しえな「この浮気者ぉぉ!!」 (80)

SS速報で立てるの初です
ミスとかあったらごめんなさいです

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ちたしえかしら

~夜・金星寮5号室~



乙哉「…」

しえな「…」

乙哉「…はぁ……」ボー

しえな「…」ペラッ

乙哉「……あー…」

しえな「…なあ」

乙哉「…にひひ……」ニヤニヤ

しえな「…おい武智」

乙哉「うへ…うへへ……」ゴロゴロ

しえな「おい」

乙哉「ぁー……んふ…んふふ…♪」モゾモゾ





しえな「武智ってば!!」

乙しえ乙しえ!

乙哉「うわっ!!し、しえなちゃん!?」ビク

乙哉「ど、どしたの、いきなり大声出して…」

しえな「どうした、はこっちのセリフだ!さっきから何度も呼んでるのに…」

乙哉「え?そ、そうなの?」キョトン

しえな「そうだよ!本読んでるんだからもう少し大人しくしててくれ!」

乙哉「う…ご、ごめんね?つい…」

しえな「あ、いや…」

しえな「まぁ、わかればいいんだ、わかれば…」

乙哉「えへへ…じゃ、静かにしてまーす」

しえな「うん…それじゃ、ボクはまた本読んでるから…」

しえな「いいか?邪魔しないでくれよ」












乙哉「うひひ……」ゴロゴロ

しえな「」イラッ

しえな「なぁ…」

乙哉「んー?なになに、どしたのー?」ニヤニヤ

しえな「…なんかさ、変じゃないか?最近のお前…」

乙哉「そおー?変じゃないよぉー、ぜんぜんー」ボケー

しえな「いや変だ!絶対変だ!」

しえな「なんというか…いっつもニヤニヤしてるし、心ここにあらず、って感じだし…」

しえな「そもそも…なんだよ、その大事そうに両手で抱えてるものは?」



乙哉「えー?あぁー、この娘?」スッ



乙哉「あたしの可愛いピョンちゃんだよー?可愛いでしょ♪」ニヤニヤ

しえな「ほらやっぱり変だ!お前がウサギのぬいぐるみ抱えながらベッドで頬緩ませてるとか!」

しえな「普段のお前ならありえないだろ!絶対変だって!!」

乙哉「むー…ひどいなしえなちゃーん、あたしだって普通の女の子なんだよ?」

しえな「自分がどうして今黒組にいるのか、よーく考えてから普通って言えよ…」

しえな「なぁ…武智」

しえな「その…何かあったのか?お前がそんな気持ち悪いことするなんて…」

乙哉「え?」

しえな「あ…いや、お前がそんな感じだと、ボクも張り合いがないというか…」

しえな「その…ボクで良ければ、まぁ、相談くらい乗ってやるけど」

しえな「る、ルームメイトだしな!そのくらいはお安い御用だし…」

乙哉「あはは…ありがと、優しいねしえなちゃん♪」

乙哉「でも…何かあったっていうか…いや、別に大した事じゃないんだけど…」ニヤニヤ



乙哉「いやー、実はね…」

















乙哉「恋…しちゃったらしくてさ」ニヤニヤ

しえな「…は?」

しえな「え?待て待て…ちょっと待て」

しえな「た、武智、お前…今なんて……?」

乙哉「だからさぁー、恋!しちゃったの!初恋!!」

乙哉「初めての恋なの!フォーリンラブなの!!」

乙哉「あぁー!もうドキドキで落ち着かないよぉぉ!!」ジタバタ

しえな「えぇぇ!?初恋!?お前が!?」

しえな「いや、それって…つまりあれだろ?その人のことハサミでバラバラのグチョグチョにって…」

乙哉「違うの!今までハサミでやっちゃったのはさ…」

乙哉「その、何と言うか…気持ち良くなるためというか、満足するためというか…」

乙哉「でも今回は違うの!本当にその人のこと考えると眠れなくなるし、胸が苦しくなるし…」

乙哉「とにかく!もう落ち着かないの!その人のことしか考えられないの!!」

乙哉「ああー!どうしよどうしよぉー!!」ゴロゴロ

しえな「重症だな…」

しえな「(武智が初恋…)」

しえな「(こいつが誰かに恋する、なんて…考えたこともなかったな)」

しえな「(武智がそこまで夢中になる人…どんな人なんだろ)」

乙哉「はぁ……」ボケー







しえな「…で、相手は?」

乙哉「相手…?」

しえな「そうだよ、相手」

しえな「誰なんだ?お前の初恋の相手にされちゃった、その可哀想な人は」

しえな「それがわかんないとボクも相談に乗ってやれないって、ほら…誰?まさか一ノ瀬?」

乙哉「違うの、晴ちゃんじゃなくて…その」




乙哉「あたしの初恋の人はね…」




しえな「…」ゴク

しえな「…わからない?」

乙哉「うん…知らない人なの、名前も、住所も、年齢も」

しえな「…知らない人をどうやって好きになるんだ」

乙哉「いや、話すと少し長くなるんだけどさ…実はね?」





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





しえな「…つまり一目惚れ、かぁ」

乙哉「そうなの…完っ全に一目惚れ」

乙哉「遠目だったから、はっきりと見えたわけじゃなかったんだけどね…」

しえな「この前の日曜日…テストも終わって、浮かれてたお前は朝から変装して街に出た」

しえな「駅前の雑貨屋でかわいいハサミを探してたら、ぬいぐるみを見つめてるとびっきり可愛い女の子を発見」

しえな「声をかけようとも思ったが、あまりの衝撃に呆然としてしまい、声をかけることすら出来なかった」

しえな「何も出来なかったお前は、仕方なくそのぬいぐるみだけ買って帰った、と…」

乙哉「い、いちいち復唱しなくていいから!恥ずかしいしぃ…」

しえな「…へぇー」

乙哉「な…何よ」

しえな「いや…まさか武智がこんなにヘタレだったなんて…」ニヤニヤ

乙哉「うぐっ…」

しえな「手当たり次第女の子ひっかけてるくせに…いざとなるとダメダメなのか…」

乙哉「う、うるさいなぁ!そんだけ可愛い娘だったんだし!仕方ないじゃん!」

しえな「いやぁ、黒組の誰か…と思っていたら、まさか知らない娘だったとはね…」

しえな「ボクはてっきり一ノ瀬あたりかと思ったよ」ハハ




しえな「(…何でちょっと安心してるんだろうな、ボクは)」




乙哉「晴ちゃんも確かに魅力的だけどさ…その人はもっともっとなの、本当に大好きなの」

乙哉「こんな気持ち初めてで…もう、あたしどうしたらいいのかわかんなくて…」

しえな「武智…」

乙哉「あぁー!もう一度会いたいなぁ…」

乙哉「そしたら、今度こそ…今度こそ勇気を出して、この気持ちを伝えるのに…」ハァ

しえな「でも…流石に名前も住所もわからないんじゃあ…」

乙哉「あぁ…今も脳裏に焼きついている……」

乙哉「ブラウンのサラサラなロングヘア」

乙哉「真っ赤なリボンの髪飾り」


しえな「(…ん?)」


乙哉「ちょっと小柄な背丈、ふんわりした目元、フリフリでかわいいピンクのスカート…」


しえな「(…ちょっと待て)」


乙哉「そしてなんといっても、ぬいぐるみを見つめてはにかむあの笑顔!もうさいっこーに可愛いんだよ!!」

乙哉「あぁー!会いたい会いたい会いたいよぉぉぉー!!」ジタバタ


しえな「…」










しえな「(…それ絶対にボクだ……)」

完全に乙女

しえな「(うわああああ!ま、まさか見られてたなんてぇぇ!!)」

しえな「(武智も朝からいなかったし…たまにはちゃんとお洒落しようかなー、なんて)」

しえな「(コンタクト入れて、髪もアイロンかけて…)」

しえな「(バッチリ化粧までして、とっておきの超乙女チックな服着て…)」

しえな「(駅前の雑貨屋、って言ったからちょっと引っかかってたけど)」

しえな「(ゆ、油断したあああああああああ!!よりにもよって武智に見られるとはぁぁぁ!!)」





乙哉「あれ?おーい、しえなちゃん?」

しえな「う゛ぇっ!?な、ななな何!?」

乙哉「いや、どしたの?なんか面白い顔してるけど」

しえな「あ、あぁー!ななな何でもない!!いや何でもないんだ、本当に!!」



しえな「(ん?これってつまりどういうことだ…!?)」

しえな「(武智の初恋の相手が…その、ぼ、ボクで、でもそれはボクじゃなくて、武智にとっては別の娘で…)」

しえな「(武智が好きなのはボクだけど、それはボクじゃ…ああああ、だ、駄目だ、頭が混乱して…!!)」

しえな「(た、武智が、ボクのこと…ボクの…)」

しえな「(…いや、でも……それは)」




乙哉「あっ!そーだしえなちゃん!!」ズイ

しえな「えっ!?」ビク

乙哉「もうテストも終わっちゃったからさ、授業昼までじゃん?」

乙哉「だからー、明日の午後!一緒に街に出ようよ!」

しえな「あ、明日!?」

乙哉「そ、明日!そんでさ、あたしと一緒に愛しのリボンちゃんを探しに行こうよ!」

しえな「リボンちゃんって…だ、第一なんでボクまで」

乙哉「あたしこれでも追われる身だしさ、しえなちゃんが一緒の方が安心でしょ?」

乙哉「何より2人で探したほうが見つかる可能性も高いし、しえなちゃん人探しとか得意そうだし!ね、行こ!?」



しえな「(見つかるわけないだろリボンちゃんはここにいるんだから!)」



しえな「こ、断る!なんでせっかくの日曜に人探しなんて…」

乙哉「えー、なんでー!?行こうよ行こうよぉー!」

しえな「だってそんなに都合よく見つかるわけないし…ボクだってまだ読みかけの本がいっぱいあるし…!」

しえな「武智一人で行きなよ!それかほら、一ノ瀬か東でも誘って…」

乙哉「…」

しえな「…武智?」

乙哉「…しえなちゃんは」

しえな「何だよ…」



乙哉「あたしと一緒に出かけるのは…イヤなの?」ウワメ



しえな「…っ!!」ドキーン

乙哉「…そうだよね、あたし…いっつもしえなちゃんのおさげ引っ張ってるし、迷惑もかけちゃってるし…」

乙哉「ごめんね、こんなにしえなちゃん困ってるのに…」

乙哉「あたしったら、わがままばっかり…」ウルウル

しえな「え…いや、そんなこと…」

乙哉「あはは…なんかあたし、浮かれちゃってた…」

乙哉「やっぱりあたし…一人で、行くから……」

乙哉「しえなちゃん、ごめんね…ほんとにごめん…」グスッ

乙哉「う…うぅぅ…」

しえな「う…な、なんでお前が泣くんだよ!」

乙哉「だって…だってぇぇ…」

しえな「わ、わかった、ボクも一緒に行くから!ほら、一緒にリボンちゃん探しに行くぞ!な?」

乙哉「ほんと!?」パァァ

しえな「ああ!明日の午後だろ?授業終わったらすぐに出るぞ!」

乙哉「やったぁー!!さっすがしえなちゃーん!!」

しえな「いきなり元気になったなお前…」

乙哉「ありがとねーほんとに!!愛してるぅー!!」ダキッ

しえな「ひっ!?」

乙哉「しえなちゃんってば何だかんだあたしのわがまま聞いてくれるんだもん!」

乙哉「あーもうほんと大好き!愛してるよー!!」ギュー



しえな「(ち、近い…近すぎる…!!)」



しえな「わ…わかったから!そんなにくっつくなって!」バッ

乙哉「あはは、しえなちゃん良い匂いだった♪」

しえな「な…何さらっと恥ずかしいこと言ってるんだよ…」



しえな「(…ほんとバカだな、ボクも……)」ハァ

~深夜~



乙哉「…んが」zzz


しえな「(…何が眠れない、だよ……)」


しえな「しかし…(『リボンちゃん』、か…)」


しえな「(武智に…本当のことを言うべきだろうか)」


しえな「(ボクが、お前の初恋の相手…『リボンちゃん』だって)」


しえな「(…でも)」


しえな「(もし、それを打ち明けたらどうなるんだろう)」


乙哉「んぁ……リボ…ちゃぁ…」zzz





しえな「(こいつはきっと……真実を知ったら…)」

~翌日 黒組教室~



溝呂木「じゃ、今日の授業はここまで!みんなー、しっかり復習しておくんだぞ!」




乙哉「やっと授業終わったー!しえなちゃん、早速出かけよー♪」

しえな「ああ…教科書まとめてるからちょっと待ってろ」

乙哉「ほら早く早くー、時間なくなっちゃうよ?」



鳰「あれー?これから二人でお出かけっスかぁ?なんか珍しいっスね!」

乙哉「え?」

春紀「おっ、それってもしかして…デートか?いやぁーお熱いねぇ」ニヤニヤ

しえな「なっ…!!」

晴「えぇぇ!?た、武智さんとしえなちゃんが…で、ででで、デート……!!」

伊介「へぇ…なんか意外じゃなーい?」

しえな「いや、これは…!」

柩「デートですって!羨ましいですね千足さん!今度僕たちも…!!」ズイッ

千足「え?あー…あぁ……」

涼「でぇ…と?何じゃ?それは」キョトン

純恋子「逢引、ということですわね」

真昼「羨ましい…ます」

晴「ねぇねぇ兎角さん兎角さん!デート!デートだって!あぁ…まさかあの二人が…!!」ソワソワ

晴「どっちから声かけたのかな…意外としえなちゃんとか…」

晴「いやいや、実はもっと先までとか…きゃー!!」

兎角「…楽しそうだな、一ノ瀬……」

しえな「だから違うってば!これは誤解で…」

乙哉「まぁまぁなんだって良いじゃん!ほら、早く行こ♪」




香子「…ちょっと待て」




乙哉「?」

涼「どうかしたかの、香子ちゃん」

香子「テスト期間も終わった、少しくらい息抜きをするのもまあ良いだろう」

香子「だが…どうも気が緩みすぎてはいないか?」

しえな「な、何だよいきなり」

香子「お前たちだけじゃない、この黒組全体がだ」

伊介「相変わらずおカタいわねぇ…」ハァ

香子「テストも終わり、あと数日で夏休み…と、浮かれているのかもしれないが」

香子「学生の本分は学業だ、そんな気構えでは今後の学生生活に…」



乙哉「もー…神長さんてば真面目すぎ!」グイ

香子「っ!」

乙哉「そんなにお説教ばかりじゃさ、せっかくの可愛いお顔が台無しだよ?」ニコ

香子「なっ…!!??」カァァ




春紀「おぉー…」

純恋子「あらあら…」

鳰「絶好調っスねー、武智さん…」




涼「…」ゴゴゴゴゴゴ

真昼「ひぃぃぃ!こ…怖い!怖いです首藤さん…!!」

香子「…」

晴「だ、大丈夫ですか?神長さん…」

香子「あ……いや、少々驚いただけだ…す、済まない」

柩「なんか必殺技炸裂って感じですね!」

千足「…技なのか?」

涼「家庭科室に包丁は置いてあったかの?」

真昼「お…落ち着いてくださいぃぃ…!」




しえな「…」

乙哉「あれ?どうしたのしえなちゃん」

しえな「何でもない!ほら、さっさと行くぞ!」グイ

乙哉「い、痛い痛い!しえなちゃ、も、もうちょっと優し…いたたた!!」ズルズル




春紀「…そのくせ変なとこでニブいんだな」

鳰「剣持さんも大変っスねー…」

世界は期待に満ちている

~駅前~



乙哉「よーし!張り切って探そーね、しえなちゃん!」

しえな「いいのかよ…連続殺人鬼が堂々と外に…」

乙哉「大丈夫大丈夫、伊達メガネと帽子で変装してるし、髪もおろしてるしさ」

乙哉「この前の日曜だって捕まらなかったもん、安心してよ!」

しえな「なんだその自信は」

乙哉「それに、何かあったらしえなちゃんがいるもんね!」ニコ

しえな「…」

しえな「…あんまり期待するなよ」ハァ

乙哉「あはは、ありがと!それじゃーまずはあの雑貨屋からだね!」

乙哉「ほらほら早く!あー、見つかると良いなーリボンちゃん!!」



しえな「(絶対に見つからないから…横にいるし)」

~雑貨屋~



乙哉「うーん…いないっぽいなぁ」

乙哉「あ、しえなちゃん、あっちはどうだった?」

しえな「それっぽい人はいなかったな、ブラウンのサラサラなロングヘア…だっけ?」

乙哉「そうそう、こっちも全然ダメ…ぬいぐるみのあたりにいるかな、って思ったんだけど」

しえな「リボンも売ってたけど…ま、ここで買ったものかもわからないしな」


しえな「(実際違うとこで買ったし)」


乙哉「はぁ…そう簡単には見つからないかぁ」

しえな「ほとんど特徴がわからないんじゃあな、人に尋ねることも出来ない」

しえな「そもそも、都合よくこの雑貨屋にいるということがまずあり得ないし…」



乙哉「…」ジー



しえな「まぁ、まだ昼過ぎなんだからさ、この辺りをゆっくり…って聞いてるのか武智」

乙哉「…このワンピ、しえなちゃんに似合いそう」

しえな「は?」

乙哉「うん…似合う!絶対似合うって!」

乙哉「ほらほら!ちょっと合わせてみなよ!あっちに鏡あるし!」グイ

しえな「うわ、ちょ…ひ、引っ張るなよ!」

乙哉「うわぁ…しえなちゃんすっごい似合ってるぅー!」

乙哉「いやぁ、やっぱりあたしの目に狂いはないね!さいっこー!」

しえな「う…た、確かに…いいかも」

乙哉「あー!こっちのネックレスもよさそう…ねーねー、付けてみてよぉ!」

しえな「えぇ?わ、わかった…ほら、貸してくれ」

乙哉「いや待って!やっぱりこっちの髪留めのほうが」

乙哉「でもでも、こっちのニットのほうがしえなちゃんらしいし…!!」

しえな「お、おい武智?」

乙哉「うぅー、やっぱり全部!どれも絶対似合う!ちょっと合わせてみて!これ全部!!」グイグイ

しえな「ちょ、待てって!そ…そんなにいっぺんには、ま、待てってば!」

これはいい乙しえ

乙哉「早く早く!ぜーったい可愛いから!ねっ?」ズイ

しえな「わ、わかったから落ち着けって!な!?」

しえな「あ…ま、待て!武智にもピッタリなのあったから!

しえな「ボクが付けてやるから、ほら!じっとしてろ!」



カチャ




【鼻メガネ】




乙哉「…」

しえな「……ぷっ…く…くくく…!!」

乙哉「う…ふふ……あは、あははははは!もー!しえなちゃんってばひどーい!!」

しえな「だ、だって…ほんとに、似合って…!くく…も、ダメ…あは、あはははははは!!」

乙哉「わ、笑いすぎだよ!ならしえなちゃんも付けてみればいいじゃん!ほらほらー♪」グイ

しえな「うわ、ちょ…や、やめろバカ!はは、ははは!!」

超期待

乙哉「あー…笑いすぎてお腹痛い……」

しえな「それはこっちのセリフだ……ぷっ、やば、思い出したら…」

乙哉「しえなちゃんが似合いすぎてるのが悪いんだよー、鼻メガネ!」

しえな「なっ…ど、どう見てもお前の方が似合ってただろ!」

乙哉「えー!しえなちゃんだってば!」

しえな「いーや武智だ!」

乙哉「しえなちゃん!!」

しえな「武智!!」




乙哉「ぷっ…くく、なんか、また……」

しえな「う…ボクも……くくっ…」






\アーッハッハハッハッハッハッハッハッハ!!!/






店員「(カップルかな?)」

客「(カップルだな)」

(カップルだな)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



しえな「結局ニット買っちゃった…」

乙哉「良いじゃん、すっごい可愛かったし!」

しえな「た、確かに可愛かったけど…」

しえな「武智は何も買わなかったのか?お前が好きそうな小物とかあったじゃないか」

乙哉「うん、だって今日のあたしの目的はあくまでリボンちゃん探しだし!」



しえな「(…そういえばそうだったな……)」



乙哉「あー…でもここじゃリボンちゃんは見つからなかったかぁ」

しえな「ま、仕方ないな…ほら、次はどこ探すんだ?」

乙哉「うーん、ここ以外は特に決めてないんだけど…」

乙哉「とりあえず街中、いそうなとこ虱潰しにあたっていけばいいよ!」

しえな「無計画だな」ハァ

乙哉「じゃ、次はこのゲームセンター!行こっ♪」

~ゲームセンター~



乙哉「ほいっ!またゲット!これで3体目!!」ガシャン

しえな「へぇ、武智ってクレーンゲームも得意なのか」

乙哉「うん!こうやって取ってあげると女の子みんな喜ぶんだよ♪」

しえな「…ふーん」

乙哉「はいっ、今取ったクマさん、しえなちゃんにあーげる!」

しえな「え…ボクに?」

乙哉「今日あたしがワガママ行って連れ出しちゃったからね、そのお礼!」

しえな「…ありがとな、武智」



しえな「(…あんまり嬉しくないな)」



乙哉「うーん、それにしても…ここにもリボンちゃんいないっぽい?」

しえな「そうだな…まあ、広いから見落としてるかもしれないけど」

乙哉「はぁー…ま、よくよく考えれば一人でゲーセン、って感じの娘でもなかったかぁ」

しえな「どうする?もうちょっと探してみるか?それとも移動?」

乙哉「んー…ま、せっかく来たんだしもうちょい遊んでこっか!」

乙哉「どうせさ、しえなちゃんあんまゲーセンとか来たことないでしょ?」

しえな「まあ…確かにそうだな、もう何年ぶりに来たかも覚えてない」

乙哉「じゃあすぐ帰っちゃ勿体無いよ!ほら、あっちにエアホッケーあるよ!やろやろ!!」グイ

しえな「えぇ…?ボ、ボクあーゆーのあまり自信ないんだけど…」



乙哉「あー、確かにしえなちゃんどんくさそうだもんね、暗殺者なのに」アハハ

しえな「」カチン



しえな「へぇ…ならお前はよっっっっぽど自信があるんだろうな?」

しえな「万が一にも、こんなどんくさそうなボクになんて負けないよなぁ?」ニヤ

乙哉「おっ…しえなちゃんやる気になった?」ニヤ

しえな「…負けたら昼食奢りだぞ」スッ

乙哉「オッケー…負けないけどね」スッ

~10分後~



しえな「結局負けた…」ガク

乙哉「いぇーい!あたしの勝ちぃ♪」

しえな「…でも、けっこう善戦したし満足かな」

乙哉「しえなちゃんほんとに初めてなの?けっこう危なかったな」ハハ

乙哉「ま、流石あたしのしえなちゃんってとこかな?センスあるよやっぱり!」

しえな「い、いつからお前のモノになったんだよ!気持ち悪い…」プイ

乙哉「ほらほら、なんかお腹空いちゃったしご飯にしよ、あたしのしえなちゃん!」ギュゥ

しえな「だ、だからお前はすぐ抱き付くなってば!しかもまた『あたしの』って…!」

乙哉「あ、そうだ!あたし、この辺にケーキが美味しいお店知ってるんだー!案内するよ♪」グイグイ









子供「(カップルかな?)」

DQN「(カップルだな)」

~夕方・駅前公園~



しえな「(…結局)」

しえな「(あの後も、見つかる筈のない『リボンちゃん』を探し、武智にあっちこっちと連れまわされた)」

しえな「(お洒落なレストラン、CDショップ、本屋、美術館、なんと観覧車まで)」

しえな「(武智のハイテンションと過度なスキンシップにほとほと疲れ果てたが…)」





しえな「(…楽しかったな)」





乙哉「ほい、しえなちゃん!クレープ買ってきたよ♪」

しえな「…ああ…ありがと……つ、疲れたぁぁ…」グデ

乙哉「えー?しえなちゃんちょっと体力無いんじゃない?」

しえな「お、お前が元気すぎるんだろ……」

乙哉「そうかなー?ま、でも仕方ないか!ほんと色んなとこ探したもんねー」

乙哉「でも…結局今日はリボンちゃん見つからなかったかぁ」ハァ


しえな「…『リボンちゃん』、か……」


しえな「(…変な話だよな、『リボンちゃん』探しに、その『リボンちゃん』本人が連れまわされてるんだから)」


しえな「(でも、さんざん歩かされたとはいえ…ゲーセンではしゃいだり、レストランでお互いのケーキを食べ比べたり)」


しえな「(本屋でお勧めの本を教えあったり、観覧車で夕焼けを眺めたり、こうしてベンチでクレープを食べたり…)」


しえな「(…寒河江たちにはからかわれたけど…なんだよ、これ……)」









しえな「(これじゃまるで…本当の……)」









乙哉「なんの手がかりも得られなかったし……あーあ、なんか一日ムダにしたかなぁ」

しえな「(…)」

しえな「(…一日ムダにした、か)」

しえな「(…そうだよな)」

しえな「(武智にとっては…あくまでも今日は『リボンちゃん』探しなんだ)」

しえな「(見つからなきゃ…なんの意味もない、わかってたはずだろ?)」

しえな「(なのに……なに一人で浮かれてんだよ…ボク)」

しえな「(勝手に勘違いして…勝手に舞い上がって…)」

しえな「(やっぱりだ……ボク、やっぱり…)」








しえな「(…大バカだ)」








乙哉「…しえなちゃん?どしたの、黙りこ…」

しえな「ごめん」

乙哉「…え?」

しえな「なんか…笑っちゃうよな」ハハ

しえな「お前はさ、しょっちゅう色んな女の子とっかえひっかえしてさ…」

しえな「最後はバラしちゃうんだからさ、こんな風に出かけたりするのは…もう慣れっこだろ?」

乙哉「…しえなちゃん?」

しえな「でも…ボクは……今日、本当に…」グスッ

乙哉「…泣いてるの?」

しえな「全部…勘違いだって、わかってたけど……でも…でも……!!」

乙哉「…何か、嫌なことでも……」

しえな「…ごめんな、武智」





しえな「ボク…先に帰る」






タッ






乙哉「あっ!?し、しえなちゃん!?ま、待ってよ!しえなちゃんってばー!!」

~翌日~



溝呂木「剣持ー、剣持はいないのかー?」

溝呂木「あれ…おっかしいなぁ、昨日まで元気そうだったのに……」

乙哉「…」

溝呂木「あっ、武智!お前、剣持と同室だよな?剣持のこと、何か知らないか?」

乙哉「…いや、あたしは何も……」

溝呂木「うーん、武智も知らないんじゃなぁ…先生心配だぞ……」



鳰「…何かあったんスかねあの二人」ヒソヒソ

伊介「ケンカでもしたのよ、どうせ…ほっときなさいよ」ファァ

純恋子「せっかく今日の放課後にでもお茶会を開こうと思ってましたのに」ムス

香子「…剣持の分のノートも取っておかねば」



晴「…」

兎角「…」

~夜・金星寮1号室~



兎角「…で、お前はいつまでここにいるつもりなんだ?」

しえな「うるさいうるさいうるさいぃ…」グスッ

晴「あはは…まだ泣いてるのしえなちゃん…」

しえな「いつも仲良いお前たちにボクの気持ちがわかるもんかぁ…」

兎角「…いきなり転がりこんできたかと思えば、昨日の夜からずっと泣きっぱなしか……」

兎角「いい加減邪魔だ、さっさと帰れ」

しえな「嫌だ!誰が帰るもんか!!」

兎角「お前なぁ…」イラ

晴「ま、まぁまぁ兎角さん、たまには3人で寝るのも…ね?」アタフタ

兎角「…わかったよ、ただし剣持は床だぞ」ハァ

晴「しえなちゃん朝から何も食べてませんよね?晴、ご飯買ってきました!カレーメシ!ジャスティス!!」

しえな「うぅ…ありがとう……一ノ瀬は優しいなぁ…どこかの殺人鬼とは大違いだ…」ウルウル

兎角「(…私も明日買ってみるか……)」

晴「ねぇ…しえなちゃん、武智さんと何かあったんですか……?」

しえな「…別に、ちょっと喧嘩しただけだよ」

晴「嘘!だってしえなちゃん、よく武智さんと喧嘩するけど、いつも強気で…」

兎角「落ち着け、一ノ瀬」

晴「で、でも…」

しえな「…ごめん、一ノ瀬……心配してくれてるのに」

兎角「誰にでも言いたくないことの一つや二つある…お前だってそうだろ?」

晴「う…」

兎角「…だがな」



兎角「そのまま部屋の隅で縮こまってるくらいなら、いっそのこと死んだつもりで動いてみたらどうだ」



しえな「…」

兎角「私が一ノ瀬を守ると誓った日も同じだ…死んだつもりで動いて、クラスメイト全員を敵に回して」

兎角「だが今は…あの日、自分の望むがままに行動して本当に良かったと思っている」

晴「兎角さん…」

兎角「お前も暗殺者なんだろ?だったら死線の一つや二つ潜り抜けてきてるはずだ」

兎角「だったら今更死ぬ気になることくらいどうってことないだろ、ほら、さっさと行け」シッシッ

しえな「…たとえ後悔してもか?」

兎角「後悔なんてカレーでも食べればすぐ忘れる」

しえな「…ふふ」

兎角「…なんだ」

しえな「まさかお前に励まされるなんてな…ありがとう、東」

兎角「…」プイ



しえな「死んだつもりねぇ…だったら、なんで死んだつもりで一ノ瀬に気持ちを伝えないのかな?」ニヤ



兎角「なっ…!!??」カァァ

晴「しししししえなちゃん!?」

しえな「後悔なんてすぐ忘れるんだろ?だったらいつまでもヘタれてないでキスの一つや二つ…」ニヤニヤ

晴「きき、キスって、兎角さんと、晴が…あわわわ…!!」アタフタ

兎角「ふ、ふふふ、ふざけるな!!ふざけたこと言ってると本当に殺すぞ!!」シャキン

しえな「ちょ、謝るから!ナイフしまえって!軽い冗談に決まってるだろ…」

兎角「…冗談言う余裕が出来たならさっさと帰れ……」

しえな「あー…ごめん、もうみっともなく泣いたりはしないけどさ」



しえな「お願い!あと一晩だけボクを泊めてくれないかな?」

兎角「…はぁ?」

~翌日・教室~



ガララ



鳰「おはようっスー!いやー今日も気持ちのいい朝っスねー!」

伊介「朝からうっさーい…殺すわよ……」ムニャ

春紀「はは、いいじゃん授業中ずっと寝てんだからさー、伊介様」

柩「千足さん!今日を乗り切ればいよいよ夏休みですよ!夏休み!」

千足「そうだな…桐ヶ谷はどこか行きたいところはあるか?」



乙哉「…」



香子「…今日も剣持は休みか」

涼「まさか2日連続とはのぅ」

晴「…武智さん、やっぱりちょっと元気なさそう」ヒソヒソ

兎角「明日になれば戻る…」ヒソヒソ

乙哉「(…しえなちゃん)」

乙哉「(あれからずっと、部屋にも戻ってこない…)」

乙哉「(あたし…しえなちゃんのこと傷つけちゃったのかな)」

乙哉「(しえなちゃんのあんなに悲しそうな顔…始めて見た)」

乙哉「(…何か悪いことしちゃったなら……ちゃんと謝らなきゃ)」ガサ

乙哉「(…ん?)」

乙哉「机の中に…手紙?」




『今日の夕方17時、駅前公園、噴水前』




乙哉「…すっごい綺麗な字……」

乙哉「で、でもいきなり噴水前って、一体誰が…」ゴソ

乙哉「あれ?なんかもう一つ…」



乙哉「…!こ、これって…!」







乙哉「あの時の真っ赤なリボン…もしかして!」

~放課後・1号室~



兎角「ただいま」ガチャ

晴「たっだいまー!明日からは~お待ちかねの~♪」



しえな「ああ一ノ瀬、おかえり」ニコ



晴「なつやす……み…」

晴「…」

兎角「…」






晴・兎角「「誰(だ)!!??」」

しえな「誰って…ボクだよ、ボク!剣持だって!!」

兎角「お、お前が剣持…?ばば、馬鹿を言うな、本物はもっと髪がもさもさで、眼鏡かけてて…」

しえな「ちゃんとアイロンかけたんだよ…コンタクトも入れて、化粧もしてさ」

しえな「まあ普段は面倒だし目疲れるし、滅多にやらないけど」

晴「し…しえなちゃん綺麗……!ほんとに綺麗です!晴、憧れちゃいます!!」

晴「お洋服も可愛いし…はぁ……すごい…」ウットリ

しえな「そ…そうかな?一ノ瀬のほうが可愛いと思う、けど…」デレ

兎角「…おい」ギロ

しえな「あ、いや、そんなに睨むなってば、怖いから」

兎角「はぁ……まあ、確かに一ノ瀬の言うこともわからないでもないな…うん」

しえな「はは…東に褒められると、なんかむず痒いな」

しえな「っと…こんなことしてる場合じゃなかったんだ」

しえな「ハチ会わないように早めに出ないと…!荷物をまとめてっと…」

しえな「世話になったね、一ノ瀬、東…本当にありがとな」

晴「ううん!晴たちも賑やかで楽しかったです!ね、兎角さん!」

兎角「…もう戻ってくるなよ」

しえな「わかってるよ…ボクもちょっと楽しかった」

しえな「今度学食でカレーでも奢らせてよ、それじゃ!」




バタン




晴「仲直りできるといいね、二人とも♪」

兎角「(しまった、カレーメシ買い忘れた…)」

~16:45分・公園噴水前~



乙哉「…あと15分」ソワソワ

乙哉「(あぁぁ…結局1時間も早く来ちゃったよ…!)」

乙哉「(でも、あと15分…15分でついにあの娘が…)」

乙哉「(もしかしたら、誰かのイタズラかもしれない)」

乙哉「(そもそも、何であっちがあたしのことを知ってるのかもわかんないし…)」

乙哉「(だけど…もしあの『リボンちゃん』本人だとしたら……)」

乙哉「あぁぁぁー!緊張するー!!」ソワソワ

乙哉「ふ、服とかおかしくないかな?汗も大丈夫、だよね…」

乙哉「うぅ…緊張で死にそう…」





ザッ…





乙哉「…あっ」

乙哉「…あのブラウンのサラサラな髪に、あの時見たまんまの服……!」

乙哉「ま、間違いない…あの娘だ…!こ、こっちに歩いてくる…!!」

乙哉「やっぱり…イタズラじゃなかったんだ…!!」



ザッ ザッ




乙哉「(お、落ち着けあたし…深呼吸、深呼吸……よし…!!)」チャキ





スッ…





しえな「…」

乙哉「あの!おおお、お手紙ありがとうございます!あ…あたし、あなたをずっと…」

乙哉「さが、し…」

乙哉「…あれ?」







乙哉「……しえなちゃん?」

しえな「…どうしたの、武智」ニコ

乙哉「え?…嘘……」

乙哉「なん……で…?あれ…なんで、しえなちゃ……」

しえな「…」

しえな「…探してたんだろ、リボンちゃん」

乙哉「…まさか」





しえな「(…駄目だ)」


しえな「(覚悟はしてきたけど…こいつの、顔を見ると……)」


しえな「(…ヤバい……)」





乙哉「じゃあ…あたしがずっと、探してたのって…!!」

しえな「…ぅ」

しえな「ぅ…ぅぐ……」グス

乙哉「しえなちゃん…?」

しえな「…っ!」





ダッ





乙哉「あっ!?」

乙哉「ま、待ってよ!しえなちゃん!しえなちゃんってば!!」






タッ タッ タッ タッ…






しえな「(…昨日散々泣いたはずなのに)」

しえな「(なんでまだ…こんなに……)」

しえな「(あいつの顔を見るだけで…悲しくて、どうしようもなくて……)」

しえな「(…どこに向かって走ってるんだろうな、ボク)」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



乙哉「ぜぇ…はー…はぁ……」

乙哉「や…やっと……はぁ…見つけた…」

しえな「…」

乙哉「あはは…この前一緒にクレープ食べたベンチじゃん、こんなとこにいたんだ……」ゼェ

しえな「…」

乙哉「…しえなちゃんだったんだね、あの『リボンちゃん』」

しえな「…ああ」

乙哉「もう…早く言ってくれればよかったのに、酷いなぁ」アハハ




しえな「…言えるわけないだろ」




乙哉「…?」

しえな「言ったらお前、絶対ガッカリしたろ?」

しえな「ボクなんて…お前にとってはただの『ワガママ聞いてくれるルームメイト』」

乙哉「そ、そんな事…!」

しえな「『リボンちゃん』の正体を知ったお前は、きっと『なんだ、しえなちゃんか…』って幻滅する」

しえな「そんなの耐えられるわけないだろ…絶対」

しえな「ボクは…自惚れていたかったんだ」



しえな「『武智にとってのボクは、ちょっとは特別な存在なんだ』って…」



乙哉「…」

しえな「わかっていたはずなのに…そんなはずないって」ハハ

乙哉「しえなちゃん…」

しえな「現にお前は…ボクが横にいても、いっつも他の女の娘にちょっかい出してばかりで」

しえな「この前も、授業の後…いきなり神長のこと口説いて」

乙哉「…」

しえな「一昨日だって…ボクは本当に楽しかったんだ」

しえな「お前に色んなとこに連れてってもらって、遊んで、はしゃいで…」








しえな「まるで…『本当のデートみたい』、だって……」グス

乙哉「…!」ハッ

しえな「本当に…勝手だよ、ボクは…一人で、勘違いして、一人で傷ついて…」ボロ…ボロ…

しえな「バカだよ…本当に、救いようがない…大バカ……!!」

しえな「ぅ…ひぐ……うぇえ……」

しえな「うぇ…うぇえええぇぇ……」

しえな「…ボクは…ボクは、本当に…!!ひぐ…」




乙哉「…しえなちゃん、こっち向いて」

しえな「ぅう……なん、だよ…」





ギュゥ





しえな「…っ!」

乙哉「…ごめんね、しえなちゃん」ギュー

しえな「たけ、ち…くるし……!」

乙哉「あたし、しえなちゃんの気持ち…なんにも考えてなかった」

乙哉「初恋だー、とかリボンちゃん探しだー、とか勝手に舞い上がってさ」

乙哉「あたしの方こそバカだよ…しえなちゃんなんかより、もっともっと」

乙哉「その結果、大切なしえなちゃんのこと、無神経に傷つけて…」

乙哉「ごめんね、本当に…あたし大バカだった」ギュウ

しえな「たけ…ちぃ……」グス

乙哉「あたしもね、色んな娘とデート行ったけど…一昨日が一番楽しかった、ほんとだよ?」

しえな「…一日ムダにした、とか、言ったくせにぃ……」

乙哉「あの時は、初恋だー、とか舞い上がってたから…無神経だったよ、本当にごめん」



乙哉「いや、でもね……さっき気付いたの、あれは初恋でもなんでもなかった」




しえな「え…?」

乙哉「ほら、これ見て」スラッ

しえな「…これって、お前の」

乙哉「そそ、あたしがいっちばんお気に入りのハサミ」

乙哉「女の子切り刻むときはね、いっつもこれを使うって決めてるんだ」

乙哉「リボンちゃんがこっち歩いてくるの見たとき…無意識のうちに取り出しちゃったみたいでさ」

しえな「…」




乙哉「結局その『リボンちゃん』も、今までの女の子たちと同じ…刻んで気持ちよくなるためだけの娘だった」

乙哉「『名前も住所も知らないお姫様』、なんて雰囲気に舞い上がって気付かなかっただけ」

乙哉「あたしがこんなに大好きなのに、切り刻む気にならない娘はしえなちゃんだけなんだよ?」ニコ

しえな「…武智……」

しえな「…」

乙哉「あっ、すっかり泣き止んだね♪良かった良かった♪」ナデナデ

しえな「……うるさい」ムス

しえな「だいたい、そんなこと信用できるか…何が『しえなちゃんだけ』、だ」

しえな「今まで散々他の女の子にちょっかい出しておいて…虫が良すぎるんじゃないか?」

乙哉「う…き、厳しいねしえなちゃん…」

乙哉「で、でも本当だってば!本当にしえなちゃんはあたしにとって特別な娘なの!」

しえな「…」プイ

乙哉「まいったなぁ…ね、ねぇ、どうすれば信じてもらえるかなー?」アハハ






しえな「……デート」

乙哉「…え?」






しえな「……明日、また…ちゃんとデートしたら、信じてやる」

乙哉「しえなちゃん…!!」

乙哉「まっかせて!さいっっっっっこーのエスコートしてあげるからさ!」

しえな「…ふん」

~帰路~



しえな「…」スタスタ

乙哉「ま、待ってよしえなちゃぁーん…あ、歩くの早いよ…」

しえな「…うっさいバカ武智」

乙哉「あはは…辛辣だなぁー相変わらず……」

乙哉「まー、そこがまた可愛いんだけどさ」ニヤニヤ

乙哉「あーぁ、やっぱりあたしにはしえなちゃんしかいないんだね!よーくわかったよ!」





しえな「…その」

乙哉「んー、どしたの?」

しえな「…悪かったな、部屋に戻らなくって……心配かけたよ」

乙哉「あぁ、別にそんなこと…」

しえな「今日からちゃんと部屋に戻るから…」









しえな「だから…改めてよろしく、乙哉」プイ

乙哉「…!」

乙哉「しえなちゃん…今、あたしの名前…!」

しえな「呼んでない」

乙哉「うっそだー!今、『乙哉』って確かに…!!」

しえな「うるさい!呼んでないったら呼んでない!!」

乙哉「恥ずかしがらなくてもいいのにー♪ねぇねぇ、もっかい呼んでよ!もっかい!」キャッキャ

しえな「あぁもうしつこいな!」

しえな「あんまり耳元で騒ぐな!暗殺するものとするぞ!!」

乙哉「きゃー!さっすがあたしのしえなちゃん!かっこいーぃ♪」

しえな「お前なぁ…!!」







\シエナチャーン!!!! ウルサイウルサイウルサーイ!!!!/










OL「(カップルかな?)」

ホームレス「(結婚しろ)」

~翌日~


乙哉「いやー!いい天気だね!絶好のデート日和!!」

乙哉「うんうん、やっぱりしえなちゃんはそのおさげと眼鏡が一番似合ってるな!」

しえな「まったく…ほら、余計なこと言ってないで早く行くぞ」

乙哉「えへへ、そだね!それじゃ、張り切ってしゅっぱーつ!」

乙哉「しえなちゃん、最っ高に楽しい一日にしようね!!」

しえな「ああ…期待してるよ」

しえな「そうだ、わかってると思うけど…」

しえな「もし他の女の子ナンパなんてしたら…許さないからな?」ニコ

乙哉「わかってるって!それじゃ、まずはお洋服でも見に行こっか!」


















乙哉「あ、ねぇねぇそこの店員のお姉さん!よかったらメアド…」

しえな「この浮気者ぉぉ!!!!!」


おわり

すごい面白かった!乙


しえなちゃん可愛い

乙!!しえ!!ジャスティス!!
発想素晴らしくて何もかもツボだったわほんと面白かった!
何で自分が乙しえ好きなのかわかった気がする
あとカレーメシ食べたい!
ほんと乙!!しえ

穂乃果「ほのキチ達が襲ってくる…」


穂乃果「新ユニット、チームサティスファクション!!」


花陽「ネ゛コ゛ニ゛ナ゛ッチ゛ャッタ゛ノ゛ォ!?」


穂乃果「ことりちゃんのとさかがもげた」


遊馬「シャークがラブライブ!にドハマリした」




お付き合いありがとうございました
リドルSSじゃないけど、昔書いたやつもよかったら読んでやってください

おお!シャークがラブライブの人だったか??

乙ッス
いい乙しえでした!
心がチョキチョキした

ネコのやつ見たことあるな
他のも読むわ~

「乙しえ」と「乙」の見分け方

乙っス

面白かったよ

ああああああああああ乙しえええええええええええええええええ
最高すぎてつらい

>>1乙哉

乙しええええええええええええええええええええええええええええええええひいいいいいいいいいいいいいいい

わぁい乙しえ俺乙しえ大好き

すごく良かった乙

すごくチョキチョキした、乙

すばらしい

超乙しえ

ブラボー乙しえ

???「ライバル登場の予感でちゅわ」

理想の乙しえ
聖典と言っても過言ではない

すばらしい乙しえだった
クラスの人気者だけど欠点がある少女×地味だけど可愛い少女はやはり正義

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年06月29日 (日) 23:37:41   ID: 4pY0jhyF

あぁ〜心がチョキチョキするんじゃ〜^ ^

2 :  SS好きの774さん   2014年06月30日 (月) 00:08:52   ID: 1E9XaItb

やっぱり乙しえのssを……最高やな!

3 :  デッドプール   2014年06月30日 (月) 08:29:54   ID: HFk5z_HZ

実際アニメも漫画もこんなんだったら良かった

4 :  SS好きの774さん   2014年06月30日 (月) 09:28:39   ID: CKRnf7Qb

乙しえたまらん

5 :  SS好きの774さん   2014年06月30日 (月) 11:00:36   ID: R_02fxYa

最高ですね

6 :  SS好きの774さん   2014年07月01日 (火) 06:36:59   ID: SET7RQBN

乙しえは心が穏やかになる

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