ベルトルト「精霊使いベル」―一滴の勇気―(16)

中世ヨーロッパ時代の雰囲気のファンタジー世界を舞台に、精霊使いや剣士、魔族が暴れる冒険譚

作者の考えるファンタジー世界に、進撃キャラを登場させています

ネタバレは基本単行本

主人公は普段あまり目立たないベルトルトです

カップリングあり

妄想いっぱいのお話になります

お付き合いいただけたら嬉しいです

光  の力は万物を統べる        
闇  の力は万物を無に帰す       

水  の力、癒しをもたらす  
火  の力、業火をもたらす 
風  の力、安寧をもたらす    
土  の力、再生をもたらす 


万物に宿る精霊、その存在を把握し、力に変える事ができるのが精霊使い

精霊には4つの種類がある
水、火、風、土の精霊

その上位にあたるのが聖霊
光、闇の聖霊

聖霊を操る事ができる者を聖霊使い

その力は精霊使いをはるかに超える物だが、行使できる聖霊使いは今ではほとんど絶滅したと言われていた

精霊使いでさえも、今ほとんどその力を行使できる人間はいなくなっていた

その力は魔族と関係があると言われていたその因果からか、精霊使い狩りというものが100年ほど前まで続いていたからであった

その生き残りは、山奥にひっそりと暮らしている事が多かった

闇と光の聖霊の均衡を守るために、闇の聖霊使いと光の聖霊使いが世界の北の果てと南の果てでその魔力によって均衡を保持していた

闇の聖霊使いは、異世界との次元の壁を守る役割を果たしていたが、その志半ばで、魔族に食らいつくされてしまった
次元の壁を守る意志を継ぐ次世代の闇の聖霊使いはおらず、壁は辛うじて生き残っていた精霊使い達が必至に守り抜いていた


闇の聖霊が司る異世界からやってくる魔族は、地上を支配すべく人間界に降り立っては悪事を働いていた
そんな現状を打破すべく、地上の人間も魔族を相手に戦いを挑んでいたが、その力は魔族に到底及ぶものではなかった

寧ろ、人間が駆逐した精霊使いの力があれば、その力の均衡が闇に傾くことはなかったであろう
人間は自らの手で自らの首を絞めてしまったのである

そして、ついに恐れていた事態が起きる
闇の世界から現れた魔族たちの手によって、光の聖霊使いが殺されてしまったのだ

かくして世界の力の均衡が一気に闇に傾き、異世界の魔族たちが光の世界である地上を支配すべく、本格的に侵攻を開始する

「・・・ナナバ様・・・」
白い装束を身にまとい、金色の冠を頭に乗せている、美しい女性
顔色は蒼白で、うつろな瞳だけが虚空をさまよう様に動いていた

「・・・ベル・・・ベルトルト・・・」
ナナバと呼ばれた女性は、彼女の身体を支える青年に手を伸ばした
すでに視覚が失われているのだろうか、その手は空を切っていた

だが、青年はその弱々しくのばされた手をしっかりと握りしめた
「ナナバ様・・・ベルトルトはここにおります」

青年・・・ベルトルトのその声に、ナナバは顔を声がした方向へ向ける
「・・・ベル・・・貴方は、4つの精霊を使役する事に成功した・・・後は・・・光の聖霊を使役できれば・・・。ああ、ごめんなさい、最後まで貴方を育て上げる事がかなわなくて・・・」

「ナナバ様・・・僕は・・・どうすれば・・・貴女がいなくなったら僕は・・・一人になってしまいます。逝かないで・・・下さい」
ベルトルトの瞳から涙が零れ落ちた

その涙は、彼の膝の上に頭を乗せた状態のナナバの頬にぽたり、ぽたりと落ちた

「ベル・・・また、泣いているのね?駄目じゃない。貴方は一人じゃない・・・よく聞いて。もうすぐここにシスティーナ王国からの使者が来る。あなたは彼らと共に、旅に出なさい。自分を見つける・・旅を・・・ごほっ」

「ナナバ様、声を出さないで!」
ベルトルトのその声が耳に届いたのか、ナナバはゆるりと首を動かす

「システィーナ王国の選ばれし戦士たちと旅に出るのです。精霊使いのあなたの力は、彼らの旅に欠かせない物です。そして・・・辛い事があっても、決してくじけないで・・・前を見なさい」

「ナナバ様・・・精霊使いは忌み嫌われています・・・僕は・・・下野に下るのが怖い・・・」

「大丈夫・・・きっと必ず、貴方を心から受け入れてくれるそんな人が現れます・・・だから・・・いつまでも…見守ってい・・る・・・わ」

そう言った瞬間・・・
ナナバの身体から力が抜けた

光の聖霊使いナナバの死

世界が混沌に陥る、まさにその瞬間であった

世界の南の端の山奥に、ひっそりと佇む礼拝堂

ベルトルトはナナバの亡骸を抱え、ただ途方にくれるしかなかった

進撃でやる意味あるの?
素直にオリジナルにすればいいのに

>>7確かにそうですよね

確かにそうなので巣にお帰り

エロトルト、なしゴン、にゃー、88

↑訂正
エロトルトもどき、アルミンハーレム、一生のお願い

ベルトルトは途方に暮れていたが、やがてその未だ美しい亡骸を手厚く葬るために、彼女の亡骸を南の海が見える場所に移す
そして、ふうと息をつき瞳を閉じ、不思議な言葉を発する
「La salamandre ame 火の精霊よ」

ベルトルトが言葉を発すると、彼の広げた手の平から小さな火の蜥蜴の様な物・・・があふれ出す

その蜥蜴はやがてひとつの塊となり、大きな炎にその形を変えた

「偉大なる光の聖霊使いナナバ・・・そして僕のただ一人の母・・・安らかにお眠り下さい」

ベルトルトはそう言って、今火蜥蜴を出した手を伸ばし、人差し指と中指を合わせるように指し示した

すると、その大きな炎は亡骸を包み込む様に移動し燃え盛り・・・

やがて消えた

そのあとには、その焔にさえ耐えた、冠についていた赤い宝石だけが残った

ベルトルトはその宝石をそっと手に取り、懐にしまった

そしてよく自分の師であり、母代りでもあったナナバと眺めた海に視線を送った

ナナバと出会ったのは10年以上前
幼い頃、ベルトルトは孤児院で過ごしていた
だが、生まれつき持っていた不思議な力・・・精霊を使役する事ができる力のせいで忌み嫌われ、いじめられた
孤児院の先生までもがそのいじめに加わったそんなある日・・・

ベルトルトを引き取りに来たのがナナバだった

ナナバは忌み嫌われる存在である精霊使いと同種であった
だが、世界の均衡を守る大事な役割である、聖霊使い

その立場は誰にも踏み入れる事の出来ない神聖なるものだった
だから、そのナナバがベルトルトを引き取りに来たところで止める者などいなかったし、むしろ歓迎された

魔族の血を引いているかもしれない者がそばにいる事など、得体のしれない力を持っている者など、恐ろしいと思うより他なかったからだ

そんな嫌われ者のベルトルトは、人間を信じられないでいた
毎日泣いていた

だから、ナナバに手を引かれた時も・・・おびえてがくがくと体を震わせていた

そんなベルトルトの様子を知ってか知らずか、ナナバは気にする事なくその少年を抱きかかえる
「今日からあなたは私の弟子であり、子どもよ。私はナナバ。よろしくね」
そう、微笑みかけるのだった

ベルトルトは、その時の微笑みを一生忘れる事はないだろうと思えるほどに、子ども心に美しいと思い、また感動した

自分に今まで向けられたことのない慈愛に満ちた表情

生まれて初めて、向けられたその温かい眼差し
それを思い出し、またベルトルトの瞳から涙が零れ落ちた

ナナバに引き取られた後のベルトルトは、厳しい修行生活に明け暮れた
肉体、精神共に、まるで自分を痛めつけるかの様な厳しい修練の日々の中、それでもベルトルトは今まで過ごしてきた中で一番幸せといっていい時間に感じていた

ナナバは修練中は厳しかった
鬼畜ともいえる程の修練を課し、少しでも手を抜こうものなら容赦無く追い打ちをかけた

だが修練を離れると、その態度は一変した

慈愛に満ちた、まるで聖母の様な表情で、ベルトルトに接するナナバ
温かい食事、温かい寝床、温かい抱擁、温かい眼差し・・・母のぬくもりを知らぬベルトルトにとって、ナナバの存在はまさに母そのものであった

ベルトルトの、恐怖におびえて縮こまっていた小さな精神が、その沢山のぬくもりによって、少しずつ解放されつつあった

その精神の解放と共に、今まで感じる事ができなかった存在を、つぶさに感じ取ることができるようになった
今まではただ漠然としか感じられなかった、見えざる物の存在・・・精霊だ

この地上のどこにでも隠れている、見えざる存在、精霊

ベルトルトはまずは水の精霊、ウンディーネとの契約に成功する
もともとベルトルトは水の精霊の存在は、小さなころからはっきりとその存在を認識する事が出来ていた
その力のおかげで、周りの人間から忌み嫌われていたわけであるが・・・

癒しの力をもつウンディーネは、優しい心の持ち主により強くその力を示す
ベルトルトの心の清らかさと優しさは、ウンディーネとの仲の良さからもうかがえるのであった

次に使役に成功したのは木の精霊ノームだった

彼らは小さなきこりの様な見た目をしている陽気な精霊

彼らはまだ幼いベルトルトに、陽気で楽しいリズムのステップを披露した

必死にそれを真似るベルトルトの純粋さと、まだ弱いながらもその瞳になにか光る物を感じて、ノームは彼に力を貸す事にした

次に使役したのは風の精霊シルフ

彼女達は小さな身体に半透明の羽をもつ、美しい存在

そして、非常に気まぐれで、風の赴くまま、まさに自由な存在

だが、その存在は世界に安寧をもたらすとされていた

シルフはベルトルトにこうささやいた
『・・・ここから飛び降りる事が出来たら、貴方に力を貸しましょう』

数十メートルの崖の上にたつベルトルト
ここから飛び降りれば死ぬだろう

もう一度、耳をよくすます・・・崖の下から微かに聞こえる風の音
それが徐々に大きくなっていくのを感じた

ベルトルトは怖い、という漠然とした思いをその一瞬だけ我慢し、その身を崖に投げ出した

重力に逆らえずまっさかさまに落ちる自分の身体
意識が飛びそうになった・・・その寸前、微かに聞こえてきた風の音

『・・・あら、本当にとびおりちゃった・・・仕方がないわ、貴方に力を貸しましょう』

その風の音にまじって聞こえるささやきと共に・・・ベルトルトの身体はふわりと風を受けて上空へ舞い上がり、やがて元いた崖の上にそっとおろされた

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