女騎士「私の所に入団した男は有能な部下である。」(100)

自己満足ssです。

いろいろとおかしいかもしれませんが、それでもという方は

閲覧をどうぞ。

女騎士「難点を挙げるとすれば、魔法を使えないというところだ。」

女騎士「私の団では魔法を使えるのが普通であり決まりだが・・・。」

男騎士「ただいま戻りました。」

女騎士「ん、早いな、もう終わったのか?」

男騎士「はい、相手は下級の魔物でした。」

「いやー、すごいね!まさか魔物相手に素手で挑んで退治してくれたよ!これで魔法が使えればもっと強くなれるだろうにね。」

女騎士「そう、彼は魔法が使えない。それがとても惜しい、だが相変わらずの成果だ。」

男騎士「それでは報酬の方を。」

「おっと、そうだった、本当にありがとね。」

男騎士「ありがとうございます。またのお越しをお待ちしています。」

女騎士「仕事終わったついでに飲みに行くか?」

男騎士「はい、是非。」



女騎士「入団して何年だ?」

男騎士「まだ1年です。」

女騎士「1年でそれほどの成果を挙げられるのはさすがとしか言えないな。」

男騎士「他の団員よりも、私は力が劣っています。そこまで褒められることでもないかと。」

女騎士「自分を過小評価しすぎてないか?」

男騎士「そんなことはありません、事実上、魔法さえも使えないのは死活問題に値するくらいです。」

女騎士「んー?そうか?君は他の団員よりも働くし、腕は立つ、おまけにこの街の人々を守る思いやりが誰よりも強い。」

男騎士「確かにそうかもしれませんが、私は・・・。」

女騎士「ん?」

男騎士「一番にはなれません。」

期待

女騎士「あー・・・まぁ、魔法だけでは一番にはなれないからな?」

男騎士「魔法さえも身につけてもない私はどうしろというのですか。」

女騎士「じ、実力と努力だ!こんなヘナチョコな私でも団長になれた!」

男騎士「まだ実力不足だと聞こえますね、今の言い方ですと。」

女騎士「ああそうさ!団長にはなったがまだまだ、経験が必要だ!」

男騎士「私以上にあなたは努力をした、だから団長になれた。1年や2年ではなく5年以上騎士にいるとか。」

女騎士「き、君も私・・・いや!私以上の経験と成果を挙げれば、団長になれるさ!!」

男騎士「無理ですよ、普通よりも越えた能力を備えた者は何かと軽蔑されますから。」

女騎士「・・・確かに、君は魔法が使えない代わりに素手による攻撃は優秀だ。誰よりも、どの団員よりも良い成果を収めている、が君はその体になるまで何年かかった?」

男騎士「もう覚えておりません。魔法が使えないというだけで恥をかきました。だから私は、誰よりも強いものを持とうとした結果がこれです。」

女騎士「・・・あ、あそこで飲むか?」

男騎士「酒は飲みませんからね。」

居酒屋

女騎士「昼だが飲んでも平気だろう。」

男騎士「飲み過ぎないで下さいよ?」

「お、いらっしゃい!カウンターしかないけどいいかい?」

女騎士「相変わらず、賑やかだな。ああ、構わない。」

男騎士「・・・ん?」

女騎士「どうした?カウンターに座らないのか?」

男騎士「いえ、座らせて頂きます。」

ストン・・・

女騎士「とりあえず、ビール。」

男騎士「お冷やで。」

男騎士「こんなところに人間以外がくるものなのでしょうか?」

女騎士「ん?ああ、他の種族も来ているぞ。ここはオークだとかエルフだとか人外との共存に成功している街だ。」

男騎士「・・・そうですか。」

女騎士「あの隅にある席の奴らが気になるか?」

男騎士「はい、4人固まって話しているようですが。」

女騎士「・・・少女が二人と男が二人、奴隷商か?」

男騎士「奴隷にしては綺麗すぎです。」

女騎士「んー・・・どちらにせよ、用心しておけ。」

男騎士「はい。」

「はい、ビールとお冷や!!」

女騎士「どうも。」

男騎士「ありがとうございます。」

「んだと!?ふざけてんのか!」

「私は大真面目だ!貴様等に協力も支援もさせん!!」

「はぁ!?この領土を落とさないとこっちがあぶねぇんだ!」

「そんなことは知りません!ただ貴方達の欲求のために付き合わされるのは御免です!!」


女騎士「ちっ、奴隷以前の問題だな。」

男騎士「協力だとか言ってましたね、領土も。」

女騎士「エルフっぽいが、あいつらはそんなに領土に困るのか?」

男騎士「中継基地でしょう、物資や伝達のために。」

女騎士「中継基地で収まるか?ここはかなりの広さを誇るぞ?」

男騎士「拠点でしょうか。」

女騎士「分からんな、とにかく行くぞ。」

男騎士「はい。」

面白そうなの発見

女騎士「おい。」

「あ?んだよ?」

男騎士「ここは怒号を挙げる場ではありません。他のお客様に迷惑します。」

「あ!?文句でもあんのか!」

女騎士「大有りだよ、それと領土がどうたらこうたらと聞いたが?」

「なっ、お前こんなとこで話し合うべきじゃなかったんじゃねぇか?」

「うるせぇ!聞かれたからには生かしちゃあおけねぇぞ!!」

男騎士「・・・。」

「逃げてください!!」

ガシャン!

「うお!?おい!どこに行く!」

「貴様等に付き合っている暇はない!」

女騎士「待て。」

「うわぁ!?」

「きゃっ!」

女騎士「話をじっくりと聞かせてもらいたい。」

「そこをどけ!どかぬなら斬る!!」

女騎士「事情を聞くまではどかんぞ。」

「あわわ・・・ダメですよ!こんなところで騒いだらみんなが・・・。」

「ええい!何がなんでも通してもらうぞ!」

女騎士「男、そいつらは任せる。私はちょっと、こいつらに事情聴取しなければならん。」

男騎士「承知しました、団長。」

「団長?まさか・・・。」

「騎士団かよ・・・最悪だ・・・。」

男騎士「出頭するか、手荒く拘束されるか、どっちに致しますか?」

「くそっ、マジで最悪だ!」

「悪いが捕まる訳にいかねぇ!!」

男騎士「左様でございますか。では・・・。」

「容赦はせぬぞ!」

「やめてくださいー!あっ!みなさん早く逃げてください!って、いない・・・。」

女騎士「マスターが客人を逃がしてくれたようだな、心おきなく聞き出せそうだな。」

「くっ・・・急がねば、皆が・・・。」

男騎士「貴方達、後悔・・・しますよ。」

シャキン・・・

「素直に逃がさなかったことを後悔させてやる!」

「ヤケクソだ!!」

男騎士「剣一本ですか、よくそれでここに来れましたね。」

「うるせぇ!」

ブン!

ヒュン・・・

男騎士「かすりもしませんが。」

「何っ!?いつのまに後ろを!?」

男騎士「大振りの縦斬りが当たるわけないでしょう。素人でも分かることです。」

「背中ががら空きだぜ!」

ゴッ・・・

ドスン・・・

「お、おい!お前何しやがった!」

男騎士「あなたの仲間が刺そうとしてきたので、拳を顎にかすめただけです。」

「うっ・・・クラクラしやがる・・・。」

「この野郎!」

「やめとけよ!勝てねぇよ、あいつには・・・。」

「ちっ、臆病風に吹かれたか。」

男騎士「どうします?出頭しますか?」

「うるせぇ!意地でもしねぇよ!!」

男騎士「そうですか。」

「お、俺は戦わねぇぞ!あんな化けもんみたいなやつに・・・。」

(し、しかし本当に勝てるのか?あんな攻撃受けたら・・・死ぬよりも痛いものに・・・。)

カタカタ・・・

「俺、な、何で・・・震えてるんだ・・・?」

男騎士「さよならです。」

ボコッ・・・

「ぐあっ・・・。」

「い、言わんこっちゃねぇ・・・。」

バタン!

女騎士「終わったか?」

「くそっ、まさか負けるとは・・・。」

男騎士「はい。外で戦闘していたようですね。」

女騎士「ん?ああ、いつのまにかな。」

「あ、あの・・・事情なら私が説明します・・・。」

誰だ?

名前ない者に名前入れます。

すいません。

女騎士「その前に名前を聞こう。」

エルフ「あ・・・ええと・・・街のはずれの森に住んでいたエルフです・・・。」

女騎士「いた、とは?」

「そこの二人の男に森を盗られた。」

エルフ「リーダー・・・無理しないでください・・・。」

エルフ長「これが無理せずにいられんだろう!?」

エルフ「ひぃっ・・・。」

男騎士「・・・いつまでも寝ている場合じゃないですよ?敵さん。」

敵「わ、分かったよ!その森に案内するから乱暴なことをしないでくれ!」

敵2「お前!?ボスに殺されてぇのか!」

敵「ボスより刑務所に入った方がマシだ!」

敵2「裏切りやがったな・・・。」

男騎士「案内してもらいましょうか。」

コンコン・・・

騎士「団長。」

女騎士「どうした?」

騎士「王がお呼びです。」

女騎士「こんなときに・・・男、頼むぞ。」

男騎士「はい。お任せください。」

エルフ「えっ?あなた一人で・・・。」

エルフ長「魔法を使えないやつを連れていけというのか!?」

女騎士「それ以上、悪口を言うのはやめてもらおうか。男はその気になれば・・・。」

男騎士「ダメですよ、団長。それに私は強くありません。」

女騎士「んー・・・とにかく、王のところに行って来る。」

男騎士「お気をつけて。

エルフ長「おい!貴様!」

敵「な、何だよ!?」

エルフ長「さっさと皆のところへ連れていけ!!」



エルフ「おーい!みんなー!今帰ったよー!!」

・・・

エルフ長「いないだと?まさか・・・!?」

ギロッ・・・

敵「こ、殺してねぇぞ!こっちの指示がない限り仲間はなにもしねぇよ!!」

ガサッ・・・

女の子「・・・リーダーが帰ってきた。」

エルフ「あっ、みんなはいる?」

女の子「うん。今、隠れてる。」

エルフ長「どこにいる?」

女の子「ここにいるよ。」

「こらっ!勝手に飛び出しちゃダメでしょ!」

「リーダー、お帰り!」

エルフ長「ふぅ・・・良かった・・・。」

男騎士「・・・おかしい。」

エルフ長「何がだ?」

男騎士「いえ、敵の仲間がいないものですからおかしいと思いまして。」

エルフ「ん?・・・撃滅したみたいですよ?」

敵「は!?あんな大人数にか!?」

女の子「・・・魔女が一緒にいてくれたから勝てた。」

男騎士「魔女?」

エルフ長「ここに魔女が住んでいたのか?」

男騎士「あの人は一体、何をしてるのか・・・。」

エルフ「知り合い・・・ですか?」

男騎士「知り合いというより、パートナーです。」

「ま、魔女がパートナーってあいつ何者だよ・・・。」

「まぁ、悪い人じゃなさそうだけど・・・。」

魔女「ふぁ~あ・・・ん?あ!」

男騎士「・・・何してるのですか。」

魔女「お久しぶり!男くん!!」

男騎士「いい加減、くん付けはやめてくださいませんかね。」

魔女「良いじゃん!子どもの頃からくん付けしてたじゃん!!」

男騎士「もう、今は違いますが。」

魔女「あ、そうだったね!ごめんごめん、そういえば魔法使えた!?」

男騎士「使えません、何度言ったら分かるのですか。」

「さっき、加勢してくれた人か。」

「あの騎士と戦闘の時の温度差が激しい・・・。」

エルフ長「・・・男騎士。」

男騎士「はい。ご用で?」

エルフ長「とりあえず、黙らせてくれ。」

魔女「え、何この子・・・。」

宮殿

女騎士「国王様、ただいま戻りました。」

国王「雑談している暇はない。本題に入る。」

女騎士「はっ。」

国王「魔王軍が活動し始めた。」

女騎士「目的は?」

国王「略奪するためだろう、この街にも魔王軍の魔物がいた。」

女騎士「現状の戦力では勝算がありません。」

国王「それは心配ない、こちらには勇者とその仲間がいる。」

女騎士「・・・お言葉ですが、使えるのでしょうか。」

国王「ああ、男騎士よりも使える奴らだ。」

女騎士「・・・。」

国王「魔王軍との戦争はまだ先だが油断はならない。」

女騎士「はい・・・。」

国王「紹介しておこう。入れ。」

ガチャ・・・

勇者「失礼する。」

魔法使い「失礼します・・・。」

戦士「噂の魔法が使えない奴を入団させた人か?大変だな、団長さんも。」

盗賊「・・・。」

国王「右から、勇者・魔法使い・戦士・盗賊だ。」

女騎士「このメンバーに入れと。」

国王「いや、護衛しろ。魔王と戦闘になったら、こいつらに任せれば良い。」

女騎士「分かりました。」

戦士「魔法使えねぇやつを入団させるなんてなぁ・・・。」

盗賊「お前だって最初は使えなかった。それをいちいち言う必要はない。」

戦士「んだと!?」

盗賊「いまここでやるのか?お前の首はすぐになくなる。」

勇者「やめろ、こんなところで事を荒立てるな。」

勇者「大変失礼した。今回の魔王軍との戦争は多大なものになる。」

女騎士「それは知っている。」

盗賊「それと男騎士は前線に出てもらう。」

女騎士「!?」

戦士「当たり前だろ、魔法も使えねぇんじゃあ、前線で死にに行ってもらうしかねぇよ。」

女騎士「貴様!!」

勇者「いい加減しろ。戦わせないぞ。」

戦士「けっ・・・くそが。」

魔法使い「できる限り、援護はします。」

盗賊「こちらは魔王とその軍勢と戦闘する。」

女騎士「・・・本当だな?」

勇者「嘘はつかない。」

スッ・・・

女騎士「握手はせんぞ・・・。」

勇者「失礼した。では後ほど・・・。」

勇者「男騎士にもよろしく言っておいてくれ。」

女騎士「・・・。」

盗賊「帰って良いか?準備がある。」

国王「あぁ。時が来たらまた会おう。」

勇者「ふん・・・。」

女騎士「帰りはあっちだ。」

ガチャ・・・

バタン・・・

国王「今日は魔王軍の話だけだ。帰って良いぞ。」

女騎士「はっ。失礼しました。」



魔女「えぇ・・・?」

エルフ長「いや、だから・・・。」

「あの二人の男が話を持ちかけた?」

男騎士「どういうことですかね、敵さん。」

敵「このエルフ達を解放する代わりに、国王の領土を奪取するっていう作戦だよ。」

敵2「最初は乗っていたが、あの酒場で急に断りやがった。」

エルフ「その話に乗り作戦に参加することをを確定したら仲間を解放する手筈でしたよ!」

敵「確かにそう言ったが、俺の仲間が森から消えるとは言ってねぇだろ。」

男騎士「ここを襲った理由は何ですか。」

敵「あぁ?んなこと聞いてどうするんだ?」

魔女「あーあ、白状したほうが身のためだよ?」

敵2「けっ、知るかよ・・・。」

男騎士「もう一度聞く。この森を襲った理由は何だ。」

敵「なっ・・・。」

男騎士「さっさと答えろ、私は気が短い。それとも後遺症を残すくらいの怪我を味わうか。」

敵2「分かったよ!ここを占領して国王の領土を占領する準備だよ!!」

男騎士「資金源は?」

敵「くっ・・・。」

男騎士「奴隷商売だな。」

エルフ長「なんだと!?じゃあ・・・。」

女の子「ここに全員はいない。この数ヶ月で何人ものエルフはどこか行ったよ。」

エルフ「本当に・・・?」

敵2「本当だよ。」

エルフ長「貴様ぁ!!私たちの仲間を返せ!!」

男騎士「売ったエルフ達はどこにいる。」

敵「知らねぇよ!そんなんいちいち覚えてねぇよ!!」

魔女「顧客名簿があるよ!!」

敵2「なっ・・・くそっ、それに買った奴の名前と住所が書いてある!!」

エルフ長「何!!」

パラパラ・・・

魔女「んーと・・・どの買われたエルフもそこまで遠くに行ってないね。」

敵「こっちが送れるような距離にしてあるんだよ・・・。」

敵2「もう半数は売りさばいたよ!!」

エルフ長「ぐっ・・・殺してやる!!!」

男騎士「やめろ、ここで殺してはこいつらの罪は到底消えない。」

エルフ「じゃあ、どうするんですか!?」

魔女「ねぇ、エルフちゃん。」

エルフ「ち、ちゃん・・・?」

魔女「この森にいたエルフって何人?」

エルフ「えっと・・・115人です。」

魔女「10、20、30・・・65人でここにいるエルフは50人ね?」

女の子「うん・・・50人いるよ。」

魔女「そしたら、私がその買われたエルフを取り返してくるよ!!」

エルフ長「そんなことできるのか!?」

魔女「うん!その代わりちょっと時間かかるけど良いかな?」

エルフ長「・・・なるべく早く頼む。」

魔女「もちろん、そうするよ。大切な仲間がいないと心配だもんね。」

男騎士「ふぅ・・・私も行きますよ。」

魔女「お?落ち着いた?」

男騎士「えぇ、何とか。」

エルフ長「男騎士、頼まれてくれるか・・・?」

男騎士「最初からそのつもりです。」

魔女「後は敵をどうするかだけど・・・。」

男騎士「リンチはどうでしょうか。」

魔女「あー・・・トラウマ植え付けちゃう?」

男騎士「それが一番かと。」

敵「あぁ・・・。」

敵2「殺される・・・。」

男騎士「まぁ、エルフ達に任せましょう。」

魔女「そうだね!早速、行ってくるね!!」

男騎士「箒を貸してくださいよ。」

魔女「あ、ごめん・・・すっかり忘れてた。」

フワッ・・・

エルフ「えっ!?」

おつかれさま!

おつ

おもしろい

魔女「箒使えるなら、魔法は使えるはずだけど・・・。」

男騎士「使えないです。」

魔女「嘘付け!」

男騎士「それで、場所はどこでしょうか?」

魔女「えーと、砂漠と鉱山と・・・。」

エルフ長「本当に助けてくれるんだろうな・・・?」

魔女「・・・以上!」

男騎士「10ヶ所って意外に少ないですね。」

魔女「まあ、綺麗に1ヶ所に6人いるからね。」

男騎士「残りの5人は洞窟と・・・。」

エルフ長「洞窟だと・・・!?」

魔女「うん、まぁ・・・到底、助けられる場所じゃない所に買われたって・・・

。」

男騎士「0%じゃなければ、助けに行きますよ。」

魔女「んー・・・しょうがないな・・・男くんがそう言うなら行くしかないね。」

エルフ「あの・・・その洞窟って・・・?」

魔女「一言でいうと、呪いの洞窟かな。」

エルフ「の、呪い・・・。」

男騎士「魔物や人間が大量に死亡し、骸や死体が多くありまして、そこから怨念だとか憎しみが入り交じってできた洞窟です。」

魔女「そこにしか生えない素材があるから行くけど・・・怖いよ、かなりね。」

男騎士「近年では精神崩壊を起こした人はいますし、呪いをかけられて人ではなくなるケースもあります。」

エルフ「近寄りたくないです・・・。」

「あそこに行くのか・・・。」

「仲間も無事だと良いけど・・・。」

魔女「それじゃ、行ってくる!」

ビュン!

男騎士「すぐにとはなりませんが、必ず助けます。」

エルフ長「あぁ、頼む。」

鉱山

エルフ1「はぁ・・・はぁ・・・ああっ・・・。」

パタン・・・

エルフ3「あっ!大丈夫!?今日の仕事はもう終わるからもう少し頑張ろ?」

エルフ2「んなこと言ったって・・・何時間も働きっ・・・ばなしじゃねぇかよ・・・。」

「おい!休むな!!また鞭で打たれてぇのか!?」

エルフ4「少しは休ませてください!このままでは死んでしまいます!!」

「あぁ!?何だその口答えは!?」

エルフ5「もう・・・やだ・・・誰か助けて・・・。」

「ん?なんだあいつ?」

男騎士「・・・ここにエルフ達がいるとお聞きになり、お伺いしました。」

「あー?ここら辺じゃあ、見ねぇ顔だな?」

男騎士「質問にお答えください。」

エルフ3「誰だろう?あの人?」

「エルフ?知らねぇな。」

男騎士「そうですか、それではあなた達のボスを呼んでください。」

「はぁ?ボス呼んでどうすんだよ。」

男騎士「この書類にエルフを買ったという証拠があるのですが、嘘がどうかあなた達のボスに聞かなければならないのです。」

「何言ってんだお前!?だからエルフはいねぇつってんだろ!?」

ボス「うるせぇ!!ギャーギャー騒ぐんじゃねぇ!!!」

「あっ、ボス・・・。」

ボス「あーあ・・・とうとう見つかっちまったか。」

男騎士「あなたがボスですね。」

ボス「んー、他人にボスって言われるとなんかな・・・んで、何?」

男騎士「エルフ達を返して頂きたいのです。」

ボス「んーと・・・おい!エルフ!!」

エルフ達「はい!」

ボス「こっち来い。」

ザッザッザッ・・・

ボス「ほれ、給料。」

トスッ・・・

「ボ、ボス・・・?」

ボス「全くよ・・・俺がいねぇ間にこんな傷つけてよぉ・・・悪ぃな、うちの部下は気ぃ荒くてよ。」

エルフ4「はぁ・・・?」

ボス「確かに、働けつったけど体壊すまで働かせろって言ってねぇよなぁ!?」

「ひっ・・・はい・・・。」

エルフ2「へ・・・?」

ボス「ちっ・・・お前、独断で労働させたな?」

「え・・・あっ、いや・・・。」

ボス「ぶさけんなよ。」

「うっ・・・。」

エルフ1「どういうことだ・・・。」

ボス「んとな、俺な。一言も奴隷扱いするって言ってないだろ?」

エルフ達「・・・あ。」

ボス「・・・あのな、俺の命令じゃなくな、このアホどもが勝手にしたことなんだわ。」

エルフ達「・・・。」

ボス「ホント、ごめんな?ほら、お前らの家に帰りな。」

男騎士「良いのですか?」

ボス「んああ、構わねぇよ。ここまでされていて気づかないのも俺がバカだからこうなっちまったんだ。ホントだったら、苦しむことなくこのエルフ達と働きたかった・・・。」

男騎士「・・・もう一人はどこですか。」

ボス「ん?ああ、エルフ6か。怪我してっから医療室にいるはずだが・・・。」

エルフ6「お呼びで?」

ボス「おっ、怪我はどうだ?」

エルフ6「まぁ、歩けるくらいには。」

ボス「良かった、お前も帰るか?」

エルフ6「帰る・・・?」

男騎士「6人、揃いましたね。」

エルフ6「・・・良いの?帰って?」

ボス「ああ、ここよりお前の帰るべき場所が安心するだろ?」

エルフ6「・・・帰るね。」

ボス「じゃあな。もう会えねぇだろうけどな。」

エルフ6「ありがとう、ボス。」

ボス「礼されるほど良いことしてねぇよ。」

ボス「おっと、騎士。」

男騎士「何でしょうか?」

ボス「エルフのリーダーに謝っておいてくれねぇか?本当に申し訳ないってよ。」

男騎士「承知しました。」

エルフ2「ボスを見たことなかったがこんなに良い人だとは・・・。」

エルフ4「ちょっと、驚いちゃった・・・。」

ボス「まぁ、買ったとき以来、顔を見たことねぇからな。」

男騎士「さぁ、行きますよ。」

エルフ3「・・・何で帰るの?」

男騎士「箒にまたがってください。」

フワッ・・・

エルフ達「えっ!?」

おお!

墓場

魔女「血生臭い・・・本当にいるのかな。」

エルフ7「うえっ・・・臭い・・・。」

エルフ8「何で人間の死体運びだとか土葬しなきゃならないんだ?」

魔女「あ、いた。」

エルフ9「ん?・・・何かご用でしょうか?」

魔女「えーと、主人いる?」

エルフ10「死にました。」

魔女「え?」

エルフ11「つい1ヶ月くらい前に死にましたよ。」

魔女「・・・え、じゃあ行く宛ないからここにいるの?」

エルフ9「そうなります。」

魔女「じゃあ、許可いらないな・・・森に帰る?」

エルフ12「あの箒に乗ってですか?」

魔女「うん、とりあえず人数分乗れるから。」

中略



男騎士「30人です。」

魔女「こっちも30で後は呪いの洞窟か・・・。」

「おかえりー!」

「ただいま!怖かった・・・。」

エルフ長「本当に行くのか?」

魔女「ここまで来たら行くしかないね。」

男騎士「すぐにでも行きますか?」

魔女「んー、ちょっと待ってね・・・。」

ブツブツ・・・

男騎士「?」

魔女「んー・・・えー?まあいいや。」

男騎士「どうしました?」

魔女「いや、何でもない!行こ!」

呪いの洞窟

魔女「う・・・一番行きたくないところベスト3の1位に入る場所だよ・・・。」

男騎士「まぁ、怨念がこもってますからね。」

魔女「こんな場所でも平静を保てる男くんは、おかしい。」

男騎士「変わってるって、よく言われます。」

魔女「だろうね。」

「もー!いや!!」

「きっと助けが来るからそれまで待とうよ!」

「一体いつまで待てば良いのよ!?」

「喧嘩しないで!!」

魔女「・・・結構、元気あるね。」

男騎士「ええ、先にいるとは思います。」

魔女「さっさと助けて帰ろっか。」

男騎士「はい。」

呪いの洞窟の奥

魔女「迷ったぽいね・・・。」

男騎士「声は聞こえますけどね。」

「さっきから誰かの声がするけど・・・。」

「助けに来たのかな?」

「こんなところに来るもの好きがいるのか?」

男騎士「近いようで遠いです。」

魔女「足痛い・・・。」

コッ・・・

男騎士「ん?・・・。」

魔女「どうしたの・・・棺桶?」

男騎士「土葬でもしてたのでしょうか。」

ガタガタ・・・

魔女「い、生きてる。」

男騎士「ゾンビか何かでしょうか。」

棺桶の中「開けてくれ!こんな狭いところで寝られん!!」

男騎士・魔女「・・・。」

グシャ!!

「ぐはぁ!?い、いきなり何をするのだ!?」

男騎士「いえ、ゾンビだと思いまして。」

魔女「燃やすのも難だから棺桶壊した。」

「阿保か!?危うく呼吸困難になるところだったぞ!」

魔女「・・・もしかしなくても、吸血鬼?」

吸血鬼「まあ、そうだが?」

男騎士「・・・。」

サッ・・・

吸血鬼「ん?十字架なんて掲げてどうした?」

男騎士「よし、嘘。」

ポイッ!

吸血鬼「え?」

魔女「ニンニク。」

吸血鬼「あ、匂いキツいから断る。」

男騎士「嫌いということでしょうか。」

吸血鬼「苦手のうちに入る・・・お腹空いた・・・。」

チラッ・・・

男騎士「いやですよ、何もあげませんよ。」

吸血鬼「少しで良い、頼む。寝てて何も食べてない。」

男騎士「お断りします。」

吸血鬼「うう・・・じゃあ血を吸わせてくれ。」

魔女「男くんを傷つけはさせない!」

吸血鬼「お腹が減っているのだ!何かくれんとここで暴れるぞ!!」

男騎士「仕方ないですね。死なない程度にお願いしますよ?」

吸血鬼「おお!本当に良いのか?」

男騎士「かまいませんが、死ぬまで吸うのはダメですよ?」

吸血鬼「ああ、約束しよう!」

カチャカチャ・・・カチン・・・

男騎士「さあ、どうぞ。」

吸血鬼(久しぶりの食事だ、堪能させてもらおう。)

カブッ!!

男騎士「ぐっ・・・。」

魔女(大丈夫かな・・・結構吸われるけど。)

ゴクゴク・・・

吸血鬼(美味しい・・・もっと吸いたいが止めておくか。)

ヌチャ・・・

男騎士「はぁ・・・はぁ・・・良いのですか?」

吸血鬼「ああ、すまん。ありがとう。」

吸血鬼「そういえば何故ここに来た?」

男騎士「エルフ達がここで迷っているそうなので、救出に来ました。」

魔女「回復早い・・・さっきから歩いてるけど全く見つからないの。」

吸血鬼「ふーん・・・エルフ達がいる場所なら分かるぞ?」

魔女「教えて!早く帰りたいから!!」

吸血鬼「ついてこい、案内する。」

スタスタ・・・

吸血鬼「目覚めたらまさか洞窟とはな・・・。」

男騎士「どこかの王とかですか?」

吸血鬼「そうだな、私の父が建てていた城で王女をしていた。」

魔女「・・・そうは見えないけど。」

男騎士「わがままお嬢様。」

吸血鬼「ええ、わがままだ!それがどうした!?」

魔女「で、城は?」

吸血鬼「崩壊した、私以外・・・死んだ。」

吸血鬼「父も母も死んだ、私は城の地下室で棺桶に入った。」

男騎士「城が崩壊した理由は、やはり人間の戦争ですか?」

吸血鬼「ああ、襲撃された。一人残らず殺そうとしたらしい。」

魔女「相変わらずだねぇ、人間は。」

吸血鬼「危険だから、邪悪だから、そんな理由で殺された。生きてるのは私だけだ。」

男騎士「私も人間ですが。」

吸血鬼「種族的にはそうだろうが・・・君は人間の皮を被った何かがある。」

男騎士「・・・どういうことでしょうか。」

吸血鬼「・・・魔物だよ。」

魔女(何となく分かる気がする・・・。)

吸血鬼「君は純粋な人間だが、ふとしたキッカケでその性格が変わることがある。」

男騎士「何故そのようなことを言えるのですか?」

吸血鬼「君の血は人間の味じゃない。」

男騎士「・・・?」

吸血鬼「血はそいつの性格を表す、血によって何が生まれるのかも分かる。君は人間以外の血が混じってる。」

男騎士「ですが、あなたは私を純粋な人間と言ってましたが?」

吸血鬼「混血ではなく、悪魔的素質がある。」

男騎士「悪魔・・・。」

吸血鬼「悪魔から生まれたのではなく、君の過去の行動が悪魔にした。」

魔女(まあ、私を非難しなかったのは男くんだけだし。かなり変わってるけどそこまでとは・・・。)

男騎士「・・・分からない。」

吸血鬼「ある物や周りの行動で、自分が妙な感覚になったことはあるか?」

男騎士「妙な感覚・・・。」

チラッ・・・

男騎士「刃物・・・。」

吸血鬼「刃物?」

男騎士「小さい頃、母と父に育てられ狩りを覚えるときに刃物の扱い方を習いました。そのときから、なにかしらの刃物を携帯していましたが・・・。」

魔女「手ぶらなのに?」

男騎士「気づいたら刃物を携帯しなくなり、素手で過ごしていました。」

吸血鬼「ちょっと剣を持ってみてくれるか?」

男騎士「剣・・・。」

ギュッ・・・

吸血鬼「・・・どうだ?」

男騎士「思いだしたくないことを思いだしましたよ。」

ヒュン・・・

魔女「投げた・・・未だに忘れられない?」

男騎士「まず、忘れろと言われましても無理です。はっきりと記憶に残ってますから。」

吸血鬼「記憶とは?」

男騎士「騎士になって剣とかナイフを持ち始めて少ししか経っていない時に、人を斬殺・刺殺したことがありましてね。」

吸血鬼「・・・トラウマか?」

男騎士「そうです。気づいたら人が目の前に倒れていて初めて殺したときは悲鳴を挙げてましたよ。」

男騎士「そのせいか剣とかは持たなくなり、素手で活動してます。」

吸血鬼「お人好しというか・・・臆病者というか・・・。」

男騎士「臆病なのは確かです。今でも、戦闘で人に向けられるのは腕だけですし。」

魔女「刃物が使いたくないからこそ素手で生きてきたからね。」

男騎士「ですが、団長の命令で剣を持つことがあるのです。」

吸血鬼「・・・恐いか?」

男騎士「ええ、かなり。入りたての頃はどこかに剣を置いていきました。」

魔女「あのときの女騎士は怒ってたね・・・。」

男騎士「剣を持たずして何をする?と言われました。」

吸血鬼「それでよくお前を採用したな・・・。」

男騎士「団長は、魔法を使えないのは論外だが君には魔法と同じくらいもしくはそれ以上の力を持っている、と言われました。」

吸血鬼「同じかそれ以上・・・?」

魔女「本当はキレた時の男くんを見た方が早いけど・・・。」

男騎士「・・・あの状態では手のつけようがないでしょう?」

魔女「まあね、でも止められないって訳じゃないし。」

吸血鬼「キレる?どういうことだ?」

男騎士「過去に団長が魔物に殺されかけた時がありましてね、魔物に一撃加えられてピクリともしないから本当に死んだのかと思って怒り狂いました。」

魔女「たった一度だけしか見たことないね・・・あれは男くんじゃないよ。」

男騎士「でも、キレた時の記憶はありませんよ?」

魔女「え!?キレると記憶がなくなるって本当なんだ・・・。」

吸血鬼(そういえば私も何度かキレたな・・・そのときも記憶がはっきりしてない。)

男騎士「魔女さんからの証言からは、いつもと違いすぎる表情・相手を殺す勢いで戦う・怪我を負っても追撃など。」

魔女「一番驚いてたのは女騎士だったね。」

おつかれさま!

吸血鬼「魔法使えないと思ったらそんな危険なものを持っているのか。」

男騎士「下手したら味方も巻き込む可能性もあります。」

吸血鬼「・・・用心しておこう。」

男騎士「ええ、そうしてください。信用も信頼もしなくて結構です。」

魔女「人を不安にさせる事言わないでよ・・・。」

男騎士「初対面の相手をどう信用しろというのですか。」

吸血鬼「その口振りだと1ミリも信用してないようだな。」

男騎士「呆れるくらいに裏切られたことがありますから、信用しろなんて無理です。」

吸血鬼「仲間も信じられないのか?」

男騎士「唯一、信じられるのは魔女さんと団長だけです。」

魔女(言動からして信じられてないとは思ってない・・・思いたくないよ。)

男騎士「人間に裏切られてばかりだから、魔物に寝返るかもしれませんよ?」

吸血鬼「んー・・・。(こいつの思想が分からん。)」

男騎士「もしかしてエルフでしょうか。」

エルフ達「助けに来たの!?」

男騎士「ええ、エルフの長から救出してくれと言われましたから。」

エルフ「やっと・・・脱出できる・・・。」

エルフ2「本当にどうなるかと・・・。」

魔女「ねぇ、男くん。」

男騎士「何か?」

魔女「エルフ達を救出できたのは良いけど出口は?」

男騎士「・・・。」

魔女「まさか・・・。」

男騎士「知りません。」

魔女「おい、しっかりしてよ。」

男騎士「とりあえず闇雲に壁を削ってみますか?」

魔女「闇雲に削って体力なくなったら意味ないんだよなぁ・・・。」

吸血鬼「出口分かるぞ。」

男騎士「嘘付かないで下さい。」

吸血鬼「・・・教えてやらん。」

男騎士「す、すいません。本当に嘘かと思ってしまいました・・・。」

吸血鬼「このまま真っ直ぐ。」

エルフ「さっさと脱出だぁ!!」

ダッ・・・

吸血鬼「近道だけど、敵がたくさんだ。」

エルフ「えっ?」

エルフの行く先に怪しげな影が揺らいだ。

その影は向かってくるエルフを攻撃しようと刃物のように鋭利なものを構えた。

エルフ「うわっ!?ちょっ・・・ちょっと!」

それに気がつき止まろうとするが、その影はエルフに襲いかかった。

男騎士「援護、お願いしますよ。」

と、男騎士はエルフを助けるべく影に向かって走った。

魔女「任しときなさい!」

箒を前に構え、そのまま静止する。

エルフ「や、やばい!?」

鋭利なものを掲げエルフを切り刻もうとの瞬間・・・。

男騎士「これでも食らってて下さいよ。」

風を切るような早さで影に一撃の拳を当てた。

それは一撃が入ったと同時に吹っ飛び、壁に強打した。

男騎士「手、出さないで頂けますか?こっちにも事情ってものがありましてね。」

手を馴らし、軽く拳を握り込めた。

その影は壁から離れ、頭を回し、骨を鳴らした。

エルフ「ほ、本当に危なかった・・・恐ぇな、魔物って・・・。」

魔物は獣のように鳴き声を挙げ、男騎士を睨む。

男騎士「本気でやるなら手加減はしませんよ?」

足をぐっと力を入れ、体を屈めた。

その体制に気づいた魔物は、同じように体を屈めて警戒する。

魔女(・・・男くん、大丈夫かな。)

互いに静寂の中で男騎士は魔物を、魔物は男騎士を殺そうと殺気を漂わせている。

魔物も男騎士も決して油断できない状況にある。

男騎士「ふぅ・・・。」

魔物も耳に聞こえるぐらいに呼吸が聞こえる。

男騎士(勝てるのか?)

どの相手にも対して第一に思うことである。

彼は戦うことが生業だが、戦いに破れた自分は数回と数えられるくらいしか負けていない。

男騎士「勝てる・・・はず。」

不安が募る、だが恐怖はしていない。

魔物は一呼吸して鋭利なものを構えた。

魔女(うぅ・・・不安だなぁ・・・。)

不安になっていたのは彼だけではなかった、自分の攻撃で彼に当ててしまうのではないのか、と。

魔女(いやいや、自分を信じろ!絶対に男くんに出だしはさせない!!)

迷いを振り払うように頭を横に振る。

魔物は唸りを挙げ男騎士をじっと、見つめる。

男騎士「どうしました?まさか、怖じ気付いた訳ではありませんよね?」

構えを解いて魔物を挑発する。

そして、魔物はこれを好機と思ったのか

男騎士に突撃を仕掛けた。

吸血鬼「はぁ・・・面倒なことになったか。」

身が入らないようなため息を吐き、人差し指と中指を立てて

右斜め上に振り払う。

男騎士「・・・ん?」

壁の隙間から吹くような風の音がした。

その音は一層強くなり、魔物に向かって風は吹いている。

吸血鬼「私のために血を吸わせてくれたお礼だ。」

一気に風は強くなり魔物の突進は遅くなり、やがて風圧に負け、吹き飛んだ。

吹き飛ばされた魔物は、訳が分からないのか周りを見わたす。

魔女(な、何あれ・・・風?ていうか、なんで早くしなかったのよ!?)

吸血鬼「こっちにも準備が必要だからな。」

と、微笑を浮かべ男騎士のところへ歩き始める。

男騎士「・・・風、ですか。」

歩み寄ってくる吸血鬼に目を向け、溜め息をつく。

吸血鬼「ふふっ、すまないな。覚醒してから間もないからカの回復が遅くなってしまった。」

男騎士の右側面に立ち、魔物を見る。

男騎士「そういえば、魔物はたくさんいると言ってましたけど。」

吸血鬼「ああ、さっさと片付けないと群れてくる。」

驚いたのかエルフ達の表情に不安が浮かべられる。

まもなく魔物が起きあがり、雄叫びを挙げた。

その雄叫びは洞窟全体に響き渡った。

魔女「嫌な予感・・・。」

その予感は的中し、暗い洞窟から重い足音が近づいてくる。

男騎士「・・・まさかのですか。」

しかめっ面になりながらも、準備をする。

吸血鬼「んー・・・まぁ、仕方ないな。」

魔女「さっさと倒しておけばよかった・・・。」

と、言っても時すでに遅しなのであんまり関係ない。

魔女が唐突に箒を肩に担いだ。

魔女「もう!男くんが攻撃しないからお仲間来ちゃったじゃん!!」

半分怒りながら早歩きで男に向かう。

男騎士「無茶苦茶なこと言わないで下さいよ。遠距離は撃つだけで終わりかもしれませんけど、近接は相手を見ながらじゃないとこっちがダメージ受けてしまいますから、迂闊に近づけないのです。」

吸血鬼「魔法専用の奴に言っても理解できんだろうに・・・。」

男騎士も魔女にこんなこと言っても分かりっこないとは理解している。

魔女「そんなこと言ったらこっちだって、間合いつめられたらアウトなんだよ!?」

男騎士(それは魔女さん自身の問題でしょうに。)

と、呆れながら思う男騎士だった。

吸血鬼「こいつら・・・やる気あるのか?」

吸血鬼「どうでも良いが・・・敵は待ってはくれんぞ。」

いつのまにか多数の魔物が集結し始めていた。

コブリン・オーク・スケルトンなど、洞窟に住んでいる者やそこで力尽きた者達が三人を殺そうと言わんばかりに殺意を剥きだしにする。

魔女「え・・・?何コレ。」

吸血鬼「その目で見た通りだ、ここの洞窟は死骸とかオークとかがいる。それに呪いって称されるだけあって、得体の知れない物や人骨がいきなり動くとかが多い。」

エルフ達が群れ、怯え震える。

この気味悪い場所で死ぬのか、せっかく助けに来てくれたのにそれも無駄になるのかと恐怖に埋めつくられそうになりながらも助けてくれると信じている。

男騎士(死にたくないのは私も同じだ、それに・・・。)

魔女の横顔をじっと見つめる。

魔女「ん?もしかして今更、戦いたくないとか言うの?」

半笑いで男騎士に問いかける、がこの時の彼女は少し恐怖と不安を抱えていた。

乙!

男騎士「いえ、そんな臆病風に吹かれたようなことは言いませんよ。」

男騎士は、足を肩幅と同じくらいに置き、右足の踵を少しあげて両手を軽く握り、前に構える。

男騎士達は死を覚悟していた。

魔女「あーあ・・・こうやって、男くんと一緒に魔物に対して戦うの何年振りかな?」

男騎士「2,3年くらいでしょう。」

恐怖の最中ながらも魔女の言葉が妙にハキハキしていた。

先ほどは単体の魔物と戦っていた男騎士に横槍を入れて良いものかと迷っていた。改めて、男騎士と一緒にいることを嬉しく思っているようだ。

吸血鬼「話はもう終わりした方が良い。」

魔物達は、地面を削るような重い足取りで男騎士達に迫っていく。

街:商店街

女騎士「男は無事にエルフ達を救出できただろうか・・・。」

駄目だ、どうしても気になる!だが、作戦も練らなければならん、状況も報告しなければならない!!

そう色々と考えていると女騎士の歩いている道に5人程の団体が来る。

女騎士(くっ、男を探そうにもはずれの森しか分からん・・・無事に帰ってくると分かってても不安でならない!!)

だが、今は魔王軍との戦争の準備をしなければならない。

女騎士と5人の団体が通り過ぎようとしたその時。

?1「奴だ、捕らえろ。」

一瞬にして女騎士を囲む。

女騎士「ん?・・・何者だ、貴様等。」

?2「答える必要はない、ついてきて貰おう。」

女騎士に威圧をかけ、同行させようとする

女騎士「断る。」

?5「そうか、なら、こうだ。」

女騎士の腹に向かって殴る。

その攻撃をまともに受けてしまい、女騎士はその場に這いつくばる。

女騎士「ごふっ!?・・・貴様・・・何を・・・?」

?4「お前には人質になって貰おう。」

そして、数秒もがいた後、女騎士は力尽きた。

?3「ふふふっ、男・・・また会えるぞ。」

周りに注目を浴びながらも不敵な笑みを浮かべ、女騎士を連れて行く。

?1「男騎士の野郎がこれ見たらどうなるだろうな?」

乙!

呪いの洞窟

男騎士「・・・。」

目の前には魔物の血や切り刻まれた肉片などが飛び散っていた。

魔物との戦闘は時間がかからなかったようだ。

魔女「ふぅー・・・意外と多かったけどすぐに終わったね。」

男騎士「はい・・・。」

自分の手に付着した血を見る。

吸血鬼「魔物に対して素手で闘えること自体がおかしいが、君は難なくできた。君は人間なのか?」

男騎士「分かりません。ただ、闘うことに命をかけた結果がコレです。」

なんとも言葉にしづらい時だった、闘うのに相手を倒す以外の考えがなかった彼には、人間とは言えなかった。

何度も、自分は人間なのか?と疑うこともあった。

魔女「とりあえず、エルフ達を救出しようよ。」

男騎士を手招きをし、出口を指す。

男騎士「すぐそこだったんですね。」

思ったより近かったのか少し安心していた。

吸血鬼「なあ、男騎士。」

男騎士「何か?」

男騎士の真っ正面に立つ。

吸血鬼「君にとって大切な人が危険な身にさらされることになる。」

このときの男騎士は心臓が跳ねるほど、驚いた。

男騎士「どういうことですか、それは。」

表面上では驚いているように見せない。

吸血鬼「私の勘だ。そこにいる魔女かもしれないし、君の言う団長かもしれない。」

男騎士「団長・・・。」

考えたくもないが、有り得ない話ではない。

男騎士「魔女さん、エルフ達をお願いします。」

間髪いれずに出口に向かって走る。

吸血鬼「時には諦めることも覚えろ。」

吸血鬼の言葉をも耳に入れずに出ていった。

魔女「あーあ。どうなるかな、男くん。」

吸血鬼「あいつ次第だな、自分を犠牲にしてまで助けるか。」

魔女「必ずそうするんだよねー、男くんは私の時もそうだったし。」

魔女の言葉に引っ掛かったのか問いかける。

吸血鬼「君の時も?」

不思議そうに魔女を見る。

魔女「うん、非難しなかったのだって男くんだけだし。私を助けてくれたのも男くんだけ。」

昔の頃を思い出し、微笑む。

乙!

魔女「男くんと出会ったのは10年前、私は19歳で、男くんは17歳になって騎士団に入団したけどね。」

10年前:森にて

男(7歳)「・・・何をしている。」

少年「あぁ?なんでもねぇよ。」

怯えている魔女を囲ってリンチの最中だった。

魔女「もう・・・やめてよ・・・。」

集団リンチによりアザが多数あり、すでに泣いていた。

男「なんでもないというのは本当になんでもない時に言う言葉だ。」

少年2「うるせぇ、さっさと失せろ。」

男は集団に向かって足を運ぶ。

男「お前等は恥というものがないのか。集団で群れるしか能がない阿呆なのか。」

少年達を挑発する。

少年4「ぶっ飛ばされてぇのか、あぁ?」

男を睨み付ける。

男「ああ、最初からそのつもりで来ている。お前等みたいに弱い者にしか暴力を向けられない人間などに脅迫なんか効かん。」

少年3「良い度胸してんじゃん?えぇ?男よぉ。」

地を踏みにじりながら男に近づく。

男「度胸も持ち合わせてないお前には言われたくない言葉だな。」

その言葉が頭にきたのか男の顔面に拳が降りかかる。

少年3「クソがっ!!」

それを避けもせずに顔面に喰らう。

男「・・・ふん。」

拳を受けながらも少年3の首を一瞬にして掴む。

少年「なっ!?嘘だろ・・・。」

まともに喰らったなら倒れるか怖じ気づくかのどちらかだが、男は反撃をした。

少年3「ぐっ・・・!?は、はな、放せぇ・・・!」

必死に解こうと抵抗をする。

男「・・・そうしよう。」

近くの木まで少し歩く。

魔女(えっ・・・何を・・・?)

男は少年3の首を掴んだまま木の目の前を立つ。

男「殴りたいなら木にでも殴ってろ。」

少年3の頭を木に打ちつける。

少年4「お、おい・・・。」

木と人がぶつかる度に樹皮が壊れ、頭の骨に亀裂が入っていく。

何十回も打ち続ける様を魔女や少年達は見ているだけだった。

男「どうだ、気は済んだか。」

少年3「あうぅ・・・。」

顔は崩れており、血みどろになっている。

男「まだ、足りんようだな。」

少年3「うわあああぁ!!!やめてくれええええ!!!!」

大声で泣き叫び始めた。

だが、抵抗する余力がないのかされるがままである

まるで、ゴミを捨てるかのように少年3を離す。

少年2「いくらなんでもやり過ぎだろ!?」

男「お前等もそこの女の子と同じようなことをしてるんだ、これ位当然だろう。」

男から逃げるように下がっていく。

男「同じような痛みを受ける覚悟もない奴にどうこう言われる筋合いはない。」

少年達は男が化けもののように見えた。

少年「く、来るんじゃねぇ・・・。」

足が震えながらも後ろに退いていく。

少年4「こっちに来んなぁ!」

男「ほう、僕を化けもののような目で見ているのか。色々と忙しい奴等だな。」

冷酷無比、この頃の男を表す言葉だろう。

乙!

男「お前等に説教喰らわせても無理なら、その体で分からせるしかないだろう。」

少年達に近づいていく。

少年「お、おい!これ以上俺たちに傷つけたら先生や親に言いつけるぞ!?」

男「構わん、好きにしろ。元々、お前等を殺すつもりで相手をしている。」

殺す、無論このときの男が言った言葉はそのままの意味である。決して冗談ではなかった。

男「お前等みたいなクソ野郎なんか、この世にいてもいなくても同じだ。僕だってそうだ。」

いてもいなくても同じ、いない方が周りのためだろうと男は考えていた。

少年2「お前、犯罪者になるんだぞ!?人を殺すことを怖くねぇのかよ!?」

男「何でお前等を殺すことに恐怖を抱く必要がある。僕が人を殺すなんて虫を踏みつぶして絶命させるくらい簡単なことだ。」

あっさりととんでもない言う、精神的には人間の範囲ではないだろう。

少年3「に、人間じゃねぇ・・・!こいつ狂ってる!!」

男「お前等と同じだと思わないことだ、どこにでも犯罪者はいる。」

男「さっさと消えろ、それとも見るも耐えない姿にしてやろうか。」

少し血がついた顔を自分の服で拭きながら言う。

少年「お、おい!早く逃げるぞ!!!」

少年は少年3に向かって走り、こいつを助けねばと背中におんぶする。

少年2「何してんだ!逃げろ!!」

少年3を見捨てるようかに言い、逃げるよう催促する。

少年「お前ふざけたこと言うんじゃねぇ!!見捨てれるわけねぇだろうが!!!」

少年3をおぶって、少年達は逃走した。

男「・・・。」

何事もなかったように歩き出し始め、森へ再び歩こうとする。

魔女「あの・・・君!!」

その男を呼び止める。

男「何?」

明らかに不機嫌な表情と声を発する。

魔女「え、えっと・・・ありがとう・・・。」

特に恐怖を抱くこともなく平然とお礼を言う。

男「・・・この森の魔女だろう?」

魔女「え?う、うん・・・。」

また非難されるのか、と俯く。

男「気をつけろ、無闇に人里の近いところは来ない方が良い。さっきのような奴等に絡まれる。」

魔女の顔が少し明るくなった。

魔女「うん・・・君さ、私のこと怖くないの?」

だんだんと声がしっかりになり、質問する。

男「怖がる必要がどこにある?魔女というだけで非難する意味が分からない。」

全く感情がこもっておらず、淡々と話す。

男「仮に何もしていなくても、僕達人間は、人畜に害を与えるという勝手な概念で非難している。」

男は魔女を一切怖がっていなかった。

乙!

支援

保守

ふぉしゅ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年12月26日 (金) 23:46:44   ID: zW-fEipd

いいぞもっとやれ

2 :  SS好きの774さん   2016年01月06日 (水) 08:19:22   ID: wWfKdpc5

このスレの主です。プロキシ規制で書き込めなくなりました

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