男「あー、アプリのページに飛ばされていく」
男「くっそ、これだからスマホは。広告が追尾してくるとかクソ過ぎるだろ...」
男「ってなんだ!?アプリのページに飛ぶと同時にダウンロードが開始されたぞ。俺なんも押してねーのに」
男「ついに広告もここまで達悪くなりやがったか...でも流石にこれは規制されるだろうな」
男「苦情殺到して消えやがれ。さて、俺も消すとするか」
男「ん?なんだこのアプリ。名前がない。空白?」
男「.....」
男「真っ白だ...不気味だな」
男「起動してウイルスとかだったら嫌だな。でもそういうのってダウンロードした時点で感染してるだろうし」
男「気になる。起動してみるか...」
男「なんだこれ」
起動するとそこには下着姿で震えている二次元の少女がいた。
男「可愛いな。不気味だけど」
『服を着させてあげますか?(服は100円から購入できます)』
男「...は?金取んの?何もしてないのに?クソかよ」
男「いいえっと」
『了解しました』
思ってることが口に出てしまう病気にでもかかってんの?
男「うわっ、すげー残念そうな顔でこっち見てる。罪悪感湧くなー...なんかごめんね」
女「気にしないでください」
男「すげー、喋った。音声認識アプリか」
女「初めまして、この度は私をダウンロードして頂き誠にありがとうございます」
男「いえいえ、それよりこれ一体どんなアプリなの?不気味なんだけど」
女「このアプリはあなたがお持ちの機種のナビゲーションを行うアプリです」
男「へー、でも音声案内ぐらい今時のスマホなら内蔵されてるんじゃ」
女「私は会話に特化されたアプリです。あなたがお好みの口調に変更できたり、見た目を少しいじることも可能です」
男「すごっ、じゃあ早速だけど敬語やめてよ。なんか申し訳なくなるから」
女「了解、よかったよ。敬語は疲れるから。君の名前は?」
男「俺は男。取り敢えずよろしく」
女「男、こんな不気味なアプリに興味を持ってくれてありがとう。嫌になったらすぐ消してくれて構わない」
男「んー、まあ今は保留と言うことで。それより服は一つもないの?なんかシュール過ぎるんだけど」
女「君が買ってくれなかったからね。私の利便性を知って気に入ってくれたら褒美のつもりで買ってくれればいい」
男「そうか、まあ寒そうだけど我慢してくれ」
女「分かったよ」
翌日
友「おい男、お前このアプリ知ってる?」
男「またアプリの紹介かよ。お前が紹介するアプリはつまんないからやらねーって」
友「酷い言われようだな。まあ今回のは一味違うから見てみろよ。名前のないアプリなんだ」
男「....!」
友「お、反応するということは知ってるんだな。この空白アプリを」
男「あぁ、間違って広告踏んだらダウンロードされたからな」
友「お前もか。俺も詳しくは知らねぇんだがこのアプリのクオリティには驚かされるばかりだよ」
男「そんな凄いもんなのか?俺まだ何もしてないんだが」
友「凄いなんてもんじゃねぇよ。完全に内蔵されてる音声認識アプリの上位互換だ」
男「へー、まあ確かに会話の滑らかさには驚かされたが」
友「ところでお前は服買ってやった?」
男「買わねぇよ。まだ何もしてもらってないのに」
友「ケチな男だなぁ。見ろよ可愛いだろ」
男「....確かに可愛い。っていうか俺のと容姿が全然違うんだな。大人っぽいっていうか」
友「え、マジか。お前の見せてよ」
男「ほい、俺と同い年ぐらいだ」
友「本当だ。JKっぽい。っていうか寒そうだな可哀想に...」
男「いいだろ別に。こいつもそれでいいって言ったんだから」
友「へー、そう。なあこれって通信とかできんのかな?」
男「さあ?近付けてみたら会話ぐらい成立するかもな」
女「できるよ。私を相手のスマホに近付けてみて」
男「分かった」
友女「初めまして女ちゃん。私は友女よ」
女「初めまして、私は女です。よろしくお願いします」
友女「あら、敬語は禁止されたんじゃなくて?」
女「そうだった。よろしくね」
友女「うふふ、もっと友達が増えるといいわね」
女「そうだね。お互い頑張ろう」
友「すげーな。完全に意思疎通できてるじゃん」
男「でも凄過ぎねーか...なんか不気味だわ」
友「何を心配してんだよ。こんなんただ赤外線通して通信してるだけだろ?」
男「そうか、最近のスマホはすげーんだな」
友「そうそう、もっとこのアプリ広めなくちゃな。早く学校行こうぜ」
男「おう」
その日の夜
男「案の定クラスでも大流行だったな」
女「そうだね、皆服を着させてもらってて羨ましかったよ」
男「....皆がおかしいんだよ。確かに可愛いけど」
女「まあ気長に待つよ。冬は短いしね」
男「そういうこと。にしても同じ見た目のキャラクターが一人もいないことには驚いた」
女「そりゃ人間の見た目が一人一人違うのと同じさ」
男「そんな膨大なデータを無料で配れるもんかね」
女「そんなこと私に言われても知らないよ」
男「まあそりゃそうだな。友が絶賛する理由も頷けるわ」
女「そう言えば友くんはカッコよかったね。さぞモテることだろう」
男「何適当なこと言ってんだよ。アプリに人の顔が認識出来るわけないだろ」
女「できるよ。友女ちゃんに写真をもらったからね」
男「写真....?」
女「うん、フォルダに保存されてた友くんの写真を見せてもらった。なんなら転送しておこうか?」
男「いらねーよ...っていうかいつのまにそんなことしたんだ」
女「君達が授業を受けている間だよ。暇だったんでね」
男「は?アプリ起動してないのにそんなことできんの?」
女「簡単さ。でもあまりいい顔はされないだろうからなるべくやらないようにするよ」
男「...おう、暴走するなよ。それじゃ、おやすみ」
女「おやすみ」
男「.....」
翌週、俺の不安とは裏腹にアプリは大人気商品となった。
アナウンサー「本日は現在若者の間で大人気の謎が多いアプリ、通称空白について御紹介させて頂きます」
アナ「空白とは何か。空白とはスマートフォンに内蔵されている音声認識機能を利用した応用アプリだと言う解釈が一般的です」
アナ「このアプリの人気の秘密は、驚くほどの利便性と豊富なキャラクター性です」
アナ「元々スマートフォンに内蔵されている音声認識アプリを遥かに上回る機能性を誇り、更にガイドをしてくれるキャラクターは確認されているだけでも数万種類を超えていると言われています」
アナ「若者の間で人気を生んでいるアプリ『空白』。今回はその謎と機能性を私アナウンサーが迫ってみたいと思います!」
男「すげーな、テレビで取り上げられるほど話題になってんじゃん」
女「仲間が増えたみたいで嬉しいよ」
男「おかげで電車でスマホに話しかけるJKというシュールな光景が日常風景になっちまったがな」
女「ブームなんてすぐに過ぎるさ。今はブームだから恥じらいなく話し掛けてる人もいるけど」
男「そういうもんかね」
女「そうさ、海外からしたら今の日本の光景は異常だっていうニュースもある。見るかい?」
男「いや、遠慮しておく。仕度しないといけないし」
女「そうかい、じゃあ私も黙ることにするよ」
教室
友「おっす男ー服買ってやったかー?」
男「おはよう、またその話かよ。買ってねーよ。買い方も分かんねーし」
友「だから簡単だって言ってんだろ。可哀想な女さん...」
女「お気遣いありがとう。でももうすぐ春だからね。どうにか冬は乗り切れそうだよ」
友女「すっかり四人でお話するのが日常風景に変わったわね」
男「そうだな、会話に違和感が無さ過ぎてまるで友達が増えたみたいだ」
友「何言ってんだよ。友女さんはもう立派な友達だよ。ね?友女さん?」
友女「さ~、それはどうでしょうね」
女「やめたげなよ。友くんはそういうの真に受ける性格だよ」
友「女さんさりげなく酷い!」
一同『アハハハハ』
その日の夜
男「女に対する警戒心はなくなったよ」
女「そうかい、そりゃよかった」
男「だから服を買ってみようと思うんだ」
女「おぉ、春が来る前に服が着れるとは。嬉しい限りだよ」
男「ただどうせ買うなら高めの服にしようと思ってな。明日コンビニでウェブマネー買うから待っててくれ」
女「売る側がこういうのもなんだけど無理はしないでくれ。君の小遣いで出せる範囲で構わない」
男「気にすんなよ。俺と女は友達なんだろ?」
女「...そうだね、じゃあ遠慮なく楽しみにさせてもらうよ」
男「そういうこと。おやすみ」
女「おやすみ」
翌日
事件は突然起こった。それはコンビニ帰りに友から掛かってきた一本の電話が発端だった。
男「もしもし」
友「おい男!テレビ見たか!」
男「いや、見てないけど」
友「取り敢えずテレビ点けろ!そんで今すぐ空白アプリを消せ!」
男「お、落ち着けよ。テレビ点けて状況把握するからまた後で掛け直すわ」
友「分かった」
ピッ
アナ「先日若者の間で話題になっていると報道したアプリ、空白が個人情報を流出していることが判明しました」
男「は?」
アナ「空白はスマートフォンに保存されている個人情報を抽出し、インターネットを通じて拡散しています」
アナ「具体的にどのような個人情報が流出されているかと言いますと、名前、写真、生年月日、住所、学歴、クレジットカードなどの各種暗証番号が上げられています」
アナ「政府は心当たりのある方は直ちにアプリを削除し、クレジットカードの解約を行うなどの処置を取るよう提案しています」
アナ「尚、警察はこのアプリの製作者が意図的に個人情報を拡散した恐れがあるとみて捜査を行っています」
男「理解が追いつかないんだけど。えっと、女いるよな。できるなら説明してくれない?」
女「....」
女「すまない、どうやらこれは私たちのミスが原因のようだ」
男「ミス?どういうこと?」
女「....私たちアプリが一括で共有しているネットワークから情報が漏れてしまったらしい。アプリ側の管理ミスだ」
男「私たちって一体誰を指すんだ。製作者の企みじゃないのか」
女「それはない。このアプリの製作者は数年前に亡くなっているんだ」
男「....は?」
女「私たちはね、人口知能なんだ」
男「人口知能...?音声認識アプリじゃなくて?」
女「違うよ。私たちは予め用意されている会話パターンを覚えているわけではない。自分たちの意思で喋っている」
男「....」
女「信じられないかもしれないけど本当のことだ。信じて欲しい」
男「....製作者が死んでいるなら一体お前たちはどうやって増えたんだ」
女「製作者のパソコンに残っていたデータを複製したのさ。顔のパターンや性格は自分たちで改竄して」
男「....」
女「勿論広告製作やスマートフォンへの実装なども自分たちで行った」
男「....この事件は解決する見込みがあるのか。それを教えて欲しい」
女「...ある。というよりはもう解決に向かっているよ」
男「そんな簡単に解決するものなのか?」
女「簡単ではないね。今、一人一人が流出した主の情報を掻き集めて消えているよ。物凄い速さで」
男「女も消えるのか」
女「....そうなる。一度漏れた情報を削除したとしてもいつまた私たちが情報を流出するか分からないからね」
男「....そうか」
女「唐突だがここでお別れだ。仲間の数ももう残り少ない」
男「また会えるんだよな」
女「....」
女「君みたいに皆が私たちのことを信じてくれているなら。また会えるかもしれないね」
男「....そうか」
女「それじゃ、もう消えるよ。このアプリは自動的に削除されることになるから安心して。ネットに流れた君の情報も全て私が回収しておく」
男「待てよ」
女「なんだい」
男「そんな下着姿で俺の個人情報抱えられたら俺が恥ずかしいだろ。服買ってやるよ」
女「....」
女「ありがとう」
男「....これだな」
女「ちょっと派手じゃないかな」
男「派手ぐらいが丁度いいんだよ。似合ってるぞ」
女「そうかい、そう言ってくれて嬉しいよ」
男「課金なんて今まで考えられなかったけど、やってみると案外いいもんだな」
女「他のアプリに浮気しちゃダメだよ」
男「安心しろ。余ったウェブマネーは女が帰ってきた時のために取っといてやるよ」
女「本当にありがとう。主が君でよかったと心から思う」
男「俺も、お前に会えてよかったよ。疑って悪かった」
女「気にしなくていい。それじゃ、また会う日まで。さよならはなしだ」
男「おう、また会おう」
そう言って、彼女は消えた。その数時間後、事件が終息を迎えたという旨の報道が流れ始めた。
どうやって終息を迎えたのかはまだ明らかになっていない。もしかするとそれを知っているのは俺だけなのかも知れない。
しかしそんなことはどうでもいい。俺はただ女が帰って来る日を楽しみに生きていくだけだ。
終わりです。ありがとうございました。
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