【オリジナル】「葵ちゃんは私の憧れです」【百合】 (21)

普通に百合SSです。
ただキャラごとに名前を決めてあるので、そういうの(痛々しいの)が苦手な人は苦笑いでお願いします。
R-18的なシーンは書かない予定です。が、ほんのちょっぴり発言だけ書いたりとかするかもしれません。その程度です。
書き溜めなしです。ではどうぞ。

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好きな人っていうのは誰にでもいるものではないし、ましてやその人と結ばれるなんて本当にラッキーでハッピーな事なんだろうなあって時々思う。

なんでそんな事を考えるのか、というと、もちろん私に好きな人がいるから。

けれど、それは多分叶わない恋なんだなってことを私は知ってる。

だって、私が好きな人は、たった今隣にいて、私と一緒に登校している『女の子』だから。

一応言っておくけど、私、陸吹サナも女の子。

女の子が女の子に恋をするのは、普通にヘン。

だから、この想いはきっといつまでも胸に仕舞っておいて、そのうちに消え去ってしまうんだろうな。

でも、不幸とか辛いとか、そういうんじゃないよ。

「ねぇ、葵ちゃん」

私は想い人の名前を呼ぶ。

「んー?」

その子は私の言うことはなんとなくわかってるんだろうけど、それでも嫌な顔ひとつせずに相手をしてくれる。

そんな所も、きっと私は大好き。

私の好きな人。

海風 葵ちゃん。

好きな人が目の前にいるのに想いを伝えられないって、普通は辛いのかも。

でも、そういうのは別に無くて、ただ毎日こうやって一緒に登校して、毎日一緒におしゃべりして、時々勉強を教えてもらったりしてるだけで、私はとても幸せになれる。

その行為それぞれに別に中身とか意味がなくっても、全然構わない。ただなんとなく、好きな人と一緒の時間を過ごしてるっていう実感が、私の充実感。

だから、私はあまり意味の無い事をしょっちゅう話す。

「ふふ、なんでもないよ」

こんな風に。

葵ちゃんが軽くうなずく。

「ん。」

ぱっと見、なんだか素っ気無い返事に見えちゃうかもしれない。けど、私は知ってるよ。

『ん。』の後には、『今日も元気みたいでよかった』って言葉が隠れてるの。

葵ちゃんはどっちかっていうとクールめな子だから、直接言うのはちょっと恥ずかしいのかも。

だから、相手が気付かなくても、自分が『相手が元気』っていうことをわかればそれでいい、って考えてるんだと思う。

ちょっぴり無愛想だけど、本当は皆より優しいんだ。

でも、そんな不器用なところはちょっと可愛くて、なくならないでほしいなーって思っちゃったりもする。

………なんて色々考えてると、お互いに沈黙が続いちゃったりしちゃう。

「……………」

「……………」

けど、別に気まずいっていうわけじゃなくて、ただぼーっと日常を噛み締めてるような、そんな感じの雰囲気。

今日は天気がよくて、風もさらさら吹く。毎日こんな風だったらいいなぁ。

………ふと隣を見ると、葵ちゃんの髪がそよ風になびいていた。

──少し青みがかかったロングヘアー。綺麗でつやつやしてて、朝日が髪の上を滑っていくみたいに見える。時々ポニーテールにしたりするけど、基本的にいつもロング。

見とれちゃうなぁ。

葵ちゃんはなんていうか、キリッとした美人タイプの顔をしてるから、そういうのが余計に映えるんだろうな。

「ん、そうだ」

葵ちゃんが上の方を見て言う。そしてこっちを向き、

「この前大田が言ってたんだけど………百合ってどういう意味?」

と聞いてきた。

百合──普通なら、まあ植物とかそういうのが普通な答えなんだろう。けど、それを言ってたのが大田……。

えっと、まず私たちは同じクラスで、隣のクラスに大田って男子がいるんだけど、いわゆるオタクっていうのかな。

つまり、きっとその大田が言う『百合』なら、まあそりゃあ……。

と思うけど、一応確認。

「どういう風に百合って使われてたの?」

んー。と少し考えてから、葵ちゃんが答える。

「なんていうか……すれ違う時に『お、そうだ、海風』みたいに呼ばれて、『お前ら……海風と陸吹ってさ、なんか百合っぽい感じあるよな』……みたいな言い方で、唐突に言ってきたんだ」

「あー………」

あー………。

ええな

百合。──女の子同士の恋愛とか、そういったものを指す隠語みたいなもの。

葵ちゃんはこういうのに鈍かったりするから気付いてないけど、やっぱり他の人から見るとそんな風に見えちゃうのかな。

まあ、言ったのがあの大田だし、きっとふざけ半分くらいなんだろうけど…………あとでチョップしておこう。

そしてこの場は………よし、この答えでいこう。

「んとね、百合っていうのは、そのー……女の子同士が仲よさげで、男子がちょっと入り込みにくいみたいな、そういう雰囲気のことを指してるらしいよー」

少し苦しい説明。多分間違ってはない。と思う。

それを聞くと、まあ納得したかなって感じで葵ちゃんが言う。

「ふーん」

よかった、葵ちゃんにそんな事を教え込んじゃいけないもんね。

それに、そういうことを知っちゃったら、私の気持ちに気付いちゃって、気まずくなったりしちゃいそうだもん。

シンプルに、それはいやだ。

期待してる

期待期待
陸吹って何て読むんだろう。りくぶき?

りくぶき、で合ってます。

数秒して、あ。と葵ちゃんが立ち止まる。

ひょっとして忘れ物かな?

「どうしたの?」

私が言うと、葵ちゃんは少しニヤっとして、左手でこっちを指差し、

「ひょっとして、サナに気があるんじゃない?大田。」

なんて言ってきた。

葵ちゃんは、『あたしだってたまには鋭い所あるのよ』みたいな顔をしてるけど、それは全くの見当違いで、相変わらず鈍いなぁと思う。

直接聞いたことはないけど、大田はきっと、葵ちゃんのことが好き。

なぜって?そりゃ、廊下で会う度に『海風って○○(たいていお菓子の名前)好きかな?』とか、『海風に、……あー、そのー……気になるやつがいる、とか、聞いたことないか?』とか聞かれたら……。

まあ、誰でもわかっちゃうわけで。

大田も大田で鈍感、というよりは純情すぎる感じはあるんだよね。

時々、葵ちゃんにお菓子をプレゼントしたり、重い物(先生に頼まれたプリントとか)を持ってあげたりしてるのを見るから、普通なら気付くと思うんだけど。

そこで全く気付かないで、さらにちょっとドヤ顔っぽいものを披露しちゃう葵ちゃんは、ちょっぴり可愛い。

ていうかすっごく可愛い。

とりあえず、これ以上勘違いしないようにしておこう。

「いやー、それはないない。そういうのは私の方が鋭いもん」

む、と口を少しへの字にする葵ちゃん。

「うーん、違う?……ま、サナが言うなら多分そうよね」

残念そうに、指差してた手を下ろしてまた歩き出す。

一応、自分がそういうのに鈍いっていうのはなんとなく自覚しているみたいなんだけど、それでもやっぱり治らないっていうのはなんかもう可哀相だなあ、と思う。

でも、そのおかげで私がたまにちょっぴり大胆なことが出来るから、複雑な気持ち。

ちょっぴり大胆なことっていうのは、まあその、更衣室とかで………ね。

ってそんなことは別によくて、気が付けばもう校門の前。

もともと家がそこまで学校から離れてないっていうのはあるけど、葵ちゃんといると余計に時間が早く感じる。

アインシュタインの特殊相対性理論とか、そういうのかな。

うーん、神様もなかなか憎いものを作ったなあ。

ふむふむ

いいぞ

いいぞ

校門をくぐってちょっと先を左に曲がって、さらに進んで昇降口へ。

いつも通りの下駄箱。

「おはよー」「おはー」「おっす」「おう」「おはよう」………色んな声が聞こえる。

普通に日常。うむうむ、今日も平和だ。

──葵ちゃんとは同じクラス。だから、通学路から下駄箱から教室まで、ずーっと一緒。

えへへ。

運命かもね。……なーんて。

なーんて思ってたところで、葵ちゃんが不意に話しかけてきた。

「なんだか嬉しそうね。どうかしたの?」

ありゃ、ちょっと顔に出てた。

「んん、今日のお弁当のこと考えてたんだ。顔に出ちゃってたかぁ」

……ごまかせたかな?

若干冷や汗がたらーり。でも一応ごまかせたみたいで、葵ちゃんは普通に話を続ける。

「へぇ、サナの好物でも入ってたの?」

「そだよー。なんと卵焼き!お母さん特製の甘いやつ!」

「ふふ、サナは甘いもの本当に好きね」

確かに甘いものは好きだけど、実は私よりも………。

「………葵ちゃんの方が好きだよね?甘いもの。ホワイトチョコとか」

「う。………ん、んん。ま、まあ、確かにそうだけど………」

目を逸らしながらぼそぼそ言う葵ちゃん。恥ずかしいのか耳がちょっと赤い。

そしてこっちを横目で見て、一言。

「だ、誰にも言わないでね?………恥ずかしいし」

照れながらジト目っぽい感じでこんなこと言われたら、考えることはただひとつ。

可愛い!

「うん、わかってるよ~」

……鏡を見たわけじゃないけど、きっとまた顔に出ちゃってるんだろうなー、と思う私だった。

かわいい

続きまだー?待ってる

期待
続き待ってる

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