笹の葉ファンタジア 【涼宮ハルヒの憂鬱】 (61)
古泉「――下さい。――起きて下さい」
キョン「……ん、なんだ……?」
古泉「やっと起きてくれましたか」
キョン「……いつの間にか寝ていたのか。最近妙に暖かいからな」
古泉「それにしても部室で寝るなんて……。涼宮さんに見られたら大変なことになりますよ」
キョン「お前もこの陽気を楽しめばいいじゃないか。まるでむせ返るような春の匂いがするようだ」
古泉「そのことでお話があります」
キョン「なんだ? あまり難しい話はよしてくれよ。まだ頭が覚醒していない」
古泉「……では端的に。このままですと、再び春が来ます」
キョン「……は?」
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キョン「……もう一度言ってくれ」
古泉「ですから、このままですと季節の春がもう一度来ます」
キョン「もう十月になろうかというところだぞ?」
古泉「ええ、ですから早急に対応を考えねばなりません」
キョン「念のために訊くが、ふざけているわけじゃないんだよな?」
古泉「もちろんです」
キョン「……待て、これはハルヒのせいか?」
古泉「その通りです。ですからあなたにも協力をお願いできればと思っているのです」
キョン「あいつは地球でも壊す気なのか?」
古泉「我々が行動を起こさねば、結果としてそうなるかもしれません」
キョン「――よし、話してみろ」
古泉「先の七夕で、涼宮さんが短冊に何を書いたか憶えていらっしゃいますか?」
キョン「長門のなら憶えてるぞ。『調和』と『変革』だ。あいつももう少し――」
古泉「――涼宮さんはこう書きました。『世界があたしを中心に回るようにせよ』」
キョン「……それはもう叶っているじゃないか」
古泉「ええ、こちらは問題ありません。もうひとつの方ですよ」
キョン「なんて書いたんだあいつは」
古泉「『地球の自転を逆回転にして欲しい』と」
キョン「相変わらず無茶苦茶な願望を大真面目にするやつだな。……おい、待て」
古泉「察しがよくて助かります。今現在、地球の公転は今までとは逆方向になっています」
キョン「公転? 自転じゃないのか?」
古泉「自転に関しては今現在は通常通りです。今朝も太陽は東から昇りました」
「しかし、自転もいずれ逆になるのではないかと考えています」
キョン「いつからだ?」
古泉「まだ正確な日時までは不明ですが、恐らくそう遠くはないと思います」
「自転の観測を行っている国際機関、IERSが事態を把握したのが二日前です」
「なお、この事実の世間一般への公表はまだ見送られている段階です」
キョン「公転が逆になったのは二日前からなのか?」
古泉「いえ、三日ほど前のことになります。公転が逆になることは見かけ上の変化が少ないようです」
「もちろん世界中で違和感を感じていた人はいるでしょうが……」
「しかし、自転が逆になれば別です。どの瞬間から変化するのか不明ですが、間違いなく太陽も西から昇ります」
キョン「そんなことをなんでお前が知ってるんだ?」
古泉「涼宮さんの動向を観察しているから、というのでは理由になりませんか?」
キョン「……まあそれはいい。その国際的な機関とやらは随分と気付くのが遅かったんだな」
古泉「専門的なことはわかりませんが……。どう考えてもありえないことだからでしょうね」
「我々も気付くのが非常に遅くなりました。情報として入ったのは先ほどですよ」
キョン「長門は気付いていたんだろうな」
古泉「そうであると思います。しかし、長門さんに訊かずとも情報を得られたのは幸いでした」
キョン「……で、今現在は公転だけが逆なんだろう? 差し迫った大きな問題があるのか?」
「俺はまた春が来るなら大歓迎なんだがな。寒い冬よりはよほどいい」
古泉「僕個人も春が来るだけであれば歓迎しましょう。しかし、そういうわけにもいきません」
キョン「あまり聞きたくもないが、何が起きるっていうんだ?」
古泉「まず、人間はある程度気候の変化にも対応できるでしょうが、他の生き物や植物はそうはいきません」
「身近なところで言えば、農作物は大打撃を受けることになるでしょう」
「次に、四季のサイクルを考えて行うべき農業や生産の根底が崩れます」
「我々にも食料問題という点でわかりやすく影響が出てくるものと思われます」
キョン「あまり想像できんな」
古泉「また、季節のサイクルが乱れることによって生態系にも影響が出ることが考えられます」
「特定の種が絶滅の憂き目にあうかもしれません」
キョン「……それはあまりよくないような気がするな」
古泉「もちろん今すぐに、というわけではありません。が、時間の問題です」
「そして、現状を打開できるのは我々のみ。どうにかして涼宮さんに考え直してもらわねばなりません」
キョン「地球を救うのがこんな高校生とはな。神様も嘆いているだろうな」
古泉「その神様から直々に選ばれたのが我々ですよ」
キョン「なんて安い物語なんだ……」
キョン「長門、お前の力で公転を元に戻すことは出来ないのか?」
長門「……出来なくはない。ただ、事態の根本的な解決にはならない」
キョン「どういうことだ?」
長門「涼宮ハルヒの願望が発端となって現実が変化した。一時的に是正したところで、再度同じことが起きる可能性がある」
キョン「……結局ハルヒにどうにかしてもらうしかないのか」
長門「そう」
キョン「古泉は自転もそのうち逆になるようなことを言ってたが本当か」
長門「三日後の深夜零時を境に自転が反転する」
キョン「日本時間のか? GMTじゃないのか?」
長門「涼宮ハルヒが基準になる」
キョン「まさに『世界があたしを中心に回るようにせよ』だな……」
「長門よ、自転も公転も逆になった場合、考えられる最悪の事態はなんだ?」
長門「涼宮ハルヒはこの事態にまだ気付いていない。気付いた場合、季節の変化が加速する可能性がある」
「また、自転が逆のままで太陽が東から上がる可能性もある」
キョン「……それは、太陽が地球の周りを回る可能性があるってことか」
長門「涼宮ハルヒを起点として、銀河系の既存の法則がすべて覆される」
キョン「そんなことはありえないだろ!」
長門「可能性としては低くくない」
キョン「本当にとんでもない話だな……。二十一世紀に地動説が覆されることになるっていうのか?」
「ハルヒを説得できなければ、俺はコペルニクスやガリレオといった先人に末代まで祟られることになるな……」
長門「……」
キョン「で、この事態を変えるために俺たちが出来ることはなんだ?」
長門「方法はふたつある。まずは、時空移動により短冊に書かれた内容を修正する方法」
「次に現在の状況を涼宮ハルヒに把握させた上で、是正させる方法」
キョン「たとえ短冊に書いた内容を修正したところで変化があるとは思えんが……」
長門「涼宮ハルヒは書いた内容を憶えてはいないが、効果はある」
キョン「なんて迷惑な罠を仕掛けてくれたんだあいつは……」
「で、後者の方だが、なんでハルヒに現状を把握させる必要があるんだ?」
長門「涼宮ハルヒの常識では、自転、公転ともに教科書通り。今の状況は無意識下の願望によるもの」
「一度現状を把握させることで、常識を再確認させることが必要」
キョン「あたり前のことは考えもしない、というわけか」
長門「再認識によって現実がそれに追従する」
キョン「……で、どっちの方法がより簡単なんだ?」
長門「両者ともに相応のリスクがある。前者は涼宮ハルヒの意思をもって修正することが求められる」
「後者には現状の公表が求められる。結果として状況が暗転する可能性がある」
キョン「……どちらにしろあまり気が進まないな」
長門「期限は三日」
キョン「太陽が西から上がる前に決着を付けろというわけか」
「ちなみにだが、自転も公転も逆になった上で太陽が東から上がった場合、何か問題はあるか?」
「現代科学が根底から覆されるのはいいとして、それ以外にもっと人的な問題だ」
長門「長期間に渡って生態系への影響が考えられる。決して軽微なものではない」
「また、社会的混乱やパニックになることは避けられない」
キョン「……そりゃそうだよな」
キョン「……俺は見かけ通りの小心者のようだ。今さらながらハルヒの力に驚愕してるよ」
古泉「いたく意気消沈していますね。どうなさったのですか?」
キョン「ハルヒのせいで太陽までもが動き出すかもしれんと……。信じられるか?」
古泉「仕方がありませんよ。涼宮さんなら何が出来ても不思議ではありません」
キョン「長門によるとな、タイムリミットは三日後だそうだ」
「それまでになんとかしないと天変地異が地球上の有象無象にまで周知されちまう」
「そうなったらそれが当たり前になって、銀河系を巻き込んだ大騒ぎだとよ」
古泉「あまり時間がありませんね。どうされるつもりなんですか?」
キョン「それ今考えてるところだ。お前はどうすべきだと思う?」
古泉「個人的には季節が逆行するのをこの目で見てみたいというのはありますが……」
「やはり通常の世の流れに戻すべきでしょうね。可能な限り自然な形で」
キョン「過去に行くのは朝比奈さんや長門に頼めば簡単だろう。だが、俺は過去のハルヒを説得する自信がない」
古泉「事情を説明するわけにも行きませんしね。結果的に悪い方向へ進むような可能性も無視できません」
キョン「短冊を書いたときに俺たちは全員部室にいた。もちろん俺は未来の俺に会っていない」
「あの狭い空間で入れ替わった上で、ハルヒを説得するのは難易度が高い」
古泉「では、もうひとつの方法を検討してみることにしましょうか」
キョン「そっちも問題がある。未だ公表されていない事実をどうやってハルヒに信じさせる?」
キョン「たとえ事実であろうとハルヒが俺の言うことを容易に信じないのは実証済みだ」
古泉「涼宮さんを騙した上で、もう一度騙す必要があるということでしょうか……」
キョン「しかし、放っておけばそのうちニュースで公表されるだろう? それからじゃまずいのか?」
古泉「悪くはないような気がしますが、気になる点もあります」
キョン「なんだ?」
古泉「ニュースになるということは、世間一般の人も周知の事実ということになります」
「そうなってしまいますと、それが当たり前の事実として受け入れられることになるでしょう」
キョン「実際すでに公転は逆に回ってるんだろう? 何か問題になるのか?」
古泉「周知の事実となれば、涼宮さんはまず間違いなく興味をを持つはずです。結果、現象が加速することになるでしょう」
「そうなってしまえば涼宮さんを止めることは難しくなるのではないかと思います」
キョン「……ちょっと待て、混乱してきた」
古泉「世界的に異変を認識してしまえば、涼宮さんはより異変を普遍と捉えていくわけです」
「我々にとっての異変を一般的レベルまで浸透させた後に拡大させるでしょう」
キョン「そうなるともしかして公転と自転が逆になって、太陽が動くことが普通になるのか?」
古泉「かもしれません。不確定ではありますが、何より、ないとは言い切れません」
キョン「……世間に知られる前にハルヒにだけ事実を教えて、それが誤報だった改めて教えればいいのか?」
古泉「秘密裏にそうできれば、一番被害が少ないのではないかと思います」
「もちろんこちらも初期の段階では大変なことが起きるでしょうが……」
キョン「世間的に公表された後にすべてをうまくやりきって、改めてニュースで誤報だったと出る方が説得力がないか?」
古泉「仮にすべてがうまくいった場合には、再度ニュースが流れることになるでしょう……」
「ただ、先ほども申し上げたように、異変を知らせるニュースが出ればもう挽回は不可能だと思います」
「世間が認識することで、常識として意識に定着し、相乗効果のように涼宮さんの力を強くしていくでしょう」
古泉「映画のときとはわけが違います。増長した涼宮さんを止める魔法の言葉があると思いますか?」
「もちろん、あなたが愛の――」
キョン「それ以上はよせ。で、あいつを騙すのには具体的にはどうすればいいんだ?」
古泉「……まず涼宮さんに現在起きていること、これから起きる可能性があることを知ってもらわねばなりません」
「そして、それは信用出来る第三者の存在から伝えて貰う必要があります」
キョン「誰をその役目に任命するんだ? 鶴屋さんか?」
古泉「いや鶴屋さんは我々の実のところを知らないはずです。ニュースでもでっち上げる方がよいでしょう」
キョン「お前、そんなことが出来るのか?」
古泉「機関に協力してもらえばなんとかなるでしょう。なに、大した内容でなくていいんですから」
「ゴシップ記事に毛が生えたような胡散臭いものでありながら、ある程度格式ある場所が発端となればよいかと」
「……そうですね。明日の放課後までにどうにかしてみせますよ」
キョン「どうやってそれをハルヒに見せるんだ?」
古泉「部室にTVはありませんからね、ネット記事か音声データということになるでしょうか」
キョン「やれやれ、下手くそな学芸会でもやることになった気分だ」
「うまくいった暁にはオスカーにプラスしてノーベル平和賞も欲しいくらいだぜ」
古泉「あとはそれまでに世界中が知ることとならなければいいんですがね……」
*
キョン「おい、一日経っただけで随分おかしいことになってないか?」
古泉「ええ、春の匂いが鼻腔をくすぐりますね。先ほど蝶が飛んでいるのを見かけましたよ」
キョン「……早いとこどうにかしないといけないな」
古泉「そのようですね」
*
長門「変化は涼宮ハルヒを中心とした半径十kmの範囲が最も顕著」
キョン「てことはまだ大多数の人間は気付いていないと考えていいのか?」
長門「そう」
キョン「……で、ハルヒに教えることで、この摩訶不思議な状況が加速するんだろ?」
長門「そう。認知によって多少誤差はあるが、半径五十km程度までに広がると思われる」
キョン「……はあ。もうすでにおかしいのに、これ以上おかしくなったらどうなるんだ」
長門「……」
キョン「なあ、そういえば夏はどうしたんだ? 公転が戻っているなら夏を再度通過するはずだろう?」
長門「夏は一瞬で通過した。概念として夏と呼べたのは三分五十一秒間。急速に春へ戻りつつある」
キョン「……」
*
ハルヒ「キョン、今日はとってもいい天気ね! 桜が咲きそうな陽気よ! 明日には満開って雰囲気だったわ」
キョン「なあ、ハルヒ。お前はおかしいと思わないのか? 普通はそろそろ肌寒くなってくるころだぞ?」
ハルヒ「気温が高いのはいいことじゃない。寒さは人間の萎縮を招くわ。望ましいことよ」
「あたしは大歓迎だわ!」
キョン(……こりゃ失敗したら日本は亜熱帯になっちまうな)
*
キョン「……出来たのか?」
古泉「ええ。音声データ、動画データ、ネットの記事の三点を作りました」
キョン「あとはどうやって本物らしく、自然にハルヒに見せるか、か」
古泉「長門さんにも協力してもらいましょう」
キョン「そうだな……。おい、あれ、飛んでるのツバメだよな?」
古泉「……おそらくそうでしょうね。気温の変化を感じて越冬予定地から戻ってきたんでしょうか」
キョン「まだハルヒは知らないはずだろう……。これで教えたら本当にどうなっちまうんだ?」
古泉「春への変化で留まってくれることを願うばかりですね。夏のように経過されても困ります」
「それこそ人間に多大な影響を与えるばかりか、死者まで出る可能性もあります」
キョン「ハルヒだってそこまでは……」
古泉「もちろん涼宮さんはそんなことを願うはずはありませんが、結果的にそうなる可能性はゼロではありません」
キョン「強大な力ってやつは持て余すのが常なのか」
古泉「我々のような体験が出来るのは貴重なことですよ。文字通り世界を救うわけですから」
キョン「……俺はお前のように前向きにはなれん」
キョン「今日の団活の時間を使ってハルヒに現状をさらっと知らせることにする。長門も協力してくれ」
長門「わかった」
キョン「事実は事実なんだが、ダミーのニュースソースを古泉に作ってもらった」
「これを自然な形でハルヒに見せて信じこませたいんだが……。どうやるのがいいと思う?」
長門「インターネット上のニュースとして涼宮ハルヒに提示する。その後、動画データを見せる」
「データはすべてインターネット上で閲覧できるようにしておく。もちろん、他者の閲覧は許可しない」
キョン「まずはジャブを打ってから動画でストレートというわけか。果たしてうまくいくのか……」
長門「……」
キョン「よし、放課後はハルヒが来る前に部室に来てくれ。ハルヒが来る前に見つけたという体にしよう」
長門「……」
キョン「いいか、ハルヒが来る前にたまたまこのサイトを見つけたという体にして誘導する」
「また、俺は否定的な意見を言う。古泉は適当に同調しておけ。長門は翻訳と簡単な説明だ」
「『不思議なこともあるもんねえ』程度に信じ込ませればOKだ」
古泉「承知しました」
みくる「あの、あたしはどうしたら……」
キョン「朝比奈さんは小細工なしていつも通り笑っていてくれれば大丈夫です」
(下手に何かお願いするととんでもないことを言い出しかねん)
キョン「長門、大丈夫だと思うが抜かりなく頼むぞ」
長門「わかった」
ハルヒ「あれ、あんたたち早いわね。なんか悪巧みでもしてんの?」
キョン「そんなわけないだろう? いつも通り日常的な放課後だ」
ハルヒ「あら有希、何を見てるの? あんたがパソコンをいじってるなんてめずらしいわね」
古泉「先ほど不思議なニュースを見つけたんですよ。どうにもスケールの大きい話でして……」
ハルヒ「何があったの?」
古泉「地球の公転と自転がおかしくなっているという類のニュースですよ」
キョン「まったく、そんなことあるわけないだろうが……。俺はただの飛ばし記事だと思うぞ」
ハルヒ「あたしにも見せてよ! どれどれ――」
「……これ英語全部じゃない。なんて書いてあるの? 地球の……リバース……?」
長門「数日前から地球の公転と自転が逆方向になっているようだ、というレポート」
ハルヒ「随分と難しい単語が多いわね。有希はわかるの?」
長門「大体」
ハルヒ「さすが有希ね。で、もうちょっと詳しく教えなさいよ」
長門「……現在の状況が是正されなければ、季節が逆に流れる。また太陽が西から上がる」
「食物系は大打撃を受け、環境に対応できない多くの種が絶滅へと導かれる」
ハルヒ「食べ物がなくなったり、動物が絶滅するのは残念なことだけど……」
「太陽が西から上がるのは見てみたいわね! 面白そうだもの!」
キョン「……本当にそんなことになってみろ。平穏な生活なんて二度とこないかもしれないぞ!」
ハルヒ「あたしたちはSOS団よ? こんな不思議を追わないでどうするのよ?」
キョン(……これは逆効果だったんじゃないのか)
キョン「そもそも、お前はこんな頓珍漢なニュースを信じるのか?」
ハルヒ「あたしだって馬鹿じゃないわ。この記事だけじゃ信憑性が低すぎるわよ」
「他に何か情報はなかったの?」
長門「このサイトとは別に映像ニュースがあった。再生する」
ハルヒ「――よくわかんないけど、この情報の出どころはどこなの? やっぱりNASAかしら?」
長門「欧州宇宙機関、ESA。米国航空宇宙局、NASAは否定している」
ハルヒ「なんでNASAは否定してるのに欧州は肯定してるの?」
古泉「まだ確実なことではないということなんでしょうか。本当であれば驚くべきことですが」
キョン「おい、あんまりひとりで盛り上がるなよ。ホラだったら相当恥ずかしいぞ」
ハルヒ「あんたは本当にひねてるわね! 信じた方が楽しいじゃない!」
キョン「俺は常日ごろから精神的安寧を願っているのさ」
古泉「まあいずれにせよ、まだ情報が少なすぎます。続報を待つことにしましょう」
ハルヒ「それもそうね。有希、パソコンいじってていいから何か情報があったらすぐに教えてちょうだい!」
長門「わかった」
キョン「――さて、どうだった?」
古泉「出だしとしては悪くないと思います。ねえ、長門さん」
長門「涼宮ハルヒは自身の持つ常識によって否定をしながらも、そうあって欲しいと願った」
キョン「それは信じたということでいいのか?」
古泉「話半分程度では信じた、と言えるのではないでしょうか」
長門「そう」
キョン「やれやれ。で、次はいつネタバレをするかだ。本来ならすぐにでもそうしたいところだが……」
古泉「流石に今日の明日、というわけにはいかないでしょうね」
キョン「だがその間にもニュースが出回らないとも限らないんだぞ?」
「勘のいいやつなんかはすでに異変を感じていることは間違いないだろうし」
長門「……地元テレビ局が気付いた様子」
キョン「なに?」
長門「明日の午後の時間帯、ローカルニュースで北高周辺の春現象についてのリポートがある」
キョン「その程度なら無視してもなんとかなるか……。ハルヒも学校で見ることが出来ないしな」
「まずは明日がどの程度変わっているかにもよるな」
*
キョン(なんでこいつは朝からこんな笑顔なんだろうな。俺の暗澹とした気持ちを――)
ハルヒ「キョン、あんた来るときに川沿いの桜見た? 満開よ、満開!」
キョン「……いや、見ていないな」
ハルヒ「今日はみんなで花見に行きましょう! 有希と古泉くんに伝えておいて! みくるちゃんには私が言うわ」
キョン(桜が咲くくらいならかわいいものか……)
*
キョン「……なんだか楽しそうだなお前」
古泉「今後のことを考えなければ非常に今を満喫していますよ。美しい女性たちと優雅に花見ですよ?」
「自然と顔もほころぶというものです。おや、土筆が生えていますよ」
キョン「当たり前のように蝶が飛び、草花は青々と萌え盛っているしな。これはどうみても春だ」
古泉「日差しも春のそれですね。穏やかで気持ちがいいですね」
キョン「やれやれ、秋口の切なさが恋しくなるときが来るとは思ってもみなかったぜ」
「明日には各家庭で鯉のぼりでも上がるんじゃないか?」
古泉「先人たちにならって明日は早起きをしてみようかと思います。9月にみる春のあけぼのですよ」
キョン「秋の夕暮れはちゃんとくるんだろうな……」
*
ハルヒ「キョン、あんた昨日テレビ見た? ローカルニュースでこの辺りのことが映ったらしいのよ」
キョン「お前はいつ見たんだ? 流れたのは昼過ぎの放送だろう?」
ハルヒ「昼過ぎにやってたの? あたしはそういう話を聞いただけよ」
キョン「……結構話題になってるのか?」
ハルヒ「そうなんじゃない? ウグイスまで見つかったらしいわよ。本格的に春の訪れよねえ」
「この間のニュース、特に続報はないみたいだけど本当なんじゃないの? すごいことだわ!」
キョン「さてどうだろうな。そのうち謝罪会見でも始まるかもしれないぞ」
*
キョン「おい、そろそろハルヒに種明かしをしないとまずくないか?」
「もう当たり前のようにウグイスは鳴いてるし、昆虫どもも元気いっぱいだぞ」
「単に報道はされていないってだけで、北高の周辺はもう春が満開だ」
古泉「そうですね。思っていた以上に事態が変化しています」
「今日の放課後にでも仕掛ける必要がありそうですね。明日の夜中には太陽が動き出してしまいます」
キョン「しかし、どうやってハルヒに誤報だと信じさせるんだ?」
古泉「当初の予定通り、でっちあげたニュースソースを再び見せて誤報を演出しましょう」
キョン「たったそれだけで信じるのか? 世間は明らかに変化しているぞ」
古泉「それはもう、信じてもらえることを祈るほかありません」
キョン「失敗したら今日の夜中から地球は劇的な変化をするわけだ」
古泉「西から昇る太陽をご覧になりたいんですか?」
キョン「ハルヒが関わってないなら、な」
キョン「――というわけで、長門。今日の団活の時間にハルヒにネタバレをする」
長門「……」
キョン「……どうした?」
長門「日本時間の十六時三十分から米国航空宇宙局による地球の異常事態についての緊急会見が予定されている」
キョン「……え?」
長門「全世界に情報が公開される」
キョン「……手遅れになる前にハルヒにどうにかしてもらわないといけないな」
「まさか天下のNASA様に恥をかいてもらうことで世界が救われることになるとはな……」
「しかし、本当に加速度的に追い詰められていくな」
長門「……」
キョン「長門、放課後頼むぞ!」
ハルヒ「……どうしたの? 有希」
長門「先日の報道が誤報だったという情報が入った」
ハルヒ「どういうこと? どっかのサイトに乗ってるの?」
長門「ESAとNASAが共同で声明を出している」
ハルヒ「見せて! 見せて!」
キョン「やはり間違いだったようだな」
ハルヒ「あんたは黙ってなさい! 有希、翻訳して!」
長門「『地球の公転および自転が逆回転したというのは誤報である』」
「『計器の故障に起因するものと思われ、一時的に混乱を招いたことをESAは謝罪する』」
「『NASAのデータでは同様な異常は認められていないことからも明らか』」
ハルヒ「……」
古泉「どうも欧州宇宙機関の機器が誤検知をしていたようですね」
「せっかくですから天変地異を見てみたかったですが、そんなことはありえませんよね」
ハルヒ「……なんだか興醒めね。でもそれにしても最近の春現象は何が原因なのかしら?」
キョン「さあね。ともかくこの話とは関係がないことは確かみたいだぞ。なあ、長門」
長門「ない」
ハルヒ「……つまんないわ」
キョン(……やれやれ)
キョン「どうだ?」
長門「是正された」
キョン「ということは元通りになったのか?」
長門「そう」
キョン「ずいぶんあっさりいったな。それで、NASAの本当の会見はどうなった?」
長門「米国航空宇宙局はまだ気付いていない。予定通り情報公開の準備が進行している」
キョン「……このまま行くと普通に会見が行われるってことか?」
長門「そう」
キョン「ハルヒに見られるとまずいんだよな、きっと」
長門「嘘を見抜かれると先ほどの工作は無に帰す」
キョン「……まだ気は抜けないってことか」
古泉「涼宮さんをどこかに引き止めておく必要があります」
キョン「……その役目を俺がするのか?」
古泉「他に適任がいますか? 僕も長門さんも裏工作をするので手一杯なんですよ」
「なにせ事は世界規模ですからね。長門さんによれば会見はじきに始まるとこのことです」
キョン「いつもの喫茶店にでも引き止めておけばいいか?」
古泉「それで大丈夫でしょう。念のため、喫茶店のテレビやラジオの類は使えないようにしておきます」
キョン「で、どのくらいの時間を稼げばいいんだ?」
古泉「小一時間というところでしょうか……。長ければ長いほど助かるのは事実ですが」
「ついでと言ってはなんですが、涼宮さんが余計なことを考えないように念押しをお願いしますよ」
キョン「正直気乗りしないな……」
キョン「おい、ハルヒ。帰りにいつもの喫茶店に寄らないか?」
ハルヒ「……あんたなんか企んでる?」
キョン「人聞きの悪いことを言うな。たまには家に直行したくない気持ちのときもあるだろ」
ハルヒ「もちろんあんたの奢りなんでしょうね?」
キョン「予算はひとり千円までだ」
ハルヒ「他のみんなは?」
キョン「なんだか家庭の事情で大変らしくてな、大急ぎで帰っていったぞ」
ハルヒ「何かあったのかしらね……。まあいいわ。行くわよ!」
キョン(例によってお前のせいで大変なことになっているんだがな……)
キョン「さて、今回の件、お前はどう思ったんだ?」
ハルヒ「何の話よ?」
キョン「地球が変になってるっていうデマについてだ」
ハルヒ「ああ、あれ? 誤報だったんでしょ? まあ、ありえない話だもんね」
キョン「意外なまでに諦めがいいな」
ハルヒ「……あんたあたしを何だと思ってるの? 地球がそんなことになるわけないじゃない」
「どうせなら地球規模じゃなく、もう少し身近なところで異変が起きて欲しいものだわ」
キョン「灯台もと暗しという諺があってだな……」
ハルヒ「そのくらい知ってるわよ」
キョン「灯台自身は自分の明るさに気付かないというということだ。端から見れば驚くほど明るいのに」
「何事も物事において当事者は客観性を持つことは難しいし、第三者的視点の多くのことを知らない」
ハルヒ「何笑ってんのよ……。それよりあんた国語苦手なの? 全然違うわよ」
キョン「そうだったか? それより、どうだ。もう一杯くらいコーヒーでも飲むか」
ハルヒ「……そうね」
ハルヒ「あたしは確かに常日頃から不思議なことが起きればいいとは思ってはいるわ」
「でもそれで方々に影響が出てしまうようなことは起きて欲しくないわよ」
キョン(その中に俺たちは含まれていないみたいだな)
ハルヒ「そりゃ、今回のことが事実だったら大変なことよ。あたしたちはただ傍観して楽しめばいいのかもしれない……」
「でもきっとそれは瞬間のことで、様々なところに影響が出てくるはずよ」
「だからあたしはもっと素朴な不思議さがいいのよ。宇宙人とか未来人とか超能力者とか……」
キョン(素朴ねえ……。まあ確かにもう俺にとっては平凡なものでしかないが)
ハルヒ「でもね、一日だけ太陽が違う方向から上がったりしたら面白いわね」
キョン「おい、滅多なことを言うな!」
ハルヒ「何よ、ただの与太話じゃない。たった一日だけよ、もしそうなったら面白いじゃない」
「たった一日ならきっと誰にも迷惑はかからないわ」
キョン「まあ一日限定であるならばそうかもしれないが……。望ましくはないよな」
(だが、お前のは結果として託宣になるから俺たちが奔走するはめになるんだ)
ハルヒ「何怖い顔してんのよ。どうせきっと明日も平然と太陽は東から上がるわよ」
キョン「そうだ。それが一番だ。明日も太陽に照らされて修行僧のようにあの坂道を登る平和だ」
ハルヒ「……あんたはどう思ってるの?」
キョン「何をだ?」
ハルヒ「地球が変になってるって話よ」
キョン「まあ最近暖かいのはたまただろう。公転だ自転だのなんて話は俺にはよくわからん」
「確かに太陽が反対から昇ったら平凡な日常に変化があるかもしれんが、俺は気付かないかもしれん」
「何せ当たり前のことと思っているんでな、お前は家を出たときに太陽の位置を確認するか?」
ハルヒ「するわけないじゃない。でもこの調子じゃあんたのせいで明日は確認しちゃいそうだわ」
キョン「それでがっかりするわけか」
ハルヒ「……まだわからないわ。観測によって事象が変化する例もあるのよ」
キョン「詭弁に近いような気もするが、一理あるかもしれないな。俺も明日太陽を確認しよう」
ハルヒ「なんてくだらない話なのかしらね。……さて、そろそろ帰るわよ」
キョン「そうだな」
キョン「えらくタイミングがいいな」
古泉「待たせてもらいました。首尾はどうでしょうか?」
キョン「……大丈夫だろう。あいつは意外と常識人なようだ」
古泉「それはよかった。こちらはなかなか大変でしたよ」
キョン「そうだ、会見はどうなったんだ?」
古泉「何とも中途半端なまま終わりましたよ。消化不良を起こした人は大勢いるでしょうね」
キョン「どういうことだ?」
古泉「予定時刻を十分ほど過ぎてから会見が始まったんですが、五分もしないうちに中断されたんですよ」
古泉「赤い顔をした職員が筆頭会見者に耳打ちしたところ、二十分ほど間が空きました」
「会見上にいた人がみな裏に引き上げて行きましてね、テレビ越しでも焦燥感が伝わる異様な光景でしたよ」
キョン「結局どうなったんだ?」
古泉「そのまま終了しましたよ。最後に発表内容に不備があったため中止という苦しいアナウンスを残してね」
「マスコミの不満な態度もすごいものでしたが、それ以上に会見した人の憔悴した顔が印象的でした」
キョン「ということは確定的なことは何も公になっていないんだな?」
古泉「そのようです。インターネット上では会見の真意を探る活動が活発ですが、無視できるでしょう」
キョン「杞憂に終わってよかったというところか」
古泉「そのようですね」
キョン「やれやれ、これでやっと終わりか」
*
キョン(結局会見はうやむやになったみたいだな。続報も見る限りでは出てなかったし)
(まあ一日くらい太陽が西から上がったら楽しそうではあるんだがな)
(しかし、明日いきなり秋真っ盛りになったりしないだろうな……)
(それはまたあとで考えればいいか。もしそうだとしても正しい姿に戻るだけだ)
(いずれにせよ、今日はよく眠れそうだ……)
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キョン「おい、一体どうなってるんだ? 直ったんだろ?」
「俺の目がおかしくなったわけじゃないなら、何回見ても西側に太陽がある」
長門「錯覚」
キョン「……もう少しわかりやすく頼む」
長門「地球の自転、公転ともに通常通り。銀河系において恒星の移動に一切の変化はない」
「涼宮ハルヒを中心とした半径五kmの範囲内の人間にのみ、視覚異常が起きている」
「該当する範囲内の人間は太陽の存在位置を鏡面対称に錯覚している」
キョン「……俺たちは幻想を見せられているってことか? その割に誰も慌てていないじゃないか」
長門「対象となる人間の視野情報を限定的に共有、改竄した情報を展開している」
キョン「お前がハルヒの能力を上書きしてるのか? 相変わらず何でも出来るんだな……」
古泉「妙だと思ったんですよ。今朝家を出るときに、強迫観念のように太陽を見なければと思ったんです」
「まるで観測することを強いられているかのように。そして、太陽は逆にありました」
「長門さんが我々を除く人々のフォローをしていてくれなければ大パニックになっていたでしょう」
キョン「あいつは狂想曲だけでは飽き足らず、今度は幻想曲でも奏でるつもりなのか?」
古泉「あなたが昨日涼宮さんに何か吹き込んだんじゃありませんか? もしくはあなた自身が何か願いましたか?」
キョン「いや、そんなことはないはずだが……」
長門「……涼宮ハルヒは今日一日だけ太陽が西から上がればいいと思った」
「一日程度であれば問題ないと、昨夜のあなたとの会話の中で考えた」
古泉「……やはり何か余計なことをおっしゃったようですね」
キョン「そんな顔で俺を見るな。別に意図していたわけじゃないし、錯覚なら別にいいだろうが」
「……それで、なんで俺たちにはハルヒの作った錯覚のまま見えているんだ?」
古泉「僕が長門さんにお願いしたんですよ。団長の意向を知っておいた方がいいと思いましてね」
キョン「錯覚だとしても確かにこれは貴重な体験だな……」
古泉「あなたはそれ以上の経験を幾度となくしているでしょう?」
キョン「宇宙人と未来人と超能力者がいて、それに付随する出来事は俺の日常だ」
古泉「……涼宮さんに聞かせてあげたい台詞ですね」
キョン「しかし、結局のところ俺たちが奔走した意味があまりなかったじゃないか」
古泉「どうやらそれが我々の日常というものらしいですよ」
キョン「……何を笑ってるんだお前は」
キョン「よう、ハルヒ。結局太陽は東から上がったな」
(もちろん今も俺の目には西から上がっているように見えるがな……)
ハルヒ「あんた、まさか本当に西から上がるかと思って家を出たんじゃないでしょうね?」
キョン「まったく期待してなかったといえば嘘になるかもな。ただ、普通が一番だ」
ハルヒ「……普通のどこが面白いのよ」
キョン「普通ってのは簡単そうに見えてなかなか見つからないもんだと俺は思う」
「そしてその普通の中を探せば、きっと面白いことも不思議なこともあるだろうさ」
「俺の日常は普通だがな、それなりに不思議なこともあって退屈はしていない」
ハルヒ「あんたの日常に一体どんな面白いことがあるのよ」
キョン「お前、灯台もと暗しって諺を知ってるか?」
ハルヒ「あんた、あたしのこと馬鹿にしてんの? それ昨日も聞いたわ」
キョン「要するにな、灯台のそばにいると少なくともその周りはちゃんと見えるということだ」
「俺にはそれなりに面白い地面に立ってるってことがちゃんと認識出来ているんだよ」
「……少なくとも一般的な普通と呼ばれるレベルよりはな」
(多分、お前も少なからずそう思ってるんじゃないか?)
ハルヒ「……意味わかんないわ。あんた本当に馬鹿じゃないの」
キョン「そうかもしれないな」
古泉「――涼宮さんが不思議ではなく、普通探しをすると言い出したんですが……。何か心当たりは?」
キョン「ないことはないが……」
長門「……」
ハルヒ「そこ! 何喋ってるの! ちゃんと団長であるあたしの話を聞きなさい!」
「いい? 今日は街へ繰り出して普通を探すのよ! 普通の中に潜む不思議を探して報告すること」
「ちゃんと探さないと罰金よ、罰金。キョン、あんたは特にちゃんと探さないと死刑だから」
キョン(……こりゃ、不思議を探すことの方が簡単かもしれなかったな)
(――まあ、これも俺の平凡な日常か)
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なんか久々にハルヒSS読んだな。また読みたいので、いつか気が向いたらよろしくお願いします
懐かしいテイストだ
よかった
乙。ハルヒらしい話だなあ…みくるの不遇っぷりも含め
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