魔王「お前は勘違いをしているぞ、勇者よ」勇者「は?」(19)

勇者「魔王の話に耳を貸す気はない!一気に決める!」バッ!

魔王「落ち着けよ勇者」スッ

勇者「!?」(体が動かない!?)

魔王「お前さ、俺が人間に攻撃を仕掛けるように仕向けたとでも思ってんだろ?」

勇者「お前以外に誰がいるって云うんだよ!」ギリッ

魔王「だから勘違いしてるんだって…ま…お前が俺を殺して満足するなら死んでやってもいいが…」

勇者「そう云うんだったらこいつを解け!その首掻き切ってやる!」

魔王「…ふっ…いい顔だな勇者、まるで本物の魔王みたいだ…」

勇者「!?」

魔王「俺を殺すことに執着し、怨念と闇を込めたその瞳はまるで魔王だ」

勇者「そんなことは…!」

魔王「お前が俺を憎もうがどうかは勝手だが、まずは俺の話を聞け」

魔王「それでもまだ俺を恨むなら煮るなり焼くなり好きにしろ」

勇者「…聞こう」

魔王「いい返事だ」スッ

勇者「!…俺を解いていいのか…」

魔王「客人を拘束したまま話を聞いてもらうわけにはいかないしな」

勇者「…」

魔王「まず一つだ、お前は全ての種族が魔族と思っているだろう?」

勇者「どういうことだ」

魔王「例を云うなら…『魔族』は俺のように人間となんらかわりない容姿をしている」

魔王「ただ、魔獣や竜などの魔物は『魔族』ではない」

勇者「?」

魔王「魔獣は『魔獣族』竜は『竜族』だ、『魔族』とは形が違うならな」

魔王「お前等も野を駆ける兎を『人間』とは云うまい?」

勇者「それは分かったが…それが何か関係あるのか?」

よくわからん

まってる

魔王「大ありだ、お前等が主だって魔族と呼んでいるのは正確には『魔界に棲む五氏族』を総称したものなのだろうが…」

魔王「五氏族の中にも派閥があってな、俺の意見を尊重する『魔族派』と人界への侵略を推し進める『魔獣族派』がいるのだ」

勇者「貴様の意見も人間の侵略の癖に何をぬけぬけと…」チャキ

魔王「剣を納めろ、まだ話は終わっていない」

勇者「…っ」チャキ

魔王「…俺のねらいは戦争の集結だ、人界の土地ではない」

勇者「!?」

魔王「そうするには…まぁ後で話そう、では次だ」

勇者「ま…待ってくれ!お前は魔王だろ!それなのに何で人間の世界に興味がないなんて…」

魔王「いや、興味がないわけじゃないぞ?人間の作物や学問にも興味が…」

勇者「そういうことじゃないっ!」

魔王「…」

勇者「俺は…一体何なんだ…魔王を倒すどころか…今はこうして魔王の云うことを聞いている…!」

勇者「魔王を倒すことが出来なければ…俺には一体何の価値があるんだ…」ポロポロ

勇者「俺は…俺は…」

魔王「…次にいくぞ」

魔王「お前は…まさか人間だけが虐げられてきたとでも思ってたのか…?」

勇者「…?」

魔王「……今から二千年ほど前までは人間と魔物達は共存していたという…」

魔王「しかしな…一部の欲の深い人間は魔物達の高い魔力や身体能力に目をつけ魔物達を乱獲しようとした」

魔王「魔物はこれに徹底抗戦、魔物達はそれぞれの種族の王を選び、彼らを筆頭にして戦った」

魔王「このとき生まれたのが初代魔王だ」

魔王「魔物達の高い身体能力や魔法は、数では五倍ほど圧倒する人間と拮抗し、両軍は多くの死者を出した…」

魔王「さすがにこれ以上戦死者を出すわけにはいかなくなったので、両軍は休戦協定を結び、一時は戦争は終結したのだが…」

魔王「そのときの戦況は…数で圧倒する人間側が少しではあったが有利だった」

魔王「だから人間達は休戦協定の際、魔物をこの辺境の地に追いやり、ろくに刃向かえはしないようにした…」

魔王「昔は此処も青々と茂る緑があったというが…今は魔物達が生み出す憎しみが障気を生み、木々は枯れてしまった…」

今日は短いけどここまで

即興で書くとなかなか解説や設定が長くなってしまうので困りまするwww

一言挟む所に隠された臭さを感じる

魔王「分かるか?長い歴史を見れば人間だけが被害者ではないのだ」

勇者「…っ!でもそんなの、物の見方で!」

魔王「そう、物の見方…つまり『価値観』だよ」

魔王「やはり俺は魔族だからな、魔物側をひいきした形になってしまう…おまえもそうだろう?勇者よ」

勇者「…俺は…魔王を倒すためにここまできた…」

魔王「そうさ、お互いが『正義』を持っているから解りあえない」

魔王「……誰かが時代を大きく動かさないかぎりはな…」

勇者「…」

魔王「…勇者よ、俺と共に世界を突き動かさないか?」

勇者「…?」

魔王「俺達で世界の信念を変えよう」

魔王「血を血で洗う戦いを」

魔王「重ねてきた悲しい歴史を」

魔王「俺達で断ち切ろう!勇者!」

勇者「…一つ条件がある…俺の…使命を教えてくれ」

魔王「…使命なんてない、自分が良いと思う道を進めばいいんじゃないか?」

勇者「ふっ…おかげで吹っ切れた、その誘い乗った!」

魔王「…ありがとう、勇者」

勇者「こちらこそだ、魔王」

魔王「よし、まずは人間の主都市に行こう」

勇者「行ってどうするんだ?」

魔王「物価の変動状況や財政の様子を確かめる」

勇者「確かに…戦争によって利益をあげてる国もあるからな」

魔王「あーそれとこいつも連れていく、おーい」パンパン

カツカツ

勇者「?」

側近「お初にお目にかかります勇者様、私、魔王様の側近を務めさせていただいてます」

側近「ただし夜の魔王様はそれはそれは激しくて側近の私でも相手が出来ないのですが…」ウットリ

魔王「おい…デタラメ云うとクビだぞ」

側近「そんな毒のある魔王様もすてきですわぁ~」

勇者「何のことだ?」

魔王「…お前がアホでよかったよ」

勇者「何で!?」

側近「では勇者様、これからはよろしくお願いします」キリッ

勇者「お…おう」

勇者「でも何で財政の様子なんて調べるんだ?」

魔王「お前が云ったように戦争との関連性や各国と中央の関係を調べるためだ」

魔王「いつかは人間の王と五氏族の魔獣族派をまとめて会談を行う予定ではあるのだが」

勇者「道のりは長い…か」

魔王「ゆっくり行こうじゃないか、急ぐ道でもない」

側近「私は魔王様の為ならどこまでもついていきます~」

勇者「そういえば側近は何のために?」

魔王「あぁ…こいつは情報収集に長けてるからな、町に行ったらいろいろ働いてもらう」

側近「キャー!魔王様にほめられちゃったー♪」

勇者「へぇ、すごいんだな」

勇者「でも詳しい財政なんて王に聞いてみないと分からないんじゃないか?」

魔王「そこで…だ、南の国には『中央の使者で経済アドバイザー』という肩書きをつかって謁見する」

勇者「でもそんなの、中央に直接確認をとられたらバレるんじゃ…」

魔王「あくまで戦争中だぞ?南の国は大陸の最終防衛線だ、中央に使者を使わす余裕なんてないさ」

魔王「そして、その後は各国に『南の国の経済アドバイザー』という本物の肩書きをつかってふれ回る」

魔王「こうやって話してても疑問は尽きないからな、後は追々話そう」

魔王「では勇者、転移魔法は使えるか?」

勇者「あぁ、南の国だな……一つ良いか?」

魔王「何だ?」

勇者「お前は俺より勇者らしいな」

魔王「俺はただの魔王さ」

勇者「そうか…じゃあ行くぞ!」

シュン!

今日はここまで

しっちゃかめっちゃかwww
もうどうにでもなれいww

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