森久保乃々「もりくぼと妖精」 (32)


こんにちは、森久保乃々です。

先日大きいお仕事をやりきったということで、まとまった休暇をもらいました。

その休暇を使って私は今、森に来ています。

私を歓迎してくれるのは枝葉の間から射し込んでくる木漏れ日、木々の間を抜けて土の香りを運んでくる爽やかな風、そして――






「道に迷ったもりくぼを威嚇する熊……へるぷみぃ……」


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期待


一歩、また一歩と熊がこちらへ向かってきます。

えっと、こういうときはどうすれば……食べ物のふりをして死体を投げつつ後ずさればいいんでしたっけ……

ガサガサと茂みをかき分ける音が聞こえてきました。仲間の熊でしょうか。もりくぼはこのまま食べられてしまうんでしょうか。

「こんばんは~」

「えっ」

茂みから現れたのは筋骨隆々な男の人でした。私は熊が増えなかったことに安堵しながら、とても驚いていました。

私が驚いたのはその人が日本人ではなかったことでも、その人の腕が丸太のように太かったことでも、まだ陽が出ているのにその人が「こんばんは」と言ったことでもありません。それは――






その人が、一糸纏わぬ姿だったということです。

今だ! ダッキングで前に出ろ森久保ォ!









アイドルマスターシンデレラガールズ
 も り く ぼ と 森 の 妖 精







※このSSはガチムチパンツレスリングの要素を含んでいますが、R-18要素はありません。ご安心ください

この妖精なら森久保は安心だな()

まぁ森久保がちょめちょめされるならR制限どんとこいだがな!


「あぁん? 分け目のプーさん?」

その人は私に目もくれず熊に話しかけました。

「どう見ても黄色くないんですけど……むしろどうしてプーさん以上に服着てないんですかあなた……」

私の言葉に反応してその人は振り向いて、今初めて私に気が付いたような顔をしました。そして、その人は私を指差してこう言いました。

「池田……くりぃむしちゅー池田」

違うんですけど……誰ですかそれ……それよりこっちに身体を向けないでほしいんですけど……


無反応な私に少しため息を吐いて、男の人は熊の方へと歩いていきます。

「あの……あぅ、危ないと思うんですけど……」

「大丈夫だってゆうのぉ~」

適当な返事を私に返して、男の人は熊の真正面で立ち止まりました。

「構わん、ワイ倒してみぃ? あぁん? ワイ倒してみぃ」

そんなふうに熊を挑発しています。熊は日本語分からないと思うんですけど……

男の人に熊が襲いかかりました。多分無暗に近付いたのが原因で、挑発したのは関係ないと思います。

「バイキルトなんていつ使ったん?」

熊と組み合った男の人はなんと、軽々と熊を持ち上げて担いでしまいました。


「弱い子は抹殺……」

物騒な事を呟く筋肉モリモリの男の人が、じたばたともがく熊を担いで森の中を歩き回っています。何なんですかこの状況……ドッキリですか……

しばらくして男の人が熊を降ろすと、熊は凄い勢いで逃げて行きました。

「強く生きろ……」

熊の後姿にそう言葉を投げかけて、男の人はこっちに振り返りました。

「あ、ありがとうございます……でもお願いですからこっちを向かないでほしいんですけど……」

「酷いですね君!?」

「酷くないんですけどぉ! 服を着て欲しいだけなんですけどぉ!!」

「……」






「いやぁ、スイマセーン」

気付いてなかったんですか……


茂みの奥に帰っていった男の人は、しばらくすると服を着て帰ってきました。

「さっきゴメン」

「いえ……あの、はい、大丈夫ですけど、あなたは一体……」

「米倉でぇす!」

「あ、米倉さんっていうんですか……」

意外と日本人みたいな名前の人でした。

「家は目黒辺り」

「……」

家の場所を言われても困ります。


「あれか? 見せ掛けで超ビビってるな?」

私が黙っていると米倉さんはズボンのポケットに手を突っ込んで、何かを取り出しました。

「え、えっと……」

「いつだってあるよきんぴら」

きんぴらでした。この人ポケットにきんぴらを入れていました。

「いえ、きんぴらはいいです……」

「そういうこと言う……」

残念そうな顔で米倉さんはきんぴらをポケットにしまいました。そんな顔をされてもポケットにそのまま入っていたきんぴらは食べたくありません。


「おい、色々と辛いか?」

現在進行形で辛いです。帰ろうにも道が分かりません。日も暮れてきています。

米倉さんは手招きをしながら森を進んでいきます。

「カモン! カオスボーイ!」

「ボーイじゃないんですけど……」

初めて会った人について行くのは抵抗がありますけど、夜の森に一人でいるのは心細すぎます。

とりあえず、ついて行こうと思います。


森の中に突然現れた櫓の前で、米倉さんは立ち止まりました。

「えっと、これは……?」

「櫓」

「それは見ればわかるんですけど……」

「ゲイパレス」

なんですかそれ……櫓の名前ですか……

「……」

「……」

「手ぇ付けていいぞ。臭いはないがな」

「あ、はい」

すごくひのきの香りがしました。


どうやらこの櫓は米倉さんの別荘らしく、米倉さんはハシゴを悠々と登っていきます。

「ゆっくりしていかなぁアカン」

えっと、もりくぼも行かないと駄目なんでしょうか……

迷っていると遠くから動物のうなり声が聞こえてきました。

「あうぅ……それじゃあ、お邪魔します……」

観念して私はハシゴを登ります。


「もう終わりだぁ!」

そう言って米倉さんは、私を引き上げてくれました。

「はぁ、はぁ、ありがとうございま……あっ」

気を抜いてしまったせいか、お腹が鳴ってしまいました。うぅ、恥ずかしい……

「あん? あんかけ夕飯?」

「いえ、ご飯まで出してもらう訳には……」

「あぁん? あんかけチャーハン!?」

どれだけあんかけ作りたいんですか……とはいえ私もお腹は空いています。

「じゃあお言葉に甘えて……あんかけチャーハンをお願いします」

「あぁん? ピザプリンチャーハン!?」

「それはいいです」

「何気に強いですね……」

私だって駄目なものは駄目だって言います。というかなんですかピザプリンチャーハンって……


「ヘイ、どうぞ」

米倉さんが持ってきた皿には、あんかけチャーハンではなくきな粉のかかったわらび餅が乗っていました。

「これは……?」

「わらび餅」

「さっきあんかけチャーハンって言ってたと思うんですけど……」

「俺そんなこと言ったぁ?」

「あんなに推してたのになんで忘れられるんですか……」

「仕方ないね」

手を合わせてからわらび餅をそっと口に運びます……あ、美味しい。

「柔らかすぎる!」

米倉さん、柔らかいわらび餅は苦手なようです。

「毎回プリンっぽいな? あぁん!?」


「つい最近は……岩に隠れとったんか?」

わらび餅を食べながら、米倉さんが聞いてきます。

「違いますけど……」

それだとぼののじゃなくてぼのぼのなんですけど……そもそもぼのぼのは隠れるんじゃなくてしまわれてるだけですし……

「あのぅ、私はアイドルやってて……」

「……お相撲?」

「アイドルって言ってるんですけど……どこから相撲が出てきたんですか……」

さっきから……というか最初から、どうも話が噛み合ってないような気がします。


「辛いなモー娘が消えて」

「モー娘さんっていつの時代ですか……アイドルに興味あるんですね」

「莉嘉ちゃんに用があるんだ」

莉嘉さんを知ってるということは、結構最近のアイドルもチェックしているみたいです。

「城之内……」

「莉嘉さんは城ヶ崎ですけど……」

「雛見沢一強いお相撲さんだ」

あっそれ別人ですね。


「えっと、私も一応アイドルです……あ、アイドルと言ってももう辞めるつもりで、でも本当に辞めるってわけじゃあ……」

「わからん、何言いたいか……」

そうですよね、いきなり辞めるだとか辞めないだとか……

「もりくぼは、ただ静かに暮らしたいだけで、でも……」

「希望を捨てきれない」

「……っ!」


確かにその通りです。こんな自分でも、アイドルを続けていけば変われるかもしれない。そんな希望を捨てきれない。

「でも、握手会とか、ファンの人と触れ合うのがまだ少し怖くて……」

「ハッピーだからスキンシップするんや」

米倉さんは真面目な顔で続けます。

「強く当たってみぃ」

強く当たってみる……


次の日、米倉さんは私を森の出口まで連れて行ってくれました。

「あの、ありがとうございました……これからもちょっとずつ、頑張ってみようと思います……」

「せや、差ぁつけるで~」

どっちかというと先を行っているみんなとの差を縮めていく方だと思うんですけど……まあ、今はいいです。

「森久保……森久保、乃々です。ファンになって貰えると、あの、嬉しいです……」

「Perfume!」

「違います」

「ノノノノノ~」

「ふふっ、なんですかそれ……」

米倉さんは変な人だけど、面白いです。まるで事務所のみんなのようでした。


休暇明けのお仕事は勇気を出して、ちょっと強く当たってみようと思います。

これにて終了です。だらしねぇクロス失礼しました

おつう

元ネタ知らんけど面白かった

レスリング最近だらしねぇな

乙wwwwww
これはズルいwwwwwwwwwwww

どういうことなの…

歪みねぇな

妖精ってそういうことかよォ!

歪みねぇクロス乙
面白かったよ

ユガミネェーナwwwww

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