カレン「なぜ」スザク「誰も」ユフィ「助けに」ルル「来ないッ!」(262)

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■神根島にて ─────

ハドロン砲の一撃でスザクやゼロを消し飛ばしたシュナイゼル!
だが、ユフィまで巻き添えになったことを、後から知った(?)彼は……


 シュナイゼル「……ユフィもいたのかい?」

 ロイド「あー……そうです、殿下……」

 カノン「……」

 セシル(殿下、苦悩されてるみたいだわ……)
     (……やはり、ユーフェミア様の事は殿下にも想定外だっt)

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 シュナイゼル「そうか、しようがないね……」フゥ

 一同(えっ、それだけ!?)

 シュナイゼル「遺跡は後回しにして、すぐコーネリアに報告に行こう」
       「ユフィはその身を挺して、にっくきゼロを討ち果たした、とね」ニッコリ


というわけで、シュナイゼルの指揮の下、ブリタニア軍は魔神コーネリアの怒りを
鎮めるべく、早々と撤収をしてしまったのであった!

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騎士団の方はといえば、潜水艦内での会議中にC.C.が「ゼロは生きている」と主張を
したものの、彼女のワガママぶりにちょっとムカついていたメンバーはその言葉を
ガン無視、ゼロに恋い焦がれ暴れるディートハルト共々船室に閉じ込め、潜水艦は
何のためらいもなく、トウキョウ租界へと舵を切ったのだった!

そうとも知らず、神根島で顔を合わせたゼロ&ユフィとスザク&カレンは、互いに
人質(?)をとって付かず離れずいがみあっていたのだが、丸2日が経過したにも
関わらず救援の来ない状況に、これは無駄な対立ではないかという気配が漂って
きたのであった……

一体、いつ救援が来るのだろうか……
めいめいが、そう思いながらの、3日目の朝……

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 ゼロ「……枢木スザク、提案がある」

 スザク「……なんだ、ゼロ?」

 ゼロ「とりあえず、互いに人質をとっている状況は解消しないか?」

 スザク「……」

 ゼロ「ブリタニアか騎士団か、どちらにしても救援に来る気配がない」
    「この状況で、人質で牽制し合うのは双方ともに得策とは思えなくなった」

 スザク「ああ……僕もそう感じていたところだよ」

.
 ゼロ「場合によっては長期戦になるかもしれない」
    「まずは、救援が来るまで我々全員が生き残ることを優先しないか?」

 スザク「……いいだろう、じゃあ同時に解放だ」

 ゼロ「よかろう」
    (ユフィ、済まなかったな……)ボソボソ

 ユフィ(あら、私は人質のままでも良かったのに……)ボソボソ
     (おいしい果物の木も見つけたし、ルルーシュと一緒だし)ニコッ

 ゼロ(バカッ、俺を怖がっていないとダメだろう!)ボソボソ
    (君は、嫌々ながら俺に捕まっている設定なんだぞ!)

.
 スザク(……カレン、もう一度だけ忠告する)ボソボソ
     (ゼロは信用してはいけない、彼は……)

 カレン(まだそんなこと言ってんの、うっさいわね……)ボソボソ
     (そんなのは帰るメドが立ってから言ってくれる?)

 スザク(ユフィが行方不明なんだ、すぐブリタニアの救援は来る)ボソボソ
     (いいか、その時までに考え直したなら、僕に言っぐふぇ!)


カレンがスザクの横腹に食らわした肘鉄を合図に、双方とも人質を解放した。
ユフィもカレンも、それぞれの味方(?)の男たちに駆け寄る。
スザクは、強烈な打撃のためにうずくまりせき込みながらも、ユフィに微笑みかけた。

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 ユフィ「スザクー!大丈夫ですか?」トテトテトテ-

 スザク「ごほごほ!……だっ、大丈夫です……」
     「ユーフェミア様こそ、奴に何か危害を加えられたりしませんでしたか?」

 ユフィ「いえ、彼は常に紳士でしたわ」ニコッ
     「何もありませんでした、安心してください」

 スザク「そ、そうですか……」ホッ


スザクから逃れたカレンも、ゼロに向かって走り出す。
忠実な愛犬が尻尾を振りながら駆け寄ってくるような様に、ゼロも思わず喜びの声で
彼女に応えた。

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 カレン「ゼロ!ゼローっ!」タタタタ!!

 ゼロ「カレン!無事だったか!」

 カレン「はい!……あ、えっと……無事じゃありません!」
     「わたし、水浴びしてたら、あいつに襲われて……///」カアアッ…!!

 ゼロ「なッ、何イッ!?襲われただとオッ!?」

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家に戻ってきた愛犬の腹が、なぜか大きく膨れていたかのような衝撃の告白!
スザクは、ゼロのただならぬ叫び声に、即座に立ち上がり慌てて反論をする。


 スザク「ばッ、カ、カレン!それは違う!」

 カレン「違わないでしょ!」
     「あんた、裸のわたしを力づくで押し倒したじゃないかっ!」

 ユフィ「えっ?うそ……!」サアーッ

 スザク「いや、それは君を逮捕するための行為だ!」
     「誤解されるようなことを言わないでくれ!」

.
 カレン「ゼロぉ……」ダキッ!!
     「わたし、汚されちゃったんです……」グスングスン

 ゼロ「け……汚された、だとォ……!?」クラクラ

 スザク「待て!カレン、何だその反応は!」
     「僕はただ、君の胸を見ただけじゃないか!」

 ゼロ「胸ッ!?」キッ!!
    「き……貴様ッ、騎士団のエースパイロットの胸を……!」

 ユフィ「えええ……?」ドンビキー

.
 スザク「いや、そういう意味じゃないんだ!不可抗力だ!」
     「見ざるを得ない状況だったというか、見ずに捕まえようと思ったら、」
     「首を180度後方へ捻りながら全速力で彼女に飛びかかるしかなかった!」

 カレン「そうすれば良かったでしょ!」

 スザク「そんなのできるか!」

.
しがみついてくるカレンの頭をなでていたゼロは、スザクの顔を真正面から
見据えながら、低い声でつぶやく。


 ゼロ「枢木スザク……貴様がそんな卑劣な男だったとは……」
    「女性を力づくで従わせようなどと……ッ!」

 スザク「ちっ、違うんだ……!とんでもない誤解だ!」
     「ユ……ユーフェミア様、信じてください!僕はそんな下品な事は……」ス-ッ

 ユフィ「……」ペシッ

.
スザクがユフィへ向けて伸ばした手を、ユフィは反射的に払いのけた。
瞬間、場の空気が凍りつく。


 スザク「え?」

 ゼロ「あ」

 カレン「うわ」

 ユフィ「……あら?」
     「スザク、わたくしはあなたを信じております」ニコッ

 カレン「いや、今のはどう見ても生理的に撥ね付けた感じだったけど?」

.
 スザク「ユ……ユフィ……!」ジワー

 ゼロ「己の劣情に負けた男の、当然の報いだ……」
    「ユーフェミア、今のうちにこいつから騎士候の位をはく奪しては?」

 ユフィ「そうですね……考慮すべき問題かもしれませんわね」ンムー


あごに指を当て、考えこむフリをするユフィ。
孤立無援となったスザクは、思わずその場にしゃがみこむのだった……


 スザク「うう……ユフィイイイイィィィィー!」ブワッ!!

.
|⌒ ミ   以降、ゆるゆると進行いたします。
|ω・`)  最後までゆるゆると御付き合い下さい……

期待

俺得。期待。

きたい

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

救援が来るまでは、この4名で自助努力をしなければならない。
彼らは、まずは雨風をしのぐことのできる場所を探した。
ほどなく、大きな洞窟の入り口を見つける……


 ゼロ「ふむ……奥はけっこう深そうだな」

 スザク「誰か、明かりを持ってないか?」

 カレン「誰も持ってないんじゃない?」

 ユフィ「私も、あいにくと……」

.
試みに、暗闇の奥へ石を投げてみる。
その反響音から、かなり大きな洞穴らしいことがわかった。


 ユフィ「何か、クマとかいたりしないわよね……?」ブルッ

 スザク「大丈夫、動物の匂いは感じないよ」クンクン

 ゼロ「入口に足跡が見当たらない、それに糞も落ちていない」
    「動物の住処にはなっていないようだ」

 カレン「でも……ちょっと不気味ですね……」

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 ゼロ「明かりがあればな……」
    「これだけ大きいなら、中でたき火をしても問題なさそうだ」
    「カレン、薪になりそうな枝を集めてくれないか」

 カレン「はい!」

 スザク「僕も手伝うよ、手分けして集めよう」

 カレン「……わたしに近寄らないでくれる?」キッ

 スザク「じゃあ、君とは反対側へ行くよ……」

.
二人とも、再び森の中へと消えていった。
後に残ったゼロとユフィは、顔を見合わせる。


 ユフィ「……また、二人きりになりましたね」ニコッ

 ゼロ「いつ彼らが戻ってくるか知れない、親しげな態度は控えてくれ」コホン

 ユフィ「はい、わかりました」ニコニコ

 ゼロ(……)タメイキ

.
ゼロはおもむろに、背後の暗闇の中に目を向けた。

先ほどは気づいていなかったが、自然にできた洞窟にしては地面が荒れていない。
人の手がかかったような、平らな地面が奥まで続いているようだった。
たき火をすればはっきりするだろうが……


 ゼロ「……かつてはここに、人がいたのかもな」

 ユフィ「えっ?」

 ゼロ「ここは、人工的な場所の気配を感じる」
    「松明が手に入ったら、この奥を確認してみよう」

 ユフィ「……そうですね……」

.
しばらくの後、スザクとカレンは焚き木を大量に持って帰ってきた。
ゼロの指示で、スザクが火起こしをする。ほどなくして、焚き木に火がともった。

洞窟の入口近辺でたき火をしても、その明かりは奥の闇の中に吸い込まれる。
やはり、松明を持って入ってみないとわからないようだった。


 ゼロ「枢木スザク、奥まで確認しておこう」カツカツ

 スザク「いいよ、君たちはここで待っててくれ」カツカツ

 ユフィ&カレン「……」

.
……入口から、おおよそ100mほどは歩いただろうか。
彼らは何やら、祭壇のような場所に行き当たった。

地面よりも一段高く作られた祭壇の突き当りには、巨大な壁が……
何かの模様が全面に彫り込まれた、高さ10m近くはあろうかという扉を模した
石の壁に突き当たった。


 ゼロ「ふむ……やはりかつては人がいたのだな」

 スザク「何だろう、これ……扉にしては大きいな」
     「これだけ大きいと……人力、では、無理……だな」ギュウ、ギュウッ

.
 ゼロ「上の方を見てみろ、壊れて、扉の裏はすぐ壁になっているのがわかる」
    「デザインとしての扉の意味しかないようだな」

 スザク「デザイン、か……」


スザクは当然のことながらわからなかったが、ゼロは先ほどから気付いていた。
この扉に彫り込まれた象形が、ギアスの紋章に似ていることに……


 ゼロ(これは……偶然、か?)
    (いや、シュナイゼル達がこの島群を目指した理由が他にあるか?)

 スザク「でも不思議だな、どうしてこんな無駄なものを作ったんだろう?」ペシペシ

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 ゼロ(式根島や神根島は、表敬訪問の場所としては異様だ……)
    (その理由までは考えていなかったが、思えば妙な……)

 スザク「……これ、剥がしたら何か出てくるかな……」ガシガシ

 ゼロ(スザクはその目的を知っていたのか?ちょっと聞いてみるか……)
    「……おい、くるりゅぎイッ!?」

 スザク「ゼロ、君も手伝ってくれないか?」ガッシガッシガッシガッシ

 ゼロ「きッ、貴様、なぜ遺跡を壊すんだ!?」

 スザク「何もないなら、こんなことはしないだろうと思ってさ」ガシガシガシ
     「秘密の宝が隠されてたりしないかな?」ガシガシガシガシガシガシ

.
そこらへんに転がっていた大きな岩を抱え、全力で扉をたたき壊しているスザクの姿に、
ゼロは「そういえば、こいつはこういう奴だったよな」と、幼い日に感じた眩暈をいま再び
感じたりしたのだった。


 スザク「ふふっ、このワクワクする感じ……」ガシガシガシガシガシガシ
     「何だか子供の頃を思い出すよ」ガシガシガシガシガシガシ

 ゼロ「……奇遇だな、私もそれを思い出していた所だよ」…ハァ


洞窟の入り口からは、「ゼロ!大丈夫ですか!」というカレンの叫びが届く。
それはそうだろう、洞窟の奥から、いきなりものすごい勢いで掘削する音が鳴り響き
始めたら、誰だってそう思う。

.
 ゼロ「……気にするな!枢木スザクが穴を掘っているだけだ!」


という、暗闇からのゼロの返事。
カレンは思わずユフィと顔を見合わせた。


 カレン「……穴?」

 ユフィ「と、言いましたね……?」

 カレン「なんで穴を掘ってんだろ……」

.
……"人力掘削機"枢木スザクの猛攻により、扉はボロボロに砕けてしまった。
しかし、やはり扉の向こうはただの壁であった。


 スザク「この壁の向こうには……」ガンガン

 ゼロ「……無駄なことはやめておけ、枢木スザク」

 スザク「どうして無駄だと言えるんだ?」

 ゼロ「壁を叩いた音に違いがないだろう」
    「壁の向こうに空洞はないようだ」

.
 スザク「そうか……じゃあ、あきらめるよ」ポイ…ゴロン

 ゼロ(どれだけ重要な遺跡だったかはわからないが……)
    (今となっては、それを調べる術もないな)
    (後でシュナイゼルが知れば、卒倒するかも知れんな……)


彼らは、粉々に砕け散った遺跡の残骸を後にして洞窟の入り口へと戻る。
とりあえず、行き止まりの洞窟であることがわかれば十分だった。
あとは、食料を絶やさぬよう気を付けつつ、救援が来るその時を……

.
■エリア11 総督府 ─────

 シュナイゼル「コーネリア……入るよ?」コンコン…ギイッ
       「気分はどうかな?まだ臥せっているのかい……?」

 コーネリア「………………」ボー

 ギルフォード「姫様……」ウルウル

 ダールトン「……」フルフル

.
シュナイゼルからユフィの死を聞かされて以降、コーネリアはずっとこのように、
自室のベッドの中で呆然とした状態にあった。
2名の専任騎士も、これまで経験したことのない彼女の精神状態に、どう接すれば
いいのか皆目見当もつかないのだった……

シュナイゼル達が戻ってきた当初、彼の言葉を兄上一流の悪い冗談だとしか思って
いなかった彼女だが、他の者たちからもそれが事実であることを聞かされると、
その顔から血の気がすうっと引いた。

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 コーネリア「……本当、なのか……?」サア…ッ

 バトレー「は……!」

 セシル「…………」ゴクリ

 シュナイゼル「ハドロン砲の射程から逃れようとしたゼロに、彼女はしがみついた」
       「ユフィは、とても勇敢だったよ、さすがは君の妹だと思った」

 コーネリア「……ユフィが?………………バカな……」

.
 カノン(まあ、そう思うわよね……そんなお人じゃなかったし……)
     (でも、殿下にかかれば……)

 シュナイゼル「……コーネリア、君の気持ちはよくわかる」
       「クロヴィスがいなくなり、そして今度は、ユフィだ……」ジッ…

 コーネリア「あ、兄上……」

 シュナイゼル「……しかし、わかるね、コーネリア?」
       「彼女の献身により、騎士団はゼロを失った……」
       「歴代の皇族でも、これほどの偉業を成し遂げた者はそうそういない」

 コーネリア「…………し…………しかし、ユフィは!」

.
 カノン(まあ、そう思うわよね……そんなお人じゃなかったし……)
     (でも、殿下にかかれば……)

 シュナイゼル「……コーネリア、君の気持ちはよくわかる」
       「クロヴィスがいなくなり、そして今度は、ユフィだ……」ジッ…

 コーネリア「あ、兄上……」

 シュナイゼル「……しかし、わかるね、コーネリア?」
       「彼女の献身により、騎士団はゼロを失った……」
       「歴代の皇族でも、これほどの偉業を成し遂げた者はそうそういない」

 コーネリア「…………し…………しかし、ユフィは!」

.
 シュナイゼル「もし、君が……彼女を代理に立てず……」
       「君自身が、あの島に来てたとしようか……」

 コーネリア「……えっ…………私自身、が……?」

 シュナイゼル「うん、君自身が、だよ……」コクリ
       「同じ状況にあれば、やはりユフィと同じ行動をしていた……」
       「……そうだよね?」ジー

 コーネリア「…………」…グッ

 シュナイゼル「ユフィにも、間違いなくブリタニア皇族の血が流れていた証だ……」
       「……誇りに思っていいんだよ、コーネリア?」ニコッ

.
 コーネリア「…………わ、私が……」
       「……行って…………いれ、ば…………?」プル…

 ロイド(……殿下、たった一言で総督の責任を作っちゃたね)ボソボソ

 セシル(今は黙ってて下さい……)ボソボソ


シュナイゼルの、完全無垢なる微笑というダメ押し!
それが皇族の義務だという彼の無言の圧力に、コーネリアは全ての反論の
手立てを失ってしまった!
しばし、言葉もなく立ちすくんでいた彼女だったが……

.
 コーネリア「…………あ……」プルプル…

 シュナイゼル「うん?」

 コーネリア「……後で、また……」…フラリ

 シュナイゼル「突然の話で、驚いたようだね……」
       「君自身を責めてはいけないよ?少し休むといい」ニッコリ


~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 シュナイゼル「あれ以来、このままか……」
       「そろそろ私も、本国に戻らねばならないのだが……」フゥ…

.
 ギルフォード「……殿下、エリア11のことは、我々にお任せください……」ウルウル

 ダールトン「業務に支障をきたすことのないよう、手配はいたしております……」
        「後は、姫様が立ち直られさえすれば……」ウルウル

 シュナイゼル「そうだね……」
       「……コーネリア、私は本国へ戻るよ?」

 コーネリア「………………」ボー

 シュナイゼル「……何かあったら、いつでも連絡をしてほしい」ニコッ
       「では……」カツカツ

 ダールトン「イエス、ユアハイネス……」ウルウル

 ギルフォード「イエス……うっ……!」ウルウルウルウル

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■神根島 夕焼けの中 ─────

島に残された4名は、波打ち際の砂浜で、水平線に沈みゆく夕日をぼんやりと
眺めていた……

気候も穏やかな時期であり、住居も確保し、食料も問題ない(スザク&カレンは
海産物担当、ゼロ&ユフィは農産物担当)となると、後はいつ助けが来るか、と
いう問題だけ。
たらふく食って満腹になった彼らは、何をするでもなく、砂浜に座りこんでいた。


 スザク「……南の島で過ごすバカンスって、こんな感じなのかな……」ボー

 ゼロ「……かもしれないな……」ボー

.
 ユフィ「南の島より、ここの方が過ごしやすいですね……」ボー

 カレン「……行ったことあるんだ、さすがお姫様……」ボー

 ユフィ「行っただけです、遊びではありませんでした……」

 スザク「……僕も行ってみたいな……」

 ゼロ「……私は、南の島よりも、トウキョウへ帰りたい……」

 カレン「……みんな、どうしてるんだろ……」

 ユフィ「私たちのこと、忘れちゃったのかしら……」

.
 スザク「そんなことはないよ……絶対……」

 ゼロ「…………」
    (確かに、スザクの言う通り俺達を忘れたということは絶対にない、)
    (だが助けに来ないならばそれは、それが都合のよいことだから、)
    (という意味にもなる……)

    (俺やカレン、スザクはともかく、ユフィまで助けに来ないというこの状況、)
    (一体どういう前提条件なら成り立つんだ?)
    (たとえ死んだと思ったとしても、遺体の捜索くらいはするはずだ……!)

.
 カレン「……ふわああぁぁぁぁ……」セノビー
     「退屈すぎて、死んじゃいそうだわ……」

 スザク「人は、退屈では死なないよ……」

 カレン「モノの喩えよ……ほんっと、頭ガッチガチね、あんたって……」

 ユフィ「お二人とも、ケンカはやめましょうよ……」

 ゼロ「ユフィの言う通りだ……無駄なことはやめt」

 スザク「なんだって?」ピク
     「……ゼロ、君は今なんて言った?」

.
 ゼロ「ユ─……フェミアの言う通りだ、と言ったが?」


気の緩みからか、ユフィを思わず愛称で呼んでしまったゼロ……
スザクの鋭い反応に気付き、やや慌てて言いつくろう。


 スザク「君は今、皇女殿下を、愛称で呼び捨てにしたな?」

 ゼロ「……したかな?」

 スザク「したよ、聞き間違いじゃない」
     「君は呼び捨てた、ごく自然に、さりげなく」

.
 ゼロ「ふむ……」

 スザク「ふむじゃない、しかも言いなれた感じだった」

 ゼロ「そうかな?」
    「言ったとすれば、初めてのはずなのだが……」


こういう所で意外な鋭さを発揮するのがスザクだった。
思わぬ所でボロが出てしまった形のゼロは、劣勢を挽回するための秘策を、
なんとかひねり出そうと四苦八苦するが……

.
 スザク「僕はごまかせない」
     「テロリストが皇族の方を愛称で呼び捨てにするなんて……!」

 ゼロ「……それを言うなら、君も彼女をユフィと呼んでいるではないか」
    「それも不敬にあたるのではないか?」

 スザク「僕は、ユフィから許されてるからいいんだ!」
     「愛称で呼びたいなら、君も彼女から許しを得るべきだ」

 ユフィ「スザク、私は別にこだわりませんから……」アセアセ

 スザク「いけません!」
     「……こういう時こそ、ちゃんとけじめを!」

.
 ゼロ「そのような積もりはないし、たまたまだ」
    「それに肝心の彼女自身がそう言っているではないか、」
    「1回の過ちすら、許す気にはなれないのか?」

 スザク「いいや、許せないッ!」
     「間違った方法で呼ぶ愛称など、本当の愛称ではないからッ!」
     「さあ、ユフィと僕に対し、今すぐ土下座をするんだッ!」

 ゼロ「土下座だと!?……フン、バカバカしい……ッ!」
    「私は別に、ユフィを愛称で呼びたかったわけでは……」

 スザク「また言った!今、また言ったね!」キッ!!

.
 ゼロ「今のはお前につられただけだッ!」
    「土下座の強要など正気ではないぞ!」

 スザク「いいや、それほどの過ちを君は犯したッ!」
     「君はそうやって、間違ったことを、何度も……!」ギリッ…!!

 ユフィ「スザク、ねえ、もう私は……」オロオロ

 カレン「…………ユフィも、気にしないって言ってるじゃん?」ニヤッ
     「あんた、皇女殿下の言う事が聞けないの?」

 ゼロ「ッ!?」

 スザク「カ、カレン!!??」ギョッ!!

.
さすが黒の騎士団零番隊隊長、ゼロのアシストを的確に繰り出した!
泡を食った表情のスザクをよそに、彼女はユフィに話しかける。


 カレン「ね、ユフィ?」
     「今はわたしも、そう呼んでいいよね?」

 スザク「カレン、君は!……君まで、間違っt」

 ユフィ「え、ええ……!」ニコッ
     「じゃあ、私もあなたを、カレン、と……お呼びしても……?」

 スザク「!?!?!?」

.
 カレン「いいよ、この島にいる間はね?」ニッ
     「あと、敬語もいらないから……普通でいこうよ?」

 ユフィ「はい!……この島にいる間は……!」ニコッ


互いに顔を見合わせ、微笑みあう二人……
カレンのおかげでスザクに己の正体を悟られる危険を回避できたゼロは、
その様子を見ながら、満足げに言う。


 ゼロ「ほう……契約成立のようだな?」

.
 スザク「…………そんな契約!……僕は!」ガバッ!!
     「僕は、絶対認めないッ!決して、絶対に……!」ギリッ…

 ユフィ「座ってください、スザク……!」
     「みんなで協力して、助けを待とうと話したじゃないですか……」オロオロ

 スザク「もちろんです!わかってます!」
     「でもそれとこれとは話が……!」

 ユフィ「仲良く協力し合うためなら、私の呼び方などどうでもよいことです」
     「スザク……さあ、落ち着いて……」ニコッ

 スザク「でっ、でも……ユ、ユフィ……は……」
     「……ユフィ、は…………!」…ボリボリ!!

.
 ゼロ(……なんだ?どうしたんだ?)
    (スザクが、こんなヒステリックな反応を示すとは……?)

 カレン「ど、どうしたのよ、あんた……?」

 ユフィ「スザク……?」


苛立ちが限界に達したのか、突如両手で頭をかきむしり始めるスザク。
彼の様子を不安げに見つめる3名の前で、彼はついに……


 スザク「…………"ユフィ"はッ!」…クワッ!!
     「オレが!……オレだけが呼んでいい名であってほしいんだあああァッ!!」

.
 ユフィ「ス、スザクっ!?///」

 ゼロ「なにッ!?」

 カレン「うえ!?」


バカンスムードの魔法がそうさせたのか……
スザクは、秘め続けてきた己の気持ちを爆発させてしまった!
喉を震わせ、"Cの世界"にまで届きそうな、でもちょっと恥ずかしい雄叫びを
あげた彼に、3名は硬直状態に陥った!

.
彼は、涙を流しつつ砂浜を駆け出す!
向かう先は、紅い夕日に染められた穏やかな海……


 スザク「うわあああああああぁッ!」
     「ユフィユフィユフィユフィユフィユフィイイイィィィ…………!」ズドドドドド…!!

 ゼロ「……なんと……」

 カレン「はあ……」

 ユフィ「……スザクったら……///」

.
微妙な空気の3名に見送られながら、ものすごい勢いでスザクは海に飛び込んだ。
激しく飛び散った水しぶきの後には、ゆったりとゆらぐ海面があるだけだった……


 ゼロ「……いきなりの告白、か……」

 ユフィ「そ、そうですね……///」

 カレン「あーびっくりしたー……」
     「……でも、ちょっと、カッコ良かったかも……」

 ゼロ「ほう?」

.
 カレン「ああいうこと、絶対に言わなそうじゃないですか、あいつ?」
     「それが……ね……」クスッ

 ゼロ「うむ……私も、多少驚いたな」
    「奴に対する認識を、変更する必要があるかもしれない」

 ユフィ「ふふっ、意外とかわいい所がありますよね♪」ニコニコ


スザクが戻ってこない中、今の彼の豹変ぶりを、面白そうに評する彼ら3名。
だが、しばらくの後……


 ユフィ「…………あれ?スザク……?」

.
 カレン「ん?どしたの?」

 ユフィ「……確か、あそこに……飛び込みましたよね……?」

 ゼロ「ああ、大胆に飛び込んだな」

 ユフィ「……あれから何分経ちました?」


……気づくと、彼が飛び込んでから3分以上は経過したはずだった。
あれから、彼が浮かび上る姿を見かけた覚えがない。
もしかしてスザクは、海に潜ったまま、あれから全然浮かんでこない……?

.
 カレン「……あれ、まさか……?」

 ゼロ「……潜りが得意ではないのか?」

 カレン「確かに得意っぽかったですけど……」
     「……ちょっと長いような……?」

 ユフィ「え……?」
     「……まさか、浮かんでこれない……?」サア…ッ

 ゼロ「……」
    「…………何か、あったのか……?」

.
ゼロの言葉で、顔を見合わせる3人。
ただならぬ気配を、彼らは察した……!


 カレン「……わたし、ちょっと行ってきます!」ガバッ

 ゼロ「急げ、カレン!」
    「もし万が一の場合でも、早ければ間に合うッ!」

 ユフィ「スザク……まさか、スザク……!」


スザクが消えた海面を目指し、疾風のように駆けるカレン!
何かの原因で浮かび上がれなくなったとしたら……もう息が続かない頃合いの
はずだ、早く助け出さないと命に関わる!

.
その時、海面に何かが浮かび上がった。
それは、映画などで見慣れた……しかし、このタイミングでは最悪とも言える
ものであった……!


 カレン「さっ、サメの背びれ!?」ギョッ!!

 ゼロ&ユフィ「!!!!!」


さほど大きくもなさそうなヒレだが、まさかサメが海岸の近くにまで寄ってきて
いたとは……これでは、彼を救いに飛び込むこと自体が危険極まる!
進退窮まった状況に、カレンも思わず躊躇した!
それどころか、もしかすると彼は、そのサメに……!

.
絶望的な状況に、言葉を失う3名……
だが次の瞬間!


 スザク「サメ捕まえたああああッ!」ザバアアアア!!

 カレン「ひいっ!?」ビクン


サメを両腕で持ちあげながら、スザクが勢いよく海面から飛び出した!
見れば、サメの両目はまるで拳を突っ込まれたかのようにえぐれており、
ひくひくと痙攣していた。
彼は海中でそのサメと格闘し、見事勝利したようだった!

.
満面の笑みのスザクは、そのままサメを抱え上げながらざぶざぶと海から
上がってくると、ユフィのところへ駆けてくる。


 スザク「ユフィ!……こいつがいたから、魚がここから逃げてたんだよ!」ドドドドド…
     「明日はもっといろんな魚を捕ってくるよ!」ニコニコ

 ユフィ「……スザク……無事だったんですね……!」ウルウル

 ゼロ「……枢木スザク……そのサメ、君が倒したのか……?」

 スザク「ああ、ちょっと手ごわかったけど、全力でなんとかなったよ!」
     「為せば成るもんだよね!」ニコッ

 カレン「……やっぱあんた、どっかおかしいわ……」ハァ…

.
■トウキョウ租界周辺ゲットー 騎士団アジト ─────

 C.C.「……さて、どうしたものかな」

 ディートハルト「ゼロ……うう、ゼロおぉぉ……」ウルウル


式根島から戻ってきた騎士団の面々は、C.C.とディートハルトをそのままアジトの
一室に監禁し、団内には「ゼロは極秘計画のためしばらく潜伏中」と伝達した。

監禁されている間、C.C.はディートハルトに、ゼロは確実に生きていることを教えた。
もちろん契約のことは伏せ、二人の間だけで使っている連絡方法がある、と
嘘をついてだが。

.
ディートハルトは、ゼロの消息を早くはっきりさせたいと言った。


 ディートハルト「でなければ、私は……抜け殻になってしまう……」ウルウル

 C.C.(こいつ、奴に惚れているのか……?)ジロ
    「……ともかく、ここから出ないことにはな」
    「あいつはきっと、式根島からさほど遠くない島にいるはずだ」

 ディートハルト「……なぜ、そこまで分かるのです?」

 C.C.「どうでもいいだろう、わかるんだからわかるんだ」

.
 ディートハルト「……今は、それを信じるしかありませんね」…フゥ
       「ここからどうやって出ますか?」

 C.C.「うん……それをずっと考えているんだが……」
    「……古典的だが、これしか手はないかな」…スック


C.C.はおもむろに立ち上がると、拘束衣の背中のファスナーを静かに降ろした。
はらりと開いた分厚い拘束衣の中から、彼女の華奢な双肩が露わになる……
彼女は、まるで蝶の羽化の如く、その半身を艶めかしくさらけ出した。


 ディートハルト「はアッ!?な、何をオッ!?」ガタッ
       「やめろ!わ、私はそういう趣味はないッ!」アタフタ!!

.
 C.C.「そういう趣味って、どういう趣味だ……」
    「私が叫ぶので、お前は扉の裏に隠れろ、」
    「監視が飛び込んで来たら椅子で殴れ」

 ディートハルト「あ、ああ……そういうことですか……あせりましたよ……」


彼が椅子を抱えて扉の裏側に隠れたのを確認したC.C.は、ひとつうなづくと
大きく息を吸い込んだ。そして……

.
 C.C.「…………キャアアアアアアアアアアアアアッ!」
    「イヤイヤ、いやああああああああ!やめてええええ!」
    「わたし初めてなの、ほんとにしたことないんだからあァァ!」
    「やめて離して、離せえ!助けて、誰か、誰かきてえええええええええ!」


ディートハルトに襲われている、という設定で、彼女はひとしきり大きな声で
叫び続ける。その、迫真の声に思わず、ディートハルトも息をのんだ!


 ディートハルト(な、なんと……さすがはゼロの情婦……!)ゴクリ
       (嘘と虚構のはざまで生きてきた私でも、この声はリアルに感じる!)
       (ここにもこんな逸材が眠っていたとは……騎士団、恐るべし……!)

.
……しかし、しばらく叫んでも誰も来る気配がない。
叫び疲れたC.C.が、ちょっと呼吸を整えていると、室内のどこからか声が響いた。


 藤堂『……素晴らしい演技だ、監視カメラを見てなければ騙されるところだ』

 C.C.「……見ていたのか」チッ
    「くそっ、私の柔肌をタダで見せることになるとは……」…ゴソゴソ、ジイッ

 ディートハルト「全て筒抜け、ですか」
       「ゼロが作ったアジトだ、当然そうですよね……」ハァ…

 藤堂『……C.C.、確信はあるのか?』
    『本当にゼロが生きているという確信が?』

.
 C.C.「聞いてたならわかってるだろう、」
    「私には、私だけが使える、奴との緊急時の連絡手段がある」

 藤堂『ふむ……』
    『シュナイゼル達も、あの島から撤収したようなので、』
    『いま捜索隊を準備させているところだ』

 C.C.「なら、そうだと早く教えろ……」
    「私がどういう気持ちで叫んだと思ってるんだ……」ブツブツ

 ディートハルト「いつ出発ですか?」
       「当然、我々も同行させてもらえますよね?」

 藤堂『来てもらおう……1時間後、そこから出す』

.
 C.C.(……完全にやり損じゃないか……)ブツブツ
    「……もし、今の録画があるなら、消しておけよ?」

 藤堂『ことわる、私のコレクションに加える』プチッ

 C.C.「なっ!?///」
    「おっ、おい藤堂!今なにを言った?藤堂、藤堂っ!!」

 ディートハルト(……後で私もダビングさせてもらおう)

.
■式根島 夜更け ─────

幸いにして、今夜も天候に問題はなさそうだった。

洞窟の前で焚火を起こした彼ら4人は、穏やかな夜の空気に包まれながら、
めいめいが互いの傍らに座る形で──ゼロはカレンの隣に、スザクはユフィの
隣に──柔らかく、静かに燃える焚火を見つめていた。

海岸の方から聞こえる潮騒の音を聞きながら、カレンは小さく微笑む。


 カレン「……ゼロ、まさかこの島に来て、こんな時間を過ごせるとは、」
     「思ってもみませんでしたね」

.
 ゼロ「ああ、しかも、ブリタニアの皇女殿下とその専任騎士までいる」
    「完全に想定外の、イレギュラーな時間だな」

 スザク「僕もさ、君たち騎士団といっしょに焚火を囲んでるなんて……」
     「今でも信じられない気分だ」

 ユフィ「……それに、話してみると、意外と共通の話題がありますしね?」クスッ

 スザク「……」クスッ

 ゼロ「……この先、我々の関係がどうなるかはさておき、」
    「互いの人格がどのようなものかを知り合うのは、そう悪いことでもない……」
    「これも、よい経験になるだろう」

.
 スザク「人格、か……」…フッ
     「……ゼロ、君と話していると、僕の知人が思い浮かぶよ」

 ゼロ「ほう?……私が、その知人に似ていると?」

 スザク「いや、似てるわけじゃない」
     「君と違い、彼は人に対する優しさを内に秘めた人間だ」
     「君とは、大違いさ」

 ゼロ「……ふむ」

 スザク「……だけど、彼も頑固なところがあってね、」
     「君と言い争う時、いつも彼の姿が思い浮かぶのさ」ニッ

.
 ゼロ「……それは、相当頑固なのだろうな」フン
    「ぜひ一度、お会いしてみたいものだ」

 スザク「いいよ、」
     「学園に戻ったら、彼にそう伝えておくよ」ニコッ


……あるいは、スザクはゼロの正体に関し、何かを薄々感じているのかもしれない。
しかしそれはまだ、漠然とした程度のようだった。

.
 ユフィ(ゼロの正体を知ったら、スザクはどう思うのかしら……)クスツ
     「はあ……この時間が、このまま続けばいいなぁ……」…ゴロン


ユフィは、わざとあけすけな口調でそう言いながら、その場に寝転がった。
スザクはあわてて上着を脱ぐ。


 スザク「ユフィ、だめだよ!髪が砂だらけになる!」
     「ほら、これを敷いて……」

 ユフィ「いいんです、森の滝に入って洗い流せばいいんですから」ニッコリ
     「スザク、後で髪を洗うのを手伝ってくれますか?」

.
 スザク「ぃい!?」
     「いやっ、それは、その……大変畏れ多いです……///」

 ユフィ「見なければいいんですよ?」
     「私の髪だけ見ていれば……ね?」

 スザク「……ソウ、デスカ……///」


先ほどの、砂浜でのダイナミックな告白のおかげだろうか、彼らはこれまでよりも、
より親密な空気の中にあるようだった。
そんな彼らの様子を見ていたカレンは……

.
 カレン「……ゼロ、その服、ずっと着ていたら暑くないですか?」

 ゼロ「想定済みだ、これは通気性に優れた素材で出来ている」
    「君こそ、そのパイロットスーツは確か防水性だったと……」

 カレン「はい、ちょっと暑いかな……」
     「少し開いておこうっと……」


そう言いながらカレンは、首元のファスナーをすいっと下ろす。
金具は音もなく、彼女の豊かな双丘の下あたりまで降りた。
カレンは、開いたスーツから熱気を逃がすかのように、胸のあたりをパタパタとあおぐ。

.
 カレン「ふう……やっぱりこの方が楽です」パタパタ

 ゼロ「そうか……」
    「今は君の部下の目もない、気楽にしておくといい……ッ!?」


傍らに座るカレンの方に向いた彼の視界に、開いたパイロットスーツから垣間見える
彼女の白い胸の膨らみが飛び込んできた!

一瞬、言葉に詰まった彼は、すぐさま焚火の方に向き直る。

.
 ゼロ(なッ……なんだ、今のは!)
    (何だか、下着をつけていなかったような……)

    (あれは、医学的表現をするならば、「にゅうぼう」……あるいは、)
    (リヴァル的表現をするならば、「なまちち」……が、見えていたのでは!?)

 カレン「ゼロ……わたしたち、もし租界に戻れたら、また戦いの日々ですね」
     「いま、こうして一緒に寛いでいる、彼らとも……」

 ゼロ「ああ、そうだな……それが我々の宿命だ……」

    (確か先ほど、少し開くと彼女は言ったはずだ……記憶違いか?)
    (いやそれはない、間違いなく、少し、だったはずだ!)
    (だが今のは、ほぼ全開に近い状況ではなかったか!?)

.
 ゼロ(あれは、そこまで開かないとベンチできないス-ツなのか?)
    (いや、それにしても俺に見られるというリスクを冒してまで……!?)

 カレン「いま、ユフィが言った言葉……わたしも、ちょっと同感です」

 ゼロ「このまま助けが来なければ良い、と?」

    (……どうする、注意すべきか、見えすぎだ胸元を閉じろ、と!?)
    (だが彼女がそういう意識もなくごく自然に開いたのなら、彼女を傷つけて)
    (しまいかねない!)

    (いや、その前に、俺がそんな所へ意識を集中させたと知れたなら……!)
    (ゼロの沽券にかかわるッ!スザクのような失態は冒せないッ!)

.
 カレン「そうじゃないんです、もちろん戻りたいって思ってます」
     「……でも、いま、しがらみを感じない、から……」

 ゼロ「しがらみ、か……」
    「……なるほど、君の言うこともわからないでもない」

    (しかし何と危険な爆弾を秘めているんだ、カレンは!)
    (あの弾けそうな胸は、視線を自然とひきつける魔力に満ち溢れているッ!)
    (俺ですら、この俺ですら抗い難い感情に押し流されそうになる!)

    (……ああッ、ダメだ、だめだだめだ!ナナリー、お前の癒しが今欲しいッッ!)
    (全身から情欲がにじみ出るこの愚兄に、慈愛に満ちた赦しの微笑を……!)
    (あるいはいっそ、過ちを犯す前に裁きの雷でこの身を貫いてくれ……!)

.
 カレン「えっ……わかってもらえますか?」
     「……ふふ、意外です……いつものゼロと、少し違う……」

 ゼロ「君こそ、いつもの紅月カレンとは少し違うようだな……」

    (くそッ、想定されるカレンの思考29パターンのうち、過ちに繋がりかねない)
    ("俺を好いている"という前提のルートは全て除外しておくッ!)
    (となると、残されたルートは6パターン……だがそのうち、どのルートが最も)
    (ベストなチョイスとなるんだ!?全く判断がつかないッ!)

    (おのれ……未経験の戦況に放り込まれた兵卒のような気分だッ!)

.
 カレン「わたし自身は、いつもどおりのつもりですよ?」
     「……わたしたち、この島の、魔法にかかっちゃったのかな……」

 ゼロ「魔法か……いつもなら、非科学的だと一笑に付すところだが……」
    「……この島にいると、それも実感できそうだ」

    (やむを得ん、若干不自然だが、正面を向いたまま会話を続行する!)
    (彼女の胸を不注意に凝視してしまうより遥かにマシな戦術だ!)
    (前だ、前を向け!決して横を向いてはならない……ッ!)


……カレンと、焚火を見たまま微動だにしないゼロの会話をよそに、
スザクとユフィも二人だけの世界へと突入しつつあった。

.
 ユフィ「……スザク、今から水浴びにいきます」スック
     「たいまつを持って、案内してください」

 スザク「えっ!今からかい!?」ガバッ
     「夜だし、危険だよ……!」

 ユフィ「でも、昼間だと、私が見えてしまうから手伝えないのでしょう?」
     「夜ならできますよね?」クスッ

 スザク「ま、まあ……夜なら、なんとか……///」

 ユフィ「それに、サメにも勝てるスザクがいるのです、」
     「私は何も怖くありません」ニッコリ

.
 スザク「ユフィ……///」

 ユフィ「さあ、スザク……」


優しく微笑むユフィに導かれるように、松明を手にした彼ら二人は、互いに手を携え
森の中へと入ってゆく。思わず声をかけそうになったゼロを、カレンは止めた。


 カレン「……だめです、ゼロ」ボソボソ

 ゼロ「なぜだ?」

 カレン「今だけなんですよ、あの二人も……」

 ゼロ「……ふむ……」

.
……焚火の前に残された、カレンとゼロ。
孤島の夜の空気の中、二人きりで並んで座っている、という状況が、二人の口を
自然と重くする。
しばらく黙していたカレンだったが、やがてその頭を、静かに、ゼロに寄せた。


 カレン「ゼロ……」…ピト

 ゼロ「……どうした?」

    (……まッ、まさか除外したルートか!?そうなのか!?)
    (ちょっと待て、それはマズい、心身共に戦闘態勢が整っていない!)

 カレン「……わたし、今だけ、わがままを言っていいですか……?」

.
 ゼロ「……内容にもよるが……?」
    「聞かせてもらおうか」

    (ぬぉお!?こッ、これは……回避不可能な王道ルートではないのか!?)
    (ま、まずい!マズすぎる、ここで情に流されカレンとできてしまっては……!)

    (俺も彼女もまだ学生の身分だ、万が一子供ができたらどうするというのだ!)
    (そうなればアッシュフォードにはいられなくなる、それどころか彼女も「これは)
    (ゼロの子です」なんて言えるわけがないッ!第一、父親が得体の知れない)
    (仮面の男とか、俺の幼少期以上に不幸な子供になるではないか!)

    (いかん、断じて避けねば!決定打が出る前に、彼女の気持ちを他の……)

.
 カレン「わたし……ゼロ、今だけでいいんです、」
     「わたしを……抱いて、ください……」

 ゼロ(どあッ!?)


もはや否定しようのない決定打!
瞬間、脳内の思考が全て弾け飛び、真っ白な虚無となってしまったゼロ……

……だが数秒後、飛び散った脳内ルートの残滓をかき集め、彼はかろうじて
反撃の戦術をひねり出す。

.
 ゼロ「……それは、本気か?」

 カレン「嘘でこんなこと言えません!」
     「……それに、ゼロにしか言えません……///」

 ゼロ「だが、私は決して仮面を脱がない……」
    「……いや、脱ぐことのできない男だ」
    「それでも……君は、いいのか?後悔するのではないか?」

 カレン「仮面なんて、関係ありません……!」
     「私は、ゼロという存在を……求めているんです……!」

.
 ゼロ「……よく聞いてくれ、」
    「私が言っているのは、その……いかなる時でも、脱げない、」
    「ということを言っているんだ、わかるか、カレン?」

 カレン「???」
     「はい、そうですよね?」

 ゼロ「……つまり、その……」
    「君は、仮面の男に、んー……だ、抱かれてもいいのか、と……」

 カレン「……」
     「………………」

.
 ゼロ「……カレン?」

 カレン「……ちょっと、意味が違ってるっぽい……」

 ゼロ「何だって?」

 カレン「あの、ゼロ……その……」
     「…………お父さんみたいに、肩を抱いてください……///」

 ゼロ「ぉとオ!?」

.
完全に想定外のルート……っ!
しかも、性的な意味、一切なし……っ!

ゼロは、先ほど自分が想定した全ルートが完璧に否定されたショックで、
その場にフリーズしてしまった!


 カレン「わたし、その……実の父親にかわいがってもらったことがなくて……」
     「甘えることも、許されない家だったんです……」

 ゼロ「……」

 カレン「ゼロを、尊敬してます……」
     「尊敬してるし、同時に父親のような頼もしさも感じてて……」

.
 ゼロ「…………」

 カレン「戻ったら、零番隊の隊長として必ずご期待にお応えします!」
     「でも、今……今だけでいいんです、わたしの……お父さんに・・・・・///」

 ゼロ「………………」


カレンの告白を聞きながらゼロは、安堵したような、しかし期待を裏切られたような、
でも期待通りだったらすごく困ってたような、というか自分きみと同い年のような、
もしかして声のせいでおっさんだと彼女に思われているのかというような……
そのような、複雑な心境に陥っていた。

.
やがて、ゼロはようやっと、反応を示す。
腕をゆっくりと、背中からカレンの肩に回し、優しく抱きよせた。


 カレン「……ゼロ……!」

 ゼロ「……今は、お父さん、と呼んでいい……」

 カレン「!!!……お、お父さん……!」ギューッ!!


自分の望み通りにゼロが振る舞ってくれたことで感極まった彼女は、
まるで子供が親に抱きつくかのごとく、彼の身体に全力で抱きついた!
彼女の期待を裏切らないよう、ゼロは言葉を慎重に選びながら語りかける。

.
 ゼロ「ははは……甘えん坊だなあ、カレンは」
    「騎士団でもみんなに甘えてるのか?うん?」

 カレン「違うもん……今だけだもん……///」ギュギュー

 ゼロ「わかってる、お父さんはわかってるさ」
    「カレンは、がんばり屋さんだものな……」

 カレン「……うん……///」ホワ-…

 ゼロ「つらい時は、いつでもお父さんに言うんだぞ?」
    「お父さんは、いつだってカレンの味方だからな」…ナデナデ

 カレン「……おとうさん…………///」ホワホワ~

.
ゼロに頭をなでられたカレンは、顔を真っ赤にしながらうつむき、おでこをゼロの
胸にぐりぐりと押しつける。
丸っきり、親に甘える子供の姿だ……これなら、この状況なら言える……!

この機を逃すな、とばかりに、ゼロは……


 ゼロ「……それと、カレン、その……もう少し、胸元は閉じておくものだ」
    「お父さん、目のやり場に困るんだ……」

 カレン「……!!!!!!!!」
     「バカッ!お父さんのエッチ!///」バキイ!!

ゼロ「ぐあ!」

.
■黄昏の間 ─────

 シャルル「……フゥフフフゥゥ……すぅくすくと、育つがよいぃ……」
       「我が、思考、エレ、ブェエェェタアァァよぉぉ……」ニマニマ

 V.V.「…………シャルル……」…テクテク

 シャルル「…………兄さん……」

       「どうですかな、この、思考エレブェエェェタアァの、」
       「幹の見事な太ましさはぁ……」ニマニマ

 V.V.「うん、素晴らしいね」
    「盆栽コンテストに出せば、金賞間違いないよ」ニッコリ

.
 シャルル「フゥゥーフフフフゥゥ……」ニマニマ
 

天までそびえ立つ思考エレベーターを見ながら、満足げな様子のシャルル。
V.V.はその横顔を、微笑ましそうに見つめていた。


 V.V.「……そういえば、神根島で、面白いことが起きているようだよ」

 シャルル「ほぉう?面白い事、ですか……」
       「確か、シュナイゼルが……」

 V.V.「そう、それに、ルルーシュも」

.
 シャルル「ふぅむ……あやつがぁ……」

 V.V.「様子を見に行ってくるけど、シャルルも来るかい?」

 シャルル「……兄さん、私はこの、思考、エレ、ブエェタァを見守っておる所です……」

 V.V.「そうか、じゃあ、ちょっと行ってくるね」テクテク…


彼らの背後に、光り輝くゲートが音もなく出現した。
V.V.は、シャルルに微笑んでみせると、ゲートの中に歩みを進める。
その姿は……光の中に吸い込

.
 V.V.「いで!」ガイン!!

 シャルル「……んん?」

 V.V.「……」
    「…………」…スリスリ


光に吸い込まれる直前、異様な音と共にその場に立ち止まったV.V.は、しばらくの後、
身をくるりと180度回転させると再びシャルルの方へと歩いてくる。
彼の大きなおでこは、赤くはれていた……それを痛そうにさすっている。

.
 V.V.「……シャルル、」
   「僕たちは、協力して"嘘のない世界"を作り上げてるところだ」…テクテク

 シャルル「そのとおぉりです……」

 V.V.「では、僕の質問に正直に答えられるね?」…ピタ

 シャルル「いかにもぉぉ……」

 V.V.「……どうして神根島に行けないか、知っているかい?」

 シャルル「……知りませんなぁ……」

 V.V.「……ルルーシュが島に行っていることは、知ってたの?」

.
 シャルル「いいえぇ、ぜぇんぜん……」

 V.V.「ルルーシュに逢わせたくなかったから、君が妨害した……」
   「……では、ないんだね?」

 シャルル「無論ォン、違いますゥ……」

 V.V.「……」

 シャルル「……」
       「…………」…ノッシノッシ

.
V.V.と同様、光の中に吸い込まれる直前で立ち止まったシャルルは、その場で
しばらく硬直していたが、くるりと振り向くとV.V.の方に歩いてゆく。
彼もまた、赤くはれたおでこを痛そうにさすっていた。


 シャルル「……兄さん、通れませんなぁ……」スリスリ

 V.V.「うん、通れないようだね」

 シャルル「……扉が、壊れたのかも、しれませんなぁ……」スリスリ

 V.V.「誰が壊したんだろう」スリスリ

 シャルル「……誰でしょうなぁ……」スリスリ

ミスった、>>103>>104の間です↓


シャルルは、赤くはれたV.V.のおでこをしばらく見つめていたが、やがて彼と同様、
光のゲートに向かって力強く歩いていった。
シャルルの姿は……光の中に吸い込


 シャルル「ヴァイデ!」ガゴォオン!!

 V.V.「……」

 シャルル「……」
       「…………」…クルリ、ノッシノッシ

面白い
続き期待

.
■エリア11政庁 コーネリア寝室 ─────

 コーネリア「……」スウスウ

 ギルフォード「……」ウルウル

 ダールトン「……」フルフル


……夜半に至っても、2名の専任騎士はコーネリアから離れる気になれなかった。
彼女はとりあえず食事はとってくれたのだが、その後気絶するようにベッドに
倒れ込み、そのまま寝息をたて始めた。

.
 ダールトン「……もし、このまま姫様が、魂の抜けたような状態だと……」ボソボソ

 ギルフォード「……それは……」ボソボソ

 ダールトン「そろそろ、対外的にも隠せなくなりつつある……」ボソボソ
        「病のため、一時帰国すると公表するのは……」

 ギルフォード「しかしそれは、姫様にとって恥辱に等しいことでは……」ボソボソ
       「姫様のお許しがなければ、とてもそのような……」

 ダールトン「だが、このままでは……」

 ギルフォード「……」…ウルウル

.
彼女の傍らで、小声で相談をする二人……
コーネリアが公務から姿を消して、3日が過ぎつつあった。
これまでの、どこへゆくにも先陣を切る彼女の振る舞いからは、とても考えられない
事態であった……当然、それはマスメディアにも感づかれていた。


 ダールトン「このような時にこそ、騎士団の連中が騒ぎを起こせば、」
        「姫様の異常もそれに紛れて気にされなくなろうというのに……」

 ギルフォード「奴らも、ゼロの死を隠している様子……」
       「この好機を活かせないのが口惜しい限り……」

.
 ギルフォード「奴らも、ゼロの死を隠している様子……」
       「この好機を活かせないのが口惜しい限り……」

 ダールトン「……ともかく、姫様のことだ……」
        「どうすればよいのか……」フルフル

 ギルフォード「……」ウルウル


……と、その時、二人は気づいた。
眠っていたはずのコーネリアの目が、大きく見開かれていることに……!

.
 コーネリア「……」
        「……………………」

 ダールトン「……殿下、お目覚めですか……?」

 コーネリア「………………感じる……感じるぞ……?」
        「ユフィの心を感じる……」

 ギルフォード「……殿下?」

 コーネリア「……間違いない、感じる……」
        「ユフィは、まだ……生きている……」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

その頃、神根島の滝の傍では……


 スザク「ユフィ!そんな、服のまま水に入ったら、後が大変だよ!」

 ユフィ「いいの!今ここでしかできないことをしたいんですから!」ニコニコ
     「スザク!ほら、こちらに来て!」パシャパシャ

 スザク「やっ、ちょ!ダメです、引っ張らないで!」
     「落ちます、落ち……うわあ!」ザバーン!!

.
 ユフィ「あははっ!スザク、ほら、一緒にきれいになりましょう!」
     「髪を洗ってあげるわ!」ザバザバ

 スザク「ユフィ!……うう、パイロットスーツの中まで、水が……」

 ユフィ「そんなの、脱いじゃいなさい!」
     「誰も見ていないのよ、平気でしょ?」

 スザク「だって、君が見てるじゃないか!」 

 ユフィ「あなたは私の騎士でしょう?」
     「私の言うとおりにしなさい?」ニコッ

 スザク「でっ、でも……///」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 コーネリア「……感じる!ユフィが泣いているぞ……」
       「ユフィが泣きながら、私に助けを求めている……!」

 ダールトン「でっ、殿下!?」

 ギルフォード「し、しかしシュナイゼル殿下は、確かに……」

 コーネリア「私はユフィの姉だぞおッ!」ガバッ!!
        「妹の危機がわからずして、何が肉親かッ!」クワッ!!

 ダールトン「ひい!」ビクッ

 コーネリア「わかる、わかるぞ……!」ウルッ…
        「ユフィ……ああ、私のユフィ……」
        「今、それほどまでに、つらい思いを……!」ウルウル…

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 ユフィ「……スザク、あなたって意外と逞しい身体なのですね……」

 スザク「……そんなに見ないで……///」

 ユフィ「ふふ……私も、脱いで乾かそうっと」プチ、プチ…

 スザク「い!?」


服のボタンを外し始めたユフィに、スザクは慌てて背中を向ける。
そんな仕草がおかしいのか、彼女は小さな笑い声を漏らしながら、濡れそぼった服を
脱ぎ去った。

.
 ユフィ「スザク、大丈夫ですよ、下着は着けてますから」

 スザク「は、はい……」

 ユフィ「…………」
     「……ねえ、スザク、私を見て……」

 スザク「それだけは……だめだよ……!」…ゴクッ

 ユフィ「スザク……私……嬉しかった……」

 スザク「な、何がだい……?」

 ユフィ「他の人に、ユフィって呼ばせたくない……そう言いましたよね?」ニコッ

.
 スザク「……あ、あの時は、失礼なことを……///」

 ユフィ「私……あなたに、ユフィって呼んでもらうのが、一番好き……」ギュ…ッ


そう言って、ユフィはそっとスザクの背中に抱きついた。
……背中越しに感じた彼女の胸の膨らみに、スザクは彼女が、いま、一人の女性と
して彼に接しようとしていることを強烈に意識した……

そして、彼もまた、今は一人の男性として……!


 スザク「……!!!!!」
     (ユ……ユフィ…………!)

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 コーネリア「ユフィイイイイイイイイイイイイイ!」ガバアッ!!

 ギルフォード「ひあああ!」

 ダールトン「で、ででで殿下!?」

 コーネリア「わ……私のユフィに……」
        「私のユフィに、生涯最大の危機が訪れているッ!」カッ!!
        「いかん、邪悪なる魔の手が及びつつあるぞッ!」

 ギルフォード「ひ……姫様が、覚醒なされた……!?」ブルブル

.
 ダールトン「いかがなさいましたか、殿下ッ!?」

 コーネリア「貴様ら、わからんのかッ!いまユフィが、暗闇の中で、孤独と恐怖に」
        「耐えていることがッ!……いかん……こうしてはいられん!」
        「今ゆくぞユフィ、このブリタニアの魔女が、光をも超える速さで」
        「お前を救いに往くぞッ!」ガバアッ!!

 ダールトン「どうか心をお鎮めくださいッ!」
        「ユーフェミア様は我々が捜索隊を派遣いたしますので……」

 ギルフォード「か、覚醒というか……これは、錯乱、なのか……!?」ガクガク

.
 コーネリア「……ヌオオオオオオオッ!?」ビクッ!!

 ダールトン「ヒッ!?」ビクン!!

 ギルフォード「はあッ!?」ビクビクッ!!

 コーネリア「……なッ、何だ、いまの感覚は……」
       「何かが……身を、貫いたかのような……!」
       「ま、まさかユフィ……ユフィの身に、恐ろしき何かが……!」ブル…ブル…!!

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 ユフィ「……あ……ス、ザク…………」ブル…ッ

 スザク「……」ハァ、ハァ…
     「……ユ……ユフィ…………」

 ユフィ「…………私を……」
     「……ずっと、守り続けてくれる……?」ジワ…

 スザク「!!……約束する、絶対だ……!」

 ユフィ「……うん……約束、よ…………」ウル…
     「お願い、私を……離さないで…………!」ギュウ…ッ

 スザク「ユフィ……!」グッ…

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 ギルフォード「……姫様、姫様アアアアアッ!」
       「どうか、どうかお気をお鎮めくださいいい!」

 コーネリア「のんびり報告を待つなどしていられるかああッ!」
       「貴様ら、私の具足を持ってこいッ!」
       「今すぐ往くぞ、あの島へッ!」

 ダールトン「で、殿下、わかりましたから落ち着いてください!」
        「今すぐ手配をいたします、しばしのご辛抱を!」

.
 コーネリア「遅いわ貴様らあッ!もうよい、このまま出るッ!」バアン!!
       「グロースターを仕立てよ!フロートシステムをつけろッ!」

 ギルフォード「あ、あれはまだ開発中のユニットです!」ダダッ!!
       「それにトウキョウからでは、フィラー切れで沖合で墜落します!」

 コーネリア「泳いででも行ってやるわ!」
       「この私をなめるなッ!為せば成るのだッ!」カツカツカツカツ!!

 ダールトン「わかりました、急ぎ準備をいたしますッ!」ドタドタ
        「ですから、ですからせめてネグリジェだけでもお召し替えをおおおッ!」

.
|⌒ ミ   
|ω・`)  ひとやすみ。

続きはまだかね

は?

おーい

.
■神根島 夜明け ─────

……あれからゼロは、カレンを腕の中に抱いたまま眠りについていた。
夜明けの太陽が彼の体内時計を刺激し、彼はゆっくりと目覚める。
気付けば、カレンはあの時のまま、安心しきったようにゼロに寄り添って眠っていた。


 カレン「……ゼロぉ…………」ムニャムニャ

 ゼロ(フフ……彼女も、こうしてみると普通の女の子だな)


彼女を起こさないよう、彼女の頭の下から腕をそっと抜くと、彼は立ち上がって
朝日を見上げる。

.
実は、彼はふところに、緊急用の発信器を潜ませていた。ただし、一般的な
救難信号を発するもので、周辺にいる船舶なら容易に受信できる。
当然、ブリタニアにもそれがわかるので、これまでは言及しなかったのだった。


 ゼロ(だが、今日で4日目……)
    (最悪の場合、俺が見つかる危険を冒してでも、これを使うか……)


そこへ、森の中からスザクとユフィの声が聞こえてきた。
楽しげに会話をしながら、こちらへ近づいてくるようだ。

.
 スザク「……おはよう、ゼロ!気持ちのいい朝だね!」ガサガサ

 ユフィ「おはようございます、ゼロ!」テクテク

 ゼロ「おはよう、枢木スザク、ユフィ……」
    「……っと、ユーフェミアと呼ぶべきなのか、私は?」

 スザク「いいよ、この島にいる間はね!」ニコッ

 ゼロ(……反応が随分と変わったな)


姿を見せた彼らは、昨晩よりもさらに仲睦まじくなっていた……
腕を組み、肩を寄せ合いながら微笑んでいる。

.
 ゼロ(何があったのか……は、詮索するだけ野暮というものか)
    (むしろ、島から戻った後の事が心配だな)…フゥ

 ユフィ「……あら、カレンはまだ眠っているのですね」クスッ

 ゼロ「ああ、今までの疲れが出たのだろう、」
    「どうせ起こしても何もすることはないんだ、このままでいいだろう」


カレンの、幸せそうな寝顔を見たユフィは、顔をほころばせる。
その気配に気づいたのか、カレンはゆっくりを目を覚ました。

.
 カレン「…………ンンン~~~~っ!」セノビー
     「……あれっ、みんな揃ってたんだ?」

 スザク&ユフィ「おはよう、カレン!」ニコッ

 ゼロ「お目覚めか、カレン?」

 カレン「あっ、お、おはよう、ございます……」
     (みんなでわたしの寝顔を見てたとか……)
     (ちょっと勘弁してよ……///)

.
それからしばらくの後……
朝食をとりながら彼らは、今後のことについて話を始めた。


 ゼロ「衣食住のうち、食と住については問題ないだろう」
    「衣についても、今の時期なら問題にならない」

 ユフィ「助けが来るまでは、生き長らえることができそうですね」モグモグ

 スザク「そうだね……」モグモグ
     「……ゼロ、君は食べないのか?」

 ゼロ「仮面を被っているからな」
    「後でいただくよ」

.
 スザク「そんなもの、脱いでしまえばいいじゃないか」モグモグ

 ゼロ「お断りだ」

 スザク「ずっと被りっぱなしだと臭くなるよ?」モグモグ

 ゼロ「後で脱いで乾かす」

 カレン「スザク、あんたゼロの素顔を見たいってだけでしょ?」モグモグ

 スザク「勿論それもあるよ?」モグモグ

 カレン「……あっさりと認めたわね……」モグモグ

.
 スザク「でも、不潔な奴と共同生活なんてできないしね」モグモグ

 ゼロ「!!!」ピキッ
    「……この仮面は、長時間被り続けられるように設計してある」

    「動力によりエアインテークから外気を吸入・仮面内の空気を循環排出」
    「する上に、プラズマイオンとフローラルな香りが中に充満する仕組みだ」
    「ただの仮面だと思ってもらっては困るな……」フン

 スザク「すごいな、まるでナイトメアのコクピット並みの装備だね」モグモグ
     「……ところで、それはいつまで持つんだい?」

 ゼロ「!!!!」
    「クッ…………そろそろバッテリーが切れる頃だ……」

.
 スザク「取ってしまえよ、いいじゃないか、」モグモグ
     「どうせほんとはカレンも知ってるんだろう、君の素顔を?」

 カレン「!……知らないわ、見たことない」

 スザク「えっ?」

 ユフィ「あら?」

 カレン「……1回だけ、暗い倉庫の中で、横顔を見たことはあるけど……」
     「よくわかんなかったわ」

 ゼロ(あの時か……)
    (まあ、そう見えるよう、計算していたのだがな)

.
 ユフィ(じゃあ、この中でゼロの素顔を知ってるのって、私だけなんだ……)

 スザク「ふーん……」ジー

 ゼロ「………………何を考えている?」

 スザク「……どのくらいの大きさの石なら割れるかな、って」

 ゼロ「私を殴り殺す気かッ!」

スザクやっぱやべーな

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

その後も、仮面を脱ぐ脱がないで押し問答をしながら、朝食の時間は終わった。
だがしかし、彼らは何もすることがないのである。

ゼロはカレンと共に、島の探索をすることにした。
スザクが壊した遺跡以外にも、何か痕跡が残ってないかを探してみたくなったのだ。


 ゼロ「……こうして歩いてみると、あの遺跡以外に特段の痕跡もなさそうだな」ガサガサ

 カレン「ですね……」ガサガサ

.
 ゼロ「カレン、済まないな」ガサガサ

 カレン「えっ?何がですか?」ガサガサ

 ゼロ「君も、この島でやっておきたいことがあるのではないか?」ガサガサ
    「二人で探せば、何かしら見つかると思っていたが、それも望めそうにない、」
    「何かあるなら、私から離れてもいいぞ?」

 カレン「いえ、わたしは、ゼロの親衛隊ですから!」ガサガサ

 ゼロ「……そうか」ガサガサ

.
やりたかった事、と言われて、彼女は昨晩のことを思い出す。
父性を感じていたゼロに、思わず甘えてしまったことを……
そして意外にも、彼は自分の胸元に視線がいってしまったことを……


 カレン(……あの時、胸のことを言われて、とっさに殴っちゃったけど……)ガサガサ
     (ゼロって、私を女として見てくれてた、ってことだよね?)

 ゼロ「…………」ガサガサ

 カレン(……今まで、頼りになる大人のひと、って思ってたけど、)
     (その……ゼロの恋愛対象になれるの、わたし……?)ガサガサ

 ゼロ「…………」ガサガサ

.
 カレン(って……うわあ……騎士団の総司令と恋愛って!?)
     (やばいわ、やばいって!何考えてんのわたし!///)ガサガサ

 ゼロ「…………」ガサガサ

 カレン(くそっ、だめだ、しっかりしろ紅月カレン!)ガサガサ
     (わたしは親衛隊の隊長なんだ、変なことを考えてるヒマはないっ!)
     (…………って、今すっごくヒマだけどね……)

 ゼロ「…………」ガサガサ

 カレン(そうだ、ヒマなのが悪い……)ガサガサ
     (だからこんな、変なことを考えちゃうんだ……)

.
 ゼロ「…………」ガサガサ

 カレン(……でも、ゼロの好みを聞くくらいはいいよね……)ガサガサ
     (別に変な意味じゃなくて……親衛隊の隊長として、)
     (知っておくべきことは、知っておかなきゃ……)

 ゼロ「…………」ガサガサ

 カレン「……ゼロ、昨日はごめんなさい……」ガサガサ

 ゼロ「昨日?」ガサガサ

 カレン「あの、わたし……ゼロに、お父さん、って……」ガサガサ

.
 ゼロ「ああ、気にする必要はない」ガサガサ
    「ちょっと面食らったが、君の経歴は知っていたしな」

 カレン「……その、」

 ゼロ「ん?」

 カレン「それもですし、殴っちゃったのも……///」

 ゼロ「ああ……いいパンチだったな」
    「気にすることはない」

 カレン「…………///」ガサガサ

.
 ゼロ「…………」ガサガサ

 カレン「……あの!」

 ゼロ「どうした?」ガサッ

 カレン「ゼロはその!……む、胸の大きい女の人は、嫌いですか?」

 ゼロ「……私は女性を、胸のサイズで判断したりはしない」
    「女性も、本人の才覚こそが重要だ」

 カレン「そうですか……」

 ゼロ「……」ガサガサ

.
 カレン「…………」ガサガサ

 ゼロ「………………」ガサガサ
    「……君も、」

 カレン「はい!?」

 ゼロ「男を仮面の有無で判断したりはしないだろう?」
    「そういうことだ」ジー

 カレン「はい……」
     (……やっぱり、勘違いだよね、ゼロが私を、とか……)

 ゼロ「…………」ガサガサ

.
 カレン(本人の才覚ってことは、やっぱ組織の人間として有能かどうかを)
     (気にかけてるってことだ……)ガサガサ

 ゼロ「……」ガサガサ

 カレン(……うん、やっぱり私は、親衛隊の隊長としての役割を全うしよう!)
     (それでこそ、紅月カレンだっ!)ガサガサ

 ゼロ(……今ほど仮面を被っていることに感謝した瞬間はないッ!)ガサガサ
    (背中から冷や汗が溢れ出たぞ……!)

 カレン「……」ガサガサ

 ゼロ(今の質問は、昨晩の失態を暗に非難していたのではないか!?)ガサガサ
    (己の顔が紅潮していたのが、鏡を見ずともわかるほどだった!)

.
 カレン「……」ガサガサ

 ゼロ(やはりそうだ、彼女は俺に、父親のような包容力を期待しているのであって、)
    (俺が恋人感覚などを抱けば間違いなく侮蔑の対象になるッ!)
    (危うかった、あの強烈なパンチは1発喰らえば十分だ……!)ガサガサ

 カレン「…………」ガサガサ

 ゼロ(これからも、彼女には組織のトップとして接しよう!そうしよう!)
    (忘れろ、昨晩の胸の谷間やシャワー室での魅惑的なボディラインは)
    (記憶から消し去るんだ……!)ガサガサ


……島の魔力も、ウブな童貞と処女の封印を解くには至らず……ッ!
互いに、"もう一歩"が踏み出せない彼等であった……

さすが童帝

.
■アヴァロン デッキ ─────

 シュナイゼル「……何だって?」
       「ユフィは生きている、と?」

 コーネリア『はい、私は昨晩、それを感じたのです!』
       『あれは間違いなく、ユフィの魂の慟哭でした……!』
       『ユフィはあの島で、一人で怯えて……』ギリッ…!!

 シュナイゼル「ふむ……」

 コーネリア『……ただ、形としては、兄上のお言葉に逆らうことになってしまいます、』
       『それを、前もってお詫び申し上げたく……』

.
 シュナイゼル「それは気にしないよ、コーネリア」
       「常に傍にいた肉親だけが感じ取れるものがあるだろうと私も思う」コクッ

 コーネリア『ありがとうございます!』パアッ!!
       『私はこれから、式根島とその周辺に向かいます!』

 シュナイゼル「うん……気を付けてほしい、」
       「騎士団がまだ潜んでいる可能性も考えて……」

 コーネリア『はっ、朗報を必ずや……!』ピッ

.
コーネリアとの通信が切れると、シュナイゼルは少し考えた末にカノンに話しかける。


 シュナイゼル「……あの時、ハドロン砲の着弾散布界は間違いなく丸焼けに」
       「なっていたはずだよね?」

 カノン「……それは……」

 シュナイゼル「うん?」

 カノン「あまりに散逸したので、期待されたほどの効果はなかったかもしれない、」
     「とアスプルンド卿は言ってました……」

 シュナイゼル「……つまり、」
       「彼女の言っている通り、まだ生きている可能性がある、と?」ジロ

.
 カノン「!!!」ビク!!
     「……か、可能性としては、ゼロではないかと……」ビクビク

 シュナイゼル「すると、私は嘘を言っていたことになるのかな?」ジー

 カノン「!!!!!!」ビクウッ!!

 シュナイゼル「それに、ユフィが生きているとすれば、あるいはゼロも……」

 カノン「……………………」
     「……ご……」

 シュナイゼル「うん」

 カノン「…………ゴメンナサイ……シュナイゼルサマ……」ブルブル…

.
 シュナイゼル「………………」
       「……カノン、」

 カノン「!!」ビクーン!!

 シュナイゼル「……私たちも、式根島へ行こう」
       「今度こそ息の根を止めないとね」ニコッ

 カノン「はっ、はい!!!」
     「ただちに準備を……!」クルーリ…

 シュナイゼル「それと、」

.
 カノン「はいっ!」ビク!!

 シュナイゼル「……今晩はおしおきをするよ?」ジー

 カノン「は、は……はい……!」プルプル

 シュナイゼル「……みっちりとね?」ニッコリ

 カノン「……つ、謹んでお受け致します……///」プルプルモジモジ

oh…これはホモですねぇ…

.
■同じ頃 トウキョウ湾沖合 ─────

夜明け前に密かにトウキョウ湾を出発した黒の騎士団の潜水艦……
今は、最後の換気浮上を行っているところであった。
その艦橋には、仁王立ちでがっしと腕を組み、行く手を睨むディートハルトの姿が……


 ディートハルト「さあ行くのだ、猛き者たちよオオオッ!」
       「輝かしき栄光の朝日を浴び、我と共に白き浪間をかき分けながら、」
       「いざ行かん、ゼロの待つあの幻の島へと───!」ハハハハハハハハハ

 C.C.「いいから早く中に入れ!」
    「いつまでも艦橋に突っ立っていたら潜水できないだろう!」

.
 ディートハルト「この私の胸の高鳴り、こうでもしないと収まらないのです!」
       「嗚呼かもめよかもめ、かもめさん!私の愛しきゼロ様は、」
       「今いずこにござらっしゃるの!」ウルウル

 C.C.「知らんわ!というか私にしかわからんのにかもめに聞くな!」

 扇『……あー、C.C.?まだなのか?』

 藤堂『そろそろ潜らねば、漁船に見つかるぞ……』

 C.C.「私じゃない、このバカのせいだ!」
    「くそっ、ほら入るぞディートハルト!」グイッ

 ディートハルト「あっ、ま、待って、いまゼロのお姿が太陽の中に……うああ!」

.
彼がC.C.に手荒く引きずりおろされたのを確認すると、ハッチがロックされ
潜水が始まった。
はしごの下で目を回すディートハルトを尻目に、C.C.はデッキへ戻った。


 C.C.「ふう……ノリノリの時の奴は手に負えんな……」

 扇「あの心酔ぶりは騎士団随一かもしれないな」

 藤堂「C.C.、早速だが、我々が目指すべき地点を教えてくれ」

 C.C.「よかろう、んむむむむ……」

.
C.C.は、両こめかみに人差し指をあて、ぐりぐりとする。
どこからともかく、木魚の音が聞こえてきた気がした。


 C.C.「……見えた、式根島のすぐそばにある、神根島だ」

 藤堂「そこか……承知した」

 扇「……何度見ても、信じがたい能力だ……」

 C.C.「もう一度、信じさせてほしいのか?」

 扇「!!」ビクッ
   「い、いや、結構だ!」

 C.C.「そうか、遠慮することはないぞ?」ニヤリ

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

アジトで、監禁されていた部屋から出されたC.C.は、ゼロの生存がわかる理由を
彼等から求められたとき……


 C.C.(……どうせ何を言っても信じやしないだろうしな……)
    (面倒だな、どうしたものかな)

 扇「……どうなんだ、C.C.!?」

 C.C.「……」ハァ…
    「しようがない、教えてやる……私には、超能力があるんだ」

.
 藤堂「なに?」

 ラクシャータ「はあ?」

 扇「なんだって?」

 玉城「ちょうのうりょくうぅぅうう?」pgr!!

 C.C.「……笑ったな、玉城?」
    「いま能力を見せてやる……んむむむむ……」


そう言うと彼女は、こめかみに人差し指を突き立て、ぐりぐりとし始めた。
どこからか木魚の音が聞こえてきそうなしぐさに、彼らは笑いがこみ上げそうに
なるが……

.
 C.C.「……扇、お前の彼女は日本人ではないのだな」

 扇「な!?ん、なにお!?」ビクウッ!!

 藤堂「なに?」

 玉城「え?」

 吉田「何だと?」

 扇「あ……いや、何を言い出すんだ!///」

.
 C.C.「だって本当のことじゃないか、だいいち肌の色g」

 扇「だあぎじゃr;おjふぃあlれいjf;あおいうぇいjふぉいfjw;j!!!!」

 藤堂「……何を焦っているんだ君は……」

 ラクシャータ「そんなに後ろめたいのかい、」
      「彼女が日本人でないのは……?」ジー

 扇「い、いや!そうではない!」
   「いきなりC.C.が俺の、その、プライバシーを明かすからだな……///」

 C.C.「ついでに見えたが、ラクシャータ、お前、昔にブリタニアの研究者と」
    「大喧嘩をしたのだな?」

.
 ラクシャータ「あらぁ……やだ、ほんとに見えてるのねぇ……」ニコッ

 藤堂「そうなのか?」

 ラクシャータ「つまんないことだったけどねぇ……確かに事実さ、」
      「どういう能力なんだい、それは?」

 C.C.「望む人物の、現在や過去が見えるのさ」
    (……実際はこんなポーズを取らずとも、"Cの世界"でカンニングを)
    (すれば済むし、あちらにある"記憶"しかわからんのだがな……)
    (これが能力の制約だと思わせておくのがいいだろう)

 藤堂「そうか……それで、ゼロの居場所もわかるということか」

.
 C.C.「これをすると疲れるので、あまりできないのだけどな」
    「あー疲れた、無駄なことで力を使わせおって……ピザを持ってこい、玉城」

 玉城「ぬわんだァ!?てめえ、俺様に命令しよおッてのかよッ!」

 C.C.「なんだ、玉城も恥ずかしい過去を見て欲しいのか?」
    「騎士団での、これまでの金の使い方でも見てやるか……んむむむ……」

 玉城「!!!!」ビクン!!
    「……はいはい、ピザでございますか?すぐお持ちしますよッ!」スタコラピュー!!

 C.C.(今のは、ルルーシュが愚痴っていたネタだがな……)
    (当分、奴をこき使えるな、これで……)クスッ

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 C.C.「……まあ、そういうことで、目指すべきh」

 ディートハルト「見えたッ!ゼロが見えたアアアアアアアッ!」ドドドドドド!!


デッキに突如、錯乱状態のディートハルトが、彼を止めようとする2名の団員を腰から
ぶら下げ引きずりながら、猛烈な勢いで駆け込んできた!
今にもタッチダウンしそうな様子の彼を、彼らは呆れ顔で出迎えた。


 藤堂「……もうそれはわかっている」

.
 扇「ああ……君は部屋で待機していてくれ、」
   「島に着くまですることはないのだし」

 ディートハルト「いいえ!私は歴史を作るのですッ!」カッ!!
       「ゼロという類まれなる存在の、叙事詩を、この手で……!」
       「それには、一時たりとも現場を離れることなかりせばッ!」
       「さあ、皆の衆、式根島へレッツなうッ!」ビシッ
       「記録は私がレコーディングしますゆえ!ごゆるりと!」

 C.C.(……だめだこりゃ……)

 南「……ゼロは神根島にいるそうだ」

.
 ディートハルト「ンな!?そんなはずはナッシング!」ガアッ!!
       「彼は式根島アイランドで、生まれたての仔ヤギのように震えながら、」
       「私の助けをサドンデス!」ガバッ!!

 藤堂「…………C.C.、彼は一体どうしたのだ?」

 C.C.「ゼロが好きすぎて、おかしくなったようだな……」
    「早く見つけてやらんと、脳のお薬が必要になるかもしれんぞ」

 藤堂「……あまりひどくなったら、魚雷に詰めて射出するか……」チッ

乙!

.
■神根島 夕刻 ─────

……あと1時間もすれば、太陽が水平線の向こうへ消えるという頃。
今日も結局、どこからの捜索もこの島に来ないようであった。
彼らは、この島に流れ着いて4度目の夕食を取る。

出会った当初は互いにいがみ合っていた彼等も、こうして社会から切り離された
状況で互いに話をすることで、誤解や、妥協できない所、あるいは理解しあえる
部分などが見えてきて、随分と打ち解けてきた。

.
スザクらはとってきた魚や果物を食べながら……
ゼロは、わらのストローで大きな木の実の果汁を吸いながら話をする。


 ゼロ「……わかるだろう、枢木スザク」チューチュー
    「騎士団自体、ブリタニアが生み出した存在なのだよ」

 スザク「言いたいことはわかるさ」モグモグ
     「でも、僕らはそれを認められないこともわかるよね」

 ユフィ「私たちは体制側ですものね……」モグモグ

 カレン「体制に入れない人はどうすんのって話よ」モグモグ
     「騎士団はそういう人らの受け皿でもあるのよ」

.
 ゼロ「その目的もあるな」チューチュー

 カレン「……あんたら、ちょっと人を選びすぎじゃないの?」ビシッ
     「わたしだって、成れるなら租界の公務員になりたいわよ」
     「あと日本人を差別しすぎ!」モグモグ

 スザク「それは、皇帝陛下や総督の方針だからね……」モグモグ

 ゼロ「……」カポ…モグモグ

 カレン「じゃあ説得しなさいよ」モグモグ
     「ユフィでも無理なの?」

.
 ユフィ「うーん、私でも聞いてくれないと思うわ……」モグモグ
     「どうしたらいいのかな……」

 ゼロ「…………」モグモグ…カポ
    「……行政特区という手があるな」

 ユフィ「行政特区……」モグッ

 ゼロ「私らにはできないが、君らならできることだ」チューチュー
    「まあ、本国が認めるかどうか、という問題もあるが」

 スザク「行政特区、って?」

.
 ゼロ「そこだけは別の国、だ」…チュポン
    「地域に合わせた特別法を施行するのだ」
    「日本人にとっては、随分と過ごしやすい地域にできるだろう」

 カレン「へええ、そんなことできるんですね……」

 ユフィ「考えたこともなかったな……結構いいかも……」
     「さすがゼロ、すごいアイデアです!」

 ゼロ「だが、多分無理だと思うぞ」
    「アイデアだけは教えておくが」

.
 スザク「……いや、待ってくれ、その前に……」
     「いま君は、ちょっとの間、仮面を外したな?」

 ゼロ「ああ、皆の隙をついて果物をいただいた」フフン

 カレン「ええっ!?ぜんっぜん気付いてませんでした……!」

 スザク「僕もだ!見ていたはずなのに!ああっ、くそ、思い出せないっ!」
     「でも、なんだか思い出せるほどの特徴がなかった気がする!」

 ユフィ「私も気づかなかったなー」
     「残念だなー」クスクス

久々のギアスのss

これは支援

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

そして、夜も更け……
ゼロはスザクを連れ、二人で夜の砂浜に来ていた。
海から吹き寄せる潮風が肌に心地よい。

ゼロは、思い切って発信器のことをスザクに言うことにした。


 ゼロ「……枢木スザク、実は……」

 スザク「何だい、改まって?」ニコッ

.
 ゼロ「……私は、救難信号の発信器を持っているのだ」

 スザク「え?……そんなもの、持ってないと言ってなかったか?」

 ゼロ「ああ、嘘をついた」
    「騎士団だけでなく、ブリタニアにもわかるタイプのものだからな、」
    「私が見つかる可能性を避けたかったのだ」

 スザク「…………隠してたことを、今さら責めてもしようがないだろうな……」
     「今になって明かしたのは、どうしてだ?」

.
 ゼロ「これ以上、ここでバカンスを楽しむわけにもいかないだろう?」
    「それに、どちらにも簡単にわかるということは、」
    「君たちも、先に騎士団に見つかれば捕まるだろう、ということだ」
    「それで納得できたか?」

 スザク「……」

 ゼロ「無論、私としては君たちを捕えて帰るほうが好ましい」
    「だが、これまでこの島で互いに助け合って生活したことを想うと、」
    「それはフェアでないだろうと思ってな……」

 スザク「……フェア?」

.
 ゼロ「そうだ、フェアにいこう」
    「この発信器を作動させ、この砂浜の先に置いておくのだ」
    「我々は、離れた木陰から様子を見続ける」

 スザク「…………」

 ゼロ「どちらかが先に来たら、来た方の者たちは木陰から飛び出して救援を求める」
    「もう片方はそのまま潜んでいればいい」

 スザク「なるほど……」
     「互いに捕虜にならないための、"フェア"ということか」

 ゼロ「その通り」コクリ
    「もし、残った方の救援が来ないようであれば……」

.
 スザク「……」

 ゼロ「……それが君たちであれば、後日私がここに救援をよこす」
    「もし我々であれば、君は何もしなくていい」

 スザク「……やせ我慢を言うな」
     「僕らも救援を送るよ、必ずね」

 ゼロ「……いいだろう、契約成立だ」…フッ

 スザク「ああ、契約成立だね」ニコッ

.
彼等は、ユフィとカレンの元に戻ると、これからのことを話した。
そうして、4人が再び砂浜に来ると……


 ゼロ「……このスイッチを入れれば、我々のバカンスは終了だ」
    「後悔はないな?」

 ユフィ「ちょっと惜しい気もしますけど……」
     「きっと私たちを待っている人がいますしね……」ニコッ

 カレン「……ゼロの傍が、わたしの居場所です」ニッ
     「貴方がいるなら、どこだってかまいません」

 スザク「……ゼロ、君こそ後悔はないのか?」

.
 ゼロ「後悔、か……」フッ
    「私は、すべき後悔は既に済ませている……後は未来に進むしかない」

 スザク「そうか……僕は……」


彼は、そこまで言うと少し口をつぐんだ。
何か思うところがあるのか……彼らはスザクの言葉を待つ。
やがて、彼は顔をあげた。


 スザク「…………この先、どうなろうと……」…スッ
     「僕は、この島でのことは決して忘れないだろう」

 ゼロ「……そうか」
    「私も、ここでのことは決して忘れないことを約束する」…グッ

.
ゼロは、スザクが差し出した手を、力強く握る。
二人の男の、運命という名の絆が、そうさせたのか……
その姿を見る彼女らも、それぞれが感慨深い感情を抱いていた。


 ユフィ「……」ジワ…

 カレン「……」ジー…

 スザク「……さあ、また始めよう」
     「僕たちの戦いを……!」ニッ

 ゼロ「フッ……よかろう、枢木スザク!」
    「では、作戦開始だ!」…カチッ

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

その頃、神根島の近海の海中では……


 オペ子「……副指令!神根島からの信号を探知!」

 扇「何!どういう内容だ!?」

 オペ子「これは……国際的な救難信号です」
     「発信者などはわかりません」

 藤堂「……この場所から、このタイミング……おそらく、」

.
 C.C.「ああ、間違いない、奴だ」ニッ

 扇「生きていてくれたか、ゼロ……」ホッ…
   「……信号の発信源に向けて進路を取るんだ!」

 オペ子「了解!」

 ディートハルト「ゼロ……ああゼロ……いま私が……!」モゾモゾハァハァ

 吉田「……こいつが、縛られたまま悶えてる姿はキツいな……」ウップ

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

同じ頃、神根島の近海の海上では……


 オペ男「……総督、神根島からの救難信号を探知しました!」

 ダールトン「おおっ!」

 ギルフォード「これは……もしや、殿下ッ!?」パアッ!!

 コーネリア「当然ユフィに決まっているッ!」
       「いちいち聞くな痴れ者がッ!」パカーン!!

.
 ギルフォード「イッ!……たくありません……!」…ウルウル

 コーネリア「当たり前だッ!」
       「貴様ら脆弱者への愛のムチだ!」

 ダールトン「……」ビクビク

 船員(……お二人とも、顔がボコボコになってる……)

 コーネリア「全速力で行け!ペラが焼け落ちても構わんッ!」ダンッ!!
       「ユフィ……待っていろ、今すぐお前のお姉様が往くぞ……!」ググッ

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

そして、神根島の近海の上空では……


 オペ子『……会議中に失礼いたします、殿下、』ピピッ
     『神根島から、何者かが救難信号を発しています』

 シュナイゼル「……ふむ……救難信号、か」

 カノン「……」ハァハァ

 シュナイゼル「……」カチッ
       「正体はわかるかな?」

.
 オペ子『残念ながら……』
     『国際的な信号ですので、民間人の可能性が高いかと……』

 シュナイゼル「ふうむ……カノンはどう思う?」…ジロッ

 カノン「はっ、はい……」ハァハァ
     「ユーフェミア様や枢木スザクは、発信器を持っていなかったはず……」
     「であれば、生き残っていたゼロの可能性が……」ハァハァ

 シュナイゼル「うん……君もそう思ったか」ニッコリ
       「信号の地点に向かってくれ」…カチリ

.
 オペ子『イエス、ユアハイネス』…ピピッ

 カノン「……殿下……」ハァハァ

 シュナイゼル「……まだ、おしおきの途中だったね?」ニッコリ
       「愚かな犬のように、腹を見せて床に寝転がりなさい」…ジー

 カノン「メルシー……マイ・マスター……///」ハァハァハァハァ

乙ー!

歴史が変わるのか

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

発信器が、信号を発し始めてから2時間後……
少し離れた森の木陰に潜んでいた彼等は、夜の海上に、こちらへ近づいてくる
明かりがあるのを見つけた。


 スザク「……信号を、見つけてくれたみたいだ」

 ゼロ「うむ」

 ユフィ「どっちかしら……」

 カレン「んー、ウチには大きい船とかないし……」
     「民間の船か、ブリタニアか……」

 ゼロ「……正体が判明するまで、もうしばらく待ってみよう」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 オペ男「あと十分弱で、島の発信源まで近づけます」

 コーネリア「ええい、遅いなこの船はッ!」ガシ!!
       「兄上のアヴァロンが羨ましいッ!」ガシガシ!!

 ギルフォード「イッ!うぐ!」
       「も、もうしばらくの、ご辛抱を……」ウルウル

 コーネリア「……ん、ダールトンの姿が見えんな?」
        「奴はどこへ行った?」

 船員「先ほど、上陸準備をすると言い残されて……」
    (……総督のDVを怖れて、姿を消されたんじゃないだろうか?)

.
 オペ男「……?…………海中に感ありッ!」
     「敵性識別信号!」

 コーネリア「何ッ!?」


~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 オペ子「海上に反応あり!」
     「おそらく、ブリタニアの戦艦です!」

 扇「なに!?」

 藤堂「むう……まさかゼロが生きていると知って……」

.
 C.C.「島を捜索する気か?」
    「……いや、奴らも信号に気付いたのか」

 ラクシャータ「連中が去るまで、隠れとくぅ?」
      「アレ、まだ積んでるから、一応ステルスできるわよ?」

 藤堂「いや……こちらが先にゼロを奪取しなければ意味がない!」
    「戦闘準備!遠距離から魚雷で決めろ!」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

こちらへ向かってきていると思われた船の左舷から、突如何かがポンポンと
発射されたのが見えた。それは、次々と海上へ落ちて沈む。
と同時に、船は右へ舵を強く切った。


 スザク「……あれ?」

 ユフィ「あらら?」

 カレン「ありゃ?」

 ゼロ(……あの動きは……対潜水艦の回避行動ではないか?)

.
数十秒後、戦艦の左舷方向に、轟音と共に巨大な水柱が立ち上がった。
ゼロを除く3名は、何事が起きたのかと仰天する。


 スザク「ゼロ!一体何が起きているんだ!?」

 ゼロ「……想定外の事態だ」
    「おそらく、ブリタニアの戦艦が騎士団の潜水艦と鉢合わせした」

 ユフィ「ええ!?」

 カレン「うっそ!?」

 ゼロ「しかも、双方とも"やる気"のようだ……」

.
 スザク「……それは、まずいんじゃないのか?」

 ゼロ「ああ、かなりまずい」
    「戦艦の乗員は手練れのようだが、駆逐艦も伴っていない状況では……」


と、その時、上空から大きな、風を切るような音が響いてきた。
何事かと見上げてみたが、夜空の闇の中には、識別灯らしきものも見えない。


 カレン「な……何か来てるの?」

 ゼロ「どちらかの援軍だろう、それはどうでもいい!」
    「何らかの方法で、あの戦闘を止めさせないと……!」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 シュナイゼル「この座席、意外と座り心地が良いね」ニコッ

 カノン「は、はい……///」
     「心地ようございます……///」ハァハァ


彼等は、飛行試験も兼ねてアヴァロンからガウェイン単機で飛び出してきたのだった。
シュナイゼルは後方の席でガウェインの端末を操りながら、前に座るカノンの頭を、
素足でなでる。足の指で耳たぶをつままれる度、カノンはピクリと飛び上がる。

ガウェインのレーダーには、彼らの下方で戦闘をしているコーネリアの戦艦が映っていた。

.
 シュナイゼル「ふむ、コーネリアは何と戦っているのかな」スリスリ

 カノン「きっと……騎士団でしょう……///」ハァハァ

 シュナイゼル「そうか、ではそちらは彼女に任せて……」
       「信号の地点は特定できたかい?」

 カノン「はい、できました……///」ハァハァ


カノンは、手早く操作をしてモニタに信号の地点の映像を表示した。
砂浜と思しき、その場所には……


 シュナイゼル「……なぜ、4名もいるのだ?」ピク

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 ゼロ「気づくかどうかはわからないが、これしかない!」
    「とにかく彼らの動きが止まるまで振り続けるんだ!」ブンブン

 スザク「わかった!」
     「おおおーい、やめろー!戦うのをやめろー!」ブンブン

 ユフィ「やめてくださいー!」
     「争わないでー!」ブンブン

 カレン「とりあえずやめろー!」
     「先にわたしらを助けろってえのー!」ブンブン

.
彼等は、めいめいがたいまつを手に持ち、発信器の近くまで出てくると、
海に向かって横一直線に並んで腕をふっていた。
その姿が、ガウェインのモニタに映っている。


 カノン「あっ……ユーフェミア様が……///」ハァハァ

 シュナイゼル「……」

 カノン「くっ、枢木スザクも、無事……だったようで……///」ハァハァ

 シュナイゼル「…………ゼロがいるね」ツンツン

 カノン「あはぁ!……は、はい……います……///」ピクンピクン

.
 シュナイゼル「では、ハドロン砲スタンバイ」ツツー

 カノン「はひぃ!……ハドロン砲、スタンバイぃ……///」ピピッ、カツカツ


~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 オペ男「……上空に発光体を確認!」
     「本艦前方上空!」

 コーネリア「何イ?新手の敵かッ!」

 オペ男「いえ、友軍の信号を発しています……」
     「ですが……何だ、あの光は?」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 スザク「……おっ、おい、ゼロ……!?」
     「上空に何か、まがまがしい光が、2つ……?」

 ゼロ「あれは……あれは、まさか!?」
    「おいスザク、あれは俺達がここへ飛ば───」


~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 シュナイゼル「ハドロン砲、発射」ツネッ

 カノン「あふぅん!発射ああん!///」カチッ

.
ガウェインに装備されたハドロン砲は、轟音と共に膨大な荷電粒子の束を放った!
……が、照準は外れ、ゼロ達の背後の森に叩き込まれる!森は瞬時に炎を吹き上げ、
燃え盛り始めた!
ゼロ達は、自分らの背後で突如起きた火災に、思わず息をのんだ……!


 ゼロ「……こッ、これは……!」

 カレン「な……何が起きたの……?」キョトーン

 ユフィ「スザク……!」ダキッ

 スザク「ユフィ!……森の中にいなくて良かった……!」ギュウゥゥ…

.
島で突如発生した異常事態に、コーネリアらも気づいた。
彼女は、思わず指揮を忘れてブリッジのモニタに見入った。


 コーネリア「なっ、何が起きたのだ……?」
       「おい、誰か説明しろッ!」

 オペ男「はっ……はい、おそらく上空の友軍機が、島に向けて何らかの兵器を……」

 コーネリア「ばッ、バカかあッ!ユフィが死んだらどうする気だアアッ!」クワッ!!
        「おい、上空を飛び回っている能無しの友軍機に伝えろッ!」

        「もう一度その間抜けなおもちゃをぶっぱなしたら、私が直々に」
        「貴様の粗末なち──を素手でもぎ取ってそのアホ面した口に」
        「突っ込んでやるとなッ!」キリッ!!

 オペ男「ひいっ!」ブルッ!!

 ギルフォード「きゅうっ!」ブルブルッ!!

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 シュナイゼル「……また外れたようだね?」ツネツネ

 カノン「あっ!ああっ!あふう!」
     「……ちょ、調整して再度……充填に、お時間を……///」ハァハァハァハァ

 シュナイゼル「次はないよ?」ジー

 カノン「はひいぃぃ!!!」ビクーン!!
     「……で、殿下、眼下の戦艦から、通信が……///」ハァハァ

 シュナイゼル「無視、ハドロン砲充填開始」キュウッ

 カノン「うひぃん!」
     「はっ、ハドロン砲、充填開始……///」カチカチカチカチ

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 オペ子「……先ほどから、艦の動きが停止しています」

 扇「これは……我々を誘っているのか?」

 藤堂「わからん……」
    「用心に越したことはない、こちらも停止し、様子を……」

 C.C.「…………ッ!!」キィィーン…
    「おい、ラクシャータ!この艦には、対空ミサイルはあるのか!?」

 ラクシャータ「んん?あるけどぉ?」

.
 C.C.「藤堂、急速浮上し、上空の敵にミサイルを撃ち込め!」

 藤堂「何ィ!?」
    「君は何を血迷ったことを……!」

 C.C.「奴は今、空から狙われているんだ!」
    「先にアレを落とさないと……」

 ディートハルト「ほわぁ!?ゼロの危機ですとおッ!?」クワッ!!
       「いっ、いけないッ!わたくしが今すぐ助けに……!」ジタバタ

 C.C.「……お前はややこしくなるから黙っていろ」フゥ…

 扇「C.C.、それも君の能力で見えたのか?」

 C.C.「ああそうだ、見えたから焦っているんだ!」
    「今、奴に死なれたら困るんだ!」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 カノン「ちょ……調整完了……」
     「再充填まで、あ、あと1分25秒……///」ハァハァ

 シュナイゼル「充填に時間がかかるのが難点だね」
       「連射できるよう、ロイド君に改造させないと」クリクリ

 カノン「ひゃうっ!」
     「でっ、殿下……わ、わたしも、まもなく充填が……///」ハァハァハァハァ

 シュナイゼル「そうか、」
       「では、次の射撃と同時に放出したまえ」ニコッ

 カノン「はあっ!あ、ありがとうございます……///」ハァハァハァハァ

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 オペ男「上空の友軍機、通信に応答しません!」

 コーネリア「何だとおッ!」ダンッ!!
       「私をナメてるのかあああッ!」

 ギルフォード「ひいいいいい!」ガクガク

 コーネリア「潜水艦など放っておけ!」
        「全門、間抜けな友軍機に照準ッ!」バッ!!
        「叩き落としてやれえッ!」

 船員「そっ、総督!それは後で問題に……!」

.
 コーネリア「私の言うことが聞けないのかあッ!」
        「貴様のから先にもいでやろうかああッ!」キッ!!

 船員「あひゃい!」ブルブル!!
    「ぜっ、全門、友軍機に照準っ!」


~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 オペ子「海面のブリタニア軍、依然動かず!」

 C.C.「藤堂っ!扇!」

 扇「し、しかし……」

.
 ディートハルト「お、お……おほおッ!」グググググ…
       「ゼ……ゼロオオオオオオオオオッ!」…ブチブチブチ!!

 C.C.「な、なにっ!?縄をちぎった!?」ギョッ!!

 玉城「な、なんだァ!?」

 ディートハルト「今行きますぞゼロ様アアアアァァァァ……」ドドドドド…

 扇「や、奴はどこに……」

 藤堂「アレはもう放っておけッ!」
    「……急速浮上するぞッ!」

.
 扇「おっ、おい藤堂!?」

 藤堂「毒食らわば皿までッ!」
    「C.C.、君の言葉を信じるぞッ!」

 C.C.「ふ……それで当然だ!」
    「私はC.C.なんだからなっ!」ニッ!!

 藤堂「フッ……」ニヤッ
    「……総員、柱や手すりにつかまれ!仰角最大で浮上ッ!」バッ!!

 船員「アイサー!仰角最大ッ!」グググ

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

背後で激しく燃え上がる森の炎に照らされ、上空の機体の輪郭が見えてきた。
ゼロたちは、それを見て驚愕する。


 ゼロ「何ィ、ナイトメアだと……!?」

 スザク「黒い機体か……な、なんてワルそうな姿だ……!」ゴクッ

 カレン「しかも、普通よりデカいし……!」ゴクッ

 ユフィ「で、でも空を飛ぶナイトメアなんて……!」

.
 ゼロ(……待てよ、確かアレは、シュナイゼルの船に積んであったはず……)
    (……では、俺達を殺そうとしているのは、シュナイゼルなのか!)
    (奴め、ユフィをも顧みずに俺とまとめて殺す気か───!)ググッ…!!


ナイトメアは、こちらを向いたまま空中に停止していた。
どうやら、攻撃の意図は依然継続しているようだった……

と、その時、戦艦からやや離れた海面に、突如潜水艦が浮上した!
水しぶきを上げながら勢いよく突きだしたノーズが落下し、海面を激しく叩く!


 スザク「こ、今度はなんだあ!?」

 カレン「あっ、あれウチの潜水艦だっ!」パアッ!!

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 オペ女「きゃあっ!……ふ、浮上完了っ!」

 藤堂「レーダー開け!」
    「上空の敵にロック後ミサイルを射出、即座に急速潜航だッ!」

 船員「アイサー!」


果たしてC.C.の言った通り、鋭い電子音と共に上空の敵機を一機捕捉した!
藤堂は思わず、C.C.の顔を見る。


 藤堂「……!!」

 C.C.「撃て、藤堂っ!」

 藤堂「応ッ!対空ミサイル、発射ッ!」

.
 船員「アイサー!対空ミサイル、発」

 ??『……か、艦長!ディートハルトさんg』

 船員「射アッ!」カチッ


船体の一部が開き、轟音を放ちながら対空ミサイルが発射された!
その背中には、必死にしがみつくディートハルトの姿が……!


 ディートハルト「今わたしが参りますぞおゼロ様アアアァァァァァ……!」

 ??『が、ミサイルにしがみ……うわあ!』
    『ディートハルトさんが飛んでったああ!?』

.
 藤堂「何い!?」
    「まッ、まさかミサイルに……!?」

 ラクシャータ「……まずいねぇ、バランス崩れるから当たんないよぉ?」

 扇「奴め!やはり、ブリタニアの手先だったのか……!」ギリッ…


~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 カノン「じゅ……充填完了ぅん……///」ハアッハアッ

 シュナイゼル「よし……今度は、ちゃんと当てるんだよ……?」スリスリ

.
 カノン「はいぃん!かっ、必ず当てますぅ……///」ハアッハアッハアッ
     「……!!左方向に、ミサイル発射を確認!」

 シュナイゼル「!!」
       「エナジーをブレイズ・ルミナスへ……」

 カノン「……あ、でも外れるコースです……」

 シュナイゼル「ふむ?」
       「では、無視してハドロン砲発射」ツネリイイイイッ!!

 カノン「ひゃあああああっ!///」
     「カッ、カノン砲発射ああん!///」ピピッ、カチ…

.
 ディートハルト「ぬおおおおおおおおおおッ!」
       「わたしのゼロ様アアアァァァァァッ!」


ディートハルトはひときわ大きく咆哮すると、ミサイルの胴体に全力でヘッドバット!
ぐらりと揺れたミサイルは、向かう先が大きくずれた……空中のガウェインへ!


 カノン「……あ、」

 シュナイゼル「ん?」

 ディートハルト「ゼロオオオォォォォォォ……!」カッ───

.
ミサイルの先端が放った閃光に飲み込まれる瞬間、ディートハルトは、
その光の中に、微笑んでいる(はずの)ゼロの姿を見た。
至福感に満たされた彼は、これまで秘め続けてきた想いをついに解き放つ。


 ディートハルト(ああっ、ゼロ……!)
       (あなたを、愛して…………)───!!


……ディートハルト型誘導ミサイルは、ガウェインの脚部に命中、爆発した!
発射の間際に攻撃を受けたガウェインは体勢を崩し、荷電粒子の束は今度は
戦艦の右舷の海面に着弾した!海水が瞬時に沸騰し、巨大な水柱が吹き上がる!

.
それを見たコーネリアは……


 コーネリア「……アレを撃て」

 オペ男「そっ、総督……?」

 船員「はっ!?」

 コーネリア「アレを撃て」

 ギルフォード「ひ……姫様!?」

 コーネリア「アレを撃て」カツカツ…

.
同じ言葉を繰り返しながらギルフォードに迫る彼女の表情は、すでに怒りを通り越して
能面のようになっていた……それを見た彼は、瞬時に死を覚悟する。


 ギルフォード「はっ、はい!ハイネスゥ!」ビクウッ!!


と、その時ブリッジのモニタに、ガウェインからの通信が入った。
モニタいっぱいに、何者かの笑顔が写し出される。その顔は……


 シュナイゼル『……やあ、コーネリア』ニッコリ
       『いま私は、君の上空にいるn』

 コーネリア「撃て」

.
 ギルフォード「撃てええええええ!」

 船員「発射ああああああああ!」


戦艦の砲門が一斉に火を噴き、ポッドからミサイルが発射された!
情け容赦のない弾幕の雨が、ガウェインに襲い掛かる!


 シュナイゼル『ちょっと待っt──────』

 カノン『わたしまだイッてn──────』

.
彼らの通信は、ガウェインの被弾と共にぷっつりと切断された。
戦艦の集中砲火を受けて蜂の巣となったガウェインは、四散し火花を散らしながら
海水に落下した……


 ユフィ「きれい……花火みたい……」
 
 カレン「……つまり、何がどうなったってのよ……」

 スザク「……助かった、ってことかな……」

 ゼロ(……とりあえず、たいまつを振らないと……)ブンブン

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 オペ男「……友軍機、撃墜を確認!」

 コーネリア「ふん、脆弱者が……!」

 ギルフォード「……総督、潜水艦が浮上しておりますが?」

 コーネリア「……見逃してやれ」
       「今ので、連中も島の生存者の救助を目的にしていることはわかった」
       「今回だけは、な……」

       「……ボートを出せ!連中を刺激しないようにな!」

 ギルフォード「イエス、ユアハイネス!」

 船員(……今、一瞬モニタに映ったシュナイゼル様のことは、)
    (忘れた方が賢明だろうか……)

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 オペ女「敵艦、そのまま停止しています」
     「今のところ、こちらを攻撃する意図はなさそうです……」
     「……あ、小型ボートを出すようです」

 C.C.「藤堂、こちらもボートを出そう」
    「私が迎えに行ってくる」カツカツ…

 藤堂「わかった、相手とは十分に距離をとってくれ」

 扇「……ディートハルトは、結局どっちの側だったんだ……?」

 C.C.「……」…ピタ
   「……奴は、"いいヤツ"だったのさ、結果としてはな」ニコッ

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

……こうして彼らは、ブリタニアと騎士団が対面する緊張した空気の中、
それぞれの迎えのボートに乗って島を後にすることになった。
ユーフェミアとスザクは、迎えに来たブリタニアのボートに乗り込む。


 船員「ユーフェミア様、母艦で総督がお待ちです」
    「しばらく揺れますが、どうかご辛抱を……」

 ユフィ「ありがとうございます」
     「……助かりましたね、スザク」ニコッ

 スザク「はい……!」ニッコリ

.
彼らが、ボートの後方に並んで座ると、ボートは海面を滑るように走り始めた。
それを見ながら、前方にいる船員たちに聞こえないよう、彼らは小声で話をする。


 ユフィ「……ほんとはね、」
     「わたし、あのまま……あの島で過ごしたかった……」

 スザク「ユフィ……」

 ユフィ「敵とか、味方とか、そういうのに関係なく……」
     「みんなで、いつまでも仲良く暮らせたら……」

     「……あそこにいると、そういう気持ちがいっそう強くなったの、」
     「どうしてかしら?」

.
 スザク「……実は、僕もあの島から離れるのが、少し惜しかった」ニコッ

 ユフィ「スザク……!」

 スザク「でも僕たちは、僕たちだけで生きているわけじゃない、」
     「僕たちを必要としてくれる人たちがいるから、生きていけるんだと思う」

     「だから……惜しいけど、戻らなくちゃ、って思ったんだ」
     「でも、思い出としてはずっと残り続ける……」

 ユフィ「……スザク、あなた……強い人なのね……」

 スザク「……君がいるから、強くなれるんだ」

.
 ユフィ「…………」ニコッ…
     「彼らともいっしょに、幸せに暮らせる日が、来るといいな……」


ユフィは、後ろ手でそっと、スザクの手に触れた。
それに気づいたスザクは、優しく微笑むと、己の手で彼女の手を包み込む。


 ユフィ「……そうだ、思い出した!行政特区!」パアッ!!

 スザク「……ああ!」ニコッ!!

 ユフィ「あれを実現すれば、きっと彼らも幸せに暮らせるようになるわ!」
     「スザク、わたし、戻ったらがんばります!」

.
 スザク「うん、僕も協力するよ」

 ユフィ「うふっ、大きな目標がひとつ、できましたね……!」

 スザク「ふふ……」


……彼らは、前にいる船員たちがこちらを見ていないのを確認すると、
軽く唇を触れ合わせ、互いに笑い合う。

.
 ユフィ「……ねえ、スザク?」

 スザク「なに?」

 ユフィ「……あのね、」ボソボソ
     「行政特区と、赤ちゃんができるの……どっちが早いかしら……?」ボソボソ

 スザク「ぃいっ!?///」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

ゼロとカレンも、迎えに来たC.C.達のボートに乗り込み、潜水艦へと向かった。
背後で、徐々に遠ざかる神根島を見つめる彼ら二人に、C.C.は声をかける。


 C.C.「……予定外の休暇は、存分に楽しめたか?」ニッ

 ゼロ「フフ……ああ、久々に羽を伸ばした気分だ」
    「お前も来れば良かった」

 カレン「面白い経験でしたね……」ニコッ
     「最後はなんか、とんでもないことになったけど」

.
 C.C.「全く……こちらはやきもきしたというのに、のんきなものだ」
    「お前のせいで私は、色々と大変な目にあったんだからな」フゥ…

 ゼロ「そうか……それは、済まなかったな」

 C.C.「ああ、それと、ディートハルトに礼を言っておけ」
    「奴はお星さまになった」 

 カレン「へ?」

 ゼロ「なんだと?」

 C.C.「奴は、ミサイルに抱きついてあの機体に特攻したんだ……」
    「最後まで、お前の名を呼んでいたぞ?」

.
 ゼロ「……何という……」

 カレン「……じゃあ、わたしたちが助かったのって、あの人のおかげ?」
     「あの人が、カミカゼするなんて……」

 C.C.「……今は静かに、冥福を祈ってやろう」
    「奴へのレクイエムとs」

 ??「……ゼロオオオオオォォォォォ……」パシャパシャ
    「ゼロオオオオオォォォォォ……!」パシャパシャパシャパシャ

 C.C.「!!??」ビクーン!!
    「な、なんだっ!?」

.
突如、夜の海から、水を叩く音と共にゼロの名を呼ぶ声が聞こえてきた。
まるで怨霊のようなその響きに、C.C.は柄にもなくちょっとびびった!


 カレン「なっ、なに、今の声は…………!?」

 ゼロ「……お、おい……あそこに……!」


ゼロが指差した方角、ボートの前方を見ると……真っ暗な海を泳ぎながら、
こちらへ向かってくる者の姿が見えた。
ボートが徐々に近づくにつれ……


 C.C.「……ディートハルト……!」

.
 ゼロ「生きていたのか!?」

 ディートハルト「ゼロオォォォ……もう、力尽きそうですぅ……」パシャパシャ

 カレン「早く引き揚げなきゃ!」…ドボーン!!


躊躇なく海に飛び込んだカレンは、彼がボートへ上がるのを介助してやる。
見れば全身真っ黒、息も絶え絶えの彼だったが、ゼロのすがたを認めると、
親指を立てながら白い歯を見せて笑った。

.
 ディートハルト「ゼロ……貴方の生存を、信じていました……!」ニカッ!!

 ゼロ「……君には、さすがに度胆を抜かれたよ……」…フゥ
    「その献身に、心から敬服する」

 ディートハルト「なんのなんの……」
       「我がカオスのためなら、爆発の一つや二つ……!」ニコ-ッ!!

 C.C.「お前の、ゼロへのその執念は、一体何なんだ……」ハァ…

 カレン「でも……ちょっと、カッコいいかも……///」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

……そして、ブリタニアと黒の騎士団は、神根島を後にした。
後には、真っ暗な海面を埋めつくすほどの、かつてガウェインだった数多の残骸が
ゆったりと漂い、流れるのみ……


 シュナイゼル「……彼らは、去ったようだね」チャプチャプ

 カノン「私たちに、全く気付かなかったようですね……」チャプチャプ

.
……その残骸のひとつに、シュナイゼルとカノンは仲良くしがみついていた。
彼らもまた、すんでの所で死を逃れ、今こうして漂流しながら二人きりで反省会を
開いているのだった。


 シュナイゼル「……コーネリアは、わざと撃ったと思うかい?」チャプチャプ

 カノン「うーん……正気を失われていたように思います」チャプチャプ
     「おそらく、殿下に気付かれなかったのではないかと……」

 シュナイゼル「そうか……」チャプチャプ
       「やはり、最初にユフィを巻き添えにしたのが失敗だったかな」

.
 カノン「いえ、殿下が死亡を告げられた時点では問題なかったかと」チャプチャプ
     「恐るべきは、兄弟の絆……かもしれませんわ」

 シュナイゼル「そうだね、ユフィの生存を察しなければ、」
       「彼女はここに来ることはなかったからね」チャプチャプ

 カノン「はい……やはりあの後すぐに、」
     「島の捜索をした方が良かったかも……」チャプチャプ

 シュナイゼル「うん、そうだね」チャプチャプ
       「……今回は、大失敗だったかな?」

 カノン「……でも、私たちはまだ生きておりますわ」ニッコリ

.
 シュナイゼル「うん」ニッコリ
       「そういえば、最初はここの遺跡を調べるつもりだった」

 カノン「あ!……でも、ガウェインがこんなことになってては……」

 シュナイゼル「ロイド君に言って、また作ることにしよう」ニコッ

 カノン「ですね……」ニコーッ
     「……あ、あれは……殿下、アヴァロンですわ!」

 シュナイゼル「うん、ガウェインのSOSシグナルを探してきたのだろう」
       「さてと……コーネリアにばれないように、」
       「こっそりと帰るとしよう」ニコッ

 カノン「イエス、ユアハイネス!」ニコッ

.
■エピローグ ─────

……神根島での数日間の共同生活は、彼らに運命の変革を十分に予感させる
出来事であった。だが───その"小さな羽ばたき"は、彼らの運命を変える
までには至らなかった。
ギアスの暴走は、既に約束された事象であったからだ……


……数週間後、行政特区日本の式場で、ユーフェミアは虐殺皇女となった。


……スザクも、カレンも、そしてルルーシュ自身も、あの島での出来事は幻想で
あったと思い込むしかなかった。
全ては誰かが書いた物語の如く、あるがままのように流れてゆく……
彼らの想いなど微塵も介在できないと感じるほどの……複雑な機構を極めた
巨大な運命の歯車が、カチリ、カチリ、と回り続ける。
一体、いかほどの"力"があれば、この動きを止められるというのだろうか……

.
……やがて、ルルーシュは騎士団を追われ、シャルルを倒して皇帝となり、
スザクと共に世界を壊し始める。そしてシュナイゼルとの決戦に勝利し、
全ての力をその手に握った。
ゼロレクイエムは、"予定通り"行われることとなったのだ。


……深夜、誰もいない謁見の間にて─────


 ルル「……なあ、スザク……」
    「願いとは、ギアスに似ていないか?」

 スザク「えっ?」

.
 ルル「自分の力だけでは叶わないことを、誰かに求める……」

 スザク「……願い、か……」

 ルル「そう……」
    「……俺は、人々の、"願い"という名のギアスにかかる」
    「世界の明日のために……」

 スザク「……」


微笑みながら、スザクを見つめるルルーシュ……スザクは、寂しそうな微笑みを返す。
やがて……彼は、ぽつりと言葉を漏らした。

.
 スザク「……」
     「もし、やり直せるとしたら……」

 ルル「……うん?」

 スザク「……君は、今までの人生の、どこからやり直したい?」

 ルル「フフ……どうしたんだ、いきなり変なことを……?」

 スザク「……オレも、君と同様に"死ぬ"んだ」
     「その前に、得られる答えは全て得たい……」

 ルル「…………そうか」

.
ルルーシュは、スザクの問いが真剣なものであることを察すると、口をつぐんだ。
目を伏せ、考え込む風の彼の表情を、スザクは黙って見つめる。
やがて……


 ルル「……あの島に、戻りたい」

 スザク「……」

 ルル「戻って、俺自身に、行政特区のことを言うな、と言いたい」
    「……決して叶えられることのない、俺の"望み"だ……」

 スザク「…………」

.
 ルル「……だが、後悔ではない」
    「ままならぬ人生だったが、その中でも最良のルートを選んだ、と」
    「俺は思っている」

 スザク「……」

 ルル「そして、これが……お前にとっても最良の選択であると信じている」

 スザク「……君はあの時、仮面を脱いでいればよかったのさ」

 ルル「……!?」

 スザク「被りっぱなしでは臭くなると言っただろ?」
     「それを、君は頑なに拒んだ」

.
 ルル「……あの時か」フッ…

 スザク「そうさ、あの時だ……」ニッ…

 ルル「ならばお前も、俺が脱いだ瞬間を逃さなければ良かった」

 スザク「ああ……それは、オレのミスだ」

 ルル「フフ……わかっていれば、な……」

 スザク「……わかってたら……」


しばらくの間、二人は微笑みながら互いの顔を見つめる。
やがてルルーシュは、ため息交じりに目を伏せると、諦めたように言った。

.
 ルル「……ああ、認める、後悔だ……」
    「今でも、思い返せば焦燥感に悶えそうになる」

 スザク「……」

 ルル「だが……それでも俺はゆく」
    「全てにケリをつけて終えることなど、できはしないから……」

 スザク「そうだな……」

 ルル「……それが、俺の答えだ」
    「もはや、撃たれる覚悟はできている」
    「……お前が、求めたものは得られたか?」

.
 スザク「ああ……十分だ」
     「オレも、もう思い残すことは何もない」…ニコッ

 ルル「……そうか」ニコッ


スザクは、黙ってルルーシュに手を差し出す。
ルルーシュも手を伸ばし、力強く握った。

───そして、ゼロレクイエムは再び成就する!

それが、人々の"願い"であるがゆえに……!
それが、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアに課せられた運命であるがゆえに───!


    ─ 完 ─

おつ!

>>257>>258
.
彡 ⌒ ミ  乙ありです!
(´・ω・`) 次があれば、またおつきあいくださいませ!


結末は変わらなかったか

>>260
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彡 ⌒ ミ  乙ありです!
(´・ω・`) 島で3か月くらい生活してたら、変わってたかも……

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2019年03月17日 (日) 08:44:22   ID: YX_M7oVl

乙!ものすごく面白かったです
結末が変わらなかったのが切ない…

2 :  SS好きの774さん   2019年04月13日 (土) 09:03:10   ID: xDXVXT-b

結末変わらないなら無駄なもの意味がない
無駄なものを面白いとは思えない

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