のび太「ドラえもん!なんか道具出してよ!」ドラえもん「」 (54)

「……のび太くん、キミはもう、高校生なんだよ?」

ドラえもんは、呆れながらそう呟いた。
溜め息交じりの言葉は、これまで何度も聞いてきた。だけど、この日の彼の“ぼやき”は、いつもよりも息が深かったように感じた。

それでも、僕はまた彼に言ってしまった。

「いいじゃん、別に……」

そして彼は、一段と大きな溜め息を出した。

「……キミは、いつになったら成長するんだい?いつも道具に頼ってばかり。自分では何もしない」

「そんなこと……ないけど……」

「ホントに?テストの時も、体育祭の時も、文化祭の時も、みんな僕の道具を使ってたじゃないか。まあ、全部はうまくいってるわけじゃないけど」

「……」

「……のび太くん。未来ってのは、キミが思う何倍も脆いんだ。キミの行動次第で、簡単に変わってしまうんだよ。いい加減、自分で頑張りなよ」

「――ああもう!説教は聞き飽きたよ!いいから道具出して!」

「……はぁ」

そしてまた、彼は溜め息を出すのだった。

この書き方、見覚えがある…?

高校生にもなってドラえもんに依存するのび太wwwww











俺も人のこと言えねぇな…

「――のび太さん。今日のテスト、大丈夫?」

電車に揺られながら、しずかちゃんはそう聞いてきた。

「うん!もっちろん大丈夫!バッチリだよ!」

「……本当に?」

「うん!当たり前じゃないか!」

「……はあ……。またドラちゃんの道具を使ったのね……」

しずかちゃんもまた、彼と同じように溜め息を吐いた。どうやら、お見通しのようだ。

僕としずかちゃんは、同じ高校に通っている。
僕らの家からは少し離れた街にある学校には、こうして電車を使っている。
毎日一緒に駅に行き、毎日一緒に学校に向かい、毎日一緒に帰宅する。
小学校、中学校と同じ光景が、そこにはあった。

あれからしずかちゃんは、とても綺麗になった。
昔あった可愛らしさは残しつつ、何と言うか、女性ならではの美しさまでも追加されたようなものだ。
容姿端麗、成績優秀、運動も並以上にこなす彼女。

彼女と一緒に過ごしていることは、僕のちょっとした自慢になっている。

人がポツリポツリと乗車していた電車を降りれば、その町が眼前に広がった。

都会から離れたそこは、どちらかというと住宅街のようなところだった。
目立った建物も観光名所もない。
ごく普通の、街だ。

その町の中にある、なだらかな坂道を上る。
春先になって、道路脇に咲いていた桜の花はすっかり散ってしまった。黒いアスファルトに落ちた花びらだけが、鮮やかに咲き乱れた光景を思い出させる。

この道を歩くのも、何度目のことだろうか……。
ふと、そんなことを考えていた。こうして彼女と歩いた道は、僕を僕が望む未来へ一歩一歩近づけるように思えた。
積み重ねた日々の中に、いくつもの彼女の一面が映る。
それを思い出すと思わず頬が緩むのは、僕の悪い癖かもしれない。

「……何で笑ってるの?」

「んん?別に……」

「おかしなのび太さん」

彼女は、緩む僕の顔を見てクスリと笑った。
それを見た僕の頬は、また緩んでいた。

ドラえもんが消えて10年の人?

のび太ッサだ!

無駄な描写が多くて苦手

同じ単語使いすぎ
下手くそな文章書く奴の典型

町と街の使い分けの意図を聞きたい

もうやめてやれよ……イッチのライフは0だぞ

いいぞいいぞ。
期待

「――じゃあ、テストを開始するぞ!」

教卓に立つ先生は、教室を見渡しながら声を上げた。

教室の中が、一段と重い緊張感に包まれる。
僕の目の前にも、白い紙が二枚あった。問題用紙と、回答用紙。裏返されたその紙を見ていると、心臓が高鳴ってくる。

「各人まだ捲るなよ?」

先生の言葉は、緊張を更に高めていた。
開始の時刻まで、間もなく―――

「――では……始め!」

その声と共に、室内では一斉に紙をめくる音が響き渡った。

(ふっ……余裕だね。昨日ひたすら、暗記パン食べたし。今日のテストは、貰った……!!)

並々ならぬ自信を胸に、僕はさっそく、机上のシャープペンシルを握り締めた。

いつも思う
面白くなかったりつまらないと思うならレスしないでそっ閉じすればいいのに
わざわざレスする必要はないよね

>>14
回避する手段はないからな。
やられたら黙るだけよ。

教壇じゃなくて教卓に立つのかよwww
カオスすぎてテストに集中できんわw

>>16
おう……すまん

テストを終えた教室は、生徒達のざわめきが起こっていた。
ある者は友達と答え合わせをし、ある者は机に項垂れたまま呻き声を上げる。
これも何度も見て来た光景だった。

前回のテストはあまりにもダメだったから、僕は終わると同時に机に沈んでいた。
だが今回は違う。ドラえもんの道具も借りたし、余裕だった。
これなら、何とか追試は撒逃れるだろう……。

「――のび太くん、どうだった?」

「……え?」

突然、後ろから話しかけられた。
振り返るとそこには、彼女がいた。

「……月形さん……」

「ま、テストのことは後で聞こうかな。それよりほら、早く委員会行こ。校舎裏の花壇、綺麗にしなきゃ」

自演がなければ伸びんな、のび太ッサ!

また一人少年の心が折られたか



ざまあwwww

月形まる代か

暇だから見るを

「――のび太くん、今日はここしよっか」

「うん、そうだね」

僕と月形さんは、校舎裏の花壇の整備を始めた。
陽の光が当たりにくいこの場所では、花が育ちにくい。だから、環境委員が花壇の整備をしながら、花の植え替えを行っている。
僕らは、その環境委員に所属している。

「あ、のび太くん。花を傷めないように気をつけてね」

「分かってるって」

「……どうも心配なんだよねぇ……」

月形さんは、不安そうに呟く。

――彼女は、月形まる代さん。僕と同じクラスで、同じ委員会に所属している。
実は僕は、彼女とは小学校から面識がある。
もっとも、最初に会ったときはあまりいい思い出とは言えないものだったが。
ドラえもんの道具で僕と月形さんが高校で同じクラスになると分かって会いに行くと、0点の連続記録だの遅刻の連続記録だのの噂を聞いたという、ただの噂好きの女子だった。
それからあまり接点はなかったが、その時知った未来通り、彼女は僕と同じクラスになった。
それから同じ委員会をするようになり、今に至る。

正直に言えば、彼女は中々可愛い。
男子にも人気があるし、持って生まれた世話好きな性格からか、女子からも人気がある。
しずかちゃんという人がいる僕としても、こうして二人で話すと、心が躍るのは至極自然な反応なのかもしれない。

「――私さ、こういう地味な作業、意外と好きなんだよね」

突然、彼女はそう言ってきた。

「え?」

「だってさ、こういうことをすることで、なんか学校が綺麗になっていくじゃない?掃除とか、花の手入れとか。自分の手で何かが綺麗になっていくのって、なんだか嬉しいんだよね」

「んん……僕は、面倒な作業はあんまり苦手だな。やってて飽きてくるよ」

「でも、なんだかんだ言ってのび太くんもちゃんとするよね?」

「しなきゃ先生に怒られるしね」

「ハハハ。のび太くんらしいね」

彼女は、楽しそうに笑う。
この笑顔を見ると、何だかこっちまで楽しくなってくる。彼女には、そんな不思議な魅力があった。

それから僕らは、花の手入れを続ける。会話を弾ませながら。
日陰になった校舎裏は、何だか暖かい空気が漂っていた。

「――のび太さん、テストどうだった?」

帰り道、しずかちゃんは聞いてきた。
駅を降りてから、家までの僅かな時間。辺りは薄暗くもあるが、慣れ親しんだこの道は、不思議と不気味さは感じない。

「うん、大丈夫だったよ」

「……そう」

何だか煮え切らない反応を示す彼女。何か、思うことがあるのだろうか……。
そんなことを考えていると、彼女は言葉を続けた。

「……のび太さん、ドラちゃんの道具、使ったの?」

「え?……ええと……」

「あ、言わなくていいわ。……その反応見たら、なんとなく分かるし……」

「そ、そう……」

「……」

彼女は、少しだけ、悲しそうな顔をしながら俯いていた。
その表情がやけに気になった僕は、一言だけ声をかける。

「……しずかちゃん?」

しずかちゃんは、僕の声に反応することはなかった。ただ虚ろな視線を斜め下に向けたまま、言葉だけを向けて来た。

「……のび太さん、もう、止めにしない?」

「……え?」

「ドラちゃんの道具のことよ。のび太さん、もうドラちゃんを頼るのを止めたら?」

「……ええと……」

「のび太さんだけよ?ドラちゃんに頼ってばかりいるのは。スネ夫さんも剛さんも、みんなそれぞれの道を歩いてるわ。もちろん私だって、自分なりに頑張って、今の生活を続けてる。
ドラちゃんの道具は、確かにすばらしいわ。どんなことも叶えてくれる、本当に魔法みたいな道具……だけど、それは本来、この世界にはないものなのよ?」

「それは……そうだけど……」

「本来ないものに頼ってばかりだと、今の自分に必要なものが見えなくなると思うの。……今ののび太さんが、まさにそれよ……」

「……」

「別にドラちゃんと縁を切るように言ってるわけじゃないの。ただ、そろそろ自分の力で頑張ってみたらって思っただけなの」

「……無理だよ」

思わず、心の声が漏れてしまった。その言葉に、彼女は僕の顔を見つめる。
しまった―――そうは思ったが、一度出た言葉を引っ込めることは出来ない。だからこそ、胸の内を出すことにした。

「……僕には、ドラえもんのいない生活なんて考えられないよ。これまでずっと一緒だったんだ。そして、これからも一緒だと思ってるんだ。
――そんな関係を止めろなんて……僕には出来ない……」

「……」

彼女の表情は、みるみる険しくなっていった。直感的に思った。怒られると……。

「……それ、違うでしょ?」

……だが彼女は、怒ることはなかった。だけど、とても冷たい口調で、視線で、僕を射貫いていた。

「のび太さんが必要としてるのは、ドラちゃんじゃないわ。――のび太さんは、ドラちゃんの道具と別れるのが怖いのよ」

「そ、そんなこと……!!」

「もういいわ。……私、先に帰る」

「え?――あ!ちょっと……!」

そう言い残した彼女は、それまでよりも歩くペースを上げた。しばらくすると、僕は離されてしまった。
そして彼女は、そのまま家のある方向に消えていった。

「……」

残された僕は、その場で歩くのを止めて立っていた。

――のび太さんは、ドラちゃんの道具と別れるのが怖いのよ――

彼女のその言葉は、僕に突き刺さっていた。
そこから痛みが広がる。じわじわと、全身に、心に、這うように……。

彼女の言葉を思い出しながら、僕は家に帰った。
母さんと父さんに軽く挨拶をした後、二階へと登る。

……とにかく、ドラえもんにお礼を言おう。彼のおかげで、僕は追試を撒逃れたのだから。

今のままじゃダメなのは、誰かに言われるまでもなく分かっている。
僕も、あと数年すれば大人の仲間入りになる。
だけど、今の僕に父さんや母さんと同じように振舞うのは難しいのかもしれない。何かあればドラえもんを頼り、事なきを得る。
究極の奥の手と言える彼の存在は、今の僕にはかけがえのないものとなっている。
それがなくなった時のことを考えると、背筋がゾッとする。

(……今のままでいいんだ。そう、それでいいんだ……)

どこか自分に言い聞かせるように、そう心の中で呟いた。
それもまた、僕の悪い癖なのかもしれない。

「……ただいま、ドラえもん……」

入り口を開けると同時に、室内にいるはずの彼にそう言った。

「や、やあ……お帰り……」

いつも通り、彼は僕の声に返事を返す。
……だけどこの日は、少しだけいつもと違っていた。
視線は左右に泳ぎ、いつもの笑顔とは違う、どこか無理矢理作ったかのような笑顔だった。

なにより違っていたのは、彼一人ではなかったということ……。

「――よっ。おじいちゃん」

「……あれ?セワシくん?」

今日の僕の部屋には、セワシくんがいた。

セワシくんは、たまにこうして遊びに来る。おじいちゃんの若い時に会いに行けるのも、未来の特権なのかもしれない。

「なんだ、来てたんだ」

バッグを机に置きながら、彼を迎える。

「う、うん……まあね……」

だがセワシくんもまた、どこかいつもと違っていた。
ドラえもんにセワシくん……何か、あったのだろうか……。

「……で?今日は何をしに来たの?」

少しだけ、探りを入れてみた。

「え?ああ……ええと……」

彼は、言葉に詰まる。……いや、躊躇しているのかもしれない。
言うことは既に決まっていて、あとはそれを口にする覚悟を決めているような……そんな表情だった。

少しだけ首をひねった彼は、突然言い出した。

「……おじいちゃん。今日は、ちょっと言わなきゃいけないことがあるんだ」

「……言わなきゃいけないこと?」

「うん……」

そしてセワシくんは、僕の顔を見た。

「――お爺ちゃん。ドラえもんを、連れて帰ろうと思うんだ」

「……え?」

「その理由は、ただ一つ。――未来が、また変わり始めたんだよ……」

今日はもう寝ます
続きはまた明日


待ってる

再開

「未来が……変わり始めた?」

「……うん。そうなんだ……」

ドラえもんは、視線を下に向けたまま静かに頷いた。

「どういうこと?」

「そ、それは……」

「――おじいちゃんのせいだよ」

言葉を濁すドラえもんの横から、割って入るようにセワシくんは言う。

「おじいちゃんは、ドラえもんに頼り過ぎてるんだよ。高校生にもなって、いつまでも道具ばかりねだって……自分で何もしようとしないで、成功ばかり期待する。
正直言って、おじいちゃんは成長してないんだよ。……ううん。それどころか、悪化してるんだ。おじいちゃんは、小学生から時間が止まってるんだよ」

「そ、そんなことは……」

「事実、おばあちゃん――しずかちゃんも、最近のおじいちゃんに愛想が尽き始めてるし。何か、思い当たる節はない?」

「……」

彼の言葉で真っ先に思い出した。彼女が、僕に言った言葉を……。

「このままいけば、おじいちゃんはおばあちゃんと結婚出来ないよ。それどころか、ろくに自分一人で生活することも出来なくなる。
――だからそうなる前に、ドラえもんをうちで預かるんだ。おじいちゃんのために……」

「……のび太くん……」

「……」

セワシくんの言葉に、僕は何も言い返せなかった。
そしてドラえもんもまた、何かを訴えるように僕を見つめる。
――そんな彼の視線すらも、直視出来なかった。

嫌なら帰れよ
明らかにおまえが障害だろ > ドラ

「……ごめんね、のび太くん……」

沈黙が広がる室内で、ドラえもんは呟く。

「全部、僕のせいなんだ。キミのためにと思ってたのに、結果として、僕が一番キミをダメにしてたんだ。言われるままに道具を貸して、キミの成長を止めてたんだよ。
キミを幸せにするために来たのに……僕が、キミという人を悪くしてたんだ……」

「……」

……もしかしたら、僕が彼を追い詰めていたのかもしれない。そう思うと、彼に何かを言わなきゃと思った。だけど僕の口は、自由に動いてくれなかった。
沈黙――その選択肢は、僕の心の逃げ道なのかもしれない。
ドラえもんは、こんなにも僕のために悩んで苦しんでる。なのに僕は、僕自身を守ることしか出来なかった。

「……じゃあドラえもん。そろそろ……」

「……うん……」

「あ……」

一瞬だけ、机に向かう彼らに手が伸びる。だけどすぐにひっこめ、ただ立ち尽くした。

「……じゃあね、おじいちゃん……」

そう言い残したセワシくんは、引き出しの中に消えた。

「……のび太くん。体に、気を付けてね……」

それに続き、ドラえもんも引き出しの中に入る。最後に彼は、名残惜しそうに僕を見た。そして、引き出しは締められた。

「……」

僕は、最後まで声をかけることなく、ただ彼らが消えていくのを見つめた。

でも、このままじゃいけない――そう思った僕は、引き出しに手をかけて、一気に開いた。
……だけどそこは、既にただの引き出しになっていた。

「……ドラえもん……」

はよ

審査対象だわ
この調子でどんどん頼むよ

とりあえず風景描写しとけば
上手い感じの文章に見える典型的なクソ文章

否定的なレスがあったとしても、書き始めたならさっさと最後まで書けやボケ









早く続きお願いします

仕事終わった
再開

「――ドラえもんが?」

ジャイアンは、驚きの表情を浮かべながら声を出した。

「……うん。そうなんだ……」

「……そうか……」

腕を組み、思案に耽る彼。

ここは、彼の自宅。
彼は僕やしずかちゃんとは、別の高校に進学していた。それでもこうして交流があるのは、偏に、昔からのよしみなのかもしれない。
彼の部屋は、いつものところだった。
木造住宅の2階、その窓際。窓の外には道路があり、そこでは人や車、バイクや自転車が往来している。
近くに住宅街が新しく出来たからだろうか。昔よりも、人の姿が増えたように思える。

彼の部屋も、昔とは違っていた。
壁には有名なロックバンドのポスターが貼られ、ラジカセ、ギターが隅に置かれている。
そして別のところには、野球道具も置かれていた。
音楽と野球。昔からジャイアンがしていたことではあったが、道具はどれも綺麗に並べられ、整備されているようだった。
がさつで乱暴だった彼が、こうして細かい一面を見せて始めたことは、未だに驚いしまう。

見慣れた風景が、昔とは少しずつ変わっていく……こうやって、時代の移り変わりを実感していくものなのかもしれない。

さて、なぜ僕がここにいるのか……答えは実に単純なことだ。
ドラえもんが未来に戻った経緯を、彼に話すためだった。

彼は黙って僕の話を聞いていた。
彼もドラえもんとの付き合いは長い。色々と思うこともあるだろう。

……でも、彼の口から、思いもよらない言葉が出て来た。

「……これで、良かったんだろうな」

「……え?」

「ドラえもんだよ。ドラえもんが未来に戻ったのは、正解だったって思うぞ」

「……どういうこと?」

僕の言葉に、俯いていた彼は顔を上げた。腕を組んだまま、力強い視線を僕に向けて来た。

「……のび太。いい加減目を覚ませよ。お前に、ドラえもんは必要ないんだよ」

その言葉に、顔が熱くなるのを感じた。

「それ、どういう意味?」

僕の顔が強張っていくのが、自分でもよく分かった。口調も、いつもよりもトーンが低い。
それでも彼は、一切の遠慮もなく言う。

「そのまんまの意味だよ。――なあのび太。今のお前に足りないもの……なんだと思う?」

「……僕に足りないもの?」

「ああ、そうだ。他の奴にあって、お前にはないもの。決定的に、足りていないものだよ」

「ええと……勉強とか……あと、運動神経とか……」

「違うぞのび太。世の中は広い。お前より勉強が出来ない奴だっている。お前よりスポーツが出来ない奴もいる。それでも、そんな奴にすらあるものが、お前にはないんだよ」

「……それって……?」

「――焦りと、危機感だ」

彼は、語尾を強めた。

「のび太、今お前、ドラえもんがいなくなって焦ってるだろ?ヤバいって思ってるだろ?悲しいとか、辛いとかは別にしてだ」

「……うん」

「それは何に対してだ?これからのテストのことか?体育祭のことか?――その、全部じゃねえのか?」

「……」

「それはな、普通のことなんだよ。誰だって、何かある時は焦ったり、ヤバいって思うものなんだよ。
テストが近付いたら、欠点取ったらヤバいって思って、焦って勉強する。何かスポーツをしないといけなくなったら、恥かいたらヤバいと思って、焦って練習する……すげえ、当たり前のことなんだよ」

「……そ、それは……そうだけど……」

「でも、今までのお前はどうしてきた?ドラえもんの道具に頼って、そういうのは感じてなかったんじゃないのか?困ったらドラえもんが何とかしてくれる。焦ったらドラえもんが何とかしてくれる。
――そうやって毎日を積み重ねて来たお前は、何かに焦ったり、危機感を感じることがなかったはずだ。当然だよな?何でも叶えてくれる、ドラえもんがいたんだし」

そして彼は、組んでいた腕をほどき、あぐらをかいていた自分の両膝を、強く叩いた。

「だけどな、それじゃあダメなんだよ。焦るから、ヤバいって思うから、何かを練習したり勉強したりするんだよ。その中で、人間ってのはでっかくなってくと思うんだよ。言ってしまえば、そういった思いは、成長するための飯みたいなもんなんだ。
飯を食わずに大きくなれるはずがない。貧弱でヒョロヒョロしてて、何かあれば吹っ飛んじまうような奴になっちまう。

「……」


「今のお前に足りないものは、まさにそれなんだよ。現にお前は、ドラえもんがいなくなって、これからの生活が不安で仕方なく思ってしまってる。
極当たり前の、“生きる”ってことすらも、すげえ難しくなってしまってる。弱っちくて、全然頼りないのが、今のお前だ。
――それじゃあ、だめなんだよ」

「……」

彼の言葉は、僕の心に突き刺さった。心は血を流すように、じわりじわりと胸を締め付けた。

ジャイアン男前過ぎるwww
続き超期待

再開

翌日……家から駅までの道を、とぼとぼと歩く。
今日はしずかちゃんが用事があるらしく、僕一人の通学になっていた。
彼女は、生徒会をしている。
成績もよく、生徒達からも人気がある彼女が生徒会に入るのは、当たり前のことなのかもしれない。
朝から委員会の会議らしく、メールが届いていた。

……でも、それだけじゃないのかもしれない。
先日のしずかちゃんの言葉……あれから、僕らの距離は遠のいた気がする。それまで通り、僕としずかちゃんは繋がってはいるのかもしれない。だけど、その間には、目には見えない深い深い溝があるように思えた。
それは僕の気のせいなのかもしれない。……いや、僕自身が、勝手に思ってることなのかもしれない。

それでも、彼女の言葉は、いつまでも頭の中に居座り続けていた。
そしていつまでも、僕の心をざわつかせていた。落ち着かないような……何をしてても不安な気持ちになるような……。

期待

ぶっちゃけのび太郎ごこうなったのドラえもんにも原因あるんだよな

電車に揺られ、駅を降りる。
そろそろ春も終わるというのに、空気はやけに冷たく感じた。

「……」

何か違和感がある。
いつもなら、ここからしずかちゃんと雑談しながら歩いて行くのだが、今日はいない。
一人で行くときもあったが、今日は特に何かがおかしく感じる。
このまま、もしかしたらずっと一人なのかもしれない……そんなことを思ってしまった。

これが、ジャイアンが言うところの焦りなのだろうか……だとしたら、僕は何をすべきなのだろう。
彼は言っていた。焦りがあるから、努力をする、と。なら僕は、何を頑張ればいいのだろうか……。

(……こんな時、ドラえもんがいたなら……)

そこまで考えて、僕は気付いた。
こんなことをすぐに考えてしまうからこそ、彼は未来へ戻ってしまったのだと……。

(本当にダメな奴だな、僕は……)

何をすればいいのかも分からず、何を伝えればいいのかも分からず、僕は、ただ黙りこくって道を歩いていた。

「――おはよう、のび太くん」

その時、ふと後ろから声がかかった。
振り返った先にいたのは、よく見知った人物だった。

「……月形さん……おはよう」

ニコリと笑った彼女は、少しだけ小走りで近付き、横並びに歩き始めた。

「……」

「……」

二人で歩いているのに、僕らは言葉を交わせずにいた。
いつも委員会の仕事をしながら話しているのに、今日はどうしてだか言葉が出てこない。
……もしかしたら、僕は怯えているのかもしれない。
僕の人生における、最も信用できる“最終手段”がないからだろうか。何かあれば道具に頼る生活を続けていた僕は、人と話すことすらも難しくなったのかもしれない。
人としての成長が止まっている――なるほど、その通りかもしれない。

「……のび太くん?」

ふいに、彼女が口を開いた。

「え?な、なに?」

返事すらもおぼつかない僕に、彼女は首を傾げる。

「……何か、あったの?」

「え?どうして?」

「んん……なんだか、元気がないから。普段ののび太くんと、全然違うもん」

「そ、そうかな……」

「うん。絶対何かあったでしょ?」

「……」

隠しても無駄なのかもしれない。僕は、彼女にも話してみることにした。
そうすることで、少しでも楽になるならという考えもあった。

「……そっか……友達が遠くに……」

「……うん。帰っちゃったんだ」

僕は彼女に話した。と言っても、未来のロボットが未来に帰ったなんて言っても信じてくれないだろうから、昔からの付き合いのある友達が、遠くへ引っ越したということを話した。
それも強ち間違いではないだろう。そう、彼は引っ越したんだ。時空を超えた、遥か遠くへ……。

「それなら、のび太くんも頑張らないとね!」

彼女は笑顔を見せながら僕に言う。そんなことは分かってる。ドラえもんがいなくなった今、僕は一人で頑張らないといけないのだから。
でも……。

「……でも、僕、分からないんだ。何をどう頑張ればいいのか」

「んん……普通のことでいいんじゃない?勉強とか、運動とか」

「そうなんだろうけど……僕、彼にずっと頼ってたからさ。ダメな奴とは自分でも思う。だけど、何だかわからなくなっちゃって……頑張り方」

「……確かに、のび太くんは運動も勉強も苦手だよね。たまに凄い時はあったけど」

それはドラえもんの道具を使った時のことだろう。思わず、苦笑いが出た。

「でもね、頑張り方なんてないって思うよ?だってそれって、気持ちの問題だし」

「気持ち?」

「そうそう。例えば目の前に壁があったとして、それをどうやって越えるかとかは人によって違うけどさ。さあ、越えるぞ~って思うのは、誰だって出来ることじゃない?
その気持ちが、“頑張る”ってことだと思うんだ」

「……」

「……まあ、うまく言えないけど、のび太くんなら大丈夫だよ!私も応援するし!」

「あ、ありがとう……」

「うん!」

そして僕らは、いつもの僕らに戻った。
少しだけ、心が軽くなった気がした。

おわり?

はよ

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