狐娘「けほけほ……」 (22)
~ 現世 ~
狐娘「むう……ここ数日、咳が止まらん。
仕方ない、薬をもらいに行くかのう」
がさごそがさごそ
狐娘「あまり行きたい場所ではないが、悪い病気だと困るしのう……」
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~ 天国・病院 ~
狐娘「けほけほ……」
天医者「うーん、これは最近流行しているイガイガ風邪ですね」
狐娘「なんじゃ、ただの風邪か」
天医者「でもイガイガ風邪は一度ひいたら長引きますよ?」
狐娘「ふむ、ならば薬を処方してはもらえぬか?」
天医者「天国じゃあ、狐の薬は扱ってませんねぇ……
地獄の方では取り扱ってると思いますが」
狐娘「……そうか、わかった」
天医者「はい、それじゃ次の患者さんを~」
天使「けほけほ……」
天医者「やや、これは最近流行のイガイガ風邪ですね。
薬を処方しておきましょう」
狐娘「……」
すたすたすたすた
狐娘「お高く気取りおってからに……ぶつぶつ……」
~ 地獄・病院 ~
鬼医者「こんなん放っておいたら治るわい!」
狐娘「いや、薬をくれ。
ノドがイガイガしてたまらぬ」
鬼医者「イガイガ風邪の薬はすべて天国へ送ったぞ?
向こうではひどく流行しておるし、鬼は風邪なんてひかぬからな!」
狐娘「けほけほ……、なら薬は……」
鬼医者「そんなに薬が欲しけりゃ天国の方に行ってくれ。
ウチじゃ、あんたの力になれないな」
狐娘「そうか、わかった。ありがとう」
~ 死後交差点 ~
狐娘「たらいまわし……たらいまわし……ぶつぶつ……」
女亡者「あの~」
狐娘「ぶつぶつ……」
女亡者「あの~、そこの狐娘さん?」
狐娘「む? なんじゃお主は?」
女亡者「いえ、その、ここってドコなんでしょうか?」
狐娘「死後の交差点じゃが?
ああ、人間なら来るのは最初で最後じゃろうな」
女亡者「死後の交差点、ですか?」
狐娘「言葉通りじゃよ。
おぬしの立ち位置からして右に曲がれば地獄、左に曲がれば天国。
戻ると現世で、まっすぐ行けば虚無の世界じゃ」
女亡者「現世に戻れるんですか?」
狐娘「けほけほ……変な気は起こさぬ方がいいぞ?
身体が無いと、誰にも触れぬし、誰にも気づかれない。
ここに戻って来られるとも限らぬし、現世は今のお主には永遠の牢獄と変わらぬよ」
女亡者「そ、そうですか……」
狐娘「まあ、ワシはとやかく言わぬよ。好きにするがいい」
すたすたすたすた
~ 天国・薬局 ~
狐娘「イガイガ風邪の薬が欲しいのじゃが」
店員「申し訳ありません。狐用のは売り切れです」
狐娘「……そうか、わかった」
天使「けほけほ……イガイガ風邪の薬をください」
店員「はい、どうぞ」
天使「わーい」
狐娘「……」
~ 死後交差点 ~
狐娘「はあ、相変わらず天国連中は排他的じゃな。
どうにもならぬし、今日はもう帰るか」
女亡者「うぅ……」
狐娘「おや? さっきの女亡者ではないか? どうしたのじゃ?」
女亡者「天国に入ろうとして断られましたぁ……」
狐娘「ああ、なるほど」
女亡者「やっぱりわたし、地獄に行くしか無いんですかね?」
狐娘「ドンマイ」
女亡者「うわーん!」
亡者1「そうだ! オレたちは地獄になんて行かないぞ!」
亡者2「天国の門が開くまでデモ行進だ!」
狐娘「うおっ!? わらわらと集まってきおった!」
女亡者「みんな同じなんです。地獄なんてイヤなんです」
狐娘「じゃが、どっち付かずだと亡者のままじゃぞ?」
女亡者「そ、それは……でも……」
亡者1「ならアンタ! オレらを助けてくだせえ!」
狐娘「なぬ? なにゆえワシがお主らの面倒を見ねばならぬのか?」
亡者2「お狐様!」
狐娘「はうっ!?」
ずきゅーん。
亡者の言葉が狐娘のハートを撃ち抜いた。
狐娘「お狐様……お狐様じゃと……?」
亡者2「効いてるぞ! もっとだ!」
亡者3「お狐様!」
亡者4「お狐様! お狐様!!」
亡者5「我らがゴッド!!」
狐娘「は、はうぅ……胸がきゅんきゅんするのじゃあ……」
いいぞ
~ セピア色の思い出 ~
狐1「わたし今度から稲荷様のやしろに就職よ」
狐2「きゃー勝ち組ぃ!」
狐3「わたしも都会の神社よお!」
狐4「田舎なんてクソだわ! ねえ、アナタは?」
狐娘「……ワシは」
狐1「よしなって、その子は……」
狐2「あ、これでも一応は神様でしたかゴメンなさーい!」
狐3「きゃはは! 自称神様チョーうけるー!」
狐娘「くっ……」
狐4「でも狐が土地の人間に神様として崇められたのは昔のこと。
今じゃあ狐=稲荷なんだから、アナタも無理せずに稲荷様のとこに就職すれば?」
狐娘「ワシは神じゃ!
たとえボロい社しか無くとも、信じる者がおる限りは……」
狐3「だから信じるヤツがもういないってば!」
狐2「ぎゃはは!」
狐娘「う、うわーん!」
~ 回想おわり ~
亡者1「お狐様?」
狐娘「はっ!? な、なんじゃ?」
亡者2「今一度言います! ワシらを救ってくだせえ!」
狐娘「う、うむ。そこまで頼まれれば仕方あるまい」
亡者1「やった!」
亡者2「お狐様ばんざい!」
亡者3「ちょろいもんだぜ!」
狐娘「ん? ちょろい?」
亡者1「ちょっと失礼!」
亡者2「おら来い!」
亡者3「やめろー! 口が滑っちまったんだ!」
どかばきごすん!
狐娘「……なんじゃあいつらは?」
女亡者「死んだばかりで元気が有り余ってるんですよ」
狐娘「さて、救うとは言ったものの……多いのう」
女亡者「気付けば天国入国拒否された亡者がどんどん増えてますね」
ざわざわざわざわ
狐娘「とりあえず死後交差点の先の空白地帯へ移動するか」
女亡者「確か、現世と反対側にある何もない場所ですよね?」
狐娘「うむ。だだっ広い場所じゃし、今後の事はそちらで考えよう」
女亡者「じゃあ移動しましょう。みんなー!」
亡者たち「おっ? 移動か!」
ぞろぞろぞろぞろ
狐娘「多いのう……
今さらながら、ちと軽はずみに受けてしまったような気が……」
女亡者「何か言いましたか?」
狐娘「いや、まあいいか」
~ 会議 ~
狐娘「結局、ワシだけでは何も思いつかなかったので皆で会議じゃ。
つーか、ワシに丸投げするな」
亡者1「えー? お狐様なのに何も思い付かなかったのー?」
狐娘「亡者を馬車馬のようにこき使ってワシの王国を創るという案はあるが?」
亡者1「今こそ皆で知恵を振り絞る時だ!」
亡者2「オレたちの未来は自力で切り開く!」
亡者3「えいえいおー!」
狐娘「……で、誰か良い案はあるかの?」
スーツ亡者「私に良い考えがあります」
狐娘「む? おぬしは……」
亡者1「あ、あいつは!?」
亡者2「知っているのか亡者1!?」
亡者1「ああ、確かテレビで見たことがある」
亡者3「言われたら確かに見覚えが……アンタいったい」
スーツ亡者「はい、わたくし『村興しコーディネーター』と言います」
狐娘「村興しコーディネーター?」
スーツ亡者「ええ、過疎が進んだ村、廃村一歩手前、限界集落。
あらゆる村や集落などの小規模コミューンの復興を生前はお手伝いしてきました」
女亡者「あっ! 思い出した!
この人、巨大プリンで死んだ人だ!」
亡者1「本当だ! 思い出した!
『頭から巨大プリンに突き刺さった人生ゲームの棒』みたいなシュールな絵面をお茶の間に提供していたよな!」
スーツ亡者「ははは、村興しで巨大プリンを作ったのですが、プリンもデカくなると凶悪でしてね。
頭から突っ込んで貫通するパフォーマンスの予定でしたが……まるで生コンに詰め込まれた気分でしたよ」
狐娘「ひどい死因じゃな」
スーツ亡者「というわけで、少しはお手伝い出来るかと」
狐娘「じゃが、行動を起こそうにも先立つ物が無いと……」
亡者X「金なら……ある」
ドサドサドサドサ
女亡者「札束がいっぱいだ!?」
亡者1「いや、待て……こいつの顔も見覚えが……」
亡者2「こいつ銀行強盗だぞ!
ニュースでは盗んだ金ごと車で崖下に落ちて……」
亡者X「くくく、その通り。
車は爆発炎上、銀行強盗は盗んだ金ごと火葬されちまったのさ」
狐娘「その汚い金をワシに使えと?」
亡者X「焼いた金は浄金、だろ?
便所に落ちた十円硬貨も、焼いちまえば死後の渡し賃に早変わりさ」
狐娘「なるほど、違いない。使わせてもらおう」
亡者X「くくく、大事に使えよ?」
女亡者「と、とにかく、これで行動が起こせるね!」
スーツ亡者「はい、みんなで頑張りましょう!」
狐娘「はてさて、どうなることやら……」
~ それから数日後 ~
亡者「はあ……天国入国拒否されちまった」
亡者「地獄で現世の罪を洗い流してから、って門前払い」
亡者「やだなあ……地獄かあ……やだなあ……」
女亡者「おいしいケーキがありますよー! ほっべた落ちますよー!」
亡者「はっ? ケーキ?」
女亡者「はいっ、お兄さん! この先に喫茶店をオープンしたんです、寄って行ってくださーい!
あっ、そっちのオジサンもどうぞー!」
亡者「喫茶店? あっ、ちょっと……行っちゃった」
亡者「喫茶店か、地獄に行く前に寄ってみるかな」
亡者「確か、この交差点の先だとか……」
~ 冥土喫茶・お狐様 ~
亡者「こ、ここはっ!?」
メイド「お帰りなさいませ、ご主人様!」
亡者「ご、ご主人様!? オレが!?」
メイド「はい! ご主人様はご主人様です!
そして私たちメイドは誠心誠意、真心を持ってご主人様に接します!」
亡者「こ、これがメイド喫茶と言うものなのか……。
あっ、でもオレ、死んだばかりで手持ちの金が……」
メイド「もう、おっちょこちょいですよご主人様!」
亡者「ご、ごめん……」
メイド「でも……、今日は特別にわたしがご奉仕いたしますから大丈夫ですよ」
亡者「えっ? いいの?」
メイド「はい、でも次からはちゃんとお金を持って来てくださいね。
この先にある『デッド・ワーク』でお仕事を斡旋して貰えば、お金なんてすぐです」
亡者「へえ、まるで現世と変わらないなあ」
メイド「ちなみにこのお店では人気のある上級メイドほど指名料が高くなります。コレが一覧です」
亡者「ほう、なになに……君はミドルランク・メイドか」
メイド「はい、お手頃ですのでマメに指名してくださいね?」
亡者「ははは、分かった。今回のタダ食い分はちゃんと返すよ。
ちなみに最上級メイドは……お狐様?」
メイド「はい、ウチの看板様です!
とても偉い方なんですよ!」
亡者「へえ、そうなんだ」
~ 冥土喫茶・奥の方 ~
亡者1「ワイワイ」
亡者2「ガヤガヤ」
亡者3「ゲラゲラ」
狐娘「の、のう……」
亡者1「おや? なんですお狐様?」
狐娘「なぜワシがこんなヒラヒラのスカートを着らねばならんのじゃ?
動くだけでパ、パンツが見えそうじゃし……」
亡者1「亡者の村興しとして神様を身近に!
って、決めたでしょう?」
狐娘「それは確かに、そうじゃが……。
もう村というより、都市みたいになって来ておるし、ならワシがこんな格好をする必要は……」
亡者1「お狐様最高! メイド服最高!」
狐娘「はうっ!?」
亡者2「2つが合わさり200万パワー!
いつもの倍の魅力で400万パワー!
そこにモジモジの可愛さ3倍が合わされば1200万パワー!」
亡者3「悪魔超人だって倒せちまうぜ!」
狐娘「はうぅ……ワシが可愛いじゃと……?
胸がきゅんきゅんするのじゃあ……」
亡者1「可愛いですお狐様!」
亡者2「お似合いですお狐様!」
亡者3「ちょろいぜ!」
狐娘「うん、ちょろい?」
亡者1「よし、運べ」
亡者2「クソが! 死ね!」
亡者3「やめろー! ヤメテクレー!」
どかばきごすん!
狐娘「ふぅ……しかし、予想以上に亡者の流入が多いのう。
ワシも少しは政務に責任を持たねばならぬか」
まだかのう…
忘れてたのう……
まだかなぁ
「続き読みたいです」フカブカオジギ
まだかのう
はよ
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