ゆりしまっ!! (14)

私の名前は、赤島泉。
四人姉妹の長女である。しかし、この妹たちがかなりの曲者。
とにかくシスコンなのだ。

では、そんな私達四姉妹のなんの変哲もない普通の日々をお送りしたいと思う。

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ほう...

私の朝は早い。
両親が共働きで夜遅く帰ってきて、朝早く出るのが習慣となっているので、長女である私が朝の準備をするのだ。
そんな私は大学二年生。入るのは難しく、出るのは簡単、だ。

「おらー、楓、起きろ」
「んん……」

高校二年生、次女の楓は身長がスラリと高く、顔は誰に似たのか整っている。夏である今はキャミソールにボクサーパンツと言った格好で布団から細い脚を出して眠る姿は、だらしないが色気がある。
睡眠を邪魔されて歪んだ顔も恨めしい事にいやらしい。
こいつは朝が非常に弱いので、まず第一に起こしておかないと、後が面倒なのだ。

「かーえーで!起きろっつってんだろ!」
「……起きたー……」
「起きてねぇよ」

目を瞑って寝返りをしている人間が起きているに値するなら私は逆に寝ているのかもしれない。
あぁ、いやそんなどうでもいいことは置いておいて。
などと逡巡していると、私の腕を何か強い力が引いた。

「お?」

体勢を崩した私は、そのまま楓の眠るベッドに倒れ込んでしまった。
そしてあっという間に楓の腕の中に収まった。

「おいっ!楓」
「姉さん……おはようのちゅーして」
「しね」
「ん?それともされたいのかなー?」
「ちげぇよ。離せ、そして死んでくれ」
「あ…っ、そんなに罵られたら感じちゃう…」
「勝手にイってろ」

楓の腹に一発決めると、そのまま部屋を出た。
次はあいつらだ。

「桜、柊、起きてるかー?」
「おっはよー!泉ねぇっ!!」

そう言って元気よく飛びついてきたのは、柊。四女だ。
その双子の片割れである三女の桜は既にパジャマから制服に着替えている。

「柊。うるさいぞ、朝は静かにさせてくれ」
「桜、おはよう」
「おはよう、泉姉さま。今朝のご飯は何かな?」
「昨日の残りのカレー」
「悪くない。ほら、柊、リビングに行くぞ」


三人が食卓につくと、カレーを四人分配置する。我が家は朝はニュースを見るのだが、どんなに暗いニュースが流れても笑いの場が出来てしまうのだから不思議だ。

「泉姉、今日バイクで送ってよー」
「怠けるな柊。姉さまはこう見えても忙しいんだぞ」
「どう見えてんだよ」

さて、姉妹が揃ったところでこいつらのもう少し詳しい紹介をしようと思う。

次女、楓。髪は亜麻色で、肩のあたりで切りそろえている。先ほども言ったが、姉妹の中で一番美人だろう。
しかし、糞変態である。
三女、桜。中学一年生。話し方が変わっているが、基本的にはいい子だ。若干黒いところがあるのが読めない部分ではあるが。髪は黒でロング。下の方がウェーブになっている。
四女、柊。桜と同じく中学一年生。双子の妹だ。活発でいつも大ぼけをかましてくれる。黒髪を一つに結っていて、こいつにはよく似合う。

「いいじゃーん!バイクでびゅびゅっとー!」
「朝からびゅびゅっとか言わないでよ、柊。興奮するじゃない」
「真顔で変態発言してんじゃねぇ」
「というか、私だってバイクで送ってもらいたいんですけど!?」
「急にキレたな」
「黙れ下衆共。泉姉さまは貴様らの都合のいい道具ではない」
「桜……」
「さて、スクーターは二人乗りならギリギリセーフか?」
「だと思ってました!!!」

感動を返せ、桜。

「分かった。じゃあこうしようよ。運転席に私、前に柊が立って乗って、桜が後ろと」
「待て」
「ん?」
「私の存在が意味を成してないんだが」
「やだなぁー。分かってるよー。姉さんは私の膝の上で」
「さて、準備はできたか?」
「はーい!」

楓を華麗にスルーして、双子は元気よく学校に向かっていった。

「お前も早よ行け」
「行ってきますのちゅー」
「拳でもいいか?」
「行ってきます!」

こうしてやっと家が静かになる。私は今日は3限からなので、食器を片付け、洗濯物を干し、掃除機をかける。我ながら三人の子供を抱えた主婦のようでたまに泣きたくなるなぁ。



「かっえでー!」
「あぁ、おはよう、さっちゃん」

彼女の名前は沙知絵。私、楓の学校で一番仲のいい友達だ。さっちゃんは私の元まで走ってくると、嬉しそうに息を弾ませる。

「さっちゃん、お手」
「私犬じゃないよ?」

だって見た感じ犬なんだもん。
気を取り直し、一緒に教室に向かう。クラスメイト達と挨拶を交わすと、自分の席に着いた。
私の通う高校は女子高だ。可愛い女の子達を見ているだけで心が安らぐ。まぁ、泉姉さんに敵う女の子なんて存在しませんがね。
はっきり言おう。私はモテる。男女問わず。
でも、私が心から愛してるのは、姉さんだけなの……

「おい、赤島、気持ち悪い笑みを浮かべているところ悪いが、出席してるんなら返事しろー」

何故女子高なのに男の教師。
こいつらの頭の中は可愛い女の子がきゃーきゃー寄ってくるのを「仕方ないなぁ」とか言ってはべらしたいに決まってるのだ。私だってしたいもん。

なんだかんだで今日も退屈な授業が始まる。


中学に上がって最初の夏。
双子の私達は、何故か奇跡的に同じクラスになった。親類縁者はクラスを分けられると聞いていたのだが、不思議な事もあるものだ。しかし正直な所、安心してしまった部分もある。それが何故なのか分からない。柊が心配だからなのか、私が寂しいからなのか。
席まで隣同士にされるのはやりすぎだと思うのだがな。
授業が始まり、早速柊が私のノートを覗き込んでくる。

「ほー。やっぱり桜はノートのまとめ方がうまいね!」
「写させんぞ」
「いいじゃんかよー。うーつーさーせーてー!」
「赤島姉妹、うるさいぞ」

ほら、柊のせいで私まで怒られる。こいつと席を離せば解決するという事を教師も思いつかないものか。
……いや、こいつの場合……

「桜ー!ノート見せてー!!」

と教室の端から端まで大声で呼んでくるに違いない。面倒な妹だ。

「先生ー、桜がノート写させてくれません!」
「自分で書きなさい」
「寝たいんです」
「お前これから立って授業受けろ」

お、ナイスシンクロだ、担任。

私には特に将来なりたいものとかはない。それを探すために大学に通っているわけだが、二年生になってもなかなか先の事は思い浮かばないものだ。

「赤島、おはよう」

そう声をかけてきたのは、取っている授業の講師、高坂美冬先生。私は何故かこの人に話しかけられると、顔が熱を持ってしまう。それが何故だか自分でもよく分かっていない。

「おはようございます」
「今日も妹たちにやいのやいの言われたようだな」
「な、なんで分かるんですか」
「ん?君の顔を見ていれば分かるよ」

悪戯っぽい笑みを浮かべ、私の頭をぽんぽん、と叩くと高坂先生は去っていった。
やっぱり苦手だな。

「泉、お願い!」
「なんだよいきなり」

友人の静が、手を合わせて拝んでくるので、一体何事かと思えば、レポートを忘れてしまったので写させて欲しいという事だった。まぁ、それくらいいいか、と私はレポートを貸した。

「……泉」
「あ?」
「こんなに堂々と落書きしちゃだめだよ」
「あぁ!?」

レポートを見ると、余白の部分にウルトラマンの絵が書いてある。無駄に上手い辺り、いや、上手い下手は別として、こんな事をするのはあいつしかいない。
私はレポートを握り締めると、今夜の夕飯は全てあいつの嫌いなピーマン料理にしようと誓った。
それにしてもウルトラマンの横の吹き出しに「愛と勇気だけが友達さ」と書いてある。

「アンパンマンなのかウルトラマンなのかはっきりしろよ!!」

悲痛な私の叫びは教室中に響き渡ってしまった。


--------

すみません、また続きは夜に書きます。

SS板は不慣れなので至らないところもありますが、お願いします。
安価とかもしてみたいです。

感想とかくれると喜びます。

では。

期待

「なんでピーマン尽くし!?」

顔面蒼白でそう叫んだのは、私のレポート、しかも一日かけてやった大事な大事なレポートにウルトラマンを描いてそいつにアンパンマンのセリフを言わせた大馬鹿者、柊だ。
私はあのあと、あのページだけ書き直すということで事なきを得たのだが、それでもきちんと躾はしなくてはならない。
……だから私はこいつの母親じゃねぇんだっての……
そう一人で落ち込んでいる所に、楓が優しく肩に触れ、微笑んでくれた。口をそっと開く。きっとなにかとんでもなく感動的な労いの言葉をかけてくれるに違いない。

「姉さん……ピーマンって十回言って?」
「本当もうくたばれよぉぉぉ!!!!」

はい、こいつに期待した私が馬鹿でした。

「ううー……苦いよー」
「柊が悪い。全く、昨晩やけに珍しく自分の力で宿題をやっていると思ったら、こんなにくだらない事をしていたのか」
「だって!テーブルの上に紙があったんだもん!いかにもウルトラパン描いてくれって感じの!」
「ウルトラパン?」
「うん、あのキャラの名前」
「謎が解けた」

今ならじっちゃんの名にかけてもいいと思った。

結局柊はピーマンの存在感をありありと主張する夕飯をだらだら文句言いながら食べて終わると、すぐさま歯磨きをしに行った。
片付けも終わり、ようやくくつろげる時間が訪れた。妹たちは宿題をしているし、私は幸い課題がないので、バラエティ番組を流しながら雑誌を読んでいる。
そんな時、短い音楽と共に、「あの」アナウンスが流れる。

「お風呂が湧きました」

どどどどどどど……

あぁ、来てしまった、この時間が。

「いーい!?最初はグーだからね!」
「ふっ、約束はできないね。チョキ出しちゃうかもよー?」
「負けてるじゃないか」

そう、我が家の風呂タイムはとてつもなく騒がしくなる。何故か、いいところに気がついた。こいつらは一人で風呂が入れないのだ。…と言うと語弊がある。
とても面倒なので認めたくない事実ではあるのだが、「私」としか入りたがらないのだ。と言っても我が家はそこまで風呂に余裕はない。いつもこの時間になるとじゃんけんで誰が私と風呂に入るのか決めるのだ。

「じゃーんけーん」

「ぽんっ」

「うふふふふふ」
「サザエさんは今関係ねぇだろ」

楓の小さなボケに一応ツッコミを入れ、私は早々と風呂の支度をする。
「うおっしゃぁぁぁ!!」と気合の入った勝利の雄叫びをあげたのは、どうやら柊のようだ。楓と桜が床に突っ伏している。そんなに重要か?風呂。

「おっふろっおっふろっ」
「随分楽しそうだな」
「うん!泉姉とお風呂!私勝ったの一週間ぶりなんだよー」

にひひ、と歯を見せ無邪気に笑う柊は、さっさと服を脱いで風呂に突進した。

「体洗いっこしよーぜー」
「はいはい」
「…泉姉、これ背中?胸?」

ばっこーんといい音を立て、私は無言で柊を殴った。流石に背中は言い過ぎだ馬鹿が。
騒がしい洗いっこが終わると、二人で浴槽に浸かる。柊は楽しそうに今日学校であった事などを話していたが、ふと急に黙った。どうしたのか、と顔を覗き込むと、少し悲しげな表情だ。

「どした」
「泉姉、私の事嫌いになっちゃった?」
「は?なんで」
「だって、ピーマン尽くし……」
「な、あれはお前が私のレポートに落書きすっからだろうがぁ」
「うー。ごめんなさい」

柊はそれなりに落ち込んでいるらしい。
思いつきとノリで行動するやつだが、きちんと反省も出来る。
私は後ろから抱きしめてやると、頭に顎を乗せ、「嫌いになるわけねぇだろ」と囁いた。
聞こえてるか聞こえてないかはわからん。ただ、柊はこっちを振り返ってニコーっと笑った。

ちょっと時間ができたので書き込み。

>>6
ありがとうございます。
期待に添えるそう頑張ります。

では、これから我が家は海鮮焼きなので、失敬!
また後で来ます。

いい、すげー好き

楓の脳内はどうなっているのか。たまに本気で覗きたくなる時がある。
年下のまだ子供の妹たちの前で堂々とセクハラめいた発言が出来る事に、私は悪い意味で感心するほどだ。
……などと思っている事も知らず、こいつはまたしても遅刻ギリギリの時間まで寝ていらっしゃる。
私はガバッと布団を剥ぎ、叫ぶ。

「遅刻しても知らねぇぞこら!」
「後十二分と三十六秒……」
「中途半端だな!ってか絶対起きてんだろ!!」

眠い目を擦りながら眠り姫が目覚める。

「…眠り姫だなんて…」
「あー、そこはつっこむな。失言だ」

遅刻してもおかしくない時間にやっとお目覚めになったこの馬鹿、もとい楓はふあーと伸びをすると、私を引き寄せ、頬にキスをしてきた。
いつもの事なので、無視をする。

「何かしら反応してよ!!できればツンデレでお願いします!!」
「うるせぇいいからさっさと学校行け」
「じゃあいつもので行くかな」
「あれは危ないからだめだって言ってるだろ」
「遅刻寸前!行ってきます!ついてこい不二子ちゃん!」

楓は玄関脇に立てかけてあるスケートボードを腕に抱えると、家を飛び出して行った。
あいつは運動神経もいいので、遅刻しそうな日はスケボー(通称:不二子ちゃん)で登校する。コナンか。


私は不二子ちゃんを軽快に滑らせ、学校まで風を浴びながら道路を走る。すると、ちょうど教師が校門を閉めようとしているところだった。
キッと目が鋭くなる。不二子ちゃんのスピードを更に加速させると、「待ったぁぁぁぁぁ!!」と叫びながら校門の上を不二子ちゃんでジャンプし、乗り越えた。教師たちの目が点になって、私を見上げている。
華麗に着地すると、不二子ちゃんから降り、脇に抱える。そしてさっと教師たちを振り返ると、優美に挨拶をした。

「ごきげんよう。先生方」
「……ごきげんよう」

教師たちは未だなにが起こっているのか分からない様子で、教室に向かう私を見つめていた。

「ギリギリセーフ!」
「おはよー、楓!本当にギリギリだね。また寝坊?」
「さっちゃん。うん、ちょっと朝から姉さんと……」
「はいはい、あ、先生来た」

さっちゃん冷たい。

「はい、では早速だが」

担任教師の桐原がまっすぐ私を見た。ちょっと怒っているようにも見えるが、気のせいだろう。

「赤島、スケボーで登校すんの禁止だって俺言ったよな?」
「すみません、あの夜の事は私酔ってて覚えてないんです」
「俺もそんな記憶はないよ」
「っていうか、スケボーじゃありません!不二子ちゃんです!」
「はいはいはいはい。他の先生方にも注意が足りないって俺が怒られるんだから、問題行動は起こさないように。返事は?」
「あいよっ!」
「寿司屋か。気合は伝わったが」

大人は厳しい。別にすけぼ…不二子ちゃんで登校したっていいじゃん。だったら生徒手帳に「スケボー禁止!」って書いておいてよね。まぁその場合はキックボードで来るけど。

授業中、ポケットの携帯が震えた。躊躇いもなく開くと、愛しの愛しの姉さんからだった。

「うをっほう!!」
「どうした赤島!」

いきなり奇声をあげてしまったので教師が驚いてこちらを見たが、上手く取り繕っておく。内容はなんだろう。

『授業中だったら悪い。今夜何食べたい?』
「姉さんが食べたい」
「赤島、授業中に変態発言は控えてくれ。あと真面目に授業受けてお願いだから」

私は『回鍋肉』と素早く返信すると、その後の授業は幸せな気分で受ける事ができた。

すみません、そろそろ眠気が来てしまったので、続きはまた明日とか近々書きにきます。
読んでくれてる人がいるか、ちょっと不安ですが、感想でも指摘でもなんでも頂けると糧になります。

では、おやすみなさい。

おつ

こんばんは。
ちょっと来れないと結構下がってしまうんですね。
仕事が忙しいため、来れない日もありますが、気長にお付き合い頂けると嬉しいです。


ちなみにSSの名の通り、私としては漫画のようにお楽しみ頂けるスタンスで書いていますので、気軽に読んで頂けたら幸いです。

では、少しではありますが、続きを書いていきます。

長い長い学校が終わり、教室を出ようとすると、あまり好きじゃないクラスメイトに一緒に帰ろうと誘われた。
どうして好きじゃないかと言うと、これは私の先入観とかの問題でもあるんだけど、なんというのか……うん、チャラい。
女と男の前で態度変える、群れないと生活出来ない典型的な面倒臭い人種。
何故この日彼女たちが私を誘ったのかは知らないが、株は上がらないものの、結果感謝をする事になる。
さっちゃんはバスケ部なので、基本的に放課後はいつも一人で帰る事が多いんだけど、この日はクラスメイトと校門まで向かっていた。
それにしても校門ってなんかやらしいよね。
すると、見間違えようのない予想外の人が門の前にいた。私はクラスメイトの存在を完全に忘れ、そこに向かって猛ダッシュした。

「ねーえーさーん!!!」
「お疲れさん」
「なに!?今日はデレ期なの!?今夜一緒に寝てくれるの!?まぁ寝かせないけどね!!」
「落ち着け。夕飯の買い物してたまたま近くに来たから、スケボーに乗って帰らないように監視に来ただけだ」
「あぁん、もう本当は私と帰りたかったく・せ・に」
「あー!これがいつも楓が言ってるお姉さん?」

クラスメイトがいつの間にか姉さんの周りに集まっている。

「おい、半径100m以内に近づくな」
「てか楓のお姉さんだからめっちゃ美人なのかと思ったけど結構普通だね」
「この人に対してシスコンとかないっしょー」
「この人のどこがいいの?」

クラスメイトは糞やかましい黄色い声で言いたい放題言ってやがる。姉さんは怒ってはいないものの若干不機嫌だ。

「つーかー、シスコン自体引くけどね」

ぷっつーん。

「なぁ」

私はその時自我を殆ど失っていた。それを悟ったのか、姉さんがいつの間にか代弁をしてくれていた。

「お前らに兄弟がいようがいまいがすっごく心の底からどうでもいいんだけどな、お前ら家族を一瞬でも好きって思った事ないのか?お前らはきっと親が育ててくれてるからそう言えるけどな、妹たちはほぼ私が面倒見てきてるんだよ。愛情がこちらに向くのは当たり前じゃねぇか。お前らのものさしで測った世界が全て正しいと思うんじゃねぇ。確かに私は楓と比べて器量は悪いが、それでも正々堂々とシスコンレベルで楓が好きだって言えるぞ」

怒気と迫力に、クラスメイトは言葉を失う。圧倒され、返す言葉が見つからないのが手に取るように分かる。
姉さんはそう言い切ると、歩いて行った。
私はなんとも言えない、でもとても幸せなくすぐったい気持ちを抱えたまま、姉さんの後を追い、後ろから思い切り抱きついた。

「姉さんだーーーいすきっ!!」
「重い」


楓と家に帰ると、私は早速夕飯の支度を始めた。ここ最近で一番驚いたのだが、家事全般大っきらいな楓が夕飯作りを手伝うと言い出した。

「熱計れ」
「正常ですけども」
「軽く43度はあるんじゃないか?」
「軽くないよ!?」
「つーかいいよ。私がやるから」
「いーの。今日だけは、私も手伝う。……姉さん」
「んー?」
「ありがと」

私はなんのことだ、と料理を始めたが、自分でも顔が赤いのが分かる。
楓は肩をぴとっとくっつけると、

「あぁ可愛い。その赤い頬を舐め回したい」

とのたまった。
私は尻を思い切り蹴り、手伝いを促す事にする。

「明日は雪か」
「いやぁ、大雪だねぇ。だって楓姉が料理なんかするはずないじゃん!」
「うるさい生娘」
「お前もだろ」
「姉さんもでしょ」
「ころすぞ」

ま、楓のシスコンは今に始まったことではない。ウザったいといえばウザったいが、やっぱり可愛い妹なのだ。

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