伊織「2人きりの」 美希「結婚式」 (35)

「星、見えないねー」

「そりゃあこんだけ曇ってたらね」

「星空の下でおにぎり食べたかったなー」

「あんたどこでもおにぎりなのね」

「ミキとおにぎりは切り離せない存在だもん!あったりまえだよー」

「ふぅーん」

「むっ、何さ!……あっ、おにぎりだったらあげないからね」

「違うわよ。……私とおにぎりだったらどっちよ?」

「ふぇっ」

「どっちか、って聞いてんのよ」

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「えっとさ、ほら伊織とおにぎりだと、ほら、その方向性?が違うというか、その、ね?」

「ここまで連れ出したくせに、おにぎりに負けるのね、私」

「……だよ」

「えっ?」

「伊織だよ!って言ってるの!」

「……ふ、ふん!当然よ」

「へっへー」

「……ふふっ」

「……星、見えたらよかったのにねー」

「そうね」

「じゃあ始めようか?」

「……そうね」

「2人だけの結婚式を、さ」

「ええ、そうね」

【注意】
このSSはアイドルマスターの二次創作です。
•二次創作が嫌い。
•キャラ崩壊が気になる。
•同性愛要素が苦手な方。

以上の方は見なかったことにして、記憶から消しておいてください。

なんで私たちがこんな結婚式の真似事をしているのか。
それは私が16歳の誕生日を今年迎えること、私が『水瀬』の家に『女』として生まれたこと、そして私と美希の関係、その全てが関係している。

儀礼的な乾杯。それが終わったら、私はお父さまと一緒に会場の皆さまに挨拶へと回る。
昔からこのパーティは好きではなかった。
誰も私を本当に祝いにきたのではなく、ただお父さまに顔を売る機会として来ているのだ。
だから私の誕生日の5日にではなく、次の日に響かないように日曜日の4日にやっている。
1人なんかのために日程を調整するアイドル事務所なんかおかしいとは思うけれど、そっちのほうが私はちゃんと祝われてる気がする。

「おおっ!これは、これは○○さん。お久しぶりです、お変わりの無いようで」

「いやぁ、水瀬さんどうもどうも。伊織ちゃんも久しぶり、すっかり大きくなっちゃって」

「ありがとうございます」

「しかも今はあの竜宮小町のリーダーだなんて。ははっ、お前も同い年なんだから少しは見習えよ」

「痛いよ、父さん」

「おや、そちらは」

「うちの倅ですよ、いやぁまったく伊織お嬢さまと違って出来が悪いことで悪いことで」

「またまたそのようなことを。一族きっての切れ物だと、噂ですよ」

「いやぁ、はっはっはっ!まだまだ青いですよ、青い。……お前、ネクタイ曲がってるじゃないか、まったくほら」

「やめてくれよ、父さんってば」

「お前のお嫁さんになる人の前で、そんな恥ずかしい格好させられるか!」

「ちぇ。やってもらうんなら、伊織さんにやってほしかったよ」

「お前には贅沢な話だ。すいませんね、伊織ちゃん」

「いえ、とてもユニークな方ですね」

「そう言ってもらえるとありがたいよ」

「じゃあ○○さん、また」

「あぁ、どうもどうも」

知らないとこで、顔しか知らない人との結婚が決められている。
毎年毎年、夢でないかと思うがその度にそうではないことを確認して絶望する。
どれだけ竜宮小町として売れようと、どれだけアイドルとして輝こうとも『水瀬』という枠からは逃げられないのだろう。
だってやっぱり私は『水瀬』に産まれた女だから。
私の気持ちなんて関係ない。
私の好きな人なんて関係ない。


そう、私が『星井美希』が好きなことなんて、関係ない。

美希との関係を一言で表そうとするのはなかなか骨が折れる。
友達だし、ライバルだとも思ってる。
けれどそれ以上の対象としても見ている。
そう、『恋の対象』として私は美希のことを見ている。
けれど『恋人』になんかなれっこない。
だって私は『女』だし、美希も『女』だからだ。

手を繋いだり、抱き合ったり。
女同志なら特に疑問をもたれない。
美希自身スキンシップの激しい方だから、疑問に思うことなんてないだろう。
そのことにホッとする反面、寂しさを感じたりもする。
美希にとって、私は仲の良い友人だと思われてることに。
私はこんなに美希のこと好きだというのに。

「でこちゃん、どうしたの?」


翌日の事務所でのパーティ、その後の片付けも終わった帰り道、美希が尋ねてきた。
迎えを呼ばずに歩いてるのはなんとなく。
しっかり手を握ってるのもなんとなく。


「どうしたって、何が?」

「誕生パーティだったのに、楽しそうじゃないからさ。お腹でも痛いの?」

「そんな風に見えた?」

「うん」

「普段ぼけぼけーってしてるのによく気づくわね」

「だってでこちゃんのことだもん!それくらい朝飯前なの!」

「……言ってて恥ずかしくないの?」

「えへへ、ちょっと恥ずかしいかな」

勘違いしちゃいそうになる。
この天然な小悪魔は、もしかしたら学校でもこうなのかと思うと、思わず同級生の諸君に同情せざる得なかった。


「……、明日から学校かと思って落ち込んでたのよ」

「なぁーんだ。ミキ、でこちゃんがおばあちゃんに近づいちゃって落ち込んでるのかと思ったよ」

「何よ、それ」

「だってでこちゃんってば、16歳だよ。もう結婚できるんだよ、おっとなー」

「結婚は15歳から出来るんじゃなかったかしら?」

「もーいじわるーなでこちゃん」

「別に結婚なんてそんなに良いものじゃないでしょ」

「でも憧れちゃうな。女の子の夢だもん、結婚ってさ」

そうよね。
みんな憧れるわよね、結婚って。
私だって憧れてないと言えば嘘になる。
けれど憧れれば憧れるだけ、現実を知り辛くなるだけだから。
……ってダメダメ。このままだと美希に当たりそうだわ。
矛先を変えないと。

「あら、ってことは好きな人がいるんだ、あんた?」

「……うん、いるよ。でこちゃんはいる?」

「いるにはいるわよ、けど」

「けど?」

「あんたにだけは教えてあげなーい」

「あーいじわるー!」


ばーか。教えられるわけないじゃない。
だってそんなことしたら最後、この関係が壊れちゃうのよ?
せめて私が結婚させられるまではこの関係でいさせてちょうだい。

「むー、……でも意外なの」

「何がよ」

「でこちゃんにそんな人がいたことが。……何かでこちゃんって男の人に興味無さそうだって思ってたからさ」

「……あら、そう」


大ビンゴよ、美希。


「じゃあさ、伊織はさ、美希の好きな人分かる?」

「はぁ?」


私でしょ、って言いたいけれど。


「プロデューサーでしょ?」

まぁ妥当なとこだと思ってるとこを言ってみる。さっきみたいなはにかんだ笑みで「あったりー」って言うかと思ってたら、

「違うよ。……正解はね、伊織だよ?」


思いもしなかった、いや期待はしていたけれど来るはずないと思ってた返答が返ってきた。

「じょ、冗談でしょ」


だって、そうじゃないと。
私は、私が。


「冗談だと思う?」


見たこともないくらい顔を真っ赤にしてる美希を見て、真実だということを知る。


「あははっ、やっぱり気持ち悪いよね。女の子が女の子、好きだなんてさ」

「ごめんごめん、やっぱり冗談だよ。ミキが、ミキが好きなのは……」


そんな顔されて、泣かれて、冗談だなんて思えるわけないじゃない。


「美希、あんたが教えてくれたんだから私も教えてあげるわ」

「ふぇっ?」

「私はね、あんたのことが好きよ」

「……」

「私は、星井美希のことが好き」

そこからの私たちはお互いに抱き合ってわんわんと泣いた。
泣いて、泣いて、泣き疲れて、近くの公園で休憩した。
なんとなく気恥ずかしくて、背中合わせに座って。

「何でさ、女の子同士って結婚できないんだろうね?」

「昔から結婚って子孫を残すためにするもんだったからじゃないの?」

「だったら、ほら今なんたら細胞ってので、出来るって聞くからもうそんなのいいんじゃないの?」

「IPS細胞のこと?まだ人間同士では確認されてないし、実用はまだまだ先よ」

「日本ではダメだけど、外国とかだったらOKなとこもあるんだね」

「そうね。ヨーロッパとかだと認められてる国多いわね」

「どうする、逃げちゃう?ミキ、お金だったら売れてるからそれなりにあるよ?」

「ばーか。あるって言ってもぜんぜん足りないわよ。それに、お父さまとかお兄さま達が水瀬の総力挙げて探すわよ、たぶん」

「スゴイ話なの」

「……お嬢さまですからね」

「……」

「……」

「……ミキたちみたいな人が生きにくい世の中だね」

「……そうね。好きでもない人と結婚しなくちゃいけないしね」

「でも伊織さ、16歳になったんでしょ?ってことはもう、結婚しちゃうの?」

「まだ、ね」

「まだ?」

「相手の方も16歳だもの。男の人は、18歳にならないと結婚できないわ」

「2年かー」

「それだけしかないのね」

「それだけじゃ足りないの」


『私を連れて、逃げて』って言いたいけれど、そんなこと言えるはずがない。
だってそしたら最後私だけじゃなくて、美希にも迷惑かけちゃう。

「じゃあさ、結婚しちゃう?」

「……はぁ?」

「伊織がさ、結婚しちゃう前にミキが伊織と結婚するの!」

「あんたと私だけの結婚式ね」

「ちっちっちっ、違うよ、伊織!伊織はミキの、ミキは伊織のものだって神様に知っておいてもらうの」

「……そうね。ふふっ、そうね」

「じゃあ!」

「でも今すぐはイヤ!」

「どうして?」

「だって結婚したら夫婦になるわけじゃない?」

「そうだよ」

「……ちょっとくらいあんたと恋人同士でいたいのよ、……ダメ?」

「ぜーんぜん!むしろ大かもーんなの!」

そこから私たちはいっぱい話をした。
いろんなことを。
なんてないようなことなのに泣きそうになったのは何でかしらね?

「星、見えないねー」


こんだけ喋ったのに、私たちはまだ背中合わせで喋ってる。
さっきまでの色んなことを喋ってたのに、顔を合わせられないなんて、ね?


「そりゃあこんだけ曇ってたらね」

「星空の下でおにぎり食べたかったなー」

「あんたどこでもおにぎりなのね」

「ミキとおにぎりは切り離せない存在だもん!あったりまえだよー」

「ふぅーん」

「むっ、何さ!……あっ、おにぎりだったらあげないからね」

「違うわよ。……私とおにぎりだったらどっちよ?」

「ふぇっ」

「どっちか、って聞いてんのよ」

「えっとさ、ほら伊織とおにぎりだと、ほら、その方向性?が違うというか、その、ね?」

「ここまで連れ出したくせに、おにぎりに負けるのね、私」

その気恥ずかしさを隠すように、いつもの通り軽口を叩く。
その気持ちなんて知ってるくせにね。

「……だよ」

「えっ?」

「伊織だよ!って言ってるの!」

「……ふ、ふん!当然よ」


こう言ってくれるんだろうなって信じてるから甘えてしまう。

「へっへー」

「……ふふっ」


恥ずかしそうに美希が笑う。
つられて私も笑ってしまう。
照れ臭かったのは私だけではなかったようだ。


「……星、見えたらよかったのにねー」

「そうね」

「じゃあ始めようか?」

「……そうね」

「2人だけの結婚式を、さ」

「ええ、そうね」

「えーと伊織はミキがおにぎり食べたいとき、すぐ作ってくれることを誓いますか?」

「なんなのよ、その誓いの言葉は」

「難しかったミキなりにアレンジしてみたの!どう?どう?」

「ノーコメントで」

「ヒドイの!で、誓ってくれる?」

「……ええ、誓うわ」

「やった!それじゃあ次は伊織の番ね!」

「星井美希、あなたは私、水瀬伊織がが病めるときも、健やかなるときも
愛を持って、生涯支えあう事を誓いますか?」

「はい、誓います!……これで伊織とミキは夫婦ってことでいいの?」

「神様ってやつに今誓ったんですもの、違いないわ。っていうか、どっちが新郎で新婦なのよ?」

「……決め忘れてたの。ミキ、ウェディングドレス着たいから花嫁さんでいい?」

「じゃあ私はタキシードね」

「うーん、その伊織も可愛いけれど、ウェディングドレス着た伊織も見てみたいの」

「ばーか」

「あっ、そうだ!じゃあさ式の時はミキがドレス着るから、披露宴の時は伊織が着なよ」

「そうね。そうさせてもらうわ」

「……ホントにホントだよね、ミキと伊織、ホントに夫婦なんだよね?」

「あんたが言ったんでしょ?神様に誓ったのよ。私は、伊織は、星井美希のパートナーよ」

「だよね!じゃあこの後に神様に誓うのは無効、で良いんだよね?」

「……ええ、当たり前じゃない」

「……よかった」

「……次は指輪の交換なんだけれど」

「そんなの持ってないの!」

「私もよ」

「飛ばしちゃう、って痛ッ!なにすんのよ!……私の髪?」

「こーれーを!指に巻いて、ほら指輪!」

「ふふっ、全く、あんたは。……ほい」

「痛いの!もう、優しくしてよー!」

「あんただっておんなじでしょ!」

「……これで指輪交換も終わったね」

「じゃあ最後は。……」

「……誓いのキス、だね」

「…………」

「…………」

「…………」

「こ、こういうのは旦那さまの伊織からしてほしいの!」

「途中で交換なんでしょ!あんたからでも良いじゃない!」

「だって恥ずかしいんだもん!」

「私だってそうよ!」

「……じゃあ同時に!」

「同時?」

「そうなの!こうゆっくりと近づけいってさ」

「それでいきましょうか?」

「ミキがあんまりにも魅力的だからってことでいきなり来てもいいんだよ?」

「同じセリフをまんまあんたに返すわよ!……ねぇ、美希」

「なぁに、伊織?」

「ありがとうね」

「2年間の間さ、いっぱい思い出作ろうね!伊織!」

「ええ!」

「……ミキ頑張るから」



私のファーストキスは誓いの口づけだった。
これからよろしくね、美希?

~終わり~

駄文失礼いたしました。

伊織誕生日おめでとう!
美希と末長くお幸せに!

乙乙、いおみき最高

ξ*'ω')ξ<おつおつ、ばっちし!

女同士結婚出来ないのは素晴らしい。全く迷惑なクズ百合豚。さっさと死 ね

いおみきだぁー!
お疲れちゃーん!

じゃけんさっさと巣に帰りましょうね~

百合[ピーーー]先輩また沸いてるのかよ

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