ジョナサン「安価で奇妙な冒険がしたい」(103)
僕の名前はジョナサン・ジョースター。父のような一人前の紳士を目指すごく普通の少年だ。
今日から僕に家族に増える。父の恩人の息子、ディオ・ブランドーだ。歳は僕と同じらしい。仲良くなれるといいな。
「かえして! かえして! 手が取れるゥ!」
女の子の悲鳴が聞こえる。声のする方へいってみると、二人の男が女の子をいじめていた。
精巧な人形。もう少しで腰に届きそうな髪。なかなか育ちの良い家の子なのだろう。
彼女の走る姿勢はまるで動きがちぐはぐで、走り回る二人の男の間でキャッチボールになっている人形に一向に追いつけない。
反面、男の片方は、余ったズボンの裾をまくりあげている。
身体の成長を見越して大きめのものを買ったか、あるいは兄弟のものを使いまわしているのか。
どちらにせよ、そう金銭面に余裕のある家庭では無いのだろう。
金持ちを、ただ金持ちだというだけで目の敵するというのは、今ではそう珍しく無い話だ。
かつて知と礼節の象徴だった貴族位は、時代とともに大きく変わってしまった。
暴利を貪って君臨する支配階級と、家柄を商品にして新興の投資家に売り渡した没落貴族。
その中で真の紳士たる貴族など、数えるほどしかいない。
「よし! 人形の服を脱がしてやるぜ!」
僕は当然 >>2 をする
波紋疾走!
かつて僕の父、ジョージ・ジョースターは奇妙な東洋人と出会ったことがあるという。
馬車の事故によって生死の境を彷徨った父は、ダリオ・ブランドーの介抱を受けたあとも、全身に後遺症が残っていた。
そんな時、父の下には、多くの医者が訪れて匙を投げていき、次いで魔術やら錬金術やらを使うと称する輩が現れ、やはり皆去っていった。
もはや治る見込みは無いと誰もが確信したころ、その東洋人は雨でずぶ濡れになりながらジョースター家にやってきた。
心優しい父は二つ返事でこの素性不明の男に一日部屋を貸し、男は代わりに父を治療したのだという。
治療を行うところは、誰も見ていない。ただ、父が完治した結果には反論のしようが無かった。
話が街に伝わる頃には男は既に姿を消しており、その名前すらも定かではない。
僕は、その男から特別な呼吸法を教わっていた。
「な、なんだぁー?」
男たちの足元の草に波紋を流した。植物は生命磁気。波紋を流せば自由に動かせる。
引き合う長草が男の足に絡みつき、動きを止める。
「はっ……はっ……追いついた。返してもらうわ!」
これで良い。紳士は自分のしたことを殊更に誇るものではない。
波紋を解いて男を開放し、僕は静かにその場から立ち去った。
蹄鉄が地面を固める音がする。車輪の回る音は滑らか。
市場へ向かう馬車とは違い、荷台の軋む音も無い。
間違いない、ジョースター家への来客だ。
はたして漆黒の馬は門の前で足を止め、岩のような筋肉を伝う汗が美しい。
そのいななきに合わせる様にスーツケースが投げ出された。
成り上がりの富豪が着るスーツは、いかにも動きづらそうだ。
彼らは老舗のテーラーが仕立てる服の可動性を知らず、自分で自分の動きに制限をかける。
生地の持つ物静かな光沢は、主人の動きに合わせて皺を寄せる瞬間のグラデーションにこそ現われるというのに。
だが目の前の少年は違う。彼には気品がある。
でなければ、馬車から飛び降りる動作があんなに美しいはずがない。
「>>5」
僕は相手の空気に飲まれまいと一回深呼吸をして、それから相手に声をかけた。
ジョナサン「アナルを拡げて腕をいれるッ!その激痛は波紋ローションでやわらげるッ!」
東洋の毒薬っていくらくらいするんだい?
紳士服を知り尽くした僕の手に掛かれば、同年代の相手の服など3秒で脱がせることができる。
下に限ればその半分で可能。ベルトを外して引きずりおろすッ!
「アナルを拡げて腕をいれるッ!その激痛は波紋ローションでやわらげるッ!」
くらえッ! 僕の研究し尽くした妙技を!
「甘っちょろいぞ、ジョナサン・ジョースター!」
な、なんだ、この感じ。まるで毎日浣腸でもやってるのかってくらいの清涼感、締め付け。
絶妙な動きで僕の手を奥へ導き、それでいて前立腺には触れさせてくれない。
そして何だ、この奥にある硬いものは。汚物じゃないぞ!?
「ぼ、ぼっちゃま、それは……!?」
次の瞬間、ディオは一瞬で居住まいを正してスーツケースを手に取っている。何たる早業……!
そして出迎えに出た執事の視線の先、僕の手には大人のおもちゃが残っていた。
その日、僕の食事は抜きとなった。僕は泣いた。
ベッドに頭をこすりつけて泣いた。僕の血と汗と青春を吸ったこのベッドだけが、僕の努力の跡だ。
ベッド下に隠した宝物たちが消えた部屋は、少しだけ涼しい気がした。
ディオは次々と僕の領域を犯していった。
一階トイレ、二階トイレ、離れのトイレ、使用人用のトイレ……。
もはや僕の心が休まる場所は自室しかなく、段々と外出が増えていった。
外で出来た友達と過ごす時間は心地が良かった。
飽くなき知の探究、美しい筋肉美と汗に彩られた日々。
だがそれさえも、ディオの牙は見逃さない。
「みなさん! ここにいるアベサンに代わって、新しい友人が参加したいとの申し出がありました」
「な……ディオ!」
「新しい友人を知るために、>>9に参加させてみるのもいいかと思うのですが、どうでしょう」
天皇陛下
どういうことだってばよ……
自宅トイレを使わせないとか酷いなww
やばすぎワロタ
なんだこの無駄に高い完成度はwww
「コーさんが動くのか……!」「コーさん……!」「おい、誰か止めろよ」「あいつ生きて帰れるのか」
「い、いや、俺達は歴史の動く瞬間を見ているのかもしれない」「コーさんって誰」「ついにあの御方が動くのか」
ディオは戸惑った。ジョジョと試合になるものだと思っていたからだ。
「初めてみるけど、コーっていうのかい? よろしくね」
大仰な身振りで相手に握手を求め、その隙に左手でグローブの中の石を抜いておく。
相手がジョジョ以外なら、まずはフェアで清々しいイメージを作ることに専念するべきだ。リスクを犯してまで完勝を目指す必要は何処にもない。
「いえ、それは皆さまがつけられたニックネームになります。koe――キングオブイーストの略なのだそうです」
東洋人の年齢は、西洋人には読み取りづらい。顔の彫りの浅さ、背が低さが、東洋人全体を子供のように感じさせてしまう。
だから20代の天皇が混ざっていたとしても、そう大きな違和感は無かった。
西洋風に直された髪は、精悍な顔と相まってユダヤ系の青年のような雰囲気を作る。
堂々としたヒゲは少年たちの中にあって確かな存在感を表していた。
「キングオブイースト……? 随分と立派な名前だね。そんなに強いのかい? お手柔らかに頼むよ」
「ええ。『剣は敵を断つものにあらず。迷いを断つにあり』――必要以上に相手を痛めつける心積もりなど毛ほどもありませんとも」
ディオは感じ取った。相手の視線が己の身体をすり抜けてその先のものに向かっていると。先ほど抜き取った石のことが見透かされているのだと。
この場の全員の意識が二人に集中した、完全なタイミング。誰もディオがグローブから石を抜き取った瞬間を見ることなどできないはずだった。
だというのに、ディオの身体自体が目隠しとなり、絶対に気付きえないはずの位置にいる相手が、気づいている。
(俺は自分の手で場の注目を集めたと思っていた……だが違う。連中が、このコーという男に集中していたんだ!)
後に闇の帝王を名乗る男。そして旭日の帝王と呼ばれた男。これが二人の出会いであったッ!
「ところでブランドーくん。我々のゲームは遊びじゃあないんだ。闘うなら、自分に金を賭けてもらう。もちろんコーさんも了承済みだ」
(ど、どうする。さっきジョジョの奴が今月のお小遣いを全てコーに賭けてやがった。相当な強敵と見て間違いない……。
だがここで出し渋り、挙句の果てに負けるようでは、この集団の実権を握ってジョジョを排除する計画はいきなり座礁する)
「もちろんいいとも。さあ、やろうかコーさん」
ディオはお小遣い三か月分を帽子の中に放った。
周囲の少年たちが、ほとんど見たことも無い大金に眼を白黒させている。
(どうだッ! 東洋の猿にこれだけの賭け金が用意できるはずが無い! 当然レートは下がる。
これで俺は勝負のリスクを最小にしつつ、同時に並みの男ではないとアピールができる!)
だが天皇は平然と同額を支払い、ボクサーグローブをはめて構えを取った。
「グッド。ルールを説明しよう。顔面に一発入れば即負け。ボディはいくら打たれてもいいが、ノックダウンは勿論10カウントだ。いいね」
「顔に一発入れば勝ち。素手でやるのと変わらないな。そのルールならロンドンでやっている」
審判が下がり、ディオと天皇の視線が絡み合う。
ディオの視線はその後天皇の身体へと移り、蛇のように執拗に構えの隙を伺う。
それと対照的に、天皇の視線はディオの瞳の奥深くへと刺さっていった。
(こ、こいつ……自然体なのに隙が無い。中国武術の極致、無構えの構えというやつか?)
ゴングの音が響き渡る。初めて出会った強敵を前に、ディオは奇妙な感情を覚えた。
ある種親しみに近いものだ。この相手は並はずれているがために、誰にも理解できない。
きっと今受けている声援も、この男にとっては不協和音にしか聞こえないのだろうと思った。
「やってやる! お前を倒せるのはこのディオをおいて他にいないッ!」
開幕一閃、ディオの身体が吹っ飛んだ。
「容赦ねえ……」「やった! これでコレクションを集め直せる」「流石コーさん」「何が何だか分からない」
どこにヒットしたのかすら分からない速攻。困惑した審判がとりあえずカウントを取り始めたところで、ディオが起き上がる。
「貴様、何故俺の顔面を狙わなかった? なめているのか?」
「もしそうしたなら、あなたは敗北を認められなかったでしょう?」
「良い趣味してるじゃないか。後悔させてやるよ。このディオをコケにしたことを!」
踏み込むと見せかけて、地面に蹴りつけて体重を後ろに。素早く身をひく。
ほとんどディオの踏み込みと同時に放たれた天皇のストレートを、ディオが撫でる様にして捌く。
一瞬の接触はディオの反作用の力を与え、今度こそディオが天皇との距離を詰める。
「あくまでボディを打ってのノックダウン勝利にこだわる姿勢、その奢り高ぶりこそが貴様の隙だ!」
ディオのパンチが天皇の顔面を狙う。一撃目をガードされ、そのまま間髪入れず第二撃を腹に向けて。
天皇は飛び退いて身をかわし、即座にディオの元に飛びかかる。狙いはやはりディオの腹。
「気付いたようですね。己自身のあやまちに」
走り寄る勢いによって重心移動の力を得た攻撃は、まさにボクシングにおける居合抜き!
ディオはかろうじて天皇の攻撃をガードするが、その拳を通じて伝わる衝撃によって受けるダメージが思わずよろめく。
「どういう、ことだ……」
天皇は追い打ちをかけようとはせず、その場に立ち止まってディオを眺めている。
悠然とした立ち姿には、しかし相変わらず隙が無い。
「あなたは強い。しかしその心は隙だらけだということです」
ディオの全身に、痺れにも似た感覚が走る。外部から供給された過剰なエネルギーが、ディオの身体の均衡を崩す。
まだ十分な余力を残しているはずの身体が、何故か膝をつく。手で身体を支えなくて崩れ落ちてしまう。
「何をした……」
ディオの身体が地面に倒れ伏す。無様に地面とキスをさせられるのは、ダリオ・ブランドーに酒瓶を投げ付けられて以来のことだ。
屈辱の炎に身を焦がしながら、しかしディオは起き上がることはできない。
「何をしたと聞いているんだァ! 答えろ!」
最後の一押しをするようにディオの身体を激しい衝撃が奔り、体中の筋肉が引き延ばされる。
仰向けで手足を張り詰めた姿勢は青虫か何かのよう。
「貴方には分かりますまい。しかし、この力を望むのならば……そのしるべは我が国の旗にあります」
ディオはテンカウントが流れていくのをただ黙って聞いていることしかできない。
天皇は柔和に笑う。ディオには、その笑みは嘲りのものとしか思えなかった。
ジョナサン「い、今起こったことをありのまま話ry
ディオが痺れたッ!
まるで陛下が主人公っ!
ジョナサン影薄っ…
朕茲ニ戦ヲ宣ス
みんなが消えたあとで起き上がって敗北を認めたディオは、唇を噛みしめながら僕に借金を申し込んだ。
これまで聞いたことの無い声色だった。惨めとか、痛々しいとかよりも、寂しそうに見えた。
僕が差し出した手を振り払って、ディオは地平線の向こうへ走り去っていった。
あれ以来、ディオの僕への攻撃は目に見えて少なくなった。
どうやら暇を見つけては身体を鍛えているらしい。
父や使用人には見つからないようにしているようだが、僕はディオが木陰でシャドーボクシングをしているのを何度か見ている。
部屋に籠る時間が増えたのも、筋トレをしているからのようだ。
元々大柄だった身体に良い筋肉がついてきた。身長は僕と同じくらいだが、横に立つとはっきりと幅の差が出る。
僕から借りたお金で新しい服を調達しているようだし、体格が変わったのは間違いないだろう。
だがそれでいて、その瞳には依然あった自信が欠けている。
ある時、父がディオを呼び出した。二人きりで話がしたいのだという。
何を話し合ったのかは知らない。ただ、父の部屋を出てきたディオは、いきなり僕に物凄い剣幕で詰問してきた。
「あの……! あのコーという男はどこにいるッ! お前は知っているのだろう! ジョジョ!」
胸倉を掴もうと伸ばされた手を払う。ディオの勢いは止まらない。
「何だその哀れむような眼はッ! お前にも俺が負け犬に見えるのか。
やり場を無くした感情を、自分の身体にぶつける……俺の父、ダリオ・ブランドーの亡霊を俺に見るというのかぁああああああ……!」
下手な答えはできない。これは一人の男の一生に関わる瞬間なのだろう。
僕はディオの目を見る。あの荒々しさは、以前の炎のような色合いとはもう違う。
水を振り払う濡れ猫。見えないガラスにぶつかってもがくカラス。そして、水の中でもがく在りし日の僕だ。
僕は意を決してディオに答えた。
「>>24」
日本だ
「日本だ」
「……しばらく留守にする。ジョースター卿の許可はもう貰っている」
極東の小国など、と馬鹿にするかと思った。眠れる獅子の傍らの島国だ。
人によっては名前すら知らない。
だがディオは無言で自室に戻り、スーツケースを抱えて玄関に歩いて行った。
「待て。僕もついていく」
どうしてそんなことを言ったのか、自分でも分からない。
「邪魔だ。俺は馬車と客船で優雅な旅をするわけじゃない。第一、田舎国でポンドが通用するかさえ分からん。
スリの手を捻りあげて道案内をしてもらう旅になる。貴族の坊ちゃんは狭い世界で大人しくしていろ」
どうしてそうまでしてついて行こうとしたか、今でも分からない。
「コーさんは、並の身分じゃない。君一人で行っても会えないだろう。だが僕の名前を出せば会ってくれるかもしれない」
「ほう。ならば俺がジョナサン・ジョースターの名を騙れば、一人でも会えるわけだ」
「僕は彼の本名を知っている。彼の住んでいる場所も概ね予想がつく。
君は彼のニックネームしか知らないだろう?それだけで人探しをするのは難しいんじゃあないかな」
ただ、思えば僕はこの旅に何か見えない導きのようなものを感じていた。
いじめられていた少女を助けた時と同じ、本能的な正義をそこに感じた。
「30分後に出発する。ついて来たいなら勝手にしろ」
19世紀末。まだ日清戦争が起こる前のことであり、日本は未だ弱小後進国と認識されていた。
西欧諸国から見れば既に清の勢力圏の中の国であり、それゆえに手も出し辛く、結果として無視されていたと言える。
だがイギリスは、早くから日本と繋がりをもっていた。海軍戦力の充実のためにイギリス製軍艦を買いあさる日本の、一見無尽蔵とも見える財力が英国を驚かせた。
底抜けな明るさで重税を耐え抜いた明治人の在り方などイギリスは知るよしも無く。黄金の国ジパング伝説が独り歩きをする。
その統治者、明治天皇は黄金の魔法使い――メイジとしてイメージされていた。
これはそんな時代の物語。若者が黄金の精神を育む旅である。
「ジョジョ。2分の遅刻だ。この俺の貴重な時間をどうしてくれるんだぁ?」
「僕からお金を借りてる人の言葉とは思えないな。時は金なりって言うだろ」
話がとんでもない方向に転がろうとしてるぞ
トルコ! ヨーロッパ大陸とアジア大陸の間に位置し、チグリスユーフラテス川の源流を持つ国。
文化面でもギリシア=ローマとイスラムの双方を影響を受けた国であり、まさに西と東の境界線といっていい。
一方で尖塔とモスクが立ち並び、一方で先進的なビルが建てられる。夏場の乾燥した空気が光を僅かにゆらし、その双方を調和させる。
あらゆるものを取り込む気質を持った土地である。
「狭い道ばかりだ。馬車を使う貴族はいないのか?」
「大通りは馬車だって通るさ。だけどそういう場所は観光客を狙った詐欺やスリ師が多いからな」
「君は人を信用しなさすぎるよ」
「今のトルコは海運業をイギリスに取られ、領地をドイツやオーストリアに取られてしょぼくれてるんだぜ。現地民に襲い掛かれても不思議じゃないね」
その言葉を合図にしたかのように、襲撃者は突然現れたッ!
「パゥ!」
紅いカッター……それは波紋を吹きこまれたワイン! 歯の隙間から圧力をかけて吐き出された液体は鋭い刃となる。
ダイヤモンドの粉塵を加えた高圧水流、ウォーターカッターは鉄を真っ二つに切断できる。ならば波紋を加えた水流はダイヤすら切り取ってみせる!
「噂をすれば……か。いいぜ。こういうのは慣れてる。かかってこいよ」
攻撃を予想していなければ、決して避けられなかったろう。ディオのはすんでのところで身をかわし、代わりにその手のスーツケースが切り裂かれる。
中身の散乱したケースを投げ捨て、ディオは攻撃の来た方向を振り返る。
「いない……?」
「ディオ、上だ!」
男は塀の上から跳び上がり、上空からディオに迫る。
チェック柄の帽子。仕立ての良いスーツにネクタイをつけ、ヒゲがダンディな男。いかにも紳士然とした格好。
その手の中のワインは、グラスにたっぷりと注がれているにも関わらず、男の跳躍に際して一滴たりとも零れていない。
「パウウ! パウパウ!」
波紋カッターが上空から降り注ぐ。同時に3つ、一つは垂直に、残る2つは曲線を描いて左右からディオに迫る!
ディオは冷静にその軌道を見極めて、その場で跳び上がった!
男のスーツの裾を掴んで引っ張り、正面から迫る波紋カッターに対して盾にする。
その間に足元を2つの波紋カッターがすり抜けていく。
「ぬッ!」
男の手が波紋カッターを撫でると、水を固めていた分子が飛び散って波紋カッターが分解される。
だがその勢いは止まらない。周囲に飛び散った波紋カッターの断片の一部が、男の帽子を裂いていった。
ディオの頭を蹴りつけて、無理やり拘束を抜ける。
ディオはその動きを先取りして先に身体を縮めて頭を引くことで、ダメージを最小にした。
正直自分でもこの話がどこにいくのか分からない。とりあえず地理歴史をもうちょっと真面目にやっておけば良かったと後悔している。
石仮面「………」
まだ吸血鬼化さえしてないのにツェペリさん出て来たww
そして話が何処に向かってるか分からないのに変にそれっぽい
このディオ・・・人間をやめないぞ!?
1部メンバーで3部みたいな大移動するのか
ディオが素でジョナサンに接し始めてるな
面白いから良い
奇妙だから良い
しかし安価で日本って出たから日本に行くとは……真面目というべきか柔軟性がないというべきか。
>>37
愚直なまでの素直さ
と
柔軟性に富んだ文章力
これ以上に何が必要かね?
安価でここまで膨らませられるとは……
身体を屈める体勢は、防御に繋がるだけではない。それはエネルギーを溜める体勢。
ディオの頭を蹴って飛んで行った男を、ディオがジャンプで追いかける。
全身をバネにした跳躍は高速にして豪快。その行動はそのまま、相手の背に対する頭突きになる。
一つの動きが二つ三つ先を見通す。ディオの計算高い性格が表れた一連の連携攻撃! 空中の相手に方向転換は不可能。完全な計画!
「脊髄直撃コースだッ! ミミズみたいにのた打ち回れ!」
だが、男はさらにその上を行く!
フリーズオーバードライブ
「凍結波紋疾走!」
手の中のワインを空中にばらまくと、ワインがまるで一枚の布のように空中に広がる。
くっつく波紋を最大限に活用した今、ワインは分子レベルで凝縮し、氷となった。
男はワインの壁を殴りつけて方向転換を果たし、ディオは砕け散った氷の中に突っ込むことになった。
「なかなか筋は良いようだが……しかしただの人間が波紋使いを相手にするのは無謀というもの」
「波紋……だと!? あなたは今、確かに波紋と言った!」
「考え事はあとだジョジョ! 援護しろ! 荷物を持ってかれるぞ!」
氷の破片によって服のところどころに穴が空き、血とワインの滴で赤く染まったディオが、それでも男に向かってとびかかる。
男はワイングラスを投げつけて反撃。ディオが横っ飛びで回避する間に、男は足元に落ちているディオのスーツケースを拾い上げた。
「くっ! 波紋を悪用する人がいるなんて……! 波紋使いの端くれとして、僕はあなたを止めなくてはならない!」
ジョジョのパンチは手のひらで受けとめられ、続くジョジョのキックよりも早く、相手の蹴りがジョジョをふっ飛ばす。
即座に反転して背後から来るディオの回し蹴りの隙をついて、ディオの腹にカウンターパンチを決める。
まさかの波紋修得済み
ディオは膝をつき、ジョジョは吹っ飛んだ先の壁に体を叩き付けられて倒れた。
男はディオの壊れたスーツケースを手にして走り去っていく。中から物が零れ落ちていくが、男が気に留める様子は無い。
「この痺れるような感じ……! あの時と同じだ! この力を波紋と呼ぶのか」
「波紋は人のための力。僕はそう習った! 僕はあなたを止める!」
ジョジョが地面を這い、地面に散乱する凍ったワインに触れる。
スカーレットオーバードライブ ターコイズブルーオーバードライブ
「緋色の波紋疾走! そして青緑波紋疾走!」
波紋を溜めて物質を熱する技。そして液体の中で強く速い波紋を伝える技。
波紋が氷を溶かし、溶けだしたワインを伝導して波紋が奔る!
だが二種の波紋による連携をもってしても、既に遠くまで逃げて行った男には届かない。
「受け取れディオ! これが僕の波紋だ!」
だが目的は、負傷したディオの回復と強化にある。地面を濡らすワインを伝わって、波紋がディオの身体に刺さった氷を溶かし、傷を埋めていく。
ディオの周囲には、スーツケースから零れ落ちたものが散らばっている。
「おい強盗、走り出すのはピッチャーが投げた後だぜ」
ジョジョから借りっぱなしになっていた腕時計が、男に向かって投げつけられる。
投擲は筋力以上に技術がものを言う。横方向にかかった回転が空気抵抗を受け流す。
金属製の時計は野球ボールより重く硬い。その差は当然投擲にも現われる。重力を受けて緩やかな放物線を描き、男の後頭部に吸い込まれるように飛んでいく。
「くらえ、デッドボールだッ!」
腕時計が迫る。文字盤が陽光を反射して黄金色に輝き、空を裂いて男に肉薄する。
瞬間、男は後ろに目がついているかのように、頭を下げて攻撃をかわした。
「甘い。この状況で重視すべきは速度ではない。いかに風切り音を消すかだった。筋はいいが、若いな」
スーツケースから石で出来た奇妙な仮面だけを取り出し、残りを投げ捨てて。
男はトルコの街の入り組んだ路地の中に消えて行った。
後を追おうとしたジョジョを、ディオが止める。
「まずは散乱したものを拾うのが先だ。早くしないともってかれるぞ。幸い、あの仮面以外は特に取られたものはなさそうだ」
「僕にとって大切なのは、物を取られたことじゃあない。波紋使いが強盗をしてるって事実だ」
「一人で行って勝てると思うのか? あれと戦うなら、手を組む必要がある。まずは波紋とやらについて知っていることを教えてもらおう」
「だが今逃したら、もう一度あの男を見つけるのは至難の業だ」
「いいや。あの男、俺たちと同じホテルに泊まっていた。初めから狙っていたんだろうな。
今から急いで戻れば、荷物を取りに戻った奴を待ち伏せられるかもしれない。たとえ遅れても、フロントにチップを詰めば情報を掴める」
「……今追いかけない理由は分かったが、ならなおさら急いで戻るべきだったんじゃないか?」
ジョジョが疑問をはさむ頃には、既にディオは散らばった荷物をロープでまとめ終えていた。
支援
ここで石仮面がくるか・・・持ち歩いてたんだ
誰に習ったんだよw
>>46
コウさんに決まってるだろ
普通にいい感じのコンビっぽくなってるなこの二人w
いいや限界だ!『保守』するね!
保守保守保守保守保守保守保守保守保守ゥ!
「ディオ! あの仮面は父のものだ。何故君が持っている!」
「ああいうのはな、東の野蛮人を見て優越感に浸ろうとか思ってる観光客に言い値で売れるんだよ。
父の許可は貰ってる。何の問題も無いさ。それより波紋とやらの説明を早くしろ」
宿まで走りながら言葉を交わすジョジョとディオ。
ディオの弁明に納得したわけでは無かったが、父に問いただしたところで「確かに許可した」と言うに決まっているので追求はやめた。
たとえディオが嘘をついていたとしても、あとでディオだけを呼び出して少し説教する程度だろう。
「これから波紋法の説明をする。決して人に言うんじゃないぞ」
ディオに言い負けた鬱憤を転化して、ジョジョの走りが加速する。太い膝が蒸気機関のように勢いよく上がり、水車小屋のハンマーのように地面を蹴る。
「言わなくても分かってるさ。特別な奴ってのは持ち上げられて利用されるか、恐れられて迫害されるかのどちらかだ」
「それは違うぞディオ。力ある者には責任がある! 僕は波紋使いの一人として……」
ジョジョの走りがディオを引き離す。ディオが荷物を手に持っているからだけではない。
ジョジョの全身が一体となって疾走を作り出す。地面の反動、空気の抵抗、全てを後方へ受け流して加速に変える。
感情の昂ぶりが、ジョジョの秘められた才能の片鱗を明らかにした。
結局、ジョジョが先行し過ぎたために波紋の説明はできなかった。
無駄な金は使えない、という点で珍しく意見の一致をみた二人が選んだ宿は、値段の代わりにサービスを犠牲にした安宿だ。
半ば叩き割るほどの勢いでドアを開けて入ってきたジョジョに対して、店主はただ視線を向け、そして薄いコーヒーを口にするだけ。
「この店に……その! 変な男が泊まってるだろ」
「ああ。いるね」
「そいつに会わせてくれ! 頼む、大切なことなんだ!」
「俺の前に眼の怖いお兄さんがいるよ。昼間っから酒たあ感心しないね」
「違う! そうじゃなくて、気取った帽子にスーツの男が……」
遅れてきたディオがジョジョの横に陣取り、カウンターに座る店主の手にコインを握らせた。
「石でできた仮面を持った男が来たはずなんだが、その仮面は僕の持ち物でね。取り戻したいんだ。
なあに、すぐ教えてくれれば警察沙汰にはしない。ただ自分のものを取り返したいだけなんだ」
「いやあ、お客さんのプライバシーに関わるからねえ」
「仕事に忠実なのは良いことだが、悪人をかばうのはあなたのためになりませんよ」
カウンターの上に追加の札が乗る。渋い顔をするジョジョをおしのけてディオが店主に笑いかけると、ようやく店主が口を割った。
「二階の一番奥だ。喧嘩しようが構わんが、部屋を荒らしたらお代はあんたたちだからね」
息を殺して目的地に近づく。
確認のために握ったドアノブが、まさか何の抵抗も無く開くとは二人とも予想していなかった。
面食らった表情のジョジョと、慌てて相手を睨みつけるディオ。
二人に対して、部屋の主は柔和に笑いかけた。
まるで永い間暮らしていたような雰囲気の部屋。
調度品は部屋にもともとあるボロばかりだが、それが不思議と男にマッチしている。
床に転がる人形。箪笥の上には値札のついた耳かき。ベッドの上には胡椒の瓶が転がっている。
ミスマッチの塊が調和を生み出す。異質な空間がジョジョとディオを呑んだ。
その中心で仁王立ちする男が、再度二人に微笑みかけ、そして口を開いた。
「>>54」
ぼ~く~ド~ラ~え~も~ん
う~~ううう あんまりだ…
h e e e e y y y y
あ ァ ァ ァ ん ま り だ ァ ァ ア ァ
ahyyy ahyyy ahy whooooooohhhhhhhh!!
おおおおおおれェェェェェのォォォォォうでェェェェェがァァァァァ~~~!!
ツェペリさんだとばかり思っていたら…
頼むから物真似であってくれ
パネェssだな丁寧だ
保守だッ!
真面目にやっててわろうた
はよ
「ぼ~く~ド~ラ~え~も~ん」
妙にもったいつけた動きで腹のあたりに手を伸ばし、何もない空間に大して何か握っている様な形で手を掲げて一言。
「てれれってれー! たーけーこーぷーたー!」
その後も一人で部屋の中を歩き回り、男のよく分からない行動は続く。まるで舞台を外れた舞台役者、背景の無い人形劇。
生気を感じさせない作り物臭さを持った行動と、圧倒的な存在感を持った男自体が相まって、何とも気味の悪い空気を醸造している。
「こいつ、狂ってやがる! こいつは相当危ないヤクをやってる感じだ。まるで俺達が見えてない」
「馬鹿な。僕たちを襲ってきた時、この男には意志と理性があった。柔軟な肉体から繰り出される合理的な攻撃。
規則正しい呼吸が強力な波紋を練り上げ、僕ら二人を手玉に取るほどのパワーを生んだ。狂人に出来る芸当じゃない」
「いや、末期の薬中には二種類ある。一日中メランコリックになってスカスカな脳味噌で作った自分の世界に閉じこもるタイプ。
そしてもう一つは、一見冷静なように見えて、ただヤクを買う金のことだけを考えているって奴だ。後者はその理性の全てを捧げて売人に金を渡す。
でもって仕事終わりに存分に良質なトリップを楽しむ。こういう性質の悪い麻薬は、そこらの浮浪者よりも貴族連中の中で流行ってる。お前も気をつけるんだな」
裕福な環境で育ったジョジョは、知識として大まかには知っているも、別の世界の話。
それをディオは直接見聞きしてきたように語る。そのリアリティ、説得力。ジョジョを唸らせ、悩ませるに十分。
(波紋戦士が麻薬の虜になるなんて。それに貴族の間で麻薬が流行っているという話もショッキングだ。
確かにこの雑然とした部屋は、それだけ無駄遣いができる金銭的余裕を表している。この男も貴族生まれの波紋戦士なのだろうか。コーさんのように。)
ディオが部屋の主を無視して奪われた石仮面を探している間、僕はこの狂った男を見つけている事しかできなかった。
「まったく、のび太君は……」「いける! これで僕は漫画界の王になる! おい素雄、早速見てくれ!」
「おばけっていいなー」「おいのび太、野球しようぜ!」「これで……コンビは解散だ」
テンションの急激な上がり下がりの末、男は部屋の中央に座り込んで黙った。急に糸が切れたようにうなだれる。
これが薬が切れる、ということなのだろうかとジョジョは思う。
異様な熱気は消え、男の肌に浮かぶ汗が冷えていくさまがなんとも虚しい。
「ジョジョ、あったぞ。あの仮面の、残骸だ……」
ディオのひっくりかえしたゴミ箱から、空のワインボトルと一緒になって石の破片と砂塵が落ちる。
粉々に破壊されたそれからは、もはや以前の仮面の形は読み取れない。未開の地の歴史を連想される、あの粗削りながら引き込むもののある仮面は、もう無い。
「こんな奴に煩わされるなんてついてないぜ。ジョジョが節約しようとかいって安宿選ぶからだぜ」
「君だって賛成していたじゃないか。それにこの宿を推したのは君だ。こういう金にせこそうな店主は逆に信用できる、とかいって」
キター!と思ったらツェペリさん……
男が動いたのは、ディオとの言い合いが始まろうとしたとき。
ゆらりと、草木が萌え出ずるように。自然極まりない動きは視界の中にあって、しかし注意を引くことはなく。
ディオとジョジョの間に立って、それから口を開く段になって、ようやく二人は男を再認識した。
「すまない。私はまだ未熟でね。未来を見ようとすると、ついヴィジョンに取り込まれてしまう」
「未来を、見る……?」
「そうだ。君も波紋戦士なら知っているだろう。波紋を極めた者は未来の一端を見ることが出来る。
私も見よう見まねでやろうとしてみたのだが、やはり上手くいかなかった。いや、見苦しいところを見せてしまった。すまんな」
「ジョジョ、波紋にはそんなことまでできるのか?」
「いや、僕は聞いたことが無い。波紋とはアヤカシ使いと戦うための技術だと聞いているが」
「ふむ。私の師とは系統が違うのではないかな? 波紋戦士は世界各地を飛びまわって戦いを続けている。
波紋法の応用性は高く、それゆえに教え継がれていく中で個性を持つこともある。個人で新たな技を身に着けることも少なくない。
わが師トンペティは未来予知を得意としているが、他の波紋の師がそうとは限るまい」
良かった‥‥‥!薬中になってなくて本当に良かった‥‥‥!
「君たちは波紋を知っているようだが、石仮面というものは知っているかな?」
ゴミ箱から落ちた屑を手で集めてから、男は自分自分の指を噛んで血を垂らす。
ゾゾッ! 石の屑が膨張する。生物か何かのように。
大きな破片の一つからは、石の突起物が飛び出している。力強い動きは、いくらか美しかった。
「これは石仮面。人を化け物に貶める魔の道具だ。私はこれを全て破壊することを生涯の目的としている」
「化け物……それはアヤカシですか」
「確かジャパンの言葉だったな。日の本の波紋使いが戦う相手。目に見えない、力ある何か、だったかの?
石仮面が生むのはそれとは違う。石仮面が生むのは吸血鬼だ。闇に生き、死人を従える最強最悪の生物。私には吸血鬼と戦う義務があり、力がある」
「波紋ってのは人をイラつかせる技術とセット販売か何かなのか? さっきから俺は一言も謝罪の言葉を聞いていない気がするが。
お前の事情は知らないが、少なくとも説明なしで人の持ち物を取り上げていい理由なんて一つも無いよな」
「ああ、すまなかった。一応言っておくが、麻薬は波紋を知る前に少しアヘンに手を出しただけ。私はこの通りの健康体だ」
「そんなことを聞きたいわけじゃない。石仮面がそれほどのものなら、その価値も相応ってことだろう? もっとはっきり言わないと分からないか?」
「ディオ、待て。石仮面がこの人の言うとおりのものなら、その行動は筋が通っている」
「離せよジョジョ。落ち着いて考えても見ろ。こいつは僕らの父の持ち物を勝手に奪って壊したんだぜ」
ディオが味方という状況に妙に頼りがいを感じる
そういや予言能力が波紋を極めた結果得たスタンドって説があったっけ
何にしてもドラえもんでもなく「ピー!」な人でもなくまともなツェペリさんで良かった
やっとキタ━(゚∀゚)━!!
この二人今でこそ奇妙かつ絶妙なバディだけど初対面でアナル掘ってるんだよな…
ああ今更気づいた トンペティがジョナサンと握手しなかったのは予知能力のせいか
wktk
待ってる
「それはそうだが……父だって話を聞けば納得するさ」
「そういう問題じゃないだろ。人のものを盗んで壊すってのは事情に関わらず罪だ」
「ふむ。分かった。石仮面に値段はつけられんだろうが、この程度で勘弁してもらえるかね」
部屋の隅におかれた壺の中から出てくる、イタリアの土地の権利書。
耳かきのケースをひっくりかえすと、耳かきの領収書と一緒に丸まった約束手形が落ちてくる。
何語だかよく分からない本に栞代わりに挟まれているのは、それまたどこの国のものやら分からない紙幣。
「長い旅行になりそうだったので、旅費自体は十分に用意してあってね。
貴金属の価値はどこでも同じだろうが、こういったものは東洋では役に立つまい。これでよければ……」
その言葉を途中で手で遮って、ディオが俯いて黙り込む。
それまでの軽妙な語り口は成りをひそめ、時間が止まったが如き沈黙が広がる。
その雰囲気の変化に対応してもっとも上手く対応してのけたのは、その場の誰でもなく部屋そのものだろう。
使い古したらしき調度品は、その傷に哀愁を漂わせ、床に落ちた紙面は光を照り返して内容を隠す。
「ディオ、どうした?」
時計の針の音が良く聞こえるようになり、ようやくディオが口を開く。
「俺に波紋を教えろ」
「ほう……しかし波紋法は悪用を防ぐために、その伝授の前に人格を見極める長い期間を必要とする。
悪いが私は旅の途中なんだ。審査をしている暇は無い」
「え? 僕の時はそんなことは何も」
「んーむ。日本の波紋の師……。もしかすると君は……。いや、そうだな」
ディオに差し出したものを片付けながら、独り言で考えを整理し、男は切り出した。
「ジョジョ、といったか。旭日の継承者よ。君に聞こう。この男は、波紋を託すに足るか否や」
「>>76」
加速する!
正直、かつての彼なら託すには足りないと思う。けど、今の彼は変わろうとしている!僕は彼の変化を友として後押ししたい!!
黄金の意志が両者に芽生え初めている感じが出ててイイネ
メメタァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
あれー?ツェベリさんアヘンやってる...
ジョジョの一部は確かアヘン戦争より少し前の時代だしその時代なら中国、インド(イギリス)、イギリス
の三ヶ国の、そこそこ金を持ってる奴にとっては煙草や酒と同じ扱いだろ。ちょっと気分が良くなる嗜好品的な。
uryyy!!!
まだかまだかまだかまだかまだかァァァ
ホシュ
「正直、かつての彼なら託すには足りないと思う。
けど、今の彼は変わろうとしている!
僕は彼の変化を友として後押ししたい!!」
返答が終わるや否や、男はその場からディオに飛びかかり、その胸を突く!
「よくぞいった! 伝授しよう! 我が波紋の真髄を!」
「あ……う、ぉぉぉおお」
「そうだ。そのまま息を吐き出して肺の中を空にしろ。波紋は呼吸から生まれる!
これまでの呼吸は全て忘れろ! これからお前の肉体に太陽の波長を直接たたき込む!」
肺を収縮させるのは指の力ではなく、そこから流れる静かで力強い波紋。
肺を傷付けることなくその中の空気を押し出していく。
「これは一体。僕のときはこんなことは……」
単独で一つの生き物のように躍動する肺が最後の息を吐き出し、両の面がぴたりとくっついた。
「さあ! 吸うがいい!」
「これは……むず痒いような、いや、熱い!? 血が燃えている。う、うおおお! 血管がはち切れそうだ!」
「波紋がコントロールできていないんだ。エネルギーを産む能力だけが異常に活性化している」
「落ち着け。波紋とは本来何かを傷つけるものではない」
ディオの筋肉が膨らみ、服の上からぴったりとラインが浮き出る。ボタンが震える。糸がきりきりと音を鳴らす
「う、あ、あ……」
床の上に置かれたものがカタカタを揺れ出す。震動は大きくなり、部屋全体が地震に襲われているよう。
「なんて荒々しい波紋ッ! 波紋には使い手の心の在り方が表れる!
このアトランダムにまき散らされる波紋! 対象を失った闘争心、といったところか。くっ、波紋を持つには幼すぎたか」
男が再びディオに襲い掛かる。その場での跳躍、落ちるタイミングに合わせて頭を鷲掴みにかかる。
だがその手はディオの頭蓋を掴むことは無かった。
「対象が無い、だと? 違う! 俺には目標があり、計画があり、手段がある!」
その場で屈んでの回避。そこからの頭突き。基本的だが効果的な連携。
男はそれを背を後ろに反らして避け、戻す瞬間にこちらも頭突きで返す。男とディオの頭がぶかりあい、互いにバランスを崩してよろめり、そして立ち直る。
ぶつかり合う互いの頭部。人体最大の弱点の一つである脳を守るため、頭蓋は特に硬くできている箇所。
首回りの筋肉は鍛えづらく、それゆえに頭突きの練習など普通は行われない。そんなことをするのはヘディングするサッカー選手くらい。
だがそれは頭突きに技術が存在しないことを意味しているのではない。
「う……ぐっ……」
「やはり若いな。お前にはパワーがある。技がある。だがそれを活かすこと、磨くことが足りない」
頭蓋骨は1つの骨ではない。複数のパーツからできている。当然その継ぎ目は、頭蓋骨にとっての弱点。
波紋が溢れ出しているディオに波紋の力をもって対抗するのは効率が悪いが、そんなことは関係ない。
純粋な戦闘技術の面で、ディオを大きく上回っている。脳を直接揺さぶる頭突き、人である以上耐えられるはずがない。
「波紋で刺激された肺は波紋の呼吸をやめないだろうが、睡眠中に波紋を溢れさせるほどの力はまだない」
一度頭突きの衝撃から立ち直ったはずのディオが、口を半開きにしたまま背後に倒れていく。
筋肉が床面にあたる音に混じって、波紋が拡散していく音がけたたましい。
「失敗だったな。だが才能はある」
「まるで燃え盛る業火のような波紋だった。あの人とはまるで違う……」
「彼は波紋を扱うには未熟だった。だが、波紋を生み出す感覚にはもう慣れてしまっただろう。
私が止めても、独学で波紋を深めていくに違いない。それだけの才がある。
猿が歩き出してから、ものを言葉で表すことを覚えるまでに四百万年。
そこから人は十五万年で芸術と音楽を生みだし、二万年で農耕を初め、五千年で金属を使い始める。始まった進化は止まらない。
波紋とは人の新たな段階を目指す力でもある。人の進化の歴史と同じように、波紋もまた進化する。彼の波紋はきっと強くなる。」
「波紋の、進化……?」
「そうだ。波紋が導く新たな力、それを我々は幽波紋と呼ぶ。ひょっとするとこの男、その域に至るだけの才をもっているやもしれん」
話しながら男がジョジョの前で掌を広げると、そこに赤い花がある。
一度手を閉じて花を握りつぶし、再度開くとあら不思議。そこには赤みがかった透明なゼリーのようなものがあるばかり。
別に幽波紋とは関係なく、ただ赤ワインを波紋で固めただけ、と説明した上で男は手の中のワイン塊の両端を持って引っ張る。
「チベットの地図だ。この濃い赤線は川を示している。このヌーと呼ばれる川を上ったところ、わが師がいる。
できるだけ早く会った方がいい。もし操る資格をもたずに幽波紋に到達すれば、力だけが暴走することもある。」
できたのは赤の濃淡で描かれた精密な地図。男がそのワインの地図をジョナサンにむかって軽く投げる。
空中で震えながらも形を保っていた地図は、ジョナサンが触れた瞬間にただのワインに戻ってしまった。
「はっはっはっ。修行が足りんのう。力を加えるタイミングが遅い。波紋の流入が偏っている」
波紋自体がそこらの幽波紋以上に便利とはいえ、二部でも波紋で戦う設定のままだったらインフレがとんでもないことになってそうだ
とりあえず今の部数にいくほど続いてはいないかもな
待ち
スレタイ見てファミレスのジョナサンかと思った
(´・ω・`)
まだかな…
すげー面白いのに埋もれてるだァー!
まだか
はよはよ
ディオはどうなったのよ
楽しみに待ってるからはよ
スト様期待
保守
奇妙な冒険楽しすぎ
日本行く前にチベットかよ
続き読みたいなあ
アブドゥルとポルナレフの奇妙な冒険の人だよね。面白いけど完結したの見たことないや。これもそんな感じだね。
>>101 そうだったとしても俺はageるッ!!
もう来ないのかな?
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