普通に百合SSです。
ただキャラごとに名前を決めてあるので、そういうの(痛々しいの)が苦手な人は苦笑いでお願いします。
R-18的なシーンは書かない予定です。が、ほんのちょっぴり発言だけ書いたりとかするかもしれません。その程度です。
書き溜めなしです。ではどうぞ。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1410873770
好きな人っていうのは誰にでもいるものではないし、ましてやその人と結ばれるなんて本当にラッキーでハッピーな事なんだろうなあって時々思う。
なんでそんな事を考えるのか、というと、もちろん私に好きな人がいるから。
けれど、それは多分叶わない恋なんだなってことを私は知ってる。
だって、私が好きな人は、たった今隣にいて、私と一緒に登校している『女の子』だから。
一応言っておくけど、私、陸吹サナも女の子。
女の子が女の子に恋をするのは、普通にヘン。
だから、この想いはきっといつまでも胸に仕舞っておいて、そのうちに消え去ってしまうんだろうな。
でも、不幸とか辛いとか、そういうんじゃないよ。
「ねぇ、葵ちゃん」
私は想い人の名前を呼ぶ。
「んー?」
その子は私の言うことはなんとなくわかってるんだろうけど、それでも嫌な顔ひとつせずに相手をしてくれる。
そんな所も、きっと私は大好き。
私の好きな人。
海風 葵ちゃん。
好きな人が目の前にいるのに想いを伝えられないって、普通は辛いのかも。
でも、そういうのは別に無くて、ただ毎日こうやって一緒に登校して、毎日一緒におしゃべりして、時々勉強を教えてもらったりしてるだけで、私はとても幸せになれる。
その行為それぞれに別に中身とか意味がなくっても、全然構わない。ただなんとなく、好きな人と一緒の時間を過ごしてるっていう実感が、私の充実感。
だから、私はあまり意味の無い事をしょっちゅう話す。
「ふふ、なんでもないよ」
こんな風に。
葵ちゃんが軽くうなずく。
「ん。」
ぱっと見、なんだか素っ気無い返事に見えちゃうかもしれない。けど、私は知ってるよ。
『ん。』の後には、『今日も元気みたいでよかった』って言葉が隠れてるの。
葵ちゃんはどっちかっていうとクールめな子だから、直接言うのはちょっと恥ずかしいのかも。
だから、相手が気付かなくても、自分が『相手が元気』っていうことをわかればそれでいい、って考えてるんだと思う。
ちょっぴり無愛想だけど、本当は皆より優しいんだ。
でも、そんな不器用なところはちょっと可愛くて、なくならないでほしいなーって思っちゃったりもする。
………なんて色々考えてると、お互いに沈黙が続いちゃったりしちゃう。
「……………」
「……………」
けど、別に気まずいっていうわけじゃなくて、ただぼーっと日常を噛み締めてるような、そんな感じの雰囲気。
今日は天気がよくて、風もさらさら吹く。毎日こんな風だったらいいなぁ。
………ふと隣を見ると、葵ちゃんの髪がそよ風になびいていた。
──少し青みがかかったロングヘアー。綺麗でつやつやしてて、朝日が髪の上を滑っていくみたいに見える。時々ポニーテールにしたりするけど、基本的にいつもロング。
見とれちゃうなぁ。
葵ちゃんはなんていうか、キリッとした美人タイプの顔をしてるから、そういうのが余計に映えるんだろうな。
「ん、そうだ」
葵ちゃんが上の方を見て言う。そしてこっちを向き、
「この前大田が言ってたんだけど………百合ってどういう意味?」
と聞いてきた。
百合──普通なら、まあ植物とかそういうのが普通な答えなんだろう。けど、それを言ってたのが大田……。
えっと、まず私たちは同じクラスで、隣のクラスに大田って男子がいるんだけど、いわゆるオタクっていうのかな。
つまり、きっとその大田が言う『百合』なら、まあそりゃあ……。
と思うけど、一応確認。
「どういう風に百合って使われてたの?」
んー。と少し考えてから、葵ちゃんが答える。
「なんていうか……すれ違う時に『お、そうだ、海風』みたいに呼ばれて、『お前ら……海風と陸吹ってさ、なんか百合っぽい感じあるよな』……みたいな言い方で、唐突に言ってきたんだ」
「あー………」
あー………。
百合。──女の子同士の恋愛とか、そういったものを指す隠語みたいなもの。
葵ちゃんはこういうのに鈍かったりするから気付いてないけど、やっぱり他の人から見るとそんな風に見えちゃうのかな。
まあ、言ったのがあの大田だし、きっとふざけ半分くらいなんだろうけど…………あとでチョップしておこう。
そしてこの場は………よし、この答えでいこう。
「んとね、百合っていうのは、そのー……女の子同士が仲よさげで、男子がちょっと入り込みにくいみたいな、そういう雰囲気のことを指してるらしいよー」
少し苦しい説明。多分間違ってはない。と思う。
それを聞くと、まあ納得したかなって感じで葵ちゃんが言う。
「ふーん」
よかった、葵ちゃんにそんな事を教え込んじゃいけないもんね。
それに、そういうことを知っちゃったら、私の気持ちに気付いちゃって、気まずくなったりしちゃいそうだもん。
シンプルに、それはいやだ。
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