マオウシステム (182)
初めてSS投下してみます。至らない所が多々出てくるかと思いますが、その際はご指摘・指南をお願いします(´・ω・`)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1413562415
●序章
「勇者よ、よくぞここまで辿り着いた」
「今こそ決着の時だ、魔王!」
「さて、始めに言っておくが…私を倒しても第二第三の魔王が必ず現れるだろう」
「いや、始めに言うセリフじゃないだろそれ」
「倒されてからでは言えないからな。それに大事な事だから先に言っておいた」
「倒されるのが前提かよ」
「それはさて置き…勇者よ、私と手を組まぬか?手を組むのならば、世界の半分をやろう」
「断る」
「魔王、キサマのせいで大勢の命が失われた…それに」
「お前の恋人の事だろう?言わずとも判っている。あ奴を魔族にした事
…そして、そのせいであ奴を自らの手にかなければならなくなった事…それを恨んでいるのだろう?」
「…軽々しく口にするな!!お前はこのまま、何も喋らず朽ち果てろ!」
「そうは行かぬ。お前とはまだ語るべき事はあるからな。そう…例えば、お前の先代、先々代の勇者の話…」
「勇者エイベル…勇者ノーブル…彼らは勇敢で優しい勇者の中の勇者だった…そんな彼らの死まで侮辱する気か!」
「そんなつもりは無い…ただ、語るべきが義務と感じただけだ。勇者と魔王の会話としてな」
「ほざくな!」
「そもそも勇者よ…お前は勇者という立場が故に何も知らない。これはあまり公平とは言えないだろう」
「………どういう事だ?」
「問いで返して悪いが、そもそも勇者とは何だ?」
「勇者とは、魔王…貴様を倒す者だ!」
「そう、正解だ。正確には、魔王と争う事が出来るだけの力を獲た勇気ある者の事を指す」
「それがどうした」
「では次に…魔王とは何だ?」
「貴様がそれを問うのか!……」
「そこは気にするな、答えよ」
「魔王とは…全ての人間の敵、魔族の王。そして、勇者に倒される存在だ!」
「ふむ…思ったよりも核心を射ている答えだな。その通りだ」
「っ………ふざけるな!!!何故魔王の立場でそれを肯定する!今言葉にしたのは、俺の言葉だ!俺の信念だ!勇者である俺の言葉だ!
それを…魔王である貴様が肯定するんじゃない!」
期待ッ!
セリフ毎に改行した方が見やすいかも
人物が増えてくるなら、セリフ前に名前をつけたり等
例:
魔王「さて、始めに言っておくが…私を倒しても第二第三の魔王が必ず現れるだろう」
勇者「いや、始めに言うセリフじゃないだろそれ」
魔王「倒されてからでは言えないからな。それに大事な事だから先に言っておいた」
勇者「倒されるのが前提かよ」
「事実、概ねそれで合っているのだから仕方があるまい。ただ付け加えれば、勇者が魔王に命を奪われるという面もある」
「当たり前だ!勇者と魔王はその命を賭けて雌雄を決するのが宿命なんだぞ」
「では問おう…その『宿命』は誰が決めた?」
「つくづく下らない事を…! 決めたのは俺と貴様、勇者と魔王だ!魔王が人を苦しめ、殺し、魔族に堕とし
…この世に絶望を振り撒いた!だから勇者が立ち上がらねばいけなくなったんだ!」
「それだけの認識があるならば…そうだな、良いだろう。そろそろ決着を付けよう」
「…貴様の言いたい事の意味がさっぱり判らない…いや、元々そんな戯言に付き合う方が可笑しかったんだな…ハハッ…」
「いずれ判る」
勇者の攻撃
クリティカルヒット! 勇者は魔王に9999のダメージを与えた
魔王はようすを見ている
クリティカルヒット! 勇者は魔王に9999のダメージを与えた
魔王はようすを見ている
クリティカルヒット! 勇者は魔王に9999のダメージを与えた
魔王はようすを見ている
クリティカルヒット! 勇者は魔王に9999のダメージを与えた
魔王はようすを見ている
クリティカルヒット! 勇者は魔王に9999のダメージを与えた
魔王はようすを見ている
クリティカルヒット! 勇者は魔王に9999のダメージを与えた
魔王はようすを見ている
クリティカルヒット! 勇者は魔王に9999のダメージを与えた
魔王はようすを見ている
クリティカルヒット! 勇者は魔王に9999のダメージを与えた
魔王はようすを見ている
クリティカルヒット! 勇者は魔王に9999のダメージを与えた
魔王はようすを見ている
クリティカルヒット! 勇者は魔王に9999のダメージを与えた
魔王はようすを見ている
クリティカルヒット! 勇者は魔王に9999のダメージを与えた
魔王はようすを見ている
クリティカルヒット! 勇者は魔王に9999のダメージを与えた
魔王は倒れた
勇者は 65535の経験値を得た
勇者はレベルが上がった
勇者はレベル100になった
勇者は覇者の叫びを覚えた
勇者は魔王の兜を手に入れた
勇者は魔王のマントを手に入れた
勇者は魔王の鎧を手に入れた
勇者は魔王の剣を手に入れた
勇者はノーブルの指輪を手に入れた
勇者は宝物庫の鍵を手に入れた
「終わった…これで終わったんだ…これで終わったんだ…エレナ」
勇者は恋人の名を呟いた
勇者は長き旅を終えた
第一章―新たな勇者―に続く
>5 ご指南ありがとうございます。名前は演出の都合で伏せたい場面があるので、無くても見やすすくなる方向に努力or判り辛さが目立つようなら、状況に応じてON/OFFで行きたいと思います。
改行は次回からやってみます。
期待ー
表現方法は>>1の望むように
思った以上に紛らわしくなってしまったので、一章以降はご指南頂いた通り名前を付けてみます。
文章力がもっと欲しいーーー
●第一章 ―新たなる勇者―
―謁見の間―
国王「なんと!ではそなたは本当にあの魔王を倒したと言うのか!?」
勇者「はい、証拠の品はこちらに…」
勇者は魔王の装備を国王に差し出した
国王「これは確かに…むむ…偽者ではいようだ」
勇者「それとこちらを…先々代の勇者、ノーブル様の所持していた指輪です。残念ながら、先代勇者…エイベル王子の遺品は見受けられませんでしたが」
国王「そうか……しかし…事が事だ。そなたの報告を疑う訳では無いが、魔王討伐を公表するには…まずは確認を行わねばならぬ。判ってくれるな?」
勇者「判っております、国民には全てに確信を持ってから事を明らかにして頂きたく…」
国王「判ってくれるか、すまぬな」
勇者「いえ。では、私はこれで…」
国王「待て。時に今夜の宿は決めてあるのか?」
勇者「いえ…そう行った事は特に何も…決戦の事で頭が詰まっておりましたので」
国王「では、そなたさえ良ければ城の客間…王子の部屋だった場所にに泊まって行くが良い
…いや、事の全てが明らかになるまでここに留まっていてはくれぬか?」
勇者「国王様さえ、それで宜しいのでしたら…」
勇者は客室に泊まった
―勇者の夢の中―
勇者は 今は亡き恋人の夢を見ている
勇者「何故だ…何故君が魔族なんかに!」
魔族エレナ「私は…魔王様に魔族にして頂いたの、そして全てを知ったの。いえ、全てを知って魔族にして頂いたの?」
勇者「くっ…エレナ……俺達の仲間だった頃の君はもう居ないのか!」
戦士「迷うな!そいつはもう魔族だ!人間じゃない!」
僧侶「おまけに人間だった時よりも格段に魔法の威力が上がってる。早く倒して、このままじゃ…うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
エレナの攻撃
僧侶と戦士は消し炭になった
勇者「エレナは…誰よりも優しかった…誰よりも強い心を持っていた……お前は、エレナじゃない!!エレナであってたまるか!!」
勇者の攻撃
クリティカルヒット! 勇者はエレナに358のダメージを与えた
エレナは倒れた
勇者は 11043の経験値を得た
勇者はレベルが上がった
勇者はレベル51になった
.
.
.
勇者はレベルが上がった
勇者はレベル72になった
―王宮の客間―
勇者「嫌な夢だ……」
勇者は目覚めた
―バルコニー―
国王「…あらゆる方面からの情報を統合した結果、勇者が魔王を倒したという事実が確固たる物となった。故に、その事実…即ち魔王討伐の完遂をここに宣言する!」
国民A「わぁぁぁぁー!!!やった!これで苦しみから解放される!」
国民B「勇者様っ万歳ーーー!!」
国民C「国王様万歳!!!」
国民D「王国に栄光あれーー!」
国王「見よ勇者…これがおぬしの勝ち取った物…守り切った物じゃ」
勇者「いえ…私一人の力ではありません。一緒に戦い抜いて来たパーティーメンバーたち、私を魔王の城まで導いてくれた仲間達…
道を切り開いてくれた王宮騎士達…そして……ここにいる国民全員で勝ち取った勝利です」
国王「謙遜をするでは無い…全てはおぬしが居なければ成し得る事の無かった事じゃ」
勇者「ですが…」
国王「少なくとも、ここに居る国民達はそう思っている。今はその気持ちを汲んで手を振ってやってはくれぬか?」
勇者「…………はい」
―王国と帝国の国境にある 領主の屋敷―
メイドA「ねぇねぇ知ってる?うちの領主さま、勇者様だったんだって」
メイドB「そうなの?こんな場所とは言え、あんなに若いのに領土を任されるなんて、ただ者じゃないとは思ってたけど…じゃぁ、やっぱり凄く強いの?」
メイドA「そうそう、本来なら使用人や魔法使いにやらせるような仕事も自分ホイホイでやっちゃうくらい」
メイドC「だったら…もし隣の帝国が攻めて来ても大丈夫よね」
メイドA「ちょっと、変な事言わないでよ!帝国って、200年以上も続いてる同盟国でしょ」
メイドC「でも…それって最初は魔王討伐までの一時的な物だったんでしょ?」
メイドA「それはそう…だけど……」
―王宮の一室―
軍師「―――以上、調査隊からの報告でした」
国王「やはり………帝国との戦争は避けられるぬか」
大臣「しかし、もし戦争になったとしても国境の領地には元勇者が配属されているのですから…」
国王「彼を軍人のように扱うな。任務ではなく報酬とてあの領地を与えたのだぞ」
??「表向きは…でしょう?この事態を招いた張本人なんだから、一役かって貰うくらいは良いでしょうに。国王様はつくづくあの勇者さまの事がお気に入りのようですね」
国王「勇者では無い…今はもう、元勇者だ…」
??「おっと失礼。しかしそもそもが…あの勇者さまが魔王を倒した事が原因な訳で…」
国王「口が過ぎるぞ…」
??「おおっと、またもや失礼…しかし国王さま、この事態の収拾をどうやって付けるおつもりで?」
国王「………まずは、新たな勇者を探す」
??「成る程…ではしばしお手並み拝見としましょう」
―勇者の夢の中―
勇者はかけだしの頃の夢を見ている
国王「おぬしが此度の勇者か」
勇者「はい」
国王「では、此度の作戦についての説明を改めてさせて貰う」
勇者「はい」
国王「大まかに言えば…勇者であるお主がモンスターを倒して力を付け、最終的に魔王を倒すのが目的だ」
勇者「はい」
国王「その宝箱には軍資金として300Gとひのきの棒が入っている。他に聞いておく事は無いな?」
勇者「いいえ」
国王「では何を聞きたい?」
勇者「他の勇者について」
国王「他に勇者となる者はおらぬ、だが無論一人で戦わせる訳では無い。旅の途中でおぬしが出会った者を、パーティーメンバーとして連れて行くが良い。他にも何か聞きたい事はあるか?」
勇者「はい」
国王「では何を聞きたい?」
勇者「装備について」
国王「武器や防具はただ持っているだけでは意味を成さぬ。しっかりと装備して戦闘に望むのだ。また装備の中には特殊な力を持った物も…」
勇者「いえ、そうではなく」
国王「では何を聞きたい?」
勇者「有象無象の大多数に与えるのならまだしも、少数精鋭のはずのパーティーを汲むための軍資金が300Gとひのきの棒と言う理由は? 金銭はともかく、せめて一般兵装を支給して頂きたいのですが」
国王「当然そこは気になるだろう…だが、それを行う訳には行かぬ」
勇者「何故ですか?」
国王「ある程度強い装備を与えれば、戦いは楽になる…当然侵攻も早まる事だろう」
勇者「そう思うのでしたら何故?」
国王「だが、そうして武具に頼った歩みを進めた所で、いずれ装備の力では勝てぬ相手にぶつかる。…先代勇者のようにな」
勇者「………」
国王「改めて問おう。おぬしの最終目的は何だ?」
勇者「魔王討伐です」
国王「では、力を付け自らを高める事を最も重要視するべきだ。何、路銀が心許ないと言う意味では心配をするな。モンスター討伐による報奨金の話を後で聞かされるはずだ―――」
―領主の寝室―
勇者は目が覚めた
メイドA「領主さまっ!!!」
勇者「どうした、朝っぱらから騒々しい…」
メイドA「敵襲です!帝国が――――!」
勇者「なっ………―――」
―王宮の一室―
国王「やはり来たか…」
大臣「えぇ…しかもこの期に乗じ、公国や合衆国までもが動きを見せ始めているようです」
??「ところで国王様。新しい勇者探しの件はどうなったんですか?」
国王「………」
??「聞いてはいけない事だったようですね。しかし、よりにもよって彼…元勇者の治める領地に攻め込むとは、中々面白い事をしてくれますねえ」
国王「茶化すな!」
??「はいはい、こんな時の王様は怖い怖い。にしても、何であえてあの場所なんでしょうね。迂回するなりして別の場所から攻め込んだ方が結果的に被害も消耗も少ないでしょうに」
国王「…勇者を倒せば実質上の勝利である事を判っているのだろう」
??「何ですかそれ?国を倒さずに勇者を倒せば勝利?そんなの戦争じゃないでしょう」
国王「そう…戦争にもならんのだよ。わが国も兵力は魔王軍との戦争でほぼ底を突き、事実上外装が残っているに過ぎん。攻め込まれればそこで終わりの状況だ」
??「だったら尚更迂回して攻め込むべきでは?一方的に攻め込んで終わりでしょう?」
国王「では、そうして攻め込んだ後に何が残る?」
??「そうですねぇ…一方的に虐殺された死体の山に、ボロボロに壊れた土地や建物…逆を言えば、何も無い土地と生き残った僅かな奴隷…」
国王「そして彼…勇者だ」
??「いやいや、勇者一人が残ったからと言ってどうするんです?国が負けた後に出てきても…」
国王「いや、彼ならばやる…例え国が無くなろうとも、侵略者に屈する事無く最後まで戦う。そうした後の結果は…」
??「成る程……後ろから教われて軍を失うリスクを侵して、ボロボロになった国を手に入れるよりも…早々に決着を付けて、残った戦力で無傷の国を手に入れた方が良い…そういう訳ですか」
国王「恐らくは……な」
―国境 帝国軍の野営地―
帝王「バーカ!コソコソ勇者を避けて国を手に入れたって、他の国の笑い者になるだけだろうが。こういうのは、正面切って押し切った方が後腐れ無ぇんだよ」
部下A「で、ですが帝王陛下…」
カイン「良いじゃないですか、帝王様らしくて。僕はこういうやり方好きですよ?」
帝王「だろ?お前もそう思うだろ?」
部下A「カ、カイン隊長まで……」
カイン「あ、でもね。二人とも間違ってる所があったから訂正してあげるよ」
帝王「ん?」
部下A「え?」
カイン「まず帝王様から…相手は勇者じゃなくて、『元』勇者ね。
次にキミ…名前は何だっけ?まぁ良いや。僕の事はカイン隊長じゃなくて……
勇者様って呼んでよね―――」
―国境―
帝王「――――以上を以って宣戦布告とし、先ず元勇者たる領主に合戦を申し込む物とする!」
??「開戦…そして事実上の最終決戦という事になりましたねえ」
国王「すまぬ…本来ならば、もう勇者では無いお主にこのような事をさせる訳にはいかぬのだが…」
勇者「いえ、構いません。どの道勇者としてでは無く領主とてこの戦には望まねばいけないと考えていましたので」
国王「しかし…」
??「良いじゃないですか王様、本人がやる気なんだから。ねぇ勇者さま、相手がモンスターじゃなくて人間でも倒せますよね?」
勇者「無論…」
―戦場ー
兵士A「勇者と言えど相手は一人だ!押し切れー!」
兵士B「回り込め!視角から攻撃するんだ!」
勇者の攻撃
兵士Aは倒れた
勇者の攻撃
兵士Bは倒れた
.
.
.
兵士1D03は倒れた
兵士1D04は倒れた
部下A「陛下、こちらの軍団は意味を成しているんですか??傷一つ負わせられないまま切り伏せられていますが…」
帝王「雀の涙程だが意味が無いって訳でもなぇさ。いくら元勇者と言えども、あれだけの数を相手にすれば体力も減るし魔力も使う」
カイン「少しずつ…少しずつだけど、ネチネチネチネチ攻められて色んな物を削られて行くのさ」
帝王「さすがは経験者、嫌な思い出は覚えてるって感じだなぁ?」
カイン「そんな思いをさせた張本人は黙っててくれないかなぁ?」
―勇者の回想―
勇者は昔の出来事を思い出していた
勇者「どうしたエレナ…さっきの戦闘で怪我でもしたのか?」
エレナ「あ、勇者くん。ううん、ちょっと考え事してただけ」
勇者「またか?今度は一体何を考えてたんだ?」
エレナ「モンスターと動物の違いを…ね」
勇者「モンスターと度物の違い?それは、人間を殺す事が根本にある生き物…ってだけじゃないのか?」
エレナ「うん、それもあるね…モンスターは普通の動物と違って、食べるためだとか守るためにじゃなくて…
人間を殺す事その物を目的として襲ってくる。でもそれだけじゃないんだよ」
勇者「と言うと?」
エレナ「もっと根本的な部分…例えば、私達がはぐれ狼って呼んでるモンスターと、普通の狼。この二匹の違いは何だと思う?」
勇者「違い…か?そうだな…見た目はほとんど同じで、決定的に違うと言えば強さくらいか?」
エレナ「そう、そこだよ。見た目が近いって事は、擬態か近い種族のどちらかって言う事になるんだけど…
種族が近いと仮定した場合、能力の開きに説明を付けられる仮説があったんだよ」
勇者「どういう事だ?判り易く教えてくれ」
エレナ「つまり…個体差か突然変異。はぐれ狼も狼も元は同じ種族だったけれど、何らかの要因で枝分かれしたんじゃないかって思うんだ」
勇者「それはまた突拍子も無いな…」
エレナ「まぁね。まぁ他にも…動物では使えない魔法を使って来たり、異種族間では有り得ない統率が行われたり
モンスターの生態については判らない事ばかりなんだけど…ね」
―戦場ー
兵士31A2は倒れた
兵士31A3は倒れた
―国境 帝国軍の野営地―
帝王「さて、そろそろ兵も尽きそうな事だし…頃合だろ」
カイン「そうだね、じゃぁちょっと引導を渡して来るよ」
帝王「おう、頑張って来いよ」
部下A「隊長、どうかご無事で…」
カイン「…隊長じゃなくて勇者様」
―戦場ー
カイン「という訳で真打登場ー。初めまして☆」
勇者「…今までの兵士とは違うな…隊長格が今更登場か?」
カイン「判ってくれてるねー、うんうん嬉しいよ。ただ、一つだけ訂正して欲しい所があるんだ」
勇者「何だ」
カイン「隊長格ってのも間違いじゃないんだけど…できればこう呼んで欲しいんだ」
カイン「―――勇者様 ってね」
勇者の攻撃
勇者は身をかわした
勇者「…どういう事だ?」
カイン「あれれ?知らないの?勇者って、一人だけじゃないんだよ?キミの前の代ではエイベル、その前はノーブル…」
勇者「そんな事は知っている。聞きたいのはそこでは無い」
カイン「あぁうん良いよ、聞かなくても良いから。面倒だから直接教えてあげる…よ!!」
勇者の攻撃
勇者は身を守った 161のダメージを受けた
勇者「この力…本当に勇者…なのか?」
カイン「だーから言ってるでしょ?正真正銘僕は勇者、君はただの元勇者」
勇者の攻撃
勇者は身をかわした
勇者「………」
カイン「中々上手く避けるね、これが経験の差ってヤツ?でも……ヴォルカニック!ゲイザー!!」
勇者は ヴォルカニックゲイザー を使った
勇者は勇者は大地を剣で叩き付けた
勇者の足元が爆発し 溶岩が吹き上がった
勇者は空中に吹き飛ばされた
カイン「そんな物で…僕に勝てるとは思わないでよ…っ!」
勇者は空中の勇者に向けて斬撃を放った
クリティカルヒット!勇者は勇者に1203のダメージを与えた
??「国王様…あの力ってもしかして」
国王「間違い無い、あ奴こそ彼の次の世代の勇者。…しかし、よりにもよって帝国内で勇者が現れるとは…」
??「しかもあの勇者、かなり強いんじゃないですか?元が付く勇者様の方は大丈夫でしょうか?」
国王「あの勇者…高く見積もっても13、4才程度。にも関わらず振るっているその力は、明らかにその年齢を超えた物。
あれだけの力を得るために、一体どれだけの地獄を見たと言うのか…」
??「マトモな育てられ方してない子供は何するか判らないって事ですよね。おー怖い」
カイン「足に当たったみたいだね。それならもうチョコマカ避けられないよね。だったらもう引退してくれよね。ねぇ、ねぇ?」
勇者の攻撃
勇者は403のダメージを受けた
勇者の攻撃
勇者は421のダメージを受けた
カイン「しつこいなぁ、早く引退して、早く死んでよ、このために僕がどれだけ苦労した判らないでしょ?」
勇者の攻撃
勇者は408のダメージを受けた
勇者の攻撃
勇者は411のダメージを受けた
カイン「それにしたって、勇者の力って凄いよね。モンスターを倒せば倒しただけどんどん強くなるんだもん」
―勇者の回想―
勇者は昔の出来事を更に思い出していた
エレナ「この前の話覚えてる?」
勇者「この前の話って、どの話だ?」
エレナ「モンスターと動物の違いの話」
勇者「あぁ、あれか。で、その違いの話がどうしたんだ?」
エレナ「強さと目的の他にも、もう一つ判りやすい違いがあったんだよね…」
勇者「と言うと?」
エレナ「キミ…勇者くん」
勇者「は?どういう事だ?俺がモンスターだとでも言いたいのか?」
エレナ「そうじゃなくって………勇者くん、モンスターを倒すと一気に強くなるよね」
勇者「あぁ、そりゃぁ経験を詰めば強くもなるだろう」
エレナ「って言うか…何て言うか、経験を詰んで戦いに馴れるって言うよりも
モンスターを倒せば倒しただけ、段階を上げるみたいに勇者くん自体が強くなって行ってると思うんだ」
勇者「それって普通じゃないのか?」
―戦場ー
カイン「だから僕は、ずっとモンスターを倒してたんだ。勇者になったその時から、狭い石壁の中で何匹も何十匹も何百匹も何千匹も何万匹も!
だって僕は勇者だから、勇者は強くないといけないから!強くなければ勇者じゃないんだから!」
―勇者の回想―
勇者はエレナの言葉を思い出していた
エレナ「普通じゃないよ。普通は精精、鍛錬で筋肉を鍛えたり身のこなしを磨いたり、魔力の扱いを練習する程度
でも勇者くんのはそれと明らかに異質…何て言うか、色んな力その物が底上げされてる感じがする」
勇者「そうか、ならばそれが………これこそが勇者の証という事なのか」
―戦場―
勇者の攻撃
勇者は391のダメージを受けた
カイン「あぁもう紛らわしいなぁ!!早く死んでよ!」
国王「しかし…それだけの地獄を見たとしても、あ奴の見た地獄には届かぬ。そして、あ奴の勇者としての経験には遠く及ばぬ」
勇者の攻撃
クリティカルヒット! 勇者は勇者に9999のダメージを与えた
カイン「あ………れ…………?」
勇者は倒れた
勇者は 18377の経験値を得た
勇者はエレナの言葉を思い出していた
エレナ「それで、話を戻すんだけど……………さっきの盗賊退治、人間をこ…倒した時って、強くならなかったよね」
第二章 ―脅威の再来― に続く
ちなみに、七章くらいで終わる予定です
乙
おつ
カインという名のモブ
期待
●第二章 ―脅威の再来―
―王宮の一室―
大臣「国王…これはやはり由々しき問題ですぞ」
軍師「あの仕組みが正しく働いていれば、こんな事には…」
大臣「今更そんな事を言っても始まりますまい」
元帥「そもそも、前回に不測の事態が重なった事こそが全ての問題…」
国王「………現在、魔族の動きはどうなっている?」
諜報員「はっ、動き出すのは時間の問題かと」
??「頭を失えば統率を失い、残された身体だけで暴れ回る…ある意味予想が出来ていた事態とも言えますねえ」
大臣「国王…決断せねばなりますまい。過ちを正し本来あるべき正常な流れへと戻すのか…」
??「それとも…この仕組みを打ち砕き、新たな仕組みを構築するのか…」
国王「……………」
伝達員「朗報!朗報です!」
大臣「何じゃ騒がしい、ここをどこだと思っている。もっと礼節をもって…」
伝達員「ですが……勇者が、新しい勇者が見つかったとの報告が!!」
一同「「「「―――――――!?」」」」
―勇者の夢の中―
ノーブル「大変だったようだね…お疲れ様」
勇者「貴方は…先々代勇者、ノーブル様?ここは一体……そうか、死後の世界―」
ノーブル「いや、ここはキミの夢の中だ」
勇者「夢の中…?では何故貴方が私の夢の中に?」
ノーブル「まず、私が魔王に敗れた事は知っているね?」
勇者「…はい」
ノーブル「その時私の魂は魔王に囚われてしまった…だが、キミが魔王を倒してくれたおかげで開放され、今こうして現れる事が出来たんだ」
勇者「成る程…しかし、何故今そんな事を?」
ノーブル「ただ一言キミにお礼を言いたかっただけなのだけど…中々良い機会が無くてね」
勇者「いえ、お礼など…」
ノーブル「受け取っておくれ…ありがとう。そしてキミは負けないでくれ」
勇者は目が覚めた
―領主の館の食堂―
執事長「領主様、お客様がいらっしゃいました」
勇者「客?約束は無かった筈なんだが…誰だ?」
執事長「それが………」
エレル「エレナの妹のエレルと言います。初めまして」
勇者「なっ…エレナに妹!?…そんな話は聞いた事が無いぞ。いやしかし、どこと無く面影が…」
エレル「あ、嘘ですから」
勇者「――――――!!!」
エレル「本当はエレナの姉です」
勇者「よし、摘み出せ」
執事長「畏まりました」
エレル「わっ、ちょっとした冗談じゃないですか!エレナに関する情報を持って来たのは本当なんですから、話くらい聞いて下さいよー」
勇者「……何?」
―領主の部屋―
勇者「…では話を聞かせて貰おうか、もしまた冗談を言うのならば…」
エレル「判ってますよ…本当、エレナの言う通り空気が読めなくて融通の利かない人ですね…」
勇者「…………話をする気が無いのなら…」
エレル「わー!わー!もう、判ってますから!とりあえずエレルっていう名前は本名です。エレナとの関係は従姉妹で、あと文通相手でもありました」
勇者「文通?それも聞いた事が無いんだが…」
エレル「正確には、魔術を使った文章交信ですね。で、当時はあんまり気にならなかったんですが…最近ちょっと気になる文章を見付けまして…」
勇者「変な文章?」
エレル「内容はいつもと変わらない勇者様との惚気話だったんですが…」
勇者「いや待て、今何て言った?惚気話?そんなのをエレナは他人に送っていたのか!?」
エレル「そこ、話の腰を折らない」
勇者「ぐぬ…」
エレル「文章に違和感があったので並べ替えてみたら、案の定暗号だったんですよ。で、その内容なんですが……」
勇者「一体何だったんだ?」
エレル「全て仕組まれて居た事だった…誰も信じてはいけない。私は私で出来る事をしてみる」
勇者「………」
エレル「………どうですか?何か心当たりは」
勇者「…いや、正直漠然とし過ぎていて判らない。一緒に冒険をしてきた時は罠だらけだった。それこそ、魔族のみならず人間からも…な」
エレル「ですよねー………まぁただ、それが送られて来た日付が…ここ、右上に記入してあるんですけど」
勇者「…………」
エレル「心当たり、ありました?」
勇者「この日付は…」
エレル「この日付は?」
勇者「エレナが……………――――魔族に堕ちる1日前だ」
―王宮の一室―
国王「それで…新たな勇者の行方は?」
諜報員「それが……」
国王「依然知れずか」
諜報員「申し訳ございません」
国王「何としても見つけ出せ。この国の…いや、全世界の命運が掛っている」
諜報員「ははっ、承知しております」
??「中々苦労しているようですね。新たな勇者探しの方も…」
国王「お前か…いい加減現れる時くらいは挨拶をせよ」
??「おっと失礼、お邪魔しています」
国王「…ふん。それで、今日は一体何の用だ」
??「今、王宮が血眼になって探している新たな勇者の事なんですけど…」
国王「その口ぶり…何か知っているのか?」
??「はい…ただ一つ、王様には謝らないといけない事があるんですよ。許してくれますよね?」
国王「…言ってみろ」
―領主の寝室―
勇者「所で」
エレル「ん?何ですか」
勇者「何故お前がここに居る」
エレル「必要な資料が勇者様の部屋にあるからに決まっているじゃないですか。あ、もしかして…夜伽に来たとか思っちゃいました?」
勇者「…資料だけ持って、とっとと客室に帰れ」
エレル「つれないですねー…ところで勇者様、隔世遺伝って知っていますか?」
勇者「何だ、藪から棒に…あれだろう。子は親よりも、祖父母に似るとか言う…」
エレル「大体正解です…で、ここからが本番な訳ですが…エレナの事です」
勇者「……エレナの…?」
エレル「私とエレナは従姉妹…つまり祖父母が同じな訳ですが、従姉妹の中でも結構似ている方なんですよ」
勇者「それで…どういった話になる?」
エレル「つまり…」
勇者「つまり?」
エレル「具合もエレナとそっくりなんじゃ無いかと思う訳ですよ!どうですか試し…って、あぁー!無言で猫掴みは止めて下さい!!」
勇者「君…」
エレル「な、何ですか…?」
勇者「いくら従姉妹とは言え、言って良い事と悪い事がある。エレナは死者だ…死者を冒涜するような発言は止めろ」
エレル「んー…冒涜しているのはどっちでしょうね」
勇者「………どういう意味だ?」
エレル「冒涜って言うのは、暴言を吐いたり話の種に使って鹹かったりする事ですか?エレナは、こういう事をされたら怒りますか?」
勇者「あぁ………いや、違うな………少なくとも、俺が知っているエレナならばそうは言わない。多分こう言うだろうな」
勇者&エレル「「ナイス一本!くぅーぅ、勇者くんをからかうのにそんな手があったかぁー!!」」
エレル「プッ……」
勇者「ハッ…ハハハハ」
エレル「それで…思うんですよね。エレナだったら、きっと自分に縛られて勇者さまが辛い思いをしてるのは我慢できないだろうって…」
勇者「………」
エレル「だから…何を以ってエレナへの冒涜とするかを考えたら、きっと今の勇者様のエレナへの気持ちが冒涜なんだと思います」
勇者「………だったら。だったら何故、そんなエレナがあんな最期を…あんな道を進んでしまったんだ。
少なくとも俺が知っているエレナは、あんな…魔族に堕ちるような人間では無かった」
エレル「逆に聞きますけど……勇者様は、何でエレナがあんな事になったと思います?」
勇者「………」
エレル「むしろ…別の意味で逆に。エレナがあんな事をするには、どんな理由付けが必要だと思います?」
勇者「それは………………」
エレル「可能性を見出してくれたのなら、今はそこまでで良いです。エレナを信じてくれている事も判りましたし」
勇者「…そこまで言うからには、君はあの時のエレナの気持ちが判っている…確信を持っているんだな」
エレル「えぇ、まぁ……それと、二つ良いですか?」
勇者「ん?何だ?」
エレル「一つ目、私の事は君ではなくエレルと呼んで下さい」
勇者「あ…あぁ、判った。気を付ける」
エレル「二つ目、これはまぁ…自分で振っておいて何ですが…私の事は、エレナと重ねるので無く…エレルと言う一人の女としてして見て下さい」
勇者「――――っ………」
勇者は不意打ちを受けた
―帝国要塞内―
帝王「それで…っと、お前。名前は何だっけか?」
ヤスカル「ヤ、ヤスカルです。やっと名前を聞いて頂けました…」
帝王「んな事で一々感動するな。それより、さっきの話は確かか?」
ヤスカル「はい。王国から魔王の装備一式が消え去っておりました…」
帝王「成る程…で、それを確かと言い切るだけの根拠は何だ?他の場所に置いただけって可能性もあるだろ。事が事なだけに、不確かな情報は許されねぇぞ」
ヤスカル「それはもう、帝王様もこれを見て頂ければ…」
帝王「こりゃぁ……オイ、嘘だろ。これは………かの勇者、ノーブルの指輪じゃねぇか!」
―領主の寝室―
エレル「勇者は 1919の経験値を得た」
エレル「勇者はレベルが上がった」
勇者「やめろ」
エレル「えと…ごめんなさい。まさか勇者様も………その。私はてっきり、もうエレナと…」
勇者「………言わないでくれ」
エレル「ではその…ご馳走様でした?」
勇者「女の側が言う台詞では無いだろ。それ以上言うと、その格好のまま窓から放り捨てるぞ」
エレル「さすがにそれはアブノーマル過ぎるので勘弁して欲しいのです…」
―領主の館の大広間―
エレル「では一旦これで」
勇者「帰るのか?」
エレル「名残惜しくなってしまいましたか?」
勇者「よし帰れ」
エレル「つれません。もう少し女性の冗談に対する適応力を上げてくれても良いと思います」
勇者「大きなお世話だ」
エレル「まぁ良いです。ともかく私は一旦家に戻りますね。一旦」
勇者「強調しなくても良い」
エレル「大事な事だから二回言いました」
勇者「もう良いから本題に入れ」
エレル「はいはい…コホン。翻訳後のエレナの文章を改めて勇者さまに見せるために、家から装置を持ってきます」
勇者「いや、そこまで……」
エレル「した方が良いと思います。手間がどうこだとかそんな問題では無いと思うので」
勇者「では…そこまで言うなら頼む」
エレル「はい、頼まれました。それでは行ってきます」
―魔王城―
国王「魔王の装備の着心地はどうだ?」
??「中々に良い感じですよ。装備すると自動的にサイズ調整してくれるんですねこれ」
国王「………」
??「あ、凄い。フルフェイスなのに臭くないし息苦しくも無い……まぁそうですよね、用途を考えたらその方が実用的ですから」
国王「…口が過ぎるぞ」
??「おっと、これは失礼。ではまぁ…後はそちらも手筈通りにお願いしますよ」
国王「………………判っている」
―王宮の一室―
大臣「国王…それは本当ですか?」
国王「冗談で言える程軽い内容だと思うか?」
大臣「いえ、滅相もございません」
軍師「では…」
国王「うむ…早急に国民…いや、全世界に知らせねばなるまい」
―領主の寝室―
エレル「という訳で戻って参りました、第二の我が家」
勇者「お前をここの住人にした覚えは無い」
エレル「そんなぁー、一夜を共にした仲じゃないですかぁ。そこまで行ったらもう恋人同然でしょう?」
勇者「ツッコミのし難いボケをするな。良いから本題に入れ」
エレル「はいはい…ぇー…コホン、こちらが昨日私の家に取りに行ったエレナからの通信記録です。
あと始めに言っておきますが…これはエレナが手動で暗号化した物では無く、当時の記録を暗号化アナグラムに当て嵌めて作成されています」
勇者「…つまり?」
エレル「必要な部分だけを暗号化した訳ではなく、発音した言葉を原文そのままに残しているという事です」
勇者「………」
エレル「では、再生しますよ」
エレルが置いた石から、エレナの声が流れ始める
エレナ『そうか…これだ、普通の動物とモンスターの違い』
エレナ『でも、だとすると…人間と………の違いって…』
エレナ『人間では無い物だけど、……………とも同じ物じゃない…つまりは、特別な存在?』
エレナ『だとしたら…これに関する今までの常識が全て覆ってしまう』
エレナ『今まで謎だった物の正体が判ってしまう…うぅん、判ってしまった』
エレナ『どうしよう…こんな事に気付くべきじゃなかった、考えるべきじゃなかった。理解しなければ良かった』
エレナ『駄目…もしこの過程が正しいとしたら、もう誰も信じられない。全ての情報が嘘にしか見えない』
エレナ『どうしよう…このままじゃ勇者君は………』
エレナ『そうか…そうすれば良いんだ。この方法なら…うん、きっと上手く行く』
エレナ『私は私に出来る事をしてみる…それしか無い』
エレナ『後は…エレルなら、エレルならきっとこの事を理解して協力してくれる。エレル、勇者君をお願い』
勇者『どうしたエレナ。もうすぐ魔王の居る駐屯基地だぞ』
エレナ『うん、ちょっと…調べておきたい事があってね』
勇者『…あまり無茶をするなよ』
エレナ『大丈夫、私を信じて』
勇者「………」
エレル「………これが…私に送られて来た文章の全文」
勇者「…エレナが……何かに気付いて、何かに警戒しているのは判る。そして…示唆している可能性が何の事なのかもある程度」
エレル「そこはまだ踏み込まない方が良いと思います…が」
勇者「しかし…その核心に、エレナの決断の理由があるのは間違い無い。だったら俺は…――――」
執事長「領主さま!!!」
勇者「…どうした?」
執事長「い、今…国王様かのら伝令で……ぉ、そ、その!!」
勇者「落ち着け、でなければ言葉も出せないだろう」
執事長「は、はい……………その…魔王が…」
勇者「……魔王?魔王がどうした?」
執事長「魔王が…再び魔王城に君臨しました」
―バルコニー―
国王「皆の者、心して聞いて欲しい。昨日魔王城より帰還した密偵からの確かな情報だ。…魔王が、再び魔王城に君臨した。
我が国の宝物庫に保管していた魔王の装備もその全てが消え去っており、この事実を一層深く刻み付けている
だが…だが決して我々はこの事実に屈っしはしない!。例え以前の魔王が蘇ったのであろうと、新たな魔王が即位したのであろうと
我々人間は必ず勝利してみせる!」
帝王「おぅおぅ、こっちの国王様も中々に威勢が良いじゃねぇか」
大臣「協定を破った上に返り討ちにされた帝国の方には、口を謹んで頂きたいものですな」
帝王「そちらさんこそ、どの口がそれを言ってるんだ?協定の前提を破ったのは…」
国王「よさぬか大臣。帝国は一時的にいざこざがあったとは言え、今では同盟国だぞ」
大臣「し、しかし…」
帝王「国王様が直々にあぁ言ってるんだ、仲良くしようぜ?なぁ大臣さんよ」
大臣「ぐ…ぐぬぬ…」
国民A「勇者様が来られたぞーーーーーー!!」
国民B「うおぉぉぉぉーーーー!!」
帝王「お、主役様の登場か?」
勇者「勇者、遅れながら馳せ参じました」
国民C「勇者様だ!」
国民D「そうだ、勇者様ならきっとまた―――」
帝王「…国王の言葉を真正面から信じちまって…お気楽な国民だな本当……ただ単に、勇者が仕留めそこなったとか、そういう可能性を考えないのかね…」
大臣「帝王殿…勇者の力を直接見た貴方ならばそれが無い事くらいは判るのでは?」
帝王「ま、そりゃそうだがな」
たまにはageてもいいんじゃよ
更新の時とかあがってれば見つけやすいしありがたい
―連合作戦室―
国王「前線を退かせたにも関わらず、一度ならず二度までもお主を戦に狩り出す事…この上無く遺憾に感じておる。すまぬ、勇者よ」
勇者「顔をお上げ下さい、王様。例え引退しようと、これは勇者に背負わされた責務…そう考えております。
それに…私個人としても思う所がありますので。苦には感じておりません」
国王「そうか…そう言って貰えるのは助かる」
帝王「んじゃ、そろそろ本題に入らせて貰うぜ?今回の作戦は…まず帝国軍が前衛になって」
伝達員「あの…いえ、それが…」
帝王「あぁん?話の腰を折るんじゃねぇよ」
伝達員「ですが…その………魔王軍からの要請がありまして……」
帝王「はぁぁっ!?何ふざけた事言ってんだ?敵からの要請なんざ聞く訳が無ぇだろ」
伝達員「それが……その…要請というのが……勇者様と魔王の一騎打ちなのです」
帝王「はぁっ!?」
帝王「―――つまり…戦いの主軸はあくまで勇者と魔王の一騎打ち。連合軍は、魔族の不意打ちに備えて防衛待機…そういう事だな?」
軍師「はい。そうなります」
帝王「馬鹿馬鹿しい…魔族の奴らが、そんな約束を律儀に守るとでも思ってんのか?」
勇者「正直、約束を守る保障は無いと思う。だが…もし本当に一騎打ちで決着を付けると言うのならば
無駄な血を流す事無く事態を収拾させられる。これは願っても居ない好機だと俺は思う」
帝王「………お前ぇ…思ってたより甘ちゃんだな。一人で魔王城の魔族を相手にする事になるかも知れねぇってのに、怖く無ぇのか?」
勇者「勿論恐ろしいさ。だが…一々恐怖に負けていたら、勇者は勤まらないからな。それと、甘いのでは無く理想が高いだけだ」
帝王「言うじゃねぇか…よし、俺もそれに乗ってやるぜ。他の国はどうだ?賛成か?反対か?」
公国代表「賛成です」
皇国代表「賛成します」
合衆国代表「ここで反対意見を出せる程良い案がありません」
帝王「んじゃぁ決まりだな」
>46 ご指摘ありがとうございます。次回からは更新の時に頃合を見てageてみます。
―連合軍駐屯地、帝国拠点―
ヤスカル「どうでした?帝王さま」
帝王「正直、どいつが狸でどいつが犬なのか…まだ全員は判らねぇ。だが、国王以外にも事情を知ってそうなのは何人か居たな」
ヤスカル「やっぱり…となると、あの話も…」
帝王「あぁ、まず間違い無ぇだろうな。ったく…もしかして国のトップで知らなかったのは俺だけか?」
ヤスカル「ぁー…帝王様は継承じゃなくて勝ち上がりで今の位置に居ますからね。
多分、今まで先送りにしてきた手続きの中の一つにあったのでは…」
帝王「そーいやぁ、そんなのもあったなぁ……まぁともかく、こうなった以上は腹を括るか。ヤスカル、お前もついて来るか?」
ヤスカル「はい、地獄の入り口までで良ければ」
第三章 ―魔王の仕組― に続く
おつ
書き溜め進捗とか次回投下予定の目安があれば教えて
>51 大筋だけ書き溜めた物を、手直ししてうpしています。
投下は時間は主に深夜で、できる日と出来ない日はちょっと未定です。申し訳ありません。
あと、第三章の手直し終わったので一気に行きます。
●第三章 ―魔王の仕組―
―魔王城門前―
ヤスカル「うぇっぷ…まだ地面が揺れてるっす…」
帝王「ヤス…やっぱ、お前は来ない方が良かったかもな。入り口より前で、もう死にそうじゃねぇか」
ヤスカル「そんな事は…うっ………」
公国神官「大丈夫ですか?ヤスカル殿」
皇国僧兵「我々の回復魔法で…」
帝王「いや、気にすんな。そら、公国や王国の奴らにも心配されてんじゃねぇか」
ヤスカル「くっ…このヤー・ヤスカル・ノイシュヴァンシュタイン…一生の不覚…」
帝王「いや…何かにつけて大袈裟なんだよ、お前………ん?」
皇国僧兵「おぉ、門が開かれますぞ」
公国神官「何かが向こうに見えますな」
皇国僧兵「人影のようですが……」
帝王「いや…場所を考えてみろよ。魔族以外出てくるかってーの」
魔王親衛隊長カライモンが現れた
カライモン「よくぞいらっしゃいました、勇者ご一行様」
勇者「…カライモン。やはり生きていたのか」
カライモン「しぶとさだけが私の取り得です故に、はい」
帝王「おい勇者、誰だそいつは」
カライモン「これはこれは失礼しました。私、案内役を勤めさせて頂きます魔王親衛隊長カライモンと申します。以後お見知り置きを」
帝王「つまりは…魔族版のヤスみてぇな物か」
カライモン「その方を存じませぬが、恐らくは。さて、到着早々申し訳ないのですが…魔王様がお待ちしておりますで、皆様の準備さえ宜しければ…」
帝王「って言ってるが勇者…準備は良いか?」
勇者「問題無い、万全だ」
王国騎士「わ、我々王国騎士団も…!」
公国神官「ここここ、公国神官隊も共に!」
帝王「……膝がケタケタ笑ってる奴らに来られても、足手纏いになるだけだ。大人しく船の防衛してろ」
王国騎士「くっ…!」
公国神官「面目無い…っ」
―魔王城無限回廊―
カライモン「皆様、私の通った通りの道を進んで下さい。でなければまた初めから上り直しになってしまいなすので…はい」
帝王「どうした勇者。久しぶりに来た魔王城を懐かしんでんのか?それとも…あのカライモンって奴が気になんのか?」
勇者「…後者だ」
帝王「まぁそうだろうな。ここは敵の本拠地だ…一騎打ちったって罠かも知れねぇ。そんな場所で、信用出来るほど…」
勇者「あ、いや…それもあるのだが。どうもその…以前見えた時とは様子があまりに違う物で…」
帝王「ってー言うと?」
勇者「以前はこう…一言で言えば戦闘狂。戦う事しか頭に無く、理性や知性と言った物とは無縁の存在だったんだが」
帝王「って事は…偽者か」
カライモン「いえ、勇者さまの認識されたそれが以前の私で間違いありません」
帝王「以前の…ねぇ」
カライモン「はい、以前の…です。おっと、お話をしている内に入り口が見えて来ましたね」
カライモン「お待たせしました、こちらが魔王城最深部、魔王様の間となっております」
勇者達は魔王の間へと乗り込んだ
―魔王の間―
魔王「勇者達よ…よくぞ此処まで辿り着いた
………と言っても、危ない罠を全て解除して途中の番人も撤退させていたんですから来れて当然なんですけどね」
ヤスカル「何なんすかあの魔王。やけに小さくて、ノリが軽くて…正直、どこかで見たような気持ち悪さが…」
魔王「ヤスさんって変な所で察しが良いですね。どうも帝王さまヤスさん、お久しぶりです。国境での戦闘以来ですね」
ヤスカル「ま…まさか、お前、勇者カイン!?」
帝王「違う、国王と一緒に居たヤツの方だ」
ヤスカル「へっ?」
魔王「はい、帝王さま大正解。賞品要ります?」
帝王「茶化してんじゃねぇよ。何で国王お付きのお前が……って聞いてやるべき所なんだろうが
生憎そういう駆け引きは趣味じゃ無ぇ。事情は知ってんだ、茶番はちゃっちゃと終わらせて本題に入ろうや」
魔王「………ですよねー」
勇者「帝王…それにヤスカル…どういう事だ?」
ヤスカル「え、えぇとですね…王宮に潜入失敗した時に助けてくれて、おまけにノーブルの指輪をくれたのがあの人なんです」
勇者「ノーブル様の指輪を…?」
魔王「はーいストップ、無駄話はそこまですよ。ちゃっちゃと消化試合を始めちゃいましょう」
勇者「………いや。何を急いているのかは知らないが、聞くべき事は沢山あるようだ。決着を付ける前に全てを語って貰おう」
魔王「本当…融通の利かない勇者さまですね。心配しなくても大丈夫ですよ、勇者さまが勝てば全部判るようになっていますから」
勇者「…良いだろう。ならば全力で行くぞ!!!」
魔王があらわれた
勇者は勇者の剣を鞘から引き抜いた
勇者の剣から放たれた閃光が、周囲を包み込む
魔王の攻撃力が下がった
魔王の防御力が下がった
魔王の素早さが下がった
ヤスカル「あれが噂に聞く勇者の剣ですかぁ…いや、初めて見ました」
帝王「そう…初めてなんだよなぁ」
ヤスカル「はっ…そう言えば、国境での戦いではあの剣使ってませんでしたよね!?」
帝王「そーいう事だ。つまり…あの時の戦いは本気の戦いじゃなかった…」
ヤスカル「今回は本気の勇者様の戦いが見られる…という事なんですね」
勇者の攻撃
魔王は身をかわした
勇者「何…?今の攻撃は、避けられる状態では無かったはず。では、これならどうだ!」
勇者の攻撃
魔王は身をかわした
勇者「どういう事だ、幻影か?」
魔王「いいえ、違いますよ」
魔王の攻撃 魔王は魔王の剣を放り投げた
勇者「何のつもりだ。そんな攻撃…当たる訳が……」
クリティカルヒット!魔王は勇者に9999のダメージを与えた
勇者「―――――!?」
魔王「さすがは勇者様。そう言えば限界突破しているんでしたね、並みの勇者だったら今ので即死でしたよ」
ヤスカル「な…なななな、何ですかあれ!?ゆ、勇者さまの身体に、いきなり剣が突き刺さって!!」
勇者「くっ……!」
勇者は回復の秘術を使った 勇者は体力が全回復した
魔王「良いんですか?一対一で回復に周ったら、後はジリ貧ですよ?」
クリティカルヒット!魔王は勇者に9999のダメージを与えた
勇者「ならば…これでどうだ!」
勇者は連撃の秘法を使った 威力が半減するが二つの魔法を同時に使えるようになった
勇者は回復の秘術を使った 勇者は体力が全回復した
勇者は閃光の連弾を使った 光の弾丸が魔王に襲い掛かる
魔王は身をかわした
魔王「成る程…連撃の秘法ですか、それがありましたね。確かレベル70で覚える技能でしたっけ?」
ヤスカル「帝王さま、見てましたか? あれ…」
帝王「あぁ、間違い無ぇな…あれは瞬間移動だ。攻撃は避けられて、防御は意味が無ぇ…反則級の魔法じゃねぇか」
ヤスカル「勇者様は、あんな相手に勝てるんですか?」
帝王「俺に聞くな。簡単に答えれられるような勝負じゃ無ぇのは判るだろ」
.
.
.
.
勇者「………っ…はぁっ…!くっ…!」
魔王「大分動きが鈍くなって来ていますよ?いくら魔法で体力を回復したも、精神の方は限界が近いみたいですね」
勇者「まだっ…まだだ!」
勇者の攻撃 勇者は勇者の剣を魔王に投げ付けた
魔王は身をかわした
魔王「往生際が悪いですね…そんな攻撃したって………―――!?」
勇者は魔王の腕を掴んだ
ヤスカル「勇者様が…勇者様がついに魔王を捕まえた!?ど、どうなってるんですかこれ!?」
帝王「どうなってるも――そうか。多分あの瞬間移動の再使用には、ほんの僅かだが時間がかかって…その隙を突いたってのか?」
ヤスカル「えぇぇ…でもそれに気付いたんだとしても、どこに出てくるかも判らないんじゃ…」
魔王「そうですよ――!何の法則性も持たせずに転移してたのに、何でここに出るって判ったんですか。もし外れたら―――」
勇者「読みが外れたら…また別の手を考えるだけだ!」
魔王「無茶ですよ!確実な方法も無しにただ突撃なんて、どの手も通じなかったら負けるだけじゃないですか!」
勇者「負けてもまた立ち上がれば良い!」
魔王「っ…それも限界があるでしょう!現に今の貴方はもう意識を失う寸前じゃないですか!!」
勇者「例え限界でも寸前でも、まだ限界ではない!」
魔王「なら、限界が来てたらどうしたって言うんですか!」
勇者「限界を超えて立ち上がる!それだけだ!!」
魔王「無茶苦茶ですよ!!!」
勇者「無茶苦茶でも何でも良い!何があっても立ち上がる!!何があっても諦めない!!!」
魔王「何で…何でですか」
勇者「それは…俺が勇者だからだ!勇者とは勇気ある者!!その勇気を以って魔王を討つ者だからだ!!」
魔王「………そこだけは…ちゃっかり消化してるんですね」
勇者「…どういう事だ?」
魔王「いえ…覚えてないなら別に良いんですよ。それよりどうですか、私と手を組みませんか?―――」
―――私と手を組むのなら、世界の全てを貴方に差し上げますよ」
勇者「断わ――………全てだと?どういう事だ、貴様の望みこそこの世界の全てでは無いのか?」
魔王「まーぁうん…やっぱり勇者様からしたらそう言う事になってるんですよね。ある意味間違ってはいないんですけど」
勇者「………さっきから何を言っている。貴様は何を知っているんだ」
ヤスカル「帝王様…そろそろ出番みたいですね」
帝王「あぁ…そうみてぇだな」
帝王「おい、勇者に魔王。その位でもう良いだろ、いい加減本題に入ろうぜ」
魔王「はーい、そうしましょうかー」
勇者「………………どういう事だ」
勇者「どういう事だ」
ヤスカル「勇者様、さっきから同じ事しか言ってませんよ」
勇者「………」
帝王「まーぁ、しょうがねぇだろ。当事者だってのに大事な部分は誰も何も話さねーでここまで来ちまったんだもんなぁ」
ヤスカル「いつ帝王さまが喋ってしまうのか、内心ずっとヒヤヒヤしてましたよ」
帝王「はぁ?どう考えたってお前の方が口が軽いだろーが」
魔王「はいはい、無駄話はそこまでですよー。勇者様がいい加減置いてきぼりで拗ねちゃってますからー」
勇者「拗ねてなどいない!」
魔王「はいはい。さて、どこから話しましょうかね………とりあえず、最大の元凶であるノーブル様呼び出しちゃいましょうか」
ヤスカル「ほいきた」
ヤスカルはノーブルの指輪を使った
指輪からノーブルの映し出された
ノーブル「やぁ、皆久し振りだね。特に勇者君は、君の夢の中以来か…
いや、正直もう二度と直接会いはしないつもりだったんだけど…何かあったのかい?」
勇者「ノーブル様……貴方にお聞きしたい事があります。この新たな魔王めが、貴方の事を最大の元凶などと言っているのですが…」
ノーブル「…新たな魔王?ふむ…妙だね、どうもややこしい事態になっているようだ」
魔王「そのややこしい事態にしたのは他でも無い貴方なんですよ。良いから勇者様に事情を説明して下さいよね」
ノーブル「………いや、待ってくれたまえ。説明が必要なのはどこからどこまでだね?」
魔王「勇者様が魔王を倒した所からここに至るまでの全部です」
ノーブル「……………え?」
魔王「だから、全部です。察しが悪い勇者さまは、完全にスルーして何も知らずに此処まで来ちゃったんですから」
ノーブル「それは…また。という事は、何も知らないのにあんな事を言ってしまったのか…」
魔王「そっちの事情は知りませんが、そういった状況なので私からは最低限の事しか教えていません。説明をお願いします」
ノーブル「ふむ…なら手っ取り早い方法があるから、宝物庫へ行こう。宝物庫の鍵は持ってきているかい?」
帝王「おい、ヤス」
ヤスカル「はい、鍵ならこちらに」
魔王「えっ、ちょっ…待って下さいよ。何でそんな物持ってるんですか。宝物庫って!?あそこは………」
ノーブル「何か不都合でもあるのかい?」
魔王「えっ……いえ……むむ…行きましょう………か」
勇者「……俺はいい加減話の中に入っても良いのだろうか―――」
―魔王城宝物庫―
ノーブル「おかしいな…確かにこの辺りに置いたはずなのだけど…」
魔王「やっぱり、ノーブル様の口から伝えるのが一番筋が通ってると思うんですけどねー…」
帝王「まだ言ってるよこいつ…」
勇者「………」
帝王「どうした勇者、まだふてくされてんのか?」
勇者「いや、そうではなく…ただ、ここの間取りが……」
ノーブル「間取り?…そうだね…そう言えば大分配置が変わっているようだけど…」
魔王「……~~♪」
帝王「大方、現魔王が好き勝手変えたんじゃねぇのか?で…その時にうっかり大事な物を壊しちまったとか」
ノーブル「………」
魔王「………」
沈黙がその場を支配した
勇者「ん?…そうか、この間取りは俺の寝室と同じなのか。と言う事は…」
魔王「あっ、ちょっ…!待っ!!!」
勇者は机の上の石に触れた
石から何かの音が出始めた
魔王『………この声を聞いているという事は、私はもう魔王として勇者様に倒された後なんだと思います』
魔王『でも、貴方は貴方の行動を悔やまないで下さい。この結末は、私が望んだ結果でもあるいのだから―――』
勇者は音声を一時停止した
勇者「………」
帝王「………」
ヤスカル「………」
ノーブル「………」
勇者「まぁ…うん、確かにこれは隠したくもなるな」
帝王「仮面で隠れてる顔をわざわざ手で隠しながら、部屋の隅でのたうち回る魔王って、すっげぇレアな姿だな」
ヤスカル「したりげな雰囲気で残した遺言を、生きてる内に皆の前で聞かされるって…物凄い苦痛でしょうね」
魔王「うるさいですよ!良いから続き行って下さいよ!」
勇者は音声を再生した
魔王『………この声を聞いているという事は、私はもう魔王として勇者様に倒された後なんだと思います』
魔王『でも、貴方は貴方の行動を悔やまないで下さい。この結末は、私が望んだ結果でもあるいのだから―――』
勇者「あ、間違えた」
魔王「ぎにゃぁぁぁぁーーーー!!!!」
帝王「鬼だ…」
ヤスカル「鬼が居ますね」
ノーブル「ある意味魔王よりも恐ろしいね…おっと、静かにして。そろそろ本題に入ると思う」
魔王『混沌としたこの世界…生まれ出でた全ての命が真実から目を背け、与えられた幸せを無自覚に貪るだけの人々』
魔王『私は感じた…あぁ…何と嘆かわしいのだろう。しかし、真実を知ろうとしない事が罪なのだろうか?―――否』
魔王『知ろうとしない事もまた運命の選択…与えられた権利では無いのか?私はそう考えた―――』
ヤスカル「…これ、本題ですか?」
帝王「ポエムにしか聞こえねぇ…」
ノーブル「すまない、予想が外れたようだ…少し早送りしてみようか」
魔王「え?あれ?この部分って結構重要でしょ?かなり上手い事言ってると思うんですけど!?」
勇者は容赦なく音声を早送りした
魔王「酷っ!!?」
魔王『だから…ここから先を聞くかどうかは、貴方の意思で聞いて下さい。本当の…エレナが残した最後の文章です』
勇者「…エレナ………が?」
ノーブル「うん、今度こそ本題のようだね。静聴しよう」
エレナ『記録者…エレナ・パーシバル。記録内容…魔王の存在しうる仕組みについて』
エレナ『この記録が誰かに聞かれている時点で、私はもうこの世に居ない物と仮定して話しをします』
エレナ『この記録を聞いた誰か…出来ればこの事を、この問題を解決出来る人または機関へと渡して下さい。そして…』
エレナ『勇者くんが…この記録を聞かなくて済む道を進んでいてくれていたのなら…私はその方が良いと思う』
勇者「………」
エレナ『私がこの理論を構築する上で、最も重要な要素となるのが『魔力』である』
エレナ『先に結論を言うのならば、人間が魔力に手を出さなければ…あるいは使い方を誤らなければこの悲劇は起きなかった筈だ』
エレナ『また、この理論には裏付けが無く私の想像以外に根拠が無い事も宣言しておく』
エレナ『まず始めに人間が犯した間違い…それは、共通の敵…絶対的な悪の創造である』
エレナ『人間は二人以上居れば小さな事でも必ず争いを起こす生き物だ。そしてそれが国家間となれば戦争にも発展して大きな不幸を生む』
エレナ『では、人間同士の戦争を無くすためにはどうすれば良いか…答えに辿り着くのは難しく無いだろう』
エレナ『そう、先にも述べた共通の敵…絶対的な悪を作り出す事だ。そして不幸にも、この目論見に合うだけの成果が生まれてしまった』
エレナ『汚染とも言える濃度の魔力による、身体の強化…その結果が魔族やモンスターの存在である』
エレナ『恐らくその殆どは一世代で終わる一時的な物だった筈。しかし実験に例外は付き物だ』
エレナ『今居る魔族やモンスターの殆どはそう言った第一世代が、正常な…いや、誤った生殖機能を持ってしまったために生まれてしまった物だろう』
エレナ『次に、この理論を展開する上で外す事の出来ない存在…勇者と魔王に焦点を当ててみよう』
エレナ『勇者と魔王は言わば表裏一体…材質も性質も限りなく近く、更に裏返る物である。ただし、表返る事はできない』
エレナ『ではまず、勇者について説明をしよう。判りやすく簡潔にその存在を定義付けるなら……勇者とは、魔力収束体質である』
エレナ『次に魔王についての説明である。先に記したようにこれは勇者という存在と表裏を成す存在であるが、反転が不可逆である事が特徴だ』
エレナ『何故なら、反転と記してはいるがその実は進化に近い物だからである』
エレナ『勇者はあくまで人間の枠の中に納まり、成長するとは言ってもそこに限界を持つ』
エレナ『それに対して魔王は、実質上その能力に制限は無し…それこそ、人間と魔族の倍率の差が勇者と魔王の倍率の差になるのである』
エレナ『次に、魔王としての最大の特徴…それは魔族に対する絶対的命令権である』
エレナ『これは、圧倒的な能力を持つ者のカリスマで命令を下すと言うよりも、魔法を行使して事象を引き起こすのに近い能力である』
エレナ『先に記した通り、魔族やモンスターと言った者達は高濃度の魔力により構成された存在であり、魔王はそれを操る事が出来る』
エレナ『また、この下位に当たる行為をテイマーが行っているため、証明は不要と判断する』
エレナ『そして…勇者が魔王へと反転する条件を、憶測ではあるが記して行きたいと思う』
エレナ『魔王への反転する条件は何段階かの条件があり、まずその第一条件は勇者である事。それが魔王の器としての絶対条件だ』
エレナ『次…第二条件、魔王の力を受け入れるための耐性がある事。勇者が戦いで強くなる事で、耐性を増しているのだと推測できる』
エレナ『更に第三条件は、魔王を倒しその力を吸収する事。恐らくはこの時点で勇者としての限界を超えると思われる』
エレナ『そして第四条件………魔力を用いて、自身の肉体を勇者から魔王へと反転させる事が出来る事』
エレナ『また、これらの段階を事前に知らされていない事から考えて…事後または直前に、何らかの手段を使って手順を伝えられるのだと予想出来る』
エレナ『以上の手段により魔王は世代交代を繰り返し、その存在を維持してきたと考えられるのだが』
エレナ『…それを考察する以上、もう一つの可能性から目を背ける事ができない』
エレナ『その可能性とは…勇者が魔王になるための条件を満たす事が出来なかった場合である』
エレナ『条件を満たす事が出来なかった勇者は、当然魔王にはなれない…では、そうなった場合勇者はどうなるのか』
エレナ『勇者襲名…勇者が死亡した場合ほぼ間を置かずに他の誰かが次の勇者として覚醒を果たす…という既知の仕組みが存在する』
エレナ『理由も詳細も不明で、二人の勇者が同時に存在したという記録は一切無いため…勇者襲名の枠が一つしか無いのだと推測されてきたのだが…』
エレナ『勇者も魔王も、結果こそ違えど…まず最初は同一の経緯を経て覚醒している。即ち、勇者襲名の枠が二つ存在するという事になるのだ』
エレナ『勇者と魔王、どちらが死んでも勇者として覚醒する者が現れる…裏を返せば、勇者か魔王が死亡しない限り新たな勇者は誕生しない』
エレナ『……この仕組みは停滞する』
エレナ『…となればもう、結論は一つしか無い』
エレナ『魔王になれなかった勇者は殺される』
エレナ『魔王になるだけの力を培う事が出来なかった者…力を持ちながらも魔王となる事が出来ない者…』
エレナ『この中の大多数は最終決戦と言う大舞台で、それ以外は道半ばで贄にされ…』
エレナ『元より魔王と戦う気の無い者が勇者となってしまっていた場合は…恐らく、覚醒が世に知られる前に人の手で始末されている筈』
エレナ『条件を満たせば魔王となり、満たさなければ殺される…正に人ならざる魔王の仕組み…』
エレナ『私は、この仕組みを―――マオウシステム と仮称する』
―魔王城宝物庫―
勇者「………何だ…何なんだこれは!一体どういう事なんだ!!」
魔王「要約するとですねー…皆で仲良くなるために、魔王っていう共通の敵をでっち上げて。それを維持するために勇者を育成するシステムですね」
勇者「そうじゃない!そう言う事じゃ無いんだ!」
勇者「これが本当だとしたら…いや、本当では無いのかも知れない。エレナが憶測を違えただけかも知れない…」
勇者「だが、言われてしまえば辻褄が合う…合ってしまう。だとしたら、王様や魔王の言葉は…いや、そもそも先々代の勇者は王子だ。王様がこんな…」
ノーブル「酷な話だけど、事実だよ」
魔王「はい、当事者二人がこの仮定が空論でなく事実である事を証明します。欠けている部分もありましたけど、そこは想定されていた範囲内です」
勇者「…………………………」
勇者「だったら…いや………え?…そうだ、お前は何故魔王になっている?俺が魔王を倒して力を吸収した時点で、このシステムは停滞してる筈だ!」
魔王「そこはちょっとした裏技と、ここに記されてない手段を使いました。
尤も、勇者様の言う通り本来の魔王の力は勇者様の中にあるので、私は外側だけの不完全な魔王なんですけどね」
勇者「だったら…だったら逆に、俺が魔王の力が使えないのは!」
魔王「それは、力だけあっても魔王としての外郭が無いからですよ。思い出して下さい」
勇者「………だとしたら…俺が倒した魔王も…元は勇者で……その勇者に倒された魔王も………
そうだ…俺に、俺に倒された勇者は誰だったんだ!何代目の…!」
ノーブル「私だよ…第87代目勇者ノーブル・グランティーニが、君に倒された魔王だ」
勇者「な――ッ……!!!」
勇者「ノーブル様が…魔王?じゃぁ、ノーブル様を殺したのは俺で…」
ノーブル「そこは自責の念を抱く所では無いよ、それも承知で私は魔王になったんだ。むしろ、私が責められるべき事の方が数え切れない程あるはずだ」
勇者「責め…?…そうだ……ノーブル様が魔王だったと言うなら、エイベル様は…」
ノ-ブル「私が殺した」
勇者「――――!!」
勇者「だったら…だったらエレナは何故!!何故エレナを魔族に堕としたんだ!!!」
ノーブル「君という勇者を贄として育てるため。そして、魔王の手駒として―――」
勇者「…それは嘘だ」
魔王「嘘ですね。正確には半分正解ですが、それも意図せず結果的にそうなっただけでしょう」
ノーブル「君達…何を根拠に…」
勇者「ノーブル様…貴方は、自分が思っている程悪役を演じ切れては居ない」
魔王「私の場合、推測する以前に真相を知っていたからですけどね。それはもう少し後で種明かしします」
ノーブル「…では勇者君………何故そう思んだい?」
勇者「貴方は私の夢の中で言っていた…魔王に敗れてしまった…魔王に魂を囚われていた…と」
ノーブル「………」
勇者「その意味を知らなかったので、最初はこう思いました…戦いで魔王に倒され、無理矢理その魂を束縛されていたのだと
…しかし、真相を知った今なら判ります。あれは、このシステムに勝てなかった事を悔やんでいた…ずっと苦しみながら魔王を演じていたのだと」
魔王「鈍感な勇者様らしくないですねー…」
帝王「お前なぁ…こんなシリアスな場面で茶化してんじゃねぇよ」
魔王「だって、何か悔しいじゃないですか……ま、良いですよ。こっちはこれを見せてお株を上げますから、はいー皆さん注目」
魔王は記録の石を取り出した
勇者「…何だそれは?先ほどの物と同じ道具のようだが」
魔王「記録ですよ。エレナ本人が記録した物じゃありませんけど、エレナの記録です」
勇者「何っ!?」
ヤスカル「何ぃ?」
帝王「何…だと!?」
ノーブル「何でそんな物が…」
魔王「あ、やっぱりノーブル様気付いてなかったんですね。
これ、結構前から駐屯用資材の中に仕掛けてあった、隠し記録機なんですよ。多分仕掛けたのはノーブル様より前の魔王ですね」
ノーブル「…………」
魔王は音声を再生した
魔王『貴様は勇者パーティーの魔法使い…一人でよくぞここまで辿り着いた。だが貴様のその命運もここで』
エレナ『いえ、そういう小芝居は良いので話を聞いて下さい』
魔王『……何?ククク、面白い。この魔王を前に臆する事無く対話を求めるとは…』
エレナ『だから、小芝居は良いんです。元勇者のノーブル様か、それ以前の勇者様ですよね?』
魔王『………………………………… 何を言っている。我は魔お―――』
エレナ『思いっきり間がありましたね。と言うか演技下手です』
魔王『ぐぬ…………うん。君の予想通り、私は元勇者のノーブルだ。何故それが判ったんだい?』
エレナ『うわっ……戻られたら戻られたでギャップがウザいです…』
魔王『君…対話に来たんだよね?』
エレナ『はい、そうでした。コホン、まず自己紹介しておきますね…私はエレナ・パーシバル。ご存知の通り、勇者パーティーの魔法使いです』
魔王『知っているよ。魔法学校を主席で卒業した天才児らしいじゃないか』
エレナ『買い被りすぎですよ。実際は私より魔法が上手い人が居なかっただけです』
魔王『ズバっと言うね』
エレナ『オブラートを使うのが苦手なんです』
魔王『成る程、ユニークな子だ。で、話を戻すけど……何故、魔王の正体が勇者だと判ったんだい?』
エレナ『勇者君を観察していたら、そういう推論が浮んだからです。ちなみに、エイベル様の力では魔王にはなれなかった筈なので除外しました』
魔王『確信するに至った理由は?』
エレナ『ノーブル様が、かけたカマにかかったからです』
魔王『………ん?と言う事は、確信を得て居ないのにも関わらずここまで乗り込んで来たと言う事だよね?』
エレナ『そうです』
魔王『…危険だとは思わなかったのかい?』
エレナ『勿論思いましたよ。でも魔王城に帰還した後だと、絶対に一人で乗り込んで来れませんし。時間的にも手遅れになってしまうので』
魔王『……そこの所、詳しく聞かせて貰えるかい?主に、手遅れだって所』
エレナ『勿論です。で、それに関わる質問なんですが…勇者くんの事、どう思います?』
魔王『勇者君の事?…えぇと、そうだね。正義感が強くて、勇気もあって…正に勇者という感じの人物だよね』
エレナ『それは私も同感です。ですが、聞きたい所はそこじゃないんです』
魔王『と言うと?』
エレナ『勇者君の強さ、見込む事が出来る伸び代。魔王に勝てるだけの力があるかどうかです』
魔王『………君、オブラートが苦手などころか嫌いな方だろう』
エレナ『はい、正直嫌いです』
魔王『…良いだろう、じゃぁ答えよう。まずは現時点での彼の強さだ』
エレナ『お願いします』
魔王『正直言って、ここまで来れたのは彼自身の力というよりも、パーティーメンバーの功績が大きいね
単純な出力では勇者の力を持った勇者君が一番だが、搦め手に対する順応性が低い
それを戦士君が守り、僧侶君が回復して…何よりも、君が臨機応変に対応しているのが大きい』
エレナ『同感です』
魔王『次に伸び代だったね?申し訳無いのだけど、これに関しては私にも良く判らない。ただ…』
エレナ『ただ?』
魔王『今の勇者くんのレベルでは、ここに辿り着く前に確実に死ぬ。君のように敵をやり過ごして来たとしても、私に殺される』
エレナ『全くの同意見です。もしそうなっても、見逃してはくれませんよね?』
魔王『いや、そうでもない。何かしらの理由と口上で戦闘を回避できなくも無いよ』
エレナ『…思ってたよりも融通がきく方なんですね…勇者君とは正反対です』
魔王『褒め言葉と受け取っておくよ。…でも、そこで見逃したとしても、先送りにしかならないよね?』
エレナ『はい。魔王になろうとはしないでしょうし、貴方の贄にされるだけ…いえ、それ以前にモンスターに倒されるかも』
魔王『そうだね…大方、親衛隊長のカライモン辺りに倒されると私は思う』
エレナ『私も同意見ですが…あの親衛隊長は何故他のモンスターよりも桁違いの魔力を持っているんですか?』
魔王『想定してるとは思うんだけど…魔王と戦う事無く倒された勇者は、その魔力を倒したモンスターに吸収されるんだ』
エレナ『成る程…勇者の魔力が低ければ、魔王クラスで無くても吸収可能という訳ですね…そして』
魔王『そう…その魔力を魔王が徴収していない…故に、並の勇者と同等の力を持った親衛隊長は強い』
エレナ『エイベル様…その手にかけてた訳じゃなんじゃないですね』
魔王『私が殺したのと同意義だよ……それより、肝心の勇者君はどうするつもりなんだい?』
エレナ『確認しておきたいんですが…ここから猛攻が始まりますよね?』
魔王『そうだね。今からではこれはどうやっても止められない。まぁ…キミが居れば辛うじて生き残れる戦いだと踏んでいるけれど』
エレナ『そこなんですよね…』
魔王『と言うと?』
エレナ『この戦いを、私無しで乗り切って欲しいんです』
魔王『…それまた、無茶を言うね』
エレナ『いくら私が強いと言っても、所詮は人間レベルです。いずれ私が戦力外になった時のためにも、勇者君にはここで戦い方を学んで欲しいんです』
魔王『でも、キミが居なければ彼は死ぬよ?』
エレナ『いえ、幾つか方法はあります。ただ…その中でも一番可能性が高い方法を取るためには、ノーブル様に協力して貰う必要があるんです』
魔王『良いよ、協力しよう』
エレナ『では…私を魔族にして下さい』
魔王『………そういう事かぁ………本当、君は何と言うか……うん、凄いね』
エレナ『お褒めに預かり光栄です。魔王様』
魔王『魔族化した際の保有魔力量は、人間時に扱う事ができた量に比例する…魔法使いならば、その量はかなりの量になるだろう
そして魔族化した君は勇者君に倒され、勇者君は君の魔力を得て大幅に強くなり…この戦闘での生存率は格段に跳ね上がる。
更に大量の魔法を覚える事により戦略の幅が広がり、君の不在がそれをせざるを得なくなる…とんだスパルタだよ』
エレナ『あと比較的近しい存在である私が魔族化する事により、勇者君が魔族化する事へのストッパーにもなりますからね』
魔王『ふむ…だったらこう言うのはどうだろう?』
エレナ『何か良い案が?』
魔王『まず君は魔王の尖兵に捕らえられた事にして、私が勇者君に招待状を出す』
エレナ『成る程成る程?』
魔王『そして勇者君達が辿り着くまでの間に、君は魔王の手により無理矢理魔族にさせられてしまい…自分の意思とは関係無く、勇者君達に襲い掛かる』
エレナ『……という事にする訳ですか。魔王様は、本当に自ら好んで泥を被りたがるんですね』
魔王『お互い様…だろう?君だって、勇者君のために他の二人は手にかけるつもりだろうしね』
エレナ『……そこまでしないと…勇者君は私を手にかけようとはしないから………絶対』
―魔王城宝物庫―
勇者「―――っ!! ―――っ!! ―――っ!!!」
帝王「おい…魔王さんよぉ」
魔王「何ですか?」
帝王「ありゃぁどう贔屓目に見たって「聞かせたくない真実」だろーが」
魔王「判ってますよ。そんな事くらい」
帝王「判って無ぇ!判っててたらあんな物を聞かせられる訳が無ぇ」
魔王「何言ってるんですか、実際に聞かせられたでしょう」
帝王「手前ぇ…!!それでも…」
魔王「…語るんですか?国のためとは言え年ばも行かない子供を地下闘技場に閉じ込めて、延々とモンスターと戦わせた帝王様が…人間を」
帝王「くっ………!」
ヤスカル「黙れぇ!帝王様が…帝王様がどんな気持ちであれを実行したかも知らないくせに!」
魔王「あぁ、今度はヤスさんが語るんですか。良いですね、自分可愛さに何もしてない人は口が軽くて」
ヤスカル「えぇ、そうですとも!人間誰だって自分が可愛いんです!自分の事しか考えてませんよ!でもこれだけは言わせて貰います!」
魔王「…良いでしょう、聞いてあげますよ」
ヤスカル「勇者様は…カイン隊長は言ったんですよ、地下から出たその日に……」
帝王「………おい、ヤス!」
ヤスカル「どうだ…生き残ったぞ…だから泣いてた事は誰にも言うな。僕を哀れむな、責任取って肩を並べて歩け。勇者と共に歩け……って
14歳の…たった14歳の子供がその言葉を搾り出した時、帝王様がどんな顔を…どんな気持ちをしていたのか―――!!」
帝王「………喋り過ぎだ、ヤス。黙れ」
ヤスカル「だまりばぜん!!だどえぐぢがさげでも!!!」
魔王「…離してあげなよ。聞かれたくないなら、私は外に行ってるからさ………」
魔王は宝物庫を後にした
帝王「チッ…」
ノーブル「それは私からもお願いするよ…」
帝王「先代の魔王様までそっち側かよ…良いか、言っとくが手前ぇにだってムカついてんだよ!さっきのだって、手前ぇが勇者の女にあんな事を…」
ノーブル「その通り。悪いのは私だ、今の魔王が見せた事は責められる事ではない」
帝王「はぁ?頭沸いてんのか?どう見たってアイツが聞かせたアレが原因で、勇者はあんなになっちまってんじゃねぇか!」
ノーブル「その通りだ。だが、それは責を負うような物では無い」
帝王「………話になんねぇな」
ノーブル「…確かに…君の言う通り、あれは…エレナ君も私も、勇者君に見せたくは無かった物だ」
帝王「ぶれてんじゃねぇ…お前はどっちの側だ」
ノーブル「だが………見せたくなかったと言って、見せなくても良いという物では無い」
帝王「…………」
ノーブル「ありえない事だが…もしもエレナ君が今この場所に居て、あの記録の石を持っていたら……その時は、必ずあれを聞かせて居ただろう」
帝王「………はぁっ!?手前…そんな訳」
勇者「いや………そうだ」
帝王「っと、勇者……持ち直したのか…ってか、お前まで何を…」
勇者「例え自分が嫌われても…憎まれても…誰かのために、誰かを支えてくれた……エレナは…誰よりも、優しく強い心を持っていたんだから」
帝王「………ハァッ…ったく、何勝手に打ちのされて勝手に立ち上がってんだか……俺はカイザーだぞ、クラウンにするんじゃねぇよ」
勇者「…………」
ノーブル「…………」
勇者「…それは…上手い事を言ったつもりなのか?」
帝王「うっせぇ!!忘れろ!」
勇者「忘れても良いが、その前に一つ良いか?」
帝王「あんだよ」
勇者「いい加減手を離してやれ。ヤスが地獄の入り口に立っているぞ」
帝王「――――――ぁっ」
ヤスカル「ぜひっ…はぁ…っ…………助けて頂いた事は感謝してまス…でも一言言わせて下さい」
勇者「何だ?」
ノーブル「何だい?」
ヤスカル「アンタ達、帝王陛下に敬意無さ杉なんッスよ!何いつの間にかタメ口聞いてるんスか!?ちゃんと敬語を使って、帝王陛下って呼ぶべきでしょう!?」
帝王「………ヤス」
ヤスカル「はい……おぐあばっ!?」
帝王「空気読むとかそういうのはもう後回しで良い。ここはお前が固過ぎんだよ」
ヤスカル「えぇぇぇ………」
帝王「ってー訳でだ…ノーブル、勇者。折角パーティー組んだんだ、お前らそのままタメ口聞いてろ。俺の事は名前でエイジって呼べ!」
勇者「と言ってますが?」
ノーブル「そうだね…ついでだから、勇者君から私にもタメ口になって貰おうか」
勇者「えぇっ!?」
ヤスカル「ある意味良いお灸ッスね」
帝王「ヤス」
ヤスカル「はい?」
帝王「お前の口調のいつの間にか昔に戻ってるじゃねぇか。語尾に「ッス」が付いてるぞ」
ヤスカル「はっ!?しまっ…」
帝王「丁度良いからそのままな?ついでに敬語禁止だ!」
ヤスカル「ええぇぇぇ!?無茶言わないで下さいよぉぉぉ!?」
帝王「―――さて、そんじゃぁ…ナイーブな魔王さまも巻き込みに行くぞ!」
ヤスカル「素直に謝りに行くって言えば良いのに…」
帝王「うっせぇ」
ノーブル「……そうだね…」
勇者…「あぁ…そうだな」
帝王「お前ら………!!」
―魔王城屋上―
魔王「はぁ…好かれたくてやってる訳じゃないから、別に良いって言えば良いんですけどね」
魔王「本当…別に…」
魔王は黄昏ている
勇者「…こんな所に居たのか」
勇者があらわれた
魔王「はひっ!?」
魔王は不意打ちを受けた
効果は抜群だ
魔王「ゆ、ゆゆゆ勇者さま!?いつからそこに!?」
勇者「いや…今来たばかりだが、間が悪かったか?」
魔王「いえいえいえ、そんな事ナイデスヨー?」
勇者「………本当か?」
魔王「しつこですよ。しつこい男は女性に嫌われますよ?」
勇者「ぅ…………よく言われる、気を付けよう」
魔王「判れば宜しいのですよ。それにしても………ちゃんと立ち直ったみたいですね」
勇者「あぁ、お陰様でな。それと、その件で帝王…エイジが謝りたいと言っていた」
魔王「どういう風の吹き回しなんでしょうねー…あと、さり気に名前呼びとか…一気に進展し過ぎでしょう」
勇者「心配するな、すぐにお前も………否が応でも巻き込まれる」
魔王「ドスの利いた声で言わないで下さい。嫌な予感が増します」
勇者「それを狙って言っているからな」
魔王「………勇者さま、意地悪です」
勇者「散々魔王の剣で貫かれたお返しだ」
魔王「ダメです。あれこそ勇者様への返しなんですから、お返しにお返しをしたら負の連鎖が止まりません」
勇者「…俺が一体何をした」
魔王「教えてあげません。あと、今だから言っておきますけど…私のあの魔法
指定した場所から半径1m以内の物を好きな場所に転移できる魔法なんですよ…」
勇者「そういう仕組みか……で、それが一体…」
魔王「やろうと思えば、腕だけ飛ばしたり頭だけ飛ばしたりも出来たって事です。ちなみに、あのまま転移したらどうなっていたか…」
勇者「くっ……そういう事か……」
魔王「どうです?悔しいですか?」
勇者「っ………いや、まぁ良い。ところで…」
魔王「何ですか?」
勇者「お前と手を組むという話…その詳細を聞いていなかったな。マオウシステムの事は話を聞いて判ったが、お前の目的までは…」
魔王「………はぁっ…その察しの悪さは、強制発動する固有技能なんでしょうかね…」
勇者「…すまん、否定し切れん…面目ない」
魔王「良いですよ…もう慣れましたから。それじゃ、ちゃんと説明してあげます」
勇者「頼む」
魔王「私の目的………それは、この仕組み…マオウシステムを壊す事です」
勇者「………………」
魔王「………………」
勇者「……………今、何て言った?」
魔王「私の目的は、マオウシステムを壊す事です」
勇者「…………可能なの…か?そんな事が」
魔王「はい、理論上は。ちゃんと裏も取ってありますし、伊達に王宮に潜り込んで研究してませんよ」
勇者「………―――ぁー……」
魔王「仕込みも済んでいますし、後は勇者様の協力があれば何とかなるんですが…逆に、勇者様が協力してくれないと、この計画は流れてしまいます」
勇者「…………少し、考えさせてくれ」
魔王「はい。まぁ…事が事なだけに、すぐ決めろって言うのも無理な話ですよね
第一…私がしてるしようとしている事は、必ずしも善と言える事ではない。むしろ、平和な世界を崩壊させる…悪と呼ぶ方が近い物ですから」
勇者「もし…俺がその誘いを断った場合、お前はどうする?」
魔王「勇者様を殺します。殺して奪った力を使って、完璧な魔王としてこの計画を完遂します」
勇者「………成る程…な。…うん、俺はお前の事が少し好きになったかも知れん」
魔王「な………なななな、何言ってるですかアナタ!今のは、そういう切り返しをするようなセリフじゃないでしょう!?」
勇者「いや、これで合っている」
魔王「………何自信満々に言ってるんですか…勇者様のくせに生意気です」
勇者「お前こそ…魔王のくせに生意気だ。……さて、皆も探している事だし、そろそろ帰るか」
魔王「そうですね…あまり二人っきりで居過ぎると、ペースを狂わされっ放―――」
突如 勇者の剣がひとりでに動き出した
勇者の剣の攻撃
クリティカルヒット! 勇者の剣は魔王の心臓を貫いた―――
第四章 ―崩壊の閃光― に続く
●第四章―崩壊の閃光―
―魔王城屋上―
魔王「ミスりました…ね……まさか、こんな裏技まで……あったなん…て」
勇者「喋るな!今回復する!」
勇者は回復の秘術を魔王に使った しかし効果は無かった
勇者「何…でだ。もう一度!」
勇者は回復の秘術を魔王に使った しかし効果は無かった
勇者は回復の秘術を魔王に使った しかし効果は無かった
勇者は回復の秘術を魔王に使った しかし効果は無かった
魔王「無駄ですよ…多分、即死攻撃です」
勇者「何を言っているんだ!お前はまだ生きてるじゃないか!」
魔王「…知ってますか?…原因となる外傷が発生してから、数分間以内の死亡は即死なんですよ」
勇者「誰が…そんな屁理屈をっ…!…くそっ!」
魔王「こうなったら仕方が無いので…残った時間で、私の話を聞いて下さい」
勇者「聞く!聞くから死ぬな!」
魔王「まず…マオウシステム破壊計画ですが…起動自体はしています。勇者さまには難しいかも知れませんが
効果はその時々の流れを察して…後は勇者さまの判断で行動して下さい」
勇者「判った…っ、全身全霊を賭けて察する!!」
魔王「では…次は……そうですね、私の自分語りでも聞いて貰いましょうか」
勇者「あぁ……聞くとも……」
魔王「じゃぁ…お言葉に甘えて。…そうですね…私の人生って…妥協の連続だったんですよ」
勇者「………」
魔王「魔法学校は次席だったし、何をするにも二番手ばかり…ただ…そんな私にも夢があったんですよね」
勇者「良いじゃないか…夢を持って何が悪い…」
魔王「私…勇者に憧れてたんですよ。勇者さまっていう人物にもですけど…それ以上に、勇者っていう立場に」
魔王「いずれ世界を救う勇者になるんだー…って、本気で夢見てた時期もありました」
魔王「で、そんな夢も次第に諦めて…魔王になる仕組みを知った時なんて、絶望よりも安心の方が強かったんですよ」
魔王「それでも…それでも……自分が勇者として覚醒した時は物凄く嬉しかった」
魔王「まぁ…勇者で居る暇も無く魔王になっちゃったんですけどね………結局また妥協ですよ。こればっかり」
魔王「でも…一つだけ…たった一つだけ、ほんの一時だけなんですが………叶った……願いはあり……ました」
勇者「おい、気をしっかり持て!!」
魔王「勇者様………ご馳走…様でした」
勇者「―――――……!!? ……お前…まさか……っ」
魔王「本当…察しが悪い……人ですよね…でも………そんな勇者さまが…」
魔王「私の…………一……………―――――」
勇者「…………―――――――――――――!!!!!」
魔王は倒れた
―王宮の一室―
??「運命とは一体何なのだろうか…」
??「起こり得る可能性が低い幸福を、人は奇跡と呼び…それが不幸へと裏返れば、不慮の事故として片付ける」
??「そもそも、可能性とは何なのか…全ての事象は、本当に偶然なのだろうか?必然なのだろうか?」
??「調査隊がこの『魔王の核』―――人を魔族へ、勇者を魔王へと変質させるアイテムを持ち帰った事も…」
??「エレナがこのシステムの存在に気付き、ノーブルと共謀してその流れを捻じ曲げ事も」
??「そのエレナの従姉妹であるエレルがわしの側近にまで上り詰めた事も…そして、魔王になった事も」
??「いや、そもそも今の勇者が勇者として覚醒した事も、我が息子エイベルが勇者として覚醒してしまった事も、そして―――」
??「全てが偶然として片付けるには、あまりも奇妙な意味を意味を持ちすぎている」
??「いや…本当は全て偶然に意味があり、儂はその内の一つに気付いただけなのかも知れない……」
??「……いや、考えても仕方の無い事か。わしはわしの信念の下、出来るだけの事をするしかあるまい」
―魔王城屋上―
カライモンが現れた
カライモン「魔王様、勇者さま、こちらにいらっしいますか?」
勇者「……カライ…モン………?」
カライモン「…これは……また…。いえ…一つ確認致しますが、魔王様に止めを刺されたのは勇者様では御座いませんね?」
勇者「俺は…違う、俺じゃない。…いや、何故それを?」
カライモン「想定されていた事態のの一つですので…はい。しかし、困った事になりましたね…勇者様が魔王様の意思を継いだのでは無いとすると…」
勇者「………?」
カライモン「『あれ』を起動させた人物は誰なのでしょうか」
カライモンに促され、勇者は空を見上げた
勇者「何だ…あれは………」
カライモン「あれを見るのは実に400年振りでしょうか。要塞型極大魔道具…『星天の柱』に御座います
恐らく標的はこの魔王城かと。―――急いで退避を致しましょう」
―魔王の間―
勇者「カライモン…お前は、何故勇者である俺を助ける?」
カライモン「はて…何故と聞かれましても」
勇者「俺は勇者だ…魔王をエレルを殺しておいて、お前を欺いているかも知れないんだぞ?」
カライモン「どちらでも…結果は同じ事ですので」
勇者「…何?」
カライモン「勇者様が魔王様を倒したと言うのならば、その時点で次の魔王様は勇者さまが…あるいは前回同様に次の魔王様が即位されるまでは保留になるだけの事」
勇者「保留…?そんな事になっていたのか」
カライモン「はい。そして何より……勇者様…いえ、貴方様がエレル様を手にかけたとは思えませんで」
勇者「カライモン………すまない、俺はお前の事を誤解していた」
カライモン「誤解をされていた訳ではありません、知らなかっただけの事です、はい」
勇者「………お前も、口が上手いな」
カライモン「お褒めに預かり光栄です。しかし…少々困りましたね」
勇者「…どうした?」
カライモン「このままですと、脱出が間に合いません」
―魔王城門前―
公国部隊長「何だあれは!」
連合隊長「魔王軍の秘密兵器か!?」
伝達員「判りません!ですが……」
連合隊長「どうした!?」
伝達員「計測班の報告によりますと…その………」
連合隊長「続けろ!」
伝達員「は、はい!あの物体の砲身と思われる場所から、とてつもない量の魔力が感知されており……」
連合隊長「まさか……それはつまり」
伝達員「は、はい…恐らくは、部隊長の仰った通り…………へ、兵器です!」
連合隊長「――――っ!!!全軍撤退!!!」
星天の柱から一筋の閃光が放たれた
魔王城は崩壊した
―魔王城門跡―
ヤスカル「帝王様!帝王様!生きてますか!」
帝王「あぁん?何言ってんのか判んねぇよ!チクショウ、耳がまだキンキン鳴りやがる」
ヤスカル「良かった、生きてるんですね。あぁでも、耳鳴りで何も聞こえない………おや?あれって」
帝王「ん?何を見て……っと、こりゃまた酷ぇ事になってやがんな…」
ヤスカル「連合軍の船の残骸…ですかね、あれは」
帝王「っと、少し聞こえるようになってきたな…あぁ、まず間違い無ぇ。兵士どもは…」
ヤスカル「あ、砂の中に埋まってるみたいッス、生存者が居ないか確認して来ます」
迷いの森の中から 勇者があらわれた
勇者「エイジ…お前も無事だったか」
帝王「お、勇者様のご帰還だ。何とか間に合ったみてぇだな」
カライモン「はい、勇者さまのご機転のおかげで御座います。まさかあそこでわざと無限回廊を踏み外した後、侵入者排除用のハンマーを作動させるとは…」
帝王「成る程…苦い経験のお陰で九死に一生を得たって訳か」
勇者「所で、連合軍の皆は…」
帝王「見ての通り…船の方はさっきの衝撃で生まれた並にやられて全壊だ。地上に居た奴らは砂に埋もれてて、ヤスが探索中って所だな」
勇者「そうか……」
ヤスカル「帝王様ー!居ました、生存者です!」
―野営テント内―
帝王「さぁて…それじゃぁ改めて、今の状況に関しての情報を纏めるとすっか。まずカライモン、さっきのあの兵器について、知ってる事を教えろ」
カライモン「はい、畏まりました。…えー…あの兵器の名前は『星天の柱』 製造は500年前
人類間戦争の最終段階。威力はつい先程皆様がご覧になった通り、城一つを消し去る程度。今回の使用者は不明…以上で御座います」
帝王「じゃぁ次、生き残った兵士。実際に見た事を言え」
公国兵士「わ、私ですか?! えっと…まず初めに…最初にあれを発見したのは、観測班でした。突然上空に巨大な質量が現れたのを感知して…」
帝王「それから?」
公国兵士「で…その報告が届くよりも早く、指揮官を始めとした全員がその存在を目視しました」
帝王「続けろ」
公国兵士「は、はい。そしてその存在…星天の柱が丁度魔王城の真上に来た直後…とてつもない量の魔力が観測班により感知され…
放たれた閃光により、魔王城が一瞬にして消え去りました。」
帝王「成る程…な」
勇者「そして…その星天の柱を使ったのが誰なのか…勇者の剣を使ってエレルを殺したのは誰なのかは判らない…という事だな」
帝王「まぁ判らねぇが…予想が出来ねぇ訳でも無ぇ。そうだよな」
勇者「…どういう事だ?」
帝王「………お前なぁ…物凄く怪しい黒幕候補が居るじゃねぇかよ」
ヤスカル「えっ…勇者様、それ本気で言ってるんッスか?」
カライモン「いやはや…」
ノーブル「よし…では、私の口から言わせて貰おう。本来は私が魔王の内に言わなければならなかった事だからね」
勇者「ノーブルさま…?」
ノーブル「黒幕は…いや、黒幕の一端に過ぎないのかも知れないけど、少なくとも事情を知りつつシステムに加担しているのは……
国王…だよ」
―???―
??「…星天の柱の一撃を逃れたか。…いや、魔王城の始末を行えただけでも今はよしとしよう」
??「エレルめ…小癪な真似をしてくれたようだが、まだまだ爪が甘い。精精この小細工を利用させて貰うとしよう」
―魔王軍移動要塞レイクエム 作戦室―
カライモン「皆様、お集まりになられましたね」
ヤスカル「兵士さんが居ないッスよ」
カライモン「彼はまだお体の調子が優れないようなので、私の姪に介抱を頼んでおきました」
ヤスカル「カライモンさんの………姪」
カライモン「皆様、何やらとても失礼な想像をなされて居ませんか?」
勇者・帝王・ヤスカル「「「いや、全然」」」
ヤスカル「っと、それで………ノーブル様…さん、一体これからどうなるんッスか?」
ノーブル「それは正直私にも判らないね。星天の柱を使ったのが国王だとしても、何故魔王城を攻撃したのか判らない」
ヤスカル「国王が星天の柱を使って魔王城を攻略した…って、何も知らない人から見たら、それこそ人類にとっては朗報なんッスけどね…」
勇者「国王が、マオウシステムを切り捨てて本格的に魔族を駆逐し始めた…という可能性は?」
帝王「いや…魔王城ってのは、魔族の本拠地であり象徴だが、それを壊したからって魔族が絶滅する訳じゃぁ無ぇ…逆に無駄に魔族を刺激するだけだ」
ノーブル「第一に、あの国王がマオウシステムを切り捨てるという事が考えられないからね」
勇者「そう言えば、魔王……エレルが倒れる直前に言っていた、マオウシステム破壊計画の事に関しては何か知らないか?もしかしたらそれが…」
帝王「マオウシステム破壊計画だぁ?」
ノーブル「成る程……エレル君もエレナ君に似て大胆な事を考え付いた物だ」
ヤスカル「そんな事が出来るんッスか!?」
カライモン「私は存じております」
勇者・帝王・ヤスカル・ノーブル「「「「!?」」」」
勇者「頼む…その詳細について聞かせてくれ。もしかしたら今回の件が関係しているのかも知れない」
カライモン「構いませんが…先に一つ、お聞きしたい事があります」
勇者「何だ?」
カライモン「勇者様は、その手段の如何を問わずマオウシステム破壊計画に賛同なされますか?反対なされますか?」
勇者「………正直まだ判らない。手段の心配が無い訳でも無いが…このシステムを無くす事が良い事なのか悪い事なのか…」
ノーブル「自分が魔王の責務を負う事で全てが上手く行くと言うのなら、それを受け入れても良いのかも知れない…そう思っているのだろう?」
勇者「……………はい」
カライモン「保留…ですか、まぁ良いでしょう。確固たる反対の意思が無いのであればお話します」
カライモンは語り始めた
カライモン「マオウシステム破壊計画…これはその名の示す通り、マオウシステムを根幹から破壊する計画に御座います」
カライモン「勇者様やノーブル様が身を持ってご存知の通り、魔王を継承する者が居なくなれば、このシステムは停滞します」
カライモン「しかし、停滞しただけではいつ再び動き出すか…利用されるか判りません」
カライモン「では、このシステムを停滞ではなく破壊するにはどうすれば良いのか…エレナ様はそこで思い付かれました」
カライモン「魔力…魔族やモンスターが存在し、生まれ出でるための源。そして、魔族に潜在的に植え付けられた…人間への悪意を消し去ってしまえば良いと」
帝王「いやいやいやいや、ちょっと待て!魔力を消し去るだってぇ!?んな事しちまったら」
カライモン「現在の魔法文明は崩壊するでしょうね」
帝王「だったら」
カライモン「―――履き違えてはいけません。魔法など、人類にとっては生きるための一つの手段に過ぎませんよ
例え魔法を失おうとも、きっと人類は別の方法を見つけて生き残るでしょう」
帝王「………何っつー暴論だ…ってか第一に、お前達魔族はどうなるんだ?新しい魔族が生まれなくなるにしても、今の魔族は…」
カライモン「平穏無事…とは行かないでしょうね。私のように生物の限界を超えて生き延びているような者は死に向かうでしょう
そうでない者も、個体差はあるでしょうが影響はあると思われますが…多くは適応して、人の亜種程度にまで退化するとの見解です」
勇者「…お前達はそれで良いのか?」
カライモン「少なくとも異論を唱える者は現れませんでしたね。結局の所、本音では皆憎しみに疲れて居たのでしょう…」
勇者「………」
カライモン「さて、続けて宜しいでしょうか?」
勇者「…あぁ、頼む」
カライモン「では、続けてマオウシステム破壊計画の具体的な方法についでお話ししましょう」
カライモン「まず…魔力を消し去るために魔王様が選んだ手段は、つい先程皆様がご覧になった星天の柱に御座います」
ヤスカル「えっ……それって、あの無茶苦茶な兵器を使うて事ッスよね!?そんな事をしたら、標的になった場所は…」
カライモン「ご安心下さい。標的はこの地上ではありません」
ヤスカル「…と言うと?」
カライモン「標的は空…星々の煌く空でございます」
勇者「…………」
帝王「……………」
ヤスカル「………………」
勇者「つまり…この地上の魔力が尽きるまで、空に向けてあの兵器を空撃ちする…という訳だな」
カライモン「はい、珍しくお察しが宜しいようで」
帝王「あー…その、何だ。そんな事して大丈夫なのか?色々と…」
カライモン「心配は御座いません。その点はエレルさまが事前に計算を済まされていますので、はい」
ノーブル「しかし根本的な事を聞くけど…その肝心の星天の柱の操作は、敵…恐らく国王に奪われているんだよね?」
カライモン「はい。加えて申し上げますならば、次の説明で行う筈の場所…七天の支柱も手に落ちていると思われます」
勇者「…………一応聞いておこうか、その七天の支柱と言うのは?」
カライモン「星天の柱に対し、遠隔的手段を用いて魔力を供給する施設に御座います。これは、世界中の魔力を一点に集める仕組みを持っており……
そうそう確か…エレル様が抽出した魔族の悪意の塊も、同時に消滅させるためにこの施設に設置されておりましたね」
勇者「………」
帝王「………」
帝王「何かもう、何から何まで先を超されてんじゃねぇか………とっくに計画失敗じゃねぇのか?」
カライモン「物のついでで申し上げますと、恐らくは今ここで行っている会話も聞かれている可能性が高いでしょうね」
勇者・帝王・ヤスカル「「「おい!!!」」」
カライモン「よくお考えになって下さい。魔王様が殺され、星天の柱が魔王城の上空に現れた…あれが偶然で無いのなら
何者かの意図があり、状況を把握した上で実行された…そして、その何者かがそれを知る術があった…そう考えられませんか?」
ノーブル「確かにそうだけど…だったら、今の私達の状況も筒抜けな訳だよね?向うから何もしてこないのは変ではないかい?」
カライモン「恐らくは逆なのでしょう。状況を知っていて、それでも何も出来ない…いえ、何もする必要が無いのか、あえて何もしないのかも知れません」
ヤスカル「何ッスかそれ!?罠かも知れないって事じゃないッスか!!もうどうすりゃ良いんですか!!?」
帝王「どーするも何も…決まってんだろ」
ノーブル「死んでいる私が言うのは何だから………勇者君、お願いするよ」
勇者「例え罠だろうと…絶望的な状況であろうと……前に進むだけだ!」
―七天の支柱―
??「やはり…勇者達は此処へと向かって来るか」
??「しかしもう遅い、計画の改竄はたった今完了した」
??「魔王の仕組み……彼等の言う所のマオウシステムは新たな段階へと踏み出し、永遠の物となる」
―魔王軍移動要塞レイクエム 甲板―
カライモン「皆様、目的地が見えて参りました」
帝王「なぁ…目的地ってよぉ…七天の支柱って所だよなぁ?」
勇者「その筈だが…」
帝王「どう見ても…王国だよなぁ、あれ」
カライモン「はい、左様で御座います。七天の支柱は王国の地下に御座います故」
勇者・帝王・ヤスカル・ノーブル「「「「………」」」」
カライモン「皆様、如何なされましたか?」
ヤスカル「いや…さすがに…」
帝王「どこからどう突っ込みゃぁ良いのやら…くそっ!あのタヌキ親父、自国に何隠し持ってやがんだ」
ノーブル「まさか、決戦の場所が生まれ故郷の祖国になろうとはねぇ」
勇者「となれば、国民を巻き込まないためにも大規模な戦闘は避けなければ………」
カライモン「おや…皆様、あちらをご覧下さい」
帝王「ん…何だあれは?」
ノーブル「空に…何かが映っているね」
―王国中央通り―
国民A「何だあれ?」
国民B「あれって王宮じゃない?」
国民C「誰か居るぞ」
国民D「あの服…国王様?」
国民A「でも、何かおかしくないか?」
国民B「国王様の頭のあれって……」
国民E「いや…そんな、まさか…………」
国民B「魔族の…角………!?」
―立体映像―
??『全人類、並びに魔族へ告げる』
??『儂はかつて国王と呼ばれた者である』
??『だが…国王であった儂は死んだ。そして新たに生まれ変わったのだ』
??『…魔王として!』
魔王『だが、それは皆が知る魔族の王としての魔王では無い』
魔王『全ての生きとし生ける者を死へと誘う、魔獣の王としてだ!!』
―王国中央通り―
国民C「な…何を言ってるんだ、国王様は」
国民F「気でも違えたのか…?」
国民B「そ、そうよ…正気の発言とは思えないわ」
国民G「でもあの角…偽者って感じじゃないよな?」
―魔王軍移動要塞レイクエム 甲板―
帝王「どう言う事だよこりゃぁ……何で国王が魔族になってやがんだよ。おまけに何だ、魔獣ってのはよぉ」
ノーブル「カライモンは何か知っているかい?」
カライモン「幾らかの想定を巡らせる事は出来ますが、こればかりは実際に拝見しない事には…面目御座いません」
―王国中央通り―
国民A「何なんだ…よ。何で国王様が魔王になんてなってるんだ!?」
国民B「いや、これ何?王様って人間の味方なの?魔族の味方なの?」
国民G「でもさ…だったら、もし本当に魔王だって言うなら…勇者様が何とかしてくれるんじゃないか?」
国民D「あ、あぁ…そうだよな!」
「今度もきっと勇者様が………!!」
―立体映像―
魔王『さて…半信半疑の者も居よう…未だ理解が追い付かぬ者も居よう』
魔王『故に…言葉を放つよりも明確な手段を用いて証明しよう』
魔王『まずは………我が力の一つにして意思の証…それを示す』
立体映像に、魔王軍移動要塞レイクエムの甲板が映し出された
―王国中央通り―
国民G「あれは…勇者様?それに帝王や魔族も一緒なのか?」
国民D「一体何がどうなってるんだ…」
―魔王軍移動要塞レイクエム 甲板―
勇者「これは……まさか」
帝王「さすがに察しの悪い勇者でも、これにゃぁ気付くよなぁ…」
ヤスカル「魔王城からここまで、何事も無かったのってやっぱり、このためッスよね…?」
カライモン「はい、恐らくは」
ノーブル「ほら………もう影がかかってきてるんだけど」
帝王「いやぁ…正直上を見たく無ぇなぁ……」
ヤスカル「でも…見なくても来ちゃうんッスよね…」
星天の柱があらわれた
星天の柱に光が集まって行く
星天の柱から魔王軍移動要塞レクイエムに向けて 一筋の閃光が放たれた
―立体映像―
魔王『これにより…儂を討とうとする、勇者と魔族連合パーティーは滅びた』
魔王『即ち…人間と魔族が生き残るための希望が潰えた事を理解するのも容易い筈だ』
―王国中央通り―
国民B「え…?何あれ……」
国民G「空飛ぶ巨大な…兵器…?」
国民C「今のって………勇者…様?」
国民B「………どういう事…え?私達どうなるの?」
―立体映像―
魔王『心して聞け。人間よ!魔族よ!』
魔王『その目に焼き付け、冥府への土産とせよ』
魔王『これは宣戦布告ではない、虐殺宣言である』
魔王『そしてこれは…新たな時代の幕開けである』
魔王は高らかに声をあげた
七天の支柱が地上へと姿を現した
魔王『憎しみより生まれし獣よ、この世界の魔力を食らいて姿を現せ!』
七本の柱の先端に、黒い塊が現れた
黒い塊は、各々が異なる姿の獣へと姿を変えた
世界は恐怖と絶望に飲み込まれた―――
第五章 ―創世の胎動― に続く
おつ
早くわかりやすくてスッキリする展開書いてくれよ
カタルシス云々とか今時流行らねーから
●第五章 ―創世の胎動―
―国境の森―
カライモン「お二人とも、ご無事でしょうか?」
ヤスカル「はい…何とか。カライモンさんの防御魔法のお陰ッス…」
帝王「しっかしまぁ…まさかあの場所から飛び降りる事になるたなぁ。さすがに肝を冷やしたぜ」
カライモン「甲板に居た事が幸いしましたね…ところで勇者様はどちらへ?ご一緒に落下されたものと思っておりましたが」
勇者「ここだ。着地前に少々周囲の状況を確認してきた」
ヤスカル「飛翔魔法ッスか…便利ですよね」
帝王「んで、どうだった?ざっと見てきた感じ、何か収穫はあったか?」
勇者「何と言えば良いか…酷い有様だ」
帝王「当然ったぁ当然だが…どうなってた?」
勇者「まず中央通りを取り囲むように七本の柱が出現していて、それぞれの頂上に巨大な…恐らくは魔獣と呼ばれる物が一体ずつ
幸いな事にまだ動きは無く、国民への被害も出ては居ないようだ」
カライモン「成る程…それは恐らく、魔王エレル様が摘出した魔族の悪意に、七天の支柱で吸い上げた魔力を注ぎ込んで作られた物でしょう」
帝王「…ソイツは強いのか?」
カライモン「はい、恐らくはとてつもない強さでしょう」
ノーブル「…具体的には…いや、私達に勝算はあるくらいの強さかい?」
カライモン「正直即答しかねます。正面から戦えば間違い無く敗北を喫する事になりますが
…構造が判らない以上は手立てがあるとも無いとも言える状態ですので」
帝王「戦ってみなきゃ判らねぇって事か…」
勇者「次に星天の柱の方だが…現在は中央通りの中心、つまりは七天の支柱の中央に着陸している」
カライモン「恐らくそれは、七天の支柱と直結状態になるため準備でしょう」
ヤスカル「直結すると、何かあるんッスか?」
カライモン「はい…直結状態の星天の柱はほぼ即座に魔力の装填を行い、連射を行う事ができるようになります」
ヤスカル「…………マジッスか」
帝王「つまり…実質上は絶対不落の要塞になってる訳だな」
ノーブル「となれば、取られる行動は限られて来る訳で…」
勇者「星天の柱への潜入の後、奪還或いは破壊…これしか無さそうだな」
カライモン「異論ありません」
帝王「俺もそれに賛成だな。んでも…例の魔獣とやらはどーする?」
ノーブル「可能な限り戦闘は回避。止むを得ない場合のみ交戦…それも逃走が前提。と言った所だろうね」
ヤスカル「パーティーはどう分けるんッスか?」
ノーブル「…そうだね、流石に一丸になって突っ込んでしまって全滅…という事態は避けなければいけないから…」
カライモン「それに関しましては…勇者様をパーティーA、私カライモンめがパーティーB。
帝王様、ヤスカル様、ノーブル様をパーティーCとして分けるのが宜しいかと」
帝王「何だその最後のパーティーの余り物感は」
カライモン「戦力と技能のバランスで分けた結果で御座います」
ヤスカル「確かに、前衛の帝王様と後衛のあっし、補助のノ-ブル様とでバランスは良いっすけど…」
ノーブル「裏を返すと…勇者君とカライモン君は一人でそれだけの役をこなせてしまうって事なんだよね」
勇者「勇者だからな」
カライモン「魔族ですので」
―中央通り―
国民J「早く逃げろ!奴らが動き出したら何が起こるか判らないぞ!」
国民K「急げ!関所が人混みで通れなくなるぞ」
国民L「港だ!港の船で逃げるんだ!」
国民K「大変だ!馬が逃げ出したぞ!!!」
国民M「誰か助けて!うちの息子が―――」
国民J「馬鹿野郎!誰もそんな事に構ってられないんだよ!」
―星天の柱 中心部―
魔王「何と嘆かわしい…これが絶望に飲み込まれた人間の姿か」
魔王「いや……まだ希望が残っているからこそ生きようと足掻いているのか…」
魔王「どちらにしても…この国から始めねばなるまい、この…新たなシステムを」
魔王は手を掲げた
魔獣達は一斉に塔から地上へと降り立った
―空挺団旗艦、甲板―
報告員「提督、あれが報告にあった星天の柱と思われます」
提督「そして、あの巨大なモンスターが魔獣という訳か…」
副官「恐らくはその通りかと」
提督「良かろう…全世界に宣戦布告などという愚かな行為をした報い、この公国空挺団の手で受けさせてくれようぞ。全艦、砲撃用意!」
船員一同「「「アイアイサー!」」」
―中央通り―
国民J「あれは…公国空挺団か?」
国民K「やった、俺達を助けに来てくれたんだ!」
―国境の森―
勇者「公国空挺団…公国の主力艦隊か」
帝王「現時点における、人類最大の戦力のおでましって訳だが…」
カライモン「はい、恐らくはあまり意味を成さないでしょう」
―空挺団旗艦、甲板―
報告員「提督!緊急報告です!」
提督「何事だ!」
報告員「星天の柱の上部から、魔力反応が―――」
星天の柱から一筋の閃光が放たれた
―国境の森―
帝王「さて…これ以上ぐずぐずしてる暇は無さそうだな。そうだ…オイ、勇者」
勇者「何だ?」
帝王「これを持ってけ、いくら勇者でも手ぶらじゃ厳しいだろ」
勇者「これは…魔王の剣?何故これが…」
帝王「使う時が来るかも知れねぇと思って、脱出のついでに回収しといたんだよ」
勇者「成る程…しかし、この剣は…勇者の剣のように、変な仕掛けなど無いだろうか?」
カライモン「その可能性は薄いかと。あのような仕掛けを行うには、相応の時間が必要な筈。王国に所持されていた時間を考えれば出来る事は限られます
その上、その痕跡を隠すための魔法を施す時間を考えますれば…」
ヤスカル「小細工をしようとしかたかも知れないけれど、間に合わなかった筈…って事ッスね」
カライモン「左様に御座います」
帝王「って事らしい。心配無く持っていけ」
勇者「………すまない、では使わせて貰う」
―中央通り―
国民M「お願いです…お願いします…どうか…どうか、うちの息子を………」
国民N「馬鹿、逃げろ!あの黒い化け物共がこっちに向かって来てるんだぞ!」
国民M「息子を…息子を!!」
国民O「おい、急げ!」
子供の居た建物が崩れ去った
国民M「――――!!………坊や………」
勇者「心配無い。無事だ」
国民S「お母さん!!」
国民M「―――坊や!!!
ありがとうございます、ありがとうございます。…貴方は……え?」
国民S「知らないの?お母さん。勇者さまだよ。勇者さまが助けてくれたんだよ」
国民M「あぁ……勇者さま、よくぞご無事で…」
勇者「すまない…今は話をしている暇は無い、急いで逃げてくれ。ここも安全とは言えない状況になりそうだ」
国民M「は…はい!」
国民M と 国民S は逃げ出した
勇者「さて………本当ならば避けるべきなんだろうが…止むを得ない事情が早速出来てしまったか」
魔獣ラース があらわれた
―裏通り―
帝王「ったく…本当、この国の兵士どもは何なんだ。敵を前に尻尾巻いてんじゃねぇよ」
ヤスカル「アイツらもやっぱり、自分の身が可愛いんッスよ。あっしもそうなんで、人の事は言えないッスけど」
ノーブル「おっと、勇者君の方も魔獣との戦闘態勢に入ったようだね」
ヤスカル「打ち合わせの意味、あんまり無かったッスね…」
帝王「しゃぁねぇだろ。向うがこっちの事情に合わせてくれる筈が無ぇしな」
ヤスカル「ですよねー…」
帝王「で、俺達もその多分に漏れねぇって事か…」
魔獣グラトニー があらわれた
―王宮跡地―
カライモン「成る程…どうやら私たちを個別認識して探し当てたという訳では無く、単純に魔力の高い者を優先して襲って来ているだけのようですね」
魔獣エンヴィー があらわれた
―中央通り―
魔獣ラースの攻撃
勇者は身をかわした
勇者の攻撃
魔獣ラースは 9999のダメージを受けた
魔獣ラースは体力が9999回復した
魔獣ラースの攻撃
勇者は身をかわした
勇者の攻撃
魔獣ラースは 9999のダメージを受けた
魔獣ラースは体力が9999回復した
勇者「手ごたえはある…だが、一向に弱っている気配が無い。つまりこれは…」
―王宮跡地―
カライモン「生命力…この場合は魔力その物。それが無尽蔵にある故に、攻撃が意味を成さない…という事でしょうか。あまり当たって欲しくは無い推測でしたが」
カライモン「ではいたしかたありません。問題を先送りにするのは不本意ながら、事態が事態ですので…」
カライモンは 封印の空間閉鎖 を使った
魔獣エンヴィーは閉鎖空間の中に閉じ込められた
カライモン「さて…他の皆様方は上手くなされて居ますでしょうか」
―中央通り―
勇者「………不味いな、このまま消耗戦を続けていればいずれ押し負ける」
勇者「もしこの場から退いたとしても、追跡されれば逃げ切れない…あるいは、先程の親子に矛先が向けられる可能性さえある」
勇者「となれば…一気に片を付けるしか無いか」
勇者は力を溜め始めた
―裏通り―
ヤスカル「帝王さまぁ!!」
帝王「情けねぇ声出してんじゃねぇよ…このくれぇ掠り傷だって…の!」
ノーブル「しかし困ったね…この魔獣、タフな上に攻撃力が尋常じゃない。一撃でもまともに受けたら…」
帝王「言われなくっても判ってるってーの。掠っただけでこれなんだからな」
ヤスカル「何とか逃げられないッスかね…」
帝王「無理…だろーなぁ」
ノーブル「この周辺を囲んでいる黒い壁…この魔獣の胴体を、全員で越えて逃げる余裕は無さそうだね」
帝王「登ってる最中に、頭からの一撃でお陀仏…って事になり兼ねねぇな」
ノーブル「となると………危険な賭けだけど、ヤスカル君の足に頼るしか無さそうだ」
ヤスカル「あっしッスか!?」
ノーブル「そう…君がかく乱と同時に魔獣の攻撃を避け、体制を崩した所で、エイジ君が重い攻撃を加えて行く。この戦法で行けるかい?」
ヤスカル「いけるとかいけないかじゃなくて…行かないとどうしようも無いんッスよね…」
帝王「判ってるじゃねぇか。それでこそ俺の一番の部下だ」
ヤスカル「一番って…最近まで名前も覚えてくれてなかったじゃないッスか」
帝王「それは言うな。そん時まで薄いキャラで居たお前が悪い」
ノーブル「さて…これ以上の雑談をしている暇はもう無さそうだ。来るよ!」
帝王「おう!」
ヤスカル「はい!」
―中央通り―
勇者は力を溜めている
魔獣ラースの攻撃
勇者は5123のダメージを受けた
勇者は力を溜めている
魔獣ラースの攻撃
勇者は4715のダメージを受けた
勇者は力を溜めている
魔獣ラースの攻撃
勇者は5438のダメージを受けた
勇者は限界まで力を溜め込んだ
「砕け……散れ!!!!」
勇者の攻撃
魔獣ラースは873367のダメージを受けた
魔獣ラースのはこなごなに砕け散った
「………やったか?…いや、これは…」
―裏通り―
帝王「くそっ…いくら攻撃して、もすぐに再生しやがる!」
ノーブル「これは不味いね…エイジ君、ヤスカル君、体力は………いや、聞くまでもないか…っ」
帝王「あぁ…体力自慢の俺でも、流石にそろそろ…」
ヤスカル「そして勿論、肉体派じゃ無いあっしは………っとと」
ノーブル「――――ヤスカル君!危ない!」
ヤスカル「…え?」
帝王「んの馬鹿………」
魔獣グラトニーの攻撃
エイジはヤスカルを庇った
エイジは2415のダメージを受けた
―王宮跡地―
カライモン「成る程…此処も大きく様変わりしましたね」
カライモン「そして、今の此処こそがあの方の故郷…」
カライモン「果たして私は、あの方を少しでもお救いする事が出来たのでしょうか」
―裏通り―
ヤスカル「帝王様!しっかりして下さいよ!帝王様!!」
帝王「うっせぇな…耳元でぎゃぁぎゃぁ喚くんじゃねぇよ。ちゃんと生きてっから安心しろ」
ヤスカル「良かった…帝王様…」
帝王「んでもな…さすがにこっから逆転できる程の力も、逃げ出す力も残っちゃぁいねぇ。ヤス、お前だけでも逃げろ」
ヤスカル「な…何言ってるんッスか!あっし一人だけで逃げるなんて、出来る訳無いでしょう!?」
帝王「はっ…バーカ…お前はそんなキャラじゃねぇだろ。それに…お前までやられちまったら、誰がこの状況を他の奴らに知らせられんだ」
ノーブル「ヤスカルくん…酷な事だけど、ここはエイジくんの言う通りだ。ここは逃げて、勇者君かカライモンに少しでも情報を持っていくべきだと思う」
ヤスカル「そんな………」
帝王「ぐずぐずすんな!!とっとと行け!!!手前ぇは俺の一番の部下だろ!!俺の生き様をちゃんと伝えやがれ!!!」
ヤスカル「………っ!!」
ヤスカルは逃げ出した
帝王「そうだ…それで良い、お前の脚なら何とかなるだろ。この戦いが終わったら、もっと良い上司を見付けろよ」
魔獣グラトニーは口を大きく広げた
口の奥から黒い塊が姿を見せた
「っ…こりゃぁ……そうか、多分これが……くそっ、せめてこの事を……」
―中央通り―
「まだ倒せては居ない。この黒い塊…そうか、恐らくはこれが例の……」
勇者の攻撃
魔獣の核は砕け散った
勇者は 1344280の経験値を得た
勇者はレベルが上がった
勇者はレベル101になった
.
.
.
勇者はレベル121になった
「今度こそやったようだな……他の皆もこれに気が付いてくれれば良いのだが」
「…いや、今は信じて進む他は無いか」
―裏通り―
ヤスカル「そんな事……そんな事!出来る訳が無いでしょうがぁぁぁぁぁぁ!!!」
ヤスカルの攻撃
移動砲台から放たれた砲弾が魔獣グラトニーの後頭部で爆発した
魔獣グラトニーは6732のダメージを受けた
帝王「ヤ…ヤス!?お前逃げた筈じゃなかったのかよ!」
ヤスカル「何言ってるんですか!あっしが帝王様を置いて行ける訳無いでしょう!!あっしが仕えるただ一人のお人なんですよ!?」
帝王「ははっ……この、馬鹿野郎………だが、最高に最高なタイミングだぜ!よぉく聞け!もう一発こいつの後頭部にぶち込むんだ!!」
ヤスカル「えっ?は、はい!ただ今!」
ヤスカルの攻撃
魔獣グラトニーは、両腕を背中に回して攻撃を防いだ
魔獣グラトニーの頭部が 僅かに揺らいだ
ヤスカル「ダメです、さっきの奇襲みたいには…」
帝王「良いから続けろ!」
ヤスカル「は、はい!」
魔獣グラトニー はエイジに向けて口を大きく広げた
ヤスカル「帝王様ーーー!!」
帝王「脳味噌足りてねぇのか、てめぇはワンパターンなんだよ!」
エイジの攻撃
エイジは剣を突き出した
ヤスカルの攻撃
魔獣グラトニーは、両腕を背中に回して攻撃を防いだ
だが 魔獣グラトニーの身体はエイジに向かって倒れ込んだ
エイジの剣が魔獣の核に突き刺さった
帝王「手前ぇはこれでも食らってやがれ!!!」
エイジの攻撃
魔獣の核は砕け散った
帝王「ふーっ…まさに間一髪だったぜ。……ってかそれどうしたんだ?」
ヤスカル「撃墜された飛空挺の残骸から拝借したんッスよ」
帝王「お前…変な方向に逃げ出したと思ったら………さすがにチャッカリしてんなぁ」
ヤスカル「お褒めに預かり光栄ッス」
ノーブル「それで………勝利の余韻に浸っている所を申し訳無いんだけど」
ヤスカル「その切り出し方は…正直止めて欲しいんッスけど…」
帝王「なぁヤス、砲弾はあと何発残ってる?」
ヤスカル「さっきので全部使い切ってしまったッス……」
帝王「そりゃぁ不味いな……」
魔獣アバリス があらわれた
―星天の柱 中心部―
魔王「む…魔獣の一体が倒されただと?…いや、それでけでは無い。別の一体も封印されて…」
魔王「ふむ………今まさに更にもう一体も倒されたと言うのか」
魔王「こんな芸当が出来るのは勇者達しかおらぬ筈…やはり生きておったか」
魔王「しかし、もうじきこの星天の柱と七天の支柱の接続が終わる。そうすれば、いかに勇者と言えども…」
勇者「確かに…あれを食らえばひとたまりも無いだろう。だが、あれは内部に撃てるような物では無いだろう?」
魔王「勇者……既にここまで辿りついておったか」
勇者「さぁ国王よ、観念しろ。大人しく降伏するんだ」
魔王「ふん…ここまで来て今更、降伏勧告か。屍の山を登ってきた勇者が、魔王に対して向ける言葉とは思えんな」
勇者「………」
魔王「貴様はどこまでも甘い。だが…その点においては、儂も他人の事は言えぬか」
魔王の影がうごめき出した
魔王の影から 魔獣ラスト があらわれた
魔獣ラスト は分裂した
魔獣ラストAは魔族エレナに姿を変えた
魔獣ラストBは魔王エレルに姿を変えた
勇者「なっ……!?」
魔王「さて…最終決戦の前に、一つ話でもしようではないか。マオウシステムの根幹にして核心を」
第六章 ―目覚る真実― に続く
おつ
●第六章 ―目覚る真実―
―星天の柱 中心部―
勇者「マオウシステムの根幹…だと?」
魔族エレナ「そうだよ勇者くん。これはとっても大事な事なんだよ」
魔王エレル「そうそう勇者さま。これを聞かなければ前進も後退も出来ませんよ」
勇者「……悪趣味な。その姿と声を止めろ」
魔王「そう言ってやるな、勇者よ。そ奴等は、聞き手が最も耳を傾け易い者の姿と人格を取るのだ。…つまり」
勇者「言うな………もう良い、話したいのならば続けるが良いさ」
魔族エレナ「じゃぁ続けるね。早速質問で悪いんだけど、このシステムを作り出したのって誰だと思う?」
勇者「人類間戦争時に、強大な力を持っていた魔法使いか何か…俺はそう仮定している」
魔王エレル「成る程、勇者さまの割りには意外と察しているじゃないですか」
魔族エレナ「でも、その答えだと半分正解で半分間違いかな」
魔王エレル「そう?私はその更に半分で、四分の一正解だと思うけど」
勇者「………結論を言え」
魔王エレル「相変わらずせっかちですねー…でもまぁ、勿体ぶっていてもアレなので言っちゃいましょうか」
魔族エレナ「マオウシステムを作り出したのは、人間その物なんだよ」
勇者「……どういう事だ」
魔族エレナ「一番最初に作り出されたのは、勇者くんが読んでいた通りに人類間戦争時」
魔族エレナ「人間と人間が殺し合う時代…そんな時代の人類が、平和を望むのは当たり前だよね?」
勇者「当然だ」
魔王エレル「でも同時に…武器を捨て、いがみ合って居たお互いが手を取り合うには……手遅れなラインをとっくに超えていた」
魔族エレナ「敵を信じる事なんて出来やしない。味方でさえもいつ裏切るか判らない」
魔王エレル「信じたい」
魔族エレナ「でも信じられない」
魔王エレル「他人を信じるための何かが欲しい」
魔族エレナ「でも敵を信じる事は出来ない」
魔王エレル「だったら、信じなくても良い敵が欲しい」
魔族エレナ「今の敵が敵でなくなるための、共通の敵が欲しい」
勇者「………」
魔族エレナ「魔法って言うのはね…言って見れば、魔力を使うだけのただの技術に過ぎないんだよ」
魔王エレル「それは空気や水の流れに少しだけ手を加えて、自分の望むように変えているのと同じ事」
勇者「つまり…」
魔族エレナ「そう…例え魔法使いの複雑な術式が無くても、大勢の人間が集団深層意識でそれを望めばそれは魔法になる」
魔王エレル「大勢の人の望みが『マオウシステム』という名前の大きな魔法になり、その仕組みを作り出した」
魔族エレナ「と言っても、最初は今みたいに面倒なルールも無かったんだけどね」
魔王エレル「時代の移り変わりと共に人間の望みは微妙に変化して、その結果勇者が生まれ…今のマオウシステムになったという訳です」
勇者「だから四分の一か…そして、今のシステムになる過程で一部の人間が特殊な介入を行う事ににもなった訳だな」
魔王「左様…お主のように、システムから逸脱してしまった存在を修正するための自浄作用としてな」
勇者「それで…この話を俺に聞かせて、何をしたいと言うんだ」
魔王「何をしたいのだろうな…この話を聞いて考えを改めて魔王になる事を促したいのか…はたまた、我が野望の礎になる事を受け入れさせたいのか…」
魔族エレナ「国王さまも意外とハッキリしないよね」
魔王エレル「だからこそ、この計画だけは一貫してやり通そうとしてるんじゃないのかな?」
魔王「ラスト…口が過ぎるぞ」
勇者「そうか……成る程、確かに根本的な問題が見えてきた。そして国王…貴方のしようとしている事も」
魔王「ほぅ…………妙に頭が冴えているようではないか、何かに憑かれたか?」
勇者「逆です、憑き物が落ちたのですよ」
魔王「ふふっ…言いおわるわ。では勇者よ、我が野望の下にそなたの力を………」
勇者「断るっ!!」
魔王「何っ!?」
勇者「判ってしまったからこそ、そんな馬鹿げた事に力を貸す事は出来ない!」
魔王「理解して尚、刃を向けるか…良かろう、この最終魔王の前にその意思がどれだけの意味を持つのか見せてみよ!」
魔族エレナ「………何なんだろうね、この茶番」
魔王エレル「茶番をする必要があるから茶番をしてるんじゃないかな?」
魔王「ラスト!貴様達こそ茶番を止めよ。勇者を迎え撃て!」
魔族エレナ「はいはい…」
魔王エレル「はーい…」
魔族エレナ「という訳で勇者くん」
魔王エレル「という訳で勇者さま」
魔族エレナ・魔王エレル「「行くよ!!」」
―裏通り―
ノーブル「先程の魔獣は周囲の物を何でも食らう大食い系だったけれど…」
帝王「今度の魔獣は、何でもかんでも取り込んでやがる」
ヤスカル「まるででっかいハリネズミッスね。コイツ今、全長どのくらいなんッスか……」
帝王「測りたくも想像したくも無ぇよ」
ノーブル「でも……これだけの脅威を前にしても、君達は退かないんだね。……その理由を聞かせて貰えるかい?」
帝王「何を今更言ってんだ」
ヤスカル「ッスよ」
帝王「俺は帝王だ。敵に恐れをなして逃げるなんて、格好悪ぃ真似は出来ねぇんだよ」
ヤスカル「同じく、あっしは帝王様の部下ッスからね。帝王様の顔に泥は塗れませんや」
ノーブル「なるほど…うん。形は違えど、君達は立派な勇者だ。元勇者にして魔王の私が保証しよう」
帝王「何を今生の別れみてぇにしんみりしながら言ってんだよ…俺達はまだ死なねぇぞ。こんな怪我だがよ」
ノーブル「大丈夫…君達は死なないよ。勇者が三人も居て負ける道理は無いだろう?」
帝王「ははっ、違い無ぇ」
ノーブル「さて、勇者ヤスカル…キミに頼みがある」
ヤスカル「何ッスか?」
ノーブル「キミの身体を少しの間だけ貸してくれないか?」
ヤスカル「あぁ………成る程、そんな事も出来るんッスね」
帝王「おいおい…そんな奥の手があるんなら出し惜しみしてんじゃねぇよ」
ノーブル「出し惜しみするからこその奥の手だろう?…さて」
ヤスカル「行くッスか」
ノーブル「勇者ノーブルの」
ヤスカル「復帰戦に!」
ヤスカルは ノーブルの指輪 を装備した
ノーブルの魂がヤスカルに宿った
ヤスカルは 回復の秘術 をエイジに使った
エイジの体力が 9999 回復した
帝王「おぉっ!?スゲェ!これが勇者の魔法か!?」
ノーブル「とは言っても、ヤスカルの魔力では一回だけの使用が限界だけどね」
帝王「はぁっ!?……おいおい…いきなり戦闘に関係無い所で魔力を使い果たしてどうすんだよ」
ノーブル「大丈夫、問題無いよ。私の勇者時代の武器は魔法では無かったからね」
帝王「あぁ…そうか、そう言やぁ勇者ノーブルの二つ名は確か……」
ノーブル「何者にも遮られぬ高貴なる閃剣<フラッシュ・オブ・ノ-ブル>」
ヤスカルは 極閃烈光刃<シャイニング・サウザンド> を使った
魔獣アバリスは 1427 のダメージを受けた
魔獣アバリスは 1523 のダメージを受けた
魔獣アバリスは 1183 のダメージを受けた
.
.
.
魔獣アバリスは 984 のダメージを受けた
魔獣の核は砕け散った
ノーブル「思ったよりも深くに核があったようだね」
帝王「スゲェ……これが伝説の勇者ノーブルの剣技………って、おい、大丈夫か!?」
ノーブル「さすがに、この身体であの技は無茶が過ぎたかな…すまないね、ヤスカル」
帝王「んな事アイツが気にすっかよ。ってかお前自体大丈夫なのか?何ってーか……」
ノーブル「あぁうん…もう長くは存在していられないね」
帝王「だから奥の手…なのか」
ノーブル「そういう事さ…」
帝王「………馬鹿野郎……」
ノーブル「なぁに…今まで指輪の中に居られた事自体がおまけみたいな物なんだよ。私は先に行っているけど、君達はなるべく………」
帝王「おい、ノ-ブル!ノーブル!!」
帝王「………」
ヤスカル「………」
帝王「もう…居ねぇんだな」
ヤスカル「はいッス………」
―星天の柱 中心部―
魔王「ふむ…正直な所、意外だったぞ。何の迷いも無くエレナとエレルを斬り捨てるとはな」
勇者「これはエレナでもエレルでも無い…エレナとエレルを真似ただけの物だ。第一…エレナもエレルも、もうこの世には居ない!」
魔王「そうだな…エレナはマオウシステムにより間接的に、エレルは勇者の剣で直接…儂が殺した。どうだ、儂が憎いか?」
勇者「…それを答えるつもりは無い」
魔王「余裕を見せてくれおるわ…では、これでどうだ?これで尚その余裕を続けられるか?」
魔王は虚空に 勇者の剣 を出現させた
勇者「それは…」
魔王「あの時エレルを殺した勇者の剣…そして、エレルを殺して奪った魔法だ!」
魔王の攻撃
転移した勇者の剣が勇者の左足に突き刺さる
クリティカルヒット!魔王は勇者に9999のダメージを与えた
勇者「くっ……!!」
勇者は魔王の攻撃に違和感を覚えた
魔王「どうした、この程度で手も足も出ぬか?」
魔王の攻撃
転移した勇者の剣が勇者に右足に突き刺さる
クリティカルヒット!魔王は勇者に 9999 のダメージを与えた
勇者「何だ…これは」
勇者は魔王エレルの言葉を思い出した
魔王エレル『私のあの魔法。指定した場所から半径1m以内の物を好きな場所に転移できる魔法なんですよ』
魔王エレル『やろうと思えば、腕だけ飛ばしたり頭だけ飛ばしたりも出来たって事です』
勇者「これもそうだが…ここでは無い」
魔王エレル『ちなみに、あのまま転移したらどうなっていたか…』
勇者は違和感の正体に気付いた
勇者「……そうか!」
魔王「どうした、怒りと絶望に奮えて気が触れたか?よかろう、今楽にしてくれる!」
魔王は勇者の頭に掌を向けた
魔王の攻撃
魔王は掌の先にある空間を削り取る
勇者は素早く身をかわした
魔王「な……何ぃ!?」
勇者「あの時のエレルの言葉を貴方は聞いていたのだろう…だが、貴方は気付かなかった。エレルの嘘に!」
勇者の攻撃
クリティカルヒット!勇者は魔王に 99999 のダメージを与えた
魔王「くはっ……馬鹿な……嘘だと……」
勇者「もしも本当にエレルの言った通りならば、今の攻撃は避けきれずに俺は死んでいた…だが、それが嘘だと気付いたんだ」
魔王「どういう………」
勇者「転移半径が1m…確かにエレルを中心に1mならば、俺は範囲内と範囲外に身体を切り離されていた…だが、基点をずらせばそのまま転移も出来ていた筈。そうしなかったのは何故か…」
魔王「そ……う…か、お主を巻き込まぬため……実際の範囲はもっと狭い……」
勇者「そう…その嘘と真実の差のお陰で、俺は辛うじて避ける事が出来た」
魔王「くくっ……あ奴め…死して尚、儂に牙を向けるか。だが勇者よ…お主もまだ気付いておらぬようだな」
勇者「…何?」
魔王「そう…まだ終わってはおらぬという事に…だ!」
魔王は勇者の頭に掴みかかった
魔王は スキルドレイン を使った
勇者は 覇者の叫び を奪われた
勇者「なっ………」
魔王「ふふっ…ふふはははははは!!!遂に取り戻したぞ!魔王が魔王たるための力を!!」
勇者「魔王の……力…?」
魔王「そうだ…ノーブルが一方的に明け渡したこの力こそが、本当の魔王の力なのだ!!この意味が判るか!?」
勇者「………」
魔王「お主は、まだこの力を持った魔王と本当の意味で戦ってはいない…そう、今までの紛い物の魔王ではなく、本当の魔王と今から対峙する事になるのだ!」
勇者「………っ…!」
魔王は 覇者の叫びを 使った
魔王「全ての生きとし生ける者よ!恐怖と絶望に飲み込まれるが良い!そして我が存在を刻み付けよ!我こそは…最終魔王なり!!」
魔王は真の力を取り戻した
魔王は最終魔王へとクラスチェンジした
勇者「な…に…?」
最終魔王「見よ…これこそが魔王の本来の姿…そして真の力だ。さて…では手始めにこの国を滅ぼすとしよう」
勇者「待て!何をする気だ!」
最終魔王「聞かせた通りの事…この国を滅ぼすのだ。手段を知りたくば、その目で見ておれば良い」
最終魔王は右手を掲げた
100体の魔物が 国中に現れた
勇者「な……そん………な……」
最終魔王「絶望に染まったか?それとも、まだあれ等を倒せる可能性を求めて希望を抱いているか?」
勇者「………」
最終魔王「だがそれは無駄だ。例えお主が奇跡を起こして儂を倒し、転移の魔法を得て矢継ぎ早に魔獣の下へと向かったとしよう…間に合わぬ」
勇者「……………」
最終魔王「例えばお主が儂を倒し、魔王になったとしよう…全ての魔獣を止めるまでに、どれだけの殺戮が行われる?」
勇者「……………」
最終魔王「さぁ…他にはどんな都合の良い展開が考えられる?どんな奇跡を起こせばあの魔獣を止められる?」
勇者「……………………」
最終魔王「そして………そもそも、たった一つでも奇跡を起こせるという根拠はあるか?」
勇者「……………………………俺は…」
最終魔王「ん?」
勇者「俺は………勇者だ……」
最終魔王「そうだ、お主は勇者だ」
勇者「勇者は…諦めてはいけない…………勇気を以って…絶対に…」
最終魔王「無理だ。勇気だけでは何もできぬ。力無き勇者はただの無力な存在である事を思い知るが良い」
魔族エレナ「ううん、無力じゃないよ」
最終魔王「…何者?いや、貴様はラスト……生きておったのか」
魔王エレル「勇気って言うのは…一番出すのが難しい心だけど、その分強い心だからね。あ、ラスト自身はもう勇者さまに倒されてますよー」
魔王「何……?では貴様等は一体……」
魔族エレナ「うん…自分達でも何て言ったら良いのか判らないんだけど…とりあえず、私はエレナなんだよ」
魔王エレル「そして私はエレルですよ」
勇者「エレナ…エレル……?何で、何故今…ここに?」
魔王エレル「まぁ何と言いますか、物凄く悪役臭くて言い辛いんですけど」
魔族エレナ「私達の人格をトレスしたのが運の尽き。ラストが倒れて魔王のコントロールから離れた瞬間、この身体を乗っ取らせてもらったんだよ」
勇者「何だそれ、確かに悪役臭い」
最終魔王「何だと…!?おのれ…ならば今一度、その身を支配下に…」
魔族エレナ「おっと残念。それにももう対策を打ってあるよ」
魔王エレル「魔獣の大元になるシステムを構築したのが誰か…判っているでしょう?」
最終魔王「小賢しい…どこまでも小賢しい!仮初の上に消えかけの命で、最終魔王たる儂に敵うと思っているのか!!」
魔族エレナ「まさか?私達は勇者くんに奇跡を届けに来ただけ」
魔王エレル「そして、その奇跡が勇者さまを勝利に導く…そう信じてます」
勇者「エレナ…」
魔族エレナ「勇者くん…立派になったね。まぁ、まだちょっと頼りない部分も残ってるけど。
そうそう…この戦いが終わったら、私の事は忘れてね?新しい出会いをちゃんと見付けるんだよ?」
勇者「エレル…」
魔王エレル「勇者さま…宝物庫の地下を探してみて下さい、今度こそ本物の遺言が残っていますよ」
勇者「お前…達………」
魔族エレナ・魔王エレル「「さぁ…それじゃいっちょやりますか!!」」
魔獣ラストの身体は崩れ去った
魔獣ラストの身体から二つの光りが現れ、勇者を包み込む
勇者は 軌跡描く奇跡 を覚えた
勇者「あぁ………そうだな、お前達の奇跡…確かに届いたぞ。見ててくれ、俺は必ず勝ってみせる」
最終魔王「下らぬ…今更何をしようとこの国の崩壊は止められぬわ」
勇者「そんな事は無い…必ず止めて見せる。俺が…いや、勇者が!!」
勇者は 軌跡描く奇跡 を使った
光りの柱が天高く昇った
光りの柱が幾本にも分かれ 国中に降り注いだ
―裏通り―
帝王「くそっ…何がどうなってんだ」
ヤスカル「魔王が最終魔王になったとか宣言してたッスね…」
帝王「んで…国中に魔獣が現れて…」
ヤスカル「死んだ筈のエレナって子と、魔王エレルが一時的に復活…かと思ったら」
帝王「勇者の奴が、奇跡を起こすっつってた訳だが…」
魔獣1B があらわれた
魔獣1C があらわれた
魔獣1D があらわれた
帝王「奇跡とやらはどうした。絶対絶命ってレベルの話じゃねぇだろ…」
ヤスカル「あ……………」
帝王「どうしたヤス」
ヤスカル「あれ!帝王様!あれ!!」
帝王「あぁん?何だ、これ以上は何が出てきても………んな…っ!!?」
―王宮跡地―
カライモン「さて…これで全て集まった筈。後はこれを星天の柱に持って行けば………おや」
魔獣エンヴィーが閉鎖空間から這い出してきた
魔獣プライドがあらわれた
魔獣スロースがあらわれた
カライモン「はてさて、さすがの私も魔獣を三体同時に相手となりますと…ふむ………これは非常に困りましたね」
??「お困りのようですね。僕で良ければお手伝いしましょうか?」
カライモン「おや、貴方は……いやはや、予想だにしない出会い…いえ、再会という物はある物ですね」
―中央通り―
魔獣D があらわれた
魔獣E があらわれた
国民B「もうダメだ……殺される……」
国民G「助けて…助けて勇者様…!」
国民J「馬鹿言うな!勇者様は今、最終魔王と戦ってるんだぞ!!お、おおお俺達は、自分で何とかしないと、いいいいいけないんだ!」
国民G「で、でも…俺達みたいなただの人間に…!」
国民J「か、関係あるか!!勇者様だって言ってただろ!勇気を以って……臨めば、き……奇跡は起こせるんだ!掴めるんだ!」
??「その通り!!そして逆を言うならば、勇気も以って臨まねば掴める奇跡も逃してしまう!!」
―港―
魔獣2B があらわれた
魔獣2C があらわれた
国民Y「そんな…魔獣が海にも…」
国民X「逃げられない…もうどこにも…」
船長「船を出せーー!」
海賊「アイアイサー!」
国民Z「お前達…海賊の……おい馬鹿か、死ぬ気なのか!?」
船長「馬鹿言ってんのは手前ぇ等だろ、ばーろーめ。勇者を乗せて魔王の城まで行った時に比べりゃぁ、こんな物…」
海賊「お頭ー!船がやられました!!」
船長「何ぃ!?だったら銛だ!ありったけ撃ち込めぇ!海の男の底力、見せてやれぇぇぇ!!!」
海賊「お頭!」
船長「今度はどうした!」
海賊「あ、あれ…まさか!!」
船長「ん?……んが…………間違い無ぇ、あれは…!!!」
終章 ―マオウシステム― に続く
乙
乙
しかし、ただマオウシステムを壊すだけでは、人類間戦争時代に戻るだけなんだろうな
乙
●終章 ―マオウシステム―
―王宮跡地―
??「こうして貴方と同じ戦場に立つなんて…何年ぶりでしょうね」
カライモン「最後に対峙したのは12年前…最後に共闘したのは2年前に御座います」
??「そうか…10年もの間、貴方にあんな辛い思いをさせてしまっていたんですね」
カライモン「お気になさらず…私としても、貴重な体験をさせて頂いたと思っていますので、はい」
??「そう言って貰えると助かります」
カライモン「むしろ…今の勇者様に貴方を持って行かれた時は、少しばかり寂しさを感じた程で御座います」
??「それは流石に言い過ぎでしょう…それにしても」
カライモン「はい…久しぶりの再会に話の花を咲かせる余裕すら与えて下さらないとは、何と無粋な方々でしょうか」
??「同感です」
カライモン「おまけに…容姿から察するにこれらは嫉妬・傲慢・怠惰…何ともまぁ充て付けがましい事でしょうね」
??「因縁…と言えば合うのかも知れませんね。ノーブルさまに嫉妬し、自尊心を保つために戦いに明け暮れた僕の…」
カライモン「では私は…自らが変革を求める事無く、ただただ流されるままに役割を演じてきた怠惰との因縁でしょう」
??「お互い…難儀な生き方をしていましたね」
カライモン「反論の余地もございません…が、それはさておき。私思い付いたのですが」
??「何ですか」
カライモン「復帰祝いも兼ねての、ちょっとした余興です」
??「へぇ、それは楽しみです。一体どんな余興ですか?」
カライモン「名付けて…人魔融合<ユニオンズ・チェイン>」
??「ノーブル様みたいなネーミングですね、それ。でも判り易くて良いです」
カライモン「お褒めに預かり光栄に御座います。それでは行きましょうか………
エイベル様」
―裏通り―
魔獣1Bの核は砕け散った
魔獣1Cの核は砕け散った
魔獣1Dの核は砕け散った
ノーブル「いやぁ…何と言うか、エレルくんの気持ちが少しだけ判ったよ。確かにこれはとても恥ずかしい」
帝王「全くだぜ…別れの悲しみを返しやがれ」
ヤスカル「ノーブルさま゛~~~!!」
帝王「しかし、勇者の起こした奇跡がこれって事はだ…もしかして……」
ノーブル「お察しの通り…今この国には歴代・非公式合わせて100人の勇者が居るのさ」
ヤスカル「ひゃっ…100人の勇者様ッスか!?」
帝王「非公式ってのは…俺やヤスを含めるとしても、まだ居るんだよなぁ?」
ヤスカル「あ、あっしが勇者様達と一括りに!?」
ノーブル「そう…正式に勇者を襲名する事なく抹消されてしまった者も中には居るんだ」
帝王「チッ、国王の野郎………ってか、そういう奴等は大丈夫なのか?変に恨みとか持って、暴走しちまってんじゃぁ…」
ノーブル「その辺りはエイジ自身の目で確かめてみれば良いさ。さて……それも兼ねて他の勇者達の手助けに行こうか」
ヤスカル「うへぇ…」
帝王「マジかよ………」
ノーブル「帝王は退かないんだろう?」
帝王「痛い所突いてくんな…」
ヤスカル「退かないのと、自分から危険に突っ込むのは別物ッスよー…………」
帝王「るせぇ!どっちにしたって、此処まで言われたら退くに退けねぇだろ!!えぇい、まずはどこからだ!」
ノーブル「うんうん、頼もしい限りだ。そうだね…まずは中央通りの仮面の勇者クリムゾンと、老兵勇者エルダーの手助けをして…」
ヤスカル「まずは…ッスか…」
ノーブル「その次は、港の海賊勇者グレェトアンカー。それから………」
ヤスカル「………」
帝王「いや…やっぱ説明は良い。こうなったら片っ端から行ってやろうじゃねぇか!おらぁ!!!」
―星天の柱 中心部―
最終魔王「一体…また一体、魔獣が消えて行く。どういう事だ?……そうか、これは…この感覚。まさか、歴代の勇者か!?」
勇者「言った筈だ、勇者が必ず止めるとな」
最終魔王「成る程…確かにこれは大した奇跡だ。だが、忘れては居ないか?最大の問題…この最終魔王を!」
勇者「勿論忘れてなど居ない…貴方との決着も付けて見せましょう。そして……魔王を滅ぼしてみせる!」
最終魔王「吼えおって…貴様にそれが出来ると思うか!」
勇者「出来る…やって見せる!」
―中央通り―
勇者A「始まったか……」
勇者B「今代の勇者と魔王の最終決戦じゃのう」
勇者A「魔王が勝つか、勇者が勝つか…」
国民O「あの…勇者様方、今の勇者様の加勢には行かれないんですか?」
勇者B「…………」
勇者A「…………」
勇者B「…それはならんじゃろう」
勇者A「うむ、俺達が口を挟むのはここまでだ。後はあの二人………いや、この世代に生まれた者達全員が決める事だからな」
国民O「この世代の…えっ、全員でって…それってもしかして…私達も含めてですか?」
勇者A・勇者B「「当然だ」」
―星天の柱 接地面―
帝王「ぜぇ…はっ………何とか…生きて……」
ヤスカル「辿り…着けた……ッス………ね」
ノーブル「二人ともお疲れ様。お陰で魔獣もあらかた片付いたようだよ」
ヤスカル「あ…あれ?あっちから走ってくるのって……」
ノーブル「あれは………」
帝王「カライモン…?」
ノーブル「いや…あれは………エイベル君」
エイベル「貴方達が…今の勇者パーティーですね。話はカライモンさんに聞きました、僕も戦線に加えて下さい」
ノーブル「エイベル君…その顔、決着を付けられたみたいだね」
エイベル「はい、皆さんのお陰で何とか…ですけれどね」
帝王「へぇ…アンタがエイベルか。成る程、確かにアイツにも国王にも似た顔立ちだな」
エイベル「貴方は…現帝王ですね。先代にしか会った事が無いので気付きませんでした。申し訳ありません」
帝王「気にすんな。こんな粗野な野郎から風格を見出せって方が無理ってもんだ」
ヤスカル「自分で言っちゃうッスかそこ…」
カライモン「さて…それでは皆様の顔合わせも終えた所で、星天の柱内部へ…と思ったのですが」
帝王「あらかた片付いたんじゃ無かったのかよ…」
ヤスカル「そのあらかたに含まれない分がここに集まってるんじゃないッスかね」
カライモン「いやはや…彼等のタイミングの悪さは、空気を読んだ上でやっているのでは無いかと思えてしまいますね」
帝王「全員で相手して足止めされる訳にゃぁいかねぇし…ここは誰か残るしか無ぇよな」
ノーブル「全く以って同感だよ。順当に行けば、この中で一番強い私がその役目を引き受けるべきだろうね」
帝王「んの……否定しようが無ぇ事言って抜け駆けするんじゃねぇよ…」
カイン「そうそう…抜け駆けは良くないね。て言うか、一番強い奴が残るって言うなら…残るのは僕でしょ」
帝王「なっ………お前、カイン!?」
カイン「やぁ帝王様に…名前何だっけ?まぁ良いや、久しぶり。驚く事無いでしょ、僕だって勇者なんだからちゃんと復活するって。ま、アイツの力になるのは癪だけど
って言うか帝王様、勇者の乗り換え激しすぎ…いい加減本命を一人に絞らないとダメでしょ」
ヤスカル「ヤスカルっすよ~~勇者様に倒される前に聞いて欲しかったッス…」
エイベル「カイン…? まさか、君は…」
カイン「………おっと、僕はアンタの話なんて聞く気は無いよ」
エイベル「………」
カイン「少なくとも今の所は…ね。どうしても話を聞かせたいってんなら、まずはアンタの親父との決着を付けて来なよ」
エベル「あぁ…その後は必ず」
カイン「んじゃ、納得したなら早く行った行った。正直何時までも居られると邪魔なんだよね。僕の本気に巻き込まれたいってんなら話は別だけど…」
カライモン「ではお言葉に甘えて…ここは先に進ませて貰うと致しましょう」
帝王「カイン…ノーブル…死ぬんじゃねぇぞ」
ヤススカル「勇者様達…どうかご無事でっ!」
カイン「一括りにするなっての!ヤスもとっとと行け!」
ノーブル「ふふっ…中々に頼もしい増援だ」
カイン「増援?何勘違いしてくれちゃってんの?」
ノーブル「と言うと?」
カイン「僕はあんたの立場を食って飲み込むライバルだって言ってんの。さぁ、どっちが多く敵を倒せるか勝負しようよ」
ノーブル「成る程…では、ここは勇者の先輩として負ける訳には行かないね」
―星天の柱 中心部―
最終魔王「口ほどにも無い…もう奇跡は打ち止めのようだな」
勇者「まだだ……この命が尽きるるまで、いや、尽きようとも―――」
エイベル「父上!もうこのような事はお止め下さい!」
エイベル があらわれた
カライモン があらわれた
帝王 があらわれた
ヤスカル があらわれた
最終魔王「何……!? エイベル…お前は、エイベルなのか……?そうか…お前まで蘇り………」
エイベル「父上の心中お察しします。僕を失い、魔王の仕組みに執着せざるを得なくなった事は聞きました…ですが…いえ、だからこそ…」
魔王の攻撃
エイベルは 9999 のダメージを受けた
エイベル「…………え?」
勇者「国王!何を…自分のご子息に何をする!!」
最終魔王「勘違いをするな…確かに私はお前の死に絶望し…いや、お前が勇者になった時点で絶望し、マオウシステムに執着していた…だが」
エイベル「父……上…?」
最終魔王「それはあくまで通過点に過ぎぬ。儂が導き出したこの結論は、今やお前の言葉でも止める事は出来ぬ!」
勇者「国王…貴方はそこまで堕ちてしまったのか!!」
勇者は剣を構えた
最終魔王「怒りだけでは何も出来ぬぞ、勇者よ……!!」
帝王「くそっ………二人から放たれる魔力が半端じゃねぇ。何て重圧だ…一歩も動けねぇ」
最終魔王「…貴様等は歴史が変わる瞬間に特等席で立ち会えるのだ、喜ぶが良い。ただ…その代償として、その命を貰い受けるがな」
勇者「そんな事は……させるものか!」
勇者の攻撃
最終魔王は勇者の攻撃を受け止めた
最終魔王「温い!」
最終魔王の攻撃
勇者は弾き飛ばされ、壁に激突した
勇者は 4761 のダメージを受けた
勇者「くっ………先刻までの力も本気では無かったのか、最終魔王を自負するだけの事はある…」
最終魔王「己の無力さを思い知ったか…だが、今更もう遅い。後悔の中で死ぬが良い!」
最終魔王の攻撃
最終魔王は衝撃波を放った
勇者は 9999 のダメージを受けた
勇者「がはっ……!!」
帝王「勇者!!!」
ヤスカル「勇者様!!」
最終魔王「さて…回復の隙など与えぬぞ」
最終魔王の攻撃
最終魔王は衝撃波を放った
勇者は 9999 のダメージを受けた
勇者「ぐ………ぁ…!!」
最終魔王「さぁ…止めだ」
最終魔王の攻撃
最終魔王は衝撃波を放った
エイベルは勇者を庇った
エイベルは 9999のダメージを受けた
最終魔王「…何?何故だ、その身体で何故動ける」
エイベル「カライモンさんのお陰ですよ…カライモンさんと融合しているお陰で、体力は以前とは桁違いなんです…っ」
カライモン「私と融合していなくとも、今のエイベル様ならば勇気で立ち上がって居たと思われますがね。はい」
最終魔王「……往生際の悪い…!!」
最終魔王の攻撃
最終魔王は衝撃波を放った
エイベルは 9999 のダメージを受けた
最終魔王「幾ら足掻こうと、所詮はただの勇者と魔族の肉体。そのような時間稼ぎをした所で、儂に勝てると思っているのか!!」
最終魔王の攻撃
最終魔王は勇者の剣を召還した
最終魔王「もう良い…これで…終わりにしてくれるわ!!」
勇者の剣がひとりでに動き出した
勇者「あれはまさか、エレルを殺した時の…いけない!エイベル様、避けて下さい!!」
最終魔王「他人の心配をしている場合か?この一撃で貴様等二人とも貫いてくれるわ!」
勇者の剣が 勇者 と エイベル に襲い掛かる
だが勇者の剣の攻撃は届かなかった
勇者の剣は姿を消した
エレル「勝てるようになっちゃんですよねー、これが」
勇者「エレル!!?」
エレル「はい、死ぬ死ぬ詐欺の常習犯エレルです」
最終魔王「何だ……どういう事だこれは…」
エレル「すぐ魔王になってしまったから皆さん覚えて無いでしょうけど…一応これでも、一時期は勇者だったんですよ?」
帝王「あぁ…そーいやぁそうだよな」
ヤスカル「言われてみればそうッスね」
エレル「でー……復活してからはある二つの事に尽力していて…丁度今それが終わりました。
お二人が時間稼ぎをしてくれて居なければ間に合いませんでした」
帝王「ってーと?」
エレル「一つは、空間転移魔法の阻害と掌握…そしてもう一つは…」
エレルは勇者の剣を召還した
エレル「勇者の剣に施された裏技の解除。これでもうそこの最終魔王さんは勇者の剣を使えません。つまり……」
勇者は最終魔王に向けて駆け出した
エレルは勇者の剣を握り締めた
勇者の剣から放たれた閃光が、周囲を包み込む
最終魔王の攻撃力が下がった
最終魔王の防御力が下がった
最終魔王の素早さが下がった
エレルは勇者の剣を振り抜いた
勇者は魔王の剣を振り抜いた
勇者とエレルの攻撃
最終魔王は 999999 のダメージを受けた
エレル「こうやって…勝てるようになるって事ですよ」
勇者とエレルは剣を鞘に収めた
見事な熱さですな
続きはよ
最終魔王「馬鹿な……ありえぬ………この儂が………最終魔王となった儂が負けるなど…儂は、この世に真の恐怖と絶望を…」
エレル「まだその役を続けますか…良いんですよ国王さま。もう全部ばれてるんですから」
最終魔王「なん……だ…と?」
エレル「勇者さまの言葉、覚えてますか?勇者さまは、貴方を殺そうとしては居ないんですよ」
最終魔王「……」
エレル「国王さま…貴方は、言葉通り最後の魔王になろうとしたんですよね」
最終魔王「………」
エレル「最後の魔王になって…もう二度と人々が魔王の存在を望まないように、徹底的に恐怖や絶望を世界に刻み込む…」
最終魔王「…………」
エレル「そこから先はどちらでも良かった筈です。勇者さまを倒して永遠に恐怖の象徴して君臨するも良し。
勇者さまに倒されて、再び一つになった世界で…伝説の中で恐怖の象徴として君臨するも良し…って所でしょう?
戦闘中も、所々で致命傷を与えないように手を抜いていたのが丸判りですよ」
最終魔王「………………」
エレル「でも、勇者さまはそのどちらも選ばなかった。最終魔王となった国王さまを倒すのではなく、魔王という仕組みを倒そうとしていました
…そう…私がやろうとしていた、マオウシステム破壊計画とは逆の方法で、この―――」
勇者「………エレル…っ!」
エレル「何ですか?まだ話は途中……ぁ…」
帝王「エレルの…いや、エレルだけじゃねぇ。エイベルも…まさか、他の勇者達も!?」
エレル「あーぁ…残念、時間切れみたいです。さすがにずっと留まる事は出来ないみたいですね。それじゃ勇者さま…後は頼みましたよ」
勇者「エレル……あぁ、判った。俺の口から全てを話そう」
最終魔王「エイベル……」
エイベル「父上…私は最後まで貴方の心の内が判らなかった。でも…その最後の最後で父上の深淵に触れられた。
不謹慎かも知れませんが、それは…僕にとっては救いとなりました」
―星天の柱 接地面―
カイン「あーぁ…折角ザコを片付けたと思ったら、もうタイムアップか…まだまだ暴れ足りないっての」
ノーブル「私としては、十分過ぎる延長戦が出来て満足だけどね」
カイン「あぁそうだ、今度は直接勝負しようよ。判り易く決着付けたいからね」
ノーブル「ふむ…そうだね、それも面白そうだ…」
召還された勇者達は 光りとなって消えて行った
―星天の柱 中心部―
勇者「俺は…このシステムの事も、国王様の考えも理解出来ました…でも、賛同は出来なかった」
最終魔王「……」
勇者「皆が目の前の困難から目を逸らし、偽りの敵を据える事で手を握って居た…それは、何かが間違っていると思ったんです」
最終魔王「………例え間違いであろうと…間違いと判っていても、それしか手は無かったのだ」
勇者「いいえ、ありました」
最終魔王「…言わんとする事は判る…だが、皆が皆お主のように強くは無い。所詮それは机上の空論でしか…」
突如 星天の柱が揺れだした
帝王「な、何だぁ!?」
最終魔王「………不味い…魔獣という媒体を失ったが故に、魔力と憎悪の感情が……渦を巻き、一箇所に集まろうとしておる…」
ヤスカル「集まったら…どうなるんス……か?」
最終魔王「………」
帝王「言えねぇ程酷い事になるって事かよ…!」
カライモン「はてさて…これは対話どころの問題では御座いませんね。如何いたしましょう」
最終魔王「古狸めが…こうなる事を予期して、あれを揃えておいたのだろうに」
カライモン「予期ではなく想定に御座います、はい。勿論、使わずに済めば良かったとも思っておりますので、その点はお間違え無く」
最終魔王「…まぁ良い、魔力と憎悪の流れは儂が引き受ける。勇者よ…何から何までお主に押し付けてすまない。後は頼むぞ」
最終魔王を中心に魔力と憎悪が渦を巻きはじめた
最終魔王は繭のような球体に包み込まれた
球体は脈動を始めた
帝王「な……なん…だ、こりゃぁ……っ!!」
ヤスカル「あ、頭が…頭が割れるように…痛くて…気持ち悪くて…!!!」
カライモン「これは…何と言いますか……予想以上の…」
勇者「済まない…厳しい状態かとは思うが、先の話で言っていた手立てを取ってくれ」
カライモン「畏まりました……ではこれを…」
カライモンは 封印石の欠片 使った
勇者の剣 は 聖剣 へと姿を変えた
魔王の剣 は 邪剣 へと姿を変えた
勇者は 聖剣 と 邪剣 を装備した
勇者「これはまさか……これが、勇者の剣と魔王の剣の本当の力なのか?」
カライモン「左様にございます。ただその剣は本来、勇者と魔王の争い程度には用いられぬ物…心してお使い下さい」
勇者「そうか…今から始まるの戦いは……それだけの力が必要な戦いと言う事か」
カライモン「左様に御座います」
勇者は大きく息を吸い込んだ
勇者「世界中の皆………聞いてくれ」
勇者「俺は、最終魔王が…国王が絶対的な悪だったとは思えない。いや、彼をこのまま絶対悪として歴史に残してはいけないと思う」
球体に亀裂が入り、その奥から巨大な目玉が姿を見せた
勇者「そんな事をしてしまったら、そんな事を許してしまったら…それをきっかけに、人はまた何かを誰かのせいにして生きるようになってしまう」
球体から巨大な角が伸びていく
勇者「そしてまた…人々は魔王を望み、苦しみが生まれてしまうだろう…」
マオウシステム があらわれた
勇者「だから…」
勇者「すぐに変われなくても良い…少しずつでも良い
勇者「気に食わない何かがあっても、それを誰かのせいにするのではなく」
勇者「…自分自身が現実と向き合って進めるだけの、勇気を持って欲しい」
勇者「そうすれば…誰もが勇者になれる」
勇者は 覇者の叫び を使った
勇者は 覇者 へとクラスチェンジした
覇者「そして、勇者となれば…魔王を倒す事が出来るのだから!!」
覇者の攻撃
マオウシステムに 1 のダメージを与えた
―マオウシステム― 完
皆様、ここまでお付き合い頂きありがとうございました。
皆様に頂いたご指南やレスの数々、主にレスの方を放置してしまい申し訳ありませんでした。
レスが付いた事の嬉しさのあまり、調子に乗ってネタバラシ発言をしてしまいそうになったため、自粛していましたorz
…ので、今更ながらここで改めてレス返しさせて頂きたいと思います
>8 >31 次回作にもご期待下さい
>29 >100 >124 ありがとうございます!
>30 ちょっとだけですが、終盤で出番あります
>101 お目汚し失礼しました、次回作はもう少し軽快でテンポの良い作品を考えております。
>156 クライマックスなので、個人的な趣味をぶち込んでみました。
>157 遅筆ですみませんorz
そして
>皆様 もうちょっとだけ続くんじゃよ
ん……ごめん最後がよくわからなかった
ひとまず乙!
1で崩れる……マカマカ第二形態?ww
>167 ありがとうございます!
>166 >168
すみません。最後の最後で思いっきり言葉足らずになってました。
それでは引き続き、往生際の悪いおまけです。
●余章 ―With You―
―???―
勇者は眩い光りの中に居た
勇者「ここは…どこだ?俺は死んだのか?」
勇者は己に問いかけた
勇者「いや、違う」
そして自らの考えを否定した
勇者「いや、そうじゃない。お前の言葉を否定したんだ。俺は自らに言葉を向けた訳では無い。お前に聞いたんだ」
私に?
勇者「そうだ」
申し訳ない。想定外の事態故に対応出来なかった
勇者「いや、それは良い。とりあえず俺の質問に対する答えはどうなんだ?」
死の定義による。何を以って死んだと定義し、何を以って生きていると定義するかが問題。それが確定しない内は、どちらとも判別出来ない
勇者「エレナやエレルのような屁理屈を…」
これは屁理屈では無く事実。私の主観では誤解を招く恐れがある
勇者「成る程…負けず嫌いなのではなく、融通がきかないのか」
それは見解は否定しない
勇者「思い返してみれば、国境での帝国の勇者との戦いもそうだったな…あの時はどちらがどの勇者か紛らわしかったぞ」
複数の勇者が同時に存在する事態は想定していなかった
勇者「だが、軌跡描く奇跡で召還した時はちゃんと名前で呼んでいただろう」
あれは勇者ではなく召還物として扱ったため
勇者「………何と言うか…いや、突っ込むだけ無駄か」
貴方が何を望み、どんな返答を欲しているか判らない。…これは、単に雑談を行いたいのだろうか
勇者「雑談か…それもありだろうな。誰かと話したい思い出も、山ほどある事だし…
そう言えば…勇者になった瞬間から、お前の声が聞こえるようになったんだったな。お前もマオウシステムの一部なのか?」
ナビゲーションシステムの一部ではあるが、マオウシステムに属している訳ではない
勇者「成る程…まだまだ俺の知らない仕組みがあるんだな。あぁ、そうだ。だったら…言っておく事がある」
聞く準備はある
勇者「今まで…俺と共に居てくれてありがとう、お前のおかげで助かった」
……………
勇者「何だ、俺はまた変な事を言ったか?」
否定する。変ではないが想定外の言葉を向けられたため対応し切れなかった
勇者「…お前はお前で難儀な存在だな。そう言えば、もう一つ聞いても良いか?」
許可する
勇者「マオウシステムはどうなった?俺は刺し違えてもあれを倒す事が出来たんだろうか?」
定義にもよるが、マオウシステムその物は未だに健在
勇者「…………そうか、くそっ!!やはり俺の力では…」
質問の意図を理解。健在ではあるが、倒せない事と同意義では無い
勇者「どういう事だ?」
本来は魔王として覚醒するためのスキル、覇者の叫びを使った時の事を思い出して欲しい
勇者「あの時は確か…魔王じゃなくて、覇者とかいう訳の判らない物にクラスチェンジしたよな」
そう。魔王では無く、勇者と魔王…人と魔の覇者となった。それにより、不測の事態が発生した
勇者「人と魔…エイベル様とカライモンのあれのような物か?」
ベクトルも規模も違うが、ニュアンスとしてはその認識で構わない
勇者「それで、その覇者になって事で発生した不測の事態というのは?」
マオウシステムに僅かながらダメージを与えた事。あれは人間の集団深層意識その物。本来ならば物理攻撃は勿論魔力でも傷を付ける事は出来ない
勇者「そう言えば、そんな事をエレルが言っていたな。しかし、与えられたダメージはたったの1だった……あれでは」
………無自覚のようなので、改めて説明する
勇者「え?何か怒ってるか?」
あの時、勇者の心により心を動かされた人間が少なからず存在した…つまりは、マオウシステムの存在を部分的ながら揺るがす事が出来た
勇者「………そうか、こう言いたいんだな?もし人類全ての意思がマオウシステムを必要としなくなれば…」
そう…その時は、覇者の力によりマオウシステムを完全に消滅させる事が出来る
勇者「成る程………」
ただ、その条件を達成する事は極めて困難
勇者「困難な道だからと言って、避けて通るのは勇者のする事では無いよな」
貴方ならばそう答えると思って居た
勇者「しかし…こんな状態では、その可能性を掴む事さえ儘ならないな。どうした物か」
その問題に対しては解決策が存在しない訳ではない
勇者「………本当か!?」
嘘を吐く理由は無い。ただし……
勇者「ただし…?」
ここから先は、納得出来なくても無条件に私の言葉を信じて貰い、貴方本人にも苦難の道を進んで貰う必要がある
勇者「望む所だ」
それを言うのならば、臨む所………いや、貴方ならば……
勇者「どちらでも良いさ。どちらでも間違いは無いからな」
……流石は勇者。では了承確認完了…再び始めよう
これまでの冒険を記録しますか?
[> はい
いいえ
これまでの冒険を記録しました
つよくてニューゲーム を選択すると、能力や一部のアイテムを引き継いだまま最初から冒険を始める事が出来ます
それでは引き続きユウシャシステムをお楽しみ下さい
なんと!!
これはあれなのかなぁ、星を継ぐものに出てくる量子世界内包惑星(衛星?)的な物のなかなのか?
そしてあのゲーム風演出文こそが世界ナビだったと
ユウシスの単語はいつか出るんじゃないかと思ってたがこんな所で……
そして強ニューktkr
全然意味が分からん
このSS内で完結してない話ならリンク貼って
>176 名前は聞いた事あるのですが、読んだ事がありませんorz 機会を見つけて読んでみます
>177 やっぱり予想されていましたよね!
>178 文章力が無くてすみませんorz 続編のユウシャシステムでもう少し判り易く表現できるよう努力してみます。
次回作の予定はありますが、今の所このSS以外に関連作品はありません。
あと、ユウシャシステム執筆前に別作品一本挟みます。
タイトルは「魔法少女ダークストーカー」
それでは皆様 改めて、お付き合い頂きありがとうございました。
乙
ケロロのあの娘かな?
もちろん誘導はあるんだろうな?
次スレ
ユウシャシステム
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魔法少女ダークストーカー
魔法少女ダークストーカー - SSまとめ速報
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>180 すみません、無関係です。
>181 忘れてました。ご指摘ありがとうございます。
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