あらすじ:病の為顔に出来た腫れ物が元で臥せる富本節の師匠豊志賀(とよしが)、それを献身的に介護する新吉であるが、豊志賀は新吉が羽生屋の娘、お久と仲が良いのを妬んでいる。そこへお久がお見舞いにやってきて…
出演
富元の師匠 豊志賀:如月千早
弟子 新吉:双海真美
羽生屋娘 お久:萩原雪歩
医者 伊東春海:三浦あずさ
蓮見寿司女中 おたけ:日高愛
新吉伯父 勘蔵:秋月律子
噺家 さん蝶:天海春香
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第一場 <七軒町豊志賀内の場>
あずさ「病に障るから、安静にしてないと駄目だからね」
真美「はい、わかりました…」
あずさ「じゃあ、私は帰るわね」
真美「ありがとうございました…はぁ…」
「新さん…新さん…」
真美「何、師匠?」
「後生だから、この屏風をどけて…」
真美「風にあたると体に悪いよ…」
「構わないから取ってよ~」
真美「はぁ…それじゃ取るよ…」
「新さん…すまないけど、起こしてくれない?」
真美「起こせってそんな体で起きちゃいけないよ。ゆっくり寝てて」
「でも起きたいのよ~」
真美「…そうだね、寝てばっかじゃ辛いもんね…じゃあ起こしてあげるね…掴まって…」
千早「ありがとう…」
真美「はい、これ着て…」
千早「はぁ…もう嫌よ…死んじゃいたい…」
真美「毎日毎日そんなこと言って…そんなつまらない事考えちゃ駄目だよ」
千早「でもね新さん…私とあなたじゃ歳が20も違うじゃない…あなたみたいな若くて、綺麗な人が看病してくれてると…本当に気の毒で気の毒ですまないと思ってるの…病は重くなる一方だし…私が早く死んであげたら、あなたも楽が出来ると思ってね…」
真美「師匠、そんな事言ってたら治るものも治らないよ」
千早「でもね、私の病はただの病じゃないのよ…こんな顔になっちゃって…あなたもこんな醜い顔の女、嫌でしょう…?」
真美「い、嫌だったら看病なんてしないよ!そんな事考えると腫れ物に悪いよ」
千早「その腫れ物のせいでこんな顔になっちまったんだ…新さんだって本当は心の中じゃ、私に愛想を尽かしてるんだろうねぇ…」
真美「愛想を尽かすなんて…あっ!師匠、少し腫れが引いたみたいだよ」
千早「嘘ばっかり…そんな気休めは聞きたくないわ…私は毎日この鏡で顔を見てるけど、だんだん腫れてくるばかり…新さん、あなたは口と心とが違ってるのね…」
真美「邪推はやめてよ。口と心が違うなんてそんな事ないよ」
千早「皆、その口で騙されるんだね…」
真美「騙すって…」
千早「私が早く死んでしまえば、あなたが心から想っている羽生屋のお久さんと一緒になれるのにね…」
真美「お、お久さんは羽生屋の一人娘だよ!変な噂が広まったら可哀想だよ」
千早「可哀想でございましょうよ!新さんはお久さんばっかり気にかけて、私の事なんか何にも思ってないんだ!…ううう…うわああああん!新さんのばかー!うああああ!」
真美「む、婿取り前のお嬢さんだから、変な噂が広まったら可哀想だって言ったんだよ!」
千早「そう庇うところを見ると、満更でもないんだろうね…」
真美「ああ言えばこういう…困っちゃうよ…」
千早「何も困ることなんてないじゃない!私が早く死んでやったら、あなたの思うままになるんじゃないのさ!」
真美「師匠が死んで思うままになるなんて…病に障るからそんな事考えちゃ…」
千早「病に障れば尚更よ!私は一日も早く死んじゃいたいよぉ!」
真美「師匠、もうやめて…」
雪歩「御免ください…」
真美「お、お久さん!」
千早「な、何よ急に来て…」
真美「師匠、お久さんに挨拶…」
千早「……」
真美「はぁ…」
雪歩「お体の様子は…」
千早「ふ、ふん…!」
真美「い、良いみたいだね!」
雪歩「これはつまらない物ですが、師匠が好きだと思いまして…」
真美「お久さん、いつもいつもありがとう…ねぇ師匠、お久さんが来たよ…ねぇ師匠…」
千早「知ってるわよ…病み呆けてるって言っても、目はまだ見えるんだから…ちゃんとわかってるわよ!」
真美「もう…」
千早「…お久ちゃん、どうもありがとう…」
雪歩「とんでもございません。美味しいかどうかはわかりませんが、どうか食べてください」
千早「美味しいのはそっちでしょうよ…」
雪歩「え?」
千早「ボンクラでも、そのくらいの事はちゃんとわかってるわよ…この泥棒猫が!」
真美「し、師匠!そんな事言ったらお久さんに失礼…」
千早「新さん、ちょっと黙っててくれない」
真美「師匠!」
千早「いいから黙ってて頂戴!」
真美「は、はい…」
千早「…お久ちゃん、私あなたにちょっと話したい事があるんだけど…だからね、こっちおいでなさいな…」
雪歩「え…」
千早「おいでなさい…おいでなさい…」
雪歩「うぅ…」
千早「こっち来いって言ってんだろ!!!」
雪歩「ひっ!?」
千早「お久、あなたが毎日毎日私の所へ見舞いに来るのは、他に目的があるんでしょ?年端もいかないくせに、病人をだしに使うなんて…年上を馬鹿にするんじゃないよ!」
真美「し、師匠!お久さんに失礼だよ!ご、ごめんなさいお久さん…」
千早「なんであなたが謝るのよ!私はお久に言ってるだけじゃないの!新さんは何かと言うとお久の肩ばっかり持って…やっぱり私の事なんて何とも思ってないんだ!うわああああ!ばかー!お前の顔なんか見たくないからさっさと帰れ!ううう…」
真美「な、なんでそんな事言うの!ごめんなさいお久さん…」
千早「だから何で新さんが謝るのよ!何かと言うと新さんはお久を贔屓にして!」
真美「ひ、贔屓になんかしてないよ!」
雪歩「ま、また日を改めてお見舞いに来ます…」
真美「あっ、待ってくださいお久さん!師匠も本心から言った訳じゃ…お久さん!…はぁ…」
千早「…はぁあん!いた~い!新さ~ん、いた~い!」
真美「ああもう、だから体に悪いってあれほど言ったのに…」
千早「いた~い!」ガバァッ!
真美「うわっ!?し、師匠、お、お薬飲みましょうね!」
千早「いや~ん!飲みたくない~!お薬飲みたくない~!」
真美「そ、それなら横になろうね、さ、横に…」
千早「新さ~ん」ガバァッ!
真美「わわ!?だ、駄目だよ師匠!」
千早「一緒に寝てよ~寂しい~」
真美「こ、ここに居るから大丈夫だよ!ここに居るから…」
千早「うん…うん…」
真美「寝ないと駄目だよ師匠…はぁ…」
千早「うわ~ん!行っちゃだめ~!」
真美「うぎゃあ!?どどどどこにも行かないよ→!!」
千早「嫌だ~!行かないで~!」
真美「ここに居るから、居るから大丈夫だよ…よく寝てね…ゆっくりすれば良くなる、良くなるから…はぁ…」
真美「もうやだ、こんな生活…散歩にでも行こう…」
真美「……」
雪歩「新さん…」
真美「お久さん…」
雪歩「どこか行くんですか?」
真美「え?…ちょっとそこまで…そうだお久さん、師匠も寝たみたいだから、そこまで一緒に行こうよ…」
雪歩「ええ、良いですよ」
真美「さっきはごめんね…」
雪歩「私の事は気にしなくてもいいですよ」
真美「ありがとう…こっちも必死で看病してるつもりなんだけどね…ああやって当たり散らされると、こっちもどうすればいいのかわからなくなってさ……」
千早「……」
千早「新さ~ん…新さ~ん…新さん?ねえ新さん!」
千早「どうしたの新さん…もしかして、お久の所に…う!?ぐぅ…く、苦しい…水、水…悔しい…悔しい!新さん、新さん!お久と一緒に…新さんの不実者!悔しい…悔しいよぉ…う…がは…しん…さ、ん…」
第二場 <蓮見寿司の場>
愛「お客さん、ご注文は!!!」
真美「握り寿司を…お久さんは?」
雪歩「何でも…」
真美「じゃあ、同じものを」
愛「かしこまりましたー!!!」
雪歩「師匠、今頃あなたを探してるんじゃないですか?」
真美「目が覚めたら探すだろうね…」
雪歩「でも、新さんは本当に良く看病してますよ」
真美「ありがとう…昼なら良いんだよ、昼なら…でも夜になると師匠、柱の所に掴まって、新さ~んって…それがもう怖くって怖くって…逃げだしたくなるくらいだよ…」
雪歩「女のしつこいのは大変ですよね…私の所の母親も、私と血が繋がっていませんから、私の事を口やかましくなじるんです…」
真美「そうなんだ…」
雪歩「私も逃げ出したいです…新さん、お願いがあります」
真美「何?」
雪歩「一緒に逃げてくれませんか?」
真美「え!?」
雪歩「下総の羽生村と言う所に伯父さんが居るんです。そこへ今度逃げようと思ってたんですけど一人じゃ怖いし…でも、継母の仕打ちにはもう耐えられないし…新さん、お願いです!一緒に逃げてください!」
真美「迷惑じゃない?」
雪歩「迷惑なんてそんな!」
真美「師匠の看病…もう耐えられそうにないし…お久さん、一緒に逃げよう!」
雪歩「本当ですか!?」
真美「本当ですとも!」
雪歩「嬉しい…新さん!」
真美「お久さん!」
ジリ……
ジリ……
真美「あれ、灯りが…ちょっと姉さん!行燈の油を変えて!姉さん!」
「二人でお楽しみとは…睦まじい事ね…」
真美「え…?」
千早「新さん…そんな事をして…ただで済むと思ってるのぉ…」
真美「し、師匠!?」
千早「新さ~ん…」
真美「ああ…嫌だ…嫌だ!」
雪歩「新さん?」
真美「ごめんなさい師匠!ごめんなさい!ごめんなさ~い!」
雪歩「新さん!?ど、どうしたんですか、待って新さん!」
第三場 <勘蔵家の場>
真美「伯父さん!伯父さーん!」
律子「うわ!?…何だ新吉か、ビックリするじゃないの」
真美「水、水…」
律子「その土瓶の中よ…どうしたの?顔が真っ青よ」
真美「ごくごく…はぁ…そりゃ顔も青くなるよ!もうやだ…」
律子「それよりもあんた、豊志賀師匠の看病は?」
真美「伯父さん!もう師匠の看病は出来ない!もうやだ!」
律子「な、何言ってるのよ!師匠への義理はどうなるの!」
真美「伯父さんにそう言われればそうだけど…伯父さんは見てないからそんな事言えるんだよ!見たら大変だよ…」
律子「どんな様子かは知らないけど、師匠から受けた恩を考えれば我慢も出来る筈よ。あんたが貸本屋でとちって、私の所へ転がり込んできた時、次の奉公先を探してたらいつの間にやらあの師匠の所へ入りこんで羽織の一枚も着れるようになったんじゃないの。それは誰のおかげ?」
真美「そうだけどさ…そうなんだけども伯父さん…怖いんだよぉ…」
律子「怖いって…そのくらい辛抱しなさいよ」
真美「無理だよ!」
律子「なんて情けない…お殿様や奥様があの世で嘆いているでしょうね…」
真美「お殿様?…伯父さん、何言ってるの?」
律子「真実を語る時が来たみたいね…あなたに見せる物があるわ」
真美「見せる物?」
律子「ちょっと待ってなさい」
真美「伯父さんどこ行くの!?」
律子「どこにも行かないわよ!」
真美「一人にしないで…」
律子「新吉…これを見なさい」
真美「何これ…小石川服部坂上深見新左衛門息子新吉…え…伯父さん、これ誰の事?」
律子「実はね新吉…あなたは旗本深見新左衛門様の次男なのよ」
真美「え…ほ、本当なの?」
律子「あなたが小さい時にお父様もお兄様も死んでしまってね…そのあんたを門番だった私が引き取って、ここまで育てたのよ…あんたは元は立派な侍の子なの。だから不実な事はしないで…お願いよ…」
真美「伯父さん…わかった…師匠の所で辛抱するよ」
律子「良く言ってくれた…この事を聞けば師匠も喜ぶでしょうね!」
真美「じゃあ伯父さん、一緒に師匠の所へ…」
律子「師匠!…師匠!」
真美「…え?お、伯父さん、さっきから師匠師匠って…」
律子「病気の身でありながら、あんたがここに居ると思って駕籠に乗ってここまで来たのよ」
真美「へ…へへ…か、からかわないでよ」
律子「からかってなんかいないわよ。夜風に当たると病に障るから、隣の部屋で休ませてたところなのよ…師匠、新吉が来ましたよ」
真美「もう伯父さんそんな見え見えの嘘ついちゃ駄目だよ→、一緒に家へ行って師匠に…」
千早「……」
真美「師匠…師匠!?…へ?え?あれ?」
千早「新さん…私が目を覚ましてみると…あなたの姿が見えないから、もう逃げられたと思ってね…一言あなたに謝りたくて、隣のおばさんに助けてもらって…駕籠を頼んでここまで来たのよ…ねぇ新さん…今まで散々当たり散らしてごめんね…」
真美「師匠…」
千早「新さん…あなたとこんな関係になってから、弟子も少なくなって仕事もなくなってきた…さすがにあなたにも悪いから、ここが潮時だと思うのよ…今日限りであなたと別れて、私と兄弟分になってくれる…?」
真美「も、勿論だよ!」
千早「それでね…あなたも若い奥さんが欲しいでしょう…?だからその奥さんと一緒に私を看病してほしいの…こんな私でも姉と思って、看病してほしいのよ…」
律子「良く言ってくれました…ありがとうございます!」
真美「師匠、ごめんなさい…今から心を入れ替えて、精一杯看病するよ!」
千早「そう…」
真美「そういえば師匠、さっき寿司屋の二階に…」
千早「……」
真美「な、何でもありません…」
律子「何言ってるのよ…じゃあ帰りの駕籠を呼んで来ましょうか」
真美「伯父さん待ってよ!…呼んでくるから…」
律子「あなたじゃ勝手を知らないでしょ?」
真美「知ってるよ!だからここに居て…」
律子「あなたは師匠のお世話をしなさい」
真美「…わ、わかった…早く帰ってきてね…」
律子「すぐに帰るわよ」
真美「伯父さん…早く帰ってきてね…」
千早「……」
真美「師匠…じゃ、じゃあ駕籠が来るまで、隣の部屋で休んでて…師匠?」
千早「……」
真美「どうしたの?…あ、師匠一人じゃ立てないからね、お手伝い…」
千早「……」
真美「はぁっ!?ひ、一人で立てるようになったの!?良かったねぇ…」
千早「……」
真美「さ、ささ隣の部屋に入って…横になって…はぁ…」
ドンドンドンドン!!
真美「うぎゃああああ!!」
「勘蔵さん!新吉さんは来ちゃおりませんか!勘蔵さーん!」
真美「え…さん蝶さん?」
「え、新ちゃん居るのかい?ここ開けて!新ちゃん開けて!」
真美「あ、開いてるよ!」
「え、開いてる?…あ、本当だ…」
春香「新ちゃん、大変だよ大変!」
真美「ど、どうしたの?」
春香「早く私と一緒に帰ろう!家の中が大変なんだよ!」
真美「泥棒でも入ったの?」
春香「そんなんじゃないよ!…聞いて驚くなよ新ちゃん…豊志賀師匠がね…御六字になっちまったんだよ!」
真美「御六字?」
春香「南無阿弥陀仏!おめでたくなっちまったんだよ!」
真美「へ?…へへ…冗談でもそんな事言っちゃ駄目だよ」
春香「冗談?私はね、人の生き死で冗談なんて言わないよ!信じてないみたいだから、ちょっとその様子を話して聞かせてあげる!」
春香「確かあれは五つ頃だったかな、師匠の所から、悔しい~悔しい~って声が聞こえてきてね、まぁあなたに愚痴言ってるんだろうと長屋の連中はそう思ってたんだけどね、どんどん声が大きくなってきて、悔しい~悔しい~新吉の不実者め~!って…」
真美「ちょ、ちょっと声が大きいよ…隣に居るんだから」
春香「え、居るの?」
真美「居るよ、寝てるの」
春香「寝てるんだ」
真美「寝てるよ」
春香「寝てんでしょ?大丈夫だよ、聞こえない聞こえない」
真美「は、はぁ…」
春香「でね…新吉の不実者め~って金切声か何だかわからない嫌な声なのよ。でもいつもならここであなたの声が一言二言聞こえる筈なんだけど何にも聞こえない。おかしいなぁって思ってるとどこからか、新吉なら小間物屋の娘さんと寿司屋に行ってるって声が…」
真美「さん蝶さん!」
春香「寝てるなら大丈夫だよ!」
春香「で、新吉の姿が見えねえから角を生やして怒ってんだなって思ったんだ。でも師匠病人だからさ、誰か見に行けよって言ったんだけども…新ちゃんの前だけどもさ、あの剣幕で、しかもあの顔ときちゃあ誰も気味悪がって行く訳もないわけだ。でも、誰かが行かなくちゃあならねぇ、そう言った時に限って私にそう言った役回りが来るんだよ。仕方がないから意を決して…ドンドンドン!師匠どうしたんだい?声を掛けたんだけど何の返事もない。おかしいなぁって思って中を見ると…中真っ暗じゃねえか…いよいよ変だなって思って、格子戸をガラガラガラと開けて私が一足、中へ踏み込んだ途端!」
真美「ひっ!?」
春香「ボ~ン…ボ~ン…上野東叡山寛永寺の鐘の音…どこから吹いてきたか血生臭い風が私の襟首の所を掠めて通った所へ頭から、冷や水かぶせられたようにゾッとしてきた…行燈も消えちまって…ジリジリジリ!っといや~な音を出して、ついたり消えたりしてやがる…で、良く見ると豊志賀師匠が寝床から這い出てきたのか、寝巻の裾の所がこうだらしなくなっちゃって、あのアイドルの如月千早みたいに綺麗な太腿を見せながら、顔はもうよほど悔しかったのか唇を噛んで口元は血だらけでね、凄まじい形相でこう…うううう~!」
真美「うひゃあっ!?い、いくら噺家だからってそんな話はやめてよ!」
春香「それよりもさ、新ちゃんがいないと死体を片付けられないから、早く私と一緒に…」
律子「駕籠呼んで来たわよ」
真美「伯父さん…やっと来た…あ、この人は長屋の噺家のさん蝶師匠だよ」
春香「え?…あれ?…新ちゃん、お前さん伯父さんは寝てるって言ったじゃないの」
律子「長屋の…ああ、病人が急に居なくなったらそりゃ長屋も大騒ぎでしょうね」
春香「そうじゃないんですよ!豊志賀師匠が…お亡くなりになったんですよ!」
律子「そんな馬鹿な事を言っちゃいけませんよ。師匠はさっきここへおいでになったんですから」
春香「…はい?…ここに師匠が…?」
真美「だからさっきから居るって言ったじゃん。師匠は隣で寝てるよ」
春香「師匠が…寝てる…あわわわわ…」
真美「どうしたの?」
春香「ひええええ!そいつは師匠の、幽霊だぁー!!」
真美「さ、さん蝶師匠!?」
律子「…変な奴ね」
駕籠持「すいません、灯りの油がなくなってきたんでちょっくら持ってきます」
律子「早く戻ってきてね…それじゃ新吉、師匠を起こしてきて」
真美「え…伯父さん起こしてきてよ」
律子「早く起こして来なさいよ!」
真美「…わかったよ…師匠、駕籠が来たから帰るよ…師匠?ししょ…」
真美「え…はぁっ!?ああっ!!伯父さーん…伯父さん!」
律子「何よ…師匠がどうかしたの?」
真美「師匠がぁ…師匠が居ない!」
律子「何言ってるのよあんたは…そんな馬鹿な事が……師匠、駕籠が……」
律子「わわわわわわ…し、師匠が居ないー!!」
真美「ああああ!!もうこんな家には居られないよ!もう出てい…」
千早「新さ~ん♪」
真美「うぎゃあああああ!!!おじさーん!!!」
律子「ひいいいい!!ナンマンダブナンマンダブ!!」
真美「うわあああああ!!!許してー!!!」
新さ~ん……
ふふふ……
ふふふふふふふふ……
『真景累ヶ淵』<豊志賀の死> 終幕
終わりです。怪談の季節には早いですが、最近熱くなってきたのでつい…読んで下さった方々、ありがとうございました
乙おつ 面白かった
この前の狂言と同じ人かな?
楽しく読ませてもらってるんで、これからも頑張ってください
乙
後半から仇討ちものにジョブチェンジしてポカーンとさせられるよね累ケ淵
乙です
ところで>>1が先月立てたスレが残ってるんだけどHTML化依頼ってしてる?
ありゃ、マジですか…完全に忘れてました。指摘してくれてありがとうございます。
…もしかして依頼できなかったりするのか
とりあえず今残ってるのは↓ね
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