久「だっておいしそうなんだもの」
まこ「なにがだってじゃ……というか、そんなにいちご好きだったんか?」
久「別に? でも人のお皿のものってすごくおいしそうに見えるじゃない?」
まこ「もとが同じケーキなんじゃから同じ味しかせんわ……ほれ」
久「あーん」
まこ「……はぁ」
呆れたようにため息をつくと、まこはいちごを1つフォークに突き刺しこちらに向ける
まこ「……どうじゃ?」
久「……なんか、普通」
まこ「だから言ったじゃろ」
久「じゃあ、私のいちごも1つあげるから」
まこ「別にええよ」
久「もらったまんまじゃ悪いじゃない……はい、あーん」
まこ「……自分で食べれるから皿に置いといてくれれば」
久「あーん」
まこ「だから皿に」
久「あーん」
まこ「……あーん」
まこは意外と押しに弱い
っていうか、女の子同士なんだし照れなくてもいいのにねぇ
久「どう?」
まこ「……普通じゃな」
久「やっぱりかぁ」
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まこ「……1つ、言いたいことがあるんじゃが」
久「なに? 愛の告白?」
まこ「そんな相手がいればクリスマスを女二人で過ごすことにはなっとらんわ……」
久「あら? 告白してれば必ず成功するってこと? 自信満々ねぇ」
まこ「いや、失恋しとったら家の手伝いでもしとったんじゃないかのう……」
久「あらら……慰めるぐらいできるのに……」
まこ「部長に話すと拗れる気しかせんしな……それに、なんだかんだうちの雀荘が一番落ち着くしのう。 働いてる間は余計なこと考えんで済むし」
……そういう経験があるんじゃないかと勘繰りたくなるわね
それにしても少し悔しいわね……いつかはこの部室が一番落ち着くって言わせてやりたいわ
まこ「で?」
久「ん?」
まこ「……そういうあんたこそどうなんじゃ? 副会長とか」
久「えー? ないない! そういうんじゃないって……それとも、まこはあいつみたいなのがいいわけ?」
まこ「ふむ……」
まこが眼鏡を拭きながら少し考える
冗談だったんだけど……まあ、今考えてるようじゃ脈はなさそうね
それに、まこはあいつにはもったいないし!
まこ「……まあ、悪くはないじゃろ。 あんたの手綱を握れるぐらいにはしっかりしとるし」
久「あら、意外な返事ね……つーか私をなんだと思ってるのよ……」
まこ「さあのう? で、本題なんじゃが……」
久「なぁに?」
まこは眼鏡をかけ直し、少し困ったような表情を見せる
まこ「……二人でホールケーキはさすがにきついんじゃないかのう」
久「パーティーと言えばケーキ、ケーキと言えばホールでしょ?」
まこ「パーティーと言えば二人じゃなくてもっと大人数でやるもんじゃないんかのう……」
久「私は麻雀部でパーティーがしたかったの!」
まこ「はいはいわかっとるよ……でもやっぱりこれじゃ少し寂しいじゃろ」
久「……まあねぇ」
麻雀部の部室は旧校舎に位置する。造り事態はしっかりしているとはいえ暖房器具も旧式のストーブしかないし、冬休みに入った今利用者も
私たちくらいのものだ
二人で使うには広すぎる部室は、静けさに包まれている
まこ「つーわけで、もう少ししたら副会長たち来るんでな」
久「はぁ? なんでよ?」
まこ「休み入る前に生徒議会室言って声かけてきたんじゃ」
久「……どうして?」
まこ「二人でパーティーするんはさすがに寂しいらかのう……ホールでケーキ買ってくるほど張り切っとるのもおるし、パーティーの体にはしてやろうと思ってな」
久「なんであいつなわけ?」
まこ「あんたの友だち、副会長たち生徒議会のメンバーしか知らんしなぁ」
久「……私が友だちいないみたいに言うのやめてくれる?」
まこ「はいはい、すまんね」
……たしかに顔は広いけど友人って言える人はあまり多くはないんだけどね
まあ、放課後は毎日二人で部室にいるしバレちゃってるか……
まこ「……来年は、部員増えるといいのう」
久「……そうねえ。 まこと二人ってのも悪くはないけど」
まこ「なぁに言っとるんじゃ」
まこ「団体戦出れるぐらいは人数集めたるわ……インハイ、予選も出てないんじゃ後悔するじゃろ? 」
久「……まこはさ、こう……色々とわかってるわよねぇ」
まこ「あんた、わかりにくいようでわかりやすいしの……素直に個人戦でエントリーしないあたりめんどくさい子じゃ」
久「ま、願掛けみたいなもんよ。 来年……」
そこまで話した所で、部室の扉が開く
一太「どうも、遅くなりました」
菜月「お待たせしました、会長! 飲み物とかも買ってきましたよ!」
久「いらっしゃい! ありがとね、菜月」
彩乃「お邪魔します……ケーキも一応買ってきたんですけど……」
まこ「……寺平先輩、どれくらい食べられます?」
彩乃「あ、染谷さんそんなに食べない感じ? 悪いけどケーキ大好きだからけっこう食べちゃうよ?」
菜月「私も、たくさん食べますよ!」
一太「まあ、五人もいれば食べきれるでしょう……会長、飲み物どれがいいですか?」
久「あんたと一緒でいいわよ。 人数増えたしケーキ切り分けるわねー」
一太「了解です……彩乃、紙コップ取ってくれるかい?」
彩乃「はいどうぞー」
菜月「会長、お皿です!」
久「ありがとね」
一太「はい、染谷さんどうぞ」
まこ「どうも……んじゃ、飲み物も行き渡ったところで……」
久「メリークリスマス! 乾杯!」
「「「「かんぱーい!」」」」
――――――
久「それで去年はあんたとも一緒だったわね」
一太「そうですね……今年は麻雀部でパーティーするんですよね?」
久「もちろんよ!」
一太「まあ息抜きにはちょうどいいんじゃないですか? プリント、これで最後です」
久「いつも悪いわねぇ」
一太「……事情はわかってますし、気にしないでけっこうですよ。 ただ、結果は出してくださいね」
久「当然! 浪人する余裕なんてないしねー」
一太「それじゃあ、僕は塾に行きますんで……パーティー、楽しんでくださいね」
久「言われなくてもそのつもりよ? あんたもクリスマスまで塾なんて大変ねぇ……サボっちゃえば?」
一太「それができる性質だったら、きっと竹井さんとも組まなかったでしょうね」
久「それもそうねぇ……じゃ、勉強頑張ってねー」
一太「ええ、竹井さんも……それでは」
久「いってらー」
コピーさせてもらったプリントを鞄にしまいながら相方を見送る
あっちはあっちで受験勉強も忙しいだろうに、朝早くから学校まで来てもらっちゃって少し申し訳ないわねー
……あいつ、もしかして私に気があったりして
久「……なーんてね……さて! 私も部室の方に行きますか!」
久「あー……寒い寒い……ストーブつけてっ、と……」
現在、午前九時ちょっと前だ……集合は十時のはずだからみんなが来るまでしばらくあるだろう
午前中から集まる、というのは別に一日中遊ぶわけではなく単にみんなの予定を考えてのことだ
咲は父親と共に東京へ行き、年末年始はあちらで過ごすらしい……色々心配だったけど綺麗に収まったようでこちらとしても安心した
和もクリスマスぐらいは……と、忙しい両親が帰ってくるらしい。 こちらも、後で聞いた話だがインハイの頃は少しギクシャクしていたらしいので、家族で過ごしてわだかまりがなくなればいいな……と思う
……家族の大切さっていうのは私自身身に染みて感じているしね
久「……帰りはお母さんに、なにか買ってこうかしらね」
……おっと、これから楽しいパーティーだっていうのにしんみりしてたらもったいないわね
とりあえず、みんなが来る前に少しぐらい掃除でもしておきましょうか
それにしても……誰一人恋人との予定があるわけではない、ってのは高校生としては少し寂しいわね
久「……和はモテるけど高嶺の花扱いみたいだし、咲もインハイ以降ひっそりと人気みたいだけどおとなしい分男子連中も攻めあぐねてるっぽいのよね……」
和はそもそも男子慣れしてなくて距離をおきがちみたいだし、咲はなんというか……周囲の人間に関心薄いところあるからなぁ……二人とも一回心を開けばよく話す子なんだけど
久「反対に優希は男子ともよく話してるとこ見るけど……だいたい和や須賀くんが一緒だからそういう話には持ち込めないっぽいし……」
っていうか優希は自分に近づいてくる男子の半分ぐらいは和目当てだと思ってる節がある気がするのよね……優希自身もかなり人気あるし、気さくでボディタッチなんかも多いから勘違いしてる男子も多そうだ
夏を過ぎてからは食堂でタコスを貢がれてる優希の姿も見るし、なかなかの小悪魔っぷりよね……
久「まこは……」
まこ「ん? 呼んだか?」
久「きゃ!? ……あ、あら、来てたの? 早いわね?」
まこ「早めに来て準備しようと思ってのう」
時計は九時十分を指すかどうかといったところだ
久「……ちょっと早すぎじゃない?」
まこ「わしより早く来とるあんたに言われてものう……で? わしがどうかしたか?」
久「ん? ほら、部員六人もいて誰も恋人いないとか貧しい青春送ってるなって」
まこ「……部活で結果出しとるし、別に恋愛だけが青春じゃないじゃろ」
久「まぁね……ところで、まこは今年そういうのなかったの? インハイで活躍したしみんなけっこう話題性あったと思うのよねー」
まこ「……そういうあんたこそ、もともと会長なんかで人気もあったしなんかなかったんか?」
久「んー……まあ、たまに告白されたりとかはあったけど、あんま興味なかったし全部断っちゃった。 麻雀したり、みんなといる方が楽しいしね」
まこ「……ほうか。まあ、あんたらしいのう」
久「で?」
まこ「……で?」
久「わざわざ誤魔化したりしたらバレバレなんだけど? いくつかあったんでしょ?」
まこ「……いや、べつになにも……」
久「照れなくたっていいじゃない! 私だって話したんだし!」
まこ「……まあ、インハイ終わってから少しは……」
少し突っ込むとまこは観念したのか、少し頬を染めながら白状する
……普段あまりこういう顔見せないから破壊力あるわね。 須賀くんがいたら惚れちゃったかも
写メとか撮ったら怒られるわよねぇ……
久「で? なんで付き合わなかったのよ?」
まこ「……あんたと似たような理由じゃな」
久「私に相談してくれてもよかったのに……」
まこ「どう転ぶにしてもあんたに引っ掻き回されるんはごめんじゃ……だいたい……」
久「なによ?」
まこ「あんた、別に経験値高いわけでもないじゃろ……正直頼りになるかどうか……」
久「ぐむ……そりゃまあそうかもしれないけど! 私だって、まこのためならちゃんと考えるわよ!」
まこ「んじゃ、こないだクラスの男子から……」
久「はぁ!? ダメよ! まこは私の嫁!」
まこ「……やっぱり信用できんわ」
久「待って待って! 冗談だから! 私は頼りになるから!」
まこ「麻雀その他なら頼れるんじゃがね……」
久「じゃあほら! 頼って! なんでもいいから!」
まこ「なんでもいいんか……じゃあ、年明け辺りに売り上げ伸ばしたいしなんかイベント案とかないかのう?」
久「えー……じゃあ、とりあえず私も手伝いに行くから……」
まこ「しっかり受験勉強しんさい!」
久「ぶー……いいじゃないのよぉ」
まこ「かわいく言ってもダメじゃ」
久「え、かわいかった? えへへ……」
まこ「なにを照れとるんじゃ……」
京太郎「おはようございまーす……先輩方、早いですね」
まこ「おはよう、一人か?」
京太郎「咲も一緒です。 図書室に本返しに行きましたけど」
久「いつも通りね……あ、そういえば須賀くん」
京太郎「なんですか? 優希と和は昼過ぎまで来ませんよ? ケーキ焼いて持ってくるって話でしたし……」
久「楽しみよねー……じゃなくって! クリスマスよ? 彼女とかいないの?」
京太郎「……そんなん聞かなくても知ってるでしょうに」
まこ「少しはそういう話ないんか?」
京太郎「ないっすねー……最近は咲ですらモテるというのに……」
久「あら、須賀くんでも気づくぐらいにはモテてるんだ?」
京太郎「つか、俺何回か紹介してくれーみたいなの言われてますしね……麻雀部の○○紹介してくれ、に拡大するとそれはもう夏以降けっこうな数に……」
まこ「うち唯一の男子部員じゃしのう……そういうこともあるんじゃなあ」
久「やっぱり一番人気は和?」
京太郎「そうですね。 次点は竹井先輩すよ?」
久「あら、ほんとに?」
京太郎「そんで少し数を減らして咲と染谷先輩が同じぐらいでしたかね……」
まこ「……ん? 優希はどうなんじゃ?」
京太郎「あいつんとこは直で行くやつのが多いっすから」
まこ「なるほどのう……」
京太郎「あいつはかなり話しやすい方ですしね。 それでも俺んとこ来るやつには『タコス差し入れてやると喜ぶぞ』って……」
久「優希がタコス貢がれてるのは須賀くんのせいか……」
京太郎「いやぁ、なかなかうまくやったもんでしょ? 男どもは優希と話せて嬉しいし、優希もタコスを食べれて嬉しい。 食堂もタコスの売れ行きが上がって嬉しいし、俺も負担が減るから嬉しい! 一石四鳥!」
まこ「なんじゃ、せっかくタコス作りの腕も上げてきたんにもったいないのう……」
京太郎「いやまあ、俺もなんだかんだ毎日タコス作って来てるんですけどね」
久「……全然負担に思ってないでしょ? そういえば、優希も最近は食堂のやつよりおいしくなってきたって褒めてたわよ?」
京太郎「……あいつ、そんなこと言ってたんですか?」
まこ「うれしそうじゃのう?」
京太郎「ここんとこ自信作も『まだまだだな! もっと精進しろ!』 って言われるんで……」
久「優希は意外と厳しいタイプなのねぇ」
京太郎「まあ上には上って言いますし、ハギヨシさんや優希が作ったタコスには敵いませんからね……そっか、褒められてんのかぁ……」
まこ「にやにやしよって……」
久「もう付き合っちゃえば?」
京太郎「は? それはねーっすわ。 優希もそういうんじゃないっすよ」
久「えー? いいじゃないの、優希かわいいし……」
京太郎「……なんか、漫画とかで執拗にお見合い勧めてくる近所のおばちゃんみたいっすね」
久「おば……っ!? ちょっと! 私まだ18よ!?」
京太郎「いちいち誰かしらくっつけようとするのはね……その、おせっかいおばちゃんって感じで」
まこ「ま、ところどころそういう面があるわなぁ」
久「す、好き勝手言ってくれるわね……」
京太郎「竹井先輩はいつも好き勝手やってるじゃないですか」
まこ「こっちもたまにはのう……」
久「むぅ……最近は毎度のようにそうやって言われたい放題な気がするんだけど……」
咲「すみません、遅くなりました」
まこ「咲、おはよう」
久「おはよっ! 今日も元気に文学少女ね」
咲「おはようございます。 冬休み中にたくさん本読もうと思ってたんですけど、よく考えたら東京まで行ってずっと本読んでるのも変だな、って……先に読んで返してきちゃいました」
まこ「って結局読んだんか……」
京太郎「本は逃げないんだからのんびり読めばいいじゃねぇか」
咲「手元にあるとつい気になっちゃうから……」
久「あ、咲って彼氏とか作らないの?」
咲「ふぇ!?」
京太郎「……それ、全員に聞くんすか?」
久「うん、せっかくだから……個人面談?」
まこ「全員の前でやるんじゃ個人もなにもないじゃろ……」
咲「え、えっと……そ、そういう竹井先輩はどうなんですか?」
久「なんもないわよー」
まこ「同じく」
京太郎「聞くな……虚しくなる」
咲「わ、私も特にそういうのは……」
久「うっそだー! 最近モテてるんでしょ? 須賀くん情報!」
咲「……京ちゃん?」
京太郎「俺よりはモテてるだろ……」
まこ「……自分で言って傷つくのやめんさい」
咲「うー……そうなんですかね? たしかに、夏以降よく男子に話しかけられるかなー? とは思ってたんですけど……そんな感じではないんじゃないかなぁ」
京太郎「お前、本ばっかり読んでないで回りの人間にも目を向けろよな……」
咲「むー………そういう京ちゃんも少しは本読んだら? 恋愛ものとか読んだら少しは女心もわかるかもしれないよ?」
京太郎「ぐぬぬ……咲のくせに生意気な口を……!」
咲「図星だからって怒らないでよねー」
うーん……咲も須賀くんとギャーギャーと言い合う姿を見てると、別に男子が苦手なわけじゃないと思うんだけど……やっぱり男子と話してるイメージがないのよねぇ
久「……咲ってさ」
咲「はい?」
久「彼氏はともかく、男子の友達っているの?」
咲「えっと……京ちゃんでしょ?」
京太郎「おう」
咲「それと……嫁ちゃん」
京太郎「ぐらいか?」
咲「うん、クラスの男子とは最近少し話すけど……友達って感じなのは……」
久「まあ、クラスメイトと友達ってまた違うもんね」
まこ「……嫁ちゃん?」
咲「あ、中学から一緒なんです。 ほら、京ちゃんとよく一緒にいる背の高い……」
久「あ、わかったわかった。 あの子ね」
まこ「ああ……京太郎よりデカいのも珍しいしのう」
京太郎「……あいつはわりとモテるんだよなぁ……俺のなにが悪いってんだ……」
咲「やっぱり女心がわからないとこじゃない?」
京太郎「俺男だし仕方ないじゃん! 普通わかんねーよ!」
久「でもほら、須賀くんはいい人よね」
京太郎「いい人って! どうでもいい人ってことなんでしょう!? そういう対象じゃないんでしょう!?」
まこ「ま、もう一味ってとこなんかのう……」
京太郎「でも俺って! 高身長、スポーツそこそこ万能、そこそこの学力にそこそこの容姿……あれ!? よく考えたらあまりモテる要素ない!?」
久「料理できる男はモテるらしいわよ?」
京太郎「レパートリータコスだけなんすけど……」
まこ「優希には好印象じゃな。 まあ内面も問題はないし、気は利くし目敏い方じゃからそこら辺をもっと活かせれば……」
京太郎「彼女できますかね?」
咲「いくら気が利いても使い方を間違えちゃうからなぁ……やっぱり女心の理解に努めるべきだね」
京太郎「……宮永先生のお薦めは?」
咲「うん! えっとね、京ちゃんでも読めるようなやつがいいかな……それじゃあ……」
京太郎「おい! ひっそりとバカにするのやめろ!」
まこ「活字が嫌なら少女漫画でも読んでみたらどうじゃ?」
京太郎「嫌ってわけじゃないんですけど……まあ、それもひとつの手なんですかね?」
久「まこってけっこう持ってるわよね、そういう少女漫画」
まこ「……べ、別にいいじゃろ」
久「けっこう乙女だもんねー」
まこ「……うっさいわ、アホ」
咲「優希ちゃんもかなり持ってるみたいですよ……私もけっこう借りて読みましたし」
京太郎「へぇ、優希が? 意外だな……和の得意分野な感じがするけど」
咲「和ちゃんは家ではネト麻してることが多いらしくて……それでも、優希ちゃんに借りてかなりはまってるみたいだけど」
久「和はすごく……恋に恋する感じよねー」
まこ「理想と現実のギャップってのは大きいからのう……和も大変じゃろうな」
京太郎「漫画とかの創作に理想を求めるもんなんすかねぇ……」
咲「でも、そうですね……京ちゃんには絵がついてた方がわかりやすいかも……ドラマ化したりする作品も多いし、そういうとこから挑戦してみようか?」
京太郎「おう! それで俺もかわいくて巨乳の恋人を……」
久「それを口に出すからダメなのよねぇ……」
まこ「そもそも京太郎は口に出さなくても顔に出るタイプじゃしなぁ」
咲「……ポーカーフェイスも覚えた方がいいかもね」
京太郎「……散々な言われようっすね」
久「言われる方にも原因があるのよ?」
まこ「みごとなブーメランじゃな」
咲「まあ、その調子じゃ当分……」
京太郎「あー! そろそろ準備始めましょうよ! 優希と和が来たときに用意終わってなかったら悲惨ですし!」
久「現実から目を背けてちゃいつになっても……」
咲「彼女できないよ」
京太郎「はっきり言うなよぉ!」
まこ「ま、その辺にしときんさい……京太郎の言う通り、せっかくケーキ焼いて持ってきてくれるってぇのになんの準備もできてないんじゃのう」
京太郎「うう……とりあえずこないだ大掃除しましたけど、軽く掃除はしときましょうか」
久「食べ物来るんだしやっときましょう」
咲「それじゃあ窓、開けますね」
久「え、寒いからやだ!」
まこ「そういうわけにもいかんじゃろうが」
久「せっかくストーブつけといたのに……」
京太郎「まあこればかりは……さっさと終わらせちゃいましょう」
久「あ、箒はだいたいやっちゃったから軽くでいいわよー」
まこ「じゃあ、軽く床だけ拭いて……とりあえず雀卓一回脇に寄せるか」
咲「はーい……京ちゃん、そっち持って」
京太郎「おう……咲、雀卓持てるのか? 危ないから手ぇ放すなよ?」
咲「大丈夫だよ……せー、のっ!」
京太郎「っしょ、と!」
久「机隣の持ってきていいのよね? どれくらいあればいいかしら……」
まこ「ケーキと食べ物がそこそこ用意してあるから……とりあえず四つぐらいくっつけて、あとは部室ので補えるじゃろ」
久「りょーかい、んじゃよろしく!」
まこ「……別にええけど、あんたはなにをするんじゃ?」
久「私はほら、箒途中だし」
まこ「……ん、じゃあ、取ってくるんでよろしくな」
久「そんな渋い顔しないでよー」
まこ「いや、まあ先に来て掃除してくれてたんは事実じゃしな。 とりあえず危なげな咲見といてやってくれ」
久「はーい……ってちょ! 咲、大丈夫!?」
咲「お、おも、い……」
京太郎「フラフラするなって! 頑張れ! 先輩!!」
久「っと! 大丈夫?」
咲「す、すみません……」
京太郎「……俺一人でやった方がよかったすね」
久「須賀くん無駄にデカいから高さ合わせるのも大変だもんねぇ……」
京太郎「無駄とはなんすか! 背が高い方が……」
久「モテるって?」
咲「京ちゃんモテないけどね」
京太郎「この人たち当たり強すぎ! 染谷先輩カムバック!!」
――――――
まこ「……とりあえず、こんなもんかのう」
咲「そうですね。 あとは飾り付けですか」
京太郎「じゃ、壁の方俺やるんで」
久「まかせたわ! じゃ、咲は私とホワイトボードに落書きでも……」
咲「和ちゃんと優希ちゃんのためにも豪華にしとかないとですね!」
まこ「んじゃ、わしは京太郎の手伝いするわ」
京太郎「ありがとうございます! て言ってもこないだ作っといた折り紙の輪っかくっつけるぐらいなんで……」
まこ「それも一人じゃ大変じゃろ……久! なんで黒板消しを持っとるんじゃ! 扉に挟むな! いらんイタズラをするんでない!」
久「はーい……」
咲「メリー、クリスマス……あ、エトペンとか描いとこっかな……」
久「じゃあセアミィもね! ……って言うか、須賀くんの荷物でかくない? どかしていい?」
京太郎「あ、すみません……いろいろ持ってきたんで……」
まこ「なにが入っとるんじゃ?」
京太郎「タコス作ろうと思って材料を……」
咲「え、ここで作れるの?」
京太郎「家庭科室の使用許可もらっといたんだよ。 作りたての方がおいしいだろ?」
まこ「やる気満々じゃのう……それじゃあそろそろ準備してきんさい。 優希と和が来るのに合わせて出せた方がええじゃろ」
京太郎「そうですね、じゃあちょっと行ってきます!」
久「あ! それじゃあまこも玉子焼き作ってよ! 私あれ大好きなのよね!」
咲「あ、私も食べたいです!」
まこ「ん、わしはええけど……クリスマスパーティーで出すもんなんか?」
久「おいしけりゃいいのよ!」
京太郎「それじゃあ一回買い出しいきますか。 食材追加で買って……」
まこ「飲み物とかも買ってくるか?」
咲「和ちゃんたちが買ってきてくれるみたいですし、平気だと思います」
まこ「あいよ、んじゃ京太郎付き合ってくれるかのう?」
京太郎「うっす、お供します!」
久「いってらっしゃーい」
まこと須賀くんが出ていって、咲とふたりきりになる
一通り準備はできたけど、優希と和もあと30分は来ないだろうしのんびり待つとしましょうかねー
久「あ、そういえば」
咲「どうしました?」
久「和と優希が一緒にケーキ焼いてくるんでしょ? 和は心配なさそうだけど、優希って大丈夫なの?」
咲「大丈夫なの? ってひどいですよ先輩」
久「咲も笑ってるじゃないの」
咲「ふふ、優希ちゃんお料理関係はけっこうできるみたいですよ? タコス以外は、なんて言ってましたけど和ちゃんと比べたらだいたいの人は……ねぇ?」
久「ああ、そういう……って、もしかしてうちで一番料理ダメなの私……?」
咲「あー……でも、京ちゃんはそれこそタコス以外は……」
久「慰めないでよ……それにしても、これはちょっと悔しいわね……」
優希が実際どの程度の腕前かは知らないけど、タコスは本当にすごいもんね……
少しぐらい料理も練習した方がいいかしら? 将来的には自分でバリバリ稼ぎたいし、そういうのはいいかなーって思ってたけど……
咲「まあ、余計なことしなければちゃんとしたものができますし……少し練習してみたらいいんじゃないですか? 私でも染谷先輩でも和ちゃんでも、頼ってくれればお手伝いしますよ?」
久「うん……そうね、受験の方が落ち着いたら頼もうかしら」
……料理を覚えたらお母さんの手伝いもできるし、喜んでもらえるかしらね?
咲「受験といえば……その、大丈夫なんですか?」
久「今日遊ぶためにバッチリやってきたから! お正月だって初詣ぐらいはみんなと行きたいなー」
咲「そうですねー……あ、私今年は……」
久「あ、そっか、咲は東京かぁ……いつ頃戻ってくる予定なの?」
咲「うーん……3日ぐらいまではあっちで過ごすんじゃないかと」
久「じゃあ、それまで初詣とっとくから!」
咲「えぇ!? ダメですよ、受験生なんだからちゃんとお参りしてこないと!」
久「だって、みんなで行きたいんだもん……」
咲「だもん、って……」
久「なによー」
咲「ふふ、かわいいです」
久「へへ、かわいいかー。 そっかそっかー」
つい、顔がにやけてしまう
咲は適当なことは言わないし、こういうときはかなりうれしいかも
咲「最近は、かわいい路線ですよね?」
久「ふふっ、そうかも! 普段はかわいくないやつって言われる方が多いぐらいだし……」
咲「竹井先輩、いい性格してますからね」
久「咲も言うようになったわねぇ……」
咲「竹井先輩に鍛えられてますからね」
久「なるほど、一理あるわね」
咲「それで納得しちゃうんですか」
咲とひとしきり笑って、落ち着いた頃に外から優希と和の話し声が聞こえてくる
久「お……ね、咲?」
咲「和ちゃんたち、来ましたね……なんですか?」
久「優希と和、どっちが先に入ってくると思う?」
咲「……こういうときは、いつも優希ちゃんが先頭切ってくる気がするんですけど」
久「そう? じゃあ私は和ね。 外れた方がケーキのいちご進呈ってことで」
咲「え、いちご賭けるんですか!? 外れたら大惨事じゃないですか!」
久「自信ないなら和に賭けてもいいわよ?」
咲「え、ちょ、ちょっと待ってください! えーと……」
慌てちゃって……かわいいんだから
別に受ける必要のない勝負だから適当にかわしちゃっていいのに……
しかも、こんなほとんど運の賭けに一生懸命考えちゃってるのがまたかわいらしい
私だって別に罠を仕込みようもないのに……
あ、今こっそりメールしたりすればある程度操作できちゃうか。やらないけど
咲「決めました! やっぱりここは優希ちゃんで!」
久「ほほう? その心は?」
咲「えっと、かなり悩んだんですよ。 和ちゃんけっこう子供っぽいところあるし……たぶんこのパーティー、一番楽しみにしてるんじゃないかってくらい」
久「たしかに……興味ありません! みたいな顔してるけど実はみんなで集まるの大好きよねー」
……それでも、たぶん一番楽しみにしてたのは私よね
なんたって一年生の頃からずっとやりたかったわけだし……
うん、みんなが麻雀部に入ってくれて本当によかった
咲「和ちゃんのまね似てますね……まあ、そういうことで和ちゃんが張り切って入ってくる可能性も充分あると思うんですよ。 それでも!」
久「それでも?」
咲「やっぱり優希ちゃんがいる以上あまり表に出さないんじゃないかと思うんですよね……」
久「和もかっこつけたいお年頃だもんね……パーティー行くのに走るなんて、すごくウキウキしてるみたいで恥ずかしい! って思ってそう」
咲「で、優希ちゃんですよ! 和ちゃんが表に出さなくても優希ちゃんってすごく回りに気を遣えるし、仲のいい和ちゃんのことなんてよぉくわかってますから!」
久「ふむふむ……つまり?」
咲「本当は走り出したいほどパーティーを楽しみにしている和ちゃん、それに気がついた優希ちゃんがダッシュ! それで和ちゃんが仕方なく走ってる、っていう状況を作ってあげる! これです!」
久「おぉ……なかなかの名推理ね」
咲「えへへ……そうですか?」
迷推理な気もするけど。 そこまでいろいろ考えなくてもいいんじゃないかしら……
ま、照れてる咲がかわいいからいっか
咲「私、自信ありますよ! いちごふたつ賭けてもいいくらいです!」
久「あらあら……いいわよ、咲が勝ったらいちごふたつあげるわ」
咲「やったぁ! ありがとうございます!」
久「ってまだ勝ってないでしょ……来るわよ……!」
和「おはようございま「ああぁぁぁぁ!!」な、なんですか!?」
久「あらあら……」
扉を開けたのは和だ。 それよりも咲の叫び声に驚いたけど
咲「ちょ、和ちゃんどれだけ楽しみだったの!? 全力疾走だったの!?」
和「え、な、なんの話ですか!? 咲さん、少し落ち着いてください!」
優希「おはー! 咲ちゃんどうした? なにかあったのか?」
咲「和ちゃん……恨むよ……」
和「わ、私恨まれるようなことをしましたか!?」
優希「なんだ? 修羅場か? あ、先輩! ケーキ持ってきたじょ! のどちゃんと作った自信作だじぇ!」
久「わぁ! 箱からしてかなり大きいじゃない! これは楽しみね!」
大きなケーキの箱を抱えた優希が部室に入ってくる
……咲と和はまだなにやら言い争ってるようだけど、面白いからしばらくほっときましょうかね
優希「京太郎と染谷先輩はいないんですか?」
久「ふたりでお料理中よ。須賀くんがタコス作るのに家庭科室借りたんだって」
優希「おお! できたてタコスが待ってるのか! 私たちも来たことだしちょっと声かけてくるじぇ!」
久「わかったわ、待ってるからつまみ食いはほどほどにね」
優希「はーい! いってきまーす!」
子どもは風の子……いや、子どもなんて言ったら怒られるか
まあ、なんにせよ元気なのはいいことだ
それに優希の元気は回りのみんなも元気にしてくれるし、風というよりは太陽ね
太陽の子……なんかすごく強そうね
まあいいや、なんか和も混乱至極な感じだしそろそろ助けてあげようかしらね
咲「和ちゃんにはがっかりだよ……」
和「なんでこんなにがっかりされてるんですか!? 意味がわかりませんよ!」
咲「私のいちごが!」
和「いちご!?」
咲「……うぅ」
和「な、なんで泣いてるんですか!? 説明してくれないとわかりませんよ!?」
久「はいはい、落ち着いて落ち着いて……」
咲「うぅ……約束は約束です。 私のいちごは……」
久「咲、さっきの状況をよく思い出してみなさい」
咲「……え?」
久「和が扉開けたけど、先に入ってきたのは優希よ?」
咲「……本当ですか!?」
和「……? それがどうかしたんでしょうか?」
久「優希がケーキ持ってて手が塞がってたから和が扉押さえてたでしょ?」
和「え、ええ……」
咲「……それじゃあ!」
久「咲の勝ちよー」
咲「やったぁ! ありがとうございます! 和ちゃんごめん! ありがとう!」
和「は、はぁ……?」
まあ、勝ち負けとか別にどっちでもいいんだけど……
和「……結局、どういうことなんですか?」
久「ああ、それは……」
和「……私、悪くないですよね?」
咲「本当にありがとう! 和ちゃんと友達でよかったよ!」
和「今、すっごく友情が揺らいでいるんですが……」
久「っていうか、そんなにいちご好きだったの?」
咲「大好きです! それに、昔からあまり食べれなくて……」
和「? 時期さえ合えばいつでも食べられるじゃないですか」
咲「お姉ちゃんが大好きで……気づいたら全部なくなってたり……」
久「あらら」
咲「お姉ちゃん、果物でもおかしでも、なんでもよく食べて……」
和「争奪戦ですか」
咲「おかしとか、デザートとかそういうのは昔からだいたいお姉ちゃんが食べちゃって……すっごい食い意地張ってるんですよ」
……チャンピオン、だいぶイメージ変わるわね
意外とけっこう子どもっぽい……いや、咲もほっぺを膨らませて怒りを表現してるあたり似た者姉妹なのかしらね
和「食い意地といえば、ケーキ作りのとき、ゆーきがそこら中のものをつまみ食いするから大変でしたよ……」
久「優希らしいわねー……料理、できるんじゃなかったっけ?」
咲「そのはずですけど……?」
和「邪魔にならない、失敗しない程度にちょこちょこ手を出すんですよ! しかも、ある程度準備ができたら隣でパパっとタコス作っちゃいますし……」
久「そういうとこだけ要領いいわねぇ……勉強の方もそれくらいビシッとできたらいいのに」
咲「まあそこも優希ちゃんらしいって感じしますけどね……」
和「すごく手際いいんですよ……ゆーきもタコスかなりの量を作って持ってきたと思うんですが、全部食べきれますかね? 須賀くんも作っているんでしょう?」
久「ま、タコスはあまることないでしょ。 優希が全部食べるわよ」
和「……それもそうですね」
まこ「遅くなってすまんのう」
優希「お料理とタコス、持ってきたじぇ!」
京太郎「おっす和、ケーキおつかれさん」
和「おはようございます、須賀くん、染谷先輩。 良くできてると思うので期待してくださいね」
まこ「和がそこまでいうなら期待できるのう……にしても」
久「どうしたの?」
まこ「ケーキや買ってきたおかしはともかく、タコスと玉子焼きはやっぱりクリスマスっぽくないのう……」
京太郎「ローストチキン? とか買ってきた方がそれっぽかったかもしれませんね」
咲「タコスと玉子焼きが並んでるあたりすごくうちっぽいと思うけどね……」
久「そうね、まさしく清澄高校麻雀部って感じ?」
和「なんだかゆーきが要素の半分ぐらいを占めてる気がしますが……」
優希「のどちゃんは不服か? それじゃあパイでも焼いてくればよかったじぇ」
和「は? パイ……ああ、麻雀牌とかけて……」
優希「いや、のどちゃんといえばそのおっきなパイ「な、そ、それは関係ないでしょうっ!?」
咲「……京ちゃん、顔」
京太郎「……ん? なんだ?」
咲「すごくだらしない顔してる」
久「やらしーんだ」
京太郎「いやいや! 気のせいですよ! ねえ? 染谷先輩!」
まこ「……ははっ」
京太郎「フォローしてくださいよ!?」
まこ「うん、今のは無理じゃな」
優希「まったく京太郎は……」
和「…………」
京太郎「いや! ほんと違うんだって! 睨まないでくれよ!!」
京太郎「ほら! せっかくみんな集まったんだし始めましょうよ! ケーキもタコスも早く食べた方がおいしいし!」
優希「む! それはたしかにそうだな!」
咲「それじゃあ飲み物を……」
まこ「紙コップ、奥の袋に入っとるよ」
久「ほら、せっかくだから楽しくやりましょう? 言っても仕方ないしね」
和「……まあ、せっかくのパーティーですからね」
久「昨日は楽しみで眠れなかったでしょ?」
和「そ、そんなことありませんっ! ぐっすり眠れました!」
久「……和、ちゃんと寝ないと体に悪いわよ?」
和「だ、だから! 本当にちゃんと眠れましたから! 大丈夫です!」
優希「私は楽しみすぎて朝5時には目が覚めちゃったけどな!」
まこ「その時間じゃまだ真っ暗じゃろ?」
優希「やることなかったからのどちゃんとメールしてたじょ」
久「……へー?」
和「ね、眠れなかったとかではなく! ちょっと早起きしてただけですから! 本当に!」
咲「別に隠そうとしなくても和ちゃんが楽しみにしてたのバレバレだよ?」
京太郎「そもそも隠せてないよな。 ここ最近ウキウキしっぱなしで」
まこ「みんなも楽しみにしとったし別に照れんでもええのに」
和「……まあ、楽しみにしてましたけど、別にそんな……ちょっと!ちょっとだけですから!」
まこ「まあ、楽しみでたまらない子が3人もおるしはじめるかのう」
和「べ、別にたまらないってほどでは!」
優希「辛抱たまらんじぇ! タコスもケーキも絶対おいしいじょ!」
京太郎「……3人?」
咲「……竹井先輩、さっきからそわそわしすぎです」
久「え、いや、まあ、許容範囲でしょ? 夜はちゃんと寝てきたし?」
和「いつまで言ってるんですか!? もういいでしょう!?」
咲「ふふ、飲み物どうぞっ」
久「ありがとっ! じゃあ部長から挨拶どうぞー」
まこ「ん? えー、メリークリスマス! かんぱーい!」
「「「「「かんぱーい!!」」」」」
久「……もっとこう、なんかないの?」
まこ「長ったらしい挨拶はいらんじゃろ?」
和「ケーキ出しますよ?」
咲「あ、私が切るよ……わぁ! すっごくおいしそう! いちごもたくさん乗ってる!」
優希「奮発してみたじぇ! 味見もバッチリだじょ!」
京太郎「あ、手伝いって味見係だったのか」
優希「失礼な! ちゃんとのどちゃんとの共同作業だじょ?」
和「ゆーきはこう見えてタコス以外もちゃんとできる子ですよ?」
咲「そうだよ、優希ちゃん意外とできるんだからね?」
京太郎「マジでかー……そりゃあ驚いた……」
優希「……そんなに意外だ意外だって言わなくてもいいと思うじぇ?」
久「みんな相変わらず仲いいわねー」
まこ「うらやましい限りじゃのう」
久「ほんとにねー」
同学年の部活の仲間がいるってのは本当に羨ましいわよね……
私の同期はみんな他所の部活に行っちゃったし……まあ先輩たちもやる気なかったし、ろくに活動できる状態じゃなかったから仕方ないっちゃ仕方なかったんだけど
風越みたいなでっかいところと比べたら少ないかもしれないけど、卓を囲めるだけの人数がいるっていうのは私の時にはなかったし本当に羨ましいわー
咲「……いやいや」
京太郎「……どの口が言ってるんですか」
久「え? なによ?」
和「……それ、なにしてるんですか?」
まこ「ん? 久が玉子焼きほしいって言うから……」
久「まこが須賀くんのタコス食べたいって言うから……」
優希「一言も言ってなかったじょ?」
まこ「……そうだったかのう?」
久「んっふふ……まあ、私とまこもけっこう付き合い長いし? 阿吽の呼吸ってやつ?」
優希「付き合いの長さならこっちだって負けてないじょ! のどちゃん!」
和「はい、ゆーき! タコスですね!」
優希「見たか! この完璧なコンビネーション! 友情パワーだじぇ!」
和「どうですか! 」
咲「いやいや……」
京太郎「どうですか! じゃないだろ……」
優希「む、何が言いたい! 私たちの友情に文句でもあるのか!?」
咲「いや、その……うん、今のは私もわかったよ」
優希「おぉ! さすがだな咲ちゃん! まあ私たちは春からの付き合いとはいえ濃密な時間を過ごした親友だしな!」
咲「し、しん……えへへ、そうだね!」
京太郎「えぇ……? つーかそんなん俺でもわかったわ」
優希「マジでか! お前私のこと好きすぎだろ……!」
京太郎「ちげぇよ! なんでそうなるんだよ!!」
咲「照れなくてもいいよ、優希ちゃんかわいいし……私は応援するから!」
和「ゆーきを泣かせたら承知しませんよ?」
京太郎「だからそうじゃないだろ!? だいたいこいつがタコスを求めてない時があるのかよ!?」
咲「!!」
和「!!」
京太郎「なんでハッとしてんだよ!? 咲はその話しようとしてただろうがよ!」
優希「はぁ……わかったわかった。 デートぐらい付き合ってやるじょ?」
京太郎「なにひとつわかってねぇじゃねぇか! つーかなんで上から言ってくんだよ!?」
優希「デート、しよ?」
京太郎「……っ!」
優希「お? ときめいたね? 今ときめいちゃったね?」
京太郎「は!? んなわけねーし!! せめてそのまな板を何とかしてから……!」
咲「は?」
優希「お前は全然まな板の凄さをわかってない」
京太郎「真顔になんなよ! ごめんなさい!」
和「はぁ……須賀くん、女性にそういうことをいうのは大変失礼にあたります。 セクハラです」
京太郎「はい、すみません……」
咲「和ちゃんにフォローされるのも辛い……!」
優希「うぅ……羨ましくなんかないじょ! 悔しくなんかないじょ!」
まこ「……ほんとに仲いいのう」
久「ねー」
まったく……須賀くんも余計なこと言うのやめれば彼女のひとりやふたりぐらいできるかもしれないのに……
あ、ふたりもいたらダメか
ほっとくといつまでもやってそうだし、助け船ぐらい出してあげましょうかね
久「……咲、いちごあげるわ。 さっき約束したし」
咲「本当ですか!? やったぁ!」
まこ「なんじゃ、咲はいちご好きだったんか」
咲「はい! 大好きです!」
優希「それじゃあ私のも少し分けてあげるじぇ!」
咲「ありがとう優希ちゃん! それじゃあタコスと交換ね!」
優希「やったじぇ! ありがとう咲ちゃん!」
和「ふふ、たくさんありますから、そんなに焦って食べなくても大丈夫ですよ?」
まこ「それじゃあ……ほれ、わしのも分けてやるわ」
咲「染谷先輩! ありがとうございます!」
久「え、ずるい! 私もほしい!」
京太郎「……いや、咲にいちごあげてたじゃないですか」
久「だって咲ばっかりもらってずるいじゃないの!」
和「子どもですか……」
まこ「めんどくさい子じゃのう……ほれ」
久「あむっ! ……んへへ、おいしー」
まこ「うん、スポンジもよくふくらんどるしクリームもよくできとるし……」
和「がんばりました!」
優希「今日のためにたくさん練習もしたからな!」
和「ゆーき! それは内緒だって言ったじゃないですか!」
久「ふふ、失敗できないもんねぇ」
京太郎「いや、でもほんとおいしいぜこれ! な、咲!」
咲「…………」
優希「咲ちゃんは今至福の時間を過ごしているから邪魔しちゃ悪いじぇ」
京太郎「……おう」
咲「んふふ……」
まこ「それにしても……」
久「どしたの?」
まこ「優希はよくタコスとケーキを交互に食べれるのう……」
優希「それは、味が変わるから延々と食べ続けられるという……」
京太郎「いやいやそこじゃないだろ……」
久「……わからなくも……ない、かな?」
和「え、いけちゃうんですか?」
久「どっちもおいしいから!」
優希「うん! あ、もちろん染谷先輩の玉子焼きもいただいてるじぇ!」
久「ほんとおいしいわよねこれ!」
和「あ、私も食べたいです! 取っておいてくださいよ?」
まこ「……玉子焼きなんていつでも作れるんじゃし、ケーキの方を一生懸命食べればええと思うんじゃがなぁ」
京太郎「ケーキはもちろん特別感ありますけど、玉子焼きほんとおいしいっすよ?」
まこ「そう言ってくれるのはうれしいがのう……優希と和がせっかくケーキ作ってきてくれたんじゃし……」
和「こっちからすれば染谷先輩がせっかく作ってくれたものですから!」
優希「その通りだじぇ!」
まこ「……うん、ケーキありがとな。 タコスもおいしいけぇね」
京太郎「うす!」
優希「京太郎! ちょっと褒められたぐらいで慢心するなよ? 私からすればまだまだ精進が足らんじぇ!」
京太郎「へっ! 言われなくても! そのうちお前が感動して声がでないぐらいのタコス作ってやるっつーの!」
優希「ふっ、口に出した以上しっかりやれよ? 期待しといてやるじぇ」
咲「ケーキ、もう少しもらってもいいかな?」
京太郎「うぉ!? 急に出てくんなよ……つーかまだ食べてたのか……」
和「けっこう大きめに作ってきましたから」
久「好きなだけ食べていいわよ~」
咲「いただきまーす!」
まこ「咲のこういう姿は珍しいのう……ほらほら、落ち着いて食べんと……クリームついとるよ」
咲「ふぁい?」
和「あ、今取ってあげますから……」
京太郎「きれいに食べろよ……どっかの誰かじゃあるまいし」
優希「何故こっちを見るのか? 言っておくが私ほどきれいにタコスを食すやつはそうはいないじょ!」
京太郎「……いや、なんかイメージ的に?」
優希「いったい私をなんだと思っているんだ!」
久「優希の食べっぷりは豪快だからねぇ」
まこ「あれだけおいしそうに食べてもらえるんなら作る側としちゃうれしいがのう」
和「そうですね、今日も頑張ってきた甲斐がありました!」
咲「ほんとにおいしいよー」
優希「って咲ちゃんかなり食べたな!? 私もタコスばっかり食べてる場合じゃないじぇ!」
京太郎「お前らな……まあいいや、俺の分もういいから食っていいぞ。 そこそこ食べたしさ」
咲「ありがと京ちゃん!」
優希「うむ! よくできたやつだ!」
久「あらいいの? せっかくの和の手作りなのに」
京太郎「あいつらほんとおいしそうに食べるんで……それにあと2年は清澄に通うわけですし、機会はまたありますよ」
和「よろしかったら、またケーキ焼きますよ。 2月には須賀くんのお誕生日もありますし」
京太郎「マジで!? よっしゃ! サンキュー和!」
まこ「その時はいちご乗っとらんやつにした方がええかもな」
久「咲がほとんど食べちゃうからねー」
和「それにしても、須賀くんもケーキが好きだったんですね……あんなに喜んでいただけるとは思いませんでした」
久「……そういうことじゃないと思うけど」
須賀くん、最近は仲よく友だちやってるみたいだけど……正直、和は脈なしだと思うのよねー
咲……も、さっきの感じだと無理かな? 優希ならワンチャンある? まこは……どうだろう、普通にかわいい後輩かな……
……うん、部内じゃそういうのは当分無さそうね
つまんないなー……誰か恋人でも作ってくれれば数ヵ月はそれをネタにして遊べるのに……
優希「みんな、そろそろケーキなくなっちゃうじぇー?」
まこ「わしももうええぞ。 十分いただいたけぇね」
和「そうですか? 竹井先輩は……」
久「それじゃあ少しもらおうかしらね……咲、優希、いちごはあげるわよー」
咲「わーい!」
優希「ありがとうございまーす!」
ちょっと目を離した隙に、けっこうな量の食べ物が消費されてしまったようだ
……っていうかほんとにすごい勢いで食べたわね
いや、6人もいればこのペースでもおかしくない……のかな? なんかほとんど咲と優希が食べちゃった気がするけど
久「……よし! 食べ物の方もほとんど食べちゃったし……」
まこ「ん? もうはじめるんか?」
久「やらいでか! 一人一品持ってきたわね? プレゼント交換よ!」
まこ「別に、普通に用意してきて交換すればよかったと思うんじゃが……」
久「パーティーだから! イベントっぽくやるの! はい、これくじね! 引いたくじに名前が書いてあるからその相手からもらうのよ?」
京太郎「自分の引いた時は?」
久「引き直せばいいでしょ? まあ何回かやり直すかもだけど……」
京太郎「ま、そうっすね」
咲「みんな、どんなの準備してきたの?」
和「こういう時は開けてからのお楽しみですよ!」
まこ「ふふ、和も楽しみにしとったようじゃな……わし、あんまり自信ないんじゃが……」
優希「こういうのは気持ちがこもってればいいんだじぇ!」
久「優希の言う通り! ちなみに私は自信あるわよ? 今回はかなりいいものを用意してきたからね! 須賀くんなんか大喜びだと思うわよ?」
京太郎「俺狙いっすか? いやーうれしいっすね……気合入れて引かないと!」
久「はい! じゃあ順番に引いてねー! 私は最後でいいから!」
優希「それじゃあ失礼するじょ!」
みんなで順番にくじを引く……幸運にもやり直しをする必要はなかった
久「じゃあ順番にプレゼント開封タイムいきましょうか!」
京太郎「あ、俺竹井先輩の引きました!」
久「え」
京太郎「え?」
久「……それじゃあ須賀くんから! えっと……はい! 衣装だから、着替えてきてね!」
京太郎「衣装? 了解っす……じゃあちょっと隣で着替えてきますね」
まこ「……久?」
久「あー……うん、問題ないわよ? 」
京太郎「……いぇーい! 着替えて来たぞー!!」
優希「……おぅ」
咲「……うわぁ」
まこ「……まあ、くじの結果じゃし……な?」
和「……に、似合ってますよ?」
京太郎「……みんなそのテンションやめてくれませんかね……あと和、それうれしくない」
久「……須賀くん、持ってるわね。 まさか自分で引いちゃうなんて……」
せっかくのミニスカサンタ衣装が……
京太郎「……いやー! スカートって足元スースーして寒いっすね! 女子は大変だなー!」
あ、やり直した
咲「っていうか京ちゃん、おへそ出てるよ?」
京太郎「サイズ合わなかったんだよ!」
久「女の子用だし……っていうか須賀くん以外が着る予定だったんだけど」
京太郎「ほんとにね! 俺以外が引いてればうれしかったんですけどね!」
優希「……うん、これはこれでなかなか面白いじょ? 元気出せ京太郎!」
京太郎「あ、おい! 写メ撮んなって!」
優希「大丈夫大丈夫!拡散したりしないから! 」
咲「優希ちゃんあとで送ってよ」
優希「まかせとけ! 咲ちゃん、画像添付とかわかるのか?」
咲「まだよくわかんないから練習しようと思って……」
京太郎「早速かよ!? 咲もあとで使い方教えてやるからやめろ!」
咲「大丈夫だよ、ちょっと嫁ちゃんとかにメールしてみるだけだから!」
京太郎「絶対Twitterとかで拡散されるからやめろ! やめてください!」
和「……須賀くん、背も高いしなかなか不気味ですね。 衣装はかわいいんですが……」
まこ「ちゃんと着てくる辺り偉いのう……にしてもサンタか、クリスマスじゃし店の衣装にでも……」
……まこも和もけっこう好きよね、コスプレ
コスプレというか、かわいい系の衣装が好きなんだろうけど
久「……まあ、次いっちゃいましょうか!」
京太郎「いやいや! もう少しいじってくれないと寂しいんすけど」
久「だってほら、思った以上にキツかったから」
京太郎「そりゃ女子の平均サイズって咲ぐらいですよね!? 胸は平均以下だけど! そりゃいろいろキツいっすよ!」
咲「あ、今優希ちゃんにもらった写メ転送したから」
京太郎「なんでこんな時だけまともに機械操れんだよぉ!?」
久「じゃあ、まこは?」
まこ「わしか? 咲のじゃな」
咲「あ、私のは……」
京太郎「どうせ本だろ?」
咲「うるさいよ! ……まあ、そうなんだけど」
咲が鞄の中から大きめの袋を取り出す……けっこう入ってるわね
咲「えっとですね、だいたい外国のミステリーなんですけど……」
京太郎「あ、その話絶対長くなるからパスで」
咲「ちょっと京ちゃん!?」
まこ「わしは構わんのじゃが……それじゃあ、
あとで話聞かせてもらうかのう? なんならメールでもええよ? 練習ついでにな」
咲「そうですか? まあ、たしかに話始めたら止まらないかもしれないですし……」
まこ「ふふ、楽しみにしとくけぇ……冬休みだから時間もあるしじっくり読むわ」
咲「はい!」
和「……というか咲さん、インハイ終わった頃から使ってますよね? スマートフォン」
咲「……その、ちょっと難しくって……まだよくわからないというか……」
優希「今どき咲ちゃんみたいな子も珍しいじぇ……」
咲「電話とメール読むのはできるようになったから!」
久「読むのはって……いや、メール読めるようになっただけ進歩してるわね」
咲「はい! 日々進歩してますから!」
京太郎「その進歩の速度じゃ現代技術にはいつになっても追い付けなそうだな」
咲「だ、大丈夫だよ! たぶん……」
和「咲さんもネット麻雀打てるようになりましたし、きっと大丈夫ですよ!」
京太郎「成績の方は散々だけどな……」
咲「京ちゃん! いちいち余計なこと言わないでよ!」
……ほんとこの子たち仲いいわねぇ
久「和は誰のだったの?」
和「あ、はい! 私はゆーきのでした!」
優希「お、のどちゃんか! 大当たりだじぇ! ちょっと待って……大きいから……はい!」
優希、荷物多いと思ったらリュックの中身が1つまるごとプレゼントだったのね……
取り出した包みはきれいにラッピングされている上に、かなり大きい
和「それじゃあ、開けますね……わぁ!こ、これ!」
優希「超特大! エトペンキングサイズだじぇ!」
まこ「かわいいのう」
京太郎「でっかいなーこれ……」
久「いつものエトペンの倍くらいある? すごいわねー」
咲「これだけ大きいと麻雀打つときには持てなそうだね」
和「わぁ……わぁ! 部屋に飾ります!」
優希「そうしてくれるとうれしいじぇ~」
京太郎「……これ完全に和狙い撃ちだろ? 個別で渡せばよかったんじゃねぇの?」
優希「別の誰かにいったらそれはそれで物欲しそうな顔をしながらそわそわするのどちゃんが見れたかなーって」
咲「なるほど……」
京太郎「絶対かわいい」
和「な、そんな顔しませんよ! みんなもなに納得してるんですか!?」
優希「まあぶっちゃけもう一体家に確保してあるからその時はのどちゃんに改めて渡そうかと……」
和「……そ、そうなんですか」
まこ「……そわそわしとるのう」
久「もう一体ほしいのね」
和「ち、ちちちがいますよ!」
優希「それじゃあ咲ちゃんにあげよっかなー」
咲「ほんとう? ありがとう優希ちゃん!」
和「あ……」
咲「どうしたの和ちゃん?」
和「……い、いえ、別になにも」
優希「あーでも、もともとのどちゃんにあげようと思って準備したやつだし……」
和「!」
優希「でものどちゃんいらないって言ってるしやっぱり咲ちゃんに……」
和「あぅ……」
優希「でもでも、やっぱりのどちゃんに……」
和「!」
咲「かわいい」
京太郎「かわいい」
まこ「和もまだまだ子どもじゃねぇ……」
久「和は本当にかわいいんだけど……須賀くん不気味だからちょっと視界に入らないでよ」
京太郎「あんたが着せたんでしょうが!」
久「はいはい、ごめんなさいねー」
京太郎「扱い雑ですね!?」
久「大丈夫よ!忘れた頃に画像ばらまくから!」
優希「画像送ったじぇ~」
京太郎「勘弁してくれよ!」
久「あ、咲のは?」
咲「私は和ちゃんのでしたよー」
和「私のも少し大きいのですが……どうぞ」
咲「あ、セアミィだ!」
久「キングサイズセアミィ……」
まこ「あんたら息ぴったりじゃなあ」
和「被っちゃいました」
優希「親友の面目躍如だじぇ! それにこれで咲ちゃんとお揃いだじぇ~」
咲「えへへ、そうだね!」
京太郎「……いや、人数割合的に仕方ないけどさ、俺に当たったらさ……」
優希「かわいいし当たってもうれしいだろ?」
和「それに、割合的には須賀くんのとこに行く確率は低いですし……」
久「そうね、須賀くんに当たる確率は低いのに……」
京太郎「いやーほんとですよねーおかしいなー」
まこ「……当分使いどころもないじゃろうし、その衣装引き取ったるよ? クリスマスシーズンじゃから使えるし……」
久「やっぱり着たかったのね……」
京太郎「お願いします。 つか先輩が着るんですか? Roof-topまで見に行こうかな……」
まこ「そんなに期待されても……まあお客さんは歓迎じゃ。 なんなら手伝ってくれても構わんぞ?」
咲「和ちゃん、ちょっと頑張ったけどやっぱり腰に巻くにはサイズが大きすぎて……」
和「そのサイズだと背負ったりした方がいいんですかね……?」
優希「二人で巻けば!」
久「二人でマフラー的な?」
まこ「それじゃあまともに動けんじゃろ……」
咲「一回やってみよっか?」
和「やってみましょう!」
京太郎「さすがに動きにくいだろ……背中合わせじゃないと無理だろ? 腰回りはともかく……」
咲「そりゃあ動きにくいけど……あ! ちょっとぉ!」
和「……須賀くん! どこ見て言ってるんですか!?」
久「ほんと余計なことばっか言うわねぇ……」
優希「まあのどちゃんのおっぱいの話はともかく!」
和「ゆーき!」
久「あ、優希のは……」
優希「京太郎のだじぇ!」
京太郎「お、優希にいったか……ハズレではないと思うんだけどさ……」
優希「ん? お、ゲームソフトか?」
京太郎「おう、この前出た現実のプロ雀士も登場する麻雀ゲームで……」
久「え、それけっこう高いんじゃないの!?」
京太郎「いや、俺自分の買ったけど回りのダチ麻雀打つやついないんで……」
まこ「対戦相手ほしかったんか」
京太郎「麻雀ならみんな打つでしょう? それにゲームなら勝てるかもしれないし……」
咲「志低いなぁ……」
和「……リアルの麻雀も頑張ってくださいね」
京太郎「いや、頑張るけど! だってみんな強すぎなんだよ!」
優希「まあゲームでも麻雀の特訓にはなるしな! いくらでも付き合ってやるじょ! ……ただ」
京太郎「ん? どうした?」
優希「最新のゲーム機とか持ってないじょ……」
京太郎「あっ」
咲「京ちゃんはさ、いちいちどっか足りないよね……」
久「そこら辺のつめの甘さが……ね」
まこ「な」
京太郎「うわ、ちょ、言いたいことわかっちゃうんでやめてくださいよほんと……なんで今日こんなダメージを受けてんだろ……」
優希「まあ今少し余裕あるし今度買ってくるじぇ!」
京太郎「……なんかすまん」
優希「なぜ謝るのか? 普通にうれしいじょ? 毎日たくさん打とうな!」
京太郎「……おう!」
和「……私も買ってきましょうかね。 麻雀は四人で打つものですし」
優希「どうした? のどちゃんやきもちか?」
京太郎「!」
和「そ、そんなことありませんよ! ゆーきが取られて寂しいとかじゃないですし!」
京太郎「……うん、知ってた」
咲「……みんなでやるなら私も買ってこようかな」
まこ「……咲、ゲームなんかできるんか?」
咲「……ちょっとわかんないですけど」
久「ネト麻できるようになってきたし平気じゃない?」
久「ふふ……それじゃあ私はまこのね!」
まこ「そんなに期待されると困るんじゃがなあ……手間こそかけたが金はかけとらんし……」
咲「ふふ、さっき優希ちゃんが言ってましたけど大切なのは気持ちですよ?」
まこ「ん……じゃあ、ほれ」
久「あ、マフラーだ……ありがとー! この時期だと普通に実用的だしうれしいわ!」
京太郎「……え、手間かけたってもしかして手編みっすか!? 伝説の女子の手編みマフラーっすか!?」
まこ「伝説かどうかは知らんが……まあ」
優希「染谷先輩すごいじょ! 女子力の塊!」
和「編み物ですか……私はやったことがないのですが……」
咲「私は昔やったことあるけど、あまり得意じゃないかな……」
まこ「ちょっと時間あったんで挑戦してみたんじゃがな? あ、ダメそうなら無理に使わんでええからな?」
久「使うに決まってんでしょ! あとまこは早くうちに嫁に来て!」
まこ「わしはRoof-top続けたいんであんたが嫁に来てくれんかのう」
久「いやいや! 嫁はまこでしょ?」
和「竹井先輩が婿入りすればいいのでは?」
優希「のどちゃん天才だな!」
咲「竹井先輩が旦那様ならすごい稼いできてくれそうだよねー」
京太郎「……どこから突っ込めばいいんすかね?」
優希「聞いた話だとiPS細胞というもので同性の間でも子どもが作れるらしいじぇ?」
和「ゆーき、けっこう前にした話なのに覚えてたんですね……」
優希「のどちゃんとした話だからよーく覚えてるじょ?」
和「ゆーき……!」
京太郎「いや、友情の確認をするのはいいんだけどさ……そういう話じゃないよな?」
咲「みんな仲よしでいいよねー」
京太郎「……ああ、うん……もうそれでいいや」
もらったマフラーを早速巻いてみる
こう、私はネタに走って……しかも須賀くんが当たるとか言うネタ色満開になっちゃったけど……やっぱりこういう王道系? いいわよね!
まこ「……どうじゃろうか?」
久「あったかい! やっぱり? こう、気持ちがこもってるから?」
まこ「……そういう風に言われると恥ずかしいんじゃが」
久「まこの愛であったかい!」
まこ「あんたちょっと黙ってくれんかのう……」
久「照れんな照れんな!」
京太郎「……俺は竹井先輩の愛でくっそ寒いんですけどね」
久「あ、そろそろ飽きたし着替えてきていいわよ~」
京太郎「雑な扱いほんときっつい……」
咲「けっこうおもしろかったよ?」
優希「2ヶ月に1回ぐらいネタにしてやるじょ?」
京太郎「だから忘れた頃に引っ張り出していじりにいくスタンスやめてくんない!?」
和「とりあえず着替えてきたらどうですか? 風邪引いちゃいますよ?」
京太郎「和は優しいなぁ……」
和「気にしないでください。 だんだん視覚的にキツくなってきただけですから」
京太郎「……和はそういうことはっきり言うよな」
とぼとぼと着替えに出ていく須賀くんの背を見送る
もうちょっといじってあげてもよかったかしら?
まああの衣装もまこが再利用してくれるみたいだし?
……うん、あとで目の保養になるみたいだから多少の雑な扱いも問題ないわね!
久「うーん……メインイベントは終わったし、食べ物もほとんど食べちゃったけどどうする? 少し打ってく?」
まこ「咲はこのあと東京じゃろ? 時間大丈夫かのう?」
咲「えと……一局打つには微妙かも……」
和「お姉さんと会うのは久しぶりですよね? 大丈夫ですか?」
咲「大丈夫……もう喧嘩したりしないよ」
久「年明けまで会えないんでしょ? 咲分補充しとかないと!」
咲「わわっ! ちょ、竹井先輩!?」
久「ハグの刑に処す~」
優希「了解だじぇ! 咲ちゃん覚悟っ!」
和「……わ、私もっ!」
咲「ちょ、うわっ……もう、苦しいよ~」
京太郎「ただいま戻り……なにやってんすか? おしくらまんじゅう?」
まこ「ハグの刑じゃと」
京太郎「……じゃあ俺も」
久「須賀くんは下心あるからだぁ~めぇ~」
優希「京太郎やらし~」
京太郎「なんだよ!もういいよ! ……染谷先輩、ハグしません? 」
まこ「ん? そうじゃな……遠慮しとくわ」
京太郎「……女子ばっかだと、こう、ちょっと寂しい時もありますよね……」
久「逆に考えるのよ! 今ここにいるのがみんな男子だったとしたら……」
京太郎「……男だらけでくっつくとかキモいだけですからね! いやーみんな女子でよかった!」
久「……よし、咲分も補充したことだし! 名残惜しいけど今日は解散にしましょうかね……」
咲「すみません、せっかくのクリスマスなのに……」
まこ「せっかくのクリスマスなんじゃから、楽しんできんさい」
和「そうですよ! 久しぶりに家族でゆっくり過ごせるんですから……」
優希「のどちゃんもな! 二人とものんびりしてくるといいじぇ!」
京太郎「……ま、気楽にな」
咲「……うん、ありがと」
まこ「んじゃ、さっさと片すとするかのう」
優希「むしろ咲ちゃんものどちゃんも先に帰ってもいいじょ? おかたづけぐらいこっちでささっとできちゃうじぇ?」
和「そんな、後片づけだけおまかせするなんてできませんよ」
咲「そうだよ。 みんなでやればすぐに終わるから」
優希「そうか? どうせ京太郎とか暇だし……」
京太郎「うるせーよ! お前だってこのあと予定ないだろーが!」
優希「ん? デートするか?」
京太郎「しねぇよ!」
久「あーあ、もったいないわね……せっかくのクリスマスデートのチャンスが……」
まこ「ひとつチャンス潰したのう」
和「その調子だから……」
咲「ねー……まあ京ちゃんにそういうのはもう期待しない方が……」
京太郎「そんなみんなで言わなくてもいいじゃんかよ……」
優希「でも実際暇なんだよなー……先輩たちはどうするんですか?」
久「んー……一応受験生だし、お母さんにケーキでも買って帰ろうかしらね」
まこ「珍しく真面目じゃな? わしは帰って雀荘の方に出るかのう」
優希「それじゃあ、私もRoof-topの方行ってもいいですか? お手伝いするんで」
まこ「うん、そりゃあ助かるわ」
京太郎「……俺も行っていいすか? どうせ暇なんで……」
まこ「こっちとしては大助かりじゃ」
優希「なんだ? やっぱり私と離れるのが寂しいのか?」
京太郎「どうしてそうなるんだよ!」
和「私はゆーきと別れるの寂しいです!」
優希「のどちゃーん!」
咲「相変わらず仲いいねー」
久「うらやましいわー」
まこ「はいはい、そこらへんにしといてなー……鍵閉めるけぇ、荷物持ってな」
京太郎「うぃーす」
まこ「それじゃあ、今日は解散! もう真冬じゃけえ、体調には気を付けてな」
咲「お疲れさまでした……私は次が年明けになるので……よいお年を」
和「はい、咲さんも」
優希「咲ちゃんまたね! おみやげよろしく!」
京太郎「こらこら……東京土産ってなにがあるんだ?」
咲「京ちゃんももらう気満々じゃん……私も特に思い付かないし、ばな奈でいい?」
久「インハイの時も買って帰ったわねぇ」
優希「あれはなかなかおいしかったじょ!」
まこ「そんなん気にせんでも適当でええよ……ほんじゃ、いいお年をな」
咲「またね!」
和「さようなら!」
久「気をつけてねー」
京太郎「竹井先輩も、勉強の方頑張ってくださいね」
優希「勉強の方はお手伝いできないけどそれ以外なら力になるじぇ!」
久「ありがと! まかせてちょうだい!」
まこ「あんたも風邪引かんように気ぃつけてな」
久「大丈夫よ、まこにもらったマフラーもあるし」
まこ「……そうかい」
久「ふふっ、だから照れんなってー……あ、あと年明け! みんなで初詣行きましょ?」
京太郎「咲に合わせて、っすね」
優希「合点承知だじぇ!」
久「じゃ、私は一回駅の方まで出るから……」
まこ「ん、またな」
久「うん、またね!」
――――――
みんなと別れて、駅前のケーキ屋に向かう
一人になると少し寂しいけど、こればっかりは仕方ない
咲も和も家族で過ごすんだから、邪魔しちゃいけない
まこと優希と須賀くんはRoof-topかあ……私も行きたかったけど、今回ばかりは失敗するわけにもいかないしなぁ……
勉強しないで受験に挑むのはさすがに悪待ちじゃあ済まないもんね
お母さんにこれ以上負担かけたくないし、受験はしっかり通らないと……
ケーキ……とりあえず、お母さんの好きなおっきいモンブランを買って、私は……さっき食べたしいいかしら? でも、私が食べないんじゃお母さんも気を遣うかな? ……いちごのケーキは食べちゃったし、チョコケーキにしようかな
久「…………」
三年前は、この時期になってもまだいろいろ消化しきれてなくって鬱屈した気分だったっけ
二年前は、気持ちは落ち着いたけど、誰もいない旧校舎の部室に一人……寂しかった
去年は、まこがいて、内木くんや彩乃、菜月が一緒だった
今年は……和と優希が来て、須賀くんがやって来て、咲を連れてきて……美穂子やゆみとも会えたし、夢だったインターハイでてっぺんも取って……
久「……人生で一番の年だったわね!」
……いや、まだクリスマスだし一年を振り返るには早いかな?
久「…………」
だいぶ、冷え込んできた
まこにもらったマフラーを少し強めに巻き直す
久「……あったかいなぁ」
まこがいて、和と優希がいて、須賀くんも咲も一緒で……今年は、最高の仲間たちと過ごすことができた
久「来年も……その先も、みんなと一緒にいられたら……」
……いいや、こういうのは気持ち次第よね
私がみんなと会おうと思えば、いつだって会いに行けるんだから……
久「これからも、大好きなみんなと一緒に――」
カン!
仲良し清澄やりたかっただけ。いえすたんイェイ~
乙 ほっこりした
良かった
乙!
みんな仲良しな清澄は最高だ!
良かった乙乙
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