絵里「あれ…ここは…?」 (82)


絵里「あれ…私…教室にいたのに…」

絵里「ここは…?」

絵里「なに…?知らない…」


セッキンシチャエ トントント トッシン

マイルールデ トントント トッシン


絵里「え…?この音…」


セッキンシチャエ トントント トッシン

マイルールデ トントント トッシン


絵里「聞き覚えのある声とメロディ…」フラフラ

絵里「あの音のなる方へ行きましょう…」フラフラ


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1404187142


絵里「この辺から…聞こえて来るんだけど…」

絵里「いったいどこから…」


セッキンシチャエ トントント トッシン

マイルールデ トントント レッツゴー

絵里「…」


セッキンシチャエ トントント トッシン

スキナラ チカヅクドリョク


絵里「…歌」

絵里「この歌…すき」

絵里「落ち着く…可愛い」


サツエイシチャエ パッパッパ パッチン

マイレンズデ パッパッパ レッツゴー


絵里「うえ…?」


サツエイシチャエ パッパッパ パッチン

ジュンアイダモン ミノラセタイモンネ


絵里「あれは…」


フワフワ

希「ん?やっと見つけてくれたん?」

絵里「希…そっか」

絵里「希だったの…」

絵里「どうしたの?その羽衣みたいな…」

希「みたいなじゃなくて、これは羽衣やで?」

希「だってほら」

フワフワ

希「ね?」

絵里「浮いてる…本物か…」

絵里「じゃあ、希は天女なのね」

希「そうよ」

絵里「だと思ってた…」

絵里「だって、可愛いし…」

絵里「一緒にいると落ち着くし…」

絵里「ほんとすき…」

希「そう」

希「ありがとうなぁ」

希「お礼に抱き締めてあげる」ギュッ

絵里「あっ…」

希「ずっと一緒やんな♪」

絵里「ええ…」

なんでいきなり終わりそうなんだ

絵里「ねぇ…希?」

希「どうしたん?」ナデナデ

絵里「ここはどこ?」

希「う~ん」

希「多分言ってもわからんよ?」

絵里「そう…」

絵里「私はどうしたらいいのかしら…」

希「そうやねぇ…」

希「あっち」

絵里「え?」

希「あっちのほうに進んでみて?」

絵里「何かがあるの?何も見えないけど…」

希「うん、ある」

絵里「わかったわ…行きましょう」

希「ああ、ごめんな」

希「うちは行けへん」

絵里「え?」

希「どうしても」

希「だから、一人で行って?」

絵里「そう」

とうとう本物の女神になってしまったのか…

お前…消えるのか?

絵里「でも、ずっと一緒って…」

希「うちは一緒にいけへんけど…これ貸してあげるから」

希「ずっと一緒」

絵里「これは…」

絵里「羽衣…」

希「それ使ってゆったり行くとええよ」

絵里「ありがとう、希」

希「うん、じゃあね」

絵里「ばいばい」

絵里「さて、これを巻いて…」

フワフワ

絵里「気持ちいい…」

フワフワ

絵里「…」

フワフワ

絵里「遅いわね…」

絵里「まあ…ゆったり、いきましょう」


・・・・・


絵里「はぁ…まだかしら」

フワフワ



絵里「ん?」

絵里「あれは…?」

絵里「かなり遠くだけど…何かある…」

絵里「何かしら…」

フワフワ

絵里「あれは…明かり?」

絵里「町かしら?」


・・・・

フワフワ

絵里「ああ、やっぱり町みたいね」

絵里「入ってみましょう」


ザワザワ ワイワイ

絵里「えらく賑わってるわね…」

絵里「でも少し…古いというか…」

絵里「御話しの中の町みたい」


『ちょっと!そこの人!』


絵里「!」

絵里「えっ!?」

絵里「希!?」

希「ちょっと、占っていかへん?」

希「…ってえりちか」

絵里「あなた、さっき別れたじゃない!」

絵里「向こうのほうで!」

希「はん?何言ってるん?」

希「うちはずっとここにいたけど…」

絵里「はぁ?」

希「それより、占ってあげるわ」

絵里「占い?こんなときに別にいいわよ」

希「まあまあ、そう言わずに…」

バッ

希「う~ん、結果が出たよ…」

希「えりち」

絵里「何よ」

希「えりち」

希「あなたはここから南に行って」

希「一人の囚われの姫を救うことになるでしょう…」

絵里「はぁ?南?」

絵里「姫ぇ?何の話よ?」

希「南はあっちの方角やで」

絵里「姫って?」

希「姫は姫や」

絵里「???」

希「まあ、言葉通りやけど」

希「深く考える必要は無いんよ」

希「でも…うちの占いはあたるで~」

絵里「…!」ピクッ

ラプンツェルか




フワフワ

絵里「まあ、でも何のあてもないし…」

絵里「占いにすがるしか無いわよね」

絵里「南…南…」

絵里「方向を見失わないようにしないと…」

フワフワ

絵里「しかし…遅いわね…羽衣…」


・・・・


絵里「あら、凄い森…」

絵里「高度を上げなきゃ…」

フワフワ

絵里「あれ?」

絵里「これ以上…上がらない…」

絵里「どうしましょう…」


シーンジテー コーコロガトキメイタ シュンカンヲ

シーンジテー アーナタノ ジュンアイレンズハー

タダシーヨー


絵里「ん?この歌…」


シャンシャンシャンシャンシャンシャン


『おーい!えりちー!』

絵里「!」

ビュゥゥゥゥゥ

希「おーい!」

絵里「希!」

絵里「その格好…今度はサンタさん?」

希「そうや」

希「皆の所へ愛を届けるのんたんサンタさんやん♪」

絵里(かわいい)

希「所で、えりち…この森を越えたいんやろ?」

絵里「そうなのよ、羽衣じゃ無理で…」

希「おっけー!任しといて!」

希「ほら、後ろに乗って!」

絵里「え?」

希「ソリの後ろ!」

URのんたんか

期待

なるほど
面白い

ようやく趣旨が理解できた、なるほど
期待

絵里「なに?」

絵里「このソリならこの凄い森を越えられるって?」

希「そうや」

絵里「まっさか~」

絵里「この羽衣でも結構高く飛べるけど、無理だったのよ?」

希「大丈夫、大丈夫」

希「ほら、しっかり掴まっときや」

絵里「大丈夫かしらね?」

希「ほな、いっくでー!」


ビュゥゥゥゥゥ!


絵里「チカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

絵里「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

希「どう?速いし高いやろ?」

絵里「ぎゃー!速い高い怖い!!」

絵里「落ちるぅ!落ちるぅ!」

希「だからしっかり掴まっときって!」

希「いったやん!」

ビュゥゥン

絵里「ちょっ!加速しないで!」

絵里「イヤァァァァァァァァ!」

希「なんや、だらしない」

絵里「はぁ…やっと減速…」

希「もっと速い方が楽しいのに」

絵里「無理無理無理!」

絵里「安全バーの無いジェットコースターに乗ってる気分よ…」

希「楽しいやん?」

絵里「楽しくないっ!」

希「にしし、そうか」

希「おっ!森を越えたで」

絵里「!」

希「ほら、いい景色やろ?」

絵里「本当…一面の草原だわ」

絵里「こんなの初めて見た…」

絵里「あら?何?あの塔は?」

希「さあ?」

絵里「知らんのかい…」

希「…」ニヤリ

絵里「?」

希「えりち、これ」

絵里「ん?何この箱」

希「うちからのプレゼント」

絵里「はぁ?」

希「忘れたん?うち、サンタさんやで?」

希「貰っとき!」

絵里「う、うん…ありがとう」

希「それはえりちが本当に必要な時に空けてな」

絵里「は?必要な時って、何がよ?」

希「ほらほら!あそこに城が見えるやろ?」

絵里「ちょっと、質問に答えなさいよ…」

希「あそこまでいくでぇ!」

ビュゥゥゥゥゥン

絵里「ちょっ!」

絵里「だめぇぇぇ!落ちるっ!」

ビュゥゥゥゥゥン

絵里「あああああああああああ!」バッ

絵里「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

ヒュゥゥゥゥゥ

希「えりち、頑張ってねー」



・・・・

絵里「…ん」

絵里「あれ…私…ソリから落ちて…」

絵里「あっ…羽衣…」

絵里「私を守ってくれたの…」

絵里「ありがとう…希」

絵里「それに比べて…」

絵里「んもう!まったく希はぁ!」

絵里「人を落としておいて、拾いにも来ないの!?」

絵里「っていうか、羽衣無かったら死んでたわ!」

絵里「まったく!ここは何処よ!」

フワフワ

絵里「あっ!」

絵里「あれは…ソリの上で見た塔じゃない!」

絵里「そっか…近くに落ちたんだわ」

絵里「ちょっと見て来ましょう」


・・・・

絵里「あれ?」

絵里「この塔…入口が無いじゃない!」

絵里「ええっ?どういうこと?」

絵里「うー…」


シーンジテー アーナタノジュンアイレンズデー キリトッター


絵里「ん?」

絵里「歌…?」

絵里「塔の中からだわ…」

絵里「それも上の方から…」

絵里「窓か何か無いかしら…」フワフワ

絵里「あっ、あった…覗いて…」


希「彼の笑顔の眩しさは~最強だ♪」

希「想いの強さ感じる♪」



絵里「希!」

絵里(やっぱり…)

希「おっ!えりち」

絵里「何よその髪は」

絵里「そんなに長かったかしら?」

希「うん」

絵里「また、さっきの希とは違う希なの?」

希「さっきの?」

絵里「いや、何でもないわ」

希「まあ、せっかく来たんやし…入って!」

絵里「え、ええ」

絵里「そう言えば、何でここ下に玄関が無いの?」

希「そりゃうちが逃げんようにとちゃう?」

絵里「は?」

希「うち、この塔に囚われてるんよ」

絵里「何でよ?」

希「うちがラプンツェルやから?」

絵里「いや、聞かないでよ」

絵里「というかラプンツェル!?」


『 一人の囚われの姫を救うことになるでしょう… 』


絵里「なるほど…ラプンツェルということは…」

絵里「魔女と一緒にここで暮らしてるとか…」

希「いいや、一人や」

絵里「え?」

希「誰に幽閉されてるかも、何もかも分からないんよ」

絵里「??」

絵里「どういうこと?」

希「さあ?」

絵里「何で希いっつもそう何でも適当なの!?」

希「そんなこと言われても…」

希「まあ、取り敢えず何か食べる?」

絵里「えっ?」

希「うちが何でも作ってあげる」キュッ

希「どう?このエプロン」

希「かわいいやろ?」

絵里「…!」

絵里「かわいい…」


希「はい、できたよ」コトッ

希「どうぞ、食べてね」

絵里「ありがとう、どれどれ…」

絵里「って、うどんか…」

希「何?文句あるなら食べんでええんよ~」

絵里「いや、文句っていうか…」

絵里「この情景とうどんって合わないなぁ…って」

希「まあね」

絵里「まぁ、いただくけど…」ズルズル


・・・・

絵里「ふぅ…ご馳走さま」

希「よし、ほな」

希「外へ行こうか」

絵里「え?」

希「え?って…外行かんと話が始まらないやん」

絵里「話…」

絵里(ははーん…)

絵里(なるほどね…占い師の希の言葉…)

絵里(希サンタが塔の近くに私を落とした事…)

絵里(予定調和的)

絵里(つまり…これはゲームでいうところの強制イベントみたいなもので…)

絵里(この希…つまりラプンツェルを救いだし…お姫様としてお城へ連れていくこと)

絵里(それがゲームクリアの条件…)

絵里(ゲームクリア…つまり元の世界に戻れる…)

絵里(なら、やってやりましょう)

希「おーい」

希「えりち~?」

絵里「よし、希!外の世界へ連れていってあげるわ!」

希「ほんと?やった!」

面白いな


絵里「ふふふ、私は怪盗エリーチカよ」

絵里「この塔から希を盗みにきたわ」ガシッ

絵里「ほら、外へ行くわよ!」

希「うん!」

フワフワ

絵里「掴まって!」

希「ひゃっ!飛んでる!」

絵里「何驚いてるの?あなたがくれたんじゃない」

絵里「この羽衣…」

希「え?」

絵里「まあ、いいわ」

絵里「確かあっちの方向に…ほら!希!」

希「うわぁ…おっきいなぁ…」

希「あれがお城かぁ…初めて見たわ…」

絵里「塔の窓とは逆方向だものね」

絵里「あそこに連れていってあげる」

希「えりち…ありがとう」ギュッ

絵里「あっ…い、いいのよ」

希「うわぁ…凄いなぁ」

希「草原ってこんな匂いするんや」

絵里「知らないの?」

希「だってずっと閉じ籠ったもん」

絵里「そっか」

絵里「ん?でも…」

絵里「じゃあ何で私の事知ってるのよ…」

希「わからん…本能的に?かな」

希「この人はえりちやって」

希「うちの大好きな…絢瀬絵里やって」

絵里「そう…/////」

希「おっ?赤くなってる?」

絵里「うるさいわね!」

絵里「ほら、行くわよ…」

絵里「お城まで長いんだから…」

希「うん」

いいね!

希「ねぇ、えりち」フワフワ

絵里「なに?」フワフワ

希「この羽衣…めっちゃ遅いやん」

絵里「そうね」

希「どうせなら…歩いて行かん?」

絵里「う~ん、まあ…そうね」

シュタッ

絵里「歩いたほうが楽しいでしょうね」

絵里「希にとっては…」

希「うん」

希「地に足を着けたのは初めて…」

希「何だかチクチクする」

絵里「草原だもの」

ポワー

絵里「ん?」

絵里「何これ?何か光って…」

絵里「これは…!」

絵里「希に貰った…プレゼント…」

希「なに?それ」

絵里「分からないわ…いきなり光だして…」

絵里「空けてみましょうか…」

絵里「いや…でも」


『それはえりちが本当に必要な時に空けてな 』


絵里「って言ってたもんねぇ…」

絵里「でも、今光だしたと言うことは…必要な時って今…?」

絵里「あーもう!めんどくさいわ!」

絵里「どうせ予定調和なんだし…空けちゃえ!」パカッ

絵里「…!」

絵里「これは…!」

絵里「靴…?」

絵里「えっ?ほんの小さな箱に何で靴が!?」

希「えりち~、どないしたん?」

絵里「はっ!靴…」

希「それ、なに?」

絵里「希、足を出して」

希「う、うん」

ピト

希「ひゃん!」

絵里「ちょっと!変な声を出さないで!」

希「いきなり足を触るからやん!」

絵里「いいから、動かないでね!」

・・・・

絵里「…しょっと」キュッ

絵里「ぴったり…」

希「うわー!何これ!」

希「足がチクチクしないよ!」ピョンピョン

絵里「もう…そんなに興奮して…」

絵里(それにしてもピッタリのサイズだったわ…)

絵里(やっぱり、ここで空けて正解だったかしら…)

絵里(希も喜んでるしね…)

絵里「でもよく考えれば、お城は山の頂上だし…靴がないとね」

絵里「それじゃ…足も大丈夫になったし…行きましょうか」

希「そうやね」


・・・・

絵里(草原を越え…私たちは森に入ろうとしていた)

希「これが森か!」

絵里「そうよ、木がいっぱいでしょ?」

希「うん、凄いなぁ…」

絵里(こんなに色んな事に驚く希はとても新鮮で…)

絵里(可愛くて、愛しくて…)

絵里(たまに手を握ってくれると)

絵里(歩き疲れた足なんて、気にならなくなる…)

希「えりち!早く入ろう!」

絵里「ふふっ、焦らないで」



・・・・

ザクッ ザクッ

絵里「日が暮れて来たわね…」

希「この辺で休む?」

絵里「そうね…」

絵里「よっ…」ゴロン

絵里「はぁ…疲れたぁ…」

希「うちも…」ゴロン

絵里「もっと、こっちへきて」

絵里「この羽衣、かけてあげるから…」

希「うん」

パサッ

希「ふわふわ…気持ちええなぁ…」

絵里「でしょ?」

希「この羽衣…大事にしてあげてね?」

絵里「えっ…?」

希「あっ!えりち!ほら、空! 」

絵里「そ、そら?」

絵里「あっ…!」

絵里「凄い星の数…いつの間に…」

希「綺麗やろ?」

絵里「そうねぇ…周りの木がなければ…もっと見れるんだけど」

絵里「って…何で希が得意げなのよ」

希「えりちはこんな星空みるのは初めてちゃう?」

絵里「それはそうだけど…」

絵里「東京じゃね」

希「うちは毎日、あの塔で見てたから」

絵里「あっ…」

希「まあ言ったら、この星空の素晴らしさ…がうちがえりちに教えてあげられる唯一の事なんよ」

絵里「そっか…」

絵里「希、教えてよ」

絵里「この星空のこと…」

希「うん」

希「あの青白く光ってる星が…」


絵里(嬉しそうに星の事を語る希の顔は…)

絵里(キスしたくなるほど可愛いかった)

絵里(でも、我慢しなくちゃ)

絵里(今、邪魔したら怒っちゃうかもしれないしね)


希「凄いやろ?」

絵里「ええ…どうしてそんなに詳しいの?」

希「本を読むことと歌を歌う事くらいしかないから」

絵里「そうだったわね」

絵里「歌か…聞かせてよ」

希「ええよ」

希「すーはー」

希「信じて 心がときめいた♪瞬間を」

希「信じて あなたの純愛レンズは♪正しいよ」


絵里(この曲は…この世界のたくさんの希がいつも口ずさんでいた歌…)

絵里(私の大好きな歌…)


ポワポワ

希「ん?」

希「えりち、あれ何?」

絵里「ん?」

ポワポワ

絵里「ひぃぃぃぃ!」

絵里「うわぁぁぁぁぁぁ!」ガダガタ

希「ちょっ、えりち」

希「どないしたん…」

絵里「ひ、ひとだま!」

絵里「あわわわわ」ガダガタ

希「ひとだま?」

ガシッ

絵里「ひぃ!掴むなんて!」

希「これ、虫かな?ひとだまっていうんや」

絵里「えっ…虫?」

絵里「…蛍か」

希「蛍?」

絵里「そうよ」

希「へぇ…これが蛍」

希「ふぅん、ところで何であんなに怖がったん?」

絵里「えっ…」

希「まさか…お化けと間違えたん?ぷぷっ」

絵里「そんなわけないでしょ!」

希「そうか~」

絵里「まったく!」


ポワポワ ポワポワ

希「あっ!」

絵里「凄い数の蛍ね…綺麗」

希「凄い!」

絵里「…」ジー

絵里(今さらだけど、この世界はおかしい)

絵里(実は…この蛍)

絵里(この世界で虫を見たのはこの蛍が初めて…)

絵里(もちろん動物も…)

絵里(占い師の希に出会ったあの町…人はたくさんいた…)

絵里(でも皆、無機質な感じがして)

絵里(ロボットじゃないかと疑うほど、目に光がなかった)

絵里(何て言うか…偽物)


希「えりち!えりち!奥の方!凄いで!」

絵里「足元に気をつけなさいよ」

希「わかってるって!っていうかえりちに言われたくないよ!ポンコツのくせに!」

絵里「なっ!」

絵里(そう…この世界は偽物…な感じがする…)

絵里(でも、そのなかで)


希「えりち!はよう!」


絵里(希の笑顔だけは紛れもなく本物…)

絵里(そう思う)

絵里(根拠は無いけど…)


希「さっきから、何考えこんでるん?」

絵里「な、何でもないのよ!」

絵里「さ、もう寝ましょう…」

希「ええっ!」

絵里「お城まで長いって言ったじゃない」

絵里「体力を回復しとかないと」

希「…そうやね」

いいね

・・・・


ザッ ザッ

絵里「希、もうすぐお城よ」

希「うん、これが城下町?」

絵里「そうね」

絵里(相変わらず、人は偽物…)

絵里「しかし…追っ手とかが全く来なかったわね…」

絵里「ラプンツェルってこんな話だっけ?」

希「まあ、危険が無いことに越したことはないやん」

絵里「まあ、そうだけど…」

絵里「早速、お城へ行きましょ」

絵里「王さまとか、会ってみましょ」

希「そうやね」



『・・・・・』

絵里「あのー、お姫様を連れてきので…お城に入っても…」

『・・・・・』

絵里「おーい!兵隊さん!」

『・・・・・』

希「えりち、もう勝手に入ってしまおう?」

絵里「そうね、きっと怒られないでしょ」

絵里「ていうかこの分だと、王さまもこんな感じかもしれないわ…」


希「お城の中ってキレイやなぁ…」

絵里「そうね」

希「うち、今から…王さまに会って…」

希「どうなるんだろう…」

絵里「ラプンツェルはお姫様に戻るのよ」

希「お姫様…うちが?」

絵里「そう」

希「いやいや!」

絵里「え~、なに?照れてるの?」

絵里「可愛いところあるわねー」

絵里「ふふっ、そしたら私が王子様になってあげる」

希「ほんまに?」

絵里「ええ…」

希「えりち…」

絵里「希…」

希「ここまで…ありがとう」

希「連れてきてくれて」

絵里「うん」

希「うちな…」

希「えりちに会えてよかった」

希「外の世界に出てよかった」

希「こんな気持ちになれるなんて…」

絵里「うん」

希「ありがとう」

絵里「私ね…」

絵里「いつの間にか、この世界にいて」

絵里「色んな不安と困惑が立ち込めていたわ」

絵里「でも…そこにはいつも希がいてくれた」

絵里「この世界の人たちは皆、偽物で…」

絵里「本物は私と希だけ…」

絵里「これってさ、実は私たち…この世界で二人きりなんじゃないか…って」

絵里「この世界…それは」

絵里「私たちの…」

絵里「二人きりの花園」

絵里「ずっとここで、希と一緒にいたい」

絵里「私、こんな気持ちになった…」

希「……」

絵里「最初はね、ずっとこの世界を抜け出そうと…」

絵里「ここを目指してた…」

絵里「でも、今はずっと…希とこうしてたい」

希「…よ」ボソッ

絵里「えっ?」

希「ごめんな…」

ダキッ

絵里「希…!」

絵里「ごめんって…どういう」

希「んっ…」チュッ

絵里「んん!」

希「…」

絵里「ぷはっ…」

絵里「……希」


『・・・・・・』キリキリ

絵里「希ぃ…」

絵里「ずっと一緒にいましょうね…」

希「…」

絵里「この世界で…」


『・・・・・・』

ビュン

希「ぐふっ…」ドスッ

絵里「は?」

希「が……ぐ……」

絵里「へ?」

絵里「な、なに?」

絵里「希…血が……」ガダガタ

絵里「矢…?」

絵里「あ…あああああ!」ガダガタ

絵里「何よこれ…」

希「え…り……」

絵里「何よこれぇぇぇ!」

絵里「誰が…」


『・・・・・・』シーン


絵里「あ、あなたは…さっきの兵隊…」

絵里「何でこんなことを!」


『・・・・・・』


絵里「答えなさいよぉ!!」

なにこれすっごい続き気になる

クイッ

希「え…り…ち」

絵里「あぁぁぁ…希!」

希「きいて…」

絵里「希…」

希「これは…運命…」

希「仕方のないこと…」

絵里「何言ってるのよ!意味…わかんない…わよ」

希「ここは…二人きりの花園なんか…じゃない」

絵里「えっ…」

希「抜け出して…」

絵里「そ、そんなこと…言われても」

希「大丈夫…」

希「うちが…一緒やから」

希「うちがいつも味方でいるから…」

希「生きて…」

希「帰って…」

希「約束な…必ず…」

絵里「…希」ポロポロ

希「あと…羽衣を…大事に…」

絵里「ねぇ…希…」ユサユサ

希「……」

絵里「希…希…希…」ユサユサ

希「……」

絵里「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

絵里「希…希…」

絵里「いつも味方でいるって…」

絵里「嘘ばっかり…」

絵里「なら、死なないでよぉ…」

絵里「この世界から抜け出せ…?」

絵里「そんなの…わかんないわよ」

絵里「希…希…」

絵里「何であなたは死んだの」

絵里「運命って何なのよ…この世界は何なのよ…」

絵里「何もわからない…」

絵里「教えてよ…希…」


『う~ら~め~し~や~っ』

ガシッ

絵里「!?」


『お前をわしわししてやる~っ』

絵里「な、なに!?」

ワシワシワシワシ

絵里「ちょ!いやぁぁ!」

絵里「ってあんたは…!」

絵里「希!?」

絵里「その格好は…!?」

希「妖怪わしわしだぞっー!」

希「わしわしするぞぉー!」

絵里「やっ!やめっ…」

希「わしわし~」ワシワシ

絵里「やめっ…」

絵里「うぅ…」ポロポロ

希「えりち、何で泣くん?」

希「わしわしがそんなにイヤだった?」

絵里「うるさい!バカ!」

絵里「私…希が死んだかと…うぅ…」

希「…」

希「死んだよ」

絵里「え…?」

希「えりちと今までいたうちは役目を終えて死んだよ」

絵里「役目……?」

希「約束」

希「えりちとの約束」

希「それがあの希の役目」

絵里「生きる」

希「うん、生きる…元の世界に帰るっていう約束」

希「そのためにあの希は死んだ」

絵里「わからない…そんなに…重要なことなの?」

絵里「元の世界に帰ること…」

絵里「希が死んでまで…私に約束させるような事なの…?」

希「そうや」

希「さっき…えりちはここを、二人きりの花園って言ったやろ?」

絵里「ええ…」

絵里「否定されてしまったけどね…」

希「うん、ここは二人きりの花園なんかじゃない」

希「だって…」

希「うちは…偽物だから…」

絵里「えっ…」

希「あの兵隊と同じ」

希「だから…本物はあなただけ」

絵里「そんな…でも」

絵里「嘘よ…」

絵里「あの笑顔は…」

絵里「本物だって…そう…思ってたのに…」

希「偽物だよ」

希「だって、見てきたやろ?」

希「たくさんのうちを」

絵里「…」

希「本物は一つだけしかありえない」

希「えりちは本物…」

希「だから、本物は本物の世界に帰るべきなんや」

希「本物の笑顔で溢れるあの世界へ」

希「そこには本物のうちもいるやろ」

絵里「…」

希「うちら…そのために存在してるんよ」

希「それぞれの役目を担って…」

希「そして…うちの役目は、門まで導くこと…」

絵里「門…」

希「そう…この世界の門」

希「希の思い…応えて」

希「偽物にだって思いはあるんよ」

絵里「……」


『約束な…必ず…』


絵里「希…」

絵里「わかった…帰る」

希「うん、ありがとう」

絵里「帰って…」

絵里「本物の希を抱き締めるわ」

希「そうしてあげて」

絵里「そうしたら…」

絵里「天女と占い師とサンタとラプンツェルと…」

絵里「あなたのそのキョンシーのコスプレをさせて愛でてやるんだから…」

希「まったく…変態」

絵里「わしわしに比べればマシよ」

希「ふふっ」

絵里「あはは」

希「ほな、いこか」

絵里「ええ…」


絵里「これが門…」

希「ここから…この世界を出れる…」

希「でも…生半可な気持ちではこの門は通り抜けることは出来ない」

希「通り抜けたい…って強い気持ちがないと」

希「そのための約束」

希「人って約束のためなら何でもできるやん?」

絵里「そうね…」

絵里「約束…絶対果たしてみせる」

絵里「希…」

希「うん」

希「あと、その羽衣…」

絵里「これ?」

希「うん、それは…うちらの思いそのもの」

希「えりちの事守ってみせるから、絶対にそれを離さないで」

絵里「ええ」

希「じゃあね」

絵里「希、ありがとう」

希「うん」

絵里「…希」

希「何よ~、それじゃあ何時までたっても出発出来ないやん…」

絵里「ごめんなさい、あなたの顔を見てないと不安で…」

希「それなら…」

希「んっ…」チュッ

絵里「……ん」

希「はいっ!いってこい!」バン!

絵里「ええ」


・・・・・・


絵里(門をくぐると…色んな景色が見えてきた)

絵里(ここは…おばあちゃまの故郷のロシア)

絵里(次は…修学旅行で行った沖縄)

絵里(そして…音ノ木坂)

絵里(人はいない)

絵里(ずっと一人…)

絵里(永遠とも思えるこの時間)

絵里(私は歩き続けた)

絵里(気が狂いそうになるほど歩く…)

絵里(時にはへたりこんで…)

絵里(でもそのたびに、約束が私を再び立ち上がらせる)

絵里(それにこの羽衣…)

絵里(体に巻いていると…とても楽で)

絵里(何時までも歩けそうな気がした)

絵里(早く…帰りたい)

絵里(帰って…会いたい人がいる)

絵里(亜里沙…お父さんにお母さん)

絵里(穂乃果、海未、ことり)

絵里(にこ、真姫)

絵里(凛、花陽)

絵里(そして…希)

絵里(早く…会いたい)

絵里(そう思った時…)

絵里(歌が聞こえた)


接近しちゃえ Ton ton to とっしん

マイルールで Ton Ton to とっしん


絵里(希の歌…)

絵里「希!はぁ…はぁ…」ダッ

絵里「あの音の方へ…希」

絵里「希!」

絵里(そこで意識は途切れた)



絵里「んっ…」

絵里(ここは…?ベッドの上?)

絵里(知らない天井…どこだろ?)


『撮影しちゃえ Pa pa pa ぱっちん』

『マイレンズで Pa pa pa let's go』


絵里「また、この歌…すき」ガバッ

『はっ……えりち…』

絵里「その声は…希か」

絵里「おいで…抱き締めるから」

希「えりち…」

絵里「どうしたの?」

希「えりち…!」ダキッ

絵里「ちょっと!痛いわ!」

希「うるさい!アホ!」

希「ポンコツなんもいい加減にして!」

希「アホ!」

希「うちを…心配させんといて!」

希「うち…えりちがいなくなったら…うっ…」

希「あほぉ…」

絵里「…希」ナデナデ

希「うぅ…」グスグス

絵里「何があったのか分からないけど…」

絵里「心配かけてごめんね…」

希「……」スースー

絵里「あら…寝ちゃってるわ」


ガララッ

穂乃果「希ちゃん来たよ…って!」

穂乃果「あー!絵里ちゃん!」

海未「絵里、目を覚ましたのですか!」

ことり「本当!?よかった!」

絵里「しー」チョンチョン

希「……」スースー

穂乃果「あっ…」

海未「希…寝ているのですか…」

ことり「ずっと寝ずに絵里ちゃんの側にいたからね…」

絵里「!」

絵里「あの…私…どうなってたの?」

海未「覚えてないんですか?」

ことり「絵里ちゃん、滑って転んで頭打って…ずっと意識が無かったんだよ」

絵里「はぁ…?」

絵里(私…だっさ…)

海未「ほぼ3日ですかね、ずっと眠り続けてました」

穂乃果「その間ずっと希ちゃんがみてたんだよ?」

絵里「そう…」

海未「きっと絵里が起きた安心から眠ってしまったのですね」

穂乃果「穂乃果も心配だったよぉ…」

絵里「ありがとうね…心配かけてごめんね皆…」

穂乃果「本当だよー!」ガバッ

絵里「ちょ!痛い!」

海未「こら!静かに!」


ガララッ

凛「絵里ちゃん!」

花陽「はぁ…はぁ…目を覚ましたって!?」

にこ「あんたたち、病院では静かに!」

絵里「ああ、にこ達も来てくれたのね…」

凛「あたり前にゃー!」

にこ「もう…心配させないでよ…アホ」

花陽「花陽も…心配したよぉ…」

絵里「ごめんね…」ナデナデ

にこ「もう絶対に、こんなことは無しよ」

絵里「うん」

凛「約束にゃ…」

絵里「約束…か」

絵里「うん、約束するわ」

花陽「あっ…希ちゃん、寝てるんだ」

にこ「ずっと看病してたもんね」

にこ「ずっと絵里が目を覚ますまで、休まないって…」

凛「ずっと絵里ちゃんの好きなあの歌を…歌ってた」

絵里「歌…」

絵里「そっか…」

絵里「ありがとね、希」ナデナデ

希「う、うう~ん…」

絵里「心配かけてごめんね…希」


ガララッ

真姫「エリー、体の調子はどう?」

絵里「ええ、何とも」

真姫「まったく…」

絵里「真姫も心配してくれた?」

真姫「当たり前じゃない!バカ…」

絵里「ごめん」

真姫「もう、いいわよ…ちゃんと目を覚ましてくれたんだから…」

絵里「うん」

真姫「あのね」

真姫「あなたの今回のケガ…というのかしら」

絵里「?」

真姫「今回の事について説明するわ」

絵里「うん」

真姫「あなたは教室で足を滑らせて、転んで頭を打って…意識不明の重態…」

絵里「うぅ…」

真姫「本当なら、頭に大ダメージがあるはずなのよね」

真姫「だけど…検査しても…何の損傷も無かった」

絵里「えっ…」

真姫「ただ、意識が無かっただけ…」

真姫「…パパも頭を傾げていたわ」

真姫「まったく、不思議なこともあるものね…」

真姫「じゃあ、私は帰るから…」

真姫「一応患者なんだから安静にしときなさいよ」

真姫「あっ…」

真姫「何かベッドの横に落ちてるわよ」

真姫「なにこれ?マフラー?」

真姫「忘れ物かしら」

絵里「…!」

絵里「それは私のよ!」

真姫「ふぅん、そう」

真姫「じゃあね、お大事に」

ガララッ

絵里「これは…羽衣…」

絵里「そっか…希が守ってくれたの…」


『えりちの事守ってみせるから、絶対にそれを離さないで…』


絵里「希…」ポロポロ

絵里「ありがとう…」

希「何泣いてるん?」

絵里「希…起きたの…」

希「うん…」

絵里「ねぇ…希?」

希「なに?」

絵里「ありがとう」

希「うん」

絵里「本当にありがとう」

希「うん…」

絵里「好きよ」

希「…うん」

希「うちも好きよ」

絵里「約束しましょう?」

希「うん、なんて?」

絵里「『私たちはずっと一緒』だってこと…」

希「うん、約束する」

絵里「じゃあ、誓いのキスを…」

希「はあ?何それ?…約束にキスとか結婚か…んむっ!」

絵里「んっ…」

希「あほ…」

絵里「希…」ギュッ

絵里「あともう1つ約束して」

希「なに?」

絵里「コスプレ…してほしいの」

希「はぁ!?」

絵里「天女と占い師とサンタとラプンツェルとキョンシーの」

希「ぐ、具体的やね…」

おわり

おわり。のんたんかわいい

乙でした!


かわいい

乙ー、のぞえり派として楽しませてもらいました!
スクフェスのコスプレいいよねw

おつー

なんか終始落ち着いてふわふわとした雰囲気で、読んでて良い気分だった

おっつー
良いのぞえりやん?

乙!これはいいのぞえり
発想に脱帽だわ、のんたんかわいいよな

具体的やね……に笑った。いいのぞえりでしたね(笑)

おっつ

いい感じに締めてるけど、絶望的にポンコツチカ…

乙チカ
何故かのんたんの、うるさい!あほ!あたりが小鳩で脳内再生された

やっば…のんたんとチカがめっちゃ好きになってきた…

のぞえり愛…イイネ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年07月03日 (木) 15:50:13   ID: r4oO65U-

のんたんくそかわ!

2 :  SS好きの774さん   2014年07月03日 (木) 16:09:24   ID: L48yX_Fj

雰囲気がいい…
引き込まれた

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom