穂乃果「ただいま」希「おかえり」 (406)
番外編のようなお話でございます
前々スレ
希「穂むらで働くことになった」
希「穂むらで働くことになった」 - SSまとめ速報
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前スレ
穂乃果「私は、希ちゃんの笑顔が大好きだから」
穂乃果「私は、希ちゃんの笑顔が大好きだから」 - SSまとめ速報
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こんにちは、高校三年生になった高坂穂乃果です
前の三年生が卒業して早くもひと月と半分が過ぎようとしていますが、いまだに少し広くなった部室には慣れません
もう少しすれば新入部員も増えて、また部室が狭くなるのかなぁ…
…なんて考えてはいるんだけどね、えへへ
まだ始まったばかりだから、入部希望者はひとりもいません…はい
そうそう、ひとつご報告が
部室は確かに広くなったんだけど…
ガラガラ
穂乃果「ただいまっ!」
希「おかえり、穂乃果ちゃん」
その代わり、我が家が少し狭くなりました
穂乃果「今日は早いんだね」
希「うん、今日は講義が午前だけやったからね。終わってすぐ帰って来たんよ」
穂乃果「友達と遊びに行ったりしないの?」
希「…だってえりちもバイトやし、にこっちはチビちゃんたちとデートやし」
穂乃果「あぁ…」
まだ二人以外に友達できてないんだね…
希「いまちょっと失礼なこと思ったやろ」
穂乃果「えっ!? そ、そんなことないー? それより、すぐ着替えてくるね!」
希「…まあいいや。お客さんもあんまり来ないし、暇だから急がなくていいよ?」
穂乃果「いいのいいの、ちょっと待っててー」パタパタ
希「うん」
つまるところ、希ちゃんは正式にうちでアルバイトをしているのです
前みたいな住み込みってわけじゃないんだよ?
まあ、毎日夜ご飯食べたりそのまま寝ちゃって泊まったり…ほぼ住み込んでるようなものなんだけどね
それについては責めないでおきます
私もちょっと嬉しいし
希ちゃんが大学生になってからも、我が家との交流は続いていました
というのも、希ちゃんが大学の帰りによく遊びに来るからなんだけどね
卒業祝いに呼んで、入学祝いに呼んで…あれ、むしろうちが呼んでるのかな?
…まあいいや、希ちゃんが来てくれて私も嬉しいもん
それでね、実は希ちゃんは大学進学と同時に巫女さんのバイトをやめちゃったの
なんでって聞いたら、なんとなくって答えてくれたっけ
私は穂むらの手伝いしか知らないから分からないんだけど、バイトってそんなものなのかな?
でも大学生はお金が必要みたいで、代わりのバイトを探してるみたいだったの
だから私が言ったの
ここで働いてよ! ってね♪
穂乃果「おまたせ、変わるよー」パタパタ
希「ううん、変わらなくていいよ」
穂乃果「え?」
希「変わらんでいいから、お客さんが来るまでお話ししてよ?」ニコリ
穂乃果「うんっ!」
それからは、学校から帰ってきた私を迎えるのが希ちゃんのお仕事になったのです
待ってました
穂乃果「今日もね、新入部員来なかった…」
希「そっか…新生音ノ木坂学院スクールアイドルは大変そうやなぁ」
穂乃果「ほんとだよぉ…私たちの時はさ、希ちゃんが色々手伝ってくれたからうまくことが運べたけど…」
希「いつまでも先輩に頼っちゃダメってことやね。明日は新入生歓迎会なんやろ? ライブ、頑張らんとね!」
穂乃果「うん…希ちゃんたちも見にきてほしいな」
希「うーん、行きたいのはヤマヤマなんやけど…明日は一日中大学に篭ってないとあかんから…」
穂乃果「そっか…」
希「ごめんね、穂乃果ちゃん」ナデナデ
穂乃果「ううん、いいの! ヒデコたちに動画撮っててもらうから、また見てくれる?」
希「もちろんやん! ウチらの抜けた穴、どうやって埋めるのか楽しみにしてるね」
穂乃果「プレッシャー…でも、頑張る! ファイトだよっ!」
希「ふふふ、頑張れ頑張れ♪」
穂乃果「うんっ!」
希ちゃんが応援してくれるなら、私は頑張れるよ!
絶対に成功させるんだから!
…と心に誓った瞬間
ガラガラ
客「こんにちは~」
表の引き戸が開き、常連のお客さんがやってきました
その途端に私たちはお仕事モードに切り替わり
にこりと笑みを浮かべ、声を揃えて言うのです
のぞほの『いらっしゃいませ!』
こんな感じでほのぼのした話を書いていきます
今日は読んでいただいてありがとうございました
またしばらくお付き合いくださると嬉しいです
どうぞよろしくお願いいたします
過去二つも最高のほののぞだったし、
楽しみにしてます
おー!続編!
前作2作品ともリアルタイムで見ていました!今作も応援しています!
続編が出てきたと聞いて飛んできました
絵里さんのバイトってなんか想像出来ないな…読モ?
また続きが見れるのか
超期待
穂乃果「はあ…つかれた」グデー
希「おつかれさま、今日は早く寝るんよ?」ナデナデ
穂乃果「うん、そうする」
去年の文化祭の一件以来そうしているのです
どれだけ焦ったって、前日に何かやって変わるわけじゃないもん
むしろ悪い方向に変わってしまうことだってあるんだから
希「ふふん…成長したんやね」
穂乃果「そうだよー? 私は日々成長してるんだよ」
希「と言っても」ギュッ
穂乃果「?」
後ろから抱きしめられちゃった
…ん?
この体勢…ま、まさか…!
希「ここはそうでもないみたいやけど」フニ
穂乃果「ちょぉっ!? や、やめてよ…!!」ビクッ
希「ふぅん…やっぱり穂乃果ちゃんはわしわしのやり甲斐があるねぇ」ニヤリ
穂乃果「もう! 大学ではそんなことやっちゃダメだよ!?」
希「なんでー?」
穂乃果「だ…だって、セクハラだし」
希「…そんなマジなこと言われるとは思ってへんかったよ…」
穂乃果「わ、私ならいいから! だから外でやって捕まっちゃダメだよ!」
希「ほぉ…ならお言葉に甘えてたっぷりわしわしさせてもらおうやん!」ワキワキ
穂乃果「ひぃっ…ゆ、ゆきほも使っていいよー…?」
希「…」
穂乃果「…?」
希「やだ」
穂乃果「!!?」
希「わしわしMAXやー!」ガバッ
穂乃果「いやぁぁぁーーー!!!」
・・・・・
・・・
・・
穂乃果「もうお嫁に行けない…」グスグス
希「ウチがもらってあげよーか?」
穂乃果「…考えとく」
希「そっか」クスッ
雪穂「ただいまー」
穂乃果「ゆきほ…おかえり…」
希「おかえり雪穂ちゃん」
雪穂「どしたのお姉ちゃん…」
穂乃果「わしわしされた…」
希「わしわししちゃった♪」
雪穂「…あ、あんまり店ではやめてね…希さん」
希「はーい」
穂乃果「お店じゃなくても、人がいるところじゃやめてほしいな…」
希「人がいなかったらいいん?」
穂乃果「そういう問題じゃないよ…」
穂乃果「…それはそうと、新入生オリエンテーションどうだった? 長かったみたいだけど」
雪穂「進路の話ばっかりで疲れた…まだ入学したばっかりなのにね」
穂乃果「あー…私も進路考えなきゃだよ…」
希「それなら、ウチの大学おいでよ。ちょっと勉強頑張らないとやけどね♪」
穂乃果「行きたいけどぉ…勉強かぁ…」
雪穂「それくらい頑張りなよ…」
穂乃果「えー…」
雪穂「…あ、お姉ちゃん。明日の新歓見に行くからね」
穂乃果「うん! ありがと、頑張るからねっ!」
雪穂「勉強もそれくらい頑張れたらいいのに」
希「そうやよー? 練習だってあんなに頑張れたんやから、きっと大丈夫!」
穂乃果「じゃあ、また教えてくれる?」
希「うん♪」
ほのママ「おつかれさま、二人とも。雪穂もおかえり」
雪穂「ただいま」
希「あ、お疲れさまですお母さん」
穂乃果「つかれたぁー! ごはんまだー?」
ほのママ「いま作ってるから待ってなさい。希ちゃん、店閉めといてくれる?」
希「はいっ!」
雪穂「ごはんなに?」
ほのママ「今日は唐揚げよー」
穂乃果「やった!」
ほのママ「希ちゃんも食べてってね」
希「いつもありがとうございます」
穂乃果「えへへっ」
希「どしたん?」
穂乃果「ふふふ、楽しいなって思って」
希「ふふっ…そうやね」
希ちゃんがバイトに入る前から、こうだった気もするけど…
やっぱり大勢で食べた方が美味しいし楽しいよねっ!
だって希ちゃん、ごはん食べてる時すっごくいい笑顔なんだもん♪
それが見れるだけで私は幸せなのです!
少しだけですがありがとうございました
またあとで
ありがとうありがとう!
あの続きがまた見られるなんて最高だ!
続編と聞いて
期待
スレタイ見てまさかと思ったらまたあなただったか!
超期待
・・・
みんな『ごちそうさまでしたー』
食事が終わって、みんなでごちそうさまをして
食器の片付けが終わりそうな頃になると、お姉ちゃんは決まってこの一言
穂乃果「のぞみちゃ~ん、お茶~」
希「はいはい♪」
雪穂「…」
…最近、お姉ちゃんが希さんにお茶をお願いするようになりました
いままではずっと私だったのに
今でもお願いされるんだけど、希さんが来てる時は絶対に希さんにお願いしてる
私がやらなくて済むんだし、全然いいんだけど
でも…ちょっと寂しいとか思っちゃうんだよね
希「雪穂ちゃんもお茶どうぞ~」
雪穂「あ、ありがとう希さん。…あれ、紅茶?」
穂乃果「うわっ、ほんとだ!」
差し出されたのが紅茶で、私とお姉ちゃんはびっくりしてしまった
和菓子屋である我が家に紅茶なんか…
いったいどうしたんだろう
希「今日ね、大学の近くのお店でチョコと一緒に買ってきたんよ。だから…一緒に食べよ?」
雪穂「おお…うん!」
穂乃果「希ちゃんさすが!」
お姉ちゃんだけじゃなくて、私のことも見てくれてるようで
こういうところがあるから…私も懐いちゃうんだ
私の知ってる希さん
スタイルよし
気遣いよし
性格もよし
…でも、ちょっとだけ自分で抱え込んじゃうところがある、そんな人
そしてなによりも、私たちのお姉ちゃん的存在
勉強も教えてくれるし、悩み事とか相談とかも聞いてくれる
…お姉ちゃんよりお姉ちゃんらしい人だな
でも、なんとなくお母さんに近い気もするんだよなぁ…
とかなんとか、ぼーっと考えてたら
希「あーん」スッ
希さんの声とともに視界に黒い物体が現れて、何事かとよく見てみたら
希さんが私の口元にチョコを持ってきたみたい
雪穂「ぁ…な、なにっ!?」ビクッ
いきなりすぎてびっくりしてしまった
希さんは人差し指と親指で、チョコをつまんだまま私に微笑んでくれる
希「難しそうな顔してるから、笑顔にしてあげよーと思ってね♪ ほらほら、口開けてや」
あーんなんて、ちょっと子供っぽいなと思うけど
それでも、してもらうのはちょっと嬉しい
恥ずかしいけど
雪穂「あ、あ…あーん///」
希「あーん」
雪穂「あー…む」パク
雪穂「んふふ…」
こうして私が甘やかしてもらうと
穂乃果「雪穂だけー?」
こんな風にお姉ちゃんが言って
希「穂乃果ちゃんも、あーん」
穂乃果「あーん」バク
穂乃果「んふ…あま~♪」
私と同じように笑顔になるんだ
そんな私たち姉妹を見て、希さんも笑顔になる
それを見たら、お姉ちゃんを取られた寂しさなんて消えちゃうんだよね
私の負けです、希さん
はあ…やっぱりチョコおいしいなぁ
餡子入りとは大違いだね
穂乃果「餡子入りチョコとは大違いだよぉ…さすがちゃんとしたお店のチョコだね」
同じこと言ってるし
希「喜んでくれてよかった」
ほのパパ「…」ムスッ
あ、お父さんがふてくされた
ほのママ「穂乃果!」
穂乃果「ひぃっ!?」
怒られるの分かってて言うんだからお姉ちゃんは…
あ、もいっこ食べよ
…うん、甘くて美味しい
ほのママ「毎回毎回あんたは!」
穂乃果「ごめんなさーい!」
希「お、お母さん落ち着いてください…私は餡子好きですから!」
大変そうだな…希さん
ま、頑張れおっきなお姉ちゃん!
今はここまで
ありがとうございました
書き込み途中に落ちてびっくりした…
乙でした
続編読めて嬉しい
おつ!
凄く続き気になってたから復旧後すぐ読めてうれしい
いいですわ
・・・。
穂乃果「よし、ごはんとデザートの後はお風呂だ! 希ちゃん、行くよ!」
希「えっ、ウチ…そろそろ帰ろうかと思ってたんやけど」
穂乃果「じゃあ泊まっていけばいいんだよ」
希「それで一昨日も泊まらせてもらったばかりやん…」
ほのママ「うちはいつでも歓迎よー? 希ちゃんの着替えとかも置いてるんだし」
希「で、でもいつもお世話になってばかりですし…」
ほのママ「そんなの、今更じゃない?」
希「すみません…」
穂乃果「いいからいいから! ほら、行こう!」グイグイ
希「ほ、ほのかちゃぁん…」
穂乃果「希ちゃん…私とお風呂はいるのイヤ?」
希「そ、そんな言い方はずるいやん…わかった、はいるよ」
穂乃果「やった!」
ほのママ「いってらっしゃい」
ほのパパ「…」zzZ
雪穂「…zzZ」
~お風呂~
チャプ
希「はあ…あったかいね」
穂乃果「うん…お風呂は命の洗濯だよね」
希「なにそれ?」
穂乃果「わかんないけど、とにかく気持ちいいねってことじゃないから」
希「ふむ…まあ、そうやね」
穂乃果「えへへ」ギュー
希「ふふん」ナデナデ
一緒にお風呂にはいると、穂乃果ちゃんはいつもウチに抱きついてくる
肌が密着してちょっと恥ずかしいけど、あったかくてなんだか気持ちいい
ついこの前まで、ここまでのスキンシップはしなかった気がするけど…
ウチの家族との一件で、距離が縮まったんやろか?
なんとなく、穂乃果ちゃんがいままでよりも近い存在に感じられる
なんだろう…すごく、心地いい
ウチが頭を撫でてあげると、ふにゃりと柔らかく微笑むんよ
それがとっても可愛くて
つられてウチも笑うと、穂乃果ちゃんはもっと笑顔になって
穂乃果「希ちゃん、いつも柔らかいね」
希「穂乃果ちゃんも柔らかくて、ぎゅってすると気持ちいいよ」
穂乃果「セクハラだよー」
希「そっちが言い始めたんやん」
穂乃果「あはは、そだね」
穂乃果ちゃんとお風呂に入ると、時間がゆっくりと流れるようで
いつまでも湯船に入ってられる
こんな時間がずっと続けばいいなぁ…なんて
ちょっと考えちゃうこともあるんやけど
穂乃果ちゃんから癒しの効果が出てるんかな?
穂乃果「ねえ」
希「ん?」
穂乃果「私とお風呂に入るの、嫌だった? 無理やり入らせちゃった?」
希「どうして?」
穂乃果「…さっき、ちょっと嫌がってたみたいだし。今もなにも言わないし」
あら、気にさせちゃった?
穂乃果「気にするってほどじゃないけど…嫌なのに入らせちゃったかなって…」
希「ふふふ…だから穂乃果ちゃんはおバカさんなんや」
穂乃果「えぇっ!?」
希「嫌なわけないよ、だって、穂乃果ちゃんとお風呂に入ってる時は幸せなんやからね。ずっとこんな時間が続いたらいいなーって思うもん」
にこりと笑って答えてあげると
穂乃果「ふ、ふーん。そっか」
穂乃果ちゃんはウチに背中を向けて、あっちを向いちゃった
希「穂乃果ちゃん? どうしたん?」
穂乃果「み、みないで! おねがいだから!」
いつになく慌てたご様子で
両手で顔をおおって身悶えしてるやん
希「本当にどうしたん?」
ちょっと無理やり穂乃果ちゃんの手を掴んで、こっちを向かせてみると
穂乃果「う、うぅ…///」
顔を真っ赤にして
笑い出しそうになるのを堪えてたみたい
希「なにぃ…照れてるん?」
穂乃果「言わないでよ! あぅぅ…にやけそうになるの我慢してるのにぃ…///」
どうやら本気で恥ずかしかったみたい
穂乃果「希ちゃんがあんなこと言うからだよ! あ、あんなの…誰だって照れるよ!」
そこまで照れられると、なんだか…
希「ぅ…///」
ウチまで恥ずかしくなってくるやん…
穂乃果「な、なんで希ちゃんが照れてるの…///」
希「だっ…だって…///」
あ、あかんよ…顔、見られへん…!
穂乃果「ちょ、ちょっとお互いに深呼吸だよ! ね!?」
希「う、うん!」
お互いに背中合わせになって、ゆっくりと深呼吸
すぅ、はぁ
背中越しに伝わってくる
穂乃果ちゃんのぬくもりと、深呼吸の動き
それを意識してしまうと…
希「…///」
ほら…深呼吸なんて意味ないやん…
もう諦めてしまおうかな
恥ずかしがってたら、ずっとこのままやし
そんなの嫌やし、穂乃果ちゃんが照れてるところ見たいし
だってほら、こんな風に妹をいじめることが出来るのもお姉ちゃんの特権やん?
決心して、くるりと身体ごと振り向いて
まだ深呼吸中の穂乃果ちゃんにぎゅっと抱きついてみたら
穂乃果「んひゃぁっ!!?」
びくんと大きく跳ねた
穂乃果「まだ深呼吸終わってないよ!?」
希「ふふん、ごめんやん♪」
まあ、それが狙いなんやけど
希「ぎゅー」
穂乃果「や、やめてよ希ちゃん…まだダメだよ!」
希「もうウチは大丈夫やもーん」
穂乃果「私はまだなんだよー!」
希「ふふふっ、照れてる顔をもっと見てみたいなー」
穂乃果「も、もぉ…希ちゃんのバカ…///」
潤んだ瞳でそんなことを言われたら
もっと抱きしめたくなっちゃうやん
ふふふ…お姉ちゃんにそんなことしていいん?
希「ほーのかちゃんっ」ギュッ
穂乃果「な、なにさ」
希「なんでもー」
穂乃果「むぅ…ね、ねえ」
希「どしたん?」
穂乃果「…あ、あの…私もそっち向いていいかな」
顔を真っ赤にしたままの穂乃果ちゃんが
少しだけ口をすぼめてそんなことを言った
穂乃果「…私も、希ちゃんの顔見たいし…///」
希「う、うん」
くるりと身体を回転させて
ぎゅって抱きついてくる穂乃果ちゃん
穂乃果「…希ちゃん、顔赤いよ」
そんなこと、分かってる
ウチの顔が真っ赤で熱くなってることくらい
いくらなんでもね、やっぱり恥ずかしいもん
妹いじりには自分の犠牲も必要ってことやね! うん
希「…のぼせたんかもね」
でも、なんだか認めるのは嫌で
そんな風に返しちゃう
そしたら穂乃果ちゃんは心配そうに表情を変えて
穂乃果「だ、大丈夫?! 私が抱きついちゃったからかな…すぐに上がろう…?」
そんなウチの嘘を信じちゃうんやもん
やっぱりこの子をいじめるのは、あんまりやりたくない
希「冗談よ」
穂乃果「えー…」
希「ほら、身体洗ってあげる。おいで?」ザパッ
穂乃果「ま、またわしわしするんじゃ…」
希「してほしいん?」
穂乃果「結構です! 普通に身体洗ってください!」
希「よろしい。さ、おいで」
穂乃果「うんっ!」
・・・。
穂乃果「ねえ…またいつもの、お願いしてもいい?」
希「うん、いいよ」
お風呂からあがると、私は希ちゃんに髪を乾かしてもらいます
年末のバイトの時に希ちゃんがしてくれたんだけど
あれがとっても気持ちよかったから、今では私からお願いしてるの
希「いつも穂乃果ちゃんの髪の毛はさらさらで気持ちいいね」ゴォォォ
ドライヤーを私の髪にあてながら、希ちゃんが言った
穂乃果「そうかな?」
私としては、お姉ちゃんにこうやってもらう方が気持ちいいんだけどなー
希「ふふん。これにはね、わしわしで鍛えた技術が生かされとるんよ?」
穂乃果「意外な活用法だね…」
希「むしろこのためにわしわしで鍛えてたんやで?」
穂乃果「おぉ…ということは、私のためってことだね!」
希「ふふ、そうやね」ニコリ
穂乃果「…///」
どうして、希ちゃんはそんな簡単に頷いちゃうのかな
…ドキッとしちゃうじゃん
ずるいなぁ、希ちゃんは
希「おやおや、また照れてるん?」
うあ…また見抜かれた…!
ずるいなぁ、お姉ちゃんは
穂乃果「い、いつかやり返すんだかね!」
希「ふふん。お姉ちゃんに勝とうなんて百年早いよ穂乃果ちゃん」
穂乃果「なにおう!? 希ちゃんだってさっき照れまくってたじゃん!」
希「っ…そ、それは穂乃果ちゃんの方が先に照れたんやからウチの勝ちやろー!」
穂乃果「いーや! どっちも照れたんだから引き分けだよ!」
希「むむむむ…」
穂乃果「ふぬぬぬ…」
のぞほの『ぷふっ…』
希「あはははははっ…もう、穂乃果ちゃん…」
穂乃果「あははは、ごめーん」
希「ふふふっ…よし、次はウチのを乾かしてくれる?」
穂乃果「了解です!」
こんなやりとりが
本当に楽しくて、幸せ
それもこれも、年末のバイトから始まったんだよね
ふふ…やっぱり、あのとき希ちゃんにお願いしてよかった!
今日はここまで
ありがとうございました
乙乙
素晴らしい…美しいよぉ…
このにやにやとした顔…これでこそ乙のしがいがあるぜぇ
O
o と
。 ,. -ー冖'⌒'ー-、 思
,ノ \ う
/ ,r‐へへく⌒'¬、 ヽ キ
{ノ へ.._、 ,,/~` 〉 } ,r=-、 モ
/プ ̄`y'¨Y´ ̄ヽ―}j=く /,ミ=/ オ
ノ /レ'>-〈_ュ`ー‐' リ,イ} 〃 / タ
/ _勺 イ;;∵r;==、、∴'∵; シ 〃 / で
,/ └' ノ \ こ¨` ノ{ー--、〃__/ あ
人__/ー┬ 个-、__,,.. ‐'´ 〃`ァーァー\ っ
. / |/ |::::::|、 〃 /:::::/ ヽ た
/ | |::::::|\、_________/' /:::::/〃
~翌朝。居間~
穂乃果「ねむた…」ポケー
希「夜更かしするからよ…」ポケー
穂乃果「おしゃべりが楽しくて…」ポケー
希「それはそうやったけどぉ…」ポケー
ほのママ「さっさとご飯食べて行く!」
のぞほの『はーい…』ポケー
・・・
穂乃果「…よし、今日のサイドポニーもいい感じ!」キュッ
雪穂「お姉ちゃん早く行くよー」
穂乃果「あ、待ってー」
希「ウチもそろそろ行かないと」
穂乃果「こんなゆっくりでいいの?」
希「講義は二限目からやから」
穂乃果「そういうことか」
雪穂「でも、二限からだと早くない?」
希「レポート書かなあかんから、ちょっと早めに行こうと思って」
雪穂「そっか、大学生はレポートがあるんだね。お姉ちゃんは書けるかな?」
穂乃果「私はまだ高校生だからいいんですー」
雪穂「もう言ってるうちに大学生だよ? わかってる?」
穂乃果「わかってるよー! ほら、もう行こうよ!」
雪穂「はいはい」
ほのママ「あんたたち、お弁当持った?」
雪穂「うん」
希「はい」
穂乃果「あーっ! 忘れてた!」
ほのママ「穂乃果ぁ…」
穂乃果「ごめんなさーい」
ほのママ「ったく…頑張りなさいよ」
穂乃果「うん!」
ほのママ「ほら、いってらっしゃい。雪穂も希ちゃんもしっかりね!」
のぞほのゆき『いってきまーす!』
待ってました
~某大学。講義室~
にこ「おはよ、希」
希「あ、にこっち…おはよう」
にこ「やけに眠たそうね」
希「うん…昨日、穂乃果ちゃんちに泊まったんよ…それで話し込んじゃって」
にこ「またぁ? 今週何回目よ…」
希「えっと…三回目…」
にこ「泊まりすぎ…もう住んでるのと変わんないじゃない」
希「あはは、もう下宿しちゃおうかな」
にこ「後輩の家に下宿って…」
希「じ、冗談やから!」
にこ「まあ…あんたたちが仲良しなのは今に始まったことじゃないけどね」
希「うん…穂乃果ちゃんにはお世話になりっぱなしやからね」
絵里「ほんとそうね」
希「あ、えりち…おはよ」
にこ「おはよう、遅かったわね」
絵里「電車に乗り遅れたの…それで、穂乃果の話?」
にこ「そう。希がね、昨日も泊まったんだって」
絵里「またなの?」
希「またなんよ。それでね、お世話になりっぱなしやからお礼とかしたいなーって」
にこ「お礼ねえ…」
絵里「はあ…私たちはまた希と穂乃果のために相談に付き合わされるのね」
希「いいやんそれくらい」
絵里「もちろんいいわよ? あなたたち二人の話は面白いし」
希「なにそれ?」
絵里「なんでもー」
希「むぅ…」
にこ「そんなことどーでもいいわよ。で、お礼ってどうしたいの?」
希「うんとね、とにかく穂乃果ちゃんを喜ばせてあげたいんよ」
にこ「なら…ケーキとかは? 買ってってあげたら喜ぶんじゃない? 安く済むし」
希「喜んでくれるやろうけど、それはいつもしてあげてるから…」
絵里「じゃあ遊びに連れて行ってあげるとか」
希「ああ…そういえば、穂乃果ちゃんと二人で遊んだことってあんまりなかったなぁ」
にこ「近場ならたくさんあるじゃない」
希「近場なら、ね。今度のお休み、ちょっと遠くまで連れてってあげようかなぁ」
絵里「いいんじゃない? きっと喜ぶと思うわ。亜里沙から聞いたけど、アイドル活動も頑張ってるみたいだし…そのご褒美も兼ねてね♪」
にこ「ああ、そういえば今日は新歓ライブだっけ? 昨日の夜に花陽からメールあったわ」
希「そうやね…じゃあ、その労いも込めて遊びに連れてってあげようかな」
にこ「大好きなお姉ちゃんと遊べて穂乃果は幸せねー」
希「にこっち…なに?」
にこ「いーえ? あんたらが仲良すぎって言ってるだけですけどー」
希「そ、そうかな?」
にこ「否定しないのね…」
希「えっ…あ、あはは…///」
絵里「ふふっ、希のこんなところは珍しいわね。写真に収めておこうかしら」カシャッ
希「ちょっ…ちょっとえりち!?」
絵里「あー間違えて穂乃果に送っちゃったー」
希「えりちー!!」
絵里「ふふふっ、冗談よ冗談。まだ送信確認画面で止めてるから」
希「じゃあ早く消して!」
絵里「いやよ。希の珍しい照れ顔なんだもの」
希「お願いやから消して…」
絵里「力ずくで消してみなさい」
希「じゃあそうする!」ガバッ
絵里「っ!」
ドタドタ
にこ(大学生になってまで何してんだか…成長しない二人ねー)
にこ(あ、私は成長したわよー? きっとμ'sに入らなかったらこんなこと考えもしなかったはずだし)
にこ(それ以前に、学部は違ってもこうやって友達と大学に通うことさえね…私も穂乃果には感謝しなくちゃいけないわね)
絵里「ちょっ、のぞみ…痛い痛い痛い!」
希「じゃあ早く消して!」
絵里「わ、わかっ……」pi!!
絵里「……あ」
希「えっ」
絵里「…送っちゃった…希の照れ顔写真」
にこ「あらら」
希「」
絵里「ご、ごめんね希。あとでアイスおごるから」
希「…ウチ、もう穂むらに行かれへん…」
にこえり『そこまで!?』
~音ノ木坂。二年教室~
私の席は窓際です
だから春はとっても暖かくて、夏はとっても暑くて、冬はとって寒いのです
今日は一段と暖かいからポカポカしちゃって
もうブレザーは着ていられないくらい
だからブレザーを脱いで、机にぺたりと突っ伏してみると
もうこれ以上の…至福はありません…
…zzZ
先生「高坂!!」
穂乃果「はいぃっ!!!」ガタンッ
授業中は寝てはいけません
それは生徒会長でも同じこと
海未「…」
ああ、海未ちゃんの鋭い視線が突き刺さる…
そんな目で私を見ないでください…
あれ?留年したのか?
留年ですね
・・・
海未「穂乃果!」
授業が終わって、やっと眠れそうだな~って思ってたのに…
なにさ海未ちゃん
海未「なにさじゃありません! いい加減に生徒会長としての自覚を持ってください!」
穂乃果「持ってるよぉ…昨日だって仕事頑張ったじゃん!」
海未「だからといって、授業中に寝ていいわけがないでしょう!! 放課後には新歓ライブもあるというのに!」
穂乃果「うぅ…海未ちゃんお母さんみたい…」
海未「誰がお母さんですか! だいたいあなたはいつもいつも…」
今日はいつもより怒っているらっしゃる…
こ、ことりちゃん助けてぇ…
ことり「う、海未ちゃん…そのへんでやめておいてあげたら?」
そーだそーだ!
>>55
三年生ですごめんなさい
海未「ことりは穂乃果に甘すぎます! 甘々です!」
ことり「でも、あんまり怒るとかわいそうだよ…」
海未「で、ですがこのままでは穂乃果のためにも…」
ことり「そこは大丈夫じゃないかな?」
海未「どうしてです?」
ことり「穂乃果ちゃん、こう見えて分かってると思うし…あんまりガミガミ言っちゃうとね?」ニコリ
海未「…それもそうかもしれませんね」クスッ
穂乃果「え? なにが?」
海未「やっぱり分かってませんよ穂乃果は!」
ことり「あ、あははは…」
穂乃果「??」
ソレゾレガスーキナーコートーデガンバレールナラー♪
穂乃果「あ、メールだ」
穂乃果「絵里ちゃんからだ…なんだろ」
ことり「絵里ちゃん?」
海未「絵里から…って、何事でしょう」
絵里【珍しいものが撮れたわ】
ことほのうみ『珍しいもの…?』
穂乃果「画像付きだ。開いてみるね」
ことほのうみ『…』
ことり「こ、これは…確かに珍しい、かも」
海未「希もこんな顔するんですね…ふふ、少し意外です」
穂乃果「むぅ…」
海未「穂乃果?」
穂乃果「…なんでもない」
私には見せてくれないのにー…
でも画像は保存しちゃうんだもんね
ふふん、これを使ってケーキ買ってもらおー♪
海未「悪用はいけませんよ穂乃果」
穂乃果「じょ、冗談です…」
でも画像を眺めてると…
穂乃果「あはっ」
きっと昨日のお風呂でもこんな顔してたかなーなんて思っちゃう
…見せてくれなかったから真相は闇の中だけど
穂乃果「希ちゃん、うちでもあんまりこんな顔見せないのになぁ」
海未「そういえば、希は穂むらで働いてるんでしたね」
穂乃果「そだよ。昨日も泊まったんだ~」
ことり「卒業しても、いつでも会えるなんて羨ましいなぁ。私も会いたいなっ」
海未「では、久々に今日の帰りにでも寄ってみましょうか?」
ことり「そうだねっ! お話もしたいし~」
穂乃果「あー…ごめん二人とも」
ことうみ『?』
穂乃果「今日は希ちゃん、大学が忙しくて来れないんだって」
海未「そうでしたか…」
ことり「じゃあ次の機会だね…」
穂乃果「じゃあ今度は絵里ちゃんとにこちゃんも連れてきてもらおうよ!」
ことり「うんっ!」
海未「では、私たちは凛と真姫と花陽も誘いましょうか」
穂乃果「μ's大集合だね!」
なんだか楽しみが増えちゃった!
えへへっ
よし、ライブに備えて体力を…
ことり「穂乃果ちゃん!」
穂乃果「はいっ!」
ことりちゃんにまで怒られた…
海未「当然です」
…はい
本日はここまで
ありがとうございました
乙、ものすごく良い
すげーニヤニヤできる
乙です
ほんとニヤニヤが止まりません
最高です
にこが入れたってことはFランだな
名前書けば受かりそう
乙です 留年ミスには笑ったけどww
>>66
にこっちはアイドル推薦やから…(震え声)
~夜・のぞホーム~
レポートが終わって
自分のマンションに戻って
ご飯やお風呂も済ませてやっと一息つける時間
窓から入ってくるひんやりした風を浴びながら、電話を片手にベッドに寝転がって
希「そんなにウチの声が聞きたいの?」
穂乃果『だって毎日聞いてるんだもん』
希「だから、聞かないと気が済まない?」
穂乃果『そう!』
電話の相手は穂乃果ちゃん
バイトのない日はいつも電話してるんよ
本当、ウチの生活のどこにでも穂乃果ちゃんがいるみたい
そんなにウチが好きなんかな?
…なんてね♪
キモっ
希「そういえば、今日のライブ、どーやった?」
穂乃果『うん! もう講堂が満員でさ、みんなμ's!μ's!ってすごいコールだったよ』
穂乃果『もうμ'sじゃないよーって説明するのが大変でさぁ…』
希「そっか…でもそこまでみんなの心に残れたなら、嬉しいなぁ」
穂乃果『だよねだよね! 私も嬉しくって、ちょっと泣きそうになっちゃった…』
希「あはは、でも泣いたらあかんよー? もうμ'sじゃないんやからね」
穂乃果『はーい…えへへ』
穂乃果「あっ」
何かを思い出したかのように穂乃果ちゃん
穂乃果『そういえば、絵里ちゃんからのメールだけど』
希「ぅ…」
えりちのメールって、あれやね…
ウチの写真の…
穂乃果『希ちゃん、すっごく可愛かったね』
希「ウチは泣きそうなほど恥ずかしかったよ…」
穂乃果『えー? でも、私は希ちゃんのあんな表情が見れてよかったと思うんだけどなぁ』
良くないよ…だって、恥ずかしいもん
でも穂乃果ちゃんの言いたいことは分かる
だって人が照れてる顔って、すごく可愛らしい時があるもんね
昨日の穂乃果ちゃんもそれやね
でも今は自分のこと
人は人、自分は自分
あれだけは見られたくなかった…
希「だ、だって…みんなの前ではしっかりしないとーって思ってたし…」
穂乃果「じゃあ、もうみんなの前じゃないんだしあんな顔できる?」
な、なんやろ…今日の穂乃果ちゃんはちょっとイジワルやん…
まさか…あの画像、保存して…
希『そ、そんなわけないやろ!? あんな…恥ずかしい顔…あんまり見せられるもんやないやん! というか保存してないよね!?』
穂乃果「えー? 可愛いのに」
わかるけど、それは分かるけど
返事しないってことは保存してるんやね…
えりちと違って、穂乃果ちゃんは言っても消してくれへんからなぁ…
もう諦めることにしよう…
でも、せめてもの抵抗くらいは!
希「可愛くないー! こっちはほんまに恥ずかしくて死そうなんやから! だから消してー!」
穂乃果『そっかぁ…じゃあ私にだけ見せて?』
希「それもイヤ!」
というか、それだけは絶対にダメ
穂乃果ちゃんにだけは見られたくない
穂乃果『ちぇー』
希「当たり前やん…」
穂乃果『なんでー?』
希「なんでも」
穂乃果『ぶー』
抵抗という抵抗も出来なかった…
はい、諦めます…
穂乃果『…ねえ、希ちゃん』
希「ん?」
穂乃果『明日は来てくれる?』
希「うん。明日は五時くらいに入れるかな」
穂乃果『じゃあ三時間労働コースだね』
希「ファミレスなんかやったら、十時くらいまで働かされそうやなぁ」
穂乃果『ふふん。うちは早くて七時、遅くても八時には店仕舞いしちゃうホワイト企業だからね!』
希「そのぶん朝はとっても早いけどね」
穂乃果『そ、それはほら…仕込みとか色々あるし』
穂乃果ちゃんと電話すると、いつもこう
最初にその日のことを話して
何でもない雑談をして
穂乃果『…それじゃあ、明日も学校だから…そろそろ寝るね』
希「うん」
穂乃果『おやすみ、希ちゃん』
希「おやすみ、穂乃果ちゃん」
これがウチと穂乃果ちゃんの日課
最初に始めたのは…穂むらでバイトする前日やったかな
大学があるから時間も取れないだろうなと思って、神田明神でのバイトを辞めて
でもお金は必要やし
コンビニのバイトとかも考えてたんやけど、なんとなく合わなさそうで
どうしようかなーなんて考えてたら、穂乃果ちゃんから電話があったん
『希ちゃん…今月、お金に困ったりしてない?』
なんでもない雑談の中で、そんなひと言が飛び出した
なんだかそれがすごく懐かしく思えた
穂乃果ちゃんは神田明神で聞いて知ってたみたいなんやけど
事情を説明して
そうしたら穂乃果ちゃんは
『じゃあうちで働かない?』
ウチはその言葉に、二つ返事で承諾した
翌日に穂むらへ行って、正式にアルバイトとして雇ってもらうことに
履歴書を書いて、穂乃果ちゃんによる面接があったん
あはは…あれも面接なんて呼べるほど大層なものやなかったなぁ
それも面白かったんやけど、お話しするのはまたの機会にね…ふふっ
希「…あ」
やってしまった…
希「穂乃果ちゃんを遊びに誘うの忘れてた…」
今日はここまで
ありがとうございました
少なくてごめんなさい
乙
乙
時間できたのでちょっとだけ更新いたします
~翌日・穂むら~
ガラガラッ
希「ただいま~」
ほのママ「おかえり、希ちゃん」
希「ぁ…また…」
ほのママ「ふふっ、いいんじゃない? 私もおかえりって言えて嬉しいし」
希「すみません…///」
ほのママ「穂乃果もあと一時間くらいで帰ってくるから、お店番お願いしていい? もう肩凝っちゃって」コキコキ
希「あ、じゃあ私、肩揉みします!」
ほのママ「ほんと? じゃあお願いするわー」
希「はいっ」
モミモミ
ギュッギュッ
ほのママ「おぉ…いいわ、すごい…効くぅ…」
希「ほんとですか? よかったです」
ほのママ「希ちゃん、和菓子屋辞めて整体師になれるんじゃない?」
希「なんでですか…ふふふっ」ギュッギュッ
ほのママ「それほど上手ってこと…あぁ、そこそこ…」
希「…でも、私はここのお仕事が好きなんです」
ほのママ「そうなの? なんだか嬉しいわね…穂乃果なんかはすぐに隙を見てはサボろうとするのに」
希「ふふふっ…穂乃果ちゃんらしいですね」クスクス
ほのママ「でしょー? あの子ったら本当どうしてくれようかしらね。後継いでもらわなきゃなのに」
希「後継ぎ…ですか」
ほのママ「…まあ穂乃果が他にやりたいことがあるなら、私たちはそっちを応援するけどね。それは雪穂に対しても同じ」
希「でも、それじゃあお店は…」
ほのママ「うちの子らの自主性に任せます」
希「そ、それって…」
ほのママ「その時になるまで分からないってことね」
希「そうですよね…」
ほのママ「…あ、そうだ」
希「?」
ほのママ「希ちゃん、ここ継いでみる?」
希「えぇっ!!?」バッ
ほのママ「ここの仕事好きなんでしょ? 店番は完璧だし、和菓子作りもおとーさんと修行すればすぐに上手くなる程度には出来るし」
ほのママ「これで穂むらも安泰だわー」
希「ちょ、ちょっ…」アセアセ
ほのママ「あはははははっ…冗談よ♪」
希「も、もう…お母さん…!」
ほのママ「でも、希ちゃんになら店を譲ってもいいと思うのはホント。おとーさんにも聞いてみたら?」
希「うえぇ…」
ほのママ「ふふ…まああんまり真剣に悩まないで? オバサンの戯言だから」
希「は、はい…」
ほのママ「オバサンってとこは否定してほしかったけどね」
希「ぁ…ご、ごめんなさい…」
ほのママ「あははは。ありがと、だいぶ軽くなったわ」
希「いえ、またいつでも言ってください」
ほのママ「ありがとー」
お母さん…未だによく分からんとこあるなぁ…
でも、後継ぎかぁ…
大変なんやね、和菓子屋も…
・・・。
老婦人「いつもありがとね、希ちゃん」
希「こちらこそいつもご贔屓にしていただいて、ありがとうございます!」
ここで働くようになって、穂むらの常連さんとも顔見知りになった
優しいおばあちゃん
ちょっと怖い顔のおじいちゃん
茶道の先生だったり
他にも近くのホテルのオーナーさんが、結婚式のためにってよくお饅頭を注文しに来たり
こんな人たちに支えられてるおかげでずっとやってこれたんやなぁ
ここのお菓子が大好きだから、みんなこのお店に来てくれて
お饅頭を買って帰ってくれる
…それは穂乃果ちゃんたち、高坂家のみんなの人柄の良さもあるんかもしれないね
このお家に住んでるみんなが優しくて暖かいから
だからたくさんの常連さんが毎日来てくれるんやろなぁ
かく言うウチも、そんな中の一人やしね
でも…こんなにいいお店の後継ぎは、二人とも女の子
男の子がいれば継がせられたのに…まあ、婿に取るってことも出来るんやけど
穂乃果ちゃんも雪穂ちゃんも、自分のやりたいことがあるはずやもんね
それを応援するって、親心も素敵
ほんま、いい家族やね
なんてちょっと一人でしんみりしちゃった
…そろそろ穂乃果ちゃんの帰ってくる時間かな
そういえば雪穂ちゃんはどうしたんやろ?
まだ一年生は入部前だと思うんやけどなぁ
ガラガラ
ほのゆき『ただいまー』
なんて考えてたら、噂の二人が帰って来たみたい
一緒だったんやね
希「おかえり二人とも」
穂乃果「希ちゃーん!」ギューッ
希「おおっと…いきなり抱きついたら危ないやろ?」
穂乃果「えへへっ、ごめんなさーい」スリスリ
希「まったくもう…」ナデナデ
雪穂「お姉ちゃんたち、店でやらないで」
希「あ…そ、そうやね」
穂乃果「ちぇー」
希「二人とも、一緒にいたん?」
穂乃果「うん! 雪穂と亜里沙ちゃんがね、うちの見学に来てたの」
希「へぇ…雪穂ちゃん、スクールアイドルに興味あるんや?」ニヤニヤ
雪穂「そ、そういうわけじゃ…! た、ただの付き添い! 亜里沙の付き添いだよ!!」
ふふん
そんな顔真っ赤に否定したら、逆に怪しいんやで?
雪穂「そ、そんなことないー!」
希「ふふふっ…ま、そういうことにしといたげるー」
雪穂「ぬぅぅ…///」
穂乃果「雪穂だって歌のレッスン参加してたじゃん! 真姫ちゃんに褒められて喜んでたくせに!」
雪穂「お姉ちゃんうるさい!」
希「真姫ちゃんに? すごいやん雪穂ちゃん!」
雪穂「そ…そうかな? えへへ…」
穂乃果「なにそれ! 私のときと反応違う!」
雪穂「うーるーさーいー!」
穂乃果「雪穂のがうるさいよ!」
雪穂「ったく…じゃあ私、先にお風呂入るから」タタッ
穂乃果「なっ! ちょ…あーもう」
希「先取られちゃったなぁ」
穂乃果「うん…あ、お店手伝う?」
希「ううん、大丈夫。それより疲れてるやろ? ゆっくりしとき」
穂乃果「大丈夫! 希ちゃんと話してたら疲れも吹っ飛んじゃうよ」
希「それは嬉しいけど、ここはお店やからね。あがったらお話ししよーね」
穂乃果「むう…わかった」
ちょっとほっぺたを膨らませた穂乃果ちゃん
とぼとぼ奥に入る背中は、少し小さく見えた
ウチと話したら…か
ずいぶんと懐かれちゃったもんやね
…悪い気分は全くしないし、嬉しいことやけどね
よし、ウチもがんばろっ!
・・・。
希「お店、閉めました」
ほのママ「ありがと」
八時ごろ
店の戸締りと軽い掃き掃除を終えた希ちゃんがリビングにやって来て
お母さんに鍵を渡したところで
ほのママ「ご飯食べてく?」
いつものようにお母さんが訪ねると
希ちゃんもいつものように
希「いつもすみません…」
と言って、私の隣に座るのです
穂乃果「おつかれさま、希ちゃん」
希「うん」
それからみんなでいただきますをして、おしゃべりしたりデザートを食べたり
そして今日もお泊まりなのです
でもね、今日は私が頼んだからじゃなくて
ご飯食べたあと、十二時くらいまで明日の仕込みをしなくちゃいけないみたい
だから私ひとりでお風呂なのです
…ちょっと残念
でも、お風呂から出たら私の部屋でお話ししよーねって約束したの
…だけど
一人でベッドに寝転がってたら…
もしかしたら、今までのことって迷惑だったんじゃないかって…思っちゃった
ずっとずっと希ちゃんにベタベタしてさ
電話はいつも私からかけてるし
自分がやりたいから、そうしてるんだけど…
希ちゃんにとっては迷惑なんじゃないかなって
ちょっとうんざりしてるんじゃないかな…なんて
思っちゃった
突然すぎて、私もびっくりなんだけどね
一度思ったら、止まらなくて…
希ちゃんはどう思ってるのかなって
きっと聞いたら、希ちゃんはそんなことないよって言ってくれる
希ちゃんは優しいから…
迷惑に思ってても言わないんだよね…
希「遅くなってごめんね、お風呂も入ってたんよ」
そんなことを考えてたら、いつの間にか時間が経ってたみたいで
髪の毛をおろした、パジャマ姿の希ちゃんが部屋に入ってきました
そのまま私の隣に腰掛けたところで私は…
穂乃果「…ねえ、私、迷惑じゃない?」
せっかくの機会だし…思い切って聞いてみることにしました
私の胸はばくばくしてて、緊張しきってるみたい
自分から聞いておいて、頷かれたらどうしようって
不安になっちゃって
私ってバカだなぁ…と思いました
いつも絡みにいってるし、電話もかけてるし
希ちゃんひとりの時間を、私が奪っちゃってるんだもん
…うんざりしてない?
希「ウチが迷惑に感じてるって、ほんとに思うん?」
そう言った希ちゃんは、すっごくめんどくさそうな言い方をしてた
やっぱり、思ってるんだよね?
穂乃果「希ちゃんは優しいから…」
希「…やっぱり穂乃果ちゃんはアホやね」
今度は、穏やかな声だった
それを聞いて、さっきの声はめんどくさそうだったんじゃなくて
呆れてただけなんだって分かった
隣同士でベッドに腰掛けた私を、優しく抱きしめてくれる
穂乃果「…ん」
希「今さらウチが穂乃果ちゃんに隠すことなんて、たいして無いよ。それにね…ウチは穂乃果ちゃんと一緒にいて幸せに感じることだってあるもん」
そうだったんだ…なんだか、嬉しいな…
希「嫌やったらちゃんと言うし…穂乃果ちゃんは心配せんでいいよ」
穂乃果「…うん」
考えてみれば、そうかも
私も同じで…学校のこととか、その日のことはだいたい話してる
隠し事なんて言えば、ほんの些細なことばっかりだもんね
希「穂乃果ちゃんったら…そんなつまんないことで悩んでたん?」
穂乃果「あはは、ごめんね…」
ほんとにつまんないことで悩んでたな、私
しかも気づくのも遅すぎるし…
穂乃果「ありがとう、希ちゃん」
なんだか泣きそうになっちゃったから、私はぎゅっと希ちゃんに抱きついちゃう
おっきな胸に顔を押し付けて、ひたすら声を出さないようにするの
…だって、泣きかけの声なんて聞かれたくないじゃん
しかもこんなつまらないことで
希「…」ナデナデ
希ちゃんはなにも言わず、頭を撫でてくれた
やっぱり気持ちいいな…希ちゃんのなでなでは
そしてちょっと落ち着いた頃に…
希「ま、たまにうんざりすることもないわけやないけどね」
穂乃果「気をつけます…」
希「ふふふっ」ナデナデ
大事にすることと、大事に思うことは違う
そう学んだ気がしました
…ごめんね
ありがとう、お姉ちゃん
今日はここまで
ありがとうございました
おつ
これが終わっても新作を作るのを期待してるよ
おつ
これが終わっても新作を作るのを期待してるよ
おつ
これが終わっても新作を作るのを期待してるよ
おつ
これが終わっても新作を作るのを期待してるよ
期待しすぎワロタ
まぁ私も期待してるんですがね
乙
期待し過ぎのストーカーかお前は…将来犯罪とかやらかすなよ
乙
こんばんは
本日の分を投下していきます
・・・
電気を消したら、部屋は真っ暗でなにも見えません
でも、私のすぐ傍は温かいの
今日は希ちゃんと一緒に眠るのです!
穂乃果「…えへへ」
希「ん?」
穂乃果「ううん、なんでも」
こうやって寝るのは、希ちゃんのおうちに泊まった日以来かな
その日は雪穂も一緒に寝たっけ…
一昨日もうちに泊まったけど、一緒には寝なかったんだよね
夜遅くまでおしゃべりしたけど
穂乃果「むぎゅー♪」
希「ぎゅー」
ふふふ…やっぱり希ちゃんは暖かいね
あ、そうだ
忘れる前に話しとかなきゃね
穂乃果「ねえ、希ちゃん」
希「なーに?」
穂乃果「今度さ、μ'sのみんなでお茶会しない? うちのお店で」
希「いいやんそれ! じゃあウチはえりちとにこっちを誘えばいいね」
穂乃果「うんっ! …あ、そういえばにこちゃんって同じ大学だったね」
希「学部は違うけどね」
穂乃果「あのにこちゃんでも入れたし…私でも大丈夫かな?」
希「にこっちの名誉のためにも言っとくけど…にこっち、意外と勉強頑張ってたんよ?」
穂乃果「なぬっ…!」
あのにこちゃんがっ!?
希「休日の練習の後とか夏休みとか、よく三人で一緒に勉強したし」
穂乃果「そうだったんだ…私も頑張らなきゃだね…」
希「ウチが見てあげるから、がんばろっ!」
穂乃果「うんっ!」
希「大丈夫、穂乃果ちゃんは出来る子やからね。ウチはよーく知ってるよ」
そう言って希ちゃんは私の頭を撫でてくれる
気持ちいいなぁ…えへへっ
希「…元気出たみたいやね」
穂乃果「おかげさまで」
希「じゃあ…そんな穂乃果ちゃんをもっと元気にするために、お姉ちゃんからひとつ」
穂乃果「え…?」
なんだか、少し緊張したような声の希ちゃん
なんだろう?
まさか、またわしわしじゃないよね…
なんて、恐ろしい考えは大間違いで
ぎゅっと私を抱きしめて、希ちゃんは…
希「今度の日曜日、ウチとデートしよ?」
と、私の耳元に囁くように言いました
今日はここまで
ありがとうございました
短くてすみません
ほほう…のんたん動くか…
乙
にこっちライフデザイン学部とかにいそう
おつおつ!
で、デートって…
穂乃果「ふえぇ…っ!!?///」
た…たぶん、希ちゃんも恥ずかしくて声が小さくなっちゃっただけなんだよね?
密着して寝てたから、だから囁くような形になっちゃったんだよね?
そうなんだよね?!
でも言われた瞬間の私にはそんな判断ができなくて
そう思うことができなくて
穂乃果「…あ、ぁの…えと…」
頭が真っ白になっちゃった
穂乃果「…でーと?」
希「うん」
穂乃果「り、りありぃ?」
希「いえす」
穂乃果「…希ちゃんと?」
希「うん」
穂乃果「でーと…デート…」
希「あ、あんまり連呼せんといてよ! 恥ずかしく…なってくるやん…」
穂乃果「ご、ごめん」
そう言って希ちゃんは布団を頭までかぶっちゃった
暗くてよく見えなかったけど、希ちゃんの顔はたぶん真っ赤だよね
そういえば、友達と遊ぶことをデートって言ったりするん…だっけ
そういう意味なんだよね…?
…でも、ほんと? デートに連れていってくれるの?
希「う、うん…イヤやった?」
布団越しに伝わる希ちゃんの震えた声
うわあ、顔熱いよ…
私も恥ずかしい…
えっと、こういうのって…ちゃんと答えた方がいいんだよね?
私は希ちゃんから布団を引っぺがして
やり返すように、希ちゃんの耳元で…ぼそりと
穂乃果「喜んで…お受けさせていただきます」
…言っちゃった///
私、顔真っ赤だよ
胸もすごくドキドキしてる
こんなに緊張したのって、いつ以来かな…なんてね
言い様に吐息がかかっちゃったのかな
希ちゃんが小さく「ひゃっ…」って言ったのを私は聞き逃しませんでした
ごめんなさいと思いつつ
可愛い声だな、なんて思っちゃった
希「ぁ…ほ、ほんま? よかったぁ…///」
この声は、きっと希ちゃんも照れてる…のかな?
暗くて見えないや
ちょっとほっぺた触ってみようかな…なんちゃって
触れるわけないんだけどさ
穂乃果「…じゃあよろしくお願いします///」
希「う、うん…こちらこそ…///」
自分で言うのもなんだけど…なんだろ、この感じ…
すっごい照れちゃう…
…でも、なんだか幸せな気分
胸が満たされる感じ
心地よい充足感
えへへ…幸せだなぁ、私
穂乃果「…ねえ、どこに連れてってくれるの?」
希「新しくできた遊園地とかいいかなって思ってるんやけど…どうかな?」
穂乃果「遊園地…えへへ、いいね。いきたいな…希ちゃんと」
遊園地…えへへ、想像しただけで楽しそうだなぁ
日曜日が待ち遠しいなっ
穂乃果「楽しみにしてる」
希「うん、今度の日曜日ね」
穂乃果「はいっ」
希ちゃんとのデート、楽しみ
照れちゃって、今日は寝付けない自信があるよ…てへへ
希「ふふっ…ほら、明日も学校やろ? もう寝よっ」
穂乃果「うん」
…このまま、抱きついて寝てもいい?
それなら眠れそうだから…
希「ふふん…むしろウチが抱きついちゃおっと」ギュー
穂乃果「あはっ…あったかいね」
希「そうやね、あったかい…」
…ああ、またこの感覚だ
心の底がじんわりと温かくて、満たされてく感じ
幸せ…って、感覚
希ちゃんも感じてくれてるのかな
私だけだったら、寂しいな…
穂乃果「希ちゃん…?」
希「ん…なに?」
穂乃果「えへへ…なんでもない」
希「そう?」
穂乃果「…おやすみ、希ちゃん」
希「うん…おやすみ穂乃果ちゃん」
でも…希ちゃんも幸せって感じてくれてるなら…
もしそうだったらなら、嬉しいな
今日はここまで
ありがとうございました
レズるのか…(´・ω・`)
>>118
レズるつもりはありません
乙乙!
いつも楽しみ
ギュッとしているだけでレズとかw
これからの展開の話でしょ
百合とレズは違う
告白したらレズ
申し訳ないが百合レズ論は荒れるのでNG
この展開は期待せざるを得ないな
乙です!
>>125
申し訳ないがホモもNG
百合とレズの線引きって難しいよね…
少しだけ投下いたします
~日曜日~
今日は待ちに待った日曜日
希ちゃんとの…デートの日です!
いつもなら希ちゃんが家まで迎えに来てくれるんだけど…これだとデートっぽくないもんね
だから今日の待ち合わせ場所は駅前の広場なの
ほら、よくある…時計台の下で、みたいな感じ!
せっかくだからオシャレしてみたんだけど、どうかな…かわいいかな?
遊園地で遊ぶから、動き回れる感じにはしてみたけど…
いままで希ちゃんと二人きりで遊んだのは学校の帰りとかだったから、なんだか緊張しちゃうなぁ
しかもデートなんて言い方されたら、なおさら…
あぅ…顔、真っ赤じゃないよね?
まだ時間までちょっとあるし…近くのトイレで確認してこようかな…
でもでも、行ってるあいだに来ちゃったら…
希「ほのかちゃーん」
きちゃった…
よし、もうこのままでいこう!
穂乃果「のぞみちゃーん」
希「ごめんごめん、待たせちゃったね」
穂乃果「ううん…私もいま来たとこだから」
えへへ、ちょっと言ってみたかったセリフです!
希「ふふっ」
ん?
な、なんだろ…私のことジロジロ見て…
もしかして、変なところあった!?
希「今日はいちだんと可愛いね♪」
穂乃果「なっ…!!」
なんと正反対!?
いきなり、いきなりそんなことっ…
ああもうダメ、それはダメ…
絶対顔真っ赤だよぉ…
穂乃果「ぅ、うぁぁ…///」
希「ふふん」
穂乃果「は、はずかしい…」
希「いいやん。嘘は言ってへんもーん」
穂乃果「うぅ…///」
希ちゃん…それはずるいよ…
照れるに決まってるじゃん…
希「ウチはどうかな? 気合い入れてきたんやけど」
くるりとまわってみせる希ちゃん
初めて見る大人っぽい姿の希ちゃんは、ふだんとはまた違った印象で新鮮です
お姉ちゃんというより、お姉さんって感じ
かわいいじゃなくて、綺麗とかそんな印象かな?
希「ふふん。もう大学生なんやし、それくらいはね♪」
でも中身はいつものかわいい希ちゃん
ギャップってやつだね!
穂乃果「それに比べて私は…」
ふだんよりは大人っぽいかもしれないけど
希ちゃんに比べたら、まだまだ子供かなぁ…
希「そんなことないよ。すっごくかわいいやん」
穂乃果「そ…そうかな?///」
希「うんっ!」
にこりと笑ってくれる希ちゃん
その笑顔を見てると、これでいいかなって思えてくるの
だって、希ちゃんが褒めてくれたんだもん!
希「そろそろいこっか」
穂乃果「うんっ」
と言って差し出してくれた手を…いつもの私なら普通に握り返していたと思います
でも今日はデートなんだよね?
だったらさ…
穂乃果「えへへっ」
希「ほ、ほのかちゃん…!?」
ぎゅっと腕をとって、そこに私の腕も絡めて…
つまり、腕を組んじゃうのです!
穂乃果「いいでしょ? デートなんだしっ」
希「う、うん…」
希ちゃんってやわらかいし、あったかいし
抱き心地さいこー!
希「あんまり嬉しくないなぁ」
穂乃果「じゃあやめる…?」
希「いや…や、やめんといて」
穂乃果「はーい♪」
~電車~
タタン タタン
ここから電車でしばらく移動したところに、遊園地があるの
有名なテーマパークなのです!
えへへ、楽しみだなぁっ
穂乃果「♪」
移動中も腕は組んだままで
たまに擦り寄ってみたりして、希ちゃんの反応を楽しんでると…
希「あ、あんまり電車では…ね?」
顔を真っ赤にして、希ちゃんはそう言いました
あ、もしかして照れてる?
希「そ、そんなことないっ」プイッ
穂乃果「うそだ~」
指先でほっぺたをつんつんしてみると
希「嘘やないもんっ」
指を払われちゃった
穂乃果「あはは、照れてる希ちゃん可愛いっ」
希「あ…あんまり言うと怒るで!?」
穂乃果「ごめんなさーい」
顔真っ赤にして言ったって怖くなんてないよ?
こんなに余裕のない希ちゃんも珍しいね♪
希「誰のせいやと思ってるん…」
穂乃果「さあ?」
希「むぅ…」
今だけは強い穂乃果です!
そう、今だけ
…実は、私もすっごく恥ずかしいんだけどね
だって腕組んでるし、こんなにくっついてるんだもん
恥ずかしくないわけないよ…
…でも、それ以上に楽しいって気持ちの方が大きいんだ
だって…せっかくのデートなんだもん
全部を楽しまなくちゃ損だよねっ!
希「ふふっ…そうやね」
希ちゃんの緊張もほぐれたのかな?
ちょっと表情に余裕が戻ったみたい
でも、それって…
希「ふふふ…さっきはよくもいじめてくれたね穂乃果ちゃん?」
穂乃果「あ、あははは…」
希「覚悟してな~?」
穂乃果「…はい」
これから私、もう何もできなくなるってことなんだよね…あ、あははは…
~遊園地~
穂乃果「ついたー!」
希「やっとやね」
穂乃果「もう並んでる! いこっ」ギュッ
希「うんっ」
さすが有名なテーマパーク
入場ゲートもすごい行列で、チケット購入だけでも並ばなくちゃいけないみたい
でもおしゃべりしてたら時間なんてあっという間だったよ
だいたい一時間くらい並んだのかな?
ついにチケットカウンターまでたどり着いたのですが…
希「ここはウチが出すから」
と希ちゃんが言い出したことには驚きました
穂乃果「…で、でも…ここ、結構するんだよ?」
希「デートに誘ったのはウチやから…それくらいさせて?」
それくらいって言うけど、でも…やっぱりダメだよ、割り勘にしよ?
希「いいからいいから!」
私の言葉も聞かず、希ちゃんは半ば強引にお金を払ってチケットを購入しました
自分で払えるのに…
穂乃果「希ちゃん…」
希「ん…ちょっと強引やったね、ごめん」
落ち着いた声で、頭を撫でてくれる希ちゃん
ほんとだよ…あんな無理やり…
希「ごめんね」
穂乃果「…もういいよ、でも次は私が払うからね!」
希「次のデートってこと?」
穂乃果「そう!」
希「まだ今日のデートも終わってないのに…ずいぶんとせっかちやなぁ。ふふふっ」
穂乃果「うっ…だ、だって…///」
私にとっては、もう楽しいんだもん…
と言えるわけもなく
誤魔化すようにアトラクションのひとつを指差して
穂乃果「ほ、ほら! あの…アトラクションのお金とかも自分で出すから!」
希「入場しちゃえばアトラクションはお金払わんで乗れるんよ?」
ぐあ…そうだった!
じゃ、じゃあ…えっと
穂乃果「お昼ごはん! お昼ごはんは私が出すから!」
希「それもダメ」
穂乃果「なっ…なんで?」
希「それもウチが出させてもらいますー」
穂乃果「な、なんでさー! じゃあ割り勘にしよ!」
希「むぅ…」
穂乃果「だって、そうじゃないと私も素直に楽しめないよ…」
払ってもらってばっかりなんて、私、嫌だし
希「…わかった。ごめんね穂乃果ちゃん」
穂乃果「うん! じゃあほら、さっそくアトラクション回ろ!」
希「うん…えっと、どこがいいかな?」
穂乃果「ジェットコースター!」
希「よし、じゃあいこ!」
穂乃果「うん!」
ここのジェットコースターはすごいみたい
最初の急降下ってあるでしょ?
あれがね、なんと地上70mからの急降下なの! すごいよね!
でも一番前は本当に怖いらしくて…まあ、でも大丈夫だよね?
うん、私、ジェットコースター大好きだし!
大丈夫!
~ジェットコースター~
ガタガタガタガタ
穂乃果「…大丈夫じゃなかった」
希「どうしたん?」
穂乃果「よりにもよって一番前だなんて…」
希「いいやん♪ ジェットコースターを一番楽しめる座席やで?」
穂乃果「う、うん…」
ガタガタガタガタ
ゆっくりと頂点目指して登っていくコースター
まるで処刑台に登る受刑者のような気分です…
うう、こわい…
好きなアトラクションなのになぁ…
高さがあるだけでこんなに怖いなんて…
あ、あれれー…手が震えてきたよぉ…?
これってマズイかな…
少し顔が青ざめかけてたそのとき
希「…手、貸して?」
穂乃果「え…?」
希「ちょっと、怖くなってきちゃって…手の震えが止まらないんよ。だから、握っててくれる?」
穂乃果「う、うん」
にこりと笑って差し出された手を、私はそっと握りました
でも希ちゃんの手はまったく震えてなんかなくて
むしろ震えてるのは私のほう
だけど希ちゃんが握ってくれたから、もう怖くなくなったよ
気づいてくれてたんだね…
穂乃果「…ありがと」
希「何か言った?」
穂乃果「なんでもなーい!」
希「?」
分かってるくせにね…ほんと、優しいんだから
さて…そうこうしているうちに、コースターはまもなく頂点です
ゆっくりと
本当にゆっくりとコースターはレールを登り
頂点に達すると…
穂乃果「…」ドキドキ
ふわりと身体が浮かび上がるような感覚
もう限界でした
穂乃果「いやぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!」
希「きゃーっ♪」
・・・。
ジェットコースターから解放されて
少し休憩することに…しました
ジェットコースター好きなのに…高さが違うだけであんなに怖いなんて…
希「穂乃果ちゃん…大丈夫?」
穂乃果「少し休めば…」
希「そっか」
でも不思議と、もう一度乗りたくなるのはなんでかなぁ
やっぱりジェットコースター好きなんだなぁ
それとも希ちゃんが手を握ってくれてたおかげかな?
少し落ち着いたところで
希ちゃんが私の頭を撫でながらひと言
希「穂乃果ちゃん、髪の毛ボサボサやね」
穂乃果「ええっ!? うわ…ほんとだ」
せっかく綺麗にしてきたのに…
穂乃果「ちょっと直してくるよ…」
と立ち上がろうとすると、希ちゃんに手を掴まれました
穂乃果「なに?」
希ちゃんはバッグから櫛を取り出して
希「直してあげる」
穂乃果「い…いいの?」
希「うん。ほら、もうちょっとこっちおいで」
穂乃果「う、うん」
すすっとそちらへ身体を寄せると、希ちゃんは慣れた手付きで私の髪をとかしはじめました
しゅっしゅっと髪を撫でられるような感覚が、とても気持ちいい
ボサボサになったところを丁寧に櫛でとかして
サイドポニーも結い直してくれたの
手鏡で確認すると自分でやるよりも綺麗に整ってて、また笑顔が漏れちゃった
えへへっ
希「次はどこ行きたい? ショーとかパレードみたいなんもあるみたいやけど」
穂乃果「えっとねぇ…じゃあ、フリーフォール! 次はライド型のアトラクションとか!」
希「なんでそんな、また髪がボサボサになるようなのピックアップするん…」
穂乃果「だって、またやってもらえるでしょ?」
希「まあそうやけど」
穂乃果「ふふん!」
希「もう…じゃあ、お化け屋敷いこっか」
穂乃果「うんっ!」
そうしてまた、希ちゃんのやわらかい二の腕に抱きつく穂乃果でした!
…ん、あれ?
穂乃果「お化け屋敷?」
希「うん」
穂乃果「フリーフォールは…」
希「またあとで♪」
・・・。
穂乃果「はあ…楽しかったぁ」
希「ちょ、ちょ…まって…」
穂乃果「大丈夫?」
希「大丈夫、やないかも…」
穂乃果「うーん…ちょっと休む?」
希「うん…」
お化け屋敷から出てきた私たち
でも希ちゃんは調子が悪いみたい
…まあ、仕方ないよね
だって…
~回想~
希「な、なんや暗いね…!」
穂乃果「そうだね」
ガタンッ
希「ひぅっ!?」ビクッ
穂乃果「おおっ」ビクッ
希「だっ…大丈夫っ!? 怖くない!?」
穂乃果「え…う、うん」
希「わたしについてくるんやで!」
穂乃果「うん」
希ちゃん…怖いんだね
さっきから私に思いっきりしがみついてるし
口調もおかしくなっちゃってるし
先に行こうとすると涙声で
希「先に行かないでぇっ…!」
…いつもの関西弁はどこへやら
ついてこいって言ってたのに…
きっと切羽詰まった状況なんだろうなぁ
と、歩いていたら
通路の横側に鉄格子のついた窓がありました
たぶん、この前を通ると…
『うあぁぁぁあああああっ!!!ガンガンガンッ!!!
穂乃果「うわっ」
希「きゃぁぁああああっ!??」
穂乃果「大丈夫、大丈夫だよ希ちゃん」ギュッ
希「こんなはずやなかったのにぃ…ぐす、ううっ…」グシュ
穂乃果「私も一緒だから大丈夫だよ」
こんなはず…ってことは、あれかな?
きっとこの逆のパターンを予想してたんだろうね
私が怖がって希ちゃんに抱きついて、よしよしーって撫でてもらう感じ
残念だけど希ちゃん…実は私、この前テレビで見たんだよね
お化け屋敷の攻略法…
曲がり角に小窓みたいなものがあったら、曲がった途端におどかされるとか
希「ほのかちゃあん…」
穂乃果「大丈夫だよー」
『ん゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ゙!!!』
希「いやあああああっ!!」
手加減してあげてよ、オバケさん…
…まあ、珍しい希ちゃんを見れたからいいかな?
~回想終わり~
希「よくない!」
穂乃果「えー…」
希「だって…ほんとはウチがかっこいとこ見せたろーって思ってたのに…」
穂乃果「でも怖がってる希ちゃんも可愛かったよ?」
希「そんなんいややん!」
穂乃果「…っ! の、のぞみ…ちゃん…」
希「えっ…なに、なに…?」
穂乃果「肩のとこ…それ、なに…!?」
希「いやぁあああっ!!?」バッ
穂乃果「あはは、ごめん冗談」
希「ほのかちゃんのばかー!」
穂乃果「ごめーん」
私はもう、希ちゃんを怖がらせまいと誓いました
ごめんね、希ちゃん
・・・。
穂乃果「色々まわったねー」
希「そうこうしてるうちに、もうお昼時やね。ごはんにしよっか」
穂乃果「うんっ!」
~レストラン~
穂乃果「ふう…やっと座ったーって感じだね!」
希「そうやね。朝からアトラクションに乗りっぱなしやったから、ちょっと疲れたね」
穂乃果「でも楽しいね」
希「うんっ」
穂乃果「怖がる希ちゃんも見れたし」
希「ちょっと!」
穂乃果「あははっ、ごめんごめん」
希「もう…あんまりイジワルせんといてよ」
また希ちゃんは顔を赤くして、そっぽ向いちゃった
言い過ぎたかな?
ごめんね
希「…いいけど」
穂乃果「そう? よかった、じゃあなに食べるか選ぼうよ!」パラパラ
希「うん」
穂乃果「おお! どれも豪華だなぁ、というか高い…」
このオリジナルステーキ…は2000円
ハンバーガーセットでさえ900円!?
さすが有名テーマパーク…レストランさえお高いなぁ…
でも、今日はデートなんだもん
こんな日くらい、お金を惜しんじゃ損だよねっ!
よしよし、そうと決まれば…
穂乃果「うーむ…」
希「決まった?」
穂乃果「うーんとね、このスペシャルミックスと…チキン&ハンバーグのどっちかで迷い中…」
希「じゃあ穂乃果ちゃんはスペシャルミックスにしたら?」
穂乃果「どうして?」
希「もう片方のはウチが注文するつもりやったから…分けてあげるよ」
穂乃果「いいの?」
希「もちろんやん。その代わり、穂乃果ちゃんのもちょっとちょうだいよ?」
穂乃果「うんっ! ありがとう、希ちゃん!」
これぞデートの醍醐味だね!
二人で別々の料理を選んで、分け合うんだよっ
希「ソフトドリンクもお願いしよっか」
穂乃果「じゃあ…」
少し考えてメニューに目を走らせ
穂乃果「私はオレンジジュースね」
希「ウチはアイスコーヒーにしよっと」
手早くドリンクを決めて、店員さんを呼ぶボタンを押して
ほどなくしてやってきた店員さんに注文を伝え終わると、希ちゃんは遊園地の地図を広げ始めました
希「ごはん食べたら、次はどのアトラクション行くか決めんとね」
なるほど…待ち時間を利用して選んでおくわけだね
さすが希ちゃん!
希「お昼過ぎからパレードがあるんよ。パーク内を一周する、期間限定の大きなやつみたいやね」
穂乃果「ほえぇ…じゃあ、それ見に行こうよ! どんなパレードなのかなぁ」
希「ふふふっ…穂乃果ちゃんは本当になんでも楽しそうやね」
穂乃果「そりゃそうだよ! なんだって楽しまなくっちゃね!」
希「穂乃果ちゃんが楽しいと、ウチまで楽しくなってくるからね」
穂乃果「ほんと? じゃあずっと楽しんでおきます!」
希「うん! そうしてくれる?」
穂乃果「はいっ♪」
今はここまで
また夜に更新出来ると思います
ありがとうございました
乙でした!
ごはんを食べて
パレードやショーを楽しんで
もう夕方に差し掛かるころ
そろそろ帰ろうかなんて話し合ってたんだけど…
穂乃果「希ちゃん」
希「ん…なーに?」
穂乃果「帰りにさ、私…行きたいところがあるの」
~観覧車~
もう空が赤く染まる時間帯
遊園地で遊び切って、やっと
私たちは遊園地から出て、わざわざここまでやってきた
希「やっと着いたね」
穂乃果「うん。…ごめんね、無理言って」
あの遊園地には、観覧車がなかったから…
私が少しわがままを言って、連れてきてもらったの
希「いいんよ。…でも、どうして観覧車に?」
穂乃果「だって…今日はデートでしょ? だから、最後は観覧車かなって」
ちょっと昭和チックかもしれないけど、やっぱりデートの定番は観覧車だと思って…
希「ふふん…穂乃果ちゃんもそんなロマンチックな心があったんやね?」
穂乃果「えへへ…自分でもびっくりだけどね」
冗談を少し言い合って
それから観覧車に乗りました
ゆっくりゆっくり
本当にゆっくりと上っていくゴンドラに揺らされていると
私たちは何も言葉を交わさなくなって…
ドラマで見たことがあるけど、観覧車に乗ると…本当に静かになるんだね
なんだかすごい発見をした気分だなぁ
なんて考えながら窓の外を眺めると
赤い夕陽が、空をおんなじ色に染め上げていて
私と希ちゃんが乗ったゴンドラの中も真っ赤に染まって、とっても綺麗
夜が来ると、今度は観覧車はイルミネーションの明かりに包まれるんだろうなぁ
それもそれで見てみたいけど…そんな遅くまでいられないもんね
頂上まで、まだ半分
そんなとき、対面の希ちゃんが口を開いた
希「…今日は楽しかった?」
穂乃果「うん! ありがとう希ちゃん」
希「ふふっ」
私の答えに満足したのかな…希ちゃんはにこりと微笑んで、また何も言わなくなった
なので、今度は私から話を振ることにします
穂乃果「最近、おとうさんおかあさんとはどうなの?」
こんなところじゃないと、話せそうにもない話題
少しだけ、聞きたくなっちゃった
こんなとこで聞くことでもないけどね
希「ウチの?」
穂乃果「うん」
希ちゃんのおかあさんと最後にあったのは…いつだっけ
ラブライブが終わって、うちでパーティしたときかな?
もうずいぶんと前のことのように思えるけど、実はあれからまだ半年も経ってないんだ
希ちゃんはあれから、また連絡をとってるらしいし
どうなのかなー? と思って
希「あれから連絡取り合ってることは言ったよね?」
穂乃果「うん」
希「今度のゴールデンウィークにこっち来るみたい。穂むらでバイトしてること伝えてるから、遊びにくるんやないかな?」
穂乃果「ほんとー! えへへ、楽しみだなぁ」
希「おかあさん、穂乃果ちゃんのこと気に入ってるで…迷惑かけたらごめんね?」
穂乃果「そんなのいいよ! むしろ気に入ってもらえるなんて、嬉しいし」
希「そう?」
穂乃果「うん! だってほら、お互いの両親公認ってことじゃん!」
希「…それは別の意味になっちゃうよ?」
穂乃果「む…いやだった?」
希「…いややないけど」
穂乃果「ふふん」
また照れちゃった?
希「い、いわんといて!」
穂乃果「あはは、ごめーん♪」
希「もう…///」
穂乃果「でも、そっかぁ…仲良くできてるみたいでよかったなぁ。また何かあったら私に言ってね!」
希「ふふふ、ありがとう穂乃果ちゃん」
穂乃果「ふふん。お姉ちゃんのピンチは妹が救うものだからね!」
希「うん…もう、何度も救われたよ…穂乃果ちゃんには」
穂乃果「…そんなことないよ」
希「あるの。μ'sが出来てからというもの、ウチは穂乃果ちゃんに救ってもらってばかりなんよ? 今日はね、そのお礼も込めてデートに誘ったん。楽しんでもらえて本当に嬉しい」
にこりと笑った希ちゃんの目は、夕陽のせいか、潤んで見えた
潤んだ瞳に映る私も…また同じように
そんな自分を見せられなくて、視線を窓に向けちゃう
穂乃果「そんな、お礼なんていいのに…」
希「でも…ウチには、こんな風にしかやり方がわからなかったから」
穂乃果「えへへ…ありがと。すごく楽しかったよ」
心からの笑顔で答えた…ちょうどそのとき
穂乃果「…頂上まで来たみたいだね」
希「うん。いい眺めやね」
穂乃果「わあ~! ほらあそこ、音ノ木坂じゃない?」
希「あら、ほんとやね。こんなとこからでも見えるんや…」
穂乃果「お米みたいに小さいけどね」
希「あはは、花陽ちゃんが喜びそうやなぁ」
穂乃果「さ、さすがに花陽ちゃんでもそれは…」
希「……」
ふとした沈黙
でも、互いの目で、何を言いたいのか通じ合ってる
そんな繋がりが、私はとっても嬉しくて
すごく大切なものなんだって、実感できた
穂乃果「…ねえ、そっち行ってもいい?」
希「…うん、おいで」
希ちゃんが、自分の横の空席をとんとんと叩く
私はそこへ座ると、もぎゅっと希ちゃんの腕に抱きつきました
穂乃果「えへへ」
希「こんなとこでも腕組むん?」
穂乃果「希ちゃんと触れ合いたかったんだもーん♪」
希「そっか」
くすりと希ちゃんが笑うので
穂乃果「だからぎゅーってしてます」
私も笑顔で答えると
希「じゃあウチもぎゅーってしちゃお」
希ちゃんも笑顔でぎゅーってしてくれる
えへへ、胸の中が温かい気持ちでいっぱいです
穂乃果「…今日はありがとね」
希「こちらこそ…ありがとう」
穂乃果「またデートしてね?」
希「うん、でも今度は穂乃果ちゃんから誘ってくれる?」
穂乃果「じゃあ来週…は、練習だぁ…」
希「ふふふっ、まずは自分の予定との相談からはじめよーね?」
穂乃果「はーい…」
もうすぐデートも終わり
そしたらまた、いつもの日常がやってきて
学校に行って、練習して、バイトにきてる希ちゃんとおしゃべりして
そんな何でもない毎日が幸せだから
今日みたいな日はもっと幸せに感じられたのかな?
なんだろね
私の幸せって、希ちゃんと一緒にあるのかな? …なんて
顔を見上げてみたら…
穂乃果「ぁ…」
希「っ…」
……目が、合っちゃった
希ちゃんの顔は真っ赤で
私の顔も、真っ赤に染まっている
その色は夕陽の色なのか
それとも…
穂乃果「…希ちゃん」
希「な…なあに…?」
なんだか、いきなり緊張しちゃったなぁ
ふふっ…変なの
穂乃果「んーん、なんでもない」
希「えー? なによー」
穂乃果「なんでもないもーん♪」
ぎゅーっと抱きついたり
ほっぺたをすりすりすると
希「もー、穂乃果ちゃんったら…」
希ちゃんは頭を撫でてくれる
それがとっても気持ちよくて
私は………
・・・・・・。
穂乃果「海未ちゃんことりちゃん! みんなも早く早くっ!」
海未「い、いそぎすぎです! そんな…誰も逃げないですから…っ!」
ことり「そうだよぉっ…はあ、はあっ…」
穂乃果「ぁ…ご、ごめん…ちょっとトラウマが…」
ことうみ『トラウマ?』
穂乃果「ううん、なんでも! ほら、いそごっ!」
今日はね、久しぶりにμ'sが集まる日なの!
しかも穂むらを貸し切りで!
お父さんにお願いしたら、二つ返事でオーケーもらっちゃって
なんでも今日だけの特別な和菓子も作ってくれるんだって!
また餡子かぁ…って呟いたら怒られちゃったけどね
穂乃果「絵里ちゃんたち、もう来てるって!」
凛「じゃあやっぱり急ぐにゃー!」
穂乃果「よーし、穂むらまで競争だー!」
凛「かよちんも行くよー!」
花陽「だ、だれかたすけてー!!」
海未「人もいるんですから走らないでください!」
花陽「ごめんなさぁ~い!!」
ことり「ま、まってぇ…」
真姫「まったく…ちょっとくらい落ち着きなさいよ…」
ことり「ふふん」
真姫「な、なに?」
ことり「真姫ちゃん、さっきから落ち着いてないみたいだから」
真姫「うえぇっ!?」
ことり「またみんなに会えるの、楽しみだもんねっ!」
真姫「そっ、そんなこと! …ある、けど…///」
凛「素直じゃないにゃー!」
真姫「うるさい!」
穂乃果「ほらほら二人も急いでー!」
真姫「なっ…ま、待ちなさいよー!」
ことり「まってぇ~…!」
私ね、幸せって…小さなことからも見つけられるって気づいたんだよ
こんななんでもない日常も
スクールアイドルの活動をしてるときも
友達のみんなで遊んでいるときも
家族とごはんを食べてるときも
みんなみんな幸せ!
でもね
希ちゃんがくれる幸せは、そのどれとも違う感じがするの
これってどういう幸せなのかな?
とびっきり仲良しのお姉ちゃんといるときの幸せ…?
ううん、そうじゃない
何かが違う
希ちゃんといるときの幸せは、そんなイメージじゃないの
こんな感覚初めてで、ちょっと戸惑っちゃうよ
まだ自分でもなんだかよく分かってないんだけど
だけど、この気持ちは…とても大切なものだと思うんだ
いつもならみんなにも分けてあげたいって思うかもしれないけど
これだけは私の独り占め
誰にも分けてあげないんだ
海未ちゃんやことりちゃんはもちろん
μ'sのみんなも
家族にだって
絶対にあげないんだからね!
やっと見えてきた自宅のドアを思い切り開けて
雪崩のように中に入り込む私たち
絵里ちゃんやにこちゃんはもう集まってて
希ちゃんもその中で楽しそうに笑っていて
私たちに気づくと
希「あら。みなさんご一緒やね?」
ね、さっき…私だけの幸せって言ったけど
ちょっと訂正するね
その幸せはね
私と希ちゃんだけの…
二人だけの幸せなの
独り占めじゃなくて、ふたり占めだね!
でも、とりあえず
まずは挨拶をしなくっちゃね
穂乃果「はあ、はぁ…ふぅ」
息を整えて
私はいつものように
希ちゃんにむかって
こう言うのです
穂乃果「ただいま」
希「おかえり」
おしまい
ひとまずおしまい
また話が思いついたらここで書くつもり
ありがとうございました
乙
とても良かった
乙です
お疲れ様でした。
ナイスほののぞ
乙でした
相変わらず良いほののぞでした
すばらしい
乙
乙
とってもよかったで、また次を楽しみにしてる
乙
すばらしい
ええ雰囲気や~
乙でした
>>1さんのほののぞホント好き
ベタ甘最高や!
乙でした!
お知らせです
近いうちに新しいお話を書きはじめますね
期待
待ってます!!
乙
素晴らしかったチカ
11時過ぎた頃に更新いたします
ある日のこと
〜早朝・のぞホーム〜
ピピピ ピピピ
希「んん…むぅ…」
けたたましく鳴り響くアラームが、なんだか今日はやけにうるさく感じる
頭に響く…
ピピピピピピ
希「うるさ…っ」
小さく呻いて、もぞもぞとアラームに手を伸ばして
かちりとボタンを押して停止
希「…大学、行かないと…」
今日も大学があるから、そろそろ準備始めないと…
希「はあ…よい、しょっ…」
と、立ち上がった瞬間に
希「…ぇ」
ぐらりと足元が揺れたような感覚に陥って
ぐんにゃりと視界が歪み
そのまま立っていられなくなって
ばたりとベッドに倒れこんだ
希「ぁ、あれ…」
頭がぼやけた感覚
自分の見ている世界も、どこか薄い膜を一枚隔てているような
そんな奇妙な感覚
…ああ、これは…
風邪、ひいちゃったなぁ…
・・・
絵里『分かったわ。ゆっくり休むのよ?』
希「ありがとえりち…」
絵里『気にしないで? …それより、穂乃果には伝えた?』
希「まだ…やけど、穂乃果ちゃんが知ったら学校放り出しても来そうやし…」
絵里『…ありそうだから困るわね…んん。とにかく無理はしないでね。お願いよ?』
希「だいじょぶ…無理する元気もないから…げほっ」
絵里『もう…身体に障るといけないし、切るわね』
希「うん…ありがと」
希「はあぁ…んん、んっ」
電話を切って、大きく息を吐き出す
痰の絡みついた喉が気持ち悪い
あんまり動きたくないけど、水だけでも飲もうかな…
もぞもぞと布団を抜け出そうとしても、身体がそれを拒む
…ぁう…つらい
動くのもつらい…
なんとか壁伝いに台所まで移動して
コップに水を二杯飲み、ほっと一息
…とりあえず、穂むらにも電話しとかないと…
今日のバイト、行けないから…
pipipi
prrrr...
穂乃果『はい、高坂です!』
希「ぁ…ほのか、ちゃん…!?」
穂乃果『希ちゃん? どうしたの、声変だよ?』
ぅわ…やっちゃった
穂乃果ちゃんが学校出てから電話すればよかった…
…まあ、仕方ないね
穂乃果ちゃんからお母さんに伝えてもらおう…
希「ちょっと風邪で寝込んじゃって、今日は…バイト、行かれへん」
穂乃果『え…そんな、大丈夫!?』
希「うん…だから、今日は…」
穂乃果『今からそっち行くから待ってて!』
…言うと思いました
希「来なくていいから…穂乃果ちゃんは学校…やろ?」
穂乃果『うぅ…じゃ、じゃあ学校終わったらすぐ行くから!』
希「うん…じゃあお願いしよかな」
穂乃果『無理しちゃダメだよ?』
希「心配してくれてありがと…お母さんにも、伝えといてくれる?」
穂乃果『わかった! じゃあ…またね?』
希「うん」
pi!!
希「はぁ…喉、痛い…」
ひとまずこれでいいかな…
はぁ…きつ…
…声、聞かへん方がよかったかも
・・・
ピピッ
希「熱…、39.1℃…」
こんな高かったら、そりゃあつらいか…
希「冷えピタ貼って寝よ…」
と思ったところで気がついた
一人暮らしが風邪をひくということが、どういうことなのか
希「冷えピタ…どこにあったっけ」
もともと風邪をひかないようにはしてたけど…
高校生になってから一人暮らしを始めて以来、いままで以上に風邪をひかないように努めてたん
特に熱になるようなことは絶対に避けてた
もしこんなことになったら、誰にも看病してもらわれへんし
だから家に風邪薬はあっても、冷えピタなんてないわけで…
はあ…やっちゃったなぁ…
やっぱり、一箱くらい買っとけばよかった
希「…はあ」
悔やんだって仕方ないし、とりあえず薬飲んで寝よう…
…でも、そのためにはまず何か食べなきゃね
ちょうど昨日の帰りに買っておいたパンがあったからよかった
それを半分だけ食べて、薬を飲んで、はいおしまい
もそもそとベッドに潜り込むと、どっと身体のダルさが増したように感じた
息はどんどん荒くなって、手と足の先も…麻痺したように希薄
希「はぁ、はあ…」
身体が熱くて息苦しい…
こんな高熱、久々やなぁ…
…えっと、いつ以来やっけ
小学生、それとも…
うーん…わからない
……もういい、早く寝よう
希「はぁ…んんっ…」
風邪ひきのときは人肌が恋しくなるって聞いてたけど…
それって、わりと本当なのかも…
はあ…穂乃果ちゃんが、学校終わるまで我慢やね…
それまで寝てられたらいいけど
希「…」
はよ来てー…なんて
呼んだって来てくれへんけど…
今日はここまで
ありがとうございました
乙乙
乙です
ありがとう
おつ
〜穂むら〜
ほのママ「電話、希ちゃん?」
穂乃果「うん。風邪なんだって」
ほのママ「そう…かわいそうに…」
穂乃果「うん…やっぱり私、ちょっと行ってきていいかなぁ。学校、ちゃんと行くから!」
ほのママ「希ちゃんに来てって言われた?」
穂乃果「…学校行けって言われた」
ほのママ「じゃあ学校行きなさい。希ちゃんに余計な心配させちゃダメ」
穂乃果「はーい…でも、帰りは行くからね!」
ほのママ「わかったわかった」
穂乃果「それじゃ、行ってきます!」パタパタ
ほのママ「行ってらっしゃい」
雪穂「希さん、風邪なの?」
ほのママ「そうみたい…ちょっと心配ね」
雪穂「うん…」
ほのママ「って、なんで雪穂まだ行ってないのよ」
雪穂「亜里沙とそこで待ち合わせ。そろそろ来るし、行ってきます」
ほのママ「はいはい…」
ほのママ「…一人暮らしで風邪は、本当につらいわよね」
ほのパパ「…」ソウダナ
ほのママ「…お店、開けましょうか」
ほのパパ「…」ウム
〜音ノ木坂・三年教室〜
海未「それは本当ですか?」
穂乃果「…たぶん、疲れがでちゃったんだと思う」
海未「希は健康管理は大事にしていそうなのですがね…」
穂乃果「うん…やっぱり私が悪いのかな」
ことり「なんで穂乃果ちゃんが?」
穂乃果「私がいつもベタベタしてるし、迷惑ばっかりかけてるし…」
ことり「深く考えすぎじゃないかな? ほら、大学とバイトがあったし、ちょうど五月くらいって疲れが出てくる時期じゃない!」
穂乃果「…うん」
海未「なに落ち込んでるんですか! 学校が終わったら看病しに行くんでしょう? シャキッとしなさい!」
穂乃果「えへへ…そだね、そうする」
穂乃果「あっ! でも…練習…」
海未「…大目に見てあげます」
穂乃果「ほんと! 海未ちゃん大好きー!」ギュー
海未「はいはいわかりました…なので明日からは厳しくしますよ」
穂乃果「頑張るよ!!」
ことり「ぁ…」
穂乃果「ほえ?」
海未「どうしたんです?」
ことり「希ちゃん…一人暮らしだよね」
穂乃果「うん」
ことり「穂乃果ちゃんが行くまで…ごはんとか冷えピタとか、大丈夫かな…」
穂乃果「あーーー!!!」
穂乃果「ど、どうしよぉーー!!!」
海未「静かにしなさい!」
穂乃果「…あ、そうだ!」
ことうみ『??』
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おかあさん…
『お熱が高いから、今日は学校、おやすみね…』
うん…
ねえ、あのね、おかあさん…今日だけでいいから、一緒に…
『心配しないで? 今日はおかあさんもおやすみするから』
ほんと?
『うん! あなたを一人でおいて行けないもの』
えへへ…うれしいな
『なにか食べたいもの、ある?』
んと…えっと、おうどんさんがいい
『うふふ…それはお昼ごはんにしましょうね』
うんっ
『他に、いま食べたいものは?』
いま…?
んと、えっと…じゃあ…
りんごさんの…すりおろしたやつがいい
『わかったわ、すぐに持ってきてあげるからね』
わぁい…ありがとう、おかあさん
『…え? はい、はい…そうですか…』
…なに? おかあさん? お電話してるの…?
『希…』
もしかして、お仕事…?
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希「…」
額にひんやりした感覚があって
それで目が覚めた
そちらへ手をやると、ざらざらしたシートが貼られていて…
これって…冷えピタ…?
もしかして、穂乃果ちゃんがもう…
と思って起き上がろうとして
希「…ぁえ…?」
目の端に涙が溜まっていることに気づいた
夢を見た…から、それで…?
何か夢を見ていたことは覚えてるけど、なんの夢だったのかな…
思い出せない…
でも、なんだか懐かしい夢を見ていた気がする
ふと横で人の気配を感じて、そちらに目をやる
ぼやけた視界でぼんやりと確認できたその姿は…
希「ほのかちゃん…?」
「穂乃果じゃなくて残念でした」
希「えっ!? ぅ…げほっ、けほっ…」
「ああもう、いきなり大声出すから…」
そう言ってウチの家にいた人は、優しく背中をさすってくれる
そ、そりゃびっくりするよ…
だって…目が覚めたらいきなり部屋にいるんだから
それに、間違えちゃったし…うぅ、はずかし…
…でも、なんでここに?
ほのママ「心配だからに決まってるでしょ。希ちゃんのことは、おかあさんからも任されてるんだから」
希「ありがとうございます…でも、鍵は…」
ほのママ「ほら、バイト決まったときに合鍵渡してくれたでしょ? それを使ったの」
そっか…そういえば、渡してたんやった…
こんなこともあろうかと、って…
あれってなんでほんまに用意してるねんって思うけど…ふふ、おかげで助かったね
希「お母さん…ありがとうございます」
ほのママ「いいのいいの。それより、食べたいものある? 果物とかゼリーとか色々買ってきたから、なんでも言って?」
希「ん…なんでも、いいんですか?」
ほのママ「私に作れるものなら何でもどうぞ!」
希「じゃあ…すりおろしたりんごが…食べたいです」
小学生の頃におかあさんに作ってもらったすりりんごが好きで…
…なんだか、とても食べたくなったん
小さい頃…熱がでたとき、おかあさんにお願いして…
ふふっ、懐かしいなぁ
ほのママ「ふふふっ」
ウチのお願いを聞いて、お母さんはくすっと笑みをこぼした
ほのママ「希ちゃんも、それ食べたくなるんだ?」
希「すみません…」
さすがに子供過ぎたかな…
ほのママ「あはは、いじわる言ってるわけじゃないのよ? ただ、穂乃果と似てるなと思って」
希「穂乃果ちゃんと…?」
ほのママ「ええ。あの子も熱出して倒れたら、いっつもイチゴとすりりんごを食べたがるのよ」
希「そうなんですか…」
なんだか、穂乃果ちゃんらしいな…ふふっ
ウチと穂乃果ちゃん、ちょっと似てるところがあるのかもね
…ほとんど、正反対だと思うけど
すみません、しばらく席外します
やっほい!待ってるよ
ダカラワーオワーオ! ユメナラバー♪
唐突のぷわぷわーお!
…な、なに?
ウチのケータイやないから…
ほのママ「おっと、電話ね」
希「は、はい…」
…うん
なんで着メロぷわぷわなん…
ほのママ「穂乃果ね…ちょっと待ってて」
希「は、はい」
穂乃果ちゃんから電話きたらぷわぷわなんや…
とウチの戸惑いもどこ吹く風、お母さんはケータイを耳に当てて話し始めた
ほのママ「はいはーい」
ほのママ「あ、はいはい、はい」
ほのママ「言われなくても、もう来てるわよー」
ほのママ「えーって…心配なのはあんただけじゃないのよバカ」
ほのママ「うん、うん…伝えとく。じゃあね」
pi!!
ほのママ「穂乃果が来るまで、私が看病してあげてって電話だったわ」
希「穂乃果ちゃん…感謝しなくちゃですね…」
ほのママ「ふふっ、元気になったらまた遊んであげて? あの子、希ちゃんのこと大好きだし」
希「え、ええっ…///」
ほのママ「…またデートにでも誘ってあげてね♪」
希「は、はい…///」
うぅ…な、なんか、恥ずかしいなぁ…
…でも、お母さんがそう言ってくれるってことは…えへへ…
ほのママ「ふふん、お待たせしちゃったわね。りんご、すぐもってくるから」
希「はい」
ほのママ「あ、穂乃果から伝言」
希「?」
ほのママ「私が行くまで泣いちゃダメだよ希ちゃん! …だって」
希「い、いや…そんなわざわざ真似しなくても…」
ほのママ「似てなかった?」
希「すごい似てました…」
…さすが親子やね
めっちゃ似ててびっくりやよ…
するとお母さんは嬉しそうにふんぞりかえり
ほのママ「でしょー? まああの子ってば単純だからね」
そういう問題かな…いや、穂乃果ちゃんが単純って意味やないよ!?
ひとりであたふたしていると、お母さんはようやく動き始めました
ほのママ「おっと、待たせてごめんね。今度こそやってくるから」
希「はい」
お母さんが作ってくれたすりりんご
少しハチミツが混ざったそれはとっても優しい味で、美味しかった
・・・
ほのママ「お昼は何がいい? うどんとかの方が食べやすい?」
りんごを食べてしばらく寝付けなくてゆっくりしていると
リビングにいたお母さんが顔をのぞかせて言った
食欲はないわけじゃない
特に朝はパン半分だけだったからなおさらやね
希「それじゃあ…おうどんさんで…」
ほのママ「了解」
短く答えて、お母さんは台所へ行った
ふう、と息をひとつ
お母さんが枕元に置いてくれたタオルで汗を拭き、ぐっと腕を伸ばす
糖分をとったから、ちょっと体が元気になったんかな?
でも倦怠感はずっしりとウチの体にのしかかってるし、頭も痛い
完全に疲れからきてるなぁ…
大学にバイトに…ちょっと四月の間、色々と頑張りすぎちゃったかも
と…そこまで考えて気がついた
希「あの…お母さん…」
ほのママ「はーいー?」
呼びかけると、すぐに声が返ってくる
ぱたぱたと歩いてきて、薄い板戸を開けるお母さん
ほのママ「どうしたの?」
希「あの…ほむらは…?」
ほのママ「おとーさん一人に任せてきた」
…えっ
希「な、なにしてるんですか!? …けほ、けほっ…」
ほのママ「ああもう、大声出さないで…」
背中をさすってくれるお母さん
だ、だって…お父さんひとりでお菓子作って店番もなんて…
ほのママ「いいのいいの、お昼間は常連さんしか来ないし」
希「だからって…」
ほのママ「高坂の婿さまを舐めちゃいけないのよ? おとーさん、実は接客業すごいんだから!」
接客業すごいってなんですか…
ほのママ「とにかく、心配しないで寝てなさい! じゃないと私が穂乃果に怒られるんだから」
希「は、はぁ…」
と無理やり話を締めくくられ、お母さんは台所へ戻り
ウチははだけてしまった布団を被り直した
今日はここまでー
ありがとうございました
乙
ファイトだよ!
高坂家の人たちの温かさがいいねー
乙です
ほのパパの接客…
気になる
こんばんは
更新していきます
頭がぼーっとするため、目を閉じていると…
…静かにしてると、色んな音が聞こえてくるなぁ
誰かが家にいる音…こんなの、いつぶりかな
ウチは寝てて、誰かが動いてる
鍋を取り出すときの金属音
冷蔵庫を開け閉めする音
それが聞こえるだけで安心できる
ひとりじゃ不安で仕方なかった
寂しくて、不安で
だから寝込みたくないんよ…
ふふふ…今さら気づいたわ
ウチ…意外と寂しがりなんやなぁ…
お母さんが来てくれて、本当に良かった…お父さんには申し訳ないけどね
穂乃果ちゃんもあとから来てくれるらしいし…もう寂しい思いはしないでええんかな
…ほんま、高坂家のみなさんにはお世話になりっぱなしやね…
いつか…ちゃんとした形でお礼、しないとあかんね
どんなお礼がいいやろ…
穂乃果ちゃんひとりなら、またデート誘えばいいかなって思うけど
家族全員やからなぁ…
また、ちゃんと考えんとね
と、思考にちょうど一区切りをつけたそのとき
ほのママ「うどんできたわよー」
希「あ…ありがとうございます」
ほのママ「食べさせてあげよっか?」
希「だ、だいじょうぶですから!」
ほのママ「あらそう…ふふん。どうせ穂乃果なら食べさせてもらうくせに」
希「なっ…!?」
ほのママ「あはははっ。ゆっくりでいいからちゃんと食べて薬飲むのよー? 私はお洗濯やってくるから」
希「ぅ、あ…はい…」
もうお母さんには勝てへんわ…
希「ちゅる…ずずっ…はぁ、おいし…」
おうどんさんをいただいて
お薬もしっかり飲んで
ベッドに戻ると、すぐに眠気はやってきた
ふわふわした感覚があるから寝心地はよくないけれど…
それでも眠らずにはいられない
風邪ってそういうもんよね…
…おやすみなさい
次起きたときは、穂乃果ちゃんも来てるかな…
・・・
高熱のときに限って、よくわからない夢を見たりするん
それも、夢だと分かるような夢とか
本当にあったらいいな、なんて思える夢
でもこの夢では、誰もいない真っ暗な部屋で、ウチがひとり静かに泣いてる夢
部屋には誰もいない
おかあさんも、おとうさんも
ともだちもいない
そう、少し昔…高校一年生の、一人暮らしを始めてすぐの頃だったかな
ホームシック、とはちょっと違うけど…家族に会いたくなったの
ひとりが寂しくて寂しくて、えりちと仲良くなるまでよく泣いてた
いまでもそのことは覚えてて、夢に見ることもあるんよ
というか…これが、その夢なん
これが夢だと分かる夢の理由は、何度も見たことのある夢だからってわけやね
そして現実にあったことだから
だからその夢を見たとき、最初に思うことは…
…やっぱり一人暮らしは嫌だなーって
寂しいし、悲しいし、切なくなる
まだまだウチは弱虫やなぁって、痛いくらいに思い知らされてしまうんよ
自分では少し強くなったつもりでも
本当の根っこのところは弱いままだから…
すぐに不安になるし、寂しくて涙が出るときもある
…そんなときは、とにかく楽しいことを考えるん
ケーキバイキングとか
焼肉の食べ放題とか
歌ったり踊ったりとか
それでもダメなときは
誰かに一緒にいてもらえたらなーって、心から願うん
実は逆効果なんやけどね…それ
それが、誰か…
高校生の、二年までは…
えりちだったり、にこっちだったり
そのふたりぐらいしか、本当の友達がいなかったから当然やね
…じゃあ、いまは?
いまは誰にいてほしい?
うーん…えりちでもいいし、にこっちでも、どっちでもいいけど…
…いちばんいてほしいのは…
『あなた、ひとりなの?』
と、暗い部屋で一人だったウチのところに
明るい笑顔の女の子がやってきた
…なんで?
このときは、まだ…あなたとは知り合ってなかったよね…?
うちの学校にもまだいなくて…だから…
知り合ってるはずがない人が、夢に出てくるなんて…
こんな夢、はじめて…
『ごめんね…でもね、あなたがすごく寂しそうだったから…』
女の子は少し悲しそうな顔をして
『だから一緒にいてあげたいなって、私、思ったの! 』
すぐに笑顔になって、ウチに手を差し伸べてくれた
あなたは、…私と一緒にいてくれるの?
『あなたが望むなら、私はずーっと一緒にいてあげるよ!』
ほんとに? ほんとにいてくれる?
『もちろんっ!』
その笑顔はとっても眩しくて、あたたかくて、優しくて
差し伸べてくれたその手を、私はぎゅっと握り返していた
えへへ…嬉しいな…ありがとう
…あ、あれ…えっと……
『どうしたの?』
…ねえ、あなたの名前、なんだっけ…
大切なことのはずなのに、思い出せなくて…
『仕方ないよ、まだ私たちは知り合ってないもん』
『だから教えてあげるから、すぐに私を呼んでね!』
『私の名前は…』
・・・
希「ぅ、ゎ…」
…また、夢
しかも今度は…はっきり覚えてるなんて…
うわぁ…なんて夢見てるんやろ…
自分で見たくせに、めっちゃ恥ずかしいし意味がわからへん…
唐突すぎるし適当やし…いや、夢ってそんなもんやけど…
顔が熱くなりそう…あ、いや…もう熱で充分熱いか…
『すぐに私を呼んでね!』
…私を、呼んでね…か
呼んだら、来てくれるんかな…なんて…ねえ…?
希「…ほのかちゃん」
「はーい」
返ってくるはずのない呼びかけに、返事があった
希「…えっ」
少しデジャヴを感じて、それから現実を見直す
ドアとも呼べない薄い板戸を隔てた向こう側…リビングの方からバタバタとこちらへ向かって来る足音
う、うそ…ほんとに?
名前を呼んだら、ほんとに来てくれた…?
え、えっ!?
えっと…な、なに? どういうこと?
普段なら絶対にこんなに焦ったりしないけど…
この日の私は熱で頭も回らず、そのうえ寝起きだったということを言い訳にさせてください
一人で戸惑っていると、板戸を勢いよく
太陽のような女の子が現れた。
私を安心させてくれる…優しい笑顔と共に
彼女は私のそばに座り、布団からはみ出た手を握ってくれる
穂乃果「おはよ、希ちゃん!」
希「…ぁ、えと…う、うん。おはよう…」
穂乃果「おまたせ希ちゃん。看病にきました!」
希「は、はい…」
戸惑いを隠せない
こんな狼狽した自分を見せるのは、とても嫌だ
だけどもう遅いから、諦めるしかないね…
と、心を決めたとき
穂乃果「えへ、すごい汗だね…拭いてあげるね」
やっぱ無理
まって、それはダメ!
希「ちょっ…ちょっと待って…」
穂乃果「?」
希「穂乃果ちゃん…いつから来てたの?」
穂乃果「学校が終わって、練習も早退して来ちゃいました! だから、三十分前の五時くらいかな」
希「そ、そうなんだ…」
えっと…お母さんが来てくれて、おうどんさん食べて寝たのが一時くらい…
希「そっか、けっこう寝てたんだね…」
穂乃果「うん。だから汗びっしょりだだよ。…替えのパジャマ、どこ?」
希「…タンスの、二段目…」
穂乃果「はーい」
すると穂乃果ちゃんはごそごそとタンスを探って
適当なパジャマを取り出して、ウチのそばに置いてくれた
穂乃果「タオル蒸してくるから、服脱いどいてね」
希「う、うん…」
脱いどいてって…うん、脱がないと拭けないもんね…
もそもそとパジャマの上着を脱いで
下着も外して横に置いて、胸は腕で隠します
あとは穂乃果ちゃんを待つのみ
希「…なんか、すごい恥ずかしいこと平然としてるよね…」
…まあいいや
頭もぼやけてよく分かんないし
今日くらい…穂乃果ちゃんにぜんぶ委ねてもいいよね…
・・・
背中を拭いてもらい
頼んでもないのに胸も拭かれ
お腹あたりまで綺麗に拭いてくださいました
穂乃果「…はい、これでおしまい」
希「ぁ…あ、ありが、と…///」
穂乃果「ぅう…て、照れないでよぉ! 私まで恥ずかしいじゃん…!」
希「だって…あんなところまで拭くなんて思わないもん…」
背中だけやと思ってたのに…
うぅ…まだ穂乃果ちゃんの視線が突き刺さる…
希「あんまり見んといてや…」
穂乃果「だ、だってぇ…///」
希「あーもう、思い出ししちゃダメー! ッげほ、けほっ…」
穂乃果「わ、わかった! わかったから、早く布団に入って!」
希「むぅ…ほんとに忘れてよ?」
穂乃果「もちろんだよ」
希「…思い出したら、許さないんだからね!」
穂乃果「…」
希「…穂乃果ちゃん?」
穂乃果「あーんもう! 希ちゃんかわいい!」
希「ちょっと!?」
穂乃果「標準語の希ちゃんかわいい! 持って帰りたいよー!」
気づかんかった…そっか、さっきから標準語になってたんだ…
…いや、そんな話じゃなくて
希「か、風邪うつっちゃうから! はなして…!」
穂乃果「やだやだ〜!」
希「こ、こらぁっ…ほ、穂乃果ちゃん…!」
穂乃果「えへへ、希ちゃ〜ん」
こっちは怒ってるというのに…
穂乃果ちゃんは懲りずにむぎゅーって抱きついてくる
いつもなら可愛い可愛い妹が抱きついてくれるんだから、私も幸せいっぱいで頭を撫でてあげるんだけど…
今日ばかりはそんな気力もない…
穂乃果「そっか、そうだよね…ごめんね…」
希「ぁ、いや…いいけど」
穂乃果「じゃあ、また汗かいたら拭いてあげるから」
希「どこでそんな話になったん…」
穂乃果「今度はズボンの中も…」
希「そこまでされたらお嫁に行けなくなるやろ?!」
穂乃果「じゃあうちに来ればいいよ!」
希「なっ…///」
穂乃果「だから私に任せて! うっひっひっひ〜」
あんな恥ずかしいことを…またっ…!?
で、でもそんなことを簡単に言っちゃう穂乃果ちゃんなら…任せてもいいかな…
いやいやいやいや!
希「いいわけないやろ!!」
穂乃果「ちぇー…」
本気じゃなかったらしく、すぐ身をひいてくれました
…ちょっと残念だけど
穂乃果「ん? やっぱり拭いてほしかった?」
希「そっちじゃない!」
穂乃果「??」
希「…もういいです」
希「ちょっと、しばらくぎゅってしてて」
穂乃果「…うん、いいよ」
私が穂乃果ちゃんに身体を傾けると
穂乃果ちゃんは優しく抱きしめてくれる
やっと求めてたものが手に入った…そんな気分だった
風邪のときは人肌が恋しくなるのだよ、うんうん
…特に穂乃果ちゃんくらいのあたたかさがね…ふふっ
あぁ…あったかい…
おかげで、ちょっと元気になれたかも…
と、しばらくぎゅーってしてもらって
希「ありがと」
穂乃果ちゃんから離れた
抱きしめてもらったおかげで余裕も出てきた気がするし
いつもの口調にも戻ったしね
穂乃果「…落ち着いた?」
希「そもそも誰のせいやと…」
穂乃果「えへへ、ごめんね…希ちゃんの看病が出来るんだって思うと、なんだか嬉しくて」
希「そうなん?」
穂乃果「だって、熱で寝込んでるときって寂しいもんね。しかも一緒にいてあげたくても、看病する人以外はダメって言われちゃうし」
穂乃果「…だから、私が看病するいまは、ずっと一緒にいられるでしょ?」
希「穂乃果ちゃん…」
とても優しくてやわらかな、その笑顔
文字通り夢にまで見た…それが、いま目の前にある
手を伸ばせば届く距離
希「…」
自然と手が伸びていた
空を掴むように、穂乃果ちゃんを求めて伸ばす
その手は穂乃果ちゃんに取られて
穂乃果「どうしたの?」
ウチの手を頬に当てて、にこりと微笑んでくれた
…あの夢って、ほんとなんかな…?
ウチが望むなら、ずっと…
希「ね、穂乃果ちゃん」
穂乃果「ん?」
希「ウチが治るまで…一緒にいてくれる?」
それは、自分の中では、ちょっとだけ踏み込んだ質問
ある意味、さっき見た夢の確認のようなもの
だけどウチの本心からの望み
言ってたよね…ウチが望むなら、ずっと一緒にいてくれるって…
穂乃果「うん! もちろんずっと一緒だよ」
希「…ほん、と?」
それが嬉しくて
穂乃果「の、のぞみちゃん…!?」
どうしてだろう…なんだか、涙がでてきちゃった…
希「ごめ…ごめんね…」
穂乃果「希ちゃん…」
やっぱり一人暮らしは嫌だ
寂しいし、不安だし
穂乃果「…大丈夫、私がずっと一緒だよ」
希「うん、うん…ありがとう、ありがとう穂乃果ちゃん…」
でも、この子がいてくれるなら
いままでの寂しさも不安も全部拭ってくれるなら
…こんな生活も、悪くないかもね
今日はここまで
ありがとうございました
乙ですー
今日もいいもの読ませてもらいました
・・・。
希ちゃんが眠って、しばらくして
穂乃果「今日は希ちゃんちに泊まるね」
ほのママ『はいよ。食べるものある?』
穂乃果「えっと…冷蔵庫にお米と梅干しがあったから、お粥くらいなら出来るよ」
ほのママ『そうじゃなくて、あんたの食べるものよ』
穂乃果「ああ、さっき来るときコンビニでパン買ってきたから…」
ほのママ『ったく…看病する側もちゃんと食べるないと』
穂乃果「えへへ…ごめんなさい」
ほのママ『希ちゃんは?』
穂乃果「今は寝てるよ。さっきまで起きてたけど」
ほのママ『わかったわ。ちゃんと看病してあげなさいよ?』
穂乃果「分かってる…じゃあね、また」pi!
私がここに来たのが五時くらい
そのときまでお母さんが看てくれてたから、希ちゃんも寂しくはなかったと思うんだけど…
…でも、さっき泣いてた
それに…目が覚めたとき、私の名前…呼んだよね?
…希ちゃん…やっぱり寂しかったんだよね?
お母さんが看てくれてたとか、そんなこと関係なくて
ずっと誰かが看ていてあげなくちゃいけなかったんだよ
目が覚めて、部屋に誰もいなかったら不安だもん…
穂乃果「…よし、今日はとことん希ちゃんの看病だ!」
まずは冷えピタの交換だよね!
さっき汗拭いてあげたとき、もうスカスカになってたし
というわけで替えの冷えピタと、蒸したタオルを手に希ちゃんのそばへ
希「はぁ、はあ…」
やっぱり息苦しいよね…
さっき拭いたのに、もうすごい汗…
とにかく拭いてあげなくちゃ!
それから冷えピタの交換だ!
穂乃果「よいしょっと」
まずは顔と首
熱で上気したほっぺたが色っぽく見えて、ちょっぴりドキッとしちゃった
けど、無心を心掛けて汗を拭きます
ほっぺたとおでこ、髪の生え際を優しく拭いて
首もうなじの辺りから
希「ん、はぁ…ぁ…」
拭き終わると、汗が気持ち悪かったのかな…少しだけ表情が安らいだような気がしました
次は布団を少しだけはがして、パジャマの胸元をはだけさせる
希「はぁ…はぁ…」
荒い呼吸に合わせて上下する胸
そこを伝う汗を、蒸しタオルで優しく拭いてあげる
ブラは蒸れるから、さっき拭いたときに外してから付けてないみたい
さ、さすがに看病って言っても、照れるよね…
…いや、照れちゃだめだよ穂乃果!
鎖骨から胸にかけてを拭き終わると、最後に脇腹まで綺麗にしておしまい
…はあ、やっと終わった
次はえっと、冷えピタだね
ラベルを剥がして、そっと希ちゃんのおでこに…ぺたり
希「ん…」
ミッションコンプリート!
…ふう
穂乃果「希ちゃん…」
希「んんっ…」
希ちゃんの頭を撫でると、小さく唸る希ちゃん
撫でられるの嫌だったのかな…ごめんね
穂乃果「早く元気になってね…」
・・・
穂乃果「はい、あーん」
希「あーん…んふ、おいしい…」
穂乃果「ほんと? よかった〜」
夜の八時ごろ
さすがに寝過ぎて疲れちゃったみたいで、希ちゃんも目を覚ましていました
時間も時間なので、夜ごはんです
希「穂乃果ちゃん…お粥作れたんやね」
穂乃果「お母さんに電話で聞きながらだけどね…」
希「ん…ふふん。おいしかったよ、穂乃果ちゃんのお粥。ごちそうさま!」
穂乃果「えへ、ありがとう」
初めて作ってあげた手料理を褒められるのって、嬉しいんだね、えへへ
それにぜんぶ食べてくれたし
希「おなかへってたし、美味しかったんやもん」
とてもいい食べっぷりでした…ありがとうございます
これだったら、すぐにでも治るね!
穂乃果「次はお薬だね」
希「うん」
ささっとお鍋を片付けて
コップにお水と、お薬を持ってきました
私、粉薬ニガテなんだよなぁ…
希「ウチは両方いけるけど…」
穂乃果「すごいなぁ」
感嘆する私の前で、希ちゃんは簡単に粉薬を飲んでみせました
さすがお姉ちゃん
希「お薬ひとつで、お姉ちゃんは関係ないやん…」
穂乃果「あはは、それもそっか。ふふ、希ちゃんは強いね」
希「強いってなによー」
穂乃果「お薬も飲めて、一人暮らしもできて、風邪ひいたことだって滅多にないじゃん!」
穂乃果「もしかして、熱になるの初めてなんじゃない?」
なんてちょっと冗談を言ってたら
希「ううん…そんなことないよ」
希ちゃんは、また寂しそうな表情で私にもたれかかってきました
穂乃果「?」
そしてゆっくり、語り始めました
希「ウチね…小学校のとき、一度だけ熱で寝込んだことがあるん」
それは、希ちゃんがまだ小さかった頃のおはなし
その頃から希ちゃんのご両親は共働きで、おうちに帰っても夜まで一人ということがよくあったの
だから熱で寝込んでしまうと、ひとりぼっちになってしまうんだ
いくら希ちゃんでも、まだ小さかったころだもんね
だからひとりぼっちにさせるわけにはいかないんだ…
希「そのときはお母さんが会社を休むって言ってくれたんやけど…」
希「会社から電話がかかってきて」
穂乃果「…」
イメージしやすい話だな、と思ってしまいました
私の家も両親で店を切り盛りしてるわけだから…
ずっと張り付いて看てくれるわけじゃなかった
それが寂しくて、ちょっとわがまま言って困らせたこともあったっけ…
でも、希ちゃんは私よりも寂しかったはずだよね…
私は希ちゃんの心を慮って、ぎゅっと肩を抱きしめてあげました
希「…お昼に見たのは、そこでおしまい」
穂乃果「そうだったんだ…」
一区切りをつけた希ちゃんはやっぱり寂しそうで
だけど次の話に変わったとたん、少し嬉しそうに表情を改めました
希「でね、その先が思い出せなくて…ずっとなんやったかなーって思ってたん」
希「…そしたら、さっき…その夢の続きが見れたの」
目を細め、夢を思い出すように、ゆっくりと言葉をつむぐ
穂乃果「どんな続きだったの?」
希「えっとね…さっきは、仕事場から電話があったところまでだったよね」
希「だから…おかあさんは行かなくちゃいけない」
希「まだお仕事に行ってくるって言われてなかったけど、その瞬間に私は悟ったんよ」
希「おかあさんが仕事に行ってしまうんやって…いやだ、って」
希「でも風邪をひいたのはウチが悪いから、そのせいでおかあさんに迷惑かけるのはダメだって思って…」
希「寂しかったけど、いやだったけど、いってらっしゃい…って、言おうとしたん」
希「そうしたらね…おかあさんが…電話にむかって、叫んだんよ」
『娘を一人で置いて行けるわけがありません!!』
希「…すごく嬉しかった。同時に、ごめんなさいって思ったよ…だって、ウチのせいでお仕事休まないといけなくなったんやからね」
希「おかあさん…その日はずーっとウチのそばにいてくれた」
希「ずっと手を握って、看病してくれたんよ」
希「…でも、もう迷惑かけたらダメだって思って」
希「その日から、ウチは熱出さないようにって頑張った。もう迷惑かけたくなかったから…ちょっと微熱でも嘘ついて学校行って、ね」
はあ、と熱い息を吐いて希ちゃんはおはなしを締めくくりました
私は抱きしめたまま希ちゃんの手に指を絡めて、
穂乃果「…やっぱり強かったんだね、希ちゃんは」
希「ううん…強くなんかないよ。ウチはいまも昔も弱いまま」
その表情はとても儚げで
触れれば壊れそうでさえありました
希「…今朝、電話したやん」
穂乃果「うん」
希「あのとき、来なくていいって言っちゃったけど…ほんとは、すごく来てほしかった」
穂乃果「え…?」
希「声聴いたらね…穂乃果ちゃんに、会いたくなってしまったん」
少し恥ずかしそうに言い終えた希ちゃんは、そのまま私の胸に顔をうずめてしまいました
希ちゃんの頭を撫でてあげながら、私は自然と笑っている自分に気がつきました
だって…嬉しいじゃない?
私をこんなにも必要としてくれる人がいることが
絵里ちゃんやにこちゃんや、私より前から知り合ってた人たちじゃなくて
私を必要としてくれてる
いままで私が希ちゃんに甘えたことはあったけど、希ちゃんが私に甘えてくれたことはなかった
これが初めて、だよね…?
穂乃果「…」
私はなにも言わず、希ちゃんの頭を撫でてあげると
希ちゃんは腕を回して、私を抱きしめてくる
私に会いたかったって…言ったよね
もしかして、最初に目が覚めたとき、私を呼んだのって…
その意味を想像して、私はたまらなく恥ずかしくなってしまいました
顔が熱くなってきたよ…
すごく、寂しかったんだよね…?
穂乃果「ねえ、希ちゃん…」
希「ん…?」
私が呼びかけると
希ちゃんは少し瞼の腫れた顔を持ち上げて、私と見つめ合うかたちになりました
穂乃果「もう寂しくないように、おまじないをかけてあげる」
希「おまじない?」
穂乃果「うん。だから、目をつむってくれるかな…?」
希「な、なにするん…?」
穂乃果「いいからいいから!」
希「う、うん」
私は、少し怯えた様子を見せる希ちゃんに無理やり目をつむらせました
穂乃果「…ごくり」
あとはおまじないをかけるだけ
…なのに、なかなか身体が言うことを聞いてくれない
胸が高鳴って、動こうとしてくれない
だって…誰だって恥ずかしいよ…
希「ん…まだ…?」
しびれを切らしたように希ちゃんが言う
…仕方ない、覚悟を決めるんだ
私が顔を固定するように手を添えると、希ちゃんは一瞬だけびくっと身体を震わせた
穂乃果「…」
静かに息を吐いて、止める
そして
ゆっくりと……
……………ちゅ
希「……ぇ…」
希「…は、え…///」
穂乃果「…ぇ、えへへへ……しちゃった///」
希「ちょ…ぅ、わぁぁぁぁ…///」
顔を真っ赤にして、両手で覆う希ちゃん
それを見てると、私まで恥ずかしくなってきちゃう
穂乃果「お、おまじないだよ! おまじないだからね!」
希「う、うん…///」
穂乃果「…い、いやだった…?」
希「…そ、そりゃ…嫌やないけど…」
穂乃果「けど…?」
希「…ほっぺた…///」
ぐうっ…ほ、ほっぺた以外にないじゃん! お、おまじないなんだし!
おでこは冷えピタ貼ってるし、そんな…その…く、口なんて…もっとダメじゃん!
希「…ぶぅ」
穂乃果「な、なにぃ…」
希「……なんでもないっ」
顔を真っ赤にしたまま、希ちゃんは布団に潜ってしまいました
ぅ…や、やめとけばよかったかな…
…ごめんね
希「な、なんで謝るんよ…ぃゃ、あの…嫌じゃ、ないし…」
…ほんと?
希「ほ、ほんとだよ! む…むしろ…その…嬉しかった、し…ぁぁぁあああもう忘れて! 無し、いまの無し!」
えへ、えへへ…そっかぁ、えへへへ…
希「に、にやにやせんといてー!」
穂乃果「だってぇ…えへへへ…」
希「も、もうダメ…しばらく顔見られへん…」
穂乃果「そ、それは……私も」
…気まずい
この空気は私が作ったんだから、自業自得なんだけど…
希「…」
希ちゃんも顔真っ赤であっち向いちゃってるしぃ…
…とりあえずリビングに戻ろう
私もごはん食べないといけないし
穂乃果「じゃあ、私…リビングにいるからね。何かあったらすぐに呼んでね」
と言い残して立ち上がろうとしたら…
ぎゅぅっ…と、希ちゃんが私の手を掴んだのです
ぐいっと引っ張っても、離してくれません
すると、希ちゃんは消え入りそうな声で…
希「…一人にしないで」
穂乃果「希ちゃん…」
希「一緒にいてくれるんやなかったん?」
穂乃果「…わかった」
それからずっと…希ちゃんが眠るまで、私は希ちゃんの手を握っていてあげました
特に何も話すことはなかったけど、不思議とさっきみたいな気まずさはなかったよ
ぎゅーっと手を握って、たまに頭を撫でてあげる
希ちゃんは嬉しそうに微笑んで、私も笑顔を返すの
えへ…風邪で苦しい希ちゃんの前で思うことじゃないかもしれないけど
……えへ、幸せ♪
おまじないの効果も…あったのかな?
私の方に、だけど
…ふふっ
今度は私が寝込んじゃおっかな〜
それでね、希ちゃんに…おまじないやってもらうの
…ふふふっ
二人ともかわいすぎる
・・・
…ピピッ
希「36.4℃…よかった、治った…」
穂乃果「ほんとだ…よかったね、希ちゃん!」
希「うん! 穂乃果ちゃんとお母さんのおかげやね」
穂乃果「そうかな…えへへ」
熱が下がって体調も快復したし、もう大学行ってもいいかな?
…いや、やめとこ
まだフラフラするし…大事をとって、今日もお休みしようかな
穂乃果「うんうん、その方がいいよ!」
希「ありがとう穂乃果ちゃん」
穂乃果「いいのいいの、希ちゃんが元気になってくれて私も嬉しいもん!」
希「ふふっ…穂乃果ちゃんのおまじないが効いたんかもね?」
穂乃果「えっ…ぁ、あはは…///」
自分で言ったけど…恥ずかしくなってきちゃった
ほっぺただったけど…ちゅー、されちゃったんやもん…
乃果「…ね、ねえ…希ちゃん?」
不意に尋ねられて、ちょっとドキッとしてしまったけど…すぐに取り繕って聞き返す
希「なあに?」
穂乃果「あ、あの…あのね?」
顔を赤くしてもじもじする穂乃果ちゃん
せわしなく視線を動かし、ちらちらとウチを見たり逸らしたり
えっと、その…と口をもごもごさせて
穂乃果「…わ、わたしの…くちびる、やわらかかった…?」
聞いてきたのは、予想外のこと
予想外で、いっきに全身の体温が上がるのを感じた
希「なっ…!?」
穂乃果「ねえ…どうなの?」
ずいっと身体をこちらへ寄せる穂乃果ちゃん
ウチの視線はそのくちびるに釘付けになってしまい、離せそうもない
希「お、おぼえてない…かなぁ…」
かろうじて絞り出した答えが、それだった
すると穂乃果ちゃんは
穂乃果「…じゃあ、もう一度…する?」
頬は赤く染まり、瞳は心なしか潤んでいる
いまの穂乃果ちゃんの表情は、とても…そう、とても蠱惑的だった
希「ぁ…ぁ、ぁぅ…」
声が出せない
何か答えないとと頭では思うのに
身体は動いてくれないし、何も言わせてはくれない
穂乃果「今度は…どこにしてほしい?」
すでに吐息のかかる距離
穂乃果ちゃんの瞳に映るウチの顔は、何かを期待するような表情をしていた
穂乃果「じゃあ、今度はよく分かるように…」
穂乃果「キス、しよっか」
今日はここまで
ありがとうございました
素晴らしい!
タマリマセンワー
素晴らしいの一言に尽きる
乙!!
うわあああ
ほののぞの可能性が膨れ上がっていく……
ありがとう!ありがとう!!
素晴らしいわー!乙!
乙
素晴らしい
相変わらず良いね
応援してます
穂乃果「希ちゃん、キスしよう?」
穂乃果「私、希ちゃんとキスしたい」
穂乃果「希ちゃんのおいしそうなくちびる…ほしいな」
穂乃果「ね…しよ?」
穂乃果ちゃんの甘い声が耳朶をうつ
その声は不思議な魔力に満ちていて…
ウチの心と身体を完全に支配してしまった
だからこれはウチのせいじゃない
穂乃果ちゃんが悪いんだ
そんな声でウチを誘った…穂乃果ちゃんが悪いんやから
だから…蜜の如く甘いその言葉を受け入れてもいいよね
穂乃果「キスしていい?」
希「…うん」
希「…したい、ウチも…穂乃果ちゃんとキスしたい…」
小さく頷くと、穂乃果ちゃんは嬉しそうに笑った
穂乃果「ふふっ…じゃあ、いくよ」
宣言されて、ウチはきゅっと目を閉じる
数秒の間を置いて
穂乃果ちゃんのくちびるが
ウチの…それに、そっと重ねられる
穂乃果「んんっ…」
希「ぁん…」
やわらかい感触が伝わると同時に、とても心地よい感覚が脳内を支配した
すごくふわふわしたものが頭を覆っている
気持ちよくて、痺れるような感じ
癖になってしまいそうなほどに心地よい…今まで感じたこともない感覚だった
穂乃果「んっ…んふぅ、んっ…」
希「はぁ、はぁ…んぁ…んんっ…」
穂乃果ちゃんは、ウチのくちびるに吸い付いて離れない
ウチもそのやわらかくて気持ちいいくちびるを求めて、穂乃果ちゃんを抱きしめる
穂乃果「んはっ…はあ、はぁ…」
希「ぁ…」
力強く抱きしめ過ぎてしまったからか…穂乃果ちゃんのくちびるは、熱い息を吐いて離れてしまった
少し寂しそうに声が漏れる
それが自分の声だと気づいて、ウチは自分が抑えられなくなってしまった
まだ、まだほしいよ…
…もういちど、したい
希「もっと…いい…?」
穂乃果「…うん、私ももっとしたい」
穂乃果ちゃんは頷いて、またくちびるを重ねてくれた
今度は少し、踏み込んだキス
重ねるだけじゃ物足りないから…自分から求めにいってしまう
穂乃果ちゃんのくちびるに弱く噛み付いたり、舌で舐めてみたり
すると穂乃果ちゃんも同じことをやり返してくる
そのうち舌同士が絡み合って…
とってもいやらしい音をたてはじめた
穂乃果「は、ちゅ…ん、ちゅっ…」
希「ん…ちゅる…ぢゅっ…」
あれ…なんでこんなことになってるんやろ…
まあいいか…だって、こんなにも気持ちいいんやもん
穂乃果「ぷはぁ…えへ、希ちゃんのキス…とっても気持ちいいね…」
とろんとした表情の穂乃果ちゃんのくちびるは
ウチの唾液でぬらぬらと淫靡な輝きを放っていて…
それがまるで、餌を求める雛のように
ウチのくちびるを待ってるかのように見えてしまう
希「穂乃果ちゃんも、すごく気持ちいいよ…」
穂乃果「えへ…嬉しいな」
頬を染めて照れる穂乃果ちゃんがとっても可愛くて…
またくちびるを奪っちゃう
穂乃果「んん、ふっ…ちゅぅ…」
少し苦しそうに息を吐く穂乃果ちゃん
でも舌は、もっとほしいって叫ぶようにうねってる
舌同士を深く絡み合わせると、くちゅくちゅって…とってもえっちな音が鳴るん
その音がまた、なんでか分からないけど…キスの気持ち良さが増すんよ
穂乃果「ちゅっ…くちゅ、ちゅ…」
希「れろ、ちゅ…ぢゅる」
気持ちよくて、なんどもなんども貪ってしまう
穂乃果ちゃんのくちびるも、舌も、口も、何もかもを味わいたくなっちゃう
あまくて、きもちよくて…離したくない
歯と歯茎のあいだを、舌先でとんとんってマッサージしてあげると
穂乃果ちゃんも負けじと舌先が口内に侵入してくる
穂乃果ちゃんの口は、ウチの舌に犯され尽くして
ウチの口は穂乃果ちゃんの舌に犯され尽くした
もうウチも穂乃果ちゃんも、表情は弛緩し切っていて…唾液がぽたぽたと二人の間に銀の糸を引く
唾液を交換して、吐息も交換して、互いの全てを味わい尽くそうと舌が蠢き口腔を舐る
うっすら涙を浮かべた穂乃果ちゃんの顔が目に入ると、ウチはまた…たまらなく愛おしく感じてしまって
もう我慢なんてしたくなくて、昨日感じた寂しさを埋めるように穂乃果ちゃんを求め続けたまだ、まだ足りない
何度吸い付くしても、まだまだ足りない
もっと欲しい
もっと穂乃果ちゃんを感じたい…
じゅぷ、くちゅ…ちゅ、んっ…んぁ…ちゅぱっ…こく、んっ…ごく、ぢゅる……
くちびるを…舌を重ね始めて、どれくらい時間が経っただろう
それほど長く長くキスしてる
この気持ちいいキスは、すべて魔力のような穂乃果ちゃんの声のせい
ウチの全身を支配して勝手に動かしたんも、穂乃果ちゃんの…ううん、ちがう
これはウチが望んだことなん
ウチが穂乃果ちゃんとしたかったことなんよ
だって…
ピピピ
私は
ピ ピ ピ ピ
穂乃果ちゃんのことが……
ピピピピピピピピピピ
-----
----
--
ピピピピピピピピ
希「んぁっ…!?」
ピピピピピピピピピピピピ
希「…」
けたたましく鳴り響く、アラーム
希「…」
腹立つほどにやかましい…
希「…」
ピピピピピピ
希「…」
ピピピピピピ
希「…うるさいわ!」
ぐっと握りこぶしをつくって、思いっきりハンマーのように目覚まし時計にむかって振り下ろし…
がしゃっ! と、少し嫌な音をたててアラームは止まった
希「………」
…おはようございます
東條希です……はい
……………また夢です
しかも…しかもあんな、あんな夢を……
『キス、しよっか』
脳内にフラッシュバックする、穂乃果ちゃんのあの表情
なんども貪ってしまった…あのくちびる
感触までイメージできてしまうなんて…
あんなリアルな夢…なんで見てしまったんやろ……
………でも
…夢でよかった
夢じゃなかったら…たぶん…
もう後戻りは出来なかったはずやから…
穂乃果「すぅ…すぅ…」
床に大の字で眠る穂乃果ちゃん
その手にはタオルが握られている
穂乃果ちゃん…夜もずっと汗拭いたりしてくれてたんやね
希「ありがとう」
お礼を言いながら頭を撫でてあげると
穂乃果「んん…」
と口をもごもごさせてこちらを向いた
希「っぁ…!」
その瞬間、目がくちびるに行ってしまい…心臓が高鳴るのを感じた
希「…ほ、のかちゃん……」
あんな夢を見たら…意識、してまうよ…
夢じゃない…現実で……
…あの感覚を……欲してしまう…
…もう、なんなんよ…
心の中にもやもやした感情がある
まるでそれはかいぶつのよう
そうだ…しょうどうとでもよぼうか
しょうどうというなまえのかいぶつは
わたしのこころにくいついてはなれない
かいぶつは、ただひとつのことをさけびつづけている
ほのかちゃんがほしい
希「…そんなこと、出来るわけがないやろ…」
大袈裟かもしれないけれど…
衝動のように心を内側から突き上げてくる感情は…本物だ
その名前をわかっていても
ウチは知らないふりしかできなかった
夢で気づいた感情なんだから…それも全て………夢なんよ
それが夢に見るほどにまで膨れ上がってしまった感情だとしても
そう言い聞かせるしか、穂乃果ちゃんのそばにいられない…
この感情に付き従ってしまえば
ウチはもう、穂乃果ちゃんのそばにいられないかもしれない
誰が決めたわけじゃないのは分かってる
ただ自分自身が許せないだけ
この気持ちを認めてしまえば、ウチは穂乃果ちゃんと一緒にいる資格なんて…なくなってしまう
そう考えてしまって、仕方がなかった
・・・
朝の七時
まだ穂乃果ちゃんは寝てるので、適当にパンとお薬を飲み込んでシャワーを浴びることに
一日分の汗を流してすっきり
まだ頭はフラフラするけど、もう明日には大学行けるかな
希「ふぅ…っ!」
ぐいっと背を伸ばし、固まった身体をほぐす
軽いストレッチを終える頃に、ケータイが着信音を発した
希「ん…」
発信者は…ウチのおかあさん
内心ドキッとしながら、その電話を取った
希「…はい」
のぞママ『ああ…希? 元気そうでよかったわ…』
のぞママ『穂乃果ちゃんのお母さんから電話があって、心配してたのよ…』
希「そうだったんだ…」
希「穂乃果ちゃんたちが看病してくれたから、もう大丈夫。今日は大事をとって休むけどね」
のぞママ『そう? …本当に無理はしないでね、お願いだから』
希「もう…わかってるよ」
のぞママ『…本当に無理はしないでね。おかあさん、心配なんだから…』
希「ありがと」
のぞママ『…うん』
希「…ね、来週のゴールデンウィークは来れるの?」
のぞママ『バッチリ! ちゃんと有給申請したし、許可でたから! お父さんも一緒に会いに行けるから…心配しないで』
希「うん…楽しみにしてるね」
のぞママ『ふふっ…どこか遊びに行きましょ? 穂乃果ちゃんも誘って!』
希「ん…うん」
のぞママ『どこがいいかしら…動物園とか?』
希「あはは、もうそんな子供じゃないよ? …でもいいかもね、動物園。穂乃果ちゃんも喜びそう」
のぞママ『そう…ふふ、なら決まりね』
希「うん…そうやね」
>>284
希の最後のセリフ
希「うん…そうだね」
に訂正よろしくお願いします
のぞママ『じゃあもう無理せずゆっくりしておくこと、わかったわね? それじゃ』
希「ありがとうお母さん。…大好き」
のぞママ『…どうしたの?』
希「ううん…なんでも。言いたくなっただけ」
のぞママ『そ、そう…? じゃあまた…私も大好きよ、希』
希「…ふふっ」
希「お母さんになら簡単に言えるのになー……なんてね」
そんな自分に、少し嫌悪感を抱いた
やっぱりウチ…自分のこと、嫌いかもしれんね
…なんてね、ふふ
希「さて…」
ケータイをテーブルに置いて、ぐっと身体を伸ばすと
凝り固まった筋肉が少し痛みを訴えてきた
希「いたたた…ふぅ」
もう、考えないようにしよう
じゃないと…また、あの感情が出てきてしまう
…これからも普通のお姉ちゃんでおらんと
そうじゃないと、穂乃果ちゃんに嫌われてまうかもしれへん
だから私は…ウチは、いつものように
希「穂乃果ちゃん、そろそろ起きよ!」
穂乃果ちゃんを起こすことで、逃げ出そうとしたのです
おしまい
今日はここまで
ありがとうございました
またそのうち、お話が書けたらここで投下してきます
乙でした、相変わらず良いほののぞでした
乙
素晴らしいほののぞをありがとう
お疲れ様でした。
これは良いほののぞ。
おつ
sageミスすまん
乙
乙
これに限らずひとつのカプを定期的に供給してくれる人はほんとありがたい
やっぱりレズだな
いいやん
乙です!
いつ見てもここのほののぞは最高です!
この週末から、また更新していこうと思います
よろしくお願いいたします
おかえり
やったぜ
待ってる!
ありがとう!
また楽しみができた
待ってる
>>299
ただいま
11時過ぎから更新しますね
みなみけ
文体が変わります
読みにくい点等ございますでしょうが、どうかご了承ください
「あーもー!!」
目が冷めた瞬間に訪れたやり場のないモヤモヤした何かを、クッションと共に天井に力いっぱいぶつける。
まっすぐ天へ登ったクッションが、ぼふっと音を立てて天井に跳ね返り足元に落下した。
今度は枕に顔をうずめ、自分でも何かよく分からないことを叫ぶ。
そうしたってモヤモヤが晴れるわけじゃないのに、とにかく何かにあたらないとやっていられなかった。
それほどに心がぐちゃぐちゃになっていたのだ。
「…はあ…」
風邪をひいて、穂乃果ちゃんが看病してくれてから三日…ウチはまだ穂むらの仕事に復帰出来ていなかった。
昨日にはもう快復していたけど、穂むらには…まだ体調が優れないと言って休んだ。
穂乃果ちゃんがまた見に来ると言ってくれたけど、それも断った。
だって…穂むらに行けない理由が…穂乃果ちゃんに会いたくないから、なんやから。
大学には行ったけれど……えりちとにこっちには、変に思われたかもしれない。
あれから……穂乃果ちゃんへの思いに気づいてから、ウチはいつも通りの自分でいられなくなってしまっていた。
何かあれば穂乃果ちゃんのことを考えてしまうし、穂乃果ちゃんの話ばかりえりちたちに……いや、これは前からか。
えりちたちと話してても、穂乃果ちゃんの話題を避けようとしていた。
たぶん、それを二人は気づいている。前のウチと比べたらおかしいもん。穂乃果ちゃんを避けようとしてるなんて……
……違う。
本当は、避けたくなんかない。
会いたい……穂乃果ちゃんに、会いたい。
本当は会いたくて会いたくて仕方ないから、だからこんなことになってるんよ…
でも会ってしまえば…たぶん、ウチは自分の気持ちを抑えられない。
ウチが穂乃果ちゃんにこの気持ちを伝えたらどうなるだろう。
そんなん…分かりきったことや。
ウチなんかが……ね?
でも、会っちゃったら…我慢出来ないと思う。
伝えずにはいられなくて、きっと…
「…大学、行かんと…」
もう考えているだけで胸が苦しくなるから…断ち切るように呟いて、ウチはベッドから這い出た。
・・・
最寄り駅から大学までは、電車を使ってだいたい一時間くらい。
いつもその時間はイヤホンで耳を塞いで、適当な本を読みながら駅に着くのを待つん。
ゆっくりゆっくり、朝の時間を楽しみながら…今日も終わったらバイトやなーとか、レポートやりたくないなーとか、そんなことを考えながらの通学路。
ただ、今日と昨日の通学路は……なんだか色褪せて見えた。
今日も穂むらに行かない……それだけで身体の気力がまるで湧かないなんて、まるでひどい病気にでもかかったよう。
…本当にひどい、ひどい病気。
こんなときでさえあの子のことを考えてしまうくらいなんだから、相当なんやろうね。
イヤホンから流れてくるμ'sの音楽。
自分も歌った、仲間たちとの曲。
その中に聞こえる穂乃果ちゃんの声だけで…心がきゅっと痛くなる。
そう、これは病気。
治るようには思えない、じわじわと心を埋め尽くしていく病気。
だというのに…………嫌じゃない。
嫌なんかじゃない。
穂乃果ちゃんのことを考えている時間は、本当に幸せで……心が暖かくなるのだ。
嫌なわけがない。
だというのに……
だというのに、ウチはそれを拒絶しようとしている。
穂乃果ちゃんを思うことをやめようとしている。
その理由は簡単だ。
ウチが思いを伝えて、その結果に傷つくのが怖いのだ。
もし気持ちを伝えて、そうして…もう今までのような関係ではいられなくなってしまったら。
そんなことになるくらいなら…ウチは、もう……
それならいっそのこと、我慢してしまえばいい。
この思いを胸の内に閉じ込めてしまえばいい。
そうすれば……ウチも、穂乃果ちゃんも傷つかなくて済む。
希「…どうすれば…」
誰にも聞こえないように、口の中だけでつぶやく。
希「穂乃果ちゃんなら…どうする…?」
つぶやいたくちびる
こぼれるため息
…なんてね。
花陽ちゃんの曲が…こんな心に突き刺さるとは…思ってもみなかったよ。
・・・
大学の正門を通り、手入れの行き届いた深緑色の樹々で埋め尽くされた中庭を抜けて校舎のひとつへ入る。
大ホールの講義室があるこの校舎は、もう校舎というより講堂と表現した方が分かりやすいかもしれない。
そんな大ホールの真ん中の列で、見慣れた金髪の女性が眠たそうにあくびをしていた。
その女性はニヤニヤするウチを目に留めると、少し恥ずかしげに口元を抑えて小さく手を振ってきた。手を振り返してそちらへ行くと、ズルいことにカバンで占領していた横の席に座らせてくれた。
「おっきなあくびやったね」
「み、見てても言わないものでしょ…」
「あはは、あんまり大きかったもんやから」
「だったら尚更よ…」
開口一番に軽いジョークを交わし、改めて
「おはよう、えりち」
「ええ、おはよう。希」
えりちの顔を見て、ウチはなんだかホッとした。これで穂乃果ちゃんのことを考えなくて済む…そう思った。
もともとえりちには関係ない話やし、こうやって親友と会話してるだけで気も紛れるというものやしね。
きっと今日も休んだら、またひとりでずっと悩んでたんだろうなぁ…と先ほどまでの自分を過去に追いやり、ウチはえりちとの会話に花を咲かせる。
「それでね、亜里沙が寝ながら言ったの。『お姉ちゃん…コーヒーとおしるこってなにが違うの?』って。しかもはっきりした口調でよ?」
久しぶりに聞く亜里沙ちゃんのお話。
いつもはウチが穂乃果ちゃんの話ばかりするから、あんまりえりちから話してもらうことも少なかったなぁ…なんて考えながら。
「あはは、寝言やろ? 寝言の中でまでなんて…ふふふ、亜里沙ちゃんも不思議な子やね」
「それで私も慌てちゃってとっさに返事しちゃった。『えっ、なに…どうしたの?』って」
「え? 寝言に返事しちゃったん?」
「ダメなの?」
「えりち、知らんの? 寝言に返事したら、寝言を言った人の寿命が縮むんよ……?」
「ぇ…」
とたんにえりちの顔が青ざめていった。さーって音が聞こえるような気がするほど、見る見るうちに。
「わ、わたし…亜里沙の寝言によく返事してる…」
「あ…あらら…」
それはそれは……またありがちな。
「どうしよう…」
そういえばえりちって、怖い話とか苦手やったね…うん、ごめんなえりち
「だ、大丈夫よね!? 亜里沙…早死になんてしないわよね!」
「しないしない、迷信やから安心して!」
「よ…よかったわ…」
ウチの言葉にようやく安心したのか、えりちは疲れ気味の表情でため息を吐いた。
「大丈夫?」
「え、ええ…」
見るからに大丈夫そうではないけれど、あまり言うのもよくないかと思い、ウチはそこで言葉を止めた。
「そ…それで、昨日は聞けなかったんだけど……穂乃果の看病ぶりはどうだったの? 風邪のとき、来てくれたんでしょ?」
どくん…と、心臓が跳ねるのが分かった。
えりちはに特別な意味を含んだわけではなく、ただ話を変えたくて出しただけの話題。
でもウチにとってはその限りでは……ない。
「どうもないよ? それより…」
だからその話を無理やり変えてしまった。
あからさまなやり方に訝しむえりちの視線から、苦笑しながら目線をそらす。
それと同時にチャイムがなり、講義室の前のドアから講師が入ってきて、授業開始の音頭をとった。
・・・
「あ」
「あ、にこっち」
「こっちよー」
午前の授業が終わり、ウチとえりちがカフェテリアにてボックス席を取った直後のこと。
これまた見慣れたツインテールがぴょんぴょこ跳ねながら人混みを歩いているのに気づいた。同じタイミングで当人も気づいたみたいで、ウチらに小さく手を振りながらこちらへ向かってきた。
「こっちよ、にこっち」
「ん、お待たせ。ちゃんと今日も来たわね」
「おかげさまで」
「ならいいけど」
ぶっきらぼうに言うにこっちやけど、本当はそれなりに心配してくれてたってことは、えりちが言っていたので知っている。
わざわざそれを本人に言うようなこともしないけど。
「…」
「どしたん、にこっち」
するとにこっちはジトーッとウチのことを睨むように見つめてきた。ちょっと引き気味に問いかけると、
「あんた…やっぱりまだ万全じゃないんじゃないの? 昨日と変わらないくらいに見えるんだけど」
「…え?」
いきなり言われて、少し返事に窮した。万全じゃないと言えば…快復したばかりなのだからその通り。まだなんとなく気だるさも残っている。
でも、なんで…?
「あ…いや、その…」
「大丈夫やから…心配してくれてありがとうな、にこっち」
きっと本当のところは違う。
にこっちの言いたいことは、ウチの内面の話。
……よく見とるね、にこっち。
「希…無理しないでよ?」
「うん、えりちもありがと」
優しい、ふたりの友達。
本当に優しくて、そんなふたりがウチは大好き。
「な、なによいきなり…気持ち悪いわね」
「やーん! せっかくの告白やんかー」
「平気な顔で大好きとか言うな!」
「えりちぃ…にこっちが冷たい…」
「誰のせいよ!」
「あ、あはは…落ち着いて、ふたりとも…」
ふたりになら、簡単に言えてしまうんよね…だって、大好きの意味が違うもん。
…本当に伝えたい人には…当然言えない。言いたくても、怖くて怖くて…会うことすら出来ない。
ああ…また考えてるわ、ウチ。いい加減にしっかりしないとあかんね…
「ねえ、希」
「ん…なに?」
「今日、バイトは?」
「ああ…えっと、休み」
「じゃあ遊びに行くわよ。どうせふたりも次のコマで終わりでしょ?」
「いいわねそれ! いままで三人だけで遊ぶことなんてなかったし」
嬉しそうに無邪気に笑うえりちと、まるでお母さんみたいな微笑みのにこっち。
ふたりとも、ウチを元気付けようとしてくれてるんやね。
なにも話してなかったし、いつものウチのつもりやったのに…この二人には全て見透かされとるみたいやね。
「じゃあ、今日はたくさん遊ぼっか!」
今日くらい…いいやんな?
ぱーっと遊べば、気持ちに整理もつくやろうしね。
今日はここまで
ありがとうございました
おつおつ
乙
おつ!
・・・
授業が終わってすぐに近くの大きな公園までやってきたウチたち三人は、近所のホームセンターで買ったバトミントンやフリスビー、キャッチボールなんかをして遊んだ。
途中でにこっちがこけたり、えりちの投げたフリスビーが木の枝に引っかかったりして大変だったけど…
転んだにこっちをからかったり、どさくさに紛れてわしわししたり、やり返されたり。
フリスビーを知らなかったえりちを茶化したり、意味もなく抱きついてみたり、何故か追いかけっこになったり。
この三人で遊ぶことは新鮮で、本当に楽しかった。
息を切らすほど激しく遊びまわって、ようやく陽も傾き始めた頃…
ベンチに座って、近くのコンビニで買ったアイスを食べながら休憩することに。
「はあ…もう足がガクガクよ…」
「明日は筋肉痛やなぁ…あはは」
「ダンスレッスンはこんなものじゃなかったのに…しばらくやってないだけでこんなに体力も落ちるのね…」
口々にぼやきながら、アイスを食べる。
動き回ってる間はなにも考えなくて済んでいたから、いまはとっても清々しい気分。
ふたりには感謝してもしきれないなぁ…あはは。
「…それで」
えりちが話しかけてくる。
「穂乃果と何かあったの?」
ほんまに、ふたりには隠し事は出来へんね、ウチは…
なんでも見透かされちゃうね。
だからここで『何もないよ』なんて言おうものなら、ふざけんなーってにこっちに怒られちゃう。
本当、ふたりに問い詰められたら勝てないよ。
「…友達の話なんやけど」
だから、少し遠回しに…でもバレバレの方法で話すことにした。
バレバレやって分かってても、自分自身のこととして言うのは…怖いから。
「その子はね、とっても仲良しの友達がいるん。よく一緒に遊んだりご飯食べたりお風呂入ったり、まるで姉妹みたいに仲良しで…
…やけど、気づいたときには、その子は友達のことを姉妹以上の存在に感じ始めたん。
そしたらその子はもう、友達のことを考えずにはいられなくて…でも、思いを告げるなんて出来ないんやって。断られて、いまの関係を壊しちゃうのが怖いから。
そう思うと会うことさえ怖くて…会いたくて会いたくて仕方がないのに、怖くて会いにいけないんやって。
そのままじゃダメやから、気持ちを押し殺そうとしてる…みたいなんやけど、どう思う?」
どう思う、と言う話ではないけれど……こういうやり方しか出来ないから。
弱い自分が情けない。
「めんどくさい性格の友達ね」
にこっちの鋭い視線が、ウチの瞳を貫く。
「姉妹から…ねえ」
と、えりちも意味深な目線。
腕を組んでにこっちが唸り、真剣な顔でウチを見つめてくる。
「私はまだよく分かんないけど…文句だけ言わせてもらうわよ」
「…」
ウチは黙って頷く。
すぅ、とにこっちは息を吸って、一息に語り始めた。
「勝手に相手を思って、勝手に我慢して…それで相手のことを思ってるつもり?」
うわ……さっそくやね、にこっち…
「そりゃあ…生きてる以上、何かしら嫌なこととか我慢すべきこととか色々あるわよ。でも、何を我慢すべきかくらい、自分でも分かってるんじゃないの?
我慢して何かあるの? 我慢して辛い気持ちになるくらいならあたって砕けちゃいなさいよ。そうすれば目も覚めるでしょ」
「…にこ」
「ふん」
弾丸のように有無を言わせぬ物言いを咎めるえりちの声に、にこっちは鼻を鳴らして少し遠くに目線をやった。少し雑にアイスをかきこみ、こめかみあたりをおさえる。
「人を思うって、私は素敵なことだと思うわ」
対してえりちは優しい言葉。
「それは心から大切に思える人に出会えたってことでしょう? とっても素敵じゃない!」
心から大切に思える人…その友達にとっての、その子は…
「たぶん……そんなんやないかな」
たしかに心から大切に思える…そんな人。
だからこそ、傷つけたくない。
告白することがその人を傷つけることになってしまったら、もう…
「大切だから、だから…相手が傷つくくらいなら自分だけが傷つけばいいって思って、我慢しようとする。
…そういうことでしょう?」
少し寂しげに表情を改め、手のひらでアイスのカップを弄ぶ。
「人は誰でも、傷つくのは怖いと思う…それが大切な人に関わってるのだとしたなら、なおさらね。
その子は優しいから、自分が我慢すればいいなんて思うんでしょうけど…」
ひと呼吸おいて、えりちはウチの手を握る。これまでに何度も見た優しい笑顔で、
「買ってながら私は応援させてもらうわよ、その子のこと」
と話を打ち切った。
「あとはその人の勇気次第ね、まったく…」
反対側でつぶやくにこっち。ウチの反対の手を握りながら。
「そうやね…本当にありがとう、ふたりとも。しっかり…伝えとく」
力なくそう言って、ウチは少し顔を伏せた。
いつものウチなら…どうするかな
励まして、頑張れって…応援するんかな……
………そんなん、なんとも言われへんよ
だって、ウチは…弱い
前にも進めないし、その場で留まることも出来ない
進む勇気も留まる覚悟もない
何もかもが中途半端
だからこんなに、バカみたいに…悲しくて、辛くて…
…なんでふたりに聞いたんかな
もう、自分でもわけがわからないね…
せっかく聞いてもらったのに
せっかく元気付けてくれたのに
ごめん、ふたりとも
ウチはやっぱり…
「……のぞみ?」
「えっ…ぁ…」
いつのまにか。
自分でも気づかないうちに…涙を流していた。
目から溢れた滴が、頬を伝い流れてスカートに落ちた。
まるで心の苦しみを表すかのように、ぼろぼろと流れていく。
ひとしずくが零れるたびに胸が苦しくなって、息が詰まる。ウチはぎゅっと胸元の服を握りしめて、声を殺すように…噛み締めるように言った。
…ごめん。
・・・
いつからなのか…それは知らない。でも気づいたのは、ついこの前…風邪をひいたウチを看病してくれたとき。
もしかしたら、ずっと前から思ってたのかもしれない。あの太陽のように暖かくて優しくて明るい人を、好きになったのは。
好き
気づいた瞬間から、ウチの心に住み着くかいぶつが叫んでいる。
好き
感情が、心を支配している。
好き
きっとウチは、このまま彼女に会ったら抑えきれなくなってしまう。
好き
抑えきれなくて…きっと、彼女を傷つけてしまう。
好き
そうなってしまえば…ウチはきっと嫌われる。
好き
そんなの…嫌だ。それなら一人で我慢してる方が何倍も楽だ。
好き
だからもうやめてよ。
好き
もう言わないでよ。
好き
必死に我慢しようとしてるのに……なんでウチの邪魔をするの?
『じゃあ聞くけど、誰かが頼んだの?』
……え?
『希に我慢しろなんて、誰が頼んだのよ』
…そんなの、誰かに頼まれるようなことやないよ
『そう、あんたが勝手に我慢してるだけ』
それの何が悪いんよ…
『悪くないと思うんだったら、悩むことなんてないはずでしょ? さっさと割り切って忘れちゃえばいいじゃない』
そんな簡単に…割り切れるわけないやん!!
ウチだって、ほんとは…ほんとは伝えたい…
伝えて、出来ることなら…ずっとそばにいたい…
でも…伝えるのが怖いんや……
もし嫌われたら?
もし今までの関係でいられなくなったら?
そう考えてしまうと、胸が痛くて苦しくて…もう、嫌になるんや…
『そもそもあんたは何で我慢してるわけ?』
…にこっち…?
『答えなさいよ』
だ、だから……もしウチが告白して、あの子が傷ついたらどうするん…?
あの子はウチをお姉ちゃんやと思ってて、いままでもそんな風に過ごしてた
でもいきなり告白されたら、どう思うんやろ…
いまの関係が壊れるかもしれない…そんな危険を冒してまで…そんなこと、したくない…から
だから全て忘れて、これからもお姉ちゃんでいようって…そうすれば、傷つかなくて済むし
『嘘ね、あんたはそんなことちっとも思っちゃいない』
嘘なんか…嘘なんかついてない…
『嘘に決まってるわ。あんたは忘れる気なんてさらさら無い』
そんなことない…!
『だったら、なんで絵里と私に聞いたの?』
え…?
『わざわざ友達の話だってまで言って…なんで聞いたのよ』
そ、それは…
『あのときのあんた…これから前に進もうとしてるやつの目だったわよ。進みたくても進む勇気が出ない、そんな風に見えた。
背中を押してほしいってことじゃないの?
……少なくとも、こんなとこで我慢だのなんだのって…ウジウジ悩んで立ち止まってるようなやつの目じゃなかったってことは言える』
……そんなことないよ、にこっち
あの子の周りには…いい人ばっかりやもん
ウチが進んだって、どこかで跳ね返されちゃうよ
だから…ウチは今までのようにお姉ちゃんでいるほうが楽だし、誰も傷つかないん
『自分の感情に従うのって悪いこと?』
…えりち
『たしかに思いを伝えるのは怖いわよね…でも、だからって希が我慢する理由にはならないんじゃない?
伝えたいなら、伝えればいいと思うわよ。希はとっても魅力的だもの、諦めることないわ』
やめてや…そんなこと言われたってウチは…
『あなたはもっと自信を持っていいの。自分を表現するのが苦手なことは、あなた自身がよく知ってるでしょ?』
…………ウチは
『希はどうしたいの?』
ウチは……
『今までの希は…私と同じで、誰かのために頑張ってた。μ'sを作るために色々してたのも、他人のことを思ってばかり……
…ねえ、そろそろ自分のために頑張ってもいいんじゃない? 自分の感情に従って、行動してもいいんじゃない?』
『我慢なんてしなくていい、感情に従って、全力でぶつかってきなさい。もしそれで砕けたんなら、私たちがいつでも胸を貸してあげるから』
えりち、にこっち……
『…ねえ、希』
『あなたの本当にやりたいことは?』
・・・
「あ、起きた」
重たい瞼をこすり、ゆっくりと目を開けると……にこっちの顔があった。
西陽が眩しい…どうやら眠ってしまっていたみたい。
にこっちは険しい顔で、ふん、と鼻を鳴らしてウチを見下げている。
後頭部にあたる柔らかい感触は、にこっちのふととも。細身やけど…意外と弾力があって柔らかい
「おはよう、にこっち」
「ええ」
そっか…ウチ、寝てたんやね
「ひとしきり泣きじゃくった後でね」
「あ、あはは…できれば忘れてほしいかなぁ…」
「無理」
「はい…」
思えば、あんなに泣いたのは…穂乃果ちゃんと雪穂ちゃんの前で泣いたとき以来かな…
……すっきりしたかもね。
「いい顔になったわね」
「…うん、ありがと」
「なんのことやら」
「それでも、ありがと。お礼にちゅーしてあげよっか?」
「思い人のためにとっときなさい」
「にこっちのいけずぅ」
「ふん、そんなこと言う元気があれば…もう大丈夫なんでしょうね?」
「…うん。もう大丈夫」
なんだろう…不思議と心に迷いはなかった。
あれだけウチを苦しめていた感情も、今は怖いくらいにおとなしい。
「まっすぐ進む道が見えた…にこっち、ありがと」
「今度…ほむまん奢りなさいよ。うちの分と絵里の分もね」
「…うん!」
にこりと笑って、頷いた。
それくらいじゃ足りないものを、ウチはもらったから…今度、ほむまん以外にも付けてあげようかな。
ケーキを奢るのもいいかもね?
あの子も一緒に誘って、みんなで遊びに行って…うふふ、考えたら楽しくなってきたね!
「あ、希…起きてたのね」
にこっちと笑いあっていると、えりちがハンカチで手を拭きながら帰ってきた。
「長いトイレやったね」
「う、うるさいわよ…」
「ふふん」
「…もう元気になったのね」
「どうもご迷惑をおかけしました」
「びっくりしたわよ…泣き疲れて寝ちゃうんだから」
「…泣き疲れたんやないよ。ふたりに怒られて、自分の気持ちを見直して安心しただけやから…」
本当にありがとうと言って頭をさげるとふたりは小さく笑い、ウチの両脇を抱えて言った。
『じゃあ帰りましょ!』
「…うん!」
・・・
東京都心の誇る電気街こと秋葉原からおよそ徒歩十分歩くと、静かな住宅街の中に目を引く木造建築のお店が見えてくる。
ウチがバイトしてる老舗和菓子店…穂むら。
えりちたちとは駅で別れて、ここに来たのはウチひとり。
店の前まで歩いてくると、さすがに少しずつ歩調が重たくなり始めた。
近づくたびに心臓が早鐘を打ち始める。
どくんどくんと胸の奥を震わせる鼓動…
うわ、緊張してきた…
「……」
大丈夫……大丈夫。
ぐっと身体に力を込め、穂むらの引き戸に手をかけて勢いよく開けた。
「いらっしゃ…あっ!!」
カウンターにいたのはこのお店の看板娘。ウチが店に入ったのを見ると、目をまんまるにして口をぽかんと開け放った。
「希…ちゃん?」
「うん!」
おそるおそる尋ねてくる看板娘に、ウチは笑顔で頷いてあげた。すると彼女の表情も輝くような笑顔に早変わり。カウンターから出て、ウチの目の前までやってくる。
「き、来てよかったの…? まだ風邪が…」
「ふふん、穂乃果ちゃんに会いたくて来ちゃった」
「え…ええっ!?」
ウチの顔をぺたぺたと触りながら確認してくる穂乃果ちゃんに言い返すと、顔を真っ赤にして手を引っ込めちゃった。
「ぅ…えと、その…私に…?」
照れ気味に身体をもじもじさせながら問い返す穂乃果ちゃん。その仕草がなんだか可愛らしくて、ウチは彼女の身体に抱きついてしまった。
「ちょっ…の、のぞみちゃん…!?」
「いつもしてることやろー?」
「で、でも…」
「はあ…あったかいなぁ、穂乃果ちゃんは」
すりすり、ふにふに。
いつも穂乃果ちゃんにやられてることをやり返してみて、なるほどと思ってしまった。
そっか…これは確かに、幸せやね…ふふふっ。
「のぞみちゃぁん…」
対してもぞもぞともがき苦しむ穂乃果ちゃん。まだ堪能してるんやから暴れないでよ。
「で、でもぉ…お店だし恥ずかしいよ…」
「むぅ…」
そこまで言うんなら、仕方ないかな。
しぶしぶ離れると、穂乃果ちゃんは
「あの…いったいどうしたの…?」
と尋ねてきた。
はて、なんのこと?
「いや…その、希ちゃんから抱きついてくるなんて珍しくて…」
「そっちかい…」
「え?」
「いや…なんだかね、久しぶりに会ったから、穂乃果ちゃんをぎゅーってしたくなったんよ。いつもされてる分、しばらく風邪でしてくれてなかったからかもね?」
「ぁ、う……ぅん……」
顔を真っ赤にして俯いてしまう穂乃果ちゃん。
風邪の間に積もりに積もった感情が爆発してしまってるんよ。穂乃果ちゃんがいるってだけで幸せな気持ちになってくる。
もう店に入る直前の緊張なんてどこ吹く風やしね。
こほん、と小さく咳払いをして穂乃果ちゃんは、
「…心配したんだよ?」
「うん、ごめんね。明日からは復帰できるから…」
「…うん!」
ウチの返答に、にこりと笑ってくれる。
やっぱり…幸せ。
穂乃果ちゃんがいてくれるだけで幸せだなんて……なんなんやろね。
こんなに心地よくて幸せなら…気持ちなんて伝えなくても……ううん、それはダメやね。
ふたりの親友にあれだけ言われたんや、ちゃんと…伝えないとね。
「…ねえ、穂乃果ちゃん」
「なに?」
「あの、それでね…? 今日は、穂乃果ちゃんに…話があって来たん」
「私に?」
「うん…だから、聞いてくれるかな?」
「うんっ!」
何も気づいてないであろう、穂乃果ちゃんは力強く頷いてくれた。
今から伝える言葉を聞いたら、どんな顔をするんかな?
びっくりするのか、それとも嫌な顔をするのか…分からないし怖い。
でも逃げてばかりじゃダメ。もうウチは前に進むって決めたんやから…しっかりと、伝える。
いま、ここで。
もう我慢なんて出来ない、伝えずにはいられないから。
お店に人がいなくて…本当に、よかった。
「そ、その…ウチ…」
さっきまでゆっくりだった心臓が、また早鐘を打ち始めた。どくんどくんと鼓動が音聞くなって、穂乃果ちゃんに聞こえていないか心配になってしまう。
緊張で喉が渇いていきて、声もうまく出せない。少し上ずったウチの声に、穂乃果ちゃんは頷く。
「は、はい」
ウチの纏う気配から何かを悟ったのか…穂乃果ちゃんは少し心配そうに表情を変える。
…覚悟は出来てる。
だから、見ててな…かいぶつ。
ちゃんと伝えるから。
逃げたりせず、ちゃんと。
ウチの、私の口から。
「ウチは…私はね…」
私は、あなたが…
「穂乃果ちゃんのことが………」
…………しかし、希ちゃんの声は最後まで紡がれることはなかった。
「あら、希ちゃん。来てたのね」
店に現れた、お母さんに遮られてしまったのだ。
「は……はい、先日はお世話に…」
すぐに希ちゃんは私から離れ、お母さんに頭を下げた。表情が微妙に強張っているのは、気のせいではないだろう。
対して私は…その場で立ち尽くして、目の前で会話する希ちゃんとお母さんをぼんやりと眺めているのだった。
いまの希ちゃんの言葉…
もしかして…………
わたし…………告白、されかけた…?
今日はここまで
ありがとうございました
乙、良いところで…
続き楽しみにしてる
〜ほのルーム〜
……恥ずかしくて、逃げてきちゃいました。
希ちゃんとお母さんが話してる間に、こそこそと、部屋まで……はい。
…まずいよ、頭に何も入ってこないよ。
何かで気を紛らわそうとケータイを開いても、ゲームを起動しても、パソコンを開いても…何も集中できないんだよ。
生まれて初めてだもん…私、その…告白されるなんて…
まだされたわけじゃないけれど、本当に…もし、本当にあれが告白だったなら……
「ぁぁぁぁぁああああもーーっ!!」
枕に顔を押し付けて全力で叫び声をあげる。なんなのさ、もう……なんなのさ!! 恥ずかしくて、切なくて、でも……その……もーーっ!!
と叫び続けていると、ドンッ!! と、隣の部屋で雪穂が壁を叩いた。
……妹よ、ごめんなさい。
枕を放り投げて、天井を向いて……目を閉じる。
『穂乃果ちゃんのことが………』
すると浮かんでくる、あの一瞬の映像。
希ちゃんが私の目の前で、私に向かって、告白を……しようとした、あの瞬間の映像が頭に焼き付いて離れない。
その映像が頭の中にフラッシュするだけで私の頬は熱が差し、胸の内側がきゅっと暖かくなる。
私のことがって…その、つまり…そういうことでしょ?
好きとか……愛してるとか、そういう……
うう、頭が回らないよ…
「希ちゃん…」
その名前を口に出してみると、くちびるが熱を帯びて、瞳も潤んで視界がぼやけてくる。
こぼれるため息はとても熱く、身体の火照りがそのまま吐き出される。そして熱い吐息は、私の心に戸惑いを生んだ。
「…わたし……」
今はもう、希ちゃんのことしか考えられない。
ずっとずっと、心の中に希ちゃんがいて、私に笑いかけながら、あの言葉を何度も囁いてくる。
『穂乃果ちゃんのことが………』
でも、その先は言ってくれない。
その先を聞かせてはくれない。
……ねえ、希ちゃん。
家族として、お姉ちゃんとして……そういう意味じゃ……ないんでしょ……?
告白とはそういうことなんだ。
好きとは、そういう……意味なんだ。
もしあの場にお母さんが現れなかったなら……私は告白されていたのだろうか。
そうしたら、私はなんと答えたのだろう。
……決まってるよ、そんなこと。
そう、決まってる。
希ちゃんは私に、本気なんだよね。
もし私に告白しようとしたんなら……それは、本気だったはずだよね。
もし私が断れば、今までの関係じゃいられなかったかもしれないから。
すべてを投げ打ってまで私に告白してくれたんだから、私はそれに応えなくちゃいけないんだ。
ちゃんと返事しなくちゃ…
…ちゃんと、返事を………
「………………………………………………あ」
そういえば、いつからなのかな…って……まだ確証はないけど、確証はないけど考えちゃうんだよー!!
うわぁぁぁん……もう、なんなのさぁ…
「し、深呼吸しよう……うん」
大きく息を吸って、吐いて……吐いて、吐いて……三秒止める。
すると呼吸が整って落ち着くのです。
ふぅ…………えっと、希ちゃんと一緒にいるようになったのは、初めてのバイトのときからだし…
そっか、あのときから…こんなに経つんだ…
私は三年生になって、希ちゃんは大学生に…なって、うちでバイトしてて…
私も、今まで以上に希ちゃんにベタベタするようになったんだよね…
初めてのバイトの頃は…私は希ちゃんをお姉ちゃんと思って接してた。
希ちゃんも…たぶん、お姉ちゃんとして接してくれたと思う。
じゃあ、いつから…なのかな。
私のこと……いったい……
……いつから?
そんな風に頭を抱えながら唸っていると、リズム良くドアがノックされた。
その瞬間に心臓が飛び出るかと思うほどに強く跳ねて、私はバネのように居住まいを正した。
放り投げた枕も元通りにして、シーツの乱れも綺麗にして……
「は、はーい」
と、かろうじて声は裏返らずに返事が出来た。
「おじゃまするね」
そう言って入って来たのは……やっぱり、希ちゃんだ。少し寂しそうな顔……ああ、私が逃げたからだ。
……ごめんね、希ちゃん。流石に恥ずかしかったんだよ…
「今日、ここでご飯食べさせてもらうことになったよ」
「う……うん」
ちょうど希ちゃんのことを考えていたから…目があった瞬間、私は顔がさらに熱くなるのを感じた。
そして希ちゃんは、ふんわりと微笑んでくれる。なぜか…その表情が、私にいつも通りの動きをさせてくれない。
いつもならのぞみちゃーんって…呼びかけて、隣に座ってもらうの。それからぎゅーって抱きついて、頭を撫でてもらう……それがいつもの私。
でも今日は……さっきのことがあったから、何を言ったものか躊躇ってしまって、視線もまるで避けるかように逸らしちゃった…
「……となり、座るね」
だから希ちゃんは自分から、ひとこと断りを入れて私の隣に腰掛けた。ベッドのスプリングが軋み、私の身体が僅かに希ちゃんの方へ傾く。
希ちゃんがすぐ隣にいる……そのことだけで、私の心臓は、まるでライブ直前ってくらいにドキドキしてる。
希ちゃんはにこりと笑っていて……なのに、私は……もう、身体が熱くてしかたない。
なんとも思わないのかな……希ちゃんは。
さっき、私に言いかけたこと……お母さんに止められちゃって、格好つけそびれちゃって。
……でも、格好つけるのは希ちゃんに似合わないよ。
だって、私はいつも通りの希ちゃんが…………
「ぁ、ぅ……」
少し俯いてひとりでもじもじしていると、私の肩に、希ちゃんが頭を乗せてきました。その途端、心臓は更に大きく跳ねる。
「の、希ちゃん…?」
私がおそるおそる……顔を見ないように尋ねると、
「しばらく……こうしてていい?」
いつものトーンで、そう言った。頭を肩に乗せて、体重を私の方に預けて……優しく笑った。
「ぅあ………は、はぃ……」
私と希ちゃんの間に、もはや距離なんて呼べるものはない。完全に密着したこの状態で……私の身も心も正常ではいられなかった。
どくんどくんと暴れまわる私の心臓。いままで自分でも感じたことがないくらい、心臓は大きな音で私の体内に鳴り響いている。
……希ちゃんに、聞かれてないよね…?
「……穂乃果ちゃん、ドキドキしてるね」
「っ……!」
み、見透かされてる……!
……じゃなくて、聞こえてるってことだよね!?
「ぁ、うぅ……は、離れます……!」
そう言って希ちゃんから離れようとお尻を滑らせると、
「離れんといて」
と、希ちゃんは私の腰に腕を回し、抱きつくようにしてくっついてくる。
「おっ……お願いだから、離れて……」
「いいやん、減るもんじゃないよ」
「私の寿命が減っちゃうよ!」
テレビで見たことだけど、人間の心臓が動く回数は決まってるみたい。だからドキドキしっぱなしだと、寿命が縮んでしまうのです。
特に逃げの理由になってないけどね……と、とにかく私は恥ずかしくて死にそうなんです!!
「だから、離れて、お願い……」
「それならウチのもやから大丈夫!」
「大丈夫じゃな……え?」
「希ちゃんもって……?」
「き……聞いてみる?」
そう言うと希ちゃんは、一度離れて……呆気にとられていた私を抱きしめ、その胸に頭を押し付けました。
「……聞こえる?」
「う、うん……」
「どんな風に?」
「えっ…ぇ、えと……すごくドキドキしてる……」
どくんどくんって、すごい速さで……私よりも激しく鳴ってる。
もしかして、希ちゃんも……?
「…うん、実はすごく緊張しちゃって……あはは」
私の問いかけに、そう言って希ちゃんは照れてみせた。
耳元で鳴る、希ちゃんの心臓の音……なんだかとっても落ち着く。
それだけじゃなくて、希ちゃんに抱きしめられてるってことだけで……落ち着くし、幸せなんだ。
希ちゃんは私を抱いて、頭を撫でてくれる。久々のそれは……とても気持ち良くて、さっきまで大荒れだった私の心が……なんだか豊かになる気がした。
腕を回して、希ちゃんにぎゅっと抱きつく。すると希ちゃんの心音が、どくん……とひときわ大きく跳ねた。
「……希ちゃん」
「言わんといて」
……先回りされちゃった。
仕方がないので、しばらく私はそのまま希ちゃんの心音を聴き続けた。
希ちゃんはときどき、やめてほしそうに身体をもじもじさせるけど、問答無用。私をあんなにドキドキさせたんだから、その罰だよ。
それでも抵抗し続けて数分……ようやく観念したのか、希ちゃんはまた私の頭を撫で始めました。
そのまま、また数分くらい……沈黙が訪れた。
私は静かに希ちゃんの胸に抱かれていて、とても幸せ。
希ちゃんは私の頭を撫でてくれる。
私、この沈黙が好きだ。
希ちゃんと私の間にある沈黙はとても居心地がいい。
互いのことを、言葉を交わさずに知れる気がして。
でも、伝えなければならないことは必ずあるから……
沈黙を破ったのは、希ちゃんだった。
「…………ねえ、穂乃果ちゃん」
「……なに?」
「……さっきの話やけど」
「うん……」
さっきの話って……私に伝えようとした、あの言葉だよね。あんな真剣な顔で……伝えようとしてくれた……
お母さんが入ってきちゃったから、格好つかなかったんだけどね……えへへ。
だから、その続き……
「……聞かせて、希ちゃん」
……でもね。
あんなに格好つけなくたって、私は……
「ウチはね、穂乃果ちゃんのことが……」
一呼吸置いて、希ちゃんはさっきの言葉の続きを口にする。
私は希ちゃんに抱きしめられたまま、その言葉を聞く。
ひとことひとことを噛みしめるように囁かれる言葉。
やわらかそうなくちびるから吐き出されるそれが耳朶を打ち、私の内側がじんわりと暖かくなる。
なんだかとっても嬉しくなっちゃって……ひとつぶの涙が頬を流れた。
「穂乃果ちゃん……?」
「あ、あはは……」
でも、ぜんぜん嫌な涙じゃないの。
嬉しくて嬉しくて……ありがとうって、心がそう言ってるの。
だから、私の返事は決まってるんだ。
心して聞いてね、希ちゃん。
「…………私も、希ちゃんが」
……この日。
私と希ちゃんは、お互いにとってかけがえのない存在になりました。
今日はここまで
ありがとうございました
ハラショー
読んでてこんなにドキドキするSS久しぶりだわ
感謝
希さんが風邪で寝込んでる時の気持ちと
風邪ひいた瞬間学校休めるとか凄い喜んでたガキの頃の自分を比べたら無性に悲しくなってきた
「希ちゃん、大丈夫?」
「……うん、穂乃果ちゃんがいてくれるから、大丈夫」
あれから数日経って……ゴールデンウィークになりました。
私たちの関係は少し……ううん、大きく変化して、それにも慣れ始めたかなってくらい。
もともと身体的には大きな違いはなかったから、あとは精神的に順応するだけやったからすぐに慣れちゃったんやけどね。
そして今日は、希ちゃんのご両親がうちに来ていて……高坂家と東條家での食事会!
……えへへ、食事会なんて言うほど豪華なものじゃないけどね。
ウチたちは、この日を待っていたん。
約束してたんだよね……今日、みんなに発表するって。
私たちの関係をみんなに伝えて、認めてもらうって。
……大丈夫、怖くないよ。
……うん、怖くない。
だって私には希ちゃんが……
だってウチには穂乃果ちゃんが……
お互いがお互いの支えになってるんだから、大丈夫じゃないわけがないんだ。
「……行こう希ちゃん」
「うん……そうやね、穂乃果ちゃん」
ここから始まる、私たちの新しい日々。
きっとこれからも、ずっとずっと楽しくて嬉しい毎日が待ってるん。
変わらない日々の、ちょっとした変化に戸惑ったり……ちょっとしたイベントにドキドキしたり。
ふふ、考えるだけで楽しくなっちゃうね!
……そろそろ時間やね。
みんなの集まった居間に、ふたりで……手をつないだまま足を踏み入れる。
私のお父さんとお母さん、それから雪穂。
ウチのおとうさんとおかあさん。
みんなの視線を感じながら……
私と
ウチは
声を揃えて宣言しました。
『今日はみんなにお話があります!』
おしまい
ありがとうございました
これで完結とさせてください
もしまたほののぞでスレ建てしたとき、読んでいただけたら幸いです
本当にありがとうございました
乙
ほののぞ恋人編期待してもいいだよね?
乙
いいssだった 掛け値なしに
乙でした!
本当に素晴らしいほののぞだった
またスレが立つ機会を楽しみに待ってる
乙
素晴らしかった
おつ
満足したぜ
乙 終始すごくよかった
続編ほんと楽しみにしてます
乙
続き待ってる
おつ!読みながらドキドキしてた
恋人編期待
オチまで綺麗だった
本当に乙です
乙
素晴らしかった
バイト編からずっと読んでたけど完結おめでとう、本当に心温まるお話で感動的でした
続編だったり他のお話だったり、>>1の書くSSはまた読みたいと思うから新作楽しみにしてるよー
今更更新に気がついた…
最後の最後のまで最高のほののぞでした!
またスレが建つの期待してます!
ありがとう、本当にありがとう
またこのドキドキ味わいたいです!乙!
このSSまとめへのコメント
今回も期待してます♪
良作おつかれです!できれば百合ハッピーエンド期待してます!
本当に良作!
今回もいい作品でした!
ありがとうございます♪
まだ完結じゃないでしょ、投下するってあるんだから
とてつもなく素晴らしかったです!感動しました!最初のバイトからここまで、いろいろなことがあって、なんだか泣けてきました…最高です、大好きです!!過去作も合わせて本当に素晴らしいお話でした!出来ることなら終わらないで欲しいですまた続きが読みたいです!
長すぎて睡眠時間が削られた。
あとモニターが霞んで良く見えねーんだよ!
さっさと次書いてくれ。