霞「鷺森灼は勇者である」 (15)
iPS歴285年
~鹿児島県永水小学校~
先生「それでは転校生を紹介します。関西から引っ越されて来た鷺森灼さんです」
灼「……初めまして、鷺森灼です。好きな物は麻雀とボウリング。よろしく……」
生徒「よろしくねー」
灼(今日から新しい学校に通う事になった。知り合いも誰も居ないし不安。でも頑張ろう)
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放課後
おばあちゃん「灼、新しい学校はどうだった?」
灼「うん。関西人なのに関西人っぽくないって言われたよ。いい学校だと思……」
おばあちゃん「そうかい。灼は冗談の一つも言えやしない堅物だからねぇ。関西人っぽくないかもしれないね」
灼「それは間違い。私も面白いジョークを言う時もある……かもしれない」
おばあちゃん「ホッホッホ、お笑い番組見ても眉をピクリとも動かさない灼がかい」
灼「面白ければ笑う。つまり私程度の小娘を笑わせる事が出来ないお笑い番組に問題あると思……」
おばあちゃん「そうかいそうかい。そうだ、灼。残念ながら鹿児島にボウリング場は無いらしいよ」
灼「そう……それは、とても残念」
ボウリングの球投げそう(直球)
灼「おばあちゃん、Sagimori Lanesは潰れてしまったけど……、私が大人になったらこの土地に初めてのボウリング場を作るから!」
おばあちゃん「それは楽しみだねぇ。灼が私達の夢を継いでくれるのかい」
灼「うん。きっといつか……。今はまだ無理だけど」
おばあちゃん「お金がうーんとかかるからね。そうだねぇ……そのためには灼はいっぱい勉強をしなくちゃいけないね」
灼「うっ……お勉強は嫌かも……」
おばあちゃん「駄目だよ。晩御飯までに宿題は終わらせておいで」
灼「……わかった」トボトボ
鷺森灼は母方の祖母に引き取られて鹿児島県へと疎開して来た。
父も母も亡くし、祖母との二人暮らしだが、祖母の言う事は何でも聞き、勉強やスポーツそして趣味の麻雀に励み、何一つ不自由なく過ごしていた。
そんな灼が鹿児島の生活にも慣れ、中学校へと進学し数ヵ月が経った頃。灼の家の隣に引っ越して来た隣人が居た。
灼「え?隣の家に誰か住むの?」
おばあちゃん「そうみたいだね。」
灼「何県の人だろうね。私達みたいに関西からやって来たのかな」
おばあちゃん「鹿児島生まれの鹿児島育ちらしいよ」
灼「へぇー、そうなんだ。仲良くなれるといいな」
おばあちゃん「灼と年の近い娘が居るから仲良くしてやって欲しいみたいな事を言ってた気がするよ。あぁ、その娘が引っ越しの挨拶に来るみたいなんだよ」
ピンポーン
灼「その子かな?私が出るよ」テクテク
キュルキュル
灼「初めまして鷺森で……あっ」
春「……」ポリポリ
灼(車椅子に乗ってる。……どうしよう、車椅子に乗ってる人と喋った事無い)
春「滝見春」ポリポリ
灼「えっ……あっ、名前ね。鷺森灼です、ここでおばあちゃんと二人暮らしをしてます」
春「そう。私の家はお父さんと二人暮らし。」ポリポリ
灼「そうですか……」
灼(年はいくつだろう。私より年下なのかな)
春「足が不自由で車椅子に乗ってるけど、出来れば普通に喋って貰えると助かる」ポリポリ
灼「わかりました。初めて車椅子の人を近くで見たから少し驚いてしまってごめんなさい。ところで聞きたい事が一つあるのだけども……」
春「一つでも二つでもどうぞ」
灼「何食べてるの」
春「引っ越しの挨拶のついでに持って行きなさいとお父さんに渡された鹿児島県名産の黒糖菓子」ポリポリ
灼は差し出された黒糖菓子を一つ食べて、食べやすいのに風味があって美味しいと言った。
春「それが自慢」ニコッ
しかしそれは隣人のために持って来たお菓子なのになぜ挨拶に来た本人が食べてるのだろうかとは思ったがそこは突っ込まない事にした。
後日、滝見のお父さんらしき人が違う黒糖菓子を持って来たのは余談ではある。
灼は隣同士と言う事もあり、春の車椅子を押して学校に通うようになった。
最初は滝見さんなどと呼んでいた灼だが、いつの間にか仲良くなってハルちゃんと呼んでいた。
灼が下の名前で呼ぶ事はとても珍しい。
灼自身もそれは自覚していたが、なぜか春だけはハルちゃんと呼びたい気がした。
春「灼ちゃん?灼さん?座敷童?」
灼「灼でいいよ。座敷童って何?」
春「似てるかなって思って」ニコッ
灼「よく言われるよ」
ゆゆゆと咲のコラボとは期待せざるを得ない
iPS歴287年
鹿児島県霧島神宮
石戸(母)「それでアレの進行はどうなってるのかしら?」
薄墨(母)「四国が落ちたみたいですよー。今は中国地方を進行中みたいですー」
石戸(母)「なるほど。ここに辿り着くまでは時間の問題って事ね」
薄墨(母)「そうですねー。むしろよく持ったと言うべきかもしれませんねー」
石戸(母)「移民の数も増え続けるわね。もうこちらも面倒見切れないわよ。男性の移民は断りましょう。年老いた人もね」
薄墨(母)「なるほどなるほど。男性は戦って[ピーーー]って事ですねー、まぁ国のために散れるなら本望でしょうよー」
石戸(母)「男性は強制で女性は志願制にしましょう。まぁ少しでも時間稼ぎが出来たら……」
ドア、バーン!
式神「イエーイ!レズのお姉ちゃん達イエーイ!イエーイ!」
石戸(母)「誰がレズですって……」
薄墨(母)「子供居ますよー。それにお姉ちゃんと言う年ではないのですがー。娘と歩いてるとお姉さんですかとは言われますけど」
式神「レズのおばさんイエーイ!イエーイ!」
石戸(母)「お姉さんでしょ!貴方、本当に小蒔ちゃんの式神?ぶっ飛ばすわよ!!」
式神「もちろん僕は神代小蒔の式神で、小蒔ちゃんも僕を小蒔として扱うようにとの事だよ」
石戸「声はそっくりなのよね……」
式神「神代小蒔のiPS細胞で作った人形だからね。声くらい似て当たり前だよ」
薄墨「胸も姫様に似せて作れば良かったのですよー」
式神「貴方だけにそれは言われたくないな。ところで僕は神代小蒔だよ」
石戸「それはわかったから」
式神「神代小蒔だよ」
薄墨「あーそうですね。姫様ですね、姫様」
式神「神代と言えば?」
石戸「ホーリーランド」
式神「余談だが、僕は神樹から遥々霧島神宮までやって来てあげたのでお腹がとても空いている。お腹が空いている」
石戸「人形の癖にお腹が空くのね。まぁ……すぐ終わるから辛抱して」
薄墨「貴方は私達大赦の意見を姫様に伝えるだけなのですからいつも早く終わるじゃないですかー」
式神「そうだね。いつも早く終わるよ。そう……君達があらかじめ決定してる意見に対して僕ははいそうですかと小蒔ちゃんに伝えるだけの人形」
石戸「そうそう。一字一句漏らさずに覚えて帰りなさい」
式神「だがどうだろう?あーそうそう、この神社の冷蔵庫、そう二段目かな?」
薄墨「……二段目に何か?」
式神「ロールケーキが二つある事を僕は知っている。何でもは知らないけれどロールケーキがあるのは知っている。あの鹿児島一と知られる洋菓子テルテル堂のロールケーキだよレズのお母さん」
石戸「……」
薄墨「……」
式神「その二つのロールケーキ。一つは今、空腹の僕が食べるとして。もう一つは小蒔ちゃんにだよね?」
石戸「……予約して数週間待たないと買えないんだけど」
薄墨「せめて石戸さんのだけにして下さいよー。私、このロールケーキ食べるのずっと楽しみにしてたんですからー」
式神「それはどうだろう?僕がロールケーキを食べた事は間違いなく神樹の中に居る小蒔ちゃんに伝わる」
石戸「食べなきゃいいじゃない……」
式神「悲しい事に人形である僕は隠し事が出来ない。ロールケーキのふわふわした感食や隠し味に地元産の黒糖を使った親しみの中にある優しい甘さも伝わってしまう」
薄墨「そうなんですよー、ロールケーキ広しと言えど隠し味に黒糖を使って鹿児島生まれの鹿児島育ちが認めるロールケーキはあそこだけなんですよねー」
式神「もし小蒔ちゃんがロールケーキを食べれなかったらどう思うだろう?」
石戸「……知らないけど」
薄墨「姫様とお会いした事ないのでわかりません」
式神「きっとこうなる」
小蒔『分かりません!分かりません!分かりません!分かりません!』
小蒔『分かりません…分っかんないよ。
霞ちゃんの言ってる事は一つも分かんないよ
初美ちゃんがいいって言ってるもの何がいいのか分かんないよ
分かんない私には分かんないのブラッティって何がカッコいいの
血なんてイヤだよ痛いだけだよ黒のどこがカッコいいの
クレイジーのどこがいいのか分かんない
罪深いってなんなの罪があるののなのがいいの
犯罪者がカッコいいのそもそも混沌てなに
カオスだからなんなの闇ってなに暗ければいいの
正義と悪だとなんで悪がいいの
何で悪いほうがいいの悪いから悪じゃないの
右腕がうずくと何でカッコいいの
自分の力が制御できない感じがたまらないって何それただの間抜けな人じゃん
ちゃんと制御できるほうがカッコいいよ立派だよ
普段は力を隠していると何が凄いのそんなのタダの手抜きだよ
隠したりせず全力で取り組む人の方がカッコいいよ
どうして二つ名とか異名とかいろいろをつけるの
いっぱい呼び名があったて分かりにくいだけじゃん
英語でも何でもカタカナつけないでよ覚えられないんだよ
鎮魂歌と書いてレクイエムって呼ばないでよ
禁忌って書いてタブーって読まないでよ
聖戦って書いてジハード読まないでよ
ギリシャ神話だとか聖書とか北欧神話とか日本神話とか
ちょっと調べたくらいでそういう話しないでよ
内容もちゃんと教えてくれなきゃ意味がわかんないよ
教えるならちゃんと教えてよ
神話に出てくる武器の説明されても楽しくないよ
グングニルもロンギヌスもエクスカリバーもデュランダルも
天叢雲剣も意味不明だよ何がカッコいいのか全然分かんない
他の用語も謎なんだよ原罪とか十戒とか創世記とか黙示録とかアルマゲドンとか
名前がいいだろってどういうこと雰囲気で感じろとか言われても無理だよ
相対性理論とかシュレディンガーの猫とか万有引力とか
ちょっとネットで調べただけで知ったかぶらないでよ
中途半端に説明されてもちっとも分からないんだよ
ニーチェとかゲーテの言葉引用しないでよ
知らない人の言葉使われても何が言いたいのか全然わかんないんだよ
自分の言葉で語ってよお願いだから私に分かる事話してよ
厨二ってなんなの厨二ってどういうことなの
分かんない分かんない分かんない分かんない分かんなーい
霞ちゃんの言う事は昔から何一つこれっぽちも分かんないんだよ』
石戸(なんで娘の名前知ってるのかしら)
式神「とにかく今後の作戦に支障をきたすって事。あっそれと、小蒔ちゃんは神様だからね。知らない事なんてないよ。何でも知ってる。例えば福路美穂子さえ知らない上埜久の過去だって知っている」
薄墨「えー神様なんですよね?今まで日本を守って来た神様がたかだかロールケーキ一つで……」
式神「小蒔ちゃんは神と言えども甘いものには目がないからね。年齢にすると300歳近いのに子供っぽいと思うし、早く大人になれよとか思うけどね。小蒔ちゃんだから」
石戸「あーそうですか。いいですよーだー。娘の分のロールケーキがあるので。自宅に」
薄墨「なっ!ずるいですよ!石戸さん!」
石戸「ではこのロールケーキ二つは供え物で」コトッ
式神「いただきます。流石、ボインボインドッカーンのお姉ちゃん。話がわかる」モキュモキュ
----------作戦の説明中----------
式神「なるほど、日本を捨てるのかい?」
石戸「捨てるんじゃないわ。守りきるの」
薄墨「一部だけになりますが……。九州地方にだけ結界を発動させて欲しいのですよー」
式神「しかし、日本中。いや世界中にはまだ多くの戦っている人達が居る。その人達を見捨てて日本の九州地方にだけ結界を張るの?」
石戸「仕方ないのよ。だって正面から戦っても勝てる相手じゃないのよ!」
薄墨「宇宙に出るのはいい案でした。しかし火星のテラフォーミングは失敗してしまいました……」
石戸「今から数十年前ね。日本が西日本半分まるまる残ってたくらいかしら」
薄墨「まさか火星にあんな劣悪な生物を送り込むとは……。月は近すぎて駄目ですしー」
石戸「えぇ、ロケットを飛ばしても撃墜されるものね。もうロケットを作る予算も技術者もないのだけど」
式神「だから引きこもると。強大な壁を作って人類の未来を捨てて、少しの人類を生き長らえさせるように」
石戸「そうよ。姫様の力を全て結界に使うの。九州全てを守る強大な壁にして」
薄墨「倒すのを諦めたわけではないのですよー。今はただ打開策が出るまでは、これが一番無難だろうって」
式神「確かに。火星も無理、月も無理。地下も無理、海も無理、天空も無理。困ったね、もう滅びるしかないよね。弱肉強食はいつの世も自然界を取り巻く唯一のルールだけども」
石戸「新しい希望がないわけではないわ。小蒔ちゃんの力……を持った次世代の子達も次々と生まれて来てるわけだし」
式神「小蒔ちゃんのiPS細胞で作った娘とか?」
石戸「……小蒔ちゃんのiPS細胞を勝手に持ち出した事は反省してます」
とりあえず今日はここまで。ゆゆゆのキャラ出て来なくてすまん
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