~晩成高校通学路~
――タッタッタッタッ。
やえ「深夜まで牌譜研究してたのがまずかった! 部長が朝練に遅刻とかマジやばごぶふぁっ!?」ドサッ!
通行人「おい! 大変だ! 変な髪型の女の子が鹿に跳ねられたぞ!」
通行人「晩成の生徒だ! 誰か、救急車を!」
――ピーポーピーポー。
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~病室~
やえ「……知らない天井だ……」
岡橋初瀬「小走先輩! 目が醒めたんですね!」
やえ「岡橋……一体何が」
初瀬「先輩は通学路で鹿とぶつかって、ここに運び込まれてからも、丸一日寝たままだったんですよ?!」
やえ「そ、そうだったか。片ドリルでなければ即死だった」
初瀬「命に別状は無いけど、目が醒めても念の為、何日か様子を見た方が良いってお医者さんが」
やえ「そうか。……なぁ岡橋」
初瀬「はい?」
やえ「晩成は負けたか?」
初瀬「えっ?」
やえ「県予選で晩成は負けたか?」
初瀬「……はい……阿知賀に」
やえ「そうか、それは夢じゃなかったか」
初瀬「……で、でも、まだ個人戦が」
やえ「有難う岡橋。心配かけたね。皆に大丈夫だって……それと、上田に部長代理を頼むと伝えてくれ」
初瀬「小走先輩……」
~翌日 晩成高校麻雀部室~
巽由華「部長がそんな事を?」
初瀬「はい……」
由華「そうよね……皆の前では明るく振る舞ってたけど、部長達にとっては最後のインハイ。簡単に切り替えられるはずない」
初瀬「……」
由華「まして今年の晩成は、ここ10年でも最強の面子と言われてた。ベスト8も夢じゃないって」
初瀬「はい……」
由華「部長……」
それから数日後、やえは無事退院
~放課後の部室~
やえ「上田、まだ残ってたのか」
上田良子「よう、やえ。もう良いのか? 災難だったな」
やえ「ん、その卓は……十年前の敗戦以来、壊れてそれきりっていう因縁の……」
良子「あぁ、これな。お前に千羽鶴を折るのにテーブルが足りなかったんで、引っ張り出したんだよ」
やえ「え、縁起悪い卓で鶴を折るなよ。……そりゃそうと、私が居ない間の代理ありがとね」
良子「なぁに、県予選も終わった後だしどうって事無いさ」
やえ「終わった後か……」
良子「ん?」
やえ「あの時、私が阿知賀の子達をニワカと侮らずに、可能な限り情報を集めてたら……」
良子「どうした、やえ」
やえ「いや、何でも無い。鍵は私が返して置くから、先に帰っていいよ」
良子「そうか、じゃまた明日な」
やえ「……私が……私のせいで……」
――ポチッ。カラカラカラ。
やえ「えっ? この卓、壊れてたはずじゃ……それにこのサイコロ、逆に回って――」
初瀬「――走先輩、あのっ!」
やえ「……え、えっ?」
初瀬「今、同じ中学で麻雀やってた子が阿知賀で手に豆を……それに、あの10年前のエース赤土晴絵が!」
やえ「……(ここは、まさかあの夜の……!?)」
~吉野駅 コンビニ前~
初瀬「せ、先輩っ!?」ゆさゆさ
やえ「……岡橋、県予選まで後どれくらいだ?」
初瀬「え? あと一週間ですけど……」
やえ「ふふっ……そうか……」
初瀬「先輩……?」
やえ「ま、心配しなさんな……ニワカは相手にならんよ!」
ほう
小走先輩ってさりげなく結構人気あるよね
ふんふむ
突然ですが宣伝です!
ここの屑>>1が形だけの謝罪しか見せていないため宣伝を続けます!
文句があればこのスレまで!
加蓮「サイレントヒルで待っているから。」
加蓮「サイレントヒルで待っているから。」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401372101/)
そして県予選当日
~試合会場~
高鴨穏乃「え……いきなり初戦の相手が、晩成高校!? なんで……」
初瀬「先輩! 頑張って下さい!」
やえ「……(岡橋、それに皆、前回は済まなかったね。今度はガッカリさせないよ)」
~第一試合 先鋒戦~
アナウンサー「県予選一回戦、スタートです!」
松実玄「(ドラが7つ……ツモれば24000点の手……)」タンッ
やえ「ロン……1000点」
玄「は、はい……(えっ? この人、なんで多面待ちを捨てて嵌張待ちに?)」
MOB「開始早々随分しょっぱい手であがるなぁ、それでも去年の奈良王者かよ」
やえ「ふふっ……なぁに、験担ぎ……景気づけって奴さ」
玄「(気のせい……?)」
そして第二局
玄「(気を取り直して……今度はタンヤオにドラが5つ……)」タッ
やえ「ロン……5200点」
玄「はい……えっ?!(またドラ筋の両面を嫌って辺張待ち? この人……まさか……私の事を知ってる?!)」
やえ「(悪いね、松実妹。アンタのドラ爆は強力無比。だが、弱点も大きい。それは全国の舞台でも証明済みだ)」
強化前玄ちゃんならなおさらキツいか
~6日前 レギュラーミーティング~
やえ「皆……良く聞いて欲しい。県予選は、決勝までのどこかで必ず、阿知賀と当たる事になる」
良子「え? 阿知賀? 阿知賀って、10年前にうちを倒したけど、その後は麻雀部なかったんじゃ」
やえ「いや、今年から復活してる。それも、全国レベルの打ち手を5人揃えてきてる」
由華「そんな話、初耳です!」
やえ「監督は阿知賀のレジェンド、赤土晴絵」
丸瀬紀子「あの赤土晴絵!?」
やえ「しかも奴らは、うちへの対策を万全に練ってきてるだろう。このままじゃ……勝つのは極めて難しい」
木村日菜「小走さん、もう大会直前です! そんな事言われたって……」
やえ「大丈夫。その対策に対する対策がある。もし皆が信じて、私の言うとおりやってくれりゃ、逆に阿知賀を手玉に取れる」
一同「「……」」
良子「……解った、じゃあもし阿知賀と当たったら、やえの言う通りにしよう」
由華・日菜「はい!」
紀子「これでもし阿知賀があっさり敗退してたら笑うぞ?」
やえ「皆、有難う。必ず全国に行こう!」
一同「「おおーっ!!」」
アナ「先鋒戦終了ー! 大方の予想通り、晩成が他校を大きくリード! 阿知賀がこれを追いかけます! 他の二校も今後の奮闘が期待されます」
やえ「お疲れ様」
玄「お、お疲れ様でした……」
MOB「「おつかれっしたー……」」
~観客席~
初瀬「二位の阿知賀に30000点近い差を付けた! さすが小走先輩!」
~晩成控え室~
良子「全くやえらしくない打ち筋だったが、確かに何か見えてるみたいな、妙な和了があったな……」
紀子「いよいよ信じるしかないって事かねぇ……さて、私の出番だ」
~次鋒戦~
紀子「(やえの奴、大仏さんが夢枕にでも立ったのか? まぁいいさ、勝てるなら神だろうが仏だろうが頼らせて貰おうじゃないの!)」
松実宥「(玄ちゃん、お姉ちゃんが仇を討つからね。……温かい牌……来て)」
紀子「ツモ。300,500」
宥「(この人もなんだか変な手……冷たい牌ばかり……。玄ちゃんの時と言い、晩成は私達の事を知ってるの……?)」
紀子「(嘘か真か……やえが言う通り、赤い牌がこの厚着女に集まるなら……)」
~数日前~
やえ「松実姉には、極端に赤い牌が集まる傾向がある……いや、傾向と言うよりも……そう言う(イカ)サマをしてるんじゃないかと思う程に集まる」
紀子「んなバカな……」
やえ「そう思うだろうが、事実だ。役も当然赤い牌を活かした役になる可能性が非常に高い。特に中を絡めた萬子の混一、それ以外にも赤ドラを絡めて……」
紀子「……それが事実だっていうなら、計算はしやすくなるが……牌譜でも研究したってのか?」
やえ「ふっ……ちょっとした、鹿の贈り物って所さ」
紀子「なんだそりゃ? けどまぁ、アンタがそこまで言うなら……頭に入れておくよ」
やえ「頼んだよ」
アナ「次鋒戦終了ー! トップは依然として晩成! これに阿知賀が続きます!」
紀子「お疲れさん(結局終わってみりゃ、やえの言ったとおりか……)」
MOB「「お、おつかれさん……」」
宥「お疲れ様……」
~客席~
初瀬「丸瀬先輩ナイスキープです! ツモや他家の振り込みで多少迫られたけど、まだ25000点差もある!」
~晩成控え室~
良子「ここまでは、概ねやえの言う通りの展開だな」
やえ「牌効率の計算に長けた丸瀬のことだ、前提条件さえ解っていれば堅くやってくれると信じてたさ」
~阿知賀控え室~
晴絵「(どうして……対外試合も一切しなかったのに、まるで2人の打ち筋が読まれてる?! 中学から大会に出てた憧はともかく、松実姉妹のデータなんて有るはずが……)」
新子憧「まだまだこれからでしょ! あたしが逆転……出来なくても点差を縮めてくるから!」
穏乃「逆転なんてケチなこと言わずに、飛ばしちゃえ! がんばれ憧ーっ!」
憧「あはは……じゃ、行ってくるね」
晴絵「(しかも晩成の選手は、これまでのどんなデータとも全く違う打ち方をしている……こんな偶然、あり得る訳が無い!)」
晴ちゃんが起死回生の一歩となるか
~中堅戦~
憧「(その為には、出来るだけ大物手か直撃で差を詰めないと)」
日菜「ポン! それもポン! ……ロン、1000点」
憧「(っ……とは言っても、あっちは流すだけで勝利に近づくんだからキッツいわ。他校は絞りも何もあったもんじゃないし……)」
MOB「ポン!」
MOB「チー!」
憧「(って、えぇーっ!? 他校まで、早和了の流れに乗せられつつある……奈良の1回戦で打ち手に高いレベルを求めるのは酷だろうけどさ、もう勘弁してよー)」
~大会数日前~
やえ「新子は良い打ち手だ。牌効率も完璧に計算出来るし、それに裏打ちされた喰い仕掛けは極めて鋭い」
日菜「なんか自信なくなりそうな情報ですね」
やえ「木村は新子への直撃だけを避けて、小場を創り出せ。安手なら他家に差し込んで構わない」
日菜「他の二校を……乗せろって言うんですか?」
やえ「そうだ。所詮他校は記念参加のお遊び麻雀部。トップが狙えないのが明らかになれば、大局観を無くして目先の和了を拾いに行くはずだ」
日菜「なるほど……解りました、やってみますよ」
絶対王者晩成が居るなら確かに他の学校はそうなるか
アナ「中堅戦終了ー! 逃げる晩成、追う阿知賀! 下位二校は苦しい点差になりつつあります!」
日菜「お疲れ様(他の二校が、上手い具合に阿知賀の足を引っ張ってくれましたね)」
憧「おつかれさまぁ……」
MOB「「お、おつか……」」
~観客席~
初瀬「憧……本当に腕を上げたんだな。でも、まだ20000点近い点差がある!」
~晩成控え室~
やえ「よし、良いぞ木村」
紀子「それにしても、どうして阿知賀はこんな打ち手を5人も集められたんだ? 晩成のレギュラークラスじゃねぇか」
良子「なぁに、こっちだって伊達に晩成の看板は背負ってねぇ! 3年の意地を見せてやるぜ」
~阿知賀控え室~
晴絵「っ……(憧で詰め寄れなかったのは、正直言って痛い……)」
鷺森灼「……(晴ちゃん、諦めないで……きっと連れていくから)」
~副将戦~
灼「リーチ」
MOB「うへ……もうリーチかよ」タッ
良子「ポン」
MOB「(……安牌ないっつーのに回すなよ)」タッ
良子「ロン。2000」
MOB「そっちかよ!?」
灼「……(こっちの待ちを知ってるみたいな回し打ち……晴ちゃんの言う通りだ。だったら……!)リーチ」
良子「……」タッ
MOB「(いくら晩成と同卓だからって……4位だけは恥ずかしい、4位だけはやめて……)」タッ
灼「……ロン。8000」
MOB「ひえっ!? 九萬単騎?!」
良子「(やえの言う通り、筒子の多面待ちに取らなくなったか。だが……)」
MOB「……」タッ
良子「ロン、1000点(それもこっちにとっちゃ想定済み。どう足掻こうが、あたいからの直撃だけは有り得ないぜ! まして……)」
MOB「」
灼「(っ……余り晩成以外からあがりすぎると、大将戦を待たずに飛び終了の危険が……リーチやツモも多様は出来な……)」
~数日前~
良子「へぇ、待ちがボウリングのピンねぇ……そんなオカルトあり得るか?」
やえ「信じたくは無いが……間違いない」
良子「晩成麻雀部内ボウリング大会において、不動のチャンピオンであるあたしが対局する事になったのも、何かの巡り合わせかねぇ」
やえ「チャンピオンかっこハイスコア130か」
良子「お前は100点超えてから言えよ!」
やえ「ただ……常に筒子の多面待ちとは限らない。上田がその癖を把握していると知れば、それを崩した直撃狙いに来るのは間違いない」
良子「んー……つまり、序盤は筒子待ちを知ってる様に見せて和了を阻止しつつ、後半は引っかけの直撃狙いを誘って逃げ切る?」
やえ「そうだ、折角の多面待ちを崩すんだから、上田さえ振り込まなければ、その策も裏目でしかない」
良子「なんだかなぁ……まるで未来を見てきたような言いぐさだな」
やえ「ふふっ……私には見えてるんだよ。晩成が全国の決勝卓に駒を進めるビジョンがね」
良子「へーへー、そりゃ頼もしい事で」
アナ「副将戦終了ー! 晩成、阿知賀、一騎打ちの様相を呈して参りました! 他の二校はかなり大きな手か、連荘が必須の苦しい状況です!」
良子「おつかれさーん(しかしこのボウラーやるなぁ。危ない危ない)」
MOB「「乙……」」
灼「お疲れさま……」
~観客席~
初瀬「大将戦を残して点差は15000……巽先輩!」
~晩成控え室~
日菜「ふー……これが1回戦とか信じたくないですね」
紀子「後は大将戦を残すのみ……頼むぜ、巽」
由華「任せて下さい……」チラッ
やえ「……」コクッ
これは熱い
これはいいにわか
~阿知賀控え室~
憧「満貫直撃で捲れる点差だよ! 穏!」
穏乃「おう、任せといてよ!」
玄「穏ちゃん、頑張って!」
宥「頑張って……」ぶるぶる
灼「任せたよ……阿知賀の大将」
晴絵「しっかりね!(点差は確かに大きくない……こう言う状況での穏乃は、普段以上の力を出せる子だ。……でも、なんだろうこの胸騒ぎは)」
~大将戦~
アナ「新星の如く現れた新生阿知賀女子、王者晩成を捉える事が出来るのか!? 下位二校は飛びを警戒しながらの苦しい戦いで何を残せるか! 大将戦スタートです!」
穏乃「(状況も配牌もヤバイ……でも、諦めるわけないッ!)」ボッ!
由華「(この子の目、完全に私を捲る気で居る。その意気や良し……私も全力で相手してあげたい所だけど)」スゥ……
MOB「(くそぉ、初戦から晩成と当たる時点でくじ運なさすぎなんだよ、うちの部長! 麻雀部でくじ運悪いとか、マジありえね!)」
MOB「(こんな点棒でどうしろっていうのよ、もー! 箱割れだけは絶対恥ずかしすぎるし!)」
MOB「「(飛ばすならあっちにして!)」」
~大会数日前~
やえ「巽」
由華「はい」
やえ「阿知賀戦、こちらがリードしていた場合だが……」
由華「はい、全力で逃げ切ります」
やえ「……逃げ切るのは逃げ切るんだが、巽の能力は封印だ」
由華「え? 阿知賀の大将、1年生ですけど、大将に置くからにはかなりの実力者なのでは?」
やえ「あぁ、あの子は底が見えない。対局者が高き山となって立ちふさがる程、あの子は覚醒する」
由華「……? では、どうすれば……」
やえ「巽……」ずいっ
由華「こ、小走先輩?!」ビビクン
やえ「(ヒソヒソ)」
由華「……んんっ……(く、くすぐったいです先輩)」
やえ「……難しいけど、巽なら……いや、巽にしか出来ない事だ」
由華「で、でも先輩……もし、そんな打ち方で失敗したら」
やえ「責任は私が取る。……と言っても、アンタの事だ。実際に打ったのは自分ですとか何とか言うんだろうね?」
由華「……」
やえ「二人で決めよう。二人ともが納得したなら、その戦法で行こう。失敗したら、その時は……その時さ」
由華「……わ、解りました。やってみます……今の私があるのは小走先輩のお陰。どんな結果になろうと……先輩と一緒なら悔いはありません!」
やえ「巽……有難う!」ぎゅっ
由華「ふえっ!?」カァァ//
由華「……(な、何を思い出してるの、こんな大事な時に)」タッ
MOB「ろ、ロン! 1500点」
由華「……は、はい」ジャラッ
穏乃「(なんだろう……随分甘い放銃だな……これなら追いつけるかも。えっと点差が今ので……)」
~阿知賀控え室~
晴絵「(晩成が穏の事も研究し尽くしているとしたら……一体何を狙う……まさか……?!)」
憧「穏……いけるいける! 相手は晩成唯一の二年生だし、今みたいなミスも有り得る!」
晴絵「(……確かにこれだけの舞台、まして部の命運を握る大将戦の闘牌。プレッシャーは想像を絶する。けれど、今年の晩成に限って、そんなミスを犯す?)」
~決勝卓~
MOB「テンパイ」
MOB「ノーテン」
由華「ノーテンです」
穏乃「テンパイ!(よーし、ジワジワ近づいて来たー! これなら直撃さえ奪えれば捲れる。そうでなくても、えっと……ツモ和了だと……)」
MOB「……(この親で8連荘くらいすれば追いつけるかなー、なんて……はは……)」タッ
由華「ロン、2000」
MOB「あ、はい……」
穏乃「(もー、せっかく縮まってきてるのに、邪魔しないでよ! えっと、今のでー……でもまだ、4飜以上で直撃させるか、ツモで跳ねれば……)」
~阿知賀控え室~
晴絵「……ダメだ穏、自分の麻雀を打つんだ! その点差はまやかしだ!」
憧「え?」
~晩成控え室~
良子「なんか心臓に悪いぜ……」
紀子「なんだか、由華らしくないなぁ」
日菜「小走さん、一体どんな指示を出したんです?」
やえ「(今回の戦い、もっとも警戒しなきゃいけないのは高鴨だ。私が大将になって戦う事も考えた。けど……それじゃ意味がない。アンタの手で晩成の勝ちを決めるんだ、巽!)」
~卓~
穏乃「(届く……! もうあと少しで、きっちり逆転出来る……!)」
由華「ロン、8000です」
MOB「げえーっ!? ダマかよー……ついてねー」
MOB「今更ついてるもついてねーもあるかよ……」
穏乃「(……えっ!? この人……さっきから届きそうになって手を伸ばす度、すり抜けて行ってしまう……まるで……)」
~阿知賀控え室~
晴絵「(まるで逃げ水……届きそうな位置に幻影をちらつかせて、実際には決して触れさせない……)」
憧「穏……」
晴絵「(負けた……この子達のせいじゃない。完全に作戦負け……ダークホースとして奇襲したつもりが、逆に……こんな事って……)」
~大将戦終了~
アナ「大将戦終了ー! 阿知賀猛追も及ばず、晩成高校が破竹の10連覇に向けて、激闘の第一試合を制しましたーっ!」
由華「有難うございました」
穏乃「……追いつけなかった……」
MOB「何かキラキラしてるぞ……流れ星かなぁ? いや、流星はもっとバァーって動くもんな……」
MOB「海、行くか? それも悪くねぇ。早い夏だっ」
~決勝 大将戦~
由華「ツモ。4000オールでラストです」
MOB「」
MOB「」
MOB「」
アナ「試合終了ー! 晩成高校、横綱相撲で10年連続のインターハイ出場を決めましたぁーっ! まさに向かう所敵なぁーしっ!」
~晩成控え室~
一同「「おっしゃー! やったー!」」
やえ「(阿知賀、許してくれとは言わない。壮行試合や、本戦の応援がこんな形で……)」
初瀬「やったー!! 皆さん! 小走先輩! やりましたね!」
やえ「あぁ、岡橋」
初瀬「実は私あの時、ちょっと不安だったんです。憧達があんなに必死になって、しかも阿知賀のレジェンドがコーチについてるなんて」
やえ「……」
初瀬「でも小走先輩の仰る通りでした! やっぱり小走先輩は私の憧れです! ヒーローです! 王者はニワカ仕込みになんか負けませんよね!」
やえ「……っ」
初瀬「先輩?」
やえ「ごめん、ちょっと外す」
良子「あれ、やえの奴どこ行ったんだ?」
初瀬「あ、さっき、ちょっとって言って走って行かれましたけど」
由華「表彰式とかインタビューもあるのに……もし間に合わなかったら、上田先輩お願いしますね」
良子「ええーっ!? いや無理無理! 絶対無理!」
紀子「そうかー、良子がやらないならあたしがやろうかなー」
日菜「いえ、ここは私が」
良子「そ、そんなに言うなら副部長のあたいがやるけどさ」
一同「「どうぞどうぞ」」
良子「どうぞどうぞじゃねぇよ!」
~阿知賀控え室前~
玄「ごめんなさい……私のせいで、ごめんなさい」
宥「私も、何も出来なかった……」
憧・穏乃「……」
灼「晴ちゃん……ごめん」
晴絵「謝らないで。皆のせいじゃない。良い夢を見せてくれて有難うね……」
一同「「うわぁぁーん!」」
~その近くの物陰~
やえ「……違う、こんな……勝ち方……」ダッ
~晩成高校 職員室~
晩成教師「おぉ、小走じゃないか。中継見てたよ。おめでとう! って、もう帰ってきたのか? まだ表彰式とか……」
やえ「すみません、部室の鍵をお願いします」
教師「え? あぁ……はいよ」
~部室 因縁卓前~
やえ「こんな勝ち方じゃ、例えインハイでどこまで行ってもダメなんだ……晩成はいつだって王者でなければ!」
――ポチッ。カラカラカラ……。
やえ「飛べよぉぉーっ!!」
~部室 因縁卓前~
やえ「……えっ、何も? 起こらない? ……も、もう戻れないのか?」
良子「いやー、参った参った」
やえ「上田! 県予選まであと……」
良子「へ? 予選? 何言ってんだ、本戦だろ」
やえ「そ、そうか。やっぱり飛べなかったのか……」
良子「?」
やえ「(なんだろう、この安堵感は。飛べないんだから仕方ない……このまま全国に行くしかない。そう言えるからか?)」
良子「団体戦の分もさ、個人戦で雪辱しようぜ」
やえ「え、個人戦?」
良子「おう、阿知賀の連中が個人戦にエントリーしてなくて、正直助かったよな。ハハハ! そんじゃ、あたいはもう行くぜ。やえも、また鹿に跳ねられない様に早く帰れよ?」
――ガチャ、バタン
やえ「……なんだ、ちゃんと戻れてたのか……はぁっ……」
因縁卓「……」
やえ「……」
因縁卓「本当に良いのかい?」
やえ「えっ?」
因縁卓「もう一度賽を振れば、晩成が勝利した世界線に戻れるんだぜ? そしてインハイに出られる。ベスト8……いや、優勝だって狙える」
やえ「……」
因縁卓「ここは名門晩成が初戦で敗退を喫した世界線。そんな所に戻って来たってしょうがないだろぉ?」
やえ「……」
因縁卓「王者に敗北は似合わない。だよなぁ」
日菜「小走さんが仰るなら」
紀子「しゃーねーな」
良子「やえの言う通りにしてみっか」
初瀬「小走先輩は、私の憧れです! ヒーローです!」
由華「先輩と一緒なら悔いはありません!」
やえ「(皆……!? 私達の……晩成の……王者の……あるべき姿は……)」
因縁卓「さぁどうするんだい、王者晩成の部長さん?」
やえ「悩むまでもない……! 私は、私が信じた道を進めばいい! ……そうだよね、皆」
~インターハイ会場~
アナ「今年も安定した強さで県予選を突破した奈良の絶対王者、晩成高校! 今、その先鋒が席に着いて役者が揃いましたぁっ!」
やえ「……(そうさ……これで良い。これで良かったんだ)」
~……の実況席~
アナ「晩成高校は何を隠そう、小走プロが20年前に卒業した母校です! 後輩にエールをどうぞ!」
やえ「10年前だよ!? 小鍛治プロの昔のネタだろそれ! 第一、解説としてエールはまずいよね?!」
アナ「四の五の言わず、びしっとどうぞ!」
やえ「え、えと……晩成に限らず……常に胸を張って、堂々と戦って欲しい。この舞台に居る貴女達は、全国の少年少女雀士の代表であり、憧れなんだから」
アナ「はい、小走プロらしく、オチの無い真面目な回答有難うございました!」
やえ「オチ必要だったの?! じゃ言うよ! 私が出場した時は、張るほど胸無かったですけどね! なんちゃって、あはは!」
アナ「さぁ、尺調整が終わった所で賽の目が決し、いよいよ戦いの幕が切って落とされます!」
やえ「」
アナ「1回戦、先鋒戦スタートですっ!!」
やえ「(……頑張りなよ、王者達っ!)」
~おわり~
以上でおしまいです。
初投稿なのに色々ごった煮の実験的作品でしたが、読んで下さった方、書き込み下さった方、本当に有難うございました!
>>6
>>8
あざます!
>>7
作中で一番好きなキャラです!
>>12
描写外では地味に奮闘していますが、かなりしんどいですのだ。
>>18
さすがのレジェンドも未来人相手はきつかったです。
>>20
部員が足りず、よその部から助っ人を呼んでエントリーしてる様な学校もあるレベルです。
それくらい、奈良の強い雀士は皆晩成に行ってしまうのです。
>>25
有難うございます!
動画なんかでも小走先輩ネタはコミカルが多いので、今回は格好良くageるのが目標でした。
>>26
にわかじゃないよ!? にわかは相手にならない先輩だよ!?
ではまた、どこかの卓で!
アラフォーは茨城県出身だが
あとこいつらで準決抜けれるとは思えん
乙
これはいいにわか先輩
スレタイからまさかこんなSSになるとは思わなかった…ニワカは私だったようだな
乙ー
やえ先輩への愛が感じられて良かったです
上手くまとめたな乙乙
乙
なかなかいいにわか先輩だった
このSSまとめへのコメント
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