エレン「明日は・・・」(28)

進撃の巨人ssです。
単行本8巻か9巻までのネタバレありなので、ご注意ください。
ssというかただの心理描写みたいな感じになってしまいました。
読みにくかったらすみません。

登場人物はエレン・ミカサ・アルミン・リヴァイ・ハンジです。
女型の巨人出現=初の壁外調査から女型の巨人を捕える作戦決行までのある1日です。
コメディ要素はないです。
それでは、次から投下していきます。

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ごめんなさい・・・うぅ、ごめんなさい・・・・

『信じて・・・?私たちを信じて・・・』


ガバッ!!!

思い切り頭を上げた瞬間、グラリと眩暈が襲い、自然と手が頭を支えた。


ああ夢か・・・
いや・・・夢じゃない。現実だ。それも残酷な現実。
オレがあの時選択を間違えなければこんなことに・・・

兵長は「結果は誰にも分からない」と言ってくれた。

でも、でも・・・
後悔だけが、重くのしかかる。


そんな様子を憲兵たちがジロリと見つめた――ああ、そうだよな。オレは化け物だもんな。

その時、地下室のドアが開いた。
ハンジさん、兵長、それからミカサとアルミン――


ハンジ「やぁ、エレン!気分はどう?」

リヴァイ「・・・・」


この二人は強い、仲間があんなに死んでもどうしてこんなに強くいられるのか。

兵長が憲兵をギロリと睨み付ける。

リヴァイ「おい、憲兵。こいつは化け物だ。そんな銃で対抗できると思ってんのか?怪我してる俺とクソガキの幼馴染、銃を持ったお前とどっちが強い?」

憲兵「し、しかし・・・」

リヴァイ「あ゛あ゛?」


こ、こ、こえーーーー、慣れたとは思ってたけどやっぱり兵長の本気の目はこええ!!

ハンジ「ちょっと、リヴァイ!そんな脅さなくても素直に外に出てって言えば良いのに」

ハンジさんが憲兵にごめんねーと言って、部屋の外に出させた、なかば無理やりだったが。

ミカサ「エレン、目が赤い。それに隈もできてる」

エレン「うっせー、ミカサ!!オレはお前の弟でも子どもでもないんだぞ!!」

ミカサがシュンとするのは、見慣れた姿だ。
だけど―明日会えなくなるかもしれない―その兵士としての現実をたたきつけられた今、少しの罪悪感がよぎる。


アルミン「・・・明日だね」

女型の巨人の正体が、アイツが仲間を殺したのかが分かるんだ、分かってしまうんだ、明日。

ミカサ「・・・エレン?」

アルミン「・・・エレン、どうしたの?どうして泣いてるの?」

エレン「・・・え?」


自分でも気づかないうちに目から涙が零れ落ちていた。

「かっけー!これがあの調査兵団か!!あんなにボロボロになっても戦い続けるなんて!!」

思い出す、子どもたちの眼差し、思わず目を逸らしてしまった、あの眼差し。

オレは皆の期待に応えられなかった。
仲間を沢山失った。
女型の巨人が沢山の仲間を殺していった。
そして、オレがした選択のせいで皆死んだ。

オレは・・・明日の現実に・・・耐えられるのか・・・?


エレン「うっせーー泣いてなんかねぇよ!!目にゴミが入っただけだ!!!」

ミカサ「・・・・・エレンは悪くない」

エレン「・・・な!?」

ミカサ「エレンは悪くない、結果は誰にも分からない」

エレン「でも、オレのせいなのは・・・間違いないだろうが・・・!」


ああ、畜生。涙がとまらねぇ、情けねぇ。
思わず手元の布団で顔を隠す。

ミカサ「違う。悪いのはあの女。女型の巨人」

エレン「・・・・・」

だからこそ、信じたくないんだよ。この世界の現実を。

アルミン「・・・エレン」

アルミン「この壁の外のずっと遠くには・・・炎の水や氷の大地、砂の雪原が広がっている、塩水の『海』だってこの世界の大半をしめているんだ」

エレン「おま・・・そんなことここで・・・!!」


急いで兵長とハンジさんに目を向ける。
兵長は不機嫌そうに明後日の方向を見ていた。
ハンジさんは興味深々でこちらを見つめている、よだれ垂れていますよ・・・


アルミン「僕達はいつか・・・外の世界を探検するんだろ?」

・・・そうだ。

忘れていた訳ではない。
けれど、ここしばらくどこかに閉まっていた。
壁から一歩外に出ればそこは地獄の世界だ。

でも、オレはこの世に生まれてきた。誰もが自由なんだ。
だから、オレは外の世界に出るんだ・・・


ミカサ「・・・戦わなければ、勝てない。そうでしょ?エレン」

エレン「ああ。分かってる。
オレはこの世から一匹残らず巨人を駆逐してやる!
それで、外の世界を探検するんだ!皆も連れて行ってやろうぜ?
オレの話なんざ、全然信じてなかったから、アイツらきっと驚くぞ!!」


ハンジ「あのぉ盛り上がっているところ申し訳ないんだけど・・・そろそろ時間が・・・」

リヴァイ「そろそろ憲兵がクソから戻ってくる。お前ら、帰るぞ。」


その声を聞いて、ミカサとアルミンはオレの元を離れた。
皆がドアの外に出て、すぐさま銃を抱えた憲兵が戻ってくる。


エレン「・・・おい!二人ともありがとう。兵長、リヴァイさんもありがとうございました」

ハンジ「じゃあ、明日ね」

――明日か。
――戦わなければ、勝てない。
明日が来れば、分かるだろう。この心のモヤモヤも、女型の巨人も、オレの命がどうなるのかも。

『皆で外の世界を探検するんだ!』
それまで皆、どうか、どうか生き残ってくれ。

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エレンは思いの外、憔悴していた。

そりゃそうだろう。
自分が巨人であると知っても、エレンを信じてくれていた先輩方があっという間に死んだんだ。
自分だったらきっと耐えられない。
作戦に前向きでないとは分かっていたけれど・・・


アルミン「兵長、ハンジさん・・・ありがとうございました」

ハンジ「まぁ、明日だしね。エレンにはやる気になって貰わないとこっちも困るから、さ」

ミカサ「・・・兵長」

僕の前にいるミカサが静かに敬礼のかたちをとった。


ミカサ「私が判断を間違えたため、兵長に怪我をさせてしまい、申し訳ございませんでした。明日の作戦では私が責任を持って女型の巨人を仕留めます。」

リヴァイ「もういいって、言ってるだろうが。お前はあの鼻水垂らしたガキを守ることに努めろ」

ミカサ「はっ!」

兵長が武骨な態度でミカサを睨みつける。
その視線に思わず、僕の身体が固まってしまった。

リヴァイ「・・・その敬礼は、公に心臓を捧げるという意味なのは知っているだろうが・・・。お前の心臓はあいつだけのためにあるのか?」

ミカサ「・・・っ。いいえ、人類の復興のために捧げると誓いました」

リヴァイ「なら、良い。感情だけに従うな」

ミカサ「はい・・・」


そういうと、兵長とハンジさんは踵を返して廊下を歩いていった。
・・・兵長は意外と優しいんだな・・・、うん。

アルミン「僕たちも行こう、ミカサ。」

ミカサ「アルミン・・・。エレンは私が守る」

アルミン「うん、分かってるよ」

ミカサ「でも、私だけじゃどうにもならない時がある。アルミンは頭が良い」

アルミン「はは、ありがとう」

ミカサ「・・・エレンを守って、アルミン」


ミカサ「もし、この世から一匹残らず巨人を駆逐できたら・・・
その時もエレンを守る。だから、アルミンも必ず生き残っていて。
エレンの夢は、私の夢・・・」

声をかけようとした。けれど、僕は辞めた。
顔は見えなかったけれど、ミカサがその赤いマフラーで顔を半分隠したから―――

エレンはまだ気づいていないかもしれない、鈍感だから。
でも、エレンだって・・・

いや、考えるのは止そう。
今は明日のことに集中するんだ。
あんなに強いミカサが僕を頼ってくれている。

――僕だって、エレンを守る。明日も、これからも。
――明日どんなに辛い現実が来るとしても、戦ってやる。絶対に。

新しい世界を勝ち取るために。

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ハンジ「もう、いっつもリヴァイはあんな言い方するんだから~」

リヴァイ「うっせぇぞ、クソメガネ」

ハンジ「ミカサじゃなくて、アルミンがビビッてたよ~」

リヴァイ「知るか」


先の壁画調査でミカサをかばって怪我をしたというが・・・
意外と優しいんだね、リヴァイは、って言ったら怪我してるとはいえ、
殴られそうだから辞めておいた。

明日の作戦について考えを巡らす。
今度こそその中身を捕える――それが私たちの使命、そして、エレンの命を守る唯一の方法。

なんだかんだ考えていたら、いつの間にか自室のドアに激突していた。
いってぇ~!!思わず叫んだその声に、リヴァイは呆れたように盛大な舌打ちで慰めてくれた。

メガネが割れなくて良かった。

ハンジ「さぁてと、今回の壁外調査の報告書をさっさと書いてしまいましょうかね!」

リヴァイ「・・・」

ハンジ「明日は大仕事が待ってるしさ~」

リヴァイ「・・・」

ハンジ「あーー巨人の研究レポートもまだ書き終わってねぇ!やべぇ!」

リヴァイ「・・・」

ハンジ「報告書の紙・・・報告書の紙・・・どこだ~~」

リヴァイ「・・・」

ハンジ「よしよし、これに・・・」

リヴァイ「・・・」


ハンジ「・・・ねぇリヴァイ、用事ないのに何でここに居んの?」

リヴァイ「あ゛?」

私の斜め後ろの机にもたれかかって、椅子に座っている私を上から睨み付ける。
戦闘服を着ていないリヴァイを見るのはなんだか新鮮だ。

私は椅子に座ったまま、背もたれに体重をかけて、
リヴァイの顔を下から覗き込んだ。

ハンジ「ねーねー、報告書書くの手伝ってくれても良いんだよ~怪我してても文字くらい書けるでしょ?」

リヴァイ「うっせークソメガネ!!さっさと書きやがれ!!!!」

怪我しているくせに思いっきり椅子を蹴飛ばして、私の上半身は机にのめり込んだ。

報告書をいっつも書かされているこっちの身にもなりやがれ!
戦死者の報告書を書かされているこっちの身にも、さ。

沈黙の中、筆を走らす音だけが流れる。


『戦士者報告』
・・
・・
・・

―――班
―――――――調査兵
―――――――調査兵
―――――――調査兵

リヴァイ班
ぺトラ・ラル 調査兵
オルオ・ボザド 調査兵
エルド・ジン 調査兵
グンタ・シュルツ 調査兵

以上―名は自分の使命を全うし、壮絶な戦死を遂げた。

以上。


ふぅと溜め息をつく。
この間まで一緒にお茶を飲んでた子ばかり。

ハンジ「この子たちの意志を力にして、戦わなきゃね、リヴァ・・・」

斜め後ろのリヴァイの方向に振り向きながら、途中で言葉を止めた。
いや、止まってしまった。

窓の外、そして壁の外の青空を見つめている。
彼の目線の先を見つめると、青空の中で雲が流れている。
木が風になびいて、鳥が空を飛んでいる、とても自由に。

ああ、なんて残酷なんだ。
あんなに仲間が死んでいったのに、何事もなかったかのように、時間が流れてゆく。
あの鳥たちが羨ましい。

あの自由の翼。

リヴァイはこの世界に何を見ているのか。
思わず机に目を戻したが、そこには辛い現実が記されていた。
柄でもない・・・そう思いながら、力いっぱい下唇を噛み、メガネが曇るのを防いだ。

リヴァイ「俺は明日見ているしかできない」

ハンジ「ふぇ!?」


突然の発言に思わず素っ頓狂な声が出てしまう。


リヴァイ「まぁ、エルヴィンとアルミンが考えた作戦だからな。問題ないと思うが。女型が暴走したり、エレンが変なことをやり出した時は―」
任せておけ!!!分隊長だぞ!!!と、リヴァイの発言を遮って立ち上がった。


そうだ、明日だ。
明日が来れば、何かが変わるかもしれない。
巨人の謎が少しでも解明できるかもしれない。

ハンジ「ねぇ、エレン達の言ってた外の世界ってどう思う?塩水がいっぱいなんて笑っちゃうよね、『海』だっけ?」

リヴァイ「さぁな」

ハンジ「・・・エレン達の言ってた皆に私たちも入ってるのかなぁ?」

リヴァイ「さぁな」

ハンジ「はは、でも、連れていって貰えるとしてもリヴァイはおっさんになってるかもね~」

うっせぇぞ、クソメガネ!!と蹴りが飛んでくるのをヒョイと避けた。
怪我して身体なまったんじゃないのーー??
チッ!!黙れ、クソメ・・・


ああ、こういうつまらない日常が一番幸せだ。
ここにいる私よりも小さい三十路の男と大きくなれる少年。
それが人類の希望・・・か。

――折れてしまった仲間の翼の分まで私たちは飛ぼう。
――自由のために。

嵐の日まで あともう一日。
自由への進撃はこれからだ。

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以上です。
最初に言い忘れましたが、某ミュージカルを観たことがある人はその台詞に気づくかもしれません。

弱気なエレンと弱気なミカサと弱気な分隊長を書きたかったのでした。
ありがとうございました。

面白かった
乙!





ありがとうございます!
人生初ssでした。
今度はコメディ系も書いてみたいです。
ありがとうございました。

シチューの話がしたいようなので貼っておきますね

「彼氏の実家に行ったらご飯にシチューをかけて食べてた。正直、将来うまくやっていけるかどうか不安になった。
一瞬、結婚できないとも思った」と語るのは、都内の商社勤務のol智子さん(26歳)。
彼女は当編集部の記者の知人女性で、同僚の男性と今年のクリスマスに挙式の予定。
 
・ご飯にシチューをかけて食べはじめた
そんな彼女が先日、彼氏の実家に3度目の訪問をしたという。今回は、はじめて彼氏の実家に宿泊。
夕食を彼氏の母親が作ったらしいのだが、そこでとんでもない出来事があったとのこと。
彼氏、その父親と母親、そして彼氏の弟全員が、ご飯にシチューをかけて食べはじめたというのだ。

おつおつ

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