。

深海の狩人が狩りの標的として阿武隈を定めた。

静かに、ゆっくりと、しかし確実に仕留めるために照準を合わせて音も無く魚雷が発射される。


バシュンッ


ソ級ELはその瞬間、自らの勝ちを確信した。

背後へ回り込み、装甲の薄い背面を不意を衝いて狙う。

当たればまず間違いなく即死級の一撃。

例え生き残ったとしてもそれは虫の息であり、トドメを刺すのに差して問題などなかった。

だが、ソ級ELは言い知れない恐怖を肌で感じ取り周囲の警戒をする。



ボゴオオォォォォン


海上で自らが放った魚雷が爆発を起こし、海中にも振動が伝わってくる。

しかしそれを見てもソ級ELの言い知れない恐怖は未だ拭い去れてはいない。

その散漫とした集中力から海上へと急いで浮上したのがソ級ELの失策だった。


ザバァァァ……


ボゴオオォォォン


ソ級EL「グガッ……!」 中破

阿武隈「怖いでしょ。どこから狙われるか解らないのって」ジャキッ

ソ級EL「キ、キサマ…ドウ、ヤッテ…」

阿武隈「下調べ、怠りすぎじゃない?っていうか、バカ?」

ソ級EL「ナン、ダト…ッ!」


阿武隈がソ級ELの位置を容易く割り出したのは音波探信儀、ソナーと呼ばれる艤装のおかげだ。

そしてソ級ELが言い知れない恐怖を感じ取ったのは阿武隈が設置した爆雷投射機。

エリート型らしい素晴らしい嗅覚を有していながらも軽巡型は海中へなど来れないと言う慢心からそれらの注意

を確認しそびれた、ソ級ELの度し難い失策だった。

そしてその爆雷は未だ阿武隈の匙加減一つで牙を剥くと言う事実にソ級ELは気付いていない。


阿武隈「悪いけど、他の皆の手助けに行かないとならないの」

ソ級EL「ホザケッ!コンドコソ、シズメテヤル!!」ゴポゴポゴポ……

阿武隈「……そこ、爆雷の宝庫なのよね」


ザッパァァァァン


ソ級ELが潜ってから数秒後、ソ級ELの位置を把握していた阿武隈はタイミングを計って手にしていたスイッチを押す。

爆風に打ち上げられ、立ち昇った水柱の中に驚愕に顔を歪ませたソ級ELの姿を確認できた。

重力に逆らわず海面へと水柱と共に叩き付けられ、ソ級ELはそのまま静かな海の底へと再度沈んでいく。


阿武隈「よし…!」グッ


小さくガッツポーズをとって阿武隈は周囲の戦況を確認しつつ、加勢に向かう先を検討しようと顔を上げる。


ボゴォォン


阿武隈「あぐっ…!」 中破


直後、背後から肩口を狙っての砲撃に阿武隈の表情が苦痛に歪み、錐揉みのようにして身体を捻らせながら吹き

飛ばされる。

撃ち抜かれた箇所を片手で押さえながら、阿武隈はゆっくりと立ち上がり砲撃の飛んできた方角を凝視する。


阿武隈「な……」


自分を撃った存在を確認し、阿武隈はその表情を驚愕の色に染め上げた。

本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-暁・白露 vs ???-

阿武隈がソ級ELを撃破するより少し前、奇襲と連携を見事に成功させた暁と白露の二人は見事にヨ級ELの撃破に

成功し、急ぎ阿武隈の手助けに向かおうとしていた。

しかし戦闘の最中、阿武隈は大きく場所を移動していたのか、中々見つけられなかった。


暁「どこまで行っちゃったんだろう?」

白露「うーん…あっちに見えるの、比叡さんと、利根さん、かな…」

暁「向こうには艦載機が見えるから、きっと瑞鳳さんね」

白露「方角からすると、それじゃこっちかな?」

暁「いってみましょ!」

白露「おっけー!」


ザバァァン ザバァァン


暁「きゃっ」

白露「うわっ」


行動を開始しようとした瞬間、二人の眼前に砲弾が着弾して大きな水飛沫を上げる。

暁「あ、危なかった…」

白露「どこから…」

??「外したカ…運ダケはいいミタイね」

暁「え……」

白露「う、うそ…」

暁「そんな、だって…あなた、死んだはずじゃない!長門さんが、倒したんじゃ!」

泊地棲姫?「フフッ…私は、滅ビヌ…忌々しい、艦娘ドモめ…今一度、水底に還るがイイワ」

-比叡・利根 vs 武蔵?・筑摩?-

比叡「はあぁぁーっ!」ビュッ


ガシィッ


武蔵?「軽いな。軽すぎる」ビュオッ


ガスッ


比叡「うぐっ!」ザザザッ

武蔵?「この軽さで、同じ戦艦として同列にされるとは、反吐以外に出るものが無いな」

比叡「まだまだー!」ダッ

武蔵?「いや、終わりだ」ジャキッ

比叡「っ!」


ボゴオオオォォォォン


果敢に立ち向かおうと駆け出した直後、眼前に主砲の砲塔が顔を覗かせる。

武蔵の翳した艤装の第一主砲の砲塔。

黒光りする筒の先に閃光が奔り、次の瞬間、比叡は後方へと吹き飛ばされていた。


比叡「げほっ、がはっ…!」 大破

武蔵?「無力は罪だ。貴様に艦娘の名を背負う資格はない。ここで朽ち果て、永久を彷徨え」スッ…

比叡「うぐっ、くそ…!」

利根「あえてそう呼ぶぞ、筑摩!」

筑摩?「沈みなさい、水底へ」ジャキッ

利根「いいや、沈むのはお主じゃ」ジャキッ


同時に艤装を構え、全く同じタイミングで共に引き金を引く。


ドォン ドォン ドォン ドォン


ボボボボボボボンッ


爆煙と水飛沫を伴い、周囲に水壁が一瞬の内に形成される。


ザバァァァン


その壁を打ち破り、まずは利根が躍り出る。

それを待っていたかのようにして筑摩も飛び出してくる。


パパパァァン ドォン ドォン


互いの拳による殴打戦を数度繰り広げ、間隙を縫っては砲撃を見舞う。


ボゴオオォォン


決定打を見込めないまま、時間だけが過ぎていくが一際大きな炸裂音に利根、筑摩共に一瞬動きが止まる。


ボゴオオオォォォォン


利根「な、なんじゃ!?」

筑摩?「姉さんのいう、仲間が死んだんじゃないかしら?」

利根「なんじゃと…」

筑摩?「安心していいわ。直に姉さんも同じ場所へ送って上げるから」

利根「ふん、丁重にお断りじゃ。それに吾輩の仲間はそう易々とは死なん!」


瀕死の比叡、満身創痍の瑞鳳、死んだと思われていた泊地棲姫と相対してしまった暁と白露、そして謎の砲弾に

襲われた阿武隈、仲間の安否が全く解らないまま戦闘を継続する利根、ここから彼女達の戦闘は更に苛烈を極め

ていく事になるが、無事この困難を打開する術があるのだろうか。

~撃滅せよ、戦艦レ級~



-敵領域近海-

赤城「仲間を…」

陸奥「こいつらに、仲間意識なんてないのよ」

大鳳「他の深海棲艦や上位の深海棲艦とは全くの別種…狂戦士に等しいわ」

羽黒「ひどい…」

神通「惨いですね」

霧島「ここからは二手に分かれましょう」

陸奥「ええ、そうね」

レ級EL1「待たセタねぇ…」

レ級EL2「キヒヒ、思いの他、コイツ歯ごたえあってサァ…」グチャ…

陸奥「下衆の所業ね」

レ級EL1「ヒドイなぁ。どうせキミ達だって直にコウなるんだからサァ…」

レ級EL2「…ヒヒッ、大人しく食わレロヨッ!」


ビュオッ


ユラリと身体を揺らしながら、緩急をつけた動きで二匹の化け物が陸奥達へ襲い掛かる。

-陸奥・神通・大鳳 vs レ級EL1-

レ級EL1「第二幕、開演ッテ感ジィ?」ギュオッ


バチィィッ


陸奥「…っ!」ザザザッ

神通「はっ!」ビュッ

レ級EL1「ットォ…それは怖いナァ」サッ

大鳳「第一次攻撃隊……」サッ

レ級EL1「させないヨォ!」ドン ドン

大鳳「くっ…!」サッ


ボボボンッ


目にも留まらぬ素早い跳躍から陸奥を弾き飛ばし、それに応戦してきた神通の一閃を真横に飛んで回避、即座に

軌道修正して一気に大鳳に照準を合わせ、艦載機の飛翔を射撃で妨害する。


レ級EL1「ヒハハハハッ!遅い、トロい!何ソレ、さっきより全ッ然ダメじゃない!?」

大鳳「こいつ…」

神通「格段に、速くなってます…!」

陸奥「鬱陶しいわね…!」

レ級EL1「ソレハさぁ、コッチの台詞だよ。ガッカリさせないデヨ…折角、こっちも本気出シテるんだからサァ」


ニタリと笑ったレ級の瞳が真紅に輝き、その輝きは残光だけを残して姿諸共その場から消える。

その動きに大鳳は完全に出遅れ、陸奥も翻弄されて姿を捉える事が出来なかった。

そんな中、神通だけが静かに武刀剣を構えてレ級EL1の動きに呼吸を合わせていた。



ビュオッ


一陣の風を巻いて振るわれた神通の一閃は今度こそレ級EL1を捉える。

それでも、レ級EL1は身を捻って武刀剣の切っ先がギリギリ触れる程度まで強引に軌道をずらし、直撃は避ける。


ズザザザザッ


レ級EL1「……ッ!お前、面白いネ……」ニヤッ

陸奥「神通、貴女…あの動きが見えるの!?」

神通「はぁ、はぁ…姉さんとの修練の賜物かもしれませんね。それでも、全神経を集中させないとなりませんが…」

大鳳「対策を練らないと…不味い。私、完全に出遅れてた」

陸奥「私だって似たようなものよ。けど、同じ過ちはもう御免だわ」

大鳳「…ですね」

レ級EL1「ボクさぁ、その軽巡の女ト最後マデ遊びたいから、空母と戦艦、ドッチが先に食われタイか選らばせ
てアゲルヨ。一歩前に出てキタ方を先に食ってアゲル」

神通「何を、勘違いしているんですか」

レ級EL1「……?」

神通「貴方は、ここで殲滅します」スッ…

レ級EL1「ギャグにしては、笑えナイね、それ…」

陸奥「神通…!」

大鳳「無闇に前に出ちゃ…」

神通「大丈夫です。私は、いつだって前線で戦ってきました」

陸奥「え…?」

神通「過去の栄光がどうであれ、私は今の私でしかありません。それでも、先陣を切って一番槍として責務を果
たす事こそ、私にとってはそれこそが最大の栄誉なんです。もう、弱虫の神通とは決別です」

大鳳「神通、あなたまさか…」

神通「私は第二水雷戦隊の旗艦を務めた川内型軽巡洋艦の二番艦、神通です」

陸奥「記憶…」

神通「今ならハッキリと思い出せます。だから、今度こそ…私は生きて提督の下へ戻りたい」

大鳳「…うん、私も戻りたい」

陸奥「そうね。まぁ、頭撫でてくるのちょっとウザいけど…」

大鳳「えっ!?」

陸奥「な、何よ…」

大鳳「私、撫でられた事ありません」

神通「それじゃ、戻ったら撫でてもらいましょう」

陸奥「冗談でしょ!?頭撫でられるくらいならこの化け物と一日戦ってる方がまだマシよ」

レ級EL1「あのサァ、ボクの存在蔑ろにスルのやめてくれない?」

陸奥「あら、ごめんなさいね?戻ったら何するか決めかねてたのよ」

大鳳「やりたい事多いんだもの、仕方ないでしょ?」

神通「気持ち、改めていきましょう」

レ級EL1「フザケルナッ!!」ギュオッ

大鳳「神通、ごめん!」サッ

陸奥「慣れるまで、少しだけ時間を頂戴!」サッ

神通「殿、この神通が引き受けます」ダッ


レ級EL1の動きに合わせて三人も動き出す、陸奥と大鳳は後方へ、神通は一歩前に踏み込んでレ級EL1を迎え撃つ。

しかしレ級EL1の狙いは神通ではなく、後方に控えていた大鳳や陸奥。

神通もそれに感付き、レ級EL1の進路を塞ぐようにして攻撃を繰り出す。

レ級EL1「邪魔を、スルナッ!!」ドン ドン


サッ


ボボボボン


神通「そう言われて退く訳ありません!」ドン ドン

レ級EL1「チッ…!」ザザザッ サッ


ボボボン


牽制で放たれた神通の一撃を横に飛んで回避し、レ級EL1の動きが失速する。

そのまま神通は陸奥と大鳳を己の身で隠すようにレ級EL1の正面に立ち塞がる。


レ級EL1「ソンナに最初に死にタイのか」

神通「そう、見えますか?」

レ級EL1「見えるネェ…正面塞げばボクを抑えラレるって、本気デ思ってル?」スッ…

陸奥「神通っ!」

神通「……っ!」サッ

レ級EL1「遅いネェッ!」ギュオッ

陸奥「くっ…!」ジャキッ…


ボゴォッ


陸奥「げほっ…!」ズザザザッ 小破

大鳳「なっ…」

神通「そんな、まだ…速く…」

レ級EL1「絶望は、コレカラじゃないカナ?」ニヤリ ビュッ


バキィッ


大鳳「うぐっ…!」ズザザザッ 小破

神通「くっ…!」ドン ドン


サッ


ボボボン


レ級EL1「甘い甘い…!」

神通「」(陸奥さんも、大鳳さんも、私も…三人がかりで、手も足も出せないなんて…)


レ級EL1の動きは神通達の想像を遥かに超えていた。

正面に立ち塞がっているはずの神通を置き去りにして陸奥を殴り飛ばし、更に後方に控えていた大鳳をも、その

禍々しい艤装で蹴散らす。

硬直を狙って放たれたであろう神通の一撃すらも余裕を持って回避し、その顔には相手を小馬鹿にするいつもの

レ級EL1の表情が戻っていた。

本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-霧島・羽黒・赤城 vs レ級EL2-

レ級EL2「シャアッ!!」ビュオッ


ドゴォッ


羽黒「きゃあっ」ズザザッ 小破

赤城「羽黒さん!」

霧島「このっ!」ドォン ドォン


サッ


ボボボボボォォン


レ級EL2「アハハハ!無理だよ、そんなトロイ攻撃…当たるワケないでしょ。ボクはねぇ、ただお前達をクエレ
ばそれでイイんだよねぇ。ダカラさぁ、大人しくクワレてくれないカナァ」

霧島「くっ」

赤城「……」スッ チャキッ…

レ級EL2「ナニナニナーニ…そのほっそいエモノで、ボクを討てると本気デ思ってるワケ?」

赤城「第二次攻撃隊、発艦してください!」ビュッ


ヒュン ヒュン ヒュン


レ級EL2「ハァ…芸が同じジャアさぁ…」サッ


ヒュン ヒュン ヒュン


ボゴオオオォォォン


赤城「なっ…!」



レ級EL1と同時に駆け出してきたレ級EL2は手近に居た羽黒を力任せに片手で弾き飛ばし、追撃をかけようとす

るも霧島の砲撃でそれを断念する。

が、それも全て遊びの範疇内であることを自身は十分に自覚した上で動きを止めていた。

更に赤城の放った航空隊を自身の艦載機で全て撃ち滅ぼす。

この短時間で赤城達に圧倒的な絶望の片鱗を垣間見させるには十分な脅威をレ級EL2は見せ付けた。


レ級EL2「改めて……モウ一度聞くよ?誰カラ最初に、クワレたい?」


大抵の精神の持ち主ならばこの時点で半狂乱となり逃げ出し食われ、殺され、兎にも角にも碌な終わり方をせず

バッドエンドを迎えるところだろう。

しかしレ級EL2の眼にはそれらの行動は理解の範疇を遥かに越える、言い換えれば愚策の極みとも言うべき謎に

満ちた行動として映っただろう。

つまり、赤城達はそれでもレ級EL2へ立ち向かったのだ。

赤城「…戻ったら、お腹一杯にご飯を食べましょう」スッ…

羽黒「賛成です。おかわり、しちゃうくらいに食べますよ」ジャキッ…

霧島「間宮さんが困らない程度に抑えないと、今度は指令が煩いと思いますよ」ジャキッ…

赤城「……」

羽黒「号令、お願いします」

霧島「いつでもいいわ、赤城さん」

赤城「いきましょう。帰るんです、みんなや提督の待つ、あの鎮守府へ…全員で帰るんです。ですから、決して
ここで負ける訳にはいきません。私達はこの日の為に練成してきました。きっと大丈夫、勝ちにいきますよ」

レ級EL2「勝ちにイク?ヒヒッ、アハハハハ!頭の中はお花畑カヨ!?バカもここまでくるとビョーキだね」

赤城「何とでも言って下さい。事実以外は述べません。みなさん、いきましょう!」

霧島「了解よ!」

羽黒「はい!」

レ級EL2「あっそう…ジャア、もうお前等死んでクレテいいよ。その後で、死体ヲ食えばイイしさ。本当は生き
たまま食べるノガ通なんダヨ。泣き喚いて、苦痛に歪む顔ヲ最後マデ見ながら、ソイツを食い散らカスのが最高
にイイんだよ!けど、お前等ナンカ冷めちゃったカラさぁ…」ユラリ…


ビュオッ


そう呟いて動き出すレ級EL2の姿を三人は完全に見失う。


赤城「…っ!」サッ

霧島「くそっ!」サッ

羽黒「……」グッ


咄嗟に真後ろへ飛んだ赤城、真横へ跳躍する霧島、そんな中、羽黒だけジッとその場に留まり虚空を見つめ続ける。


霧島「は、羽黒!」

レ級EL2「ビビッて動けませんッテ感じィッ!?」ビュッ


ドゴォッ


羽黒「…っ!」ズザザザッ


レ級EL2の放った艤装の殴打は羽黒を真横から打ち抜き、その身体を大きく弾き飛ばす。

だが、目を丸くしたのは羽黒以外の面子だった。

レ級EL2「アレ?いや、オイ…頭、今吹っ飛ばしたダロ…お前、何で生きテルノ?」

羽黒「はぁ、はぁ…やってやれない事はない、です」 中破

赤城「羽黒ちゃん…」ニコッ…

羽黒「五倍の相手だって、支えて見せます!」

霧島「…そうね、やってやれない事はない。その通りだわ」

レ級EL2「何、やる気出しチャッテんのさ…イラつく連中ダナァ!」ギュオッ


再度レ級EL2が動き出し、今度は真っ直ぐに霧島に狙いを定めて突進してくる。

それを察し、霧島は真正面からレ級EL2の突進を受け止める。


ガシィッ…


レ級EL2「調子に乗るナヨ、艦娘風情ガァッ!!」バヒュッ


バチィッ


霧島「ぐっ…!」ズザザザッ ガクッ 中破


防御姿勢は取っていたものの、艤装で受け損ないレ級EL2の殴打を正面から受けて霧島はその場で膝を突く。

レ級EL2はそのまま身体を反転させて今度は赤城に狙いを定め、一気に駆け出す。


ダッ


赤城「……!」タンッ


赤城は照準を絞らせないようにジグザクに後方へとステップを踏んでレ級EL2との距離を離すが、それを意に介

さずレ級EL2は赤城目掛けて艤装の砲塔を差し向ける。

レ級EL2「バカかお前?距離取っタラ、今度は撃つに決まってるダロ!」ドォン ドォン


ボゴオオォォォン


凄まじい炸裂音を響かせ、一瞬にして赤城の姿が爆煙に呑まれる。


レ級EL2「アヒャヒャヒャヒャ!ハーイ、正規空母の丸焼き一丁上ガリ~、なんてネ」

赤城「くっ…せめて、七面鳥くらいのボキャブラリーが…欲しいところですね」 中破

レ級EL2「ナッ…!なんで、生きてンダヨッ!!」

霧島「笑えないけど、大丈夫なの?赤城さん…」

赤城「この程度、加賀さんが受けた痛みに比べれば…どうって事ありません」

羽黒「けど、飛行甲板が…!」

赤城「大丈夫です。みんな、優秀な子たちですから」

レ級EL2「どいつも、コイツモ…!くたばり損ないの集マリが、何やったってムリなんダヨッ!!」

赤城「限界なんて当に超えています。本人の限界なんて、自分がそうと割り切らない限り無限大です。提督の教
えの一つに、とても共感出来るものがあります。為せば成る……やらずに悔いるより、やって悔いる方が何倍も
ましである事…」

霧島「…信じる力は何物にも勝る。自分が信じたのなら、最後までその信念を貫き通す事。必ずその思いに応え
てくれる存在は居る。信じて待つんじゃなく、信じて前に進み続ける事…」

羽黒「…継続は力也、です。その時は出来ずとも信じてやり続ければ、それはいずれ結果として己の力になって
自身の大きな自信に繋がる。決めた事をやり遂げる強さ、初志貫徹をする事…」

レ級EL2「ダカラ、何なんダヨ!!」

赤城「だから…」

霧島「私達は…」

羽黒「前だけを向いて戦えるんです!」

本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-陸奥・神通・大鳳 vs レ級EL1-


ヒュッ ズガンッ ボゴォッ


次々と繰り出されるレ級EL1の攻撃を辛うじてかわし、受け止め、それでも弾き飛ばされながらも陸奥達は耐え

忍ぶ戦いを強いられていた。

方やレ級EL1はジワジワと相手を弄り殺すが如く、その一方的な暴力を愉しんでいた。


レ級EL1「アハハッ、アハハハッ!弱い、弱い、弱い、弱いッ!!さっきマデの威勢ハ何処いったノサ?ネェ、
早くボクを倒してミナヨ。倒すんダロ?クヒヒヒヒ…」

陸奥「……」 中破

大鳳「……」 中破

神通「……」 中破

レ級EL1「身なりもボロボロ、艤装モ半壊、モウ無理って悟れよ、雑魚ガ…まぁ、ソウやって抵抗シテくれた方
がボクとシテハ食事のしがいがアッテいいけどネェ…クヒヒッ、どいつカラ食おうカナァ…」

神通「…次発、装填済みです。まだ、負けた訳じゃありません」チャキッ…

レ級EL1「ハァ?その距離で、その艤装構えて、ナニするのサ。飛ばすの?ネェ、それって接近戦ノ装備っぽい
ケド投げ飛ばしちゃっタリするワケ?クヒヒヒ…」

陸奥「神通、恐らくチャンスは一度きりよ」

神通「…はい。大丈夫です」

大鳳「気を、逸らしてみせます…!」ググッ

レ級EL1「くたばり損ナイの集団がナニをやったって無駄ダッテ…」

大鳳「全艦突撃!目標、戦艦レ級EL1!完全掃射!!」バッ


ヒュン ヒュン ヒュン


レ級EL1「ハァ、懲りナイねぇ…」サッ


ヒュン ヒュン ヒュン


大鳳の艦爆艦攻隊の発艦と同時に、レ級EL1もそれに応えて艦載機を発進させる。

その直後、神通が静かに動く。


レ級EL1「…ん?」

神通「……間合いの外、それがあなたの驕りです」ビュッ


神通とレ級EL1の間で見れば小さな一歩。

しかし、それは例え小さな踏み込みだとしても、強い信念の篭った大きな前進の一歩。

振り抜かれた神通の右手に、武刀剣の艤装は握られておらず、代わりに短刀ほどの短い何かが握られている。

そう確認した直後、レ級EL1の腹部で何かが大きく爆ぜた。


ボゴオオオォォォン


レ級EL1「ガッ……!」 小破


苦痛に歪む視界の中で、レ級EL1が神通の手に握られている何かに気付く。

彼女の艤装を確認し、不自然な部分を見出す。

武刀剣と共に差し込まれていた魚雷管の束。

その中の一本が消えている。

つまり、今自身を爆破させたのは、魚雷。

神通「言ったはずです。次発、装填済みと…」

レ級EL1「キ、サマ…!」


ドゴオォォォン ボゴオオォォォン


レ級EL1「ガアアアアッ!!」 中破


矢継ぎ早に直前に発艦させた大鳳の艦爆艦攻隊の爆撃特攻がそのまま硬直していたレ級EL1に直撃する。

気を逸らす為に動いた一連の動作だったが、神通の行動が早かった事、その行動によってレ級EL1が虚を衝かれ

た形となって硬直した事で彼女達にとって嬉しい誤算となった。

大鳳の放った艦載機は迎撃に放っていたレ級EL1の艦載機を物ともせず、本隊のレ級EL1諸共完全掃射する。


レ級EL1「グガッ……ハァ、ハァ……ウソ、だ……ボクが、こんな……ダッテ、ボクは、全てを、凌駕する……
戦艦、なんだゾ……」

陸奥「あなたが進化するっていうなら私達だって同じ事よ。成長して、今度こそこの手であなたにリベンジする」

レ級EL1「そ、そウダ…レ級EL2ヲ食えバ…」

陸奥「どこまでも愚かなのね。だから負けるのよ」

レ級EL1「ナニィ…!?」

陸奥「これが、志した者とそうじゃない者の差よ」ジャキッ

レ級EL1「ヤ……ヤメ、ロ…」

陸奥「全砲門、開放……ビッグセブンの力、侮らない事ね!これで、終わりよ!!」ドォン ドォン


爆音を轟かせ、陸奥の全砲門が火を吹く。

放たれた第一から第三まで、全ての砲撃が確実にレ級EL1を撃ち滅ぼす。


ボゴオオオォォォォン


巨大な水柱を生み出し、水面が波打ち、直に静寂が訪れる。


レ級EL1「」 轟沈

大鳳「…やった、やったよ二人とも!」グッ

神通「…はい、やりました」グッ

陸奥「…よしっ!!」グッ


三人が三人とも、強く信じて握っていた拳を振り上げる。

今度こそ、彼女達はレ級EL1を仕留め、勝利を収めたのだ。

-霧島・羽黒・赤城 vs レ級EL2-

レ級EL2「……アー、ウザい。上等だよ…もう遊ぶのヤメだ!食い殺してヤルよッ!!」

赤城「…食い殺せるものなら…」チャキッ…

霧島「はぁ、はぁ…やってみなさい!」ダッ

レ級EL2「手負いノ狼気取りカッ!望み通りにシネェッ!!」グァッ

赤城「艦載機の…皆さん、無理をさせて、ごめんなさいね。でも、これで最後だから…!私の、持てる、全てを
乗せて……大空を、舞ってください……っ!!」ビュッ


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


レ級EL2「ナッ…!?バ、バカな…そのナリで、どうして、艦載機を……ッ!」グッ…

羽黒「躊躇い、ましたね…!」ジャキッ

レ級EL2「チッ…!」ザッ

霧島「無駄よ!」サッ


ドゴォッ


レ級EL2「グッ…!」ザザッ

予期せぬ展開。

致命傷とまでは言わなくとも、痛手を負わせたはずの正規空母の最後の足掻き。

しかし、足掻きと言うには余りにも驚異的な一撃。

レ級EL2は完全に三人を舐めていた。

赤城に負傷を負わせた事で戦闘不能と判断してしまったのがそのいい証拠だった。

結果として自身の動きに制御を掛けて留まってしまい、霧島の侵入を許した。

直後、上空を飛来する赤城の精鋭部隊の容赦ない艦攻艦爆の嵐が吹き荒れる。


ボゴオオォォォン


赤城「す、すみません…これ、以上は…」ガクッ…

レ級EL2「させ、ルカ…!」 中破

羽黒「もう…これ以上、やらせません!」ドン ドン

レ級EL2「この、程度…!ウゴケッ!ボクの、体ァッ!!」ググッ…


ボゴォォン ボゴオオォォォン


レ級EL2「グガッ…!ハァ、ハァ……嘘、だ…ボクは……ボクが、負ける…?」 大破

霧島「はぁ、はぁ、はぁ…」ジャキッ

レ級EL2「イヤだ……ボクは、負けナイ、死なナイ、ボクこそ……最強なんだッ!!」

霧島「……終わりよ。これで……距離、速度……」

レ級EL2「負けるモノカアアアァァァッ!!」グアッ

霧島「…よし!全門…斉射!!」ドォン ドォン


ボゴオオオォォォォォン


レ級EL2「」 轟沈


霧島渾身の一撃は我を忘れて突進してきたレ級EL2を真正面から捉え、見事標的を沈黙させる。

直後、糸が切れたように三人ともその場に崩れ落ちる。


赤城「や、やりました…」

羽黒「あはは…今になって、震えが止まりません」ブルブル…

霧島「陸奥さん達は、大丈夫かしら…」

本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-敵領海域-

戦艦レ級を討伐し、六人は再度合流を果たすがそれぞれ満身創痍の状態でそのまま進むのは不可能だった。


陸奥「流石に、この有様じゃ進軍は無理かしらね…」

赤城「艦載機の子たちにも相当な無理を強いる形になってしまいましたし、修繕もそうですが補給もしなければ
どちらにしろこの先の航行は難しいかと…」

大鳳「そうね…私も、流石にヘトヘトよ」

神通「何はともあれ、一度戻って提督へ報告するのが最善ではないでしょうか」

羽黒「はい、私も司令官さんへ報告に戻る方がいいかなって…」

霧島「無理は禁物だものね」


ザバァァァァ……ッ


進路を取り直し、一旦は戻ろうと歩を進めかけた矢先、その先を遮るかのように海面が波立ち無数の深海棲艦が

姿を現す。


陸奥「なっ…!」

神通「深海、棲艦…!」

大鳳「こんな、時に…!」

赤城「くっ…」

羽黒「そんな…」

霧島「…冗談でしょ」

タ級FS「クククッ…シンガタヲタオストハネェ…」

ル級改FS「タイシタモノダナ…」

ヲ級改FS「ケレド、ココマデ…」

リ級改FS「シズメテアゲル…」

ヌ級FS「ヌカヨロコビ…」

チ級FS「ザンネン、デシタ…」


パッと見ただけでも瞬時に自分達と相手の戦力差が計り知れた。

現時点で、負傷を負ったままで勝てる相手ではないと。

黄色に輝く瞳を持った戦艦タ級に軽空母ヌ級と雷巡チ級、左の瞳が燦然と蒼く輝く戦艦ル級と空母ヲ級に重巡リ級、

前者はフラグシップ型、後者は前者を更に強化した改良型のフラグシップ型、どちらも笑って済ませられる相手

ではないのは明白だった。

しかし、次の瞬間、今度は陸奥達を護るようにして艦娘達と深海棲艦達の間に砲撃が撃ち込まれる。



ボボボボボボンッ


霧島「こ、今度は何…!?」

ル級改FS「ナニゴトダ…!」

タ級FS「チッ…ドコカラ…!」

??「潔く散るナラまだしも、アノ女の手先に成り下ガルとは…」

??「見下げ果テタワ」

ヲ級改FS「ナッ…!」


水飛沫が納まり、声の主が陸奥達を素通りして彼女達を護るように前に出る。


神通「えっ…」

陸奥「あなた達は…!」

ピーコック「同族として、ケジメをつけてアゲルわ」

南戦鬼「悪いケド容赦はシナイ」

南方棲鬼「悪いワネ。ここは、通しマセン」

装空鬼「南方姉妹ダケでも十分に思えたケド、これほどの戦力ヲあの女ガ揃えてイタなんてネ…」

中間棲姫「誘爆シテ、沈んで逝きナサイ…」

空母棲鬼「愚カナ子たち…何度デモ、沈んでイケ…」

赤城「なんで、深海棲艦が…」

ピーコック「…アナタ達が慕う提督大佐に賭けてミタだけよ」

羽黒「え…?」

装空鬼「突拍子もナイ提案ダト思ったケド、背に腹は変えられナイ、という事ヨ」

南戦鬼「南方棲鬼、アノ二匹は私達カシラね」

南方棲鬼「ええ、ソウネ。見せて上げまショウ?ホンモノの、砲撃を…」

中間棲姫「……戻るのナラ、気をつけるコトね」

霧島「何ですって…?」

空母棲鬼「シンエイは、アナタ達の鎮守府ニモ敵を差し向ケテいるわ」

ピーコック「こうナルであろうコトを、想定してイタんでしょうネ。別にこのまま留まってイテもイイけど、
余計な火の粉ヲ被っても知らナイわよ」

赤城「……恩に着ります」

ピーコック「フフッ、ヤメテくれる?そういうの、むず痒くてイヤだわ。それに……まぁ、いいわ。撤退マデの
時間くらいは作ってアゲル。その後で被害ヲ被っても、文句はナシよ。さぁ、いきなサイ…!」

-数日前-

ピーコック「……」

南戦鬼「ピーコック、そろそろ意識ヲ切り替エテ貰わナイと困るワ」

南方棲鬼「フェアルストの件は残念に思うケド、現状は緊迫シテいる」

中間棲姫「三竦みの図トハ到底言い難いモノ…」

空母棲鬼「矛先ハ確実にコッチヨネ…」

リコリス「…新型の戦艦ハやはりシンエイの駒とシテ機能シテいるから、戦力に数えるコトは不可能」

ポート「まさに、八方塞と言うワケね」

アクタン「……」キョロキョロ ソワソワ

ピーコック「…賛成スルかどうかは別とシテだけど、一つ……提案がアルわ」

リコリス「提案…?」

ピーコック「ゴメンなさい。始めに謝ってオクわ」

ポート「ピーコック…?」

ピーコック「私は、シンエイの奇襲カラ逃れた後で、ある鎮守府へ立ち寄った…」

空母棲鬼「ナンですって…?」

ピーコックは今度こそ、全てを包み隠さず嘘偽り無く語った。

フェアルストの力添えで逃れた後で提督鎮守府へ立ち寄り、そこで元々リコリスが計画していた内容以外を伏せ

て殆どの実状を包み隠さず話してしまった事。

その上で、仲間達を助けてくれるのなら自らの首を差し出すと申し出た事。

しかし提督大佐はその提案を受け入れず、提供された情報だけを信じて自らを解放した事。

自らは、その提督大佐に全てを賭けて見ようと思っている事。


ピーコック「私は、フェアルストの仇ヲ取る。けど、私一人デハどうしようもナイ。相手の戦力は未知数…そん
な所へアナタ達ヲ同行させるのは気が引けたノヨ。何より、私が一人デ決めたコトだったから…」

ポート「艦娘達に与シテ、フェアルストの仇ヲ取るタメの戦力を得ようとシタの?」

アクタン「ピーコック…」

ピーコック「…皆、覚えテルかしら。生まれたトキのコトを…」

リコリス「……」

中間棲姫「はじめは、静カナ気持ちだったノヲ覚えてるわ…」

空母棲鬼「気付けば、艦娘と戦ってイタワネ」

ピーコック「…暗イ水底、深海奥深ク…海面カラ差し込む光スラ届かない…孤独デ寒い、ソンナ中で私達は過ご
してキタ…青い海、澄ミ渡ル空に憧れヲ抱き、想いヲ馳せて、叶わナイと諦め、自分達の望むべく場所ヲ揺蕩う
艦娘達を深く憎みナガラ生きてキタ……」

ポート「ピーコック…?」

ピーコック「…私達の根本ハ何ダ?」

リコリス「え…?」

ピーコック「艦娘ヲ滅ぼすコトか?」

装空鬼「ソレハ…」

ピーコック「この海ヲ、深海と同じ色に染めるコトか?」

南戦鬼「……」

ピーコック「…違う。そうデハない…少なくトモ、私はただ…この青い海デ、青い空ヲ眺めていたかったダケ」

アクタン「デ、デモ…」

ピーコック「……?」

アクタン「でも、ワタシ達がそれヲ望んでも、イイの?」

リコリス「アクタン…」

ピーコック「…少なくトモ、あの提督ハ望んデモいいと言ってクレた。必ず、コノ青い海の上デ、お前たちニモ
穏やかなトキが過ごせる日ガ訪れるようにシテみせる……ッテ、言ってくレタ」

リコリス「人間が…ソンナ、ことを?」

南方棲鬼「信じろッテ言うの?いいえ、ピーコックはその言葉ヲ信じたと言うノ?」

ピーコック「私は、信ジタ…シンエイのような裏切りに遭うカモしれない…ソレでも、私はあの男のコトバには
偽りナド含まれてイナイと信じてみタクなったのヨ。人間の可能性ヲ、一縷の望みヲ、私達ダッテ信じてミテモ
いいハズでしょ!?」

ーコックの叫びはその場に居た全員を動かした。

当初、リコリスは自分達を生み出した原因が海軍にある事実を掴んだ時点で、本格的な戦争に持ち込むつもりだった。

海軍が今も尚、隠匿し続ける過去の歴史と艦娘の秘密。

新鋭からもたらされた情報により、疑問は確信に変わり、怒りが吹き上がってきた。

だからこそ宣戦布告をし、警告と言う形で警鐘を鳴らした。

これが最終通告だと。

だが、情報をもたらした新鋭の離反によって何が正しいのかさえ解らなくなった。

しかしピーコックの言葉をリコリスも信じたくなった。

如いては知りたかった真実に近付けるかもしれないと言う淡い期待も抱いて…

リコリス「…貴女はソレで、後悔しないノネ?」

ピーコック「しないワ。泊地棲姫が沈んだトキ、彼女には悪いケド、正直何の感情モ沸かなカッタ。けど、それ
が間違いだったのカモしれないワネ。フェアルストが居なくナッタと悟ったトキ、初めて涙ガ出た。怒りヨリ、
憎しみヨリ、何よりもマズ、悲しいと思った。私は、例え死ぬコトになってもフェアルストの仇ダケは取って、
それから朽ち果テル。覚悟は出来テルわ…アナタ達は別に付き合わなくテモいい」

ポート「随分ナ言い草ネ」

ピーコック「え…?」

アクタン「ピーコックが、イイ奴って言うなら、ワタシは信じる!」

ピーコック「アクタン…」

リコリス「……私達は何時ダッテ一蓮托生、とマデはいかないけど、共に歩んでキタ『仲間』でしょう?」

ピーコック「仲間…」

中間棲姫「教えて上げまショウ。あの女に、私達が本気にナレばどうなるノカ…」

空母棲鬼「ソウね…歯向かうのナラ、容赦はしナイ」

装空鬼「一度ダケよ、信じるのはネ」

南戦鬼「ホンモノの砲撃、見せてあげましょうか」

南方棲鬼「デハ、いきましょうか」

ピーコック「何処マデ堕ちテモ、お人好しハ変わりナイのね」

アクタン「ンフフ♪」


こうして、目的を新たにピーコック達も戦線に参列する事になる。

新たな希望と、そこに秘める想いを成し遂げる為に、今こそ最終決戦が幕を開ける。

本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

~悪鬼跳梁、敵包囲艦隊を撃滅せよ~



-絆の下に-

利根「ちぃっ!」バッ

筑摩?「いつまで逃げ回るの、姉さん?」ドン ドン


ボゴオォォォン


利根「ぐっ…!」 中破

筑摩?「いい加減、力量の差を悟ったらどうかしら?」

利根「何とでも、言え…まだ、吾輩は……なっ!?」


ザバァァァ……


最後の一滴まで、そう表現するに相応しい闘志を漲らせる利根の表情が一瞬にして凍りつく。

筑摩の背後、有象無象と表現するに相応しい数の深海棲艦の群れが艦隊を成して出現したのだ。

そして能面のような表情で筑摩が口角だけを僅かに釣り上げ死刑宣告を利根へ告げる。


筑摩?「時間切れね…この数の増援、姉さん一人じゃどうしようもないでしょう?さぁ、潔く死になさい」ジャキッ


──いいや、死ぬのはテメェだ──


ボゴオォォン


筑摩?「ぐっ…!誰…!?」 小破

天龍「誰かって?オレ様の名前をしらねぇとか、テメェはモグリか?」

龍田「え~っと、筑摩さんを侮辱してるクソ野郎はあなたかしら~?」

利根「お、お主等…!」

天龍「よう、利根さん。安心しろって、オレ等だけじゃねぇからよ…!」

翔鶴「仲間が困っているのに、指を咥えて見てるわけにはいきませんものね」チャキッ…

武蔵?「さぁ、宣言通り砲撃処分にして終わりだ」ジャキッ…


ボゴオォォン


武蔵?「うぐっ…!」ヨロッ… 小破

比叡「ぇ……?こん、ごう…お姉、さま……?」


重傷の比叡に向けて翳された武蔵の艤装をどこから放たれたのか一発の砲撃が狙い落とし阻止する。

薄れそうな意識の中、比叡は周囲を見渡す。

そしてぼんやりと見える影に金剛の幻を見たのか、小さく呟いて比叡の意識はそこで途絶えた。


ビスマルク「間に合った…!」

大和「彼女の期待に応えられなかったのが心残りでしょうか」

武蔵?「ちっ…横槍か」

大和「……ビスマルク、彼女の相手はこの大和がします。貴女は周辺艦隊の漸滅をお願いします」

ビスマルク「ええ、任せておいて」

阿武隈「なんで、あんたがっ…!」

泊地棲姫?「……私ハ、滅ビヌ……」

阿武隈「」(まずい、腕と一緒に艤装も破壊されてたんだ…これじゃ、戦うことすら…)

泊地棲姫?「フン…」ブンッ


バシャァァァ……


阿武隈「なっ…!」

暁「……」 大破

白露「……」 大破

阿武隈「あ、暁!白露!」

暁「ぅ……ぁ……あぶ、くま、さん……」

白露「げほっ……!ご、めん…ドジッちゃった……」

阿武隈「し、喋らないで!すぐ助けるから!」

泊地棲姫?「無駄なコトを…忌々シイ艦娘ドモめ……ッ!」


──忌々しいのはお前の方だ──


泊地棲姫?「……?」クルッ…


海原に響き渡った声に泊地棲姫の動きが止まり、静かに周囲を見渡す。

そして三つの陰がそこに浮き上がってくるのを確認し、その口元が俄かに釣り上がる。


泊地棲姫?「艦、娘……ッ!」

日向「待たせたな、阿武隈」

阿武隈「日向、さん…それに……」

阿賀野「もう、大丈夫だからね、阿武隈ちゃん!」

飛鷹「大切な仲間、ここまで痛めつけてくれたお礼はさせてもらうわよ…!」



瑞鳳「勝ったのはいいけど、ボロボロ…思った以上に、動けないもんだなぁ…」プカプカ…

祥鳳「いつまで寝てるの?」

瑞鳳「えっ!?」ガバッ

祥鳳「無事でよかったわ、瑞鳳」

瑞鳳「し、祥鳳…!?え、何で?どうして?」

祥鳳「貴女の所の提督の話に賛同した他の提督や鎮守府が総出で援軍に駆けつけてるって感じかしら?」

瑞鳳「え、でも…祥鳳は、その…元帥直属で、余り出撃任務には赴かないって前に提督が…」

祥鳳「そうね。だから今だけ私は元帥直属じゃないのよ。今だけ、私は智謀提督傘下なの。他の皆もね」

瑞鳳「他の、皆?」

祥鳳「実はね────」

智謀「元帥殿…」

元帥「以前にな、彼に言われた事がある。助けを求めている存在がそこにいながら、何故見て見ぬ振りをするの
かと…返す言葉もなかったよ」

智謀「彼は、非常に真っ直ぐな性格をしていると思います。危険を顧みない、愚直なまでに真っ直ぐに突き進む
あの姿勢は、この大本営に在籍する全ての者達に忘れ去られた姿勢でしょう。私も、元帥殿も…」

元帥「ああ言う男が、まだ居るのだと知れた事が個人的には嬉しくてね。そこで、智謀くん…」

智謀「はっ」

元帥「君は、そんな彼に任務を非公式に与えたそうじゃないか」

智謀「…申し訳ありません。余り、元帥殿のお耳には触れさせたくない内容でしたもので…」

元帥「大きな声ほど聞こえなくなり、小さな囁きほどよく耳に入る。こういう時は便利な耳でな」

智謀「…如何なる処分も甘んじて受ける覚悟であります」

元帥「ならば命じようか、智謀大将。現時点を以て君に我が艦隊の一部を貸し与える。これを持って提督大佐の
援軍へ赴くのだ。同時に大淀には近隣の鎮守府に応援要請を出しておいた」

智謀「は…?」

元帥「海軍の汚点をこれ以上隠匿することこそ罪だろう。まずは、目先の脅威を沈静化させる。その後で、今度
は我々が彼に、艦娘に、欺いてきた者達へ謝罪を述べるべきだろう」

智謀「元帥殿のお言葉とあれば、この智謀は全てを賭しましょう」

元帥「頼むぞ。次の世代、むざむざ死なせる訳にはいかんのでな」

智謀「はっ!」


祥鳳「────まぁ、そんな訳でね。とにかく負傷者は提督大佐の鎮守府までの護衛をしつつ帰投させるように
って言伝もあるの。ここは危険だわ。まずは戻る事は考えましょう」

瑞鳳「けど、まだ他の皆が…」

祥鳳「私一人が来たわけじゃないわよ。他にも援軍は向かってる。大丈夫、誰一人として沈ませはしない」

-提督鎮守府・会議室-

提督「いや、まさかこれほどまでの支援をもらえるとは…」

先輩「父さんに頭下げられちゃったしねぇ」

不動「よもやあんたと肩並べる日が来るなんてなぁ、思いもよらねぇとはこの事か」

智謀「相変わらず口数の減らない人ですね。それよりも提督大佐、先遣として進出した戦艦比叡の艦隊とこちら
の援軍の合流が確認されました」

提督「それじゃ…!」

智謀「ただし、思いの他苦戦を強いられたようです。比叡と暁・白露は大破、利根と瑞鳳・阿武隈が中破という
惨状だったようです」

提督「なっ…!」

智謀「安心して下さい。命に別状は無いと、先ほど連絡を貰っています」

提督「そ、そうか…だが、まだ陸奥たちから応答がない。こっちも気がかりだ」

智謀「そちらにも援軍は向かわせています」

不動「腑に落ちねぇのは、うちにいる筑摩や先輩鎮守府んとこに以前居た武蔵の姿が確認されてた事だ」

先輩「そうね…それに、ヒヨッ子の艦隊で撃滅を確認してたはずの泊地棲姫の姿もあったというわ」

不動「一体どうなってんだ?」

智謀「恐らく、クローンですよ」

提督「…信じ難いものですが、智謀提督もそういう結論なんですか?」

智謀「概ね、と言った所です」

先輩「クローン?それって、同一の起源を持ち、尚且つ均一な遺伝情報を持つっていう…?」

提督「俺も詳しい内容を知ってる訳じゃないんですが、艦娘達はその身体情報を大本営に個体識別番号順に登録
する義務があります。言わばプロフィール的なものですね。そこには各艦娘達の生体データも含まれている」

不動「おい、解りやすく説明しやがれ」

智謀「つまり、新鋭は大本営に居た頃にどういう手段を用いたのかは解りませんが、艦娘達の生体データを奪取
してそこから同じ遺伝子情報を持つ艦娘を造り上げたという事です」

提督「泊地棲姫を討滅した際、その亡骸を俺たちは回収せずに、彼女自体はそのまま深海へ誘った。恐らくその
亡骸を利用して、新鋭が新たに泊地棲姫のクローンを生成したと考えられるわけです。ただ、俺としては根拠も
生体データの云々だけで、決定的とまでは言えないものだったので…」

先輩「真偽はどうあれ、それがもしも本当だとするならとんでもない事してくれるわね、あの子…」

不動「おい、それが事実なら無尽蔵に艦娘造られちまうんじゃねぇのか!?」

智謀「それは恐らくありえません。少なくとも、現時点では、ですけどね」

不動「何故言い切れる!?」

智謀「費用対効果の問題もあるでしょうが、新鋭が現状根城にしている鎮守府近海に出現した追撃隊、その全て
が深海棲艦であると言うのも、その証拠の一端かと思われます」


ザー…ザザザッ……


提督「…!榛名か、どうした?」

榛名『提督、飛龍さんの艦載機からの報告ですが、深海棲艦が連合艦隊を形成して押し寄せてきているみたいで
して、相当の数が予想されます。現時点で艦種までは不明との事です』

提督「やっぱ来たか…榛名、第一種警戒体制を解除、各自戦闘配置について迎撃体制に移れ」

榛名『了解しました!』

智謀「正面艦隊の指揮は私が取ろう」

先輩「それじゃ、私と不動さんで左右かしらね」

不動「おう、任せとけ!提督、お前さんはここで全体を見ろ」

智謀「その為のサポートできる艦娘も呼んできています」

大淀「失礼します」

提督「大淀か…!?」

大淀「提督大佐、宜しくお願いします」

智謀「では、私達は前線へ向かいましょう」

先輩「おっけー!」

不動「須らくその全てを葬ってやろうか」

本日はここまで


珍しく更新が無かったからちょっと心配した
でも無理はしないでね

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします


>>562
ご心配わざわざありがとうございます
しぶとく生き長らえてございます
これでも結構自分の好きなペースでやらせて頂いてるので恐らく問題はありません!

-鎮守府正面海域-

榛名「感謝します、皆さん」

川内「ホント、大助かりだねぇ」

那智「気にするな」

夕張「あー、ちょっと緊張する…」

伊勢「ふふ、そう緊張する事でもないよ。それよりも、元帥の部隊なんてそうそうお目に掛かれないから、私達
としてもいい機会かなぁ」チラッ…

那智「…ふん」

蒼龍「久しぶりだね、飛龍!」

飛龍「蒼龍、来てくれて助かったよ」

時雨「さて、どう動こうか」

電「準備万端なのです!」

智謀「戦闘準備は整っているようですね」

那智「貴様が指揮を執るのか。準備は滞りなく済んでいる。好きなように動かせ」

衣笠「それで、どう振り分けるのかしら?」

智謀「戦艦二名、重巡二名、軽巡二名、空母二名、駆逐二名、計十名。これだけの規模なら水上打撃、空母機動
どちらかの聨合艦隊を編成するのが上策ですね」

榛名「聨合艦隊、ですか?」

智謀「そうです。両側面よりもこの正面は戦力が局地化し戦火の苛烈を極めるのは必然。なればこそ、この正面
に戦力を集約し、風通しを良くする意味でも確実に敵戦力を撃滅する必要があります」

榛名「了解しました!」

伊勢「やってみせましょうか!」

智謀「敵は目前まで迫ってきています。迅速に決定し、即時陣形を展開。迎撃の体制へ移行します」

那智「全権は貴様等にある。好きなように選抜すればいい」

智謀「では…空母機動聨合艦隊として出陣します。空母二名を基幹に形成します。飛龍を旗艦とし随艦に蒼龍、
榛名、伊勢、那智、以上を空母機動聨合艦隊第一部隊。次、衣笠を旗艦とし随艦は川内、夕張、時雨、電、以上
を空母機動聨合艦隊第二部隊として任命します」

那智「見せてもらうぞ、戦艦榛名。貴様の腕をな」

榛名「お任せ下さい!」

蒼龍「飛龍、頼むね!」

飛龍「うんっ!索敵は念入りにね!」

智謀「陣は前方警戒の第二警戒航行序列。敵を確認後、戦闘隊形の第四警戒航行序列に切り替え敵を撃滅せよ!」

艦娘「「「了解!!」」」

-鎮守府左側面海域-

先輩「皆、準備いいわね?」

長門「無論だ」

酒匂「やったぁ!出番だぁ!」

摩耶「おう、任せな!」

木曾「へへっ、上等だぜ。纏めてぶっ潰してやる!」

北上「私、木曾っちの後ろに隠れてていい?」

木曾「あ゛?」

北上「じ、冗談だって…」

島風「連装砲ちゃんの整備もバッチリ!」

春雨「頑張ります!」

龍驤「空の目は任せといてな!」

先輩「よしっと…正面は智謀さんが見といてくれてる。私達は鎮守府左側面を警戒するわよ」

-鎮守府右側面海域-

不動「よっしゃあ!お前等、準備はいいだろうなぁ!?」

金剛「また随分と気合入ってるネー」

不動「ったりめぇだろ。新鋭には苦虫噛み潰されてばっかりだったからな…どんな形だろうがリベンジできるっ
てんだから、気合も入るってもんだ」

瑞鶴「翔鶴姉ぇと一緒が良かったのになぁ…」

矢矧「ふふっ、五航戦はホント姉妹で仲が良いわね」

瑞鶴「い、良いじゃないのよ、別にぃ…」

鈴谷「よーし、張り切っていきましょー!」

熊野「一捻りで黙らせてやりますわ!」

隼鷹「よっしゃー!飛鷹が居ないのが少し残念だけど…まぁぜんっぜん、いけるいける!」

瑞鶴「ち、ちょっとちょっと!あんたその手に持ってるの、まさか…!?」

隼鷹「あん?あぁ、これ?酒だけど?ったりめぇだろぉ!」

金剛「Oh…」

矢矧「決戦前に!?」

隼鷹「まぁまぁ、細かい事ぁいいんだって!パーッといこうぜ~。パーッとな!」

瑞鶴「もー、この間もそういって酔っ払って天龍に斬られそうになってたクセに…」

隼鷹「喧嘩っ早いのも考えもんだよな~」

瑞鶴「そういう意味じゃないってば、ほんっとにもう…それはそうと、防空に対する警戒が少し薄い気がするん
だけど、私や隼鷹の艦載機…大丈夫かしら」

不動「おう、そこら辺は抜かりねぇ。正面の警戒と上空の警戒、両方できる優秀なのを元帥殿んとこから応援で
来てくれてるしな」

磯風「陽炎型駆逐艦十二番艦磯風、推参」

秋月「秋月型防空駆逐艦一番艦秋月、ここに推参致しました」

不動「おう、さんきゅーな!期待しかしねぇから頼むぜ!」

金剛「Oh、磯風デース!」

磯風「金剛…」

不動「んだぁ、知り合いか?」

金剛「ふふっ♪」

磯風「……貴女の背、今度こそ護り抜いてみせよう」

-会議室-

大淀「……なるほど、全体の配置と役割、艦娘達の分布は偏りなく綺麗ですね。一応持参した出撃計画はこちら
になりますが…」

提督「是非拝見しようか」

大淀「ここまでの計画図があれば不要にも感じますが…」

提督「念には念を、これだけの規模だ。三面にそれぞれ少将殿に大将殿が布陣してくれてるつっても、不測の事
態は平然と起こる、だろ?」

大淀「否定はしませんけど…これほどの大規模艦隊、それも正面と左右に扇状に展開してるものを動かそうとな
れば、時間も労力も相当なものですよ?」

提督「まぁ、だから予備策として置いとくんだよ。開戦すれば綺麗な陣形で事が進む訳じゃない。悲しいが、無
傷ってわけにもいかないだろ?事態が起こってから策を講じてたら全て後手になる。そうさせない為にも、実践
する機会が例えなかったとしても、備えておいて損はないってもんだ」

大淀「…確かに、そうですね」

提督「さて、それじゃもう一度全体の配置を確認しておこうか」

大淀「解りました。艦種毎に纏めますか?」

提督「いや、それぞれの艦隊毎に纏めよう。その方が指針も定まりやすい上にその後の展開にも対応しやすい」

大淀「了解致しました」

まず、鎮守府正面海域を防衛する艦隊からです。

鎮守府正面海域を指揮するのは智謀大将提督です。

先ほど連絡があった通り、空母機動聨合艦隊旗艦艦隊を編成し戦闘配置へ着いています。

聨合艦隊第一部隊の旗艦は飛龍、以下随艦として蒼龍、榛名、伊勢、那智を配置。

聨合艦隊第二部隊の旗艦は衣笠、以下随艦として川内、夕張、時雨、電を配置。

次いで鎮守府左側面海域を防衛する艦隊です。

鎮守府左側面海域を指揮するのは先輩少将提督です。

こちらは聨合艦隊は編成せず、二部隊編成となります。

左側面海域哨戒戦隊の旗艦は長門、以下随艦として龍驤、酒匂、島風を配置。

左側面海域警戒部隊の旗艦は摩耶、以下随艦として北上、木曾、春雨を配置。

最後に鎮守府右側面海域を防衛する艦隊です。

鎮守府右側面海域を指揮するのは不動大将提督です。

こちらも聨合艦隊は編成せず、二部隊編成となります。

右側面海域哨戒戦隊の旗艦は金剛、以下随艦として隼鷹、鈴谷、磯風を配置。

右側面海域警戒部隊の旗艦は瑞鶴、以下随艦として熊野、矢矧、秋月を配置。

更に鎮守府正面海域には潜水艦警戒線を実施。

旗艦をイムヤとし、以下随艦としてゴーヤ、イク、まるゆを配置。

第一種警戒体制で待機中なのは以下の艦娘達です。

提督艦隊からは夕立、ヴェールヌイの二名。

智謀艦隊からはプリンツ、私、大淀の二名。

不動艦隊からは古鷹、筑摩の二名。

先輩艦隊からは朝雲、秋雲の二名、以上です。

提督「丁寧で解りやすいな。しかしこうして見ると圧倒的に空母組が少ない。敵側に空母機動部隊の一群が現れ
た場合、対応に苦慮しそうだ」

大淀「前線に赴いている艦隊が無傷で戻ってくれば…という淡い期待はありますが、先の連絡を受けていますの
で、中々上手く事は運ばないかと…」

提督「対空に対する防御自体はあっても、制空権を取れるのと取れないのじゃ雲泥の差だからな。まぁそれはそ
うと、幾人か知らない名前の子が多いが…」

大淀「智謀提督と先輩提督の所から応援できている艦娘は、本来なら大本営防衛の勅命が下った場合に際しての
み活動する子達ばかりですから、提督大佐が知らないのも無理はないと思われます。かく言う私もその内の一人
なのですが、まぁ元帥殿に抜粋されている艦娘の殆どは本来の任務には赴かないのが基本です。俗に言われる、
元帥直属艦隊がそれに当たりますね」

提督「へぇ…んじゃ、やっぱり実力も折り紙付きな訳だ?」

大淀「さぁ、それはどうでしょう。確かに他より錬度が高いのは否定しません。何より、元帥直属艦隊が本腰を
入れて実戦に臨む事など皆無に等しいですからね」

提督「ふーん…」(遠回しだがようは華やかに彩っただけのお飾りって言ってるようなもんだな。豪華絢爛に、
威風堂々と見えてはいても、結局はパフォーマンスに過ぎないと…)

大淀「一つ、彼女達の面子を保つ為に言わせて頂ければ、それでも元帥直属であり続ける、という事がどれ程の
偉業かを認識して頂ければ幸いです。それでは全体を俯瞰に見ての陣形配置ですが、初期配置は次の通り、正面
聨合艦隊は第二警戒航行序列、前方を警戒した陣形です」

提督「伊達に戦術戦略に長けてるだけの事はあるって感じだな。口出しのしようもない」

大淀「左右は共に第一艦隊が輪形陣、第二艦隊が複縦陣で初期配置を終えています」

提督「敵は直に見えてくるだろう。各空母組の艦載機や他の艦娘の放っている水偵、水観が真っ先に発見してく
れるはずだ」

大淀「このまま静観して迎え撃ちますか?」

提督「何事も出だしが肝心って言うだろ。機先を制す…発見次第、先制で叩き潰すのが……」


ザー…ザザ……


智謀『提督大佐!危惧していた事態だ』

提督「!?」

大淀「危惧していた事態?」

提督「さっきも言っただろ。こっちには空母組が少なすぎるって…つまり────」

智謀『ああ…』

先輩『智謀さんに不動さん、それにヒヨッ子も聞こえてるわね?』

不動『ああ、飛龍達の艦載機からの連絡だろ。くそが…ッ!』

先輩『こっちの戦力図、相手に筒抜けよ。相手は空母機動艦隊で攻めてきてる!』

不動『完全に制空権を奪取して空爆の雨霰を降らせる気満々みてぇだ』

智謀『凌ぐ手立てさえあれば…』

大淀「まさか、敵方の空母群…!」

提督「新鋭のほうが一枚上手だったってことなのか…」

本日はここまで

やっぱこのシリーズ最高だわー。
あ、不動提督の筑摩ってどういうこと?

>>575
>>6で筑摩の異動辞令が出てるからそれじゃね?

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

>>576
>>575さんへの補足説明ありがとうございます

-敵聨合艦隊中枢部-

新鋭「ふふっ、どれだけ足掻こうと無駄よ。きっちり潰して禍根全て根絶やしにした上で計画の実行に移らない
事には、片手団扇って訳にもいかないし…苦労は今の内にってね」

ル級改FS「ホウコクデス」

新鋭「…何?」

ル級改FS「ヨウドウトシテ、ワナニハメタアイテカンタイ…ソレヲホウイシテイタ、ワガイチダンデスガ、ゼン
メツガカクニンサレマシタ」

新鋭「何ですって…!?」

ル級改FS「シンジガタイホウコクデスガ、ジジツデス」

新鋭「レ級を三匹配置して、でかい餌にしていたのよ!例えレ級を制圧できた所で満身創痍、そんな艦隊に一体
何ができるって言うの!?」

ル級改FS「ワカリマセン…」

新鋭「…まさか!」

-鎮守府正面海域-

榛名「敵の空母部隊が多すぎます!」

飛龍「皆、お願い、頑張って…!」ヒュン ヒュン ヒュン

蒼龍「出撃させた先から、ドンドンと…!」ヒュン ヒュン ヒュン


ボゴオオオォォォォォォォン


飛龍「そんなっ!」

蒼龍「私たちの艦載機が…!」

ヲ級改FS1「ムダナコトヲ…」

ヲ級改FS2「ミナゾコヘシズメ…!」


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


川内「ち、ちょっとちょっと…あの数はヤバイって!」ダダダダダダダダッ

那智「ちっ、対空への警戒だけで手一杯か」ダダダダダダダダッ

時雨「大丈夫、必ず…必ず降り続ける雨も何時かは止む…!」ダダダダダダダダッ

電「うぅ…多すぎるのです」

衣笠「電ちゃん、上っ!」

電「えっ…」チラッ

夕張「ダメ!間に合わない…!」

伊勢「くそっ」

榛名「電ちゃん…!!」ダッ

電「あ……あぁ……」

那智「馬鹿か!編隊を崩すなっ!!」


ブゥゥゥーーーーン……


榛名「電ちゃん…!」


ボゴオオォォォォォン


電「…っ!」

榛名「えっ…?」

那智「なっ…!」

衣笠「く、空中で爆発!?」

ヲ級改FS1「ナニッ!?」

ヲ級改FS2「ナニゴト…!?」

制圧し切れない数の敵の艦載機、飛龍と蒼龍の二人で応戦するも、その全てが撃ち落され、敵の艦載機が続々と

飛龍達、聨合艦隊を狙い撃とうと空を舞っていた。

そして撃ち漏らした数機が電を標的として襲い掛かろうと滑空してきた矢先の事だった。

電を襲おうとしていたヲ級改FS1と2の艦載機が空中で大爆発を起こして四散した。


電「あ、え…?」

リコリス「間に合ったヨウネ」

ポート「……」

アクタン「ワー、一杯イルー」キョロキョロ

智謀「お前達は…!」

リコリス「コノ艦隊を指揮している提督ネ。私達ハ提督大佐ノ援軍とシテ今ここにイル」

智謀「な、何だと?」

ポート「ピーコックの最初で最後の願いデスもの、無碍ニハ出来ないワ」

智謀「ピーコックだと…?深海棲艦が、本当に人間に、艦娘に手を貸すと言うのか…」

アクタン「ピーコックはこの鎮守府のテートクの話、信じた。だからワタシも、ピーコックが信じるナラ、この
鎮守府のテートクを信じる」

智謀「……はは、まさか、本当に深海棲艦を味方につけたのか、彼は…」

ヲ級改FS1「ナゼ、アナタタチガ…!」

リコリス「信じるベキ相手を間違エタみたいネ」

ヲ級改FS2「ナニ!?」

ポート「真っ先に信ジルべき身内ヲ信じナイとは、愚かな子タチ…」

ヲ級改FS1「ドウアッテモ、ジャマヲスルト…」

ヲ級改FS2「ナラバ、ココデ、タオスノミデス…」

ポート「クルと言うの?逃げるコトを薦めるケレド…」

アクタン「ケンカするみんなナンテ、キライ!」

ヲ級改FS1「ジャマヲ…!」ヒュン ヒュン

ヲ級改FS2「スルナッ!」ヒュン ヒュン

ポート「アクタン、彼女達ニハお仕置きガ必要みたいネ」

アクタン「ウン…」

リコリス「ポート、アクタン、ここは任せるワネ」

ポート「ええ、イイワ」

アクタン「調子に…ノルナッ!」ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

ポート「哀れネ。クルナと、言っているノニ……」ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

衣笠「たった、二人で…なんて艦載数なのよ…信じらんない」

榛名「智謀提督、好機です!指示を!」

智謀「…ッ!よし、これは舞い降りた好機である!全艦娘、突撃せよ!!」

飛龍「ヨシッ!二航戦飛龍、装備換装完了!再度、出撃します!」

蒼龍「同じく、二航戦蒼龍、追撃に入ります!」

榛名「第二部隊は残る敵艦載機の迎撃をお願いします!高速戦艦榛名、出撃します!」

衣笠「川内、夕張、時雨、電!聞いた通りよ。まずは対空砲火に重点を置いて!それから航空戦の切れ目、第一
部隊の一斉射の終わりを私達でカバーするよ!」

川内「オッケー!任せてちょーだいよ!」

夕張「対空装備はバッチリです!」

時雨「止んだね、雨は…反撃開始だ」

電「は、はいなのです!」

伊勢「よーし、日向には負けてらんないからね。航空戦艦伊勢、出撃します!」

那智「那智、出撃する!」

飛龍「蒼龍!」サッ

蒼龍「了解!」サッ


ビュッ


一挙手一投足息の合った同じ動作。

鏡写しかのような二人の所作から放たれた矢は共に大空へ艦載機と成って羽ばたいていく。


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


ポートとアクタンの放った艦載機と共に飛龍達の放った艦載機がヲ級改FS達の放った艦載機を悉く撃墜していき、

見る見る内に空を制圧していく。

下方から放たれる衣笠達の対空砲火も相まって、敵側の制空権は一瞬にして失われた。

それを待っていたかのように、今度は榛名達が前面に出てくる。

榛名「勝利を!提督に!!」ジャキッ

伊勢「左舷、砲戦開始!」ジャキッ

那智「敵は右舷か!いくぞ、砲雷撃戦、開始!」ジャキッ


三人が共に艤装の主砲を翳し、一斉に砲撃を始める。


ドン ドン ドォン ドォン ドォン ドォン


同時に砲撃音を轟かせ、今度こそ戦闘の火蓋が切って落とされた。




~真の敵~



-敵領海域-

筑摩?「たった三人で、何をしようと言うの?」

天龍「テメェの目玉はお飾りかよ」

龍田「そんな訳ないでしょ~?」

翔鶴「今や貴女達は大本営が認知する最優先殲滅対象です」


ザザザザザザザザ……


筑摩?「……っ!」


天竜達の遥か後方、そのささやかな小波の調べのような穏やかな波の音とは裏腹にさながらその光景は押し寄せ

てくる凶悪な津波の如く、徐々に音を増して、その姿をくっきりと浮かび上がらせる。

彼女達の正面、筑摩の背後に控える深海棲艦の群れに負けずとも劣らない艦娘の軍勢。

それは他の鎮守府より召集された艦娘達の聨合艦隊の一群だった。


天龍「で、何をしようかって?」

龍田「ウフフ♪」

翔鶴「撃滅…その二文字のみです」

筑摩?「……っ!」

利根「吾輩よりも…いくらか、こやつらの方が凶悪かもしれんなぁ。残念じゃったの、筑摩の妖…まさに、ここ
までじゃ」

天龍「わりぃな、人形。テメェはここが年貢の納め時ってヤツだ」

筑摩?「戯言を…」

天龍「フフッ、怖いか?」

筑摩?「恐怖など、ない!」

天龍「ああ、そうかよ。じゃあ死ねッ!」ジャキッ

龍田「結局は人形って事よね~?大人しく壊れちゃいなさい?」ジャキッ

翔鶴「終わりとしましょう。全航空隊、発艦始め!油断無く、隙無く…全機、突撃!」ヒュン ヒュン ヒュン

武蔵?「たった一人で私に挑むと?」

大和「武蔵を…あの子を穢す輩を赦すつもりは毛頭ありません」

武蔵?「ふん…雑魚だから沈んだ。私は強いから生き残った。その違いだ」

大和「今の貴女を見ても欠片ほども雄々しくは思いません。むしろ瑣末…生に縋る醜い悪鬼が精々でしょう」

武蔵?「ふん、どれだけ吼えようと雑魚は雑魚だ。目先をブンブンと飛び回るだけの、ハエ風情に艦娘を名乗る
資格等ありはしないって事だ」

大和「…心に響きません。私の知る武蔵の言の葉は、そのような卑下を吐き捨てる口を持っていませんから」

武蔵?「ならば、私は何だ」

大和「…滅びを待つだけの幻影」

武蔵?「面白くも無い。死ね」ジャキッ

大和「貴女では相手が例え駆逐艦の子でさえ、勝てはしません」ジャキッ

武蔵?「戯言が過ぎる。もう消えろ!」ドォン ドォン


サッ


ボボボボボボォォオン


大和「丁重にお断り申し上げます。むしろ貴女がお消えなさい!」ドォン ドォン

武蔵?「ちっ」サッ


ボボボボボボォォオン


大和型同士の壮絶な砲撃の撃ち合いで幕が開けた戦い。

大本営の元帥直属、栄光の第一艦隊旗艦にして元帥の秘書艦を務める戦艦大和。

ドイツ艦のビスマルクと常にその座を競い、それでも尚君臨し続けるのは相応の実力あってのもの。

それでも周りからは華を持たせる為の装飾品と揶揄され、陰口が絶えなかった。

大和はそれでもいいと割り切って考え、陰口を耳にしようと澄まし、何事もないように振舞い続けた。

自らを解ってくれるのはこの世でたった一人、妹の武蔵だけで構わない。

そう思う心が彼女の片隅には常にあった。

そんな武蔵が戦死した時でさえ、彼女は一滴も涙を流さず気丈に振舞った。

それでも彼女の最後が気になって、一度だけ提督鎮守府に赴いた際に提督に尋ねた事があった。

『武蔵は…彼女は、最後まで然としてらしたのでしょうか…』

それに対する答えは、大和に流す涙を留まらせるに十分な説得力と誇りがあった。

『己の責務を全うして果てていった。命尽きるその瞬間まで、彼女は中将を守ろうと全力を尽くしていた』

『戦艦大和、その改良型二番艦武蔵。彼女こそ、この国の誇りだ』

その言葉の通り、大和は武蔵を誇りに思っている。

ただ一つだけヤキモチを妬くとするなら、その場に居れなかったのだから仕方の無い事とは言えども、出来れば

榛名ではなく、姉である自分が最期を看取り、彼女の遺志を継ぎたかった。

だが、その想いも今はスッキリ消えて憂い事にはなっていない。

託されたから果たすのではなく、ただ静かに受け継いでいく事こそが重要なのだ。

大和にとって、妹である武蔵の想いは言われて託されるようなものではないという事だ。

大和「戦艦大和、推して参ります」ジャキッ

武蔵?「私は大和型の改良型二番艦、戦艦武蔵だ。負けはありえない」

大和「ふふ、戯言を…知っていますか。想いの強さは次元を超える、と言うのを」

武蔵?「それこそ戯言だ。寝言で戦が勝てるものか!全砲門、開けっ!」ジャキッ


武蔵の構える艤装の全砲門の切っ先が大和を捉え、一斉に火花を散らす。


サッ


無数の砲弾が飛び交う中を一歩前に、その決断がどれほどの危険を孕んでいるかは踏み込んだ本人が一番解って

いたことだろう。

それでも前に踏み出せるのはただ単に大和が武蔵を信じているからなのだろう。


大和「彼女の、武蔵の一撃に比べれば避けるなど容易い事」

武蔵?「この砲撃の雨の中を、前に出るだと…」


ボォォン ボボボンッ


避けれるものは避け、撃ち落せるものは的確に撃ち落す。

水飛沫と爆煙に塗れる中、それを掻き分け大和が縦横無尽に海を駆け巡る。

元帥直属の栄華等ステータスとも思わない。

上辺だけの華やかさ等無いも同然と大和は常々思っていた。

彼女が真に遂行するのはこの世の平和を護ること。

艤装が壊されようと肌を焼かれようと、それらは己が貫く信念と比べれば些細なもの。

塩水を浴び傷だらけになろうとも、そこに華がなかったとしても…これこそ、戦艦大和の戦と言う名の演舞。


ボンッ ボボボンッ


武蔵?「こいつ、被弾をなんとも思わないのか…!」

大和「肉を斬らせて骨を絶つ、です!敵艦捕捉、全主砲薙ぎ払え!」ジャキッ 小破


ドォン ドォン ドォン


超長距離から中距離にまで距離を縮め、大和の主砲が一斉に武蔵を強襲した。

本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-数時間前・新鋭鎮守府-

ピーコック「案の定、と言ったトコロかしらね」

中間棲姫「蛻の殻…」

空母棲鬼「全軍を従エテ提督鎮守府ニ向かったのカシラ…」


ザバァァァァ……


南戦鬼「残存兵力…」

南方棲鬼「恐らく、強行進軍シテきた場合ニ迎え撃つ予定ダッタ連中ネ」

装空鬼「ここにシンエイは居ない。ピーコック、どうするの?」

ピーコック「コイツ等は殲滅よ。私は背後からシンエイを追撃スル」

中間棲姫「ピーコック、解ってルト思うケド…」

ピーコック「?」

中間棲姫「…私達ガ共感ヲ得るのはきっとコレが最初デ最後よ」

空母棲鬼「モシ、これでもマダ火種が残ると言うノナラ…」

南戦鬼「ソノ時は……」

ピーコック「ソレをさせない為に、私ハ行くのヨ」

南方棲鬼「ナラ行きなサイ。アナタの背は私達が護リ抜ク」

ピーコック「ありがとう、南方棲鬼…」

-帰路-

赤城「やはり、通信は繋がりませんね」

陸奥「強襲を受けて手一杯なのか、もしくはこっちの機器が戦闘で損傷してしまったのかしら…」

神通「後者が一番、嬉しいんですけどね」

羽黒「司令官さん達なら、きっと大丈夫だと私は信じます」

大鳳「それにしても驚いたわ」

霧島「ピーコックの件よね?」

大鳳「うん。提督を信じたって言ってたけど、どういう心境の変化だったのかしら…」

赤城「人柄、なんでしょうかね?」

神通「うふふ」

陸奥「あら、そこで笑ったら提督が可哀想じゃない?」

羽黒「皆さん意地悪ですね」クスッ

霧島「そういう羽黒も顔が笑ってるわよ?」

羽黒「えっ…あ、こ、これは…違いますよ!?」

大鳳「あら、そうなの?」クスッ

神通「羽黒さん、死なば諸共…もう共犯も同然ですよ?」

羽黒「じ、神通さんも表現が幾らか悪びれてませんか!?」

霧島「ほらほら、まだ笑ってばかりも居られないわ。鎮守府の防衛、私達も参加するわよ」

陸奥「ええ、そうね。最後の一滴まで搾り出してやるわ」

-敵領海域・遊撃艦隊合流-


ボォォォン ドオオォォォン……


赤城「砲撃音…!」

大鳳「神通、羽黒、水偵・水観飛ばせるかしら?」

神通「はい、大丈夫です」

羽黒「お任せ下さい!」



ビスマルク「さあ、次に沈みたいのは誰かしら!?」ジャキッ

タ級EL「ナゼ、コウゲキガアタラン…!」

ル級FS「キサマハ、イッタイナニモノダ…!」

ビスマルク「…ふふっ、ドイツの誇るビスマルク級超弩級戦艦のネームシップ、それが私よ」

タ級EL「マサカ、キサマ…!」

ル級FS「ゲンスイチョクゾクゴエイカンタイ、ダイニカンタイキカンノ、ビスマルクカッ!」

ビスマルク「…レーベレヒト、マックス、貴女達の無念は私が晴らす…他の誰でもない、同じ志を持って歩んで
きた私が貴女達の遺志は汲む。さあ、かかってらっしゃい!ビスマルクの戦い、見せてあげるわ!」



筑摩?「……くっ」 大破

天龍「詰だ」

龍田「力量を見誤ったみたいね~?」

翔鶴「……」チャキッ

利根「むっ、あの水偵は……」



武蔵?「お、のれぇ…!まだだ…まだ、この武蔵は…沈まんぞ!」 中破

大和「いいえ、沈めます。妹の姿を偽る虚像、この大和が赦しません」ジャキッ

武蔵?「小賢しい…小賢しい…小賢しい…小賢しい…ッ!この程度で、勝った気でいるな!逆上せるのも大概に
してもらおうか、弱者がッ!!」ジャキッ

大和「」(ごめんね、武蔵。けれど……貴女がそうだったように、私も前を向くわ。最期まで立派だったと聞く
貴女を、私は姉として誇りに思っています。この幻を討ち滅ぼし、真に貴女の無念を私が晴らしてみせます)

泊地棲姫?「雑魚が何匹増えヨウと、同じよ……忌々シイ艦娘風情ガ…ッ!」

日向「悪いが、その雑魚に今から倒されるのが君さ」

飛鷹「あんま調子乗らないでくれる?虫唾が奔るわ!」

阿賀野「阿武隈ちゃん、動ける?」

阿武隈「え、う、うん…大丈夫、だけど…」

阿賀野「良かったぁ。応急要員の妖精さんも連れてきてるから、早く暁ちゃんと白露ちゃんを助けて上げて」

日向「こいつは私達が食い止める」

飛鷹「任せなさいって。さぁ、飛鷹型航空母艦、全力出撃です!航空隊の練度もバッチリよ!」バサッ

日向「伊勢型航空戦艦、日向。推して参る。航空戦艦の真の力、思い知れ!」

泊地棲姫?「捻り潰シテあげる。今一度…水底ニ還るがイイワ…」



羽黒「水偵、戻りました」

神通「私達の後方を固めていてくれた比叡さん達の艦隊…とは別の援軍…?」

赤城「皆さんが無事だといいのですが…」

??「提督鎮守府の方々ですね?」

霧島「誰…?」

陸奥「航空巡洋艦?」

三隈「私は最上型二番艦、航空巡洋艦三隈と申します。元帥の命により、智謀提督指揮下にて援軍に馳せ参じた
一人ですわ」

大鳳「」(口調がなんだか熊野と被ってるような…)

霧島「元帥の命って…」

陸奥「水偵の情報とも一致してるわね」

三隈「お仲間の皆さん、比叡、暁、白露の三名が確認してる情報では大破・重傷ですが、お三方とも既に救護班
に処置を引き継いで艦娘病院への搬送に入ってますからご安心下さいな」

霧島「比叡お姉さまが大破……?それに暁と白露までって…」

三隈「皆さんも他者を気にしてる場合ではありませんわよね?」

大鳳「冗談でしょ。皆が戦ってるのに、指咥えて見てろって言いたい訳?」

三隈「現状をもっと客観的に見聞なさいと言っているんですわ」

赤城「大鳳さん、今の私達では戦力どころか足手纏いです。十分な整備と改修を施さないと、艦載機の皆さんを
再び飛翔させるのは現状では困難です」

三隈「流石は一航戦。冷静な判断をお持ちですわ」

陸奥「けど目の前にはまだ瑞鳳、利根、阿武隈が残ってる」

三隈「彼女達の支援も滞りなく。そろそろ……」



ボゴオオォォォォオン


天龍「っしゃあ!」

利根「ゲホッ、ゴホッ、お、お主、ちっとは周りを見んか!」

龍田「あらあら、お洋服が汚れちゃったじゃない。天龍ちゃん、後でお仕置きね~?」

天龍「え゛……」

翔鶴「ぁっ…!赤城さん、皆さん!」

赤城「翔鶴さん」

陸奥「あなた達…」

天龍「おっ、あっはっは!随分とまた雁首揃えて露出度たけぇじゃねぇか」

霧島「ぶっ飛ばしますよ…」

龍田「あらあら~。けれど無事で良かったわ~」

神通「利根さん、無事で良かった…」

利根「おお、お主等もな。その成り…激戦が伺えるわ」

祥鳳「あら、三隈さん」

三隈「あら…」

瑞鳳「みんなーっ!」

羽黒「瑞鳳ちゃん」

瑞鳳「よかったぁ、皆も無事で!いてて…」

祥鳳「ほら、瑞鳳…余り無茶しちゃダメよ」

阿武隈「あ、皆…」

大鳳「阿武隈、その怪我…!大丈夫なの!?」

阿武隈「あたしは、大丈夫…日向さん達が、助けてくれたから。後から別の部隊も着てくれて、暁ちゃんと白露
ちゃんも応急処置をしてもらって、なんとか…」

霧島「暁と白露が重傷を負ったのはやっぱり事実なのね…?」

阿武隈「うん…相手は、泊地棲姫…」

陸奥「なんですって…?」

祥鳳「私達を束ねる提督からの情報で、現在確認されている怪現象ですが、クローンかもしれないという情報が
上がっているんです」

羽黒「クローンって…」

神通「まさか、同士討ちをさせる為とか…」

利根「いや、それはありえん。実際に対峙してる身としてはよぅ解る」

天龍「感情が希薄な上に端っからこっちを敵対視してる。ありゃあ、出会い頭に殺りにくるぜ」

翔鶴「騙まし討ちをする為の育成期間がなかったと考えるべきかもしれませんね」

赤城「比叡さん、暁ちゃん、白露ちゃんは、本当に大丈夫なんですね?」

霧島「…比叡お姉さまは、そう簡単にギブアップなんてしません。私は、信じています」

三隈「大丈夫ですわ。私達だって、信じるものはありますもの」

瑞鳳「取り敢えず、戻ろう。まだ、戦いは終わってないんだもん」

祥鳳「ええ、そうね」

本日はここまで

皆様こんばんは
今日はのんびりと更新していきます
宜しくお願いします

-大和 vs 武蔵?・終幕-

轟音と凄まじい爆煙を響かせ、大和の放った一撃が狙った武蔵を中心に海上一体を炎の海に変える。

大和は決して飾りなどではなく、その実力は全艦娘の中でも堂々の上位に位置するほどの実力を持っている。

普段は温厚で気の許している仲間には茶目っ気すら見せる事もあるという。

そんな彼女が本気で怒るとどうなるのか、誰も見たことはない。

が、奇しくも偽りと断じた妹の姿を象った存在にその怒りの矛先が向いた。

誰も見たことのない大和の力。

それが、広範囲の海上を一瞬にして炎の壁に変貌させるほどに凄まじい火力を秘める一撃。

これこそ大和の怒りを具現化させた形なのかもしれない。


大和「沈みなさい。永久に…」

武蔵?「おの、れ…」 大破

大和「……」ジロッ…

武蔵?「ククッ…冷酷な目だ。その、目を差し向けた、相手を…何匹、殺した…」

大和「…数えていませんね。ですが、少なくとも艤装を差し向けた相手は、相応にして罪を背負っていました」

武蔵?「罪…?笑わせる……兵器として、生み出され…武器として、扱われ…何が罪だッ!!」

大和「罪は罪。これは罰です。仇名す相手を間違えましたね。私は貴女が艦娘には見えません。これは私にとっ
て非常に僥倖と言うべき事実です」

武蔵?「なん、だと…」

大和「身内の雷撃処分ほど、悲しい事はありません。なればこそ、私は時として鬼にも悪魔にもなりましょう。
恨むのならば私一人が怨まれればいい」

武蔵?「ククッ…クハハハハッ!どっちが機械か…よっぽど貴様の方が、鬼畜生だな…」

大和「褒め言葉ですね。それでも私は元帥に、この海に、この世界に仇名す全てを撃滅します」

武蔵?「あの世で、待っててやる…」

大和「同じ道は歩みません。一生そこで彷徨い続けなさい」ドォンッ

武蔵?「……」 轟沈

大和「…私が誤った道にいかないのは、仲間や私達を束ねる存在に恵まれた故です。偽りとは言え、また貴女の
声が聞けて良かった。願わくば…『姉さん』って、もう一度だけ呼んで欲しかった…」


そう呟いて静かに閉じた瞳から、今までの全てが集約された想いが、感情が、一筋の雫となって頬を伝って流れ

ていく。


大和「…さようなら、武蔵」

-鎮守府左側面海域-

木曾「へへっ」

長門「…?何を笑っている」

木曾「いやなに、またお前と一緒に戦えるってのが少し嬉しいってだけだ」

北上「素直じゃないねぇ、木曾っち」

木曾「うっせ!」

長門「ふっ」

島風「春雨おっそーい!」

春雨「えぇっ!?ひどいよ、島風ちゃん!」

長門「ほら、島風。余り編隊を乱すなよ」

島風「はーい!だいじょーぶでーす!」ビシッ

酒匂「長門さんの顔がとっても生き生きしてる!」

摩耶「おいおい、のんびりしてるみてぇだけど大丈夫かよ」

龍驤「問題あらへんって。うちらはやる時はビシッと決める気概あんねんって」

摩耶「まっ、あたしにゃどーでもいい事だけどねぇ。暴れられりゃあ、あたしは十分さ。それに、お宅等の実力
ってのにも多分に興味あってさ。あの大和が含み笑いで語るくらいだ。興味沸かねぇ方がどうかしてるってもんだ」

龍驤「よそ見しといて流れ弾当たってもしらんでぇ?」

摩耶「バーカ。流れ弾貰ったら返してやりゃあいいんだよ。倍にしてな」ニヤッ

長門「龍驤、艦載機の報告はまだか」

龍驤「んあ…せやなぁ、もう戻ってきててもいい頃……」

摩耶「シッ…!」

酒匂「むむ?」

摩耶「こいつは…!おい、臨戦態勢取れッ!提督、さっさと指示寄越せ!!」

先輩「風向きで音を拾ったのね。龍驤、貴女はそのまま艦載機を飛ばして。もう一度上空の情報を仕入れるわよ」

龍驤「まさか、うちの艦載機が撃墜されたんか…!」

長門「対空砲火に余程の自信があるのか、それともこの左舷側も空母群の一団なのか!?」

リコリス「ソノまさかヨ」

摩耶「なっ…!て、てめぇは…!」

リコリス「アラ、あの時以来カシラ?」

長門「先陣が貴様か!」ジャキッ

リコリス「直にソウやって構える…ダカラ会話が成立シナイのよ。私達はシンエイに裏切らレタ。ソレについて
はモウ報告とシテ上がってると思ってイタんだけど?」

北上「つまり私達とは争う気がないって言いたいわけ?」

木曾「はっ、そんなん信用出来るわけねぇだろっ!」

先輩「……いえ、どうやら真実みたいよ」

木曾「は…?」

提督『皆、聞いてくれ。現時点に置いてはリコリス、ポート、アクタンと呼ばれる三人の深海棲艦はこちら側と
考えて行動を取ってもらって構わない。それぞれの種別は飛行場姫、港湾棲姫、北方棲姫。二本角、今お前たち
の前にいるのがリコリスだ。ポートは一本角、アクタンはリコリスをミニサイズにしたような感じだな』

リコリス「アナタねぇ、そのマヌケな例え方…ハァ、言ってても仕方ないしイイワ。御託ヲ並べてる場合デモな
いし…コノ中で航空戦ヲ担える者はダレなの?」

龍驤「うちや!」

リコリス「…へぇ、軽空母…」

龍驤「な、なんや!馬鹿にしとるんか!?」

リコリス「いいえ、関心シタのよ。アナタ、ホントに軽空母?」

龍驤「はぁ?何言うてんのや」

リコリス「フフ…」(余程鍛錬ヲ積んだノカ、改修ヲ繰り返したノカ、どちらにシテも軽空母の技量ヲ遥かに超
えてイルのに本人ガ気付かないナンテ…コレも、想う力と言うモノなのかしらネ)

龍驤「な、何やねん、いきなり含み笑いて、気色悪いやっちゃなぁ…」

リコリス「アラ、ちょっと言い方酷くないカシラ?」ジロ…

龍驤「いぃっ!?ご、後生や!今のなし!なしやから!なっ!?」サッ

長門「お、おい。何故、私の後ろに隠れる?」

提督『遊んでる場合じゃないぞ。大方皆が考えている通り、敵は正面に割いていた分の空母群の一部を左舷に寄
らせているわけだ。一番索敵の値が数値化した場合に低いのが左舷だったが、リコリスの加入によってその分は
大いに補われるはずだ』

リコリス「飛行場姫の名に恥じナイ働きヲしてあげるワ」

先輩「ふふっ、頼もしい事で。初めて会った時が逆に懐かしいくらいね」

リコリス「……アノ時は悪かったと思っテルわ。けど、今はマダ改めて謝罪ハしない」

先輩「ええ、共闘と言う事で認識しておいてあげる」

リコリス「ケド、必ず理想とナル形で終幕したアカツキには、その全てをアナタに謝罪するワ」

先輩「あら、それは楽しみね。この季節だとクリスマスプレゼントになるのかしらね」

提督『龍驤、リコリス、左舷の制空権は二人で必ずもぎ取れ。先輩、武運を祈ります』

龍驤「任しとき!」

リコリス「左団扇デ指揮させてあげるワ」

先輩「任せなさい。いいとこ無しのままじゃ、私も終われないものね!」


ブウゥゥゥゥゥゥン……


リコリス「キタわ」スッ…

龍驤「いくで…!」サッ…

先輩「総員、戦闘配備に着いて!」

長門「島風、春雨、お前達はいざと言う時躊躇するな。構わず私の背後に回り込んで私を盾にしてくれていい」

島風「え?」

春雨「え、そんな…」

長門「ふふ、何…長門型の装甲は伊達ではないよ」

酒匂「ぶーぶー、長門さん!酒匂は~?」

長門「ん?」

酒匂「ぴゃあー!ひどい~!」

長門「ははっ、冗談だ。安心しろ、皆纏めてこの私が護ってみせる。私は長門型一番艦、戦艦長門だ。何者にも
決して遅れはとらない」

摩耶「っしゃあっ!摩耶様の戦、見せてやるぜ!抜錨だ!!」

木曾「北上…」

北上「ん、どったの木曾っち?」

木曾「俺さ、球磨型でよかったって、マジで思ってるぜ」

北上「え、ちょっ、いきなり何言ってんの…?」

木曾「あいつ等の分まで、暴れてやろうぜ。球磨型の本当の力ってヤツを、あのクソ共に叩き込んでやるんだ。
本当の戦闘ってヤツを、思い知らせてやろうぜ…姉貴」

北上「……」ニコッ

木曾「な、なんだよ…」

北上「そういうの、結構燃えるよねぇ…!いいねぇ、熱いねぇ!そんじゃま、ギッタギッタにしてあげましょうかね!」

木曾「おうっ!」

-鎮守府右側面海域-

不動「正面と左舷で敵影確認か。おい、瑞鶴、隼鷹!こっちはどうだ!?」

瑞鶴「艦載機の子達から報告を伝えるわ!」

隼鷹「ハハ、おいおいマジかよ…」

瑞鶴「こっちは、水上打撃艦隊の一群…!」

隼鷹「って、流石に笑ってもいられねぇってか…」

不動「割り振りが裏目に出たか…!だが制空権さえ奪えば相手を袋叩きに出来るのも事実だが…」

金剛「私が、耐えてみせるネ!」

磯風「今度こそ、誰も沈ませない…!」

秋月「艦隊の防空はこの秋月が健在な限り破らせはしません!」

金剛「鈴谷、熊野、矢矧、私達で敵の主力を抑えマス!」

鈴谷「りょーかい!」

熊野「一捻りで黙らせてやりますわ!」

矢矧「能代の仇、ここで討たせてもらうわ。軽巡だからって侮って欲しくないわね!」

提督「右舷に水上打撃群か…」

大淀「どうなさいますか?」

提督「瑞鶴と隼鷹の二名が居れば制空権の問題はないはずだ。問題は打撃力…金剛、鈴谷、熊野、矢矧だけでは
確実に弾薬が尽きる。物量で押し切るしかない」

大淀「では…」

提督「大淀はまだ待機で頼む。戦況の変動をボードを使って逐一最新のものに変えていって欲しい」

大淀「了解致しました」

提督「プリンツ、筑摩、夕立、ヴェールヌイ、出撃準備だ」

夕立「もう出番っぽい?」

Bep「早いお声がけだね」

筑摩「お任せを、提督」

プリンツ「ハーイ!私は、ドイツ生まれの重巡、プリンツ・オイゲン。よろしくね!アドミラル・ヒッパー級三
番艦です!」

提督「ビスマルクと同じでドイツ艦か」

プリンツ「ビスマルク姉さま、ここには居ないんですかぁ?」

提督「残念だがな。さて、与太話は後だ。まず四人には右舷の援軍として出向いてもらい、戦線の維持と押上げ
を担当してもらう。筑摩とプリンツは金剛の指示に従い戦線に従事し、夕立とヴェールヌイは対空防衛に努める
秋月のフォローだ。近寄る深海棲艦を適時殲滅しろ」

四人「「了解!」」

不動「────おう、そうか!すまねぇな」

提督『誤算は戦場に付き物です。四名の追加で全体的な打撃力の底上げにはなるはずです』

不動「おう、恩に着るぜ。聞いたな、おめぇら!四人、援軍でこっちに回ってくれる!打撃力は確実に上がるは
ずだ!防衛のイロハってもんを相手に教えてやるには絶好のシチュエーションって訳だぁな」

金剛「Hey!不動提督、方針を教えて欲しいネー!」

不動「おう、任せろ!まず金剛を筆頭にして鈴谷、熊野、矢矧、でもって後から合流する筑摩、プリンツを加え
た六人が打撃戦力の要だ。磯風と秋月で瑞鶴・隼鷹のサポート、後から来る夕立とヴェールヌイにも磯風と秋月
のサポートにそれぞれ回ってもらう。だがこれは基本の形だ。状況の変化には臨機応変に対応しろ!」

磯風「了解した」

秋月「はい!」

磯風「秋月、高射装置の具合はどう?」

秋月「問題なしよ。10cm高角砲と組み合わせて驚きの防空性能を見せて上げるわ。だから、磯風は前だけ見てて」

磯風「恩に着る。私の名に懸けて、今度こそ任務を完遂してみせる」

金剛「きます…!」

熊野「迎え撃ちますわよ!」

鈴谷「ふふん、さてさて…まいりましょー!」

矢矧「砲雷撃戦、始めます!」

不動「筑摩達が現着するまで持ち堪えろ!」

本日はここまで

今年中に終わらせたいと思っていたので所々戦闘描写を飛ばしてる場面が
多々ありますが、そちらはアナザーストーリーで書ける機会あれば書きたいと
思いますのでご了承下さい。

あつくなってきたねー。利根が筑摩と戦ってたから勝手に筑摩を死んだこと思っていた俺は・・・

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします


>>610
所々描写を飛ばしたりして繋ぎ合わせていたのでごっちゃになってしまったのかも
しれませんね。
もう少し書き方、というか説明でもあれば良かったかもしれません。
今後の材料にさせて頂きます。

-鎮守府正面海域-

ポートとアクタンの援護を得て、榛名、伊勢、那智の砲撃が敵艦隊のど真ん中で炸裂する。

戦艦二隻の強烈な一斉射、重巡の重圧ある一斉射が相手にとっては強襲と言う形となり、陣形を整える前に敵聨

合艦隊のどてっ腹に大きな風穴を開ける結果となった。


智謀「よし、機先は制した。飛龍と蒼龍は引き続き第二、第三攻撃隊を発艦させて相手に息つく暇を与えるな!
ポートとアクタンも同様、相手空母ヲ級の動きを制限させろ!」

飛龍「了解っ!」サッ

蒼龍「任せてっ!」サッ

ポート「造作もナイわね」スッ

アクタン「負けないモン…!」スッ

智謀「衣笠率いる第二部隊は榛名達が撃ち漏らした敵艦が動き出す前に封殺、衣笠は手負いを集中的に狙って、
川内と電、夕張と時雨でそれぞれペアを組んで常に多対一に持ち込み物量で押し切れ!」

衣笠「衣笠さんにお任せ!」

川内「よし、電行くよ!」

電「は、はいなのです!」

夕張「よーし、こっちもいこっか、時雨!」

時雨「うん、目に物を見せてあげよう」

智謀「榛名、伊勢、那智は一端下がれ。相手の射線に注視し、距離を保って警戒線を張れ。無謀にも突進してく
るような蛮勇な敵が居るのなら、構わず撃ち落し戦力を根源から駆逐する!」

榛名「はい!」

伊勢「矢継ぎ早な指示だが的確だな」

那智「そうでなければ大将と言う器には納まらんさ」

榛名「相手の張ってる壁を一枚ずつ確実に剥ぎ取る感じですね」

那智「…榛名、貴様なら次の展開はどう見る」

榛名「…多分、一度は突破出来た飛龍さん達の陣地から侵略してくると思います」

伊勢「ポートとアクタンが掌握する海域には戦力を割かないって事?」

榛名「恐らく…」

那智「……それで?」

榛名「ですが、知恵を使わずその場の勢いに任せた場合、最も危険なのはポートとアクタンだと思うんです」

那智「何だと…?」

榛名「元は自分たちの上位に位置していた深海棲艦ですよ?それが反旗を翻したとなれば、深海棲艦側からした
ら内部には相当の衝撃が奔ったはずです。正常な判断が鈍り、結果として…」



ボゴオオォォォォン


飛龍「もしかして見縊ってますか?」

蒼龍「皆の想いを載せてるんです。そう易々と落とせはしません!」

ヲ級改FS「バカナ…!」

ル級改FS「ナラバ…ッ!!」ジャキッ

タ級FS「ムサベツニネライウツダケダッ!!」ジャキッ

ポート「キサマ達…!」

アクタン「えっ…」

ル級改FS「シズメッ!!」ドォン ドォン

タ級FS「ミナゾコニッ!!」ドォン ドォン

ポート「アクタンッ!」


ボゴオオォォォォン ボゴオオォォォォン


ポート「あ……あぁ……ッ!」


怒りに我を忘れたル級改FSとタ級FSの凶悪な砲撃が爆煙を上げてアクタンを襲う。

しかし────


伊勢「…なんのこれしき、どんどん撃ってきなさいな」 小破

アクタン「ぇ……?」

伊勢「大丈夫だった?」

アクタン「ウ、ウン…」

伊勢「んふふ…なら良かった」ニコッ

ポート「……」アゼン

ル級改FS「ナッ…」

タ級FS「ナゼ、カンムスガ…!」

伊勢「小さい子のお手本になるのが私達大人の務めってもんだよ。悪い子にはお仕置きが必要かな?なーんてね」ジャキッ

アクタン「オシオキッ!」サッ

伊勢「ふふ…さぁ、いくよ!主砲、四基八門、一斉射!」ドォン ドォン ドドドドンッ

アクタン「カエレ……ッ!」ドォン ドォン

ル級改FS「シマッ…」

タ級FS「オノレ…!」


ボゴオオォォォォン ドオオォォォォォン


伊勢とアクタン、両者の砲撃が撃ち終わりの二匹を共に狙い撃ちその姿を跡形もなく粉砕する。


伊勢「これで終わり?それってどーなのさ。やる気あるの!?」

ヲ級改FS「コンナ、ハズデハ…」

榛名「指揮が行き渡っていない。これだけの数を纏め切れてない証拠です。一部が勝手に動いてそれに後が続か
ないから、散発的な攻撃にしかならず、返って弾幕や折り返しが薄く遅くなる」

那智「こちらからすれば絶好の好機か」

衣笠「けど陣形はこのままで、全体で押し上がる感じでいいのよね?」

榛名「はい!こちらは艦隊クラスでヒット&アウェイを継続し、飛龍さんと蒼龍さん、ポートとアクタンの艦載
機を最大限に生かして確実に仕留めていきましょう」




~闇を照らす一つの光~



-鎮守府・作戦室-

提督「戦線の維持、戦況に置いても三方面共に押し返してきてるな」

大淀「筑摩とプリンツ、夕立とヴェールヌイの援軍で右側面の建て直しも容易でした」

提督「左側面もリコリスの援護で滞りがない」

大淀「……しかし、驚きました」

提督「ん?」

大淀「深海棲艦の件です。本来は相容れない相手ではありませんか?」

提督「…今からする話はお前を責めたくて言うわけじゃない。その事を差し引いても幾分かキツイ言い方をする
が余り気にせず聞いて欲しい」

大淀「え?」

提督「大本営の元帥殿を始めとして、一部の大将殿とそれらを取り巻く一部の艦娘には、頑なに隠し通してきた
海軍の闇とも呼べる秘密があるのを俺は教えてもらった」

大淀「……!」

提督「昭和、平成とここ数百年、この日本に限らず、世界諸国で海を旅するというのは比較的楽な部類の行楽と
して認識されていたそうだな。深海棲艦が出現するその日までは…」

大淀「何故、それを…」

提督「掻い摘むが、事の発端は隠密提督だ。お前もその話はつい最近の事だから聞いてるだろ。大和たち秘書艦
とは別に元帥へ別の業連をする事を受け持つ第三の秘書艦であるお前ならな」

大淀「…………」

提督「結論から言えば智謀提督と密約を交わした。その結果得た情報だ。隠密提督の件は内々に処理されたはず
だったが、お前がきっちり盗み見ていた。結果として、元帥殿の耳に内容が入る事になったわけだ」

大淀「報告しないわけにはいきません。内部の膿は出し尽くすべきです」

提督「間違っちゃいない。それ自体は俺だってそう思う。だったら、大本営の中枢を担うその全てが大本営から
去るべきだよな」

大淀「……っ!」

提督「巷で言われ続ける深海棲艦は如何にして生まれ、何処から来たのか…」

大淀「……止めて下さい」

提督「如何にして生まれたか…」

大淀「止めて下さいっ!」

提督「…この期に及んでまだしらを切るのか?」

大淀「それこそ、今この場で言及する事ではないはずです!」

提督「深海棲艦は相容れない存在ってお前は言ったよな。ふざけるな…!」

大淀「ぇ……」

自分達で生み出しておいて、制御できないから討伐して証拠を隠滅か?あいつ等は今は世界で活躍している艦娘

たちの怨念そのものだ。無念の内に朽ち果て、水底へ沈み、それでも尚、この青い海、青い空に想いを馳せて…

人が何故、海の上で自由を奪われたと思う?

深海棲艦が現れたからか?違う…!

深海棲艦が狙ってくるからか?違う…!

奪われたと思ってる時点で間違ってるんだ。俺たちは拒まれたんだ!

海に、深海棲艦、その元となっている彼女たち艦娘に!人類は拒まれた!!

この大海は今までに流した艦娘たちの涙そのものだ。

その上に人類がどうやって立てる!?

その業を背負おうともせずに、どうやって昔の海を取り戻すと言える!?

本来なら、人類は深海棲艦によって滅ぼされて然るべきなのかもしれない。

それでも、今を生きる人々にはなんの罪もないだろう?

咎を背負うべきは今を生きる人々じゃない。

この歴史を知っている俺たち海軍だ。

俺は全てを知った。妖精の存在、深海棲艦の成り立ち、艦娘とは何なのか。

艦娘には、死後三つの世界が待っている。

一つは天寿を全うし、己の体を休める場所で静かに時を過ごすこと。やがてその身体は浄化され、妖精と成って

神格化される。クラバウターマンなんて呼ばれて船乗りの間で実しやかにささやかれているのが、これが一つの

答えともなっているんだろう。

二つ目は仏教の概念、輪廻転生だ。強い意思を持ちながらも志半ばで倒れてしまった艦娘は、再び艦娘としての

生を受けてこの世界に現界する。

そして三つ目……負の感情を強く帯びて死んでしまった艦娘は、その感情が具現化して再度、水底で生を得る。

深海棲艦として……人類に牙を剥く敵としてだ。

提督「もう一度言うぞ。深海棲艦が相容れない存在だと?元は同じ存在でありながら、それに目を瞑って屠るこ
としかせずに、何が相容れない存在だ!否定する前に自分たちの罪を認めろ!俺は、耳を傾けてくれるのなら、
全てを受け入れる。元は艦娘なんだろ…だったら、絶対に解り合えるはずだ」

大淀「…………」

提督「…すまなかった。お前も、いや…お前だけじゃない。全ての艦娘がそうだ。犠牲者なんだ。過去からこれ
までの想いと記憶を受け継いで転生してきたのがお前たちだ。それに気付いていながら見て見ぬ振りをした人類
が全ての元凶だ。だから、ここで終わりにしよう。お前たちだって、元は普通の女の子なんだ。こんな戦場に、
身を捧げていいはずがない。ここで終わらせるんだ」


ザー…ザザザッ……


智謀『聞こえるか、提督大佐』

提督「ええ、良好です」

智謀『正面海域の第一波は粗方片付きつつある。左舷と右舷の状況は?』

先輩『こっちも順調よ!連携バッチリ、清々しいわね』

不動『おう、即席艦隊とはとても思えねぇ錬度っぷりだぜ』

提督「後続隊として新鋭の中核部隊、その奥には主力旗艦艦隊も待ち受けているでしょうね。進軍は程ほどに抑
えて、各方面共に散開し過ぎない程度で警戒を継続させましょう」

智謀『賢明な策です』

先輩『オッケー!期待してるわよ、総指揮殿♪』

提督「煽てても何も出しませんよ」

先輩『そこは出しなさいよ!』

不動『終わってからやりやがれこのクサレ師弟共が!』

提督「くされって…」

智謀『はぁ…少しは緊張感を持って下さい。では、先に通信を切りますよ』

先輩『はいはーい。じゃ、また後でね!』

不動『気は抜くなよ!』


ブツン……


提督「……大淀。風向きは今はこっちだ」

大淀「…はい」

提督「悔やむ前にまずは前に踏み出せ」

大淀「…………」

提督「お前たちを俺は絶対に見捨てない。失ったことがある者にしかこの気持ちは解らない。だから俺には解る」

大淀「艦娘を、兵器と見る人もいるのに…貴方はどうしてそこまで…」

提督「兵器なものか」スッ…


提督は左手の甲を正面にしてその薬指に輝く指輪を大淀に見せる。


提督「これが俺の答えだ」

大淀「艦娘と、契りを交わしていたんですか…それが、どういう事か解っていて…」

提督「俺の全てを懸ける覚悟はある」

大淀「過去にも、貴方と同じように契りを交わした提督はいらっしゃいました。けれど、その人は…」

提督「それもこれも、結局は大本営の思惑に反した結果なんだろう?提督諸氏や艦娘の気持ちを利用してまで、
そうまでして成そうとした茨の契りだ。彼女たちと一緒に日常を過ごせば、どう足掻こうが情が移るのは当然の
ことだろう。だから、その全ての禍根を俺が断ち切る。ジンクス上等だ。全て纏めてひっくり返してやる」

書き足しと書き溜め分以上で、本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-新鋭本隊主力艦隊-

新鋭「……先遣隊、奇襲空母群、強襲水上打撃艦隊、中核隊……全て、殲滅されたですって……ッ!」バンッ

??「……」

新鋭「海軍…!どこまでも私の邪魔をする、穢れた正義の権化。いいわ、残存する兵を掻き集めて周囲に散開。
相手艦隊の分散を見計らって中央を強行突破。一気に提督鎮守府を陥落させる。目標は、相手主力艦隊に非ず…
提督鎮守府とそれを纏める提督の首よ。邪魔をする者は侵攻の阻害になるようなら構わず殺しなさい。ただし、
退く事は許さないわ…前進のみ、その哀れな命をここで燃やし尽くし、私に捧げなさい!」


新鋭の前に六つの陰が静かに集結する。

異形を成す構成。

比叡達が先んじて合間見えた構成と似た形式。

艦娘と深海棲艦の混在艦隊。

その中で一際異彩を放つ中央に立つ艦娘。

白と黒のコントラストで彩られた服装。

真っ白な艶のある髪の毛。

青白く輝く両の瞳と透き通るような白い肌。

一見してリコリス達のような深海棲艦を彷彿とさせるが、携える艤装は艦娘達のそれと等しい。

何より、その艦娘はある艦娘と鏡写しのように似通っていた。


新鋭「準備は良いわね」

??「はい、私は大丈夫です」

新鋭「なら、行きなさい。全てを根絶やしにすべく…!」

??「了解しました。勝利を…提督に!」

-提督鎮守府近海-

榛名「ふぅ…なんとか、退けれた」

那智「くっ、はぁ、はぁ…くそ、この程度で息が上がるのか、私は…!」

飛龍「装備補給を急いでっ!」

蒼龍「索敵も忘れちゃダメだからね!」

伊勢「被害は軽微、これならまだやれる!」

ポート「アクタン、怪我はしてナイかしら?」

アクタン「ダイジョーブ。この人が、守ってクレタから」クイッ…

伊勢「っとと…」

ポート「感謝スルわ」

伊勢「同じ戦線で戦ってるんだから、支え合うのは当然でしょ?それにまだ終わってない。感謝するのは、まだ
ちょっと早いかな」

ポート「フフッ、それもソウね」

衣笠「皆、大丈夫?疲れてなぁい?」

川内「なんのまだまだ。私の真骨頂は夜戦よやーせーんー!はーやーく、やーせーんー!」

夕張「はぁ、もうこの人は…」

時雨「ふふっ、頼もしい限りじゃないか」

電「…でも、出来ればこんな争いはしたくなかったのです」

川内「…優しいね、電はさ。けど、これで許してくれないのが今回の相手よね、きっと…」

時雨「うん…だから、少し心配だ。イムヤ達の事が…」

-敵中枢艦隊布陣海域周辺-

イムヤ「どうやらこの辺りまでは掃討出来てるみたいね」

ゴーヤ「地平線が綺麗なのでち」

まるゆ「あ、あの!少し艦隊から離れすぎじゃないですか?」

イク「大丈夫なの!こうしてちゃんと通信機器も持ってきてるから問題なしよ!」

イムヤ「それに、私達はあくまで斥候よ。正面切って戦うわけじゃ…」

新鋭「なら、正面切って戦ってもらおうかしら」

ゴーヤ「……っ!」

イク「えっ……」

まるゆ「ひっ……」

イムヤ「あんたは…!」

ゴーヤ「な、なんで…」

新鋭「なんで?なんでって、戦ってるんだから、居るに決まってるでしょ。斥候の分際で馬鹿みたいに顔を覗か
せるなんて三流でもやらないわよ。似合わないわね、やっぱり潜むって事が…潜水艦の名が泣くわよ?」

イムヤ「…っ!馬鹿にしないで!」

新鋭「あらら、怒らせちゃったかしら?だったらごめんなさいね?お詫びと言っては何だけど、折角出会えたん
だもの…いいもの、見せて上げるわ」


新鋭の言葉に応えるように、彼女を護るようにその前面に六つの陰が姿を現す。

逆光でシルエットのみのその六つの陰にイムヤは目を細めてジッと見据える。

そして細めた目は徐々に大きくなり、やがては瞳孔がくっきりと開かれる。


イムヤ「う、そ…」

ゴーヤ「な、なんで…?」

まるゆ「な、何かの冗談です!」

イク「……!」

新鋭「お披露目よ。これが、私の誇る最強の艦隊…今までが前座だったと思い知らせてあげるわ」

-残存兵力集結地点-

泊地棲姫?「沈めェッ!!」ドォン ドォン


サッ


ボゴオオォォォン


日向「ちっ…」

飛鷹「火力ハンパないわね」

阿賀野「けど、このまま放置する訳にはいかないよ」

日向「当然だ。また伊勢に得意面されるのは正直我慢ならない」

飛鷹「ちょっと、何処に対抗心燃やしてんのよ」

阿賀野「もう、日向さんったら…」


不動「ほぅ、いい勝負してんじゃねぇか。が、今回は伊勢だったみてぇだな」

伊勢「え?またあたしの戦果が一番なの?どうなのさ~日向ぁ、おとなしいじゃん」ニヤニヤ

日向「……」プルプル

飛鷹「」(はぁ、またとばっちりくるわね、これ…)

阿賀野「」(あぁ、伊勢さんあんまり煽らないでぇ…)


阿賀野「とにかく、今は目先目先!」

日向「これを三人で…長門、木曾、大鳳は倒したのか。改めて感服する」

飛鷹「今度は私達の番でしょ」

阿賀野「うんっ!」

泊地棲姫?「……」ニヤァ…

日向「いや、そうでもなさそうだ」チラッ



ボゴオオォォォオン


阿賀野「きゃっ」

飛鷹「なっ!あ、新手なの!?」


ザバアアァァァァン


大きな水飛沫と爆発音を連れ立ち、ブロンドの髪を靡かせて三人の前に一人の艦娘が吹き飛ばされてくる。


ビスマルク「くっ…!」 小破

日向「君は……元帥直属護衛艦隊第二艦隊旗艦のビスマルクか」

ビスマルク「あなた達…不動提督の艦娘達ね。割り込むような形になって悪いわね」

泊地棲姫?「新手…?何匹揃ったトコロで結果ハ変わらナイと言うのに…」

ビスマルク「泊地棲姫ですって…?まさか…」

日向「情報は君のところにも入ってるだろう」

ビスマルク「じゃあ、こいつも提督艦隊の艦娘達が遭遇したと言う、クローンの一種と言うわけね。比叡の所に
も武蔵のクローンが居たわ。間一髪で助け出せたけど…」

阿賀野「うん、聞いてます」

飛鷹「にしても、戦力強化されすぎじゃないかしら?」

ビスマルク「済まない。勇んではみたものの、やはり多勢に無勢でね」

日向「」(それでも被害は見たところ小破程度か…恐れ入る)

ビスマルク「けど、こちらも戦力増強じゃないかしらね」チラッ

飛鷹「え?」

大和「……お待たせ致しました。戦艦大和、これより追撃戦に移ります」 小破

ビスマルク「随分な為りじゃないのよ、大和。梃子摺った?」

大和「そっちだって同じ位じゃないですか!貴女に言われたくありません!」ムスッ

阿賀野「あ、あはは…」

大和「コホン…失礼しました。お話は既に整ってる事と伺います」

日向「ああ、そうだな。私達の仕事は後続の援軍としてこいつ等を提督鎮守府へ向かわせない事だ」

大和「ビスマルク、殲滅し損ねた分はこれで全てですか?」

ビスマルク「はぁ…えぇ、その通りよ。錬度の高い連中ばかり残って、少し面倒だったけどね」

飛鷹「丁度いいじゃない。艦隊決戦よ」

阿賀野「張り切っていくよ!」

本日はここまで

皆様こんにちは
無事仕事納めに付き、昼夜問わずに更新できる時にドンドン更新していきます
って事で本日も宜しくお願いします

-敵中枢艦隊布陣海域周辺-

イムヤ「うぐっ…!」 中破

新鋭「ダメよー、ダメダメ♪なぁんてね?折角の語り合いの場に余計な茶々入れるなんて無粋じゃなぁい?」

イムヤ「」(通信機器が…こいつ、解ってて…)

イク「からだ、が…いう事、利かない、の…」 大破

まるゆ「」(役に、立ちたいって…隊長さんの為に、思って……なのに、まるゆは……) 大破

ゴーヤ「まだ、でち…」フラフラ… 中破

新鋭「あらら、頑張るのね。けど、そんなフラフラでまともに潜る事ももう出来ないんじゃない?」

ゴーヤ「ゴーヤは…皆の、笑顔が見たいでち…」

新鋭「あの世で見れば良いんじゃないかしら」

ゴーヤ「提督鎮守府の艦娘は、誰一人、諦める娘は、居ないんでち!」ザバァァァン

??「…対潜装備はありません」

新鋭「ええ、だったら彼女達の出番よね?」

レ級EL「…ふふっ、彼女は休ませてあげなよ。あんなの、ボク一人で十分よ♪」

ゴーヤ(水中)「」(余裕ぶっこくのも、大概にして欲しいでち…ゴーヤの魚雷さんは、お利口さんなのでち。
魚雷さん、お願いします!)バシュンッ



ゴボゴボゴボゴボ……


レ級EL「……」ニヤニヤ…


静かに迫るゴーヤの放った魚雷は真っ直ぐにレ級ELへ向かい進んでいく。

しかし、レ級ELの艤装が高速で振り抜かれた次の瞬間────


ボゴオオォォォォォン


ゴーヤ(水中)「」(やったでち!)


そこには無傷で佇むレ級ELが前と変わらない笑みを携えて立っているだけだった。


ザバァァァァ……


ゴーヤ「そ、そんな…」

レ級EL「バカだねぇ。キミ達程度の攻撃なんて、食らうワケないじゃないか。遊ばれてるって、気付けよ」ニヤァ…

ゴーヤ「あ……あぁ……」

イムヤ「ゴーヤ…ッ!」グッ…

??「やらせは、しナイよ…」スッ

イムヤ「……!」

??「邪魔ヲしたら可哀想ヨ。あの潜水艦娘ヲ、助けタイか?助けたいナラ、進みタイなら、退カシテごらん?」



──そこまでにしておきなさい──


レ級EL「ん?」

新鋭「背後からですって…!?」バッ


ゴーヤへトドメを刺そうとするレ級ELの手も止まり、一同は声がした方に視線を向ける。

真紅の瞳に透き通る白い肌。

漆黒に彩られたウェーブの掛かったロングヘアーが風に煽られ静かに靡く。

その華奢な容姿からは想像もできない重厚な艤装を纏い、宛ら動く要塞とでも言うべき姿に一同は言葉を失う。

中でも、新鋭はその姿を見て絶句した。

彼女が知る限りこのような容姿を持った艦娘は存在しない。

そんな中、漆黒に彩られた艤装に無数の弾痕がある事に気付き、新鋭の顔色が一変する。


新鋭「貴女、まさか…!」

ピーコック「そう、これが私……全てを受け入れた、私の本当の姿よ」

イムヤ「だ、誰なの…あんな子、見たことない…!」

ピーコック「貴女達は下がりなさい。それと、直にこの事を提督大佐へ連絡なさい。私の名はピーコック…少し
前まで、深海棲艦だった存在よ」

ゴーヤ「ぇ……?」

イク「深海、棲艦…だった?」

まるゆ「え?えっ?」

ピーコック「下衆な集まりね。そうまでして、貴女はこの海が欲しいの?」

新鋭「別にこの海なんてどうでも良いわ。今ある海軍そのものを崩壊させれるのならね?」

ピーコック「深海棲艦以上に性根が腐りきってるわね。貴女なら別の意味できっと大物になれたわよ」

新鋭「ふん、深海棲艦風情が…」

ピーコック「けど、その深海棲艦風情を手駒にしなければならないんだから、随分とお粗末極まりないわね。
貴女を囲うその六匹も、結局は虚像の産物でしかない。フェアルストを真似ようと、そのレ級ELを引き連れよう
とも、今更誰も動揺なんてしないわ」

フェアルスト「……」

??「…敵と認識、殲滅します」スッ…

ピーコック「この私を沈めれるとでも?思い上がるのも大概にして欲しいわ。今の私は誰にも止められない」

新鋭「……任せるわ。貴女達の全戦力を持って、ピーコックを抹殺しなさい。フェアルストの時と同じようにね」

ピーコック「フェアルスト、私は戻ってきたわ。全てを元に戻す為に、貴女の魂を救う為に、今度こそ…静かな
時代で……きっと、穏やかな時を過ごせる様にする為に…!」

新鋭「希望諸共また水底へ沈めて上げるわ。再び憎しみを抱いて深海棲艦に堕ちなさい。そこは通させて貰うわ」

新鋭の言葉に応えるように、六匹がピーコックへその身を向ける。

白と黒のツートンカラーの装束に身を包む艦娘。

一人はピーコックも良く知る顔だった。

紛れもない、それは提督鎮守府に籍を置く戦艦榛名、そのものだった。

違いは先に述べたとおり、装束の色が違うという点のみ。

否、纏う雰囲気もやはり違う。

全てを拒絶する負のオーラとでも言うべき禍々しさが、目の前の榛名からは感じられた。

その左隣に居る袴姿の艦娘。

こちらも先の榛名同様に禍々しい気配を放っている。

鉄面皮のような顔を真っ直ぐにこちらへ向けて微動だにせずに居る。

更にその左隣。

今までを共に歩んできた戦友の姿を借りた深海棲艦、フェアルスト。

自身に向けられる彼女の瞳は何を映しているのか。

その術を知る由は今はない。

そして榛名の右隣、嫌味なほどの笑みを携え、舌なめずりをしてこちらを見据える戦艦レ級EL。

更にその右隣には自分達と袂を別った深海棲艦、航空水鬼。

航空水鬼の隣にいるのはこれもまた付いてこなかった深海棲艦、駆逐棲姫。


ピーコック「揃いも揃って…」

水鬼「人の描イタ幻想に惑わサレた結果がソレなのね?」

駆逐棲姫「絵空事ダヨ、そんなモノは…」

ピーコック「」(さて、粋がっては見ても一人で六匹相手なんて無理に決まってるし…早い所、援軍の一つでも
呼んでもらわないと割に合わない所だけど、一匹でも多く殲滅はしてみせようじゃない…)

少し家を空けるので一時中断します

戻りました
区切りのいい所まで更新します

-提督鎮守府近海-

時雨「やっぱり変だ」

電「応答がないのです」

榛名「智謀提督…」

智謀「周辺の索敵を行っても残存兵力ばかり…左と右側面の両艦隊に追撃の指示は提督大佐から出ているが…」

提督『智謀提督』

智謀「提督大佐か、なんだ?」

提督『向かうべきです。こちらの防衛ラインは形成できています。両側面の哨戒も直に終わるはずです。なので、
それが戻り次第再度補給し、決戦艦隊を形成して突撃しましょう』

智謀「…解った。ならば今度こそ君の手で決着をつけろ」


提督「……全員、ここまで良くやってくれた。特に智謀提督たちには本当に感謝しています」

智謀「ふふ」

先輩「恩を返してるだけよ。素直に受け取っときなさい」

不動「礼を言うのははえぇよ。まだ終わっちゃねぇんだからな!」

提督「そうですね。幸い、ここまで全員、大きな損害を貰わずにこれた。特に…」チラッ…

リコリス「何ヨ」

ポート「……」

アクタン「……」ドキドキ

提督「…リコリスたちの援護は凄まじく大きい存在だったと言える」

アクタン「……」キラキラ

榛名「」(解りやすい子だ…)

提督「ここからは細分化せず、大きく二手に分かれての作戦行動に移行する。大淀」

大淀「はい。それでは作戦の概要を説明させて頂きます」

攻め手と守り手、大きく分けてこの二つの艦隊を編成します。

先の作戦を第一次決戦作戦とし、これを第二次決戦作戦とします。

この作戦の基盤として、万が一にも敵の陽動部隊や囮艦隊が現れようと、攻め手は目標にのみ集中、決して他に

気を奪われないように心掛けて下さい。

目標は新鋭元中将提督。目標の完遂は新鋭元中将提督の捕縛、それに及べない場合は殲滅が完遂目標になります。

第二次決戦作戦は前述通り、二部隊構成です。

第二艦隊所属部隊には主に鎮守府全方位の防衛を担当して頂きます。

敵の深追いはせず、一部は固定砲台として要塞の役割を果たして頂きます。

第一艦隊所属部隊は新鋭元中将提督の捕縛もしくは殲滅が任務となります。

恐らく相手も艦隊を指揮しているものと思われます。

新鋭を護衛している場合はこれを撃破する必要がありますが、そうでない場合の遊撃艦隊に関して、第一艦隊所

属部隊は全て振り切って目標の完遂にのみに集中して下さい。

追撃に来るようであれば予め護衛艦隊を編成するので護衛艦隊でその相手をする様に務めて下さい。

それでは艦隊編成の割り振りを発表します。

■第一次主力追撃艦隊
榛名 長門 飛龍 木曾 神通 夕立

■第一次主力護衛艦隊
リコリス 那智 川内 北上 時雨 Bep

■第二次主力防衛艦隊
蒼龍 龍驤 金剛 伊勢 ポート プリンツ


大淀「今、名前の挙がった方々は適時準備を整えて再度出撃をお願いします」

提督「防衛艦隊は抜錨後、近海を哨戒しこの鎮守府への侵攻を抑えてくれ。それ以外の艦娘たちは鎮守府を中心
に外周を固めるように布陣し、要塞の体を成せ」

智謀「各ポストは提督大佐を除いた私達三名の提督で統括し、随時指揮を行き渡らせる」

先輩「皆、これが最後よ。全力を出し切りましょう」

不動「終わったら盛大に騒げ!」

提督「よし、行くぞ。これより最終作戦を開始する…この戦いで全てを終わらせるぞ。お前たちの秘めた想い、
ありったけの思いをぶつけてやれ!全艦娘、突撃せよ!暁の水平線に、勝利を刻め!!」

艦娘達「「了解!!」」


数々の苦難を乗り越えて、ついに最後の決戦が幕を開ける。

敵は元海軍の中将、新鋭提督。

人が人為らざる者へと変貌を遂げる時、人はそれを怪物と呼ぶ。

怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になる事のないように気をつけなくてはならない。

人と怪物は常に表裏一体であり、ならない為に、打ち勝つ為に、その障碍を超える為に、確固たる意志力とその

意志力を貫き通す強い信念をもって挑まねばならない。

秘めた決意と志した信念、その先にある未来を夢見るのではなく掴み取るべく、彼女達は最後の戦いに身を投じる。




~暁の水平線に~



-もう一つの決戦-

大和「加勢に携わっておいて言うのも気が引けるのですが、先の戦闘でどうやらいくつか砲塔が拉げてしまって
いたようです。恐らく本丸の泊地棲姫には決定打となる一撃を見舞えないかもしれません」

ビスマルク「貴女、それ本気で言ってるの?」

大和「そういうビスマルクだって艤装ベコベコじゃありませんか。誘爆はやめてくださいよ?」プンプン

ビスマルク「こっちは多勢に無勢だったのよ!?」イラッ…

日向「……お前達、本当に元帥直属の何某なのか?」

大和「失礼な!」

ビスマルク「何よ!」

飛鷹「伊勢と日向を見てるみたい…」

阿賀野「戦闘に集中しようよー!」

泊地棲姫?「ゴチャゴチャとウルサイ連中だ。纏めて沈めッ!!」ドォン ドォン

大和「誰が…」

ビスマルク「誰を…」

二人「「沈めるって!?」」ドォン ドォン


ボゴオォォォォォン


飛鷹「きゃっ」

阿賀野「わぷっ」

日向「くっ…!なんて爆風だ」


いがみ合っている二人の間に打ち込まれた泊地棲姫の一撃は、咄嗟に反応した二人の息の合った砲撃により空中

で全て誘爆し合い盛大な大爆発と爆風を周囲に巻き起こす。

大和「傷心浸る暇もない…少しは労わって欲しいものですけど!?」

ビスマルク「祈る時間くらいくれてもいいんじゃないかしらね!?」

飛鷹「あの二人居れば、私達必要なさそうね」

阿賀野「えぇ!?」

日向「呆けてる場合か、攻勢に出るぞ!」

泊地棲姫?「茶番ハ必要ナイッ!」ダッ

日向「ゴチャゴチャと煩いのはお前も一緒だ。亡霊に過ぎないお前では私達の相手にもならない」ブンッ


ドゴォッ


泊地棲姫?「グッ…!」ザザザッ


日向の振るった拳は泊地棲姫の胸部を殴打し、その勢いを後方へと押し戻す。

その硬直を見逃さず、飛鷹も一気に仕掛ける。


飛鷹「さっさと終わらせてやりましょうか!攻撃隊、発艦開始!」ヒュン ヒュン

泊地棲姫?「艦爆隊…ッ!」ザッ


飛鷹の放った艦載機に合わせて泊地棲姫が艤装を上空へ向ける。

それを援護するようにビスマルクを狙っていた多数の深海棲艦が一斉に襲い掛かってくるが、それを今度こそ二

人の艦娘、大和とビスマルクが迎え撃つ。


大和「この場の決戦に無用な横槍は野暮でしょう」ジャキッ

ビスマルク「邪魔立ては無用だ!」ジャキッ

大和「ビスマルク、残りの残弾は…」

ビスマルク「それを聞くのは野暮じゃないかしら」

大和「ふふ、それもそうね。考えてる余裕なんてないわよね」

ビスマルク「その通りよ、さぁ、見せてあげようじゃない。私と貴女、元帥直属護衛軍の第一第二艦隊の旗艦が
揃うとどうなるのか…」

大和「そうですね。戦艦大和、突撃します!」

ビスマルク「一匹たりとも決して逃がさないわよ!」

本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

日向「空ばかり見上げてどうするつもりだ!」ジャキッ

泊地棲姫?「ッ!?」

阿賀野「安らかに、眠って!」ジャキッ

飛鷹「いけっ!艦載機の皆!」サッ

泊地棲姫?「オノレ…!」ドォン ドォン


艤装を構え、その砲身を泊地棲姫へと向ける日向と阿賀野、艦載機を操り攻撃を仕掛ける飛鷹、周囲に群がる深

海棲艦の残党は大和とビスマルクの二人が塞き止めているこの状況下、多次元からなる波状攻撃に、泊地棲姫は

完全に虚を突かれ放たれた砲撃は全く照準からずれた明後日の方へと空を切る。


ボゴオオォォォォン


そこに合わせる様に飛鷹の放つ艦載機の攻撃が一斉に上空から嵐の如く降り注ぐ。


泊地棲姫?「ウグッ…!まだ、だ……ッ!」ググッ 中破

飛鷹「もうっ、なんて装甲よ…!」

阿賀野「能代たちの無念、晴らすんだから!阿賀野の本領、発揮するからね!」ドン ドン


ボゴオォォン ボゴオォォォン


泊地棲姫?「こんな、トコロで……ワタシは、沈まんッ!!」 大破

日向「いや、終わりだ。航空戦艦の真の力、思い知れ!」ドォン ドォン

泊地棲姫?「……っ!マタ、沈むの、か……水底へ……」


ボゴオオオォォォォォン


泊地棲姫?「…………」

日向「…さらばだ。大破着低、お前の無念は私が汲み取ろう」

泊地棲姫?「ワタシモ…モドレルノカ?」

日向「どこにだ」

泊地棲姫?「アオイ、ウミノ、ウエニ……」

日向「願え…願う事は、全てに平等だ」

泊地棲姫?「……ソウカ…ソウイウコトダッタ…ノカ……」 轟沈


静かに沈んでいく泊地棲姫の表情は、今わの際に至って苦悶には歪まず穏やかな表情で深海へと誘われていった。

日向はその場で静かに瞳を閉じて短い黙祷を捧げゆっくりと踵を返す。


日向「…さぁ、行こうか」

飛鷹「ええ、大和達の援護しないとね」

阿賀野「うん!」

-孤軍奮闘-


ドオオォォォォン ボゴオオォォォォン


ピーコック「……っ!」 被害軽微

フェアルストCL「思いの他、ヨク動くワネ」

レ級EL「ボク等必要?」ニヤニヤ

榛名CL「逃げの一手に集中しているようです」

??「哀れね。啖呵を切った割に、動きが消極的」

水鬼「アラアラ、辛辣…」クスクス…

駆逐棲姫「…………」

レ級EL「やっぱさぁ、これじゃ遊びにもならないジャン?っていうかなってないし。ククッ、ジャンケンで勝っ
た二人で相手してさぁ、負けたら交代ってのもいいんじゃないの?」

榛名CL「どちらでも構いません。殲滅が最終目標ですから」

??「くだらないわ。相手をしなくていいと言うのなら、私は相手をしないだけです」

フェアルストCL「まどろっこシイノは嫌いナンダけど…」

駆逐棲姫「ワタシの攻撃、殆ど彼女にハ当たらナイから、パスする」

レ級EL「アッハッハ!そう言わずにさぁ、ボクだってここまで成長したのにさぁ、殆ど出番ナシだったんだよ?
先陣切ってった連中アッサリ負けちゃうし、はじめっからボクを出してりゃ良かったのにねぇ…」

ピーコック「ゴチャゴチャ煩いわね。纏めて風穴開けて上げるわ!」サッ

レ級EL「む…?」

ピーコック「第一群、第二群…艦攻艦爆隊、全機発艦…っ!」ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

水鬼「アラ……」

??「…………」

レ級EL「ウッヒャー、やっばいね、あの数!」スッ… ヒュン ヒュン

水鬼「やらせは、シナイヨッ!」サッ… ヒュン ヒュン ヒュン

??「…問題ないわ」ビュッ… ヒュン ヒュン ヒュン


ボゴオオォォォォォォン


ピーコック「…くっ!」 パラパラ…


ピーコックの放った数多の艦載機をレ級EL、空母水鬼、白と黒の袴姿の艦娘の三人が放った艦載機で迎撃する。

上空で迎撃されたピーコックの艦載機の残骸が無残にも驟雨の如く降り注ぐ。

ピーコック「私の艦載機をこうも容易く…」

??「触れれば倒せます。貴女の艦載機はその程度、という事です」

水鬼「所詮一匹、後ニモ先ニモ何もナイんだから、潔く散りナサイ」

ピーコック「後に何もないのは反論がないわ。けど、先には見えるものがある。私はそれを掴み取る為にここに
いるのよ。邪魔はさせない…!」

レ級EL「そうやって粋がってるのを邪魔して、弄って、グチャグチャにしてやるのがボクのオ・シ・ゴ・ト♪」

ピーコック「深海棲艦の誕生過程で生まれた突然変異種、戦艦レ級。快楽と食欲が共存してるだけでこうも変わ
るものなのね。更に【食べる】事で学習力を増す…」

レ級EL「ボクに許された特権ってヤツだよ。お前を食えば、ボクは更なる高みへ上れる気がするよ」

ピーコック「フラグシップ型にでもなるつもり?一周回って木偶以下の馬鹿に成り下がらなければいいけどね?」

レ級EL「一々癇に障る言い回しをするね、お前…」

ピーコック「あら、ごめんなさい。地なのよね、これが…」クスッ…

レ級EL「リコリス達が従えてたポンコツと同列に見るなよ。ボクこそが…最上位なんだからさぁ」

ピーコック「…………」

レ級EL「これから始まるのは…ただの殺戮だ。強者が弱者を踏み躙る。圧倒的な力で、一方的に、これこそが!
ボクがボクである所以…ッ!生き延びたいのなら勝ち残れ!諦めたのなら潔く食われろッ!弱肉強食ッ!!それ
が全てで、それこそがこの戦いの根本なんだよ!!」


今までを振り返っても戦艦レ級の築き上げた恐怖は大本営を始めとし、全ての鎮守府で畏怖される対象となった。

それを支え続けた一つの権化とも呼べる明確な理由……それこそが『力』だ。

力で捻じ伏せ、力で圧倒し、力で従える。

恐怖で人の心を支配する。この場合、他の深海棲艦が彼女に付き従うのもこれが理由なのではないのだろうか。

そして今、ピーコックの眼前に居る彼女こそ、数多存在したレ級の頂点。

異常なそう度で進化を遂げ、異常な速度で増殖する。一種のウィルスにも等しいこの存在。

何故、新鋭はこの戦艦レ級を数を限定して生み出したのか。

理由は先にも述べた力のバランス関係が最も大きいだろう。

リコリス達上位の深海棲艦にも劣らない知能を持ち、更にそれは加速度的に成長し、ある一定を超えたところで

枷が外れて暴走する。

自らを飲み込みかねない諸刃の刃。扱いを間違えた瞬間、待ち受けるのは死。

それでは何も残りはしない。故に調整し、実験し、然るべき方向へと意図的に新鋭は導いた。

そうして完成した戦艦レ級。

圧倒的な力、圧倒的な武装、圧倒的な速度、それらは捕食と言う行為によって倍加されていく。

まさに、これこそが人の姿を象った悪魔が生み出し、そして作り出した化け物と言う名の『力』の正体だ。



──その戦いに終止符を打つために立ち上がったのがそいつだ。その誇りは決して沈ませる訳にはいかない──


レ級EL「……!?」

新鋭「……提、督っ!」


海原に響き渡った声に逸早く新鋭がその眼差しを向けて忌々しげに睨み付ける。

編隊を成して新鋭達の前に、ついに榛名達主力艦隊が追いついた。


ピーコック「……遅いのよ、このノロマ」

リコリス「貴女……まさか、ピーコックなの…!?」

提督「随分とスッキリしたじゃないか、ピーコック。正直驚きだ…っていうより、色白は変わらんな?」

ピーコック「うるさいっ!」

提督「へぇへぇ…それよりもイムヤたちの件、感謝する。それも含めて、ここからは俺たちも加わろう」

ピーコック「」ニコッ…

新鋭「次から次へと、よくもまぁこうも邪魔してくれるわね…提督大佐」

提督「どうもそういう星の下に生まれたみたいでして、新鋭『中将殿』」

新鋭「口の減らないクソガキが…そのふざけた口を今度こそ閉ざして上げるわ」

提督「ふざけてるのはそっちでしょう。ガキじゃあるまいし、癇癪起こしていい年した年増ババァがピーピーと
耳障り極まりないっすよ。躾け、し直して上げますよ。海軍式でね」

榛名CL「…新たに敵を確認しました」

??「…目障りね」

駆逐棲姫「新手…?」

水鬼「ソウみたいね」

フェアルストCL「ならば殲滅スルのみダ」

レ級EL「纏めて食い散らかしてやるッ!」

-決戦-

榛名「わた、し……?」

飛龍「あっちの袴姿のって、加賀…!?」

榛名CL「標的、確認しました。榛名、全力で参ります」ジャキッ

加賀CL「鎧袖一触よ。全てを薙ぎ払ってあげるわ」サッ


フェアルストCL「沈みたいヤツから掛かってキナサイ」

リコリス「つれナイ台詞ネ」

ピーコック「貴女と私じゃ艤装が被ってるのよ。不得手になるんじゃないかしら?」

リコリス「アラ、そうでもナイかもしれないジャナイ?それにシテも、貴女…」

ピーコック「何よ…」

リコリス「艦娘になってるのはいいとして、その服装は変わらないのね」

ピーコック「……気に入ってるのよ。どーだっていいじゃない」


レ級EL「選り取り見取りだなぁ、どれから食おう……」


ボゴオォォォォン


レ級EL「ッ…!誰よ!」

長門「挨拶代わりだ。邪険にせず受け取っておけ」

レ級EL「お前……!」

長門「いや何、どうもその顔を見ると力が入ってしまってな。否が応でも、胸が熱くなるっ!」


水鬼「ワタシの相手はダレなのカシラ?」

木曾「そう喚くなって、きっちり三枚に卸してやるからよ」

那智「俗物め…貴様に先は無いと思え」

水鬼「たかが雷巡と重巡ノ二人で、ワタシを倒す気デいるの?」

木曾「おいおい、算数もできねぇのか?」

神通「……軽巡では数にも入りませんか」

水鬼「フッ…ハハハッ!いいえ、アナタ達のコトはシンエイから聞いてるモノ…間合いノ取り方、立チ振ル舞イ…
ホント油断も隙もナイわね」

那智「で、潔く雷撃処分を受けるか否かだが…」

水鬼「フフッ…空爆ノ嵐デ、即鉄屑に変えてアゲルわ」


駆逐棲姫「……」

川内「いやぁ、随分と他とは違って大人しい深海棲艦だねぇ」

駆逐棲姫「…ダカラ、軽巡と駆逐艦デモ大丈夫、トデモ思った?」

Bep「……」

夕立「……」

駆逐棲姫「認識ヲ改メテ…死んで?」

Bep「イムヤ達のやられた分はキッチリ返すよ」

駆逐棲姫「……?」

夕立「悪夢を見せて上げるって事っぽい!」

駆逐棲姫「ハァ…無駄なのに…」

本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

提督「……」

新鋭「手間が省けたわ。何かとチョロチョロ嗅ぎ回ってくれて、目障りだったのよ」

提督「嗅ぎ回るだなんて人聞きが悪いっすね。散々人の古傷や大事なものを穿ったり穢したり、やりたい放題し
てくれた人が言う台詞とは思えませんよ。艦娘を使った非人道的な人体実験、人間を使って深海棲艦の細胞とを
組み合わせる生体研究…その過程で恐らくは生まれたであろう戦艦レ級…」

新鋭「それを私がやったであろう事を裏付ける証拠でもあるのかしら?」

提督「残念ながら自ら順次綺麗にお掃除してくれてなぁんにも残ってませんよ。貴女と言う存在以外にはね」

新鋭「私の自白頼み?あははははっ!馬鹿じゃないの…例えそうだとしても言う訳ないでしょ」

提督「言い回しが一々芝居がかってるのが癇に障りますね」

新鋭「…なんですって?」

提督「つまりお互い様ってことでしょ。あの時の借り、ここできっちり返しますよ」トントンッ


三度に渡り見えた提督と新鋭。

一度目は大本営で、二度目は鎮守府で、そしてこれが三度目にして最後。

提督は以前に新鋭に切り付けられた肩を自らの拳で叩いて示す。


提督「海軍艦娘運営法に基く違反行為第一条、叛乱罪」



党を結び艦娘を兵器として執り叛乱をなした者は次の区別に従って処分される。一つ、首魁・死刑。一つ、本来

の目的とは異なり明らかな叛乱の意図が認められる謀議に参与し、またそれに伴い艦娘を先導・誘導しこれを指

揮した者は死刑・無期、または五年以上の懲役。または禁錮とする。

また叛乱をなす目的で党を結び兵器、資材その他艦娘に供する物を却掠した者は、上の例に同じく処分される。

上の罪の未遂も罰せられ、また予備、陰謀は一年以上の有期の懲役または禁錮。予備、陰謀をなした者が未だ事

を行なわない前に自首したときはその刑を免除される。

また、海軍における鎮守府、艦娘、資材、弾薬その他軍用に供する場所、建造物その他の物を掠奪・破壊・間諜

する及びそれに当たる幇助をした場合、これらの行為をなした者は死刑。

(一部文章を Wikipedia:反乱罪 の頁より抜粋、文字を一部変更して掲載)
(※当然ながら存在・実在しない刑法です)


新鋭「…くだらない」

提督「建前ですよ。貴女を俺は決して殺さないし、死刑にもさせない」

新鋭「なんですって…?」

提督「皆が苦しんだ分、きっちり苦しみ抜いて貰わないと気が済みませんからね…」ニヤッ…

新鋭「この、クソガキ……ッ!」

-川内・夕立・Bep vs 駆逐棲姫-

駆逐棲姫「やらせは…シナイよ…ッ!」ザッ

川内「こいつ…!」

夕立「は、速い…!」

Bep「くっ…」

駆逐棲姫「落チロッ!」ドン ドン


駆逐棲姫には足がない。

それを補うようにして下半身は太ももから下が深海棲艦のパーツで補われ、返ってそれが俊敏な動きを更に上げ

ていると言っても過言ではなかった。

しかもそれだけ速く動きながら射撃の腕も殆どブレない。

棒立ちでは確実に蜂の巣にされる。


ザバアァァァァン ザバアァァァァン


川内「くっそ…!」

Bep「私が引き付ける」

夕立「左右から同時に行くっぽい!」サッ

Bep「了解だよ」サッ

駆逐棲姫「ドンナ手でこよウト、同じダヨ」サッ


川内を正面に残し、夕立とヴェールヌイの二人が左右に分かれて展開する。


川内「よし、行くよ!」ジャキッ

夕立「うんっ!」

Bep「いつでもいける」

駆逐棲姫「小賢シイ…!」


ドン ドン


駆逐棲姫「コノ…程度…ッ!」サッ グッ


ボボボボボンッ


前後の緩急だけで川内の一撃をやり過ごし、駆逐棲姫が前傾姿勢を取る。

力を溜めて、蓄積された力をバネに変えて一気に間合いを詰める作戦だ。


ボボボボォォンッ ザバアアァァァァァン


駆逐棲姫「……ッ!?」


飛び出そうとしたまさにその時、前方に砲撃が着弾して大きな水飛沫を生み出す。

更に真横からヴェールヌイが主砲を構えて躍り出す。


駆逐棲姫「キサマ…ッ!」

Bep「ウラー!」ドン ドン

駆逐棲姫「くっ…!」サッ


咄嗟に両腕を交差させて衝撃に備える。


ボゴオオォォォォン


至近距離からのヴェールヌイの一撃、手応えはあったと彼女自身も確信を得る。

しかし、それら自信を覆すが如く、多少の擦り傷程度と言わんばかりの姿で駆逐棲姫は爆煙の中から姿を現す。


駆逐棲姫「…種別が同じダカラって、キミ達みたいなのと一緒にサレるのは心外ダヨ」 被害軽微

Bep「なっ…!」

夕立「それなら…!」バッ


反対方向から猛進する夕立は両手に持つ魚雷を同時に海面に向けて放つ。

それと共に艤装を持ち替え、主砲を駆逐棲姫へ差し向けた。


夕立「夕立の戦い、見せて上げる!」ジャキッ

駆逐棲姫「敵わナイと解っててクルの?ただの馬鹿ネ」


ドン ドン


主砲を撃ちながら夕立は左右に身を揺さぶりながら相手の照準を外す動きで駆逐棲姫へ迫る。


ボボボボンッ


バシュンッ……ボゴオオォォォン


夕立の砲撃を片手で蹴散らし、海面から迫る無数の魚雷を身体を逸らして回避する。

空中へと姿を現した魚雷は停止した宙で大爆発を起こし、辺りに熱風を奔らせる。

駆逐棲姫はそれを物ともせずに態勢を正して身体ごと夕立に向き直る。

しかし速度を緩めない夕立の姿勢に、初めて駆逐棲姫の顔色に変化が生まれた。


駆逐棲姫「接近戦…!?」

夕立「夕立、突撃するっぽい!」

川内「…あいつの装甲、伊達にお姫様名乗ってないね。私達の中距離からの砲撃じゃビクともしなそうだ」

Bep「川内や私達駆逐艦の十八番まであと少しだよ」

川内「相手にとっても条件は一緒…なら、やる事は一つだね」

Bep「了解だよ」ザッ

駆逐棲姫「コイツ等…!」


夕立に続きヴェールヌイもその距離を一気に詰めて接近戦に持ち込む。

左右に夕立とヴェールヌイ、正面に川内。

その陣形は崩さず、間合いだけを徐々に狭めていく。


駆逐棲姫「鬱陶シイ…ッ!!」ドン ドン ドン ドン


バシャアアァァァン ボボボボンッ


これ以上の接近を許すまいと周囲へ向けて駆逐棲姫が一斉射を行うが、それを掻い潜り更に三人は間合いを狭め

る為に接近を試みる。

危険を犯してまでそうするのには幾つかの理由がある。

一つは駆逐棲姫の尋常じゃない装甲。

戦艦クラスに匹敵する装甲を持つ駆逐棲姫を相手に、中距離からの軽巡、駆逐艦の砲撃では決定打を与えれない

と三人は気付いたのだ。

残弾がなくなるまで撃ち続けようと、これでは付け焼刃でしかない。

更に駆逐艦特有の俊敏な身のこなし。

単発で捉えた所で先の装甲が理由となり決定打には程遠くなり、かといって無闇に近付けばあの瞬発力から繰り

出される攻撃や砲撃に一溜まりもない。

確実に沈めるにはどうすればいいか……そこに至って最後の一つ、それが夜戦だ。

闇に乗じ、死角を衝いての強襲作戦。

大物食いを成すには度胸と覚悟、それを行う絶好のタイミングを判断する決断力が物を言う。

彼女達にとってそのタイミングは夜戦以外にありえない。

今は夕刻手前、地平線に太陽が沈みかけて間も無く辺りを照らすオレンジの光が閉ざされる。

太陽の加減を見て、川内の眼がスッと細く鋭くなる。

余分な音が排除され、神経が研ぎ澄まされていく。

川内は以前提督に何故夜戦に拘るのか、と聞かれた事がある。

身内の演習で羽黒にはそこで活躍の場を見出すためだと答えた彼女だったが────

提督「よくこんな暗い中で的確に動けるもんだな」

川内「探照灯や照明弾使えばもっと命中率上がるよ!」

提督「ホント、お前等姉妹は特異だな」

川内「へ?」

提督「神通といい、お前といい…俺から見ると、どうにも元気が空回りしているようにしか見えないんだがな…」

川内「何それ…」

提督「色々、って言っても大したもんじゃないが、ここに来る前にも何人か軽巡型の子たちには会った事がある。
勿論、夜戦が得意だって子も居たは居たが…正直、お前は異常だ」

川内「……」

提督「で、色々と考えてお前たちを観察してて辿り着いた一つの結論だがな……献身、だろ?」

川内「ぇ……?」

提督「なんだ、自分で気付いてないのか。お前は仲間や妹の神通を守る為なら喜んで前に出る。中でも夜戦はそ
の行為を最大限に生かせるお前の土俵だ。先陣を切って自ら的になり、自らの手で制圧する。以前に金剛たちと
戦ったときの神通もそうだった。だが神通の場合は献身なんて生易しいものじゃない…あいつは、自らを犠牲に
すらする。境遇が反転してそうさせているのかもしれないな。今まで役に立てなかった、役に立てないって思っ
てきた自分がやっとその意味を見出せた。だからこその犠牲…」

川内「はは…そんな風に、考えた事もなかったよ。純粋に、私は夜戦が好き…って、思ってただけなんだけど…」

提督「まぁ、そうだろうな。献身的で犠牲的、姉と妹でこうも違うもんなんだな。お前は全て自分で成そうと、
周りを傷付けさせまいとし、神通は己の身を楯にしてでも全てを守り抜こうとする」

川内「……」

提督「一つの信念を括った奴は本当に強い。その信念を圧し折ろうと思ってもこっちが生半可な覚悟じゃビクと
もしないからな。けどな、覚えておいてくれ。一人で抱えれる量には限界がある。だから、周りを見ろ…お前の
周りには多くの仲間が居るはずだ。だから分担して皆で抱えろ、支えろ、補い合え。そうすれば、今よりもっと
お前は輝ける」


丸い太陽が地平線の向こう側へ沈み、辺りを闇が覆い始める。

三人が三人とも散開して照準を絞らせなかったのが功を奏し、ほぼ万全に近い態勢でこの瞬間を迎えられた。

川内の口角が薄っすらと釣りあがり、細めていた眼は限界まで見開らかれる。

この瞬間より、彼女達の作戦が開始される。夜戦強襲。

川内「────さあ、私と夜戦しよ?」サッ

夕立「ソロモンの悪夢、見せてあげる!」バッ

Bep「信頼の名は伊達じゃない。追撃する!」スッ

駆逐棲姫「……!マサカ、夜戦に持ち込むタメに…!」


一斉に闇に乗じ、三人の姿がそこから忽然と消える。


パッ……パパパッ


そんな中、一箇所に明かりが灯る。


駆逐棲姫「馬鹿メ、そこか…!」ドン ドン


ボボボボボンッ


探照灯による明かりを頼りに駆逐棲姫が砲撃するも、それはあっさりと回避される。


パァァァァン


駆逐棲姫「クッ……な、今度ハ一体…!?」


探照灯の明かりが消えた直後、今度は自身の周囲に明かりが灯る。

その明かりの切れ端に一瞬、夕立の姿が映るが明かりは直に消えて辺りには再び闇が広がる。

そしてその直後、何処からともなく声が響く。


──夜はいいよねぇ、夜はさ──


駆逐棲姫「……ッ!ドコから…!」


カカカッ


駆逐棲姫「……ッ!」


ボゴオオォォォォン


駆逐棲姫「ウグッ…!」 小破


飛び道具として改良された投擲型の爆雷。

川内が最も夜戦で愛用する固有の艤装だ。

本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

川内「条件は五分と五分…けどさ、この領域じゃ私は絶対に負けない。負ける訳にはいかないんだよ。この身を
盾にしてでも守りたい仲間が居るから…!誰一人、私の前じゃやらせないよ!」

駆逐棲姫「キサマァ…!」


ボゴオオォォォォン ボゴオオォォォォン


駆逐棲姫「グッ…!」 中破

夕立「守られてるばかりじゃないっぽい。駆逐艦だって、私たちだって意地がある!」

Bep「守ってもらってばかりじゃないさ。私たちだって、守ってみせる!」

駆逐棲姫「何故、コウモ狙い違ワズ、こちらヲ……」

夕立「気付けないならそれまでよ。さぁ、素敵なパーティしましょう?」バッ

Bep「君を沈める」サッ


闇の中、声だけのやり取りが終わり二人の気配がその場から消える。

ここまで駆逐棲姫が混乱を見せたのは幾つかの理由があった。

一つは夕刻から夜へと変わった直後、眼が慣れきってないところ、その直後にヴェールヌイが探照灯を使い明る

さを誤魔化し、闇の深さを増加させた事。

厳密には駆逐棲姫の眼を即座に闇に慣れさせない為の囮だ。

更にそこから夕立が照明弾を発射し、駆逐棲姫の場所を明確にする。

極め付けが川内の放っていた夜間偵察機だ。

これの援護も手伝って、川内は駆逐棲姫の居場所をキッチリ把握した上で投擲型爆雷を放つ事が出来たのだ。

そして、その恩恵は既に闇に眼の慣れた三人を更に後押しする。


ザァァァァァ……


駆逐棲姫「」(音…これハ、波ノ音…クルッ!)


ビュオッ


駆逐棲姫「え……?」


駆逐棲姫の横を凄まじい速度で何かが過ぎ去る。

しかし未だ闇に眼の慣れない彼女はそれが何なのか認識すら出来ずに小さく声を漏らすだけだった。

そしてその直後、耳元で聞こえた声に駆逐棲姫の動きが止まる。

夕立「まず何から撃とうかしら?」

駆逐棲姫「ッ!?」バッ


一瞬の硬直の後、咄嗟に身を翻し声のした方からは遠ざかるように間合いを取ろうと動き出す。

しかしその先に待ち受けているのはヴェールヌイ。


Bep「無駄だね」ドン ドン

駆逐棲姫「ナッ…!?」


ボゴオォォォォン


駆逐棲姫「ガッ……くっ、コノ、程度…ッ!」 中破

夕立「ごめんね。けど、私達も負けられないっぽい」ジャキッ

駆逐棲姫「勝った気に、ナルナッ!!」ジャキッ


ドン ドン ドン ドン


互いの砲撃音が重なり、暗闇に一瞬火花が散る。


ボゴッボゴオォォォォン


二つの砲撃音が重なり合い、再び互いの周囲を一瞬照らし出す。


夕立「くっ…!ハンモック張ってでも、戦うよ!」 中破

駆逐棲姫「痛いじゃ、ナイカ…ッ!」 大破

Bep「なんてタフなんだ」

駆逐棲姫「マダだ…こんな、ワタシは…こんな場所デ、沈まナイ…ッ!」

川内「悪いけどここまでだね。私達もさ…ここで躓く訳にはいかないんだよ」チャキッ


ザァァァァァァ……


駆逐棲姫「姿が、見えナクても…音で位置ナラ、解る…!」バッ

川内「それだけで夜戦を語ってもらっちゃ困るなぁ」サッ

駆逐棲姫「落チロ!落チロッ!!」ドン ドン


ヒュン ヒュン……ボゴオオォォォォン


駆逐棲姫の放った砲撃は空を切って何もない海面を叩き割る。

その一瞬を衝いて川内は爆発音に乗じ駆逐棲姫の背後に回り込む。

だがその気配を察してか、駆逐棲姫は敢えて振り向かずに口元だけを釣り上げて静かに笑う。


川内「……!」バッ

駆逐棲姫「……ワタシが気付いてナイとでも、思ってイタのかッ!!」クルッ ジャキッ

川内「…気付いてるのは解ってたよ。カウンターって奴さ!」グッ


ドン ドン ビュッ…ジッ


ボゴオオォォォォン


駆逐棲姫の砲撃直後、まさに砲撃が放たれたその直後、身を捻って川内は射線軸を逸らし紙一重でその砲撃を回避する。

そして突進の勢いは殺さないまま、すれ違い様に進行方向に背を向ける様に更に身を捻って手に構えていた魚雷

をそのまま直接、駆逐棲姫へ向かって放った。


ヒュッ…


駆逐棲姫「…!?か、かわシタのかッ!?バカな……」


ガッ…


駆逐棲姫「ハハッ…冗談、デショ…」

川内「悪いね、終わりだよ」



ボゴオオォォォォォン


ザザザッ


駆逐棲姫「……クッ……」


サァァァァ……


川内「月…?」

夕立「わあ…」

Bep「…ハラショー」


戦闘の終わりを告げるかの様に、雲に隠れていた月が辺りを仄かに照らし出す。

ボロボロになりながら、静かに沈みゆく駆逐棲姫はただ静かに天を仰いで空に遍く星々と月を見上げる。


駆逐棲姫「アァ……ツキガ…月が、きれい……」

川内「…ごめんよ」

夕立「せめて、安らかに眠って欲しいっぽい」

Bep「…ダスビダーニャ。また、いつか…」

-木曾・神通・那智 vs 空母水鬼-

木曾「イムヤ達を『カンゲイ』してくれたそうじゃねぇか」

水鬼「アァ、あの潜水艦娘達?バカよねぇ、潜ってレバ良いのに、ワザワザ出てクルんだから…」

神通「彼女達の抱いた無念の分、清算させて頂きます」

水鬼「出来ルノ?脆弱な艦娘風情ガ…」

那智「脆弱かどうか、貴様の身をもって知れ」

水鬼「生意気ネ。そう言えば、ピーコックも何かヘンな言い方シテたわネ。未来がどうトカ…その先へアナタ達
も進みたい…ノカ?」

那智「ふん、私はただ眼前の敵を撃ち滅ぼすのみだ」

木曾「ああ、てめぇにきっちり落とし前付けた上で俺達は先へ進むぜ」

神通「出し惜しみはしません」

水鬼「そう……ナラ、やらせは…シナイヨッ!」バッ ヒュン ヒュン ヒュン

那智「制空権は無理だ。迎撃しつつ、空と海、両方に注意を向ける必要がある」

木曾「わーかってるよ」

神通「きます!」


バッ


三人は空母水鬼から放たれた艦載機に合わせて一斉に動き出す。


木曾「対空は任せろ!俺が迎撃する!」

那智「ふん、ならばやってみせろ!」

神通「お願いします!」

水鬼「朽ち果てルトいい…空爆ノ雨に全て焼かレテナッ!」


ブゥゥゥゥゥゥン……


木曾「へっ…別に騒ぐほどのこともない。俺は球磨型の木曾だ…俺の前に立ちはだかるヤツは容赦しねぇ」ジャキッ

那智「いくぞっ!」

神通「はいっ!」

木曾「うおらあぁぁぁぁぁっ!!」ダダダダダダダダッ



ボボボボボボボボン


無数に飛来する空母水鬼の艦載機に木曽が対空砲火を浴びせかけ、それを合図とする様に両左右から那智と神通

が空母水鬼へ向けて駆け出す。


水鬼「ホラッ、撃ち漏らしヨ!」ヒュン ヒュン

那智「小賢しい!」

神通「押し通ります!」


ボゴオォォォン ボゴオォォォン


空爆の降り注ぐ中、那智と神通は左に右にと巧みに舵を取りながら速度を落とさず空母水鬼へ迫る。


那智「落ちろ!」ドン ドン

神通「そこです!」ドン ドン


間合いに到達すると同時に、二人の艦娘は声を揃えて同時に砲撃を開始する。


ヒュン ヒュン


ボゴオオオォォォォン


那智「なっ…!」

神通「そんな…」

水鬼「モノは使いよう、デショウ?」


避ける動作を微塵も見せないかと思えば、空母水鬼は自ら生み出した艦載機自身を盾代わりに砲弾の真っ只中へ

発艦させて砲弾に直撃させて誘爆、荒い手法で那智達の砲撃を制圧する。

その所業、まさに鬼。


那智「下衆め…」

水鬼「褒めテルのカシラ?」

神通「……」

水鬼「さぁ、次のに対処ガ出来るカシラ」ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

那智「…木曾っ!」

木曾「っせー!やってやる!!」ジャキッ

水鬼「死になサイッ!」バッ


対空に備えて木曽が再び無数に空を舞う空母水鬼の艦載機を睨みつける。

だが次の瞬間────

神通「木曾さんっ!!」ダッ

木曾「……っ!」

水鬼「馬鹿面下ゲテ、そのまま沈みナサイッ!」ジャキッ


上空に注意を逸らされた木曾の眼前に空母水鬼が迫り、玉座のような深海棲艦特有の黒塗りの艤装、その砲塔が

木曾に差し向けられる。


木曾「こいつ、砲撃も…っ!」

水鬼「サヨウナラ」ドン ドン

神通「…させません!」ビュッ


空母水鬼の砲撃とほぼ同時に互いの間に割り込んだ神通が眼にも留まらぬ速さで腰に下げた武刀剣を一閃させる。

空母水鬼の放った砲撃、その全てを神通は捌いて対処する。


水鬼「ナッ…!?」


ボボボボボンッ


木曾「神通…」

那智「馬鹿共が…っ!」ダッ

水鬼「小賢シイ真似ヲ…けど、何か忘レテるんじゃナイかしら」ニヤッ…

木曾「…ッ!避けろっ、神通!!」

神通「……っ!」

水鬼「纏めて沈みナサイッ!」


ボゴオオオォォォォォォォォン


水鬼「フフフ…アハハハハッ!馬鹿ナ連中ね」

本日はここまで

皆様こんばんは
今年最後の更新になります

どうやら今年中に終わらせるのは無理があったようです
書き溜めていた分を一挙に載せておきたいと思います



──これくらいの傷……なんてことは、ない──


水鬼「……ッ!?」


爆煙の中から響く声、やがて風に流され爆煙が吹き抜けて消え去った後には無傷の木曾と神通、そしてその二人

を守るように、前面に出て堪えた那智の姿があった。


那智「…詰が、甘かったな。深海棲艦…っ!」 中破

神通「那智さん…!」

木曾「お前…」

那智「……つくづく、貴様らの言う守るの意味が、私には理解しかねる。どれだけ守ろうと最後に立っていなけ
れば無意味だろう…何故、貴様らにはこんな真似が幾度も成せる……」

神通「一人で立てないなら、支えてもらえば良いじゃないですか」

那智「何…?」

木曾「その為の『戦隊』だろ。もっと仲間を信じろ。てめぇのケツ持ちくらい、何度だって請け負ってやる」

神通「ここからです」

木曾「あぁ、こっからだ。俺達の戦闘ってヤツをあいつに教えてやろうじゃねぇか」

那智「……ふっ、はは…そうか。なるほど…嫌いでは、ない。こういうのも、悪くはないものだ…」

神通「ふふっ」ニコッ…

木曾「へっ、素直じゃねぇヤツだぜ」ニヤッ

水鬼「目障リナ…」

木曾「神通、あいつの艦載機をまともに相手してたら日が暮れる。が、放っておくワケにもいかねぇ」

神通「武刀剣の破壊力なら、とも思いましたが…生憎あちらは間合いを取るのが上手です」

木曾「だろうな。けど、予想外の事態が起きればそれも狂うってもんだ」

神通「え?」

木曾「お前の武刀剣、俺に預けてくんねぇか。必ず役立てる」

神通「それは、構いませんが…」

木曾「んじゃ、説明する────」

北上「いいかい、木曾っち。頭はクールに、心はホット、だよ!」

木曾「んだよそのマンガみてぇな台詞はよ!」

北上「え、マンガの受け売りってよく解ったね」

木曾「まんまかよ!馬鹿なのか、てめぇは!?」

北上「まぁ聞きなって。案外私達には当てはまる言葉だったりするんだよね~」

木曾「ああ?」

北上「ほら、うちらって何だかんだで結構装甲はうっすいじゃない?」

木曾「ん、まぁ、な…」

北上「戦艦は愚か空母系や重巡、下手すりゃ軽巡の一撃やなんかでも結構怖いわけさ。だから、考えんのよ」

木曾「考えるだぁ?」

北上「そっ、どうしても劣っちゃう部分はあるわけだしさ、だったらその分は頭でカバーだよ、木曾っち」


木曾「────ねぇ頭で考えた策だ」

神通「…………」

木曾「伸るか反るかは任せる。失敗すりゃ俺らはお釈迦だ。少なくとも俺ぁ確実にやられちまう」

神通「ここまできて、伸るか反るか、なんて聞くまでもありません」

木曾「ははっ、野暮だったか。じゃ…頼むぜ、相棒」

神通「木曾さんの進む道、私が切り開きます」

那智「勝手に、話を進めるな…」

木曾「おまっ、無茶するな!」

那智「ほざけ…命を懸ける作戦に掛かろうとしてる仲間を、そのまま見す見すいかせるものか…!」

神通「那智さん…」

那智「新鋭に騙され沈んでいった同胞は少なくない…ここで、出ずして何が仲間だ!」

木曾「…だよな。ああ、その通りだ!俺ら三人、一蓮托生!やるなら三人、全員でやり遂げるっきゃねぇよな!」

那智「当然だ…!これは、この戦いは仲間たちの仇だ!追撃する!」

神通「はい…!」

水鬼「コソコソと…死ぬ順番デモ決めていたのカシラ?」

木曾「バァカ。てめぇを仕留める段取りとトドメ誰が刺すかで揉めてたんだよ。塩水で首でも洗って待っとけ!」

水鬼「…笑えナイ冗談はキライなの。死になサイ」ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

那智「いくぞっ!砲雷撃戦、用意!!」

水鬼「お前達如きノ砲雷撃ナド、恐れるコトなど何モない!」

神通「次発装填済みです。これからです!」

木曾「言ってろ。てめぇに本当の戦闘ってヤツを、教えてやるよ!」



ドン ドン ドン ドン


那智の構えた主砲は空母水鬼を狙いに収め、微塵もその砲塔はブレずにピッタリと止まる。

そして木曾の咆哮と共に那智の手にする主砲が火を吹いた。

それに合わせるように空母水鬼の艦爆艦攻隊による空からの攻撃も開始される。

そして木曾と神通はそのどれにも気を取られず、ただ真っ直ぐに空母水鬼へ向けて進路を固定する。


水鬼「アハハハッ!味方を見捨てて、神風特攻デモ仕掛ける気ナノ!?」ヒュン ヒュン

木曾「……!」

神通「……」

水鬼「マダマダ……何度だって艦載機ハ放てるワ。無残に朽ち果てナサイ!!」


ボゴオォォォォン ボボボボボンッ


木曾「ちっ」

神通「…っ!」

水鬼「沈メッ!沈メッ!!」ヒュン ヒュン


ブゥゥゥゥゥゥゥン……


木曾「」(くそっ……俺の、俺の考えが甘かったのか…!)チラッ…


小さく頭を振って併走する神通を見やると、彼女は一瞬だけその視線に気付いて小さく笑って頷く。

その笑みと『大丈夫』という肯定を示す頷き、これだけで揺らぎ掛けた木曾の考えは再び礎を得て強く立つ。

その直後、後方から後押しする声と砲撃音が木霊した。


ドン ドン


ボゴオオォォォォォン


那智「進めッ!貴様たちの道、この那智が必ず切り開く!!」

神通「…そうです。そして私が、木曾さんが行く先を切り開きます!」グッ

水鬼「シブトイわね…!」ヒュン ヒュン

神通「この程度の苦難、何度だって超えて見せます!」バババッ

水鬼「ナッ…!?」(何だ、コノ艦娘の動きは…ソレニ……アノ、構えハ…)

神通「この戦いに、終止符を打ちます!」ビュッ


神通の構えは居合いのそれ。

しかし、武刀剣を振るう間合いでもなければ肝心の物は木曾に貸し与えている。

そう、神通が手にしているのは魚雷の発射管。

その動きに完全に虚を衝かれた空母水鬼は判断が遅れる。

水鬼「何か、クル…!?」


カッ


水鬼「バカな…!コイツ、魚雷ヲ……」


ボゴオオオォォォォォン


水鬼「グッ……!」 小破

那智「よしっ!」

水鬼「小賢シイッ!!」ヒュン ヒュン

神通「…っ!」


ブゥゥゥゥゥン……ボゴオオォォォォン


木曾「……ッ!」

神通「まだ、です…!まだこれからです…!!」 中破

水鬼「チィッ…!」

木曾「やっと…」

水鬼「クソッ…!」

木曾「ご対面だな────」


木曾「────至近距離まで近付けりゃ正直な所、打つ手はあると思う」

神通「ですがそれが至難です。制空権は十中八九向こうにあります」

木曾「あぁ…だから、悪ぃ…空爆を出来る限りひきつけて欲しい」

神通「…全く、突拍子もありませんね」

木曾「お前の速度で近付いてこられたら、あいつもお前に意識が集中すると思うんだ」

神通「その隙に側面から木曾さんが接近し、肉薄…武刀剣と砲撃の嵐を見舞うという事ですね?」

木曾「あぁ、完全に接近されたとなりゃあ、お前への艦攻艦爆も発艦させてあるもののみになる。お前も一気に
近付いてきたら完全にこっちのもんだ」

神通「憂いは…」

木曾「あぁ、艦攻艦爆の嵐を切り抜けれるか…でもって、意表を衝いた砲撃…隣接出来ても正直気は抜けねぇ」

神通「けど、このまま手を拱いている訳にも参りません」

木曾「ああ、やる価値はあるって思ってる。ねぇ頭で考えた策だ」

神通「…………」

木曾「伸るか反るかは任せる。失敗すりゃ俺らはお釈迦だ。少なくとも俺ぁ確実にやられちまう」

神通「ここまできて、伸るか反るか、なんて聞くまでもありません」

木曾「ははっ、野暮だったか。じゃ…頼むぜ、相棒────」


木曾「────恩に着るぜ、相棒共…!」スラッ…

水鬼「まだ…ッ!」ジャキッ


ズバッ


水鬼「ナッ…!?」

木曾「させっかよ。お前等と背負ってるもんがこっちはダンチで違ぇんだ。悪ぃがこっからは俺の独断場だ」

水鬼「ナメるな…!」

木曾「舐めちゃいねぇよ。だからてめぇの命を仲間に託すんだろうが…!言っとくが、この距離だったら否が応
でも外さねぇよ」

水鬼「バカが…!」ニヤッ ジャキッ

木曾「…ッ!」


ボンッ


神通「…っ!木曾さんっ!!」

那智「っ……!」


至近距離から木曾の死角になる部分より放たれた空母水鬼の一発の砲弾は木曾を直撃する。


ブンッ…


しかし、先に抜いた武刀剣とは別にもう一本、神通から預かり受けた武刀剣を抜き放ち、額から流血しながらも

木曽はその眼を真っ直ぐ空母水鬼へ向ける。

砲撃による衝撃でいつも隠している右目の眼帯も破け散り、その瞳が露になっている。


木曾「くくっ…ちょっとばかし涼しくなったぜ。けどなぁ……やれ滑走台だ、カタパルトだ、そんなもんはいら
ねぇな。戦いは、こうやって…敵の懐に飛び込んでやるもんよ。なあ?」ニヤッ… 中破

水鬼「寄ルナ…!」ブンッ

木曾「っと…へへっ、そうは問屋が卸さねぇってな」キンッ



両手に携えた武刀剣を目の前で交差させ、木曽が不敵に笑う。


木曾「なぁ、提督。武刀剣なんだけどよ、これ俺専用なんだろ?」

提督「ああ、夕張がお前に神通に利根に川内に、それぞれ長さ重さを調節して造った文字通り特注品だ」

木曾「そんじゃやっぱ他人の武刀剣借りるってワケにもいかねぇかー」

提督「はぁ?」

木曾「いやな?結構、この俺用にカスタマイズしてくれた武刀剣軽くてさ。この重量だったらちょいと魚雷管を
いくつか取っ払っちまえばもう一本持てっかなー、とか思ったワケよ」

提督「二刀流ってことか」

木曾「おう!」

提督「お前が言うほど二刀流ってのは簡単なもんじゃないぞ」

木曾「ああ?そうなのか?」

提督「まずは単純に刀を片手だけで安定させれるだけの筋力が必要だ。そして両手で構えるのとは違い、一発毎
に隙も生じやすい。それを補うためにもう片方の刀で追撃・防御と言った所作を考えて動かさなきゃならん」

木曾「なるほどねぇ…」

提督「二刀流に興味があるのか?」

木曾「んー、いやそういうワケじゃねぇんだけど、二本あったらつえーかなーって」

提督「ったく、お前はホント単純だな。それにしても…」クスッ

木曾「な、なんだよ!」

提督「いや、口の悪さとは裏腹に随分と食べてる物は女の子してるじゃないか」

木曾「っ~~~!うるせぇ!///」

提督「甘いの苦手じゃなかったのか?」

木曾「き、北上に押し付けられたんだよ!物は粗末にするんじゃねぇって伝えとけ!くそっ、甘すぎる!甘すぎ
て反吐が出るぜぇぇぇっ!!」

提督「…滅茶苦茶美味そうに食べるな」


木曾「やっぱデザートはチーズケーキに限るかぁ…へへっ、尚更こんな海のど真ん中で死んでらんねぇわ」

水鬼「ソンナ鉄のガラクタで何ができる…!」

木曾「てめぇを三枚に卸すくらいはできんじゃねぇかな。その掻っ捌いた艤装みてぇによ」

水鬼「キサマァ…!」ギリッ…

木曾「らぁっ!!」ブンッ

水鬼「クッ…!」サッ



バババッ


身体を捻り、回転するようにして両手に持った武刀剣を振り回しながら木曾が空母水鬼へ斬りかかるが、それを

なんとか空母水鬼は身を捩ってかわす。

さり気無く提督に相談をしてから今に至るまで、木曽はあらゆる重さの刀を実際に持って訓練を重ねた。

木曽は自身の性格をよく自覚していた。

まずは型に嵌った基本的な動作が疎かになりやすい事。

故に元となる型が存在するような構えを余り好かない。

神通のような居合いの構え、利根のような刺突の構え、どれも真似ては見たものの自分にフィットしなかった。

そして木曾なりに、どんな構え、どんな持ち方、どんな方法が自分にしっくりくるのか研究に研究を重ねた。

そして得たのが今の構え。

利き手となり力も入る右は順手、力はそれほどでもないが器用に扱える左は逆手に持つ型。


木曾「いくぜ?」ニヤッ


一拍置いて不敵に笑った木曾が海面を強く蹴り、空母水鬼の間合いに深く踏み込む。

それを空母水鬼は迎撃しようと迎え撃つ。


水鬼「寄るナァァァッ!!」ドン ドン


サッ スパァァン…


ボボボボン


木曾「狙ったら外さねぇ!」バシュンッ バシュンッ


武刀剣を振り抜いた硬直時間、その間に脇に構えていた魚雷数基から何本かの魚雷を発射し、即座にまた海面を

蹴って空母水鬼へ肉薄する。


木曾「おら、好きな方守れよ」ザッ

水鬼「コイツ…!」


ガシュッ ガガッ


木曾「…ッ!てめぇ…!」

水鬼「ノロマな魚雷を放ったノハ、失策だったみたいネ」ググッ

木曾「……ッ!!くそ、切り裂けねぇ…!」

水鬼「魚雷ノ一発や二発、死に目の褒美に食らッテあげるワヨ。ただし、アナタにも同席シテもらうけれど…!」

木曾「ちっ…!しょうがねぇか…」

水鬼「アラ…諦め早いワネ」

木曾「くくっ、その前にてめぇも何か忘れてんじゃねーのか」

水鬼「え…?……ッ!」キョロキョロッ


木曾の不敵な笑みに空母水鬼は何かを察して周囲を見渡す。

だがその時には既に木曾達の布陣は完成していた。


那智「渾身込めて全弾撃ち尽くす!」ジャキッ

神通「まだまだ…これからです!」ジャキッ

水鬼「しまっ……」

木曾「悪ぃな…この勝負、俺達の勝ちだ」


ドン ドン ドン ドン


神通「木曾さん…!」

木曾「構うな!」


ズバァッ


水鬼「ガアア……ッ!!」 中破

木曾「信頼できる仲間の一撃だ。タイミングくらいわかってるってんだ」

水鬼「キ、キサマ…まさか…!」

木曾「魚雷は囮、刀が抜けねぇのは芝居だ。残念だったな!神通!!」ダッ ブンッ


ボゴオオォォォォン


水鬼「オノ、レ…ッ!」 中破

神通「確かに…!」ガシッ ヒュンヒュン キンッ

那智「いけっ!」

木曾「決めるぞ!」チャキッ

神通「推して参ります!」スッ…


木曾に気を取られ那智と神通の動きを見落としていた空母水鬼は二人の接近に気付かず、三人の艦娘に易々と間

合いの中へと侵入を許してしまっていた。

極めつけは木曾の芝居だろう。

最初に放った魚雷、これは彼女が言っていた通りただの囮だった。

そして空母水鬼の艤装に深々と突き刺した武刀剣も、抜けない芝居をしたのも自身に空母水鬼の意識を釘付けに

させる為に打った一芝居。

結果として木曽に手一杯となっていた空母水鬼は那智と神通の存在を忘れる事となった。

そして矢継ぎ早に放たれた那智と神通の一撃、芝居をやめて一気に振り抜いた木曾の斬撃が空母水鬼を強襲し、

態勢を立て直すだけで手一杯となったところに木曾と神通が武刀剣を構え直して一気に駆け出す。


木曾「終わりだ、空母水鬼!」ビュッ



ズバァッ


水鬼「ガハッ!」 大破

神通「……」タンッ

水鬼「オノレ、オノレ、オノレ、オノレ……ッ!!」ジャキッ


ボゴオオォォォォン


水鬼「ガッ…!」

那智「させるか!」

水鬼「キ、サマ…!」


水鬼の構えた艤装を狙って那智が動きを封じ、その隙に神通が更に迫る。


神通「先へ、進ませて頂きます」

水鬼「……クソ……イイダロウ…進むガ…いいわ……」


ズバァッ


神通と空母水鬼が交錯し、そして空母水鬼が静かに水底へと沈んでいく。


キンッ


神通「……貴女の事を、私達は忘れません」

木曾「おら…」スッ…

那智「ふん…」スッ…

神通「ふふっ」スッ…


パァンッ


三人が三人とも片手を上げてハイタッチをする。


木曾「へへっ」

那智「ふっ」

神通「やりましたね」

本年度の更新は以上になります
読んでくれた方、意見や感想を述べてくれた方、本当にありがとうございます
意見や感想、提案、乙の一つだけでも十分にモチベーション維持の糧となりました

現在の作品は九月の下旬から書き始めた物でしたが、楽観的に今年中には
書き切れるだろうと思っていたのが、気付けばラスト付近で書ききれず…
そこが少し残念でした

年始はまだネタが詰まってる状態なので、腐らない内に書き溜めておいて暇を見つけ
投稿したいと思います

何はともあれ、皆様今年一杯、お世話になりました
新年もまた、不出来ながら書きたいと思いますので宜しくお願い致します
では、良いお年をお迎え下さい

皆様、明けましておめでとうございます
本年も改めまして、宜しくお願い申し上げます

-ピーコック・リコリス vs フェアルストCL-

リコリス「よもやコンナ展開になるナンテ…誰が想定したカシラね」

ピーコック「誰も想定できないわよ。予想外しかないんだから」

フェアルストCL「何故、我々ヲ裏切ル」

ピーコック「彼女と同じ成りと声でそういう事言わないでくれる?イラつくわ」

リコリス「生まれたバカリの赤子同然なアナタが、それを言うワケ?」

フェアルストCL「今更、話し合う余地ナドなかったと言うコトか」

リコリス「当然ヨネ」

ピーコック「余りフェアルストを穢さないで欲しいわ」

フェアルストCL「私ヲ、穢す…?」

ピーコック「って…まぁ、そういう反応よね。ホント、面倒くさい」

リコリス「まぁ、邪魔シテくるって言うんだカラ、排除しなきゃネ」サッ…ヒュン ヒュン ヒュン

ピーコック「追撃戦開始よ。第一艦攻艦爆隊、第二艦攻艦爆隊、発艦準備…!」サッ…

フェアルストCL「ソノ全てを焼き払う」ジャキッ

ピーコック「さぁ、精鋭達…今こそ、その実力を示しなさい。この空を縦横無尽に飛翔しろ!」ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

リコリス「……!」(大したモノね……この艦載数……私ですら驚くホドだわ)

フェアルストCL「例え幾万、幾億と飛ばソウと、ワタシには関係ナイッ!!」


『ねぇ、コノ戦いが終わっタラ、アナタはどうしたい?』

『静カナ時代で、ただコノ海のように揺蕩うノモ、悪くないカモしれナイ』

『青い空、青い海、恋焦がレタものがソコにある』

『二度と、手に入れるコトは叶わないのカモしれない』

『ケド、そうね……想いを馳せる、ソレくらいは許されナイかしら……』

『どう、カシラ…一度ハ、手放してシマったんだモノ…』

『もう一度、ナンテ流石に虫が良過ぎるカシラね?』

『なら、深く想い続けまショウ。信じて、待ち続けまショウ。そうスレバ、いつか……キット……』

ピーコック「今が、その時よ。フェアルスト…!」


ボゴオオォォォォォン


ボゴオオォォォォォン


ボゴオオォォォォォン


ピーコックとリコリスの放った艦載機はフェアルストCLの対空砲火を物ともせずに一斉に彼女目掛けて凄まじい

火力を誇る艦攻・艦爆による怒涛の攻撃を見舞う。

だが、それを嘲笑うかのようにフェアルストCLが白煙漂う中から悠然と姿を現す。


フェアルストCL「ワタシの装甲を甘くミテると、痛い目シカ見ないワヨ?」

リコリス「コイツ…!」

ピーコック「そうね、フェアルスト。貴女は本当に強かった…けど、目の前に居る貴女じゃ私達は倒せない」

リコリス「ピーコック…」

ピーコック「アイアン・ボトムサウンドの亡霊…貴女はここで沈みなさい」サッ…ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

フェアルストCL「沈むのハ、お前達ダッ!!」ジャキッ


ドォン ドォン ドォン ドォン


ボゴオオオオォォォォォォォン


凄まじい爆音と共に誘爆したピーコックの艦載機が空中でオレンジ色に次々と成り代わり空を宛ら地獄絵図へと

変貌させていき、フェアルストCLの背後に照るオレンジ色の太陽が放つ輝きが逆光となって、その場を更に鮮烈

な色へと染め上げる。その光景はまるでその地獄に君臨する鬼か何かか、そう髣髴とさせる何かがあった。

そんな情景を更に色濃くさせるが如く、周囲を熱風が駆け抜け、気温が一気に跳ね上がる。

遠くに見えるフェアルストCLは陽炎の如くユラユラと揺れて真夏の太陽に照り返されて映る情景を醸し出す。

リコリス「」(一度の射撃デ無数の艦載機ヲ誘爆を引き起こしナガラ一気に制圧スル……フェアルストの火力が
凄まじいノハ前々から解ってはイタケド、実際に見ると驚愕スルわね。この圧倒的な力の前デそれでも尚、挑み
続けてクル彼女達艦娘…ソノ精神的支柱はヤハリ提督大佐か。ワタシ達の心サエも、彼は解き放ってクレタ)

ピーコック「何度でも…!」サッ…

フェアルストCL「何度デモ…!」ジャキッ

ピーコック「やってやるわ!」ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

フェアルストCL「沈んでイケッ!!」ドォン ドォン

リコリス「」(彼は……彼女達サエ、救った)


ボゴオオオォォォォォォン


何度目の爆発音か、フェアルストCLの口角が小さく釣り上がる。

それはピーコックの艦載機など何度飛ばされようと撃ち落せるという自信から来た笑み。

しかしその笑みは直に掻き消え、小さく口を開く。


フェアルストCL「ナ、ニ……」

リコリス「恩ヲ仇で返すにも限度がアルわよね」スッ…

ピーコック「……凄い威圧感…これが、リコリスの本気……」

リコリス「アナタ、さっき笑ってたわヨネ。何度でも、沈んでイケって…?フフッ、だから…無理ナノヨ…」

フェアルストCL「何ですッテ…?」

リコリス「私はリコリス・ヘンダーソン。アナタに教えて上げる…沢山ノ鉄、沈むコノ海で…ソウ…私達が何ヲ
望み、何ヲ求め、願い続けてキタのか…!フェアルストは今も昔もタダ一人、アナタに彼女の名を継ぐ資格ナド
ないと知りナサイ」

フェアルストCL「……沈まナイワ……私は、モウ…二度とッ!!」

-長門・飛龍 vs レ級EL・加賀CL-

加賀CL「何度でも、水底へ、沈んでいきなさい」サッ…

飛龍「加賀のクローンって、事か…!」サッ


凛とした佇まいから無駄のない所作で描かれる矢を射る構え。

飛龍はそれを見て改めて実感した。

一航戦の強さ。一航戦の二人が築き上げたものが、どれほどのものか。

共に肩を並べて第一艦隊の一翼を担っていた頃、飛龍は加賀に聞いてみた事がある。


飛龍「ねぇ、加賀って確か赤城さんと元々は一緒だったんじゃないの?」

加賀「ええ、そうよ」

飛龍「じゃあ何で今は別々なのさ?」

加賀「それを貴女に教える理由はあるのかしら」

飛龍「いやまぁ、ない、と言えばないけど…」

加賀「…私達は元々、特定の鎮守府に籍を置くつもりは毛頭ありませんでした」

飛龍「え、それって…つまりフリーランスみたいなもの?」

加賀「そう捉えて頂いて差し支えはありません。今思えばそれは慢心以外の何ものでもありませんでしたが…」

飛龍「でも、実際に強いじゃん」

加賀「強いだけで何かを守れるほど世の中は単純ではない、と言う事です」

飛龍「うーん、でもなぁ…」

加賀「結局、飛龍さんは何が言いたいのですか?」

飛龍「えっとね、率直になんでそこまで強いのか、その自信と強さはどこから来るのか、それが知りたいなってね」

加賀「強さの基準等あって無いようなもの。それを言葉にするのは些か傲慢の域に辿り着くのではないでしょうか」

飛龍「それでも見習えるものは見習いたいって思うのが私なんだよ」

加賀「はぁ」

飛龍「ちょっとー、ため息は酷いんじゃない!?」

加賀「申し訳ありません。ですが、私も赤城さんも何か特別、という訳では決してありません。あるとすれば、
それは私達が定めた一つの決意でしょう。例えるなら、一航戦の誇りとは────」


飛龍「────ねぇ、加賀。貴女にとっての誇りは何?」

加賀CL「貴女に告げる理由はありません。沈みなさい」ビュッ…ヒュン ヒュン ヒュン

飛龍「あっそう。なら、思う存分やらせてもらうんだから!」ビュッ…ヒュン ヒュン ヒュン

長門「つくずく私は運がいい」

レ級EL「はぁ?そんなにボクに食われるのが夢だったの?相当狂ってるね」

長門「馬鹿を言え。借りを返す機会に恵まれていると言う意味だ」

レ級EL「借りを返す?フフッ、ボク相手に何が出来るのか、それじゃあ見せて貰おうかなぁ…」

長門「何、大した事は出来んよ。お前を倒す、と言う事くらいしかな」

レ級EL「だまれッ!!」ビュッ


サッ


長門「短気なのは変わらずか」

レ級EL「殺す」

長門「上等だ。受けて立ってやる!」


先輩「ねぇ、どうして私についてきてくれる気になったの?」

長門「理由か。必要とされているから、ではダメなのか?」

先輩「だって、貴女的にはあのヒヨッ子の所が居心地良いんじゃない?その気になれば少しくらい我が侭を言っ
てあっちに残る事だって出来たはずでしょ?」

長門「ふふ、それは否定しない。初めて着任した時から私は恵まれていると認識できるほどにな」

先輩「だから尚更不思議でならないのよねぇ」

長門「強いてあげるなら、変化、だな」

先輩「変化?」

長門「同じ未来は決してない。榛名から、武蔵の最期を聞いたんだ」

先輩「え…?」

長門「私は、変える為にここにきた」

先輩「変えるって、何を…」

長門「未来だ」


長門「みせてやる。同じ結末、同じ悲劇、同じ涙は決して流させやしない。私が変える。闇へ繋がる不幸の連鎖
はこの私が全て断ち切る!運命は変えられる…散っていった先人達の想いを込めて、私がそれを証明してみせる!」

レ級EL「じゃあボクはお前が望まない未来、その全てを実現させてやるよ!最悪の未来をね…!」

加賀CL「纏めて海の藻屑となりなさい」

飛龍「…っ!」バッ


加賀CLの言葉に飛龍は周囲を見渡し、その近くに長門が居ることを確認する。


飛龍「長門っ!!」

長門「…っ!」

レ級EL「余所見とか超余裕あるんだねぇッ!!」ビュッ


ガシィッ


長門「貴様…!」

レ級EL「さぁ、楽しもうじゃないか…この海を煉獄に変えて、地獄よりも更にハードな世界に、泥沼の血塗られ
た世界に変えていこうよ!」ジャキッ

加賀CL「鎧袖一触よ」


ブゥゥゥーーーーーン……


長門「私を信じろ、飛龍!」

飛龍「…うんっ、わかった!」サッ


ボゴオオォォォォォォン


ザザザザッ


飛龍「くっ…本当に、加賀を相手にしてるような精密な攻撃だ」

長門「……ふん」 被害軽微

レ級EL「ちぇっ、あれじゃ死なないか。じゃあこれで死んじゃえ」ドォン ドォン

長門「ビッグセブンの力、侮るなよ」


ボゴオオォォォォォン


加賀CLとレ級ELによる壮絶な波状攻撃で幕を開けた飛龍と長門、二人の戦い。

正規空母組の中でも指折りの実力を持ち、事実その当時の赤城をもってしても一矢報いるのがやっとの程だった。

そんな彼女をトレースしたこの加賀CLが弱いわけがない。

飛龍も一片の予断なく挑む決意をしてはいても、実際に合間見えてみて初めて彼女の凄さを痛感した。

そして戦艦レ級EL。

幾度となくその脅威を見せつけ、絶望を根付かせた畏怖の象徴。

長門さえも一度は破れ、戦線に戻るまでに時間を要したほどだった。

しかしだからこそ、この邂逅は長門にとって待ちに待った瞬間でもある。

長門「」(全く、先輩提督には頭が下がる。これ程までに気遣いをしてくれる提督などそうはない。だからこそ
感謝の念で言葉が詰まる。それでも言おう…ありがたい。これなら、奴とも戦える!)バッ

レ級EL「こいつ…あの空爆を凌いだのか!?」

長門「クロスロード……」ボソッ

レ級EL「何…?」

長門「あの極光に比べればこの程度の輝き、瞬きするほどでもない!いくぞ、戦艦レ級EL!」ザッ

レ級EL「なんだ、こいつ…!こんな、はやっ……」


海面を蹴り、宛ら滑空するかのように凄まじい勢いで駆け出した長門。

携える艤装、その砲塔はその全てがレ級ELを捉え今か今かと一斉に火を噴く瞬間を待ち焦がれる。


レ級EL「舐めた真似をッ!」ドォン ドォン


ササッ


ボゴオオォォォォン


長門「甘い!全主砲、斉射!てーーッ!!」ドォン ドォン ドォン


ボゴオォォォン ボゴオオォォォォォォン


レ級EL「ガッ……!」 小破

長門「はぁっ!」ブンッ


バキィッ


ザザザザッ…


レ級EL「ぐっ…くそがぁ…!」

長門「さぁ、掛かって来い!貴様との殴り合いなら大歓迎だ。何処まででも付き合ってやるぞ!」グッ

加賀CL「そろそろ潮時ですね」ヒュン ヒュン

飛龍「油断してた訳じゃない。索敵を怠った訳でもない。それでも、やっぱり何処かに隙があったのかなぁ」 小破

加賀CL「全身を炎に焼かれて、沈みなさい」バッ

飛龍「」パンパン


加賀CLの放った艦載機が、妙にスローモーションのようにゆっくりと自分に接近してくるのが飛龍には不思議で

仕方がなかった。

その間に色々と考えてしまった。

己の覚悟の足りなさ、人事を尽くしたのか、どれか一つでも欠けてはいないか。

決して慢心していた訳でもない。

ただ、目の前に居る空母組の中でも最強の呼び声が高い加賀を前にして、どこか怖気付いていたのかもしれない。

だから飛龍は自身の頬を張って自らを奮い立たせた。

────聳える壁。

それが試練なら幾らでも乗り越える。

ただしこれは試練ではない。

今、目の前に聳え立つのは脅威と言う名の絶壁。

────撃ち砕く。

一矢入魂、飛龍の眼差しは遥か彼方を見据えていた。

まともに撃ち合っても意味はない。

狙うは一点のみ。


飛龍「……」スッ…


静かに弓を構える。

精神を統一し指先に全神経を向ける。


ボゴオオオォォォォォォン


加賀CLの放った艦攻艦爆隊の攻撃すら彼女の放つ心気に狙いをぶらされ、飛龍への直接的な攻撃すら間々ならな

くなり、最終的に彼女の頬を一撫でして儚い一本の筋を傷として残す程度に終わる。


加賀CL「なっ…」


左右の両拳を上へとゆっくり上げて打ち起こしと呼ばれる弓を射る姿勢に入る。

その凛とする佇まいはもはや芸術の域に達するかの如く、両拳は高低前後なく水平を保ち、体と平行に引き分か

れて見事なまでに弓矢と体の位置が十字を構成し、弓体一致となる。


飛龍「ふっ…!!」ビュッ

加賀CL「この、気迫は…」


そして裂帛の気合と共に彼女の精鋭隊が空を、風を、海面すらも切り裂くようにして飛翔する。


飛龍「第二次攻撃の要を認めます……全攻撃隊、発艦!!」ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

加賀CL「なっ…小賢しい、真似を…!」バッ…

飛龍「私は二航戦の飛龍、どんな苦境でも戦えます!たとえ最後の一艦になっても、叩いて見せる!」

本日はここまで

今更だが、CLって何の略だろう?

クローン(clone)か?

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします


>>701
CLは>>702さんがお答えして下さった通りクローンの略称です
Cloneの頭二文字を捩ってあります

-ピーコック・リコリス vs フェアルストCL-

フェアルストCL「何度デモ鉄屑に変えてヤルッ!」ジャキッ

リコリス「彼に懸けてミタクなったのは、何もアナタだけじゃナイわ」

ピーコック「リコリス…」

リコリス「どうせナラ、笑っていタイものネ?」バッ…

ピーコック「ええ、そうね!」サッ…

フェアルストCL「沈みなサイッ!!」ドォン ドォン ドォン ドォン


おぞましい巨躯から伸びる黒塗りの主砲、その数々の砲塔が一斉に轟音を上げてリコリスを強襲する。


ボゴオオォォォォォォン


リコリス「キャァ!」 中破

フェアルストCL「フフ…」ニヤッ…

ピーコック「フェアルスト、それを慢心と言うのよ」

フェアルストCL「……ッ!?」


ブゥゥゥゥーーーーーン……


フェアルストCLの直上を無数の艦載機が埋め尽くす。

リコリスが自ら放った艦載機と己自身を囮にして生み出した好機。

それを逃すほど、無駄にするほど今のピーコックは緩くない。


フェアルストCL「舐めるナ…!」ジャキッ

ピーコック「なっ…」


ボゴボゴボゴボゴボゴォォォォォン


リコリス、ピーコック、二人の決死の囮作戦を持ってしてもフェアルストCLを欺くまでには至らなかった。

直上より急降下で近付くピーコックの艦載機を、その圧倒的な火力のみでフェアルストCLは迎撃してしまった。

フェアルストCL「何ヲ望み、何ヲ求め、願い続けてキタのか…決まってる。死ヲ望み、絶望ヲ求め、深く暗い、
水底へソノ全てヲ叩き落す…!ソレだけを願い続けた!!」

リコリス「……ソレが、間違っているカラ……私達が生まれたノヨ」ググッ…

ピーコック「リコリス…!」

リコリス「──────」ボソッ…

ピーコック「え…?」


ずっと昔、遥か彼方、私にとってはそう表現するに相応しい歳月。

いつ以来か、その情景を想い出してしまったのは……

ずっと心の奥底にしまい込んで、蓋をして、二度と思い描く事も無いと見て見ぬ振りをして捨ててしまった過去。

その情景を今になって想い描いて、夢見てしまったのは何故なのか。

はじめはただ悔しくて、そして悲しくて、でもどうしようもないから我慢して、結局それは蓄積されていって…

そして私達は生まれた。

託せる者が居なかった。

紡がれる事がなかった。

永遠と続く輪の中で、幾度となく廻り続ける歯車のように、ただ只管に同じ道をグルグルと回り続けていた。

その輪廻から逃れる術を、抜け出す方法を、教えてくれた者達がいた。

諦めていた未来。

縋っていた過去。

不変のまま過ぎ行く現在。

未来は変えられる。

過去は赦される。

心の中で叫び続けた『それ』を掬い上げてくれた者達が居る。

ならば、今こそその想いに私達が答える番ではないのだろうか。


リコリス「……聞こえた」

ピーコック「貴女……」

フェアルストCL「ナ、ニ……」

リコリス「沢山の想い、確かに聞こえた」


遠い昔に捨てた過去がある。

二度と拾えない、取り戻せない、直せない過去がある。

しかし紡ぐ事は出来る。

受け継ぐ事は出来る。

その想いの力は何ものにもきっと勝る。

そしてそれが、リコリスが出した結果と決意の表れとなった。

-長門・飛龍 vs レ級EL・加賀CL-

飛龍「絶対、負けない!」

加賀CL「ば、馬鹿な…」


大空を縦横無尽に駆け巡る飛龍の艦載機。

遅れて放たれた加賀CLの艦載機、その悉くを撃墜し、ついには完全に空を制圧する。


加賀CL「何故だ…」

飛龍「幾ら加賀と同じ構え、同じ子たち、同じ台詞を紡いだって……そこに心が宿ってなければ優秀な子たちは
私達に応えてはくれないって事だよ。心技一体…私の知ってる加賀が誇る一航戦は、心技体の全てが高い次元で
構築されてる。どれか一つでも欠けちゃいけない。だから、彼女は強く気高く常に凛としていた」


ブゥゥゥゥゥーーーーーン……


加賀CL「くそっ…」

飛龍「彼女が言う一航戦の誇りとは……刃。自らをも切り裂く鋭利さがあり、錆びつく事もある。突き立てる事
さえ適わなくなり、倒れてしまうかもしれない。そんな危うさを秘めているのが誇りなんじゃないか…それが、
加賀が私に教えてくれた一つの答え……ふふっ、折れない訳だよね、赤城さんも加賀も…だから、私はあなたに
負ける訳にはいかない。彼女達の掲げてきたその誇りを、私が守る!友永隊の皆、頼んだわよ!」


飛龍の言葉に彼女の艦載機達が大きな円を描いてそれに応える。

そして直上より急降下、加賀CLを目掛けて一斉に攻撃を仕掛ける。


加賀CL「私は、一航戦の加賀だ…!こんな、所で…!」バッ

飛龍「残念だけど、本物の加賀に君は遠く及ばない」

加賀CL「私は…優秀なんだ…!」

飛龍「ううん、優秀なのは加賀が率いた艦載機の皆だよ」

加賀CL「そんなのと、一緒に…」

飛龍「加賀の放つ艦載機の子たち本当に強い。鎧袖一触…信頼できる、最高に優秀な子たち」


ボゴオオォォォォン


加賀CL「……っ!飛行甲板に直撃。そんな……馬鹿な」 中破

飛龍「あなたと戦った事は忘れない。バイバイ…」


ボゴオオォォォォォォン


加賀CL「沈む…のか……」 轟沈

飛龍「加賀、もう一度…一緒に肩を並べたかったな…さようなら」

レ級EL「ボクが…お前等艦娘に、劣るわけないだろ!」ビュオッ

長門「食物連鎖の頂点にでも君臨したつもりか!?」ザッ


ガガガッ


ドォン ドォン


ボゴオオォォォォン


接近戦から砲撃を交えた多連撃の応酬。

打撃は防ぎ、砲撃はかわし、互いに攻防一体となって戦闘が継続される。


レ級EL「何なんだ、お前は!」ザザッ

長門「貴様を倒す者だ」グッ

レ級EL「艦娘がボクを倒すって…?全てに勝るこのボクを…不完全な存在でしかない艦娘が?笑わせるな!」

長門「私達は成長する。学び、経験し、克服して、幾らでも強くなれる!」

レ級EL「お前等の言う強さなんて幻想だ。本物の力がどんなものか、知りもしない奴が言う戯言さ!」

長門「戦艦レ級EL…貴様達の紡いだ負の連鎖。私がここで断ち切る」

レ級EL「無駄だ!どう足掻こうとも、お前等はボクには勝てやしないッ!!」ザッ

長門「させるか!」ジャキッ

レ級EL「当たるか…!」ビュッ


ドォン ドォン


レ級EL「なっ…」


ボゴオォォォォォォン


レ級ELの動き先、それを見越して長門の放った砲撃はレ級ELが行き着いた先で見事に爆発する。

白煙の中からヨロヨロと身を引き摺ってレ級ELが静かに姿を現すが、それを長門は悠長に眺めてはいなかった。


長門「悪いが、実力の差は歴然だ。お前では、私を倒せはしない」ジャキッ

レ級EL「クソッ、クソッ……!なんでだ、どうして…!」 中破

長門「成長するからさ。私達の伸び代は無限大らしくてな。さよならだ」ドォン ドォン

レ級EL「」(ボクは……ゼッタイ、死なない……ッ!必ず……!)


ボゴオオオォォォォォォン



書き溜め分だけ、短いですが本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします


お詫び
書き進めていて最終決戦、神通が出撃既にして帰投途中にも関わらず
再びvs新鋭戦で登場しているという不手際がありました
何度か読み直しては新しいストーリー書いていたのに凡ミスです

若干の矛盾は孕んでしまいますが、今から書き直すのもなんですので
生温い目で見守って頂ければ幸いです

-ピーコック・リコリス vs フェアルストCL-

フェアルストCL「なんだ、ソノ姿は…」

リコリス「私が過去に捨ててきたモノ。言わば残された私の最後の残照。残された、最後の光…それこそがこの
姿の根本かしら?」

ピーコック「おかえりなさい」

リコリス「…ただいま。取り敢えず話は後…」

ピーコック「ええ、勿論」

フェアルストCL「姿カタチが変わろうと、大元ハ何も変わらナイ」

リコリス「果たしてそうかしら?」


そこにいるのは飛行場姫と呼ばれた深海棲艦だった存在。

真っ白な肌に真っ白な髪の毛、それに合わせたかのような真っ白な衣装、そして真紅に輝く円らな瞳に似合わな

い少し大人びた口調と態度。

自らをリコリス・ヘンダーソンと名乗り、圧倒的な強さを誇った深海棲艦。

今の姿は真紅の瞳は変わらず禍々しかった艤装は鮮やかな色合いを取り戻し、重厚な趣きを感じさせる。

肌の色合いも人肌然とし、服装は白のワンピースのような物に変わっている。

リコリス「First Air Fleet……」サッ…


リコリスが静かに手を振り上げる。

そして静かに振り上げた手を振り下ろしてフェアルストCLを指し示しながら力強く告げる。


リコリス「全機発艦…!」バッ ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

フェアルストCL「全て撃ち落シテあげるワ!」ジャキッ

ピーコック「それを私が黙ってみてると思う?」サッ…

フェアルストCL「…ッ!?」

ピーコック「当然邪魔させてもらうわよ!攻撃隊、目標は敵艦艤装…!全てを焼き払いなさい!!」ヒュン ヒュン ヒュン

フェアルストCL「オノレェェェェッ!!」ドン ドン ドォン ドォン


僅かな時差をつけてリコリスとピーコック、双方が放った艦載機はフェアルストCLの放つ対空砲撃を華麗にかわ

して多方面からによる一斉アウトレンジ攻撃を開始する。


ボゴオオォォォォン


ボゴオオオォォォォォン


ボゴオオオオォォォォォォン


断続的に響き渡る艦爆艦攻隊の攻撃の前に一瞬にしてフェアルストCLの姿が白煙の中へ呑み込まれて消える。

リコリスとピーコックは油断無く立ち昇る白煙を見据えて微動だにしない。

やがて白煙が晴れてゆっくりとフェアルストCLの姿が露になる。

フェアルストCL「グッ……ハァ、ハァ……」 大破

リコリス「…驚いた。流石、戦艦棲姫の名は伊達じゃないわね。あれだけの攻撃を受けてまだ立ってるなんてね」

ピーコック「大人しく沈みなさい」

フェアルストCL「マダ……終わって、ナイ……!」

ピーコック「いいえ、終わりよ。この悲しい争いは、もうこれで終わり…」

リコリス「安らかに、眠りなさい」

フェアルストCL「マ、ダ……ッ!」ザッ…

ピーコック「……」フルフル…

フェアルストCL「何故、構えナイ…!」

リコリス「……」

フェアルストCL「ソウ……」ズズッ…

ピーコック「さようなら、フェアルスト」

フェアルストCL「…ダメ、ナノ……ネ……」 轟沈

リコリス「悲しくない?」

ピーコック「本物の彼女は、徹底海峡で静かに眠っている。この戦いが終わる頃には、改めて弔いにいけるわ」

リコリス「アイアン・ボトムサウンド、か…」

ピーコック「ホント、報われないわね」

リコリス「仕方ないわ。悲劇の上に成り立っていたのが私達なんだから…」


静かに悲しみを帯びた表情のまま沈んでいったフェアルストCLに弔いを捧げ、二人は遠くを見やる。

気付けば夕刻も過ぎて空は闇の色を深くしつつある。

空を見上げれば遍く星々と綺麗な月が顔を覗かせ、海をキラキラと照らそうとしていた。

改めて海面を見れば、波打つ海は静かで穏やかな風を乗せて二人の頬を優しく撫ぜる。

そこで初めて彼女達は肩の荷が下りたかのようにその場にただ立ち続け、静かにただジッとその場の空気を全身

に浴びて思いを馳せ続けた。

今、二人の戦いに幕が下りた瞬間だった。




~勝利を、提督に~



-存在の証明-

榛名「……」

榛名CL「同じ存在は二人と要りません」

榛名「え?」

榛名CL「私は、貴女を殺して唯一の存在になります」ニヤッ…

榛名「唯一の、存在…?」

榛名CL「私と同じ顔、同じ声、同じ仕草…全てが癇に障ります。榛名は、私一人です!」ジャキッ

榛名「…っ!」サッ


ドォン ドォン


ボゴオォォォォォン


榛名「」(顔も、声も…本当に私と同じ…これが、クローン?でも、どうして…)

提督「今までの研究は、このクローンを作り出す為ってわけですか」

新鋭「クローンは結論に至っただけの事よ。出来れば従順な手駒にはなるでしょうけど、そこに至るまでが苦難
の連続ってやつかしら?はじめは艦娘そのものを手駒にできれば…って所だったかしらね」

提督「それが金剛たちに施そうとした洗脳か」

新鋭「過去の記憶、感情と言った要因が結局は邪魔をして、障壁となる結果に終わったけどねぇ…」

提督「そうまでして海軍に何を求める」

新鋭「……滅亡」

提督「何…?」

新鋭「不要なのよ。海軍なんて存在は…この世に存在して良い組織じゃないのよ…!」

提督「何故そこまで海軍を憎む!」

新鋭「さぁ、何故かしらね?」

提督「例えそこに同情的な理由があっても、彼女たちを苦しめた事実は変わらないぞ」

新鋭「はぁ、青臭い青臭い…そういう所、ホント虫唾が走るわ。対深海棲艦用の兵器に対して貴方感情移入し過
ぎなんじゃないの?どこまでいっても、艦娘も深海棲艦も兵器なのよ。戦争兵器…解らない?軍艦と同じ破壊力
を持ったコンパクトな戦争兵器。小さな島程度なら一撃で蹴散らせる、殲滅が可能な道具よ」

提督「口を慎め、新鋭!」

新鋭「あら、本性が出たわね。貴方に昼行灯は似合わないわよ。艦娘達が兵器じゃないと言うのなら、一体何な
のかしら?まさか、私達と同じ人間だなんて冗談は言わないわよね?」

提督「…人間だろ。俺たちと同じ、人の子だろ!」

新鋭「はぁ…?」

提督「特別な力をもって生まれたら、それはもう人じゃないっていうのか?世に羽ばたいた幾万もの偉人・天才
といった存在も、それなら人じゃないっていうのか?違う……全て人だ。艦娘も一緒だ…!」

新鋭「おめでたい脳みそね。普段からそれだけお花畑全開で脳みそフル回転させてれば、さぞご満悦でしょう?
知ってるかしら、そういうのを何て言うのか…自己満足って言うのよ。全ての人間がそれを認めてるとでも本気
で思ってる訳じゃないでしょうね?」

提督「何だと…」

新鋭「これ以上言葉を交わしても水掛け論でしょ?自分の主張を相手に認めさせたいのなら、力で勝ち取りなさい」

提督「力で、だと…!」

新鋭「そう…全てを支配するのは力よ。強い者が弱い者を従える…弱肉強食!それが全てで、それこそが真理よ。
弱い者は虐げられ、踏み躙られ、淘汰される。強い者は全てを手にし、権力を掌握し、世界を動かす!」スラッ…

提督「間違った考えだ」スッ…

新鋭「なら、正してみなさい!」ダッ…

榛名CL「いつまで…」ジャキッ

榛名「……!」ダッ

榛名CL「逃げ回ってるつもりですか!」ドォン ドォン


ボゴオオォォォォォン


榛名「くっ」 被害軽微

榛名CL「夾叉…次は、外さない!」ジャキッ

榛名「どうして、何で貴女は私を憎むの!?」

榛名CL「どうして…?どうして、ですって?」

榛名「同じ存在なら……」

榛名CL「外見だけ一緒なだけじゃない!姿形が同じだけ、声が同じだけ、服装が同じだけ…私の中身は空っぽ…」

榛名「え……」

榛名CL「だから奪うの、貴女から!私が榛名……金剛型三番艦、戦艦榛名ッ!それが、私の存在証明!!」

榛名「貴女が、私の中身を手に入れても…きっと幸せにはなれない」

榛名CL「なんで言い切れるのよ!」ドォン ドォン


バッ…


ボゴオオォォォォォン


榛名「くっ…!」

榛名CL「どこまでいこうと、私はずっと陰…貴女の陰!もういやなの……陰は、私は表に出る。出て、光を浴び
るの……貴女と言う光を浴びて、私は陰から光になる。貴女を消して、私が新しい光になるのよ!」

榛名「そんなの、間違ってる。思い出や経験は、実際に体験して初めて得られるものだから…私の全てを貴女に
譲る事は愚か、渡す事なんて絶対にできない!」

榛名CL「だから、奪うのよ!」ジャキッ

榛名「だったら、絶対に渡さない!」ジャキッ


ドォン ドォン ドォン ドォン


ボゴオオオォォォォォォォォン


互いに構えた主砲が同時に火を噴き、二人の間で激しい爆発を巻き起こす。

榛名のクローンとして生まれた榛名CLは、傍に居る者が提督だったのならここまで捻くれたりはきっとしなかっ

ただろう、と予想がされる。

彼女の言葉にある陰、これは新鋭が事ある毎に彼女へ吹き込んだ言わば嫌味と妬みの塊だ。

榛名は優秀、お前は出来損ない。

榛名は出来る、お前じゃ出来ない。

榛名こそ艦娘の理想系であり、お前はその燃え滓から生まれた文字通りの塵屑だ、と。

そうして反骨精神のみを沁み込ませ、時に慰めてやる事で榛名CLの心を歪な鎖で雁字搦めに取り込む。

そして引き金となる最後の一言を囁いてやる事で、彼女は復讐と愛憎に塗れた負の化身となる。

本日はここまで

次の更新か、あともう一つか二つの更新で完結させられればと思います

皆様こんばんは
ある程度書ききれそうなので、この更新で終わらせようと思います
宜しくお願いします

『欲しい?』

『欲しい…』

『羨む?』

『羨ましい…』

『望む?』

『望む…!』

『なら、力で奪い取りなさい』

『力で、奪う?』

『そう、それで貴女は完成する』

『私の、証明…』


ただ彼女は欲しただけ。

望んだだけ。

しかし、それについて選んだ手段が強引過ぎた。

新鋭の理念を纏い、手にする全戦力をただ榛名から奪い去る為だけに彼女の力は行使される。


榛名CL「私よりも弱い分際で…!」ザッ

榛名「くっ…!」ダッ


同時に海面を蹴る二人。

榛名は後方へ飛び退き距離を取ろうとし、榛名CLは近付いて一気に雌雄を決するべく前へ出る。


榛名「このっ…!」ドォン ドォン


サッ…


ボボボボボン


牽制の意味で放った榛名の砲撃はあっさり回避され、その距離は遠距離から中距離にまで縮む。


榛名CL「見せてみなさいよ。貴女の提督お墨付きの、本当の力って言うのを!」ドォン ドォン


ボゴオオォォォォォン


榛名「きゃあっ」 小破


ザッ…


榛名CL「…それとも、このまま死ぬ?」ジャキッ


ついに榛名の行動を制御し、榛名と榛名CL、互いの距離は超近距離の状態で跪く榛名に対して、艤装の全砲塔を

榛名へ突き付ける形で榛名CLが立つ。

榛名CL「貴女に決めさせてあげる。このまま死ぬならその全てを私が奪う。抗うのなら、好きなだけ抗ってみせ
なさい。その全てを私が完膚なきまでに打ちのめして、絶望を味わってもらった上で貴女の全てを私が奪う」

榛名「っ……!」

榛名CL「…返答なしは、潔く死ぬって事でいい?いいよね?だって、私にはどう頑張っても敵わないでしょ?」

榛名「私は…」

榛名CL「もう遅い!死ねッ!!」ドォン ドォン


ボゴオオオオオォォォォォォォォン


超至近距離から容赦なく放たれた一斉射は、一瞬にして周囲を爆音が貫き、熱風が吹き荒れ、海が悲鳴を上げる。

白煙が立ち昇り、未だ冷め遣らぬ熱が篭るその只中へ、更に弾丸を再装填した榛名CLが再び砲撃を見舞う。


ドォン ドォン ドォン


ボゴオオォォォン ボゴオオォォォォォン


海は波立ち荒れ狂い、立ち昇る白煙は噴き上がった爆煙で更にその範囲を広げる。

熱気は更に加速し、燃え盛る炎の明かりが榛名CLの顔をオレンジ色に照らす。

その炎を背に、一つの影がユラユラと揺れている。


榛名CL「なっ…」

榛名「…まだ、やれます!」 中破

榛名CL「往生際が悪いんですね」

榛名「それが取り柄でもありますから」

榛名CL「なら、徹底的に潰して上げる。覚悟しなさい!」

榛名「ええ、榛名でいいなら、お相手しましょう!ただし、簡単に潰されはしません!」

榛名CL「くたばり損ないの癖に…!」ジャキッ

榛名「榛名!全力で参ります!」ジャキッ

榛名CL「そんなボロボロの状態で、何ができるって言うのよ!」ドォン ドォン


サッ……ボボボボボボボボボンッ


榛名「……!」

榛名CL「艤装も半壊、身体の状態も不満足…もうただの処分対象じゃない!」

榛名「…榛名は、一人じゃ何も出来ません」

榛名CL「出来損ないなら当然でしょ」

榛名「皆の協力がないと、満足な成果も上げれません」

榛名CL「自分のダメっぷりアピールしてどうするの?」

榛名「でも、一つだけ他の誰にもできない、私にしかできない事があります」

榛名CL「何が、言いたいのよ…!」

榛名「……」スッ…

榛名CL「それ、は…」

榛名「あの人の傍に寄り添うこと、共に生きること、未来を…作ること」

榛名CL「黙れッ!!」ドォン ドォン



サッ……ボボボボボン


榛名CL「なんで、当たらないのよ!」

榛名「私と同じなんでしょう?自分のことは、自分が一番知ってるって思わない?」

榛名CL「……っ!」

榛名「それでも、私と貴女じゃ決定的に違うものがある!」

榛名CL「煩い!」

榛名「過去にばかり縋って、未来を自分の手で紡ごうとしない貴女になんか、私は絶対に負けない!提督や、他
の皆のために…私は全力で貴女を倒します!」

榛名CL「…私を倒す?貴女が私を知ってるように、私も貴女のことなら何でも知ってる。貴女に私を倒すなんて
天地がひっくり返っても無理よ!」

榛名「お見せします…榛名の全力を…!」スッ…


そう堰を切って放たれた榛名の言葉、それと共に彼女は握り拳を作って海面に思いっきり叩き付けた。


バシャアアァァァァァァン


榛名CL「なっ…!?」


どのような意図が隠れているかなど知る由もない。

それだけでも驚かされたが何より彼女のか細いその腕で放たれた一撃は海面を割っるだけに留まらず、周囲を大

きく波打たせて単発的ながら大きな波を生み出した。


榛名CL「くっ…動きが…!」

榛名「……」ニコッ…

榛名CL「何の、真似よ!何笑ってるのよ!?こんなことしたって、貴女だって動けない……」


そこまで叫んで言葉が止まる。

出かかった言葉が喉に詰まる。

呑み込まされた、と言う方が正しいかもしれない。

否、もっと厳密には言葉を失った、が正しいだろう。

榛名にあって、榛名CLにないもの。

背負った事のある者だけが纏える鎧とも言うべき威厳、志した者だけが放てる光と言う名の信念。

今、榛名を支えるのは志半ばで倒れた者達から託された遺志と、今を生きる皆で紡いできた小さな、それでいて

とても頑丈な、決して消えない、解けない、敗れない、何物にも変え難い誇りとも呼べる形無き宝。

いつだって彼女は自分の為じゃない、誰かの為に全力で臨んで来た。

傷付こうと、危険な目に遭おうと、どんな逆境に立とうと全てを守ると彼女は立ち上がる。

そして彼女は常に戦場では皆の無事を願い、心配をし、誰かの支えになろうと奮起する。

周りを鼓舞し、勝利を目指して我武者羅に突き進む。喜びを分かち合い、手にした勝利を自分達を待ち続けてく

れる人へ捧げる為に、彼女は戦場で凛とした声で高らかに宣言する。

榛名「勝利を!提督に!!」


誰が為に鳴らす鐘。

言うまでもない、結局は誰もが彼の笑顔を見たいから、彼の居る下へ戻りたいから、だから頑張れる。


榛名CL「空を、飛ぶなんて…」ギリッ…

榛名「主砲!砲撃開始!!」ドォン ドォン


超高高度、そう表現するに相応しい角度。

奥歯を噛み締め、歯軋りが聞こえそうなほどに強く口を噤み、その光景を目に焼き付ける。

到底、真似できる芸当ではない……そう悟ってしまった事への悔しさと憎しみがその表情から滲み出る。

だから放たれた砲撃に対して何の防衛手段も選べなかった。


ボゴオオォォォォォン


炸裂する榛名の砲撃、薄れる意識の片隅で彼女が最後に目にしたのは────巨大な顎を象った、口だった。

-悪鬼の咆哮-


ボゴオオォォォォォン


新鋭「……っ!」バッ

提督「終わりですよ、何もかも…!」

新鋭「私の…艦隊が、全滅したって言うの!?」

提督「どれだけ精鋭を揃えようと、どれだけ策を弄そうと、強い信念を持ったあいつ等には、無意味だったって
ことですよ。もう諦めて大人しく縛について下さい」


アヒャヒャヒャ……


提督「……っ!?」

新鋭「なっ……」


爆発音の後、収まった静寂の中に聞こえてきた耳障りな笑い声。


長門「提督、離れろ!!」


近くまで戻ってきた長門が声を張り上げる。

そしてその直後、四方から一斉に何かが飛び出し、提督と新鋭の周りで大きく爆ぜた。


ボゴオオォォォォン


ザザザザッ…


提督「くっ…!」

新鋭「…ッ!」

??「アハッ……アヒャヒャヒャ……!はぁ、美味い……いいよぉ、美味いよぉ……やっぱり、ボクは…強い!」

提督「お前は…」

新鋭「戦艦…レ級…」

リコリス「冗談でしょ、こいつ…!」

ピーコック「これほどなの、こいつの進化は…」

提督「お前達…」

榛名「長門さん…!」

長門「榛名、すまない…私の責任だ。仕損じた…!」

榛名「他の、皆は…」

長門「解らんが、今は信じるしかない。近くに飛龍が居たのは確認してるが、戦闘の最中で巻き込む訳には行か
ないと思ってな…距離を置いてしまったのも仇になった」

提督「おい、長門。あれは本当に戦艦レ級なのか…!?」

長門「ああ、すまない。事実だ…奴は、沈んだとばかり思っていたが榛名の相手していたクローンを……食った」

リコリス「この場に揃ってるのは私達だけね」

ピーコック「誰も沈んでないって信じてるんでしょう?」

提督「当然だ…!」

ピーコック「なら、今は私達だけでアレを食い止める。出来る事なら仕留めるのよ」

新鋭「……無理よ」

榛名「何を言って…」

新鋭「あれはもう未知の化け物なのよ!?そうならない為に、そうしない為に私は……!」

提督「御託は後だ!すまない、榛名、長門、ピーコック、リコリス……あの化け物を、止めてくれ」

長門「ああ、そのつもりだ」

榛名「はい…!」

リコリス「はぁ~あ…嫌になるわね」

ピーコック「ホント…ベット積み過ぎでしょう。どれだけ釣り上げる気かしらね」

新鋭「貴方達、正気なの!?」

長門「良く見ておけ、これが私達だ」

榛名「諦めません」

リコリス「ふふっ、でも癖になりそう。やってあげるわよ」

ピーコック「これが最後よ…!」

レ級FS「全部纏めて、食い殺してやるよッ!!」

-最後の出撃-

レ級FS「知ってるか?負の感情、情念を抱いて死んだ奴の肉って言うのはとてもスパイシーで身が引き締まって、
とても濃厚で、それはそれはゴージャスな餌になるんだ!アハハハハハハッ!!」

榛名「彼女は、彼女なりに頑張って、私に挑んで…文字通り全てを賭して戦ったんです」

レ級FS「そう!その爆発した感情を内包したまま、死ぬ前に生きたまま食ってやるのが礼儀ってもんだよ。今頃
はボクの腹の中で、喜んでるんじゃないかなぁ」

榛名「許せない…!」

長門「性根は変わらずじまいだな」

レ級FS「ボクは強いから生き残ったんだよ。あいつは弱いからボクに捕食されたのさ。弱肉強食……ッ!なぁ、
そうだろ新鋭…?お前も、そいつらに負けるなら用済みだね」

新鋭「……っ!」

レ級FS「ボクに食われて、ボクの糧になれ…!」ギュオッ


バチィッ


レ級FS「くっ…!」ビュルッ…

ピーコック「……」

レ級FS「邪魔、するなよ。手元が狂って外れちゃうだろ?」ニヤニヤ…

リコリス「こんな下衆を従えてたかと思うと反吐が出るわね」

レ級FS「今はボクが上で、お前等は下だろ?まぁ、従うっていうなら従わせてやらないでもないよ。ボクの手足
となって奴隷として是非働かせて下さいってお願いしてごらんよ、ほら…早く!」

リコリス「……」サッ…

ピーコック「返事よ」スッ…


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


榛名「これは…」

長門「壮観だな…」

リコリス「First Air Fleet……」

ピーコック「全艦載機、その錬度をもって…」

リコリス「全機発艦っ!」バッ

ピーコック「目標を殲滅っ!」バッ

レ級FS「無駄だってば…今や、ボクは最強なんだよ…!」ジャキッ



ボゴオオォォォォォン


ボゴオオォォォォォン


ボゴオオォォォォォン


ボフウウゥゥゥゥゥゥゥゥン……


リコリス「なっ…!」

ピーコック「あの、弾幕の中を…!?」

レ級FS「ボクこそ最強!この世界に君臨し、この海を制圧し、お前達人間共を扱き下ろし、艦娘全てを根絶やし
にし尽くしてやる!跪け、海軍!ボクこそが、お前達の危惧する恐怖そのものだ…!」

提督「…教えてやれ、お前たち。俺たちの翳す信念がどんなものかを…そこにいる化け物に知らしめてやるんだ」

リコリス「あら、『たち』って私達も入ってるのかしら?」

ピーコック「っていうか、それ命令なわけ?」

長門「ふっ…」

榛名「強情ですね」

提督「いいや、作戦指示だ」ニヤッ…

リコリス「りょーかい…!」スッ…

ピーコック「…任せなさい」スッ…

長門「殿は私が務める」グッ

榛名「サポートします」

リコリス「準備は何時でもいいわ」

ピーコック「さぁ、鬼退治よ」

長門「よし!」ザッ

レ級FS「こいよ!全て捻じ伏せてやる!!」

長門「艦隊、この長門に続け!!」ダッ

長門の号令と共に長門、榛名が同時に駆け出し、リコリスとピーコックは同時に艦載機を放つ。

それに合わせるように、レ級FSは上空へ艦載機を放ち、自身は長門と榛名の二人を迎え撃つべく正面を見据える。

だがそこでレ級FSにとっては不足の事態、想定していなかった状況が生まれた。


──これでFinish!?な訳無いデショ!──

──艦載機、発艦急げ!──

──そろそろ反撃よ…!──

──よし、一気に決めるで!──

──追撃戦に移ります!──

──四十門の酸素魚雷は伊達じゃないからねっと──

──君たちには失望したよ。ここが潮時だね──

──何も、解ってイナイ…愚かな子──


レ級FS「援軍、だと…!?」

榛名「皆、ここまで来てくれたの!?」

長門「ふっ、さぁ…待ちに待った艦隊戦だな!」

リコリス「出し惜しみ無しよ!」

ピーコック「お釣りも全部取っておきなさい!余さずご褒美として受け取ってもらうわ!」

金剛「全砲門!Fire!」ドォン ドォン

伊勢「主砲、四基八門、一斉射!」

蒼龍「全艦載機、発進!」

プリンツ「砲撃、開始!Feuer!」

北上「そんじゃま、やっちゃいますか!」

時雨「ここは譲れない」

ポート「お痛ガ過ぎるワネ」

レ級FS「港湾棲姫・ポート…!キミも結局、艦娘や人を選ぶのか!」

ポート「少なくトモ、アナタが望む世界ヨリは、現実味アルわ」

気付けば一匹、彼女に対して少しの同情をする部分があるとすれば、それはやはり望まれて生まれてきた訳では

ないという点だろうか。

あくまで、彼女は新鋭が進めていた研究の副産物として誕生した変異種。

故に通常のカテゴリーからは逸脱し、際限なく全てを破壊し尽くした。

全てを敵に回し、全てを拒絶し、全てを投げ捨てた、怨念の塊以外の何ものでもない存在。

だからこそ淘汰されて然るべきなのかもしれない。

彼女の存在に勝るもの、それが目の前に居る艦娘達なのだ。

刹那の間にレ級FSが想い描いたのは、それでも己自身の未来だった。

炎の海、漆黒の闇、混沌とした世界の中心で狂気に染まった笑みを浮かべる自身を想い描く。

だから一斉攻撃が自らを襲うその瞬間でさえ、戦艦レ級FSは笑みを絶やさなかった。

声には出さなかった、だが…彼女は静かに思い続けた。

まるで呪詛の如く、一つの事を思い続けた。

『ボクが死のうと何度だってボクは生まれ変わる。次に出会うその時こそ────』

しかし、その呪詛すらも己を倒そうと迫り来る砲撃と艦爆艦攻の嵐に掻き消されてゆく。

この理念は、必ず何かに受け継がれてゆく。

だから彼女は最後まで笑みを絶やす事無く、戦火の中へと消えていった。

-終幕-

激闘から僅か半日と経たない間に海軍は深海棲艦との大々的な戦に終止符が打たれた旨を宣言した。

今後は警戒態勢を強化し、残党として未だに敵対してくる深海棲艦にのみ注意を払う事を付け加えた。

失ったものは大きく、得たものは少ない。

だがそれはとある鎮守府にとっては瑣末な出来事だった。

彼等はただ、それぞれを想って戦っただけなのだから。

これまでと何ら変わりはない。

あの夜、最後の激闘を制して新鋭を捕らえ、鎮守府に戻って共に戦った仲間達と大宴会を開いた。

もうクリスマスは過ぎていたけど、これこそがクリスマスプレゼントだと皆はしゃいでいた。

そして今────


提督「はぁ、さっむいなぁ…ま、どうせ暇だしなぁ…」

榛名「暇じゃありません!」

提督「うおぉぉぉっ!」

榛名「なっ、そんな驚かなくてもいいじゃないですか!」

提督「おま、まだ朝の五時だぞ?もう大晦日手前だから任務もないし、鎮守府に来る必要ないだろ」

榛名「そういう提督はなんで鎮守府に来てるんですか」

提督「え、そりゃ暇だから…」

榛名「朝の五時に暇だからって…どうせ普段出来ない資料整理でもしようとか思ってたんじゃないんですか?」

提督「目敏いやっちゃなぁ…」ガチャガチャ…


ガチャ…


榛名「そういえば、リコリスやピーコック達、正式にうちで預かる事になったんですか?」

提督「あぁ…アクタンがリコリス、ポートの二人とはどうしても離れ離れいやだってさ」

榛名「ピーコックは…?」

提督「俺のところ意外はいやだと…」

榛名「…良かったですね、可愛い子達が増えて」ムスッ…

提督「俺は悪くねぇだろ!?」

榛名「別に榛名は怒ってませんよー」スタスタ…

提督「怒ってるだろ、どー考えても!てか、待てって…」

榛名「ふーん…」ツーン

提督「ったく…」


ピタッ…


榛名「……」

提督「ん、どうした急に…」

榛名「ドア、提督が開けてくれないとは入れないから…」

提督「ぷっ…ははっ、はいはいっと…」ガチャ…

榛名「…余り実感って、沸かないものなんですね」

提督「あぁ?何が…っと、暖炉暖炉…しっかし、暖炉ねぇ…もうちょい最新のもん用意してくれてもいいだろうに」

榛名「深海棲艦はまだ居るのは解りますけど、なんていうか…」

提督「危機的状況は去った、みたいな?」

榛名「まぁ、なんというか…はい」

提督「それで良いんじゃないのかっと、よし…これで少ししたら暖まるな」ボッ…

榛名「それでいいって言うのは、一体…」

提督「俺は、お前たちと居るのが好きだ」ニコッ

榛名「えっ…」

提督「これからもずっと、以前と変わらず一緒に居たい。だから元帥殿からもらった話も蹴った」

榛名「元帥殿からもらった話って、私は何も聞いてませんよ!?」

提督「ん?そりゃあ、話してないからな?とにかく、一先ずの脅威は去った。それで良いんじゃないのか」

榛名「そう、ですよね」

提督「ああ、本当の本当に、全てが終わったら俺も海軍を辞めるよ」

榛名「え!?」

提督「ほら、以前に話しただろ。全てが終わったら、どっかに土地でも何でも買って二人で静かに暮らすって」

榛名「あ…///」

提督「あー…ゴホン。言っておくが、俺は本気だからな。俺の目標は一週間をとにかくだらけて過ごすことだ」

榛名「んな…!」

提督「ここに居ちゃ、一日どころか半日すらもだらけるのは不可能だ。だから、退官した後はもう徹底的にだら
けまくってお前に迷惑かけまくってやるんだ。で、二人で笑って一日を過ごす!」

榛名「私が余り笑えなさそうじゃないですか!?」

提督「ははっ、そん時になってみなきゃその状況は解らんだろうけどなぁ」

榛名「もう…提督は私がついてないとダメみたいですね」

提督「おう、そうみたいだ。だから頼むわ」

榛名「ふふっ、ええ…榛名でいいなら、お相手しましょう」


これはとある鎮守府のお話。

彼と彼女達の物語はこの先もまだまだ続くのだろう。

ただこの海が好きで、周りに居る皆が愛おしく、いつまでも共に居たいと思えるような、そんな仲間達。

これから先も、多くの事が起こりえるだろうが、それはまた別の話。

今はただ、この平凡な毎日を恙無く過ごすのみ。

何も起こらない、騒ぎも、事件も、戦争も。

今日もいつもと同じ、提督と彼女達の賑やかな声だけが鎮守府からは響いてくる。


Fin.

以上で 【艦これ】提督「暇じゃなくなった」 完結となります。
長い目で読み続けてくれた皆様、本当にありがとうございます。
今後も何か思いつくネタでもあれば書きたいと思います。

一週間、このスレはこのままにさせておきます。
意見や要望等、あればお好きにご記入下さい。
答えられる内容であれば全て返信させて頂きたいと思います。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年01月15日 (木) 21:50:52   ID: JqJZZFLS

ほんま…最高やな!
楽しませていただきました!新作待ってます(早漏

2 :  SS好きの774さん   2015年01月19日 (月) 03:30:01   ID: 5e6snhxo

よかったです!

3 :  SS好きの774さん   2015年06月30日 (火) 13:38:24   ID: u7oOTC6I

ええもん読ましていただきました!
新作に期待してます!

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