ドラえもん「なんでも転売機~!」 (25)
~空き地~
スネ夫「こないだ発売になった新型ゲーム機、ぼくってお金持ちだからうっかり二台買っちゃって」
スネ夫「仕方ないから余った方をネットオークションで売ったらなんと5万円で売れちゃったんだ」
スネ夫「いやぁ、パパ譲りの商才って恐ろしいね」
ジャイアン「……? ふうん……」
しずか「いわゆる転売ね」
スネ夫「さすがしずちゃん、よく知ってるね!」
のび太「転売?」
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スネ夫「ハハハ、のび太は転売も知らないのか」
スネ夫「転売ってのはね、買った商品をまた別の人に売るってことさ」
のび太「ふうん……」
のび太「でも、どうして買った物を他の人に売ったら儲かるの?」
スネ夫「ぷっ……アハハハハッ!」
スネ夫「そんなことも分からないのか、のび太は!」
しずか「うふふっ、のび太さんったら」
ジャイアン「……ハッハッハッハッハ!」
のび太「むっ……なんだよ、ぼくおかしいこといった!?」
スネ夫「のび太さぁ、お前がバカなのはとっくに知ってるけど」
スネ夫「ここまでバカだとは思わなかったよ」
のび太「む……」
スネ夫「ま、もう少し経済の仕組みについてお勉強するんだね、のび太ちゃん」
のび太「ぐぐぐ……!」
スネ夫「さ、バカは放っておいて、ぼくの家で新作ゲームをやろうか」
スネ夫「三人で」チラッ
のび太「うぐぐぐぐ……!」
~のび太の家~
のび太「ドラえも~ん!」
ドラえもん「どうしたんだい?」
のび太「転売について教えて~!」
ドラえもん「転売!?」
ドラえもん「なるほど、転売について知らなかったから、スネ夫にバカにされたのか」
ドラえもん「なんにせよ、なにかを勉強したいと思うことはいいことだ」
ドラえもん「これを出してあげよう」ゴソゴソ…
ドラえもん「なんでも転売機~!」
のび太「なんだか矢印みたいな道具だね。どうやって使うの?」
ママ「のび太、おつかいに行ってきてちょうだい」
ママ「牛乳を切らしちゃったのよ」
のび太「えぇ~……」
ドラえもん「ちょうどいいや」
ドラえもん「このおつかいで転売について説明しよう」
~スーパーマーケット~
ドラえもん「まずスーパーで牛乳を200円で買う」
のび太「うん」
ドラえもん「で、この牛乳になんでも転売機の矢印を向ける」スッ
ドラえもん「すると――」
ピクピクッ ピクピクッ
ドラえもん「なんでも転売機がこの商品を欲しがってる人を指し示すんだ」
のび太「この方角は……ぼくんちだ!」
ドラえもん「ママが牛乳を欲しがってるからね。さっそく家に戻ろう」
~のび太の家~
ドラえもん「そして、転売機が指し示した人には、転売機を向けた商品を高く売りつけることができる」
ドラえもん「ママ、この牛乳を300円で売ってあげる」
ママ「……しょうがないわね」チャリン
ドラえもん「これでぼくは、200円で買った牛乳を300円で転売して、100円儲けたわけになる」
のび太「なるほど! そういうことか!」
のび太「ドラえもん、転売についてよおく分かったよ」
ドラえもん「うんうん、分かってくれてよかった」
のび太「それじゃこの道具、借りるね」
ドラえもん「どうぞどうぞ」
のび太「行ってきま~す!」
ドラえもん(……ってあれ? 転売の勉強はもう終わったんだから、貸す必要はなかったような)
~本屋~
のび太「よぉし、ぼくもさっそく転売ってやつをやってみよう」
のび太「まず550円でコロコロコミックを買おう」
店主「毎度ありー!」
のび太「……で、コロコロになんでも転売機を向けて……」
ピクピクッ ピクピクッ
のび太「ねえ、君」
児童A「なに?」
のび太「コロコロコミック……700円で売ってあげるよ!」
児童A「ホントかい!? うちの近所の店じゃ売り切れになっちゃってて……」
児童A「ちょっと高いけどしょうがない。どうもありがとう!」
のび太(やった……これで150円の儲けだ!)
~オモチャ屋~
のび太「1000円でケンダマを買う」
のび太「これになんでも転売機を指す」
ピクピクッ ピクピクッ
のび太「1300円で売ってあげる」
児童B「ちょうどケンダマが欲しかったんだ! 買う買う!」
のび太(300円の儲けだ!)
のび太「たった一時間で1000円以上儲かっちゃった」
のび太(買ったものを転売すればするほど、お金が増えていく……)
のび太(つまり買えば買うほど、儲かる!)
のび太「転売ってなんて素晴らしいんだ!」
のび太「だけどちょっと待てよ?」
のび太「ぼくがいちいち店まで行ってなにかを買うのはめんどうだな」
のび太「だったらぼくが色んな人から物を売ってもらえばいいんだ!」
のび太「このなんでも転売機があれば、それを高く買ってくれる人を簡単に見つけられるんだから!」
のび太「ウシシシ……大儲けできるぞ!」
ドラえもん「やっぱり! また変なこと考えて!」
のび太「ゲ、ドラえもん!」
ドラえもん「ぼくの道具でお金儲けなんてとんでもない! なんでも転売機を返せ!」
のび太「ドラえもん、100円で買ったドラ焼きを200円で売ってあげる」
ドラえもん「買う!」
ドラえもん「……」ムシャムシャ
ドラえもん「あ~おいしかった……」
ドラえもん「!」ハッ
ドラえもん(いなくなってる……! やられた……!)
のび太「こんなこともあろうかと、ドラ焼きをなんでも転売機で指しておいてよかったよ」
~空き地~
のび太「さあさあ、いらっしゃい!」
のび太「なんでも買うよ~! どんなものでも買うよ~!」
のび太(最初のうちはオモチャやマンガを転売して……)
のび太(だんだんテレビや車みたいに高いものを転売していこう!)
のび太(そしたら、ぼくはいつか世界一の大金持ちになってるかも!)
のび太「さあさあ、なんでも買うよ~!」
ジャイアン「よう、のび太」
のび太「ジャイアン!」
ジャイアン「なんでも買ってくれるんだってな」
のび太「うん!」
のび太(もっとも買ったものはぼくがもっと高く売るんだけどね)
ジャイアン「じゃあ……ケンカ買ってくれよ」
のび太「!?」
ジャイアン「あの後、スネ夫んちでゲームやったんだけどよ」
ジャイアン「あいつに負けまくって笑われて、あいつをギタギタにしてやったんだが」
ジャイアン「まだムシャクシャがおさまらねえんだ!」ギロッ
ジャイアン「なんでも買ってくれるって奴がいてくれて、ちょうどよかったぜ」パキポキ…
のび太「ちょ、ちょっと待って! ケンカなんて売られても転売できな――」
ジャイアン「うるせえ!!!」
ボカボカッ! ドカバキッ! ボコボコッ!
のび太「……」ヨロヨロ…
ドラえもん「のび太君!? どうしたのそのケガ!?」
のび太「これ……返す」ポイッ
のび太「もう転売なんてこりごりだよ……」
おわり
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